説明

皮膚疾患治療用アジスロマイシン

【解決手段】 アジスロマイシンは、臨床的な抗生物質効果を生み出すとして従来から知られる用量よりも低い用量にて全身的に投与した場合、座瘡および他の皮膚状態の治療においてより高い効能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全身的な薬物療法による皮膚疾患の治療分野に関連するものである。特に本発明は、アジスロマイシンの全身的投与による治療に反応性の高い座瘡等の皮膚疾患の治療に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は時に、様々な炎症性および非炎症性の疾患を患う。そうした疾患の1つである座瘡は、様々な種類の障害によって特徴付けられる一般的な疾患である。典型的に影響される領域は、皮脂腺が最も大きく、数が多く、そして最も活発な皮膚領域である。座瘡に関連する障害は通常、非炎症性または炎症性のいずれかに分類される。非炎症性障害は面皰を含む。面皰は開放および閉鎖の2つの形態として現れる。面皰は、異常な濾胞の分化から生じると考えられている。毛包口から放出および分泌される代わりに、異常に落屑された細胞(角化細胞)が異常に粘着性となり、濾胞腺中でマイクロコメドまたは極微の過角化性の栓を形成する。それらマイクロコメドの進行が、可視的な面皰を引き起こす。
【0003】
閉鎖面皰では、炎症の最初の兆候が濾胞の壁に沿って現れ、それがやがて破裂する。破裂が一旦生じると、面皰の内容物は真皮中へ押し出されて、さらなる炎症反応を引き起こす。真皮中での深度および炎症の度合いに応じて、炎症による障害は膿疱、丘疹、小結節、または嚢胞として現れる。丘疹は炎症して、赤く、直径が2〜5mmの頭部の無い柔らかい隆起である。膿疱は表面的でひどく化膿した物質を含み、中心に白または黄色の頭部を有する丘疹である。小結節は直径5mmまたはそれ以上と大きくて固い隆起であり、皮膚の表面または下に存在して痛いことがあり、数ヶ月にわたって持続することもある。嚢胞は小結節と類似しているが、膿で満たされている。
【0004】
本願明細書の目的からすると、明記しない限り、「座瘡」という用語は既知の全ての種類の座瘡を含む。座瘡の種類は、例えば、尋常性座瘡、嚢胞性座瘡、臭素座瘡、塩素座瘡、コメドナルアクネ(comedonal acne)、集簇性座瘡、化粧品性座瘡、アクネエスティバリス、電撃性にきび(acne fulminans)、ハロゲン瘡(halogen acne)、ヨーダイドアクネ(iodide acne)、ケロイド座瘡、機械的座瘡、結節性座瘡、非炎症性座瘡、丘疹性にきび、ポマード座瘡、プリメンストラルアクネ(premenstral acne)、膿疱性座瘡、痘瘡状座瘡、アクネベネナータ(acne venenata)、プロピオニックアクネ(propionic acne)、アクネエクスコリー(acne excoriee)、グラム陰性座瘡(gram negative acne)、ステロイド座瘡、炎症性座瘡、および結節型嚢胞性座瘡を含む。
【0005】
最も軽度な形態では、座瘡は面皰を伴う、極めてわずかな色むらのある皮膚炎によって特徴付けられる、多かれ少なかれ重要度の低い疾患である。それらの場合、角質溶解剤の局所的使用を含む通常の皮膚衛生が大体は十分な治療となる。しかし、よりひどい炎症性の座瘡の場合には、丘疹;膿疱;小結節および嚢胞;および極度にひどい場合には、疎通して炎症および感染性の嚢が生じる。効果的治療を施さなければ、それらの障害は広範囲にわたり、永久的な醜い傷跡を残すことになる。
【0006】
座瘡の病因は複数ある。疾患は主に、皮脂の生産増、毛胞脂腺の漏斗の過角質化、微生物叢の中で特にPropionibacterium acnesの増殖、およびそれに続く炎症に端を発すると考えられている。生物P.acnesは主に、皮膚中に見られる脂性腺毛包(sebaceous follicles)に、従って皮膚組織から物理的に隔離された場所に棲息する。座瘡の最近の病態生理学では、座瘡の炎症は、細菌そのものの存在によるものであるというよりは、一部には細菌に対する、または細菌の存在に反応して生産された細胞外生成物に対する免疫反応によるものであるとされている。従って、P.acnes数の減少のみを目的とした治療は、座瘡の長期的治療にはあまり効果的ではない。角質化と呼ばれる正常な表皮の成熟過程は、皮膚の毛穴および分泌腺の内側を覆う細胞の成長およびはがれ落ちを伴う。座瘡ではこの過程が乱されて、毛漏斗中の表皮細胞の過剰生産(過角化)を生じ、毛穴の閉塞を形成する。
【0007】
軽症の座瘡は典型的には洗浄剤および過酸化ベンゾイルによって局所的に治療する。中程度の炎症性座瘡はしばしば、洗浄剤および、レチノイド(トレチノイン、アダパレン、またはタザロテン)、サリチル酸またはアルファ・ハイドリキシ酸、そしてしばしば局所的または全身的な抗生物質と組み合わせて治療する。テトラサイクリン、ミノサイクリン、デオキシサイクリン、エリスロマイシン、およびアジスロマイシンを含む抗生物質の全身的投与が、膿疱性または丘疹性座瘡の治療に効果的に用いられてきた。
【0008】
もう一つの重要な皮膚疾患は酒さである。酒さは座瘡とは異なるものの、それは時にacne rosaceaとして言及される。酒さは最も一般的には鼻および顔の中心領域の皮膚に影響するが、重度の場合は顔面の広い領域を冒す。acne rosacea(酒さ)の形態は、erythematotelangiectatic rosacea、ステロイド誘導酒さ(steroid−induced rosacea)、丘疹性酒さ(papular rosacea)、膿疱性酒さ(pustular rosacea)、酒さ(ocular rosacea)、rhinophymatous rosacea、edematous rosacea、口囲皮膚炎、および肉芽腫性酒さを含む。他の皮膚状態の例は、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、および光線性角化症等の皮膚の前癌状態を含む。
【0009】
アジスロマイシンは、エリスロマイシンA由来の広域抗生物質である9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンAに対するジェネリックの名称である。それはBrightの米国特許第4,474,768号明細書、およびKobrehelの米国特許第4,517,359号明細書によって独立的に発見され、そこではN−メチル−11−アザ−10−デオキソ−10−ジヒドロエリスロマイシンAの名称で言及されている。BrightおよびKobrehelはアジスロマイシンを吸湿性形態として開示した。Allenは米国特許第6,268,489号明細書にて、非吸湿性二水和物形態のアジスロマイシンを開示した。一水和物形態および二水和物形態の両方は、典型的には1〜5回の経口投与を伴う短期間の治療で全身的に投与した場合、細菌感染治療に効果的である。
【0010】
複数の科学的文献が、座瘡の炎症性障害(丘疹および膿疱)の治療におけるアジスロマイシンの効能を立証した研究を発表している。Fernandez−ObregonによるInternational Journal of Dermatology,39:45〜50(2000)が開示するところによると、250mgを週3回のパルス投与計画によるアジスロマイシン投与は、炎症性座瘡障害の治療において試験した他の抗生物質と同様に効果的である。Fernandez−Obregonは、研究の21人の被験者のうち19%が、3件の胃腸障害および1件の膣炎を含む副作用を経験したと報告している。Kus et al,Clinical and Experimental Dermatology,30:215〜220(2005)では、週あたり3日連続で500mgのアジスロマイシンを4週間、続いて週あたり2日連続で4週間、さらに続いて週あたり1日を4週間投与することで、座瘡の治療においてデオキシサイクリンと同様に効果的であることを開示している。Kusはこの研究で25人の被験者にアジスロマイシンを投与したと報告している。それら25人のうち、2人が服薬不履行、他の2人が胃腸の副作用により治療中断した。
【0011】
座瘡治療に対するアジスロマイシンのパルス投与の他の研究でも同様の結果が得られている。Gruber,et alのJournal of Chemotherapy,10(6):469〜473(1998)では、10日ごとの4サイクルで4日間、500mg/日でアジスロマイシンをパルス投与した。この投与計画は座瘡治療に有効と判明し、約10%の頻度で胃腸の副作用を伴った。Kapadia,International Journal of Dermatology,43:766〜767(2004)では、500mgアジスロマイシンの週3回の投与による座瘡の治療成功を報告している。被験者の11%で副作用が報告されている。Elewski,European Academy of Dermatology and Venereology,14:422〜430では、1日目に500mgで、続いて3ヶ月の間、各月の1日および15日に始まる連続した4日間に250mg/日でアジスロマイシンを投与した。Elewskiは、このアジスロマイシン投与計画で治療した全ての患者が座瘡の改善を示し、20人の被験者のうちただ1人だけが胃腸の副作用を経験したと報告している。Elewskiはさらに、断続的なアジスロマイシンは有効かつ、尋常性座瘡または酒さの患者の治療に伝統的に用いられる全身的な抗生物質への合理的な代替を与え、連続的、毎日の治療投与計画と比較して患者の生活の質に良い影響をもたらすことができることを開示している。Elewskiが述べたとおり、アジスロマイシンの長い半減期は、多くの病原体に対する最小阻止濃度以上のレベルで長期間にわたる細胞内区画中への薬剤の残存を許容することから、アジスロマイシン投与のパルス投与計画が用いられてきた。
【0012】
皮膚疾患治療のためのアジスロマイシンの投与量の最近の傾向は、パルス投与計画においてより高い用量が提供されるようになってきている。2006年12月に開始して現在も進行中のファイザーの臨床試験No.NCT00392223は、8週間にわたって週1回に2グラムのアジスロマイシンを投与するパルス投与計画でのアジスロマイシンによる座瘡治療の効能を試験している。
【0013】
テトラサイクリンは、30Sリボソーム・ユニットへの結合によるタンパク質合成阻害によって抗菌作用を提供する広域抗生物質である。Ashleyの米国特許第7,211,267号明細書は、テトラサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびデオキシサイクリン等のテトラサイクリン化合物投与による座瘡治療方法を開示している。Ashleyは、化合物が細菌に対して有効である量以下で投与した場合ですら、周知の抗生物質であるテトラサイクリン化合物が座瘡治療において有効であることを開示している。Ashleyは、低量のテトラサイクリンによる治療では、望ましくない副作用をテトラサイクリンの従来の用量で起こるよりも少なくできると提案している。
【0014】
アジスロマイシンは抗生物質のマクロライド・ファミリーの一員である。テトラサイクリンとは対照的に、アジスロマイシンおよび、エリスロマイシン等の他のマクロライドは、50Sリボソーム・ユニットへの可逆的結合によるRNA依存的タンパク質合成阻害によってその効果を示す。P.acnes等の座瘡に関連する細菌に対する最小限の阻害的血漿中濃度を提供する用量以下の用量で、アジスロマイシンが座瘡または他の皮膚疾患の治療に有効であることは未だ示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、臨床的に抗生物質効果をもたらすために従来から周知であり、座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の皮膚疾患治療に必要と信じられてきた用量よりも遙かに少ない用量におけるアジスロマイシンの全身的投与がそれら皮膚疾患の治療に有効であることが見いだされた。例えば、血漿中でP.acnesに対する最小阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を提供する用量よりも低い用量のアジスロマイシンが、座瘡等の皮膚疾患治療に有効であることが見いだされた。さらに予想外に発見されたことは、毎日または1日おき等の頻回におけるアジスロマイシン投与が、座瘡等の皮膚疾患治療に有効なアジスロマイシンの非常に低用量の使用を可能にすることである。そうした低用量が、初回の高用量すら無しに、治療開始から20日またはそれ以内に皮膚中のアジスロマイシンの有効な定常状態レベルを提供することもさらに見いだされた。
【0016】
本願明細書で用いる場合、「毎日」という用語は、1日1回または1日複数回を含む毎日を意味する。
【0017】
本願明細書で用いる場合、「1日おき」という用語は、「隔日」と同意義であり、1日当たり1若しくはそれ以上の回数の投与を包含する。
【0018】
本発明に従った低用量でのアジスロマイシン投与は、従来技術で指示されるような抗生物質用量レベルでたった数日以上用いる場合での断続的なアジスロマイシン投与に対して必要とされるのとは対照的に、数週間から数ヶ月にわたる規則正しい薬剤投与の可能性、および安全性の向上をもたらす結果となる。さらに、腹痛または腹部不快感、吐き気、嘔吐および下痢を含む胃腸の有害事象などの副作用の発生は、本発明に従った低用量においては従来技術で報告されているよりも少ない。
【0019】
本発明の方法に従ってアジスロマイシンを投与する場合、副作用の発生を最小限にするために、座瘡または酒さ等の皮膚疾患の兆候および/または症状を減少するのに有効である最も低い用量のアジスロマイシンを用いることが望ましい。このことは、数週間、数ヶ月、または数年にも及ぶほぼ習慣的なまたは習慣的なアジスロマイシンの投与等の、急激でないアジスロマイシン投与の場合に特に好ましい。
【0020】
アジスロマイシンの低用量投与はもう1つの重要な利点を提供する。抗生物質用量レベルの薬剤を用いる場合、その薬剤は薬剤に対して最も感受性の高い細菌を殺傷する一方で、最も耐性の高い細菌を後に残す。長期的には、耐性細菌の数が感受性細菌を上回り、耐性株の優位によって薬剤の抗生物質としての利用性が無くなってしまう。
【0021】
しかし、抗生物質効果を及ぼすよりも低い用量レベルで抗生物質を投与した場合、薬剤に曝露された細菌にはほとんどまたは全く選択圧がかからず、薬剤耐性が現れない。高用量レベルの薬剤に感受性の細菌は抗生物質用量以下の薬剤によって殺傷されないため、感受性細菌は死滅せず、従って抗生物質耐性細菌の選択は回避される。従って、本発明の方法に従ったアジスロマイシンの低用量投与は、進化的選択過程を介した細菌の薬剤耐性集団の確立の重大な問題を最小化する。
【0022】
さらに予期せずに見いだされたことには、感染性疾患治療に現在用いられている用量よりかなり低い用量によって、皮脂はアジスロマイシンで飽和される。飽和量は、より高い用量のアジスロマイシンを投与し、それに対応してアジスロマイシンの血漿中量が上昇しても一定に保たれる。従って、座瘡および丘疹膿疱性酒さ等の毛胞脂ユニットの疾患などの皮膚疾患治療に現在用いられているアジスロマイシンの用量は無駄であり、望まない副作用の不要なリスクを示すが、しかしそのリスクは本願明細書に開示する低用量治療を用いた場合には減少または排除すらされるものである。
【0023】
本発明者はさらに、アジスロマイシンの抗生物質効果に加えて、座瘡および他の皮膚疾患への低用量アジスロマイシンの予期せぬ効果の原因となる幾つかの他のメカニズムが存在する可能性も理論化する。例えば、アジスロマイシンはToll様受容体2または多形核白血球(polymorphonuclear leukocytes:PMNs)の活性化の調節または阻害剤として働く可能性がある。本発明に従った低用量のアジスロマイシンは、IL−1アルファ、TNF−アルファ、ICAM−1、またはINF−ガンマ等の前炎症性サイトカインの生産を阻害する、またはそれらの作用を調節する可能性がある。座瘡および酒さ等の皮膚疾患の治療における低用量アジスロマイシンの有効性は、少なくとも一部には、ヘッジホッグ・シグナル経路のヒトベータディフェンシン2またはアンドロゲン受容体の下方制御または阻害によるものである可能性がある。
【0024】
さらに、本発明者らは理論に拘束されることを望むものではないが、本願明細書で開示するアジスロマイシンの毎日または1日おきの低用量投与によって提供されるアジスロマイシンの定常状態レベルの達成は、座瘡および他の皮膚疾患の場合での濾胞、毛胞脂ユニット、皮脂、真皮、または表皮等の効果的部位へのアジスロマイシンの、従来技術、典型的には高用量のパルス投与による投与方法によって得られるよりもより効果的な「誘導」の結果である可能性がある。従って、従来技術の指示に基づいて有効であると期待されるよりも低い用量のアジスロマイシンが有効であることが予想外に見いだされたのである。
【0025】
本願明細書で用いる場合、「パルス投与」という用語は、予定する投与計画が週ベースで1日おきよりも頻度が低い投与計画に言及するものである。
【0026】
パルス投与と比較して、本発明に従った毎日または1日おきの投薬の1つの利点は、患者がよりきちんと投薬スケジュールを守ることである。1日または1日おき等の規則的で覚えやすいスケジュールでの1回投与は比較的簡単に行えて、投薬遵守に導きやすい。パルス投与はしばしば、上述したように複雑な投与計画を伴い、複雑で患者を混乱および処方した投与計画の不履行に導きやすい。複雑で不規則な投与計画は、単純で規則的な投与計画と比較して投薬し忘れの発生増加を伴う。さらに、毎日または1日おきの投与計画の場合、1若しくはそれ以上の投薬し忘れの全体的な治療における重要性は、パルス投与計画での投薬し忘れと比較して相当に減少する。投与計画の複雑さの問題は、主にティーンエイジャーに影響を及ぼす座瘡等の疾患において特に重要である。それらの人々にとって、長期治療の遵守はしばしば問題となる。単純に繰り返す覚えやすい投与計画の提供は、座瘡に冒されたティーンエイジャー等の個人が投与計画に従う可能性を最大化する。さらに、1日当たり250mg〜2gの用量で従来技術において実施されるパルス投与には、本発明に従った低用量の毎日またはパルス投与で生じるよりも高いレベルの副作用が伴う。
【0027】
本願明細書で用いる場合、生物の成長を90%抑制する濃度と定義されるところのP.acnesに対するアジスロマイシンのMICは、Neu,American Journal of Medicine,91(suppl 3A):3A−12S〜3A−18S(1991)に報告されている150ng/mlである。Neuの報告にあるとおり、アトピー性皮膚炎において重要であるStaphylococcus aureus等のP.acnes以外の皮膚科学的に重要な細菌に対するアジスロマイシンのMICsはP.ancesに対するそれより高い。皮膚科学的に重要な細菌のうちで唯一の例外はアトピー性皮膚炎において重要なStreptococcus pyogenesであり、その場合に報告されている120ng/mlのMIC90はP.acnesに対するものと大きくは違わないレベルである。
【0028】
主として座瘡のみならず座瘡以外の皮膚疾患に関連する一実施形態において、本発明は個体中の皮膚疾患の兆候および/または症状を緩和するために十分な期間および量でのアジスロマイシンの全身的投与の工程を含むそれら疾患を患った個体の皮膚疾患治療方法であり、ここで投与するアジスロマイシン量はアジスロマイシンの毎日の最大血漿中濃度(Cmax)を提供し、その濃度は、続く3回の用量投与で3回若しくはそれ以上のアジスロマイシン血漿中レベル決定の間の少なくとも10日の期間にわたって平均(「1日平均Cmax(average daily Cmax)」)した場合、好ましくは少なくとも10人の被験者の平均に基づいて、P.acnesに対するMICより低いものである。好ましくは、治療期間中の各個別の日に対するCmax(「治療Cmax」)はP.acnesに対するMICより低い。
【0029】
好ましくは、1日平均CmaxはP.acnesに対するMICの0.8倍を超えず、および好ましくは、治療CmaxはP.acnesに対するMICの0.8倍以上ではない。より好ましくは、1日平均CmaxはP.acnesに対するMICの0.5倍を超えず、およびより好ましくは、治療CmaxはP.acnesに対するMICの0.5倍以上ではない。さらにより好ましくは、1日平均CmaxはP.acnesに対するMICの0.25倍を超えず、および好ましくは、治療CmaxはP.acnesに対するMICの0.25倍以上ではない。および最も好ましくは、1日平均CmaxはP.acnesに対するMICの0.125倍を超えず、および最も好ましくは、治療CmaxはP.acnesに対するMICの0.125倍以上ではない。
【0030】
好ましくは、アジスロマイシンは少なくとも週5日、より好ましくは少なくとも週6日、および最も好ましくは治療期間中毎日投与する。もし望むならば、治療頻度は1日おきとすることができる。好ましくは、治療期間は少なくとも20日、およびおそらくは数ヶ月、例えば2〜3ヶ月、または6ヶ月またはそれ以上続くであろう。治療終了後に座瘡が再発または悪化した場合は、アジスロマイシンによる治療経過を繰り返すことが好ましい。本発明に従ったアジスロマイシンの低用量は、座瘡に罹りやすい期間の連続的または一時的な治療中、長期間に渡って座瘡を治療するにあたって安全および有効である。
【0031】
好ましくは、アジスロマイシンは1日当たり1回の投与計画で投与する。しかし、アジスロマイシンの1日の全量は1日の用量を得るために複数に分けて投与することができる。
【0032】
好ましい投与法は毎日の投与であるものの、1日おきの投与計画も本発明の範囲内であるが、ただし所与の日程の個別の用量が200mg以下、および好ましくは125mg以下であって、そうした1日おきの投与計画が皮膚疾患治療に効果的であるという前提のもとでである。例えば、アジスロマイシンの用量は、1日おき、週末以外は毎日、または例えば月曜、水曜および金曜、または火曜、木曜、土曜および日曜等、週当たり数日という形で投与することができる。
【0033】
本発明に従って投与するアジスロマイシンの用量は、座瘡または他の皮膚疾患の兆候および/または症状を患った成人に対して所与の日の投与ごとに125mg以下とするのが良い。従って、アジスロマイシンの1週間当たりの用量は、毎日投与する場合は875mgまたはそれ以下、1日おきに投与する場合は平均で437.5mgまたはそれ以下とするのが良い。本願明細書で用いる場合、「成人」という用語は、35キログラム(77ポンド)またはそれ以上、140キログラム(300ポンド)またはそれ以上までの体重を有する個人に言及するものである。小児への投与については35キログラム以下と、アジスロマイシンの用量は典型的には体重に基づく。本発明の方法に従って、アジスロマイシンの小児用量は5mg/kg以下、好ましくは4mg/kg以下、より好ましくは3mg/kg以下、および最も好ましくは2mg/kg以下である。
【0034】
好ましくは、投与するアジスロマイシンの用量は1日当たり120mgまたはそれ以下である。より好ましくは、用量は1日当たり80mgまたはそれ以下である。最も好ましくは、用量は1日当たり40mgまたはそれ以下である。本発明に従った適切なアジスロマイシンの1日用量の例は1日当たり、または1日おきに、10、25、30、40、60、80、100、および120mgを含む。1日おきに投与する場合、投与する用量は投与当たり25mgまで低く、および投与当たり200mgまで高くすることができる。1日当たり25mg以下の用量は皮膚疾患の治療において有効であると期待される。例えば、1日当たり20mgまたはそれ以下の低い用量が、座瘡等のアジスロマイシンに感受性の皮膚疾患の兆候および/または症状を減少させるのに有効であると考えられる。さらに、アジスロマイシンに感受性の座瘡を含む皮膚疾患の兆候および/または症状の治療において、1日当たり5mgまたはさらにそれ以下の用量が便益を提供するとも考えられる。
【0035】
望ましくは、治療の開始において、例えば初回用量または治療の最初の数日間または最初の数週間は1日当たり125mg以上の負荷量を投与することができる。以下に示すとおり、座瘡治療においてそうした負荷量は必要ではなく、副作用の発生増加の可能性が増加するため好ましくない。しかし、好ましくはないものの、本発明の投与計画が後に続くのであれば、負荷量の使用は本発明の範囲を逸脱する治療の投与計画を採ることにはならない。
【0036】
同様に、もし望むならば、時に1日当たり125mg以上、またはもし投与が1日おきであれば200mg以上の用量を治療の過程で投与することができる。そうした用量は座瘡の治療には必要ない。しかし、そうした高用量の時々の使用は、そうした高用量が時々であれば、すなわちそれが治療過程において平均で週当たり1回以上投与されなければ、本発明の範囲を逸脱する治療計画を採ることにはならない。
【0037】
本発明の方法のこの実施形態のほかにも、本発明の方法の他の実施形態によって有効に治療可能である座瘡の形態は、座瘡の既知の全ての種類を含む。本発明の方法によって治療可能な座瘡の種類は、例えば、尋常性座瘡、嚢胞性座瘡、臭素座瘡、塩素座瘡、コメドナルアクネコングロバータ(comedonal acne conglobata)、化粧品性座瘡、アクネエスティバリス(acne estivalis)、電撃性にきび(acne fulminans)、ハロゲン瘡、ヨーダイドアクネ(iodide acne)、ケロイド座瘡、機械的座瘡、結節性座瘡、非炎症性座瘡パピュローサ(non−inflammatory acne papulosa)、ポマード座瘡、プリメンストラルアクネ(premenstral acne)、膿疱性座瘡、痘瘡状座瘡、アクネベネナータ(acne venenata)、プロピオニックアクネ(propionic acne)、アクネエクスコリー(acne excoriee)、グラム陰性座瘡(gram negative acne)、ステロイド座瘡、炎症性座瘡、および結節型嚢胞性座瘡を含む。好ましい実施形態では、本発明の方法で治療する座瘡は、尋常性座瘡、炎症性座瘡、および/または結節型嚢胞性座瘡である。最も予想外なことに、本発明の方法に従った低用量のアジスロマイシン投与は、重篤な炎症性座瘡および結節性座瘡等の座瘡のより重篤な形態および兆候の有効な治療方法に特に良く適合するものである。
【0038】
本発明の方法のこの実施形態およびこれに続く実施形態による治療に適した座瘡以外の皮膚疾患は酒さを含み、例えば、エリセマトテランジエクタティックロザケア(erythematotelangiectatic rosacea)、ステロイド誘導酒さ、丘疹性酒さ(papular rosacea)、膿疱性酒さ(pustular rosacea)、酒さ(ocular rosacea)、ライノフィメイタスロザケア(rhinophymatous rosacea)、浮腫性酒さ(edematous rosacea)、口囲皮膚炎、および肉芽腫性酒さ等の酒さの形態を含む。本発明の方法に従って治療できる他の皮膚疾患の例は、乾癬、膿痂疹、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staph. aureus:MRSA)皮膚感染、アトピー性皮膚炎、湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、および角化症等の前癌状態の皮膚状態を含む。本発明の方法は、炎症性皮膚疾患の治療に特に良く適合する。本発明の方法は、皮脂腺、化学走化性因子、生来の免疫機構、PMNs、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体、細菌、皮膚炎症、または活性化Toll様受容体が症状の発症に関わりを有する皮膚状態の治療にもまた良く適合する。
【0039】
他の一実施形態では、本発明は、座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の兆候および/または症状を患う個体でのそれら皮膚疾患の治療方法であり、その方法は個体中の座瘡または酒さ等の兆候および/または症状緩和に十分な期間および量での個体へのアジスロマイシンの全身的投与の工程を含み、ここで投与するアジスロマイシン量は、典型的には治療開始から10と20日との間でアジスロマイシンの定常的状態が達成できた時点から治療終了までの期間中に皮膚または血漿中での最小限の変動性を示すアジスロマイシン量を提供するものである。この定常状態治療期間中の個体中での最大変動量は、いずれの2日の間でも50%以上ではなく、好ましくは35%以上ではなく、より好ましくは20%以上ではなく、最も好ましくは10%以上ではない。
【0040】
好ましくは、アジスロマイシンは治療期間中、毎日、または毎日複数回投与する。好ましくは、投与するアジスロマイシンの平均1日用量は125mg以下である。より好ましくは、平均1日用量は120mg以下である。さらにより好ましくは、平均1日用量は100mg以下である。好ましくは、治療する特定の皮膚状態に効果的な最も低い用量の下限に近い用量を投与すべきである。好ましい平均1日用量は、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10mg、または10と125mgとの間のあらゆる用量レベルとすることができる。座瘡または他の皮膚疾患の治療において、特に50キログラム以下の小さな個体においては、5mgまたはさらに低い用量が効果的であろうと考えられる。
【0041】
本発明のこの実施形態に従って、典型的に、しかし必ずしもそうではないが治療開始に続いて20日以内にアジスロマイシンの定常状態レベルを達成後、投与する1日用量はアジスロマイシンの投与の前または後に投与した用量の100%以上は変化しないことが好ましい。例えば、もし毎日、または1日おきの用量が100mgであれば、治療期間のいずれの日にも200mg以上の容量が投与されないことが好ましい。しかし、以上に明示したとおり、そうした高い用量が時々であれば、すなわちアジスロマイシンの高用量が治療過程において平均で週1回以上投与されるのでない限り、平均1日用量の100%を超えるアジスロマイシン量の時々の投与は、本発明の範囲を逸脱した治療計画を採ることにはならない。
【0042】
もう1つの実施形態では、本発明は、座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の兆候および/または症状を患う個体でのそれら皮膚疾患の治療方法であり、その方法は個体中の座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の兆候および/または症状緩和に十分な期間および量での個体へのアジスロマイシンの全身的投与の工程を含み、ここで典型的には20日目に達成されるアジスロマイシンの定常状態レベルの達成に続く治療期間中のアジスロマイシンの各投与は、アジスロマイシンの前の投与に続いて獲得された最小レベルのアジスロマイシンと比較して30%以上は高くない、好ましくは20%高くない、およびより好ましくは10%高くないようなアジスロマイシン投与に続いて、皮膚、皮脂、および/または毛包円柱(follicular casts)中のアジスロマイシンの最大レベルを提供する量である。
【0043】
本発明のこの実施形態に従うと、アジスロマイシンの投与は毎日、すなわち投与間の平均時間は約24時間、12と36時間の間であり、または1日おき、すなわち投与間の平均時間は約48時間、36と60時間の間である。好ましくは、1日1回の治療期間中のアジスロマイシンの各投与は前回投与から36時間以内、および最も好ましくは、アジスロマイシンの各投与は前回投与の20〜28時間以内に投与する。治療過程中の時々の投与し忘れは本発明の範囲外の治療計画を採ることにはならない。
【0044】
維持療法、すなわち典型的には治療開始から2〜3週間以内に本発明によるアジスロマイシン治療に対して座瘡等の疾患の兆候および/または症状が効き目を示した後には、本発明の低用量アジスロマイシン投与計画に従ってさらにアジスロマイシンを投与することが好ましい。しかし、もし望むならば、パルス投与または高レベルのアジスロマイシン使用等のあらゆる投与計画もまた使用できる。そういった投与は好ましくなく、なぜならば本発明の方法の利点である、効能の増加、特に胃腸障害等の副作用発生の減少、および細菌のアジスロマイシンへの耐性助長の減少等がそういった維持療法では得られないからである。
【0045】
さらに、もし望むならば、本発明のアジスロマイシン投与計画は、本発明のそれと異なるアジスロマイシン投与計画によって進めることもできる。例えば、治療をアジスロマイシンのパルス投与で開始して、続いて本発明に従った投与期間、さらに選択的に本発明に従わない維持量が続く。そういった投与計画は好ましくないが、しかし本発明に従ってアジスロマイシンが投与された期間は、そういった投与が少なくとも2週間にわたるのであれば、本発明の範囲内であると考えられる。
【0046】
1日当たりで計算したアジスロマイシンの平均投与量は1日当たり125mg以下であることが好ましい。例えば、1日当たり平均用量は20と120mgとの間のあらゆる量とすることができる。1日当たり20mg以下の用量は、例えば、とても小さな個体において有効であると理論づけられ、5mg程度またはそれ以下と低い1日平均用量は効果的となる可能性がある。本発明の他の実施形態と同様に、本発明のこの実施形態の方法の範囲内に入らない時々のアジスロマイシン投与は、アジスロマイシンの投与方法を本発明の範囲から除外するものではない。例えば、もしアジスロマイシンの毎日の投与を忘れたとしても、アジスロマイシンの2倍の投与は必要ではなく、しかし選択的に次の日に投与することができる。
【0047】
本発明の他の一実施形態では、本発明は、座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の兆候および/または症状を患う個体でのそれら皮膚疾患の治療方法であり、その方法は個体中の座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の皮膚疾患の兆候および/または症状緩和に十分な期間および量での個体へのアジスロマイシンの全身的投与の工程を含み、ここでアジスロマイシンは、毎日1日当たり125mg以下、または1日おきに各日200mgを投与するものである。例えば、1日用量は5と120mgとの間のあらゆる量とすることができる。本発明の他の実施形態と同様に、本発明のこの実施形態の方法の範囲に入らない時々のアジスロマイシン投与は、アジスロマイシンの投与方法を本発明の範囲から除外するものではない。
【0048】
本発明の方法の全ての実施形態において、アジスロマイシンの抗生物質としての作用機構に基づいて、座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の皮膚疾患の兆候および/または症状の治療に必要であると従来受け入れられていたよりも少ない量のアジスロマイシンを全身的に投与する。好ましくは、全ての実施形態においての投与経路は経口である。しかし、アジスロマイシンの同等の血漿中または皮膚濃度を達成可能なあらゆる投与経路、例えば、非経口の、舌下、膣、または直腸を含む粘膜投与、および経皮投与は同様の効能を有すると発明者らは期待するものである。経口投与するアジスロマイシンは、錠剤、カプセル、粉末、懸濁液用の粉末、懸濁液、または液体を含むいずれの形態とすることもできる。本発明の実施形態に従ったアジスロマイシンの投与は毎日、またはほぼ毎日−少なくとも週5回とすること、およびアジスロマイシンの毎日の投与は1日当たり125mg以下の用量とすることが好ましい。さらに、必ずしもではないが、好ましくは、治療開始時にアジスロマイシンの負荷量を投与しない。好ましくはないものの、1日おきの投与は本発明の範囲内である。そうした1日おきの治療では、好ましくは各個別の投与は200mgを超えず、より好ましくは150mgを超えず、および最も好ましくは125mgを超えない。さらに好ましくは、治療期間は少なくとも10日、より好ましくは少なくとも14日、および最も好ましくは少なくとも20日である。
【0049】
望ましくは、本発明のいずれの実施形態に従ったアジスロマイシン投与も、座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の皮膚疾患の兆候および/または症状の治療において、1若しくはそれ以上の他の全身的または局所的な薬物治療であって、単独またはアジスロマイシンとの組合せにおいて有効な薬物治療との併用療法の一部として提供することができる。例えば、座瘡等の皮膚疾患の非炎症性障害に対して有効なレチノイド等の薬物をアジスロマイシンとの併用療法として利用できる。好ましい実施形態では、中程度から重度の座瘡を、本願明細書に記載したとおりに投与するアジスロマイシンおよび、トレチノイン、アダパレン、またはタザロテン等の局所的なレチノイドの併用療法によって治療する。そういった併用療法は、例えば、アジスロマイシンと共に2番目の薬物として同時投与することにより、または他の一実施例のように、アジスロマイシンによる治療期間の合間またはアジスロマイシンによる治療の前または後に2番目の薬物として投与することで行うことができる。
【0050】
座瘡、アトピー性皮膚炎、および酒さ等の皮膚疾患治療のためにアジスロマイシンと組み合わせて用いることができる局所的薬物の例は、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、抗感染症薬、抗炎症薬、抗アンドロゲン、アドレナリン作動薬、免疫賦活薬、皮膚保護修復薬(skin barrier repair agents)、レチノイド、および過酸化ベンゾイルを含む。さらに、座瘡、アトピー性皮膚炎、または酒さ等の皮膚疾患の兆候および/または症状の治療または阻害に有効な、全身的または局所的な他の薬物、例えば副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、抗感染症薬、レチノイド、および過酸化ベンゾイル等を、アジスロマイシンの投与終了後の維持療法として用いることができる。
【0051】
他の一実施形態では、本発明は、個体へ投与する場合に本発明の方法が達成できるアジスロマイシン量を提供する経口投与可能な医療用剤型または製剤である。例えば、薬の剤型または製剤は、2週間またはそれ以上の期間に毎日個体へ投与した場合に、治療過程を通じて平均した場合(「1日平均Cmax(average daily Cmax)」)にP.acnesに対するMIC、すなわち150ng/ml以下であるアジスロマイシンの1日の最大血漿中濃度(Cmax)を提供するアジスロマイシンを含む剤型または製剤とすることができる。好ましくは、治療期間中の各日でのCmax(「治療Cmax」)はP.acnesに対するMICより低い。
【0052】
あるいは、本発明の医薬剤型または製剤は、2ヶ月またはそれ以上の期間毎日個体に投与した場合に、アジスロマイシンの定常状態レベルを達成する典型的には治療開始から10と20日との間に始まって治療終了までの期間に20%以上は変動しない、および好ましくは10%以上は変動しない皮膚中のアジスロマイシンの1日の最大量を提供するアジスロマイシン量を提供する、アジスロマイシンを含有する剤型または製剤である。
【0053】
あるいは、本発明の医薬剤型または製剤は、2週間またはそれ以上の期間毎日個体へ投与した場合、アジスロマイシンの前回の投与に続いて得られたアジスロマイシンの最小量よりも20%以上は高くない、好ましくは10%以上は高くない、アジスロマイシンの各投与に続いて、皮膚、皮脂、および/または毛包円柱中でアジスロマイシンの最大量を提供するアジスロマイシン量を提供する、アジスロマイシンを含有する剤型または製剤である。
【0054】
あるいは、本発明の医薬剤型または製剤は、125mg以下のアジスロマイシン量を提供する剤型または製剤とすることができる。例えば、医薬剤型または製剤は、120、100、80、60、40、20、10、5、または1mgのアジスロマイシン、または1と120mgとの間のあらゆる量を提供することができる。
【0055】
本発明の医薬剤型または製剤は、例えば120、100、80、60、40、20、10、5、または1mgのアジスロマイシン、または1と120mgとの間のあらゆる量の、125mg以下の量のアジスロマイシンを含むと考えられる。250mg以下のアジスロマイシン量を含む錠剤またはカプセルの様に経口投与可能な固形剤型は、小児患者用の100mg錠以外には入手できないことに留意されたい。この様に固形剤型が入手不可能な理由は、本願明細書の提出前には発明者がアジスロマイシンの成人による250mg以下の用量での使用に気付いていないためと考えられる。従って、以下により完全に記述するとおり、1mgと少なくとも100mgとの間のあらゆる量のアジスロマイシンを含有するそれら剤型は本発明の実施形態の医薬剤型の範囲内である。
【0056】
アジスロマイシンを含有する医薬製剤
アジスロマイシンを含有する医薬製剤の投与は、座瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬、膿痂疹、MRSA、湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、光線性角化症などの前癌状態、または酒さ等の皮膚疾患の兆候および/または症状の治療に有効なアジスロマイシンの濃度をもたらすために適切なあらゆる方法によって行われる。アジスロマイシンはあらゆる適切な量であらゆる適切な担体物質中で医薬製剤に含有され、製剤の全重量の1〜95%の量で存在する。
【0057】
製剤は経口投与に適した剤型で提供するのが好ましい。従って、その組成物は例えば、錠剤、カプセル、トローチ、小袋(sachets)、丸薬、粉末、顆粒、懸濁液、乳濁液、溶液、またはジェルの形態とすることができる。医薬製剤は従来の薬務に従って製剤化する(例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.), ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988〜1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照)。
【0058】
内服用の固形剤型
内服用の製剤は医薬的に許容可能な賦形剤と混合したアジスロマイシンを含有する錠剤を含む。それら賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例えば、蔗糖、ソルビトール、砂糖、マンニトール、微結晶性セルロース、じゃがいも澱粉を含む澱粉、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム);造粒剤および崩壊剤(例えば、微結晶性セルロースを含むセルロース誘導体、じゃがいも澱粉を含む澱粉、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、またはアルギン酸);結合剤(例えば、蔗糖、ブドウ糖、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、澱粉、アルファ化澱粉、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール);および平滑剤、流動剤、および付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、二酸化ケイ素、硬化植物油、またはタルク)である。他の医薬的に許容可能な賦形剤の例は、着色料、香料添加剤、可塑剤、保湿剤、および緩衝剤を含む。
【0059】
医薬製剤はアジスロマイシンに加えて他のもう1つの薬剤を含むことができる。製剤中の2つの薬剤は錠剤中で混合、または区分することができる。1つの例においては、1番目の薬剤を錠剤の内部に含有して、2番目の薬剤を外側にし、1番目の薬剤の放出前に2番目の薬剤の十分な量を放出させるようにする。皮膚状態の治療のためにアジスロマイシンと組み合わせる薬剤は、限定するわけではないが、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、抗感染症薬、ビタミンA、13−シスレチノイン酸等のレチノイド、抗炎症薬、アドレナリン作動薬、および抗アンドロゲンを含む。
【0060】
当該技術分野で周知のとおり、錠剤用ブレンドは錠剤化前に乾式造粒または湿式造粒することができる。あるいは、錠剤用ブレンドは直接圧縮することが出来る。加工方法の選択は薬剤の特性および選択した賦形剤、例えば粒子サイズ、ブレンド適合性、密度および流動性に依存する。アジスロマイシンの錠剤には、粒状化が好ましく、湿式造粒が最も好ましい。アジスロマイシンは湿式造粒して、次に他の賦形剤を顆粒外へ添加する。あるいは、アジスロマイシンおよび1またはそれ以上の賦形剤を湿式造粒する。さらに、嚥下し易くするため、または見栄えを良くするため、または成分を望ましくない化学変化(例えば、薬剤の活性物質の放出前の化学分解)から保護するために、錠剤の溶解に余りまたは全く影響しないまたは干渉しないコーティングによって錠剤を被覆することもまたできる。コーティングは、上記のEncyclopedia of Pharmaceutical Tchnologyに記述されているのと同様の方法で個体剤型上に適用することができる。
【0061】
望ましくは、アジスロマイシンを含有する錠剤は、嚥下のし易さおよび見栄えの良さを提供するために、フィルムでコーティングすることができる。多くの重合体によるフィルムコーティング材が当該技術分野で知られている。好ましいフィルムコーティング材はヒドロキシプロピル・メチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose:HPMC)である。HPMCは例えばColorcon Corp.などからOpadryとして商標登録されたものが、コーティングの助けとなる賦形剤を含有するコーティング製剤の形で購入することができる。Opadry製剤は乳糖、ポリデキストロース、トリアセチン、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80、二酸化チタン、および1若しくはそれ以上の染料またはレーキを含有する。ヒドロキシプロピルセルロースおよびアクリル酸メタクリル酸共重合体を含めて、他の適切なフィルムコーティング高分子もまた本願明細書で用いることができる。
【0062】
それ以外に錠剤化の処理そのものは、当業者にとって既知の従来の方法および機器を用いることができ、原料の望みのブレンドまたは混合物を従来の打錠機を用いて適切な形状にすることによる錠剤形成で容易に行うことができる。錠剤の製剤化および従来の処理技術は、例えば、この参照によってその文面が本願明細書に取り込まれるところのPharmaceutical Dosage Forms:Tablets; Edited by Lieberman, Lachman, and Schwartz; Published by Marcel Dekker,Inc.,2nd Edition,Copyright 1989等、広く記述されている。
【0063】
丸ままでの嚥下によって投与する錠剤に加えて、服用のための固形剤型の他の例は、チュアブル錠剤、活性成分を不活性の固体希釈剤(例えば、じゃがいも澱粉、乳糖、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合するところのハードゼラチンカプセル、および活性成分を水または油媒体、例えばピーナツ油、流動パラフィン、またはオリーブオイルと混合するところのソフトゼラチンカプセルを含む。粉末および顆粒は錠剤およびカプセルの下で上述の原料を用いて調製することができ、そうした粉末または顆粒を含有するカプセルは例えばミキサー、流動層機または噴霧乾燥機などの従来法によって作製することができる。
【0064】
経口投与用の液体
水の添加による水性懸濁液の調製に適した粉末、分散性粉末、または顆粒は、経口投与のための便利な剤型である。懸濁液としての製剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1若しくはそれ以上の防腐剤との混合物としてアジスロマイシンを提供する。適切な分散剤または湿潤剤は、例えば、天然リン脂質(例えば、レシチン)またはエチレンオキシドと脂肪酸の縮合物、長鎖脂肪族アルコール、または脂肪酸由来の部分エステル、およびヘキシトールまたは無水ヘキシトール(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン・ソルビトール・モノオレエート、ポリオキシエチレン・ソルビタン・モノオレエート、およびそれらに類するもの)である。適切な懸濁化剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、およびアルギン酸ナトリウムを含む。
【0065】
経口懸濁液製剤用のアジスロマイシン粉末の調製では、当該技術分野で知られているとおりに、原料を一緒に混ぜて解凝集(deagglomerate)する。好ましくは、アジスロマイシンおよび香料を混ぜて、他の原料を別に混合する。最後にそれら2つの混合物を混ぜて解凝集する。
【0066】
好ましい経口懸濁液は、水媒体との構成後に容易に再懸濁でき、構成後の保存の際に固まらない。好ましい懸濁液は、蔗糖を用いる場合、蔗糖NFおよび、構成の容易な再懸濁を確かにするためにもし入手可能ならば賦形剤無水物を含む。薬剤含有粉末は水で再構成する。
【0067】
アジスロマイシンの単位用量小袋剤型(本願明細書では「小袋(sachet)」とも言及する)は単位小袋から成り、例えば水、または天然または人工フルーツ飲料に注ぐように設計する。小袋はアジスロマイシンおよび賦形剤の混合物を含み、それを上述のように再構成する。小袋は、必要な含有物としてアジスロマイシン、および小袋の粉末が滑らかに流動するための分散剤、例えばCabotのCab−O−Sil等のコロイド性二酸化ケイ素を含む。分散剤は、販売する状態の乾燥小袋の重量に基づいて約0.2〜2.0%の量で存在する。分散剤は流動剤としても働く。製剤は、(1)充填剤または甘味剤(例えば、ブドウ糖);(2)緩衝液(例えば、リン酸ナトリウム);(3)例えばラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤等の湿潤剤;(4)本願明細書に列挙したような香味料を含む原料を選択的に含むこともまたできる。小袋中の粉末は滑らかに流動して、再構成時に攪拌すると基本的に直ちに素早く分散する。アジスロマイシンの単位用量小袋剤型は、当該技術分野で既知のとおりに全ての原料を混合および解凝集することで調製できる。好ましくは、充填剤(例えば蔗糖)、緩衝剤(例えば、無水リン酸ナトリウム)、および流動剤(例えば、コロイド性二酸化ケイ素)を混合および解凝集して、続いてアジスロマイシンおよび香味料と混合し、続いて解凝集する。
【0068】
本発明の経口剤型の作製に用いる賦形剤は、固体または液体形態であっても、錠剤、カプセル、または他の剤型であっても、医薬的に許容可能および剤型中でアジスロマイシンと相性が良くなければならない。剤型中のアジスロマイシンは、アジスロマイシン二水和物およびアジスロマイシン一水和物を含む複数形態の1若しくはそれ以上とすることができる。さらに、経口剤型は市販する上での合理的な期間中、例えば室温で18ヶ月間保管する場合に、物理的および化学的に安定でなければならない。
【0069】
本発明の経口剤型は、瓶またはボトルなどの複数回投与用容器中に、2週間、1ヶ月、または処方する治療期間等の適切な期間に対して十分な量でパッケージすることができる。本発明の好ましい一実施形態では、例えば錠剤またはカプセルなどの非常に多くのアジスロマイシン経口剤型、経口剤型を含む瓶等の第一の包装、および本発明の方法に従った経口剤型の投与に用いるための説明書を含むキットを提供する。小袋またはブリスター包装等の単位用量パッケージは、本発明の経口剤型の便利な包装方法を提供し、使用方法の説明書と組み合わせることでキットを実現する。製品の詳細な情報は、本発明のキット実施形態での使用のための説明書に含めることができる。ブリスター包装は固体経口剤型に対して特に便利であり、例えば1日おきの投与スケジュールに対して好ましい。好ましい一実施形態では、125mgまたはそれ以下のアジスロマイシンの固体単位剤型は、アジスロマイシンの用量が1日当たり125mgまたはそれ以下となるように1若しくはそれ以上の錠剤またはカプセルを投与するための説明書と共にブリスター包装中に含める。好ましい他の一実施形態では、200mgまたはそれ以下のアジスロマイシンの固体単位剤型は、アジスロマイシンの用量が投与日当たり200mgまたはそれ以下となるように1日おきの錠剤またはカプセルを投与するための説明書と共にブリスター包装中に含める。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、40、80、または120mgのアジスロマイシンの1日目の最初の投与から続く72時間の血漿中の平均血漿中濃度(ng/ml)を示すグラフである。
【図2】図2は、治療日から42日の連続した40、80、または120mgの1日量に続く24時間の血漿中の平均血漿中濃度(ng/ml)を示すグラフである。
【図3】図3は、1日当たり40、80、または120mgの用量で42日間投与した場合の長期間のアジスロマイシンの皮脂中濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0072】
血漿中のアジスロマイシン量
アジスロマイシンの血漿中量を以下のように決定した。39人の患者をランダムに3つの治療群のうちの1つへと振り分けた。各患者へ40mg(n=13)、80mg(n=11)、または120mg(n=15)のアジスロマイシンを経口で毎日与えた。0日目の最初の投与の後、1回の投与に基づいた血漿中量の測定および薬物動態パラメータの決定を可能にするため、72時間後までは2回目の投与を行わなかった。各患者からの血液サンプルを、最初の経口投与後0(投与前)、1、2、3、4、6、8、24、48、および72時間の時点で採取した。72時間目以降は、残り6週間(42日間)の間毎日、各患者へアジスロマイシンを与えた。21日目の投与後0(投与前)および3時間の時点、および42日目の最後の投与に続く0、1、2、3、4、6、8、および24時間の時点でもまた、血液サンプルを採取した。血液サンプルから得た血漿サンプルは、採取から処理および解析までの間、−20℃またはそれ以下で保存した。
【0073】
有効な高圧液体クロマトグラフィー検査と質量分析検出を用いて、血漿中のアジスロマイシン量を定量化した。標準およびサンプルを次に、ピペット添加によって、10.0マイクロリッターの1:1アセトニトリル/水で処理した。標準およびサンプルを次に、ピペット添加によって、10マイクロリッターのアザエリスロマイシンA内部標準溶液で処理して、続いて酢酸エチル、メタノール、アセトニトリル、ギ酸およびモルホリンの250:150:100:0.5:0.1混合物を含む移動相2.0mLを添加した。処理した標準およびサンプルを含む抽出瓶の上にテフロン(登録商標)キャップを固く締めた後、瓶を1rpsで2時間回転した。次に、各瓶から0.20mLの一定分量を取り出してHPLCオートサンプラー・バイアルへ移し、バイアルにキャップをしてLC−MS−MS解析用オートサンプラー・トレイ中へ設置した。加熱噴霧器を備えるSciex API 3000 LC−MS−MS(GenTech Scientific,Inc.,ニューヨーク州Arcade)等の適切な質量分析−質量分析検出を装備した適切な高圧液体クロマトグラフ(high pressure liquid chromatograph:HPLC)中へ、各バイアルから5マイクロリッターの一定分量を注入した。使用したカラムはPVA−Sil、5ミクロン、4.0×50mmカートリッジ(Waters Corporation,マサチューセッツ州Milford)である。流速は1ml/分とした。アジスロマイシン量を決定するために、m/z750→592アジスロマイシン産物イオンのピーク領域を、m/z736→578アザエリスロマイシンA内部標準産物イオンのピーク領域に対して測定した。
【0074】
アジスロマイシンの1回の投与に続いて、試験した全ての用量について3時間以内にCmaxを測定した。各測定において得られたCmaxはP.acnesに対するMIC以下であった。3つの治療群のそれぞれに対する初回投与に続く72時間の被験者中の平均アジスロマイシン血漿中濃度(ng/ml)のデータは図1に示し、3つの治療群のそれぞれに対する42日目(最後の投与)の投与に続く被験者中の平均アジスロマイシン血漿中濃度のデータは図2に示した。
【0075】
図1に示したとおり、被験者中のアジスロマイシンの平均血漿レベルは、各治療群について投与後3時間目にピークを示し、続いて5時間目までの間に急速に減少した。その時点から試験の最後である72時間目までに、平均アジスロマイシン血漿レベルは各群について2ng/ml以下まで徐々に減少した。図1はさらに、各用量についての平均ピーク血漿濃度は、P.acnesに対するアジスロマイシンのMICである150ng/mlに決して到達しなかったことも示している。40mg/日、80mg/日、および120mg/日の治療群の被験者中の平均最大アジスロマイシン血漿レベルは、それぞれ、約15ng/ml、59ng/ml、および45ng/mlであった。
【0076】
図2に示したとおり、定常状態を達成後の平均アジスロマイシン血漿レベルは、40mg/日、80mg/日、および120mg/日の治療群についてそれぞれ、約4ng/ml、10ng/ml、および22ng/mlであった。42日目のアジスロマイシン投与に続く、40mg/日、80mg/日、および120mg/日の治療群の被験者間での平均最大アジスロマイシン血漿レベルは、それぞれ、約16ng/ml、54ng/ml、および68ng/mlであり、P.acnesに対するアジスロマイシンのMICである150ng/mlより十分低かった。42日目での血漿Cmax中央値もまた、P.acnesに対するアジスロマイシンのMICと同様に黄色ブドウ球菌およびS.pyogenesに対するアジスロマイシンのMICより十分低かった。
【0077】
40mg/日、80mg/日、および120mg/日の各用量群それぞれに対して各被験者について血漿アジスロマイシン濃度を表にした。薬物動態評価はアジスロマイシンの個々の血漿濃度−時間データに基づき、WinNonlin(商標)バージョン5.0.1(Pharsight Corporation,カリフォルニア州Mountain View)に従ったモデル非依存的解析方法を用いて行った。表1は、以下の薬物動態パラメータ、Cmax、AUClast、およびAUC24についての中央値を示している。最大血漿濃度であるCmaxは、濃度−時間データから直接得た。時間0〜時間t(血漿濃度を定量化可能な最後の時間)の間の血漿濃度−時間曲線下面積であるAUClastは、投与前から血漿濃度を定量化可能な最後の時間までの間から線形台形則(linear trapezoidal rule)を用いて計算した。時間0〜時間t=24までの血漿濃度−時間曲線下面積であるAUC24は、投与前から24時間までの時間による点以外はAUClastの計算と同様の方法で計算した。
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【表1】

【0078】
表1に示すとおり、試験した全ての用量について0日目および42日目の最大血漿濃度は、P.acnesに対するアジスロマイシンのMICより低い。表1に示すとおり、初回の1回投与での薬物動態データは、80mg/日と120mg/日との間で薬物動態パラメータに差異を示さなかった。80mg/日および120mg/日の用量では、定常状態に到達するとアジスロマイシンの用量はAUC(24)およびCmaxに比例している。40mg/日のアジスロマイシン用量に対するAUC値は、より高い用量レベルである80mg/日および120mg/日に対して用量に関して比例的ではなかった。
【実施例2】
【0079】
皮脂中のアジスロマイシン量
Sebutape(登録商標)(CuDerm Corporation,テキサス州Dallas)を用いて、実施例1の被験者から皮脂を採取した。実験日0、21、42、および70日目に、各被験者はそれぞれの顔面の皮膚の額、および左および右頬へ3枚のSebutape(登録商標)粘着パッチを設置して、30〜40分間パッチを設置箇所にそのままにしておいた。次にパッチを除去して、粘着面を内側にして2つに折り、封をしたガラス瓶中へ設置して、−20℃〜−70℃で凍結した。
【0080】
それぞれのSebutape(登録商標)粘着パッチから採取した皮脂を、酢酸エチル、メタノール、アセトニトリル、ギ酸、およびモルホリンの250:150:100:0.5:0.1混合物の移動相にて抽出した。抽出溶液に内部標準のアザエリスロマイシンを加えた。適切な質量分析−質量分析検出を備えたSciex API 3000 LC−MS−MS等の高圧液体クロマトグラフ(high pressure liquid chromatograph:HPLC)中へ、5マイクロリッターの一定量を注入した。使用したHPLCカラムはPVA−Sil、5ミクロン、4.0×50mmカートリッジである。流速は1ml/分とした。アジスロマイシン量は、内部標準のピーク領域と比較したアジスロマイシンのピーク領域に基づいて決定した。
【0081】
それぞれのSebutapeパッチは、アジスロマイシンのナノグラム単位での定量化で解析した。この量を1.38mg(各粘着パッチ中で決定した皮脂の平均重量)で除して、サンプル中のアジスロマイシン濃度(ngアジスロマイシン/mg皮脂)を得た。この値に、皮脂の密度である0.87mg/μlを乗じることで、濃度(ngアジスロマイシン/マイクロリッター皮脂)へ変換した。結果は表2および図3に示した。
【0082】
【表2】

【0083】
表2および図3に示すとおり、各Sebutape(登録商標)サンプル中のアジスロマイシン量は、皮脂1mg当たりアジスロマイシン0.64ng、または皮脂1マイクロリッター当たりアジスロマイシン0.55ngと同等であるところの、1.38mg皮脂中からアジスロマイシン約0.88ngが得られる最大量までは、用量増加に伴って増加した。1日当たり80mgおよび1日当たり120mgの用量では、サンプル中のアジスロマイシンはほぼ同等であった。このデータは、皮脂中のアジスロマイシン濃度の飽和が、1日当たり40と80mgとの間の用量で得られることを示している。
【0084】
0日目でのアジスロマイシンの皮脂レベルは各グループについて同等であった。表2のデータは、ヒト被験者の皮脂中のアジスロマイシンの測定可能なまたは飽和濃度を達成するためには、20または21日等の多くの日数での、本発明に従ったアジスロマイシンの用量が必要であることを示している。本発明の低用量アジスロマイシンの方法の予期せぬ効能は一部には、皮脂中の十分に測定可能なまたは飽和レベルまでのアジスロマイシンの組織的および段階的な取り込みによるものであることが理論づけられる。さらに理論づけられることには、一旦十分に測定可能なまたは飽和レベルのアジスロマイシンが達成できて治療を終了したならば、皮脂からのアジスロマイシンのクリアランスは長期間に渡って生じ、それが本発明の方法に見られる期待される効能にさらに寄与する。
【0085】
座瘡、酒さまたはアトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の治療成功には、飽和皮脂レベル(皮脂飽和用量)を達成するのに必要な用量の3倍以上のアジスロマイシンの1日用量は必要ではないことが理論づけられる。さらに理論づけられることには、皮脂飽和用量の2倍以上、および好ましくは皮脂飽和用量の1および1.5倍以上の投与をしないことが好ましい。
【実施例3】
【0086】
皮膚中のアジスロマイシン量
皮膚の毛嚢脂腺ユニットを代表する標準化した濾胞生検サンプルを、実施例1の各被験者の上背から、実験0、21、42、および70日目に採取した。各生検サンプル中のアジスロマイシン組織量を決定するためにサンプルを解析した。結果を表3に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
表3に見られるとおり、皮膚濾胞生検サンプル中のアジスロマイシン量の中央値は、アジスロマイシン投与量の増加と共に上昇した。80mg/日と120mg/日の用量との間で得られるアジスロマイシン量の差異は、40mg/日と80mg/日の用量との間で得られる差異よりもかなり小さい。このデータは、皮膚、および特に濾胞生検によって示される毛嚢脂腺ユニットが、1日当たり80と120mgとの間の用量でアジスロマイシンによって飽和されることを示している。このデータから、約95mg/日の用量で皮膚はアジスロマイシンで飽和されることが理論づけられる。本発明の低用量アジスロマイシン投与計画に関して、さらに予想外に見いだされたことには、上皮細胞と共に皮脂も含む毛嚢脂腺組織からのアジスロマイシンのクリアランスは、組織中のアジスロマイシンの飽和または飽和に近い量を達成後、非常に遅く(28日以上)に起こる。
【実施例4】
【0089】
胃腸の副作用
本発明の毎日の低用量アジスロマイシンによる治療の6週間(42日)の間、および治療終了後の追加的な4週間(全部で70日)の胃腸の副作用の存否について、実施例1の被験者を観察した。この期間中、40、80、または120mg/日のいずれの用量を与えたいずれの被験者からも、胃腸の副作用の報告は無かった。
【実施例5】
【0090】
座瘡に対する有効性
治療から6週間、中程度から重度の座瘡治療における各用量(1日当たり40mg、80mg、または120mg)の有効性について、実施例1の被験者を評価した。治療プロトコルを開始する前に、顔面の非炎症性障害(開放および閉鎖面皰)、炎症性障害(丘疹、膿疱、および小結節)、および小結節の数を数えた。それら障害の数を治療21日目および42日目に再度数えた。21日目および42日目に個別の被験者について各パラメータ(非炎症性障害、炎症性障害、および小結節)の差異の平均として、0日目からの%減少を計算した。平均障害数、および障害数の減少パーセンテージによる有効性評価の結果を、40mg、80mg、および120mg群についてそれぞれ表4、5、および6に示した。
【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
表4〜6に示すとおり、1日当たり40、80、または120mgのいずれのアジスロマイシンによる治療後でも、治療21日目および42日目の炎症性座瘡障害の数は著しく減少した。表4〜6はまた、非炎症性座瘡障害は試験した40、80、または120mgの各用量レベルでの毎日のアジスロマイシン治療に順調に反応したこともまた示している。表4〜6はさらに、40、80、または120mgのアジスロマイシンによるいずれの治療後にも、治療21および42日目の両方で顔面の小結節数が顕著に減少したことも示している。
【実施例6】
【0095】
中程度および重度の座瘡の治療のための追加的な低用量投与計画
実施例1〜5よりさらに低い用量のアジスロマイシンが皮膚疾患治療に有効であることを確かめるために、さらなる実験を行った。顔面に中程度から重度の尋常性座瘡を患う、平均年齢19.6才の5名の男性被験者および5名の女性被験者を、毎日25mgの経口のアジスロマイシンまたは1日おきに80mgの経口のアジスロマイシンのいずれかによって治療した。10名の被験者のいずれも結節性座瘡を有していた。男性被験者には1日当たり25mgの投与計画、女性被験者には1日おきに80mgの投与計画を施した。治療は6週間の期間続けた。
【0096】
顔面の炎症性障害:丘疹、膿疱、および小結節、および非炎症性障害:開放および閉鎖面皰の数を治療開始時に数え、治療の3週目および6週目に再び数えた。さらに、それら来院時に小結節だけを独立的に数えた。さらに、治療実験中に各被験者は副作用の発生について報告した。本実験の25mg/日投与計画の結果は表7に、1日おきに80mgの投与計画の結果は表8に示した。それらの表での数字は、各群の4人の被験者の障害数の平均値を示している。0日目からの%減少は、各被験者の21日目および42日目でのそれぞれのパラメータ(炎症性障害、非炎症性障害および小結節)の差異の平均値として計算した。
【0097】
【表7】

【0098】
【表8】

【0099】
表7のデータは、毎日投与した場合に、1日当たり25mgと低い用量が、成人の座瘡等の皮膚疾患治療に有効であることを立証している。同様に表8のデータは、各用量が80mgと低い用量での1日おきの低用量治療がそうした皮膚疾患の治療に有効であることを立証している。
【0100】
本実験の期間中、毎日25mgのアジスロマイシンを与えた被験者が1件のみの副作用を報告し、1日おきに80mgのアジスロマイシンを与えた被験者では副作用の報告は無かった。報告された唯一の副作用は1名の被験者における21日目の片頭痛の発生であった。この副作用は本治療とは無関係と考えられる。腹部痙攣、吐き気、嘔吐、下痢または膣炎等の典型的な抗生物質の副作用の報告は無かった。
【0101】
結論
本実験は、1日当たり150mg以下の用量のアジスロマイシンが座瘡、特に座瘡に関連する炎症性障害の治療に有効であることを立証した。座瘡の特に重度の形態であり従来よりイソトレチノインで治療している炎症性座瘡小結節の治療に於いて、低用量アジスロマイシン治療は特に有益である。用量が120mg、80mg、40mg、または25mg、または1日おきに80mgのいずれであれ、アジスロマイシンによる毎日の治療への反応は同様であるため、1日当たり25mg、または1日おきに80mgよりさらに低い用量でのアジスロマイシンによる座瘡の毎日の治療は座瘡および他の皮膚状態の兆候および/または症状の軽減に有効であり、本治療の有効性はアジスロマイシンの抗生物質効果によるものではないと考えられる。従って、5〜25mgの1日用量、例えば10、15、または20mgのアジスロマイシン、または1日おきに10〜75mgの用量の投与は、座瘡および他の皮膚状態の兆候および/または症状の治療に有効であると考えられる。
【0102】
本発明に従ったアジスロマイシンの毎日の投与によって、座瘡の兆候および/または症状の緩和が非常に早く生じることもまた留意すべき点である。数名の被験者に存在した小結節は、治療開始後21日目の検査で完治していることが判明した。治療開始後21日目に検査した障害は、本発明の方法に従って試験した全ての用量で完治していたことから、それら障害の完全または部分的な治癒は必然的に21日目よりも前に生じていなければならない。従って、本発明の方法による座瘡の臨床的兆候および/または症状の治癒または改善は3週間以内、例えば治療開始後1週間で生じると考えられる。典型的には、座瘡治療用にFDAによって承認された薬剤は、有効性を証明するために10〜12週間またはそれ以上にわたって得られたデータに基づいている。炎症性および非炎症性を含む重度の症状を患う患者の座瘡障害の、本発明の方法によって得られる迅速な治癒は予想外であり、アジスロマイシンでの本発明の治療方法を含めて現在行うことができる座瘡の治療方法によって迅速な治癒が得られることは知られていない。
【0103】
さらに、あらゆる用量の、および特に本発明の方法に従った低用量のアジスロマイシンが、炎症性座瘡のより重度の形態に関連する障害である結節性座瘡の治療に有効であろうことは予想外である。結節性座瘡は従来、その重篤度および治療への耐性から、経口のイソトレチノインによって治療されてきた。座瘡治療に対して具体的にFDAによって承認された唯一の経口抗生物質はミノサイクリン錠剤(ソロディン(登録商標)錠剤、Medicis Pharmaceutical Corporation,アリゾナ州Scottsdale)である。しかし、ソロディンの添付文書は結節性座瘡の治療用での錠剤の使用を具体的に否定している。従って、アジスロマイシン、および特に本願明細書に記述した低用量でのアジスロマイシンが、重度の座瘡を患う患者の丘疹および膿疱の減少および小結節の治癒に非常に著しくおよび急速に有効であることは特に驚きである。
【0104】
従って、本発明の発明者らは、アジスロマイシンが抗生物質活性および抗炎症剤の活性の両方を有し、その抗生物質および抗炎症剤の活性に加えて他の効果も有する可能性があることを主張する。予期せぬ事に、本発明の発明者らは、アジスロマイシンが抗生物質活性を有する量以下で、アジスロマイシンがその抗炎症剤および他の活性を保持することを発見した。理論に拘束されることを望むものではないが、座瘡および特に座瘡の炎症性障害、および他の皮膚疾患の治療において、本発明に従った低用量アジスロマイシン治療がなぜ有効であるのかの少なくとも1つの理由は、抗炎症剤および他の活性のこの保持によるものなのである。
【0105】
本発明に関して考慮すべき重要な点は、アジスロマイシンによる治療期間にわたるアジスロマイシンの総投与量が、従来技術によるアジスロマイシンの投与計画と比較して顕著に減少することである。本発明の発明者らが知る限り、アジスロマイシンの用量で公表されているうちで最も低いものは、Fernandez−Obregon,International Journal of Dermatoology,39:45〜50(2000)の中で、平均11.67週間にわたって週3回患者に250mgのアジスロマイシンを投与したものである(表4、48ページ)。従って、この研究中の患者は、平均で8,752.5mgのアジスロマイシンを与えられている。本発明の発明者らの知るうちで、6週間の治療でのアジスロマイシンの総用量として公表された最も少ないものは、Gruber,et al,Journal of Chemotherapy,10(6):469〜473(1998)中で、10日ごとに4日を4サイクルで1日当たり500mgのアジスロマイシン、全部で8,000mgを患者へ投与したものである。それらに対して、本発明の方法に従った毎日40mgのアジスロマイシン、または1日おきに80mgのアジスロマイシンによって治療する患者は、12週間にわたって3,360mgのアジスロマイシンを与えられることになり、これはアジスロマイシンの総投与量で約4,500〜5,500mg、約62%の減少となる。もし、重度の座瘡等の皮膚疾患治療に有効であると示した低用量投与計画の期間であるところの、本発明の低用量投与計画による3または6週間のみの治療、または40mg/日以下のアジスロマイシン用量での治療をするならば、総用量で560mg〜1120mgと低く、アジスロマイシンの総投与量のより大きな減少を達成することができる。
【0106】
従来技術のアジスロマイシンの、特に皮膚疾患治療に対する、および特に毛嚢脂腺ユニットおよび特に皮脂に影響する疾患の治療に対する投与計画は、アジスロマイシンの極度の無駄であり、望ましくない副作用の不要なリスクを提供するものである。皮脂、毛包円柱、および皮膚中のアジスロマイシン量は従来技術のアジスロマイシン投与量より相当低い用量でプラトー(plateau)に達することが見いだされた。従って、アジスロマイシンの無駄および従来技術の方法に関連する副作用は、本発明の投与方法によって緩和される。
【0107】
本発明の方法に従ったアジスロマイシンの低用量による毎日または1日おきの治療は、試験した中で最も早い時点であり、それゆえにこれより早い時点でも有効であると考えられるところの21日以内の、座瘡の兆候および/または症状の治療に有効であることが予期せずに発見された。それゆえに、本発明の方法による治療はアジスロマイシンの総投与量が従来技術(Gruber)の用量の約10%またはそれ以下だけの場合でも有効であると分かったことから、本発明の低用量の方法によって治療する場合のアジスロマイシンの総用量は総アジスロマイシン投与量で9倍またはそれ以上の減少をもたらすことができる。
【0108】
従来技術の投与計画と比較して低量のアジスロマイシンを投与することから、本発明の重要な利点は、アジスロマイシンの長期投与による副作用の可能性の低減である。1例としては、座瘡の薬物療法は典型的に多くの週または数ヶ月にも及び、特定の症例では数年の期間持続する。低用量のアジスロマイシンによる長期間の治療は、現在処方されているアジスロマイシンの高用量での治療によって生じるであろう深刻な副作用の発生を、劇的に低減するであろう。発生または重篤度において軽減することができるそれら副作用は、リン脂質症、肝障害、頻脈および低血圧等の循環器疾患、および偽膜性大腸炎を含む。他の重篤度が低いがしかしより一般的でわずらわしい副作用は、患者による服薬の遵守の妨げおよび治療の不継続につながる。そうした副作用は、膣カンジダ症等の泌尿生殖器疾患、および吐き気および疼痛を含む胃腸障害を含む。本発明の方法は、治療期間中に投与するアジスロマイシン個別の用量および総用量が非常に少ないことから、そうした問題を減少および最小化するであろうと考えられる。さらには、本発明に従った低用量のアジスロマイシンは、P.acnesおよびMRSAを含む黄色ブドウ球菌等の皮膚疾患に関わる細菌を含む病原菌および他の細菌での耐性獲得の問題を回避および/または最小化する。
【0109】
本発明の好ましい実施形態を詳細に記述したものの、開示した実施形態は修正できることは当業者にとって明白である。それら修正は以下の請求項に包含されるよう意図されるものである。従って、先の記述は限定的というよりも例示的であると考慮され、本発明の範囲は以下の請求項によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚疾患を患う個体の皮膚疾患の治療方法であって、
、前記個体中の前記皮膚疾患の兆候または症状を改善するために十分な期間および量において、アジスロマイシンが前記皮膚疾患治療に有効な唯一の薬剤であるような製剤設計による前記個体にアジスロマイシンを全身的投与する工程
を有し
投与後3時間後にアジスロマイシンの血漿濃度を3回若しくはそれ以上の回数測定した場合の少なくとも10日間の平均した(「1日平均Cmax(average daily Cmax)」)場合のアジスロマイシンの1日の最大血漿濃度(Cmax)が150ng/mlとなるアジスロマイシン量が投与されるものである
治療方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記1日平均Cmaxは120ng/ml未満である。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記1日平均Cmaxは75mg/ml未満である。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、治療期間中の1日のCmax(「治療Cmax(treatment Cmax)」)は150ng/ml以下である。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記皮膚疾患は座瘡である。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記治療期間を通して前記アジスロマイシンは毎日、または1日おきに投与するものである。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記アジスロマイシンは、前記皮膚疾患治療に有効な他の薬剤との併用療法として投与されるものである。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記他の薬剤は局所的なレチノイドであり、前記皮膚疾患は座瘡である。
【請求項9】
皮膚疾患を患う個体の皮膚疾患の治療方法であって、
、前記個体中の前記皮膚疾患の兆候または症状を改善するために十分な期間および量において、アジスロマイシンが前記皮膚疾患治療に有効な唯一の薬剤であるような製剤設計による前記個体にアジスロマイシンを全身的投与する工程
を有し
アジスロマイシンの各投与は、治療期間中に2回若しくはそれ以上測定した場合に、アジスロマイシンの定常状態濃度に達した時点から治療終了までの期間において50%以上変動しない血漿中のアジスロマイシンの最大量を提供するものである
治療方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記皮膚疾患は座瘡である。
【請求項11】
請求項9記載の方法において、アジスロマイシンの毎日の各投与は125mgまたはそれ以下である。
【請求項12】
皮膚疾患の兆候および/または症状を患う個体の皮膚疾患の治療方法であって、
前記個体中の前記皮膚疾患の兆候または症状を改善するために十分な期間および量において、アジスロマイシンが前記皮膚疾患治療に有効な唯一の薬剤であるような製剤設計による前記個体にアジスロマイシンを全身的投与する工程
を有し
前記アジスロマイシンは1日当たり125mg以下の平均用量にて毎日、または投与1日当たり200mgまたはそれ以下の平均用量にて1日おきに投与するものである
治療方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、治療の各日に投与する前記アジスロマイシンの用量は1日当たり125mg以下である。
【請求項14】
請求項12記載の方法において、治療の各日に投与する前記アジスロマイシンの用量は1日当たり80mg以下である。
【請求項15】
請求項12記載の方法において、治療の各日に投与する前記アジスロマイシンの用量は1日当たり40mg以下である。
【請求項16】
請求項12記載の方法において、前記皮膚疾患は座瘡である。
【請求項17】
請求項12記載の方法において、前記アジスロマイシンは、前記皮膚疾患治療に有効な他の薬剤との併用療法として投与されるものである。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記他の薬剤は局所的なレチノイドであり、前記皮膚疾患は座瘡である。
【請求項19】
皮膚疾患の兆候および/または症状を患う個体の皮膚疾患の治療方法であって、
前記個体中の前記皮膚疾患の兆候または症状を改善するために十分な期間および量において、アジスロマイシンが前記皮膚疾患治療に有効な唯一の薬剤であるような製剤設計による前記個体にアジスロマイシンを全身的投与する工程
を有し
投与するアジスロマイシン量は、毎日または1日おきに投与する場合、皮脂中におけるアジスロマイシンの飽和溶解濃度を達成するために十分な量の2倍以下である
治療方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、投与するアジスロマイシン量は、毎日または1日おきに投与する場合、皮脂中におけるアジスロマイシンの飽和溶解濃度を提供するのに十分な量より少ないものである。
【請求項21】
請求項19記載の方法において、投与するアジスロマイシン量は、毎日または1日おきに投与する場合、皮脂中のアジスロマイシンの飽和溶解濃度を提供するのに十分な量以下のものである。
【請求項22】
請求項19記載の方法において、前記アジスロマイシンは、前記皮膚疾患治療に有効な他の薬剤との併用療法として投与されるものである。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記他の薬剤は局所的なレチノイドであり、前記皮膚疾患は座瘡である。
【請求項24】
皮膚疾患の兆候および/または症状を患う個体の皮膚疾患の治療方法であって、
前記個体中の前記皮膚疾患の兆候または症状を改善するために十分な期間および量において、アジスロマイシンが前記皮膚疾患治療に有効な唯一の薬剤であるような製剤設計による前記個体にアジスロマイシンを全身的投与する工程
を有し
前記アジスロマイシンは、1日用量当たり125mg以下の平均濃度にて1週間に少なくとも3日は投与されるものである
治療方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、前記アジスロマイシンは、平均濃度80mgまたは1日用量あたり80mg以下にて投与されるものである。
【請求項26】
請求項24記載の方法において、前記アジスロマイシンは、平均濃度40mgまたは1日用量あたり40mg以下にて投与されるものである。
【請求項27】
請求項24記載の方法において、前記投与は少なくとも1日おきに行われるものである。
【請求項28】
請求項24の方法において、前記投与は少なくとも週5回行われるものである。
【請求項29】
請求項24記載の方法において、前記投与は毎日行われるものである。
【請求項30】
請求項24記載の方法において、前記アジスロマイシンは、前記皮膚疾患治療に有効な他の薬剤との併用療法として投与されるものである。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、前記他の薬剤は局所的なレチノイドであり、前記皮膚疾患は座瘡である。
【請求項32】
アジスロマイシンを含む経口投与用の医薬製剤であって、
前記製剤は、成人個体へ2週間以上の間毎日投与した場合、投与3時間後にアジスロマイシンの血漿レベルを3回若しくはそれ以上測定して平均した少なくとも10日間にわたって平均した(「1日平均量Cmax(average daily Cmax)」)場合に150ng/ml以下となるアジスロマイシンの1日の最大血漿濃度(Cmax)を提供するアジスロマイシン量を提供するものであり、
前記医薬製剤は皮膚疾患治療に有効なアジスロマイシン以外のいかなる薬剤も含まないものである
前記アジスロマイシンを含む経口投与用の医薬製剤。
【請求項33】
請求項32記載の医薬製剤において、この医薬製剤は固形経口剤型である。
【請求項34】
請求項33記載の医薬製剤において、この医薬製剤は錠剤またはカプセルの形態である。
【請求項35】
アジスロマイシンを含む経口投与用の医薬製剤であって、
成人個体へ投与した場合に前記製剤は125mg以下の量のアジスロマイシンを提供するものであり、
前記医薬製剤は皮膚疾患治療に有効なアジスロマイシン以外のいかなる薬剤も含まないものである
前記アジスロマイシンを含む経口投与用の医薬製剤。
【請求項36】
請求項35記載の医薬製剤において、この医薬製剤は100mgまたはそれ以下の量のアジスロマイシンを提供する。
【請求項37】
請求項35記載の医薬製剤において、この医薬製剤は80mgまたはそれ以下の量のアジスロマイシンを提供する。
【請求項38】
請求項35記載の医薬製剤において、この医薬製剤は40mgまたはそれ以下の量のアジスロマイシンを提供する。
【請求項39】
請求項35記載の医薬製剤において、この医薬製剤は固形経口製剤である。
【請求項40】
請求項39記載の医薬製剤において、この医薬製剤は錠剤またはカプセルの形態である。
【請求項41】
125mg以下の量のアジスロマイシンを含む経口投与用の医薬製剤であって、この医薬製剤は皮膚疾患治療に有効なアジスロマイシン以外のいかなる薬剤も含まないものである、医薬製剤。
【請求項42】
請求項41記載の医薬製剤において、アジスロマイシンの量は100mgまたはそれ以下である。
【請求項43】
請求項41記載の医薬製剤において、アジスロマイシンの量は80mgまたはそれ以下である。
【請求項44】
請求項41記載の医薬製剤において、アジスロマイシンの量は40mgまたはそれ以下である。
【請求項45】
請求項41記載の医薬製剤において、この医薬製剤は固形経口製剤である。
【請求項46】
請求項45記載の医薬製剤において、この医薬製剤は錠剤またはカプセルの形態である。
【請求項47】
アジスロマイシンによる治療に反応する皮膚疾患の治療用キットであって、
容器と、
容器中の非常に多くのアジスロマイシンの固形単位剤型であって、前記剤型は皮膚疾患治療において有効なアジスロマイシン以外のいかなる薬剤も含まないものである、前記アジスロマイシンの固形単位製剤と、
毎日または1日おきの投与計画での1若しくはそれ以上の固形単位製剤の投与の説明書と
を有し、
毎日の投与計画によって投与するアジスロマイシン量は125mg/日またはそれ以下であり、
1日おきの投与計画によって投与するアジスロマイシン量は200mg/日での投与またはそれ以下である
治療用キット。
【請求項48】
請求項47記載のキットにおいて、前記固形単位製剤はカプセルまたは錠剤である。
【請求項49】
請求項48記載のキットにおいて、前記容器は単位用量パッケージを含むものである。
【請求項50】
請求項49記載のキットにおいて、前記容器はブリスター包装である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538066(P2010−538066A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524023(P2010−524023)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/010355
【国際公開番号】WO2009/032268
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510061667)ドウ ファーマシューティカル サイエンシーズ、インク. (7)
【Fターム(参考)】