説明

皮膚外用剤

【課題】美白効果が確認されているモノリノール酸グリセリルを含有し、それを安定化させるために界面活性剤及び安定化剤を限定した、保存安定性が良好な皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】(a)モノリノール酸グリセリル0.01〜5%、(b)リン脂質0.01〜10%、(c)水溶性抗酸化剤を1種又は2種以上0.0001〜5%を含有する皮膚外用剤であって、更に、成分(a)を除く他の美白剤を1種又は2種以上配合していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノリノール酸グリセリル、リン脂質及び水溶性抗酸化剤を配合する皮膚外用剤に関し、さらに詳しくは、美白剤であるモノリノール酸グリセリルを安定に配合することができるため、保存安定性に優れた皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、皮膚外用剤に美白効果を付与するためには、アスコルビン酸あるいはその誘導体、アルブチンなどの美白剤が用いられていた。また、これら美白剤の他に、リノール酸やリノレン酸などの不飽和結合を含む脂肪酸についても美白効果があることが報告されている(例えば、特許文献1または2参照)。更に本出願人は、リノールとグリセリンのモノエステルであるモノリノール酸グリセリルにも、優れた美白効果があることを見出し、他の美白剤と併用することにより、その効果が相乗的に向上することを見出し、特許出願している。(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−284109号公報(第1頁−第4頁)
【特許文献2】特開平05−194176号公報(第1頁−第7頁)
【特許文献3】特願2004-264579号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や2に記載されているリノール酸やリノレン酸などの不飽和結合を含む脂肪酸は、皮膚外用剤に配合した場合、経時的に変色や変臭を生じてしまい、皮膚外用剤の保存安定性上の問題があった。一方、特許文献3には、モノリノール酸グリセリルを他の美白剤と併用すると美白効果が相乗的に向上することは開示しているが、モノリノール酸グリセリルの安定化という点では、課題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者は、鋭意検討した結果、モノリノール酸グリセリルと、リン脂質及び水溶性抗酸化剤とを組み合わせると、皮膚外用剤中でモノリノール酸グリセリルが変質せず、安定化できるため、保存安定性の良好な皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。リン脂質は、リポソームに代表されるように二分子膜構造をとりやすく、二分子膜に取り込んだモノリノール酸グリセリルを安定化配合できると考えられる。さらに水溶性抗酸化剤は、水中に溶存した酸素によるモノリノール酸グリセリルの酸化劣化を防ぐ目的で配合されている。モノリノール酸グリセリルの酸化劣化については、油溶性抗酸化剤ではあまり効果がないことからも、水溶性抗酸化のメカニズムが必要であると考えられる。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c);
成分(a)モノリノール酸グルセリル
成分(b)リン脂質
成分(c)水溶性抗酸化剤
を配合することを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【0007】
また、成分(a)を0.01〜5質量%、成分(b)を0.01〜10質量%、成分(c)を0.0001〜5質量%、それぞれ配合することを特徴とする前記皮膚外用剤を提供するものである。
【0008】
そして、更に成分(a)を除く他の美白剤を一種又は二種以上併用することを特徴とする前記皮膚外用剤を提供するものである。
【0009】
更に、前記皮膚外用剤が美白用であることを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、モノリノール酸グリセリルを皮膚外用剤中に安定配合できるため、保存安定性の優れた皮膚外用剤、さらには美白効果に優れた皮膚外用剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の構成について説明する。
本発明で用いられる成分(a)のモノリノール酸グリセリルは、リノール酸とグリセリンとのモノエステルであり、皮膚に対し美白効果を有するものである。成分(a)のモノリノール酸グリセリルは、通常、グリセリンのα位にリノール酸をエステル結合させることにより合成されるものである。エステル化するリノール酸は、できるだけ純粋なリノール酸であることが好ましいが、植物からリノール酸を精製する際に、リノール酸以外の不飽和脂肪酸が混在することがある。成分(a)に用いられるモノリノール酸グリセリルは、美白効果及び保存安定性の観点から、ヨウ素価が少なくとも100以上であることが好ましい。(ヨウ素価とは、脂肪酸中の不飽和度を示す尺度であり、化粧品原料基準第二版注解IIに記載されている測定方法によって測定できる。)
【0012】
モノリノール酸グリセリルを美白剤として皮膚外用剤に配合すると、美白効果、特にメラニン生成抑制効果に優れる皮膚外用剤を得ることができる。モノリノール酸グリセリルの美白効果は、主には、モノリノール酸グリセリルが、チロシンをメラニン色素に変化させる酵素チロシナーゼを分解することによるものと考えられている。
【0013】
なお、本発明において「美白」とは、肌を白くする積極的効果のみならず、肌の黒化を抑制する消極的効果も含む意味で用いるものとする。例えば、しみ、そばかす等の色素沈着を改善する効果のみならず、色素沈着を抑制する効果も含むものとする。
【0014】
本発明で用いられる成分(a)のモノリノール酸グリセリルの配合量は、特に限定されないが、0.01〜5質量%(以下、単に「%」とする)が好ましく、0.1〜1%がより好ましい。この範囲内であれば、皮膚外用剤の保存安定性が良好で、かつ高い美白効果を発揮することができる。
【0015】
成分(b)のリン脂質は、モノリノール酸グリセリルの分散剤もしくは乳化剤として機能するものであり、通常の化粧料に用いられるリン脂質であれば何れのものも用いることができる。卵黄、大豆、トウモロコシ等の動植物、大腸菌等の微生物から抽出される天然のリン脂質及びそれらの水素添加物並びに合成のリン脂質が挙げられる。具体的にはフォスファチジルコリン(レシチン)、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルグリセロール、ジフォスファチジン酸、スフィンゴミエリン等が挙げられる。この中では、大豆又は卵黄から得られるこれらの化合物の混合物であるリン脂質が好ましく、その中でも水素添加して安定性を向上させたものがよい。
【0016】
本発明で用いられる成分(b)の配合量は、特に限定されないが、0.01〜10%が好ましく、0.05%〜5%がより好ましい。この範囲内であれば、皮膚外用剤の保存安定性が良好な皮膚外用剤を得ることができる。
【0017】
本発明で用いられる成分(c)の水溶性抗酸化剤は、成分(b)と併用して成分(a)を安定化する成分であり、水に溶解する抗酸化剤である。このような水溶性抗酸化剤は、通常の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸およびその誘導体、ヒドロキノン、システイン、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、ローズマリー抽出物、トウキ抽出液、センキュウ抽出液、センプクカ抽出液、ボタン抽出液、ハマメリス抽出液、冬虫夏草抽出液、メロスリア抽出液、マイカイカ抽出物、エイジツ抽出物、キンギンカ抽出物、チャ抽出物、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物などが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。これら水溶性抗酸化剤の中でも、成分(a)の安定化の観点より、アスコルビン酸グルコシド、ローズマリー抽出物、マイカイカ抽出物が好ましい。
【0018】
本発明で用いられる成分(c)の配合量は、特に限定されないが、0.0001〜5%が好ましく、0.0005〜3%がより好ましい。アスコルビン酸グルコシドでは、0.01〜3%がより好ましく、ローズマリー抽出物やマイカイカ抽出物等の抽出物では、0.0005〜0.1%(乾燥固形分濃度)がより好ましい。この範囲内であれば、皮膚外用剤の保存安定性が良好な皮膚外用剤を得ることができる。
【0019】
本発明において、成分(a)のモノリノール酸グリセリルを除く他の美白剤を併用して、皮膚外用剤に配合すると、相乗的に美白効果が得られる。その他の美白剤としては、アスコルビン酸誘導体、アルブチン、ビタミンE及びその誘導体、グリチリルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクインン抽出物等が挙げられる。中でも、モノリノール酸グリセリルと組み合わせて配合することが好ましい他の美白剤は、前記したモノリノール酸グリセリルと美白効果をもたらすメカニズムが異なる美白剤であるのが好ましい。具体的には、生成したメラニン色素を還元して色を薄くする効果を有するアスコルビン酸誘導体等の還元剤;及び酵素チロシナーゼに直接作用してメラニン色素の生産を抑制する効果を有する、アスコルビン酸誘導体、アルブチン等のチロシナーゼ活性阻害剤;等が挙げられる。アスコルビン酸誘導体、アルブチンは、モノリノール酸グリセリルと併用して、皮膚外用剤に配合すると、美白効果が顕著に良好となるので、特に好ましい。このようなアスコルビン酸誘導体としては、具体的にはL-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸カリウム、L-アスコルビン酸マグネシウム等のL-アスコルビン酸塩、L-アスコルビン酸リン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸リン酸カリウム、L-アスコルビン酸リン酸マグネシウム、L-アスコルビン酸リン酸カルシウム等のL-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸硫酸マグネシウム、L-アスコルビン酸硫酸マグネシウム、L-アスコルビン酸硫酸カルシウム等のL-アスコルビン酸硫酸エステル塩、L-アスコルビン酸グルコシドが例示される。なお、アスコルビン酸誘導体は本願明細書中では、成分(c)として配合できるが、美白効果を有するものとして配合することもできる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤におけるモノリノール酸グリセリルと併用され得るその他の美白剤の配合量は、好ましくは0.1〜5%であり、更に好ましくは、0.5〜3.5%である。この範囲で、モノリノール酸グリセリルと併用すると美白効果が著しく良好となる。
【0021】
本発明の皮膚外用剤には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、上記必須成分に加えて、通常、皮膚外用剤や医薬部外品、外用医薬品等の製剤に使用される成分、すなわち、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属石鹸、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、防腐剤、抗菌剤、抗炎症剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等を加えることができる。
【0022】
アルコールとしては、溶解、清涼感、防腐、保湿等の目的で、エタノール等の低級アルコール、グリセリル、ジグリセリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0023】
油剤としては、基剤の構成成分又は使用性、使用感を良くするものとして、通常の皮膚外用剤に使用されるものであれば、天然系油であるか、合成油であるか、或いは、固体、半固体、液体であるか等の性状は問わず、炭化水素類、ロウ類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル油、シリコーン油類、フッ素系油類等を使用することができる。例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、トリ2−エチルヘキサン酸セチル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等の合成エステル油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、杏仁油、パーシック油、サフラワー油、ヒマワリ油、アボガド油、メドゥホーム油、ツバキ油、アーモンド油、エゴマ油、ゴマ油、ボラージ油、シア脂等の植物や動物由来の油脂、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ゲイロウ等のロウ類などが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0024】
紫外線防御剤としては、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、4−ブチル−4‘−メトキシジベンゾイルメタン、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0025】
水溶性高分子は、系の安定化や使用性、使用感を良くするために用いられ、又保湿効果を得るためにも用いられる。水溶性高分子の具体例として、カラギーナン、ペクチン、寒天、ローカストビーンガム等の植物系高分子、キサンタンガム、ヒアルロン酸等の糖系高分子、ゼラチン等の動物系高分子、デンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系高分子、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のアクリル酸系高分子などが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0026】
防腐剤、抗菌剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノールなどが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0027】
抗炎症剤は、日焼け後の皮膚のほてりや紅斑等の炎症を抑制する目的で用いられ、イオウ及びその誘導体、アロエ抽出物、アルテア抽出物、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、イラクサ抽出物、オウバク抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、クレソン抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ抽出物等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0028】
細胞賦活剤は、肌荒れの改善等の目的で用いられ、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類またはそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸コハク酸等の有機酸及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0029】
活性酸素除去剤は、過酸化脂質生成抑制等の酸化生涯抑制の目的で用いられ、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミンおよびその誘導体、リボフラビンおよびその誘導体、ピリドキシンおよびその誘導体、ニコチン酸およびその誘導体等のビタミンB類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0030】
保湿剤としては、エラスチン、ケラチン等のタンパク質またはそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖およびその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D−パンテノール及びその誘導体、尿素、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物などが挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、外用医薬品だけでなく、化粧料及び医薬部外品も包含するものである。また、本発明の皮膚外用剤の形態は、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗浄料、クレンジング料等の何れの形態であってもよい。本発明を実施する形態として好ましくは外相が水系である化粧水、水中油型乳液等が挙げられる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤は、特に限定されないが、成分(a)、(b)及び成分(c)を、他成分と適宜組合せ、混合、分散することにより調製することができる。
【0033】
以下に実施例、試験例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例、試験例に限定されることはない。
【0034】
(試験例1)
培養色素細胞に対するメラニン生成抑制試験を行った。
(培養細胞によるメラニン生成抑制試験)
培養細胞はマウス由来B−16メラノーマ細胞を用いた。2枚の6穴プレートに細胞を播種し、10%FBS含有MEM培地中で37℃、二酸化炭素濃度5%にて培養した。モノリノール酸グリセリル(ヨウ素価123)をエチルアルコールに溶解したエチルアルコール溶液(以下、本試料)および対照としてエチルアルコールのみの試料(以下、対照試料)を、培地中に添加した。途中培地交換を行い、5日間培養した後に評価を行った。2枚のプレートのうち、1枚を細胞育成率の算出に、もう1枚を細胞の白化度の評価に用いた。対照試料の細胞数を100%として、各試料の細胞数から細胞生育率(%)を算出した。また、細胞生育率が70%以上である試料を安全性上優れていると判断し、細胞の白化度を以下の基準により目視により評価した。
【0035】
(判定基準)
(評価内容) : (判定)
対照に対してきわめて白色である : ○
対照に対してやや白色である : △
対照と同じ黒色である : ×
【0036】
また、比較として、一般的にその美白作用が知られているリノール酸を用いて、試験例1と同様の試験を行った。試験例1の結果を表1に示した。なお、試験例1では、細胞生育率がモノリノール酸グリセリル93%、リノール酸93%の試料濃度のものについて細胞白化度を評価した。
【0037】
【表1】

【実施例】
【0038】
実施例1〜12及び比較例1〜3:乳化型化粧料(水中油型)
表2および表3に示す組成の乳化型化粧料(水中油型)を以下に示す製造方法により調製し、(1)外観(変色)、(2)匂い(変臭)、(3)美白効果について、下記の方法により評価し、結果を併せて表2〜表4に示した。
【0039】
(実施例1〜12及び比較例1〜3の製法)
A.成分(1)〜(7)を加熱混合し、70℃に保った。
B.成分(8)〜(17)を均一混合する。
C.BにAを加えて、均一に混合し、乳化する。
D.Cを冷却後、成分(18)を加え均一に混合して、乳化型化粧料(水中油型)を得た。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
[評価方法:(1)外観(変色)]
実施例1〜12及び比較例1〜3の各製剤を40℃恒温槽で1ヶ月間保存し、5℃高温槽で1ヶ月間保存したものを基準として外観(変色)を目視により、以下の(イ)4段階判定基準に従って判定した。
(イ)4段階判定基準
(評 価) : (判定)
変化なし : ◎
軽微な変化なし : ○
やや変化あり : △
かなり変化あり : ×
【0044】
[評価方法:(1)匂い(変臭)]
実施例1〜12及び比較例1〜3の各製剤を40℃恒温槽で1ヶ月間保存し、5℃高温槽で1ヶ月間保存したものを基準として外観(変色)を目視により、以下の(ロ)4段階判定基準に従って判定した。
(ロ)4段階判定基準
(評 価) : (判定)
変化なし : ◎
軽微な変化なし : ○
やや変化あり : △
かなり変化あり : ×
【0045】
[評価方法:(3)くすみ改善効果試験]
実施例1〜12及び比較例1〜3の各製剤に関して、各製剤ごとに35〜59才の女性20名をそれぞれパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間にわたって洗顔後に被験乳液の適量を顔面に塗布してもらった。塗布によるくすみ改善効果を以下のそれぞれの基準によって評価した。以下の(ハ)3段階評価基準にて評価し、更に(ニ)4段階判定基準を用いて判定した。
(ハ)5段階評価基準
(評 価) : (内容)
有効 : 肌のくすみが目立たなくなった。
やや有効 : 肌のくすみがあまり目立たなくなった。
無効 : 使用前と変化がなかった。
(ニ)4段階判定基準
(全パネルの評点の平均値) : (判定)
有効及びやや有効が18名以上 : ◎
有効及びやや有効が12名以上 : ○
有効及びやや有効が6名以上 : △
有効及びやや有効が3名以下 : ×
【0046】
(試験例2)
実施例1〜12及び比較例1〜3におけるモノリノール酸グリセリルの残存量確認試験について以下の評価方法に基づいて行い判定した。
[評価方法:(4)残存率]
実施例1〜12及び比較例1〜5の各製剤を40℃恒温槽で1ヶ月間保存したものを試料とした。各試料をガスクロマトグラムーマススペクトロメトリーにより分離・分子量検出を行い、リノール酸基由来の分子量(Mw:262)によりマスクロマトグラムを作製、ピーク強度により残存率を測定し、以下の4段階判定基準を用いて判定した。
(ホ)4段階判定基準
(分析結果) : (判定)
残存率75%以上 : ◎
残存率50%以上75%未満 : ○
残存率25%以上50%未満 : △
残存率0%以上25%未満 : ×
【0047】
上記表2および表3の結果から明らかなように、本発明品である実施例1〜12の乳化型化粧料(水中油型)は、比較例1〜3の乳化型化粧料(水中油型)に比較して、保存安定性および美白効果にも優れ、モノリノール酸グリセリルの残存率も高いことが明らかになった。一方、リン脂質を含有しない比較例1は保存安定性および美白効果にも良好ではなく、モノリノール酸グリセリルの残存率も低いことが明らかになった。そして水溶性抗酸化剤を含有しない比較例2は、保存安定性および美白効果が良好ではなく、モノリノール酸グリセリルの残存率も低いことが明らかになった。更に、モノリノール酸グリセリルを含有しない比較例3は、美白効果が良好ではなかった。
【0048】
実施例13 化粧水
(処方) (%)
(1)グリセリン 2.0
(2)1,3−ブチレングリコール 6.0
(3)水素添加大豆リン脂質 1.0
(4)エチルアルコール 5.0
(5)モノリノール酸グリセリル(ヨウ素価120) 0.2
(6)L−アスコルビン酸 0.5
(7)乳酸 0.05
(8)乳酸ナトリウム 0.1
(9)パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 0.1
(10)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(11)香料 適量
(12)精製水 残量
【0049】
(製法)
A.成分(3)〜(5)、および(9)〜(11)を混合溶解した。
B.成分(1)、(2)、(6)、(7)、(8)及び(12)を混合溶解した。
C.AとBを混合して均一にし、化粧水を得た。
【0050】
上記製法により製造した実施例13の化粧水は、保存安定性(外観、匂い)および美白効果にも優れ、モノリノール酸グリセリルの残存率も高い皮膚外用剤であった。
【0051】
実施例14 乳化型化粧料(水中油型)
(処方) (%)
(1)水素添加大豆リン脂質 0.5
(2)リン脂質 0.5
(3)モノリノール酸グリセリル(ヨウ素価123) 1.0
(4)トリリノール酸グリセリル 0.2
(5)ベヘニルアルコール 0.5
(6)スクワラン 8.0
(7)パルミチン酸レチノール 0.002
(8)グリチルリチン酸ジカリウム 0.3
(9)トコフェロール 3.0
(10)マイカイカ抽出液 0.1
(11)ヒアルロン酸 0.1
(12)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(13)キサンタンガム 0.1
(14)カラギーナン 0.1
(15)エチルアルコール 5.0
(16)精製水 残量
(17)香料 適量
【0052】
(製法)
A.成分(13)、(14)および(16)を加熱混合し、70℃に保った。
B.成分(1)〜(9)を加熱混合し、70℃に保った。
C.Aに(12)を加えて均一に混合する。
D.CにBを加えて均一に混合し、乳化する。
E.Dを冷却後(10),(11)、(15)、(17)を加え均一に混合して、乳化型化粧料(水中油型)を得た。
【0053】
上記製法により製造した実施例14の乳化型化粧料(水中油型)は、保存安定性(外観、匂い)および美白効果にも優れ、モノリノール酸グリセリルの残存率も高い皮膚外用剤であった。
【0054】
実施例15 乳化型ファンデーション(水中油型)
(成分) (%)
(1)液状ラノリン 2.0
(2)流動パラフィン 5.0
(3)卵黄リン脂質 2.0
(4)セタノール 1.0
(5)自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(6)パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 8.0
(7)イソノナン酸イソノニル 2.0
(8)モノリノール酸グリセリル(ヨウ素価123) 0.5
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)グリセリル 5.0
(11)トリエタノールアミン 1.0
(12)カルボキシメチルセルロース 0.2
(13)ベントナイト 0.5
(14)グリチルレチン酸ステアリル 0.1
(15)精製水 残量
(16)酸化チタン 6.0
(17)微粒子酸化チタン 2.0
(18)システイン 5.0
(19)マイカ 2.0
(20)タルク 4.0
(21)着色顔料 4.0
(22)香料 適量
【0055】
(製法)
A.成分(1)〜(8)を混合溶解する。
B.Aに成分(16)〜(21)を加え、均一に混合し、70℃に保つ。
C.成分(9)〜(15)を均一に溶解し、70℃に保つ。
D.CにBを添加して、均一に乳化する。
E.Dを冷却後、成分(22)を添加して乳化型ファンデーション(水中油型)を得た。
【0056】
上記製法により製造した実施例15の乳化型ファンデーションは、保存安定性(外観、匂い)および美白効果にも優れ、モノリノール酸グリセリルの残存率も高い皮膚外用剤であった。
【0057】
実施例16 日焼け止め乳液(油中水型)
(成分) (%)
(1)大豆リン脂質 2.0
(2)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン(注1) 5.0
(3)オクタメチルシクロテトラシロキサン 20.0
(4)コハク酸ジオクチル 5.0
(5)パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 5.0
(6)モノリノール酸グリセリル(ヨウ素価123) 1.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)シリコーン処理微粒子酸化チタン 10.0
(9)シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 10.0
(10)ポリスチレン末 3.0
(11)トリメチルシロキシケイ酸 0.5
(12)ジプロピレングリコール 3.0
(13)エチルアルコール 10.0
(14)精製水 残量
(15)L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム 2.0
(16)塩化ナトリウム 0.2
(17)亜硫酸塩 1.0
(18)香料 適量
※注1:ABIL EM−90(Degussa社製)
【0058】
(製法)
A.成分(1)〜(11)を混合する。
B.成分(12)〜(16)を混合する。
C.AにBを添加して、均一に乳化する。
D.Cに成分(17)、(18)を加えて日焼け止め乳液(油中水型)を得た。
【0059】
上記製法により製造した実施例16の日焼け止め乳液(油中水型)は、保存安定性(外観、匂い)および美白効果にも優れ、モノリノール酸グリセリルの残存率も高い皮膚外用剤であった。
【0060】
実施例17 美容液(水中油型)
(処方) (%)
(1)水素添加大豆リン脂質 5.0
(2)コレステロール 0.5
(3)モノリノール酸グリセリル(ヨウ素価123) 1.0
(4)流動パラフィン 10.0
(5)シクロメチコン 5.0
(6)ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)ジプロピレングリコール 5.0
(9)ビタミンE 0.1
(10)フェノキシエタノール 0.1
(11)(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー 0.1
(12)カルボキシビニルポリマー 0.2
(13)トリエタノールアミン 0.1
(14)エチルアルコール 5.0
(15)精製水 残量
(16)カテキン 0.1
【0061】
(製法)
A.成分(11)、(12)、(15)の一部を加熱混合し、70℃に保った。
B.成分(1)〜(10)を加熱混合し、70℃に保った。
C.Bに(15)を加えて均一に混合し、乳化する。
D.CにA、(13)を加えて均一に混合する。
E.Cを冷却後(14)、(16)を加え均一に混合して、美容液を得た。
【0062】
上記製法により製造した実施例17の美容液(水中油型)は、保存安定性(外観、匂い)および美白効果にも優れ、モノリノール酸グリセリルの残存率も高い皮膚外用剤であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
成分(a)モノリノール酸グルセリル
成分(b)リン脂質
成分(c)水溶性抗酸化剤
を配合することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
成分(a)を0.01〜5質量%、成分(b)を0.01〜10質量%、成分(c)を0.0001〜5質量%、それぞれ配合することを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
更に、成分(a)を除く他の美白剤を一種又は二種以上配合することを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記皮膚外用剤が美白用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−126444(P2007−126444A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269994(P2006−269994)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】