説明

目標捕捉装置

多重反射のビーム成分を意図的に減衰させる。減衰フィルタ(18,19)を受信器(2)の前に及び送信器(1)の後にそれぞれ設ける。ビーム成分の強度の減衰は、ファクターで0.7、少なくとも0.5または0.3となる。別の方法または追加的に、ミラー(10)または立方体プリズム(14)の偏向手段を用いてビームを減衰させることができる。多重反射するビーム成分は、減衰手段を少なくとも2回通過する。従って、通常のビーム成分に比べて、一層減衰される。さらに受信器(2)の入力表面(5)は、円錐の偏向表面で囲まれている。この偏向表面は、そこに入射する光を吸収し、残部を入力方向以外の方向に反射して、多重反射を生じさせない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプトエレクトロニクスの距離計または方向計などの目標捕捉装置に関する。目標捕捉装置に関しては、装置に対して目標物の位置(目標物の距離またはその位置する方向)を、変調した光のビームで照射し、目標物で反射して受信する放射光を処理して測定する。このタイプの目標捕捉装置は、特に測量目的に使用される。典型的な目標物は、ガラスのような逆反射体またはプラスチックのような反射シートである。
【背景技術】
【0002】
一般的な目標捕捉装置は、種々の刊行物に記載されている。DE 198 40 049 A1に記載の距離計は、組合せた送信ビームを、対物レンズだけの光軸に偏向させ、対物レンズを通して受取る測定ビームの経過時間またはその位相を測定し、対物レンズから目標物までの距離を得る。
【0003】
DE 43 16 348 A1は、同様の距離計を開示している。受信器とは別個の対物レンズを送信器と関連させている。
【0004】
このタイプの目標捕捉装置の場合、多重反射が発生する。目標物で反射される測定ビーム成分は、装置の素子で反射され、送信ビームに重複される。送信ビームの一部は、目標物で2度目の反射を受け、受信器で捕捉される。捕捉装置から目標物へ2度またはそれ以上に移動する多重反射の成分は、測定結果に厄介な歪曲を引き起こす。位相、走行時間、画像をベースにした測定ビームの処理で方向測定する場合は特に厄介になる。多重反射の相対強度が大きいほど、その歪曲は概して大きくなる。捕捉装置と目標物の距離が小さい場合、特に重大となる。多重反射の場合、減衰にも拘わらず、多重反射成分の強度が大きい場合、特に重大となる。
【0005】
決定的に重大なのは、受信器による反射で、特に受信器の入口表面または受信器を取り囲む表面による反射である。厄介な反射は、送信器でも発生する。両方のケースにおいて、反射した放射光は、多かれ少なかれ光学系で目標物に焦点が合わせられ、ほんの少し減衰され、測定結果が著しく歪曲される。
【0006】
距離測定には、多重反射が測定結果に影響を与えない方法もあるが、例えば、出願人のMEKOMETER ME 5000(登録商標)に使用されているゼロ位相がある。変調周波数を調整して、一方で送信器と受信器の距離、他方では送信器と目標物の距離が、常に変調周波数の倍数とする。これらの方法は、概して複雑で、対応する目標捕捉装置は、比較的に大きくなりそして高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な目標捕捉装置に対して、目標物と装置間の多重反射を極力抑えて測定精度を改良するのが本発明の目的である。この目的は、請求項1に記載の特徴で達成される。発明の別の展開は、従属項で記載している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、目標捕捉装置を提供し、装置は、多重反射、特に受信器または送信器による多重反射から生ずる放射光、または反射に到る放射光を極力抑制または減衰させる。多重反射による測定誤差を大幅に除去または減少させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示す距離計は、筐体に送信器1と、受信器2と、光ファイバ4を備えている。受信器2は、ホルダ3を有し、光ファイバ4は、ホルダ3に固定され、端部表面は、コートした入口表面5を形成する。距離計は、フォトダイオード6のような受光素子を備えている。受光素子は、入射光の強度に対応する電気信号を生成する。送信器1は、赤外で発信する半導体レーザ7およびその後ろに設けた光学視準系8を備えている。半導体レーザ7は、コントロールユニット9で制御され、フォトダイオード6の出力信号の処理も行なう。
【0010】
送信器1から発するビームは、ミラー(第1偏向手段)で対物レンズ11の光軸に偏向される。ビームは、対物レンズ11を通過し、僅かな発散で目標物13に向かう。目標物13は、逆反射体、反射物、反射板の形態または目標物の表面、例えば、建造物の表面である。
【0011】
ミラー10の少し後に、立方体のプリズム14(第2偏向手段)を対物レンズ11の光軸に設けている。立方体プリズム14は、目標物13で反射、対物レンズ11を経た測定ビーム15を受信器2の入口表面5に導く。
【0012】
既知の距離の基準光路が、2つのビームスプリッタ16、17で形成される。送信器1で発するビームの一部が、受信器2に直接に基準ビームとして通過する。第1ビームスプリッタ16は、光学視準系8とミラー10の間に位置し、第2ビームスプリッタ17は、立方体プリズム14と入口表面5の間に位置する。
【0013】
測定ビーム15および基準ビームは、受信器2で一部反射される。さらに測定ビーム15の成分は、送信器1に到達し、そこで反射される。目標物13による反射後のこれらの成分は、測定結果に歪曲をもたらす。
【0014】
多重反射の意図的な減衰に、伝達する光の強度をファクタAだけ下げる第1減衰フィルタ18を受信器2の入口表面5の直前に設ける。ファクタAは、例えば、A£0.7、好ましくはA£0.5、またはA£0.3でもよい。
【0015】
対応する第2減衰フィルタ19を、送信器1の光学視準系8の後に直接設ける。2つの減衰フィルタ18、19は、切替可能にしている。目標物13の距離の大きさに対応して、受信器2または送信器1の前後に各々、好ましくは互いに独立して設けることができる。例えば、距離が比較的長い場合、減衰フィルタ18、19又はそれらの少なくとも1つを省略することができる。減衰フィルタ18、19は、可変または任意に調整可能な透過にすることができ、目標物の距離に応じて減衰を選択することができる。減衰フィルタ18、19は、種々の方法で形成できる。全色性または整色性の膜材料、全色性の感度のX線フィルム、中性フィルタまたはゼラチングレーフィルタ、透明フィルタ、線構造を備えたガラス、スクリーンフィルタ、グレーティングフィルタ、確率減衰パターンを備えたフィルタである。
【0016】
代わりに又は追加的に、第1および/または第2偏向手段を、減衰ビームの形式にしてもよい。ミラー10を2色性のミラーにして、そこに入射する光の一部を吸収する。同様に、立方体のプリズム14を僅か吸収させる様にしてもよい。
【0017】
偏向面20を受信器2のホルダ3に設けて多重反射を起こすビーム成分を減衰させる。
偏向面20は、0.5〜1.5mmの深さに形成され、円錐状の漏斗形をなしている。光ファイバ4の端部21は、円錐の漏斗の軸に自由に位置する。端部は、同じ長さで入力表面5に接続されている。偏向面20は、光ファイバ4を囲むように円錐状に隆起した表面にしてもよい。円錐形は表面形状の例示的なもので、そこに入射する測定ビームを入射方向以外に反射するものである。
【0018】
距離計から目標物13までの距離の測定は、下記の方法で行なわれる。連続した短い光パルスを送信器1で発信させ、目標物13で反射したパルスの到着する走行時間で距離を測定する。又は、周期的に変調した連続光ビーム、例えば正弦波で発信させる。
【0019】
後者の場合、距離測定は、目標物13で反射そして受信器2で受信するビームの位相の位置を基準ビームに対して決定する。この方法は、十分に知られており詳細な説明は省略する。
【0020】
特に位相測定の場合、送信器1からミラー10、対物レンズ11、目標物13を経て、対物レンズ11、立方体のプリズム14を経て光ファイバ4に戻る通常の光路を取らないビーム成分、および目標物13以外の物体で反射され光路の一部を2回以上通るビーム成分は、無視できない役割を果たす。目標物13で反射され、対物レンズ11に入射し、受信器2を経た測定ビーム15の成分の反射で特に入力表面5による場合は重大である。この問題は、入力表面5に僅かの傾斜(例えば5%)を与えて緩和できるが、不利な点もある。測定ビーム15が、屈折されて或る角度で入射する。これは、光ファイバの使用可能な開口数を減少させる。
【0021】
本発明では、反射ビーム成分は、特に減衰フィルタ18で減衰される。通常のビーム成分、すなわち、目標物13で1回だけ反射されるビーム成分は、減衰フィルタ18を通過し、ファクタAで1回のみ減衰される。一方、入力表面5で反射され、目標物13で再度反射される成分は、減衰フィルタ18を3回通過する。すなわちファクタがAとなる。ファクタがA以上となり、A=0.3の場合0.3@0.1となり、通常の成分と比較して実質的には完全に抑制している。特に、入力表面5および目標物13による反射は、各々減衰に関与する。二重に反射する成分は、3回減衰を受けるが、通常成分は1回だけの減衰を受ける。
【0022】
入射表面5の周囲に入射する測定ビームの成分も面倒である。偏向面20の形成で大部分を吸収し、完全に避けることができない残部は、入射方向に一致しない方向に反射されるようにする。測定ビーム15は、立方体プリズム14で反射され対物レンズ11を経て目標物13に到ることはない。偏向面20の形成は、受信器2による厄介な反射を大幅に減少させ、多重反射を減ずる手段となる。
【0023】
受信器2で反射されるビーム成分の減衰フィルタ18に対応する役割は、測定ビーム15の成分に対する減衰フィルタ19で果たされる。測定ビーム15は、ミラー10で送信器1に投げ返され、送信器1で反射される。通常のビーム成分の1回の減衰と比較して、3倍の減衰が生じる。全体的には、少なくとも3つの距離計が考えられる1つは、受信器2の前に単一の減衰手段18を備えている距離計。もう1つは、送信器1の前に単一の減衰手段19を備えている距離計。更にもう1つは、図1に示すような2つの減衰手段18、19を備えた距離計である。
【0024】
減衰手段を偏向手段と一体化することも可能である。偏向手段としては、ミラー、プリズム、またはビーム経路を偏向する他の素子がある。これにより距離計の設計を簡素化し、製造コストを削減する。ダイクロイックミラー自身は、厄介な反射をめったに形成しない。減衰手段としての減衰フィルタを、送信器および/または受信器にできるだけ近くに設けた場合、減衰フィルタ自身の反射とは別に、全ての内部反射は、同様に減衰される。従って、基準光路で反射される成分および測定結果に歪曲を与える成分も同様に減衰される。
【0025】
図1,2に示す距離計は、距離計の分野では当業者には知られており、多数の可能な構成の1つである。測定精度に影響を及ぼす多重反射を抑制または減少する発明の原理は、1つ以上の対物レンズを備えた同軸距離計の場合、そして同軸でない場合にも適用できる。
【0026】
図3、4の方向計にも同様に適用できる。この装置は、一部、図1、2の距離計同様に設計されている。対応する部分には、重複を避けるために同一の記号を用いる。
【0027】
受信器2は、光軸にある電子カメラの形態、例えば、長方形の受光素子(CCDまたはCMOS)で、画面22を備え、画面の真中は、対物レンズ11の焦点またはその近傍にある。第1減衰フィルタ18は、受信器2の前方に配置し、第2減衰フィルタ19は、送信器1の後方に設ける。目標物13は、反射体、特に三角プリズムの形となる。
【0028】
送信ビーム12(好ましくは発散したビーム)が目標物13で反射されて生ずる測定ビーム15を、画面22の測定光点23に視準を合わせる。測定光点22の位置が、方向に依存している。目標物13が横たわる方向が、装置の光軸が取り囲む方向となる。画面22の測定光点23の周囲に入射する測定ビーム15の成分に、多重反射をもたらす。これは即ちゴーストと呼ばれるものである。ゴーストは、測定光点23の位置を正確に測定するのを一層困難にする。2重または多重の画像は、大面積の画面22による反射の結果であると考えられる。光点23の放射線の一部は、対物レンズを経て目標物13の反射で戻され、画面22に再度形成されゴーストとなる。焦点の不足で、この好ましくないゴーストが、実際の測定光点よりも大きくなる。第1減衰フィルタ18および第2減衰フィルタ19により、多重反射は減衰され、測定結果に誤った影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の距離計の設計概略図である。
【図2】図1の距離計の受信器の一部の断面図である。
【図3】本発明の方向計の設計概略図である。
【図4】図3の方向計の受信器の一部の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 送信器
2 受信器
3 ホルダ
4 光ファイバ
5 入力表面
6 フォトダイオード
7 半導体レーザ(光源)
8 光学系
9 コントロールユニット
10 ミラー
11 対物レンズ
12 送信ビーム
13 目標物
14 立方体プリズム
15 測定ビーム
16,17 ビームスプリッタ
18,19 減衰フィルタ
20 偏向表面
21 画面
22 測定光点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標捕捉装置が、
対物レンズ(11)と、
送信ビーム(12)を発する電気的にコントロール可能な送信器(1)と、
対物レンズ(11)を経て目標物(13)で反射される送信ビーム(12)の成分を備える測定ビーム(15)を受信する受信器(2)と、
対物レンズ(11)の後に設けた画面(22)または入力表面(5)と、
画面(22)または入力表面(5)に光伝導的に接続され、入射光に電気的な測定信号を生成する受光素子と、
送信器(1)をコントロールし測定信号を処理するコントロールユニット(9)とを備えた目標捕捉装置において、
目標捕捉装置は、多重反射から生ずる又は多重反射を引き起こすビームの意図的な抑制または減衰をする減衰手段を備え、
減衰手段は、漏斗の形状(好ましくは円錐形)の偏向表面(20)から成り、
偏向表面(20)は、受信器(2)の入力表面(5)を少なくとも部分的に取り囲み、吸収されない測定ビーム(15)の入力成分を、主に入射方向から外れる方向に反射する、ことを特徴とする目標捕捉装置。
【請求項2】
漏斗は、0.5〜1.5mmの深さで、入力表面(5)は、光ファイバ(4)の端面で形成され、端部(21)は、距離をおいて漏斗で囲まれている、ことを特徴とする請求項1記載の目標捕捉装置。
【請求項3】
偏向面(20)が、吸収するように形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の目標捕捉装置。
【請求項4】
減衰手段が、さらに受信器(2)の前に設けた少なくとも1つの第1減衰フィルタ(18)を備え、そのフィルタを通るビームの強度を減少させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の目標捕捉装置。
【請求項5】
少なくとも1つの第1減衰フィルタ(18)は、フィルタを通過するビームの強度を、0.7以下、好ましくは0.5以下、特に好ましくは、0.3以下のファクタで減少させる、ことを特徴とする請求項4記載の目標捕捉装置。
【請求項6】
少なくとも1つの第1減衰フィルタを、対物レンズ(11)から入る測定ビーム(15)を偏向する第1偏向手段と一体化する、ことを特徴とする請求項4または5記載の目標捕捉装置。
【請求項7】
第1偏向手段が、吸収する立法体のプリズム(14)またはダイクロイックミラーである、ことを特徴とする請求項6記載の目標捕捉装置。
【請求項8】
減衰手段が、送信器の後に設けた少なくとも1つの第2減衰フィルタ(19)を備え、その減衰手段を通るビームの強度を減少させる、ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の目標捕捉装置。
【請求項9】
少なくとも1つの第2減衰フィルタ(19)は、そのフィルタを通過するビームの強度を、0.7以下、好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下のファクタで減少させる、ことを特徴とする請求項8記載の目標捕捉装置。
【請求項10】
目標捕捉装置が、第2減衰フィルタ(19)の後にビームスプリッタ(16)を備え、送信器(1)から出力される基準ビームを偏向する、ことを特徴とする請求項8または9記載の目標捕捉装置。
【請求項11】
少なくとも1つの第2減衰フィルタを、対物レンズ(11)に向かう送信ビーム(12)を偏向する第2偏向手段と一体化する、ことを特徴とする請求項8〜10の何れか1項記載の目標捕捉装置。
【請求項12】
第2偏向手段が、吸収する立法体のプリズムまたはダイクロイックミラーである、ことを特徴とする請求項11記載の目標捕捉装置。
【請求項13】
第1減衰フィルタ(18)および/または第2減衰フィルタ(19)を切り替え可能および/または透過が調整可能に形成され、減衰の程度が調整できる、ことを特徴とする請求項4〜12の何れか1項記載の目標捕捉装置。
【請求項14】
第1減衰フィルタ(18)および/または第2減衰フィルタ(19)が、全色性または整色性の膜材または整色性に感光するX線フィルムの形式、中性フィルタまたはゼラチン灰色フィルタまたは透明膜の形式、スクリーンフィルタ、グレーティングフィルタまたは確率減衰パターンを備えたフィルタのような線構造を備えたガラスの形式である、ことを特徴とする請求項4〜13の何れか1項記載の目標捕捉装置。
【請求項15】
入力表面(5)が、反射した測定ビームの入射方向の垂直面に対して、傾斜(例として5%)している、ことを特徴とする請求項1〜14の何れか1項記載の目標捕捉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−536537(P2007−536537A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511977(P2007−511977)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004618
【国際公開番号】WO2005/108920
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(501116608)ライカ ジオシステムズ アクチェンゲゼルシャフト (70)
【Fターム(参考)】