説明

皮膚用粘着剤組成物、生体電極用粘着剤組成物、経皮吸収用粘着剤組成物、皮膚用テープ、生体電極及び経皮吸収製剤

【課題】乾燥及び湿潤皮膚に対する粘着力に優れ、かつ剥がすときに皮膚を傷つけない適度の粘着力及び凝集力を有し、皮膚への糊残りもない、皮膚用粘着剤組成物、生体電極用粘着剤組成物及び経皮吸収用粘着剤組成物、並びに、それらを用いた皮膚用テープ、生体電極及び経皮吸収製剤を提供することを目的とし、特に、湿潤皮膚に対する良好な粘着性を有する皮膚用粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】皮膚用粘着剤組成物は、アクリル酸50〜88重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル8〜40重量%、及び極性モノマー(アクリル酸を除く)1〜42重量%よりなる成分のみで構成されるアクリル系共重合体100重量部と多価アルコール150〜600重量部からなる組成物であり、該組成物が金属キレート架橋剤で後架橋されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥及び湿潤皮膚に対する十分な接着力を有し、皮膚から剥離する際に糊残りのない、皮膚用粘着剤組成物、生体電極用粘着剤組成物及び経皮吸収用粘着剤組成物、並びに、それらを用いた皮膚用テープ、生体電極及び経皮吸収製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガーゼや包帯、カテーテル、輸液チューブなどを人体に固定するために、医療用粘着テープが使用されている。また、心電図測定の際には電導性の医療用テープが使用されている。さらに、種々の経皮吸収製剤が開発、上市されている。
このような皮膚に貼付することを目的とする医療用貼付剤には、皮膚面への良好な接着性を確保するために、一般にゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤が用いられている。
【0003】
これらの粘着剤は、通常、乾燥した皮膚面への接着性を確保するように設計されているので、湿潤した皮膚面に対しては充分な接着性を期待することができない。そこで、透湿性の粘着剤を用いたり、吸水性高分子を粘着剤層中に配合したり、微細な貫通孔を基材や粘着剤層に形成して湿分を除去しやすくするなど、湿潤した皮膚面接着を改良する工夫も行われているが、未だ充分な接着性が得られていないのが実情である。
【0004】
さらに、上記通常の医療用貼付剤は乾燥した皮膚面への接着性が良好である反面、使用後に皮膚面から貼付剤を剥離除去する際に、痛みを伴ったり、繰り返し同一部位に貼付、剥離を繰り返すと物理的刺激が生じることもある。
【0005】
このような剥離除去時の痛みや皮膚刺激を改善するために、例えば、特開平03−220120号公報、特開平06−023029号公報等に記載されている様に、粘着剤層中に多量の液状可塑剤を含有させたゲル状粘着剤が開発されている。
しかし、この粘着剤を用いた経皮吸収製剤の場合、粘着剤層の保型性を高めることができるが、皮膚への粘着力と、粘着剤の凝集力をバランスさせた製剤設計が困難であるという欠点を有している。また、架橋剤と薬剤が反応して薬剤安定性が悪化する等の欠点も有していた。
【0006】
また、このような皮膚刺激性の点で優れたゲル状粘着剤であっても、粘着剤自身は疎水性であり、湿潤皮膚への粘着力は不十分であった。
【0007】
【特許文献1】(特開平03−220120号公報)
【0008】
【特許文献2】(特開平06−023029号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、乾燥及び湿潤皮膚に対する粘着力に優れ、かつ剥がすときに皮膚を傷つけない適度の粘着力及び凝集力を有し、皮膚への糊残りもない、皮膚用粘着剤組成物、生体電極用粘着剤組成物及び経皮吸収用粘着剤組成物、並びに、それらを用いた皮膚用テープ、生体電極及び経皮吸収製剤を提供することを目的とし、特に、湿潤皮膚に対する良好な粘着性を有する皮膚用粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の皮膚用粘着剤組成物は、アクリル酸50〜88重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル8〜40重量%、及び極性モノマー(アクリル酸を除く)1〜42重量%よりなる成分のみで構成されるアクリル系共重合体100重量部と多価アルコール150〜600重量部からなる組成物であり、該組成物が金属キレート架橋剤で後架橋されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の皮膚用粘着剤組成物は、前記極性モノマーが、N−ビニル−2−ピロリドン、酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチル又はアクリル酸2−ヒドロキシエチルより選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の皮膚用粘着剤組成物は、前記多価アルコールが、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の皮膚用粘着剤組成物は、前記金属キレート架橋剤が、アルミニウムアセチルアセトネート、水酸化アルミニウムゲル又はアルミニウムグリシネートより選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の生体電極用粘着剤組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物100重量部に、水5〜60重量部及び無機塩0.5〜30重量部が添加されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の経皮吸収用粘着剤組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物中に、薬物又は化粧用皮膚有価物が含有されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の経皮吸収用粘着剤組成物は、請求項6に記載の経皮吸収用粘着剤組成物100重量部に、水0.1〜50重量部が添加されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の経皮吸収用粘着剤組成物は、請求項7記載の経皮吸収用粘着剤組成物に経皮吸収促進剤が添加されてなることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の皮膚用テープは、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の生体電極は、請求項5に記載の生体電極用組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなることを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の経皮吸収製剤は、請求項6〜8のいずれかに記載の経皮吸収用粘着剤組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の請求項1記載の皮膚用粘着剤組成物は、アクリル酸50〜88重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル8〜40重量%、及び極性モノマー(アクリル酸を除く)1〜42重量%よりなる成分のみで構成されるアクリル系共重合体100重量部と多価アルコール150〜600重量部からなる組成物であり、該組成物が金属キレート架橋剤で後架橋されてなる。
上記経皮吸収用粘着剤は、親水性が高いアクリル酸を主モノマーとすることで高い湿潤面粘着性を達成する。上記アクリル酸は、その1部が(例えば、20〜50モル%)水酸化ナトリウムなどの塩基により中和されている、いわゆる部分中和アクリル酸であってもよい。
【0021】
上記アクリル酸の共重合体中の割合は50〜88重量%であり、好ましくは70〜85重量%である。割合が88重量%を超えると乾湿両皮膚、特に湿潤皮膚への粘着性が弱くなる。また、50重量%未満では共重合体の疎水性が強すぎ湿潤皮膚に対する高粘着性が発揮できなくなる。
【0022】
本発明においては、上記アクリル系共重合体を構成する第2モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシルを8〜40重量%必要とする。アクリル酸2−エチルヘキシルは上記皮膚用粘着剤組成物の粘着物性を向上させることを目的として用いられ、上記皮膚用粘着剤組成物に適度の疎水性を与えるので、アクリル酸(主モノマー)と組み合わせた場合、乾燥、湿潤両皮膚に対する粘着性が向上し、さらには、後述する経皮吸収促進剤、極性が異なる広範囲の薬物等の溶解に好都合となる。
アクリル酸2−エチルヘキシルの共重合体中の割合は8〜40重量%であり、割合が40重量%を超えると上記アクリル系共重合体の疎水性が強くなり、上記皮膚用粘着剤組成物の吸水性、湿潤面粘着性、薬物溶解性等が低下する。また8重量%未満では上記皮膚用粘着剤組成物に適度の疎水性を与えることができ難くなる。
【0023】
上記アクリル系共重合体において、アクリル酸2−エチルヘキシルよりアルキル鎖長の短いアクリル酸アルキルエステル、例えば、アクリル酸ブチルを第2モノマーとして使用した場合、共重合体の疎水化が不十分となり、乾燥皮膚に対する粘着性が低下するので不適である。また、アルキル鎖長の長いアクリル酸ドデシルを第2モノマーとして使用した場合、共重合体の疎水性が強くなりすぎてアクリル酸との均一溶液を生成し難く、良好な共重合体を得ることが困難となる。
【0024】
上記アクリル系共重合体においては、第3モノマーとして1〜42重量%の極性モノマー(但し、アクリル酸は除く)が必要である。上記極性モノマーは、本発明の皮膚用粘着剤組成物の目的とする性質を損なうことなく、更に高い凝集力を得る、さらに粘着剤組成物中への薬物の溶解性を向上させることを目的として使用される。
上記極性モノマーの共重合体中の割合は1〜42重量%であり、割合が1重量%未満では共重合体に高い凝集力を与えることができなくなり、本発明の皮膚用粘着剤組成物の目的とする再剥離時の糊残りを防止することが困難となる。また、割合が42重量%を超えると粘着剤組成物の極性が高くなりすぎて皮膚に対する濡れ性が低下し、適当な粘着性が得られなくなる。
【0025】
上記極性モノマーとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリルアミド、等が挙げられる。これらは単独で用いられても併用されてもよく、請求項2記載の皮膚用粘着剤組成物においては、N−ビニル−2−ピロリドン又はアクリル酸2−ヒドロキシエチル酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチルより選ばれる少なくとも一種以上が用いられる。
極性モノマーとしてこれらのモノマーを用いることで、上記アクリル系共重合体の凝集力が適度に高まり、皮膚用粘着剤組成物としての凝集力と粘着力のバランスがますます良好となる。また、経皮吸収用粘着剤組成物として用いる場合には薬物の粘着剤への溶解性が高まりきわめて好都合である。
【0026】
上記アクリル系共重合体はそれ自身では硬すぎて良好な粘着物性を有しない。本発明の皮膚用粘着剤組成物を得るためには、上記共重合体100重量部に対し、可塑剤として多価アルコールを150〜600重量部添加し、さらに共重合体を金属キレート化合物で後架橋する必要がある。そのことにより乾燥、湿潤両面に良好な粘着性を有し、しかも十分な凝集力を有する粘着剤組成物となる。上記多価アルコールの添加量が150重量部未満であると十分な可塑化作用を示さず粘着性が弱くなりすぎ、600重量部を超えると共重合体が過剰に可塑化されての凝集力と粘着力のバランスを取りにくくなる。
【0027】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、これらは単独で用いられても併用されてもよい(請求項3)。
【0028】
上記金属キレート化合物は、上記アクリル系共重合体をイオン架橋するために用いられる。本発明の皮膚用粘着剤組成物が目的とする適度の凝集力と粘着性を得るためには、金属キレート化合物が共重合体100重量部に対し0.05〜2.0重量部添加されるのが好ましい。
上記金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムグリシネート、水酸化アルミニウムゲル等が挙げられ、これらは単独で用いられても併用されてもよい(請求項4)。
【0029】
上記金属キレート化合物を用いて共重合体と多価アルコールの混合物を後架橋させた組成物は乾湿両皮膚への粘着性に優れ、例えば、該組成物を使用した皮膚用テープは、汗をかいた皮膚、あるいは貼付後の水仕事においても剥がれず、皮膚刺激性などに優れるので、ドレッシング、絆創膏等の医療用途に好適に用いられる。
上記皮膚用テープは、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなる(請求項9)。
【0030】
請求項5記載の生体電極用粘着剤組成物は、請求項1〜4の皮膚用粘着剤組成物100重量部に対し、水5〜60重量部及び無機塩0.5〜30重量部を添加することにより、導電性、皮膚粘着性、低皮膚刺激性等のバランスの取れた導電性粘着剤組成物となり、生体電極用として好適に用いられる。
【0031】
水の添加量は、5重量部未満であると導電性が不十分となり、60重量部を超えると粘着剤組成物の剛性が不足し機械的強度が落ちるという欠点が生じるとともに粘着性も低下する。
上記無機塩は、導電性付与のために生体電極用粘着剤組成物には不可欠であり、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
上記無機塩の添加量は、0.5重量部未満であると導電性が不十分となり、30重量部を超えると無機塩の結晶が析出して粘着剤組成物の粘着性が低下する。
【0032】
上記生体電極用粘着剤組成物は、導電性粘着剤層として成型され、心電計、筋電計等の生体電極として用いられる。上記導電性粘着剤層の厚さは、100〜1000μmが好ましい。
請求項10記載の生体電極は、請求項5記載の生体電極用粘着剤組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなる。
【0033】
請求項6記載の経皮吸収用粘着剤組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物中に、薬物又は化粧用皮膚有価物が含有されている。
上記薬物としては、例えば、5−FU等の制ガン剤、塩酸グラニセトロン等の制吐剤、解熱鎮痛消炎薬、骨格筋弛緩薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、各種ホルモン類、各種ビタミン類等が挙げられる。
上記薬物の添加量は、適度な粘着力、凝集力及び薬効を得るため、経皮吸収用粘着剤組成物中0.05〜40重量%が好適である。
また、上記経皮吸収用粘着剤組成物は、特に親水性薬物の高い飽和溶解度を実現するものであり、その結果、高い薬物経皮吸収性を達成する。
【0034】
上記化粧用皮膚有価物としては、例えば、油溶性甘草エキス等の美白成分;酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等の抗しわ成分;ビタミンE、カプサイン等の血行促進成分;ビタミンD2、ビタミンD、ビタミンK等のビタミン類;ヒアルロン酸などの保湿成分などが挙げられる。これらの化粧用皮膚有価物の含有量は、その用途に応じて適宜決定される。
【0035】
請求項7に記載の経皮吸収用粘着剤組成物は、請求項6記載の経皮吸収用粘着剤組成物100重量部に、水0.1〜50重量部を添加することにより、皮膚粘着性、低皮膚刺激性、親水性皮膚有価物の経皮吸収性等、バランスの取れた粘着剤組成物となり、経皮吸収用として好適に用いられる。
水の添加量は、0.1重量部未満であると親水性皮膚有価物の溶解性が不十分でその結果、経皮吸収性が不十分となる。50重量部を超えると粘着剤組成物の剛性が不足し機械的強度が落ちるという欠点が生じるとともに粘着性も低下する。
【0036】
請求項8に記載の経皮吸収用粘着剤組成物は、請求項7記載の経皮吸収用粘着剤組成物に経皮吸収促進剤が添加されている。
上記経皮吸収促進剤としては、例えば、メンソール、カンフル、セチルアルコール等のアルコール類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル;モノラウリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン等のグリセリンエステル;ラウリン酸ジエタノールアミド等の酸アミド;ポリエチレングリコールジラウリルエーテル等の中性界面活性剤などが挙げられる。
上記経皮吸収促進剤の添加量は、少なすぎると経皮吸収効果が向上せず、多すぎると粘着性が低下するので、前記アクリル系共重合体100重量部に対して3〜40重量部が好ましい。
【0037】
本発明に使用されるアクリル系共重合体は、例えば、前記モノマー(アクリル酸、アクリル酸2−エチルヘキシル及び極性モノマーのみ)を用いて、ラジカル重合により作製することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合等が採用可能である。特に、溶液重合は分子量分布が比較的狭く、粘着力のバラツキが小さい点で良好である。
本発明の、皮膚用テープ(例えば、ドレッシング、絆創膏等)、生体電極あるいは経皮吸収製剤を作製するには、例えば、上記共重合体溶液に多価アルコール及び架橋剤(金属キレート化合物)を添加し、その他の成分(水、無機塩、薬物又は化粧用有価物質、経皮吸収促進剤等)を適宜目的に応じて加え(但し、水は予め重合溶媒中に含有されていてもよい)、支持体上にナイフコーター、ロールコーター等で塗布し、オーブン温度50〜100℃で、1〜10分乾燥して前記粘着剤組成物よりなる層(粘着剤組成物層)を形成したり、一旦、剥離紙上に粘着剤組成物層を形成後、粘着剤組成物層が支持体に接するようにラミネートすればよい。
また、上記粘着剤組成物中に所定量の水を残存させる場合は、塗布・乾燥温度、乾燥時間を調整すればよい。
【0037】
上記粘着剤組成物層の乾燥後の厚さは、皮膚用テープ(例えば、ドレッシング、絆創膏等)及び経皮吸収製剤の場合は30〜120μmが好ましい。30μm未満では粘着力が弱くなり、一方、120μmを超えると粘着剤の塗布及び乾燥が困難となる。
また、生体電極の場合は100〜1000μmが好ましい。
【0038】
上記支持体としては、厚さ10〜100μmのプラスチックス製成形体が好適であり、織布、不織布、多孔性膜、フィルム、シート等の形態を取りうる。織布、不織布及び多孔性膜は水蒸気透過性が良好な点で、フィルム及びシートはバクテリア遮蔽性及び防水性が良好な点で好適である。
【発明の効果】
【0039】
本発明の皮膚用粘着剤組成物は、アクリル酸50〜88重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル8〜40重量%、及び極性モノマー(アクリル酸を除く)1〜42重量%よりなる成分のみで構成されるアクリル系共重合体100重量部と多価アルコール150〜600重量部からなる組成物であり、該組成物が金属キレート架橋剤で後架橋されてなることを特徴とする。
本発明の皮膚用粘着剤組成物は上記構成となされるので、乾燥及び湿潤皮膚に対する粘着力、特に、湿潤皮膚に対する粘着力に優れ、かつ剥がすときに皮膚を傷つけない適度の粘着力及び凝集力を有し、皮膚への糊残りもない。
また、その他成分(水、無機塩、薬物又は化粧用有価物質、経皮吸収促進剤等)を適宜目的に応じて加えることにより、生体電極用粘着剤組成物及び経皮吸収用粘着剤組成物として使用でき、さらには、それらを用いた皮膚用テープ、生体電極及び経皮吸収製剤を提供することができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において「部」とあるのは、特に断らない限り、重量部を表す。
【0041】
(実施例及び比較例用共重合体の製造−1;水−アセトン混合溶媒を用いる重合)
重合溶媒としては水−アセトン1:1(容積比)の混合溶媒2000ml、重合開始剤としてはパラオキシ硫酸カリウムとピロ亜硫酸カリウムの2:1混合物0.3gを10%水溶液として用いた。下記表1に示す各モノマー所定量(g)と上記重合溶媒を3リットル反応容器内に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、75℃で10時間、重合開始剤を分割添加して重合反応を行った。
【0042】
【表1】

【0043】
(比較例用共重合体の製造−2;親油性アクリル粘着剤の重合)
重合溶媒としては酢酸エチル1500ml、重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル0.3gを10%酢酸エチル溶液として用いた。モノマーとしてはアクリル酸2−エチルヘキシル475gとアクリル酸25gを、3リットル反応容器内に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、75℃で10時間重合開始剤を分割添加して重合反応を行った。得られた共重合体を比較共重合体4とする。
【0044】
実施例1〜5、比較例1〜6
(基本的粘着物性の評価)
固形分10gを含む共重合体溶液、多価アルコール、0.15gの架橋剤(アルミニウムアセチルアセトネートを4%THF溶液として使用)を良く混合した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤組成物層の乾燥厚さが100μmになるよう設定したナイフコーターを使用して、得られた組成物溶液を塗布し、温度90℃で30分間溶媒を乾燥させて粘着シートを作製した。本シートから幅1.2cmのテープを作製し、ベークライト板、及び湿ベークライト板(ベークライト表面をNo.3サンドペーパーで疎面化して凹凸をつけ凹面に水を張って供試)へ貼付し、加重300gのローラーを1往復させて密着させた後、180°方向に300mm/minの速度で剥離し、その際の剥離力を測定した。また、湿ベークライト板剥離後の糊残りをも観察し凝集力を評価した。
得られた結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例6〜10、比較例7、8
(電極用粘着剤物性の評価)
固形分10gを含む共重合体溶液、30gのグリセリンないしは50gのPEG600、0.15gの架橋剤(アルミニウムアセチルアセトネートを4%THF溶液として使用)、並びに、0.7gと10gの塩化ナトリウムを良く混合した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤組成物層の乾燥厚さが500μmになるよう設定したナイフコーターを使用して、得られた組成物溶液を塗布し、所定温度及び所定時間で溶媒を乾燥させて粘着シートを作製した。得られた粘着シートを直径3cmに打ち抜き試料とした。試料上に直径0.5mm、長さ20mmの線状の白金電極2本を1cmの間隔で平行に対峙させてガルバノスタットを用いて直流0.2mAを流すときの抵抗値を求めた。同時に市販の心電計用生体電極を用いて比較試料とした。また皮膚貼付性を評価するため試料を24時間上腕部に貼付し観察した。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

上記結果より、本発明の生体電極用粘着剤組成物は、貼付性、導電性に優れ、生体電極用に適切な性質を有していることが分かる。
【0048】
実施例11〜15、比較例9〜11
(粘着剤組成物の評価)
共重合体1、2、比較共重合体4に関して、5−FUおよび塩酸グラニセトロンをモデル薬物として用い、各種共重合体よりなる粘着剤組成物中での薬物溶解性を試験した。
共重合体溶液、グリセリン、アルミニウムアセチルアセトネート、5−FUまたは塩酸グラニセトロンを混和して支持体上に流延し、溶媒を80℃、10分加熱(実施例11、12,14、15、及び比較例11)並びに、90℃、5分加熱(実施例13、及び比較例9,10)により除去して試料を作製した。(経皮吸収粘着剤層の厚さ;100μm)さらに経皮吸収促進剤として1−メントール、セチルアルコールを添加した試料も作成した。
得られた薬物入り試料を室温で4週間保存し結晶析出の有無を観察した。さらに上腕部に24時間貼付した後、粘着剤組成物の物性を観察した。
結果を4表および5表に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
実施例16〜19、比較例12〜14
(5−FU及び塩酸グラニセトロンのIn vitro経皮吸収性評価)
実施例11、12,14及び15、比較例9、10及び11に用いた薬物入りシートを用いてIn vitro経皮吸収試験を実施した。
上記6試料を用いてラット皮膚透過試験を行った。拡散断面積は3.14cmのFranz型拡散セルを用いて試験を行った。透過膜としてはウイスター系雄性ラット腹部皮膚を剃毛して用い、レセプター溶液には、生理的食塩水を用いた。ラット皮膚の角質側にサンプルを貼付し、その後一定時間ごとに100μlのレセプター溶液を採取しラット皮膚を拡散し、レセプターに移行する薬物の濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定した。
【0052】
(HPLC測定条件)
カラム: ODS型逆相分配カラム。
移動相: 5FU――リン酸バッファー(pH3.0)+アセトニトリル
(99:1、体積比)
塩酸グラニセトロン―同上 (20:80、体積比)
流速: 5FU: 0.5ml/min
塩酸グラニセトロン: 1.0ml/min
検出: 5FU: 260nmの紫外光
塩酸グラニセトロン: 240nmの紫外光
【0053】
(In vitro経皮吸収試験結果)
得られた結果を図1(5FU)及び図2(塩酸グラニセトロン)に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 5FUの経皮吸収をラット皮膚を用い評価した結果のグラフ
【図2】 塩酸グラニセトロンの経皮吸収をラット皮膚を用い評価した結果のグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸50〜88重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル8〜40重量%、及び極性モノマー(アクリル酸を除く)1〜42重量%よりなる成分のみで構成されるアクリル系共重合体100重量部と多価アルコール150〜600重量部からなる組成物であり、該組成物が金属キレート架橋剤で後架橋されてなることを特徴とする皮膚用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記極性モノマーが、N−ビニル−2−ピロリドン、酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチル又はアクリル酸2−ヒドロキシエチルより選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1記載の皮膚用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記多価アルコールが、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記金属キレート架橋剤が、アルミニウムアセチルアセトネート、水酸化アルミニウムゲル又はアルミニウムグリシネートより選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物100重量部に、水5〜60重量部及び無機塩0.5〜30重量部が添加されてなる生体電極用粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物中に、薬物又は化粧用皮膚有価物が含有されていることを特徴とする経皮吸収用粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の経皮吸収用粘着剤組成物100重量部に、水0.1〜50重量部が添加されてなる経皮吸収用粘着剤組成物。
【請求項8】
さらに経皮吸収促進剤が添加されてなる請求項7記載の経皮吸収用粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用粘着剤組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなる皮膚用テープ。
【請求項10】
請求項5に記載の生体電極用組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなる生体電極。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の経皮吸収用粘着剤組成物よりなる層が、支持体の少なくとも片面に設けられてなる経皮吸収製剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−290858(P2006−290858A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140344(P2005−140344)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(501296380)有限会社コスメディ (42)
【Fターム(参考)】