説明

皮膚外用貼付剤

【課題】本発明は、抗酸化成分を水に可溶な状態で含有し、かつ優れた皮膚老化防止効果を有する皮膚外用貼付剤の提供。
【解決手段】次の成分(a)〜(f):
(a)抗酸化成分、
(b)ヒアルロン酸又はその塩、
(c)グリセリン、
(d)寒天、
(e)ローカストビーンガム、及び
(f)キサンタンガム
を含有し、pHが10〜12である水含有膏体を有する皮膚外用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚老化防止効果に優れる皮膚外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンやコエンザイムQ10等の抗酸化成分は、皮膚の老化を防止し、皮膚の弾力性を増強し、しわ等を防止することから、各種の化粧品やサプリメントに広く用いられている(特許文献1、2等)。
【0003】
一方、貼付剤は、軟膏剤やクリーム等に比べて薬効成分が長時間貼付した局所にとどまっていることから、経皮吸収性が高いことから、医薬の分野では広く利用されている剤形である。しかし、皮膚の最外層は角層で覆われ、外界物質の体内侵入を防御するバリアの働きを有しているため、外用剤にとっては強大な障壁となり、処方した有効成分の効果が十分に発揮できないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−99564号公報
【特許文献2】特開2006−348035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者がアスタキサンチンやコエンザイムQ10を貼付剤に適用しようとしたところ、これらの抗酸化成分は水溶性が低く、水性膏体中に安定に保持できず、また経皮吸収性が低いため、通常の水性膏体を採用しても十分な効果を得られないことが判明した。
従って、本発明の課題は、抗酸化成分を水に可溶な状態で含有し、かつ優れた皮膚老化防止効果を有する皮膚外用貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、抗酸化成分の膏体中への可溶化及び貼付剤としたときの有効性について種々検討したところ、抗酸化成分にヒアルロン酸又はその塩、グリセリン、寒天、ローカストビーンガム及びキサンタンガムを組み合わせ、さらに水性膏体のpHを10〜12になるように調整することにより、皮膚老化防止効果に優れた皮膚外用貼付剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(a)〜(f):
(a)抗酸化成分、
(b)ヒアルロン酸又はその塩、
(c)グリセリン、
(d)寒天、
(e)ローカストビーンガム、及び
(f)キサンタンガム
を含有し、pHが10〜12である水含有膏体を有する皮膚外用貼付剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚外用貼付剤は、抗酸化成分が水に溶解した状態で安定に保持されており、かつ優れた皮膚老化防止効果を有する。本発明のかかる効果は、ヒアルロン酸又はその塩、グリセリン、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム及びpH10〜12の水性膏体を組み合わせて用いることにより、角層中の皮脂が除去され、貼付部の皮膚に水分が移行して角層中の水分が飽和状態を形成し角層のバリア機能が低下することで、抗酸化成分の皮膚への移行が促進されることによるものと考えられる。また本発明の貼付剤は、使用感も良好で、効果の持続作用も優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の皮膚外用貼付剤は、膏体中に、(a)抗酸化成分、(b)ヒアルロン酸又はその塩、(c)グリセリン、(d)寒天、(e)ローカストビーンガム、及び(f)キサンタンガムを含有する。
【0010】
本発明で用いる(a)抗酸化成分としては、抗酸化活性を有する成分であればよいが、アスタキサンチン、コエンザイムQ10が好ましい。これらは1種又は2種を組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、アスタキサンチンそのものを用いてもよいが、エビ、カニ、紅鮭等からの抽出物であってアスタキサンチンを含むものを用いてもよい。また、コエンザイムQ10は、ユビデカレノン又は補酵素UQ10とも称されるユビキノンである。コエンザイムQ10は、本来ヒト由来の成分であるが、化学合成品を用いることができる。これらは、いずれもビタミンEよりも強い抗酸化力を有することが知られており、皮膚老化防止効果を有し、皮膚にうるおいや弾力を付与する効果を有することが知られている。
【0011】
成分(a)は、膏体中に皮膚老化防止効果の点から、0.05〜10質量%含有するのが好ましく、0.05〜5質量%含有するのがより好ましく、0.05〜1質量%含有するのがさらに好ましい。このうち、アスタキサンチンの含有量は、膏体中に0.05〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましく、0.05〜0.25質量%がさらに好ましい。コエンザイムQ10の含有量は、膏体中の0.1〜2質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%がさらに好ましい。
【0012】
本発明で用いる(b)ヒアルロン酸又はその塩としては、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウムが好ましい。ヒアルロン酸又はその塩としては、ニワトリのトサカ由来のものでも、発酵製造法により得られるものでもよい。またヒアルロン酸又はその塩の分子量も特に限定されず、10万〜150万のものが使用可能であるが、20万〜50万の分子量のものが、保湿効果、保湿効果の持続性、安定配合性、成分(a)の経皮吸収性の点から好ましい。
成分(b)は膏体中に0.5〜3.5質量%、さらに0.5〜3質量%、特に1〜2.5質量%含有するのが、保湿効果、成分(a)の経皮吸収性の点から好ましい。
【0013】
本発明で用いる(c)グリセリンとしては、濃グリセリンを用いるのが好ましい。グリセリンは、保湿効果を有し、結果として成分(a)の経皮吸収性向上に寄与する。成分(c)の含有量は、膏体中に30〜50質量%、さらに30〜45質量%、特に35〜45質量%含有するのが、保湿効果及び成分(a)の経皮吸収性の点で好ましい。
【0014】
本発明で用いる(d)寒天としては、天草等の紅藻類から抽出された粘質液を凝固し、乾燥させたものであれば特に制限されない。寒天は膏体の骨格の形成に寄与する。成分(d)の含有量は、膏体中に0.3〜2質量%、さらに0.3〜1.5質量%、特に0.5〜1.5質量%であるのが好ましい。
【0015】
本発明で用いる(e)ローカストビーンガムは、マメ科のカロブ樹からとれる種子の胚乳部分を原料とする多糖類で、その構造は、マンノースの主鎖にガラクトースの側鎖が平均で4対1の割合で結合した直鎖状のガラクトマンナンを形成する。ローカストビーンガムは無臭性の高い透明性を示す精製タイプのものであれば特に限定されるものではない。寒天のみで得られる膏体の物性は、寒天状のパサパサで粘りがなく、外圧により簡単に崩れやすいものであり、ローカストビーンガムを処方することにより、寒天のみの膏体に増粘弾性、保水性、安定性を付与する成分(e)含有量は、膏体中0.5〜3質量%、さらに0.5〜2.5質量%、特に0.5〜2質量%が好ましい。
【0016】
本発明で用いる(f)キサンタンガムは、微生物(Xanthomonas campestris)から産生される天然多糖類で、その構造はグルコースの主鎖にマンノース、グルクロン酸塩の側鎖が結合し、分岐の多い構造を示す多糖類である。成分(f)は、上記のローカストビーンガムと同時に処方すると膏体にゲル、増粘弾性、保湿性、安定性等を相乗的に付与する。成分(f)の含有量は、膏体中に0.1〜0.8質量%、さらに0.1〜0.7質量%、特に0.2〜0.6質量%が好ましい。
【0017】
本発明貼付剤の膏体は、pHが10〜12である水含有膏体であるのが、成分(a)の可溶化、安定性及び経皮吸収性の点で重要である。膏体のpHは、pHメータなどにより直接測定することができる。膏体のpHを10〜12に調整するには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン等のアルカリを添加すればよいが、アルカリイオン水の添加により調整してもよい。当該アルカリイオン水は抗菌・脱脂洗浄・脱臭・防ビ作用等を有し、金属イオン(Na+又はK+)を含まないため皮膚適用時の安全性は極めて高い。膏体中の水の含有量は40〜70質量%、さらに45〜65質量%、特に45〜60質量%が好ましい。
【0018】
本発明貼付剤の膏体には前記成分以外に、美白成分としてL−アスコルビン酸及びその誘導体(L−アスコルビン酸グリコシド、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル等)パルミチン酸ナトリウム、プラセンタエキス、アロエエキス、パントテニールエチルエーテル、トラネキサム酸及びその誘導体、アルブチン、コウジ酸等を配合することができる。また、基剤構成成分として、植物性高分子としてアラビアガム、トラガントガム、カラギーナン、マンナン、動物性高分子としてゼラチン、アルブミン、コラーゲン等を配合することができる。
【0019】
本発明の貼付剤は、膏体の硬度及び粘弾性が十分に高い場合には膏体のみでの使用が可能となる。一方、膏体の硬度及び粘弾性が十分高くない場合には、膏体を支持体に担持した形態とすることが使用勝手面から好ましく、その支持体の物性は伸縮性を有する不織布、プラスチックフィルム等が挙げられる。
また、支持体を担持した膏体の被覆物として防湿機能を有するフィルムを用いてもよい。貼付剤の品質保持のため、気密性のすぐれた包材に入れて保存した状態で供給するのが好ましい。
【0020】
本発明の貼付剤は、皮膚老化防止の目的で皮膚に貼付して使用するのであることから、顔全面、目のまわり用、目尻用、口の周囲用等の形状(顔パック、部分パック)とするのが好ましい。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、下記の各処方において%とは、特に言及しない限りにおいて質量%を意味するものとする。
【0022】
実施例1〜5
表1記載の処方の膏体からなる貼付剤を製造した。
【0023】
【表1】

【0024】
試験例1(膏体の動的粘弾性の測定と目尻並びに口周囲部位の皮膚弾力性の改善度と使用感試験)
表1に記載した実施例5の貼付剤の膏体の動的粘弾性を測定した。また、表1に示す実施例5の貼付剤を目尻部位と口周囲を貼付対象にして被験者(20〜50歳代34名)に1日1回洗顔直後に貼付し、1カ月継続使用したのち、皮膚弾力性の改善度をキュートメーターを用いて使用前後による皮膚症状の改善度を評価した。また、使用感(しっとり感)については適応前と適応後の皮膚症状を被験者に5段階評価(5:非常によい、4:よい、3:普通、2:やや悪い、1:悪い)させた。
その結果、表2に示すように、実施例5はいずれの試験項目においてもよい弾力性並びに好ましい改善傾向が認められ優れた貼付剤であることが実証された。また、実施例1〜4の貼付剤についても、目尻に貼付したところ、優れた皮膚弾力性の改善効果が得られた。
【0025】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(f):
(a)抗酸化成分、
(b)ヒアルロン酸又はその塩、
(c)グリセリン、
(d)寒天、
(e)ローカストビーンガム、及び
(f)キサンタンガム
を含有し、pHが10〜12である水含有膏体を有する皮膚外用貼付剤。
【請求項2】
成分(a)がアスタキサンチン及びコエンザイムQ10から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の皮膚外用貼付剤。
【請求項3】
膏体中に、成分(a)を0.05〜10質量%、成分(b)を0.5〜3.5質量%、成分(c)を30〜50質量%、成分(d)を0.3〜2質量%、成分(e)を0.5〜3質量%、及び成分(f)を0.1〜0.8質量%含有する請求項1又は2記載の皮膚外用貼付剤。
【請求項4】
膏体中に水を40〜70質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚外用貼付剤。

【公開番号】特開2012−92022(P2012−92022A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238153(P2010−238153)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(591189052)株式会社トクホン (1)
【Fターム(参考)】