説明

皮膚外用剤

【課題】α−リポ酸及び/またはその誘導体を含有した化粧料において、経時的な変臭の抑制効果に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(F);
(A)α−リポ酸及び/又はその誘導体
(B)リン脂質
(C)コレステロール
(D)油溶性抗酸化剤
(E)水溶性抗酸化剤
(F)水
を配合することを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−リポ酸及び/又はその誘導体、リン脂質、コレステロール、油溶性抗酸化剤、水溶性抗酸化剤を配合する皮膚外用剤に関し、更に詳しくは、α−リポ酸及び/又はその誘導体の経時変化にともない発生する硫黄臭が抑制された皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧料等の皮膚外用剤においては角質溶解効果、殺菌効果、抗酸化効果、美白効果、養毛効果、ふけ防止効果等を付与する目的で、α−リポ酸等の硫黄化合物が用いられてきた(例えば、特許文献1、2、3参照)。また、皮膚外用剤等における基剤や有効成分の経時での変臭を防止する目的として、含窒素化合物や水溶性還元剤、キレート剤等が用いられてきた(例えば、特許文献、4、5参照)。また、リン脂質、コレステロールからなるリポソームと特定の抗酸化剤を用いることにより、抗酸化効果を向上させる試みがなされている。
【特許文献1】特開昭62−175415号公報(第1頁−第5頁)
【特許文献2】特開昭63−8315号公報(第1頁−第6頁)
【特許文献3】特開平2−145507号公報(第1頁−第4頁)
【特許文献4】特許第3434635号公報(第1頁−第6頁)
【特許文献5】特許第3497932号公報(第1頁−第5頁)
【特許文献6】特許第3521517号公報(第1頁−第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、α−リポ酸等の硫黄化合物と水を含有する皮膚外用剤では、経時的にα−リポ酸が変質し、硫黄化合物を発生させ、これに起因した不快な硫黄臭を発生するという安定性上の問題点があった。このため、α−リポ酸の安定性を向上させる試みとして、シクロデキストリンに包摂させる等のカプセル化の試みがなされてきたが、経時での硫黄臭の発生の十分な抑制には至っていないのが現状であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記実状において鋭意検討を重ねた結果、α−リポ酸および/又はその誘導体をリン脂質とコレステロールからなる脂質二分子膜中に内包させ、さらに油溶性抗酸化剤と水溶性抗酸化剤とを併用させることにより、α−リポ酸および/又はその誘導体の変質を抑制できることを見出し、これを皮膚外用剤に応用することにより、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(F);
(A)α−リポ酸及び/又はその誘導体
(B)リン脂質
(C)コレステロール
(D)油溶性抗酸化剤
(E)水溶性抗酸化剤
(F)水
を配合することを特徴とする皮膚外用剤に関するものである。
【0006】
さらに、成分(D)が、ジブチルヒドロキシトルエン、酢酸トコフェロールから選択される一種または二種の油溶性抗酸化剤であることを特徴とする皮膚外用剤に関するものである。
【0007】
そしてさらに、成分(E)が、α−グルコシルルチン、マイカイカ(ハマメリス)抽出物、メロスリア抽出物から選択される一種または二種以上の水溶性抗酸化剤であることを特徴とする皮膚外用剤に関するものである。
【0008】
また、皮膚外用剤の性状が液状であることを特徴とする皮膚外用剤に関するものである。
【0009】
そしてまた、皮膚外用剤が水中油型であることを特徴とする皮膚外用剤。を提供するものである。さらに、成分(A)が、成分(B)及び(C)で構成される脂質二分子膜中に内包されていることを特徴とする皮膚外用剤に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、α−リポ酸およびその誘導体の経時的な変質を抑制し、硫黄臭の発生を防止する効果に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(A)α−リポ酸及び/またはその誘導体は、角質溶解効果、殺菌効果、抗酸化効果、美白効果、養毛効果、ふけ防止効果等を目的に配合されるものであり、通常の化粧料原料として用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、リポ酸、リポ酸のカリウム塩、ナトリウム塩、メチルエステル、エチルエステル、ドデシルエステル、オレイルエステル、ステアリルエステル、パルミチルエステル、パルミトオレイルエステル、ベンジルエステル等のエステル類、ジヒドロリポ酸、ジヒドロリポ酸カリウム塩、ナトリウム塩、メチルエステル、エチルエステル、ドデシルエステル、オレイルエステル、ステアリルエステル、パルミチルエステル、パルミトオレイルエステル、ベンジルエステル、シンナキサイド、アミノ酸縮合物等が挙げられる。これらのα−リポ酸及び/またはその誘導体は必要に応じて一種、又は二種以上を用いることができる。
【0012】
本発明における成分(A)の配合量は、特に限定されるものではないが、0.001〜1質量%(以下、単に「%」と記す)が好ましく、0.01〜0.1%がより好ましい。成分(A)をこの範囲で含有すると、配合効果や経時安定性の良好なものとなる。
【0013】
本発明に用いられる成分(B)リン脂質は、成分(A)の乳化、分散及び変臭を抑制する目的で配合されるものである。具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質等が挙げられる。また、これらを含有する物質、すなわち、大豆レシチン、卵黄レシチンまたはこれらの水素添加物等も同様に用いることができる。またこれらのリン脂質は、必要に応じて一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0014】
本発明の皮膚外用剤における成分(B)の配合量は、特に限定されるものではないが、成分(A)との配合質量比に応じて適宜決めることができる。具体的には成分(A)/成分(B)の配合質量比が1/10〜1/1000が好ましい。成分(B)の量をこの範囲で配合すると、変臭抑制効果に優れた皮膚外用剤を得ることができる。
【0015】
本発明に用いられる成分(C)コレステロールは、成分(B)とともに成分(A)の乳化、分散の安定性及び変臭を抑制する目的で配合されるものである。
【0016】
本発明の皮膚外用剤における成分(C)の配合量は、特に限定されるものではないが、成分(B)/成分(C)の配合質量比が1/0.1〜1/1であることが好ましい。成分(C)をこの範囲で配合すると、変臭抑制効果および保存安定性に優れた皮膚外用剤を得ることができる。
【0017】
本発明に用いられる成分(D)油溶性抗酸化剤は、成分(A)の変臭抑制の目的で皮膚外用剤に配合するものである。具体的には、ジブチルヒドロキヂトルエン、酢酸トコフェロール等が挙げられ、これらの油溶性抗酸化剤は、必要に応じて一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0018】
本発明の皮膚外用剤における成分(D)の配合量は、特に限定されるものではないが、成分(A)との配合質量比に応じて適宜決めることができる。具体的には成分(A)/成分(D)の配合質量比が1/1〜1/100であることが好ましい。成分(D)の量をこの範囲で配合すると、変臭抑制効果に優れた皮膚外用剤を得ることができる。
【0019】
本発明に用いられる成分(E)水溶性抗酸化剤は、成分(A)の変臭抑制の目的で皮膚外用剤に配合するものである。具体的には、α−グルコシルルチン、マイカイカ(ハマナス)抽出物、メロスリア抽出物等が挙げられ、これらの水溶性抗酸化剤は、必要に応じて一種または二種を適宜選択して用いることができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤における成分(E)の配合量は、特に限定されるものではなく、成分(E)の種類により異なるが、成分(A)との配合質量比が、成分(A)/成分(E)の配合質量比が1/0.1〜1/100であることが好ましい。成分(E)をこの範囲で配合すると、変臭抑制効果に優れた化粧料を得ることができる。なお成分(E)が抽出物の場合、その配合量は乾燥固形分濃度である。
【0021】
また、本発明の方法により皮膚外用剤の変臭を抑制することができるので、従来試みられていたように香料によるマスキングをする必要がなく、従って、香料の配合量を低減したり、又は、香料を無添加とすることができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤には、上記必須成分の他に、通常化粧料に用いられる成分として、例えば、粉体、界面活性剤、油剤、水溶性高分子、アルコール類、ゲル化剤、皮膜形成剤、樹脂、紫外線吸収剤、保湿剤、pH調整剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、金属封鎖剤、着色剤、美容剤等を本発明の効果を損なわない範囲にて含有することができる。
【0023】
また、本発明の皮膚外用剤の性状が液状である時、本発明の効果を有効に発揮することができる。なお、本発明での液状とは皮膚外用剤の粘度が25℃において10〜2000mPa・sの範囲の時である。本発明の効果を用いることにより、変臭抑制効果を得ることができるため、感触が良好な液状の皮膚外用剤を得ることができる。
【0024】
また、本発明の皮膚外用剤の剤型は変臭抑制効果を顕著に発揮するものとして水中油型、油中水中油型、水中油中水型等の剤型が挙げられる。本発明の効果は油分を配合することにより、成分(A)と成分(D)がより均一に配合することができ、その効果が顕著となる。このような剤型の中でも製剤化への応用のしやすさとしては水中油型がより好ましい。
【0025】
また、本発明は成分(B)が、水中で脂質二分子膜を形成することにより、成分(A)を内包できるので経時的な変臭をより良好に防止することができる。このような脂質二分子膜を形成する方法としては、通常公知の方法であれば、特に限定されるものではないが、具体的には成分(A)をリン脂質、コレステロールを含む系とあらかじめ混合させ、そこに攪拌しながら水系を添加することで内包させる方法が挙げられる。これ以外にも超音波を用いる方法または加圧下にホモジナイザーを用いる方法等が挙げられる。また、脂質二分子膜の粒径は、特に限定されるものではないが、経時安定性の観点から、100〜300nmであることが好ましい。
【0026】
本発明の皮膚外用剤の形態は特に限定されず、液状、乳液状、ゲル状、クリーム状のいずれでも構わない。また、化粧水、乳液、クリーム、日焼け止め料、パック料、マッサージ料、美容液、クレンジング料、洗浄料等の基礎化粧料、ファンデーション、水白粉、コンシーラー等のメーキャップ化粧料、頭髪化粧料、ボディ化粧料、手足化粧料、浴用剤等に用いることができる。
【実施例1】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0028】
本発明品1〜16及び比較品1〜4:美容液
以下の表1〜表3に示す組成の美容液を下記製造方法により調製し、変臭抑制効果について以下に示す方法により評価・判定し、結果を併せて表1〜表3に示した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を70℃に加熱、溶解する。
B:成分(9)〜(15)を70℃に加熱、溶解する。
C:Aを攪拌しながらBを徐々に添加し、予備乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、高圧乳化機にて乳化する。
E:Dに成分(9)の一部に溶解した(16)を加え、均一に混合し美容液を得た。
【0033】
(評価方法)
上記美容液を室温、蛍光灯下に2週間放置した後、香料専門パネル10人により、匂いの官能評価を行い、変臭抑制効果の有効性を以下の(イ)有効性ランクで判断しパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、以下の(ロ)判定基準により判定した。
(イ)有効性ランク
4点:硫黄臭の発生がない。
3点:硫黄臭の発生がほとんどなく、無香料での製品化が可能。
2点:硫黄臭の発生がわずかにあるが、微量の香料でのマスキングが可能。
1点:硫黄臭の発生が著しく、香料でのマスキングが不可能。
(ロ)判定基準
◎ :平均点が3点以上
○ :平均点が2点以上
× :平均点が2点未満
【0034】
表1〜表3の結果から明らかなように、本発明品1〜16の美容液は、経時で硫黄臭の発生がなく、変臭抑制効果に優れたものであった。また電子顕微鏡観察において、いずれも脂質二分子膜を形成していることが確認された。これに対して比較品1〜4は、経時でα−リポ酸に起因する硫黄臭の発生が見られ、皮膚外用剤として好ましいものではなかった。
【実施例2】
【0035】
水中油型クリーム
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 2.0
2.コレステロール 2.0
3.セトステアリルアルコール 3.0
4.ヒドロキシステアリン酸コレステリル 1.0
5.ワセリン 2.0
6.スクワラン 4.0
7.メドウフォーム油 8.0
8.α−リポ酸 0.05
9.ジブチルヒドロキシトルエン 0.1
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
11.1,3−ブチレングリコール 10.0
12.カルボキシビニルポリマー 0.3
13.精製水 残量
14.水酸化ナトリウム 0.1
15.アルブチン 2.0
16.α−グルコシルルチン 0.05
【0036】
(製造方法)
A:成分(1)〜(9)を70℃に加熱、溶解する。
B:成分(10)〜(13)を70℃に加熱、溶解する。
C:Aを攪拌しながらBを徐々に添加し、乳化する。
D:Cを室温まで冷却する。
E:Dに成分(13)の一部に溶解した(15)〜(16)を加え、均一に混合し水中油型クリームを得た。
【0037】
実施例2の水中油型クリームは、経時で硫黄臭の発生がなく、安定性に優れた皮膚外用剤であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(F);
(A)α−リポ酸及び/又はその誘導体
(B)リン脂質
(C)コレステロール
(D)油溶性抗酸化剤
(E)水溶性抗酸化剤
(F)水
を配合することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
成分(D)が、ジブチルヒドロキシトルエン、酢酸トコフェロールから選択される一種または二種の油溶性抗酸化剤であることを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
成分(E)が、α−グルコシルルチン、マイカイカ(ハマナス)抽出物、メロスリア抽出物から選択される一種または二種以上の水溶性抗酸化剤であることを特徴とする請求項1または2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
皮膚外用剤の性状が液状であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
皮膚外用剤が水中油型であることを特徴とする請求項1〜4の何れかの項記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
成分(A)が、成分(B)及び(C)で構成される脂質二分子膜中に内包されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかの項記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−269672(P2007−269672A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96129(P2006−96129)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】