説明

白色塗布ポリエステルフィルム及びその製造方法ならびにソーラーモジュールにおけるバックカバーとしてのその使用

本発明は、ポリエチレン−酢酸ビニル(EVA)に対して優れた接着性を有し、ソーラーモジュールにおける封入材として一般的に使用される白色塗布ポリエステルフィルムに関する。優れた接着性は、少なくとも1種のポリウレタンと少なくとも1種の架橋剤とから成るポリマー塗布層によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−ビニルアセテート(エチレン−酢酸ビニル、EVA)に対し優れた接着性を有し、ソーラーモジュールにおける封入材として好適に使用できる白色塗布ポリエステルフィルムに関する。優れた接着性は少なくとも一種のポリウレタンと少なくとも一種の架橋剤とから成るポリマー塗布層により達成される。
【背景技術】
【0002】
ソーラーモジュールは、太陽光を直接電気エネルギーに変換する。構成要素として最も重要なのは、ソーラーセルの集合体で、ソーラーモジュール内で適切な方法で互いに電気的に接続されており、他の異なる材料中に埋込まれている。これらの配置は以下の目的を満足する。
【0003】
・透明で、放射線耐性および耐候性を有するソーラーセルのカバー。
・機械的な影響から脆いソーラーセルを保護する。
・ソーラーセルの保護および湿気からの電気的短絡を防ぐ。
・電気部品との接続を防ぐ。
【0004】
代表的には、ソーラーモジュールは図1に示す構成を有する。
【0005】
・通常ガラスが使用される透明フロントカバー。
・ソーラーセルを埋込むための透明ポリマー材。最も汎用的に使用される材料としてはフィルム形状のエチレン−ビニルアセテート(エチレン−酢酸ビニル、EVA)である。EVAは比較的高温で溶融し、適当な添加剤により架橋し、屋外環境に極めて優れた耐性を有する。EVAの種類およびその中に存在させる添加剤によって、架橋プロセスは異なる架橋時間を必要とする。その違いはいわゆる「標準硬化型」と「急速硬化型」として区別されている。
・原則的に透明または着色されたバックカバー。代表的にはポリマーフィルム又は積層ポリマーフィルム(例えばフッ素化ポリマーフィルムやポリエステルフィルム)が使用される。白色不透明バックカバーは、ソーラーセル間を通過する太陽光がバックカバーの上面で反射し、ソーラーモジュールの効率を増大させるため有利である。
【0006】
図1は、太陽光発電のためのソーラーモジュールの基本構造を示す。1はフロントカバー、2はソーラーセル、3はEVA、4はバックカバーを示す。
【0007】
ソーラーモジュールの製造方法は、真空ラミネーター中、温度約150℃において、フロントカバー、ソーラーセルを有するEVA及びバックカバーを互いに接着する。必要とされる20〜40年に渡るソーラーモジュールの長寿命を達成するためには、EVA埋込み材に対するフロントカバー及びバックカバーの耐久性に優れた接着が保証されなくてはならない。
【0008】
高温高湿度下で優れた長期間安定性を有し、ソーラーモジュールのバックカバーとして好適に使用でき、EVAに対する接着性塗布層を有する白色不透明ポリエステルフィルムが望まれている。塗布層はフィルム製造工程、フィルムの巻取り及び巻戻し工程ならびにソーラーモジュールの製造工程における応力に対してダメージがないように優れた機械的特性が必要である。太陽光発電をより安価に利用できるようにするために必要な条件は、ポリエステルフィルムが経済性に優れた方法で製造できる必要があることである。しかしながら、そのような白色塗布フィルムは今まで知られていない。
【0009】
特許文献1には、EVAに対する接着性塗布層を設けたポリエステルフィルムが記載されている。ベースフィルムもまた白色、黒色あるいは他の色に着色してもよいが、実施例においては透明フィルムのみ使用されている。塗布層は、架橋剤とポリマーとから成り、当該ポリマーは、ガラス転移温度が20〜100℃のポリエステル類、ガラス転移温度が20〜100℃アクリレート類、これらのポリエステル類とアクリレート類の組合せ、及び、これらのポリエステル類および/またはこれらのアクリレート類と70〜90モル%の加水分解率のポリビニルアルコールとの組合せから選択される。架橋剤としては、尿素またはエポキシ化合物、メラミン又はオキサゾリン基含有ポリマーが挙げられており、後者が好ましいと記載されている。エステル基やポリエステル系塗布層は加水分解を受けやすいと知られているため、高温高湿度下で長期間に渡ってEVAへの良好な接着性を保証するのに好適であるとは思われていない。ポリビニルアルコールは、ポリエステルフィルムの製造中の高温において又はソーラーモジュールにおける光や熱によるストレスによって分解および着色する傾向がある。この文献の発明フィルムは、ソーラーモジュールにおける耐久性のあるバックカバーとしては適しているとは思えない。
【0010】
特許文献2は、可視光の良好な反射性を有し、UV光線の影響下でも着色に対して安定な多層白色フィルムを開示している。可視光の良好な反射性は、フィルムのある層に不活性粒子を31〜60重量%添加し、また別の層に不活性粒子を0〜30重量%添加する。この目的のためには硫酸バリウムが特に好ましいと記載されている。ポリエチレンテレフタレートに添加する他の原料としては、ポリエチレンナフタレートである。このフィルムは、先ず液晶ディスプレイにおける反射材として好適であるとされ、ソーラーモジュールのバックカバーのためのフィルムとしての使用可能性についても記載されている。このように高濃度に不活性粒子が存在することから、フィルムの製造工程においてフィルムの引裂きを避けることは出来ない。それ故、このようなフィルムをソーラーシステム分野でコスト的に受け入れられるように製造できるかどうか疑わしい。その上、ソーラーモジュール分野において高温高湿度下で長期間に渡ってEVAへの良好な接着性を如何にして保証するのか全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許公開公報第1826826号明細書
【特許文献2】欧州特許公開公報第1908587号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、極めて耐久性が高いEVAへの接着性塗布層を有し、単独でも他の材料と複合体としてもソーラーモジュールのバックカバーのためのフィルムとして好適である白色不透明ポリエステルフィルムを提供することである。
【0013】
上記目的とするフィルムは、低光線透過度、高白色度、高グロス、低収縮率、高温高湿度下であっても非常に良好なEVAへの接着性値、塗布層の高い機械的硬度の他の性質においても優れている。更に、フィルムはそれ自身の再生品を使用しても低い黄変度を維持できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の本発明の目的は、少なくとも片面に塗布層を有し、塗布層が少なくとも1種の(1)ポリウレタンと少なくとも1種の(2)架橋剤とから成る白色不透明塗布ポリエステルフィルムによって達成できる。
【0015】
本発明の塗布ポリエステルフィルムの低透過度とは、光線透過率が40%未満、好ましくは35%未満、更に好ましくは30%未満を意味する。
【0016】
本発明の塗布ポリエステルフィルムの高白色度とは、Berger白色度が70を超える、好ましくは75を超える、更に好ましくは80を超えることを意味する。
【0017】
本発明の塗布ポリエステルフィルムの高グロスとは、20°で測定したグロスが5を超える、好ましくは10を超える、更に好ましくは20を超えることを意味する。
【0018】
本発明の塗布ポリエステルフィルムの低い収縮率とは、150℃で15分以内の長手方向および横方向の収縮率が2.5%未満、好ましくは2.0%未満、更に好ましくは1.5%未満であることを意味する。
【0019】
本発明の塗布ポリエステルフィルムの非常に良好なEVAへの接着性値とは、本発明のフィルムとEVAフィルムとから成る積層体を180°の角度で剥離するために必要な応力が50N/15mmを超え、好ましくは70N/15mmを超えることを意味する。
【0020】
本発明の塗布ポリエステルフィルムのEVAへの接着性の優れた長期安定性とは、
本発明のフィルムとEVAフィルムとから成る積層体を85℃で85%の空気の相対湿度に1000時間保存した後に剥離するために必要な応力を保存開始時のそれと比較して50%以上であることを意味する。
【0021】
本発明の塗布ポリエステルフィルムの優れた塗膜の機械的硬度とは、ナノインデント法による塗膜の機械的硬度が0.2GPaを超え、好ましくは0.25GPaを超え、更に好ましくは0.3GPaを超えることを意味する。
【0022】
本発明のフィルムとEVAフィルムとガラスとから成る積層体が、ISO4892に従い、キセノン耐候試験装置を使用した20000時間の促進耐候試験(中央ヨーロッパの天候下、屋外で20年使用することに相当)において層間剥離に絶えられため、本発明の塗布ポリエステルフィルムは、ソーラーモジュールにおけるバックカバーとして好適である。長期に渡りソーラーモジュールにおけるバックカバーとして使用した後でさえ、十分な機械的強度を有するために、ベースフィルム中のポリエステルのSV値が700を超え、好ましくは650を超える。
【0023】
フィルムの良好な巻取性および加工性のため、フィルムの平均表面粗度Rが20nmを超え、好ましくは25nmを超え、更に好ましくは30nmを超える。その上、フィルムの更なる加工を複雑または不可能にすることから、巻取られた塗布フィルムは、比較的高温、高湿度において近傍のフィルム層と固着してはならない。この固着する性質を「フィルムのブロッキング」と以下において記載し、所定の条件下で保存後にフィルム層を互いに剥離させるのに必要な力で示す。本発明の塗布フィルムにおいて、40℃/80%相対空気湿度に20時間保存した後に、その力が50g未満であることが必要である。
【0024】
本発明のフィルムのそれ自身の再生品を使用するにもかかわらず低黄変度であるとは、本発明の塗布フィルムから製造された再生品を50%まで使用しても、ポリエステルフィルムの黄変度が80未満、好ましくは70未満であることを意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ポリエチレン−酢酸ビニル(EVA)に対して優れた接着性を有し、ソーラーモジュールにおける封入材として好適な白色塗布ポリエステルフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は太陽光発電のためのソーラーモジュールの基本構造を示し、1はフロントカバー、2はソーラーセル、3はEVA、4はバックカバーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のEVA接着塗布層:
本発明の非透明性白色ポリエステルフィルムは、少なくとも片面に、1)ポリウレタン及び2)架橋剤から成るEVA接着塗布層を有する。本発明において好ましいポリウレタン及び架橋剤を以下に記載する。
【0028】
水性ポリウレタン分散体は本発明の塗布剤に好適に使用でき、ポリヒドロキシ化合物(以下、「ポリオール」と記すこともある)とポリイソシアネートとの反応によって調製される。ポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオキシアルキレンポリオールが例示される。
【0029】
ポリエステルポリオールは、少なくとも1つの低分子量ジオールと少なくとも1つのポリカルボン酸との重縮合によって形成される化合物を意味する。低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノールから成る群より選択される。ポリカルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、ダイマー酸、トリメリット酸、上記のポリカルボン酸の誘導体、更には、ε−カプロラクタム等の環状化合物の開環重合によって調製されたものが例示される。
【0030】
ポリカーボネートポリオールは少なくとも1つのジオールと少なくとも1つのカーボネートとの反応によって形成される化合物である。ジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール及びビスフェノールAが例示される。カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート及びホスゲンが例示される。
【0031】
ポリオキシアルキレンポリオールは、低分子量ジオールを開始剤として、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の少なくとも1種の環状エーテルの開環重合などの別の処方によっても形成できる。低分子量ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又はネオペンチルグリコールが挙げられる。これらのポリオキシアルキレンポリオールにおいて、アルキレン基が2〜7の炭素数、より好ましくは3〜6の炭素数を有する化合物が好ましい。
【0032】
好ましいポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、芳香族−脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及びこれらの誘導体または変性体が挙げられる。
【0033】
芳香族ジイソシアネートの例としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート及び4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
芳香族−脂肪族ジイソシアネートの例としては、1,3−又は1,4−キシレンジイソシアネート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
脂肪族ジイソシアネートの例としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びカプロン酸2,6−ジイソシアネートメチルが挙げられる。
【0036】
脂環式ジイソシアネートの例としては、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(イソフォロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネート−メチル)−シクロヘキサン、及び2,5−又は2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンが挙げられる。
【0037】
ポリイソシアネート誘導体の例としては、ダイマー、トリマー、ビューレット化合物、アロファナート、カルボジイミド及び上述のポリイソシアネートの尿素化合物が挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネートの変性の例としては、上述のポリオールと化学量論的に過剰量の上述のポリイソシアネート又はその誘導体とから形成される末端イソシアネート化オリゴマー又はポリマー化合物がある。これらの変性ポリイソシアネートは、単独または複数のポリイソシアネートを組合せて使用してもよい。
【0039】
ポリウレタンの基本的な製法は、従来技術、例えば、G.Oertel著、「Polyurethane Handbook」、2nd edition、Carl Hanser Verlag社(1994)に記載されている。
【0040】
ポリウレタンの調製として代表的な処方は、先ず、ポリオールと化学量論的に過剰量のポリイソシアネート(必要に応じて触媒の添加を伴って)との反応により末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、プレポリマーは、引続き、更にポリオール或いはモノ−、ジ−、トリ−又はより多くの機能性基を有するアミンを用いて鎖延長が行われる。
【0041】
水との相溶性や分散性を改善するために、ポリウレタンにイオン性基がしばしば導入される。陰イオン性基としてはカルボキシレート基、スルフォネート基、硫酸モノエステル基が例示され、陽イオン性基としては4級化アンモニウム基が例示される。これらの官能基の中で、陰イオン性基が好ましく、特にカルボキシ基およびスルホン酸基が好ましい。
【0042】
イオン性基のポリウレタンへの導入は、プレポリマーを調製するための適切な変性反応物質の選択により、または適切な鎖延長剤を選択することにより行うことが出来る。代表的なカルボキシル官能基を有する鎖延長剤としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ビス(エチレングリコール)トリメリット酸エステルが例示される。更に、カルボキシル官能基を有する鎖延長剤としては、グリシン、β−アラニン、6−アミノカプロン酸、4−アミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸およびリジンも例示される。ジオールスルホン酸、アミノ−又はジアミノスルホン酸(例えば、スルファニル酸、ナフチル−アミノスルホン酸、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン酸、2,2’−又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−2−スルホン酸)も鎖延長剤として使用でき、ポリウレタンにスルフォネート官能基を導入できる。
【0043】
最終的なポリウレタン分散体中のアニオン性基はその塩の形で存在することが好ましく、これは、プレポリマーの調製中および/または鎖延長されたポリウレタンの水分散体中の早い段階で塩基と中和することによって形成される。中和においては、トリエチルアミン、水酸化トリエチルアンモニウム等の有機塩基または水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基の何れもが使用できる。好ましくは無機塩基の使用であり、特に好ましくは水酸化アンモニウムによる中和である。
【0044】
鎖延長は一般的に粘度の上昇をもたらし、それによりポリウレタンはやっと水に分散するという状態になる。この問題を避けるために、他の2つの方法がある。a)の方法としては、プレポリマーを鎖延長剤を含む水に高剪断力下で分散させ、鎖延長剤を水相に分散粒子として存在させる。プレポリマーの粘度を低くするために、温度を上昇させるか、有機溶媒(例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ブチルジグリコール等)を添加し最終的な分散体にそれを残すかの何れか一方を行う。
【0045】
b)の方法としては、水混和性低沸点有機溶媒(例えばアセトン等)中でポリウレタン全体を合成する。得られた溶液を水に分散させ、溶媒は蒸留により除去する。この方法の有利な点は、溶媒を含まないポリウレタンが得られることであるが、a)法よりもコストが高くなる。
【0046】
本発明の塗布組成物の調製において、脂肪族ポリオキシアルキレンポリオール又は脂肪族ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとから調製されるポリウレタンの水分散体として調製されることが好ましい。
【0047】
本発明の塗布組成物に使用される架橋剤は、架橋反応を導くことが出来る反応性基を有する少なくとも1つの水混和性または水分散性化合物である。上記反応性基としてはオキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、イソシアネート基、メラミン基などが例示される。中でもオキサゾリン基またはカルボジイミド基を有するポリマーが特に好ましい。
【0048】
オキサゾリン基を含むポリマーは、a)以下の構造式(I)〜(III)に示されるオキサゾリン誘導体とb)少なくとも1つの他の共重合モノマーとの付加反応により形成される高分子である。
【0049】
【化1】

【0050】
上記の構造式(I)〜(III)において、R、R、R及びR基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基または置換フェニル基を表す。Rは重合性二重結合を有する非環状基を表す。
【0051】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が例示され、塩素および臭素が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基およびヘキシル基が例示される。アラルキル基としては、炭素数1〜5の鎖長を有するアルキル基を有している基を意味し、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基およびナフチルメチル基が例示される。置換フェニル基としては、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、メチルアミノフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、メチルエチルアミノフェニル基およびジエチルアミノフェニル基が例示される。重合性二重結合を有する非環状基としては、ビニル基およびイソプロペニル基が例示される。
【0052】
オキサゾリン誘導体としては、a)2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4メチル−2−オキサゾリン、及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンが例示される。オキサゾリン基を有するポリマーを調製するために、上記のオキサゾリン誘導体a)を単独または2種以上組合せて使用することが出来る。上記のオキサゾリン誘導体の中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが特に好ましい。
【0053】
使用される共重合モノマー(コモノマー)b)は、原則としてオキサゾリン誘導体a)と共重合し得る化合物であれば制限無く使用できる。共重合モノマーb)としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、メタクリル酸、イタコン酸、マロンさん等の不飽和カルボン酸、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等の不飽和アミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル、エテン(エチレン)、プロペン(プロピレン)等のα−オレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のα,β−不飽和化合物、およびスチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族化合物が例示される。上記の共重合モノマーb)は単独または2種以上組合せて使用することが出来る。
【0054】
オキサゾリン基を含むポリマーは、例えば、適切な水混和性有機溶媒に、オキサゾリン誘導体a)、少なくとも1つの共重合モノマーb)、及び、過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリル等のフリーラジカル開始剤を加え、その溶液を加熱することによって調製することが出来る。重合が終了した後、水を添加し、蒸留により有機溶媒を完全にまたは部分的に除去することにより、オキサゾリン基を含む水性ポリマー分散体が残り、これを直接本発明の塗布溶液の調製に使用できる。
【0055】
また、上記の代りに、重合性オキサゾリン誘導体a)(単独または複数)および共重合モノマーb)(単独または複数)を、例えば、n−ブチルリチウムによってアニオン重合して得ることも出来る。
【0056】
乾燥ポリマー中のオキサゾリン基の含有量は、通常0.5〜10mモル/g、好ましくは1.5〜8mモル/gである。乾燥ポリマーのガラス転移温度は、0〜100℃、好ましくは20〜95℃である。
【0057】
好ましいオキサゾリン基を含む水性ポリマー分散体は、日本触媒社(日本)から「Epocros(登録商標)」の商品名で入手できる。これに関連して、日本触媒社(日本)から入手できる商品名「Epocros(登録商標)WS」の水溶性溶媒不使用製品が本発明の塗布溶液用に特に好適である。
【0058】
カルボジイミド基を含むポリマーは、1分子中に少なくとも2つのカルボジイミド基を有する高分子であり、触媒の存在下、ジイソシアネートの重縮合により調製される。この製法は、従来技術に記載されており、とりわけ欧州特許公開公報第0878496号明細書に記載されている。カルボジイミド基を含むポリマーを調製する出発物質としては、芳香族、脂肪族および脂環式ジイソシアネートが挙げられ、具体的には、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート及びジシクロヘキシルジイソシアネートが例示される。カルボジイミド基を含むポリマーは、更に、溶解性や分散性を向上させるために、例えば4級アンモニウム塩、ジアルキルアミノアルコール及びヒドロキシアルキルスルホン酸などの界面活性剤、ポリアルキレンオキシド又は親水性モノマーを含んでいてもよい。
【0059】
エポキシ基を含むポリマーとしては、ビスフェノールエピクロルヒドリン系ポリマー、脂環式エポキシド重合体、ノボラック系エポキシ化合物、エポキシ−オレフィンポリマー、ポリオール−グリシジル化合物系エポキシ化合物およびエポキシシランポリマーが例示される。特に好ましくはポリエチレンテレグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル及びビスフェノールAジグリシジルエーテルが例示される。
【0060】
イソシアネート基を含むポリマーとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート、及び、上記の化合物と、3官能性ポリイソシアネート或いはイソシアヌレート又はビューレット型もしくはジヒドリック(2水酸基)又はポリヒドリック(多水酸基)ポリオールとの反応によって形成される末端イソシアネート基を有するポリマーが例示される。
【0061】
メラミンは、メチロールメラミン誘導体の反応によって調製され、メタノール、エタノール、イソプロパノール(又はこれらの混合物)などの低級アルコールを用いてメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により得られる。メチロールメラミン誘導体としては、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン及びヘキサメチロールメラミンが例示される。
【0062】
本発明の塗布組成物は、任意に有機溶媒を10重量%未満、好ましくは5重量%未満で含んでもよい。
【0063】
更に性能を改良するため、塗布組成物は、水溶液または水分散体の形状で添加される添加ポリマーを含んでいてもよい。最終的な塗布組成物中のこれらの添加ポリマーの含有量は、50重量%未満、好ましくは30重量%未満である。好ましい添加ポリマーとしては、ポリエスエステル、アクリレート、メタクリレート、ポリビニルピロリドン及びアルコキシシランの縮合物が例示される。
【0064】
塗布組成物は、任意成分として耐ブロッキング剤を含有してもよい。慣用のアンチブロッキング剤としては、無機および/または有機粒子が挙げられ、具体例としては、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、カオリン、架橋ポリスチレン又はアクリレート粒子が例示される。好ましくは無定形シリカ等の多孔質二酸化ケイ素である。
【0065】
塗布組成物は、更に、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤および/または泡調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0066】
塗布組成物は、好ましくは水、ポリウレタン及び架橋剤から成る。ここで、「から成る」とは、上記の構成要素が50重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは75重量%以上から成ることを意味する。
【0067】
塗布工程が終了したら、塗膜は塗布組成物の乾燥残分(乾燥体)から成り、ポリウレタン及び架橋剤ならびに任意成分の耐ブロッキング剤、更なる追加ポリマー及び/又は添加剤の乾燥体のみから等しく成ることが好ましい。
【0068】
特に好ましい態様において、本発明における乾燥塗膜は、ポリウレタン及びオキサゾリン基を含むポリマーの反応物の乾燥体のみから成る。塗布組成物はポリエステルフィルムの片面または両面に塗布できる。しかしながら、本発明における塗布組成物を片面に塗布し、反対面に別の塗布組成物の塗布を行ってもよい。
【0069】
本発明における塗布組成物は、延伸ポリエステルフィルムのインラインコーティングに使用できる。「インライン」とは、フィルムの長手方向および/または横方向の延伸前のフィルム製造プロセス内において塗布を行うことを意味する。
【0070】
水性塗布分散体に対するフィルムの濡れ性を向上するために、塗布の前に任意にフィルムにコロナ放電処理を施してもよい。
【0071】
塗布組成物は、スロットキャスター法またはスプレー法などの公知の適当な方法を用いて塗布出来る。特に好ましくはリバースグラビアロールコーティング法による塗布組成物の塗布であり、この方法は極めて均一に塗布を行うことが出来る。同様に、メイヤーロッド法による塗布も好ましく、この方法では、より単純な方法で塗布厚みをより大きく出来る。
【0072】
最終的なフィルムの乾燥塗膜の厚みは5〜500nm、好ましくは10〜250nmである。
【0073】
塗布組成物は、塗布組成物同士および/またはフィルム表面のポリエステルと反応でき、及び/又は、ポリエステルフィルムの乾燥中および延伸中、特に引き続いて行われる250℃まで加熱する熱処理中にポリエステルフィルム表面の構造中へ拡散できる。
【0074】
形成された塗膜は、特に二軸延伸ポリエステルフィルム上に形成された塗膜は、EVAに対して比較的高温高湿度においてでさえ耐久性のある接着性を付与する。
【0075】
驚くべきことに、少なくともポリウレタン及び架橋剤から成る本発明の上述の塗膜は、EVA系の標準的な硬化および急速硬化の両方において、長期に渡り、比較的高温高湿度においてでさえ優れた接着特性を有する。更に、驚くべきことに、特にこの塗膜のナノインデント法により測定される硬度は非常に高く、EVAに対して比較的高温高湿度において、接着性を特に良好に維持することを示す。
【0076】
白色不透明ベースフィルム:
本発明の塗布組成物が塗布されるポリエステルフィルムは、単層であっても、ベース層(B)と外層(A)から成る2層であっても、ベース層(B)と2つの外層(A’、C)から成る3層であってもよい。ポリエステルフィルムが多層構造の場合、外層(AA’、C)の厚さは0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmである。ベース層の厚さは、フィルムの総厚さから外層の厚さを差し引いて算出される。
【0077】
ポリエステルフィルムの総厚さは、通常5〜750μmの範囲、好ましくは10〜500μmの範囲である。
【0078】
本発明のフィルムは、主構成成分として熱可塑性ポリエステルから成る。そのようなポリエステルとしては、「Handbook of Thermoplastic Polyesters」、S.Fakirov編 Wiley−VCH社発行(2002年)に具体的に記載されている。具体的には、エチレングリコールとテレフタル酸とから成るポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸とから成るポリエステル(ポリエチレンナフタレート、PEN)、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサンとテレフタル酸とから成るポリエステル(ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、PCDT)等が例示される。本発明においてポリエステルとは、ホモポリエステル、共重合ポリエステル、異なるポリエステル、再生品、他の変性品などのブレンド物を意味すると理解すべきである。
【0079】
上記の特性、特にフィルムの低い透過率および所望とする白色度を達成するために、適切な粒子(顔料粒子)をポリエステルフィルムに含有させる。多層構造の場合少なくともベース層に添加し、可能であれば外層(A、A’、C)にも添加して粒子により変性する。このようなことから、適切な粒径で適切な量の二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛を使用することが好ましい。粒子は単独で使用しても、2種以上の粒子を組合せて使用してもよい。好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム及び二酸化チタンと硫酸バリウムとの混合物である。
【0080】
二酸化チタンは、ルチル型でもアナターゼ型でもどちらでもよい。二酸化チタンの平均粒径は0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmである。炭酸カルシウムの平均粒径は0.1〜2.5μm,好ましくは0.2〜2.0μmである。硫酸バリウムの平均粒径は0.3〜0.9μm,好ましくは0.4〜0.7μmである。粒子を添加することにより、フィルムは鮮明な白色を呈する。所望の白色度(>70)及び所望の低透過度(<40%)を達成するために、フィルム(多層構造の場合は少なくともベース層、可能であれば外層にも)は高い粒子含有量でなければならない。所望の低透過度を達成するための粒子濃度は、フィルムの総重量を基準として3重量%以上50重量%以下、好ましくは4重量%以上40重量%以下、更に好ましくは5重量%以上30重量%以下である。
【0081】
白色度を更に増加させるために、顔料粒子を含有するフィルム(多層構造の場合、顔料粒子を含有する層に)に光学的光沢剤(optical brightener)を任意に添加できる。好ましい光沢剤としては、Hostalux(登録商標) KS Clariant社製(ドイツ)、Eastobright(登録商標)OB−1 Eastman社製(米国)等が例示される。
【0082】
本発明のフィルムは、更に、耐ブロッキング剤としての粒子を1つ以上の層に含有させてもよい。代表的な耐ブロッキング剤としては、無機および/または有機粒子が挙げられ、具体的には、二酸化ケイ素(沈殿法シリカ、ヒュームドシリカ等)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン(水素化、焼結型)、酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、フッ化リチウム、ジカルボン酸のカルシウム、バリウム、亜鉛またはマンガン塩、架橋ポリスチレン粒子や架橋メチルメタクリレート粒子などの架橋ポリマー粒子などが例示される。
【0083】
更に、耐ブロッキング剤として、2種以上の粒子の混合物を選択することも出来、また、同じ化学組成で粒径が異なる粒子の混合物であってもよい。
【0084】
フィルムの層に耐ブロッキング剤として粒子を存在させる場合、粒子を含有させている層の総重量を基準とした粒子の総濃度は20重量%未満、好ましくは15重量%未満、更に好ましくは5重量%未満である。粒子の平均粒径は0.01〜15μm、好ましくは0.03〜10μm、更に好ましくは0.05〜5μmである。
【0085】
本発明のフィルムは、更に、UV安定剤、難燃剤、加水分解安定剤、酸化防止剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0086】
UV安定剤、すなわち光安定剤としてのUV吸収剤は、光誘導型ポリマー分解の物理的および化学的プロセスを阻害することが出来る化合物であり、具体的には、2−ヒドロキシベンゾフェンノン類、2−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、有機ニッケル化合物、サリチル酸エステル類、桂皮酸エステル誘導体、レゾルシノールモノベンゾエート類、シュウ酸アニリド、ヒドロキシ安息香酸エステル類、ベンゾオキサジノン類、立体的ヒンダードアミ類およびトリアジン類が例示され、好ましくは2−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、ベンゾオキサジノン類およびトリアジン類である。特に好ましい実施態様として、本発明のフィルムが、下記化1の構造式を有する2−(4,6−ジフェニル[1,3,5]トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシフェノールを0.1〜0.5重量%、又は下記化2の構造式を有する2,2’−メチレンビス[6−ベンゾ−トリアゾール−2−イル]−4−(1,1,2,2−テトラメチルプロピル)フェノールを0.1〜0.5重量%、或いは下記化3の構造式を有する2,2’−(1,4−フェニレン)ビス([3,1]ベンゾキサジン−4−オン)を0.1〜0.5重量%含有する。
【0087】
【化2】

【0088】
【化3】

【0089】
【化4】

【0090】
他の実施態様として、これらのUV安定剤の混合物または少なくとも1つのこれらのUV安定剤と他の安定剤との混合物を使用することも出来、フィルムの重量を基準としたその総濃度は、好ましくは0.1〜5.0重量%、更に好ましくは0.5〜3.0重量%である。
【0091】
他の実施態様として、本発明のフィルムは難燃性を付与してもよい。難燃性とは、UL94 VTM耐火試験における評価がVTM−2段階以上を達成できるフィルムであることを意味する。
【0092】
従って、フィルムは、1つ以上の層に、難燃剤を含む層の総重量を基準として、難燃剤を0.2〜30重量%の濃度で、好ましくは1.0〜20重量%の濃度で含有するのが好ましい。好ましい難燃剤としては、例えば、カルボキシホスフィン酸およびその無水物、ジメチルメタンフォスフォネート等の有機リン系化合物が挙げられる。これらにおいて、非常に好ましい難燃剤は、リン化合物がポリエスエステルに化学的に結合しているもので、例えば、下記構造式を有するビス(2−ヒドロキシエチル)[(6−オキシド−6H−ジベンズ[c,e][1,2]オキサフォスフォリン−6−イル)メチル]ブタンジカルボキシレートが挙げられる。
【0093】
【化5】

【0094】
難燃剤は一般に加水分解を受けやすいため、加水分解安定剤を更に使用することが好ましい。これにおける好ましい加水分解安定剤は、Stabaxol(登録商標)P( Rheinchemie社製、ドイツ)等の重合性カルボジイミドが例示される。
【0095】
フィルムの所望の白色度および低透過率を達成するための粒子(顔料粒子)、耐ブロッキング剤および添加剤は、溶融前のフィルム製造のためのポリエステルに適切に添加される。この場合、グリコール分散体としてポリエステルの合成中に添加するか、又はフィルムの製造における押出過程においてマスターバッチを介して添加するのが効果的ある。
【0096】
更に、多層構造を有するポリエステルフィルムは、シール性や剥離性を有していてもよい。これは、低いガラス転移温度を有するポリエステル又は他のシール性ポリマーを少なくとも一方の外層に使用することにより達成できる。
【0097】
ポリエステルフィルムの製造方法は、例えば、「Handbook of Thermoplastic Polyesters」、S.Fakirov編、Wiley−VCH社(2002)又は「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、John Wiley & Sons社の「Polyesters Films」章に記載されている。フィルムを製造する際の好ましい押出プロセスは、スロットダイを介して、任意に添加剤を有した溶融ポリマー材料を押出し、冷却ロール上で急冷して実質的に非晶のフィルム前駆体を製造する。引続き、得られたフィルム前駆体を再加熱し、機械方向(MD)又は横方向(TD)の少なくとも一方向、好ましくは長手方向(機械方向)および横方向に延伸(配向)する。延伸プロセスにおけるフィルムの温度は、通常、使用するポリエステルのガラス転移温度Tgよりも10〜60℃上の温度であり、長手方向の延伸比は、通常2.0〜6.0、好ましくは3.0〜4.5であり、横方向の延伸比は、通常2.0〜5.0、好ましくは3.0〜4.5であり、第2の長手方向の延伸を行う場合、その延伸比は1.1〜5.0である。
【0098】
長手方向の延伸は、横方向の延伸と同時に行ってもよく(同時延伸法)、如何なる考えられる連続(順番)によって行われてもよい。延伸後、オーブン温度180〜260℃、好ましくは220〜250℃でフィルムの熱固定を行う。続いてフィルムは冷却され、巻取られる。
【0099】
本発明におけるベースフィルムにおいて、ソーラーモジュールのバックカバーとして使用した際に、長期に渡ってフィルムの十分な機械的安定性を保持するため、製造後のフィルムのSV値は650以上、好ましくは700以上である。フィルムのSVは、他の方法において、すなわち、十分高いSVを有する適切なポリエステル原料の選択およびSV低下を減少させるような穏やかな製造条件(例えば、押出プロセスの際の低剪断応力)を選択することによって影響を受ける。
【0100】
本発明の塗膜と本発明の白色不透明ベースフィルムとを組合せることにより、それぞれ単独で使用した場合や他の材料と組合せた積層体と比較して、ソーラーモジュールのバックカバーとして極めて好適であることは驚くべきことである。
【0101】
以下の表1に、本発明の塗布ポリエステルフィルムの最も重要な特性について再度纏めて示す。
【0102】
【表1】

【実施例】
【0103】
本発明の塗布白色フィルムは以下の試験法により特性付けた。
【0104】
EVAに対する塗膜の接着性:
塗布ポリエステルフィルムを切り、長さ300mm、幅25mmの細長い切片を2つ用意した。長さ50mm、幅25mmのEVAフィルム切片(厚さ0.5mm)を上記の2つの塗布ポリエステルフィルム切片の間に、それぞれの塗布面がEVAフィルムに接する向きで挟んだ。ポリエステルフィルムとEVAは、続いてヒートシール装置(TP−701−B、(テスター)産業社製、日本)によって積層した。使用したEVAの種類によって以下のシール条件を採用した。
【0105】
【表2】

【0106】
EVAに対する接着性を評価するため、先ず、25mm幅のポリエステルフィルム/EVA積層体を長さ30cm、幅15mmの切片に切断した。この幅15mmのポリエステルフィルム切片の未積層端部分を引張試験機(EZ Graph(登録商標)、島津製作所社製、日本)に固定した。続いて、ポリエステルフィルム/EVA積層体を180°の角度で100mm/分の速度で剥離するのに必要な力を測定した。力/距離線図における平均応力によって評価した。
【0107】
熱および湿気に対する塗膜の安定性:
高温高湿下でのPET/EVA/PET積層体の長期安定性を評価するため、25mm幅の試験試料を上記の方法で作成し、IEC61215の規格に基づき、温度85℃、相対湿度85%に調節されたキャビネット(Hiflex(登録商標)FX210C、楠本化成社エタック事業部製、日本)中で1000時間保存した。
【0108】
続いて、上述のように、試料積層体を15mm幅切片に切り、平均剥離力を測定した。上記の温度と湿度が調節されたキャビネットでの処理の前後における平均剥離力の比Rは以下の式で評価される。
【0109】
R=(温度と湿度が調節されたキャビネットで1000時間処理後の平均剥離力)/(温度と湿度が調節されたキャビネットでの処理前の平均剥離力)[%]
【0110】
R値が50%を超える場合、塗膜の熱および湿度に対する安定性が優れているといえる。
【0111】
ソーラーモジュールのための適正試験:
25cm×25cmのガラスプレート(Krystal Klear(登録商標)、厚さ3mm、AFG社製、米国)をイソプロパノールによって洗浄する。次いで、同じ大きさのEVAフィルムをガラスプレート上に配置し、更に試験用PETフィルムを塗膜面がEVAフィルム面に接するように配置する。得られた複合体を、先ず、脱気可能な加熱キャビネットに入れ、150℃の温度で100mbarの減圧下で約2分間加熱する。更に5分間加熱後、複合体を取り出し、ホットプレス(10t、Gonno社製、日本)で積層した。使用したEVAにより、以下の条件を採用した。
【0112】
【表3】

【0113】
ガラス/EVA/PET積層体の耐候性は、Weather−O−meter(C165、Atlas Material Testing Technology社製、米国)を使用し、ISO 4892に準じて以下の条件で測定した。
【0114】
・照射時間:20000時間
・照射光強度:0.35W/cm、340nm(キセノンランプ、ホウ化ケイ素から成るフィルター使用)
・照射サイクル:102分間乾燥状態、18分間脱イオン水をスプレー状態
・ブラックパネル温度:63℃
【0115】
この過程でポリエステルフィルムは、キセノンランプと反対側の積層体面にある。積層体は、耐候性テストが終了した後の積層剥離について、目視によって評価された。
【0116】
塗膜硬度:
塗膜の硬度はナノインデント法により測定した。この方法は、基材にかかわりなく塗膜の硬度を測定できる方法である。「TS70 TriboScope(登録商標)」ナノインデント装置(Hysitron社製、米国)を、原子間力顕微鏡(SPM−9500J2、島津製作所社製、日本)と連結した「Berkovich」チップと共に使用した。測定は室温、50%相対湿度の帯湿空気中で行われた。チップの浸入深さは10nmに調整した。
【0117】
フィルムのブロッキング性:
片面に塗膜を有する15cm×14cmのフィルム試料2つを、温度と湿度が40℃/80%相対湿度に調節されたキャビネットに2時間保存した。次いで、2つの試料を、塗膜面と塗膜を有さない面とが接するように重ね、上記の環境下、キャビネット内で10kgの重量の圧力(48g/cmに対応)を20時間負荷した。試料は、引張試験機(Autograph AG−1島津製作所社製、日本)を使用し、ピンと張った0.1mm厚のスチールワイヤーを使用して500mm/分の速度で引張り、重ねられた2つのフィルム試料を互いに分離した。必要とされる平均力(g)を力−距離線図より決定した。平均力が低いほど、塗布フィルムの耐ブロッキング性が良好である(平均力が50g未満が良好である)。
【0118】
塗膜性状:
塗膜の性状は目視により評価した。
【0119】
黄変指数:
「Lamda 12」型分光計(標準照光器D65、10°標準観測器、Perkin Elmer社製、米国)を使用し、ASTM−D 1925−70に準じて測定した。測定された色値座標X、Y、Zを使用し、下記式に基づいて黄変指数YIを算出した。
【0120】
YID=[100・(1.28・X−1.06・Z)]/Y
【0121】
透明度(光透過率):
光透明は、ASTM−D1003に準じ測定した。
【0122】
白色度:
白色度はBergerの方法により、「ELREPHO(登録商標)」(Zeiss社製(ドイツ))電気的反射光度計(標準照度C(2°通常観測))を使用して測定した。白色度は、W=RY+3RZ−3RXの式に基づき算出した。
【0123】
SV(標準粘度):
標準粘度SV(DCA)はDIN53726に従い、ジクロル酢酸中25℃で測定した。固有粘度(IV)は、標準粘度と以下の式を使用して算出した。
【0124】
IV=[η]=6.907×10−4SV(DCA)+0.063096[dl/g]
【0125】
収縮率:
フィルムの収縮率はDIN 40634に準じ、150℃で、滞留時間15分として測定した。
【0126】
表面粗度R
表面粗度Rの算術平均は、DIN4762に準じて測定した(カットオフ値:0.25mm)。
【0127】
グロス値:
グロス値はDIN 67530に準じて測定した。反射率を、フィルム表面の光学的特性として測定した。ASTM−D 523−78及びISO 2813を基準とし、入射角を20°とした。所定の入射角で試料の平坦な表面に光線を照射すると、反射および/または散乱が起こる。光電検知器に当った光が電気的な比率変数として表示される。得られた無次元値は入射角と共に表示される。
【0128】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。表2に、使用した塗布層の原料を纏めて示す。表3には実施例と比較例の一覧を示す。フィルム製造において、以下のポリエチレンテレフタレート原料を使用した。
【0129】
M80(Invista社製、ドイツ)、SV:810、硫酸バリウムを18重量%含有、硫酸バリウムは「Blanc fixe(登録商標)XR−HX」、Sachtleben Chemie社製、ドイツ。
【0130】
M67(Invista社製、ドイツ)、SV:810、二酸化チタンを7重量%含有、二酸化チタンは「Hombitаn(登録商標)LW−S−U」、アナターゼ多形Sachtleben Chemie社製、ドイツ。
【0131】
塗布フィルムの試料の特性付けの結果を表4〜6に示す。
【0132】
ポリエステル原料M80を使用し、スロットダイを介してその溶融体を20℃の冷却ロール上に押出し、固化させて非晶フィルム前駆体を得た。得られた非晶フィルム前駆体を長手方向に95℃の温度で3.6倍延伸した。長手方向延伸に続いて、メイヤーバーを用いて4.7μmの膜厚で水性塗布分散体を塗布した。水性塗布分散体は固形分含有量が5重量%であり、固形分は50重量%のNeorez(登録商標)R−600と50重量%のEpocros(登録商標)WS−700から成っていた(乾燥塗膜重量を基準)。長手方向に延伸され塗布されたフィルムは温度100℃で乾燥され、横方向に4.3倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。二軸延伸フィルムは230℃で熱固定した。最終的なフィルムの厚さは250μmであった。塗布層の乾燥厚みは、塗布組成物の固形分含有量、塗布厚み(塗布液状態での)及び横方向の延伸ファクターから計算し、55nmであった。
【0133】
得られた塗布フィルムは上記の評価方法により特性付けされた。得られた塗布フィルムは、低光線透過度、高白色度、高グロス、湿度と熱の影響に曝されても非常に良好なEVAヘの接着性を有していた。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下においても剥離することなく耐えることが出来た。
【0134】
実施例2:
溶融ポリエステルの原料としてM67を使用した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを製造した。フィルムは実施例1と同様に塗布を行い、特性付けを行った。得られた塗布フィルムは、低光線透過度、高白色度、高グロス、湿度と熱の影響に曝されても非常に良好なEVAヘの接着性を有していた。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下においても剥離することなく耐えることが出来た。
【0135】
実施例3:
溶融ポリエステルの原料として70重量%のM67と30重量%のM80を使用した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを製造した。フィルムは実施例1と同様に塗布を行い、特性付けを行った。得られた塗布フィルムは、低光線透過度、高白色度、高グロス、湿度と熱の影響に曝されても非常に良好なEVAヘの接着性を有していた。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下においても剥離することなく耐えることが出来た。
【0136】
実施例4:
実施例1で製造されたフィルムを280℃で溶融し、ストランドに成形し、水中で急冷し、ペレットに加工した。得られたペレットをベースフィルムを製造するための原料ポリエステルとして50重量%添加した。フィルムは実施例1と同様に塗布を行い、特性付けを行った。得られた塗布フィルムは、実施例1におけるフィルムと類似の性質を示した。フィルムの黄変度は再生品を使用しているにもかかわらず、実施例1のフィルムと比較してそれほど上昇しなかった。
【0137】
実施例6〜17:
表3に示す組成の塗布組成物分散体を5重量を使用して、実施例1と類似の方法でフィルムを製造し、塗布を行った。続いて、得られた塗布フィルムを上記の方法で特性付けした。同様に、得られた塗布フィルムは、低光線透過度、高白色度、高グロス、湿度と熱の影響に曝されても非常に良好なEVAヘの接着性を有していた。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下においても剥離することなく耐えることが出来た。
【0138】
比較例1:
塗布を行わなかった以外は実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを製造した。得られた未塗布フィルムを上記の方法で特性付けした。85℃で85%の空気の相対湿度に1000時間保存した後のEVAヘの接着性は不十分であった。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下において剥離した。
【0139】
比較例2:
塗布を行わなかった以外は実施例2と同様の方法でポリエステルフィルムを製造した。得られた未塗布フィルムを上記の方法で特性付けした。85℃で85%の空気の相対湿度に1000時間保存した後のEVAヘの接着性は不十分であった。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下において剥離した。
【0140】
比較例3:
比較例1で製造されたフィルムを280℃で溶融し、ストランドに成形し、水中で急冷し、ペレットに加工した。得られたペレットをベースフィルムを製造するための原料ポリエステルとして50重量%添加した。得られた未塗布フィルムを上記の方法で特性付けした。85℃で85%の空気の相対湿度に1000時間保存した後のEVAヘの接着性は不十分であった。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下において剥離した。
【0141】
比較例4〜7:
表3に示す組成の塗布組成物分散体を5重量を使用して、実施例1と類似の方法でフィルムを製造し、塗布を行った。続いて、得られた塗布フィルムを上記の方法で特性付けした。85℃で85%の空気の相対湿度に1000時間保存した後のEVAヘの接着性は不十分であった。フィルムをEVA/ガラスに積層した積層体は、20000時間の人工天候下において剥離した。
【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
【表9】

【0148】
【表10】

【0149】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に塗布層を有し、塗布層が少なくとも1種のポリウレタンと少なくとも1種の架橋剤とから成る白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項2】
(1)光線透過率が40%未満、好ましくは35%未満、更に好ましくは30%未満;(2)Berger白色度が70を超える、好ましくは75を超える、更に好ましくは80を超える;(3)塗布面の20°で測定したグロスが5を超える、好ましくは10を超える、更に好ましくは20を超える;(4)150℃で15分以内の長手方向および横方向の収縮率が2.5%未満、好ましくは2.0%未満、更に好ましくは1.5%未満;(5)請求項1に記載のフィルムとEVAフィルムとから成る積層体(塗布面がEVAに接する)を180°の角度で剥離するために必要な応力として表される塗布層面のEVAに対する接着力が50N/15mmを超え、好ましくは70N/15mmを超え;(6)請求項1に記載のフィルムとEVAフィルムとから成る積層体(塗布面がEVAに接する)を85℃で85%の空気の相対湿度に1000時間保存した後に剥離するために必要な応力を保存開始時のそれと比較して表される高温多湿下での塗膜の長期安定性が、50%以上である;(7)ナノインデント法による塗膜の機械的硬度が0.2GPaを超え、好ましくは0.25GPaを超え、更に好ましくは0.3GPaを超え;(8)請求項1に記載のフィルムとEVAフィルムと(塗布面がEVAに接する)ガラスとから成る積層体が、ISO4892に従い、キセノン耐候試験装置を使用した20000時間の促進耐候試験において層間剥離に絶えられる;(9)フィルム中のポリエステルのSV値が700を超え、好ましくは650を超え;(10)フィルムの塗布面の表面粗度Rが20nmを超え、好ましくは25nmを超え、更に好ましくは30nmを超え;(11)黄変度が80未満、好ましくは70未満である、(1)〜(11)の特性を1つ以上満足する請求項1に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリウレタンが、少なくとも1つのポリヒドロキシ化合物と少なくとも1つのポリイソシアネートとの反応によって得られる請求項1又は2に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項4】
ポリヒドロキシ化合物がポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオキシアルキレンポリオールから選択される請求項3に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項5】
架橋剤が、架橋反応を行う反応性基を有する水混和性または水分散性化合物である請求項1に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項6】
架橋剤が、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、イソシアネート基またはメラミン基の少なくとも1つを有するポリマーである請求項5に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項7】
架橋剤が、オキサゾリン基またはカルボジイミド基を含むポリマーである請求項6に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項8】
オキサゾリン基を含むポリマーが、a)以下の構造式(I)〜(III)に示されるオキサゾリン誘導体とb)少なくとも1つの他の共重合モノマーとの付加反応により形成される高分子である請求項7に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【化1】

上記の構造式(I)〜(III)において、R、R、R及びR基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基または置換フェニル基を表し、Rは重合性二重結合を有する非環状基を表す。
【請求項9】
共重合モノマーが、メタクリル酸エステル類、不飽和カルボン酸類、不飽和ニトリル類、不飽和アミド類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、α−オレフィン類、ハロゲン化α,β−不飽和化合物類およびα,β−不飽和芳香族化合物類から選択される1種以上である請求項8に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項10】
塗布層が、更に、ポリエステル類、アクリレート類、メタクリレート類、ポリビニルピロリドンおよびアルコキシシランの縮合物から選択される1種以上のポリマーを含む請求項1に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項11】
塗布層が、更に、耐ブロッキング剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤および泡調整剤から選択される1種以上を含む請求項1に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項12】
ポリエステルフィルム上の乾燥塗布層の厚さが5〜500nm、好ましくは10〜250nmである請求項1に記載の白色塗布ポリエステルフィルム。
【請求項13】
請求項1に記載の白色塗布ポリエステルフィルムの製造方法であって、当該製造方法は、スロットダイを介して冷却ロール上に白色粒子および/または空胞発生粒子を含有する1つ以上のポリエステル溶融体を押出し又は共押出しする工程と、形成されたフィルム前駆体を引取る工程と、フィルム前駆体を同時または逐次二軸延伸してフィルムを得る工程と、得られたフィルムを熱固定し巻取る工程とから成り、更に塗布分散体または塗布組成物をインライン法でフィルムに塗布する工程を有し、当該塗布工程は同時二軸延伸前か逐次二軸延伸における横方向延伸の前に行われ、塗布分散体または塗布組成物が少なくとも1種のポリウレタンと少なくとも1種の架橋剤とから成ることを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のフィルムのソーラーモジュールのバックカバー又はソーラーモジュールのバックカバー用積層体としての使用。
【請求項15】
請求項1に記載のフィルムから成るソーラーモジュール。

【図1】
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【公表番号】特表2012−518691(P2012−518691A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550461(P2011−550461)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000912
【国際公開番号】WO2010/094443
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【出願人】(596099734)ミツビシ ポリエステル フィルム ジーエムビーエイチ (29)
【Fターム(参考)】