説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】 泡がクリーミーで非常にすべりが良く使用感が良好な皮膚洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】 (A)界面活性剤、(B)平均分子量が300万以上であって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基又はその塩型の基、あるいは硫酸基又はその塩型の基を有するモノマーである非架橋のポリマー、及び(C)水を含有する皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の洗浄に際して、泡がクリーミーですべりが良く使用感が良好な皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
全身洗浄料、食器用洗剤等の皮膚に直接接する時間の長い洗浄剤組成物は、洗浄力、起泡性や泡質等の泡性能、使用感といった性能が求められている。特に泡のすべり性が良好であると使用時の摩擦が低くなり、使用感が良好であるとともに肌に対する刺激が少なくなる。近年界面活性剤組成物に高分子化合物を添加することによって泡質をよりクリーミーにする検討が行われている。例えば特許文献1では特定のリン酸エステル塩と塩化ジアルキルジアリルアンモニウムとアクリルアミドとの共重合体、及び/またはアクリル酸と塩化ジアルキルジアリルアンモニウムとアクリルアミドとの共重合体との組み合わせで皮膚に対する刺激が少なく、良好な泡立ちを有し、泡がクリーミーですべりが良く使用感が良好な皮膚洗浄剤組成物が開示されているが、泡質はクリーミーであるものの、泡のすべり性では未だ不十分であった。
【0003】
特許文献2には、中和された架橋ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)を配合した化粧品及び/または皮膚科学用組成物が記載されている。
【特許文献1】特開2004−182619号公報
【特許文献2】特開平10−87428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、泡がクリーミーで非常にすべりが良く使用感が良好な皮膚洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する皮膚洗浄剤組成物を提供する。
(A)界面活性剤
(B)平均分子量が300万以上であって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基又はその塩型の基、あるいは硫酸基又はその塩型の基を有するモノマーである非架橋のポリマー
(C)水
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、泡がクリーミーで非常にすべりが良く使用感が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[(A)成分]
本発明に用いられる(A)成分の界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤のいずれも用いることができるが、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、陰イオン界面活性剤が更に好ましい。
【0008】
陰イオン界面活性剤としては、特に以下の(A1)、(A2)、(A3)成分が好ましい。
(A1)アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩、あるいはポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩、
(A2)高級脂肪酸又はその塩
(A3)アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩
(A1)成分としては、洗浄力が充分ありながら、皮膚への刺激が低い下記式(1)で表されるリン酸エステル又はその塩が好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1は炭素数8〜18の炭化水素基、R2は炭素数2〜3のアルキレン基、mは0〜8の数を示す。X1及びX2は同一又は相異なって、水素原子又はアルカリ金属、炭素数2〜3のアルキル置換アンモニウム、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル置換アンモニウム、塩基性アミノ酸のいずれかを示す。)
式(1)において、R1は、炭素数8〜18、好ましくは炭素数8〜15の炭化水素基であり、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。炭素数8〜18の直鎖の炭化水素基としては、炭素数8〜18の直鎖のアルキル基又はアルケニル基が挙げられ、特に、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
【0011】
炭素数8〜18の分岐鎖の炭化水素基としては、R3−CH(CH3)CH2−(R3は炭素数5〜12の直鎖の炭化水素基を示す)で表わされるメチル分岐炭化水素基、特にメチル分岐アルキル基が好ましい。R3で示される炭素数5〜12の直鎖の炭化水素基としては、炭素数5〜12の直鎖のアルキル基又はアルケニル基が挙げられ、特にペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖アルキル基が好ましい。これらのメチル分岐炭化水素基以外に、エチル分岐、プロピル分岐、ブチル分岐、ペンチル分岐等の炭化水素基でも良い。
【0012】
2は炭素数2〜3のアルキレン基を示し、エチレン基が好ましい。オキシアルキレン基の繰り返し単位数mは、0〜8の数であるが、重量平均で0〜5の数であることが好ましく、0〜3の数であることが更に好ましい。また、m個のR2は同一でも異なっていても良い。
【0013】
また、式(1)において、X1及びX2で表されるアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が例示される。また、炭素数2〜3のアルキル置換アンモニウム又は炭素数2〜3のヒドロキシアルキル置換アンモニウムとは、式(1)で示されるリン酸エステル又はその塩の製造工程で、相当するリン酸を中和するときに用いられるアミンに由来するものである。相当するアミンは炭素数2〜3のアルキル基又はこれらに水酸基を持つアルキル基の1級、2級、3級アミンであり、これらを例示すると、ジエチルモノエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、ジプロピルモノエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、プロピルジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロピルジエチルアミン、イソプロピルエタノールアミン等を挙げることができる。
また、塩基性アミノ酸としては、例えばアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等を挙げることができる。
【0014】
これらの中では、式(1)の塩として、カリウム塩、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩を与えるものが好ましく、カリウム塩、ナトリウム塩であることが特に好ましい。
【0015】
(A1)成分の特に好ましい例示としては、R1が炭素数8〜15の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、mが0であるリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩又はアルギニン塩が挙げられる。
【0016】
(A1)成分のリン酸エステル又はその塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の皮膚洗浄剤組成物に(A1)成分を配合する場合、その含有量は、通常、皮膚洗浄剤組成物の全重量に対して5〜30重量%が好ましく、充分な洗浄効果を得る点から5重量%以上、特に8重量%以上とすることがより好ましく、洗浄効果以外の点から他成分との量的バランスを考慮し、25重量%以下、特に20重量%以下とすることがより好ましい。
【0017】
(A2)成分の高級脂肪酸又はその塩を構成する高級脂肪酸としては、炭素数8〜24のものが好ましい。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸等が挙げられ、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
【0018】
高級脂肪酸塩を構成する対イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、塩基性アミノ酸、有機アミン類などが挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、特にカリウム塩が好ましい。
【0019】
また、高級脂肪酸の中和度は60〜100%、特に65〜95%、更に70〜90%であるのが、起泡性、経時安定性の点で好ましい。
【0020】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に(A2)成分を配合する場合、それぞれ1種以上を用いることができ、全組成物中の(A2)成分の含有量は、良好な起泡性や泡質を得、また洗浄後の皮膚のつっぱり感を防止する観点から、20〜50重量%が好ましく、20〜45重量%がより好ましく、20〜40重量%が更に好ましい。
【0021】
(A3)成分のうちアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩としては、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。塩を構成する対イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、塩基性アミノ酸、有機アミン類などが挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、特にカリウム塩が好ましい。
【0022】
(A3)成分のうちポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩としては、例えば平均炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、1分子内に平均0.5〜8モルのアルキレンオキサイド、好ましくはエチレンオキサイドが付加したものが挙げられる。塩を構成する対イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、塩基性アミノ酸、有機アミン類などが挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、特にカリウム塩が好ましい。
【0023】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に(A3)成分を配合する場合、それぞれ1種以上を用いることができ、本発明の組成物中の(A3)成分の含有量は、1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。
【0024】
本発明の(A)成分として両性界面活性剤を配合する場合、両性界面活性剤としては、例えばカルボベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、イミダゾリニウムベタイン型、ホスホベタイン型等の両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、脂肪酸(炭素数8〜24)アミドプロピルベタイン、2−アルキル(炭素数8〜24)−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが好ましく、脂肪酸(炭素数8〜24)アミドプロピルベタインが更に好ましい。
【0025】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に両性界面活性剤を配合する場合、それぞれ1種以上を用いることができ、本発明の組成物中の両性界面活性剤の含有量は、0〜10重量%が好ましく、0〜5重量%がより好ましい。
【0026】
[(B)成分]
本発明の(B)成分のポリマーは、平均分子量が300万以上であって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基又はその塩型の基(以下スルホン酸(塩)基という)、あるいは硫酸基又はその塩型の基(以下硫酸(塩)基という)を有するモノマーである非架橋のポリマーであり、ビニル系ポリマーであっても良いし、縮合重合系ポリマーであっても良いし、ポリエーテル系ポリマーであっても良い。
【0027】
ここで非架橋ポリマーとは、0.5重量%水溶液を調製し、目開き100ミクロンのメッシュを通して残留した水不溶性成分が1重量%未満であるものを言う。より具体的には、モノマーとして多官能性成分を加えないで重合を行うことで得ることができる。本発明の洗浄剤組成物は非架橋ポリマーを用いるため、架橋ポリマー、すなわちゲル成分がタオルやスポンジ等に付着することがないため、洗浄剤組成物として好適に用いることができる。
【0028】
(B)成分のポリマーがビニル系ポリマーである場合、モノマーユニットであるスルホン酸(塩)基及び/又は硫酸(塩)基を有するビニル系構成モノマーとしては例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニル硫酸、又はこれらの塩等のモノマーが挙げられる。中でも、重合性が高く、高分子量体を得やすいことから、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸又はこれらの塩が好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸又はこれらの塩が特に好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩が最も好ましい。
【0029】
これらの構成モノマーは、酸型で用いても良いし、そのスルホン酸基及び/又は硫酸基の一部、又は全てを塩類で中和して塩型の基にして用いても良い。
【0030】
スルホン酸基または硫酸基の塩を構成する対イオンとしては、金属イオン、アンモニウムイオン、総炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニルアンモニウムイオン、炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニル置換ピリジニウムイオン、総炭素数1〜22のアルカノールアンモニウムイオンが挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオンの様なアルカリ金属イオン、又はアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンが特に好ましい。
【0031】
また、本発明において、前記構成モノマーは、単独で又は2種類以上を併用してもよく、構成モノマーが2種以上である場合、これらの構成モノマーの配置としては、特に限定はなく、ランダム配置でもブロック配置でもよい。
【0032】
ビニル系ポリマーの合成法は特に限定されず、公知の方法を選択できる。例えば、スルホン酸(塩)基及び/又は硫酸(塩)基を含有するモノマーを単独重合しても良いし、これとスルホン酸(塩)基及び/又は硫酸(塩)基を含有しない他のモノマーとを前者のモル分率が60%以上となる比率で共重合しても良い。あるいはまた、既存の任意のポリマーに、構成モノマーの60モル%以上の比率でスルホン酸(塩)基及び/又は硫酸(塩)基を導入して用いても良い。
【0033】
ビニル系ポリマーをスルホン酸(塩)基及び/又は硫酸(塩)基を含有するモノマーの単独または共重合によって得る方法、重合様式としては、バルク重合や沈澱重合を行うことも可能ではあるが、よりすべり性付与能の高いポリマーを得るため、また重合の制御の容易さの点から、水溶液重合、または逆相懸濁重合法にて合成することが好ましい。
【0034】
ビニル系ポリマーを合成するにあたり、重合法はラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、縮合重合等、いかなる方法によっても良いが、ラジカル重合する場合はラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤を用いても良いし、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を用いても良いし、これらと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス型開始剤系として用いても良いし、紫外線や電子線、γ線などを照射して重合を開始しても良い。なお、これらの重合開始剤の使用量は前記ビニル系構成モノマーに対して0.0001〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0035】
また、アニオン重合する場合には、重合開始剤としてナフチルナトリウムなどのアルカリ金属の芳香族錯体やリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、メチルリチウムまたはフルオレニルリチウムなどの有機リチウム化合物(アルキルリチウム化合物)を用いても良いし、または有機マグネシウム化合物、好適にはフェニルマグネシウムブロマイドまたはブチルマグネシウムブロマイドなどのグリニヤール化合物、またはジベンジルマグネシウム、ジブチルマグネシウムまたはベンジルピコリルマグネシウムなどのジオルガノマグネシウム化合物を用いても良い。なお、これらの重合開始剤の使用量は前記ビニル系構成モノマーに対して0.0001〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0036】
一方、カチオン重合する場合には、重合開始剤としてトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのブレンステッド酸を用いても良いし、水/三フッ化ホウ素、水/三塩化ホウ素、水/塩化アルミニウム、水/臭化アルミニウム、水/四塩化錫、トリクロロ酢酸/四塩化錫、塩化水素/三塩化ホウ素または塩化水素/三塩化アルミニウムなどのブレンステッド/ルイス酸混合物を用いても良く、またトリチルカチオン、トロピリウムカチオンなどの有機カチオン類、または塩化アセチル/ヘキサフルオロアンチモン酸銀または塩化アセチル/過塩素酸銀などのオキソカルベニウムイオンを生じる混合物を用いても良い。なお、これらの重合開始剤の使用量は前記ビニル系構成モノマーに対して0.0001〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0037】
また、ビニル系ポリマーを、スルホン酸(塩)基及び/又は硫酸(塩)基を有するモノマーと共重合しうる他のモノマーとの共重合体として得る場合、スルホン酸(塩)基及び/又は硫酸(塩)基を有する構成モノマー以外の構成モノマーは、カルボン酸基又はその塩型の基(以下カルボン酸(塩)基という)、リン酸基又はその塩型の基(以下リン酸(塩)基という)あるいはホスホン酸基又はその塩型の基(以下ホスホン酸(塩)基という)を有するアニオン性モノマー、及びノニオン性モノマーから選ばれるモノマーが好ましく、水溶性モノマーが更に好ましい。これら共重合モノマーの割合は(B)成分のポリマーの構成モノマーの40モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。
【0038】
カルボン酸(塩)基を有するアニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸[(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物のことをいう]及びその塩類、スチレンカルボン酸及びその塩類、マレイン酸系モノマー[無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、並びにマレイン酸モノアミド又はそれらの2種類以上からなる混合物]及びその塩類並びにイタコン酸及びその塩類等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのうち、共重合が容易であることから、(メタ)アクリル酸及びその塩類、スチレンカルボン酸及びその塩類が好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩類が特に好ましい。ここで塩類を形成するカチオン基としては、前記のカチオン基であればよい。
【0039】
また、リン酸(塩)基又はホスホン酸(塩)基を有するアニオン性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜4)リン酸、ビニルホスホン酸等が挙げられる。ここで塩類を形成するカチオン基としては、前記のカチオン基であればよい。
【0040】
ノニオン性モノマーとしては、以下の(1)及び(2)が挙げられる。
(1)無置換、あるいは窒素上に炭素数1〜2のアルキル基を有する置換(メタ)アクリルアミド類
例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等が好ましい。
(2)(メタ)アクリル酸エステル類
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が好ましい。
【0041】
(B)成分のポリマーの平均分子量は、泡の皮膚に対する感触調整の点から、300万以上であり、300万〜5000万が好ましく、更に500万以上、特に500万〜1000万が好ましい。
【0042】
尚、ここでポリマーの分子量測定は下記測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により行い、ポリエチレングリコール(PEG)換算の分子量を測定値とする。本発明においては、GPC測定のピークトップを平均分子量とする。
【0043】
・GPCの測定条件
カラムはPW/GMPWXL/GMPWXL(東ソー(株)製)、溶離液に0.2Mリン酸バッファー(KH2PO4、Na2HPO4、pH=7)/CH3CN=9/1(重量比)を用い、カラム温度:40℃、流速:0.5mL/min、サンプル濃度は1〜100μg/mLとする。検出器は、RALLSを用いる。
【0044】
[皮膚洗浄剤組成物]
本発明の皮膚洗浄剤組成物において、(A)成分の界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の組成物中の(A)成分の含有量は、良好な起泡性や泡質を得、また洗浄後の皮膚のつっぱり感を防止する観点から、10〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、12〜30重量%が更に好ましい。
【0045】
本発明の皮膚洗浄剤組成物において、(B)成分のポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の組成物中の(B)成分の含有量は、通常、皮膚洗浄剤組成物の全重量に対して、固形分換算で0.05〜10重量%が好ましく、泡性能を良くする充分な効果を得る点から0.1重量%以上がより好ましく、皮膚洗浄剤としての使用感の点から他成分との量的バランスを考慮し、1重量%以下、特に0.7重量%以下が好ましい。
【0046】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、特にpHが限定されるものではないが、特に界面活性剤が高級脂肪酸塩以外の場合、pHが弱酸性であることが好ましい。上記(A)成分に(B)成分を組み合わせ、更にpHを弱酸性に調整することにより、皮膚への刺激が少なく、優れた洗浄力が損なわれることなく洗浄時の泡立ちが良好となり、泡がクリーミーですべりが良くなり、使用感を良好とすることができる。
【0047】
弱酸性とは、pH(水素イオン濃度)が7より小さく、4.5より大きい場合を言う。本発明の皮膚洗浄剤組成物は、さらに泡がクリーミーですべりが良く使用感が良好となる点から、pH4.5〜6.5であることが好ましく、pH5.0〜6.5であることが更に好ましい。ここでpHは、試料を精製水にて20倍に希釈し、撹拌して5重量%水溶液を得た後、pHメーター(例えば、堀場製作所製、型番F−22)を用いて、20℃で測定した値である。
【0048】
皮膚洗浄剤組成物のpHは、必要に応じて公知のpH調整剤(有機又は無機の酸、塩基又は緩衝液)を用いて弱酸性に調整することができる。
【0049】
本発明に係る皮膚洗浄剤組成物には、その他にも目的に応じて、pH調整剤、香料、保湿剤、抗ニキビ剤、酸化防止剤、抗フリーラジカル剤、乳白剤、安定剤、エモリエント剤、ヒドロキシ酸、ビタミン類、セラミド類、防腐剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、無機塩、顔料、その他化粧料に一般的に用いられる薬剤、あるいはエタノールのような有機溶媒物質や揮発性成分等を含有することができる。
【0050】
本発明に係る皮膚洗浄剤組成物は、(A)成分である界面活性剤、(B)成分であるポリマー、及び必要に応じて他の成分を秤量し、(C)成分である水又は水を主体としアルコール等の他の水溶性溶剤を含む水性媒体に任意の順序で混合及び攪拌することにより調製できる。混合、溶解の順序は、(A)成分、(B)成分であるポリマーの安定な溶解状態が得られる限り特に制限されない。
【0051】
このようにして得られる本発明の皮膚洗浄剤組成物は、特に洗顔料、全身洗浄料、ハンドソープ、クレンジング剤等の洗浄剤組成物にすることができ、特に洗顔料、全身洗浄料、ハンドソープに好適に用いられる。
【実施例】
【0052】
以下の例中の%は、特記しない限り重量%である。
【0053】
合成例1:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムのホモポリマーの合成例
シュガーエステル(S−770、三菱化学フーズ(株))1.00gをn−ヘキサン185gに溶解させたものに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム20.0g、水酸化ナトリウム3.86g、過硫酸アンモニウム0.055gをイオン交換水50gに溶解させたものを分散させ、窒素雰囲気下で60℃に昇温し攪拌した。その後、60℃を保ちながら2時間攪拌し、減圧乾燥機(50℃、12時間)にて乾燥させて無色固体状ポリマーを22.0g(収率99.1%)得た。得られたポリマー(以下ポリマー(1)という)のGPC測定の結果、ピークトップ分子量300万(ポリエチレングリコール換算、カラム:GMPWXL+GMPWXL、展開溶媒:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(重量比)、濃度:0.05mg/mL、流速:0.5mL/min、40℃、以下同じ条件で平均分子量を測定)であった。得られたポリマーの0.5%水溶液を調製したところ、透明であり、水不溶成分は0%であった。
【0054】
合成例2:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムのホモポリマーの合成例
シュガーエステル(S−770、三菱化学フーズ(株))6.00gをn−ヘキサン950gに溶解させて窒素雰囲気下で70℃に昇温したところに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム665g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ジヒドロクロライド(V−50、和光純薬工業(株)製)0.80gをイオン交換水590gに溶解させたものを10℃以下に保ちながら1時間かけて滴下し分散させ、70℃を保ちながら30分攪拌した。その後、減圧乾燥機(50℃、12時間)にて乾燥させて無色固体状ポリマーを664g(収率99.8%)得た。得られたポリマー(以下ポリマー(2)という)のGPC測定の結果、ピークトップ分子量620万であった。得られたポリマーの0.5%水溶液を調製したところ、透明であり、水不溶成分は0%であった。
【0055】
合成例3:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム/アクリル酸ナトリウム=95:5(モル比)の共重合体の合成例
シュガーエステル(S−770、三菱化学フーズ(株))6.00gをn−ヘキサン800gに溶解させて窒素雰囲気下で70℃に昇温したところに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸600g、水酸化ナトリウム160g、アクリル酸10g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ジヒドロクロライド(V−50、和光純薬工業(株)製)2.40gをイオン交換水510gに溶解させたものを10℃以下に保ちながら1時間かけて滴下し分散させ、70℃を保ちながら30分攪拌した。その後、乾燥させて無色固体状ポリマーを672g(99.4%)得た。得られたポリマー(以下ポリマー(3)という)のGPC測定の結果、ピークトップ分子量450万であった。得られたポリマーの0.5%水溶液を調製したところ、透明であり、水不溶成分は0%であった。
【0056】
合成例4:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム/アクリル酸ナトリウム=95:5(モル比)の共重合体の合成例
シュガーエステル(S−770、三菱化学フーズ(株))6.00gをn−ヘキサン800gに溶解させて窒素雰囲気下で70℃に昇温したところに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸600g、水酸化ナトリウム160g、アクリル酸10g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ジヒドロクロライド(V−50、和光純薬工業(株)製)0.80gをイオン交換水510gに溶解させたものを10℃以下に保ちながら1時間かけて滴下し分散させ、70℃を保ちながら30分攪拌した。その後、乾燥させて無色固体状ポリマーを674g(99.7%)得た。得られたポリマー(以下ポリマー(4)という)のGPC測定の結果、ピークトップ分子量780万であった。得られたポリマーの0.5%水溶液を調製したところ、透明であり、水不溶成分は0%であった。
【0057】
実施例1及び比較例1:洗顔料
表1に示す組成になるように界面活性剤、ポリマー、その他成分を秤量し、水中に添加して、50℃で充分撹拌し、均一溶液とした。この透明溶液にpH調整剤をさらに添加、撹拌して、洗顔料を得た。pHは6.2であった。
【0058】
得られた洗顔料を用いて官能評価を行ったところ、実施例1の洗顔料は比較例1の洗顔料と比較してよりきめ細やかなクリーミーな泡が立ち、すべり感が高く、良感触であることがわかった。また、洗い上がりのさっぱり感も良好であった。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例2及び比較例2:全身洗浄料
表2に示す組成となるように界面活性剤、ポリマー、その他成分を秤量し、水中に添加して、50℃で充分撹拌し、均一溶液とした。この透明溶液にpH調整剤をさらに添加、撹拌して、全身洗浄料を得た。pHは6.2であった。
【0061】
得られた全身洗浄料を用いて官能評価を行ったところ、実施例2の全身洗浄料は比較例2の全身洗浄料と比較してよりきめ細やかなクリーミーな泡が立ち、すべり感が高く、良感触であることがわかった。また、洗い上がりのさっぱり感も良好であった。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例3及び比較例3:ハンドソープ
表3に示す組成となるように界面活性剤、ポリマー、その他成分を秤量し、水中に添加して、50℃で充分撹拌し、均一溶液とした。この透明溶液にpH調整剤をさらに添加、撹拌して、ハンドソープを得た。pHは6.2であった。
【0064】
得られたハンドソープを用いて官能評価を行ったところ、実施例3のハンドソープは比較例3のハンドソープと比較してよりきめ細やかなクリーミーな泡が立ち、すべり感が高く、良感触であることがわかった。また、洗い上がりのさっぱり感も良好であった。
【0065】
【表3】

【0066】
実施例4:全身洗浄料
表4に示す組成となるように界面活性剤、ポリマー、その他成分を秤量し、水中に添加して、70℃で充分撹拌し、全身洗浄料を調製した。中和度は全脂肪酸量の80%である。
得られた全身洗浄料はクリーミーな泡立ちとすべり性の高い良感触を有していた。
【0067】
【表4】

【0068】
実施例5:全身洗浄料
表5に示す組成となるように界面活性剤、ポリマー、その他成分を秤量し、水中に添加して、70℃で充分撹拌し、全身洗浄料を調製した。pHは5.0であった。
得られた全身洗浄料はクリーミーな泡立ちとすべり性の高い良感触を有していた。
【0069】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する皮膚洗浄剤組成物。
(A)界面活性剤
(B)平均分子量が300万以上であって、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基又はその塩型の基、あるいは硫酸基又はその塩型の基を有するモノマーである非架橋のポリマー
(C)水
【請求項2】
(B)成分のポリマーの平均分子量が500万以上である請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
(B)成分のポリマーの構成モノマーの40モル%以下が、カルボン酸基又はその塩型の基、リン酸基又はその塩型の基あるいはホスホン酸基又はその塩型の基を有するアニオン性モノマー、及びノニオン性モノマーから選ばれる少なくとも1種の水溶性モノマーである、請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
水溶性モノマーがカルボン酸基又はその塩型の基を有するモノマーである、請求項3記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項5】
(A)成分が、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩、高級脂肪酸又はその塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4いずれかの項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項6】
組成物中の(A)成分の含有量が10〜50重量%、(B)成分の含有量が0.05〜10重量%である、請求項1〜5いずれかの項記載の皮膚洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−39390(P2007−39390A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226375(P2005−226375)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】