説明

皮膚の状態、障害または疾患の処置のための胎児皮膚細胞タンパク質組成物、ならびにその作製法および使用法

本発明は、皮膚の状態、障害または疾患を患う被験体を処置するために設計された方法および組成物を提供する。この組成物は、誘導された細胞溶解の後に胎児皮膚細胞から得られる胎児皮膚細胞タンパク質を含む。胎児皮膚細胞は、妊娠6〜24週、好ましくは妊娠12〜16週で得られ、胎児の皮膚組織全体または胎児の皮膚組織断片から得られる。胎児皮膚細胞としては、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞、またはそれらの組み合わせおよび混合物を挙げることができる。好ましくは、胎児皮膚細胞は、胎児線維芽細胞を含む。胎児皮膚細胞は、不死化させることができ、細胞バンクまたは細胞株から得ることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、皮膚の状態、障害または疾患を患う被験体を処置するために設計された方法および組成物に関する。この組成物は、誘導された細胞溶解の後に胎児皮膚細胞から得られる胎児皮膚細胞タンパク質を含有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
妊娠期間のある時期まで、胎児の皮膚は、損傷した後、瘢痕形成をまったく伴わずに、あるいは非常に軽微な瘢痕形成を伴うだけで治癒し(瘢痕のない修復(scarless repair)または瘢痕のない治癒(scarless healing)とも呼ぶ)(非特許文献1)、これは、妊娠の特定の期間の胎児の皮膚における、協調された細胞反応の最適な(均整のとれた)オーケストレーション(調節)を示唆する。しかし、新生児、および大人の皮膚(非胎児の皮膚に相当する)は、損傷した後に瘢痕治癒し、これは、胎児以外の皮膚における協調された細胞反応が、胎児の皮膚ほど最適ではなく、均整がとれていないことを示唆する。
【0003】
大きな動物やヒトでは、損傷した後の瘢痕のない修復は、妊娠中期ないし妊娠後期の初期まで起こる。この期間の頃、胎児の皮膚の創傷時の胎児の創傷治癒は、瘢痕のない治癒から瘢痕治癒に移行する。皮膚では、胎児における瘢痕のない修復は、通常の付属器(毛嚢、汗腺、アポクリン腺)を伴う組織化された真皮の再生によって特徴づけられる。瘢痕のない治癒は、少なくとも部分的に、創傷後の均整のとれた(最適な)前−および抗−炎症性反応に相当する、炎症の相対的な欠如の結果であると考えられている。
【0004】
瘢痕なしで治癒する能力は、胎児の皮膚に固有であると考えられ、おそらく、サイトカインを含めた多くの調節タンパク質の組織化された相互作用の結果である。これは、以下で説明する。
【0005】
瘢痕のない胎児の創傷は、炎症をほとんど伴わずに治癒し、胎児における修復中の瘢痕化の開始は、急性炎症性浸潤の存在と相関する(非特許文献2)。さらに、瘢痕なしで治癒する創傷への炎症の誘導によって、コラーゲン沈着や瘢痕化が増大する。これは、瘢痕形成中の炎症の重要な働きを示唆する。免疫系が発達し、その結果としての炎症反応が増大すると、修復部位で瘢痕形成が起こる。損傷した線維芽細胞による細胞外基質(ECM)の合成および再構築は、おそらく、修復後の真皮構造の主要な決定因子である。瘢痕化と、瘢痕のないコラーゲン構造との違いは、大人と胎児との線維芽細胞の表現型の違いによって、ある程度説明することができる。
【0006】
胎児と大人の線維芽細胞は、コラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、および他のECM成分の合成の割合が異なる。インビトロでは、胎児線維芽細胞は、大人の線維芽細胞よりも多くのタイプIIIおよびIVコラーゲンを合成する。胎児線維芽細胞は、同時に増殖(または成長)し、コラーゲンを合成することができる。胎児線維芽細胞は、大人の線維芽細胞よりも、コラーゲンゲルに移動する能力が高い。細胞密度の増大は、大人では、HA産生を減少させるが、胎児線維芽細胞HA合成に対しては影響を与えない。
【0007】
トランスフォーミング成長因子(TGF)アイソフォームTGF−β1およびTGF−β2(どちらのアイソフォームも、成長因子である;成長因子は、サイトカインタンパク質ファミリーに属する)は、前繊維形成(profibrotic)機能(線維形成を誘発する)を有し、瘢痕形成を促進する。その発現は、通常の創傷治癒中に増大し、大人の創傷に対して、この成長因子を外因的に投与すると、コラーゲン、プロテオグリカン、および炎症細胞蓄積が増大する。TGF−β1はまた、マトリクスメタロプロテイナーゼを低下させ、また、マトリクスメタロプロテイナーゼ発現の内因性の抑制因子を増大させ、これは、コラーゲン蓄積および瘢痕化に好都合である可能性がある。さらに、TGF−β1およびTGF−β2に対する抗体を中和することを伴う大人ラット創傷の処置は、瘢痕形成を低下させる。フィブロモジュリン(TGF−β調節因子)を用いる療法が、出生後の瘢痕化を低下させることも報告されている。
【0008】
さらに、ある任意のアイソフォームの絶対的な量ではなく、TGF−βアイソフォームの相対的な比が、創傷修復の予後を決定すると考えられる。瘢痕のない胎児の創傷では、TGF−β3(TGF−βのアイソフォーム)発現が増大するのに対して、TGF−β1発現は変化しない。逆に、瘢痕化する胎児の創傷では、TGFβ1発現は増大し、TGF−β3は低下する。外因的なTGF−β3を用いる大人ラット創傷の処置は、瘢痕形成を低下させる。こうしたデータは、TGF−β1とTGF−β3の比が、創傷形成後に皮膚構造が回復するか、あるいは瘢痕形となるかどうかを決定する可能性があることを示唆する。
【0009】
インターロイキン(サイトカインタンパク質ファミリーに属する)は、炎症細胞の走化性および活性化を調節する。インターロイキン6(IL−6)が、単球の走化性およびマクロファージ活性化を刺激するのに対して、インターロイキン8(IL−8)は、好中球を引き寄せ、新血管形成を刺激する。創傷は、IL−6およびIL−8の迅速な増加を刺激し、これは、大人では持続するが、胎児では直ちに消える。血小板由来成長因子(PDGF、サイトカインタンパク質ファミリーに属する成長因子)は、IL−6の大人での線維芽細胞産生を誘発する。さらには、胎児の創傷にIL−6が加えられることによって、初期の瘢痕化が引き起こされる。胎児では、大人と比較して、線維芽細胞IL−6およびIL−8発現は、ベースラインで、またPDGFを用いる刺激の後で、より低い。インターロイキン10(IL−10)は、IL−6およびIL−8の産生を低下させることによる抗炎症機能を有する。例えば、大人のマウスでは、IL−10を過剰発現するアデノウイルスベクターで処置された創傷は、炎症の低下と、瘢痕のない治癒を示すことが示されている。
【0010】
PDGFおよび線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーは、さらなる前繊維形成サイトカインである。PDGF(線維芽細胞に対する強力なマイトジェンおよび化学遊走物質)は、瘢痕形成中に発現が延長されるが、胎児の創傷においては直ちに消える。例えば、PDGFを用いる胎児のウサギ創傷の処置は、急性の炎症、線維芽細胞補充、およびコラーゲン沈着の著しい増加を誘発することが示された。ケラチノサイト成長因子−1および−2(サイトカインタンパク質ファミリーに属する成長因子)を含めたFGFファミリーのサイトカインは、胎児の皮膚中において、在胎月齢が増大すると共に、また、大人の創傷形成中に、発現が多くなる。
【0011】
対照的に、内皮細胞(血管内皮成長因子)に対するマイトジェン(VEGF、サイトカインタンパク質ファミリーに属する成長因子)は、瘢痕のない創傷では、二倍に増大するのに対して、瘢痕化する胎児の創傷では、その発現は、変化しないままである。したがって、血管形成および血管透過性に対する刺激の増大は、胎児の創傷を迅速に治癒させることを助ける可能性がある。
【0012】
過去10年にわたって得られてきた知識の大きな増加にもかかわらず、瘢痕のない治癒の正確な機構はわかっていない。瘢痕のない胎児の創傷修復は、様々な細胞のメディエーター(サイトカインや他のタンパク質など)を必要とする、しっかりと調節された(組織化された)プロセスである。
【非特許文献1】Dang Cら、Clin Plast Surg 2003:30、13〜23
【非特許文献2】G.P.Yangら、Wound Rep Reg 2003;11:411〜418
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在の処置は、瘢痕のない治癒の機構を提供しない。したがって、本発明の一目的は、皮膚の状態、障害または疾患を患う被験体、および/または、瘢痕のない治癒を必要とする被験体、および/または、皮膚炎症に対する均整のとれた反応を必要とする被験体を処置するための組成物および開示された組成物を使用するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含む、皮膚の状態、障害または疾患を患う被験体を処置するための組成物を提供する。ただし、前記胎児皮膚細胞タンパク質は、細胞溶解の後の、1以上の胎児皮膚細胞から得られる。
【0015】
胎児皮膚細胞は、妊娠6〜24週、好ましくは妊娠12〜16週で得られる。胎児皮膚細胞は、胎児の皮膚組織全体または胎児の皮膚組織断片から得られる。胎児皮膚細胞としては、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル(Merkel)細胞、またはそれらの組み合わせおよび混合物を挙げることができる。好ましくは、胎児皮膚細胞は、胎児線維芽細胞を含む。胎児皮膚細胞は、不死化させることができる。胎児皮膚細胞は、細胞バンクまたは細胞株から得ることができる。
【0016】
胎児皮膚細胞タンパク質は、精製されていてもよいし、1以上の細胞成分を含んでいてもよい。胎児皮膚細胞タンパク質としては、サイトカイン、酵素、ホルモン、細胞外基質構造タンパク質、ニューロペプチド、またはニューロペプチドアンタゴニストを挙げることができる。サイトカインとしては、成長因子、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子、またはケモカイン、あるいはそれらの組み合わせおよび混合物を挙げることができる。胎児皮膚細胞タンパク質は、0.001%から95%の間の濃度で組成物に組み込むことができる。より好ましくは、0.01%から5%の濃度で組成物に組み込まれる。最も好ましくは、0.05%から0.25%の濃度で前記組成物に組み込まれる。
【0017】
前記組成物としては、鎮痛剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、酸化防止剤、反対刺激剤(counter irritant)、抗微生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、保存剤、タンパク質安定化剤、プロテアーゼ阻害剤、皮膚保護剤、日焼け防止薬、またはそれらの組み合わせおよび混合物を挙げることができる。
【0018】
前記組成物は、局所、粘膜、眼、直腸、または膣投与に適している。好ましくは、前記組成物は、局所的投与に適している。
【0019】
前記組成物は、薬剤または美容用途に適した、軟膏、ローション、クリーム、泡、ムース、スプレー、エアロゾル、エマルジョン、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、マスク、ゲル、ヒドロゲル、溶液、スポンジ、または分散液であり得る。前記組成物は、油中水型または水中油型エマルジョン、あるいは油中水型または水中油型エマルジョンベースのクリームであり得る。
【0020】
細胞溶解は、誘導されるものであり、自然発生的なものではない。細胞溶解は、力学的に、物理的に、または化学的に実施することができる。好ましくは、細胞溶解は、1以上の凍結融解のサイクルによって実施される。細胞溶解は、1ミリリットルの水溶液系に懸濁させた100個から60,000,000個の胎児皮膚細胞を用いて実施することができる。より好ましくは、細胞溶解は、10,000,000個から20,000,000個の胎児皮膚細胞を用いて実施される。水溶液系は、生理緩衝液系であり得る。より好ましくは、水溶液系は、リン酸緩衝食塩水系である。水溶液系は、1以上のタンパク質安定化化学物質、プロテアーゼ阻害剤、抗微生物剤、抗菌剤、酸化防止剤、保存剤、またはそれらの組み合わせおよび混合物をさらに含むことができる。
【0021】
本発明はまた、皮膚または粘膜の状態、障害または疾患を処置する方法であって、それを必要とする被験体に組成物を投与することを含む方法を提供する。ただし、前記組成物は、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含み、それによって、前記の状態、障害または疾患を処置する。皮膚または粘膜の状態、障害または疾患は、炎症性の皮膚または粘膜の状態、神経性または神経炎症性の皮膚または粘膜の状態、急性または慢性の創傷、急性または慢性の潰瘍または火傷であり得る。
【0022】
本発明はまた、炎症性の皮膚状態を処置する方法であって、それを必要とする被験体に組成物を投与することを含む方法を提供する。ただし、前記組成物は、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含み、それによって、前記状態を処置する。炎症性の皮膚状態は、外陰部前庭炎症候群、感覚異常性外陰部痛、外陰部痛、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、外陰部硬化性苔癬、皮脂嚢胞、脂漏性皮膚炎、酒さ、座瘡、ケロイド、掻痒症、白色萎縮、フケ、おむつかぶれ、光線皮膚炎(photo−dermatoses)、周囲潰瘍、瘢痕、または乾皮症であり得る。
【0023】
本発明はまた、外陰部痛を処置する方法であって、それを必要とする被験体に組成物を投与することを含む方法を提供する。ただし、前記組成物は、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含み、それによって、前記状態を処置する。好ましくは、外陰部痛は、外陰部前庭炎症候群または外陰硬化性苔癬である。この方法は、副腎皮質ステロイド、エストロゲン、プロゲステロン、リドカイン、カプサイシン、イソトレチノイン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ダプソン、アシクロビル、三環式抗うつ薬、あるいはそれらの可能な組み合わせまたは混合物を投与することをさらに含むことができる。
【0024】
本発明はまた、1以上の創傷、潰瘍、または火傷を処置する方法であって、それを必要とする被験体に組成物を投与することを含む方法を提供する。ただし、前記組成物は、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含み、それによって、前記1以上の創傷または火傷を処置する。この方法は、フィルム、親水コロイド、ヒドロゲル、泡、ワセリン、シリコン、シリコンシート、アルギン酸カルシウム、またはセロハンを投与することをさらに含むことができる。この方法の組成物は、外部圧迫を伴って投与することができる。好ましくは、外部圧迫は、1以上の包帯によって与えられる。包帯は、軽量の伸縮包帯、軽いサポート包帯、または圧迫包帯であり得る。
【0025】
本発明はまた、美容または皮膚科学的処置と組み合わせて皮膚の外観を改善する方法であって、組成物をその必要性がある被験体に投与することを含む方法を提供する。ただし、前記組成物は、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含み、それによって、前記皮膚を処置する。美容および/または皮膚科学的処置は、ケミカルピーリング、フィジカルピーリング、皮膚擦傷法、マイクロピーリング(microdermabrasion)、光および/またはレーザー処置、強力パルス光(intense pulse light)処置、高周波処置、熱処置、酸素および/またはオゾン処置、電気外科的剥皮またはコブレーション(coblation)、ムダ毛脱毛、タトゥー除去、ボツリヌス毒素注入、フィラー注入、シリンジリポスカルプチャー、シリンジ脂肪移植、美容または非美容外科的手技、冷凍外科療法または寒冷療法、および/または局所的薬物適用(α−ヒドロキシ酸、アゼライン酸、安息香酸、過酸化ベンゾイル、β−ヒドロキシ酸、ベタメタゾン、クエン酸、クリンダマイシン、副腎皮質ステロイド、ジクロフェナク、ジスラノール、フルオロウラシル、グリコール酸、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロキノン、インドメタシン、イソトレチノイン、コウジ酸、乳酸、メトロニダゾール、フェノール、レチノイン酸、レチノール、レチンアルデヒド、レチノイルβ−グルクロニド、サリチル酸、硫化セレニウム、スルファセタミドナトリウム、イオウ、タザロテン、トレチノイン、トリクロロ酢酸、尿素またはその誘導体を含有する)、あるいはこれらの美容または皮膚科学的処置の任意の組み合わせであり得る。美容または皮膚科学的処置は、酒さ処置であってもよい。
【0026】
好ましくは、本発明によって提供される方法によって処置される、その必要のある被験体は、動物である。好ましくは、その動物は、ウマである。より好ましくは、被験体は、ヒトである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
様々な研究により、非常に多くの皮膚の条件、異常、および/または疾患は、複雑な免疫学的および炎症性の経路の活性化をしばしば伴う、多因子による原因を有することが多いことが示唆されている。例えば、疾患に関連する機構の発達を組織化するサイトカインの広いネットワークは、炎症性、神経性、および/または神経炎症性の皮膚の状態、異常、および/または疾患において存在する。皮膚再生、皮膚修復、または創傷治癒中の協調された細胞反応の調節は、多くのサイトカインの相互作用をさらに必要とする(Physiol Rev 83:2003,835〜870)。
【0028】
したがって、非常に多くの炎症性、神経性、および/または神経炎症性の皮膚条件、異常、または疾患が、特定の活性物質の組み合わせによって、および/または特定の処置計画の組み合わせによって、より首尾よく処置することができることが推測できる。
【0029】
今日、大抵の炎症性、神経性、および/または神経炎症性の皮膚条件、異常および/または疾患は、単一の活性薬剤で処置される。まれに、増強された、相乗効果的な、あるいは補足的な薬物活性および有効性を得るために、2つ、あるいは最高3つまでの活性薬剤が、同じ製剤中で組み合わせられる。一例として、同じ製剤中の、ヒドロコルチゾンと塩酸プラモキシンなどの2つの外用鎮痛薬の組み合わせが示される。別の例では、サリチル酸と共に局所的副腎皮質ステロイド(それぞれ、ジプロピオン酸ベタメタゾンおよびジフルコルトロン)を使用する乾癬のための併用療法によって、有効性が改善された(Am J Clin Dermatol 5,2004,71〜77)。局所適用に関しては、他の同様の例が、当業者に知られている。こうした例は、同じ組成物中に活性な薬物実体として2つまたはそれ以上の合成化学物質を組み合わせた製剤に相当する。2つ以上の活性なタンパク質を組み合わせた同様の生物薬剤組成物は、それほど多くはない。例えば、こうした生物薬剤製品は、現在市販されていない。
【0030】
胎児の皮膚が損傷した後に、ほとんどまたはまったく瘢痕形成を伴わずに治癒する妊娠期間に達成される、胎児皮膚細胞の誘導された細胞溶解(誘導された細胞破壊)は、皮膚炎症、皮膚再生、および皮膚修復の均整のとれた(最適な)オーケストレーション(調節)のための胎児皮膚細胞タンパク質を提供する。「誘導された」は、ヒトおよび/または人間によって計画された、意図された、設計された、かつ/またはあらかじめ決められたと定義される。「誘導された」は、自然発生的である、あるいは自然の中に天然に存在するものとは反対のものと、さらに定義される。人間によって誘導される細胞溶解は、アポトーシス(プログラム細胞死)ではなく、細胞の培養条件の変化に起因する壊死(プログラムされていない細胞死)でもないと、さらに定義される。
【0031】
誘導された細胞溶解は、力学的、物理的、および/または化学的な方法によって達成することができる。例えば、1以上のサイクルの凍結融解は、誘導された細胞溶解の例である。
【0032】
誘導された細胞溶解によって、細胞状態(例えば:継代数、生存率、細胞周期、集密のレベルなど)の特定の定義された瞬間に、ある単一のステップでタンパク質を得ることが可能になる。その結果、誘導された細胞溶解によって、細胞溶解の瞬間に存在する、特定のタンパク質組成物のタンパク質混合物(自然に均衡のとれた最適なタンパク質混合物に相当する)を得ることが可能になる。この組成物は、生細胞を組成物に組み込む場合(ここでは、タンパク質が、徐々に、かつ/またはアポトーシスまたは壊死の間および後に、放出される(エキソサイトーシスによって細胞によって排出される)、かつ/または細胞によって別に生成される)とは異なる。さらに、誘導された細胞溶解によって、以下を得ることが可能になる:(1)細胞によって通常放出されないタンパク質、(2)放出プロセスまたはエキソサイトーシス中に改変されないタンパク質、(2)翻訳後修飾の程度が異なるタンパク質(翻訳後修飾は、ジスルフィド架橋の形成、および/または酢酸塩、リン酸塩、様々な脂質および炭水化物などのいくつかの生化学的官能基の付着を必要とする可能性がある。酵素がまた、ポリペプチド鎖のアミノ端から1以上のアミノ酸を除去する可能性がある、あるいは、鎖内でポリペプチドを切断する可能性がある)、および/または(3)前駆形(pro−form)(例えば活性なタンパク質の不活性の前駆物質)のタンパク質。前駆形のタンパク質は、最終の(活性な)タンパク質よりも安定であることが多い。前駆形のタンパク質は、組成物中で、かつ/または、一旦これらが標的組織に到達してから、かつ/または標的細胞で(例えば皮膚、皮膚細胞で)、酵素(例えばヒドロラーゼ)によって活性化される可能性がある。さらに、誘導された細胞溶解は、タンパク質をさらに安定化する(分解、加水分解、立体配置的変化および/または変性を妨げる)のを助ける、その天然の、細胞壁がないが細胞に似た環境で、タンパク質を得ることを可能にする。細胞溶解を誘導する別の利点は、こうして得られたタンパク質が、ストレスがかけられた細胞によって一般に放出される/産生されるタンパク質を含有しない、あるいはより少ない量しか含有しないという事実である。これは、細胞を含有する組成物で起こる可能性がある。一般に、細胞組成物中の細胞は、細胞の栄養分、pH−変化、温度変化、酸化的ストレス、および/または、組成物投与の間の細胞の成長および/または生存率に影響を与える他の環境的、物理的、および化学的因子の欠如に起因して、ストレスを受けるようになる。こうしたストレスを受けた細胞によって産生されるある種のタンパク質は、炎症誘発性の性質である、かつ/またはほとんどあるいはまったく臨床的有効性がない、かつ/または、有害である可能性がある。
【0033】
米国特許出願2003/10175256号(本明細書中に参考として援用される)を、ここで、細胞組成物の代表例として与える。この組成物は、コラーゲン基質または担体と共に組み込まれる未分化胎児皮膚細胞を含む。
【0034】
好ましい実施形態の1つでは、細胞溶解は、凍結/融解または凍結融解によって誘導される。この技術は、(例えば、液体窒素中、ドライアイス中、およびアルコール浴中などで)胎児皮膚細胞および/または胎児皮膚細胞懸濁液を凍結し、その後、室温および/または37℃で材料を解凍することを含む。この誘導された細胞溶解の方法は、細胞を膨張させ、凍結プロセス中に氷晶の形として最終的に破壊させ、その後、解凍中に収縮させるものである。一般に、凍結融解の複数のサイクルは、効率的な溶解のために必要である。凍結/融解は、細胞中に位置するタンパク質を効率的に放出することが示されている。
【0035】
前記誘導された細胞溶解の後に得られる前記タンパク質は、1以上のタンパク質の混合物を含み、脂質、ポリサッカリド、核酸、および/または他の生体分子などの他の皮膚細胞成分を含有してもよく、しなくてもよい。生体分子は、生きている生物および細胞中に天然に存在する化学物質である。生体分子は主として、炭素(C)および水素(H)、その他に窒素(N)、酸素(O)、リン(P)、および硫黄(S)からなる。こうした元素(C、H、N、O、P、およびS)以外に、他の元素も、時として組み込まれるが、あまり一般的ではない。脂質、ポリサッカリド、および核酸は、生体分子の例である。
【0036】
タンパク質は、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸のポリマーである;タンパク質は、1つ、2つ、またはそれ以上のポリペプチド鎖からなる可能性がある。タンパク質は、様々なタンパク質タイプ(例えば、水溶性タンパク質、膜結合型タンパク質、細胞表面タンパク質、構造タンパク質、相同タンパク質など)、および/または様々な酵素クラス(オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、および/またはリガーゼ)である可能性があり、様々な程度でグリコシル化されている可能性がある。タンパク質はまた、ペプチドおよび/またはポリペプチドとも呼ばれる可能性がある。
【0037】
前記誘導された細胞溶解によって、誘導された細胞溶解の瞬間に細胞中に存在する、タンパク質の生理学的な、天然の、あるいは最適な(あるいは自然に均衡のとれた)混合物として、前記タンパク質を得ることが可能になる。上の定義された誘導された細胞溶解によって前記タンパク質を得るのとは対照的に、皮膚の状態、障害または疾患の処置のための組成物への生細胞の組み込みは、前記タンパク質を得ることを可能にしない。生細胞が組み込まれる場合、得られるタンパク質は、誘導された細胞溶解によって得られるタンパク質とは異なる特性(例えばタンパク質構造、タンパク質組成、サイトカインの存在、安定性など)および/または活性(例えば増殖の刺激、抗炎症特性など)をもつものとなる。
【0038】
生細胞は、細胞生存率が測定可能なものである細胞である。細胞生存率は、これらに限定されないが、代謝活性の測定(例えば:MTT[3−(4(5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)]アッセイ、ATP[アデノシン三リン酸]アッセイ)、組織培養における生存および成長(例えば増殖アッセイ)、機能性アッセイ、代謝物質組み込み(例えば蛍光ベースのアッセイ)、構造変化、および膜完全性(例えばLDH(乳酸脱水素酵素)アッセイ)を含めて、様々な細胞生存率アッセイを使用して測定することができる。各生存率アッセイ法は、細胞生存率の異なる定義に基づく。
【0039】
さらに、前記誘導された細胞溶解の後に得られる前記胎児皮膚細胞タンパク質は、操作、分離、精製、濃縮、改変、分別、安定化、および保管することができる。さらに、前記胎児皮膚細胞タンパク質は、改変の有無にかかわらず、様々な担体(送達形態、放出形態、製剤、装置)に組み込むことができる。この新考案の好ましい実施形態の1つでは、前記担体は、薬剤適用および/または美容適用のための適切な局所用調製物である。適切な局所用調製物は、美容および/または薬剤適用のための、(当業者に)適した成分を含有し、(当業者に)適した調製方法を用いて調製される。前記の局所用調製物は、体表面(例えば皮膚、頭皮、および/または粘膜)に適用される。粘膜は、上皮にカバーされる、外胚葉起源の内張りであり、吸収および分泌に関与する。これらは、外部環境および内臓に対して露出する様々な体腔に沿って並ぶ。これは、いくつかの場所:鼻孔、口唇、耳、局部(陰茎、外陰部および膣、および肛門を含む)では、皮膚と連続的である。
【0040】
皮膚の状態、障害または疾患を患う被験体を処置するために設計された組成物は、誘導された細胞溶解によって、1以上の胎児皮膚細胞から得られる、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質を含む。前記胎児皮膚細胞は、ヒトおよび/または動物起源である。これらは、胎児の発達中に皮膚組織が存在する場合の妊娠期間の任意の時点で、1以上の胎児皮膚組織サンプルおよび/または胎児皮膚組織断片から得られる。本発明の好ましい実施例の1つでは、前記胎児皮膚細胞を産生する胎児皮膚組織、胎児皮膚組織サンプル、および/または胎児皮膚組織断片は、胎児の皮膚が、子宮における手術後に、瘢痕形成を全くせずに、あるいは最小限しかせずに創傷治癒を示す場合の妊娠期間に得られる。
【0041】
本発明は、前記胎児皮膚細胞タンパク質を得るために、妊娠中期から妊娠後期の初期までの前記胎児皮膚組織の使用を記載する。好ましい実施形態の1つでは、前記胎児皮膚組織は、在胎齢6〜24週の間に採取される(外科的に除去される、生検によって採取される、あるいは他の方法で試料採取される)。別の好ましい実施形態では、胎児皮膚組織は、在胎齢8〜18週の間に採取される。好ましい実施形態では、前記胎児皮膚組織は、妊娠12〜16週の間にヒト胎児から採取される。
【0042】
前記胎児皮膚細胞は、皮膚組織採取、皮膚生検、または皮膚組織収集によって、皮膚組織の一部として、あるいは全体として得られる。胎児皮膚細胞は、胎児皮膚組織、組織断片、および/または組織サンプルを適切な培養条件下で培養プレート中に置き、標準の細胞培養技術を使用して増殖させることによって得ることができる。胎児皮膚細胞培養株または胎児皮膚細胞株は、細胞バンクおよび/または細胞株を確立することから得ることができる。胎児皮膚細胞は、継代数が多くなるかつ/または細胞倍加数が大きくなるまで、培養および増殖(成長、増大)させることができる。胎児皮膚細胞は、細胞特性、特に細胞の遺伝子および/またはタンパク質の発現プロフィールが、胎児皮膚組織から得られる細胞の細胞特性と同様、あるいはそれに匹敵するような継代数および/または倍加数まで、選択的に培養および増殖される。胎児皮膚細胞が、少ない継代数および/または細胞倍加数までしか、培養および増殖されないことも多い。
【0043】
胎児皮膚細胞は、いずれの分化または増殖状態でもよい。これらは、未分化であっても分化していてもよい。胎児皮膚細胞は、これらに限定されないが、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、ランゲルハンス細胞およびメルケル細胞を含めて、胎児の表皮および胎児の真皮に存在するすべての皮膚細胞タイプを含む。本発明は、単一の皮膚細胞型の使用と、胎児皮膚細胞タイプの任意の比の細胞数での任意の組み合わせまたは混合物の使用との両方を含む。好ましい実施形態の1つでは、1以上の胎児の皮膚線維芽細胞が使用される。別の好ましい実施形態では、1以上の胎児の皮膚ケラチノサイトが使用される。さらなる実施形態では、1以上の胎児のケラチノサイトと、1以上の胎児線維芽細胞の組み合わせが使用される。
【0044】
胎児線維芽細胞は、胎児の皮膚が起源である、あるいは胎児の皮膚から取り出される細胞と定義され、これは、当業者によって成体の真皮線維芽細胞に対して使用されるのと共通というよりも、同様あるいは類似の方式で、細胞培養条件下(例えば培地)で培養および成長(増殖)させることができる。胎児のケラチノサイトは、胎児の皮膚が起源である、あるいは胎児の皮膚から取り出される細胞と定義され、これは、当業者によって成体の表皮ケラチノサイトのために使用されるのと共通というよりも、同様あるいは類似の方式で、細胞培養条件下(例えば培地)で培養および成長(増殖)させることができる。胎児のメラノサイトは、胎児の皮膚が起源である、あるいは胎児の皮膚から取り出される細胞と定義され、これは、当業者によって成体の表皮メラノサイトのために使用されるのと共通というよりも、同様あるいは類似の方式で、細胞培養条件下(例えば培地)で培養および成長(増殖)させることができる。胎児のランゲルハンス細胞は、胎児の皮膚が起源である、あるいは胎児の皮膚から取り出される細胞と定義され、これは、当業者によって成人のランゲルハンス細胞のために使用されるのと共通というよりも、同様あるいは類似の方式で、細胞培養条件下(例えば培地)で培養および成長(増殖)させることができる。胎児のメルケル細胞は、胎児の皮膚が起源である、あるいは胎児の皮膚から取り出される細胞と定義され、これは、当業者によって、成人のメルケル細胞のために使用されるのと共通というよりも、同様あるいは類似の方式で、細胞培養条件下(例えば培地)で培養および成長(増殖)させることができる。
【0045】
任意選択で、胎児皮膚細胞または胎児皮膚細胞株は、使用前に、有糸分裂的に不活性化することができる。有糸分裂不活化は、γ照射、有糸分裂抑制剤によって、かつ/またはマイトマイシンと共にインキュベーションすることによって実施することができる。
【0046】
任意選択で、胎児皮膚細胞は、不死化させるかつ/または遺伝子を形質移入することができる。永続的または不死化された胎児皮膚細胞は、胎児皮膚組織から得ることができる。永続的または不死化された胎児皮膚細胞としては、これらに限定されないが、不死化された胎児皮膚線維芽細胞、および/または不死化された胎児皮膚ケラチノサイト、および/または不死化された胎児メラノサイトが挙げられる。これらは、ヒトおよび/または動物起源の、前記胎児皮膚組織から得られる。前記永続的または不死化された胎児皮膚細胞は、高い(非常に多くの)継代の後であっても、最初の(不死化せず、永続的でない)胎児皮膚細胞の分化の潜在的可能性を維持する、かつ/または最初の胎児皮膚線維芽細胞、最初の胎児皮膚ケラチノサイト、および/または胎児メラノサイトの分化タンパク質特性を発現するように設計される。より詳細には、抗炎症関連のプロセスに関与するタンパク質、および/または皮膚再生、皮膚修復、および/または創傷治癒のオーケストレーション(調節)に関与するタンパク質を、高い(非常に多くの)継代の後であっても産生(発現、合成)する能力を維持する永続的な胎児皮膚細胞(または永続的な胎児皮膚細胞株)を得ることが、本発明の一目的である。
【0047】
1以上の胎児皮膚細胞タンパク質は、前記誘導された細胞溶解(細胞破壊)によって、1以上の胎児皮膚細胞から得られる。胎児皮膚細胞タンパク質は、主にタンパク質(>75%の乾燥重量)からなる、あるいは、これらに限定されないが、アミノ酸、細胞外基質成分(例えばヒアルロン酸)、DNA、RNA、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質、糖、単糖、多糖、ミネラル、水、塩、他の任意の細胞外または細胞内物質を含めて、他の生体分子ならびに/または細胞由来の有機および/あるいは無機成分を含むことができる。胎児皮膚細胞タンパク質は、さらなる処理および/または操作の有無にかかわらず使用することができる。例えば、胎児皮膚細胞タンパク質は、1つまたはいくつかの精製および/または分離ステップの後で使用することができる。例えば、少し、ほとんど、あるいはまったくRNAおよび/またはDNAを含有しない胎児皮膚細胞タンパク質は、適切な操作、分離、および/または精製ステップによって、RNAおよび/またはDNAを除去あるいは部分的に除去することによって得ることができる。同様に、高濃度または高純度の単一の特定のタンパク質を得るために、1以上の操作、精製、および/または分離ステップを、誘導された細胞溶解の後に含めることができる。同様に、高濃度または高純度の2種またはそれ以上のタンパク質を含む定義されたタンパク質混合物を得るために、1以上の操作、精製および/または、分離ステップを、誘導された細胞溶解の後に含めることができる。
【0048】
この新考案の他の群の実施形態では、胎児皮膚細胞タンパク質は、前記胎児皮膚細胞タンパク質の遠心分離の後に得られる上清(液体、混合物が遠心分離された後に残された可溶性の化合物を含有する)のみを含む。この新考案のさらなる実施形態では、胎児皮膚細胞タンパク質は、胎児皮膚細胞タンパク質の遠心分離の後に得られる細胞ペレット(遠心分離チューブの底に残された細胞材料)のみを含む。
【0049】
本発明の好ましい実施形態の1つでは、胎児皮膚細胞タンパク質は、成人の真皮線維芽細胞のための標準の(通常または一般の)細胞培養条件下で(例えば、約10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum)(FBS、ウシ胎児血清(fetal calf serum)、またはFCSとも呼ばれる)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を使用して、37℃、5%から10%CO、かつ湿度>80%のインキュベーター内で)培養された胎児皮膚細胞の誘導された細胞溶解後に得られる、胎児皮膚細胞タンパク質の自然に均衡のとれた混合物を含む。あるいは、無血清(FCSまたはFBSなしの)培養培地(または培地)および/または血清欠乏培地(例えば、<10%ウシ胎児血清)の使用はまた、成人の真皮線維芽細胞のための標準の細胞培養条件と考えられる。抗生物質(例えばペニシリン、ストレプトマイシンなど)を含む培地の補充も、標準の細胞培養条件と考えられる。
【0050】
他の群の実施形態では、胎児皮膚細胞タンパク質は、標準でない培養条件下で培養された、胎児皮膚細胞の誘導された細胞溶解の後に得られる胎児皮膚細胞タンパク質の混合物も含む。標準でない細胞培養条件としては、これらに限定されないが、限られた時間、または長時間ににわたる、酸化的および/または化学的ストレス、物理的および/または力学的ストレス下での、かつ/または培養温度を上昇または低下させた細胞培養が挙げられる。胎児皮膚細胞による特定のサイトカインの産生を増大させるための、選択された化学薬品および/またはタンパク質(例えばPDGFなど)での培地の補充も、非標準の細胞培養条件と考えられる。
【0051】
この新考案の好ましい実施形態の1つでは、前記胎児皮膚細胞タンパク質は、サイトカインを含む。サイトカインは、調節因子として作用する、また、正常または病理学的条件下で、個々の細胞および組織の機能的活性を調節する、多様な群のタンパク質およびペプチドの総称を指す。こうしたタンパク質はまた、細胞間の相互作用を直接的に仲介する、また、細胞外環境で起こるプロセスを調節する。
【0052】
「The Cytokine Handbook」(第4版、2003年、Academic Press、Angus W.ThomsonおよびMichael T.Lotzeによる)および/または「Cytokines Online Pathfinder Encyclopedia」(http://www.copewithcytokines.de/cope.cgi)に(これらを、個々に本明細書中に参考として援用する)記載されている通り、サイトカインは、成長因子、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子、ケモカイン、および様々な他のタンパク質を含む。
【0053】
大部分ではあるが、すべてのサイトカインが、糖タンパク質であるわけではない。サイトカインをコードする多くの遺伝子は、選択的スプライシングによって、サイトカインの様々な変異形を生じさせることができ、わずかに異なるが、生物学的に重要な生物活性をもつ分子を生ずることとなる。多くの場合、異なる形のサイトカインの、あるいはサイトカインファミリーのメンバーの発現パターンは、部分的にではあるがオーバーラップし、これは、各因子の特定の役割を示唆している。また、多くのサイトカインについて、膜結合型の形が記載されており、いくつかは、細胞外基質と関連する可能性もある。
【0054】
ほとんどすべてのサイトカインは、複数の生物活性を示す多面的エフェクターである。さらに、複数のサイトカインは、しばしば活性がオーバーラップし、単一の細胞が、見かけ上は同一の反応(クロストーク)を有する複数のサイトカインとしばしば相互作用する。この機能的オーバーラップの結果の1つは、1つの因子がしばしば、別の因子を完全に機能的に置き換える可能性がある、あるいは、別の因子の欠如を少なくとも部分的に補うことが観察されることである。大抵のサイトカインは、広範な生物活性を有するので、生理機能の通常の調節因子としてのその生理学的有意性は、評価するのが困難であることが多い。
【0055】
多くのサイトカインは、刺激または抑制活性を示し、他のサイトカインおよび/または他の因子の作用と、相乗作用する(相乗効果として働く)、あるいは拮抗する(アンタゴニストとして働く)。単一のサイトカインは、ある種の状況下では、他の状況下で示されるものと逆の反応を誘発する可能性もある。
【0056】
特定のサイトカインによって誘導される細胞活性のタイプ、期間、さらに程度は、細胞の微小環境によって、例えば、細胞の成長状態(低密度または密集)、隣接する細胞のタイプ、サイトカイン濃度、同じ時点で存在する他のサイトカインの組み合わせに応じて、さらに、同じ細胞に作用しているいくつかのサイトカインの時間的順番に応じて、かなり影響を受ける可能性がある。こうした状況下では、このように、組合せの効果により、単一のサイトカインが、多様なシグナルを、細胞の異なる亜集団に伝えることが可能になる。
【0057】
サイトカインは、胚形成および器官発達に関与する重要なメディエーターであり、こうしたプロセスにおけるその活性は、出生後(誕生後)に観察されるものとは異なる可能性がある。さらに、これは、神経免疫性、神経内分秘性、および、神経調節性プロセスにおいて重要な役割を果たす。サイトカインは、有糸分裂、分化、遊走、細胞生存および細胞死、ならびに形質転換の重要な正または負の調節因子である。
【0058】
サイトカインの生物活性は、知られている実質的にすべての細胞型上で発現することができる特定の膜レセプターによって仲介される。その発現はまた、いくつかの調節性機構に従うが、ある種のレセプターはまた、恒常的に発現される。サイトカインレセプタータンパク質は、いくつかの特性を共有することが示されている。多くのレセプターは、サイトカインレセプターファミリーのメンバーである。多くのレセプターは、リガンドと結合し、その固有のチロシンキナーゼ活性に起因して、同時にシグナルトランスデューサとしての機能も有するマルチサブユニット構造である。多くのレセプターは、しばしば、同じファミリーにおいて共通のシグナル変換レセプター成分を共有し、これは、少なくとも部分的に、サイトカインの機能的重複性を説明する。
【0059】
これは、最終的には、刺激の多数の多様性の統合を可能にする、異なるシグナリングシステム間のクロスコミュニケーション(cross−communication)である(細胞は、様々な生理学的状況下にさらされる可能性がある)。
【0060】
ある種の組換え型サイトカインは、現在、臨床使用中であり、既知のサイトカインから、それぞれの因子の長所を持つが短所は持たないハイブリッド分子を開発する試みがなされているが、現在の知識が、依然として限られているという事実を知っていなければならない。サイトカインは、反応のカスケードを誘発することができる強力な両刃の「武器」であり、持つことが望まれる単一の非常に特殊な特性をしばしば越える活性を示す可能性がある。新しい因子が、絶えず発見されており、それらによって、サイトカインネットワークについての我々の知識が広げられている。
【0061】
サイトカイン群の1つは、インターロイキンならびに成長およびコロニー刺激因子である。インターロイキンは、白血球および(皮膚細胞を含めて)他の細胞型によって産生される、一群の十分に特徴づけられたサイトカインに対する総称である。これらは、非常に様々な細胞型の活性および能力を調節する広い範囲の機能活性を有し、また、これらは、炎症性および免疫性の反応を調節するサイトカインネットワークのメンバーとして特に重要である。成長因子は、細胞表面上のレセプターに結合するタンパク質であり、細胞の増殖かつ/または分化を活性化するという第1の結果を伴う。多くの成長因子は非常に用途が広く、非常に多くの異なる細胞タイプにおいて細胞の分裂を刺激するのに対して、特定の細胞型に特有であるものもある。
【0062】
さらに、前記の胎児皮膚細胞タンパク質は、これらに限定されないが、Enzyme Nomenclature 1992(Academic Press、San Diego、California)およびその増補に公開される通り、オキシドレダクターゼ(EC 1)、トランスフェラーゼ(EC 2)、ヒドロラーゼ(EC 3)、リアーゼ(EC 4)、イソメラーゼ(EC 5)、およびリガーゼ(EC 6)を含めて、すべての既知の酵素クラス由来の酵素を含み得る。
【0063】
前記のオキシドレダクターゼとしては、これらに限定されないが、アクセプターとして過酸化物に作用するオキシドレダクターゼ(サブクラスEC 1.11;カタラーゼおよび/またはグルタチオンペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ(EC 1.11.1)が含まれる)、および/またはアクセプターとして過酸化物ラジカルに作用するオキシドレダクターゼ(サブクラスEC 1.15;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および/またはスーパーオキシドレダクターゼが含まれる)を挙げることができる。
【0064】
前記の胎児皮膚細胞タンパク質はまた、(これらに限定されないが、ホルモン、ニューロペプチド、神経ホルモン、および/またはそのそれぞれのレセプターアンタゴニストを含めた)ペプチドおよび/またはタンパク質を含み得る。
【0065】
本発明の別の実施形態では、胎児皮膚細胞タンパク質は、1以上の前記胎児皮膚細胞の調整培地中に含有されるタンパク質を含む。調整培地は、使用済み(使用された、消耗した)培地、およびタンパク質、および細胞培養期間中に細胞によって培地に放出される他の細胞由来成分を含有する溶液である。
【0066】
前記の胎児皮膚細胞タンパク質は、様々な組成物に組み込む(導入する、含ませる、混合する、ブレンドする、乳状化する、均質化する、かつ/または加える)ことができる。組成物は、皮膚の状態、障害または疾患を患う被験体を処置するために設計された組成物を得るために、局所、粘膜、眼、直腸、および/または膣適用)に適した担体、製剤、または装置に、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質を組み込むことによって形成される。好ましい実施形態の1つでは、胎児皮膚細胞タンパク質は、薬剤かつ/または美容適用に適した局所用調製物に組み込まれる。
【0067】
この発明の別の実施形態では、前記胎児皮膚細胞を培養した後に得られる調整培地は、局所、粘膜、眼、直腸、および/または膣適用に適した担体、製剤、または装置に組み込まれる。
【0068】
前記組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患には、これらに限定されないが、炎症性の皮膚状態、神経性または神経炎症性の皮膚状態、急性および慢性の創傷、急性および慢性の潰瘍、および火傷が含まれる。
【0069】
好ましい実施形態の1つでは、炎症性、神経性、かつ/または神経炎症性の皮膚状態は、外陰部前庭炎および外陰部硬化性苔癬を含む外陰部痛である。
【0070】
この発明の別の実施形態では、前記組成物によって処置される前記皮膚の状態、障害または疾患としては、粘膜または粘膜の組織が処置された皮膚と隣接しているところの粘膜の状態、障害または疾患が挙げられる。
【0071】
本発明の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患の例には、座瘡、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、白色萎縮、フケ、皮膚炎、手の湿疹、疱疹状皮膚炎、おむつかぶれ、湿疹、全身性剥脱性皮膚炎、ケロイド、局所性および/または全身性掻痒症、光線皮膚炎、周囲潰瘍、乾癬、瘢痕、皮脂嚢胞、脂漏性皮膚炎、酒さ、および/または乾皮症がさらに含まれる。
【0072】
本発明の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患の例には創傷も含まれ、急性および慢性の創傷(潰瘍)も含まれ、急性および慢性の潰瘍、および/または火傷も含まれる。
【0073】
本発明の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患の例には、皮膚同種移植、皮膚自家移植、三次元皮膚構築、かつ/または他の創傷ケアレジメンを用いる単回または反復的な処置の間の、かつ/または処置の後の、創傷、潰瘍、および/または火傷が、さらに含まれる。
【0074】
手術後の創傷も、本発明の組成物によって処置される。手術には、それだけには限らないが、非美容、美容、形成、および/または再建外科処置が含まれる。
【0075】
美容、形成、および再建外科処置には、これらに限定されないが、乳房リフト、乳房増大または縮小、フェイスリフト、額リフト、鼻の手術、耳の手術、眼瞼の手術、腹部の手術、リポスカルプチャー(liposculpturing)、脂肪吸引、瘢痕修正、脂肪移植、軟組織増大、冷凍外科療法または寒冷療法、毛髪移植、爪の手術、硬化療法、レーザー手術、タトゥー除去、および/または静脈手術が含まれる。
【0076】
さらに、前記組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患は、これらに限定されないが、正常な皮膚および/または健康な皮膚、内因的および/または外因的に老化した、あるいは光老化した皮膚を含めて、病気によるものではない皮膚状態を含む。さらに、前記組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患は、美容製品、薬学的または皮膚科学的製品、家庭用品、工業製品、および/または皮膚に有害な成分(腐食性薬品、皮膚刺激物および皮膚アレルゲンなど)を含有する製品にさらされた(に接触した)皮膚を含む。
【0077】
美容および/または皮膚科学的製品には、これらに限定されないが、1以上の皮膚摩擦材(exfolliant)、表皮剥離剤、疣除去剤、脱毛剤、ケミカルピーリング、フィジカルピーリング、セルフタンニング成分、香料、脱臭剤、フケ防止活性物質、抗座瘡活性物質、抗炎症剤、抗酒さ活性物質、メイクアップ化粧品、染料、着色添加物、色素、スキンライトナー(skin lightener)、肌美白剤(skin whitening agent)、酸化防止剤、脂質、肌用栄養剤(skin nutrient)、日焼け防止薬、界面活性剤、ポリマー、タンパク質、筋弛緩剤(myorelaxant)、老化防止成分、しわ防止剤、保湿剤、保水剤、ビタミン、皮膚軟化剤、被膜剤、リポソーム、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノスフィア、マイクロスフィア、および/またはそれらの任意の可能な混合物および組み合わせを含有する製品が含まれる。
【0078】
前記の美容および/または皮膚科学的製品は、以下の成分の1つまたは組み合わせを含むことができる:フルーツ酸、α−ヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、アゼライン酸、安息香酸、過酸化ベンゾイル、ベタメタゾン、クリンダマイシン、副腎皮質ステロイド、ジクロフェナク、ジスラノール、フルオロウラシル、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロキノン、インドメタシン、イソトレチノイン、コウジ酸、メトロニダゾール、フェノール、レチノイン酸、レチノール、レチンアルデヒド、レチノイルβ−グルクロニド、サリチル酸、硫化セレニウム、ナトリウムスルファセタミド、イオウ、タザロテン、トレチノイン、トリクロロ酢酸、尿素、脂肪酸、脂肪酸エステル、ビタミンA、B、C、D、E、F、H、およびK、ならびにそれらの任意の誘導体。
【0079】
α−ヒドロキシ酸には、これらに限定されないが、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸アンモニウムと組み合わせられたグリコール酸、α−ヒドロキシエタン酸アンモニウムと組み合わせられたα−ヒドロキシエタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリル酸、混合フルーツ酸、トリ−αヒドロキシフルーツ酸、トリプル(triple)フルーツ酸、およびサトウキビエキスが含まれる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態の1つでは、前記組成物は、美容および/または皮膚科学的処置から生じる皮膚および/または皮膚状態を処置するために使用される。美容および/または皮膚科学的処置には、これらに限定されないが、ライトケミカルピーリング、ミディアムケミカルピーリング、ディープケミカルピーリング、フィジカルピーリング、ワキシング、マイクロピーリング、皮膚擦傷法、光処置(強力パルス光、光変調(photomodulation);可視、非可視、赤外線、および/または紫外線光を用いる処置)、レーザー処置、高周波処置、熱処置(温熱、寒冷、温熱および寒冷の繰り返し)、電気処置、超音波処置、力学的処置(マッサージ、圧迫、吸入、バイブレーション、擦れ、擦過)、酸素および/またはオゾン処置、注入および/またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。前記組成物は、美容および/または皮膚科学的処置の前に、後に、かつ/または間に(並行して)、前記美容および/または皮膚科学的処置と組み合わせて使用される。
【0081】
これらに限定されないが、家庭用品および/または工業製品としては、石鹸、洗剤、シャンプー、洗浄製品、手洗い用製品、塗料、エポキシ硬化剤、有機溶剤、酸、塩基、金属、高温または低温の液体、および高温または低温の材料、あるいは機器が含まれる。
【0082】
別段の記述がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下の意味を有する:
用語「処置される」「処置」または「処置法」などは、レシピエントの状態の変化を指す。この変化は、主観的であっても客観的であってもよく、処置される疾患または状態の症状、徴候、または外観などの特徴に関する。例えば、患者または/および被験体が、かゆみまたは痛みの低下を示す場合には、処置の成功が存在している。同様に、臨床医が,例えば生検サンプルの組織学的分析によって客観的変化を確認する場合も、処置は成功している、あるいは、臨床医は、患者の検査に応じて、炎症性の病変または他の異常の低下を確認する可能性がある。これも、改善、または処置の成功に相当するであろう。レシピエントの状態の悪化の予防も、この用語に含まれる。処置の利益には、本明細書に述べる通りに処置される状態の反応を示すいくつかの主観的または客観的因子のうちのいずれも含まれる。
【0083】
用語「薬物」、「薬品」、「医薬品」、「活性物質」、「薬剤」および「活性剤」などは、同義的に使用され、所望の、通常有益な効果をもたらすために生物に送達される、任意の処置的に活性な物質に対して、その最も広い解釈を有することが意図されるものである。一般に、これには、すべての主要な処置領域における処置薬が含まれ、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよび炭水化物、ならびに無機イオンも含まれる。
【0084】
(皮膚の状態、異常、および/または疾患)
皮膚の状態、異常および/または疾患を患う被験体を処置するために設計される本発明の組成物は、誘導された細胞溶解によって1以上の胎児皮膚細胞から得られる、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質を含む。本発明は、局所、粘膜、眼、直腸、および膣適用に適した担体に混合された、組み込まれた、あるいは組み合わせられた1以上の胎児皮膚細胞タンパク質を含む組成物を調製する方法を開示する。
【0085】
この組成物は、様々な炎症性、神経性、および/または神経炎症性の皮膚状態;外陰部痛、外陰部前庭炎、外陰部硬化性苔癬、アトピー性皮膚炎または湿疹、手の湿疹、脂漏性皮膚炎、酒さ、乾癬、局所的および/または全身性掻痒症、光線皮膚炎および/または日焼け、および放射線皮膚炎などの異常または疾患を処置するために使用することができる。
【0086】
この組成物は、さらに、軽い火傷、軽い創傷、割れ、ひび、かき傷、事故による創傷、潰瘍、周囲潰瘍皮膚などの急性および慢性の創傷;創縫合後の皮膚、および/または標準の創傷レジメンによる治癒、および/または白色萎縮を処置するために使用することができる。
【0087】
この組成物はまた、これらに限定されないが、ライトケミカルピーリング、ミディアムケミカルピーリング、ディープケミカルピーリング、フィジカルピーリング、ワキシング、マイクロピーリング、皮膚擦傷法、光処置(可視、非可視、赤外線、紫外線)、レーザー処置、高周波処置、熱処置(温熱、寒冷、温熱および寒冷の繰り返し)、電気処置、超音波処置、力学的処置(マッサージ、圧迫、吸入、バイブレーション、擦れ、擦過)、酸素および/またはオゾン処置、注入、美容整形、および/またはこれらの任意の組み合わせを含めて、美容および/または皮膚科学的処置後の皮膚または皮膚状態の外観を向上させる(あるいは美しくする)ために使用することもできる。前記組成物は、美容および/または皮膚科学的処置の前に、後に、かつ/または間に(並行して)、前記美容および/または皮膚科学的処置と組み合わせて使用される。
【0088】
さらに、この組成物は、瘢痕および/またはケロイドを予防する、かつ/または外観を向上させるために使用することができる。また、この組成物は、皮膚、特に乾皮症に起因する乾燥した皮膚または乾皮症にかかった皮膚に水分または潤いを与えるために使用されることができる。
【0089】
この発明の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患の、簡潔であるが不完全な説明を、次のパラグラフに与える。皮膚の状態、障害または疾患の症状、診断、および処置に関する、より詳細で定期的に更新される情報は、静脈学(veneorology)、男性病学、創傷治癒、皮膚科学および/または美容に関する標準のテキスト(例えば、「Fitzpatrick’s Dermatology in General Medicine」(第5版;I.M.Freedberg、A.Z.Eisen,K、Wolff,K.F.Austen、L.A.Goldsmith、S.I.Katz、およびT.B.Fitzpatrick編)、および「Textbook of Cosmetic Dermatology」(第2版;R.BaranおよびH.I.Maibach編)(これらを、個々に本明細書中に参考として援用する)に出ている。
【0090】
(炎症性の皮膚状態)
多くの皮膚の状態、障害または疾患(これらに限定されないが、座瘡、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、白色萎縮、フケ、皮膚炎、手の皮膚炎または手の湿疹、疱疹状皮膚炎、おむつかぶれ、湿疹、全身性剥脱性皮膚炎、ケロイド形成、局所性または全身性掻痒症、光線皮膚炎、周囲潰瘍、乾癬、皮脂嚢胞、脂漏性皮膚炎、酒さ、外陰部痛、外陰部前庭炎または外陰部前庭炎症候群、外陰部硬化性苔癬が含まれる)は、炎症性、神経性、および/または神経炎症性の皮膚状態、障害または疾患のカテゴリに分類される。
【0091】
外陰部前庭炎症候群は、外陰部痛の最も一般的なサブタイプの1つである)。これは、症状を説明する客観的な臨床所見がなく、外陰部前庭に限られる痛みを伴う、複雑な女性の疾患である。外陰部前庭炎症候群の特徴は、外陰部前庭に限定される局所的な痛みと、接触または圧迫に応答するその誘発という特性である。この点において、これは、感覚異常性外陰部痛(これは、刺激の有無にかかわらず生じる、慢性の、しばしば非局在性の外陰部の痛みを伴う)とは異なる。
【0092】
Friedrich(J Reprod Med 32、1987、110〜114)によれば、VVSの症状は、外陰部前庭に局在化している。VVSを認識するための基準には、以下が含まれる:(1)前庭への接触または膣進入を試みる際の痛み、(2)外陰部前庭に局在化される圧迫に応答する圧痛;および(3)様々な程度の前庭紅斑に限定される身体的所見(J Reprod Med 32、1987、110〜114)。紅斑は、拡散している可能性も集中している可能性もあり、前庭腺の開口部周辺に、あるいは陰唇小帯に局在化する可能性がある。前庭紅斑および圧痛の他の原因、例えば、カンジダ症(酵母感染)またはヘルペス感染などは、除外されるべきである(SmartおよびMacLean:Curr Opin Obstet Gynecol 15、2003、497〜500)。
【0093】
VVSは、急性である可能性も慢性である可能性もあるが、2つの形態を区別するために、6ヶ月で任意に区切ることが、最も受け入れられている。VVSの原因は、多因子からなる。菌類または細菌感染(例えばカンジダ)、化学的刺激物(例えば:石鹸)、処置薬(例えば:消毒薬、座薬、クリーム)、およびアレルギー性の薬物反応が、急性型の原因と推測される。急性型では、推定される原因の処置によって、迅速な軽減がもたらされる可能性がある。
【0094】
この状態は、性機能を著しく損ない、かなりの心理的苦痛をもたらす。刺すような、焼けるような、あるいは皮膚がむけるような感覚と表現される痛みの他、他の症状として、かゆみ、はれ、および擦過が挙げられる。重い場合、痛みによって性交が妨げられる可能性がある。さらに、タンポン挿入、サイクリング、またはきついパンツをはくことによって、不快感が誘発される可能性がある。病的状態は、局所的な症状を越えて、しばしば広がり、多くの女性は、二次的な性的機能不全、および、しばしば認識されない抑うつを覚える可能性がある。こうした変化は、結婚の際に深刻な悪影響を伴う可能性がある。
【0095】
外陰部前庭炎症候群は、Farage M.A.およびGalask R.P.によって、Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol(「Vulvar vestibulitis syndrome: A review」、2005年5月28日、Epub ahead of print)(これを、本明細書に参照として含める)中で最近概説された。
【0096】
一般的な集団における外陰部前庭炎症候群の罹患率は、未知である。罹患率は、婦人科の診療所で6ヵ月の期間にわたって調べられた患者では、15%であった(Br J Obstet Gynaecol 1991、98、703〜706)。人種的に多様なボストン地域からの18から64歳の4915人の女性を含む唯一の利用可能な集団ベースの調査(回答率68%)によって、約16%の回答者が、慢性の焼けるような、ナイフ様の痛み、または少なくとも3ヵ月持続する接触時の痛みの病歴を報告したことが判明した(J Am Med Womens Assoc 2003、58、82〜88)。約7%は、調査時に問題をかかえていた。約12%は、特に外陰部への接触の際の痛みを訴えた。さらに、この調査によって、外陰部の痛みを伴う約40%の女性は、処置を望まないことを選択し、そうした人々のうちの60%は、3人以上の医師に診てもらっていたが、医師のうちの多くは、診断を下すことができなかったことが判明した。しかし、この調査は、外陰部前庭炎と感覚異常性外陰部痛とを十分に区別していなかった。
【0097】
外陰部前庭炎症候群の原因は、まだ確立されていない。この状態には、混乱させるような数々の変数が関連し、多因子からなる病因が示唆される(Farage MAおよびGalask RP)。一般的な理論は、外陰部前庭炎症候群が、前庭神経繊維の増感、および交感神経的に維持された痛みループの確立に由来する、おそらく正常でない痛み認識を伴う神経障害性異常であるということである。この理論では、未確認の引金要素;おそらくある形の慢性の炎症が、脳への有害な化学的刺激を伝達する原因となる交感神経性のタイプC神経繊維の長時間の発火を活性化する、また、引き起こす。これは、脳内の広い動作範囲のニューロンを異常に反応させ、その結果、弱い刺激が、痛みとして認められるようになる。この過程は、最初に、外陰部前庭炎症候群の局所的な痛みをもたらし、次に、感覚異常性外陰部痛の慢性の全体的な外陰部痛に進行することが示唆されている。
【0098】
いくつかの研究は、外陰部前庭炎症候群に対する神経障害性の原因を支持している:熱および力学的刺激に対する閾値が、外陰部前庭炎患者では下げられる(Pain.2004、107、47〜53)のに対して、最近の根拠の裏付けでは、外陰部前庭炎患者における慢性の炎症に対する潜在的な遺伝的傾向が強調されている。多型のインターロイキン1レセプターアンタゴニスト遺伝子(Am J Obstet 182:2000、283〜285)、およびメラノコルチン−1レセプター遺伝子(J Reprod Med 2004、49、503〜509)の炎症誘発性変異形は、外陰部前庭炎に悩まされる女性では、かなり優勢である。特に、健康な対照と比較して、外陰部前庭炎患者の血液中では、インターロイキン−1レセプターアンタゴニストの誘発の著しい低下が観察された(Am J Obstet Gynecol 2002、186、696〜700)。それとは別に、インターフェロン−α(上述の遺伝子型とは無関係)の欠乏は、細胞内感染と戦うその能力が低下することによって、一部の外陰部前庭炎患者における慢性の前庭炎症に関与する可能性がある(Am J Obstet Gynecol 2002、186、361〜364)。
【0099】
外陰部前庭炎症候群に対する可能性のある引金としては、感染性の因子、刺激性の局所用製品または医薬品の過剰な使用、HPV感染の従来のレーザーまたは低温処置、または精液に対する過敏症が挙げられる。こうした引金の特定を複雑にしている因子は、最初の症状発現から最初の診断までの遅延である(Farage MAおよびGalask RP)。
【0100】
VVSは、その複数の、しばしば未知の原因に起因して、処置するのが非常に困難である可能性がある。患者は、時には、誤診の期間を通して苦しみ、処置の試みが不成功であるまま病歴が長くなる可能性がある。外陰部前庭炎のための一次処置は、その疑われる原因を処置することである。これには、問題に関与する可能性がある局所的および全身的な刺激物および処置薬の使用を中断することが含まれる
その治癒力が認められている処置は存在せず、現在の処置は、明白な病因学的基準を欠いている(Farage MAおよびGalask RP)。大抵の処置に対しては、厳密な、ランダム化された、見込みがある臨床的試験は、ほとんど存在せず、その有効性の根拠は、単一の事例研究または事例シリーズから主として得られる。研究は、また、終点と判断される時点、回復の程度、および追跡調査の期間を含めて、成功基準の定義が異なる。
【0101】
介入としては、以下が含まれる;症状軽減(リドカインなどの局所用麻酔薬、アミトリプチリンなどの低用量の三環系抗うつ薬、ガバペンチンなど)、バイオフィードバック(骨盤底筋肉組織の筋電図記録のバイオフィードバック)、推定上の感染性の原因の薬理学的処置(経口用フルコナゾール、注射可能なインターフェロン−αまたは−βなど)、社会心理的療法および支持療法(認知行動療法、性的療法など)、罹患した前庭組織を除去する手術(口腔前庭形成術、耳前庭除去手術、会陰形成術(perineoplaty))、およびそれらの組み合わせ。
【0102】
すべての患者に、一つの処置が有効であるというわけではない。さらに、こうした手法の多くは、複雑な医学技法、かなりの費用、および/または望ましくない副作用を伴う。
【0103】
特に、原因が不明な場合、また、疑われた原因の処置に対する応答が達成できなかった場合に、外陰部前庭炎を処置するための改善された方法が必要である。
【0104】
硬化性苔癬は、主に外陰部および肛門周囲領域に影響を及ぼす、十分に認識されていない慢性の炎症性の皮膚異常である(Am J Clin Dermatol.2004:105〜25)。これは、主に成熟した女性に影響を及ぼす状態であると考えられるが、硬化性苔癬を患うあらゆる年齢の女性が存在する。男性も、異常を有する可能性があり、陰茎、時として肛門の領域に影響を及ぼす。小児も、硬化性苔癬を患う可能性があり、時として体の他の領域に影響を及ぼすこともある。硬化性苔癬が性器以外の体の領域に影響を及ぼす場合、これは、「生殖器外(extra genital)硬化性苔癬」として知られる。何が硬化性苔癬を引き起こすかは、知られていないが、硬化性苔癬と、甲状腺疾患、白斑、および他の自己免疫疾患との関係があることが知られている。
【0105】
様々な症状は、以下の通りである:外陰部領域の慢性的なかゆみおよび苦痛および痛み;外陰部皮膚の剥離、刺痛および痛みの発生;炎症および時として腫れ;排便が通過する時に肛門の開口部周辺の皮膚が裂けて出血すること;痛みおよび苦痛の発生;皮膚が外観上弱々しく青白および白色になること;感染症および腔カンジダ症に対する感受性が増すこと;外陰部領域の「縮小」(萎縮);この領域の形および大きさの変化;時として排尿困難および性的な問題が起こること;硬化性苔癬は、膣に広がらない;かつ/または男性において包皮が「融着される」こと、あるいは、痛みを伴う包皮のきつい収縮;および、排尿が困難になる可能性があること。
【0106】
診断は、難しく、長期のプロセスであり得る。多くの一般開業医は、症状を認識することができず、患者は、時として誤診され、「腔カンジダ症」、STD、更年期、またはホルモンの問題に対して処置される。通常、専門家への紹介が必要であり、硬化性苔癬の存在を確かめ、悪性腫瘍のいずれの可能性も除外するために、皮膚生検法がとられる。
【0107】
女性では、硬化性苔癬は、外陰部痛の一般的カテゴリに分類される。
【0108】
乾癬は、「かゆみ」に対するギリシア語からその名前を受けた永続的な皮膚病である。皮膚は、炎症を起こし、多くの場合、頭皮、肘、膝、および腰背部に、銀白色の鱗屑を伴う、赤く肥厚した領域を生じる。場合によっては、乾癬が、弱いので、それに罹っていることを気づかないこともある。まったく逆に、重い乾癬が、体の大きな領域を覆う可能性もある。
【0109】
乾癬の原因は、未知である。しかし、最近の発見によれば、それが、T細胞、樹枝細胞および炎症性のサイトカインによって仲介される皮膚の慢性的な炎症性の異常であることが示唆されている(Nat Rev Immunol.2005、5:699〜711)。炎症のため、皮膚は、3〜4日ごとに、非常に急激に剥がれ落ちる。皮膚が、切断される、ひっかかれる、こすられる、あるいは、激しく日焼けしてから10から14日後に、しばしば新しい斑点が見られる。乾癬はまた、敗血性咽頭炎などの感染によって、また、ある種の医薬品によって活性化される可能性がある。冬には、皮膚の乾燥および日光不足の結果として、時として再発が起こる。
【0110】
乾癬には、多くの形態がある。それぞれ、重症度、期間、位置、また、鱗屑の形状およびパターンが異なる。最も一般的な形態は、小さい赤い隆起から始まり、こうした領域は、徐々に、より大きく拡大し、鱗屑の形態になる。表面の鱗屑が容易にかつ頻繁に剥がれ落ちる一方、表層下の鱗屑は固着する。これが除去される場合、敏感な、露出した皮膚は出血する。こうした小さい赤い領域はその後拡大し、時として非常に大きくなる。肘、膝、鼠径部および生殖器、腕、脚、手のひらおよび足裏、頭皮および顔、体のしわ、および爪は、乾癬によって最も一般的に影響を受ける領域である。それは、体の両側の同じ場所に頻繁に現れる。乾癬に罹った爪は、その上に小さい穴を有する。爪は、剥がれやすくなる、厚くなる、あるいはぼろぼろになる可能性があり、処置は難しい。インバース(inverse)乾癬は、腋窩に、乳房下に、また、鼠径部、臀部、および生殖器のまわりの皮膚のしわに生じる。滴状乾癬は通常、小児および若年成人を冒す。これは、皮膚上に出現する多数の小さく赤い滴様でうろこ状の斑点を伴い、咽頭炎の後に頻繁に現れる。これは、数週間または数ヵ月で、自然にきれいになることが多い。乾癬を患う人々の最高30%は、関節炎の症状を有する可能性があり、5〜10%は、様々な関節の関節炎由来の、ある種の機能的障害を有する可能性がある。皮膚の疾患が酷い場合、人によっては、関節炎は、より状態が悪い。患者の皮膚の状態が改善する場合、関節炎は改善することもある。
【0111】
酒さは、主として顔の皮膚の一般的な慢性的皮膚疾患である。これは、30代から40代に一般的であり、40歳や50歳でピークに達する。酒さの病態生理学は、炎症性であると考えられ、大部分の処置は、何らかの方法で炎症性のプロセスを調節する(Cutis.2005、75(3 Suppl):27〜32)。局所用薬剤としては、ナトリウムスルファセタミドおよびイオウ、メトロニダゾール、アゼライン酸、および過酸化ベンゾイル/クリンダマイシンの様々な調合物が含まれる。経口用薬剤として、従来の用量および抗菌よりも低い(subantimicrobial)用量の抗生物質が含まれる。酒さの処置の進行におけるパラダイムシフトは、酒さのサブタイプに基づいて、こうした薬剤および他の薬剤の、単独での、あるいは、段階的な、様々な組み合わせでの使用を包含する。
【0112】
初期の段階の酒さは、主に頬の、永続的な紅斑および毛細血管拡張、しばしばそれに続く、丘疹および膿疱性丘疹によって特徴づけられる。その後、結合組織および皮脂腺のび漫性の過形成が起こる可能性がある。これは、鼻の肥厚(いわゆる酒さ鼻)を引き起こす可能性がある。酒さは、段階的に起こり、目に影響を与える可能性があり、最も一般的には、眼瞼炎および結膜炎をもたらす。顔の他に、他の部分(耳介後方領域、首、胸、背中、および頭皮など)も影響を受ける可能性がある。臨床的外観は、座瘡と同様であり得るが、酒さは、第1に小胞性の疾患でない。アメリカでは、約1400万人が罹患している。その赤い顔の、座瘡に似ている外見のため、処置せずに放置した場合、それはかなりの心理的、社会的、および職業的問題を引き起こす可能性がある。
【0113】
皮膚炎は、皮膚の炎症に相当する。皮膚炎は事実上、皮膚に炎症を起こさせるいくつかの皮膚状態を指す。皮膚炎は、水疱形成した、赤い、腫れた、痂皮化された、うろこ状の、滲出する、あるいはかゆみをもつ皮膚によって特徴づけられる。ある種のタイプの皮膚炎が、アレルギーによって引き起こされるのに対し、大多数は、いかなる既知の原因ももたない。医師または他の健康管理専門家による臨床的ケアを必要とする多くのタイプの皮膚炎が存在する。
【0114】
アトピー性皮膚炎(アトピー性湿疹または単なる湿疹)は、異質な群の様々な非感染性皮膚疾患であり、これは、刺激性ならびに免疫性の機構によって引き起こされる可能性があり、表皮および真皮上層の病理学的な変化をもたらす可能性がある。これは、最も一般的な皮膚病のカテゴリである。湿疹性の異常はまた、しばしば起こる職業病である。湿疹は、特定の疾患ではなく、臨床的所見の一群であり、その急性期には、紅斑、丘疹、小胞、痂皮、滲出および浮腫と共に、その慢性期には、皮膚の肥厚、苔蘚化、および剥れと共に顕在化する可能性がある。かゆみは、指標症状である。用語「皮膚炎」および「湿疹」は、しばしば同義的に使用されるが、急性の炎症性病変を記載するために、用語「皮膚炎」を使用し、角質増殖を伴うかなり慢性的な表皮病変に対して用語「湿疹」を使用する著者もいる。どちらの用語も、しばしば同義的に使用されるが、用語「皮膚炎」が、湿疹性でない疾患(ジューリング疱疹状皮膚炎など)にも使用される可能性があるという事実は知っておかなければならない。
【0115】
手の皮膚炎(手の湿疹)は、一般的である。手の発疹は通常、敏感な皮膚と刺激の組み合わせ、または触れた材料からのアレルギー反応からもたらされる。手の皮膚炎を患う人は、他の場所にも皮膚炎を有することが多い。
【0116】
接触皮膚炎は、皮膚が、ある種の物質と接触した後に起こる生理学的反応である。こうした反応の約80パーセントは、皮膚に対する刺激物によって引き起こされる。こうした反応の残りの20パーセントは、アレルギー反応を誘発するアレルゲンによって引き起こされる。アレルギー反応では、反応が、即時ではなく、数日後に開始する可能性がある。刺激物によって引き起こされる、アレルギー反応でない接触皮膚炎は、刺激物との直接的接触から起こる。
【0117】
大人および子供におけるアレルギー性接触皮膚炎の最も一般的な原因としては、石鹸、洗剤、香水、おむつ、様々な食品、刺激の強いベビーローション、植物、ならびに金属、化粧品が挙げられ、医薬品も、接触皮膚炎反応を引き起こす可能性がある。ツタウルシ(これは、有毒オークおよびウルシを含む植物ファミリーの一部である)は、接触皮膚炎反応の最も一般的な原因の1つである。数千の化学薬品は、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こす可能性がある。ニッケル、クロム、および水銀は、接触皮膚炎を引き起こす最も一般的な金属である。ニッケルは、模造宝石類、ベルトバックル、および腕時計、ならびに衣類のジッパー、スナップ、およびホックに見られる。多くのタイプの化粧品は、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こす可能性がある。パラ−フェニレンジアミンまたはそれらの誘導体を含有する永久的な染毛剤は、最もよくある原因である。問題を引き起こす可能性がある他の製品としては、半永久的な染毛剤または衣類に使用される染料、香水、アイシャドウ、マニキュア液、口紅、およびある種の日焼け防止薬が挙げられる。ネオマイシン(抗生物質クリーム中に見られる)は、医薬品接触皮膚炎の最も一般的な原因である。ペニシリン、サルファ剤医薬品、および局所麻酔薬(ノボカインまたはパラベンなど)は、可能性のある他の原因である。
【0118】
接触皮膚炎の最も一般的な症状としては、以下を挙げることができる:皮膚の軽度の赤みおよび腫れ、皮膚の水疱形成、かゆみ、皮膚の剥れ、および一時的な肥厚。最も反応が重いのは、接触部位である。接触皮膚炎の症状は、他の皮膚状態に似ている可能性がある。しかし、各々が覚える症状は異なる可能性がある。
【0119】
疱疹状皮膚炎は、小さい水泡または小胞のクラスターの発生(体液を含有する皮膚の小さい上昇)、および小さい隆起または丘疹(皮膚上の小さい中実の上昇)によって特徴づけられる、強烈に掻痒性の(かゆみを伴う)皮膚病である。疱疹状皮膚炎は、主に15から60歳の人が罹る。疱疹状皮膚炎は、皮膚下のIgA沈着物の存在に関連する。こうした沈着は、食事中にグルテン(タンパク質)(例えば、小麦、オオムギ、ライ麦およびオート麦製品中にみられるものなど)を摂取するのに応答して起こる。しかし、一旦、IgA沈着が起こると、それぞれがグルテンを含まない場合であっても、それらは、体によってゆっくりと除去される。この疾患は、アフリカ系米国人またはアジア人には一般的ではない。疱疹状皮膚炎を患う人々は、自己免疫異常および甲状腺の疾患の発生率が高いことが多い。
【0120】
疱疹状皮膚炎の最も一般的な症状としては、主に、肘、腰背部、臀部、膝、および頭の後ろの、かゆい、小さい水泡のクラスターを挙げることができ、かゆみや炎症は、重いことが多い。大抵の人はまた、その腸にある種の損傷を有することとなる。
【0121】
疱疹状皮膚炎の症状は、他の皮膚状態に似ている可能性がある。しかし、各々が覚える症状は異なる可能性がある。
【0122】
全身性剥脱性皮膚炎は、ある種の薬物に対する反応に起因する、あるいは別の皮膚状態からの合併症の結果としての、全皮膚表面の重い炎症である。場合によっては、リンパ節ガン(リンパ腫)が、全身性剥脱性皮膚炎を引き起こす可能性がある。しかし、原因は、見つからないことが多い。
【0123】
以下は、全身性剥脱性皮膚炎の最も一般的な症状である。しかし、各々が覚える症状は異なる可能性がある。症状としては、以下を挙げることができる:皮膚の極度の赤み、剥れ、皮膚の肥厚、かゆみ、リンパ節の腫れ、発熱、損傷を受けた皮膚を介する体液およびタンパク質の喪失。全身性剥脱性皮膚炎の症状は、他の皮膚状態に似ている可能性がある。
【0124】
皮脂または表皮嚢胞は、表皮細胞が、皮膚内に、より深く移動し、増加する場合に出現する、皮膚下の移動可能な小さい塊である。こうした細胞は、嚢胞の壁を形成し、柔らかく黄色がかった物質を分泌し、これが、嚢胞を満たす。壁が断裂された場合、この物質は、周囲の皮膚に分泌され、これが、刺激および炎症を引き起こす。皮脂嚢胞は、頭皮、顔、耳、背中、または鼠径部領域にしばしば出現する。皮脂嚢胞は、ブロックされた腺または管である可能性がある。
【0125】
脂漏性皮膚炎は、鱗屑を脱落させる、赤くかゆみをもつ皮膚によって特徴づけられる、皮膚の上層の炎症である。遺伝的な状態、脂漏性皮膚炎は、寒冷な気象条件によってしばしば悪化する。脂漏性皮膚炎は、乳児期に一般的である。乳児では、頭皮上のその特徴のあるうろこ状の外観のため、こうした状態は、「乳痂」とも呼ばれる。しかし、乳痂はまた、おむつの領域にも起こる可能性がある。この年齢層における脂漏性皮膚炎は、通常最初の年に、自然に治る。脂漏性皮膚炎が中年で起こる場合、この状態は通常、より断続的である。さらに、脂漏性皮膚炎が老年期で起こる場合、この状態は通常、より断続的である。皮膚または毛髪が脂性である人はまた、脂漏性皮膚炎を発症するリスクが、より高い。
【0126】
脂漏性皮膚炎に伴う症状としては、以下を挙げることができる:頭皮のかゆみ、頭皮上の乾燥したまたは脂性の鱗屑;生え際に沿った、耳の後ろ、外耳道中、眉上、鼻の回り、および/または胸上の黄色または赤色のうろこ状発疹。脂漏性皮膚炎の症状は、他の皮膚状態に似ている可能性がある。しかし、各々が覚える症状は異なる可能性がある。
【0127】
座瘡は、詰まった孔(黒色面皰および稗粒腫)、炎症を起こした吹出物(膿疱)、および色の濃い(deeper)塊(瘤)を有する皮膚状態である。座瘡は、顔、ならびに首、胸、背中、肩、および上腕に生じる。座瘡は、患者の外観を損ない、患者を悩ませる可能性がある。座瘡を処置しないと、永久的な瘢痕が残る可能性がある。座瘡の瘢痕化を回避するためには、座瘡を処置することが重要である。
【0128】
ケロイドは、その肥満細胞含有のため、紅斑性で、圧痛があり、隆起しており、色素過剰であり、岩のような堅さであり、不定的に掻痒性である。ケロイドは、より濃い色の人種に一般に生じる良性の繊維の増殖である。ケロイド瘢痕は、12ヵ月以上持続するはずであり、元々の創傷の範囲を越えて縁が広がる。ケロイドは、外科的な切開、外傷性創傷、予防播種部位、火傷、水痘、座瘡、またはさらに軽いかき傷などの皮膚損傷から生じる。これらは、衣類の擦れから、または他の形の摩擦から刺激される可能性がある。
【0129】
創傷治癒の初期の段階では、細胞外基質が堆積するのに対して、コラーゲンおよびプロテオグリカンが、線維芽細胞によって得られる。正常な皮膚または成熟した瘢痕では、線維芽細胞がコラーゲンおよびプロテオグリカンを蓄積させる速度は、時間とともに低下する。しかし、ケロイド瘢痕では、創傷治癒の過程が、加速した速度で継続し、線維芽細胞の過度に反応性の高い増殖が、数週間から数ヶ月継続する。ケロイド形成の病因は、依然として完全に理解されるわけではないが、インターロイキン1およびトランスフォーミング成長因子−βなどのサイトカインが、コラーゲン代謝を変化させ、それによって、ケロイド形成をもたらすことが原因である可能性があると仮定されている。すなわち、新生血管内皮細胞がトランスフォーミング成長因子−βを発現し、その後、隣接する線維芽細胞によってTGF−βが産生される。I型およびVI型コラーゲン遺伝子の発現はまた、ケロイドの組織では増強される。
【0130】
掻痒症は、かゆみに対する医学用語である。これは、掻きたいという願望を誘う感覚と定義される。かゆみは、欲求不満の重大な原因および患者にとっての苦痛であり得る。かゆみの厳密な原因は、未知であり、また、これは、複雑なプロセスである。最後に、これは、(ヒスタミンなどのある種の化学製品に応答して、その後、脳内でこうしたシグナルを処理する)皮膚中の神経に関与している。掻痒症は、ある種の皮膚病の症状、また、時として内部のプロセスの出現である可能性がある。皮膚の徴候または内的疾患が存在しない他の患者では、掻痒症は、神経系内のかゆみ感覚の誤った処理に起因する可能性がある。
【0131】
突出的な症状の頻発に伴って、かゆみを有する可能性がある、多くの皮膚の状態、障害または疾患が存在する。その例は、じんま疹、これらに限定されないが、水痘および湿疹であるだろう。ある種の皮膚状態は、明白な発疹を示さずに、掻痒症の症状のみを示す。乾燥した皮膚は、例えば、年輩者において非常に一般的であり、(特に冬に)目に見える発疹の徴候がないのに、実際にはかゆい可能性がある。掻痒症は、通常潜行性の乾燥皮膚に続発するが、これは、内的状態の出現である可能性がある。皮膚の昆虫刺症およびある種の寄生虫侵入(例えば疥癬およびシラミ)は、非常にかゆい可能性がある。
【0132】
(急性および慢性創傷)
創傷(すなわち、裂傷、開放、または潰瘍)は、急性的または慢性的であり得る。急性創傷は、一般的に、小さな組織の喪失を含む、皮膚に対する鋭い損傷である。大抵の急性創傷は、創傷の両端を合わせることによって閉じ、治癒する。慢性的な創傷は、完全に治癒できない、あるいは治癒が遅い創傷である。慢性的な創傷の例としては、褥瘡(床擦れ)、糖尿病性皮膚潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、熱傷および腫瘍切除後に生じる障害が挙げられる。
【0133】
創傷の細胞の形態は、3つの異なる領域からなる:中心の創傷空間、局所的な虚血の勾配領域、および活性なコラーゲン合成の領域。より迅速な創傷治癒の必要性(すなわち、重い火傷、外科的な切開、裂傷、および他の外傷)にもかかわらず、現在まで、薬品を用いて創傷治癒を加速することは、限られた成功に過ぎなかった。
【0134】
創傷の処置における第1の目標は、創縫合を達成することである。開放性皮膚創傷は、創傷の1つの主要なカテゴリに相当し、これには、急性の外科的および外傷性創傷(例えば、慢性的な潰瘍、火傷による創傷)、ならびに慢性的な創傷(神経障害性潰瘍、褥瘡、動脈状のおよび静脈(鬱血)または混合型の動静脈潰瘍、および糖尿病性潰瘍など)が含まれる。一般的に、こうした創傷は、以下の過程に従って治癒する:i)炎症、ii)線維芽細胞増殖、iii)血管増殖、iv)結合組織合成、v)上皮形成、およびvi)創傷収縮。創傷治癒は、こうした構成要素が、個々にあるいは全体として正しく機能しない場合には、弱められる。創傷治癒に影響を及ぼす可能性がある因子としては、栄養失調症、感染症、薬品(例えば細胞毒性薬物および副腎皮質ステロイド)、糖尿病、および高齢が含まれる(Current Surgical Diagnosis & Treatment,Way;Appleton&Lange、1988、86〜98)。
【0135】
多くの様々な製品およびプロトコル(Brit J Plast Surg 55:2002、185〜193に示される通り)が、慢性的な創傷を処置するために利用可能である。これには、単純な包帯(特に圧迫包帯)、泡およびフィルム、ゲルおよびコロイド、および薬剤製品(例えば成長因子)が含まれる。一般的に、乾燥した非閉鎖包帯を使用するのではなく、湿った閉鎖包帯を用いる創傷治癒が、使用される(Nature 193:1962、293〜294)。今日では、非常に多くのタイプの包帯が、創傷治癒においてごく普通に使用される。これらには、フィルム(例えばポリウレタンフィルム)、親水コロイド(ポリウレタンフォームに結合された親水性コロイド粒子)、ヒドロゲル(少なくとも約60%の水を含有する架橋ポリマー)、泡(親水性または疎水性)、アルギン酸カルシウム(アルギン酸カルシウムからの繊維の不織布複合体)、およびセロハン(可塑剤を用いたセルロース)が含まれる(Dermatol Surg 21:1995、583〜590;Burns 10:1983、94)。ある種のタイプの創傷(例えば、糖尿病性潰瘍、褥瘡)およびある種の被験体の創傷(例えば外因的な副腎皮質ステロイドのレシピエント)は、こうした創傷包帯を用いても、すぐには(あるいはまったく)治癒しない。
【0136】
研究では、大部分の潰瘍は、適切なレベルの、維持された段階的な圧迫の適用によって、治癒が促される可能性があることが示されている。静脈疾患患者については、段階的な外部圧迫の適用は、間隙空間からの体液を、血管およびリンパ区画の中へと押し戻すことによって、静脈系に対する妨害または損傷に起因する、皮膚および血管の変化を最小限にする、あるいは取り消すのを助けることができる。
【0137】
さらに、いくつかの薬剤療法(例えば硫酸亜鉛、ビタミンA、C、およびD、カルシウム、マグネシウム、銅、および鉄の投与)も、創傷治癒を改善する試みにおいて利用されている。しかし、非常に限られた状況以外では、こうした薬剤を用いる創傷治癒の促進は、ほとんど成功に終わらなかった。
【0138】
一般に使用される包帯には3つのタイプが存在する:(1)軽量の伸縮包帯、(2)軽いサポート包帯、および(3)圧迫包帯(軽い、中程度の、強い、および特別に強い性能の圧迫包帯を含む)。
【0139】
ほとんどまたは全く無傷の皮膚が残っていないような、激しく火傷をした患者では、損傷した領域をカバーおよび保護するために、人工の皮膚構築物または細胞の包帯が使用されるが、これはまた、瘢痕組織の再増殖ではなく天然の皮膚の再増殖を促進する。こうした人工の皮膚構築物の例は、Apligraf(商標)、Trancyte(商標)、またはOrtec(商標)である。
【0140】
(美容および皮膚科学的処置)
ケミカルピーリング(化学的表皮剥離法または皮膚剥離法とも呼ぶ)は、こじわ、しわ、軽度の瘢痕化、座瘡、皮膚変色、および前ガン病変の増殖を処置するために皮膚の外部層を除去するための、化学的溶液の適用に存する。ピーリング溶液は、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、フルーツ酸、サリチル酸、ジェスナー液、トリクロロ酢酸、フェノール、または石炭酸などの、1以上の化学製品を含むことができる。ケミカルピーリングの即時的後遺症は、日焼けと同様である。弱いあるいは表面的なピーリングの後、皮膚の赤みおよび剥れが、3〜5日持続する。中程度に深いあるいは深いピーリングは、7〜14日間、赤み、腫れ、水疱形成、および剥脱をもたらす可能性がある。医薬品は、不快感を軽減するために処方される。新しい皮膚が、損傷に対して感受性が高い間、日光による損傷を予防するために、日光への過度の露出は、しばらくの間回避しなければならない。
【0141】
皮膚擦傷法は、座瘡および他の瘢痕を改善する、タトゥーを除去する、また、しみ、しわ、およびある種のタイプの皮膚増殖を最小限にするための、(高速で回転するワイヤーの移動、ブラシ、ダイヤモンドフライス(diamond fraise)、鋸歯がある回転盤などによる)皮膚の外部層の外科的研摩または計画に存する。処置後の創傷ケアが必要とされる一方、再上皮形成は、通常約10日で完了する。主な後遺症は、重度の日焼け、肥厚性の瘢痕またはケロイド形成、炎症後の色素沈着過剰または色素沈着低下と同様の、皮膚の赤みである。患者は、処置後3〜6ヵ月間、日光を避けなければならない。
【0142】
マイクロピーリングは、マイクロ粒子を使用して、一番上の皮膚層を研磨してこすり落とし、死んだ皮膚の小片を吸い取る、顔の、より侵襲性でない若返り処置である。これを、間隔をおいて繰り返すことができる。潜在的な後遺症は、重度の日焼けと同様の皮膚の赤みである。
【0143】
光および/またはレーザー処置は、皮膚剥皮および皮膚若返り、しみ、体毛、瘢痕、タトゥーおよび疣贅の除去のための、また、座瘡、母斑、ポートワイン母斑、乾癬、酒さ、皮膚線条、静脈、白斑、および他の皮膚状態(光線性角化症および皮膚癌を含む)の処置のための多くの用途を含む。
【0144】
これらは、除去される可能性もあるし(傷つけて、表層「剥皮する(ablate)」)、除去されない可能性もある(非損傷)。アブレイティブ(ablative)レーザー処置(CO、Er:YAG、アルゴンなど)が、処置後の創傷ケアを必要とする一方、再上皮形成は、通常約10日で完了する。紅斑は、一般的に、最高3〜4ヵ月間持続し、皮膚は、数ヶ月間敏感なままである可能性がある。肥厚性の瘢痕またはケロイド形成、炎症後色素沈着過剰または色素沈着低下のリスクが存在する。
【0145】
ノンアブレイティブ(non−ablative)レーザー(冷却を用いるレーザー、長パルスレーザー、Fraxelレーザーなど)、または光処置(強力パルス光(IPL)処置、光変調、赤外光、など)は、これらが、皮膚(真皮)の下層を標的とし、表皮を主に無傷で残すので、より侵襲性でない。副作用は、しばらくの間の赤みおよび皮膚過敏性または最小限の腫れである。
【0146】
レーザー皮膚剥皮に代わるものは、電気外科的剥皮であり、これは、「寒冷剥離」とも呼ばれる。)。この技術は、微小電気高周波を使用して、皮膚損傷を和らげるために、皮膚にエネルギーのパルスを送達し、表面を除去する、あるいは改善する。この処置は、ほとんど後遺症を有さず、軽度から中程度の腫れからの回復は、通常1ヵ月以内で完了する。電気外科的剥皮は、皮膚色素沈着という損失なしに、大抵の皮膚のタイプおよび色に適用可能であるという長所を提供する。
【0147】
余分な体毛の除去は、それに随伴する顔の皮膚若返りの有無にかかわらず、全体的な改善された外観に寄与する可能性がある。余分な体毛を処理する従来の方法としては、以下が挙げられる:(1)体毛を見えにくくする、過酸化水素を用いる脱色、(2)一時的に体毛を除去するために剃る方法、(3)体毛を抜く方法、(4)皮膚をワックスでコートし、次いでワックスコートと共に体毛を除去する方法、(5)望まれない体毛を「溶かす」化学的脱毛剤を使用する方法、および(6)比較的永久的な脱毛のために毛嚢を破壊するための電気分解または電気熱分解。顔の皮膚からの化学的脱毛は、刺激性である可能性がある。現在大部分で使用されるレーザー脱毛は、光熱分解によって行われる。レーザー脱毛の副作用としては、数時間から数日間の処置後の痛み、および皮膚の赤みが挙げられる。
【0148】
他の美容および皮膚科学的処置としては、以下が挙げられる:
外来の(ambulatory)静脈切除術:拡張された静脈の経路に沿った一連のごく小さな切開を介する望まれない静脈瘤およびクモ状静脈の除去
眼瞼形成術:たるんだ皮膚および過剰な脂肪組織を除去するための上下の眼瞼手術。
【0149】
ボツリヌス毒素:ボツリヌス毒素注入処置は、眉間のしわ、目尻のしわ、およびその他のしわの原因となる、顔のある特定の筋肉を麻痺させるために使用される。これはまた、首のしわを改善する、また、過剰な発汗を制御するためにも使用される。ボツリヌス毒素に代わるものとして、ボツリヌス毒素に似た物質も使用することができる。
【0150】
美容整形:皮膚の外観を改善し、若返らせる美的処置。例えば、レーザー剥皮、リンクルフィラー、脂肪吸引、化学的ピーリング、および育毛など。
【0151】
冷凍外科療法または寒冷療法:皮膚増殖、しみ、または疣贅を除去するために液体窒素を用いて皮膚組織を凍結すること。
【0152】
掻爬および乾燥(desiccation):皮膚組織をこそぎとるための鋭利な器具の使用、それに続く、皮膚増殖を破壊するための、加熱された電気針の適用。
【0153】
フラップ手術:頭皮のはげかかった領域をカバーするために、毛髪を有する皮膚を移動させるのにしばしば使用される、隣接する皮膚組織の移植。
【0154】
フィラーの注入:フィラーは、より深いしわに配置または注入される、(例えばコラーゲン、ヒアルロン酸、カルシウムヒドロキシルアパタイト、ポリL−乳酸、シリコンなどの)物質である。フィラー剤は一般的に、レーザーで処置されるには深すぎるしわに使用される。最も一般的には、フィラー剤は、笑いじわ、眉間のしわ、頬骨のたるみのために、あるいは、上下の口唇の外観を良くするために使用される。座瘡、水痘および、他の陥凹性瘢痕も、改善することができる。
【0155】
育毛手術:禿頭を治し、人の生来の生え際を回復させるための、パンチ移植(punch transplanting)、ミニおよびマイクログラフト、スカルプリダクションおよび皮膚フラップなどの様々な技術。
【0156】
脂肪吸引:脂肪吸引は、吸入機械に取り付けられたカニューレと呼ばれるわらに似た小さな器具を用いる過剰な脂肪の除去である。チュームセント(tumescent)脂肪吸引を使用することによって、皮膚外科医は、局所麻酔下で、望まれない脂肪の深層および表層を安全かつ効率的に除去することができるようになる。
【0157】
マイクロリポインジェクション:老化、日光による損傷、負傷、または手術に起因する、しわ、ひだ、およびくぼみを埋め、満たし、外形を作り出すために、自分自身の脂肪を使用する、軟組織増大の形態。
【0158】
マイクロピグメンテーション:白斑、皮膚移植、または火傷瘢痕の処置のための、また、美容目的のための色を加えるために、皮膚に色素を埋め込む永久的な方法。
【0159】
モーズ顕微鏡手術:顕微鏡を用いて皮膚癌を一層ずつ正確に除去すること。
【0160】
爪手術:診断および/または処置のための爪異常の除去または修復。
【0161】
硬化療法:望ましくない静脈瘤およびクモ状静脈を除去するための溶液の注入。
【0162】
軟組織フィラー:フィラー材料は一般に、顔のしわ、溝、およびくぼみを「ふくらませ」て最小限にし、皮膚に、より滑らかで、より心地よい外観を与えるために使用される。これは、皮膚下に注入することができる。ウシコラーゲンおよび関連物質、自分自身の脂肪およびポリマーインプラントなどのフィラーは、特定の顔部位の外形を作り出し、くぼみおよび瘢痕を補正するのに有効である。
【0163】
(乾皮症または乾燥肌)
乾皮症は、皮膚の乾燥に対する医学的用語である。これは、寒い気候において一般的な問題である。冷たい、乾燥した空気が人工的に加熱される場合、これは、さらに乾燥し、ほとんどスポンジのように作用し、表層の蒸発が強まることによって、皮膚から水を「抜き取る」。水が皮膚の主要な「軟化剤」であるので、乾燥肌は、きめが粗く、うろこ状になり、最終的には、赤く、炎症を起こし、かゆくなる可能性がある。重い症例では、こうした変化は、皮膚炎の外観を有する。「冬のかゆみ」の処置は、l)空気の相対湿度を増大させること;2)過剰な入浴や刺激の強い石鹸の使用などの、問題を悪化させる可能性がある因子を低下させること;および3)皮膚軟化クリーム、ローション、または軟膏を用いて皮膚に潤いを与えることである。
【0164】
(胎児皮膚細胞タンパク質調製物)
胎児の皮膚が、損傷後にほとんどまたはまったく瘢痕形成をせずに治癒する妊娠期間に得られる胎児皮膚細胞の誘導された細胞溶解(誘導された細胞破壊)は、皮膚炎症、皮膚再生、および皮膚修復の、均衡のとれたオーケストレーション(調節)のための胎児皮膚細胞タンパク質を提供する。
【0165】
前記誘導された細胞溶解の後に得られる前記タンパク質は、1以上のタンパク質の混合物を含み、脂質、多糖、および核酸、および/または他の生体分子などの他の皮膚細胞成分は、含有している可能性もしていない可能性もある。
【0166】
前記誘導された細胞溶解は、誘導された細胞溶解の瞬間に細胞中に存在するタンパク質の生理学的な、天然の、または正常な(あるいは自然に均衡のとれた)混合物として、前記タンパク質を得ることを可能にする。誘導された細胞溶解によって前記タンパク質を得ることとは対照的に、生細胞を、皮膚の状態、障害または疾患の処置のために組成物に組み込んだのでは、前記タンパク質を得ることが可能にはならない。生細胞が、組成物に組み込まれる場合に得られるタンパク質は、誘導された細胞溶解によって得られるタンパク質よりも、特徴および特性が多様である。
【0167】
前記胎児皮膚細胞タンパク質は、成長因子、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子、およびケモカインを含めたサイトカインを含む。さらに、前記胎児皮膚細胞タンパク質はまた、酵素、コラーゲンなどの細胞外基質の構造タンパク質、エラスチン、フィブロネクチン、フィブリリン、および/またはラミニンなど、他のタンパク質またはペプチドも含む。前記構造タンパク質は、プロテオグリカンの形で存在する可能性がある;その場合、タンパク質は、グリコサミノグリカン(GAG)と称する反復二糖類単位の鎖に付着される。
【0168】
さらに、前記の胎児皮膚細胞タンパク質はまた、これらに限定されないが、ニューロペプチド、ニューロペプチドアンタゴニスト、プロテアーゼ、および/またはプロテアーゼ阻害剤を含めた、他のタンパク質またはペプチドも含む。
【0169】
胎児皮膚細胞タンパク質は、容易に操作、精製、分離、濃縮、改変、分別、安定化、および保管することができる。さらに、胎児皮膚細胞タンパク質は、上で述べた改変の有無にかかわらず、様々な送達形態、担体、および調合物に組み込むことができる。
【0170】
胎児皮膚細胞タンパク質の調製のために使用される胎児皮膚細胞は、完全な皮膚組織、皮膚組織の断片、または皮膚生検、および/または胎児の皮膚の細胞培養から得られる皮膚細胞から得ることができる。胎児皮膚細胞培養株または胎児皮膚細胞株は、標準の皮膚培養手順および技術を使用して、完全な皮膚組織、皮膚組織の断片、または皮膚生検から得られる。胎児皮膚細胞または胎児皮膚細胞株は、一次細胞(限られた寿命をもつ細胞株)である。
【0171】
永続的あるいは不死化された胎児皮膚細胞または胎児皮膚細胞株を得るために、胎児皮膚細胞は、不死化させることができる。それが、定義された特徴を有する細胞の、安定的な潜在的に無限の供給を提供するので、永続的あるいは不死化された細胞が、非常に望ましい。対照的に、不死化されていない細胞は、インビトロでの有限数の細胞分裂のためだけに増殖することが可能であるに過ぎない。さらに、一次細胞は、不死化された細胞よりも、より変動性が高く、再現可能な特徴をもつ細胞および細胞基質を得ることが難しくなる。不死化された細胞を使用する弱点は、不死化された細胞株が、悪性の表現型である可能性があるということである。しかし、明確に定義された不死化技術を使用する、不死化された細胞株を操作する我々の能力の最近の進歩によって、悪性の表現型である確率をほとんど持たずに、永続的あるいは不死化された細胞株を産生することが可能になっている。細胞不死化技術の主な進歩は、ここ数年にわたって発展してきた。通常の哺乳類または体細胞は、テロメア長および染色体安定性を維持できないことに、ある程度起因して、限りある寿命を有する。テロメラーゼ発現が、明らかに限界のない増殖が可能な、遺伝的に安定な、非腫瘍形成性の細胞株をもたらすために、単独で、あるいは、他の不死化遺伝子と共に使用されている。
【0172】
胎児の皮膚(胎児皮膚組織)は、ヒト胎児または動物胎児から取り出される。一般に、ヒト胎児皮膚組織は、妊娠期間のいかなる時期にも取り出される。しかし、胎児の組織は、妊娠中期ないし妊娠後期の初期よりも前の、瘢痕のない創傷治癒の妊娠期間中に取り出されることが最も良い。例えば、ヒト胎児皮膚組織は、妊娠期間6から24週の間に選択的に取り出される。より選択的には、胎児皮膚組織は、在胎齢8〜18週の間に取り出される。最も選択的には、ヒト皮膚組織は、妊娠期間12〜16週の間に、ヒト胎児から取り出される。
【0173】
胎児の皮膚生検は、Holbrook K.A.ら(Arch Dermatol.1993、129:1437〜1454)またはCadrin C.およびGolbus M.S.(West J Med.1993、159:269〜272)によって記載される通りに、妊娠中絶後、子宮における手術後、あるいは、出生前診断に関する内視鏡検査または他の手段によって得ることができる。
【0174】
妊娠中絶、子宮における手術、あるいは出生前診断後に組織提供を行う女性は、様々な伝染病(これらに限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、および梅毒を含む)について血清学的にスクリーニングされることとなる。ドナー適格性およびドナー(母親)血清学は、組織収集の時に、現在のFDA(http://www.fda.gov/cber/index.html)およびICH(http://www.ich.org)規定、ガイドライン、および勧告に従って評価されなければならない。
【0175】
胎児皮膚組織が、医学的および/または他の理由で妊娠中絶後に得られる場合、胎児の皮膚生検および/または中絶された胎児からの外科的切除によって、細胞培養を準備するのに十分に大きなサイズの胎児皮膚組織の断片が得られる可能性がある。妊娠中絶が実施される場合、組織収集は、法律および倫理法則に従って実施される。妊娠中絶の後に得られる胎児皮膚組織は、胎児皮膚細胞バンクおよび/または胎児皮膚細胞株を確立するために使用される。
【0176】
外科的介入は現在、出生後に処置された場合には高い死亡率または重い病的状態を有する解剖学的奇形を伴う、極めて選択された胎児に対して実施される。将来的には、胎児の手術が、母親および胎児にとってより安全になるので、生命にかかわらない疾患に対する子宮内の外科的介入が、可能になる可能性がある。子宮における手術後に得られる胎児皮膚組織は、胎児皮膚細胞バンクおよび/または胎児皮膚細胞株を確立するために使用することができる。
【0177】
水疱性疾患(例えば表皮水泡症)、角化疾患(例えばハーレクイン魚鱗癬)、色素細胞異常(例えば眼皮膚白皮症)、および表皮付属器の異常(例えば外胚葉形成異常)などの、多様な形態の重い遺伝性皮膚病(J Dermatol Sci 1999、19:1〜8)を診断するために、また、胎児の正確な胎児トリソミー22モザイク症の出生前の確認を実施するために、胎児の皮膚のサンプルが、生検または他の手段によって得られる。
【0178】
一般に、出生前診断は、診断法に応じて、妊娠期間16から22週の間に実施される。診断に使用されない皮膚サンプル;胎児が疾患によって影響を受けない場合には、胎児皮膚細胞バンクおよび/または胎児皮膚細胞株を確立するために使用することができる。
【0179】
胎児皮膚組織は、外科用メス、ナイフ、および/または他の任意の切断装置によって、中程度のサイズの断片(例えば0.5mm)に、小さく分解し、その後、所与の播種密度(例えば10cmのプレートにつき10断片)で、適切な培養プレート(例えば直径10cmのプレート)に入れる。
【0180】
胎児皮膚細胞は、培養プレートに入れた胎児皮膚組織断片から、適切な細胞培養条件下で増殖させることによって得られる。適当な細胞培養条件としては、(これに限定されないが、10%ウシ胎児血清(FCS)単独で補充されたダルベッコ(Delbecco’s)変法イーグル培地(DMEM)の使用が含まれる。細胞増殖は、細胞培養インキュベーター内で、標準の細胞培養条件下で(例えば、相対湿度>80%の加湿された空気および5から10%COの雰囲気中、37℃で)得られる。
【0181】
適切な培養時間、一般に、厳密な細胞培養条件および選択された胎児皮膚組織に応じて5から12日間後、残りの胎児皮膚組織および増殖させた胎児皮膚細胞を含有する培養プレートを、胎児皮膚組織に由来するそれぞれの胎児皮膚細胞を採取するために、分離することができる。トリプシン(例えば、0.1%エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)中の0.25%トリプシン)または他のタンパク質分解酵素(例えばプロテアーゼ)などの酵素が、この目的のために選択的に使用される。この時点で、培養プレートに入れた胎児皮膚組織から得られる胎児皮膚細胞を、収集、採取、また、さらなる操作または使用を行うまで任意選択で保管することができる。細胞は、遠心分離(例えば2000gで15分間)または細胞収集の他の手段の後に、収集することもできる。
【0182】
任意選択で、胎児皮膚細胞は、不死化することができる。胎児の皮膚ケラチノサイトを含めた細胞組織から得られる不死化された細胞株の産生は、先に説明してある(Burnett TSら、J Gen Virol 64、1983、1509〜1520;Brown KWら、Br J Cancer 56、1987、545〜554)。一般に、こうした方法は、細胞の形質移入または形質転換を含む。
【0183】
不死化は、インビトロで長時間、理想的には無限に培養することが可能な細胞の産生を指す。不死細胞は、定義された増殖条件下では不死である。細胞は、定義された増殖条件下で、20継代以上、好ましくは30継代以上、さらに好ましくは40継代以上、いっそう好ましくは50継代以上継代培養することが可能な場合、不死であるとみなされる。こうした細胞はまた、連続継代性細胞株とも呼ばれる。対照的に、不死化されていない細胞は、インビトロでの有限数の細胞分裂のためだけに増殖することが可能であるに過ぎない。不死化された細胞が、これが、定義された特徴を有する細胞の、安定した潜在的に無限の供給を提供するので、非常に望ましい。この出願では、用語「条件つきで不死の」および「不死の」は、同義的に使用される。
【0184】
不死化された胎児細胞株を産生するための技術としては、照射、発ガン剤、ウイルス、組換え型ウイルス、および組み換えDNAが挙げられる(Stacey G.およびMacDonald C.、Cell Biol Toxicol 17、2001、231〜246)。遺伝的に安定かつ非腫瘍形成性の細胞株を作製する技術が、胎児皮膚細胞の不死化のために選択的に使用される。例えば、こうした不死化技術は、テロメラーゼ(hTERT)遺伝子の触媒サブユニットの、通常の一次細胞への形質移入からなる(Bodnar A.G. et al.,Science 279、1998、349〜352;Morales C.P. et al.,Nature Genetics 21、1999、115〜118)。この手法は、ヒト皮膚線維芽細胞(Vaziri H.F.およびBechimol S.、Oncogene 18、1999、7676〜7680)および他の細胞型に成功裏に適用されている。この形質移入技術によって、発ガン遺伝子形質移入によってしばしば産生されるものと異なり、安定かつ一次細胞の重要な特徴を保持する、寿命が長時間延長された細胞株を得ることが可能になる、一方、不死化遺伝子、SV40T抗原は、現在、テロメラーゼと共に新しい組み合わせで、また、可逆的な不死化を可能にするCre−lox構築物中で、適用されている(Cascio S.M.、Artificial Organs 25、2001、529〜538)。
【0185】
不死化されたヒト細胞株を産生する最も一般的な方法の1つは、不死化剤として、SV40配列、より詳細にはSV40ラージT抗原DNAの使用を含む。あるいは、これらの細胞を、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、1988(本明細書中に参考として援用する)に記載される通りに、電気穿孔法または他のよく知られた技術によって形質移入することができる。
【0186】
いくつかの科学刊行物では、不死化された細胞株を産生するための、SV40ベクターおよびSV40ラージT抗原配列を含有するベクターの使用に関して報告している。こうした配列の導入は一般に、SV40ウイルスを使用する、あるいはハイブリッドアデノウイルス−l2 SV40ハイブリッドウイルスを用いる感染によって、あるいはリン酸ストロンチウム共沈による、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列およびOri−SV40初期領域を含有する組換え型プラスミドを用いる細胞の形質移入によって実施される。
【0187】
不死化された細胞株、特に不死化されたケラチノサイトを産生するための別の既知の方法は、ヒトパピローマウイルス(HPV)DNA配列を用いる、細胞の形質移入または感染を含む。
【0188】
さらなる方法は、以下からなる群から選択される、少なくとも1つの遺伝子またはポリペプチドの使用である:アデノウイルスElA遺伝子の12Sおよび13S産物、hTERT、SV40スモールT抗原、SV40ラージT抗原、パピローマウイルスE6およびE7、エプスタインバーウイルス(EBV)、エプスタイン−バー核抗原−2(EBNA2、ヒトT細胞白血病ウイルス−1(HTLV−1)、HTLV−1 tax、ヘルペスウイルスサイミリ(HVS)、ミュータント(mutant)p53、myc、c−jun、c−ras、c−Ha−ras、h−ras、v−src、c−fgr、myb、c−myc、n−myc、およびMdm2。
【0189】
単離中の無血清培地の使用、および不死化された上皮細胞、特にヒトケラチノサイトの産生は、記載されている。例えば、Barbosaら、Oncogene、4、1989、1529〜1532は、最初に、電気穿孔法またはリポフェクションによって形質移入されたヒトケラチノサイトを、低カルシウムの無血清培地中で、集密まで培養することを記載している。
【0190】
胎児の細胞は、1以上の生物学的活性分子を自然に分泌することができる。あるいは、1以上の外因的レベルの生物学的活性分子を分泌するように、細胞を遺伝的に操作することができる。分泌は、遺伝子スイッチによって制御される可能性もあるし、恒常的である可能性もある。例えば、タンパク質または他の遺伝子産物を発現させる、あるいは発現を増強するように、あるいは、タンパク質または遺伝子産物を抑制するように、これらの細胞を操作することができる。他の操作としては、遺伝子のノックイン(挿入、置換)またはノックアウト(剥離)、あるいは既存の遺伝子または遺伝子産物の突然変異を挙げることができる。
【0191】
任意選択で、細胞は、使用前に有糸分裂的に不活性化することができる。例えば、この有糸分裂不活性化は、ガンマまたはX線照射、および/または紫外線を含めて、照射によって達成することができる。不活性化は、また、化学的手段に基づく有糸分裂阻害剤の投与によって、かつ/またはマイトマイシンとのインキュベーションを介して達成することができる。
【0192】
この新考案の1つの長所は、胎児皮膚細胞タンパク質の維持された、かつ即時的な供給を可能にする、胎児皮膚細胞バンクまたは胎児皮膚細胞バンクシステムの作製である。細胞バンクシステムは、それによって、産物の連続するバッチが、同じマスター細胞バンク(MCB)から得られる細胞を使用する細胞培養によって製造されるシステムである。ワーキング細胞バンク(WCB)を調製するために、マスター細胞バンクからのいくつかの容器を使用する。一般に、細胞バンクシステムは、通常の産生において達成される以上の継代レベルまたは集団倍化数について確認される。
【0193】
マスター細胞バンクは、単一の操作で、均一性を確実にするような方式で共に処理され、安定性を確実にするような方式で保管された、容器に分配された細胞の培養株である。マスター細胞バンクは、通常−70℃以下で保管される。マスター細胞バンクは、一般に、十分に特徴づけられている。ワーキング細胞バンクは、マスター細胞バンクから得られる細胞培養株であり、産生細胞培養株の調製に使用することが意図されている。細胞バンクは、通常−70℃以下で保管される。
【0194】
例えば、胎児皮膚細胞バンクは、ドナー胎児の皮膚から胎児皮膚組織を採取すること;胎児皮膚組織を増殖させ、適切な細胞培養条件下で、胎児皮膚細胞を増殖させること;酵素(トリプシン、コラゲナーゼ、および/または他のプロテアーゼなど)によって、得られた培養組織および細胞を分離し、懸濁させること;懸濁された胎児皮膚細胞をプールして、培養物からの細胞の概して均一な懸濁液にすること;凍結防止剤(下記参照)と穏やかに混合させること;胎児皮膚細胞懸濁液の一定分量をアンプルに入れて密封すること;およびその一定分量(下記参照)を凍結し、それによって、胎児皮膚細胞バンクを準備することによって、得られる、あるいは作製される。
【0195】
好ましくは、胎児皮膚細胞は、胎児の真皮線維芽細胞、および/または胎児の表皮ケラチノサイト、および/または胎児のメラノサイト、あるいはその任意の可能な組み合わせまたは混合物である。
【0196】
細胞(組織を含む)ならびにタンパク質の低温保存に対する様々な手法を使用することができる。凍結融解技術では、細胞外溶液は凍結されるが、細胞内氷形成を最小限にするためのステップが採用される。ガラス化手順では、サンプル全体を通して氷形成を防止する試みが存在する。前者の手法は、氷晶が細胞内に形成され、これは、解凍後に、細胞生存率に対して不利益となるという点で問題がある。しかし、細胞は、非毒性レベルの凍結防止剤の存在下で、制御された速度で冷却される場合には、結氷融解サイクルを生き延びる可能性がある。ガラス化法という後者の手法は、非常に高い濃度の溶質および/またはポリマーを使用して氷形成を弱めることによって、細胞内および細胞外の氷のという潜在的に損害を与える影響を回避することを目指す。しかし、細胞損傷は、ガラス化法に必要とされる毒性レベルのこうした添加物に、長い時間暴露させることで生じる可能性がある。
【0197】
グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコールおよび/またはジメチルスルホキシドを含有する凍結防止剤溶液が好ましい。この発明の1つの好ましい実施形態では、凍結防止剤溶液は、1.5Mから2.5Mグリセロール、好ましくは2Mグリセロール(ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)のベース中)を含有する。こうした溶液は、個々の用途に応じて、最大限の生存率を維持することに適合した、既知の凍結防止剤、ならびに凍結、保管、解凍、およびすすぎ手順を使用して、当業者によって改変および最適化することができる。
【0198】
冷却ステップは、凍結融解プロトコルにおける最も重要なステップの1つである。各細胞型が、非常に様々な特徴を有する可能性があると仮定すると、最適な低温保存条件は、様々な細胞型に対する重要性の程度によって変動し得る。この新考案の好ましい実施形態の1つでは、適切な一定分量内で細胞を凍結することは、温度がマイナス70℃未満に達するまで、1℃/分で温度を低下させることによって達成される。約24時間後に、細胞を、使用するまで(10年以上)保管するために、液体窒素および/または液体窒素の気相に移動させる。
【0199】
タンパク質および他の細胞関連物質または生体分子は、誘導された細胞溶解または誘導された細胞破壊によって得られる(Beckerら:Biotech Advs 1、1983、247〜261;Schutteら:Biotechnol Appl Biochem 12、1990、599〜620)。ある種の生物学的タンパク質が、細胞から分泌される、あるいは自己溶解(自然発生的または天然の細胞溶解)中に放出されるが、細胞内のタンパク質(細胞間タンパク質)を得る(放出させる)ために、多くの他のタンパク質の調製は、誘導された細胞溶解を必要とする。
【0200】
細胞を崩壊する試みにおいては、広範囲の技術が存在する、あるいは開発中である。こうした技術は、「力学的」と「非力学的」の2つのカテゴリに分類することができる。これらは、細胞の崩壊の際に、単独でも、組み合わせても用いることができる。力学的な細胞破壊は、ホモジナイザー、ビーズミル、ジェット噴流、および定常的な細胞破壊システムを用いて達成される。非力学的な細胞破壊は、物理的、化学的、または、酵素的手段によって達成される。物理的な手段は、減圧法、浸透圧衝撃、熱分解、または超音波処理である。抗生物質、キレート剤、洗剤、高pH、カオトロープ(chaotropens)、または溶媒の使用は、化学的手段である。溶解酵素、溶解または自己溶解の使用は、酵素的手段である。
【0201】
ミリング、高圧ホモジナイゼーション(例えば、フレンチプレス、X−プレスなど)、超音波処理、および凍結融解は、細胞を崩壊させるために剪断および圧迫を使用する。したがって、細胞破損を達成するために使用される条件下での酵素活性の喪失を防止または制限するために、注意を払わなければならない。
【0202】
好ましい実施形態の1つでは、胎児皮膚細胞は、1以上のサイクルの凍結融解によって、溶解(崩壊)させる。このため、胎児皮膚細胞を、凍結融解の前に、水溶液系に懸濁させる。水溶液系としては、これらに限定されないが、培養培地(例えばDMEM、MEMなど)、水性緩衝系(例えばpH7.4緩衝液など)、生理緩衝液(例えばPBS、PBS w/o Ca++およびMg++、HEPESなど)、非生理的緩衝系、水性溶媒(例えば水など)、および/またはそれらの混合物および組み合わせが挙げられる。この発明の好ましい実施形態では、細胞は、Ca(II)およびMg(II)を含むあるいは含まないリン酸緩衝塩類溶液(PBS)(リン酸緩衝食塩水系とも呼ばれる)中に懸濁される。
【0203】
胎児皮膚細胞タンパク質は、胎児皮膚細胞を、特定の細胞濃度で、水溶液系に懸濁することによって得られる胎児皮膚細胞懸濁液(分散液)を凍結融解した後に得られる。胎児皮膚細胞懸濁液の細胞濃度は、水溶液系1ミリリットル(ml)あたり数千から数10億細胞まで変動する可能性がある。本発明の好ましい実施形態の1つでは、胎児皮膚細胞懸濁液は、水溶液系1ミリリットルにつき100個から60,000,000個の胎児皮膚細胞を含有する。別の実施形態では、胎児皮膚細胞懸濁液は、水溶液系1mlにつき1,000,000から30,000,000の胎児皮膚細胞を含有する。別の実施形態では、胎児皮膚細胞懸濁液は、水溶液系1mlにつき5,000,000から25,000,000の胎児皮膚細胞を含有する。好ましい実施形態では、胎児皮膚細胞懸濁液は、水溶液系1mlにつき10,000,000個から20,000,000個の胎児皮膚細胞を含有する。
【0204】
胎児皮膚細胞タンパク質は、胎児皮膚の生細胞を用いて、胎児皮膚の非生細胞を用いて、あるいは、胎児皮膚の生細胞と非生細胞の混合物を用いて調製される。本発明の好ましい実施形態では、80%を超える生存率を有する胎児皮膚細胞が、水溶液系に懸濁され、その後、凍結融解によって溶解される。
【0205】
別の実施形態では、80%と等しい、あるいはそれ未満の生存率を有する胎児皮膚細胞が、水溶液系に懸濁され、その後、凍結融解によって溶解される。一般に、細胞溶解は、水溶液系中で胎児皮膚細胞分散液を調製した直後に実施される。細胞生存率は、典型的な細胞生存率アッセイを使用して測定することができる。
【0206】
任意選択で、凍結融解のために使用される水溶液系は、細胞溶解より前に、凍結防止剤、プロテアーゼ阻害剤、グリコシダーゼ抑制剤、タンパク質を安定化する化学薬品、タンパク質変性を防止する化学薬品、酸化防止剤、保存剤、抗菌物質、および/または他の化学薬品で補充することができる。この補充は、胎児皮膚細胞の誘導された細胞溶解の後に得られる胎児皮膚細胞タンパク質を保存および/または安定化するのを助けることができる。一方、補充は、胎児皮膚細胞タンパク質の効力または活性を維持または増強するのを助けることができる。
【0207】
所望の組成物および/または純度の胎児皮膚細胞タンパク質を得るために、胎児皮膚細胞タンパク質を、任意選択で精製することができる。この目的のためには、「Protein Analysis and Purification−Benchtop Techniques」(Rosenberg I.M.、Birkaeuser、Boston)(本明細書中に参考として援用する)に記載されている通りの十分に知られた技術を使用することができる。
【0208】
任意選択で、胎児皮膚細胞タンパク質は、遠心分離の後、ペレット(主に非可溶性物質を含有)と上清(主に可溶性物質含有)に分離することができる。上清は、さらなる操作および/または精製の有無にかかわらず、担体に組み込むことができる。これは、胎児皮膚細胞タンパク質を含有する。あるいは、細胞ペレットを、さらなる操作および/または精製の有無にかかわらず、担体に組み込むことができる。
【0209】
任意選択で、胎児皮膚細胞タンパク質またはそのいかなる分画も、アセチル化、エステル化、PEG化、グリコシル化によって化学的に改変することができる、かつ/または胎児皮膚細胞タンパク質の化学的/物理的安定性および処置活性を改善するために、ポリマーに化学的に架橋させることができる。
【0210】
当業者に知られている様々な論文は、非常に様々な化合物が、タンパク質安定化および低温保存を行うために使用されることを記載している(Cryobiology 25、1988、244〜255;Pharm Res 8、1991、285〜291;Advanced Drug Delivery Reviews 46、2001、307〜326)。より一般的な凍結防止剤としては、例えば、糖、ポリオール、ある種のアミノ酸、および合成のポリマーが挙げられる。他の凍結防止剤としては、例えば、無機塩、有機塩、または種々の成分が挙げられる。適切な糖の非限定的な例には、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース(trealsose)、およびマルトースが含まれる。使用されるポリオールの例には、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールが含まれる。使用されるアミノ酸の例には、例えば、グルタミン酸ナトリウム、プロリン、アラニン、グリシン、リジン、およびヒドロキシプロリンが含まれる。使用されるポリマーの例には、例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、およびポリビニルピロリドンが含まれる。使用される無機塩の例には、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、およびフッ化ナトリウムが含まれる。有機塩の例には、例えば、酢酸ナトリウム、ポリエチレンナトリウム、カプリル酸(caprilate)ナトリウム、プロピオン酸塩、乳酸塩、およびコハク酸塩が含まれる。種々の凍結防止剤の例には、例えば、ジメチルスルホキシド、エタノール、トリメチルアミンN−オキシド、サルコシン、ベタイン(bataine)、γ−アミノ酪酸、オクトピン、アラノピン(alanopine)およびストロンビンが含まれる。
【0211】
胎児皮膚細胞タンパク質のタンパク分解性加水分解を防止するために、プロテアーゼ阻害剤を、さらに使用することができる。プロテアーゼ阻害剤としては、これらに限定されないが、セリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、ロイペプチン、アンチパイン、PMSF、AEBSFなど)、シスチンプロテアーゼ阻害剤(例えば、ロイペプチン、キモスタチンなど)、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤(例えばペプスタチンAなど)、メタロプロテイナーゼ阻害剤(例えばEDTA、1,10−フェナントロリン、ベスタチン、ホスホラミドン、TIMP1、TIMP2など)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0212】
プロテアーゼ阻害剤は、誘導された細胞溶解を実施するよりも前に水溶液系に、かつ/または誘導された細胞溶解を実施した後に、得られた胎児皮膚細胞タンパク質に加えられる。好ましい実施形態の1つでは、EDTAは、凍結融解のために使用される水溶液系に加えられる。
【0213】
タンパク質はまた、フリーズドライまたは凍結乾燥などの他の手段によって保存することもできる。
【0214】
一方、胎児皮膚細胞タンパク質を安定化する薬剤を、胎児皮膚細胞タンパク質を含む組成物に加えることができる。
【0215】
細胞培養培地は、インビトロでの、制御された、人工の環境における、細胞増殖のための構成要素を提供する。一旦培地が細胞と共にインキュベーションされると、これは、「使用済み」または「調整培地」として知られるものとなる。調整培地は、培地の元々の構成要素の多くと、様々な細胞の代謝物質および分泌されたタンパク質(例えば、生物学的に活性な成長因子、炎症性のメディエーター、および他の細胞外タンパク質を含めて)を含有する。この発明の実施形態の1つでは、胎児皮膚細胞を細胞培養培地で培養した後に得られる調整培地を使用することができ、また、局所適用のための担体に組み込むことができる。
【0216】
(組成物調製)
胎児皮膚細胞タンパク質は、局所、粘膜、眼、直腸、および/または膣適用に適した担体に組み込むことができる。
【0217】
局所、粘膜、眼、直腸、および/または膣適用に適した担体を含めて、許容される担体は、局所的に、一般的に皮膚および粘膜に、また、損なわれた、無傷でないまたは病態の、かつ/または損傷した皮膚および粘膜に、直接的に適用されるものである。これは、経口的に、あるいは注入によって与えることができ、体の表面に直接的にではないシステムを介して作用する、典型的な全身的調合物とは対照的である。
【0218】
好ましくは、担体は、局所的に許容される担体である。用語「局所的に許容される担体」は、皮膚(または粘膜組織の上皮層)に適用するための、薬剤、食品、または化粧品技術で知られており、かつ真皮/粘膜投与のために承認されている、いかなる賦形剤、補助剤、添加剤、希釈剤も指す。担体の選択は、個々の活性剤(例えば、その特定の担体(親水性の/疎水性)へのその溶解)によって、また、それが適用されるべきである領域の大きさおよび性質など、他の基準によって(例えば、頭皮では、シャンプーを使用することができるが、小さい領域に対しては、軟膏が、より適用されるべきである)決定される。
【0219】
担体としては、局所的に許容される液体、クリーム、オイル、ローション、軟膏、ゲル、または固体(これらに限定されないが、従来の夜間用美容クリーム、昼間用美容クリーム、下地クリーム、日焼けローション(suntan lotion)、日焼け防止薬、手肌用ローション、ヒドロゲル、メイクアップおよびメイクアップベース、マスク、スポンジなどが含まれる)を挙げることができる。組成物は、エストロゲン、ビタミンA、C、およびE、α−ケト酸(ピルビン酸、乳酸、またはグリコール酸など)のα−ヒドロキシ、ラノリン、ワセリン、アロエベラ、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、色素など、他の任意の適切な成分を含有することができる。局所的に許容される適切な担体としては、水、石油ゼリー(ワセリン)、ペトロラタム、鉱油、植物油、動物オイル、有機ワックスおよび無機ワックス(マイクロクリスタリン、パラフィン、およびオゾケライトワックスなど)、天然のポリマー(キサンタン、ゼラチン、セルロース、コラーゲン、デンプン、またはアラビアゴムなど)、合成ポリマー(以下で述べるものなど)、アルコール、ポリオールなどが挙げられる。添加剤としては、溶媒、界面活性剤、皮膚軟化剤、保存剤、顔料、香料などが挙げられる。好ましくは、担体は、水に実質的に混合できる水混和性の担体組成物である。こうした水混和性の化粧品として許容される局所用担体組成物としては、上で述べた1以上の適切な成分を用いて作製されるものを挙げることができるが、水を含有する、水に分散可能な(dispersable)、あるいは水溶性の組成物(リポソーム、マイクロスポンジ、マイクロスフィア、またはマイクロカプセル、水ベースの軟膏、油中水型または水中油型エマルジョン、ゲルなど)を含めて、持続性または遅延放出性担体も挙げることができる。
【0220】
胎児皮膚細胞タンパク質は、体積または重量で0.001%から95%で組成物に組み込むことができる。胎児皮膚細胞タンパク質は、体積または重量で0.01から5%で、選択的に組み込まれる。
【0221】
好ましい実施形態の1つでは、胎児皮膚細胞タンパク質は、生理緩衝液(例えばPBS)1mlにつき1000万〜2000万の細胞を含有する懸濁液(分散液)を用いて準備され、このようにして得られた胎児皮膚細胞タンパク質は、局所、粘膜、眼、直腸、および/または膣適用のための担体に、体積または重量で0.05%から0.25%で組み込まれる。
【0222】
様々な実施形態では、担体は、局所用調合物または剤形である。局所用調合物は、軟膏、クリーム、ゲル、およびローションである。こうした局所用剤形の定義は、Bhuse L.らによって示される(Int J Pharm 295:2005、101〜112)。
【0223】
別の実施形態では、担体は、液体、泡、ムース、スプレー、エアロゾル、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、トリプルエマルジョン、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、ヒドロゲル、溶液、ペースト、ゼリー、および/または分散液もしくは懸濁液である。担体は、ニオソーム、リポソーム、ナノスフィア、マイクロスフィア、ナノ粒子、マイクロ粒子、脂質滴、固形粒子、色素および/または水液滴を含有する可能性がある。
【0224】
好ましい実施形態の1つでは、担体は、クリームである。クリームは、水中油型ベースの担体であっても油中水型ベースの担体であってもよい。別の好ましい実施形態では、担体は、ゲルおよび/またはヒドロゲルである。
【0225】
本発明の組成物に対するいかなる言及にも、担体と併用して1以上の胎児皮膚細胞タンパク質を含有する任意の組成物が含まれることが、当業者には理解できるであろう。
【0226】
本発明の組成物は、細胞外基質構造タンパク質、コラーゲン、アルギネート、アルギネートビーズ、アガロース、キトサン、フィブリン、フィブリン糊、フィブリノゲン、血漿フィブリンビーズ、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、全血漿またはその構成成分、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、熱ショックタンパク質、キトサン、ヘパリン、および/または他の合成ポリマーもしくはポリマー骨格、ならびに/または固体支持体材料を任意選択で含有することができる。
【0227】
さらなる活性剤を、本発明の方法および組成物中に加えることもできることが、当業者には理解されるであろう。こうした薬剤としては、例えば、抗炎症剤、消毒剤、酸化防止剤、抗座瘡薬剤、収斂剤、肛門直腸用薬剤、鎮痛剤、麻酔薬(anestetics),止痒剤、反対刺激剤、抗微生物剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗乾癬剤、抗酒さ剤、抗瘢痕剤、フケ用薬剤、毛髪成長剤、抗毛髪喪失剤、抗真菌剤、抗生物質、ビタミン、創傷治癒剤、表皮剥離剤、酸化防止剤、ホルモン、刺激薬、皮膚漂白剤、皮膚保護剤、皮膚着色剤、疣贅除去剤、日焼け防止薬、および任意の適切なそれらの組み合わせを挙げることができる。美容成分も、さらに加えることができる。
【0228】
鎮痛剤としては、アミンおよびカイン(caine)型の局所麻酔薬(anesthesics)、アルコールおよびケトン麻酔薬、抗ヒスタミン剤、ヒドロコルチゾンおよび/またはそれらの適切な組み合わせが挙げられる。
【0229】
アミンおよびカイン型の局所麻酔薬としては、ベンゾカイン、ピクリン酸ブタンベン、ジブカイン(dibuccaine)、ジメチソキン(diemethisoquin)、ジクロニン、リドカイン、プラモキシン、テトラカイン、各々のその塩、および適切なそれらの組み合わせを含めて、市販の(OTC)外用鎮痛薬が挙げられる。好ましい実施形態では、塩酸プラモキシンが、鎮痛剤として選択される。好ましい実施形態は、0.5から1%塩酸プラモキシンを含有する。
【0230】
アルコールおよびケトン型の局所麻酔薬としては、ベンジルアルコール、カンファー、メントール、フェノール、レゾルシノール、およびそれらの適切な組み合わせを含めたOTC外用鎮痛薬が挙げられる。ある種の好ましい実施形態では、カンファーまたはメントールが、鎮痛剤として選択される。
【0231】
抗ヒスタミン型の局所麻酔薬としては、ジフェンヒドラミン、トリペレナミン、各々のその塩、および適切なそれらの組み合わせを含めたOTC外用鎮痛薬が挙げられる。
【0232】
ヒドロコルチゾン型の局所麻酔薬としては、ヒドロコルチゾンおよび酢酸ヒドロコルチゾンを含めたOTC外用鎮痛薬が挙げられる。
【0233】
反対刺激剤型のOTC鎮痛剤としては、イソチオシアン酸アリル、希釈されたアンモニア溶液、サリチル酸メチル、テレビンオイル、カンファー、メントール、ヒスタミンジヒドロクロリド、ニコチン酸メチル、カプサイシン、トウガラシ、カプシカムオレオレジンおよびそれらの適切な組み合わせが挙げられる。
【0234】
皮膚保護OTC薬物としては、アラントイン、水酸化アルミニウム、カラミン、コカバター、タラ肝油、コロイドオートミール、ジメチコン、グリセリン、ハードファット(hard fat)、カオリン、ラノリン、鉱油、ペトロラタム、局所用デンプン、白色ペトロラタム、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、モノ酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、およびそれらの適切な組み合わせが挙げられる。
【0235】
抗菌OTC薬物としては、アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、カンファー処理(camphorated)メタクレゾール、カンファー処理(camphorated)フェノール、オイカリプトール、ヘキシルレゾルシノール、イソプロピルアルコール、メントール、塩化メチルベンゼトニウム(metylbenzethonium)、サリチル酸メチル、フェノール、ポビドンヨード、チモール、バシトラシン、バシトラシン亜鉛、塩酸クロルテトラサイクリン、硫酸ネオマイシン、塩酸テトラサイクリン、クリオキノール、ハロプロジン、硝酸ミコナゾール、トルナフテート、ウンデシレン酸およびそのカルシウム、銅、および亜鉛との塩、クロトリマゾール、レゾルシノール、酢酸レゾルシノール、サリチル酸、イオウ、過酸化ベンゾイルおよびそれらの適切な組み合わせが挙げられる。
【0236】
理想的には、胎児皮膚細胞タンパク質の活性を妨害しない、あるいは最小限にしか妨害しない薬剤、成分、および/または活性物質が選択される。
【0237】
上のOTC薬の濃度または濃度範囲は、当業者に知られている。さらに、こうしたOTC薬の様々な組み合わせが可能である可能性がある。
【0238】
薬剤組成物の調製に関する情報は、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Manufacturing Formulations」(S.K. Niazi編、CRC Press、Boca Raton、2004)の第3巻:「Liquid Products」、第4巻:「Semisolid Products」、および第5巻:「Over−the−Counter Products」に出ている。さらに、美容または薬用化粧品(cosmeceutical)組成物の調製に関する情報は、Happy Magazineの処方集(formulary archive)(http://www.happi.com/special/formula1.htm)に出ている。さらに、美容または薬用化粧品組成物の処方の情報はまた、多様な成分供給元(Croda、Ciba、BASF、Dow Chemicalsなど)から得られる可能性がある
(組成物の使用)
本発明はまた、被験体の皮膚の感受性のあるまたは罹患した領域に、処置有効量の本発明の組成物を投与することによって、皮膚の状態、障害または疾患を予防または処置するための方法を提供する。
【0239】
処置または予防される皮膚の状態、障害または疾患としては、これらに限定されないが、炎症性の皮膚状態、神経性または神経炎症性の皮膚状態、急性および慢性損傷、急性および慢性潰瘍、および火傷が挙げられる。
【0240】
好ましい実施形態の1つでは、炎症性、神経性、および/または神経炎症性の皮膚状態は外陰部痛(外陰部前庭炎および外陰部硬化性苔癬を含む)である。
【0241】
この発明の別の実施形態では、前記組成物によって処置される前記皮膚の状態、障害または疾患としては、粘膜または粘膜の組織が、処置される皮膚と隣接している場所での、粘膜の状態、障害または疾患が挙げられる。
【0242】
本発明の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患の例には、さらに、座瘡、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、白色萎縮、フケ、皮膚炎、手の湿疹、疱疹状皮膚炎、おむつかぶれ、湿疹、全身性剥脱性皮膚炎、ケロイド、局所性または全身性掻痒症、光線皮膚炎、周囲潰瘍、乾癬、瘢痕、皮脂嚢胞、脂漏性皮膚炎、酒さ、および/または乾皮症が含まれる。
【0243】
本発明の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患の例には、損傷(急性および慢性損傷を含めて);潰瘍(急性および慢性潰瘍を含めて);および/または火傷も含まれる。
【0244】
本発明の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患の例には、さらに、単回または反復的な処置の後および/または処置中の皮膚移植(同種移植、自家移植)、三次元皮膚構築、および/または他の損傷ケアレジメンを用いる単回または反復的な処置中かつ/または処置後の損傷、潰瘍、および/または火傷が、さらに含まれる。
【0245】
手術後の損傷も、本発明の組成物によって処置される。手術には、これらに限定されないが、非美容、美容、形成のおよび/または再建外科処置が含まれる。
【0246】
美容、形成、および再建外科処置には、これらに限定されないが、乳房リフト、乳房増大または縮小、フェイスリフト、額リフト、鼻の手術、耳の手術、眼瞼の手術、腹部の手術、リポスカルプチャー、脂肪吸引、瘢痕修正、脂肪移植、軟組織増大、冷凍外科療法または寒冷療法、毛髪移植、爪の手術、硬化療法、レーザー手術、タトゥー除去、および/または静脈手術が含まれる。
【0247】
さらに、前記の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患は、これらに限定されないが、正常な皮膚および/または健康な皮膚、内因的および/または外因的に老化した、あるいは光老化した皮膚を含めて、病気ではない皮膚状態を含む。さらに、前記の組成物によって処置される皮膚の状態、障害または疾患は、美容製品、薬学的または皮膚科学的製品、家庭用品、工業製品、および/または皮膚に有害な成分(腐食性薬品、皮膚刺激物および皮膚アレルゲンなど)を含有する製品にさらされた(接触した)皮膚を含む。
【0248】
美容および/または皮膚科学的製品には、これらに限定されないが、1以上の皮膚摩擦材、表皮剥離剤、疣除去剤、脱毛剤、ケミカルピーリング、フィジカルピーリング、セルフタンニング成分、香料、脱臭剤、フケ防止活性物質、抗座瘡活性物質、抗炎症剤、抗酒さ活性物質、抗乾癬活性物質、メイクアップ化粧品、染料、着色添加物、色素、スキンライトナー、肌美白剤、酸化防止剤、脂質、肌用栄養剤、日焼け防止薬、界面活性剤、ポリマー、タンパク質、筋弛緩剤、老化防止成分、しわ防止剤、保湿剤、保水剤、ビタミン、皮膚軟化剤、被膜剤、リポソーム、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノスフィア、マイクロスフィア、および/またはそれらの任意の可能な混合物および組み合わせを含有する製品が含まれる。
【0249】
この発明の別の群の好ましい実施形態では、前記の組成物は、美容および/または皮膚科学的処置から生じる、皮膚および/または皮膚状態を処置するために使用される。美容および/または皮膚科学的処置には、これらに限定されないが、ライトケミカルピーリング、ミディアムケミカルピーリング、ディープケミカルピーリング、フィジカルピーリング、ワキシング、マイクロピーリング、皮膚擦傷法、光処置(強力パルス光、光変調、可視、非可視、赤外線、および/または紫外線光を用いる処置)、レーザー処置、高周波処置、熱処置(温熱、寒冷、温熱および寒冷の繰り返し)、電気処置、超音波処置、力学的処置(マッサージ、圧迫、吸入、バイブレーション、擦れ、擦過)、酸素および/またはオゾン処置、注入および/またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。前記組成物は、美容および/または皮膚科学的処置の前に、後に、かつ/または間に(並行して)、前記美容および/または皮膚科学的処置と組み合わせて使用される。
【0250】
被験体は、人間、ヒト以外の霊長類、野生生物、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、ラット、およびマウスからなる群から選択することができる。1つの好ましい実施形態では、被験体は、ヒトまたは動物(例えばウマ、イヌ、またはネコ)である。
【0251】
本発明を、以下の実施例を参照することでさらに明らかにする。前述の詳細な説明および以下の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲の制約と受け止めるべきではないことを理解されたい。材料および方法の両者に対する多くの改変を、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができることは、当業者には明らかであろう。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の技術者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に挙げたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その内容全体を本明細書中に参考として援用する。論争の場合には、本明細書を、定義を含めて確認することとなる。
【実施例】
【0252】
(実施例1:胎児皮膚組織サンプリング)
胎児皮膚組織サンプル(皮膚生検)を、スイス、ローザンヌ大学病院(University Hospital Lausanne)の倫理委員会(Ethics Committee)の方針および手順に従って、妊娠中絶後すぐの胎児皮膚から得た。
【0253】
ドナー適格性およびドナー(母親)血清学を、現在のFDA(http://www.fda.gov/cber/index.html)およびICH(http://www.ich.org)規定、ガイドラインおよび勧告に従って評価した。ドナーの病歴および血清学は、細胞組織移植のための献体の期間で、ガイドラインおよび勧告に適合していた。
【0254】
ドナー適格性は、問診による、HIV、B型肝炎、C型肝炎、CJDを含めたヒトTSE、梅毒トレポネーマに対する臨床的徴候の評価、および異種移植に伴われるリスク(角膜および/または硬膜移植片を受けていないこと、および死体から得られたヒト成長ホルモンを受けていないこと)を含んでいた。血清学試験は、妥当性が実証されている抗体アッセイを使用する、HIV I、HIV II、サイトメガロウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、風疹、トキソプラズマ症、梅毒トレポネーマ(梅毒)の存在に対する評価を含んでいた。ドナーの病歴は、ウイルスの存在についてはいずれの徴候も示さなかった。これは、生検の時と、3ヵ月後に、血清学的試験によって確認した。
【0255】
一般に、胎児皮膚組織または皮膚生検は、瘢痕のない創傷治癒または修復が起こる前;例えば妊娠中期から妊娠後期の初期よりも前に取り出された。ヒトでは、ヒト移植用提供組織または皮膚生検は、妊娠12〜16週のものであった。しかし、ヒトドナーからの生検は、妊娠期間のより早期および後期(6〜11週および17〜24週を含めて)でも得られた。一般に、生検は、完全皮膚厚であった。あるいは、部分厚生検が実施された;これは、胎児皮膚組織の真皮および/または表皮を含有していた。妊娠期間のより初期では、生検は、主に胎児皮膚組織の真皮を含有していた。胎児皮膚細胞バンクおよび/または胎児皮膚細胞株を準備するために、細胞培養を準備するのに十分に大きなサイズの胎児皮膚組織の断片(またはサンプル)を、胎児の皮膚生検および/または外科的切除によって得ることができる。一般に、胎児の組織サンプルは、0.5cmから8cmの間であった。
【0256】
胎児皮膚組織(または胎児皮膚生検)は、ウマからも得た。以下の実施例に記載する通り、ウマの胎児皮膚細胞タンパク質を得るために、同様の方法および手順を使用した。
【0257】
胎児皮膚細胞バンクを確立するために胎児皮膚組織サンプルを得るための他の可能性も存在することを、当業者であれば理解するであろう。胎児皮膚組織は、子宮における手術後に、かつ/または胎児皮膚組織サンプリングを必要とする出生前診断を実施する場合に得ることができる。
【0258】
(実施例2:胎児皮膚細胞バンク)
胎児皮膚組織および/または胎児の皮膚生検サンプルから出発して、マスター(Master)(MCB)およびワーキング細胞バンク(Working Cell Bank)(WCB)を含む胎児皮膚細胞バンクを確立するための典型的な手順を、ここで示す。一般に、細胞バンクは、あるドナー由来の胎児の皮膚を用いて構築される。細胞バンクを構築するための胎児皮膚サンプルを、妊娠中絶後に、実施例1で述べた通りに得た。胎児の皮膚サンプル(生検)は、妊娠16週で得たが、これは、約4cmであった。
【0259】
この皮膚サンプルから、ハサミ、および/または外科用メスまたは他の切断装置の使用によって、約0.5mm未満の組織断片を調製した。この断片をその後、滅菌プレート(例えば直径10cm)に、1プレートにつき約10断片で播種した。こうした断片を、37℃、10%CO、かつ湿度95%のインキュベーター中で、10%ウシ胎児血清(FCS、Hyclone)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。培地交換は、2日または3日ごとに行った。約1〜2週後、細胞増殖が集密に近くなった時、皮膚組織および細胞を含有する培養プレートを、0.25%トリプシン(0.1%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)中)を使用してトリプシン処理した。細胞を遠心分離管へ移し、続いて遠心分離した。その後、採取された細胞(継代0の細胞に相当する)を、10%FCSを補充したDMEM中に再懸濁し、T175フラスコ(Nalge Nunc)に、1cmにつき2000細胞で播種した。集密に到達した後、細胞(継代1)を、前述の通りに採取し、次いで、継代2の細胞を得るために、T175フラスコ中に、1cmにつき3000細胞で播種した。継代2の細胞を採取した後、これを、適切なクライオバイアル(例えば1.8ml)に分注し、次いで、液体窒素内で凍結させた。この目的のために、細胞を、5:4:1の比のDMEM、FCS、およびジメチル(dimetyl)スルホキシド(DMSO)(すべてFlukaより)の凍結溶液に再懸濁し、1mlの一定分量(400万〜800万細胞を含有)で、マイナス70℃で凍結する、あるいはCryo 1℃凍結容器(Freezing Container)(Nalge Nunc)を使用して、1分につきマイナスの1℃の冷却速度で低下させる。凍結容器内に細胞を24時間置いた後、これを、貯蔵のために液体窒素(または気相)に移した。継代2の凍結された細胞を含むいくつかのバイアルを含む胎児皮膚細胞のMCBが得られた。
【0260】
ヒト皮膚細胞から得られたMCBを、細胞バンクを特徴づけるために、内因性および外来性の薬剤(無菌性、マイコプラズマ、およびウイルス)、および同一性について試験した。この試験は、(最新の)Good Laboratory Practices(GLP)の要件に従って、また、European Medicines Agency(EMEA)およびFederal Drug Administration(FDA)ガイドライン(International Conference of Harmonization(ICH)ガイドライン「Viral safety evaluation of biotechnology products derived from cell lines of human or animal origin」(Q5A)、および「Derivation and characterization of cell substrates used for production of biotechnological/biological products」(Q5D)が含まれる)によって定められた(最新の)原則を用いて実施した。
【0261】
MCBの試験では、マイコプラズマ、細菌、または真菌は検出されなかった。MCBは、電子顕微鏡観察によってレトロウイルスの粒子を含有しないことが示され、レトロウイルスの逆転写酵素活性も検出されなかった。さらに、PCRベースのアッセイでは、ヒトレトロウイルスを含めて任意のヒトウイルスは検出されなかった。他の検出方法でも、MCB中に他のウイルス性の外来性の物質は検出されなかった。MCBに対して実施した試験の結果は、ヒト細胞株を代表するものであった。同一性は、ヒトであることが確認された。要約すると、この試験では、MCBが、ウイルスまたはウイルス外来性の(viral adventitious)物質、マイコプラズマ、細菌、または真菌を含まないことが示唆された。
【0262】
WCBは、MCBのバイアルを使用し、適切な培養フラスコ(例えば:Nalge NuncのT175フラスコ)に細胞を播種し、ほぼ集密で採取し、分注し、その後、MCBについて述べた通りに細胞を凍結して、確立された。WCBは、継代3で確立することができる。一方、WCBは、MCBのバイアルを使用して、2代の継代培養を実施した後に、継代4で確立することもできる。WCBの細胞は、1バイアルにつき約200万〜600万細胞でクライオバイアル中の液体窒素(または気相)中に保管される。
【0263】
ヒト皮膚細胞から得られたWCBを、細胞バンクを特徴づけるために、外来性の物質(無菌性およびマイコプラズマ)および同一性について試験した。この試験は、(最新の)GLPの要件に従って、また、EMEAおよびFDAガイドライン(ICHガイドライン「Derivation and characterization of cell substrates used for production of biotechnological/biological products」(Q5D)が含まれる)によって定められた(最新の)原則を用いて実施した。
【0264】
WCBの試験では、マイコプラズマ、細菌または真菌は検出されなかった。WCBに対して実施される試験の結果は、ヒト細胞株を代表するものであった。同一性では、ヒトであることが確認された。要約すると、この試験では、WCBがマイコプラズマ、細菌、または真菌を含まないことが示唆された。
【0265】
細胞バンキングは、この実施例に述べる通りに、妊娠中絶の後に得られる妊娠16週の4cm胎児皮膚サンプルを使用して説明するが、記載された条件に対する適切な改変を加えた細胞バンクを確立するために、妊娠期間の様々な時期に得られる、かつ/または子宮における手術後に得られる、かつ/または出生前の診断法(実施例1に述べる通り)の後に得られる、他の胎児皮膚組織サンプルも使用することができることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0266】
細胞バンキングのいかなる方法も、胎児皮膚細胞バンクの作成をもたらす可能性があることは、当業者であれば理解できるであろう。記載された方法に対する単純な変形例として、37℃、5%CO、>80%湿度のインキュベーター内で細胞バンク(MCBおよび/またはWCB)を確立することができる。あるいは、細胞バンクは、記載された条件に対する適切な改変を加えた、様々な培養容器(例えば任意のローラーボトル、マルチトレイ細胞ファクトリー、細胞バイオリアクターなど)、および培養条件(例えば血清を含まないなど)を使用して確立することができる。
【0267】
(実施例3:胎児皮膚細胞増殖)
胎児皮膚細胞タンパク質を産生するために、胎児皮膚細胞バンクからの胎児皮膚細胞を使用し、適切な培養容器に播種し、適切な培養状態下で成長(増殖、増加)させ、適切な数の継代後に採取し、その後、力学的、物理的、または、化学的手段によって溶解する。(実施例2に述べる通りに得られる)WCBからの1以上のバイアルから出発する、細胞増殖過程の典型的な手順を、ここに示す。胎児皮膚細胞の採取およびその後の細胞溶解の典型的な手順は、実施例4に示す。
【0268】
開始日に、WCBの1つのバイアル(約2〜3のMio細胞を含有;細胞は継代3である)を、氷がちょうど溶けるまで、37±2℃のウォーターバス中で急速に解凍した。バイアルの中身を、予め温められた約9mlのDMEM、10%FCSに加え、Beckman GH3.8スイングアウトローター(または同等物)で、約200g(約936rpm)で約10分間遠心分離した。遠心分離後、細胞ペレットを、約10mlの新たなDMEM、10%FCSに再懸濁し、サンプルを、細胞計数のために取り出した。その後、細胞懸濁液を、4つのT225フラスコ(225cmの細胞培養面を提供する、Nalge Nunc)の、フラスコ1つにつき総体積約40mlのDMEM、10%FCSの中に移し、36.5°±1.5℃、10±1%CO、および>80%の湿度のインキュベーター中で、培養株が集密に近づくまで6から10日間インキュベーションした。培地交換は、2日または3日ごとに行った。その後、使用済み培地(調整培地)を、各フラスコから無菌的に除去し、細胞シートを、約10mlの予め温められたPBS(37°±2℃)で洗浄した。PBSの除去の後、約3mlのトリプシン−EDTA(例えば、Invitrogen、Ref# 25300−062)を、各フラスコに加え、約1分間、水平に細胞シートをカバーするようにした。その後、トリプシン洗浄液を捨て、さらなるトリプシン−EDTA約3mlを、各フラスコに加えた。このフラスコを、目で見て、あるいは顕微鏡によって観察された時に細胞が分離するまで、36.5°±1.5℃でインキュベーションした。その後、各フラスコに、約10mlのDMEM、10%FCSを加えることによってトリプシン−EDTAを中和した。その後、細胞懸濁液を、Beckman GH3.8スイングアウトローター(または同等物)で、約200g(約936rpm)で、約10分間遠心分離した。得られた細胞ペレットを、適切な体積の新たなDMEM、10%FCSに再懸濁した。細胞懸濁液の少量のサンプル(例えば0.5ml)を、細胞計数のために取り出した。
【0269】
以下では、こうして得られた細胞懸濁液を、1cmにつき2000から3000細胞の播種密度で、10から20のT500フラスコ(500cmの細胞培養面を提供する、Nalge Nunc)の、フラスコ1つにつき総体積150mlのDMEM、10%FCSの中で増殖させた。その細胞培養物を、36.5°±1.5℃、10±1%CO、および>80%の湿度のインキュベーター中で、培養株が、集密に近づくまで8から12日間インキュベーションした。培地交換は、2日または3日ごとに行った。その後、使用済み培地(調整培地)を無菌的に除去し、細胞シートを、約30mlの予め温められたPBS(37℃±2℃)で洗浄した。PBSの除去の後、約30mlのトリプシン−EDTA(例えば、Invitrogen、Ref# 25300−062)を、各フラスコに加え、約1分間、水平に細胞シートをカバーするようにした。その後、トリプシン洗浄液を捨て、新たなトリプシン−EDTA約30mlを、各フラスコに加えた。このフラスコを、目で見て、あるいは顕微鏡によって観察された時に細胞が分離するまで、36.5°±1.5℃でインキュベーションした。その後、各フラスコに、約30mlのDMEM、10%FCSを加えることによって、トリプシン−EDTAを中和した。細胞懸濁液を、Beckman GH3.8スイングアウトローター(または同等物)で、約200g(約936rpm)で、約10分間遠心分離した。得られた細胞ペレットを、適切な体積の新たなDMEM、10%FCSに再懸濁した。細胞懸濁液の少量のサンプル(例えば0.5ml)を、細胞計数のために取り出した。
【0270】
その後、細胞懸濁液を、1cmにつき2000から3000細胞の播種密度で、100のT500フラスコの、フラスコ1つにつき総体積150mlのDMEM、10%FCSの中で増殖させた。その細胞培養物を、36.5°±1.5℃、10±1%CO、および>80%の湿度のインキュベーター中で、培養株が集密に近づくまで、8から12日間インキュベーションした。培地交換は、2日または3日ごとに行った。この手順は、継代6の胎児皮膚細胞を得ることを可能にした。
【0271】
この細胞増殖手順は、所与の条件に対する適切な改変を加えて、この実施例に述べるのと同様に、さらなる継代にも応用することができることを、当業者であれば理解できるであろう。一般に、細胞増殖手順は、継代6から10の間に停止し、実施例4に述べた通りに細胞を収集する。
【0272】
細胞増殖を、培養フラスコ(Culture Flask)を使用して述べるが、任意のローラーボトル、マルチトレイセルファクトリー、および/または細胞バイオリアクターも、記載された条件に対する適切な改変を加えて用いることができることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0273】
当業者はまた、細胞増殖の任意の方法を用いることができることを理解する。記載された方法に対する単純な変形例として、細胞増殖は、37℃、5%CO、>80%湿度のインキュベーター内で確立することができる。あるいは、細胞増殖は、従来の技術および細胞培養方法を使用して、無血清、部分的に無血清、および/または血清除去培地で確立することができる。
【0274】
(実施例4:胎児皮膚細胞採取および胎児皮膚細胞タンパク質の調製)
この実施例では、胎児皮膚細胞タンパク質を得るために、胎児皮膚細胞採取およびその後の胎児皮膚細胞溶解の典型的な手順を示す。実施例3に述べる通りに1以上のWCBバイアルを増殖(継代、増加)させた後に得られた胎児皮膚細胞の採取は、以下の通りに実施する:
1)胎児皮膚細胞培養株を含有するフラスコ(例えば:T500フラスコ)を取り出し、使い終わった培地(調整培地)を無菌的に除去する。
2)適切な体積の予め温められたPBS(例えば:T500フラスコに対して約30ml;37℃±2℃)を加え、細胞シートを洗浄する。前後に穏やかにフラスコを揺り動かして細胞を完全に洗浄し、その後、PBSを無菌的に除去する。
3)トリプシン−EDTA(例えば:T500フラスコに対して約50ml;例えば、Invitrogen、Ref# 25300−062)をフラスコに加え、約1分間、水平に細胞シートをカバーする。
4)トリプシン−EDTAを廃棄し、その後、新たなトリプシン−EDTA(例えば:T500フラスコに対して約50ml)を加える。
5)フラスコを、目で見て、あるいは顕微鏡によって観察された時に細胞が分離するまで、36.5°±1.5℃に置く。
6)適切な体積の培地DMEM、10%FCS(例えば:T500フラスコに対して約50ml)を加え、トリプシン−EDTAを中和し、滅菌の遠心分離管に細胞懸濁液をプールする。
7)フラスコを培地(例えば:T500フラスコに対して約50ml)ですすぎ、同じ遠心分離管に無菌的に移す。
8)適切な時間および速度で、周囲温度で(例えば:Beckman GH3.8スイングアウトローター(または同等物)で、約200g(約936rpm)で約10分間)管を遠心分離する。
9)上清を除去して廃棄する。
10)細胞ペレットに、適切な体積(例えば:1つのT500フラスコから得られるペレットに対して約50ml)の培地DMEM、10%FCSを加え、細胞ペレットを再懸濁する。
11)細胞計数を実施するために、サンプルを取り出す。
12)前に述べた通りに管を遠心分離し、上清培地を廃棄する。
13)細胞ペレットに、適切な体積(例えば、1つのT500フラスコから得られるペレットに対して約50ml)のリン酸緩衝食塩水(PBS)を加え、細胞ペレットを再懸濁して、細胞を洗浄する。
14)前に述べた通りに管を遠心分離し、上清培地を廃棄する。
15)PBS洗浄ステップ13および14を繰り返す。
16)細胞ペレットに、1mlPBS/16’000’000生細胞を加える。あるいは、それぞれ、より低いまたは高い濃縮の細胞懸濁液を得るために、より少ないまたは多い胎児皮膚細胞数に対して、1mlのPBSを加えてもよい。好ましい胎児皮膚細胞懸濁液は、10,000,000個から20,000,000個の胎児皮膚生細胞に対して1mlのPBSを加えることによって調製される。
17)PBS中に胎児皮膚細胞を完全に再懸濁するために、混合する。
18)胎児皮膚細胞を再懸濁(ステップ17)したら直ちに、凍結融解の3つのサイクルを実施する。1つのサイクルは、胎児皮膚細胞懸濁液を含有する管(またはクライオバイアル)を、細胞懸濁液が完全に凍結されるまで、液体窒素に入れ、次いで、凍結された細胞懸濁液を含有する管を、内容物が完全に解凍されるまで約37℃のウォーターバスに入れることに存する。解凍する時は、残りの最後の氷が溶けたらすぐに、解凍された細胞懸濁液を含有する管(またはクライオバイアル)を液体窒素に入れることによって、完全に凍結するまで再凍結する。あるいは、メタノール(またはエタノール、イソプロパノールなどの他のアルコール)中にドライアイスを入れた混合物を、凍結のために使用することができる。解凍はまた、室温で実施してもよい。この手順は、胎児皮膚細胞の細胞溶解、それによって、胎児皮膚細胞タンパク質を得ることを可能にする。
19)こうして得られた胎児皮膚細胞タンパク質の少量の試料を用いて、標準の細胞生存率アッセイ(例えば、MTT−アッセイ、ATP−アッセイ、蛍光ベースのアッセイなど)を実施する。測定された胎児皮膚細胞タンパク質の細胞生存率は、10%未満であるべきである。優先的には、胎児皮膚細胞タンパク質は、いずれの胎児皮膚生細胞も含有するべきでない、かつ/または、細胞生存率が0%であるべきである。10%を超える細胞生存率が測定される場合には、細胞生存率が10%未満に達するまで、(ステップ18の後に得られる懸濁液を用いて)(ステップ18で述べる通りに)さらなる凍結融解サイクルを実施する。この手順は、胎児皮膚細胞の細胞溶解、それによって、胎児皮膚細胞タンパク質を得ることを可能にする。
20)任意選択で、ステップ1〜19で得られた胎児皮膚細胞タンパク質を、所望の組成物、純度、強度および/または効力の胎児皮膚細胞タンパク質を得るために、処理する、上清と細胞ペレットに分離する、かつ/または精製することができる。この目的のために、「Protein Analysis and Purification−Benchtop Techniques」(Rosenberg I.M.、Birkaeuser、Boston)に記載される通りの技術に従う。
21)最終的には、適切なクライオバイアル(例えばNuncの3.6ml内ネジクライオバイアル)に、胎児皮膚細胞タンパク質を分注する。
22)胎児皮膚細胞タンパク質を、使用するまで−70℃以下で保管する。
【0275】
細胞増殖を、培養フラスコを使用して述べるが、任意のローラーボトル、マルチトレイセルファクトリー、および/または細胞バイオリアクターも、記載された条件に対する適切な改変を加えて用いることができることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0276】
PBSに代わるものとして、記載された条件に対する適切な改変を加えた、他の任意の生理緩衝液(例えばCa++を含まない、かつ/またはMg++を含まないPBS、HEPESなど)を使用して、胎児皮膚細胞を洗浄する、また、細胞溶解のための胎児皮膚細胞懸濁液を調製することができることも、当業者であれば理解できるであろう。生理緩衝液に代わるものとして、他の水溶液系(例えば培養培地、非生理的緩衝液、pH−緩衝系、水など)を使用して、細胞溶解のための胎児皮膚細胞懸濁液を調製することができることも、当業者であれば理解できるであろう。凍結融解のために使用される水溶液系は、細胞溶解より前に、凍結防止剤、プロテアーゼ阻害剤、グリコシダーゼ阻害剤、タンパク質を安定化する化学製品、タンパク質変性を防止する化学製品、酸化防止剤、保存剤、抗微生物剤、および/または他の化学製品で補充することができることも、当業者であれば理解できるであろう。さらに、
胎児皮膚細胞タンパク質を得るために、凍結融解に代わるものとして、記載された条件に対する適切な改変を加えた、広範囲の細胞溶解技術を、細胞を崩壊させるために用いることができることも、当業者であれば理解できるであろう。
【0277】
こうして得られた胎児皮膚細胞タンパク質はまた、「処理された皮膚タンパク質(Processed Skin Proteins)」、「処理された皮膚細胞タンパク質(Processed Skin Cell Proteins)」またはPSP(商標)と呼ばれる。
【0278】
(実施例5:胎児皮膚細胞タンパク質の特徴付け)
胎児皮膚細胞タンパク質を、市販のサイトカインアレイ(Cytokine Antibody Array C Series 1000.1、RayBiotech Inc.)を使用して、サイトカインの存在について分析した。このアレイは、複数のサイトカイン発現を同時に検出することを可能にするものであり、また、特に細胞溶解物のために設計されるものである。分析は、遠心分離の後に得られた胎児皮膚細胞タンパク質の上清を用いて、アレイ(RayBiotech Inc.)の指示書に従って実施した。こうして得られた上清には、さらなる処置は施さなかった。
【0279】
胎児皮膚細胞タンパク質は、(実施例1に述べる通りに得られる)妊娠約16週の皮膚サンプルから出発して、胎児皮膚細胞バンク(実施例2に述べる通りに確立される)からの胎児皮膚細胞を用いて、実施例3および4に述べる通りに得られた胎児皮膚細胞タンパク質の上記の遠心分離以外に、胎児皮膚細胞タンパク質の精製、処置、および/または補充(実施例4に述べる通り)は、実施しなかった。
【0280】
分析によって、胎児皮膚細胞タンパク質中の100以上のサイトカインの存在が示された。成長因子、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子、およびケモカインを含めて、大抵のサイトカインタンパク質ファミリーのタンパク質が検出された。
【0281】
検出されたサイトカインとしては、これらに限定されないが、上皮細胞成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGFまたはFGF−2)、β神経成長因子(b−NGF)、線維芽細胞成長因子4、6、および9(FGF−4、FGF−6、FGF−9)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インシュリン様成長因子(IGF−I)、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、インターロイキンIL−1αおよびIL−1β、インターロイキンIL−4、IL−6、IL−10、およびIL−13、インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)、ケラチノサイト成長因子1(KGF−1またはFGF−7)、胎盤成長因子(PGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子β1および3(TGF−β1、TGF−β3)、メタロプロテイナーゼ1および2の組織阻害剤(TIMP−1、TIMP−2)、血管内皮成長因子(VEGF)が挙げられる。他の多くの既知のサイトカイン(例えば:TGF−β2、FGF−l0など)の存在は、このアレイでは分析されなかった。
【0282】
胎児皮膚細胞タンパク質を分析するために、二次元ゲル電気泳動および質量分析を、さらに使用した。この分析は、4と8の間の等電点(pI)および8000から35000の分子量に相当するゲルの領域に集中していた。この領域中に、373±42のスポットが検出された(n=18)。いくつかのスポットを分析すると、スーパーオキサイドジスムターゼおよびチオレドキシンペルオキシダーゼを含めて、いくつかの抗酸化酵素の存在が示された。
【0283】
胎児皮膚細胞タンパク質(上で述べた通りに得られる)は、非常に多くの、細胞由来のタンパク質、細胞外基質タンパク質、糖タンパク質、および/または他の細胞の成分または生体分子(脂質、脂肪酸、脂肪酸エステル、単糖、多糖、DNAおよびRNA、ミネラルや塩などの無機材料など)を含有することを、当業者であれば理解できるであろう。
【0284】
この実施例に記載されるサイトカインアレイおよび二次元ゲル電気泳動による分析以外に、他の適切な分析法(ELISA、GC、HPLC;質量分光および/または他の分析および/またはプロテオミクスプラットフォームと組み合わせたHPLCなど)も、胎児皮膚細胞タンパク質をさらに特徴づけるために使用することができる。
【0285】
(実施例6:胎児皮膚細胞タンパク質の活性)
実施例5において特徴づけられた胎児皮膚細胞タンパク質を、ヒト真皮線維芽細胞増殖または細胞成長の促進について評価した。胎児皮膚細胞タンパク質は、(実施例1に述べる通りに得られる)妊娠約16週の皮膚サンプルから出発して、(実施例2に述べる通りに確立される)胎児皮膚細胞バンクからの胎児皮膚細胞を用いて、実施例3および4に述べる通りに得られた。胎児皮膚細胞タンパク質の精製、処置、および/または補充(実施例4に述べる通り)は、実施しなかった。
【0286】
増殖アッセイを、以下の通りに実施した。継代8の通常のヒト真皮線維芽細胞を、96−ウエルプレート中にDMEM(Invitrogen 21969035)および10%FCSに、5000細胞/ウェルで播種した。培地を、12時間、2%FCSを含む新たなDMEMに変えた。培地を除去し、異なる濃度の試験化合物を含有する(あるいは含有しない;対照)、FCSを含まない新たな培地DMEMに変えた。細胞は、37℃および5%COで、48時間インキュベーションした。放射標識された化合物[H]−チミジン(Amersham TRK 686、2.92 Tbq/mmole 79Ci/mmole)を、インキュベーションの終わりの24時間前までに各培地に加えた。すべての処置は、三重に実施した。
【0287】
DNAに組み込まれた放射能の分析は、細胞溶解およびDNA収集の後に、1体積のカオトロピック緩衝液(トリス/Hcl50mM、グアニジン4M、およびEDTA 5mM、pH8.0)を添加し、トリクロロ酢酸(trichloracetic acid)(TCA)によって沈殿させ、濾過収集(収集装置および濾過装置、Skatron)し、TCAおよび70%エタノールを用いる洗浄サイクルにかけ、その後、DNAに特別に組み込まれた放射能(相対的に増殖的なレベル)の液体シンチレーションによって定量化を行うことによって実施した。
【0288】
胎児皮膚細胞タンパク質は、0.01%と0.25%の間で試験し、0.05%および0.25%で、チミジン組み込みの有意の増加という結果になった。増加率はそれぞれ、対照の305%および361%であった。0.01%では、わずかな刺激(対照の127%)が観察された。
【0289】
その結果、このインビトロ試験によって、胎児皮膚細胞タンパク質が、0.05%から0.25%の濃度で、ヒトの真皮線維芽細胞の増殖を約3倍またはそれ以上増強することが実証された。
【0290】
(実施例7:胎児皮膚細胞タンパク質を含む組成物の調製)
この実施例は、胎児皮膚細胞タンパク質を含有する、局所、粘膜、眼、直腸、および/または膣適用に適した一連の組成物の調製を説明する。胎児皮膚細胞タンパク質は、(実施例1に述べる通りに得られる)妊娠約16週の皮膚サンプルから出発した、(実施例2に述べる通りに確立される)胎児皮膚細胞バンクからの胎児皮膚細胞を用いて、実施例3および4に述べる通りに得られた。胎児皮膚細胞タンパク質の精製、処置、および/または補充(実施例4に述べる通り)は、実施しなかった。
【0291】
胎児皮膚細胞タンパク質は、また、「処理された皮膚タンパク質(Processed Skin Proteins)」、「処理された皮膚細胞タンパク質(Processed Skin Cell Proteins)」またはPSP(商標)と呼ばれる。
【0292】
インビトロ実験(実施例6に示す通り)においては、局所、粘膜、眼、直腸、および/または膣適用に適した、担体中の胎児皮膚細胞タンパク質の最適な濃度は、0.05%および0.25%の間であることが示された。
【0293】
以下の実施例では、0.050%または0.065%胎児皮膚細胞タンパク質を含有する組成物の調製を説明するものとする。
【0294】
0.05%胎児皮膚細胞タンパク質(実施例3および4に述べる通りに得られる)を含有する水中油型エマルジョンベースのクリームを、標準の乳化技術を使用して調製した。エマルジョンは、適切なイオン性、両性イオン性および/または非イオン性界面活性剤の適切な混合物を、水(または鉱泉水または湧水)および適切なオイルと組み合わせることによって得られた。適切な天然の、精製した、および/または合成のオイルを使用した。適切な天然のオイルとしては、これらに限定されないが、アボカド油、アプリコット油、ルリジサ油、ルリジサ種子油、ツバキ油、カノーラ油、ヒマシ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、マツヨイグサ油、パーム油、パーム核油、落花生油、菜種油、サフラワー油、スイートアーモンド油、ローズヒップ油、キンセンカ油、カモミール油、ユーカリ油、ビャクシン油、サフラワー油、白檀油、ティーツリー油、ヒマワリ油、大豆油、コムギ胚芽油、および/またはそれらの混合物が挙げられる。一般に、これらの油は、精製および/または水素付加して使用される。動物、ミネラル(シリコン)、または合成の油などの他の適切な油(例えば、ラノリン、ペトロラタム、ジメチコン、シメチコン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリグリセリド、脂肪酸エステルなど)も、さらに使用することができる。調合物は、適切な皮膚軟化剤および/または保水剤(グリセリン、プロピレングリコール、ブタジエングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、オレイン酸デシル、セテアリルアルコール、パルミチン酸セチル、ステアリン酸グリセリルおよび/またはそれらの混合物など)をさらに含有することができる。エマルジョンはまた、トコフェロール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸マグネシウム、ベータカロチン、BHT、フェルラ酸、リポ酸、コエンザイム(coenyzme)Q10、フラボノイド、緑茶エキス、白茶エキス、ポリフェノール化合物、尿酸、これらのセレニウムおよび/または任意の誘導体など、適切な酸化防止剤の1つまたは組み合わせを含有することができる。塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムおよびリン酸塩などの選択された塩も、さらに加えることができる。糖(スクロース、グルコース、マルトース、デキストロース、およびフルクトースなど)、水性アルコール(ソルビトール、マンニトール、キシリトール、およびマルチトールなど)、およびポリマー(カルボマー、ポリデキストロース、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、マルトデキストリン、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)など)は、調合物の粘性を増大するための、適切なレオロジー改変剤の例である。
【0295】
水中油型エマルジョンベースの組成物の調製における最終ステップの1つとして、胎児皮膚細胞タンパク質を、水中油型エマルジョンクリームの外側の水性相に混合した。胎児皮膚細胞タンパク質を調合物に混合することは、周囲温度または(それよりも)わずかに高い温度で実現された。
【0296】
標準の乳化技術を使用してクリームベース(胎児皮膚細胞タンパク質を含まない調合物)を調製した後、一旦、クリームベースが、室温(20℃から30℃)に到達したら、適切な、標準の混合方法および装置を使用して胎児皮膚細胞タンパク質をクリームベースに混合すると、クリーム1、2、および3(成分は以下に示す)が得られた。
【0297】
混合方法および装置は、上で述べた通りの、クリームベースを胎児皮膚細胞タンパク質と混合、ブレンド、乳化、均質化、および/または分散させる方法を含む。
【0298】
それに関して、胎児皮膚細胞タンパク質を、適切な体積の水で希釈した後、得られた懸濁液(分散液)をクリームベースに混合した。一般に、胎児皮膚細胞タンパク質は、最終組成物(調合物)の体積(または重量)の2〜5%を与える水と希釈する。好ましい実施形態の1つでは、胎児皮膚細胞タンパク質を、最終調合物の体積の3%を与える水に加え、次いで、これを、適切な、標準の混合方法および装置を使用して、97%の予め調製されたクリームベースに加えて混合する。
【0299】
あるいは、クリームベースへの添加前の、こうして調製された胎児皮膚細胞タンパク質懸濁液に、保存剤(例えば:パラベン(parabenes)、フェノキシエタノール、イミダゾリジニル尿素、イソチアゾリノン、グリコールなど)、タンパク質安定化剤(例えば:アミノ酸、ポリオール、糖、合成ポリマー、PEG、PEG−PPG−PEG、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、フィブロネクチン、アクチン、コラーゲン、EDTAなど)、プロテアーゼ阻害剤、および/または酸化防止剤を、適切な濃度で加えてもよい。
【0300】
水中油型エマルジョンベースのクリームを調製するための異なる方法が存在することを、当業者であれば理解できるであろう。あるいは、胎児皮膚細胞タンパク質は、記載された条件に対する適切な改変を加えた、油中水型エマルジョンベースのクリームに混合することもできる。
【0301】
クリーム1:
0.05%胎児皮膚細胞タンパク質(またはPSP)を含有する水中油型クリームを、上で述べた通りに調製したが、これは、比率が大きい順に、以下の他の成分を含有していた:水、水素付加された落花生油、グリセリン、オクタン酸セテアリル、セテアリルアルコール、PEG−8 C12〜18アルキルエステル、PPG−25−ラウレス−25、PEG−5ペンタエリスリチルエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、セチルアルコール、パルミチン酸セチル、ステアリン酸グリセリル、塩化ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、グルコース、シメチコン、酢酸トコフェロール、クエン酸、リチノレス(ricinoleth)−40、塩化カリウム、および塩化マグネシウム。このクリームは、抗菌的な保存のための、メチルパラベン(metylparaben)、プロピルパラベン、およびイミダゾリジニル尿素の混合物をさらに含有していた。
【0302】
クリーム2:
0.05%胎児皮膚細胞タンパク質(またはPSP)を含有する水中油型クリームを、上で述べた通りに調製したが、これは、比率が大きい順に、以下の他の成分を含有していた:水、オクチルドデカノール、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸デシル、グリセリン、プロピレングリコール、コムギ(triticum vulgare)(コムギ胚芽油)、ステアリン酸、セチルアルコール、セテアレス20、ミリスチン酸ミレス−3、セテアレス12、セテアリルアルコール、パルミチン酸セチル、酢酸トコフェロール、ジメチコン、ルリジサ(borago officinalis)(ルリジサ種子油)、カルボマー、トリエタノールアミン、メチルパラベン、プロピルパラベン、グリコフィンゴリピッド(glycophingolipid)、EDTA二ナトリウム、およびBHT。このクリームは、抗菌的な保存のための、フェノキシエタノール、エチルパラベン、ブチルパラベン、メチルイソチアゾリノン、およびメチルクロロイソチアゾリノンの混合物を、さらに含有していた。
【0303】
クリーム3:
0.065%胎児皮膚細胞タンパク質(またはPSP)を含有する水中油型クリームを、上で述べた通りに調製したが、これは、比率が大きい順に、以下の他の成分を含有していた:水、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、C12〜20酸 PEG−8エステル、ブチレングリコール、グリセリン、異性化糖(saccharide isomerate)、PEG−8、セチルアルコール、カプリリルグリコール、セチルリン酸カリウム、カルボマー、ビサボロール、テトライソパルミチン酸アスコルビル、カフェイン、EDTA二ナトリウム、リン脂質、グリチルレチン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、トコフェロール、ブナノキエキス(beech tree bud extract)(ヨーロッパブナエキス)、パーム油(ギニアアブラヤシ(elaeis guineensis))、トコトリエノール、パルミチン酸アスコルビル、スクアレン、アスコルビン酸および植物ステロール。このクリームは、抗菌的な保存のための、フェノキシエタノール、メチルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、およびイソブチルパラベンの混合物を、さらに含有していた。
【0304】
クリーム4:
0.05%胎児皮膚細胞タンパク質(またはPSP)を含有する水中油型クリームを、上で述べた通りに調製したが、これは、比率が大きい順に、以下の他の成分を含有していた:水、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、C12〜20酸 PEG−8エステル、(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキル、ブチレングリコール、ジメチコン、フェニルトリメチコン、ビオサッカリドガム−1、グリセリン、セチルアルコール、フェノキシエタノール、異性化糖、カルボマー、セチルリン酸カリウム、ルリジサ(ルリジサ種子油)、テトライソパルミチン酸アスコルビル、カプリリルグリコール、メチルパラベン、EDTA二ナトリウム、トチャカ(カラゲナン)ヒアルロン酸ナトリウム、ギニアアブラヤシ(パーム)油、トコトリエノール、植物ステロール、ブチルパラベン、エチルパラベン、PEG−8、イソブチルパラベン、プロピルパラベン、トコフェロール、クエン酸、パルミチン酸アスコルビル、スクアレン、およびアスコルビン酸。
【0305】
クリーム5:
0.05%胎児皮膚細胞タンパク質(またはPSP)を含有する水中油型クリームを、上で述べた通りに調製したが、これは、比率が大きい順に、以下の他の成分を含有していた:水、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、C12〜20酸 PEG−8エステル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキル、ブチレングリコール、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、セチルアルコール、ビオサッカリドガム−1、グリセリン、安息香酸アルキル(C12〜15)、異性化糖、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール、二酸化チタン、セチルリン酸カリウム、カルボマー、ルリジサ種子油、テトライソパルミチン酸アスコルビル、メチルパラベン、水酸化ナトリウム、EDTA二ナトリウム、トチャカ(カラゲナン)、ヒアルロン酸ナトリウム、ギニアアブラヤシ(パーム)油、トコトリエノール、植物ステロール、ブチルパラベン、ステアリン酸アルミニウム、ポリヒドロキシステアリン酸、エチルパラベン、アルミナ、PEG−8、イソブチルパラベン、プロピルパラベン、トコフェロール、クエン酸、BHT、パルミチン酸アスコルビル、スクアレン、およびアスコルビン酸。
【0306】
クリーム1から5は、アスコルビン酸、BHT、トコフェロールおよびトコトリエノール、ならびにそのいくつかの誘導体(パルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、酢酸トコフェロール)などの、選択された酸化防止剤を含有する。
【0307】
クリーム3から5は、ヒアルロン酸ナトリウム、ビオサッカリドガム−1、および/または異性化糖などの、タンパク質安定化剤を含有する。
【0308】
クリーム2から3は、プロテアーゼ阻害剤:EDTAまたはEDTA二ナトリウムを含有する。
【0309】
クリーム5は、日焼け防止薬(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、二酸化チタン)を含有する。
【0310】
ヒドロゲルは、親水性の、三次元網様構造であり、これは、大量の水または生物学的流体を吸収することが可能であり、したがって、生物組織に非常に似ている(Peppas N.A. et al.,Eur J Pharm Biopharm.2000、50:27〜46)。これらは、化学的(連結点、接合部)および/または物理的な架橋(絡み合いおよび微結晶など)の存在に起因して不溶性である。こうした材料は、体内に存在するいくつかの生理学的刺激(例えばpH、イオン強度および温度)に応答して合成される可能性がある。
【0311】
ヒドロゲルは、架橋されて、水中への溶解を防止する親水性ポリマーを基礎としており、ヒドロゲルは、大量の水を含有することができるので、これは、タンパク質の送達のための興味深い装置である(Int J Pharm.2004;277:99〜104)。
【0312】
アルギネート、コラーゲン、デキストラン、ゼラチン、デンプン、デキストラン−ラクテート、ヒアルロン酸、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、エチレン酢酸ビニルポリ−l−ラクチド、セラミックヒドロキシアパタイト、N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレン)−b−ポリプロピレンオキシド)コポリマー(Pluronics(登録商標)、およびそれらの誘導体を使用して、水または水溶液と混合された場合にヒドロゲルを得ることができる。
【0313】
ヒドロゲルは、化学的または物理的な架橋連結後に得られる。架橋は、グルタルアルデヒド処理、凍結融解処理中の凝集、および放射線架橋(例えば紫外線)、または充填されたタンパク質の鎖切断を介して達成することができる。デキストラン(l)−乳酸塩およびデキストラン(d)−乳酸塩の水溶液を混合した後の鏡像異性オリゴマーの乳酸鎖間の立体錯体形成は、物理的に架橋させる方法である(Int J Pharm.2004;277:99〜104)。
【0314】
ゲル1:
15から22%のPoloxamer 407(Lutrol F127、BASF)を使用して、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質(またはPSP)を含有するゲルを調製した。保存剤も加えられた。
【0315】
(実施例8:前記組成物を用いる外陰部痛および/または外陰部前庭炎の処置)
クリーム1(実施例7に述べる通りに調製される)およびクリーム2(実施例7に述べる通りに調製される);2つの同様の水中油型エマルジョンベースの調合物(両方とも0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有する)を、外陰部の前庭炎症候群を処置するために使用する条件下で評価した。
【0316】
最初の6から8週間、外陰部前庭炎の患者は、1日2回(朝および夕方)、人さし指を用いて、前庭の下部の周囲に、3時の方から9時の方までU字型にクリームを適用した。適用1回あたり、約0.2ml(グリーンピースの大きさに相当する)のクリームを適用した。6から8週後、症状が、安定化する、あるいは消えるまで、1日1回の適用を継続した。一旦症状が安定化する、あるいは消えたら、症状の再発生を予防するために、1日に1回、あるいはまたは便宜のクリームの適用を継続した。
【0317】
クリーム1を、外陰部前庭炎の長期にわたる病歴(2から10年の間;4±3年)をもつ13人の女性のパネル(20から39歳の間の年齢;28±5年)において試験した。このクリームの有効性は、指標としてその性生活の質を問う患者の問診を通じて、主観的に評価した。すべての患者は、1日2回のクリーム使用の3から8週(5±2週)後に、性生活の質の改善を報告した(図1)。この期間の後、62%の患者は、通常の、痛みを伴わない性交が可能であることを報告した。31%は、かなり良好な、1人の患者(8%)は、より良好な性生活を報告した。このクリームは、すべての患者において、十分な許容性を示していた;刺激、アレルギー、タキフィラキシー、または膣フローラの変化の徴候は、報告または観察されなかった。
【0318】
クリーム2を、外陰部前庭炎の長期にわたる病歴(1から3年の間;2±1年)をもつ10人の女性のパネル(17から30歳の間の年齢;23±4年)において試験した。このクリームの有効性は、指標としてその性生活の質を問う患者の問診を通じて、主観的に評価した。
【0319】
すべての患者は、1日2回のクリーム使用の2から8週(5±2週)後に、性生活の質の改善を報告した(図2)。この期間の後、60%の患者は、通常の、痛みを伴わない性交が可能であることを報告し、40%は、かなり良好な性生活を報告した。このクリームは、すべての患者において、十分な許容性を示していた;刺激、アレルギー、タキフィラキシー、または膣フローラの変化の徴候は、報告または観察されなかった。
【0320】
問診による外陰部の痛みの主観的評価に加えて、これらの女性のうちの6人について、外陰部の疼痛閾値を、Semmes Weinstein Von Frey Aesthesiometer(Frey Filamentsとも呼ばれる)を用いて処置の前後で量的に測定した。これらの女性は、年齢が17〜30歳の間(24±5年)であり、1〜2年(2±0年)間の外陰部前庭炎の病歴を有していた。
【0321】
クリーム2の1日2回の使用の8週後、平均化された外陰部疼痛閾値の、3.7±3.2mNから112.6±80.7mNまでの有意に30倍の増加が測定され、問診によって得られる結果が確認された。この後者の数値は、健康な女性についてBohm−Starke et al.(Pain 2001、94、177〜183)によって報告された158±33mNに近い。
【0322】
まとめると、これらの結果は、クリームを用いる処置中および/または処置後に、患者によって報告される性生活の改善は、痛みが低下された、あるいは痛みを伴わずに性交および/または他の性行動を行う能力の結果であることを示す。膣挿入(penetration)または膣および外陰部の領域の擦れおよび摩擦に対して誘導される圧迫時の疼痛閾値の増大に加えて、上で述べた通りのクリーム1および2を繰り返して使用することによって、さらに、前庭の赤みまたは紅斑(クリームの使用より前に存在する)、掻痒症(かゆみ)および灼熱感が低下する。
【0323】
その結果、前記クリームは、外陰部前庭炎症候群の処置に有益であることが示された。
【0324】
(実施例9:前記組成物を用いる外陰部硬化性苔癬の処置)
クリーム2(実施例7に述べる通りに調製される)を、外陰部硬化性苔癬を患う9人の女性のパネル(17から30歳の間の年齢;23±4年)において試験した。クリームの有効性は、婦人科医によって視覚的に評価した。外陰部へのクリーム(Cram)2の1日2回の適用によって、外陰部の硬化性苔癬症状は有意に改善された。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0325】
その結果、前記クリームは、外陰部硬化性苔癬の処置に有益であることが示された。
【0326】
(実施例10:前記組成物を用いるアトピー性皮膚炎または湿疹の処置)
クリーム1(実施例7に述べる通りに調製される)、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有する水中油型エマルジョンベースの調合物を、2つの研究において、アトピー性皮膚炎または湿疹に対して使用される条件下で評価した。
【0327】
片方の研究では、クリーム1を、5人のアトピー性および/または刺激性の手の湿疹患者に対して研究した。患者は、17から58歳(33±16年)であった。処置の初めには、患者に、クリームを1日2から3回適用した。その後、適用の頻度を、1日1回から2回に低下させた。患者は、1ヶ月から数ヶ月の間、このクリームを適用した。総合評価、ならびに、掻痒、紅斑、小胞、浮腫、剥れ、苔蘚化、およびひびまたは割れ目などの症状を、処置の前後で、0から4までの段階(0=症状なし、1=軽度、2=中程度、3=重度、4=非常に重度)を用いて評価した。
【0328】
1人の患者以外はすべて、1から6ヶ月のクリーム使用後、湿疹(総合評価)の全体的な重症度は、少なくとも1段階低下した(図4)。特に言及する価値のあることは、クリームの使用後の、掻痒症(かゆみ)の著しい低下、および鱗屑、ひび、または割れ目の存在の大部分の減少である。掻痒症は、1人の患者以外では、完全に低下し、それぞれのかゆみまたは掻痒スコアは、平均で80%低下した。さらに、それぞれのスコアは、すべての5人の被験体について、平均で、紅斑について58%、小胞について50%、浮腫について67%、亀裂について53%、苔癬について28%、および割れ目について53%減少した。
【0329】
このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0330】
別の研究では、クリーム1を、23人の湿疹患者に対して研究したが、15人は、手が激しく裂け目を生じた、ひび割れた状態;手の湿疹の形であった。患者は、5から75歳であった。患者は、評価期間中の毎日最高3回、クリームを適用した。
【0331】
手の湿疹の外観および症状は、数週間から数ヶ月後の継続使用の後、1人の患者以外は、著しく改善した。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0332】
その結果、クリーム1は、湿疹の処置;特に手の湿疹、また、裂け目を生じた手、ひび割れた手の処置に有益であることが示された。
【0333】
(実施例11:組成物を用いる乾癬の処置)
クリーム1(実施例7に述べる通りに調製される)を、3人の乾癬患者のパネルにおいて試験した。患者は、評価期間中、毎日最高3回、クリームを適用した。1人の患者以外は、乾癬の外観および症状は、著しく改善した(図5)。この患者は、研究プロトコルに記載される通りにクリームを適用していなかった。数週間から数ヶ月の毎日の適用の後、処置は有効であった。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0334】
その結果、クリーム1は、乾癬の処置に有益であることが示された。
【0335】
(実施例12:組成物を用いる酒さの処置)
クリーム2(実施例7に述べる通りに調製される)を、皮膚ケアレジメンおよび/または酒さ薬物療法と組み合わせて、数人の酒さ患者において試験した。2つの代表的な酒さ症例が報告されている;1つは、脂漏性皮膚炎を伴わず(症例1)、もう1つは、脂漏性皮膚炎を伴う(症例2)。
【0336】
片方の研究では、クリーム2(実施例7に述べる通りに調製される)の使用の前に、酒さ患者(白色人種の女性、58歳)は、1日2回6週間、MD Forte Facial Cleanser II(15%グリコール化合物を含有)、MD Forte Replenish Hydrating Cream、およびPhysiogel(登録商標)Cream(Stiefel Laboratories)を使用したが、紅斑性(erythemato)毛細血管拡張症の酒さの著しい改善は見られなかった(図6、写真「適用前」)。
【0337】
Physiogel(登録商標)Creamの投与を中断し、その代わりに患者は、最初の6週間に使用したのと同じ洗顔剤および保水クリームと共にクリーム2を使用した。クリーム2の1日2回、2週間の適用後、顔全体、額、鼻、頬、およびあごの酒さの紅斑の減少が観察された(図6、写真「適用後」)。
【0338】
別の研究では、クリーム2の使用の前に、額(頭皮の空白(scalp clear))の発疹の6ヵ月の病歴を有する患者(白色人種の女性、41歳)を、2週間、Elocon(登録商標)(0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏;Schering Cop.)で処置した。Elocon(登録商標)の使用を中断すると、一週間後、額は再び発赤した。
【0339】
その後、患者は、RH洗浄剤およびRHクリームと組み合わせて、4週間、1日2回、Finacea(登録商標)ゲル(Berlex Laboratoriesによって流通している)を適用した。脂漏性皮膚炎および酒さは、この期間中に少なくとも75%改善し、額全体を通してすべての炎症性の病変および紅斑が減少した(図7、「適用前」写真)。
【0340】
この期間の後、患者は、RH洗浄剤およびRHクリームと共に、Finacea(登録商標)Gel(ゲルは最初に適用された)と組み合わせて、クリーム2の使用を開始した。処置計画にクリーム2を追加することは、患者が症状からほぼ回復するのを助けた。1日2回の適用の7週間後、脂漏性皮膚炎および酒さの著しい、さらなる改善が、観察された(図7、「適用後」写真)。
【0341】
酒さ患者は、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分にクリームを許容していた。
【0342】
その結果、クリーム2は、乾癬の処置に有益であることが示された。
【0343】
(実施例13:組成物を用いる軽度の損傷および/または火傷の処置)
クリーム1(実施例7に述べる通りに調製される)およびクリーム2(実施例7に述べる通りに調製される);2つの同様の水中油型エマルジョンベースの調合物(両方とも0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有する)を、軽度の損傷および/または火傷を処置するために使用する条件下で評価した。
【0344】
クリーム1は、第1度の火傷を患う8人の患者のパネルにおいて試験した。患者は、5から68歳であった。患者は、評価期間中、毎日最高3回、クリームを適用した。火傷の外観および症状は、すべての患者で著しく改善した。数週間から数ヶ月の毎日の適用の後、処置は有効であった。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0345】
クリーム2を、手のしみを除去するための冷凍外科療法の後に生じた皮膚病変の処置のために試験した。6週間、1日2回クリームを適用することによって、皮膚病変が迅速に治癒し、皮膚の外観、色合い、および質感が大幅に改善した(図8)。
【0346】
その結果、クリーム1およびクリーム2は、第1度の火傷および冷凍外科療法の後の皮膚病変などの軽傷の処置に有益であることが示された。
【0347】
(実施例14:瘢痕およびケロイドの処置)
クリーム1(実施例7に述べる通りに調製される)を、11人の瘢痕および最近のケロイド形成患者のパネルにおいて試験した。患者は、53から68歳であった。患者は、評価期間中、毎日最高3回、クリームを適用した。瘢痕およびケロイドの外観は、瘢痕が、最低でも1年より前には存在しなかったすべての患者において、著しく改善した。数週間から数ヶ月の毎日の適用の後、処置は有効であった。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0348】
その結果、クリーム1は、新たに(1年以内に)見つけられた瘢痕およびケロイドにおいて有益であることが示された。
【0349】
(実施例15:皮膚の自家移植または同種移植後の処置としての組成物の使用)
0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有する、クリーム1(実施例7に述べる通りに調製される)水中油型エマルジョンベースの調合物を、火傷および潰瘍の皮膚移植後の損傷ケアのために使用される条件下で評価した。
【0350】
クリーム1を、第2度および第3度の火傷を患う8人の小児のパネルにおいて試験した。標準の手順として、クリームを、1以上の皮膚細胞構築物の適用に起因する完全もしくは部分的な創縫合の後に適用した。さらに、このクリームを、移植部位に隣接する皮膚部位(皮膚が軽い程度の火傷を起こした場所)にも適用した。患者の年齢は、14ヵ月から9歳であった。身体部位には、手、腕、足、脚および臀部が含まれていた。クリームは、評価期間中、毎日最高3回適用された。損傷された部位および瘢痕形成の皮膚の外観、質感、および色合いは、すべての患者において著しく改善した。数週間から数ヶ月の毎日の適用の後、このクリームを用いる処置は有効であった。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0351】
その結果、クリーム1は、皮膚の自家移植または同種移植後の火傷の後処置に有益であることが示された。さらに、このクリームは、創傷治癒を完了させるために、皮膚移植と組み合わせて上手く使用することができる。小児に適用される場合も、クリームは安全であった。さらに、このクリームは、皮膚バリア特性が損なわれた皮膚に適用される場合にも、十分な許容性を示していた。
【0352】
クリーム1を、圧迫潰瘍または糖尿病性潰瘍を患う13人の患者のパネルにおいて試験した。標準の手順として、クリームを、1以上の皮膚細胞構築物の適用に起因する完全もしくは部分的な創縫合の後に適用した。さらに、このクリームを、移植部位および周囲潰瘍性皮膚に隣接する皮膚部位に適用も適用した。また、損傷が、その後の構築物適用に対して、一旦閉じる、あるいは非常に小さくなったら、このクリームを、1日2回、追跡処置として適用した。患者は、年齢が10日から85歳であった。身体部位には、ふくらはぎ、くるぶし、足、および腕が含まれていた。クリームは、評価期間中に、毎日最高3回適用された。
【0353】
潰瘍部位および瘢痕形成の皮膚の外観、質感、および色合いは、1人を除くすべての患者において著しく改善した。この1人の患者の処置は、糖尿病患者と診断されたことによって停止された。1人の男性患者(85歳)では、最初の処置が成功した後、疾患が再発した。一例として、腕の筋肉層に圧迫潰瘍をもって生まれた小児は、生後10日で成功裏に処置された。乳児は、3つの皮膚移植を受け、クリームを用いて並行して処置された。処置の15日目の創縫合の後、クリームを、全皮膚領域に数週間適用すると、完全な瘢痕のない創傷治癒がもたらされた。ほとんどの場合、数週間から数ヶ月の毎日の適用の後、このクリームを用いる処置は有効であった。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0354】
その結果、クリーム1は、皮膚の自家移植または同種移植後の潰瘍の後処理に有益であることが示された。さらに、このクリームは、創傷治癒を完了するために、皮膚移植と組み合わせて上手く使用することができる。新生児に適用される場合も、クリームは安全であった。さらに、このクリームは、皮膚バリア特性が損なわれた皮膚に適用される場合にも、十分な許容性を示していた。
【0355】
(実施例16:白色萎縮の処置としての組成物の使用)
白色萎縮は、下腿上に生じる特定のタイプの瘢痕である。これは、血液供給が不十分な場合に、皮膚損傷の後に起こる。これは、皮斑様(Livedoid)血管炎の特有の病変である。皮斑様血管炎は、下肢の持続的な痛みを伴う潰瘍化によって特徴づけられる、珍しい、慢性的な血管異常である。皮斑様血管炎の特性としては、以下が挙げられる:(1)小さい、圧痛がある、不規則な潰瘍に進行する(30%の症例)、痛みを伴う赤または紫の跡および斑点、および(2)無痛の白色萎縮瘢痕。
【0356】
クリーム1(実施例7に述べる通りに調製される)を、3人の白色萎縮患者のパネルにおいて試験した。患者は、37から76歳であった。患者は、評価期間中に、毎日最高3回、クリームを適用した。白色萎縮の外観および症状は、萎縮性皮膚および周囲の領域の著しい安定化と共に、すべての患者において著しく低下した。数週間から数ヶ月の毎日の適用の後、処置は有効であった。このクリームは、局所的または全身的副作用を起こすことはなく、十分な許容性を示していた。
【0357】
その結果、クリーム1は、白色萎縮の処置に有益であることが示された。
【0358】
(実施例17:他の皮膚条件、異常、および疾患の処置としての組成物の使用)
使用された様々な研究によって、放射線皮膚炎、接触蕁麻疹、接触皮膚炎または刺激物接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、日焼けおよび/または光線皮膚炎、全身性かゆみまたは掻痒症、外直腸のかゆみまたは掻痒症、陰茎または陰嚢上の局所的なかゆみまたは掻痒症、有毒オークおよびツタウルシへの暴露に起因する局所的なかゆみまたは掻痒症、ならびに昆虫刺症、および/または瘢痕またはケロイド皮膚部位上の局所化されたかゆみまたは掻痒症の処置、軽減、または外観の改善における、クリーム1および/またはクリーム2(実施例7に述べる通りに調製した;両方とも、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有する水中油型エマルジョンベースの調合物)の有意な有効性が示された。
【0359】
(実施例18:美容/皮膚科学的処置の後の処置としての組成物の使用)
使用された様々な研究によって、ケミカルピーリング、皮膚擦傷法およびマイクロピーリング、光およびレーザー処置、高周波処置、熱処置、電気外科剥皮またはコブレーション(CO−レーザーおよび高周波)、余分な体毛の除去、様々な美容整形処置、冷凍外科療法および/または様々な他の美容および皮膚科学的処置後の回復、皮膚再生、および/または治癒の改善における、クリーム2(実施例7に述べる通りに調製される)の有意な有効性が示された。
【0360】
クリームを用いる処置によって、それらの処置の後の、皮膚の治癒および回復の増強が助けられ、皮膚の外観、色合い、および質感が改善される。
【0361】
(実施例19:皮膚−老化の徴候を低下させるための組成物の使用)
使用された研究によって、鼻から口にかけてのしわを含めて、顔のこじわおよびしわの外観、色合い、および質感の改善における、クリーム2(実施例7に述べる通りに調製される)の有意な有効性が示された(図9)。
【図面の簡単な説明】
【0362】
【図1】外陰部前庭炎症候群の処置における、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有するクリーム1の、性生活の質の問診によって評価される通りの有効性を示すグラフである。
【図2】外陰部前庭炎症候群の処置における、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有するクリーム2の、性生活の質の問診によって評価される通りの有効性を示すグラフである。
【図3】外陰部前庭炎症候群の処置における、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有するクリーム2の、処置の前後の外陰部の疼痛閾値を測定することによって評価される通りの有効性を示すグラフである。疼痛閾値は、ミリニュートン(mN)で与えられる;平均および標準偏差が与えられる(n=6)。
【図4】手の湿疹の処置における、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有するクリーム1の有効性を示すグラフである。以下の評価法:0=存在しない、1=軽度、2=中程度、3=重度、および4=非常に重度を使用して、処置の前(黒曲線)および後(赤)の症状を評価する。平均値が与えられる;n=5。
【図5】乾癬の処置における、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有するクリーム1の有効性を示す写真である。数週間のクリーム使用の前と後の、乾癬患者の代表例を示す。
【図6】酒さの処置における、αヒドロキシ酸(グリコール酸)生成物と組み合わせた、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有するクリーム2の有効性を示す写真である。2週間のクリーム使用の前と後の、酒さの患者の代表例を示す。
【図7】脂漏性皮膚炎を随伴する酒さの処置における、酒さ薬物療法(アゼライン酸生成物)と組み合わせた、0.05%胎児皮膚細胞タンパク質を含有するクリーム2の有効性を示す写真である。7週間のクリーム使用の前と後の、随伴する脂漏性皮膚炎を患う酒さ患者の代表例を示す。
【図8】冷凍外科療法の後に生じる軽い創傷および/または皮膚病変の後の処置としてのクリーム2の有効性を示す写真である。冷凍外科療法(または寒冷療法)は、手のしみを除去するために実施された。冷凍外科療法の後の画像(写真「適用前」;クリーム使用の前に相当)と、1日2回のクリーム使用の6週後の画像(「適用後」)を示す。
【図9】皮膚のこじわおよびしわ(54歳女性の鼻から口にかけてのしわを含む)の外観の改善における、適用前(左の画像)と1日2回6週間の適用後(右)の、クリーム2の有効性を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞溶解の後の1以上の胎児皮膚細胞から得られる1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含む、皮膚の状態、障害または疾患を患う被験体を処置するための組成物。
【請求項2】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、妊娠6〜24週で得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、妊娠12〜16週で得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、胎児の皮膚組織全体から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、胎児の皮膚組織断片から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞またはそれらの組み合わせおよび混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、胎児線維芽細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、不死化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、細胞バンクまたは細胞株から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、精製されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、1以上の細胞成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、サイトカイン、酵素、ホルモン、細胞外基質構造タンパク質、ニューロペプチドまたはニューロペプチドアンタゴニストを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、1以上のサイトカインを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記サイトカインが、成長因子、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子またはケモカインあるいはそれらの組み合わせおよび混合物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
鎮痛剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、酸化防止剤、反対刺激剤、抗微生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、保存剤、タンパク質安定化剤、プロテアーゼ阻害剤、皮膚保護剤、日焼け防止薬またはそれらの組み合わせおよび混合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、局所、粘膜、眼、直腸または膣投与に適している、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、局所投与に適している、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、薬剤用途に適した、軟膏、ローション、クリーム、泡、ムース、スプレー、エアロゾル、エマルジョン、ナノエマルジョン、マスク、マイクロエマルジョン、ゲル、ヒドロゲル、溶液、スポンジまたは分散液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、美容用途に適した軟膏、ローション、クリーム、泡、ムース、スプレー、エアロゾル、エマルジョン、ナノエマルジョン、マスク、マイクロエマルジョン、ゲル、ヒドロゲル、溶液、スポンジ、または分散液である請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、油中水型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンベースのクリームである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、水中油型エマルジョンまたは水中油型エマルジョンベースのクリームである、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、0.001%から95%の間の濃度で組み込まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、0.01%から5%の間の濃度で組み込まれる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、0.05%から0.25%の間の濃度で組み込まれる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記細胞溶解が、誘導されるものであり、自然発生的なものではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記細胞溶解が、力学的、物理的または化学的に実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記細胞溶解が、1以上の凍結融解のサイクルによって実施される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記細胞溶解が、1ミリリットルの水溶液系に懸濁させた100個から60,000,000個の胎児皮膚細胞を用いて実施される、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記細胞溶解が、1ミリリットルの水溶液系に懸濁させた10,000,000個から20,000,000個の胎児皮膚細胞を用いて実施される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記水溶液系が、生理緩衝液系である、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記水溶液系が、リン酸緩衝食塩水系である、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記水溶液系が、1以上のタンパク質安定化化学物質をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記水溶液系が、1以上のプロテアーゼ阻害剤をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
前記水溶液系が、1以上の抗微生物剤、抗菌剤、酸化防止剤、保存剤またはそれらの組み合わせおよび混合物をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
皮膚または粘膜の状態、障害または疾患を処置する方法であって、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含む組成物を該処置を必要とする被験体に投与し、それによって、該状態、障害または疾患を処置する工程を含む、方法。
【請求項36】
前記皮膚または粘膜の状態、障害または疾患が、炎症性の皮膚または粘膜の状態、神経性または神経炎症性の皮膚または粘膜の状態、急性または慢性の創傷、急性または慢性の潰瘍または火傷である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
炎症性の皮膚状態を処置する方法であって、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含む組成物を該処置を必要とする被験体に投与し、それによって、該状態を処置する工程を含む、方法。
【請求項38】
前記炎症性の皮膚状態が、外陰部前庭炎症候群、感覚異常性外陰部痛、外陰部痛、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、外陰部硬化性苔癬、皮脂嚢胞、脂漏性皮膚炎、酒さ、座瘡、ケロイド、掻痒症、白色萎縮、フケ、おむつかぶれ、光線皮膚炎、周囲潰瘍、瘢痕または乾皮症である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
外陰部痛を処置する方法であって、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含む組成物を該処置を必要とする被験体に投与し、それによって、該状態を処置する工程を含む、方法。
【請求項40】
前記外陰部痛が、外陰部前庭炎症候群である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記外陰部痛が、外陰硬化性苔癬である請求項39に記載の方法。
【請求項42】
副腎皮質ステロイド、エストロゲン、プロゲステロン、リドカイン、カプサイシン、イソトレチノイン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ダプソン、アシクロビル、三環式抗うつ薬またはそれらの組み合わせもしくは混合物を投与する工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
1以上の創傷、潰瘍または火傷を処置する方法であって、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含む組成物を該処置を必要とする被験体に投与し、それによって、該1以上の創傷または火傷を処置する工程を含む、方法。
【請求項44】
フィルム、親水コロイド、ヒドロゲル、泡、ワセリン、シリコン、シリコンシート、アルギン酸カルシウムまたはセロハンを投与する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が、外部圧迫を伴って投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記外部圧迫が、1以上の包帯によって施される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記1以上の包帯が、軽量の伸縮包帯、軽いサポート包帯または圧迫包帯である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
美容または皮膚科学的処置と組み合わせて皮膚の外観を改善する方法であって、1以上の胎児皮膚細胞タンパク質および許容される担体を含む組成物を該改善を必要とする被験体に投与し、それによって、該皮膚を処置する工程を含む、方法。
【請求項49】
前記美容および/または皮膚科学的処置が、ケミカルピーリング、フィジカルピーリング、皮膚擦傷法、マイクロピーリング、光および/またはレーザー処置、強力パルス光処置、高周波処置、熱処置、酸素および/またはオゾン処置、電気外科的剥皮またはコブレーション、ムダ毛脱毛、タトゥー除去、ボツリヌス毒素注入、フィラー注入、シリンジリポスカルプチャー、シリンジ脂肪移植、美容または非美容外科的手技、冷凍外科療法または寒冷療法、および/または、α−ヒドロキシ酸、アゼライン酸、安息香酸、過酸化ベンゾイル、β−ヒドロキシ酸、ベタメタゾン、クエン酸、クリンダマイシン、副腎皮質ステロイド、ジクロフェナク、ジスラノール、フルオロウラシル、グリコール酸、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロキノン、インドメタシン、イソトレチノイン、コウジ酸、乳酸、メトロニダゾール、フェノール、レチノイン酸、レチノール、レチナールアルデヒド、レチノイルβ−グルクロニド、サリチル酸、硫化セレニウム、スルファセタミドナトリウム、イオウ、タザロテン、トレチノイン、トリクロロ酢酸、尿素もしくはその誘導体を含有する局所的薬物適用、またはこれらの美容もしくは皮膚科学的処置の任意の組み合わせである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記美容または皮膚科学的処置が、酒さ処置である請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記被験体が動物である請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記動物がウマである請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記被験体がヒトである請求項35に記載の方法。
【請求項54】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、細胞溶解の後に得られる1以上の胎児皮膚細胞から得られる請求項35に記載の方法。
【請求項55】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、妊娠6〜24週で得られる、請求項35に記載の方法。
【請求項56】
前記1以上の胎児皮膚細胞が、妊娠12〜16週で得られる、請求項35に記載の方法。
【請求項57】
前記胎児皮膚細胞タンパク質が、1以上の細胞成分を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項58】
鎮痛剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、酸化防止剤、反対刺激剤、抗微生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、保存剤、タンパク質安定化剤、プロテアーゼ阻害剤、皮膚保護剤、日焼け防止薬またはそれらの組み合わせおよび混合物をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が、局所、粘膜、眼、直腸または膣投与に適している、請求項35に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が、局所投与に適している、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が、軟膏、ローション、クリーム、泡、ムース、スプレー、エアロゾル、エマルジョン、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、ゲル、ヒドロゲル、溶液または分散液である、請求項35に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が、油中水型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンベースのクリームである、請求項35に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が、水中油型エマルジョンまたは水中油型エマルジョンベースのクリームである、請求項35に記載の方法。
【請求項64】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、0.001%から95%の間の濃度で前記組成物に組み込まれる、請求項35に記載の方法。
【請求項65】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、0.01%から5%の間の濃度で前記組成物に組み込まれる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記1以上の胎児皮膚細胞タンパク質が、0.05%から0.25%の間の濃度で前記組成物に組み込まれる、請求項65に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−513438(P2008−513438A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531879(P2007−531879)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/004182
【国際公開番号】WO2006/092668
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(504305809)
【Fターム(参考)】