説明

白金コロイド担持カーボンおよびその製造方法

【課題】従来のカーボン担体に白金コロイドを担持させる白金コロイド担持カーボンの製造方法に比べて簡易な操作により、担体上における白金コロイドの分散性が同等ないしはそれ以上に優れた白金コロイド担持カーボンを製造する方法およびこの方法により得られた白金コロイド担持カーボンを提供すること。
【解決手段】本発明の白金コロイド担持カーボンの製造方法は、PtイオンまたはAuイオンの存在下、平均粒子径1〜100nmの白金コロイドをカーボン担体に担持させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金コロイドが担持されたカーボンの製造方法およびその製造方法により得られる新規の白金コロイド担持カーボンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー、環境問題に関連して、クリーンな水素をエネルギー源とする、高効率かつ無公害でCO2等の温暖化ガスを発生しない発電システムとして燃料電池が注目さ
れている。この燃料電池について、家庭や事業所などの固定設備、自動車や携帯電話のバッテリーなどの移動設備などでの使用を目的に本格的な開発研究が行われている。
【0003】
燃料電池は、電気化学反応を利用して、使用する燃料の有する化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であり、この電気化学反応を有効に利用するために触媒が必要とされる。燃料電池は使用する電解質によって分類され、アルカリ電解質型、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型に分けられる。これらのうち、固体高分子電解質型およびリン酸型は電荷移動体がプロトンであり、プロトン型燃料電池ともいわれる。
【0004】
このような燃料電池に用いる燃料としては、天然ガス、LPガス、都市ガス、アルコール、ガソリン、灯油、軽油などの炭化水素系燃料が挙げられる。
このような燃料電池の発電メカニズムは以下の通りである。上記炭化水素系燃料が、まず、水蒸気改質や部分酸化などの反応により、水素ガスおよびCOガスに変換され、COガスを除去して水素ガスを得る。この水素ガスは、アノードに供給され、アノードの金属触媒によってプロトン(水素イオン)と電子に解離される。この電子は回路を通じて仕事をしながらカソードに流れ、プロトン(水素イオン)は電解質膜を拡散してカソードに流れ、カソードにてこの電子と水素イオンとカソードに供給される酸素とから水が形成されて電解質膜に拡散する。すなわち、酸素と燃料に由来する水素とを供給して水を生成する過程で電流を取り出すメカニズムである。
【0005】
このような燃料電池に用いられるカソード電極としては、Pt、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu等の金属成分からなる触媒層(薄膜)をスパッタ法により多孔質支持層上に形成したものが検討され、アノード電極としては、耐CO被毒性の高いPt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Mo等の金属成分からなる触媒層(薄膜)をスパッタ法により多孔質支持層上に形成したものが検討されている。
【0006】
しかしながら、スパッタ法で形成した触媒層は、金属微粒子の粒子径が不均一かつ大きくなりやすく、このため金属微粒子の表面積が低下するために充分な活性が得られないことがある。さらに、多孔質支持層表面に均一に金属微粒子層からなる薄膜を形成することは困難である。また、スパッタ法に用いる装置は高価であり、経済性に難点がある。
【0007】
また、カーボンペーパー、カーボンクロス等のカーボン多孔体に白金微粒子等を担持した電極も知られている。この電極は、たとえば、カーボンペーパーに金属塩あるいは金属水酸化物を固着させ、還元雰囲気下で加熱処理することによって得ることができる。しかしながら、この方法では加熱処理する際に金属微粒子が凝集したり、粒子成長して、粒子径が不均一になるとともに、粒子径を所望の大きさに調整することが困難であり、加えて経時的に活性が低下する問題があった。
【0008】
一方、白金コロイドを炭素粒子に担持させる方法としては、白金錯体の水溶液に蟻酸等
の還元剤を混合して白金コロイド粒子を生成させ、そこに炭素粒子を加えて炭素粒子表面に白金コロイド粒子を付着させる方法や、白金錯体の水浴液に炭素粒子を加えてから還元剤を添加し、炭素粒子表面に白金コロイド粒子を生成させる沈殿法が知られていた。上記担体である炭素粒子の粒径は、カーボンブラックで0.1〜0.01μm、大きな粒子である粉末活性炭でも100μm以下である。また、表面に付着する白金コロイド粒子の粒径は、大きくても0、02μm、製造法によっては0.003〜0.005μmである。
【0009】
白金コロイド粒子を担持した炭素粒子は、ガス拡散が行なわれる電極上で電解質の液体リン酸に包まれ、水素ガスまたは酸素含有ガスと接触している。そして、100℃以上の燃料電池作動条件下では、長時間の使用によってその性能が低下する。これは、熱的運動によって白金コロイド粒子が炭素粒子表面上を移動し、コロイド粒子同士の接触が起って凝集し、遂には大きな一つの粒子へ粗大化し、触媒として有効な表面積が減少するためと考えられている。このコロイド粒子同士の接触、凝集を防ぐ方法として、炭素粒子表面に凹凸をつけて白金コロイド粒子を担持させる方法が提案された。例えば、炭素粒子に金属酸化物の触媒を担持し、次に加熱することによって炭素粒子表面の触媒近傍を酸化せしめて凹部を形成し、その後、この金属酸化物触媒を除いてから白金コロイド粒子を表面に生成付着させる方法が挙げられる。しかし、この方法では操作条件が複雑であるばかりでなく、加熱条件のコントロールが困難で、炭素粒子自身が発火してしまうことがあった。
【0010】
カーボン担体に白金コロイドを担持させる技術としては、例えば、特許文献1には、炭素粒子表面に白金コロイド粒子を担持させ、次に懸濁状態または粉末浮遊状態でオゾンと接触させることを特徴とする燃料電池用触媒の製造方法が提案されている。この製造方法において、炭素粒子表面に白金コロイド粒子を担持させる方法として、白金錯体の水浴液に炭素粒子を加えた後、還元剤を添加して炭素粒子表面に白金コロイド粒子を生成させる沈殿法が採用されている。
【0011】
特許文献2には、第1工程、第2工程、第3工程、第4工程を有し、第1工程は親水処理をしたカーボン触媒担体を水に分散させて、白金塩を添加し加温する工程であり、第2工程は、前記工程で得られた系のpHをアルカリ性にする工程であり、第3工程は、アルカリ性にされた系に白金コロイド保護剤を添加する工程であり、第4工程は白金コロイド保護剤の加えられた系を粉砕機で混合しながらアルデヒド基を有する還元剤を徐々に添加する工程である、ことを特徴とする白金担持触媒の製造方法が提案されている。この製造方法は、系を混合しながら還元剤を添加すると、還元剤がすみやかに系全体に均一に混合され、粉砕機により担体が分散し、吸着サイトの数が増大する点に特徴がある。
【0012】
特許文献3には、白金又は白金合金がカーボン担体に担持された電極触媒の製造方法であって、白金錯イオンを含む溶液又は白金と合金化させる金属のイオン若しくは錯イオンと白金錯イオンとを含む溶液から、−SO3Y又は−PO32を有する有機化合物(Yは
水素原子又はアルカリ金属原子を示す。)の存在下で白金コロイド粒子又は白金合金コロイド粒子のゾルを生成した後、該ゾルをカーボン担体と混合し、乾燥して溶媒を除去することを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極触媒の製造方法が提案されており、この製造方法により得られる電極触媒は、白金又は白金合金触媒の分散性が高く、触媒、電解質及び燃料ガスの存在する三相界面が拡大されているので、初期の活性に優れるとともに長期にわたって安定して高い出力を得られる固体高分子電解質型燃料電池を提供できる旨の記載がある。この製造方法も基本的には、前記の沈殿法を利用したものである。
【0013】
特許文献4には、固体高分子電解質膜の両側に電極を配してなる単位セル及びこの単位セルの両側をセパレータで挟持した固体高分子型燃料電池に使用される電極原料を製造する方法において、溶媒の中に貴金属コロイドを分散させる工程と、前記溶媒の中にイオン交換高分子を添加する工程と、前記溶媒の中にカーボンブラックを添加し、カーボンブラ
ックに貴金属を担持させる工程と、前記溶媒の中に還元剤を添加し、イオン交換高分子が付着した貴金属担持カーボンブラックを形成する工程とを具備することを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極材料の製造方法が提案されている。この製造方法によると、貴金属の表面全体にイオン交換高分子が担持されたカーボンブラックが得られ、貴金属とイオン交換高分子との接触面積が従来と比べて大きくなり、これを反応層として燃料電池に用いた場合、貴金属とイオン交換高分子と酸素(又は水素)との3相界面増加による電池性能が向上する旨の記載がある。
【0014】
特許文献5には、PtX:MoY(但し、それぞれXは0.5〜0.9そしてYは0.5〜0.1である)の原子組成を有し、ガス拡散電極に用いるためのカーボンブラックに支持された触媒を調製する方法であって、最初に白金コロイド分散液をカーボンブラックに吸収させ、次いでモリブデンコロイド分散液をカーボンブラックに吸収させ、そして最後に上記2つの元素を還元及び/又は不活性雰囲気中において300℃を越える温度で合金化することを含む製造方法が提案されている。
【0015】
特許文献6には、導電性炭素材料並びにこれに担持された白金および金を含む粒子からなり、前記粒子の内部が金に富み、粒子の外表面が白金に富むことを特徴とする燃料電池用電極触媒とその製造方法として、白金錯体および金錯体の混合溶液を還元してコロイドを調製する工程、および前記コロイドを導電性炭素材料に担持する工程を有する燃料電池用電極触媒の製造方法が提案されている。この触媒は、反応に関与しない白金を低減させるため、白金と金を含む粒子が導電性炭素材料に担持されており、前記粒子の内部が金に富み、前記粒子の外表面が白金に富んでいる点に特徴があり、白金錯体および金錯体の混合溶液を還元してコロイドを調製し、そのコロイドを導電性炭素材料に担持させることにより製造される点に特徴がある。
【0016】
特許文献7には、陽イオン交換性高分子により安定化された白金コロイドとカーボンとを含んでなるスラリー状の触媒を製造するステップと、該スラリー状の触媒を湿式塗布して触媒反応層を形成するステップとを含む固体高分子型燃料電池用電極の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、微粒子化した白金を高度に分散化し、かつ当該白金と陽イオン交換性高分子とが接触しているスラリー状の触媒を湿式塗布して触媒反応層を形成するため、プロトン導電性が確保されて、三相界面が拡大され、触媒利用の効率化を達成することができる旨の記載がある。また、この製造方法により、同じ白金量でより大きな出力を得ることができるため、高価な白金使用量を削減し、コストダウンが可能となり、更に、膜−電極接合体の製造工程を簡略化でき、経済的にも大きな効果を有する旨の記載がある。
【特許文献1】特開昭59−75560号公報
【特許文献2】特開平3−165465号公報
【特許文献3】特開2001−93531号公報
【特許文献4】特開2001−266902号公報
【特許文献5】特表2002−511639号公報
【特許文献6】特開2002−305001号公報
【特許文献7】特開2003−100306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、従来のカーボン担体に白金コロイドを担持させる白金コロイド担持カーボンの製造方法に比べて簡易な操作により、担体上における白金コロイドの分散性が同等ないしはそれ以上に優れた白金コロイド担持カーボンを製造する方法およびこの方法により得られた白金コロイド担持カーボンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明に係る白金コロイド担持カーボンの製造方法は、PtイオンまたはAuイオンの存在下、平均粒子径1〜100nmの白金コロイドをカーボン担体に担持させることを特徴とする。
【0019】
本発明の白金コロイド担持カーボンの製造方法としては、カーボンの懸濁液に、PtイオンまたはAuイオンをカーボン固形分100重量部に対して金属元素換算で3〜100重量部含有させ、このイオン含有懸濁液に、15〜40℃で、平均粒子径1〜180nmの白金コロイドをカーボン固形分100重量部に対して金属元素換算で10〜100重量部添加して混合することが好ましい。
【0020】
前記Ptイオンは、塩化白金酸、塩化白金(IV)酸カリウム、塩化白金(IV)酸ナトリウム、テトラニトロ白金(II)カリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム水和物、ジニトロジアンミン白金硝酸、ジニトロジアンミン白金アンモニアおよびテトラアンミンジクロロ白金水和物からなる群から選ばれる1種または2種以上の白金化合物、あるいは、前記Auイオンが、塩化金酸、亜硫酸金ナトリウム、シアン化金カリウムおよびシアン化金ナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上の金化合物から得られることが好ましい。
【0021】
本発明に係る白金コロイド担持カーボンは、上記製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る白金コロイド担持カーボンは、比表面積が100〜1000m2
gのカーボン担体に白金コロイドを担持させた白金コロイド担持カーボンであって、前記カーボン担体の比表面積に対する前記白金コロイド担持カーボンの比表面積の低下率が48〜80%であり、かつ、前記カーボン担体の平均細孔容積に対する前記白金コロイド担持カーボンの平均細孔容積の低下率が35〜70%であることを特徴とする。また、前記白金コロイド担持カーボンは、白金を20〜50重量%含有することが好ましい。このような白金コロイド担持カーボンは、上記製造方法により製造することができる。
【0022】
本発明に係る燃料電池用触媒は、上記白金コロイド担持カーボンからなることを特徴とする。
また、本発明に係る燃料電池は、カソード電極及びアノード電極のうち少なくとも一方の電極が、上記燃料電池用触媒を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の白金コロイド担持カーボンは、従来の白金コロイド担持カーボンに比べて、担持された白金コロイドの分散状態が優れており、使用した白金コロイドはカーボン担体上で極めて有効に触媒機能を発揮することができる。また、本発明の製造方法によれば、このような白金コロイドが高分散した状態でカーボン担体に担持されている白金コロイド担持カーボンを簡易な操作により得ることができる。この白金コロイド担持カーボンは、例えば、燃料電池用の電極触媒用の材料として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の白金コロイド担持カーボンの製造方法について詳細に説明する。
本発明の白金コロイド担持カーボンは、PtイオンまたはAuイオンの存在下、平均粒子径1〜100nmの白金コロイドをカーボン担体に担持させることにより製造することができる。
【0025】
上記カーボン担体は特に限定されるものではなく、通常吸着剤、触媒、触媒担体等として用いられるカーボンを使用することができる。
また、上記カーボン担体の形状は特に限定されるものではない。カーボン担体の平均粒子径は担持される白金コロイドの平均粒子径と同等またはそれ以上であれば特に限定されないが、たとえば、0.01〜10μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。また、カーボン担体の平均粒子径は白金コロイドの平均粒子径の10倍以上が好ましい。粒子径が前記範囲のカーボン担体は容易に得ることができ、また、本発明の製造方法により、容易に白金コロイドを表面に均一に担持させることができる。なお、二次粒子径が上記範囲にあれば、カーボン担体は凝集した状態でも使用することができるが、できる限り単分散していることが好ましい。
【0026】
上記カーボン担体の比表面積は100〜1000m2/gが好ましく、180〜900
2/gがより好ましい。また、細孔容積は0.1〜1.5cm3/gが好ましく、0.2〜1.2cm3/gがより好ましい。カーボン担体の比表面積および細孔容積が上記範囲
にあると、優れた触媒活性を有する白金コロイド担持カーボンを得ることができる。
【0027】
上記カーボン担体は、通常、水に懸濁させた状態で使用される。カーボン懸濁液は、上記カーボン担体に、例えば、脱イオン水を加えて、95℃で1時間煮沸することにより得ることができる。水の使用量は、カーボン担体100重量部に対して900〜99,900重量部が好ましく、1,900〜19,900重量部がより好ましい。このようにして得られたカーボン懸濁液は、必要に応じて、さらに水で希釈してもよく、あるいはデカンテーションで濃縮してもよい。希釈水としては脱イオン水が好ましい。希釈後の懸濁液のカーボン濃度は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
【0028】
次に、上記カーボン懸濁液にPtイオンまたはAuイオンを含有させる。PtイオンまたはAuイオンの含有量はカーボン懸濁液中のカーボン固形分100重量部に対して金属元素換算で3〜100重量部が好ましく、5〜80重量部がより好ましい。PtイオンまたはAuイオンの含有量が3重量部未満になると、白金コロイドを添加してもカーボン担体に対する充分な担持効果が得られず、また100重量部を超えると前記担持効果のさらなる向上が得られず、経済的に好ましくない。
【0029】
上記範囲の量のPtイオンまたはAuイオンを含有させるためには、金属元素換算で上記範囲の量のPtイオンまたはAuイオンを含む溶液を上記カーボン懸濁液に添加してもよいし、あるいは、金属元素換算で上記割合のPtイオンを形成し得る量の白金化合物または金属元素換算で上記割合のAuイオンを形成し得る量の金化合物を上記カーボン懸濁液に添加して懸濁液中でPtイオンまたはAuイオンを発生させてもよい。
【0030】
PtイオンまたはAuイオンを含む溶液はPtイオンを形成し得る白金化合物またはAuイオンを形成し得る金化合物を溶媒に溶解することにより調製できる。
上記Ptイオンは、その価数が特に限定されず、Pt2+、Pt4+、Pt6+のいずれでもよい。
【0031】
上記白金化合物としては、上記カーボン懸濁液中でPtイオンを形成するものであれば特に制限されず、例えば、塩化白金酸、塩化白金(IV)酸カリウム、塩化白金(IV)酸ナトリウム、テトラニトロ白金(II)カリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム水和物、ジニトロジアンミン白金硝酸、ジニトロジアンミン白金アンモニアおよびテトラアンミンジクロロ白金水和物が挙げられる。これらの白金化合物は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。また、上記金化合物としては、上記カーボン懸濁液中でAuイオンを形成するものであれば特に制限されず、例えば、亜硫酸金ナトリウム、シアン化金カリウムおよびシアン化金ナトリウムが挙げられる。これらの金化合物は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
PtイオンまたはAuイオンを含む溶液に用いられる溶媒は、白金化合物または金化合物との反応性を示さず、白金化合物または金化合物を溶解できるものでは特に限定されるものではない。このような溶媒としては、
水;
メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;
アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;
ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;
2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン、iso−オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;
塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;
ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;
N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類
などを挙げることができる。
【0033】
上記カーボン懸濁液に、PtイオンまたはAuイオンを含む溶液あるいは白金化合物または金化合物を添加する際の温度は、15〜40℃が好ましい。15℃未満では十分に白金コロイドを担持できないことがあり、40℃を超えても担持効率のさらなる向上が見られないため、経済的に好ましくない。また、上記添加後、上記範囲の温度に保持しながら懸濁液を攪拌して充分に混合することが好ましい。特に、固体状の白金化合物または金化合物を添加した場合には、白金化合物または金化合物が充分に溶解してイオンが生成するまで攪拌などの操作を充分に行なう必要がある。
【0034】
上記のようにして、カーボン懸濁液にPtイオンまたはAuイオンを含有させ、充分に分散させた後、白金コロイドを添加する。前記白金コロイドの製造方法は特に制限されず、燃焼法や沈殿法(金属塩還元反応法)など公知の方法が適用できる。
【0035】
燃焼法は、金属イオン溶液を水素ガス中またはリンなどへ投じて還元反応させ、その後、燃焼により加熱して反応を促進させ、生成した金属微粒子を液体分散媒中に注入し、還元終了後、界面活性剤を用いて金属コロイドを安定化処理する方法である。具体的には、特開昭61−271026号公報に開示されているように、白金の王水溶液と低級アルコ−ルとの混合溶液及び水素ガスをそれぞれ別の供給系より送出し、燃焼させた水素ガス炎の直前において前記混合溶液を合流させて、白金を830〜870℃で燃焼させ、燃焼火炎を、コロイド生成槽中において槽底近くに達する渦流を生じさせた液体分散媒中に吹込むことにより白金コロイドを製造することができる。
【0036】
沈殿法(金属塩還元反応法)は、燃焼法に比べて高濃度、高活性の白金コロイドを得ることが可能な製造方法といわれている。この方法では、白金イオン溶液に還元剤を添加し、温度およびpHを制御しながら還元処理して液中に白金微粒子を析出させることにより、高活性微粒子を得ることができる。反応中、液の温度を20〜80℃の範囲で低温より
高温に制御し、pHを4〜11の範囲に保持する。還元処理は、界面活性剤(保護コロイド)を用いずにコロイド状態を保持するために行い、金属イオンを還元する。
【0037】
本発明に用いる白金コロイドの平均粒子径は1〜100nmである。白金コロイドの平均粒子径が上記範囲にあると白金コロイドが充分に分散した状態でカーボン担体に担持することができる。一方、平均粒子径が1nm未満の白金コロイドは容易に製造することが困難なため好ましくなく、100nmを超えると、カーボン担体に充分に分散して容易に担持させることができないことがあり、また、触媒反応などに寄与できない白金の量が増大することがあるため望ましくない。
【0038】
白金コロイドは、通常、水または有機溶媒に分散した状態の白金コロイド溶液として使用される。白金コロイド溶液中の白金金属の固形分濃度は特に限定されないが、たとえば0.01重量%以上が好ましい。
【0039】
白金コロイドの添加量は、カーボン固形分100重量部に対して金属元素換算で10〜180重量部が好ましく、30〜160重量部がより好ましい。白金コロイドの添加量が上記範囲にあると白金コロイドが充分に分散した状態でカーボン担体に担持することができる。一方、添加量が10重量部未満になると、白金コロイドの担持は問題ないが、白金コロイドの担持量が少なくなり、白金コロイドによる触媒作用など、充分な効果が得られないことがある。また、添加量が180重量部を超えても担持量は増加しにくく、経済的に好ましくない。
【0040】
白金コロイドを添加して混合する際の温度は、特に限定されないが、15〜40℃が好ましい。15℃未満では、十分に白金コロイドを担持できないことがあり、実用性が低下することがある。40℃を超えると担持効果の更なる向上は認められず、経済的に好ましくない。
【0041】
上記混合の際、通常5分以上、好ましくは10以上の攪拌を行なうことが望ましく、必要に応じて、通常3時間程度まで、好ましくは1時間程度まで攪拌してもよい。
上記混合操作後、必要に応じて、白金コロイド担持カーボンを含む懸濁液を水で希釈してもよい。通常、白金コロイド担持カーボン100重量部に対して、最大で250,00
0重量部程度の水で希釈することができる。
【0042】
さらに、通常、水で希釈した白金コロイド担持カーボンを遠心分離し、望ましくは洗浄を3回以上繰り返して、残存するイオンを除去し、白金コロイド担持カーボンを分離精製する。その後、分離した白金コロイド担持カーボンを、通常、80〜100℃で1〜20時間乾燥することが望ましい。
【0043】
本発明の製造方法により、白金コロイド担持量が、白金コロイド担持カーボン全体に対して20〜50重量%であり、かつ白金コロイドがカーボン担体表面に極めて良好に分散した白金コロイド担持カーボンを得ることができる。この白金コロイド担持量は、PtイオンまたはAuイオンを含有させる際の温度、PtイオンまたはAuイオンの含有量、白金コロイド混合時の温度、白金コロイド混合量などの製造条件を適宜調整することによりコントロールすることができる。
【0044】
担持前のカーボン担体の比表面積に対する上記白金コロイド担持カーボンの比表面積の低下率は、48〜80%が好ましく、50〜75%がより好ましい。また、担持前のカーボン担体の細孔容積に対する白金コロイド担持カーボンの細孔容積の低下率は、35〜70%が好ましく、38〜60%がより好ましい。担持による比表面積の減少は、白金コロイドがカーボン担体の表面に担持された度合いを表し、細孔容積の減少は、白金コロイド
が良好に分散して、カーボン担体表面の細孔中に担持されていることを表す。本発明の製造方法によると、上記のような白金コロイドが多量かつ高分散で担持された白金コロイド担持カーボンを得ることができる。
【0045】
本発明の白金コロイド担持カーボンとしては、例えば、比表面積が20〜520m2
g、平均細孔容積が0.030〜0.975cm3/g、白金含有量が20〜50重量%
、平均粒子径が0.01〜10μm、白金コロイドの平均粒子径が2〜50nm(但し、カーボン担体の平均粒子径の10分の1以下が好ましい。)であって、本発明で規定する白金コロイド分散性の評価が3〜5の範囲にある白金コロイド担持カーボンが好ましい。
【0046】
また、本発明の白金コロイド担持カーボンとしては、比表面積が25〜500m2/g
、平均細孔容積が0.040〜0.65cm3/g、白金含有量が20〜40重量%、平
均粒子径が0.01〜0.1μm、白金コロイドの平均粒子径が2〜50nm(但し、カーボン担体の平均粒子径の10分の1以下が好ましい。)であって、本発明で規定する白金コロイド分散性の評価が3〜5の範囲にある白金コロイド担持カーボンがさらに好ましい。
【0047】
本発明の製造方法、すなわち、PtイオンまたはAuイオンの存在下で、カーボン懸濁液に白金コロイドを混合することにより、上記イオンが存在しない場合に比べて白金コロイドが良好に担持することができる。これは、カーボン担体を構成する成分、特にカーボン担体表面に存在するシリカまたはアルミナに、PtイオンまたはAuイオンが吸着して、カーボン担体表面に一種のプライマー層が形成され、そのプライマー層の作用、すなわち、白金コロイドとPtイオン間あるいは白金コロイドとAuイオン間で吸着反応が起こることによると推定される。
【0048】
本発明の製造方法においては、既に金属状態にある白金コロイドを使用するので、カーボン担体に担持するだけで白金コロイド担持カーボンを得ることができる。例えば、イオン吸着還元法では、カーボン担体上にPtイオンを存在させ、これを焼成還元して白金金属を形成する必要があるが、これに比べて本発明の製造方法は、より簡便である。
【0049】
本発明の白金コロイド担持カーボンは、燃料電池のカソード電極やアノード電極に含まれる燃料電池用触媒として利用することができる。上記白金コロイド担持カーボンを用いた燃料電池は、従来の燃料電池に比べて高出力である。
【0050】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特に断りのない限り、「重量%」を意味する。
【0051】
<白金コロイドの調製>
[調製例1]
塩化白金酸六水和物25g(白金金属換算で9g)を純水16,000gに溶解して得
た金属塩水溶液に、錯化安定剤として濃度1.0重量%のクエン酸3ナトリウム水溶液1,660gと還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液140gと
を加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌混合して、水に白金微粒子が分散してなる白金コロイド溶液を得た。この白金コロイド溶液を限外濾過膜法洗浄により精製した後、濃度を調整し、白金金属換算で濃度0.42重量%の白金コロイド溶液を得た。この白金コロイドの平均粒子径は3nmであった。
【0052】
<比表面積および細孔容積の測定方法>
110℃で20時間乾燥した試料をガラスセルに所定量採取し、脱気装置(カウンタークローム社製AUTOSORB6)にて110℃で真空脱気を行ない、吸着等温線を求めた。この吸着等温線から比表面積および細孔容積を求めた。
【0053】
<イオンの分析方法>
Pt:白金コロイド担持カーボン中の白金含有量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置
(セイコー(株)製、SPS 1200A)により測定した。
【0054】
<白金コロイド分散性の評価>
白金コロイド担持カーボン中の白金コロイドの分散性は、透過型電子顕微鏡により観察し、下記基準で評価した。
5:白金コロイドの凝集は見られず、一次粒子径相当の大きさの白金コロイド粒子がカ
ーボン担体表面全体に高分散で担持された状態。
4:カーボン担体表面の一部で一次粒子が最大2個結合した大きさに相当する白金コロ
イド粒子が見られたが、カーボン担体表面の大部分では、一次粒子径相当の大きさ
の白金コロイド粒子が高分散で担持された状態。
3:カーボン担体表面の一部で一次粒子が最大3個結合した大きさに相当する白金コロ
イド粒子が見られたが、カーボン担体表面の大部分では、一次粒子径相当の大きさ
の白金コロイド粒子が高分散で担持された状態
2:カーボン担体表面の一部で一次粒子が最大4個結合した大きさに相当する白金コロ
イド粒子が見られたが、カーボン担体表面の大部分では、一次粒子径相当の大きさ
の白金コロイド粒子が高分散で担持された状態。
1:カーボン担体表面に白金コロイド粒子が全く担持されていない状態、または一次粒
子径相当の大きさの白金コロイド粒子が見当たらず、一次粒子が2個以上結合した
大きさに相当する白金コロイド粒子のみがカーボン担体表面に担持された状態。
【実施例1】
【0055】
固形分重量で0.2gのカーボンブラック(ライオン(株)製、商品名:ケッチェンブラックEC、DBP吸油量:360cm3/100g、比表面積:850m2/g、一次粒子径:39.5nm)を95℃に煮沸した水に分散させ、カーボンブラック2%(固形分)の分散液を得た。この分散液を脱イオン水で希釈し、攪拌することにより、カーボンブラック懸濁液(カーボンブラック固形分0.2%)を調製した。
【0056】
このカーボンブラック懸濁液100gにAuイオン濃度が1%の塩化金酸水溶液を14g添加して20℃で5分間攪拌した。この混合懸濁液に、調製例1で得た白金コロイド溶液(白金コロイド平均粒子径:3nm)71g(白金固形分で0.2g)を添加した。白金コロイド添加後の混合懸濁液のpHは2.3であった。この混合懸濁液を20℃で40分間攪拌した後、遠心分離機で固液分離し、更に水を500g加えて3分間洗浄した。遠心分離および洗浄操作を3回繰り返して懸濁液中に残存している白金コロイド、Clイオン、Auイオン等を除去した後、得られた固形物を90℃で10時間乾燥させて白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0057】
得られた白金コロイド担持カーボンを触媒として、電解質膜溶液である5重量%ナフイオン溶液および溶媒の酢酸ブチルと混合し、室温で1時間攪拌して触媒ペーストを調製した。混合比(重量比)は、触媒:酢酸ブチル:ナフイオン溶液=1:1.2:4.7とした。この触媒ペーストを直径8mm、面積0.5cm2のカーボンペーパー上にスクリー
ン印刷法により塗布した後、自然乾燥させて触媒層を形成し、電極(空気極)を作製した。
【0058】
また、上記白金コロイド担持カーボンの代わりに、触媒としてPt−Ru/C(田中貴金属工業(株)製)を用いた以外は、上記と同様にして対極触媒電極(燃料極)を作製した。
【0059】
上記空気極と燃料極とで固体高分子膜(デュポン社製、品番:N−117)を挟み、ホットプレスにて130℃、4MPaで3分間圧着して膜/電極接合体(MEA)を作製した。
【0060】
この膜/電極接合体を用いて燃料電池用セルを作製した。セルの性能を評価するために、負荷電流を変えながら負荷電流(I)とセル電圧(V)の関係を、電流電圧計(ケースレーインスツルメンツ社製、品番:デジタルマルチメータ2000/2000−SCAN)およびガルバノポテンンシオスタット(北斗電工株式会社製、品番:HC−111)を用いて測定し、I−V曲線を得た。I−Vの積から最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比率として表2に示した。
【実施例2】
【0061】
Auイオン濃度が1%の塩化金酸水溶液の添加量を10gに変更した以外は実施例1と同様にして白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの透過型電子顕微鏡写真撮影による表面写真(倍率:250,000倍)を図1に示す。また、この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0062】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比率として表2に示した。
【実施例3】
【0063】
Auイオン濃度が1%の塩化金酸水溶液の添加量を6gに変更した以外は実施例1と同様にして白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0064】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比率として表2に示した。
【実施例4】
【0065】
Auイオン濃度が1%の塩化金酸水溶液の添加量を2gに変更した以外は実施例1と同様にして白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0066】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比率として表2に示した。
【実施例5】
【0067】
塩化金酸水溶液の代わりにPtイオン濃度が1%の塩化白金酸水溶液を14g添加した以外は実施例1と同様にして白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0068】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比
率として表2に示した。
【実施例6】
【0069】
Ptイオン濃度が1%の塩化白金酸水溶液の添加量を10gに変更した以外は実施例6と同様にして白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0070】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比率として表2に示した。
【実施例7】
【0071】
Ptイオン濃度が1%の塩化白金酸水溶液の添加量を6gに変更した以外は実施例6と同様にして白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0072】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比率として表2に示した。
【実施例8】
【0073】
Ptイオン濃度が1%の塩化白金酸水溶液の添加量を2gに変更した以外は実施例6と同様にして白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0074】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求め、後述する比較例1で求めた最大出力密度に対する比率として表2に示した。
【0075】
[比較例1]
実施例1と同様にしてカーボンブラック懸濁液(Auイオンを含まず)を調製した。このカーボンブラック懸濁液に、調製例1で得た白金コロイド溶液(白金コロイド平均粒子径:3nm)47g(白金固形分で0.2g)を添加した。白金コロイド添加後の混合懸濁液のpHは2.35であった。この混合懸濁液を20℃で40分間攪拌した後、遠心分離機で固液分離し、更に水を500g加えて3分間洗浄した。遠心分離および洗浄操作を3回繰り返して懸濁液中に残存している白金コロイド、Clイオン、Auイオン等を除去した後、得られた固形物を90℃で乾燥させて白金コロイド担持カーボンを得た。この白金コロイド担持カーボンの分析結果等を表1および表2に示す。
【0076】
また、この白金コロイド担持カーボンを用いた以外は実施例1と同様にして燃料電池用セルを作製して最大出力密度を求めた。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の白金コロイド担持カーボンは、カーボン担体表面における白金コロイドの担持分散性に優れており、従来の白金コロイド担持カーボンに比べて、白金の作用を有効に利用することができ、たとえば燃料電池用触媒として燃料電池に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、実施例2の白金コロイド担持カーボン表面の透過型電子顕微鏡写真(倍率:250,000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PtイオンまたはAuイオンの存在下、平均粒子径1〜100nmの白金コロイドをカーボン担体に担持させることを特徴とする白金コロイド担持カーボンの製造方法。
【請求項2】
カーボンの懸濁液に、PtイオンまたはAuイオンをカーボン固形分100重量部に対して金属元素換算で3〜100重量部含有させ、このイオン含有懸濁液に、15〜40℃で、平均粒子径1〜100nmの白金コロイドをカーボン固形分100重量部に対して金属元素換算で10〜180重量部添加して混合することを特徴とする白金コロイド担持カーボンの製造方法。
【請求項3】
前記Ptイオンが、塩化白金酸、塩化白金(IV)酸カリウム、塩化白金(IV)酸ナトリウム、テトラニトロ白金(II)カリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム水和物、ジニトロジアンミン白金硝酸、ジニトロジアンミン白金アンモニアおよびテトラアンミンジクロロ白金水和物からなる群から選ばれる1種または2種以上の白金化合物、あるいは、前記Auイオンが、塩化金酸、亜硫酸金ナトリウム、シアン化金カリウムおよびシアン化金ナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上の金化合物から得られることを特徴とする請求項1または2に記載の白金コロイド担持カーボンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造された白金コロイド担持カーボン。
【請求項5】
比表面積が100〜1000m2/gのカーボン担体に白金コロイドを担持させた白金
コロイド担持カーボンであって、
前記カーボン担体の比表面積に対する前記白金コロイド担持カーボンの比表面積の低下率が48〜80%であり、かつ、前記カーボン担体の平均細孔容積に対する前記白金コロイド担持カーボンの平均細孔容積の低下率が35〜70%であることを特徴とする白金コロイド担持カーボン。
【請求項6】
前記白金コロイド担持カーボンが、白金を20〜50重量%含有することを特徴とする請求項5に記載の白金コロイド担持カーボン。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の白金コロイド担持カーボンからなる燃料電池用触媒。
【請求項8】
カソード電極及びアノード電極のうち少なくとも一方の電極が、前記燃料電池用触媒を含むことを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【公開番号】特開2007−123108(P2007−123108A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314933(P2005−314933)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】