説明

皮膚および毛髪用の、リコピン異性体の安定で生物学的利用可能な組成物

本発明は、トマト、トマトの一部、その誘導体、または溶媒中トマト抽出物を、長時間溶媒中で加熱することによりシスリコピン(Z型異性体)に富む安定な組成物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性および生物学的利用可能性が高められた、リコピン化合物のZ型異性体に富む少なくとも一種のリコピン含有材料を含む一次組成物、およびその生成方法に関する。本発明は、食品、食品サプリメント、化粧製剤または医薬製剤中にその一次組成物を含む経口組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドの吸収は、食品の微小構造マトリクスからの放出、混合ミセル中への溶解、腸での摂取、カイロミクロンへの取り込み、組織への分散、肝臓での摂取、および次第にLDLに変換されるVLDL中への再分泌を含む、複雑なプロセスである。
【0003】
食品源からのリコピン吸収は、広く文献に記載されている。トマトおよびトマトジュースのような食品からのリコピン生物学的利用可能性は非常に低い。現時点では、トマトペーストが、生物学的利用可能リコピンのための最も良く知られてた食品源である。トマトは、約90%を超える全E型構造のリコピンを含む。
【0004】
多量のリコピンを含むトマト抽出物は含油樹脂の状態で市販されているが、これらの供給源からでは、ヒトにおけるリコピンの生物学的利用可能性がかなり制限されている。濃縮されたトマト抽出物においては、リコピンは主に結晶状態で存在し、これが、その生物学的利用可能性を低下させる主な要因の一つであると言われていた。
【0005】
現時点では、最も市販されているリコピン源は、誘導体(例えばソース)であっても抽出物であっても、出発材料のトマトによく似た異性体プロフィールを示す、またはZ型異性体の僅かな増加のみを示す。例えば熱加工としての多くの処理が異性化を促進することが知られており、Shi et al.、 Journal of Food Process Engineering 2003、 25、 485-498は、トマトソースを加熱することによりZ型異性体を増加させ得ることを示した。しかしながら、ある特定のリコピン異性体は安定でなく、逆異性化する傾向がある。文献によれば、主要なリコピン異性体の中で5−Z型が最も安定であり、全E型、9−Z型および13−Z型がこれに続く。従って、異性化リコピン系生成物の安定性は、そのリコピン異性体プロフィールに依存し、このプロフィールに影響を与える加工技術により調節することができる。
【0006】
リコピンの熱異性化は、食品マトリクスからのその生物学的利用可能性を向上させることが知られている。しかしながら、個々のリコピン異性体の生物学的利用可能性は、今まで研究されていなかった。安定性については、リコピン系生成物の生物学的利用可能性がそのリコピン異性体プロフィールに依存し、よって、技術的手段により調節することができると考え得る。
【0007】
既に、リコピンの向上した生物学的利用可能性のための技術的手段および組成物を提案している特許がある。例えば、WO 2005/075575は、リコピンの生物学的利用可能性の増加に効果的な、Z型異性体に富む一次組成物を提供している。
【0008】
EP 1 103 579は、エタノールを還流することによりリコピンを抽出する方法を開示しており、この方法は、著しい異性化が起こらないように短時間(30秒)行われる。実際は、最終生成物として天然全Z型リコピンが望ましい。
【0009】
WO 96/13178は、安定なリコピン濃縮物の調製方法を開示している。しかしながら、異性化の安定性への効果は認識されておらず、それどころか、開示されている方法は、50℃より低い温度を数分間、例えば、10分間用いることにより異性化を回避しようとしている。
【0010】
EP 1 201 762は、リコピンがその天然全トランス型であるリコピン含有生成物に言及している。どの熱処理(溶解および濃縮)も、可能な最も短い時間(1時間未満)行われるので著しい異性化が起こらない。
【0011】
KR 2005 006592は、増加した抗酸化活性を有するリコピン−亜鉛複合体の調製を開示している。植物材料の細胞壁を破壊するために溶媒の不存在下に加熱を適用する。長時間の加熱は成されず、異性化が生じない。
【0012】
WO 03/079816は、室温で抽出が行われる、リコピン含量が高いトマト抽出物を調製する方法が開示されている。
【0013】
US 5,837,311およびWO 97/48287は、リコピン含量が高く、満足できる安定性を有する含油樹脂の調製方法を開示している。後者の特徴は、含油樹脂そのものの中に存在するリン脂質およびグリセリドにより得られる。リコピンの異性体組成物、および安定性に対するその影響については述べられていない。リコピンの収率を最大にするために熱間抽出が行われるが、1.2時間を超えない時間行われる。果肉−液分離を向上させるためだけに、溶媒の不存在下にトマトに熱予備処理を行う。
【0014】
WO 2005/075575は、トマト含油樹脂中のシス異性体含量が増加する問題に言及しており:異性化は、特に、短時間の熱処理により成される。さらに、得られる生成物は、多量の不安定な13−シス異性体を含む。
【0015】
EP 0 937 412は、溶媒の存在下に非常に短い時間(5秒間)加熱する工程を含む、微粉砕粉状カロテノイド製剤を調製する方法を開示している。
【0016】
US 5、858、700は、グリセリドおよびホスホン酸塩のような不純物を加水分解することを特徴とする、リコピン結晶を単離および精製する方法に関する。加水分解は、高温で、しかし2時間より短い時間行われ、場合により、還流溶媒を用いる抽出工程を先に行うが、常に、リコピンの劣化を防止するために短時間行われる。
【0017】
US 6,235,315は、リコピンが特定の結晶化度を有し異性化度が可能な限り最も低いことを特徴とする、安定な粉状リコピン組成物を開示している。
【0018】
WO 03/090554は、リコピン含量が高く、予め定められた粘度および糖含量を有する濃縮トマト誘導体を開示している。この方法は物理的であり溶媒を用いないものである。果肉の分離を容易にするために、丸ごとトマトに1〜6分間の加熱を行う。
【0019】
Mayer-Miebachらの「Thermal processing of carrots: lycopene stability and isomerisation with regard to antioxidant potential」、Food Research International、 Elsevier Applied Science、 Barking、 GB、 vol. 38、 no. 8- 9、 October 2005、 pages 1103-1108は、凍結乾燥ニンジン中のリコピンの温度の関数としての異性化を研究している。著者は、全トランス異性体のみが長時間の加熱に安定であり、シス異性体が減少すると結論している。
【0020】
実際のところ、従来技術は、有機溶媒中で長時間加熱することにより生物学的利用可能性が高く安定な異性体組成を有する生成物を得ることを含んでなる、リコピンの異性化方法を提供していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
個々のZ型リコピン異性体の安定性は異性体間で異なり、特に、13−Z型リコピンは、5−Z型または9−Z型、あるいは全E型異性体よりも安定性がかなり低いことがわかった。その結果、本発明の一次組成物は、最適の安定性を示すために、13−Z型異性体の含量をできるだけ少なくすべきである。リコピンの一部のZ型異性体(たとえば、5−Zおよび9−Z)が、リコピンを含む組成物の生物学的利用可能性を向上させることも示された。従って、一次組成物は、向上した生物学的利用可能性および生物学的効果を提供するために、主成分として、5−Z型異性体、 または9−Z型異性体と5−Z型異性体との組み合わせを含むべきである。
【0022】
すなわち、本発明の第1の目的は、リコピンのZ型異性体の特定の混合物に富み、5−Z、 9−Zおよびその組み合わせからなる群より選択される異性体の重量%が、13−Z型異性体よりも大きいものである、少なくとも一つのリコピン含有材料を含む、一次組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
一つの態様において、本発明は、該一次組成物を食品、食品サプリメント、化粧製剤または医薬製剤中に含む経口組成物を提供する。
【0024】
一つの態様において、本発明は、栄養組成物、食品サプリメント、ペットフード生成物、化粧製剤または医薬製剤のような経口投与用食品における添加物としての一次組成物を提供する。
【0025】
一つの態様において、本発明は、該一次組成物を、または、それを含む食品サプリメント、化粧製剤または医薬製剤を製造する方法を提供する。
【0026】
もう一つの態様において、本発明は、皮膚の健康の向上を、特に、皮膚の光防御または皮膚組織の老化に対する保護を意図した経口医薬組成物または化粧組成物の調製のための、前述したような一次組成物の使用を提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、心臓血管疾患または癌を予防または治療するための経口医薬組成物または化粧組成物の調製のための、該一次組成物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の利点は、高い安定性、生物学的利用可能性および生物学的効果を示す、リコピンのZ型異性体の組成物を提供することである。
【0029】
さらなる特徴および利点がここに記載され、以下の詳細な説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】トマトペースト(全E型リコピン)、5−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂(5−Z含油樹脂)、13−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂(13−Z含油樹脂)または9および13−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂(9−&13−Z含油樹脂)からの、合計で25mgのリコピンを含む標準食を消費した後の、TRLの血漿リコピン/トリグリセリドの曲線下領域(AUC)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、概して、健康上の利点を提供する組成物に関する。より詳しくは、本発明は、皮膚および毛髪を向上させるために用いることができる有益な栄養組成物、およびそれに係わる方法に関する。
【0032】
本発明は、消費者に、天然産物から得られる改良された組成物を利用可能にする。この一次組成物は、特に高度に生物学的利用可能なおよび/または生物学的効果的な状態でリコピンを提供する。
【0033】
好ましい態様において、本発明は、今まで利用可能な生成物中の天然産のものとは異なる異性体比を有するトマト抽出物またはその誘導体を提供する。特に、本発明は、合計リコピン含量に対して60%以下のE型異性体含量、好ましくは、合計リコピン含量に対して40%以下のE型異性体含量(HPLCによる)を有する抽出物または誘導体に関する。
【0034】
一つの態様において、本発明は、特定の組み合わせのZ型異性体を含む一次組成物を提供する。好ましくは、本発明の一次組成物中のZ/E異性体比率は、1を超えるべきである。
【0035】
さらに、その組み合わせは、好ましくは、5−Zおよび9−Zに富み、13−Zに乏しい。好ましい態様において、5−Zおよび9−Zの量は全リコピン含量に対して30%を超え、好ましくは40%を超え、最も好ましくは50%を超える。また、13−Zの量は、全リコピン含量に対して10%未満、好ましくは5%未満、最も好ましくは3%未満である。特定の5−Zおよび9−Z型異性体を増加させる、および/または、13−Z型異性体を減少させることにより、例えば、生物学的利用可能性がより高く生物学的効果がより高い一次組成物の安定型を得ることができる。さらに、本発明の抽出物または誘導体は、通常の貯蔵条件下において安定であり、逆異性化されない。通常の保護条件(光および酸素が存在しない)下において、リコピン合計含量およびE型異性体含量は一定のままである。抽出物を室温で維持する場合でも、後者は増加しない。
【0036】
そのようなプロフィール(すなわち、リコピンの13−Z型異性体の量が少ないこと)は、例えば、クレーのような固体マトリクス上の触媒作用を利用してリコピンを異性化することにより、または長時間加熱することにより得ることができる。
【0037】
一つの態様において、リコピン含有材料は、例えば、抽出物、濃縮物または含油樹脂の状態であり得る。本発明において、「含油樹脂」という用語は、他のカロテノイド、トリグリセリド、リン脂質、トコフェロール、トコトリエノール、フィトステロールおよび他の重要性の低い化合物を含む可能性がある、リコピン含有材料の脂質抽出物を意味すると解すべきである。驚くべきことに、異性化トマト含油樹脂中のリコピンの逆異性化は、13−Z型異性体中のその含量を低下させることにより最小化することができるとわかった。
【0038】
一つの態様において、リコピン含有材料は、植物または野菜材料、微生物、酵母または動物起源生成物から得られ、抽出され、富含化されまたは精製された、抽出物、濃厚物または含油樹脂であり得る。これは、さらに、以下に記載されるように、リコピンのZ型異性体含量を増加させるための処理に付される。
【0039】
リコピンの供給源が植物起源である場合、それは野菜、葉、花、果実および植物の他の部分であってよい。好ましい態様において、リコピンの供給源はトマトである(すなわち、ホールトマト、トマト抽出物、トマト果肉、トマトピューレ、トマト皮、種を有する場合と有さない場合がある)。適切な植物または野菜濃厚物は、例えば、新しく切り出した植物または野菜、またはその根、果実または種子を乾燥または凍結乾燥し、次に乾燥材料を任意に粉砕または顆粒化することにより得ることができる。前記植物または野菜の抽出物を得るための適切な方法は、当該分野において知られている。植物または野菜抽出物は、例えば、新しく切り出した加工した植物または野菜、またはその根、果実または種子を、水または、一種または二種以上の食品用溶媒、あるいは水と一種または二種以上の食品用溶媒との混合物を用いて抽出することにより得ることができる。好ましくは、本発明の抽出物および濃厚物は、脂質または水性であってよい。カロテノイドは脂溶性であるので、水を用いた抽出により、例えば糖類、アミノ酸、可溶性蛋白および/または有機酸のような水溶性の不必要な成分が除去される。
【0040】
リコピン含有材料が微生物から得られる場合、リコピンを生成する任意の微生物を用いてよく、例えば、乳酸バクテリアのような特定の体によい働きをする微生物を用いることができる。また、動物起源の生成物は、例えば、サケ、エビ、オキアミまたは肝臓抽出物、あるいは乳画分であってよい。この明細書において、「乳画分」という用語は、乳の任意の部分を意味すると解すべきである。
【0041】
別の態様において、リコピン含有材料は含油樹脂であり得る。前記植物または野菜から含油樹脂を得るための適切な方法は、当該分野においてよく知られている。例えば、含油樹脂は、食品、化粧品または薬品と相溶性のある溶媒を用いる脂質抽出により得ることができる。従来法により調製された含油樹脂は、リコピン含量が約0.05〜50重量%である。リコピンの全E型異性体の含量は、通常、Z型異性体より多く、例えば、選択されたトマト含油樹脂中のリコピンのZ/E異性体比率は約7:93である。
【0042】
含油樹脂は、組成物の安定化にも資するビタミンEのような抗酸化物質または他のカロテノイドを含むので、本発明による一次組成物を得るための好ましい出発材料である。含油樹脂中のリコピン化合物の生物学的活性および安定性は、特に、異性化プロセス中に向上させることができ、一次組成物中のZ型リコピンの収率も増加させることができる。
【0043】
リコピン含有材料は、好ましくは、カロテンおよびキサントフィル、例えば、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、カプサンチン、カンタキサンチン、ルテインおよびそれらの誘導体、例えば、エステルを含む。リコピン化合物は、一次組成物中のZ型異性体の分量を増やすための処理に付されていた。
【0044】
そのような異性体プロフィールを得るために、抽出物、濃厚物または含油樹脂の状態であるリコピン含有材料は、中性、酸性または塩基性固体触媒(例えば、クレー、ゼオライト、分子篩、イオン交換体)を用いる異性化に付され、Z/E比率の高い混合物を生成する。Z型異性体のリコピンを増やすための固体触媒の使用は、その触媒を単純な濾過または遠心分離により良好に除去し得るので、食品に汚染的かつ有害であることはない。また、固体触媒と、他の一般的手段(例えば、熱、光およびラジカル開始剤)との組み合わせにより、幾何異性化を向上させることができる。
【0045】
もう一つの態様において、本発明による抽出物または誘導体は、トマト、トマトの一部(例えば皮)、誘導体(例えば、ソースおよび濃厚物)または抽出物から出発して調製することができる。異性化は溶媒中で長時間加熱することにより行われる。この発見は、「発明の背景」のセクションで述べた従来技術から誘導される逆の技術を考慮すると、驚くべきものである。
【0046】
特に、トマトまたはその誘導体を出発材料として用いる場合、リコピンを抽出することができる溶媒でこれらを処理することができる。得られる抽出物を、次に加熱し、溶媒を除去し、それにより、異性化された抽出物が回収される。
【0047】
一方、抽出物または誘導体を出発材料として用いる場合、これを溶媒中に取り込み、混合物を適当な時間加熱し、次に、溶媒を除去し、それにより、異性化された抽出物が回収される。異性化工程に用いることができる溶媒は、炭化水素、塩素化炭化水素、エステル、ケトン、アルコール;具体的にはC3−C10脂肪族炭化水素、C1−C3塩素化溶媒、C3−C6エステル、C3−C8ケトンおよびC1−C8アルコール;より具体的にはヘキサン、四塩化炭素、酢酸エチル、アセトンおよびブタノールである。溶媒中での異性化は、50〜150℃の範囲の温度、好ましくは60〜130℃の範囲の温度で行われる。異性化時間は4〜240時間の範囲、好ましくは10〜180時間の範囲である。
【0048】
一次組成物中のZ/E異性体比率を、次に、少なくとも20:80まで、好ましくは20:80〜95:5の間、より好ましくは30:70〜90:10の間で増加させてよい。好ましい態様において、(5Z+9Z)/E比率は1を超え、13Z型は部分的に除去される。
【0049】
一つの態様において、本発明は、化合物単独よりも優れた生物学的利用可能性および/または生物学的効果を有する、リコピン化合物を含む粉末、液体またはゲルの状態の一次組成物を提供する。また、一次組成物は、粉末状態を選ぶ場合、高度に水分散性の組成物の状態であってよい。この場合、粉末は周囲温度において水に分散性である。一次組成物は、脂質および有機溶媒中に特に高度に溶解性の状態であり、結晶化傾向が少なく、凝集する傾向が低いカロテノイドも提供する。
【0050】
本発明のもう一つの態様において、一次組成物は、単独で、または、以下の他の活性化合物と組み合わせて用いてよい:ビタミンC、ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)、カロテノイド(カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン等)、ユビキノン(例えば、CoQ10)、カテキン(例えば、没食子酸エピガロカテキン);ポリフェノールおよび/またはジテルペンを含むコーヒー抽出物(例えば、カフェオールおよびカフェストール)、チコリーの抽出物、イチョウ抽出物、プロアントシアニジンに富むブドウまたはブドウ種子抽出物、スパイス抽出物(例えば、ローズマリー);イソフラボンおよび関連フィトエストロゲンおよび抗酸化活性を有する他のフラボノイド供給源を含む大豆抽出物;脂肪酸(例えば、n−3脂肪酸)、フィトステロール、プレバイオティック線維、プロバイオティック微生物、タウリン、レスベラトロール、アミノ酸、セレン、グルタチオンの前駆体、または蛋白、例えば、ホエー蛋白。
【0051】
一次組成物は、さらに、一または二以上の乳化剤、安定化剤および他の添加剤を含むことができる。食品分野に適合性のある乳化剤は、例えば、リン脂質、レシチン、ポリオキシエチレンソルビタンモノまたはトリステアレート、モノラウレート、モノパルミテート、モノまたはトリオレエート、モノまたはジグリセリドである。食品、化粧品または薬品分野において知られている任意の安定化剤を添加することができる。また、食品、化粧品または薬品分野において知られている香味料、着色剤および他の適当な添加剤も添加することができる。これらの乳化剤、安定化剤および添加剤は、一次組成物の最終的用途に従って添加することができる。
【0052】
別の態様において、本発明は、食品、食品サプリメント、ペットフード生成物、化粧製剤または医薬製剤中に前述の一次組成物を含む経口組成物を提供する。
【0053】
好ましい態様において、ヒト消費用の食品組成物に、該一次組成物を補助的に加えることができる。この食品組成物は、例えば、栄養完全食品、乳製品、冷却された又は棚に並べられた飲料、ミネラルウォーター、液体飲料、スープ、ダイエットサプリメント、代替食糧、栄養バー、菓子類、乳または醗酵乳製品、ヨーグルト、乳系粉末、腸吸収性栄養生成物、乳児調整食、乳児栄養生成物、穀類または醗酵穀類系生成物、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、料理用生成物、例えば、マヨネーズ、トマトピューレまたはサラダドレッシング、あるいはペットフードであってよい。
【0054】
食品組成物中で用いるために、一次組成物中に含まれるリコピンの一日摂取量が約0.001〜50mgであるように、一次組成物を前記食品または飲料に添加することができる。一日摂取量約5〜20mgが好ましいと考えられる。
【0055】
経口投与用の栄養サプリメントは、カプセル、ゼラチンカプセル、ソフトカプセル、錠剤、糖衣錠、ピル、ペーストまたはトローチ、ガム、または飲用溶液もしくはエマルジョン、シロップまたはゲルに含まれてよく、一次組成物の約0.001〜100%の量で含まれ、水で直接、または他の既知の手段により摂取することができる。このサプリメントは、甘味料、安定化剤、添加剤、香味料または着色剤も含んでよい。化粧目的のサプリメントは、さらに、皮膚に対して活性な化合物を含むことができる。当業者に知られている任意の方法によりサプリメントを作ることができると解すべきである。
【0056】
もう一つの態様において、一次組成物を含む医薬組成物を、予防的および/または治療的処置のために、治療または、疾患およびその合併症の徴候を少なくとも部分的に捕捉するのに充分な量で投与することができる。この明細書において、これを達成するために充分な量を「治療有効量」と定義する。このために効果的な量は、疾患の重症度、および患者の体重および全身状態に依存する。
【0057】
予防的用途において、本発明の一次組成物を、特定の疾患にかかり易いまたはそのリスクのある患者に投与することができる。そのような量は、「予防有効量」と定義する。この用途において、正確な量は、ここでも、患者の健康状態および体重に依存する。
【0058】
別の態様において、本発明の一次組成物を医薬的に許容されるキャリアと共に投与することができ、このキャリアの性質は、投与形式、例えば、非経口、静脈内、経口および局所(眼を含む)経路により異なる。所望の組成物を、例えば医薬品級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウムを包含する種々の賦形剤を用いて作ることができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル、ピル、溶液、懸濁液、シロップ、乾燥経口サプリメントまたは湿式経口サプリメントであってよい。
【0059】
好ましくは、ヒト用として、本発明の医薬組成物は、日用量としてリコピン量が約0.01〜100mgの範囲であるように、前述のような一次組成物の所定量を含むことができる。ペットに毎日投与する場合、リコピンの量は約0.01〜100mgの範囲とすることができる。
【0060】
当業者は、自身の知識に基づいて、注射、局所投与、鼻腔内投与、インプラントによるまたは経皮徐放システムによる投与、等であってよい投与経路を考慮して、意図する組織、例えば、皮膚、結腸、胃、腎臓または肝臓に活性化合物を標的化するための適切な成分および本草薬形状を選択するものと解される。
【0061】
もう一つの態様において、本発明は、前述の一次組成物を含む化粧組成物を提供する。これは、例えば、ローション、シャンプー、クリーム、日よけ剤、日焼け後クリーム、老化防止クリームおよび/または軟膏に調製される。好ましくは、一次組成物の含量は、化粧組成物の重量の10-10〜10重量%とし得る。より好ましくは、化粧組成物は、10-8〜5重量%のリコピンを含む。局所的に使用することができる化粧組成物は、さらに、化粧品において用いることができる脂肪または油、例えば、CTFA work, Cosmetic Ingredients Handbook, Washingtonに記載のものを含むことができる。
【0062】
本発明の化粧組成物は、他の適当な化粧活性成分も含むことができる。この組成物は、さらに、構造化剤および乳化剤を含む。他の賦形剤、着色剤、香味料または乳白剤を化粧組成物に添加することもできる。この化粧生成物は、当業者に知られている異なる成分を混合して含み、目的の物質を皮膚に迅速に貫入させ、貯蔵中の劣化を防ぐものと解される。
【0063】
本発明の概念が、同様に、現在用いられている薬物治療において役立つ補助療法として適用されるとも解すべきである。本発明の一次化合物は容易に食品材料と一緒に投与することができるので、一次組成物を多量に含む特別の臨床食が適用される。添付の請求の範囲と共に本明細書を読むと、当業者は、ここに記載の別の態様に対する異なる種々の変更を思いつくことが明らかである。
【0064】
本発明は、さらに、皮膚の組織を老化に対して保護することを意図した、特に、コラーゲナーゼを阻害してコラーゲンの合成を高めることにより皮膚および/または粘膜への損傷を抑制するための生成物の調製のための、前記一次組成物、経口組成物または化粧組成物の使用に関する。実際、前述のような一次組成物の使用は、例えば、体内のリコピン化合物の生物学的利用可能性を向上させ、皮膚の老化を遅らせることを可能にする。一次組成物は、感受性の高い乾燥または反応性皮膚の予防または治療において、または、皮膚密度または硬度の改良、皮膚光防御の改良、心臓血管疾患または不全および癌の予防または治療にも有用である。これらは、毛髪およびペット動物の毛に対する特別の利点、例えば、改良された毛髪または毛の密度、繊維直径、色、油性、光沢を有し、毛髪または毛の損失の防止に役立つ。
【0065】
ヒトまたはペットの皮膚に対する本発明の一次組成物の陽性効果は、例えば、最小紅斑量(MED)、比色分析、経表皮性水分喪失、DNA修復、インターロイキンおよびプロテオグリカン生成の測定、または、コラーゲナーゼ活性、バリア機能または細胞再生、または超音波検査のような従来法を用いて測定することができる。
【0066】
(実施例)
(実施例1)
リコピン異性体の安定性の研究
リコピン異性体の安定性を、有機溶媒中、およびトマト抽出物中の両方において評価した。
【0067】
材料
lndena s.p.a. (Milan、 Italy)からリコピン富含トマト含油樹脂を得た。合計リコピン含量は9.1%であり、その全E型および5−Z型異性体は、それぞれ93.5%および6.5%であった。酢酸エチル中のトマト含油樹脂の懸濁液(1:10w/w)を1時間または48時間加熱することにより、2種類の異性化含油樹脂を調製した。室温で冷却後、懸濁液を遠心分離し、回収された上澄み中の酢酸エチルを減圧下の蒸留により除去した。
【0068】
ジ−t−ブチル−ヒドロキシ−トルエン(BHT)およびN−エチルジイソプロピルアミンは、Fluka AGから得た。全ての溶媒はHPLC級であり、精製することなく用いた。
【0069】
純リコピン異性体の単離
純5−Z、9−Z、13−Zおよび全E型リコピンを、HPLC分離(実験条件は以下を参照されたい)後に対応するピークを含むフラクションを集めることにより、異性化トマト含油樹脂(1時間加熱済)から単離した。2回の連続的HPLCラン中にピークを集め、対応するフラクションを貯蔵した。
【0070】
リコピン分析
全リコピンの量を、C18プレカラム(ODS Hypersil、5μm、20×4mm; Hewlett Packard、 Geneva、 Switzerland)およびC18カラム(Nova pak、3.9μm内径×300mm長、 Millipore、 Volketswil、 Switzerland)において、逆相HPLCにより決めた。アセトニトリル/テトラヒドロフラン/メタノール/酢酸アンモニウム1%(533.5:193.6:53.7:28、wt/wt/wt/wt)からなる移動相を用いてイソクラティック条件下に室温で分離を行った。移動相流量は1.5mL/分であった。
【0071】
リコピン異性体プロフィールを、Schierleら(Schierle、 J.、 Bretzel、 W.、 Buehler、 I.、 Faccin、 N.、 Hess、 D.、 Steiner、 K.、 Schuep、 W. (1997). Food. Chem. 59: 459)により記載された方法に従って順相HPLCにより決めた。異性化された含油樹脂のサンプルを、BHT50ppmを含むn−ヘキサンに溶解し、Eppendorf Lab遠心分離機において最大速度で回転させた。得られる上澄みを、直ちにHPLCにより分析した。用いたHPLCシステムは、1100 series Hewlett-Packardモデルであり、紫外線−可視光ダイオードアレイ検出器を備えていた。データは、470nm、464nm、346nmおよび294nmで同時に得た。サンプル(10μL)を、3本のNucleosil 300-5カラム(4mm内径×250mm長、 Macherey-Nagel)を組み合わせて用いて分離した。0.15%N−エチルジイソプロピルアミンを含むn−ヘキサンからなる移動相を用いてイソクラティック条件下に室温で分離を行った。流量は0.8mL/分であった。文献データに従ってリコピンZ型異性体を動態した。
【0072】
リコピン異性体の量を、全E型リコピンと同じ減衰係数を用いてHPLCピークの表面積に基づいて計算した。すなわち、Z型異性体の減衰係数は全E型異性体よりも低いと認められるので、Z型異性体を含む生成物中のリコピン濃度は僅かに低く推定された。
【0073】
安定性試験の条件
リコピン異性体の安定性を、酢酸エチル中で4時間加熱することにより異性化されたトマト含油樹脂中とn−ヘキサン中の両方において検討した。この目的で、純リコピン異性体を、光の不存在下に室温でn−ヘキサン中33日間貯蔵し、異性化トマト含油樹脂を、光の不存在下に室温で55日間維持した。貯蔵中、合計リコピン濃度およびリコピン異性体プロフィールを、種々の時間間隔で測定した。
【0074】
(結果)
n−ヘキサン中でのリコピン異性体の安定性
光の不存在下に室温でn−ヘキサン中に貯蔵中の純リコピン異性体の安定性試験の結果を表1に示す。全E型異性体を含む全ての異性体が、貯蔵中に幾何異性化した。13−Z型は安定性が劣る異性体であり:33日間の貯蔵後に5−Z、9−Zおよび全E型リコピンの50%未満が転化し、13−Z型リコピンの80%超がこの期間中に他の異性体に転化した。また、13−Z型リコピンの転化経路は他のZ型異性体と異なり:n−ヘキサン中での貯蔵中に、13−Z型異性体は主に全E型異性体に転化され、5−Zおよび9−Z型異性体は主に他のZ型異性体に転化した。
【0075】
【表1】

【0076】
トマト含油樹脂中でのリコピン異性体の安定性
酢酸エチル中で48時間加熱したトマト含油樹脂中でのリコピン異性体の安定性試験の結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
全リコピン含量は、室温での貯蔵中に安定であった。しかしながら、リコピン異性体プロフィールは、13−Z型リコピン含量の低下および全E型リコピンの増加と共に著しく変化した。9−Zおよび5−Zリコピンの含量は、貯蔵期間中に安定を保った。
【0079】
(結論)
両方の安定性試験が、13−Z型リコピンが、5−Z、9−Zまたは全E型異性体よりも安定性がかなり低いことを示した。結果として、13−Z型リコピンの含量が少ない異性化トマト含油樹脂は、そのリコピン異性体プロフィールの良好な安定性を示すはずである。
【0080】
(実施例2)
生物学的利用可能性が増している異性化トマト含油樹脂
目的
この実験の目的は、ヒトにおける種々のZリコピン異性体の生物学的利用可能性を検討することであった。ヒトにおける特定のZリコピン異性体の生物学的利用可能性を明らかにするために、トマト含油樹脂の異なるZリコピン異性体含量を増加させて、全リコピンの含量の約60%とした。すなわち、一つは5−Z型リコピンに富み、もう一つは13−Z型リコピンに富み、最後の一つは9−Z型リコピンと13−Z型リコピンの混合物に富む。
【0081】
(材料および方法)
被験者
30人の健康な男性を研究に登録した。包含基準は、被験者はベジタリアンではなく、喫煙者ではないこと、および、代謝性疾患、例えば糖尿病;高血圧;腎臓、肝臓または膵臓疾患;または潰瘍を有さないことでああった。被験者は脂質疾患にかかっていない、すわわち、血漿コレステロールとHDLコレステロールとの比が5.0未満、および結晶トリアシルグリセロール(TAG)濃度が1.5mmol/L未満であった。研究中に引き出された大量の血液故に、被験者は血液ヘモグロビン濃度が13g/dLを超える必要があった。研究の開始の3か月前から研究の完了までにコレステロール量を変化させる薬、血液脂質を下げる治療薬、またはビタミンおよびミネラルサプリメントを用いた場合、または、大きな胃腸手術を受けた場合;マラソンのように激しい運動をした場合;および一日にワイン2杯(3dL)以上、ビール2杯(3dL)以上または強い酒1杯(ショットグラス)以上を消費した場合、被験者は研究から排除された。30人のボランティアのうち27人が、4種の食後試験を済ませた。3人のボランティアは、以下の理由により終了前に試験を放棄した:参加不能、眼の傷の医学的治療、脂肪食の消費による吐き気。被験者は24±1歳であり、体重が70±1kgであり、ボディー・マス・インデックス(BMI)が22.5±0.3kg/cm2であった。
【0082】
プロトコールはMarseille(Marseille、 France)の倫理委員会により認可されていた。被験者は、研究の背景および設計についての情報を受け、参加の前に書面でのインフォームドコンセントを提出した。彼らは、自由にいつでも研究から退くことができた。
【0083】
研究設計
これは、二重盲検であり、ランダム化され、4期からなり、4種類の重複する臨床的処置を試し、少なくとも3週間の洗い出し期間が設けられた。一晩断食した後、被験者はClinical Pharmacology and Therapeutic Trial Center of University of Marseilleに着き、小麦セモリナ(水道水200mLを用いて調理)70gと混合されたピーナッツ油40gに混入されたリコピン25mgからなる標準食を消費した。さらに、彼らはパン40g、調理卵白60g、白糖5gを含むヨーグルト125gを食べ、水(Aquarel、 Nestle)330mLを飲んだ。この標準食は、以下の栄養組成で842kcal(3520kJ)を提供した。蛋白(11.7%)、炭水化物(39.3%)および脂質(49.0%)。この食事は、15分以内に消費された。その後の6時間に渡って他の食事は与えられなかったが、吸収後の3時間はひと瓶(330ml)の水を飲むことが許された(Aquarel、 Nestle)。
【0084】
リコピンサプリメント
各々の全リコピン量25mgとして4種類の異なるトマト生成物を試験した。これらは、以下のものからなる。
【0085】
・大部分が全E型であるリコピンを含むトマトペースト(Thorny、 Switzerland)
・5−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂
・13−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂
・9−Zおよび13−Z型リコピンの混合物に富むトマト含油樹脂
表3は、これらの4種類のトマト生成物のリコピン含量、およびリコピン異性体プロフィールを示す。
【0086】
【表3】

【0087】
血液サンプルの採取
空腹時血液を、静脈穿刺により肘静脈からカリウムEDTA/K3を含む減圧管中に引き込み、これを直ちに氷水浴に入れ、露光を避けるためにアルミニウムホイルで覆った。標準食を消費する前、すなわち、20分前および5分前に、および、吸収から2時間、3時間、4時間、5時間および6時間後に、空腹時血液サンプルを採取した。血液を含む管は光から保護し、4℃で貯蔵し、次に、2時間以内に遠心分離(10分間、4℃、2800rpm)して血漿を分離した。阻害剤(10μL/mL)を加えた(Cardin et al.、 Degradation of apolipoprotein B-100 of human plasma low density lipoproteins by tissue and plasma kallikreins、 Biol Chem 1984; 259:8522-8.)。
【0088】
血漿トリグリセリド富含リポ蛋白(TRL)の単離
脂肪食の消費後、食物の親油性分子が、血液中に分泌されたカイロミクロンに取り込まれる。リポ蛋白は、密度に基づき超遠心分離法により分離される。カイロミクロン(0.95g/ml)とVLDL(1.006g/ml)とのかなり類似の密度のために、一方を他方から分離することは不可能であり、一つのフラクション中に一緒に採取し、トリグリセリド富含リポ蛋白(TRL)と呼ぶ。しかしながら、食後の状態において、この血漿TRLフラクションは、腸から分泌されたカイロミクロンを主に含むので、腸での生物学的利用可能性の優れた評価となる。
【0089】
VLDLを殆ど含まない主にカイロミクロンを含むトリグリセリド富含リポ蛋白(TRL)は、直ちに、以下のように超遠心分離により単離した:血漿6mLを0.9%NaCl溶液と共に配置し、L7超遠心分離機(Beckman)にてSW41TIローター(Beckman)中、10℃で32000rpmにて28分間超遠心分離した。遠心分離直後、TRLを分取し、−80℃で貯蔵してから分析決定した。10日以内にリコピン分析を行い、30日以内にトリアシルグリセロールを分析した。
【0090】
分析決定
トリグリセリドを、市販キット(Kit Bio-Merieux)を用いて酵素的かつ比色分析的方法により評価した。
【0091】
全リコピンおよびリコピン異性体プロフィールは、それぞれ、逆相HPLC法および順相HPLC法により決めた(M. Richelle、 K. Bortlik、 S. Liardet、 C. Hager、 P. Lambelet、 L.A. Applegate、 E.A. Offord、 J. Nutr. (2002) 132、 404-408.)。全リコピン含量は、5−Z、9−Z、13−Z、x−Zおよび全E型リコピン異性体の合計として計算した。リコピン異性体は、全E型リコピンの減衰係数を用いて定量した。何故なら、全ての個々のZ型リコピンの正確な値は、まだ未知であるからである。リコピン異性体のプロフィールは、全リコピンに対する個々のリコピン異性体の百分率で表される比率により決められる。
【0092】
統計的分析
リコピン生物学的利用可能性は、TRL中リコピン濃度−時間曲線の下側の面積(AUC)を測定することにより評価した。この面積は、台形法を用いて0〜6時間の期間に渡って計算した(AUC(0〜6時間))。データは、平均±SEMとして示される。ベースライン濃度は、トマトマトリクスからのリコピン25mgを含む標準食を消費する前に採取した2つの血漿サンプルにおいて測定された濃度の平均である。各被験者および各リコピン処理について、吸収後の各時点において測定された濃度値からベースライン濃度を差し引くことによりAUC(0〜6時間)の計算を行った。この値が負である場合、それはゼロと見なした。
【0093】
各処理について、(AUC(0〜6時間))の分布が、対数変換しても変換しなくても正規(Skewness and Kurtosis tests)である場合、固定効果としての処理と変量効果としての被検体を用いる線形混合モデルを用いて比較を行った。
【0094】
全ての統計的分析は、SASソフトウェア(version 8.2; SAS Institute、 Cary、 NC)を用いて行った。統計的試験における棄却水準は5%に等しかった。
【0095】
(結果)
リコピン生物学的利用可能性
4種類のトマト処理が、トリグリセリド分泌の程度の変化を誘発したので、トリグリセリド吸収を用いてリコピン生物学的利用可能性を正規化した(AUC(0〜6時間))。
【0096】
正規化されたリコピン生物学的利用可能性は、4種類のトマト処理の間で著しく異なっていた(図1)。
【0097】
驚くべきことに、5−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂からのリコピン生物学的利用可能性は、他の3種類の処理、すなわち、トマトペースト、13−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂、および13−Zおよび9−Z型リコピンの混合物に富むトマト含油樹脂からのものより約2倍優れたいた(p<0.0001)(図1)。
【0098】
しかし、リコピンは、13−Zおよび9−Z型のトマト含油樹脂の混合物からと同程度にトマトペーストからの生物学的利用可能性を示した。
【0099】
13−Z型トマト含油樹脂中に現れるリコピンは、トマトペーストと比較して、僅かであるが有意に低い生物学的利用可能性を示した(p<0.03)。
【0100】
(結論)
これらの結果は、リコピン分子の構造が、胃腸管中でのリコピンの交通に著しく影響を与え、その結果、吸収されたリコピンの量に影響を与えることを示している。5−Z型リコピンに富むトマト抽出物からのリコピン生物学的利用可能性は、トマトペーストからの約2倍である。これに対し、9−Zおよび13−Z型リコピンの混合物に富むトマト抽出物に存在するリコピンは、トマトペースト中に存在するものと同程度に生物学的利用可能性があり、一方、13−Z型リコピンに富むトマト含油樹脂は、生物学的利用可能性が少し低いリコピンを示す。トマト生成物中のZ型リコピンの存在は、リコピン生物学的利用可能性の上昇に関係していることを、複数の著者が既に指摘している。この発明は、リコピン生物学的利用可能性の向上が、リコピンの構造に特異的に関連している、すなわち、5−Z型リコピン>9−Z型リコピン>13−Z型リコピンであることを示す最初の研究である。
【0101】
(実施例3)
酢酸エチル中での抽出および異性化
リコピン100ppmを含む新鮮なトマト52kgを切断しホモジナイズする。水の一部を減圧下に蒸発除去し、トマト濃縮物18kgを得る。これを、水飽和酢酸エチル36Lで抽出し、抽出は、混合物を室温に維持し、光から遮断し、2時間攪拌する。抽出物を、次にトマト濃縮物から分離する。そのようなトマト濃縮物に、合計で108Lの溶媒を用いて前記手順を2回繰り返す。併せた抽出物を、分離漏斗で水27Lを用いて洗う。次に水相を廃棄し、有機相は減圧下に濃縮して、10%w/vの乾燥残渣を含む懸濁物を得る。乾燥残渣は、全リコピン含量が9.1%w/wであり、Z型異性体含量が0.46%w/wである。この混合物を、攪拌下に7日間還流(76℃)してから、減圧下に濃縮して乾燥させる。
【0102】
全リコピン含量が9%w/wでありZ型異性体含量が5.59%w/wである最終的抽出物46.8gを得、詳しくは、E型異性体含量が3.41%w/wであり、13−Z型異性体含量が0.16%w/wである。抽出物のHPLCプロフィールを図1に報告する。
【0103】
(実施例4)
ヘキサン中での抽出および異性化
リコピン140ppmを含む新鮮なトマト10kgを切断しホモジナイズする。水の一部を減圧下に蒸発除去してトマト濃縮物2.5kgを得、これをヘキサン12.5Lで抽出する。抽出は、混合物を室温に維持し、光から遮断し、攪拌下に2時間行う。次に抽出物をトマト濃縮物から分離する。前記手順を、合計で25Lの溶媒を用いて、そのようなトマト濃縮物に1回繰り返す。抽出物を併せ、減圧下に濃縮して、乾燥残渣10%w/vを含む溶液を得る。乾燥残渣は、全リコピン含量が9.1%w/wであり、Z型異性体含量が0.46%w/wである。この混合物を、攪拌下に6日間還流(69℃)してから、減圧下に濃縮して乾燥させる。全リコピン含量が9.1%w/wでありZ型異性体含量が5.62%w/wである最終的抽出物16.5gを得、詳しくは、E型異性体含量が3.38%w/wであり、13−Z型異性体含量が0.18%w/wである。
【0104】
(実施例5)
ブタノール中での異性化
リコピン90ppmを含む新鮮なトマト10kgを切断しホモジナイズする。水の一部を減圧下に蒸発除去してトマト濃縮物3.4kgを得、これを水飽和酢酸エチル7Lで抽出する。抽出は、混合物を室温に維持し、光から遮断し、攪拌下に2時間行う。次に抽出物をトマト濃縮物から分離する。前記手順を、合計で21Lの溶媒を用いて、そのようなトマト濃縮物に2回繰り返す。併せた抽出物を、分離漏斗において水5.3Lで洗う。次に水相を廃棄し、有機相は減圧下に濃縮して乾燥させる。全リコピン含量が7.8%w/wであり、Z型異性体含量が0.40%w/wである乾燥残渣(9.8g)を、n−ブタノール98ml中に懸濁させる。混合物を攪拌下に130℃に4時間維持してから、減圧下に濃縮して乾燥させる。全リコピン含量が6.35%w/wでありZ型異性体含量が4.50%w/wである最終的抽出物9.8gを得、詳しくは、E型異性体含量が1.85%w/wであり、13−Z型異性体含量が0.47%w/wである。
【0105】
(実施例6)
個体触媒上での異性化
材料
リコピン富含トマト含油樹脂を、lndena s.p.a.(Milan、 Italy)から得た。その全リコピン含量は9.1%であり、そのうち、全E型異性体および5−Z型異性体は、それぞれ、93.5%および6.5%であった。
【0106】
方法
酢酸エチル中のトマト含油樹脂の懸濁液(1:100w/w)を濾過し、固体触媒5%と共に室温で一定速度で攪拌しつつ2時間インキュベートした。混合物を、Eppendorf Lab遠心分離機において最大速度で遠心分離し、上澄みの一部をN2下に蒸発させ、n−ヘキサン/BHT中に再び懸濁させた。
【0107】
リコピン分析
全リコピン量およびリコピン異性体プロフィールを、実施例1に記載の分析条件下に、それぞれ、逆相HPLCおよび順相HPLCにより決めた。
【0108】
(結果)
個体触媒を用いて室温で2時間異性化したトマト含油樹脂中で測定されたリコピン異性体プロフィールを表4に報告する。
【0109】
【表4】

【0110】
リコピンは、Tonsil OptimumまたはAmberlyst 15の存在下に室温で酢酸エチル中、2時間反応させる間に効率的に異性化された。両方の触媒を用いると、大量のリコピン全E型異性体がZ型異性体に転化した。同定されたリコピン異性体のうち、5−Z型が主に形成され、続いて、それぞれ9−Z型および13−Z型であった。すなわち、13−Z型異性体の濃度は、異性化されたトマト含油樹脂中で10%未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコピン含有材料を溶媒中で長時間加熱することによりシスリコピン(Z型異性体)に富む安定組成物を製造する方法。
【請求項2】
リコピン含有材料が溶媒中の、トマト、トマトの一部、それらの誘導体またはトマト抽出物からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒がC3−C10脂肪族炭化水素、C1−C3塩素化溶媒、C3−C6エステル、C3−C8ケトンまたはC1−C8アルコールである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶媒がヘキサン、四塩化炭素、酢酸エチル、アセトンおよびブタノールから選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
加熱温度が50〜150℃の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加熱時間が4〜240時間の範囲である請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−500302(P2010−500302A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523178(P2009−523178)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006747
【国際公開番号】WO2008/017401
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】