説明

監視カメラ装置、監視システム、および携帯具

【課題】被保護者の身の上に発生した非常事態の内容を具体的に把握すること。
【解決手段】広角の撮影レンズ11を備えるカメラ部5と、カメラ部5で撮影した映像の画像信号を無線信号として発信する通信部7とを備え、カメラ部5は、人が装着する携帯具に対して、外部に露出した状態で装着する携帯具としてのランドセル3に対して取り付ける取付部15を備えて監視カメラ装置1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ装置、監視システム、および携帯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、児童、女性および老人等の被保護者の誘拐や被保護者への暴漢が急増している。これに対する対策として、防犯ブザー機能を備える携帯電話装置が、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0003】
該携帯電話装置は、非常時に、暗証番号が押されたり所定レベル以上の振動が加わった場合に、警報音を発することに併せて、予め定められている緊急連絡先に緊急事態が発生したことを示すメッセイジを、自動的に発信したり、緊急連絡先と通話が可能になるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−177611号公報
【特許文献2】特開2005−347848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メッセイジの内容は、非常事態が発生したことを知らせるだけの内容であり、非常事態の具体的内容が把握できないという問題がある。また、緊急連絡先と通話が可能になっても、緊急連絡先で把握できる情報は、音声等の音のみである。そのため、被害にあっている被保護者が話しを出来ない状況にある場合、あるいは非常事態の内容を的確に話すことができない場合には、緊急連絡先において、非常事態の具体的内容を把握することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、被保護者の身の上に発生した非常事態の内容を具体的に把握することができる、監視カメラ装置、監視システム、および携帯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、監視カメラ装置は、広角の撮影レンズを備えるカメラ部と、カメラ部で撮影した映像の画像信号を無線信号として発信する通信部とを備え、カメラ部は、人が装着する携帯具に対して、外部に露出した状態で取り付ける取付部を備えることとする。
【0008】
監視カメラ装置をこのような構成とすることにより、カメラ部により携帯具を装着している人の周囲の状況を映像として捉えることができるので、該人の周囲の状況を正確に把握することができる。また、カメラ部は、人が外部に露出した状態で装着する携帯具に取り付けることができるので、撮影をする際に、カメラを改めて取り出す必要がなく、周囲の状況を即座に把握することができる。
【0009】
また、他の発明は、上述の発明に加え、カメラ部を外部から駆動するための無線信号を受信する通信部を備えることとする。
【0010】
監視カメラ装置をこのような構成とすることにより、監視カメラをこのような構成とすることにより、監視カメラの駆動を離れた場所から遠隔操作により行なうことができる。
【0011】
また、他の発明は、上述の発明に加え、携帯具は、学童用背負いバッグまたは学童用名札であることとする。
【0012】
監視カメラ装置をこのような構成とすることにより、監視カメラを、学童が登下校時に必然的に装着する学童用背負いバッグに取り付け可能にすることで、学童の登下校時の安全を確保することができる。
【0013】
上述の課題を解決するため、監視システムは、監視カメラ装置と、この監視カメラ装置から発信される画像信号に基づいて、カメラ部で捉えた映像を表示するモニタを備える受信装置とを備え、受信装置は、この受信装置を識別する識別子を有し、監視カメラ装置は、識別子を有する受信装置に対して画像信号を発信することとした。
【0014】
監視システムをこのような構成とすることにより、監視カメラ装置により携帯具を装着している人の周囲の状況を、受信装置により映像として捉えることができるので、該人の周囲の状況を正確に把握することができる。また、監視カメラ装置から発信される画像信号は、識別子を有する特定の受信装置に対して発信するので、該人のプライバシイを保護することができる。
【0015】
上述の課題を解決するため、監視システムは、監視カメラ装置と、この監視カメラ装置から発信される画像信号に基づいて、カメラ部で捉えた映像を表示するモニタを備える受信装置とを備え、監視カメラ装置と受信装置は、それぞれ自己を識別する識別子を有し、監視カメラ装置は、識別子を有する受信装置に対して画像信号を発信し、受信装置は、識別子を有する監視カメラ装置に対してカメラ部を駆動するため信号を発信することとした。
【0016】
監視システムをこのような構成とすることにより、監視カメラ装置により携帯具を装着している人の周囲の状況を、受信装置により映像として捉えることができるので、該人の周囲の状況を正確に把握することができる。また、受信装置から監視カメラ装置を、遠隔操作により駆動することができるので、該人の安全の確保の向上が図れる。さらに、監視カメラ装置と受信装置は、それぞれ自己を特定する識別子を有するので、監視カメラ装置と受信装置とが互いに一対一の関係となり、該人のプラバシーを保護することができる。
【0017】
また、他の発明は、上述の発明に加え、受信装置は、監視カメラ装置で撮影した撮像画像の全体がモニタの表示画面の一部の領域に表示される縮小映像を生成する縮小映像生成処理と、撮像画像の1または複数の部分について撮影レンズによる歪みを補正するとともに縮小映像に比べて拡大された拡大映像を生成する拡大映像生成処理と、縮小映像および拡大映像を表示画面に表示する制御を行なう画像処理制御手段備えることする。
【0018】
監視システムをこのような構成とすることにより、歪みが補正された拡大映像により撮影範囲の細部についての映像を観ることができるとともに、縮小映像により撮影範囲の全体の様子を観ることができるため、携帯具を装着する人の周囲の状況をより正確に把握することができる。
【0019】
上述の課題を解決するため、携帯具は、人が外部に露出した状態で装着する携帯具において、監視カメラ装置を備えることとした。
【0020】
携帯具をこのような構成とすることにより、撮影をする際に、カメラ部を取り出すことなく、周囲の状況を即座に把握することができる。
【0021】
また、他の発明は、上述の発明に加え、携帯具は、学童用背負いバッグまたは学童用名札であることとする。
【0022】
携帯具を学童が登下校時に必然的に装着する学童用背負いバッグとすることし、この携帯具に監視カメラを取り付けることで、学童の登下校時の安全を確保することができる。
【0023】
また、他の発明は、上述の発明に加え、監視カメラ装置を駆動する電源が携帯具に配置されることとする。
【0024】
携帯具をこのような構成とすることにより、大容量の電源を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の監視カメラ装置、監視システム、および携帯具によれば、被保護者の身の上に発生した非常事態の具体的内容を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態に係る監視カメラ装置1、監視システム2、および携帯具としてのランドセル3について、図1から図7を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、監視カメラ装置1の斜視図である。図2は、監視カメラ装置1が取り付けられて構成される学童用背負いバッグとしてのランドセル3の斜視図である。図3は、図2のランドセル3に取り付けられた監視カメラ装置1を拡大して表わした拡大斜視図である。図4は、図1に示す切断線A−Aにおける、監視カメラ装置1の概略断面図である。図5は、監視カメラ装置1および監視システム2の構成を示すブロック図である。図6から図8は、後述するモニタ31に表示される映像の内容を示す図である。
【0028】
なお、以下の説明において、監視カメラ装置1を、単に、カメラ装置1と記載する。
【0029】
カメラ装置1は、図4に示すように、外装筐体4内に、カメラ部5、回路基板6、通信部7、マイクロフォン8およびカメラ装置1を駆動するための電源であるバッテリ9が備えられる。
【0030】
カメラ部5は、レンズ鏡筒10と、このレンズ鏡筒10に保持される広角の撮影レンズ11と、撮像素子12とを備える。撮像素子12は、回路基板6に取り付けられ、撮影レンズ11の結像位置に配設されている。
【0031】
撮影レンズ11は、広角のレンズであり、180度の画角を有し、かつ、光軸周りの全周囲、すなわち360度の全周囲に亘って撮影できるように構成されている。撮影レンズ11は、図4においては、被写体光の入射側となる上面に凸面を向けた1枚のメニスカスレンズから構成されているが、これに限らず、他の形態のレンズを1枚、あるいは複数枚用いて構成してもよい。
【0032】
撮像素子12は、例えば、CMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor)を使用する。なお、CMOSの代わりにCCD(Charge Coupled Device)やその他の光電変換素子を使用してもよい。撮影レンズ11は、その一部を外装筐体4の外部に露出させられ、この露出部11aから入射した被写体光が、撮像素子12に結像する。
【0033】
この実施の形態においては、撮影レンズ11による結像画像は、撮像素子12の撮像面内に全て収まるように撮像素子12の撮像面の大きさ、および撮影レンズ11と撮像素子12との配置が構成されている。したがって、撮像素子12の撮像面には、撮影レンズ11の形状に対応して円形の光像が結像することになる。
【0034】
外装筐体4の撮影レンズ11が外部に露出する面には、複数の孔部13が形成され、この孔部13に対向する位置にマイクロフォン8が配設されている。周囲の音は、この孔部13を通ってマイクロフォン8に集音される。
【0035】
外装筐体4の下側には、カメラ装置1をランドセル3の肩ベルト14に取り付けるための取付部15が備えられている。取付部15は、肩ベルト14が長手方向に通る矩形の孔部であるベルト通し孔16が形成される筒部17と、この筒部17の下面に形成される2の矩形の矩形孔18,18とを有する。カメラ装置1は、図3および図4に示すように、ランドセル3の肩ベルト14を、筒部17の一方の開口部17aから挿入し、矩形孔18と矩形孔18の間にある仕切り部19の下側を通るよう矩形孔18,18に通し、他方の開口部17bら取り出すように、筒部17に通すことで、肩ベルト14に取り付ける。
【0036】
取付部15は、他に、安全ピンにより構成しても良い。また、カメラ装置1側とカメラ装置1を取り付けるランドセル3の肩ベルト14側にそれぞれ面ファスナー(いわゆるマジックテープ(登録商標))を取り付け、この面ファスナーにより、カメラ装置1をランドセル3の肩ベルト14に取り付けるようにしても良い。
【0037】
また、本実施の形態では、監視カメラ装置1が取り付けられて構成されるランドセル3は、カメラ装置1を上述のように取付部15により着脱可能な状態で備えているが、カメラ装置1をランドセル3に対して、着脱ができない状態で取り付け、ランドセル3を構成しても良い。
【0038】
学童が、上述のようにカメラ装置1が取り付けられたランドセル3を背負って登下校することにより、カメラ装置1により、学童の周囲の映像を撮影することができる。
【0039】
監視システム2は、上述したカメラ装置1と、図5に示す受信装置20とを備える。図5を参照しながら、カメラ装置1の動作に併せて、監視システム2の構成を説明する。
【0040】
先ず、カメラ装置1の動作を説明する。撮影レンズ11を透過した被写体光は、撮像素子12の撮像面に結像し、この結像画像に基づく画像信号が撮像素子12から出力される。撮像素子12から出力された画像信号は、回路基板6に入力する。回路基板6は、画像信号処理部21、画像圧縮処理部22、制御部23、およびメモリ24を備えている。
【0041】
撮像素子12から出力された画像信号は、画像信号処理部21に入力する。この画像信号処理部21において、撮像素子12からの画像信号に対して、カラー処理等の所定の画像処理を施す。
【0042】
画像圧縮処理部22においては、画像信号処理部21で画像処理を施された画像信号の画像データを圧縮処理し、画像データのデータ量が減らされた圧縮画像データを生成する。画像データの圧縮処理は、例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)を用いて行う。
【0043】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)により構成され、カメラ装置1の全体の動作の制御を司る。メモリ24は、カメラ装置1を動作させるためのプログラムの他、このプログラムを実行するためのワークメモリを備えている。メモリ24は、画像信号処理部21や画像圧縮処理部22における処理についても活用される。
【0044】
撮像素子12から出力された画像信号は、上述したように、画像信号処理部21や画像圧縮処理部22等により所定の画像処理が行われ、制御部23から通信部7に出力される。通信部7において、この画像信号を無線信号として発信する。発信された画像信号は、電話回線TLを介してネットワークNWに送信される。ネットワークNWには、カメラ装置1と共に、監視システムを構成する受信装置20が接続されている。
【0045】
受信装置20は、例えば、CPUから構成される制御部25、この制御部25について備えられるメモリ26、座標変換部27、およびこの座標変換部27について備えられるメモリ28、ハードディスクドライブ(以下、HDDと記載する)29、スピーカ30、およびモニタ31を備えている。
【0046】
制御部25は、受信装置20の全体の動作を司る。また、この制御部25は、座標変換部27と相俟って画像処理制御手段を構成し、カメラ装置1から送られる画像信号に対して、後述する画像処理を行う。メモリ26には、受信装置20の各部を動作させるためのプログラムが保存される。また、メモリ26は、このプログラムを実行するためのワークメモリを備えている。
【0047】
受信装置20では、ネットワークNWを介して受信したカメラ装置1から送信された画像信号をモニタ31に表示する。モニタ31は、例えば、液晶表示装置、CRT表示装置、あるいはプラズマディスプレ装置等から構成する。
【0048】
カメラ装置1は、図示を省略する主電源のスイッチをオン状態としておくことで、スタンバイ状態となり、このスタンバイ状態を保持している。そして、カメラ装置1の上面に備えられる撮影スイッチ32をオン操作することにより、撮影を開始し、画像信号を受信装置20に対して送信する。
【0049】
受信装置20においても、図示を省略する主電源のスイッチをオン状態としておくことで、スタンバイ状態となり、このスタンバイ状態を保持している。受信装置20は、カメラ装置1から画像信号が送信されたことを制御部25が認識すると、制御部25は、モニタ31にカメラ装置1の画像信号に基づく映像を表示するとともに、HDD29に、その画像信号を記憶する。つまり、カメラ装置1が取り付けられているランドセル3を背負った学童が、誘拐や暴漢等の非常事態に遭遇したときに、撮影スイッチ32をオン操作することにより、学童の周囲の状況が映像として、モニタ31に表示されることになる。したがって、モニタ31に表示される映像から、学童の身に降りかかった非常事態の内容を具体的に把握することができる。なお、主電源スイッチ(図示省略)をカメラ装置1の取付部15の下側に備え、ランドセル3を背負ったときに、肩等と肩ベルト14との間に主電源スイッチ(図示省略)が挟まれることで、主電源スイッチ(図示省略)がオン状態となるように構成してもよい。
【0050】
撮影レンズ11は、上述したように180度の画角を有し、かつ光軸周りの全周囲、すなわち360度の全周囲に亘って撮影可能となっているため、学童の周囲を極めて広い範囲で撮影することができ、多くの情報を把握することができる。なお、撮影スイッチ32は、例えば、プッシュスイッチが用いられ、1回押すとスイッチがオン状態となり、もう一度押すとオフ状態となるように構成されている。
【0051】
受信装置20にカメラ装置1からの画像信号の入力あったときには、制御部25は、モニタ31への映像の表示およびHDD29への記録の他、スピーカ30から警報音を鳴動させる。これにより、受信装置20の近辺にいる者、例えば、親等の保護者に、カメラ装置1を所持する学童に非常事態が発生したことを知らせることができ、モニタ31を見ることを促すことができる。万が一、警報音を聞き逃す等して、モニタ31を見ることができなくても、画像信号は、HDD29に記憶されているので、非常事態の発生に気づいた時点で、非常事態の内容を把握することができる。
【0052】
カメラ装置1の撮影の開始は、カメラ装置1の撮影スイッチ32をオン状態とする他、受信装置20側に備えられる、図示を省略する遠隔撮影スイッチをオン操作することによっても行なうことができる。
【0053】
受信装置20側の遠隔撮影スイッチ(図示省略)をオン操作すると、カメラ装置1の撮影を開始するカメラ装置動作信号が、ネットワークNWおよび電話回線TLを介して、カメラ装置1側の通信部7に入力する。通信部7は、制御部23からの画像信号を受信装置20に対して発信する機能の他、受信装置20側からのカメラ装置動作信号を受信するように機能を有している。カメラ装置1の制御部23は、受信装置20から発信されたカメラ装置動作信号の入力を受け、受信装置20側の遠隔撮影スイッチ(図示省略)がオン操作されたことを認識する。カメラ装置1は、メインスイッチ(図示省略)がオン状態にある限り、カメラ装置1側の撮影スイッチ32のオン・オフ状態に係わらず、カメラ装置動作信号を受信したときは、撮影を開始する。すなわち、遠隔撮影スイッチ(図示省略)をオン操作することにより、カメラ装置1の撮影を強制的に開始することができる。これにより、受信装置20側において、必要に応じて学童の周囲の状況を映像として把握することができる。
【0054】
カメラ装置1と受信装置20には、それぞれ自己を識別する識別子として固定のIPアドレスを有している。したがって、カメラ装置1と受信装置20とを一対一で対応させることができ、カメラ装置1からの画像信号は、特定の受信装置20のみに送信され、また、受信装置20は、特定のカメラ装置1に対してのみ、遠隔操作による撮影の開始等の動作を行うことができる。なお、受信装置20からカメラ装置1に対して遠隔操作を行なわないシステム構成とする場合には、受信装置20側のみ固定のIPアドレスを有すれば足りる。すなわち、カメラ装置1側からは、特定のIPアドレスの受信装置20に対してのみ画像信号を送信することになる。
【0055】
カメラ装置1の制御部23は、撮影の開始に併せて、マイクロフォン8による集音も開始する。そして、画像信号とともに、音信号についても、受信装置20に送信する。受信装置20では、モニタ31にカメラ装置1で捉えた映像を表示する他、スピーカ30から、マイクロフォン8で集音された音を出力する。
【0056】
したがって、受信装置20側においては、モニタ31に表示される映像に併せて、スピーカ30により、学童の周囲の音を聞くことができるので、音と映像により、より確実に学童の周囲の状況を把握することができる。なお、音信号についても、画像信号とともに、HDD29に記録される。
【0057】
ところで、撮影レンズ11は、広角レンズであるため撮像素子12には、極めて強い歪曲収差を有する光像が結像している。したがって、撮像素子12上の結像をそのままモニタ31に表示しても、映像は歪曲収差を含んだ映像となってしまい、映像から学童の周囲の状況を正確に把握することが困難な場合がある。
【0058】
そこで、受信装置20では、撮像素子12上の歪曲収差を含んだ撮影画像に対して、制御部25および座標変換部27において、画像処理を行い、図6、図7および図8に示す表示態様の映像を選択的に生成し、モニタ31に表示する構成となっている。
【0059】
座標変換部27は、制御部25とともに、カメラ装置1から送信された画像データに基づいて、各表示態様に応じた映像を生成する画像処理を行う。この座標変換部27は、撮像素子12の撮像面上の撮像画像を、各表示態様において表示される映像になるように画像処理してモニタ31に表示する際に、撮像面における撮像画像の座標位置をモニタ31における映像の座標位置に変換する機能を有する。メモリ26は、座標変換部27を用いて画像処理を行う際のワークメモリとなっている。
【0060】
受信装置20は、上述した主電源スイッチ(図示省略)や遠隔操作スイッチ(図示省略)の他、モニタ31に表示される映像の表示態様を切り替えるための主選択釦33と副選択釦34が備えられている。これらの主選択釦33と副選択釦34の押下により、図6から図8に示す表示態様の映像が、選択的に生成され、生成された映像がモニタ31に表示される。以下に、モニタ31の映像の表示態様と表示される映像の内容について説明する。
【0061】
カメラ装置1の撮影が開始され、カメラ装置1から受信装置20に送信されたときの最初の表示態様は、図6(A)に示す全体映像M10が表示される全体表示態様である。この全体表示態様の全体映像M10は、映像の中心部分が撮影レンズ11の光軸に一致し、画角180度で、光軸の周囲360度の範囲の映像となっている。
【0062】
なお、モニタ31の上下、左右と、モニタ31に写っている映像である被写体の前後、上下、左右等の方向は、カメラ装置1の姿勢により異なり対応していない。ここでは、例えば、カメラ装置1が、立ち姿勢の学童が背負っているランドセル3の左手側の肩ベルト14に、撮影レンズ11の光軸が上方に向いている状態で取り付けられている場合を一例にして説明をする。つまり、カメラ装置1は、学童の左肩の上に光軸を上方に向けて取り付けられている。このような姿勢でカメラ装置1の撮影がされる場合には、モニタ31に表示されている全体映像M10の映像の上部側は、学童の前方向の映像となり、下部側の映像は、学童の背後方向の映像となっている。また、全体映像M10の左部側は学童の左手方向の映像となり、右部側の映像は学童の右手方向の映像となっている。また、全体映像M10の中央部は、学童の頭上方向の映像となっている。
【0063】
以下に説明する映像の内容を示す図において、映像となっている被写体の前後左右方向をそれぞれ、(前)(後)(右)(左)として示す。(中)は、上下左右の真ん中、すなわち光軸上の位置を示す。
【0064】
この全体映像M10は、撮像素子12の撮像面に結像した広角の撮影レンズ11の結像がそのままの形で表示されたものとなっている。上述したように、撮影レンズ11の結像の大きさは、撮像素子12の撮像面内に収まるようになっている。そのため、撮像素子12の撮像面における撮影レンズ11の結像の輪郭は円形になり、結像部分以外の撮像面の部分は、光のあたる量が少ない暗い部分となる。この実施の形態では、撮像面の撮影レンズ11の結像部分以外の部分については、画素データを輝度0のデータとして扱うこととしている。そのため、全体映像M10は、撮影レンズ11の結像の映像が円形に表示され、それ以外の部分については黒色に表示されたものとなっている。なお、この全体映像M10は、撮影レンズ11により180度の画角で撮影した映像となっているため、中心から周囲に向かっていわゆる歪曲収差が強くなる映像になっている。
【0065】
モニタ31の表示は、主選択釦33を押下することにより、図6(A)に示す全体映像M10を表示する全体表示態様から図6(B)に示す拡大映像M20を表示する拡大表示態様および図6(C)に示す併せ映像M30を表示する併せ表示態様Aに切り替えることができる。表示態様の切り替えは、主選択釦33を押下する度に順に、全体表示態様(図6(A))→拡大表示態様(図6(B))→併せ表示態様A(図6(C))→全体表示態様(図6(A))…の順に切り替わる。すなわち、主選択釦33を押下することにより、全体表示態様(図6(A))、拡大表示態様(図6(B))および併せ表示態様A(図6(C))の3つの表示態様を選択することができる。
【0066】
図6(B)に示す拡大表示態様における拡大映像M20は、図6(A)に示す全体映像M10の中央部に点線で示す略矩形の領域M20Aの映像について、撮影レンズ11による歪曲収差が補正処理されるとともに、モニタ31の表示画面いっぱいに表示されるように拡大処理された拡大映像となっている。領域M20Aは、撮影レンズ11の光軸を中心にして、例えば、前後方向の画角が90度、左右方向の画角が120度の範囲にある被写体の映像を含むように設定されている。
【0067】
すなわち、拡大映像M20の映像は、撮影レンズ11の光軸を中心にして、前後方向に90度の画角で、かつ、左右方向に120度の画角の左右方向に広がるパノラマ映像となっている。
【0068】
この拡大映像M20は、領域M20Aの部分に対応する撮像画像の画像データに基づいて生成される。すなわち、カメラ装置1から出力される撮像素子12の画像データのうち、領域M20Aに対応する部分の画像データに対して画素データの補完処理等の画像処理を行い生成される。かかる画像処理により、拡大映像M20は、領域M20Aに対応する部分の撮像画像について、歪曲収差の補正処理と拡大処理が行われた映像として生成される。なお、拡大映像M20は、撮像素子12の画像データに基づいて生成されるので、全体映像M10の映像データから拡大映像M20を生成するのに比べて、モニタ31に表示される映像の劣化は少ないものとなっている。
【0069】
図6(C)に示す併せ表示態様Aにおける併せ映像M30は、図6(B)に示す拡大映像M20に加えてモニタ31の表示画面の左上に、全体映像M10の縮小映像M40を併せて表示した映像となっている。縮小映像M40は、画像圧縮処理部22から出力される撮像素子12の画像データに対して、画素データの間引き処理等を行い生成する。
【0070】
拡大映像M20と縮小映像M40とを1つの画面上に併せて表示することにより、縮小映像M40により、撮影レンズ11により撮影されている範囲の全体の様子を観ながら、撮影範囲の中央部については、拡大された映像により詳細な様子を観ることができる。また、縮小映像M40には、領域M20Aに対応する範囲を示す表示として領域表示M41が重ねて表示される。この領域表示M41が表示されることにより、拡大映像M20の縮小映像M40における位置関係を知ることができる。
【0071】
全体表示態様(図6(A))、拡大表示態様(図6(B))あるいは併せ表示態様A(図6(C))の各表示態様において、副選択釦34を押下すると、以下に説明するように、各表示態様毎に、さらに複数の表示態様を選択することができる。
【0072】
モニタ31の表示態様が全体表示態様(図6(A))のときに、副選択釦34を一度押下すると、モニタ31の表示態様を図7(A)に示す拡大映像M20を表示する拡大表示態様に切り替えることができる。この図7(A)に示す拡大映像M20は、図6(B)に示す拡大映像M20と同一の映像である。すなわち、全体表示態様(図6(A))のときに、副選択釦34を一度押下したときには、主選択釦33を押下したときと同一の拡大映像M20が表示される。
【0073】
そして、もう一度、副選択釦34を押下すると、モニタ31の表示態様を、図7(B)に示すように、2分割映像M50と2分割映像M51の2つの映像が、モニタ31の表示画面の上下に表示される2分割表示態様に切り替えることができる。
【0074】
2分割映像M50,M51は、図7(D)に示す全体映像M10において、点線で示すアーチ状の略扇型を呈する領域M50A,M51Aにそれぞれ対応する映像である。2分割映像M50は、領域M50Aの映像に対応し、2分割映像M51は、領域M51Aの映像に対応している。
【0075】
領域M50A,M51Aは、全体映像M10の中心に対して前後対称に設定される領域であって、各領域は、例えば、撮影レンズ11の周縁側から光軸に対して60度の画角の範囲で、かつ、光軸の周りに110度の画角の範囲にある被写体の映像を含むように設定されている。すなわち、2分割映像M50,M51の映像は、撮影レンズ11の光軸に対して前後の位置において、撮影レンズ11の周縁から光軸側に60度の画角で、かつ、左右方向に110度の画角の左右方向に広がるパノラマ映像となっている。
【0076】
2分割映像M50,M51は、領域M50A,M51Aの映像について、撮影レンズ11による歪曲収差が補正処理されるとともに、モニタ31の上下のそれぞれの表示画面いっぱいに表示されるように拡大処理された拡大映像となっている。2分割映像M50,M51も、上述した拡大映像M20と同様に、画像圧縮処理部22から出力される撮像素子12の画像データに対して、画素データの補完処理等を行うことにより、領域M50A,M51Aに対応する部分の撮像画像について、歪曲収差の補正処理と拡大処理が行われた映像として生成される。そのため、全体映像M10の映像データから2分割映像M50,M51を生成するのに比べて、モニタ31に表示される映像の劣化は少ないものとなっている。
【0077】
さらに、もう一度、副選択釦34を押下すると、モニタ31の表示態様を、図7(C)に示すように、4分割映像M60、4分割映像M61、4分割映像M62および4分割映像M63の4つの映像が、モニタ31の表示画面の上下左右に表示される4分割表示態様に切り替えることができる。4分割映像M60,M61,M62,M63は、図7(E)に示す全体映像M10において、点線で示すアーチ状の略扇型を呈する領域M60A,M61A,M62A,M63Aにそれぞれ対応する映像である。
【0078】
4分割映像M60は領域M60Aに、4分割映像M61は領域M61Aに、4分割映像M62は領域M62Aに、そして、4分割映像M63は領域M63Aにそれぞれ対応している。領域M60A,M61A,M62A,M63Aは、全体映像M10の中心に対称に左右の斜め45度前方と斜め45度後方に設定される領域であって、各領域は、例えば、撮影レンズ11の周縁側から光軸に対して50度の画角の範囲で、かつ、光軸の周りに90度の画角の範囲にある被写体の映像を含むように設定されている。
【0079】
すなわち、4分割映像M60,M61,M62,M63の映像は、撮影レンズ11の左右の斜め45度前方と斜め45度後方の位置において、撮影レンズ11の周縁から光軸側に50度の画角で、かつ、左右方向に60度の画角のパノラマ映像となっている。
【0080】
4分割映像M60,M61,M62,M63は、領域M60A,M61A,M62A,M63Aの映像について、撮影レンズ11の歪曲収差が補正処理されるとともに、モニタ31の上下のそれぞれの表示画面にいっぱいに表示されるように拡大処理された拡大映像となっている。4分割映像M60,M61,M62,M63も、上述した拡大映像M20あるいは2分割映像M50,M51と同様に、画像圧縮処理部22から出力される撮像素子12の画像データに対して、画素データの補完処理等を行うことにより、領域M60A,M61A,M62A,M63Aに対応する部分の撮像画像について、歪曲収差の補正処理と拡大処理が行われた映像として生成される。そのため、全体映像M10の映像データから4分割映像M60,M61,M62,M63を生成するのに比べて、モニタ31に表示される映像の劣化は少ないものとなっている。
【0081】
この4分割表示態様の表示態様に続いて、副選択釦34をさらにもう一度押下すると、モニタ31の表示は、再び、拡大全体表示態様(図7(A))となる。以上のように、モニタ31の表示態様が全体表示態様(図6(A))のときに、副選択釦34を押下すると、押下する度に、拡大表示態様(図7(A))→2分割表示態様(図7(B))→4分割表示態様A(図7(C))→拡大表示態様(図7(A))…の順にモニタ31の表示態様が切り替わる。
【0082】
モニタ31の表示態様が拡大表示態様(図6(B))のときに、副選択釦34を一度押下すると、モニタ31の表示態様を図7(B)に示す2分割表示態様に切り替えることができる。さらに、もう一度、副選択釦34を押下すると、モニタ31の表示態様を図7(C)に示す4分割表示態様に切り替えることができる。この表示態様に続いて、副選択釦34をさらにもう一度押下すると、モニタ31の表示態様は、図6(B)に示す拡大映像M20と同一の映像が表示される図7(A)に示す拡大表示態様となる。
【0083】
すなわち、モニタ31の表示態様が拡大表示態様(図6(B))のときに、副選択釦34を押下すると、押下する度に、2分割表示態様(図7(B))→4分割表示態様(図7(C))→拡大表示態様(図7(A))…の順にモニタ31の表示態様を切り替えることができる。
【0084】
モニタ31の表示態様が、併せ映像M30が表示されている併せ表示態様A(図6C))のときに、副選択釦34を一度押下すると、モニタ31の表示態様を、図8(A)に示す併せ映像M70が表示される併せ表示態様Bに切り替えることができる。併せ映像M70は、縮小映像M40と拡大映像M71とが併せて表示される映像となっている。
【0085】
拡大映像M71は、縮小映像M40に重ねて表示されるアーチ状の略扇型を呈する領域表示M42により指定する領域に対応する映像である。
【0086】
領域表示M42は、縮小映像M40において、例えば、撮影レンズ11の周縁側から光軸に対して50度の画角の範囲で、かつ、光軸の周りに90度の画角の範囲にある被写体の映像に含むように設定されている。すなわち、映像M71の映像は、撮影レンズ11の周縁から光軸側に50度の画角で、かつ、左右方向に90度の画角のパノラマ映像となっている。
【0087】
この領域表示M42は、ボール型スイッチにより構成される領域表示回転スイッチ35を回転操作することにより、縮小映像M40の周方向の任意の位置に移動できるようになっている。拡大映像M71は、領域表示回転スイッチ35を操作して所望の位置に移動させられた領域表示M42により指定された領域の映像について、撮影レンズ11の歪曲収差が補正処理されるとともに、モニタ31の表示画面にいっぱいに表示されるように拡大処理された拡大映像となっている。
【0088】
拡大映像M71は、拡大映像M20と同様に、画像圧縮処理部22から出力される撮像素子12の画像データに対して、画素データの補完処理等を行うことにより、領域表示M42に対応する部分の撮像画像について、歪曲収差の補正処理と拡大処理が行われた映像として生成される。そのため、画素データが間引き処理されて生成された縮小映像M40の映像データから拡大映像M71を生成するのに比べて、モニタ31に表示される映像の劣化は少ないものとなっている。
【0089】
縮小映像M40は、モニタ31の表示画面の左上に表示されている。拡大映像M71と縮小映像M40とを1つの画面上に併せて表示することにより、縮小映像M40により、撮影レンズ11により撮影されている範囲の全体の様子を観ながら、領域表示M42の撮影範囲については、拡大された映像により詳細な様子を観ることができる。また、領域表示M42を表示することにより、拡大映像M71の縮小映像M40における位置関係を知ることができる。
【0090】
モニタ31の表示態様が、上述の併せ表示態様B(図8(A))のときに、副選択釦34を一度押下すると、モニタ31の表示態様を図8(B)に示す併せ映像M80が表示される併せ表示態様Cに切り替えることができる。この併せ映像M80は、縮小映像M40に併せて、2分割映像M81Aと2分割映像M81Bの2つの映像が表示される映像となっている。
【0091】
2分割映像M81A,M81Bは、縮小映像M40に重ねて表示されるアーチ状の略扇型を呈する2つの領域表示M43A,M43Bにより指定される領域に対応する映像である。2分割映像M81Aは領域表示M43Aに対応し、2分割映像M81Bは領域表示M43Bに対応している。
【0092】
領域表示M43A,M43Bは、縮小映像M40において、撮影レンズ11の光軸の両側に対称に、例えば、撮影レンズ11の周縁側から光軸に対して60度の画角の範囲で、かつ、光軸の周りに110度の画角の範囲にある被写体の映像を含むように設定されている。すなわち、2分割映像M81A,M81Bの映像は、撮影レンズ11の光軸に対して対称の位置において、撮影レンズ11の周縁から光軸側に60度の画角で、かつ、左右方向に110度の画角の左右方向に広がるパノラマ映像となっている。
【0093】
この領域表示M43A,M43Bは、領域表示回転スイッチ35を回転操作することにより、縮小映像M40の周方向の任意の位置に移動できるようになっている。2分割映像M81A,M81Bは、領域表示回転スイッチ35を操作して所望の位置に移動させられた領域表示M43A,M43Bにより指定された領域の映像について、撮影レンズ11の歪曲収差が補正処理されるとともに、モニタ31の上下のそれぞれの表示画面にいっぱいに表示されるように拡大処理された拡大映像となっている。
【0094】
2分割映像M81A,M81Bは、上述した2分割映像M50,M51と同様に、画像圧縮処理部22から出力される撮像素子12の画像データに対して、画素データの補完処理等を行うことにより、領域表示M43A,M43Bに対応する部分の撮像画像について、歪曲収差の補正処理と拡大処理が行われた映像として生成される。そのため、画素データが間引き処理されて生成された縮小映像M40の映像データから2分割映像M81A,M81Bを生成するのに比べて、モニタ31に表示される映像の劣化は少ないものとなっている。
【0095】
縮小映像M40は、モニタ31の表示画面の左上に表示されている。2分割映像M81A,M81Bと縮小映像M40とを1つの画面上に併せて表示することにより、縮小映像M40により、撮影レンズ11により撮影されている範囲の全体の様子を観ながら、領域表示M43A,M43Bの撮影範囲については、拡大された映像により詳細な様子を観ることができる。また、領域表示M43A,M43Bを表示することにより、2分割映像M81A,M81Bの縮小映像M40における位置関係を知ることができる。
【0096】
モニタ31の表示態様が、上述の併せ表示態様C(図7(B))のときに、副選択釦34を一度押下すると、モニタ31の表示態様を図8(C)に示す併せ映像M90が表示される併せ表示態様Dに切り替えることができる。
【0097】
この併せ映像M90は、縮小映像M40に併せて、4分割映像M91A、4分割映像M91B、4分割映像M91C、4分割映像M91Dの4つの映像が表示される映像となっている。4分割映像M91A,M91B,M91C,M91Dは、縮小映像M40に重ねて表示されるアーチ状の略扇型を呈する4つの領域表示M44A,M44B,M44C,M44Dにより指定される領域に対応する映像である。
【0098】
4分割映像M91Aは領域表示M44Aに対応し、4分割映像M91Bは領域表示M44Bに対応し、4分割映像M91Cは領域表示M44Cに対応し、4分割映像M91Dは領域表示M44Dに対応している。領域表示M44A,M44B,M44C,M44Dは、縮小映像M40において、撮影レンズ11の光軸の回りに対称に45度の間隔で、例えば、撮影レンズ11の周縁側から光軸に対して50度の画角の範囲で、かつ、光軸の周りに90度の画角の範囲にある被写体の映像を含むように設定されている。
【0099】
すなわち、4分割映像M91A,M91B,M91C,M91Dの映像は、撮影レンズ11の光軸の周りに対称に、撮影レンズ11の周縁から光軸側に50度の画角で、かつ、左右方向に90度の画角のパノラマ映像となっている。この領域表示M44A,M44B,M44C,M44Dは、領域表示回転スイッチ35を回転操作することにより、縮小映像M40の周方向の任意の位置に移動できるようになっている。4分割映像M91A,M91B,M91C,M91Dは、ボール型スイッチ413を操作して所望の位置に移動させられた領域表示M44A,M44B,M44C,M44Dにより指定された領域の映像について、撮影レンズ11の歪曲収差が補正処理されるとともに、モニタ31の上下左右のそれぞれの表示画面にいっぱいに表示されるように拡大処理された拡大映像となっている。
【0100】
4分割映像M91A,M91B,M91C,M91Dは、上述した4分割映像M60,M61,M62,M63と同様に、画像圧縮処理部22から出力される撮像素子12の画像データに対して、画素データの補完処理等を行うことにより、領域表示M44A,M44B,M44C,M44Dに対応する部分の撮像画像について、歪曲収差の補正処理と拡大処理が行われた映像として生成される。そのため、画素データが間引き処理されて生成された縮小映像M40の映像データから4分割映像M91A,M91B,M91C,M91Dを生成するのに比べて、モニタ31に表示される映像の劣化は少ないものとなっている。
【0101】
縮小映像M40は、モニタ31の表示画面の左上に表示されている。4分割映像M91A,M91B,M91C,M91Dと縮小映像M40とを1つの画面上に併せて表示することにより、縮小映像M40により、撮影レンズ11により撮影されている範囲の全体の様子を観ながら、領域表示M44A,M44B,M44C,M44Dの撮影範囲については、拡大された映像により詳細な様子を観ることができる。また、領域表示M44A,M44B,M44C,M44Dを表示することにより、2分割映像M81A,M81Bの縮小映像M40における位置関係を知ることができる。
【0102】
このように、モニタ31の表示態様が併せ表示態様A(図6(C))が表示されているときに、副選択釦34を押下すると、押下する度に、併せ表示態様B(図8(A))→併せ表示態様C(図8(B))→併せ表示態様D(図8(C))…の順にモニタ31の表示態様を切り替えることができる。
【0103】
上述のように、モニタ31に表示される映像の表示態様を切り換えることにより、学童の周囲の状況を的確に把握することができる。
【0104】
例えば、学童が不審者に声を掛けられ、これに危険を感じた学童は、撮影スイッチ32をオンすることで、先ず、モニタ31には、撮影レンズ11の全撮影範囲である図6(A)の全体映像M10が表示される。そして、受信装置20側において、保護者が、モニタ31の全体映像M10から、学童に生じた状態を把握するため、表示態様を適宜に切り換えて、不審者の顔や学童がいる場所の目印になる物を確認することで、学童の周囲の状況を的確に把握することができる。なお、この時点で、スピーカ30からは、マイクロフォン8により周音した、学童と不審者の会話や周囲の音が出力されている。また、カメラ装置1により撮影された画像信号と、集音された音信号が、HDD29に記録されている。
【0105】
表示態様の切り換えは、具体的には、例えば、次のように行なう。不審者が学童の前方に立っている場合には、全体映像M10においては、不審者は、全体映像M10の上部側に映っている。そこで、保護者は、副選択釦34を2回押下してモニタ31の表示態様を図7(B)に示す2分割表示態様に切り替える。このとき、不審者の顔や姿は、モニタ31の上部側、すなわち、2分割映像M50に拡大されて表示されていることになる。2分割映像M50は、歪曲収差が補正されているため、不審者の容姿を正確に把握することができる。
【0106】
続いて、副選択釦34をもう一度押下すると、モニタ31の表示態様は、図7(C)に示す4分割表示態様に切り替わる。この表示態様は、学童の前後左右の様子が、歪曲収差が補正された状態で拡大されて映されることになるので、学童がいる場所の目印になる物(例えば、看板や建物)を正確に把握することができる。
【0107】
また、保護者が、学童の周囲の適宜の場所を拡大してモニタ31に表示したいときには、図6(C)の併せ映像M30が表示される併せ表示態様Aにおいて、副選択釦34を一度押下して、図8(A)に示す併せ映像M70が表示される併せ表示態様Bにモニタ31の映像を切り替える。そして、領域表示回転スイッチ35を回転操作して、任意の場所を拡大表示した拡大映像M71を表示させる。
【0108】
主選択釦33、副選択釦34、および領域表示回転スイッチ35を適宜に操作して、図6から図8に示す表示態様を切り換えることにより、受信装置20側の保護者等が特に注目して確認したい映像を見ることができ、学童の周囲の状況を一層的確に把握することができる。
【0109】
なお、撮像素子12に、例えば、300万画素レベルあるいは、これを超える画素数の物を使用することにより、拡大映像M20,M50,M51,M60〜M63,M71,M81A,M81B,M91A〜91Dをはじめ、各表示態様の映像を鮮明なものとすることができる。
【0110】
ところで、上述した実施の形態においては、カメラ装置1と受信装置20は、ネットワークNWを介して接続されているが、電話回線TLのみを介して、相互に接続するようにしてもよい。この場合には、それぞれの識別子は、電話番号となる。
【0111】
また、上述の実施の形態に示すカメラ装置1は、バッテリ9および通信部7をカメラ装置1に内蔵する構成としているが、回路基板6、バッテリ9、通信部7のうち、少なく一つを、カメラ装置1とは別体として、ランドセル3内に収容する構成としてもよい。この場合には、図2および図3に点線で示すように、USB(Univereal Serial Bus)ケーブル36にて、カメラ装置1とランドセル3内に収容された回路基板6等とを接続する。
【0112】
カメラ装置1は、ランドセル3の他、図9に示すように、学童の胸に付ける名札(学童用名札)37に取り付けるようにしても良い。この場合には、学童が立ち姿勢をとっている場合には、モニタ31の全体映像M10においては、中央部が、学童の前側の映像となる。また、全体映像M10の上部側の映像は、学童の頭部(上方)方向の映像となり、下部側の映像は、学童の足元(下方)方向の映像となる。また、全体映像M10の映像の左部側は、学童の左手方向の映像となり、右部側の映像は、学童の右手側の映像となる。
【0113】
ランドセル3や名札37は、学童が登下校時に確実に見に付ける携帯具である。そのため、係る携帯具にカメラ装置1を取り付けることにより、学童の安全を確保することができる。なお、学童用背負いバックとしては、ランドセル3の他、通学用のカバンであって、背負いひも(背負い用のベルト)が付き、背負うことができるカバンも含む。
【0114】
携帯具を装着する人である被保護者としては、学童の他、女性や老人等を対象とすることができる。そのため、ブローチ、ネックレスあるいは帽子等、被保護者が見に付ける際に外部に露出する各種の携帯具に、カメラ装置1を取り付けることにより、女性や老人等の安全を確保することができる。なお、携帯具を装着する人は、被保護者の他、普通の人を対象としてもよい。
【0115】
受信装置20は、モニタ31や、上述した主選択釦33、副選択釦34、領域表示回転スイッチ35等の操作釦類や、制御部23、座標変換部27を備える画像処理制御手段部を備えた、監視システム2の専用機として構成するほか、パソコンを用いてもよい。この場合には、モニタ31は、パソコンのモニタに相当し、また主選択釦33、副選択釦34、領域表示回転スイッチ35等の操作釦類は、パソコンのキーボードあるいはマウスを利用することになる。また、制御部23、座標変換部27を備える画像処理制御手段部は、アプルケーションソフトがインストールされることにより、パソコンに内蔵されたCPU等が担うことになる。また、受信装置20は、PHS等の携帯電話を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態に係る監視カメラ装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る携帯具としてのランドセルの斜視図である。
【図3】図2に示すランドセルの監視カメラ装置が取り付けられている部分の拡大斜視図である。
【図4】図1における切断線A−Aにおける、監視カメラ装置の断面の概略を示す概略断面図である。
【図5】図1の監視カメラ装置および監視システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図5の監視システムのモニタにおける映像の表示態様を示す図である。
【図7】図5の監視システムのモニタにおける映像の他の表示態様を示す図である。
【図8】図5の監視システムのモニタにおける映像の他の表示態様を示す図である。
【図9】図1に示す監視カメラ装置を名札に取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
1 … 監視カメラ装置
2 … 監視システム
3 … ランドセル(携帯具/学童用背負いバッグ)
5 … カメラ部
7 … 通信部
11 … 撮影レンズ
15 … 取付部
20 … 受信装置
25 … 制御部(画像処理制御手段)
27 … 座標変換部(画像処理制御手段)
31 … モニタ
37 … 名札(携帯具/学童用名札)
M20 … 拡大映像
M40 … 縮小映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広角の撮影レンズを備えるカメラ部と、
上記カメラ部で撮影した映像の画像信号を無線信号として発信する通信部と、
を備え、
上記カメラ部は、人が装着する携帯具に対して、外部に露出した状態で取り付ける取付部を備えることを特徴とする監視カメラ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視カメラ装置は、前記カメラ部を外部から駆動するための無線信号を受信する通信部を備えることを特徴とする監視カメラ装置。
【請求項3】
前記携帯具は、学童用背負いバッグまたは学童用名札であることを特徴とする請求項1または2に記載の監視カメラ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の監視カメラ装置と、
この監視カメラ装置から発信される画像信号に基づいて、前記カメラ部で捉えた映像を表示するモニタを備える受信装置と、
を備え、
上記受信装置は、この受信装置を識別する識別子を有し、
前記監視カメラ装置は、上記識別子を有する上記受信装置に対して画像信号を発信する監視システム。
【請求項5】
請求項2に記載の監視カメラ装置と、
この監視カメラ装置から発信される画像信号に基づいて、カメラ部で捉えた映像を表示するモニタを備える受信装置と、
を備え、
前記監視カメラ装置と上記受信装置は、それぞれ自己を識別する識別子を有し、
前記監視カメラ装置は、上記識別子を有する上記受信装置に対して前記画像信号を発信し、
前記受信装置は、上記識別子を有する前記監視カメラ装置に対してカメラ部を駆動するため信号を発信する、
ことを特徴とする監視システム。
【請求項6】
前記受信装置は、前記監視カメラ装置で撮影した撮像画像の全体が前記モニタの表示画面の一部の領域に表示される縮小映像を生成する縮小映像生成処理と、上記撮像画像の1または複数の部分について前記撮影レンズによる歪みを補正するとともに上記縮小映像に比べて拡大された拡大映像を生成する拡大映像生成処理と、上記縮小映像および上記拡大映像を上記表示画面に表示する制御を行なう画像処理制御手段備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の監視システム。
【請求項7】
人が外部に露出した状態で装着する携帯具において、
請求項1または2に記載の監視カメラ装置を備えることを特徴とする携帯具。
【請求項8】
前記携帯具は、学童用背負いバッグまたは学童用名札であることを特徴とする請求項7に記載の携帯具。
【請求項9】
前記監視カメラ装置を駆動する電源が携帯具に配置されることを特徴とする請求項7に記載の携帯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−135978(P2008−135978A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320600(P2006−320600)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(596143691)オプト株式会社 (26)
【Fターム(参考)】