説明

皮膚用外用剤キット

【課題】被検者が血流改善による温感効果を体感し易くして、継続し易くすると共に、マッサージを行った後に潤滑油を簡単に落とすことのできる皮膚用外用剤キットを提供する。
【解決手段】手足、腕、脚および胴の一部に塗布され、塗布した状態でマッサージを行う際の潤滑油として、無辛味品種および辛味品種の乾燥唐辛子から抽出したカプシノイド化合物およびカプサイシンを含有するオリーブ油を主成分とする温感マッサージ塗布剤と、モンモリロナイト、水およびオリーブ油を主成分とし、白炭粉末を含有し、前記塗布剤を洗い落とす除去剤と、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚用外用剤キットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、肩凝りや足のむくみなどは、血流不良によって引き起こされる。前記血流不良を改善するためにはマッサージなどが有効である。そこで、マッサージを行う際の潤滑油からなる塗布剤に、辛味品種の乾燥唐辛子から抽出したカプサイシンを血流改善剤として配合することが考えられる。
しかし、前記塗布剤にカプサイシンを多量に含有させると、刺激が強すぎて被検者が痛みを訴えるおそれがある。
【0003】
ところで、無辛味唐辛子から抽出された刺激のないカプシノイド化合物が提案されている(特許文献1参照)。
前記カプシノイド化合物は、被験者に刺激を与えることなく血流の促進を行う効果を有する。そこで、前記カプシノイド化合物を潤滑油に溶け込ませた塗布剤を用いてマッサージを行うことにより血流の改善を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−145793(要約書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カプシノイド化合物を用いた潤滑油は刺激が全くないので、被検者にとって、血流改善による温感効果が体感しずらい。そのため、三日坊主になってしまい、継続しない。
一方、施術後に塗布剤に含まれる潤滑油を洗い落とす必要がある。そのため、マッサージ店などではシャワー室などの設備が別途必要となり、コストアップが生じると共に、顧客にとってもシャワーを浴びる必要が生じるため煩雑である。
【0006】
したがって、本発明の主な目的は、被検者が血流改善による温感効果を体感し易くして、継続し易くすると共に、マッサージを行った後に潤滑油を簡単に落とすことのできる皮膚用外用剤キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の皮膚用外用剤キットは、手足、腕、脚および胴の一部に塗布され、塗布した状態でマッサージを行う際の潤滑油として、無辛味品種および辛味品種の乾燥唐辛子から抽出したカプシノイド化合物およびカプサイシンを含有するオリーブ油を主成分とする温感マッサージ塗布剤と、モンモリロナイト、水およびオリーブ油を主成分とし、白炭粉末を含有し、前記塗布剤を洗い落とす除去剤と、を包含する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温感マッサージ塗布剤の主成分であるオリーブ油は粘度が小さいので、滑りが良く被検者にとって心地よいマッサージ感を得られると共に、作業者の指が疲れにくい。
また、オリーブ油はカプシノイド化合物やカプサイシンなどの血流改善剤が溶け易く、毛穴や汗腺から有効成分と共に浸透し易い。
更に、オリーブ油は酸化しにくいので、施術後にオリーブ油が残っても、不快な臭いや汚れの生じる原因になりにくい。
【0009】
本発明において、唐辛子のカプシノイド化合物およびカプサイシンは、周知のように、血流を良くする。
【0010】
ここで、辛味唐辛子から抽出されるカプサイシンは多量に用いると皮膚に痛みを感じたり、強い刺激性・感熱性を発現するので、多量に用いることができない。
一方、無辛味唐辛子から抽出されるカプシノイド化合物は、多量に用いても前記弊害は生じない。しかし、カプシノイド化合物のみを用いると、血流改善による効果が体感しにくい。そのため、自分でマッサージを行う場合には長続きしにくく、マッサージ店などにおいてはリピータを確保しにくい。
そこで、カプサイシンおよびカプシノイド化合物の双方を用いることで、血流改善を図るだけでなく、皮膚の痛みや強い刺激を抑制しつつ、被検者が血流改善を実感することができる。
【0011】
前記塗布剤を用いてマッサージを行った後、除去剤を身体に塗布して前記塗布剤を除去する。すなわち、除去剤を体に満遍なく塗布した後、該塗布剤を拭き取る。
この際、白炭は前記オリーブ油を吸着すると共に油中の汚れを吸着する。前記白炭は比較的白いので、除去剤が体に多少残ったとしても、黒炭とは異なり皮膚表面が黒くなりにくい。
特に、塗布剤は油分であるから、通常の石鹸などではオリーブ油を取り除きにくいのに対し、モンモリロナイトおよび白炭により油分を吸油することで前記オリーブ油を取り除き易くなる。
また、除去剤にオリーブ油を添加することにより、塗布剤の主成分であるオリーブ油と除去剤中のオリーブ油との親和性によって、塗布剤中のモンモリロナイトや白炭にオリーブ油が吸着され易くなる。そのため、塗布剤のオリーブ油による不快なぬめり感を取り除き易くなる。
また、モンモリロナイトは、塗布剤が拭き取られた後も、若干量が皮膚表面に残り、施術箇所を白く見せることができる上、辛味唐辛子の成分を覆うので施術部分に触れても辛味を感じにくい。
【0012】
なお、「モンモリロナイト」は、粘土鉱物であり、酸性白土や活性白土など熱水変質を受けた岩石に含まれるものである。本発明で用いるモンモリロナイトとしては、たとえば、粒径が1.0μm〜50μmに紛砕された微細な粉末状のものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1〜10にかかる試験結果を示すグラフである。
【図2】図2Aは本発明の実施例11〜20にかかる試験結果を示すグラフ、図2Bは本発明の実施例21〜30にかかる試験結果を示すグラフである。
【図3】図3Aは本発明の実施例31〜40にかかる試験結果を示す図表、図3Bは実施例41〜50にかかる試験結果を示す図表、図3Cは実施例51〜60にかかる試験結果を示す図表である。
【図4】本発明の実施例61〜70にかかる試験結果を示すグラフである。
【図5】図5Aは第1容器を示す概略側面図、図5Bは第2容器を示す概略側面図である。
【図6】図6Aは本発明の実施例51〜60にかかる温感マッサージ塗布剤の成分を示す図表、図6Bは実施例61〜70にかかる塗布剤の成分を示す図表、図6Cは実施例71〜80にかかる塗布剤の成分を示す図表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にかかる皮膚用外用剤キットは、前記温感マッサージ塗布剤のオリーブ油100重量部に対し、前記唐辛子として、無辛味品種の唐辛子の乾燥種子0.5〜5.0重量部および辛味品種の乾燥唐辛子を0.05〜0.5重量部を含有することを特徴とする。
【0015】
無辛味品種の乾燥種子が0.5重量部未満であると、血流改善の効果が十分に得られない一方、5.0重量部を超えても効果が増加しない。
また、辛味品種の乾燥唐辛子が0.05重量部未満であると皮膚表面の刺激(温感効果)を殆ど感じない一方で、0.5重量部を超えると皮膚表面の刺激が強くなりすぎる。
【0016】
本発明において、無辛味品種については、乾燥種子のみを用い、他の果肉やクチクラの部位は用いないのが好ましい。カプシノイド化合物は、無辛味品種の唐辛子の種子に多量に含まれているが、果肉には殆ど含まれていないし、果肉は食用として用いることができるからである。
ここで、ピーマンなどの無辛味品種の野菜は、食用に用いる果肉の部分以外を廃棄処理する場合が多い。そこで、前記果肉以外の部分を使用することで、廃棄処理を行う部分を有効利用することができる。
【0017】
なお、カプシノイド化合物を抽出する無辛味唐辛子としては、たとえば、ピーマンや、CH−19甘、万願寺、伏見甘長、ししとうなど前記特許文献1に記載された品種を用いることができる。
【0018】
本発明において、前記除去剤は、モンモリロナイト40重量部に対し水150〜180重量部、白炭粉末0.1〜1.0重量部およびオリーブ油1.0〜3.0重量部を含有するのが好ましい。
ここで、モンモリロナイトに多量の水を含ませると、モンモリロナイトによる塗布剤のオリーブ油の吸油性能が低下する。そのため、水は180重量部以下に設定するのが好ましい。
一方、モンモリロナイトが少量の水を含浸している場合には、“ダマ”になり易く、やはり、塗布剤の吸油性能が低下する。そのため、水は150重量部以上に設定するのが好ましい。
【0019】
本発明において、前記白炭は備長炭であるのが好ましい。
前記備長炭とは、ウバメガシなどの樫から製造された白炭のことをいう。前記白炭とは、750℃〜1100℃の高温で製造された木炭をいう。備長炭には無数の微細な空洞が形成されているので、塗布剤の吸着に適している。
【0020】
本発明において、前記白炭粉末は平均粒子径が10μm〜50μmであるのが好ましい。
かかる態様によれば、白炭粉末の平均粒径が小さいので、皮膚に塗布した場合、違和感やごつごつした感じが生じない。
【0021】
本発明において、前記塗布剤は天然パパインを含有しているのが好ましい。
前記天然パパインは、未成熟の青パパイヤに多く含まれているタンパク質分解酵素のことをいう。前記パパインのタンパク質分解機能によって、肌の汚れを落とす効果が期待できる。前記パパインの含有量としては、オリーブ油100重量部に対し1.0〜2.0重量部に設定するのが好ましい。
【0022】
本発明において、前記塗布剤は白金のナノコロイドを含有しているのが好ましい。
前記白金ナノコロイドは、消臭や、脱臭、除菌、カビ抑制、除菌、抗菌などの効果を有することが知られている。そのため、白金ナノコロイドを塗布剤に含有させることにより、前記効果が期待できる。前記白金ナノコロイドの含有量としては、たとえば、オリーブ油100重量部に対し0.03〜0.3重量部に設定するのが好ましい。
【0023】
本発明において、前記塗布剤はビタミンEを含有しているのが好ましい。
前記ビタミンEを塗布剤に含有させることにより、該ビタミンEの効果によって皮膚の酸化を防いで細胞の老化を遅らせる効果が期待できる。前記ビタミンEの含有量としては、オリーブ油中にもビタミンEが多量に含有されていることを勘案して、オリーブ油100重量部に対し0.1〜0.3重量部に設定するのが好ましい。
【0024】
本発明において、前記塗布剤はビタミンCを含有しているのが好ましい。
前記ビタミンCを塗布剤に含有させることにより、該ビタミンCの効果によってコラーゲンの形成が高まり、皮膚の弾性を維持する効果が期待できる。前記ビタミンCの含有量としては、オリーブ油100重量部に対し1.0〜3.0重量部に設定するのが好ましい。
【0025】
本発明において、前記塗布剤は挂枝を含有しているのが好ましい。
前記挂枝とは、クスノキ科挂樹の若枝を乾燥したものであり、血流の促進やむくみの解消などの効果を有することが知られている。前記挂枝の含有量としては、オリーブ油100重量部に対し1.0〜2.0重量部に設定するのが好ましい。
【0026】
本発明において、前記塗布剤は紅花を含有しているのが好ましい。
前記紅花としては、紅花の管状花をそのまま、または黄色色素の大部分を除いて圧搾したものを用いることができる。前記紅花は、血流の促進効果を有することが知られている。前記紅花の含有量としては、オリーブ油100重量部に対し0.05〜0.3重量部に設定するのが好ましい。
【0027】
本発明において、前記除去剤は石鹸1.0〜10重量部を含有していてもよい。
除去剤に石鹸を含有させることにより、前記除去剤を被検者の身体に塗布して泡立てたた後、シャワー等で洗い流すことで、塗布剤のぬめり感が除去されてさっぱりとした感じを得ることができる。
しかし、マッサージ店などにおいては、シャワー室等を別途設ける必要があるため、設備に要する費用がアップすると共に、シャワースペースを確保するためにより広い店舗面積が必要となる。また、塗布剤を完全に洗い流すと、塗布剤に含有された種々の有効成分も一緒に洗い流されるので、マッサージ後の有効成分の身体への浸透が不十分になる。
【0028】
本発明において、前記温感マッサージ塗布剤が第1容器に封入されており、前記除去剤が前記第1容器よりも軟質の第2容器に封入されているのが好ましい。
塗布剤はマッサージの際に被検者の身体の各部に少量づつ用いるので、第1容器としては、塗布剤が少量づつ噴霧ないし滴下されるような容器を用いるのが好ましい。
一方、除去剤は前記塗布剤を洗い落とすために大量に使用されるので、第2容器としては、除去剤が一度に多くの量を絞り出せるような軟質の容器を用いるのが好ましい。
【実施例】
【0029】
本発明の皮膚用外用剤キットは、温感マッサージ塗布剤と、前記塗布剤を洗い落とすための除去剤からなる。
【0030】
温感マッサージ塗布剤:
前記塗布剤は、マッサージを行う際の潤滑油として、被験者の手足、腕、脚および胴の一部に塗布されて使用されるものである。
前記塗布剤は、オリーブ油を主成分とし、該オリーブ油に無辛味品種および辛味品種の乾燥唐辛子から抽出したカプシノイド化合物およびカプサイシンなどが含有されたものである。
【0031】
実施例1〜10:
まず、前記塗布剤に含有されたカプシノイド化合物の含有量と、血流改善効果との関係について調べた。
本実施例1〜10では、辛味品種の乾燥唐辛子を0.3重量部と、無辛味唐辛子の乾燥種子を磨り潰し、これをオリーブ油に含有させた塗布剤を用いた。
実施例1〜10に用いる塗布剤として、オリーブ油100重量部に対して、無辛味唐辛子が0.1重量部毎に0.2〜0.5重量部、および1.0重量部毎に1.0〜6.0重量部を含有したものをそれぞれ作成した。
【0032】
30歳代〜40歳代の女性の被検者10名に対し、3日間に分けて、前記各塗布剤ごとに、該塗布剤を用いて両足および両脚のマッサージを合計30分間行った。なお、マッサージに用いる塗布剤の量は同一とし、マッサージの手順や方法も極力同じになるように行った。
【0033】
前記各被検者のマッサージ前の足の甲の表面温度を放射温度計(いわゆる、非接触温度計)で測定したところ、平均体温は25.7℃であった。前記マッサージの約30分後に被検者の同一の部分を測定した。
【0034】
図1は、無辛味唐辛子の重量部と被検者の平均測定温との関係を示す。
図1に示すように、オリーブ油100重量部に無辛味唐辛子を0.2〜0.4重量部を含有させた塗布剤を用いた場合(実施例1〜実施例3)には、被検者の平均測定温に殆ど変化は見られなかった。
一方、無辛味唐辛子が0.5重量部(実施例4)を超えると被検者の平均測定温が急激に上昇した。
さらに、無辛味唐辛子が5.0重量部(実施例9)を超えると平均測定温が28.0℃付近で一定となった。
【0035】
この結果から、前記被検者の体温の上昇は、無辛味唐辛子に含まれるカプシノイド化合物によって、血流が改善されたと推察される。
また、無辛味唐辛子の乾燥種子が0.5重量部(実施例4)未満であると、血流改善の効果が十分に得られない一方、5.0重量部(実施例9)を超えても効果が増加しなかった。
【0036】
実施例11〜20:
つぎに、塗布剤に含有されたカプサイシンの含有量と、被検者が感じた温感について調べた。
本実施例11〜20では、無辛味唐辛子の乾燥種子を3.0重量部と、辛味唐辛子の乾燥種子を磨り潰し、これらをオリーブ油に含有させた塗布剤を用いた。実施例11〜20に用いる塗布剤として、オリーブ油100重量部に対して、前記辛味唐辛子を0.02重量部、0.03重量部,0.05重量部含有させたもの、および0.1重量部毎に0.1重量部〜0.7重量部を含有させたものをそれぞれ作成した。
【0037】
30歳代〜40歳代の女性の被検者10名に対し、3日間に分けて、前記各塗布剤ごとに、該塗布剤を用いて両足および両脚のマッサージを合計30分間行った。前記マッサージは、前述した実施例1〜10と同様の方法で行った。
【0038】
前記マッサージ後、被検者に対して温感についてアンケートを行った。
図2Aは、温感を感じたと答えた人数と辛味唐辛子の添加量との関係を示す。
図2Aに示すように、オリーブ油100重量部に辛味唐辛子を0.02および0.03重量部を含有させた塗布剤を用いた場合(実施例1および実施例2)、温感を感じた被検者は殆どいなかった。
前記辛味唐辛子が0.05重量部(実施例3)を超えると急激に温感を感じる人の数が増加し、0.4重量部(実施例7)以上では全員が温感を感じた。
【0039】
一方、無辛味品種の乾燥種子が0.05重量部(実施例3)未満であると、被検者が温感を殆ど感じないことが分かった。
【0040】
実施例21〜30:
さらに、塗布剤に含有されたカプサイシンの含有量と被検者が感じた刺激感について調べた。
本実施例21〜30では、前述した実施例11〜20のマッサージ中に、被検者に対して唐辛子による刺激を感じるか否かのアンケートを、それぞれの場合に分けて行った。
【0041】
図2Bは、刺激を感じたと答えた人数と辛味唐辛子の添加量との関係を示す。
図2Bに示すように、オリーブ油100重量部に辛味唐辛子を0.02〜0.4重量部(実施例21〜実施例27)を含有させた塗布剤を用いた場合、刺激を感じた被検者は殆どいなかった。
前記辛味唐辛子が0.5重量部(実施例28)を超えると急激に刺激を感じる人数が増加し、0.7重量部(実施例30)においては被検者全員が痛みに近い強い刺激を訴えた。
【0042】
実施例21〜30の結果から、辛味品種の乾燥唐辛子が0.5重量部(実施例28)を超えると皮膚表面に強い刺激を感じることが分かった。
【0043】
したがって、実施例11〜20および実施例21〜30の結果から、温感を感じると共に強い刺激や痛みを感じない辛味唐辛子の含有量としては、オリーブ油100重量部に対して辛味唐辛子0.05〜0.5重量部が適していることが分かった。
【0044】
前記実施例1〜実施例30の結果に基づき、温感マッサージ塗布剤としては、オリーブ油100重量部に対し、無辛味品種の唐辛子の乾燥種子の紛砕物を0.5〜5.0重量部、および辛味品種の乾燥唐辛子の紛砕物を0.05〜0.5重量部含有することで、被検者に対して強すぎる刺激感を与えることなく、血流の改善および温感を与えることができると推察される。
【0045】
実施例31〜40:
つぎに、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せについて調べた。
図3Aに示すように、本実施例31〜40では、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せを、それぞれ段階的に増加させた塗布剤を作成して用いた。無辛味唐辛子および辛味唐辛子の乾燥種子をそれぞれ磨り潰し、これらをオリーブ油100重量部に含有させた塗布剤を用いて、前述した実施例1〜10と同一の人物および同様の方法でマッサージを行い、前記測定温度、温感および刺激について調べた。
【0046】
図3Aに示す実施例31〜33、つまり、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せが、0.2重量部と0.02重量部、0.3重量部と0.03重量部、0.4重量部と0.04重量部では、被検者の平均測定温に殆ど変化は見られなかった。
一方、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せが、実施例34〜実施例38、つまり、0.5重量部と0.05重量部、1.0重量部と0.10重量部、2.0重量部と0.20重量部、3.0重量部と0.30重量部、4.0重量部と0.40重量部の順に増量させるに従い平均測定温が順次上昇した。
さらに、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せが、実施例39つまり5.0重量部と0.50重量部を超えると平均測定温が27.9℃付近で一定となった。
【0047】
一方、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せが0.5重量部と0.05重量部(実施例34)を超えると急激に温感を感じた人の数が増えた。
また、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せが5.0重量部と0.50(実施例39)を超えると急激に刺激を訴える人の数が増えた。
【0048】
実施例41〜50:
さらに、無辛味唐辛子と辛味唐辛子との組合せを、無辛味唐辛子の含有量を段階的に増量させると共に、辛味唐辛子の含有量を段階的に減少させた塗布剤を作成した。前記塗布剤を用いて、前述した実施例4と同一の人物および同様の方法でマッサージを行った後、測定温度、温感および刺激について調べた。
【0049】
図3Bに示す実施例41〜50のように、無辛味唐辛子を0.2〜6.0重量部まで増加させると共に、各無辛味唐辛子に組み合わせる辛味唐辛子を0.80〜0.04までそれぞれ減少させた。
図3Bに示すように、測定温度は、全ての組合せにおいて概ね一定であった。刺激を訴えた人の数は、辛味唐辛子が0.80重量部から0.50重量部(実施例41〜実施例44)に減少するまで多かった。
【0050】
以上の結果から、オリーブ油100重量部に対して、無辛味唐辛子が0.5〜5.0重量部と、辛味唐辛子が5.0〜0.05重量部との組合せ(実施例44〜実施例49)の範囲が測定温度、温感および刺激に対して良好であった。
このことから、オリーブ油100重量部に対して、実施例44〜実施例49に対応する無辛味品種の唐辛子の乾燥種子0.5〜5.0重量部と、辛味品種の乾燥唐辛子0.05〜0.5重量部とを組み合わせて含有させることで、激しい刺激を伴わなず、かつ、血流改善による温感効果を体感することができることが分かった。
【0051】
実施例51〜60(他の含有物を含む塗布剤):
つぎに、前記実施例31〜40で作成した各塗布剤に、図6Aに示すように、天然パパイン、白金ナノコロイド、ビタミンE、ビタミンC、挂枝および紅花からなる他の含有物をそれぞれ含有させて、実施例51〜60に用いるための塗布剤を作成した。
前記他の含有物は、図6Aに示すように、2種類の唐辛子が増加するに従い増加するように、オリーブ100重量部に対して天然パパイン1.0重量部〜2.0重量部、白金ナノコロイド0.03重量部〜0.30重量部、ビタミンE0.1重量部〜0.3重量部、ビタミンC1.0重量部〜3.0重量部、挂枝1.0重量部〜2.0重量部および紅花0.05重量部〜0.30重量部をそれぞれ含有させた。
前記他の含有物が含有された塗布剤を用いて、前述した実施例1〜10と同一の人物および同様の方法でマッサージを行い、前記測定温度について調べた。
【0052】
図3Cに示すように、各実施例51〜60の測定温度が、図3Aに示す実施例31〜40に対応する測定温度に対してそれぞれ若干上昇した。
被検者は、前述した実施例31〜40で用いたオリーブ油に唐辛子のみを含有させた塗布剤によるマッサージに比べて、マッサージ後の温感が長時間持続すると共に、肌がすべすべした、肌に艶が出たなどの感想を述べた。また、他の含有物の含有量が多くなる程、肌のすべすべ感や肌の艶などが向上したという感想が多くの被検者から発言された。
これは、塗布剤に、天然パパイン、白金ナノコロイド、ビタミンE、ビタミンC、挂枝および紅花を含有させることで、各含有物に含まれる特有の効果が発揮されたものであると推察される。
【0053】
除去剤:
前記塗布剤はオリーブ油が主成分であるので、マッサージ後に塗布剤をタオルなどで拭き取ってもオリーブ油によるぬめり感が残る。
そこで、マッサージ後に除去剤を用いて塗布剤を除去する。すなわち、マッサージ後に、前記除去剤を塗布することで、オリーブ油を主成分とする塗布剤を除去剤に吸油させ、その後、該除去剤を拭い取ることにより、塗布剤を被検者の身体から除去する。
前記除去剤は、モンモリロナイトおよび水を主成分とし、オリーブ油および白炭粉末が含有されている。
【0054】
実施例61〜70:
ここで、特に、マッサージ店などにおいては、顧客が塗布剤のオリーブ油によるぬめり感による不快感を感じながら帰宅すると、顧客に不快な印象が残りリピーターが減少する原因となるおそれがある。そのため、マッサージ後に前記ぬめり感を取り除くことは重要である。
本発明者は、前記除去剤にオリーブ油を含有させることで、オリーブ油の親和性を用いて塗布剤のオリーブ油を除去剤に含有されたモンモリロナイトや白炭に吸着させるという考えに至った。
【0055】
そこで、除去剤に含有させる最適なオリーブ油の量について調べた。
図6Bに示すように、モンモリロナイト、水および備長炭からなる白炭粉末を含有した除去剤を作成した。前記除去剤は、実施例61〜70に示すように、モンモリロナイト40重量部に対して、オリーブ油を0.5重量部毎に0.5重量部〜7.0重量部を含有させた。一方、オリーブ油の増加に伴い、前記除去剤に水180重量部〜150重量部を徐々に減少させるように含有させると共に、白炭粉末0.1重量部〜1.0重量部を徐々に増加させるように含有させた。前記白炭粉末の粒径は、オリーブ油の含有量の増加に伴い10μmから60μmまで増加するように含有させた。
【0056】
まず、前記被検者10名に対し、温感マッサージ塗布剤として、オリーブ油100重量部に対し、無辛味品種の唐辛子の乾燥種子4.0重量部および辛味品種の乾燥唐辛子を0.3重量部が含有されたものを用いて、実施例1〜10と同一の人物および同様な方法で30分間マッサージを行った。
ついで、前記各除去剤を被検者の体に塗布した後に拭い取り、被検者にインタビューを行った。
【0057】
図4に示すグラフは、実施例61〜実施例70として、前記0.5〜7.0重量部を基本除去剤に塗布した除去剤を用いた後のインタビューにおいて、オリーブ油のぬめり感を感じなかった被検者の人数をそれぞれ示している。
図4に示すように、前記基本塗布剤にオリーブ油を0.5重量部含有した除去剤を用いた場合(実施例61)では、ぬめり感を感じない人の数が少なく、殆どの被検者がぬめり感を感じた。一方、オリーブ油の含有量が1.0重量部(実施例62)を超えるとぬめり感を感じない人の数が増加し、2.0重量部(実施例64)をピークとして次第に減少した。さらに、オリーブ油の含有量が4.0重量部(実施例68)以上ではぬめり感を感じない人の数が急激に減少した。
【0058】
この結果から、オリーブ油の親和性により塗布剤中のオリーブ油が除去剤に吸着されることにより、ぬめり感を感じなかった人数が増加したと推察できる。
一方、除去剤中のオリーブ油の含有量が多すぎると、除去剤に吸着されるオリーブ油の量が減少し、ぬめり感が残ってしまうことが分かる。
したがって、除去剤に含有させるオリーブ油は、実施例62〜66に対応する1.0〜3.0重量部程度が適当であろうと推察される。
【0059】
ここで、白炭の粒子径が50μmを超えるとごつごつした感じを訴える被検者が増加した。このことから、白炭の粒子径は、50μm以下に設定するのが好ましいと推察される。一方、白炭の粒子径が小さすぎるとオリーブ油の吸油性能が低下するので、10μm以上に設定するのが好ましい。
【0060】
石鹸を含有した除去剤:
つぎに、除去剤に石鹸1〜10重量部を含有させた場合について調べた。
図6Cに示すように、前述した実施例61〜70の除去剤に、オリーブを主成分として作成した石鹸10重量部〜1重量部をそれぞれ含有させた石鹸を含有した除去剤を作成し、実施例71〜80の試験を行った。
被検者は、実施例61〜70と同様なマッサージを受けた後、前記石鹸を含有した除去剤を塗布され、シャワーを用いて両足および両脚を洗った。その後、被検者にインタビューを行った。
【0061】
実施例71〜80において、被検者全員が、シャワーで塗布剤が落ち、ぬめり感のないすっきりとした感じを得たと答えた。なお、実施例79および実施例80では、石鹸による泡立ちが少なかったが、シャワーを用いて塗布剤を十分に洗い流すことができたという感想であった。
このことから、除去剤に石鹸を含有させることで塗布剤が落とされ、ぬめり感を除去することができることが分かった。また、石鹸の含有量は、モンモリロナイトおよび白炭の吸油性能を阻害せず、かつ、塗布剤を十分に洗い落とせる量として、モンモリロナイト40重量部に対して1〜10重量部に設定するのが好ましい。
【0062】
ここで、マッサージ店などでは石鹸を洗い流すためのシャワー室などが別途必要となり、設備費のコストアップに繋がる。
一方、石鹸を含有しない除去剤を用いた場合には、除去剤で除去されずに肌面に残った塗布剤に含有された種々の含有物が身体にしみ込み、塗布剤の温感効果などが持続されることが期待できる。また、モンモリロナイトが肌に若干残るので、肌が白く見えるから、美白効果も期待できる。
【0063】
ここで、前記塗布剤および除去剤は、以下に述べる専用の容器に封入すれば、より一層使い易くなる。
第1容器1:
前記塗布剤は、たとえば、図5Aに示す樹脂製の第1容器1に封入されている。前記第1容器1は、容器本体10とノズル13を有する摺動部11とを備えている。摺動部11の頭部12を下方向Z2に向って押下すると、二点鎖線で示すように、容器本体10から吸い上げられた塗布剤がノズル13から吐出される。
前記頭部12への力を緩めると、摺動部11が上方向Z2の初期状態に戻る。頭部12の押下を繰り返すことで、連続的に塗布剤を少量づつ吐出することができる。
【0064】
第2容器2:
前記除去剤は、たとえば、マヨネーズやケチャップの容器の形状のような第2容器2に封入されている。前記第2容器2は、前記第1容器1よりも軟質の樹脂で形成されている。前記除去剤は大量に使用されるので、第2容器2を絞るように握ることで、一度に多量の除去剤を吐出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の皮膚用外用剤キットは手足、腕、脚および胴のマッサージに用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1:第1容器
2:第2容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手足、腕、脚および胴の一部に塗布され、塗布した状態でマッサージを行う際の潤滑油として、無辛味品種および辛味品種の乾燥唐辛子から抽出したカプシノイド化合物およびカプサイシンを含有するオリーブ油を主成分とする温感マッサージ塗布剤と、
モンモリロナイト、水およびオリーブ油を主成分とし、白炭粉末を含有し、前記塗布剤を洗い落とす除去剤と、
を包含する皮膚用外用剤キット。
【請求項2】
請求項1において、前記温感マッサージ塗布剤のオリーブ油100重量部に対し、前記唐辛子として、無辛味品種の唐辛子の乾燥種子0.5〜5.0重量部および辛味品種の乾燥唐辛子を0.05〜0.5重量部を含有することを特徴とする皮膚用外用剤キット。
【請求項3】
請求項2において、前記除去剤は、モンモリロナイト40重量部に対し水150〜180重量部、白炭粉末0.1〜1.0重量部およびオリーブ油1.0〜3.0重量部を含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項4】
請求項3において、前記白炭は備長炭である皮膚用外用剤キット。
【請求項5】
請求項4において、前記白炭粉末は平均粒子径が10μm〜50μmである皮膚用外用剤キット。
【請求項6】
請求項5において、前記塗布剤は天然パパインを含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項7】
請求項6において、前記塗布剤は白金のナノコロイドを含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項8】
請求項7において、前記塗布剤はビタミンEを含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項9】
請求項8において、前記塗布剤はビタミンCを含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項10】
請求項9において、前記塗布剤は挂枝を含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項11】
請求項10において、前記塗布剤は紅花を含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項12】
請求項11において、前記除去剤は石鹸1〜10重量部を含有する皮膚用外用剤キット。
【請求項13】
請求項12において、前記温感マッサージ塗布剤が第1容器に封入されており、前記除去剤が前記第1容器よりも軟質の第2容器に封入されている皮膚用外用剤キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74009(P2011−74009A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226723(P2009−226723)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【特許番号】特許第4455667号(P4455667)
【特許公報発行日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(300046452)
【Fターム(参考)】