説明

白色導電性プライマー塗料組成物及び複層塗膜形成方法

本発明は、(a)塩素含有率が10〜40重量%である塩素化ポリオレフィン樹脂と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の改質樹脂との合計100重量部、(b)架橋剤5〜50重量部、並びに(c)白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有する白色導電性粉末10〜200重量部を含有することを特徴とする白色導電性プライマー塗料組成物、並びにそれを用いた複層塗膜形成方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、白色導電性プライマー塗料組成物及び複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
一般に、自動車用バンパー等のプラスチック基材の塗装は、エアースプレー、エアレススプレーなどの吹き付け塗装によって行われている。しかし、近年は、塗着効率に優れる故に環境への有害物の排出が少ない静電塗装が広く採用されるようになってきた。
プラスチック基材は一般に電気抵抗値が高いため(通常1012〜1016Ω/□程度)、静電塗装によってプラスチック表面に塗料を直接塗装することは極めて困難である。そのため、通常は、プラスチック基材自体又はその表面に、表面電気抵抗値が10Ω/□未満となるように導電性を付与した後、静電塗装が行われている。
例えば、プラスチック基材に塗料を静電塗装するにあたり、該基材に導電性を付与するべく、事前に導電性プライマー塗料が塗装される。この導電性プライマー塗料としては、通常、樹脂成分と導電性フィラーを含有する塗料が使用されている。
従来、上記導電性フィラーとしては、導電カーボン、金属、導電性金属酸化物などの粒子が利用されている。導電性フィラーの粒子形状は、通常、粉末状、針状、繊維状、球状等である。
しかし、上記導電性フィラーとして、カーボン粉末又はカーボン繊維を塗料中に配合する場合、比較的少量で導電効果が得られるものの、塗膜の白色度即ち明度が低下するためその上層塗膜の明度等の色調に影響を及ぼすという問題がある。
また、金属粉末は導電性は高いものの、塗膜中で導電経路を形成するためには粒子同士が接触する必要があることから、充填量が大きなものとなり、塗膜の白色度や塗料の安定性を損なったりする。
特開2001−311047号は、特定のスルホニウム塩化合物を含有する導電性塗料組成物を提案している。この組成物は、プラスチック基材に静電塗装適性を付与することができ、多層塗膜を形成する際に上塗り塗膜の色調への影響が少ないとされている。
しかし、この塗料組成物は、スルホニウム塩化合物が塗膜の焼付け時や塗装されたプラスチック基材のリサイクル時に環境へ悪影響を与え、又塗膜の白色度が十分とは言えなかった。
また、特開2002−179948号は、白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有する白色導電性粉末を樹脂に配合してなる導電性樹脂組成物を提案している。
しかし、上記公報には、この導電性樹脂組成物の具体的な成分組成についての記載はなく、又プライマー塗料組成物についての言及も無い。従って、該白色導電性粉末を、いかなる成分組成で用いれば、プラスチック基材に、明度が高く、且つ上塗り塗料を静電塗装するのに十分な導電性を有する塗膜を形成できる導電性プライマー塗料組成物が得られるのかは、知り得ない。
【発明の開示】
本発明の目的は、プラスチック基材に、十分な導電性を有し、しかも高明度の塗膜を形成できる白色導電性プライマー塗料組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記プライマー塗料組成物を用いて、プラスチック基材上に、複層塗膜を形成する方法を提供することにある。
本発明者は、プラスチック基材に十分な導電性を有し、且つ高明度の塗膜を形成できる白色導電性プライマー塗料組成物を開発すべく、鋭意研究した。
その結果、導電性フィラーとして、白色無機顔料粒子の表面にタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有する白色導電性粉末を用い、これを特定の塩素化ポリオレフィン樹脂、特定の改質樹脂及び架橋剤に配合したプライマー塗料組成物によれば、プラスチック基材に、十分な導電性を付与できること、従ってその塗膜上に、上塗り塗料組成物を静電塗装できること、塗膜が高明度であること等を見出した。本発明は、かかる新知見に基づいて、完成されたものである。
本発明は、以下の白色導電性プライマー塗料組成物及びそれを用いた複層塗膜形成方法を提供するものである。
1.(a)塩素含有率が10〜40重量%である塩素化ポリオレフィン樹脂と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の改質樹脂との合計100重量部、
(b)架橋剤5〜50重量部、並びに
(c)白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有する白色導電性粉末10〜200重量部を含有することを特徴とする白色導電性プライマー塗料組成物。
2.(a)成分における、塩素化ポリオレフィン樹脂と、改質樹脂との混合割合が、両者の合計に基づいて、前者が10〜90重量%及び後者が90〜10重量%である上記項1に記載のプライマー塗料組成物。
3.白色導電性粉末(c)が、白色無機顔料粒子表面に二酸化スズ層を有し、その上にタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有するものである上記項1に記載のプライマー塗料組成物。
4.白色導電性粉末(c)のタングステン元素を含む二酸化スズの被覆量が、白色無機顔料に対して、二酸化スズとして3〜150重量%である上記項1に記載のプライマー塗料組成物。
5.白色導電性粉末(c)のタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層のタングステン含有量が、該被複層の二酸化スズに対して0.1〜20重量%である上記項4に記載のプライマー塗料組成物。
6.さらに、(d)白色顔料200重量部以下を含有する上記項1に記載のプライマー塗料組成物。
7.プラスチック基材に塗装し、加熱硬化した塗膜が、JIS Z 8729に規定されるL表色系に基づく明度(L値)80以上の塗膜である上記項1に記載のプライマー塗料組成物。
8.プラスチック基材に塗装した未硬化又は硬化塗膜の表面電気抵抗値が、10Ω/□未満である上記項1に記載のプライマー塗料組成物。
9.水性塗料組成物である上記項1に記載のプライマー塗料組成物。
10.(1)プラスチック基材に、上記項1に記載の白色導電性プライマー塗料組成物を塗装する工程、
(2)該プライマー塗料組成物の未硬化塗膜上に、着色ベース塗料組成物を静電塗装する工程、
(3)該ベース塗料組成物の未硬化塗膜上に、クリヤ塗料組成物を静電塗装する工程、次いで
(4)上記プライマー塗料組成物、着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる3層塗膜を加熱硬化する工程、
を含む3コート1ベークによる複層塗膜形成方法。
11.(1)プラスチック基材に、上記項1に記載の白色導電性プライマー塗料組成物を塗装し、加熱硬化する工程、
(2)該プライマー塗料組成物の硬化塗膜上に、着色ベース塗料組成物を静電塗装する工程、
(3)該ベース塗料組成物の未硬化塗膜上に、クリヤ塗料組成物を静電塗装する工程、次いで
(4)上記着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる2層塗膜を加熱硬化する工程、
を含む3コート2ベークによる複層塗膜形成方法。
白色導電性プライマー塗料組成物
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物は、(a)塩素含有率が10〜40重量%である塩素化ポリオレフィン樹脂と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の改質樹脂との混合樹脂、(b)架橋剤、並びに(c)白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有する白色導電性粉末を、それぞれ特定量含有する水性塗料又は有機溶剤系塗料である。
塩素化ポリオレフィン樹脂及び改質樹脂(a)
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物の樹脂成分としては、塩素化ポリオレフィン樹脂と特定の改質樹脂とを併用した混合樹脂を用いる。即ち、該樹脂成分としては、塗膜の付着性の向上の観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂を用い、これに塗膜の柔軟性、剛直性等を調整したり、造膜性を改良したりするための改質樹脂を併用する。
塩素化ポリオレフィン樹脂
塩素化ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィンの塩素化物であって、基体となるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルブテン、イソプレン等から選ばれる少なくとも1種のオレフィン類のラジカル単独重合体又は共重合体、及び該オレフィン類と酢酸ビニル、ブタジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどとのラジカル共重合体が挙げられる。塩素化ポリオレフィンは、一般に、30,000〜200,000程度、特に50,000〜150,000程度の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
また、塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は10〜40重量%程度の範囲内である。塩素含有率がこの範囲内であれば、溶剤への溶解性が低下しないのでスプレー塗装時の微粒化が十分であり、又塗膜の耐溶剤性が低下することもない。塩素含有率は、好ましくは、12〜35重量%程度の範囲内である。
塩素化ポリオレフィン樹脂としては、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−プロピレン共重合体、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが好ましい。また、塩素化ポリオレフィンに重合性モノマーをグラフト重合させたものも使用することができる。
上記グラフト重合させる重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとモノカルボン酸との付加物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。これらの重合性モノマーの使用量は、ゲル化を起こさない範囲であれば、特に制限されないが、通常、塩素化ポリオレフィンに対して10〜80重量%程度であるのが好ましく、30〜60重量%程度であるのがより好ましい。
また、本発明プライマー塗料組成物が水性塗料である場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂に水分散性を付与するために、塩素化ポリオレフィンに、重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物のような親水性モノマーの少なくとも1種を既知の方法によりグラフト重合させることもできる。
重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物は、1分子中に1個の重合性不飽和結合と2個以上のカルボキシル基、又はその無水基を有する化合物であり、例えば、マレイン酸及びその無水物、イタコン酸及びその無水物、シトラコン酸及びその無水物などが挙げられる。これらの親水性モノマーの使用量は、塩素化ポリオレフィンに対して1〜60重量%程度であるのが好ましく、1.5〜40重量%程度であるのがより好ましい。
塩素化ポリオレフィン樹脂への上記モノマーのグラフト重合は、それ自体既知の方法により行うことができる。重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物を上記使用量で用いて得られる変性塩素化ポリオレフィンは、通常、ケン化価が10〜60mgKOH/g程度、特に20〜50mgKOH/g程度の範囲内となる。
上記の如くして重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物がグラフト重合された塩素化ポリオレフィン樹脂は、水溶化又は水分散化のために、その分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミン化合物で中和することが好ましい。
アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジメチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミンなどの2級アミンなどが挙げられる。水溶化又は水分散化のために、これらのアミン化合物と共に界面活性剤を併用することも可能である。
改質樹脂
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物の樹脂成分として、塩素化ポリオレフィン樹脂に、塗膜の柔軟性、剛直性等を調整したり、造膜性を改良したりするための改質樹脂を併用する。かかる改質樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を使用する。
塩素化ポリオレフィン樹脂と、上記改質樹脂との混合割合は、両者の合計に基づいて、前者が10〜90重量%程度及び後者が90〜10重量%程度であるのが、塗膜の付着性と改質効果のバランスの点から好ましい。また、前者が20〜70重量%程度及び後者が80〜30重量%程度であるのがより好ましい。
上記改質樹脂であるアクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。また、本発明プライマー塗料が水性塗料である場合には、水への溶解性又は分散性、架橋性等のために、該アクリル樹脂が水酸基と共にカルボキシル基を有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体及び必要に応じてその他の単量体を、既知の重合方法、例えば溶液重合法等により、重合することにより得ることができる。
水酸基含有単量体は、水酸基及び重合性不飽和基を有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜10のジオールとのモノエステル化物等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メチ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メチ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のモノアルコールとのモノエステル化物等を挙げることができる。
その他の単量体としては、水酸基含有単量体及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体以外の、重合性不飽和結合を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基価が10〜100mgKOH/g程度、好ましくは50〜90mgKOH/g程度であり、酸価が10〜100mgKOH/g程度、好ましくは30〜60mgKOH/g程度であり、又数平均分子量が2,000〜100,000程度、好ましくは3,000〜50,000程度であるのが適当である。
改質樹脂であるポリエステル樹脂は、通常、多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応によって得ることができる。多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物(無水物を含む)であり、又多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、それぞれ通常のものを使用することができる。さらに、一塩基酸、高級脂肪酸、油成分などで変性することもできる。
ポリエステル樹脂は水酸基を有することができ、その導入は、2価アルコールと共に3価以上のアルコールを併用することによって行うことができる。また、ポリエステル樹脂は、水酸基と共にカルボキシル基を併有していてもよく、一般に、1,000〜100,000程度、好ましくは1,500〜70,000程度の範囲内の重量平均分子量を有していることが適当である。
改質樹脂であるポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、及び1分子中に1個の活性水素を有する化合物を反応させて得られるものが好ましい。該ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、一般に、400〜10,000程度、好ましくは1,000〜4,000程度の範囲内であることが適当である。
上記ポリヒドロキシ化合物としては、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有し、数平均分子量が50〜8,000程度、特に50〜6,000程度の範囲内にあり、且つ水酸基当量が25〜4,000程度、特に25〜3,000程度の範囲内にあるものが、好ましい。該化合物としては、例えば、多価アルコール、ポリウレタン樹脂の製造に通常用いられる種々のポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール、及びこれらの混合物などが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上、好ましくは2個又は3個有する化合物である。該化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物等のポリウレタン樹脂の製造に通常用いられるものを、使用できる。
1分子中に1個の活性水素を有する化合物は、上記ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のブロッキングのために使用されるものであり、例えば、メタノール、エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の1価アルコール;酢酸、プロピオン酸等の1価のカルボン酸;エチルメルカプタン等の1価チオール;ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン等の第1級アミン;ジエチルアミン等の第2級アミン;メチルエチルケトキシム等のオキシム等が挙げられる。
改質樹脂であるポリウレタン樹脂としては、本発明プライマー塗料が水性塗料である場合には、水に溶解又は分散し得る親水性ポリウレタン樹脂が好ましい。
親水性ポリウレタン樹脂は、例えば、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、数平均分子量が500〜5,000程度のジオール、低分子量ポリヒドロキシル化合物及びジメチロールアルカン酸をワンショット又は多段法により反応させて得られるウレタンプレポリマーを中和後又は中和しながら伸長、乳化することにより得ることができ、特に、製造工程で使用される有機溶剤の一部又は全部を留去してなる平均粒子径が0.001〜1μm程度の自己乳化型ウレタン樹脂の水分散体が好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、「タケラックW610」(武田薬品工業(株)製、商品名)、「ネオレッツR960」(ゼネカレジン(株)製、商品名)、「サンプレンUX−5100A」(三洋化成工業(株)製、商品名)などを使用することもできる。
架橋剤(b)
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物は、耐水性などの塗膜性能を向上させるために、上記樹脂成分に架橋剤を配合して、熱硬化性塗料として使用する。
かかる架橋剤としては、未反応のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂、オキサゾリン化合物等を挙げることができる。
未反応のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)などの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添MDIなどの脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネート化合物を不揮発性化し、毒性を低くした形態の化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレット体、ウレトジオン体、イソシアヌレート体又はアダクト体;比較的低分子のウレタンプレポリマー;などのポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
本発明プライマー塗料組成物が水性塗料である場合には、ポリイソシアネート化合物を親水化して用いることが好ましい。ポリイソシアネート化合物の親水性化は、例えば、当該化合物にカルボキシル基、スルホン酸基、第三級アミノ基などの親水性基を導入し、中和剤、例えば、ジメチロールプロピオン酸等のヒドロキシカルボン酸、アンモニア、第三アミンなどで中和することによって、行うことができる。また、例えば、ポリイソシアネート化合物に、界面活性剤を混合乳化させて、いわゆる自己乳化型のポリイソシアネート化合物として使用することもできる。
親水性のポリイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、「バイヒジュール3100」(商品名、住化バイエルウレタン(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の親水化物)などが挙げられる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を付加してブロック化して得られるものである。
このようなブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物のブロック化は、該化合物をブロック剤でブロックした後、ブロック化物が一般に疎水性であることから、例えば、適当な乳化剤及び/または保護コロイド化剤を用いて水分散することにより行うことができる。
メラミン樹脂としては、具体的には、メラミンにホルムアルデヒドを反応してなるメチロール化メラミン樹脂;メチロール化メラミン樹脂に炭素数1〜10のモノアルコールを反応させて得られる部分又はフルエーテル化メラミン樹脂などが使用できる。これらのメラミン樹脂はイミノ基が併存しているものも使用できる。これらは疎水性及び親水性のいずれでも差し支えないが、特に、メタノールでエーテル化した縮合度の小さい、数平均分子量3,000以下程度、特に300〜1,500程度の親水性メラミン樹脂が適している。かかる親水性メラミン樹脂としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば「サイメル303」、「サイメル325」(いずれも、サイテック(株)製、商品名)などがあげられる。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、カルボキシル基を有する、塩素化ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を架橋硬化させるのに有効である。
エポキシ樹脂としては、具体的には、エポキシ基含有重合性単量体とビニル系重合性単量体との共重合体があげられる。エポキシ基含有重合性単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレートなどがあげられる。ビニル系重合性単量体としては、エポキシ基含有重合性単量体以外であって、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどがあげられる。これらの単量体による共重合反応は既知の方法で行なうことができ、得られる重合体のエポキシ当量は200〜2,800程度、特に300〜700程度、数平均分子量は3,000〜100,000程度、特に4,000〜50,000程度の範囲内が好ましい。
さらに、ビスフェノールのグリシジルエーテル化エポキシ樹脂、その水素添加物、脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂なども架橋剤として使用できる。これらのエポキシ樹脂の分子量は250〜20,000程度、特に300〜5,000程度の範囲内が好ましい。
カルボジイミド樹脂としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも、日清紡(株)製、商品名)などを挙げることができる。
オキサゾリン化合物は、カルボキシル基を有する、塩素化ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を架橋硬化させるのに有効な親水性化合物である。かかる親水性のオキサゾリン化合物としては、市販品の「エポクロスWS−500」(商品名、日本触媒(株)製)等を用いることができる。
白色導電性粉末(c)
本発明の導電性プライマー塗料組成物においては、導電性フィラーとして、白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズ(SnO)の被覆層を有する白色導電性粉末(c)を使用する。
白色無機顔料粒子の粒子形状としては、例えば、粒状、略球状、球状、針状、繊維状、柱状、棒状、紡錘状、板状、その他の類似形状のものを、いずれも用いることができる。これらの内、粒状、略球状又は球状のものは、通常、アスペクト比が3未満であり、これを用いたプライマー塗料が塗装されたプラスチック基材のリサイクル時に人体に対する安全性が高いので、好ましい。
また、白色無機顔料粒子は、分散性等の点から、平均粒子径が0.05〜2.0μm程度であるのが好ましい。平均粒子径は、0.1〜1.0μm程度であるのがより好ましい。
白色無機顔料粒子の種類としては、加熱処理によって形状変化、分解等を起こさないものである限り、制限されない。例えば、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、チタン酸アルカリ金属塩、白雲母等を挙げることができる。
白色導電性粉末(c)としては、(1)白色無機顔料粒子表面にタングステン元素を含む二酸化スズ(SnO)の被覆層を有するもの、(2)白色無機顔料粒子表面に、下層の接着層として二酸化スズ(SnO)層を有し、その上にタングステン元素を含む二酸化スズ(SnO)の被覆層を有するもの等を挙げることができる。
上記(1)及び(2)の白色導電性粉末において、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆量は、白色無機顔料に対して、二酸化スズとして3〜150重量%程度であるのが好ましい。この範囲内であれば、通常、プライマー塗料組成物の塗膜に十分な導電性及び明度を付与し得る。タングステン元素を含む二酸化スズの被覆量は、10〜120重量%程度であるのが、より好ましい。
また、白色導電性粉末(c)のタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層のタングステン含有量が、該被複層の二酸化スズに対して0.1〜20重量%程度であるのが好ましい。この範囲内であれば、通常、プライマー塗料組成物の塗膜に十分な導電性を付与でき、且つ塗膜の明度が実質的に低下しない。タングステン含有量は、0.5〜15重量%程度であるのが、より好ましい。
また、上記(2)の白色導電性粉末において、下層の二酸化スズの被覆量は、白色無機顔料に対して、二酸化スズとして1〜15重量%程度であるのが好ましい。この範囲内であれば、通常、白色無機顔料粒子と上層のタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層との接着性を向上する効果が得られる。下層の二酸化スズの被覆量は、3〜15重量%程度であるのが、より好ましい。
上記(1)の白色導電性粉末は、例えば、次のようにして、調製することができる。即ち、先ず、白色無機顔料粒子の水懸濁液に、スズ塩又はスズ酸塩の水溶液と、タングステン含有化合物を溶解したアルカリ又は酸とを、順次又は同時に添加する方法;該水懸濁液に、スズ塩又はスズ酸塩の水溶液にタングステン含有化合物を溶解した溶液と、アルカリ又は酸とを、順次又は同時に添加する方法等により、該粒子表面にタングステン含有化合物を含むスズ塩又はスズ酸塩を被覆する。この被覆時のpHは2〜9程度としておくのがよい。この被覆物を濾過し、乾燥し、次いで加熱処理することにより、上記顔料粒子表面に、タングステン元素を含む二酸化スズを被覆させた導電性粉末を得ることができる。この加熱処理は、非酸化的雰囲気で400〜900℃程度で行うのが好ましい。
また、上記(2)の白色導電性粉末は、例えば、次のようにして、調製することができる。即ち、先ず、白色無機顔料粒子の水懸濁液に、スズ塩又はスズ酸塩の水溶液と、アルカリ又は酸とを、順次又は同時に添加する方法等により、該粒子表面にスズ塩又はスズ酸塩を被覆する。この被覆時のpHは2〜9程度としておくのがよい。この被覆物を濾過し、乾燥した後、このスズ塩又はスズ酸塩被複層の上に、上記(1)の場合と同様にして、タングステン含有化合物を含むスズ塩又はスズ酸塩を被覆する。次いで、濾過、乾燥、加熱処理することにより、上記顔料粒子表面に、下層の接着層として二酸化スズ層を有しその上にタングステン元素を含む二酸化スズを被覆させた導電性粉末を得ることができる。この加熱処理は、非酸化的雰囲気で400〜900℃程度で行うのが好ましい。
上記スズ塩としては、例えば塩化スズ、硫酸スズ、硝酸スズ等を使用することができる。また、スズ酸塩としては、例えばスズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム等を使用することができる。
上記タングステン含有化合物としては、例えば、タングステン酸塩、メタタングステン酸塩、パラタングステン酸塩、タングステン化合物等を挙げることができる。タングステン酸塩としては、例えばタングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム等を使用することができる。メタタングステン酸塩としては、例えばメタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム等を挙げることができる。パラタングステン酸塩としては、例えばパラタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸カリウム、パラタングステン酸ナトリウム等を挙げることができる。また、タングステン化合物としては、例えばオキシ塩化タングステン等を挙げることができる。
アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水、アンモニアガス等を挙げることができる。酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等を挙げることができる。
白色顔料(d)
更に、白色導電性プライマー塗料組成物においては、得られる塗膜の白色度の向上のために、(d)白色顔料を配合することができる。
白色顔料(d)としては、例えば、二酸化チタン(ルチル型二酸化チタン、アナタース型二酸化チタンなど)、鉛白、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポンなどを挙げることができる。これらの内、耐薬品性、白色度の面から二酸化チタンが好ましい。より好ましいものは、平均粒子径が0.05〜2.0μm程度、特に0.1〜1.0μm程度であるルチル型二酸化チタンである。
白色導電性プライマー塗料の配合組成
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物の配合組成は、(a)塩素含有率が10〜40重量%である塩素化ポリオレフィン樹脂と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の改質樹脂との合計100重量部に対して、(b)架橋剤を5〜50重量部程度、並びに(c)白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有する白色導電性粉末を10〜200重量部程度である。
架橋剤(b)の配合量が5〜50重量部程度の範囲内にあれば、組成物の硬化性が十分であり、又耐水性等の塗膜性能を向上させることができる。
また、白色導電性粉末(c)の配合量が10〜200重量部程度の範囲内にあることにより、塗膜に十分な導電性を付与することができるので、該塗膜上に上塗り塗料組成物を静電塗装することができる。また、塗料組成物の安定性を損なうことがなく、又塗膜の明度、仕上がり外観等に優れる。
架橋剤(b)の配合割合は、樹脂成分(a)の固形分合計100重量部に対して、好ましくは10〜45重量部程度である。また、白色導電性粉末(c)の配合割合は、樹脂成分(a)の固形分合計100重量部に対して、好ましくは50〜180重量部程度である。
また、前記の通り、本発明の白色導電性プライマー塗料組成物においては、塗膜の白色度を向上させるために、白色顔料(d)を配合することができる。白色顔料(d)の配合量は、通常、樹脂成分(a)の合計固形分100重量部あたり、200重量部程度以下、好ましくは20〜180重量部程度、より好ましくは30〜130重量部程度の範囲内である。
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物は、以上に述べた各成分を、それ自体既知の方法で、有機溶剤、水又はこれらの混合物中に、溶解又は分散させて、固形分含量を15〜60重量%程度に調節することにより調製することができる。本発明のプライマー塗料組成物は、有機溶剤型及び水性型のいずれであってもよいが、低VOCなどの観点から水性白色導電性プライマー塗料組成物であることが好ましい。
有機溶剤としては、各成分製造時に用いたものを、そのまま用いてもよいし、適宜追加してもよい。
本発明組成物に使用できる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;n−ヘプタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N−メチル−ピロリドン等のその他の溶媒等を挙げることができる。
白色導電性プライマー塗料組成物の塗装方法
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物を塗装する基材としては、各種プラスチック基材が好ましい。
上記プラスチック基材としては、特に限定されないが、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外板部、家庭電化製品の外板部などに使用される各種プラスチック部材などが挙げられる。
プラスチック基材の材質としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数2〜10のオレフィンの少なくとも1種を重合せしめてなるポリオレフィンが特に好適であるが、これらに限られるものではなく、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ナイロンなどの材質であってもよい。また、これらのプラスチック基材は、予め、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理などを適宜行っておくことができる。
白色導電性プライマー塗料の塗装は、通常、粘度12〜18秒/フォードカップ#4/20℃程度に調整して、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、浸漬塗装などの塗装方法により、プラスチック基材表面に、好適に塗装することができる。塗装膜厚としては、硬化膜厚で、5〜50μm程度、好ましくは10〜45μm程度の範囲である。
この白色導電性プライマー塗料の塗膜に、セッティング若しくは予備加熱、又は加熱硬化を施すことにより、通常、表面電気抵抗値が10Ω/□未満である未硬化又は硬化塗膜を形成することができる。表面電気抵抗値が10Ω/□未満であることにより、該塗膜上に、例えば、着色塗料組成物又は/及びクリヤ塗料組成物等の上塗り塗料組成物の静電塗装が可能となる。
白色導電性プライマー塗料の塗装後の塗膜に、予備加熱又は加熱硬化を施す手段としては、従来から既知の加熱手段を用いることができ、例えば、エアブロー、赤外線加熱、遠赤外線加熱、誘導加熱、誘電加熱等を挙げることができる。また、必要に応じて、プラスチック基材を加温しておいてもよい。
本発明水性白色プライマー塗料は、JIS Z 8729に規定されるL表色系に基づく明度(L値)として80以上という白色度が高い塗膜を形成できる塗料であるが、この明度は次のようにして測定した値である。即ち、該塗料(A)を、プラスチック基材に、硬化膜厚が20μm程度となるようにスプレー塗装し、次いで80〜120℃程度の温度で20〜40分間程度加熱硬化して得られた塗膜の明度(L値)を、測色計を用いて測定した値である。測色計としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば「カラーコンピュータSM−7」(商品名、スガ試験機(株)製)が挙げられる。
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物を用いる、下記の3コート1ベーク又は3コート2ベークによる複層塗膜形成方法I及びIIにより、プラスチック基材表面上に、明るい色調の複層塗膜を形成することができる。
複層塗膜形成方法I:
(1)プラスチック基材に、本発明の白色導電性プライマー塗料組成物を、通常、硬化膜厚で5〜50μm程度、好ましくは10〜40μm程度となるように塗装する工程、
(2)該プライマー塗料組成物の未硬化塗膜上に、着色ベース塗料組成物を、通常、硬化膜厚で5〜30μm程度、好ましくは10〜25μm程度となるように静電塗装する工程、
(3)該ベース塗料組成物の未硬化塗膜上に、クリヤ塗料組成物を、通常、硬化膜厚で5〜50μm程度、好ましくは10〜40μm程度となるように静電塗装する工程、次いで
(4)上記プライマー塗料組成物、着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる3層塗膜を、同時に加熱硬化する工程、を含む3コート1ベークによる複層塗膜形成方法。
上記塗膜形成方法Iにおいて、プライマー塗料組成物、着色塗料組成物及びクリヤ塗料組成物の塗装後に、必要に応じて、セッティング又は予備加熱してもよい。セッティングは、通常、室温で、1〜20分程度放置して行う。また、予備加熱は、通常、40〜120程度の温度で、1〜20分程度加熱して行なう。
また、プライマー塗料組成物、着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる3層塗膜の加熱硬化は、通常、60〜140℃程度の温度で、10〜60分間程度加熱することにより、行うことができる。加熱硬化は、好ましくは、80〜120℃程度の温度で、10〜40分間程度行う。
複層塗膜形成方法II:
(1)プラスチック基材に、本発明の白色導電性プライマー塗料組成物を、通常、硬化膜厚で5〜50μm程度、好ましくは10〜40μm程度となるように塗装し、加熱硬化する工程、
(2)該プライマー塗料組成物の硬化塗膜上に、着色ベース塗料組成物を、通常、硬化膜厚で5〜30μm程度、好ましくは10〜25μm程度となるように静電塗装する工程、
(3)該ベース塗料組成物の未硬化塗膜上に、クリヤ塗料組成物を、通常、硬化膜厚で5〜50μm程度、好ましくは10〜40μm程度となるように静電塗装する工程、次いで
(4)上記着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる2層塗膜を、同時に加熱硬化する工程、を含む3コート2ベークによる複層塗膜形成方法。
上記塗膜形成方法IIにおいて、プライマー塗料組成物の加熱硬化は、通常、60〜140℃程度の温度で、10〜60分間程度加熱することにより、行うことができる。加熱硬化は、好ましくは、80〜120℃程度の温度で、10〜40分間程度行う。
また、各塗料組成物の塗装後に、必要に応じて、セッティング又は予備加熱してもよい。セッティングは、通常、室温で、1〜20分程度放置して行う。また、予備加熱は、通常、40〜120程度の温度で、1〜20分程度加熱して行なう。
また、着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる2層塗膜の加熱硬化は、通常、60〜140℃程度の温度で、10〜60分間程度加熱することにより、行うことができる。加熱硬化は、好ましくは、80〜120℃程度の温度で、10〜40分間程度行う。
上記方法I及びIIにおける着色ベース塗料組成物としては、上塗りベースコート用の着色塗料としてそれ自体公知の塗料組成物をいずれも使用できる。例えば、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの基体樹脂;ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤;及び着色顔料を、水及び/又は有機溶剤に溶解又は分散させて得られる塗料組成物を、好適に使用できる。
また、着色ベース塗料組成物には、必要に応じて、メタリック顔料、マイカ顔料、体質顔料、染料等を適宜配合することができる。これらの内、メタリック顔料を配合した場合には、緻密感を有するメタリック調の塗膜を形成でき、又マイカ顔料を配合すれば、シルキーなパール調の塗膜を形成することができる。
上記方法I及びIIにおけるクリヤ塗料組成物としては、上塗りクリヤコート用の塗料組成物としてそれ自体公知の塗料をいずれも使用できる。例えば、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの基体樹脂と、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤とを、水及び/又は有機溶剤に溶解又は分散させて得られる塗料組成物を、好適に使用できる。
また、クリヤ塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、メタリック顔料、体質顔料、染料、紫外線吸収剤等を適宜配合することができる。
【発明の効果】
本発明によれば、以下の如き格別な効果が得られる。
(1) 本発明プライマー塗料組成物を、プラスチック基材に塗装して得られる未硬化又は硬化塗膜は、表面電気抵抗値が10Ω/□未満である高い導電性を有する。従って、該塗膜上に、例えば、着色塗料組成物又は/及びクリヤ塗料組成物等の上塗り塗料組成物を、塗着効率に優れた静電塗装により塗装することができる。よって、有害物の環境への排出を著しく低減できる。
また、本発明塗料組成物は、水性塗料組成物とすることによって、環境への有機溶剤の排出を低減できる。
(2) また、本発明プライマー塗料組成物を、プラスチック基材に塗装、加熱して得られる硬化塗膜は、JIS Z 8729に規定されるL表色系に基づく明度(L値)で80以上という高い白色度を有する。従って、該塗膜の上層塗膜の明度等の色調に、影響を及ぼすことが殆どない。
(3) また、本発明プライマー塗料組成物は、特定の樹脂成分(a)及び架橋剤(b)を併用した熱硬化性塗料組成物であることにより、プラスチック基材に対する付着性、耐水性等の塗膜性能に優れる。
(4) 本発明複層塗膜形成方法によれば、マンセル表色系に基づく明度(N値)が8.0以上、更には8.3以上という明るい色調を有する複層塗膜を、3コート1ベーク方式又は3コート2ベーク方式により、好適に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
製造例1 白色導電性粉末の製造
ルチル型二酸化チタン粉末(商品名「KR−310」、チタン工業(株)製、球状、粒子径0.3〜0.5μm)200gを純水に分散させ、2Lの水懸濁液とし、70℃に加温した。この懸濁液に、塩化第二スズ(SnCl・5HO)69.8gを3N塩酸500mLに溶解させたスズ酸液Aと、タングステン酸ナトリウム(NaWO・2HO)3.3gを5N水酸化ナトリウム溶液500mLに溶解させたアルカリ溶液Bとを、懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を窒素ガス気流中(1L/分)、650℃にて1時間の加熱処理を行い、タングステン元素を含む二酸化スズを二酸化チタン粒子表面に被覆した白色導電性粉末No.1を得た。
白色導電性粉末No.1において、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆量は、二酸化チタン顔料に対して、二酸化スズとして約20重量%である。また、タングステン元素を含む二酸化スズ被覆層のタングステン含有量は、該被複層の二酸化スズに対して約0.08重量%である。
製造例2 白色導電性粉末の製造
ルチル型二酸化チタン粉末(商品名「KR−310」、チタン工業(株)製、球状、粒子径0.3〜0.5μm)200gを純水に分散させ、2Lの水懸濁液とし、70℃に加温した。下層の二酸化スズを被覆するため、この懸濁液に、塩化第二スズ(SnCl・5HO)23.3gを3N塩酸100mLに溶解させたスズ酸液Aと、5N水酸化ナトリウム溶液とを、懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。
乾燥して得られた粉末を純水に分散させ、2Lの水懸濁液とし、70℃に加温した。上層のタングステン元素を含有する二酸化スズを被覆するため、別途用意した塩化第二スズ(SnCl・5HO)69.8gを3N塩酸600mLに溶解させたスズ酸液Bと、タングステン酸ナトリウム(NaWO・2HO)3.3gを5N水酸化ナトリウム溶液500mLに溶解させたアルカリ溶液Cとを、懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。以下の操作は製造例1と同様にして、タングステン元素を含む二酸化スズを、二酸化スズの接着層を介して、二酸化チタン粒子表面に被覆した白色導電性粉末No.2を得た。
白色導電性粉末No.2において、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆量は、二酸化チタン顔料に対して、二酸化スズとして約30重量%である。また、タングステン元素を含む二酸化スズ被覆層のタングステン含有量は、該被複層の二酸化スズに対して約0.08重量%である。
製造例3 水性塗料用塩素化ポリオレフィン樹脂の製造
塩素化ポリプロピレン(塩素含有率15%、マレイン酸変性量2.0%、ケン化価30mgKOH/g、重量平均分子量80,000)500部、n−ヘプタン150部、N−メチル−ピロリドン50部からなる混合物(50℃)に、ジメチルエタノールアミン12部、及びノニオン系界面活性剤(商品名「ノイゲンEA−140」、第1工業薬品(株)製)5部を仕込み、同温度で1時間攪拌した後、脱イオン水2,000部を徐々に仕込み、さらに1時間攪拌を行った。次に、70℃の温度で減圧して、n−ヘプタン及び脱イオン水の合計600部を留去して、固形分24%の塩素化ポリオレフィンエマルションNo.1を得た。
製造例4 水性塗料用塩素化ポリオレフィン樹脂の製造
塩素化ポリプロピレン(塩素含有率35%、マレイン酸変性量1.9%、ケン化価28mgKOH/g、重量平均分子量60,000)を用いて、製造例3と同様にして、固形分24%の塩素化ポリオレフィンエマルションNo.2を得た。
製造例5 水性塗料用アクリル樹脂溶液の製造
撹拌機、温度計、還流冷却器等の備わったアクリル樹脂反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル40部、イソブチルアルコール30部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから下記の単量体等の混合物を3時間かけて滴下した。
スチレン 10部
メチルメタクリレート 38部
n−ブチルアクリレート 25部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
アクリル酸 7部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 1部
イソブチルアルコール 5部。
滴下終了後、更に30分間100℃に保持した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部とエチレングリコールモノブチルエーテル10部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。さらに100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却し、イソブチルアルコール15部を加え、75℃になったところでN,N−ジメチルアミノエタノール4部を加え、30分間撹拌して固形分50%の水溶性の水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂溶液を得た。このアクリル樹脂の水酸基価は86mgKOH/g、酸価は54.5mgKOH/g、数平均分子量は20,000であった。
実施例1 本発明の白色導電性プライマー塗料の製造
製造例5で得たアクリル樹脂溶液15部(固形分)に対し、白色導電性粉末No.1を130部加え、更に脱イオン水150部及び1mmΦのガラスビーズ260部を加え、シェーカー分散機で30分間攪拌した後、ガラスビーズを除去して、分散ペーストとした。
この分散ペーストに対し、製造例3で得た塩素化ポリオレフィンエマルションNo.1を40部(固形分)、ウレタンエマルション(商品名「サンプレンUX−5100A」、三洋化成工業(株)製)を30部(固形分)加えて、撹拌翼式ミキサー(商品名「TKパイプラインホモミクサーSL型」、特殊機化工業(株)製、撹拌翼40mmΦ)で十分に攪拌した。更に、塗装直前に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の親水化物(商品名「バイヒジュール3100」、住化バイエルウレタン(株)製)を15部(固形分)加えて、撹拌翼式ミキサーで十分に攪拌し、粘度を15秒/フォードカップ#4/20℃に調整し、水性の白色導電性プライマー塗料No.1を得た。
実施例2〜4 本発明の白色導電性プライマー塗料の製造
実施例1と同様の操作にて、表1の配合組成に従って、水性の白色導電性プライマー塗料No.2〜No.4を得た。
実施例1〜4の白色導電性プライマー塗料の組成を、表1に示す。

表1における配合割合は、全て固形分の重量部を示す。
表1において、(注1)〜(注3)は下記のものを示す。
(注1)ウレタンエマルション:商品名「サンプレンUX−5100A」、三洋化成工業(株)製。
(注2)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の親水化物:商品名「バイヒジュール3100」、住化バイエルウレタン(株)製。
(注3)ルチル型二酸化チタン:商品名「JR−903」、テイカ(株)製、球状、平均粒子径0.4μm。
比較例1〜5 比較用白色導電性プライマー塗料の製造
実施例1と同様の操作にて、表2の配合組成に従って、水性の白色導電性プライマー塗料No.5〜No.9を得た。
但し、比較例2及び3においては、樹脂成分及び顔料成分を混合する際、二酸化スズ/アンチモンで表面被覆された針状二酸化チタン又は金属酸化物被覆鱗片状雲母の形状を維持するために、攪拌機として、シェーカー分散機に代えて、撹拌翼式ミキサーを用いた。
比較例1〜5の白色導電性プライマー塗料の組成を、表2に示す。

表2における配合割合は、全て固形分の重量部を示す。
表2において、(注1)〜(注3)は前記の通りである。また、(注4)〜(注6)は下記のものを示す。
(注4)導電性カーボン:商品名「ケッチェンブラックEC600J」、ライオン(株)製。
(注5)二酸化スズ/アンチモンで表面被覆された針状二酸化チタン:商品名「デントールWK500」、大塚化学(株)製。
(注6)金属酸化物被覆鱗片状雲母:商品名「イリオジン103R」、メルク社製、鱗片状マイカの表面を下層としてSnOで被覆し、更にその被覆面を上層としてTiOで被覆してなる非導電性フィラー、平均粒度22μm。
実施例5〜9及び比較例6〜10 複層塗膜の形成
実施例1〜4で得た本発明白色導電性プライマー塗料No.1〜No.4を用いて、下記塗装工程1及び2に従って、3コート2ベークにより、実施例5〜8の複層塗膜を形成した。また、実施例3で得た本発明プライマー塗料No.3を用い、下記塗装工程1においてプライマー塗膜の加熱硬化をしない以外は、塗装工程1及び2と同じ工程に従って、3コート1ベークにより、実施例9の複層塗膜を形成した。
また、比較例1〜5で得た比較用白色導電性プライマー塗料No.5〜No.9を用いて、下記塗装工程1及び2に従って、3コート2ベークにより、比較例6〜10の複層塗膜を形成した。
塗装工程1:白色導電性プライマー塗膜の塗装
プラスチック基材として、黒色のポリプロピレンをバンパー形状に成型加工したのち、脱脂処理したものを用い、これに白色導電性プライマー塗料No.1〜9を、硬化膜厚で20μmになるようにエアスプレー塗装した。この塗装塗膜を、室温で2分間放置してから、80℃で3分間予備加熱した後、120℃で20分間加熱硬化した。この塗膜について、後記のL値及び表面電気抵抗値Aの評価確認を行った。
塗装工程2:白色導電性プライマー塗膜上に水性着色ベース塗料及び有機溶剤型クリヤ塗料を塗り重ねた複層塗膜形成塗装
塗装工程1で得られた硬化塗膜上に、水性熱硬化性半透明着色ベース塗料(商品名「WBC−710マイカベース」、関西ペイント(株)製)を硬化膜厚が15〜20μmになるように静電塗装し、80℃で3分間予備加熱した後、後記表面電気抵抗値Bの確認後、その未硬化塗膜上に、有機溶剤型のアクリル樹脂・ウレタン樹脂系熱硬化性クリヤ塗料(商品名「ソフレックス#520クリヤ」、関西ペイント(株)製)を硬化膜厚が25μmになるように静電塗装し、室温で5分間放置してから、120℃で30分間加熱して、着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に硬化して、複層塗膜を形成した。
上記L値、表面電気抵抗値A及び表面電気抵抗値Bは、下記試験方法により、調べた。
値:白色導電性プライマー塗料の塗膜を、120℃で20分間加熱硬化したのち、測色計(商品名「カラーコンピュータSM−7」、スガ試験器(株)製)を用いてJIS Z 8729に規定されるL表色系に基づくL値を測定した。
表面電気抵抗値A:白色導電性プライマー塗料を塗装し、加熱硬化後の塗膜の表面電気抵抗値を、電気抵抗測定機(TREK社製、商品名「MODEL150」)で測定した。測定値が10Ω/□未満であれば、着色ベース塗料の静電塗装が可能である。
表面電気抵抗値B:白色導電性プライマー塗料を塗装し、加熱硬化後、プライマー硬化塗膜上のベース塗料塗装後に表面電気抵抗値を測定するための端子接触部分をマスキングした。次いで、水性熱硬化性半透明着色ベース塗料(商品名「WBC−710マイカベース」、関西ペイント(株)製)を静電塗装し、80℃で3分間予備加熱後の該プライマー塗膜の表面電気抵抗値を、電気抵抗測定機(TREK社製、商品名「MODEL150」)で測定した。測定値が10Ω/□未満であれば、更にクリヤ塗料の静電塗装が可能である。
実施例5〜9の本発明プライマー塗料を用いて形成した複層塗膜の試験結果を、表3に示す。

比較例6〜10の比較用プライマー塗料を用いて形成した複層塗膜の試験結果を、表4に示す。

上記表4において、比較例8及び10の表面電気抵抗値Bは測定できなかった。その理由は、塗装試験の塗装工程2において、比較用白色導電性プライマー塗料No.7及びNo.9については、該プライマー塗膜の表面電気抵抗値が、1×1013Ω/□と高いため、着色塗料及びクリヤ塗料を静電塗装することができないためである。
実施例5〜9及び比較例6、7、9で得られた各複層塗膜について、塗膜外観、JIS Z 8721に規定されるマンセル表色系に基づくN値、付着性及び耐水性の塗膜性能及びリサイクル性の試験を、下記試験方法により調べた。
塗膜外観:基材の垂直部において、塗膜のタレ、戻り及びフクレの異常発生の有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。
Aは上記異常が全く認められないことを、Bはタレ、戻り及びフクレの少なくとも一つの異常が認められたことを、Cはタレ、戻り及びフクレの少なくとも一つの異常の発生が著しいことを、それぞれ示す。
JIS Z 8721に規定されるマンセル表色系に基づくN値:プライマー塗膜、着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層からなる複層塗膜において、マンセルチャートのN値を求めた。0が黒であり、10が純白である。
付着性:プライマー塗膜、着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層からなる複層塗膜において、素地に達するようにカッターで切り込みを入れて2mm幅のゴバン目を100個作り、その表面に粘着テープを粘着し、20℃において急激に剥離した後のゴバン目塗膜100個中の残存数を調べ、下記基準により、評価した。
Aはゴバン目が全て残存し付着性良好を、Bはゴバン目の残存数が90〜99個であり付着性やや不良を、Cはゴバン目の残存数が90個未満であり付着性不良を、それぞれ示す。
耐水性:プライマー塗膜、着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層からなる複層塗膜において、40℃温水に240時間浸漬後、素地に達するようにカッターで切り込みを入れて2mm幅のゴバン目を100個作り、その表面に粘着テープを粘着し、20℃において急激に剥離した後のゴバン目塗膜100個中の残存数を調べ、下記基準により、評価した。
Aはゴバン目が全て残存し耐水性良好を、Bはゴバン目の残存数が90〜99個であり耐水性やや不良を、Cはゴバン目の残存数が90個未満であり耐水性不良を、それぞれ示す。
リサイクル性:プライマー塗膜、着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層からなる複層塗膜を有する前記基板を粉砕機によって約1mm以下の粉状に粉砕した後、その粉砕物を光学顕微鏡で観察した。粉砕物中に含まれる導電性フィラーの内、人体に悪影響を与えるアスペクト比が3以上のものの有無を、調べた。リサイクル性の評価基準は、下記の通りである。
A:粉砕物中に含まれる導電性フィラーがアスペクト比3未満の球状であり、塗装されたプラスチック基板のリサイクル性に優れる、
B:粉砕物中に含まれる導電性フィラー中にアスペクト比3以上のものが含まれており、塗装されたプラスチック基板のリサイクル性に劣る。
複層塗膜の性能試験の結果を、表5に示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)塩素含有率が10〜40重量%である塩素化ポリオレフィン樹脂と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の改質樹脂との合計100重量部、
(b)架橋剤5〜50重量部、並びに
(c)白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有する白色導電性粉末10〜200重量部を含有することを特徴とする白色導電性プライマー塗料組成物。
【請求項2】
(a)成分における、塩素化ポリオレフィン樹脂と、改質樹脂との混合割合が、両者の合計に基づいて、前者が10〜90重量%及び後者が90〜10重量%である請求項1に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項3】
白色導電性粉末(c)が、白色無機顔料粒子表面に二酸化スズ層を有し、その上にタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有するものである請求項1に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項4】
白色導電性粉末(c)のタングステン元素を含む二酸化スズの被覆量が、白色無機顔料に対して、二酸化スズとして3〜150重量%である請求項1に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項5】
白色導電性粉末(c)のタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層のタングステン含有量が、該被複層の二酸化スズに対して0.1〜20重量%である請求項4に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項6】
さらに、(d)白色顔料200重量部以下を含有する請求項1に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項7】
プラスチック基材に塗装し、加熱硬化した塗膜が、JIS Z 8729に規定されるL表色系に基づく明度(L値)80以上の塗膜である請求項1に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項8】
プラスチック基材に塗装した未硬化又は硬化塗膜の表面電気抵抗値が、10Ω/□未満である請求項1に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項9】
水性塗料組成物である請求項1に記載のプライマー塗料組成物。
【請求項10】
(1)プラスチック基材に、請求項1に記載の白色導電性プライマー塗料組成物を塗装する工程、
(2)該プライマー塗料組成物の未硬化塗膜上に、着色ベース塗料組成物を静電塗装する工程、
(3)該ベース塗料組成物の未硬化塗膜上に、クリヤ塗料組成物を静電塗装する工程、次いで
(4)上記プライマー塗料組成物、着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる3層塗膜を加熱硬化する工程、
を含む3コート1ベークによる複層塗膜形成方法。
【請求項11】
(1)プラスチック基材に、請求項1に記載の白色導電性プライマー塗料組成物を塗装し、加熱硬化する工程、
(2)該プライマー塗料組成物の硬化塗膜上に、着色ベース塗料組成物を静電塗装する工程、
(3)該ベース塗料組成物の未硬化塗膜上に、クリヤ塗料組成物を静電塗装する工程、次いで
(4)上記着色ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物からなる2層塗膜を加熱硬化する工程、
を含む3コート2ベークによる複層塗膜形成方法。

【国際公開番号】WO2004/078861
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503103(P2005−503103)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002745
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】