説明

皮膚を美白にするおよび老人斑を処置するのための、ビオチンまたはビオチン誘導体の使用

本発明は、皮膚を美白する、皮膚の色彩差を解消するおよび老人斑(age spot)を処置するための、美容剤または医薬品を製造するための、ビオチン単独での、しかしながら、好ましくは、ビタミンCまたはビオチンの誘導体を伴う使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老人性黒子の処置する、皮膚色のムラを平滑化するおよび/または自然な皮膚色を美白にするのための、医薬組成物または化粧用組成物の製造のための、単独での、好ましくは、ビタミンCまたはビタミンC誘導体との、ビオチンまたはビオチン誘導体の使用に関する。
【0002】
老人性黒子は、皮膚の老化から生じる皮膚上の暗色の斑点である。これらは、様々な老化プロセスの結果であり、これらは、投射光線の照射によって加速される。このようにして、皮膚は、その色に関して不均一であるように見える。
【0003】
日焼けは、異なる人族群において、様々な程度での相違が見られる、皮膚の自然な保護機能である。多くの文化的集団において、白い皮膚の色合いは魅力的と考えられ、したがって、自然な皮膚色の美白へのニーズが発生する。
【0004】
皮膚の美白目的のための組成物は、公知である。例えば、ヒドロキノン、コウジ酸、アルブチン、ビタミンC、その外に、様々な植物抽出物である。しかしながら、多くの組成物についての1つの問題は、皮膚の美白または老人性黒子(肝斑、老人性黒子)の除去に加えて、副作用、例えば、皮膚のかぶれも発生しうることである。より少ない皮膚のかぶれに到る植物抽出物は、一般に、十分に効果的ではない。
【0005】
皮膚によって十分に耐えられるが、皮膚の美白、老人性黒子の処置および皮膚色のムラの平滑化に効果的である、追加の組成物、特に、化粧用組成物へのニーズがある。これらの組成物は、周知の皮膚美白用の組成物と少なくとも同程度に効果的であり、好ましくは、これよりも効果的であるべきである。
【0006】
ビオチンは、公知の活性成分であり、これは、多くの化粧用製剤および医薬組成物中に見られる。ビオチンは、次の式で示される化合物である:
【0007】
【化2】

【0008】
これは、8つの異なる立体異性形態で生じうる。ビオチンは、特に、D−(+)−ビオチン、すなわち、次の式で示される、(3aS、4S、6aR)−2−オキソヘキサヒドロチエノ[3,4−d]−イミダゾール−4−吉草酸化合物である。
【0009】
【化3】

【0010】
美白用途におけるビオチンの使用の有効性は、現在まで、知られていない。
【0011】
本発明によれば、ビオチンは、皮膚の美白効果を示し、そのため、老人性黒子の処置、皮膚色のムラの平滑化、その外に自然な皮膚の色合い色を美白のために用いることができることが、驚くべきことに発見された。
【0012】
したがって、本発明は、自然な皮膚の色合いを美白する、皮膚色のムラを平滑化するおよび/または老人性黒子を処置するための組成物の製造のため、ビオチンの使用を利用可能にする。
【0013】
本発明による「ビオチン」という用語は、次の式で示される8つの立体異性体に関する。
【0014】
【化4】

【0015】
これらは、立体化学的に純粋な形態であるか、または2つ以上の立体異性体の任意のランダム混合物であるかのいずれかである。本発明により、特に好ましいものは、次の式で示されるD−(+)−ビオチンである。
【0016】
【化5】

【0017】
ビオチン誘導体は、専門家に公知である。これらは、インビトロで、しかしながら、とりわけ、インビボで、ビオチンに転化される化合物である。親油性ビオチン誘導体は、一般に、ビオチンそれ自体よりもよく皮膚に浸透するが、ビオチンと同等の効果を達成し、特に好ましい。ビオチンに加えて、本発明によれば、ビオチンエステルもまた特に好ましいものであり、これらから、角質層を通る浸透後に、ビオチンは、再び、皮膚自体における酵素系によって放出される。本発明により、特に好ましいものは、式IおよびIIで示されるビオチンエステルであり、これらは、次のように、ビオチンから推論される。
【0018】
【化6】

【0019】
式中、
=H、C〜C20−アルキル、C〜C−シクロアルキル、アリール;
およびR=互いに独立して、H、C〜C−アルコキシカルボニル;そして
=H、C〜C20−アルキル、C〜C−アルコキシカルボニル。
【0020】
〜C20−アルキル基は、好ましくは、C〜C10−アルキル基であり、更により好ましくは、C〜C−アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、第三ブチルまたはイソブチル基である。
【0021】
〜C−シクロアルキル基は、好ましくは、シクロヘキシル基である。
【0022】
アリール基は、好ましくは、C〜C10−アリール基、特に、フェニル基である。
【0023】
〜C−アルコキシカルボニル基は、好ましくは、C〜C−アルコキシカルボニル基である。
【0024】
基Rは、好ましくは、水素原子またはC〜C−アルキル基である。
【0025】
基RまたはRの少なくとも1つは、好ましくは、水素原子であり、更により好ましくは、基RおよびRの両方が、水素原子である。基Rは、好ましくは、水素原子またはC〜C−アルキル基であり、更により好ましくは、水素原子である。
【0026】
基R、R、およびRは、特に好ましく、すべて水素原子であり、基Rは、先に定義されるようなC〜C−アルキル基である。
【0027】
ビオチン誘導体のうち、すべての立体異性形態および塩は、本発明によれば、単独でまたはランダム混合物で含まれる。
【0028】
本発明によれば、ビオチンおよびその誘導体は、個別に使用され得る。しかしながら、ビオチンとその誘導体の1つ以上との混合物、例えば、先に記載されるような、1つ以上のビオチンエステルとの混合物としてのビオチンを用いることも可能である。同様に、様々なビオチン誘導体は、各々相互の混合物として用いられ得る。
【0029】
ビオチン誘導体の製造は、専門家に公知であり、この点に関して、有機化学の慣用の標準的方法を用いることができる。例えば、水を分離する(splitting off)ことによる、所望のアルコール、例えば、メタノールまたはエタノールとのビオチンのエステル化である。
【0030】
ビオチンおよびビオチン誘導体は、同様に、塩形態でも用いることができる。適切なビオチン塩は、特に制限されておらず、この状況において、アルカリ、アルカリ土類および他の適切な金属との塩であるが、同様に、アンモニウムおよび有機塩基との塩であり、特に、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩との塩が挙げられる。窒素原子によって、ビオチンおよび特にビオチン誘導体もまた、適切な酸、例えば、無機または有機酸、特に、鉱酸、例えばHClと反応して、酸付加塩の形態で存在しうる。塩酸塩が、特に好ましい。塩の製造は、周知の方法で、例えば、ビオチンまたはその誘導体と、対応する塩基(例えば、NaOHまたはKOH)または対応する酸(例えば、HCl)との反応を通して、行われる。
【0031】
この明細書中で「組成物」が、より詳細には特定されずに述べられている限り、これは、化粧用組成物および医薬組成物の両方として理解されるべきである。化粧用組成物と医薬組成物との間の区別のために、例えば、Rompp, Chemical Encyclopedia, 10th Editionおよびその中に引用されている文献を参照されたい。本発明によれば、ビオチンは、好ましくは、ビオチンが化粧品との適合性を有する添加剤とともに製剤化されている化粧用組成物の製造のために用いられる。しかしながら、本発明によれば、ビオチンが薬品との適合性を有する添加剤とともに製剤化されている医薬組成物の製造のためにビオチンを用いることも可能である。この出願の枠組み内で、他の説明が示されていない限り、述べられている添加剤は、化粧品と適合性のある添加剤であり、その外に薬品との適合性を有する添加剤である。
【0032】
本発明によれば、ビオチンが製剤化されている組成物は、好ましくは、局所組成物、例えば、液体または固体の水中−油エマルジョン、油中−水エマルジョン、多重エマルジョン、マイクロエマルジョン、PITエマルジョン、ビカーリング(Bickering)エマルジョン、ヒドロゲル、アルコールゲル、リポ−ゲル、単一または多重相溶液、フォーム、軟膏、プラスター、縣濁液、粉末、クリーム、クレンザー、石鹸および他の慣用の組成物であり、これらはまた、例えば、スティック、マスクを用いて、またはスプレーとして塗布する(apply)こともできる。
【0033】
局所組成物は、好ましくは、1種以上の添加剤、例えば、化粧品および/または医薬組成物との適合性を有する、キャリヤーおよび/または補足剤または助剤を、これらが一般にこのような調製物中に用いられているように含有する。ここで、例えば、脂肪、油、ワックス、シリコーン、乳化剤、アルコール、多価アルコール、増粘剤、湿潤および/または湿分保持物質、界面活性剤、軟化剤、発泡遅延化剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性ポリマー、アルカン化もしくは酸性化剤、硬水軟化剤、吸着剤、サンスクリーン剤、電解質、金属イオン封鎖剤、水、有機溶剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、ビタミン、芳香剤、香料、甘味料、着色料および顔料を挙げることができる。
【0034】
本発明による局所製剤は、好ましくは、1種以上の従来の脂肪物質を添加剤として含有する。例えば、植物油、液体パラフィン油、イソパラフィン油、合成炭化水素、ジ−n−アルキルエステル、脂肪酸、脂肪アルコール、エステル油、ヒドロキシ−カルボン酸エステル、ジ−カルボン酸エステル、ジオールエステル、対称、非対称もしくは環状エステルまたは脂肪アルコールとの炭酸エステル、グリセリンとのモノ−、ジ−およびトリ−脂肪酸エステル、ワックス、およびケイ素化合物である。
【0035】
脂肪物質は、一般に、局所組成物中に、(それぞれ、全体の組成物に対して)0.1〜50重量%、好ましくは、0.1〜20重量%、特に0.1〜15重量%の量で存在する。
【0036】
局所組成物は、他の添加剤、例えば、1種以上の界面活性物質を、乳化剤または分散剤として含有してもよい。このような乳化剤または分散剤の適切な例は、公知である。
【0037】
乳化剤は、局所組成物中に、全体の組成物に対して、0.1〜25重量%、好ましくは、0.5〜15重量%の部分として存在してもよい。
【0038】
局所組成物は、同様に、慣用のサンスクリーン剤を添加剤として含有してもよい。例えば、慣用のUV−Aおよび/またはUV−Bフィルターである。同様に、本発明による組成物中に用いることができる慣用の、UV−Aおよび/またはUV−Bフィルターの概要は、例えば、EP−A1081140に見出し得る。本発明によれば、当然ながら、初めてこの文献に開示されている新規な日射保護フィルターも、本発明の組成物に用いることができる。
【0039】
適切な有機、鉱物性または修飾鉱物性サンスクリーンフィルターも、WO01/64177に開示されており、本発明者らは、これらも同様に参照する。
【0040】
所望であれば、本発明の組成物は、また、例えば、WO01/64177に明らかにされているように、タンパク質加水解物もしくはこれらの誘導体を、その外に適切なモノ−、オリゴ−もしくは多糖類またはこれらの誘導体を、添加剤として含有してもよい。さらなる添加剤および助剤、例えば、ビタミン、プロビタミンおよびビタミン前駆物質、アラントイン、ビスアボロール、酸化防止剤、セラミドおよび擬似セラミド、トリテルペン、モノマーカテキン、増粘剤、植物グリコシド、構造付与物質(構造化剤)、ジメチルイソソルバイド、溶剤、膨潤および浸透アジュバント、香油、組成物を染色するための顔料および着色料、pH値を調節するための物質、錯化剤、乳白剤、真珠光沢物質、発泡剤、皮膜形成剤、エマルジョン安定化、増粘性または接着性ポリマー、特に、カチオン性、アニオン性、その外に非イオン性ポリマーが、同様に、WO01/64177に明らかにされている。この公報は、これまでに参照として本明細書に組み込まれている。
【0041】
これらの組成物は、好ましくは、これらが局所塗布に適するように製剤化されている。局所塗布は、好ましくは、少なくとも一日1回、例えば、一日2回または3回行われる。処置期間は、一般に、所望の効果が達成されるまで、少なくとも2日続く。処置期間は、また、数週間または数ヶ月かかることもある。
【0042】
塗布されるべき組成物の量は、組成物中の活性成分の濃度に、その外に処置される病気の重症度および/または所望する美容上の成功度に依存する。医薬用途の場合、一般に、1適用あたり用いられる活性成分の量は、化粧用途の場合よりも高い。適用のための有効量は、皮膚の状態、治療の対象となる人に、その外に治療の対象となる皮膚の変色の重症度およびタイプおよび他の要因に依存する。これらは、診療する主治医または美容の専門家に公知である。例えば、適用は、クリームを皮膚に塗布するように行うことができる。クリームは、通常、クリーム2mg/皮膚cm2の適量で塗布される。しかしながら、塗布される量は決定的ではなく、塗布される活性成分のある量を用いても処置的成功が達成されるべきでないならば、塗布される量は、例えば、局所製剤をより高い濃度で用いることによって、確かに増加させられ得る。
【0043】
本発明によれば、活性成分は、そのままでまたはカプセル化形態でも、例えばリポソーム形態でまた製剤化され得る。リポソームは、好都合にも、ステロールもしくはフィトステロールの添加を伴わずにまたは伴って、レシチンとともに形成される。活性成分のカプセル化は、単独で、または他の活性成分と一緒に、行われてもよい。
【0044】
本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、ビオチン0.0001〜約50重量%の適量を含有する。ビオチンが、組成物の総重量に対して、0.01〜約20重量%の適量、更により好ましくは、約0.01〜約1重量%の適量、特に約0.1重量%の適量で存在するならば、より好ましい。
【0045】
局所組成物のタイプおよび製造に、その外に例示的添加剤の開示に関して、関連文献、例えば、NOWAK G.A., Cosmetic Preparations-Volume 2,Cosmetic Preparations-Recipes, Starting Substances, Scientific Basis(Verlag fur chem.Industrie H.Ziolkowsky KG, Augsburg, Germany)を参照したい。
【0046】
例えば、グラニュールまたはペレットを含有する、丸薬、タブレット、カプセルの形態での経口組成物として、液体経口製剤としてまたは食品への添加剤として、ビオチンを製剤化することも同様に可能である。このことは、原則として、専門家に公知である。経口投与される組成物が、本発明にしたがって製造されうる、適切な方法および添加剤は、例えば、標準的研究 "Remington:The Science and Practice of Pharmacy", Lippincott, Williams and Wilking(Publisher)2000 に開示されている。これは、参照として本明細書に組み込まれる。
【0047】
伝統的な賦形剤、例えば、微晶質セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二ナトリウムもしくは二カリウム、リン酸ナトリウムもしくはカリウム、グリシン、崩壊を促進するための作用物質、例えば、デンプンもしくはアルギン酸、結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、サッカロース、ゼラチンもしくはアカシアゴム、スリップ剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムラウリルスルフェートまたはタルカムを、錠剤製造において、経口組成物、特に、錠剤のための慣用添加剤として、使用され得る。この組成物が、ゲルカプセル中に充填されるならば、グラニュールの製造のための慣用助剤は、ラクトースまたは乳糖、その外に高分子量を有するポリエチレングリコールである。他の経口製剤のための、特に、食品への添加剤としての製剤のためのさらなる添加剤は、専門家には公知であり、関連文献、例えば、 "Principles of Food Engineering" (Grundzuge der Lebensmitteltechnik), Horst-Dieter Tscheuschner(publisher), 2nd, newly revised Edition Hamburg: Behr's 1996を参照する。
【0048】
経口組成物の場合、組成物中の活性成分(すなわちビオチンおよび/またはビオチン誘導体)の含量は、一般に、1〜90%、好ましくは、10〜80%、例えば、50%またはそれ以上である。投与は、所望の効果が達成されるように行われ、患者の状態、処置される皮膚の変色のタイプおよび重症度などに依存し、専門家によって容易に決定されうる。活性成分の通常の一日投薬量は、0.1μg/日〜50mg/日、例えば、20μg/日〜2mg/日の範囲にある。
【0049】
驚くべきことに、本発明により、皮膚の美白目的のためのそれ自体の有効性に加えて、ビオチンが、ビタミンCまたはビタミンC誘導体と一緒に投与される場合、驚くほど高い皮膚の美白効果を示すということが、更に発見された。
【0050】
ビタミンC誘導体は、公知であり、本発明によれば、これらは、インビボまたはインビトロでビタミンCを放出するすべての化合物と、その外にこれらの溶媒和物、水和物および塩と解される。ビタミンC誘導体の例として、例えば、アスコルビン酸のグルコシドおよびアスコルビン酸のホスフェート、および特に、マグネシウムアスコルビルホスフェート、ナトリウムアスコルビルホスフェート、カルシウムアスコルビルホスフェート、カリウムアスコルビルホスフェートおよび混合塩、例えば、ナトリウムマグネシウムアスコルビルホスフェートまたはナトリウムカルシウムアスコルビルホスフェートを挙げることができる。特に、これらのホスフェートは、水和物として存在することが多い。この場合、二水和物形態が最も普通である。ビオチンは、本発明によれば、ナトリウムアスコルビルホスフェートと一緒であることが特に好ましく、最も好ましくは、二水和物の形態であり、例えば、それは、Roche Vitamins AGから、商品名STAY−C50として入手可能である。
【0051】
ビタミンCが美白効果を示すことは、これまで公知であったが、ビオチンとビタミンCおよび/またはビタミンC誘導体との組み合わせが、ビタミンC単独の皮膚の美白効果より、顕著により区別される、皮膚の美白効果を有することは知られていなかった。
【0052】
本発明によれば、ビタミンCおよび/またはその誘導体は、ビオチンも同様に存在する同じ製剤中に組み込むことができる。局所組成物中のビタミンCおよび/またはその誘導体は、好ましくは、組成物の総重量に対して、0.001〜約50重量%の量で用いられる。ビタミンCおよび/またはその誘導体が、局所組成物中で、組成物の全体の重量に対して、0.01〜約20重量%の量で、より好ましく、約0.1〜約15重量%、例えば、1〜約5重量%、例えば、3重量%の量で用いられるなら、より好ましい。経口組成物中のビタミンCおよび/またはその誘導体の量に関して、ビタミンCおよび/またはその誘導体の量および投薬量にも適用する、ビオチンの前述の説明を参照したい。
【0053】
本発明によれば、「組成物」という用語は、また、この組成物が2つの個別な部分に存在し、1つの部分が活性成分のビオチンを含有し、他方の部分が、活性成分のビタミンCまたはその誘導体を含有する実施形態も包含する。この組成物の2つの個別な部分は、各々局所的に塗布することが可能であるか、または経口で摂取することも可能であるが、この組成物の1つの個別な部分が局所的に塗布され、この組成物の他方の部分が経口投与され、したがって、本発明の組成物において、例えば、1つの個別な部分が活性成分のビオチンを含有して局所的に塗布され、一方で、他方の個別な部分が活性成分のビタミンCもしくはその誘導体を含有して経口投与されるか、またはそこでは、活性成分のビオチンを含有する組成物の個別な部分が経口投与され、活性成分のビタミンCおよび/またはその誘導体を含有する組成物の個別な部分が局所的に塗布される。
【0054】
この組成物の個別な部分の製造、添加剤、活性成分および個別な部分中に含有される。それぞれの添加剤および活性成分の量については、ビオチンを有する局所および経口製剤の前述の例に参照がされ得る。これらはまた、この組成物が、各々が活性物質を含有している、2つの個別な部分中に存在する、本発明の実施形態にも適用する。個別な部分の1つにおけるビタミンCおよび/またはその誘導体の量については、この組成物が2つの個別な部分の形態で存在しないが、両方の活性成分が単一組成物中に存在する、前述の実施形態に参照がされ得る。
【0055】
この組成物が、ビオチンおよびビタミンCならびに/またはその誘導体を含有する限り、ビオチンに対するビタミンCおよび/またはその誘導体の重量比は、好ましくは、500:1〜1:500、より好ましくは、100:1〜1:100、特に、30:1〜1:30である。ビタミンCおよび/またはその誘導体の量が、その組成物中で、ビオチンの量よりも多いことが更に好ましい。先の情報は、ビオチンおよびビタミンCなおよび/またはその誘導体が、混合物中に、一緒に存在する実施形態、およびこの組成物が2つの個別な部分から成り、1つの部分が活性成分のビオチンを含有し、他方の部分が活性成分のビタミンCおよび/またはその誘導体を含有する実施形態の両方に当てはまる。
【0056】
本明細書に述べられる活性成分が、水和物または溶媒和物として存在しうる限り、水和物および溶媒和物も、本発明に包含される。
【0057】
本発明によれば、1つの混合物中に、両活性成分を一緒に含有する組成物が好ましく、特に好ましいものは、局所投与される組成物である。
【0058】
次の実施例は、本発明の方法を更に例証するために提供される。
【実施例】
【0059】
1.製剤例
次の成分から、周知の方法でクリームを製造した。
【0060】
【表1】

【0061】
部分A)およびB)を、攪拌しつつ、互いと個別に、それぞれ、75℃へ加熱した。部分A)およびB)が均質になるとすぐに、部分B)を、攪拌しつつ、部分A)へ添加した。混合物を、11,000RPMで30秒間均質化した。部分C)を、65℃に予備加温し、A)とB)の均質化混合物へ添加した。A)、B)およびC)の混合物を、40℃まで冷却し、部分D)を添加した。混合物を、攪拌しつつ、周囲温度(25℃)まで冷却した。
【0062】
結果として生じたクリームは、pH7.0の値を有し、約20,000cPの粘度(ブルックフィールドRVT、25℃、スピンドル5、10RPM)を有した。
【0063】
本発明によるクリームに加えて、ナトリウムアスコルビルホスフェートもビオチンも存在しないプラセボ、その外に、0.1%ビオチンのみを有するクリームおよび3%ナトリウムアスコルビルホスフェートのみを有するクリームを、対応して製造した。
【0064】
2.試験例
39人の女性被験者を、各々13人ずつの3つのグループに分けた。被験者は、一日2回3ヶ月間、ある試験製剤を顔の左半分に、第二の試験製剤を顔の右半分に、その外に、手の左裏側および右裏側に塗布した。試験製剤をコード化し、プラセボ製剤および所望の試験物質を有する製剤と対応させた。3つのグループは、これにより、3%ナトリウムアスコルビルホスフェート(STAY−C50)、0.1%ビオチンおよび3%ナトリウムアスコルビルホスフェートと0.1%ビオチンの混合物を有する、上で製造されたクリームを試験した。
【0065】
CR300比色計を用いて、老人性黒子の白色化(lightening)を測定した。得られた値を、ITA°値として示した。ITA°は、皮膚および/または老人性黒子の色素沈着度を表現する。下に反映された値は、調査の開始前の、ベースライン以上のITA°値の差に対応する。値が高くなればなるほど、皮膚の白色化は大きくなる。ITA°値は、29、57および85日後、すなわち、約1ヶ月後、約2ヶ月後および約3ヶ月後に測定した。これらの結果を次の表に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
調査は冬季間に実施し、この時期の間、皮膚は自然に白くなる。このことは、プラセボ製剤がまた、僅かな皮膚の美白を生ぜしめた理由を説明する。しかしながら、プラセボ製剤についての皮膚の美白効果は、僅かにすぎない。
【0068】
驚くべきことに、ビオチンは、濃度0.1%で、既に皮膚の美白効果を有した。これは、1ヶ月および3ヶ月後により大きく、2ヶ月後における公知の皮膚用美白組成物のビタミンCの効果とおよそ同程度に高い。3%ナトリウムアスコルビルホスフェートと0.1%ビオチンの混合物の皮膚の美白効果は、非常に高く、とりわけ驚くべきものであった。
【0069】
この調査の結果を、図1〜3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】0.1重量%のビオチンを含有するクリームの美白効果。
【図2】3重量%のナトリウムアスコルビルホスフェートを含有するクリームの美白効果。
【図3】0.1重量%のビオチン及び3重量%のナトリウムアスコルビルホスフェートを含有するクリームの美白効果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を美白にする、皮膚色のムラを平滑にするおよび/または老人性黒子を処置するための組成物を製造するための、ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩の使用。
【請求項2】
該ビオチン塩が、該ビオチンまたはビオチン誘導体の、アルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩または塩酸塩である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
該ビオチン誘導体が、式Iまたは式II:
【化1】


(式中、
は、H、C〜C20−アルキル、C〜C−シクロアルキルまたはアリールであり;
およびRは、各々独立して、HまたはC〜C−アルコキシカルボニルであり;
は、H、C〜C20−アルキルまたはC〜C−アルコキシカルボニルである)
で示される化合物である、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
該組成物が、局所投与用である、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
該組成物が、経口投与用である、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
該組成物が、化粧用組成物である、請求項1〜5のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
該組成物が、医薬組成物である、請求項1〜5のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
該ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩が、該組成物の重量に対して、0.001〜50重量%の濃度で存在する、請求項1〜7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
該ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩が、該組成物の重量に対して、0.01〜1重量%の濃度で存在する、請求項8記載の使用。
【請求項10】
該ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩が、ビタミンCまたはビタミンC誘導体と一緒に、使用される、請求項1〜9のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
該ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩が、ナトリウムアスコルビルホスフェートまたはその水和物、特にその二水和物と一緒に、使用される、請求項10記載の使用。
【請求項12】
該ビタミンCまたはビタミンC誘導体が、該組成物の重量に対して、0.001〜50重量%の濃度で存在する、請求項10または11記載の使用。
【請求項13】
該ビタミンCまたはビタミンC誘導体が、該組成物の重量に対して、0.1〜15重量%の濃度で存在する、請求項12記載の使用。
【請求項14】
該ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩に対する、該ビタミンCまたはビタミンC誘導体の重量比が、それぞれ、500:1〜1:500である、請求項9〜13のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
該ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩に対する、該ビタミンCまたはビタミンC誘導体の重量比が、それぞれ、30:1〜1:30である、請求項14記載の使用。
【請求項16】
該組成物が、該ビオチン、ビオチン誘導体またはその塩および該ビタミンCまたはビタミンC誘導体が、それぞれ、物理的に分離されるように、設計されている、請求項9〜15のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
活性成分の1つが、経口投与のために製剤化され、他が、局所投与のために製剤化されている、請求項16記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−503407(P2007−503407A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524277(P2006−524277)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009048
【国際公開番号】WO2005/020877
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】