目標検出装置、誘導装置及び目標検出方法
【課題】少ないアンテナ数、低SNRで、目標の動揺がある場合でも、目標のクロスレンジ方向を含む形状を推定することが可能な目標検出装置、誘導装置及び目標検出方法を提供する。
【解決手段】目標検出装置は、レーダ部、主要反射位置抽出部、パワー記録部、変動幅判定部、頻度カウント部及び相対広がり算出部を具備する。レーダ部は、レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、有意な振幅の振幅値を取得する。主要反射位置抽出部は、レンジ及び振幅値の受信状況に基づき、目標内の主要反射位置を選定する。パワー記録部は、主要反射位置毎の振幅値を処理期間の間記録する。変動幅判定部は、記録された振幅データの変動幅が閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力する。頻度カウント部は、出力された主要反射位置の振幅データの変動頻度を計測する。相対広がり算出部は、主要反射位置及び変動頻度から、目標内の位置及び相対的な広がりを求める。
【解決手段】目標検出装置は、レーダ部、主要反射位置抽出部、パワー記録部、変動幅判定部、頻度カウント部及び相対広がり算出部を具備する。レーダ部は、レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、有意な振幅の振幅値を取得する。主要反射位置抽出部は、レンジ及び振幅値の受信状況に基づき、目標内の主要反射位置を選定する。パワー記録部は、主要反射位置毎の振幅値を処理期間の間記録する。変動幅判定部は、記録された振幅データの変動幅が閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力する。頻度カウント部は、出力された主要反射位置の振幅データの変動頻度を計測する。相対広がり算出部は、主要反射位置及び変動頻度から、目標内の位置及び相対的な広がりを求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ検出に伴う目標検出装置、誘導装置及び目標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダを利用した目標識別では、目標のレンジ方向、すなわち、距離方向の形状のみでなく、クロスレンジ、すなわち、角度方向の形状を検出し、検出された縦横の形状から、それがどのような物体であるかを識別する。
【0003】
レンジ方向の形状は、高解像度レーダを使用して識別される。クロスレンジ方向の形状は、アレイアンテナを利用して高解像度角度検出を行う方法、及び、レーダの動きを利用した合成開口、目標の動きを利用した逆合成開口を適用して目標のイメージングを行う方法等により識別されることが多い。
【0004】
レーダが使用できる1方向当たりのアンテナ数に制限があり、十分なアンテナ数が確保できない場合には、合成開口又は逆合成開口を適用して目標のイメージングを行う方法等の、アレイアンテナを必要としない方法を利用する必要がある。しかしながら、これらの方法では、検出方向に関して目標に不明な動揺があると検出が困難になる。
【0005】
ところで、2アンテナによるモノパルス測角では、同一レンジに含まれる複数の反射点の干渉により、グリント雑音と呼ばれる測角誤差が発生する。非特許文献1,2では、同一レンジに含まれる反射点数が十分に大きいと仮定して、測角誤差の分布を予測される確率密度分布に当てはめて、目標の広がりを推測している。
【0006】
目標の形状が十分に識別出来るほどの高解像度レーダを利用した場合、同一レンジに含まれる反射点数は、数点程度になる。反射点数が数点程度では、各レンジの測角誤差の確率密度の分布形状は、含まれる複数の反射点の反射係数の構成に依存してしまい、クロスレンジ広がりで一意に決定する確率密度分布とならない。その結果、非特許文献1,2のような、含まれる反射点数が非常に大きいと仮定した方法で推定を行うと誤差が大きく、正しい推定が出来ない。
【0007】
また、測角時のSNR(Signal to Noise Ratio)は、レンジ検出時のSNRより低くなるため、非特許文献1,2のようなグリント雑音を利用する方法では、グリント雑音を検出しようとしても、熱雑音による測角誤差と区別が付かず、正しい推定が行えない場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R. H. DeLano, Proceedings of the IRE, Vol.41, No.12, 1953, pp.1778 - 1784
【非特許文献2】B. H. Borden, Transactions on Antennas and Propagation, Vol.43, No.8, 1995, pp.759-765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、合成開口又は逆合成開口を適用して目標のイメージングを行う方法では、目標に不明な動揺がある場合、クロスレンジ方向の形状を推定することが出来ない。また、測角誤差の分布を利用する方法では、SNRが低い場合、熱雑音による測角誤差と区別が付かず、クロスレンジ方向の形状を正確に推定することが出来ない。
【0010】
そこで、目的は、少ないアンテナ数、低SNRで、目標の動揺がある場合でも、目標のクロスレンジ方向を含む形状を推定することが可能な目標検出装置、誘導装置及び目標検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によれば、目標検出装置は、レーダ部、主要反射位置抽出部、パワー記録部、変動幅判定部、頻度カウント部及び相対広がり算出部を具備する。レーダ部は、レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、前記有意な振幅の振幅値を取得する。主要反射位置抽出部は、前記レンジ及び前記振幅値の受信状況に基づき、目標内のレンジ方向における主要反射位置を選定する。パワー記録部は、前記主要反射位置毎の振幅値を、予め設定された処理期間の間記録する。変動幅判定部は、前記処理期間で記録された振幅データの変動幅が予め設定された閾値を超えるか否かを前記主要反射位置毎に判定し、前記変動幅が前記閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力する。頻度カウント部は、前記変動幅判定部からの主要反射位置の振幅データの変動頻度をカウントする。相対広がり算出部は、前記主要反射位置及び前記カウント結果を、前記目標内のレンジ方向の位置及び角度方向の相対的な広がりに関連付ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る目標検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の目標検出装置により検出される目標の一例を示す図である。
【図3】図1のレーダ処理部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図3のレーダ処理部112から送信される送信パルスのパルス構成の一例を示す図である。
【図5】図1の主要反射位置抽出部が主要反射位置を抽出する際に作成するテーブルの一例を示す図である。
【図6】図1の頻度計算部の機能構成を示すブロック図である。
【図7】図6のパワー補正部によるパワーの補正を示す図である。
【図8】図6のローパスフィルタ部による低域濾波を示す図である。
【図9】図6の頻度カウント部によるその他のカウントアルゴリズムの原理を説明する図である。
【図10】図9に基づいてコスト関数を計算した際の計算結果を示す図である。
【図11】図1の目標検出装置の処理動作についてのフローチャートを示す図である。
【図12】第1の実施形態に係るシミュレーションで用いられる目標を示す図である。
【図13】図6のパワー補正部から出力されるレンジ補正パワーを示す図である。
【図14】図1の相対広がり算出部から出力される、目標の相対的な広がりを示す図である。
【図15】第2の実施形態に係る目標検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】図15のレーダ処理部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図17】図15の頻度計算部の機能構成を示すブロック図である。
【図18】図17のパワー補正部から出力されるレンジ補正パワーを示す図である。
【図19】図17のローパスフィルタ部から出力されるパワー変動波形を示す図である。
【図20】図15の目標検出装置の処理動作についてのフローチャートを示す図である。
【図21】図15の目標検出装置のその他の例を示す図である。
【図22】図15の目標検出装置のその他の例を示す図である。
【図23】第3の実施形態に係る誘導装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る目標検出装置10の機能構成を示すブロック図である。図1に示す目標検出装置10は、高解像度レーダ部11と相対広がり検出部12を具備する。
【0015】
高解像度レーダ部11は、アンテナ111及びレーダ処理部112を備える。
【0016】
レーダで複雑な形状の目標を検出する場合、目標の中でレーダ波に対する反射断面積が大きい主要な幾つかの点で、レーダ波が反射される。アンテナ111は、反射されたレーダ波を受信する。
【0017】
レーダ処理部112は、受信されたレーダ波に基づいて、ピーク検出等の適切な方法によって、有意なパワーを持つレンジを検出する。このとき、レーダ処理部112内では、主要な反射点に対応するレンジの振幅がピークを示す振幅波形が生成される。これにより、高解像度レーダ部11からは、適切な処理によって抽出された有意なパワーを有するレンジと、少なくともそのレンジの振幅とが相対広がり検出部12へ出力される。
【0018】
相対広がり検出部12は、主要反射位置抽出部121、パワー記録部122、頻度計算部123、相対広がり算出部124を備える。
【0019】
主要反射位置抽出部121は、検出対象である目標の主要な反射位置を抽出する。すなわち、一定期間、目標内の同じ位置と思われる点から、ほぼ継続的に有意なパワーを持つピークが検出されれば、それを目標の主要反射位置とし、その目標内のレンジ方向の位置を検出する。
【0020】
パワー記録部122は、抽出した主要反射位置の各々について、予め設定された処理期間、すなわち、複数のCPI(Coherent Processing Interval:コヒーレント処理期間)の間、パワーを記録する。
【0021】
頻度計算部123は、各主要反射位置について、処理期間内で、有意なパワー変動がある場合、パワー変動の頻度、すなわち、その期間内のパワーの変動におけるピーク又はボトムの頻度を計算する。
【0022】
相対広がり算出部124は、計算された頻度を、各主要反射位置の目標内のレンジ方向の位置に関連づけて出力する。
【0023】
次に、本実施形態の作用を説明する。図2のような、aからbまでの広がりを持つ物体からの反射波の電界は、下記の様に記述できる。
【数1】
【0024】
ξ=2πfθ/cであり、cは光速、fは周波数、θは目標の傾き角である。iは虚数単位である。ρfは各x点での反射波のy方向の積分結果であり、各x点での反射係数と等価である。なお、図2の場合、aは負の値である。(1)式はワイエルシュトラスの無限積表示を利用して、
【数2】
【0025】
のように変形できる。wnはゼロ点である。なお、θの範囲は、目標がほぼ同じ形に見える範囲に限定する。反射波を位相と振幅に分けて、
【数3】
【0026】
とおくと、位相モノパルス測角で検出される角度gは波面の傾きであって、
【数4】
【0027】
と書ける。第3項の分母が0に近づく所、すなわち、ξがwnに近づく所でgが大きくなり、グリント雑音が発生する。この時、(2)式は0に近づいており、受信パワーは減少している。すなわち、受信パワーが減少する角度でグリント雑音が発生する。ξは実数であって、グリント雑音が発生する条件は、ξがwnの実部に近づく条件となる。ρfを
【数5】
【0028】
のように、振幅と位相に分けて記述すると、wnは、おおよそ、
【数6】
【0029】
となる。nは整数であり、ξは、目標がほぼ同じ形に見える範囲内の幾つかのnに対応してwnの実部に近づく。ξ=2πfθ/cと(6)式とより、ξ、すなわち、周波数固定の条件では、θが変化すると、周期的にグリント雑音が発生し、その周期、すなわち、グリント雑音が発生してから次に発生するまでの角度δθは、
【数7】
【0030】
となる。ただし、L=b−aであり、目標の広がりである。λは波長であり、c/fである。
【0031】
以上より、本来、Lを知りたければ、δθを知る必要がある。δθを正しく知るためには、目標が静止した状態で、レーダが移動してθを変えるか、レーダの動き(静止も含む)が既知の状態で、かつ、目標が既知の動きをして、θを変える条件でなければならない。また、δθを知るためには、グリント雑音を検出する必要がある。
【0032】
しかし、本実施形態が前提とする条件は、目標に不明な動揺があって、δθを知ることが出来ない条件である。また、目標が遠方にある場合、あるいは、反射点の反射係数が小さい場合など、グリント雑音の発生を熱雑音と区別して検出できるだけの十分なSNRが得られるとは限らない。
【0033】
まず、SNRについて考える。目標の測角をモノパルスで行う場合は、2アンテナの位相差を検出する。モノパルス測角における角度の計算は、2つのアンテナ出力から生成した2系統の信号の除算によって行われる。雑音と所望波が混在した2系統の信号を乗算する場合、乗算結果のSNRにおける雑音は熱雑音そのものではなく、一方の熱雑音と他方の所望波の乗算となって、SNRは乗算前の各々の信号より3dB劣化する。除算の場合、テーラー展開を利用して乗算に近似すれば同様の結果となり、SNRは概算で3dB劣化する。一方、レンジ検出、さらには、そのレンジのパワー検出では、2系統を最も高いSNRが得られるように最大比合成することなどによって、2アンテナの信号のコヒーレント加算と同等のSNRで行うことが出来、結果として、SNRは1アンテナの場合より6dB向上する。従って、検出されるパワーのSNRは、測角時のSNRより9dB高く、それだけ熱雑音の影響が小さい。
【0034】
(2)式を見ると、グリント雑音発生条件であるξがwnに近づく条件では、受信パワーが減少する。すなわち、グリント雑音は必ず、パワーの著しい減少を伴って発生するので、グリント雑音より検出SNRの高いパワーの増減の頻度を検出した方が感度の高い測定が可能となる。
【0035】
また、グリント雑音は多くの場合、その目標部位の角度広がりの数倍程度で現れるが、目標が遠方にある場合、そもそもの広がりが0.1度を切るような場合が多く、その数倍程度でグリント雑音が発生しても、熱雑音と区別が付かない場合が多い。一方、高解像度レーダによって、十分に目標がレンジ分解出来れば、あるレンジに含まれる反射点の数は少なくなっている。そのような場合、グリント雑音発生に伴うパワーの増減は、10dBから20dBといった非常に大きい変動幅となる。従って、熱雑音と区別が付かないグリント雑音を検出する替わりにパワー変動を検出すれば、高い検出感度が得られる。
【0036】
次に、δθの検出について考える。目標の動揺は、多くの場合機械的な振動であるため、その姿勢の角度が、比較的ゆっくりした速さで行ったり来たりするように変化することが多い。その角度の範囲をΦとし、目標内のある位置における広がりをL1とおくと、目標の姿勢の角度がΦ変化する間に、パワーが減少する回数m1はおおよそ、m1≒Φ/δθ=2L1Φ/λである。同様に、目標内の異なる位置の広がりをL2と置くと、目標の姿勢の角度がΦ変化する間に、パワーが減少する回数m2はおおよそ、m2≒Φ/δθ=2L2Φ/λである。重要な点は、L1とL2の広がりを持つこれらの位置が同一目標内の異なる位置であり、かつ、測定期間内で目標物の著しい変形がなければ、2点は同じようにΦだけ姿勢を変化させることである。その結果、L1に対してもL2に対しても、不明ではあるがΦは共通として扱える。そこで、m1/m2を計算すると、m1/m2=(2L1Φ/λ)/(2L2Φ/λ)=L1/L2となる。すなわち、目標の動揺によって目標内の各位置毎の干渉の状態が変化する場合、それぞれの位置のレーダ波の受信パワーの時間的な変化を検出し、そのパワーが減少する頻度を比較することによって、目標の各点の相対的な広がりを知ることが出来る。
【0037】
なお、このようにして知ることが出来る目標の形状は、縦横の縮尺比が不明な形状である。
【0038】
なお、上記の議論から、本来測定すべき頻度は、パワーのボトムの頻度であるが、ボトムとピークは当然交互に発生するため、いずれを測定してもかまわない。
【0039】
次に、本実施形態の詳細を説明する。
【0040】
図3は、第1の実施形態に係るレーダ処理部112の機能構成の一例を示すブロック図である。図3は、合成帯域レーダの受信ベースバンド処理を中心に示した図である。図3において、送信部は省略されている。図示しない送信部から送信されたパルス列が、目標で反射され、アンテナ111で受信される。そして、受信された反射波が、図3のレーダ処理部112で処理される。
【0041】
図3の説明をするに当たって、合成帯域レーダのパルス構成を説明する。パルス構成の模式図を図4に示す。
【0042】
1つの四角が1パルスである。横軸は時間、縦軸は周波数である。パルス繰り返し間隔(PRI)はT2であり、1つの周波数ステップでNp個のパルスが送信される。ある周波数ステップでNp個のパルスを送信したら、周波数ステップ間隔fstpだけ周波数が異なる次の周波数ステップで同様にNp個のパルスを送信する。これをNf個の周波数ステップ分繰り返す。1CPIは全部でNp×Nf個のパルスからなる。おおよそ、fstp×Nfの帯域幅が得られるが、1パルスの帯域幅はこれより十分に小さいため、ベースバンド処理部の帯域幅、サンプリングレートを抑えつつ、十分な解像度を得ることができる。
【0043】
なお、このバリエーションとして、Nf周波数ステップ分1周波数ステップ1パルスで掃引した後、これをNp回繰り返して1CPIとする構成も可能である。性能や動作には大きな差は無いので、説明は省略する。ここでは、図4のパルス構成で説明を継続する。
【0044】
図3のレーダ処理部112にはアンテナ111で受信されたパルス信号が入力される。受信RF部1121は、受信されたパルス信号を、適切に増幅、フィルタし、パルス信号の送信周波数でベースバンドにダウンコンバージョンする。これにより、パルス信号は、送受信の過程で被ったドップラ周波数を中心周波数とする形に変換される。
【0045】
また、受信RF部1121は、アナログ形式のパルス信号を、適切なサンプリングレートでデジタル形式に変換する。さらに、受信RF部1121は、パルス信号をそのパルス信号に適した方法で復調し、1レンジビン又は1ゲートにつき、1パルス1点のパルス代表値をドップラ周波数検出部1122へ出力する。
【0046】
ドップラ周波数検出部1122は、受信RF部からのパルス代表値に基づいてドップラ周波数を検出する。ドップラ周波数検出部1122は、パルス代表値を周波数ステップ代表値抽出部1124へ出力すると共に、検出したドップラ周波数を移動速度計算部1123へ出力する。なお、ドップラ周波数検出部1122は、分離可能な程度にドップラ周波数が異なる複数の目標が含まれる場合、ドップラ周波数毎に分離し、分離したドップラ周波数をそれぞれ後段へ出力する。本実施形態では、目標検出装置10は、同一目標内の異なる位置の相対広がりを検出するが、さほど大きくない目標内の異なる位置のドップラ周波数は大差が無いため、ドップラ周波数検出部1122では、同一目標内の異なる位置の分離はできない。
【0047】
移動速度計算部1123は、ドップラ周波数検出部1122からのドップラ周波数を、移動速度に変換する。
【0048】
周波数ステップ代表値抽出部1124は、移動速度計算部1123からの移動速度に基づいて、各周波数ステップから1周波数ステップ1つの周波数ステップ代表値を抽出する。
【0049】
補正部1125は、移動速度計算部1123からの移動速度に基づいて、周波数ステップ代表値抽出部1124からの周波数ステップ代表値を補正する。このとき、周波数ステップ代表値は、CPI内での各パルスのレンジの変化分の位相が補正される。補正部1125は、補正した周波数ステップ代表値をレンジ計算部1126へ出力する。
【0050】
レンジ計算部1126は、補正部1125からの周波数ステップ代表値に基づいてレンジ波形を推定し、有意なパワーを持つピークのレンジを抽出する。例えば、レンジ計算部1126は、周波数ステップ代表値に対してIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を施して、振幅が閾値以上であるピークのレンジを検出する。あるいは、レンジ計算部1126は、周波数ステップ代表値に、超解像度法の1種であるMUSIC(Multiple Signal Classification)を適用してピークのレンジを検出しても良い。さらに、レンジ計算部1126は、Y. Zheng他 "Prony's method for monopulse 3D imaging using stepped frequency waveform" (Proceedings of SPIE, Vol. 3461, pp. 308-314)に記載される、Prony法と呼ばれる線形予測法の変形でピーク検出を行ってもよい。
【0051】
振幅抽出部1127は、レンジ計算部1126からのレンジ、ピークの数、周波数ステップ代表値及びIFFT後の波形等を参照し、各ピークの振幅、すなわち、パワーに関する情報を検出する。
【0052】
例えば、振幅抽出部1127は、IFFT後の波形を参照し、検出されたピークの振幅を検出する。あるいは、振幅抽出部1127は、検出されたピークにおける複素振幅を抽出し、Zhengの文献に記述されるように、波形内の有意なピークの数と、そのレンジ、単一ピークの波形から逆行列を利用して、それぞれのピーク単独の振幅を推定してもよい。このような単一ピーク波形と逆行列を利用する方法では、隣り合うピークが重なり合って、IFFT後の波形では、互いに漏れ込んでいる場合でも、重なり合う前のピークの高さを推定することが出来る。なお、Zhengの文献の方法では、推定に当たって一般逆行列を利用しているが、必ずしも一般逆行列を利用する必要は無く、各ピークのレンジと、分離前の複素振幅と、単一ピーク波形から通常の逆行列で推定してもよい。Prony法やMUSICを用いるような場合では、IFFT後の波形の解像度以上に近づいた複数ピークを分離検出出来るため、逆行列を利用して重なり合う前の振幅を推定した方がよい。
【0053】
このように高解像度レーダ部11では、各CPIでの有意なパワーを持つレンジと振幅とを抽出し、相対広がり検出部12の主要反射位置抽出部121へ出力する。
【0054】
なお、目標内の異なる位置の複数点を分解出来る高解像度レーダであれば、合成帯域レーダでなくてもよく、例えば、非常にパルス幅の短い短パルスレーダ、非常に帯域幅の広いチャープパルスレーダでもよい。この場合、レーダ処理部内は、それぞれのレーダ形式に適した送受信及び変復調を行い、その結果のレンジ波形の有意なピークのレンジ及び振幅を出力する。また、レンジ、振幅に加えて位相を出力する。
【0055】
主要反射位置抽出部121は、目標内の主要反射位置を抽出する。具体的な処理は、例えば、以下のようである。まず、連続する幾つかのCPIついて、有意なパワーを有するレンジと振幅を図5に示すテーブルのように並べて記録する。図5では、横軸が目標内のレンジ方向の位置、縦軸がCPI番号である。図5では、目標内の位置を16個の箱に区切っており、各CPIでその目標内位置に相当するレンジで有意なパワーを持つピークが検出された場合、その振幅(又はパワー)を、その箱に記録していく。なお、図5では、有意なパワーを持つピークが記録されている箱に網掛けがされている。
【0056】
目標が移動する場合、そのレンジは時々刻々と変化する。そのため、その目標内の位置と検出レンジとを関連づけるには、その目標の先頭あるいは中心等、その目標を代表する部分のレンジが、時刻に伴ってどのように変化しているかの情報が必要である。目標が移動する場合、通常、レンジのトラッキングが行われており、トラッキング情報に基づいて、パルスを復調するゲートが決定される。クラッタ分離等が済み、そのゲート内で検出される対象が、検出したい目標のみに絞り込まれている場合、例えば、そのゲート内の先頭の有意な反射点が、いずれのCPIでも目標内の同じ部位からの反射点であると仮定して、その先頭を基準に後方の有意な反射点を箱に入れて行っても良い。あるいは、レンジのトラッキング情報を元に、目標の先頭レンジを定め、それと検出されたレンジの差に基づいて、目標内位置を決定しても良い。なお、箱のサイズ、すなわち、目標内位置の分類間隔は、レンジ検出時の解像度に基づいて決定すると良い。ただし、レンジ検出時に超解像度法などを用いている場合には、SNRに連動して解像度が変化する。そのような場合は、主要反射位置を抽出する段階での、予想されるSNRに基づいて間隔を決定すると良い。
【0057】
主要反射位置抽出部121は、テーブルを作成すると、その期間で、図5であれば、22個のCPIに渡る期間で、有意なパワーを持つレンジのデータが記入された回数の比率が所定の比率を上回る目標内位置を抽出する。例えば、6割を閾値とするならば、図5の場合は、目標内位置2,7,12が閾値を上回る。主要反射位置抽出部121は、その目標内位置の番号、目標内位置先頭に対するその箱の中心の相対レンジ、又は、目標内位置先頭に対して、それぞれのCPIで検出された有意なパワーを有するピークのレンジの相対位置の平均値等を、主要反射位置として定義する。
【0058】
もし、目標内位置を定義する箱の間隔が解像度と比較して細かったり、測定誤差が解像度より大きい測定が行われたり、又は、トラッキングの予測精度があまり高くない場合には、目標内の同じ部位からの反射波が記録される目標内位置がばらつく場合がある。そのような場合、主要反射位置抽出部121は、前後1つずつ等一定範囲まで含めて、箱が埋められた回数をカウントすると良い。例えば、目標内位置7には何も記録されていないが、6や8に記録があるCPIがある。このようにばらつきが発生する場合には、6,7,8をまとめて評価し、7の中心を主要反射位置としたり、これらの相対レンジの平均値を主要反射位置としてもよい。
【0059】
主要反射位置抽出部121は、このようにして抽出した主要反射位置をパワー記録部122へ出力する。
【0060】
パワー記録部122は、高解像度レーダ部11から出力される有意なパワーを有する反射点について、主要反射位置からの反射であると推定されるものを選択し、そのパワーを、所定の期間、記録していく。パワーは、dBでもリニアでも良いし、振幅でも良い。また、複素振幅でもよく、パワーの情報を正しく伝えられる形態であればよい。パワー記録部122は、主要反射位置からの反射であるかどうかを、主要反射位置抽出部121から出力された目標内位置に対して、一定の許容誤差範囲に収まっているかどうかで主として判断する。許容誤差範囲は解像度に基づいて決定すればよい。すなわち、図5における目標内位置の箱の間隔や、主要反射位置を決定する場合と同様に、その測定の性能に基づいて決定すればよい。
【0061】
なお、高解像度レーダ部11が合成帯域レーダである場合、速度検出誤差があると、検出レンジに解像度や熱雑音でずれる以上の誤差が発生することがある。合成帯域レーダでは、速度検出誤差とレンジ誤差にレーダの諸元で決定する一定定数の比例関係があるため、高解像度レーダ部11に検出速度を併せて出力させるようにし、検出速度にトラッキングを掛けて、速度誤差を算出し、これによって発生したレンジ誤差を修正してから、記録するようにしてもよい。あるいは、速度検出精度を予め予測しておいて、それに基づいて許容誤差範囲を決定しても良い。なお、このような速度誤差によるレンジ誤差の修正や誤差範囲の決定は、主要反射位置抽出部121の処理で行っても良い。
【0062】
パワー記録部122で記録する期間は、主要反射位置抽出部121で検出に利用する期間以上の期間である。また、主要反射位置からの反射であるかどうかを判断する際、主要反射位置抽出部121で行ったのと同様にトラッキング情報などを利用すると良い。
【0063】
高解像度レーダ部11がレンジ検出に超解像度法等を用いている場合、目標が接近してくるとSNRが高くなり、許容誤差範囲内に複数の有意なパワーを持つピークが観測されることがある。このような場合には、基本的には、より、主要反射位置に近いピークを選択すればよいが、後述するように測角を併せて行っている場合には、測角のトラッキングデータを作成し、許容誤差範囲内で予測される角度に近いピークを選択すると良い。
【0064】
次に、本実施形態の頻度計算部123の詳細を説明する。図6は、第1の実施形態に係る頻度計算部123の機能構成を示すブロック図である。
【0065】
パワー補正部1231は、記憶された目標内の各主要位置のパワーをレンジの変化の影響を除去するよう補正する。図7に例を示す。図7(a)は、目標のある位置のパワーの変化をdBでプロットしたグラフである。受信パワーはレンジが近くなると、レーダ方程式に従ってレンジの4乗に反比例して増加していく。従って、図7(a)は、全体的に左肩上がりのプロットとなっている。この状態でも、ボトムやピークの回数は判断できるが、レンジの変化による影響を除去した方が、変動幅の判断が容易である。図7(b)は、図7(a)にレンジの4乗を掛けて補正したものである。図7(b)によれば、レンジの変化によるパワーの変化分が除去され、純粋にパワーの変動のみとなり、より凹凸の判断が容易になっていることが分かる。
【0066】
ローパスフィルタ部1232は、パワー補正部1231により補正されたパワーの変化に、ローパスフィルタを掛け、熱雑音などによる高速な変動を取り除く。図8に一例を示す。図8(a)は、ある期間に渡って記録した目標内のある位置のレンジ補正後パワーであり、縦軸はdBではなくリニアである。所々、特に縦軸0の近傍で、プロットが不連続となっているのは、これらの点はパワーが小さすぎて検出出来ず、欠測となったためである。熱雑音の影響によって波形の乱れがあるため、図8(a)のままでは、熱雑音による凹凸のピークやボトムを検出してしまう。そこで、図8(a)の欠測点を0で置き換え、ローパスフィルタを掛けた結果が図8(b)である。熱雑音による細かい凹凸が除去され、ピークやボトムが明確になっていることが分かる。
【0067】
なお、図8(a)のように、欠測の原因を、パワーが著しく減少したことにほぼ限定できるのであれば、上記のように欠測を0で置き換えればよい。しかし、例えば、レーダ出力のレンジ波形から主な反射点を抽出する方法として超解像度法を用いるような場合で、かつ、超解像度法で分解出来る限界の離隔の複数の反射点があるような場合には、必ずしもそれらの点を分離できるとは限らない。分離出来なかった場合、いずれかの主要反射位置のデータが欠測となってしまうことがある。このような場合には、欠測は必ずしもパワーが減少した時に発生するとは限らない。そのような場合は、欠測を0で埋めると、本来存在しないボトムを故意に作ることになる。そのような場合は、欠測を周辺の点から多項式補間などの内挿法を適用して補間した後、同様にローパスフィルタを掛けるとよい。ローパスフィルタ部1232は、ローパスフィルタを掛けたパワー変動波形を変動幅判定部1233へ出力する。
【0068】
変動幅判定部1233は、ローパスフィルタ部1232からのパワー変動波形の最大値と最小値の比(dB差)が、所定の閾値を上回っているかどうかで、その主要反射位置が広がりを有するかどうかを判定する。変動幅判定部1233は、判定の結果、広がりを有すると判定した主要反射位置に関するデータのみを頻度カウント部1234へ出力する。
【0069】
なお、ほぼ単一の反射点からなる主要反射位置であっても、近いレンジに、パワーの変動があり、かつ、平均パワーがより強い主要反射位置がある場合、そこからのパワーが漏れ込んで、単一反射点であるにも係わらず、パワーの変動があるように観測されることがある。そこで、その主要反射位置に関して記録されたレンジ補正パワーの最大値と、一定範囲内で隣接する他の主要反射位置に関して記録されたレンジ補正パワーの最大値を比較し、近傍に、一定の割合以上大きい主要反射位置があるならば、変動の有無を判断する幅の閾値を大きくすると良い。特に、高解像度レーダ部11が各ピークの振幅を検出する際に、波形のピーク振幅をそのまま利用する場合には、このような処理が必要である。
【0070】
このように単純に閾値を緩める方法でも良いが、隣接する主要反射位置からパワーが漏れ込んでいるかどうかは、記録されたレンジ補正パワーの相関を取ることでも検出できる。ある主要反射位置のパワーに閾値を上回る変動があっても、それが閾値を若干超える程度(第2の閾値以下)であり、かつ、所定範囲内で隣接する主要反射位置のパワーがそれより一定の割合以上強い場合には、これらのパワー波形の相関を取り、相関の絶対値が一定以上であって強い相関が認められる場合には、その主要反射位置のパワー変動は、主として漏れ込みによるものであり、その主要反射位置は広がりを有さない、と判断しても良い。
【0071】
なお、隣接主要反射位置からの漏れ込みは実際には複素振幅で漏れ込むため、隣接主要反射位置のパワーの増減に対して必ずしも同じ符号でパワーが増減するとは限らない。従って、相関の判断をする場合には、相関値そのものではなく、相関値の絶対値で行うと良い。また、位相は条件の変化で変動する可能性があるため、ある時刻では、隣接主要反射位置からの漏れ込みがパワーが増加するように発生していたのに、別の時刻では、パワーが減少するように発生することがある。このため、相関を判断する際は、あまり長い期間の相関をまとめて判断しない方が良い。つまり、パワー変動頻度を検出するための期間が比較的長いならば、それを幾つかの範囲に分割して、各々、相関を判断し、それらの合計値で判断するなどするとよい。
【0072】
頻度カウント部1234は、変動幅判定部1233からの判定結果に基づいて、パワー変動頻度を計算する期間内での、各主要反射位置のパワー変動頻度の凹凸の回数、すなわち、ピークの回数又はボトムの回数を数える。
【0073】
頻度カウント部1234は、各主要反射位置と頻度をセットにして出力する。その際、さらに、変動幅判定部1233にて変動がないと判断された主要反射位置についても、その主要反射位置は広がりがないとのデータを出力すると良い。このようにして、目標内の主要な反射位置の角度広がりがどのような相対関係になっているかを出力することが出来る。
【0074】
なお、目標の動揺が不規則であったり、マルチパスなどが漏れ込んでパワー波形の乱れが大きい場合には、上記のように単純に測定期間内の凹凸の回数を数えれば良い。しかし、比較的測定条件がよい場合には、目標の動揺の仕方がパワー変動波形に現れていることがあり、これを利用して、より精度の高い検出が可能となる。
【0075】
このときの頻度カウント部1234の動作を図9を用いて説明する。ある目標の姿勢が、図9の◇で示したように変動している場合の、その目標内の、広がりの異なる2つの主要な反射位置のレンジ補正パワーの変動を△と□で示している。パワーは測定されるパラメータであるが、目標の姿勢角変化は、測定出来ないパラメータである。目標の姿勢角は、一定周期で動揺しており、矢印で示した部分を頂点として、行ったり来たりしている。そのような場合、観測されるパワーの変動波形が矢印の点に関して左右対称に近くなっている。矢印の点の周辺では、パワー波形はピークを示したりボトムを示したりするが、実際には、これらは本当のピークやボトムではなく、そのタイミングで目標が姿勢の回転方向を反転させたためにあたかもピークやボトムに見えているだけである。もし、矢印のタイミングを検出出来るのであれば、ここで検出されるピークやボトムは数えないようにしたい。そこで、頻度カウント部25に、例えば下記の様なアルゴリズムを適用すると良い。
【0076】
まず、変動幅判定部1233からのパワー変動波形について、各時刻の左右対称にある点の二乗誤差を、波形のピーク2つ分程度の範囲で算出し、平均誤差を計算する。その逆数をコスト関数とする。コスト関数値が大きい点は、その点を中心として左右の波形の対称性が強い点であり、目標に動揺がある場合、その頂点により近いタイミングの時刻であると判断できる。図9の□で示した波形について、このようなコスト関数を計算した結果が図10である。なお、図9の横軸はレンジであるが、図10の横軸はCPI番号であり、図9と図10では横軸の向きが反転している。図10では矢印で示した点でコスト関数値が明確なピークを示しており、これらのCPI番号が、図9の矢印で示したような頂点であると推測される。
【0077】
このような場合、頻度の算出は、矢印の点をまたがないで行うことが望ましい。しかし、図9を見ても分かるように、矢印から矢印までの間に含まれるピークやボトムの数はあまり多くない。そこで、頻度を直接数えるのではなく、矢印から隣の矢印までの間に含まれる複数のピークの間隔又は複数のボトムの間隔を干渉発生の「周期」として検出する。また、ピークもボトムも複数無い場合には、ピークと隣接するボトムの間隔の2倍を干渉発生の「周期」として検出する。頂点に対応する時刻(矢印の時刻)が3点以上検出された場合には、それぞれの頂点と頂点の間の区間において、全ての周期を観測し、それを平均化して、逆数をとることによって、頻度を計算する。
【0078】
次に、以上のように構成された目標検出装置による動作をシミュレーションの結果と共に説明する。図11は、第1の実施形態に係る目標検出装置10の処理動作についてのフローチャートの概要を示す図である。
【0079】
まず、目標検出装置10は、高解像度レーダ部11によりレーダ波を受信する(ステップS111)。高解像度レーダ部11は、主要な反射点に対応するレンジの振幅がピークを示す振幅波形を生成し、相対広がり検出部12へ出力する。図12は、レンジ計算部1126でのIFFT後の波形であり、本シミュレーションで用いられる目標を示す。図12において、主要反射位置は、先頭、中央、後ろの3点である。先頭は、主な反射点を1つしか含まないが、中央と後ろは複数の反射点を含み、目標の動揺による姿勢角の変化によって、グリント雑音やパワーの増減が発生する。なお、入力値では、中央のクロスレンジ方向の広がりは後ろのクロスレンジ方向の広がりの4.3倍である。
【0080】
目標検出装置10は、主要反射位置抽出部121により主要反射位置を抽出し(ステップS112)、抽出した主要反射位置についてのパワーを、パワー記録部122により予め設定された処理期間の間、記録する(ステップS113)。図13は、目標がレーダに近づいてくる条件で、一定期間、各主要反射位置のパワーを記録し、パワー補正部1231でレンジ補正パワーに変換した結果である。図13(a)は先頭の主要反射位置のパワーを示し、図13(b)は中央の主要反射位置のパワーを示し、図13(c)は後ろの主要反射位置のパワーを示す。パワーのみでなく、測角した場合の測角誤差も併せてプロットしている。パワーが減少している点で、所々グリント雑音と思われるスパイク状の測角誤差が発生しているが、熱雑音との区別が付けにくいことが分かる。特に、先頭は、一反射点であるため、グリント雑音は発生しないが、SNRが低いレンジでは、測角に対する熱雑音の影響が強く、グリント雑音が発生しているかどうかの判別は困難であることが分かる。一方、各主要反射位置のパワー波形をみると、図13(a)で示される先頭では、測角誤差が大きいレンジでも、安定したパワーが観測出来ていることが分かる。また、図13(b)で示される中央、及び、図13(c)で示される後ろではそれぞれ明確にパワーの変動が見えており、角度ではなくパワーを利用することの利点が理解できる。
【0081】
続いて、目標検出装置10は、頻度計算部123により、各主要反射位置について、処理期間内で有意なパワー変動がある場合、パワー変動の頻度を計算する。このとき、目標検出装置10は、変動幅判定部1233により、処理期間内のパワー変動幅が予め設定した閾値を超えるか否かを判断する(ステップS114)。例えば、変動幅判定部1233において、パワー変動があると判定する変動幅の閾値を仮に10dBと設定すると、先頭はパワー変動の幅がこれを下回っているため、広がりを有さない点と判定できる。
【0082】
パワー変動幅が閾値を超える場合(ステップS114のYes)、目標検出装置10は、頻度カウント部1234により、処理期間内でのピーク又はボトムの回数を計算する(ステップS115)。例えば、中央及び後ろのパワー波形の、変動幅判定部1233による判定結果に対して、単純に期間内のピークの数を計算すると、中央は10となり、後ろは4となる。パワー変動幅が閾値を超えない場合(ステップS114のNo)、目標検出装置10は、処理をステップS117へ移行する。
【0083】
目標検出装置10は、相対広がり算出部124により、計算された頻度を、各主要反射位置の目標内のレンジ方向の位置に関連づけて出力する(ステップS116)。頻度計算により、中央は10であり、後ろは4であるため、中央は後ろに対して相対的に2.5倍の広がりを有すると計算出来る。
【0084】
なお、図9を用いて説明した、対称性を検出して頂点を避けるようなアルゴリズムを適用した場合、中央の頻度は、12.5、後ろの頻度は4.8となり、中央は後ろに対して約2.6倍の広がりを持つ。
【0085】
実際のモデルでは、相対的な広がりの比は4.3倍であるので、推定精度は高くない。この理由は、各頂点間の動揺の速さが等しいとは限らないためと、3点以上の反射点がパワー変動に寄与する場合は、打ち消しあう干渉が発生する角度間隔は不等間隔となり、サンプル数が少ないと誤差が大きくなるためである。上記の例は、いずれも2,3個程度の周期しか検出できず、誤差が大きくなった。
【0086】
先頭と中央と後ろのレンジの関係は図12のようであり、上述のような評価の結果、先頭は広がりの無い点であり、中央は先頭より約2.7m離れた位置で、後ろの2.5倍〜2.6倍程度の広がりを有し、後ろは先頭より約5.2m離れた位置で広がりを有する、ということが分かる。これにより、縦横比は不明であるが、図14のように目標のおおよその形状を知ることが出来る。
【0087】
続いて、目標検出装置10は、抽出した主要反射位置の全てについて処理をしたか否かを判断し(ステップS117)、全ての主要反射位置について処理がされていない場合(ステップS117のNo)、処理をステップS113へ移行し、全ての主要反射位置についての処理が終了するまでステップS113〜ステップS116の処理を繰り返す。全ての主要反射位置について処理が終了した場合(ステップS117のYes)、目標検出装置10は処理を終了する。
【0088】
以上のように、第1の実施形態では、反射されたレーダ波の振幅が大きい部位を主要反射位置として抽出する。そして、目標検出装置10は、主要反射位置におけるパワー変動の頻度を計算し、そのパワー変動の頻度に基づいて目標内の相対的な広がりを求めるようにしている。
【0089】
目標内のレンジ方向のある位置に反射率が大きい反射点が複数ある場合、それらからの反射波の干渉状態は目標が動揺することによって変化する。その変化の速さは、ほぼそれらの反射点のクロスレンジ方向の広がりに比例する。同一目標内のレンジが異なる複数の位置は、通常、同一の動揺をしているため、目標が不明な動揺をしていても、そのパワーの変動の速さの違いから、異なる位置について、相対的な広がりの違いを算出することが可能となる。
【0090】
また、干渉状態の変化によるパワー変動は、10dBを越えるような非常に大きい変動幅で変動するため、低SNRで検出が可能であり、遠距離の目標であっても検出が可能となる。また、2アンテナで測角する系の場合、レンジ検出は、2アンテナを合成することによって1アンテナの場合より6dB向上したSNRで検出が可能であるが、測角時のSNRは2アンテナ分のデータの除算となるため、SNRは1アンテナの状態より約3dB劣化する。このように、パワー変動を利用することにより、従来のような測角データに基づいた方法と比較して、より遠距離、低SNRでの検出が可能となる。
【0091】
したがって、第1の実施形態に係る目標検出装置10によれば、目標の各点のクロスレンジ方向の広がりの絶対量は検出出来ないが、少ないアンテナ数で、かつ、目標に不明な動揺がある場合であっても、目標の各位置の相対的な広がりを、低SNRで検出することができ、目標のおおよその形状を推定することができる。
【0092】
(第2の実施形態)
図15は、第2の実施形態に係る目標検出装置20の機能構成を示すブロック図である。第1の実施形態では、測角は必須ではないが、殆どのレーダは測角機能を備えている。測角の結果を併せて利用することで、性能を向上させる、又は、より悪い条件に対応できるため、ここでは、測角を併せて行う実施の形態を示す。
【0093】
図15に示す高解像度レーダ部21は、1方向に付き2系統のアンテナを有する。2系統のアンテナを併せてアンテナ211として図示している。また、通常、方位と仰角の2方向を測定するため、アンテナ211は正しくは4つのアンテナからなるが、説明を簡略化するため、ここでは、1方向の2つのみを図示し、1方向分の処理のみを説明する。
【0094】
レーダ処理部212は、アンテナ211からの受信信号をそのレーダ形式に合わせて正しく復調し、ピーク検出などによって有意なパワーを持つレンジを検出し、そのパワーを検出する。その際、測角のための2系統をそれぞれ処理し、各ピークに相当するレンジについて測角を行って、有意なパワーを有するレンジについて、振幅、角度を出力する。
【0095】
図16は、本実施形態に係るレーダ処理部212の機能構成の一例を示すブロック図である。図16は、合成帯域レーダの受信ベースバンド処理を中心に示した図である。レーダ処理部212には、第1系統、第2系統からの2つの信号が入力される。この2つの系統は、それぞれ2つのアンテナに直接対応しても良い。ただし、モノパルス測角を行う場合には、2系統のアンテナの和信号と差信号をアンテナ端で生成してから、受信RF部2121−1,2121−2の処理を行うことが多い。そこで、ここでは、アンテナ端で和信号と差信号が生成されており、第1系統は和信号、第2系統は差信号であるとする。それぞれの系統は受信RF部2121−1,2121−2において、それぞれRF処理される。処理の内容は図3に示す受信RF部1121と同じである。ただし、復調時に、1ゲート又は1レンジビン当り1パルス1つのパルス代表値を抽出する際に利用するパラメータは、必ず、2系統で同一であるとする。すなわち、ゲートの位置を系統毎に変えたり、パルス圧縮フィルタの係数を系統毎に変えたり、パルス代表値を異なるレンジビンから抽出したりはせず、全く同一のパラメータで2系統を処理していく。以下、測角が完了するまでの他の処理でも、殆どの場合において、2系統を同一のパラメータで処理する。
【0096】
このように抽出されたパルス代表値から、ドップラ周波数検出部2122において、ドップラ周波数を検出する。2系統分は、適宜最大比合成等、SNRを最大化するような係数で合成して処理すると良い。検出性能の劣化を許容するなら、1系統のみから検出したり、等利得合成して検出したりする等、より単純な処理を採用しても良い。ドップラが検出出来たら、移動速度計算部2123にて移動速度を計算する。これは、図3に示す移動速度計算部1123と同じである。
【0097】
周波数ステップ代表値抽出部2124は、それぞれの系統に関し、同一の移動速度に基づいて周波数ステップ代表値を抽出していく。それ以外は、図3に示す周波数ステップ代表値抽出部1124の処理と同じである。
【0098】
補正部2125でも、2系統同一の移動速度に基づいて補正を行っていく。それ以外は、図3に示す補正部1125と同じである。
【0099】
レンジ計算部2126は、図3に示すレンジ計算部1126と同様にレンジ検出を行う。2系統は、可能であれば最大比合成しても良いが、複数のレンジの異なる反射点が含まれる場合、合成比率が同一にならず、決定出来ない場合が多いため、等利得合成でよい。合成帯域レーダの場合、レンジ検出精度は、ほぼ速度検出精度で決定し、角度検出精度はそもそものSNRでほぼ決定するため、レンジ計算時の合成方法は性能に大きく影響しない。
【0100】
ただし、レンジ計算部2126で、MUSIC等の相関行列を利用する場合、相関行列のランクをフルに回復させるため、前方後方空間平均化等の処理を施す。その際、図3の構成では、ランク1からフルランクに回復させる必要がある一方、図16の構成では、ランク2からの回復となるため、アンテナ数が2の場合、サブアレー数を約半分にできる。したがって、サブアレーサイズを大きくでき、アンテナ数1の場合より高解像度なレンジ検出が可能である。
【0101】
レンジ計算部2126で、幾つかのピークを検出し、それぞれのレンジを検出したら、振幅・位相抽出部2127にて、2系統それぞれについて、振幅と位相、すなわち、複素振幅を抽出する。ここでも、1つのピークについては、2系統を必ず同じパラメータで処理する。すなわち、2系統で完全に同じレンジの複素振幅を抽出する。抽出の仕方は、複素振幅である他は、図3に示すレンジ計算部2126と同じである。
【0102】
角度計算部2128は、抽出した複素振幅から、角度を計算する。角度計算法は、例えば、位相モノパルス法である。位相モノパルス法とは、2アンテナに入力された波面の傾きから、到来角を推定する方法である。位相モノパルス法の詳細処理は、本願とは直接関連しないため省略する。
【0103】
以上のように、レーダ処理部212にて、目標内の複数の位置からの反射波のレンジ、振幅及び角度を検出する。
【0104】
図15に示す相対広がり検出部22は、高解像度レーダ部21から反射波のレンジ、振幅及び角度を受けて、まず、主要反射位置抽出部221で主要反射位置を抽出する。主要反射位置抽出の基本的な動作は図1に示す主要反射位置抽出部121と同様である。ただし、2系統分のパワーは、これらを個別に処理するのではなく、2系統分の合計パワーにする等して、処理する。
【0105】
主要反射位置抽出部221においては、角度も同様にテーブルを作成する。同じ目標内位置で有意なパワーが継続的に検出されていても、その到来角に対してトラッキングを行うと、明らかに検出対象としている目標とは異なる方向から届いている場合には、そのような位置は、主要反射位置とはみなさない。このようなことは、例えば、送信したレーダ波が目標で反射し、一旦、地面など別の場所で反射してレーダに戻ってきたマルチパスと呼ばれる干渉波が受信されると発生する。マルチパスは地面方向から到来するため、これの到来角は、通常、検出対象の到来角と異なっている。マルチパスは、ドップラ周波数が検出対象の目標と大差ないため、パルスドップラレーダでの分離が難しく、角度の領域での分離が望ましい。
【0106】
パワー記録部222は、上述のように検出した各主要反射位置のパワーを、所定の期間記録する。動作は図1に示すパワー記録部122と同様である。また、角度記録部225は、パワーと同様に、それぞれの主要反射位置の角度を、パワーが記録される期間と同じ期間だけ記録する。
【0107】
頻度計算部223は、パワーだけでなく角度も利用して検出を行う。図17は、第2の実施形態に係る頻度計算部223の機能構成を示すブロック図である。
【0108】
パワー補正部2231は、記憶された目標内の各主要位置のパワーをレンジの変化の影響を除去する用に補正する。
【0109】
ローパスフィルタ部2232は、パワー補正部2231からの補正後のパワー波形と、角度記録部225に記録されたその主要反射位置の測角結果とを受け取る。ローパスフィルタ部2232は、測角結果の誤差が小さい部分を選択し、その部分を基準にローパスフィルタの特性を決定する。測角結果の誤差が小さい部分は、マルチパス等、干渉波の影響が小さい部分であると推測できるためである。
【0110】
ここで、図18を用いて、ローパスフィルタ部2232の動作を説明する。図18は、目標がレーダに近づいてくる条件で、一定期間、各主要反射位置のパワーを記録し、パワー補正部2231でレンジ補正パワーに変換した結果である。
【0111】
図13の例では、測角誤差に熱雑音の影響が現れる低SNR時でも、パワーは比較的安定して検出出来ていた。一方、マルチパスのような干渉波が発生している場合には、熱雑音の影響が小さくても、測角、パワー検出結果に雑音が発生する場合がある。図18に、その例を示す。このとき、目標は、図12の例と同じ目標であり、主要な反射位置は図12に示す3点である。図18(a),(b),(c)は、それぞれ、先頭、中央、後ろの受信パワーと測角誤差の変化である。図18(b),(c)では、角度誤差が大きく変動しており、また、パワーも、特に、レンジが遠く、マルチパスの影響が強い部分では図13と比較して乱れている。
【0112】
マルチパスは、通常、所望波である直接反射波より遅れて到着するが、遅れる時間はレンジが近づくに伴って長くなることが多く、レンジがある程度まで近づいた段階で、マルチパスは分離され、影響が出なくなる。先頭に近いピークから、順次マルチパスが分離されていく。図18(a)で示される先頭では、2000mの地点で既にマルチパスが分離されているため、影響が出ていない。図18(b)で示される中央では、1000m地点までマルチパスが重なっており、図18(c)で示される後ろでは、900m地点まで重なっている。図18は高解像度レーダによって検出した結果であるため、マルチパスが、例えば、図12で、先頭と中央の間にピークを持つような場合、ピークとしてはある程度の分離が可能である。そのため、パワー波形は、図13と比較して乱れがあるものの、おおよそ似たような波形となっている。しかし、測角への影響、特に、受信パワーが下がっている場合の測角への影響は、非常に大きい。これは、直接反射波のパワーが下がっているため、漏れ込んでいるマルチパスの角度を検出して誤差が増大しているためと、マルチパスと直接反射波の干渉でグリント雑音が発生しているためと、2つの原因があるが、この2つは地続きであり、原理的にも明確に区別することは出来ない。グリント雑音が発生する際の角度誤差は、おおよそ、目標の広がりに比例するが、マルチパスがある場合には、目標の広がりが、マルチパスを含めた広がりに見えている。マルチパスは、地面に対して対称な位置にある目標の虚像からの波として扱えるため、グリント雑音発生の元となる目標の広がりは非常に広く、その結果、角度誤差が非常に大きくなっている。なお、図18の右の縦軸スケールは図13のスケールの5倍である。
【0113】
ローパスフィルタ部2232は、まず、角度記録部225からの測角結果から、測角結果誤差の小さい範囲を抽出する。角度広がりを評価するための全評価期間の中、図18では、約130個の連続するCPIについて検出を行っているが、この中で、例えば、40CPIずつ程度の小期間を複数定義する。小期間は、全期間を分割するようにしても良いが、互いに重なり合っていてもよい。例えば、40CPIずつずれた3個の小期間を定義しても良いが、5CPIずつずれた18個を定義してもよい。ここでは、測角結果誤差の小さい範囲をより良く抽出出来る後者の方法を例に説明していく。
【0114】
ローパスフィルタ部2232は、それぞれの小期間内での測角結果の誤差平均値、例えば、RMSE(二乗誤差平均の平方根)を計算する。角度記録部225、又は、図示しない他の平均角度算出部は、各主要反射位置の測角結果にトラッキングを掛け、誤差算出の基準値を算出し、その基準値も同時にローパスフィルタ部2232へ出力する。基準値が全評価期間内で時々刻々と変化している場合には、ローパスフィルタ部2232には、変化している値が全て入力される。ローパスフィルタ部2232は、基準値と加工されていない測角結果の差からRMSEを計算する。
【0115】
ローパスフィルタ部2232は続いて、RMSEの最も小さい小期間を選択する。図18(b)の例であれば、例えば、レンジ700m〜1100mに相当する40CPI分の小期間、図18(c)の例であれば、1100m〜1500mに相当する40CPI分の期間を選択する。
【0116】
その際、単純に、小期間内での測角RMSEを評価しても良いが、次のように、通常のグリント雑音が発生している部分を除外するように評価しても良い。図13の例のように、マルチパスとは関係無くグリント雑音が発生している場合があり、このような場合は、グリント雑音が発生し、測角RMSEが大きくなっていても、干渉波が加わってはいない。そこで、例えば、まず、全期間でのパワーの最大値を検出し、パワーがそれより一定の値、例えば10dB低い値以下である点の角度はRMSE計算の対象外として、小期間の測角RMSEを計算する。次に、小期間内で対象外になった点の比率が一定値以下であり、かつ、計算した測角RMSEが最小である小期間を選択する。
【0117】
このようにすると、通常のグリント雑音の影響を排除し、干渉による測角誤差の評価が可能となるため、単純にRMSEを計算する場合より小期間の長さを長く出来る。その結果、フィルタ係数を決定するための変動の速さを高精度に検出できる。
【0118】
次に、これらの小期間内でのパワー変動の速さを検出する。パワー変動の速さの評価は、例えば、その期間のパワー波形をフーリエ変化してスペクトルとし、おおよその帯域幅を評価すればよい。あるいは、非常に高速な変化を緩いローパスフィルタ(例えば、タップ数の小さい移動平均フィルタ等)で予め除去しておいてから、微係数の二乗平均を評価する等しても良い。例えば、図18(b)であれば、40CPI内で3回程度の振動、図18(c)であれば、1回程度の振動に相当する変動の速さを抽出する。
【0119】
続いて、抽出した変動の速さに対応するローパスフィルタの特性を決定する。ローパスフィルタは、IIR(無限インパルスレスポンス)、FIR(有限インパルスレスポンス)のいずれでもよい。IIRであるならば、抽出した変動の速さに対応した時定数を決定し、FIRであるならば、抽出した変動の速さに対応したタップ係数とする。いずれも、抽出した変動の速さ程度の変動を通過させ、それより高速な変動を除去する伝達関数を有するようにフィルタの特性を決定する。具体的なフィルタの種類、例えば、IIRであるならば、チェビシェフ及びバターワース等の種類や、次数によって決定される正規化された形状は、予め決めておけば良く、ここの段階では、帯域幅のみ変えればよい。
【0120】
図19は、このようにしてフィルタを掛けた後のパワー変動波形である。図19(a)は図18(b)のフィルタ後であり、図19(b)は、図18(c)のフィルタ後である。図19(b)を得るためのフィルタを図18(b)に適用すると、本来検出されるべき凹凸を除去してしまい、図19(a)を得るためのフィルタを図18(c)に適用すると、除去されるべき凹凸を除去しきれない。しかし、上述のように測角結果を利用して、比較的干渉が少ない部分、すなわち、その主要反射位置の本来の特徴が良く出ている部分を選んで、そこからフィルタの係数を決定することによって、適切な特性のフィルタを適用することが出来る。
【0121】
図17に示す変動幅判定部2233では、このようにして得られたパワー波形の変動幅を判定する。変動幅判定に関する詳細は図6に示される変動判定部1233と同様である。加えて、変動幅判定部2233は、変動幅が閾値以下であった主要反射位置について、その位置、又は、処理上の識別番号等、その主要反射位置を特定する情報を、低変動ポイント選択部226へ出力する。閾値以下である主要反射位置が複数のあった場合、変動幅判定部2233は、それぞれの変動幅を付して出力するか、あるいは、変動幅の大小によって順位付けして出力する。
【0122】
頻度カウント部2234は、変動幅が閾値以上であった主要反射位置について、相対広がりを検出する。詳細は前述と同じである。ただし、図18のように元々の波形の乱れが大きい場合は、対称性の検出が困難であることが多い。このような場合、対称性が高い点が検出出来ないので、無理に検出せず、全範囲を一範囲として、ピーク又はボトムを検出すればよい。図19の波形に基づいてピークを検出すると、図19(a)により示される中央でのピークは10個、図19(b)により示される後ろでのピークは4個である。後ろを基準とすると、中央は2.5倍の広がりを有することが計算出来る。頻度カウント部2234は、検出結果を相対広がり検出部224へ出力する。
【0123】
相対広がり検出部224は、図1の相対広がり算出部124と同様の処理を行う。相対広がり検出部224からは、各主要反射位置に対応させて、相対広がり及び広がりがないと言った情報が出力される。
【0124】
低変動ポイント選択部226は、変動幅判定部2233から、変動幅が閾値以下である主要反射位置を受け取る。低変動ポイント選択部226は、角度記録部225に記録される結果が供給され、通知された変動幅の小さい主要反射位置の角度記録結果を、角度記録部225から供給される結果から選択して出力する。このようにして出力された変動幅の小さい主要反射位置は、目標の角度を比較的正確に示している場合が多いので、これを目標を追随するための誘導信号の生成に利用する。変動幅の小さい主要反射位置が複数ある場合には、その後段で、角度情報を目標の追随に利用するに当たって、その利用方法に最も適した角度変動の傾向を持つ主要反射位置を選択してその測角結果を出力する。例えば、パワー変動の最も小さい主要反射位置の角度を出力すると良い。あるいは、角度変動が最も小さい主要反射位置を選択しても良いし、欠測が最も少ない主要反射位置を選択しても良い。
【0125】
次に、以上のように構成された目標検出装置による動作を説明する。図20は、第2の実施形態に係る目標検出装置20の処理動作についてのフローチャートの概要を示す図である。
【0126】
まず、目標検出装置20は、高解像度レーダ部21によりレーダ波を受信する(ステップS201)。高解像度レーダ部21は、主要な反射点に対応するレンジの振幅がピークを示す振幅波形を生成し、相対広がり検出部22へ出力する。
【0127】
目標検出装置20は、主要反射位置抽出部221により主要反射位置を抽出し(ステップS202)、抽出した主要反射位置についてのパワーを、パワー記録部222により予め設定された処理期間の間、記録する(ステップS203)。また、目標検出装置20は、抽出した主要反射位置の到来角度を、角度記録部225により、パワーが記録される期間と同じ期間だけ記録する(ステップS204)。
【0128】
続いて、目標検出装置20は、頻度計算部223により、各主要反射位置について、処理期間内で有意なパワー変動がある場合、パワー変動の頻度を計算する。このとき、目標検出装置20は、変動幅判定部2233により、処理期間内のパワー変動幅が予め設定した閾値を超えるか否かを判断する(ステップS205)。パワー変動幅が閾値を超える場合(ステップS205のYes)、目標検出装置20は、頻度カウント部2234により、処理期間内でのピーク又はボトムの回数を計算する(ステップS206)。パワー変動幅が閾値を超えない場合(ステップS205のNo)、目標検出装置20は、低変動ポイント選択部226により、パワー変動幅が閾値を超えない主要反射位置の角度記録結果を出力し、処理をステップS209へ移行する。
【0129】
ステップS206でピーク又はボトムの回数を計算した後、目標検出装置20は、相対広がり算出部224により、計算された頻度を、各主要反射位置の目標内のレンジ方向の位置に関連づけて出力する(ステップS208)。
【0130】
続いて、目標検出装置20は、抽出した主要反射位置の全てについて処理をしたか否かを判断し(ステップS209)、全ての主要反射位置について処理がされていない場合(ステップS209のNo)、処理をステップS203へ移行し、全ての主要反射位置についての処理が終了するまでステップS203〜ステップS208の処理を繰り返す。全ての主要反射位置について処理が終了した場合(ステップS209のYes)、目標検出装置20は処理を終了する。
【0131】
なお、上記を非常に簡略化した変形として、測角結果の誤差が小さい小期間を選択し、そこでの変動の速さを検出したら、その速さをそのまま相対広がりである頻度としても良い。また、測角結果の誤差が小さい部分をより広い範囲で選択し、誤差の小さい部分のみから頻度を算出しても良い。例えば、測角結果の誤差が一定値以上である範囲を除去し、残った範囲からピークの周期、ボトムの周期、あるいはピークとボトムの間の長さの2倍を算出し、それを平均化して、頻度に換算しても良い。
【0132】
以上のように、第2の実施形態では、反射されたレーダ波の振幅が高い部位を主要反射位置として抽出する。そして、目標検出装置20は、主要反射位置におけるパワー変動の頻度を計算し、そのパワー変動の頻度に基づいて目標内の相対的な広がりを求めるようにしている。これにより、目標が不明な動揺をしていても、パワーの変動の速さの違いから、異なる位置について、相対的な広がりの違いを算出することが可能となる。また、干渉状態の変化によるパワー変動は、10dBを越えるような非常に大きい変動幅で変動するため、低SNRで検出が可能であり、遠距離の目標であっても検出が可能となる。
【0133】
また、第2の実施形態では、ローパスフィルタ部2232で、測角結果の誤差が小さい部分については、マルチパス等、干渉波の影響が小さい部分であると判断し、その部分を基準にローパスフィルタの特性を決定するようにしている。これにより、ローパスフィルタ部2232で、マルチパス及び直接反射波の干渉によって発生するパワー変動の検出への影響を排除することが可能となる。
【0134】
また、第2の実施形態では、低変動ポイント選択部226により、パワー変動幅が閾値以下である主要反射位置についての角度記録結果を出力するようにしている。この出力は、目標を追随するための誘導信号の生成に利用される。このように、目標検出装置20は、目標の相対的な広がりを検出するのに加え、誘導信号の生成に有効な信号を効果的に生成することが可能となる。
【0135】
したがって、本実施形態に係る目標検出装置20によれば、少ないアンテナ数、低SNRで、目標の動揺がある場合でも、目標のクロスレンジ方向を含む形状を推定することができる。
【0136】
なお、第2の実施形態では、図15の機能構成を有する相対広がり検出部22を例に説明したが、相対広がり検出部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図21に示すように、低変動ポイント選択部226を備えていない場合であっても構わない。また、図22に示すように、頻度計算部223のローパスフィルタ部2232が、角度記録部225からの角度記録結果を受け取らずにフィルタ係数を決定するようにしても構わない。
【0137】
(第3の実施形態)
図23は、第3の実施形態に係る誘導装置に関する実施の形態である。図23は、第3の実施形態に係る誘導装置の機能構成を示すブロック図である。図23に示す誘導装置は、第1又は第2の実施形態に記載された目標検出装置10又は20と、誘導信号生成部31とを具備する。
【0138】
目標検出装置10,20は、第1及び第2の実施形態で示すように取得した目標の相対形状、目標レンジ、目標の角度、及び、必要に応じて目標の移動速度を誘導信号生成部31へ出力する。目標レンジ、目標の角度及び目標の移動速度は、通常の誘導装置で利用されるパラメータであるので説明を省略する。
【0139】
誘導信号生成部31は、搭載される飛しょう体の駆動部(図示せず)に対し、進行方向及び移動速度等を制御するための制御信号を出力する。
【0140】
目標検出装置10,20で生成された目標の相対形状は、追随している目標が正しい対象であるかどうかを検出するために利用する。このようなことは、例えば、目標が複数の別々の物体から成り、遠方では区別ができないが、近づくことによって解像できるようになると発生する。あるいは、目標が、この誘導装置を搭載する飛しょう体の接近を探知して、デコイ又はチャフ等を放出した場合に発生する。
【0141】
誘導信号生成部31には予め、目標のおおまかな形状、例えば、縦と横の長さ、特徴的な広がりを有する部位、が記憶されており、検出された目標の相対形状をそれと照合して、適合するかどうか判断する。適合していれば、そのまま追随中の目標の追随を継続し、適合していない場合は、近傍の他の反射波を探索するよう目標検出装置10,20に指示し、追随すべき目標を探し、決定する。
【0142】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0143】
10,20…目標検出装置
11,21…高解像度レーダ部
111,211…アンテナ
112,212…レーダ処理部
1121,2121−1,2121−2…受信RF部
1122,2122…ドップラ周波数検出部
1123,2123…移動速度計算部
1124,2124…周波数ステップ代表値抽出部
1125,2125…補正部
1126,2126…レンジ計算部
1127…振幅抽出部
2127…振幅・位相抽出部
2128…角度計算部
12,22…相対広がり検出部
121,221…主要反射位置抽出部
122,222…パワー記録部
123,223…頻度計算部
1231,2231…パワー補正部
1232,2232…ローパスフィルタ部
1233,2233…変動幅判定部
1234,2234…頻度カウント部
124,224…相対広がり算出部
225…角度記録部
226…低変動ポイント選択部
30…誘導装置
31…誘導信号生成部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ検出に伴う目標検出装置、誘導装置及び目標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダを利用した目標識別では、目標のレンジ方向、すなわち、距離方向の形状のみでなく、クロスレンジ、すなわち、角度方向の形状を検出し、検出された縦横の形状から、それがどのような物体であるかを識別する。
【0003】
レンジ方向の形状は、高解像度レーダを使用して識別される。クロスレンジ方向の形状は、アレイアンテナを利用して高解像度角度検出を行う方法、及び、レーダの動きを利用した合成開口、目標の動きを利用した逆合成開口を適用して目標のイメージングを行う方法等により識別されることが多い。
【0004】
レーダが使用できる1方向当たりのアンテナ数に制限があり、十分なアンテナ数が確保できない場合には、合成開口又は逆合成開口を適用して目標のイメージングを行う方法等の、アレイアンテナを必要としない方法を利用する必要がある。しかしながら、これらの方法では、検出方向に関して目標に不明な動揺があると検出が困難になる。
【0005】
ところで、2アンテナによるモノパルス測角では、同一レンジに含まれる複数の反射点の干渉により、グリント雑音と呼ばれる測角誤差が発生する。非特許文献1,2では、同一レンジに含まれる反射点数が十分に大きいと仮定して、測角誤差の分布を予測される確率密度分布に当てはめて、目標の広がりを推測している。
【0006】
目標の形状が十分に識別出来るほどの高解像度レーダを利用した場合、同一レンジに含まれる反射点数は、数点程度になる。反射点数が数点程度では、各レンジの測角誤差の確率密度の分布形状は、含まれる複数の反射点の反射係数の構成に依存してしまい、クロスレンジ広がりで一意に決定する確率密度分布とならない。その結果、非特許文献1,2のような、含まれる反射点数が非常に大きいと仮定した方法で推定を行うと誤差が大きく、正しい推定が出来ない。
【0007】
また、測角時のSNR(Signal to Noise Ratio)は、レンジ検出時のSNRより低くなるため、非特許文献1,2のようなグリント雑音を利用する方法では、グリント雑音を検出しようとしても、熱雑音による測角誤差と区別が付かず、正しい推定が行えない場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R. H. DeLano, Proceedings of the IRE, Vol.41, No.12, 1953, pp.1778 - 1784
【非特許文献2】B. H. Borden, Transactions on Antennas and Propagation, Vol.43, No.8, 1995, pp.759-765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、合成開口又は逆合成開口を適用して目標のイメージングを行う方法では、目標に不明な動揺がある場合、クロスレンジ方向の形状を推定することが出来ない。また、測角誤差の分布を利用する方法では、SNRが低い場合、熱雑音による測角誤差と区別が付かず、クロスレンジ方向の形状を正確に推定することが出来ない。
【0010】
そこで、目的は、少ないアンテナ数、低SNRで、目標の動揺がある場合でも、目標のクロスレンジ方向を含む形状を推定することが可能な目標検出装置、誘導装置及び目標検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によれば、目標検出装置は、レーダ部、主要反射位置抽出部、パワー記録部、変動幅判定部、頻度カウント部及び相対広がり算出部を具備する。レーダ部は、レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、前記有意な振幅の振幅値を取得する。主要反射位置抽出部は、前記レンジ及び前記振幅値の受信状況に基づき、目標内のレンジ方向における主要反射位置を選定する。パワー記録部は、前記主要反射位置毎の振幅値を、予め設定された処理期間の間記録する。変動幅判定部は、前記処理期間で記録された振幅データの変動幅が予め設定された閾値を超えるか否かを前記主要反射位置毎に判定し、前記変動幅が前記閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力する。頻度カウント部は、前記変動幅判定部からの主要反射位置の振幅データの変動頻度をカウントする。相対広がり算出部は、前記主要反射位置及び前記カウント結果を、前記目標内のレンジ方向の位置及び角度方向の相対的な広がりに関連付ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る目標検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の目標検出装置により検出される目標の一例を示す図である。
【図3】図1のレーダ処理部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図3のレーダ処理部112から送信される送信パルスのパルス構成の一例を示す図である。
【図5】図1の主要反射位置抽出部が主要反射位置を抽出する際に作成するテーブルの一例を示す図である。
【図6】図1の頻度計算部の機能構成を示すブロック図である。
【図7】図6のパワー補正部によるパワーの補正を示す図である。
【図8】図6のローパスフィルタ部による低域濾波を示す図である。
【図9】図6の頻度カウント部によるその他のカウントアルゴリズムの原理を説明する図である。
【図10】図9に基づいてコスト関数を計算した際の計算結果を示す図である。
【図11】図1の目標検出装置の処理動作についてのフローチャートを示す図である。
【図12】第1の実施形態に係るシミュレーションで用いられる目標を示す図である。
【図13】図6のパワー補正部から出力されるレンジ補正パワーを示す図である。
【図14】図1の相対広がり算出部から出力される、目標の相対的な広がりを示す図である。
【図15】第2の実施形態に係る目標検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】図15のレーダ処理部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図17】図15の頻度計算部の機能構成を示すブロック図である。
【図18】図17のパワー補正部から出力されるレンジ補正パワーを示す図である。
【図19】図17のローパスフィルタ部から出力されるパワー変動波形を示す図である。
【図20】図15の目標検出装置の処理動作についてのフローチャートを示す図である。
【図21】図15の目標検出装置のその他の例を示す図である。
【図22】図15の目標検出装置のその他の例を示す図である。
【図23】第3の実施形態に係る誘導装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る目標検出装置10の機能構成を示すブロック図である。図1に示す目標検出装置10は、高解像度レーダ部11と相対広がり検出部12を具備する。
【0015】
高解像度レーダ部11は、アンテナ111及びレーダ処理部112を備える。
【0016】
レーダで複雑な形状の目標を検出する場合、目標の中でレーダ波に対する反射断面積が大きい主要な幾つかの点で、レーダ波が反射される。アンテナ111は、反射されたレーダ波を受信する。
【0017】
レーダ処理部112は、受信されたレーダ波に基づいて、ピーク検出等の適切な方法によって、有意なパワーを持つレンジを検出する。このとき、レーダ処理部112内では、主要な反射点に対応するレンジの振幅がピークを示す振幅波形が生成される。これにより、高解像度レーダ部11からは、適切な処理によって抽出された有意なパワーを有するレンジと、少なくともそのレンジの振幅とが相対広がり検出部12へ出力される。
【0018】
相対広がり検出部12は、主要反射位置抽出部121、パワー記録部122、頻度計算部123、相対広がり算出部124を備える。
【0019】
主要反射位置抽出部121は、検出対象である目標の主要な反射位置を抽出する。すなわち、一定期間、目標内の同じ位置と思われる点から、ほぼ継続的に有意なパワーを持つピークが検出されれば、それを目標の主要反射位置とし、その目標内のレンジ方向の位置を検出する。
【0020】
パワー記録部122は、抽出した主要反射位置の各々について、予め設定された処理期間、すなわち、複数のCPI(Coherent Processing Interval:コヒーレント処理期間)の間、パワーを記録する。
【0021】
頻度計算部123は、各主要反射位置について、処理期間内で、有意なパワー変動がある場合、パワー変動の頻度、すなわち、その期間内のパワーの変動におけるピーク又はボトムの頻度を計算する。
【0022】
相対広がり算出部124は、計算された頻度を、各主要反射位置の目標内のレンジ方向の位置に関連づけて出力する。
【0023】
次に、本実施形態の作用を説明する。図2のような、aからbまでの広がりを持つ物体からの反射波の電界は、下記の様に記述できる。
【数1】
【0024】
ξ=2πfθ/cであり、cは光速、fは周波数、θは目標の傾き角である。iは虚数単位である。ρfは各x点での反射波のy方向の積分結果であり、各x点での反射係数と等価である。なお、図2の場合、aは負の値である。(1)式はワイエルシュトラスの無限積表示を利用して、
【数2】
【0025】
のように変形できる。wnはゼロ点である。なお、θの範囲は、目標がほぼ同じ形に見える範囲に限定する。反射波を位相と振幅に分けて、
【数3】
【0026】
とおくと、位相モノパルス測角で検出される角度gは波面の傾きであって、
【数4】
【0027】
と書ける。第3項の分母が0に近づく所、すなわち、ξがwnに近づく所でgが大きくなり、グリント雑音が発生する。この時、(2)式は0に近づいており、受信パワーは減少している。すなわち、受信パワーが減少する角度でグリント雑音が発生する。ξは実数であって、グリント雑音が発生する条件は、ξがwnの実部に近づく条件となる。ρfを
【数5】
【0028】
のように、振幅と位相に分けて記述すると、wnは、おおよそ、
【数6】
【0029】
となる。nは整数であり、ξは、目標がほぼ同じ形に見える範囲内の幾つかのnに対応してwnの実部に近づく。ξ=2πfθ/cと(6)式とより、ξ、すなわち、周波数固定の条件では、θが変化すると、周期的にグリント雑音が発生し、その周期、すなわち、グリント雑音が発生してから次に発生するまでの角度δθは、
【数7】
【0030】
となる。ただし、L=b−aであり、目標の広がりである。λは波長であり、c/fである。
【0031】
以上より、本来、Lを知りたければ、δθを知る必要がある。δθを正しく知るためには、目標が静止した状態で、レーダが移動してθを変えるか、レーダの動き(静止も含む)が既知の状態で、かつ、目標が既知の動きをして、θを変える条件でなければならない。また、δθを知るためには、グリント雑音を検出する必要がある。
【0032】
しかし、本実施形態が前提とする条件は、目標に不明な動揺があって、δθを知ることが出来ない条件である。また、目標が遠方にある場合、あるいは、反射点の反射係数が小さい場合など、グリント雑音の発生を熱雑音と区別して検出できるだけの十分なSNRが得られるとは限らない。
【0033】
まず、SNRについて考える。目標の測角をモノパルスで行う場合は、2アンテナの位相差を検出する。モノパルス測角における角度の計算は、2つのアンテナ出力から生成した2系統の信号の除算によって行われる。雑音と所望波が混在した2系統の信号を乗算する場合、乗算結果のSNRにおける雑音は熱雑音そのものではなく、一方の熱雑音と他方の所望波の乗算となって、SNRは乗算前の各々の信号より3dB劣化する。除算の場合、テーラー展開を利用して乗算に近似すれば同様の結果となり、SNRは概算で3dB劣化する。一方、レンジ検出、さらには、そのレンジのパワー検出では、2系統を最も高いSNRが得られるように最大比合成することなどによって、2アンテナの信号のコヒーレント加算と同等のSNRで行うことが出来、結果として、SNRは1アンテナの場合より6dB向上する。従って、検出されるパワーのSNRは、測角時のSNRより9dB高く、それだけ熱雑音の影響が小さい。
【0034】
(2)式を見ると、グリント雑音発生条件であるξがwnに近づく条件では、受信パワーが減少する。すなわち、グリント雑音は必ず、パワーの著しい減少を伴って発生するので、グリント雑音より検出SNRの高いパワーの増減の頻度を検出した方が感度の高い測定が可能となる。
【0035】
また、グリント雑音は多くの場合、その目標部位の角度広がりの数倍程度で現れるが、目標が遠方にある場合、そもそもの広がりが0.1度を切るような場合が多く、その数倍程度でグリント雑音が発生しても、熱雑音と区別が付かない場合が多い。一方、高解像度レーダによって、十分に目標がレンジ分解出来れば、あるレンジに含まれる反射点の数は少なくなっている。そのような場合、グリント雑音発生に伴うパワーの増減は、10dBから20dBといった非常に大きい変動幅となる。従って、熱雑音と区別が付かないグリント雑音を検出する替わりにパワー変動を検出すれば、高い検出感度が得られる。
【0036】
次に、δθの検出について考える。目標の動揺は、多くの場合機械的な振動であるため、その姿勢の角度が、比較的ゆっくりした速さで行ったり来たりするように変化することが多い。その角度の範囲をΦとし、目標内のある位置における広がりをL1とおくと、目標の姿勢の角度がΦ変化する間に、パワーが減少する回数m1はおおよそ、m1≒Φ/δθ=2L1Φ/λである。同様に、目標内の異なる位置の広がりをL2と置くと、目標の姿勢の角度がΦ変化する間に、パワーが減少する回数m2はおおよそ、m2≒Φ/δθ=2L2Φ/λである。重要な点は、L1とL2の広がりを持つこれらの位置が同一目標内の異なる位置であり、かつ、測定期間内で目標物の著しい変形がなければ、2点は同じようにΦだけ姿勢を変化させることである。その結果、L1に対してもL2に対しても、不明ではあるがΦは共通として扱える。そこで、m1/m2を計算すると、m1/m2=(2L1Φ/λ)/(2L2Φ/λ)=L1/L2となる。すなわち、目標の動揺によって目標内の各位置毎の干渉の状態が変化する場合、それぞれの位置のレーダ波の受信パワーの時間的な変化を検出し、そのパワーが減少する頻度を比較することによって、目標の各点の相対的な広がりを知ることが出来る。
【0037】
なお、このようにして知ることが出来る目標の形状は、縦横の縮尺比が不明な形状である。
【0038】
なお、上記の議論から、本来測定すべき頻度は、パワーのボトムの頻度であるが、ボトムとピークは当然交互に発生するため、いずれを測定してもかまわない。
【0039】
次に、本実施形態の詳細を説明する。
【0040】
図3は、第1の実施形態に係るレーダ処理部112の機能構成の一例を示すブロック図である。図3は、合成帯域レーダの受信ベースバンド処理を中心に示した図である。図3において、送信部は省略されている。図示しない送信部から送信されたパルス列が、目標で反射され、アンテナ111で受信される。そして、受信された反射波が、図3のレーダ処理部112で処理される。
【0041】
図3の説明をするに当たって、合成帯域レーダのパルス構成を説明する。パルス構成の模式図を図4に示す。
【0042】
1つの四角が1パルスである。横軸は時間、縦軸は周波数である。パルス繰り返し間隔(PRI)はT2であり、1つの周波数ステップでNp個のパルスが送信される。ある周波数ステップでNp個のパルスを送信したら、周波数ステップ間隔fstpだけ周波数が異なる次の周波数ステップで同様にNp個のパルスを送信する。これをNf個の周波数ステップ分繰り返す。1CPIは全部でNp×Nf個のパルスからなる。おおよそ、fstp×Nfの帯域幅が得られるが、1パルスの帯域幅はこれより十分に小さいため、ベースバンド処理部の帯域幅、サンプリングレートを抑えつつ、十分な解像度を得ることができる。
【0043】
なお、このバリエーションとして、Nf周波数ステップ分1周波数ステップ1パルスで掃引した後、これをNp回繰り返して1CPIとする構成も可能である。性能や動作には大きな差は無いので、説明は省略する。ここでは、図4のパルス構成で説明を継続する。
【0044】
図3のレーダ処理部112にはアンテナ111で受信されたパルス信号が入力される。受信RF部1121は、受信されたパルス信号を、適切に増幅、フィルタし、パルス信号の送信周波数でベースバンドにダウンコンバージョンする。これにより、パルス信号は、送受信の過程で被ったドップラ周波数を中心周波数とする形に変換される。
【0045】
また、受信RF部1121は、アナログ形式のパルス信号を、適切なサンプリングレートでデジタル形式に変換する。さらに、受信RF部1121は、パルス信号をそのパルス信号に適した方法で復調し、1レンジビン又は1ゲートにつき、1パルス1点のパルス代表値をドップラ周波数検出部1122へ出力する。
【0046】
ドップラ周波数検出部1122は、受信RF部からのパルス代表値に基づいてドップラ周波数を検出する。ドップラ周波数検出部1122は、パルス代表値を周波数ステップ代表値抽出部1124へ出力すると共に、検出したドップラ周波数を移動速度計算部1123へ出力する。なお、ドップラ周波数検出部1122は、分離可能な程度にドップラ周波数が異なる複数の目標が含まれる場合、ドップラ周波数毎に分離し、分離したドップラ周波数をそれぞれ後段へ出力する。本実施形態では、目標検出装置10は、同一目標内の異なる位置の相対広がりを検出するが、さほど大きくない目標内の異なる位置のドップラ周波数は大差が無いため、ドップラ周波数検出部1122では、同一目標内の異なる位置の分離はできない。
【0047】
移動速度計算部1123は、ドップラ周波数検出部1122からのドップラ周波数を、移動速度に変換する。
【0048】
周波数ステップ代表値抽出部1124は、移動速度計算部1123からの移動速度に基づいて、各周波数ステップから1周波数ステップ1つの周波数ステップ代表値を抽出する。
【0049】
補正部1125は、移動速度計算部1123からの移動速度に基づいて、周波数ステップ代表値抽出部1124からの周波数ステップ代表値を補正する。このとき、周波数ステップ代表値は、CPI内での各パルスのレンジの変化分の位相が補正される。補正部1125は、補正した周波数ステップ代表値をレンジ計算部1126へ出力する。
【0050】
レンジ計算部1126は、補正部1125からの周波数ステップ代表値に基づいてレンジ波形を推定し、有意なパワーを持つピークのレンジを抽出する。例えば、レンジ計算部1126は、周波数ステップ代表値に対してIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を施して、振幅が閾値以上であるピークのレンジを検出する。あるいは、レンジ計算部1126は、周波数ステップ代表値に、超解像度法の1種であるMUSIC(Multiple Signal Classification)を適用してピークのレンジを検出しても良い。さらに、レンジ計算部1126は、Y. Zheng他 "Prony's method for monopulse 3D imaging using stepped frequency waveform" (Proceedings of SPIE, Vol. 3461, pp. 308-314)に記載される、Prony法と呼ばれる線形予測法の変形でピーク検出を行ってもよい。
【0051】
振幅抽出部1127は、レンジ計算部1126からのレンジ、ピークの数、周波数ステップ代表値及びIFFT後の波形等を参照し、各ピークの振幅、すなわち、パワーに関する情報を検出する。
【0052】
例えば、振幅抽出部1127は、IFFT後の波形を参照し、検出されたピークの振幅を検出する。あるいは、振幅抽出部1127は、検出されたピークにおける複素振幅を抽出し、Zhengの文献に記述されるように、波形内の有意なピークの数と、そのレンジ、単一ピークの波形から逆行列を利用して、それぞれのピーク単独の振幅を推定してもよい。このような単一ピーク波形と逆行列を利用する方法では、隣り合うピークが重なり合って、IFFT後の波形では、互いに漏れ込んでいる場合でも、重なり合う前のピークの高さを推定することが出来る。なお、Zhengの文献の方法では、推定に当たって一般逆行列を利用しているが、必ずしも一般逆行列を利用する必要は無く、各ピークのレンジと、分離前の複素振幅と、単一ピーク波形から通常の逆行列で推定してもよい。Prony法やMUSICを用いるような場合では、IFFT後の波形の解像度以上に近づいた複数ピークを分離検出出来るため、逆行列を利用して重なり合う前の振幅を推定した方がよい。
【0053】
このように高解像度レーダ部11では、各CPIでの有意なパワーを持つレンジと振幅とを抽出し、相対広がり検出部12の主要反射位置抽出部121へ出力する。
【0054】
なお、目標内の異なる位置の複数点を分解出来る高解像度レーダであれば、合成帯域レーダでなくてもよく、例えば、非常にパルス幅の短い短パルスレーダ、非常に帯域幅の広いチャープパルスレーダでもよい。この場合、レーダ処理部内は、それぞれのレーダ形式に適した送受信及び変復調を行い、その結果のレンジ波形の有意なピークのレンジ及び振幅を出力する。また、レンジ、振幅に加えて位相を出力する。
【0055】
主要反射位置抽出部121は、目標内の主要反射位置を抽出する。具体的な処理は、例えば、以下のようである。まず、連続する幾つかのCPIついて、有意なパワーを有するレンジと振幅を図5に示すテーブルのように並べて記録する。図5では、横軸が目標内のレンジ方向の位置、縦軸がCPI番号である。図5では、目標内の位置を16個の箱に区切っており、各CPIでその目標内位置に相当するレンジで有意なパワーを持つピークが検出された場合、その振幅(又はパワー)を、その箱に記録していく。なお、図5では、有意なパワーを持つピークが記録されている箱に網掛けがされている。
【0056】
目標が移動する場合、そのレンジは時々刻々と変化する。そのため、その目標内の位置と検出レンジとを関連づけるには、その目標の先頭あるいは中心等、その目標を代表する部分のレンジが、時刻に伴ってどのように変化しているかの情報が必要である。目標が移動する場合、通常、レンジのトラッキングが行われており、トラッキング情報に基づいて、パルスを復調するゲートが決定される。クラッタ分離等が済み、そのゲート内で検出される対象が、検出したい目標のみに絞り込まれている場合、例えば、そのゲート内の先頭の有意な反射点が、いずれのCPIでも目標内の同じ部位からの反射点であると仮定して、その先頭を基準に後方の有意な反射点を箱に入れて行っても良い。あるいは、レンジのトラッキング情報を元に、目標の先頭レンジを定め、それと検出されたレンジの差に基づいて、目標内位置を決定しても良い。なお、箱のサイズ、すなわち、目標内位置の分類間隔は、レンジ検出時の解像度に基づいて決定すると良い。ただし、レンジ検出時に超解像度法などを用いている場合には、SNRに連動して解像度が変化する。そのような場合は、主要反射位置を抽出する段階での、予想されるSNRに基づいて間隔を決定すると良い。
【0057】
主要反射位置抽出部121は、テーブルを作成すると、その期間で、図5であれば、22個のCPIに渡る期間で、有意なパワーを持つレンジのデータが記入された回数の比率が所定の比率を上回る目標内位置を抽出する。例えば、6割を閾値とするならば、図5の場合は、目標内位置2,7,12が閾値を上回る。主要反射位置抽出部121は、その目標内位置の番号、目標内位置先頭に対するその箱の中心の相対レンジ、又は、目標内位置先頭に対して、それぞれのCPIで検出された有意なパワーを有するピークのレンジの相対位置の平均値等を、主要反射位置として定義する。
【0058】
もし、目標内位置を定義する箱の間隔が解像度と比較して細かったり、測定誤差が解像度より大きい測定が行われたり、又は、トラッキングの予測精度があまり高くない場合には、目標内の同じ部位からの反射波が記録される目標内位置がばらつく場合がある。そのような場合、主要反射位置抽出部121は、前後1つずつ等一定範囲まで含めて、箱が埋められた回数をカウントすると良い。例えば、目標内位置7には何も記録されていないが、6や8に記録があるCPIがある。このようにばらつきが発生する場合には、6,7,8をまとめて評価し、7の中心を主要反射位置としたり、これらの相対レンジの平均値を主要反射位置としてもよい。
【0059】
主要反射位置抽出部121は、このようにして抽出した主要反射位置をパワー記録部122へ出力する。
【0060】
パワー記録部122は、高解像度レーダ部11から出力される有意なパワーを有する反射点について、主要反射位置からの反射であると推定されるものを選択し、そのパワーを、所定の期間、記録していく。パワーは、dBでもリニアでも良いし、振幅でも良い。また、複素振幅でもよく、パワーの情報を正しく伝えられる形態であればよい。パワー記録部122は、主要反射位置からの反射であるかどうかを、主要反射位置抽出部121から出力された目標内位置に対して、一定の許容誤差範囲に収まっているかどうかで主として判断する。許容誤差範囲は解像度に基づいて決定すればよい。すなわち、図5における目標内位置の箱の間隔や、主要反射位置を決定する場合と同様に、その測定の性能に基づいて決定すればよい。
【0061】
なお、高解像度レーダ部11が合成帯域レーダである場合、速度検出誤差があると、検出レンジに解像度や熱雑音でずれる以上の誤差が発生することがある。合成帯域レーダでは、速度検出誤差とレンジ誤差にレーダの諸元で決定する一定定数の比例関係があるため、高解像度レーダ部11に検出速度を併せて出力させるようにし、検出速度にトラッキングを掛けて、速度誤差を算出し、これによって発生したレンジ誤差を修正してから、記録するようにしてもよい。あるいは、速度検出精度を予め予測しておいて、それに基づいて許容誤差範囲を決定しても良い。なお、このような速度誤差によるレンジ誤差の修正や誤差範囲の決定は、主要反射位置抽出部121の処理で行っても良い。
【0062】
パワー記録部122で記録する期間は、主要反射位置抽出部121で検出に利用する期間以上の期間である。また、主要反射位置からの反射であるかどうかを判断する際、主要反射位置抽出部121で行ったのと同様にトラッキング情報などを利用すると良い。
【0063】
高解像度レーダ部11がレンジ検出に超解像度法等を用いている場合、目標が接近してくるとSNRが高くなり、許容誤差範囲内に複数の有意なパワーを持つピークが観測されることがある。このような場合には、基本的には、より、主要反射位置に近いピークを選択すればよいが、後述するように測角を併せて行っている場合には、測角のトラッキングデータを作成し、許容誤差範囲内で予測される角度に近いピークを選択すると良い。
【0064】
次に、本実施形態の頻度計算部123の詳細を説明する。図6は、第1の実施形態に係る頻度計算部123の機能構成を示すブロック図である。
【0065】
パワー補正部1231は、記憶された目標内の各主要位置のパワーをレンジの変化の影響を除去するよう補正する。図7に例を示す。図7(a)は、目標のある位置のパワーの変化をdBでプロットしたグラフである。受信パワーはレンジが近くなると、レーダ方程式に従ってレンジの4乗に反比例して増加していく。従って、図7(a)は、全体的に左肩上がりのプロットとなっている。この状態でも、ボトムやピークの回数は判断できるが、レンジの変化による影響を除去した方が、変動幅の判断が容易である。図7(b)は、図7(a)にレンジの4乗を掛けて補正したものである。図7(b)によれば、レンジの変化によるパワーの変化分が除去され、純粋にパワーの変動のみとなり、より凹凸の判断が容易になっていることが分かる。
【0066】
ローパスフィルタ部1232は、パワー補正部1231により補正されたパワーの変化に、ローパスフィルタを掛け、熱雑音などによる高速な変動を取り除く。図8に一例を示す。図8(a)は、ある期間に渡って記録した目標内のある位置のレンジ補正後パワーであり、縦軸はdBではなくリニアである。所々、特に縦軸0の近傍で、プロットが不連続となっているのは、これらの点はパワーが小さすぎて検出出来ず、欠測となったためである。熱雑音の影響によって波形の乱れがあるため、図8(a)のままでは、熱雑音による凹凸のピークやボトムを検出してしまう。そこで、図8(a)の欠測点を0で置き換え、ローパスフィルタを掛けた結果が図8(b)である。熱雑音による細かい凹凸が除去され、ピークやボトムが明確になっていることが分かる。
【0067】
なお、図8(a)のように、欠測の原因を、パワーが著しく減少したことにほぼ限定できるのであれば、上記のように欠測を0で置き換えればよい。しかし、例えば、レーダ出力のレンジ波形から主な反射点を抽出する方法として超解像度法を用いるような場合で、かつ、超解像度法で分解出来る限界の離隔の複数の反射点があるような場合には、必ずしもそれらの点を分離できるとは限らない。分離出来なかった場合、いずれかの主要反射位置のデータが欠測となってしまうことがある。このような場合には、欠測は必ずしもパワーが減少した時に発生するとは限らない。そのような場合は、欠測を0で埋めると、本来存在しないボトムを故意に作ることになる。そのような場合は、欠測を周辺の点から多項式補間などの内挿法を適用して補間した後、同様にローパスフィルタを掛けるとよい。ローパスフィルタ部1232は、ローパスフィルタを掛けたパワー変動波形を変動幅判定部1233へ出力する。
【0068】
変動幅判定部1233は、ローパスフィルタ部1232からのパワー変動波形の最大値と最小値の比(dB差)が、所定の閾値を上回っているかどうかで、その主要反射位置が広がりを有するかどうかを判定する。変動幅判定部1233は、判定の結果、広がりを有すると判定した主要反射位置に関するデータのみを頻度カウント部1234へ出力する。
【0069】
なお、ほぼ単一の反射点からなる主要反射位置であっても、近いレンジに、パワーの変動があり、かつ、平均パワーがより強い主要反射位置がある場合、そこからのパワーが漏れ込んで、単一反射点であるにも係わらず、パワーの変動があるように観測されることがある。そこで、その主要反射位置に関して記録されたレンジ補正パワーの最大値と、一定範囲内で隣接する他の主要反射位置に関して記録されたレンジ補正パワーの最大値を比較し、近傍に、一定の割合以上大きい主要反射位置があるならば、変動の有無を判断する幅の閾値を大きくすると良い。特に、高解像度レーダ部11が各ピークの振幅を検出する際に、波形のピーク振幅をそのまま利用する場合には、このような処理が必要である。
【0070】
このように単純に閾値を緩める方法でも良いが、隣接する主要反射位置からパワーが漏れ込んでいるかどうかは、記録されたレンジ補正パワーの相関を取ることでも検出できる。ある主要反射位置のパワーに閾値を上回る変動があっても、それが閾値を若干超える程度(第2の閾値以下)であり、かつ、所定範囲内で隣接する主要反射位置のパワーがそれより一定の割合以上強い場合には、これらのパワー波形の相関を取り、相関の絶対値が一定以上であって強い相関が認められる場合には、その主要反射位置のパワー変動は、主として漏れ込みによるものであり、その主要反射位置は広がりを有さない、と判断しても良い。
【0071】
なお、隣接主要反射位置からの漏れ込みは実際には複素振幅で漏れ込むため、隣接主要反射位置のパワーの増減に対して必ずしも同じ符号でパワーが増減するとは限らない。従って、相関の判断をする場合には、相関値そのものではなく、相関値の絶対値で行うと良い。また、位相は条件の変化で変動する可能性があるため、ある時刻では、隣接主要反射位置からの漏れ込みがパワーが増加するように発生していたのに、別の時刻では、パワーが減少するように発生することがある。このため、相関を判断する際は、あまり長い期間の相関をまとめて判断しない方が良い。つまり、パワー変動頻度を検出するための期間が比較的長いならば、それを幾つかの範囲に分割して、各々、相関を判断し、それらの合計値で判断するなどするとよい。
【0072】
頻度カウント部1234は、変動幅判定部1233からの判定結果に基づいて、パワー変動頻度を計算する期間内での、各主要反射位置のパワー変動頻度の凹凸の回数、すなわち、ピークの回数又はボトムの回数を数える。
【0073】
頻度カウント部1234は、各主要反射位置と頻度をセットにして出力する。その際、さらに、変動幅判定部1233にて変動がないと判断された主要反射位置についても、その主要反射位置は広がりがないとのデータを出力すると良い。このようにして、目標内の主要な反射位置の角度広がりがどのような相対関係になっているかを出力することが出来る。
【0074】
なお、目標の動揺が不規則であったり、マルチパスなどが漏れ込んでパワー波形の乱れが大きい場合には、上記のように単純に測定期間内の凹凸の回数を数えれば良い。しかし、比較的測定条件がよい場合には、目標の動揺の仕方がパワー変動波形に現れていることがあり、これを利用して、より精度の高い検出が可能となる。
【0075】
このときの頻度カウント部1234の動作を図9を用いて説明する。ある目標の姿勢が、図9の◇で示したように変動している場合の、その目標内の、広がりの異なる2つの主要な反射位置のレンジ補正パワーの変動を△と□で示している。パワーは測定されるパラメータであるが、目標の姿勢角変化は、測定出来ないパラメータである。目標の姿勢角は、一定周期で動揺しており、矢印で示した部分を頂点として、行ったり来たりしている。そのような場合、観測されるパワーの変動波形が矢印の点に関して左右対称に近くなっている。矢印の点の周辺では、パワー波形はピークを示したりボトムを示したりするが、実際には、これらは本当のピークやボトムではなく、そのタイミングで目標が姿勢の回転方向を反転させたためにあたかもピークやボトムに見えているだけである。もし、矢印のタイミングを検出出来るのであれば、ここで検出されるピークやボトムは数えないようにしたい。そこで、頻度カウント部25に、例えば下記の様なアルゴリズムを適用すると良い。
【0076】
まず、変動幅判定部1233からのパワー変動波形について、各時刻の左右対称にある点の二乗誤差を、波形のピーク2つ分程度の範囲で算出し、平均誤差を計算する。その逆数をコスト関数とする。コスト関数値が大きい点は、その点を中心として左右の波形の対称性が強い点であり、目標に動揺がある場合、その頂点により近いタイミングの時刻であると判断できる。図9の□で示した波形について、このようなコスト関数を計算した結果が図10である。なお、図9の横軸はレンジであるが、図10の横軸はCPI番号であり、図9と図10では横軸の向きが反転している。図10では矢印で示した点でコスト関数値が明確なピークを示しており、これらのCPI番号が、図9の矢印で示したような頂点であると推測される。
【0077】
このような場合、頻度の算出は、矢印の点をまたがないで行うことが望ましい。しかし、図9を見ても分かるように、矢印から矢印までの間に含まれるピークやボトムの数はあまり多くない。そこで、頻度を直接数えるのではなく、矢印から隣の矢印までの間に含まれる複数のピークの間隔又は複数のボトムの間隔を干渉発生の「周期」として検出する。また、ピークもボトムも複数無い場合には、ピークと隣接するボトムの間隔の2倍を干渉発生の「周期」として検出する。頂点に対応する時刻(矢印の時刻)が3点以上検出された場合には、それぞれの頂点と頂点の間の区間において、全ての周期を観測し、それを平均化して、逆数をとることによって、頻度を計算する。
【0078】
次に、以上のように構成された目標検出装置による動作をシミュレーションの結果と共に説明する。図11は、第1の実施形態に係る目標検出装置10の処理動作についてのフローチャートの概要を示す図である。
【0079】
まず、目標検出装置10は、高解像度レーダ部11によりレーダ波を受信する(ステップS111)。高解像度レーダ部11は、主要な反射点に対応するレンジの振幅がピークを示す振幅波形を生成し、相対広がり検出部12へ出力する。図12は、レンジ計算部1126でのIFFT後の波形であり、本シミュレーションで用いられる目標を示す。図12において、主要反射位置は、先頭、中央、後ろの3点である。先頭は、主な反射点を1つしか含まないが、中央と後ろは複数の反射点を含み、目標の動揺による姿勢角の変化によって、グリント雑音やパワーの増減が発生する。なお、入力値では、中央のクロスレンジ方向の広がりは後ろのクロスレンジ方向の広がりの4.3倍である。
【0080】
目標検出装置10は、主要反射位置抽出部121により主要反射位置を抽出し(ステップS112)、抽出した主要反射位置についてのパワーを、パワー記録部122により予め設定された処理期間の間、記録する(ステップS113)。図13は、目標がレーダに近づいてくる条件で、一定期間、各主要反射位置のパワーを記録し、パワー補正部1231でレンジ補正パワーに変換した結果である。図13(a)は先頭の主要反射位置のパワーを示し、図13(b)は中央の主要反射位置のパワーを示し、図13(c)は後ろの主要反射位置のパワーを示す。パワーのみでなく、測角した場合の測角誤差も併せてプロットしている。パワーが減少している点で、所々グリント雑音と思われるスパイク状の測角誤差が発生しているが、熱雑音との区別が付けにくいことが分かる。特に、先頭は、一反射点であるため、グリント雑音は発生しないが、SNRが低いレンジでは、測角に対する熱雑音の影響が強く、グリント雑音が発生しているかどうかの判別は困難であることが分かる。一方、各主要反射位置のパワー波形をみると、図13(a)で示される先頭では、測角誤差が大きいレンジでも、安定したパワーが観測出来ていることが分かる。また、図13(b)で示される中央、及び、図13(c)で示される後ろではそれぞれ明確にパワーの変動が見えており、角度ではなくパワーを利用することの利点が理解できる。
【0081】
続いて、目標検出装置10は、頻度計算部123により、各主要反射位置について、処理期間内で有意なパワー変動がある場合、パワー変動の頻度を計算する。このとき、目標検出装置10は、変動幅判定部1233により、処理期間内のパワー変動幅が予め設定した閾値を超えるか否かを判断する(ステップS114)。例えば、変動幅判定部1233において、パワー変動があると判定する変動幅の閾値を仮に10dBと設定すると、先頭はパワー変動の幅がこれを下回っているため、広がりを有さない点と判定できる。
【0082】
パワー変動幅が閾値を超える場合(ステップS114のYes)、目標検出装置10は、頻度カウント部1234により、処理期間内でのピーク又はボトムの回数を計算する(ステップS115)。例えば、中央及び後ろのパワー波形の、変動幅判定部1233による判定結果に対して、単純に期間内のピークの数を計算すると、中央は10となり、後ろは4となる。パワー変動幅が閾値を超えない場合(ステップS114のNo)、目標検出装置10は、処理をステップS117へ移行する。
【0083】
目標検出装置10は、相対広がり算出部124により、計算された頻度を、各主要反射位置の目標内のレンジ方向の位置に関連づけて出力する(ステップS116)。頻度計算により、中央は10であり、後ろは4であるため、中央は後ろに対して相対的に2.5倍の広がりを有すると計算出来る。
【0084】
なお、図9を用いて説明した、対称性を検出して頂点を避けるようなアルゴリズムを適用した場合、中央の頻度は、12.5、後ろの頻度は4.8となり、中央は後ろに対して約2.6倍の広がりを持つ。
【0085】
実際のモデルでは、相対的な広がりの比は4.3倍であるので、推定精度は高くない。この理由は、各頂点間の動揺の速さが等しいとは限らないためと、3点以上の反射点がパワー変動に寄与する場合は、打ち消しあう干渉が発生する角度間隔は不等間隔となり、サンプル数が少ないと誤差が大きくなるためである。上記の例は、いずれも2,3個程度の周期しか検出できず、誤差が大きくなった。
【0086】
先頭と中央と後ろのレンジの関係は図12のようであり、上述のような評価の結果、先頭は広がりの無い点であり、中央は先頭より約2.7m離れた位置で、後ろの2.5倍〜2.6倍程度の広がりを有し、後ろは先頭より約5.2m離れた位置で広がりを有する、ということが分かる。これにより、縦横比は不明であるが、図14のように目標のおおよその形状を知ることが出来る。
【0087】
続いて、目標検出装置10は、抽出した主要反射位置の全てについて処理をしたか否かを判断し(ステップS117)、全ての主要反射位置について処理がされていない場合(ステップS117のNo)、処理をステップS113へ移行し、全ての主要反射位置についての処理が終了するまでステップS113〜ステップS116の処理を繰り返す。全ての主要反射位置について処理が終了した場合(ステップS117のYes)、目標検出装置10は処理を終了する。
【0088】
以上のように、第1の実施形態では、反射されたレーダ波の振幅が大きい部位を主要反射位置として抽出する。そして、目標検出装置10は、主要反射位置におけるパワー変動の頻度を計算し、そのパワー変動の頻度に基づいて目標内の相対的な広がりを求めるようにしている。
【0089】
目標内のレンジ方向のある位置に反射率が大きい反射点が複数ある場合、それらからの反射波の干渉状態は目標が動揺することによって変化する。その変化の速さは、ほぼそれらの反射点のクロスレンジ方向の広がりに比例する。同一目標内のレンジが異なる複数の位置は、通常、同一の動揺をしているため、目標が不明な動揺をしていても、そのパワーの変動の速さの違いから、異なる位置について、相対的な広がりの違いを算出することが可能となる。
【0090】
また、干渉状態の変化によるパワー変動は、10dBを越えるような非常に大きい変動幅で変動するため、低SNRで検出が可能であり、遠距離の目標であっても検出が可能となる。また、2アンテナで測角する系の場合、レンジ検出は、2アンテナを合成することによって1アンテナの場合より6dB向上したSNRで検出が可能であるが、測角時のSNRは2アンテナ分のデータの除算となるため、SNRは1アンテナの状態より約3dB劣化する。このように、パワー変動を利用することにより、従来のような測角データに基づいた方法と比較して、より遠距離、低SNRでの検出が可能となる。
【0091】
したがって、第1の実施形態に係る目標検出装置10によれば、目標の各点のクロスレンジ方向の広がりの絶対量は検出出来ないが、少ないアンテナ数で、かつ、目標に不明な動揺がある場合であっても、目標の各位置の相対的な広がりを、低SNRで検出することができ、目標のおおよその形状を推定することができる。
【0092】
(第2の実施形態)
図15は、第2の実施形態に係る目標検出装置20の機能構成を示すブロック図である。第1の実施形態では、測角は必須ではないが、殆どのレーダは測角機能を備えている。測角の結果を併せて利用することで、性能を向上させる、又は、より悪い条件に対応できるため、ここでは、測角を併せて行う実施の形態を示す。
【0093】
図15に示す高解像度レーダ部21は、1方向に付き2系統のアンテナを有する。2系統のアンテナを併せてアンテナ211として図示している。また、通常、方位と仰角の2方向を測定するため、アンテナ211は正しくは4つのアンテナからなるが、説明を簡略化するため、ここでは、1方向の2つのみを図示し、1方向分の処理のみを説明する。
【0094】
レーダ処理部212は、アンテナ211からの受信信号をそのレーダ形式に合わせて正しく復調し、ピーク検出などによって有意なパワーを持つレンジを検出し、そのパワーを検出する。その際、測角のための2系統をそれぞれ処理し、各ピークに相当するレンジについて測角を行って、有意なパワーを有するレンジについて、振幅、角度を出力する。
【0095】
図16は、本実施形態に係るレーダ処理部212の機能構成の一例を示すブロック図である。図16は、合成帯域レーダの受信ベースバンド処理を中心に示した図である。レーダ処理部212には、第1系統、第2系統からの2つの信号が入力される。この2つの系統は、それぞれ2つのアンテナに直接対応しても良い。ただし、モノパルス測角を行う場合には、2系統のアンテナの和信号と差信号をアンテナ端で生成してから、受信RF部2121−1,2121−2の処理を行うことが多い。そこで、ここでは、アンテナ端で和信号と差信号が生成されており、第1系統は和信号、第2系統は差信号であるとする。それぞれの系統は受信RF部2121−1,2121−2において、それぞれRF処理される。処理の内容は図3に示す受信RF部1121と同じである。ただし、復調時に、1ゲート又は1レンジビン当り1パルス1つのパルス代表値を抽出する際に利用するパラメータは、必ず、2系統で同一であるとする。すなわち、ゲートの位置を系統毎に変えたり、パルス圧縮フィルタの係数を系統毎に変えたり、パルス代表値を異なるレンジビンから抽出したりはせず、全く同一のパラメータで2系統を処理していく。以下、測角が完了するまでの他の処理でも、殆どの場合において、2系統を同一のパラメータで処理する。
【0096】
このように抽出されたパルス代表値から、ドップラ周波数検出部2122において、ドップラ周波数を検出する。2系統分は、適宜最大比合成等、SNRを最大化するような係数で合成して処理すると良い。検出性能の劣化を許容するなら、1系統のみから検出したり、等利得合成して検出したりする等、より単純な処理を採用しても良い。ドップラが検出出来たら、移動速度計算部2123にて移動速度を計算する。これは、図3に示す移動速度計算部1123と同じである。
【0097】
周波数ステップ代表値抽出部2124は、それぞれの系統に関し、同一の移動速度に基づいて周波数ステップ代表値を抽出していく。それ以外は、図3に示す周波数ステップ代表値抽出部1124の処理と同じである。
【0098】
補正部2125でも、2系統同一の移動速度に基づいて補正を行っていく。それ以外は、図3に示す補正部1125と同じである。
【0099】
レンジ計算部2126は、図3に示すレンジ計算部1126と同様にレンジ検出を行う。2系統は、可能であれば最大比合成しても良いが、複数のレンジの異なる反射点が含まれる場合、合成比率が同一にならず、決定出来ない場合が多いため、等利得合成でよい。合成帯域レーダの場合、レンジ検出精度は、ほぼ速度検出精度で決定し、角度検出精度はそもそものSNRでほぼ決定するため、レンジ計算時の合成方法は性能に大きく影響しない。
【0100】
ただし、レンジ計算部2126で、MUSIC等の相関行列を利用する場合、相関行列のランクをフルに回復させるため、前方後方空間平均化等の処理を施す。その際、図3の構成では、ランク1からフルランクに回復させる必要がある一方、図16の構成では、ランク2からの回復となるため、アンテナ数が2の場合、サブアレー数を約半分にできる。したがって、サブアレーサイズを大きくでき、アンテナ数1の場合より高解像度なレンジ検出が可能である。
【0101】
レンジ計算部2126で、幾つかのピークを検出し、それぞれのレンジを検出したら、振幅・位相抽出部2127にて、2系統それぞれについて、振幅と位相、すなわち、複素振幅を抽出する。ここでも、1つのピークについては、2系統を必ず同じパラメータで処理する。すなわち、2系統で完全に同じレンジの複素振幅を抽出する。抽出の仕方は、複素振幅である他は、図3に示すレンジ計算部2126と同じである。
【0102】
角度計算部2128は、抽出した複素振幅から、角度を計算する。角度計算法は、例えば、位相モノパルス法である。位相モノパルス法とは、2アンテナに入力された波面の傾きから、到来角を推定する方法である。位相モノパルス法の詳細処理は、本願とは直接関連しないため省略する。
【0103】
以上のように、レーダ処理部212にて、目標内の複数の位置からの反射波のレンジ、振幅及び角度を検出する。
【0104】
図15に示す相対広がり検出部22は、高解像度レーダ部21から反射波のレンジ、振幅及び角度を受けて、まず、主要反射位置抽出部221で主要反射位置を抽出する。主要反射位置抽出の基本的な動作は図1に示す主要反射位置抽出部121と同様である。ただし、2系統分のパワーは、これらを個別に処理するのではなく、2系統分の合計パワーにする等して、処理する。
【0105】
主要反射位置抽出部221においては、角度も同様にテーブルを作成する。同じ目標内位置で有意なパワーが継続的に検出されていても、その到来角に対してトラッキングを行うと、明らかに検出対象としている目標とは異なる方向から届いている場合には、そのような位置は、主要反射位置とはみなさない。このようなことは、例えば、送信したレーダ波が目標で反射し、一旦、地面など別の場所で反射してレーダに戻ってきたマルチパスと呼ばれる干渉波が受信されると発生する。マルチパスは地面方向から到来するため、これの到来角は、通常、検出対象の到来角と異なっている。マルチパスは、ドップラ周波数が検出対象の目標と大差ないため、パルスドップラレーダでの分離が難しく、角度の領域での分離が望ましい。
【0106】
パワー記録部222は、上述のように検出した各主要反射位置のパワーを、所定の期間記録する。動作は図1に示すパワー記録部122と同様である。また、角度記録部225は、パワーと同様に、それぞれの主要反射位置の角度を、パワーが記録される期間と同じ期間だけ記録する。
【0107】
頻度計算部223は、パワーだけでなく角度も利用して検出を行う。図17は、第2の実施形態に係る頻度計算部223の機能構成を示すブロック図である。
【0108】
パワー補正部2231は、記憶された目標内の各主要位置のパワーをレンジの変化の影響を除去する用に補正する。
【0109】
ローパスフィルタ部2232は、パワー補正部2231からの補正後のパワー波形と、角度記録部225に記録されたその主要反射位置の測角結果とを受け取る。ローパスフィルタ部2232は、測角結果の誤差が小さい部分を選択し、その部分を基準にローパスフィルタの特性を決定する。測角結果の誤差が小さい部分は、マルチパス等、干渉波の影響が小さい部分であると推測できるためである。
【0110】
ここで、図18を用いて、ローパスフィルタ部2232の動作を説明する。図18は、目標がレーダに近づいてくる条件で、一定期間、各主要反射位置のパワーを記録し、パワー補正部2231でレンジ補正パワーに変換した結果である。
【0111】
図13の例では、測角誤差に熱雑音の影響が現れる低SNR時でも、パワーは比較的安定して検出出来ていた。一方、マルチパスのような干渉波が発生している場合には、熱雑音の影響が小さくても、測角、パワー検出結果に雑音が発生する場合がある。図18に、その例を示す。このとき、目標は、図12の例と同じ目標であり、主要な反射位置は図12に示す3点である。図18(a),(b),(c)は、それぞれ、先頭、中央、後ろの受信パワーと測角誤差の変化である。図18(b),(c)では、角度誤差が大きく変動しており、また、パワーも、特に、レンジが遠く、マルチパスの影響が強い部分では図13と比較して乱れている。
【0112】
マルチパスは、通常、所望波である直接反射波より遅れて到着するが、遅れる時間はレンジが近づくに伴って長くなることが多く、レンジがある程度まで近づいた段階で、マルチパスは分離され、影響が出なくなる。先頭に近いピークから、順次マルチパスが分離されていく。図18(a)で示される先頭では、2000mの地点で既にマルチパスが分離されているため、影響が出ていない。図18(b)で示される中央では、1000m地点までマルチパスが重なっており、図18(c)で示される後ろでは、900m地点まで重なっている。図18は高解像度レーダによって検出した結果であるため、マルチパスが、例えば、図12で、先頭と中央の間にピークを持つような場合、ピークとしてはある程度の分離が可能である。そのため、パワー波形は、図13と比較して乱れがあるものの、おおよそ似たような波形となっている。しかし、測角への影響、特に、受信パワーが下がっている場合の測角への影響は、非常に大きい。これは、直接反射波のパワーが下がっているため、漏れ込んでいるマルチパスの角度を検出して誤差が増大しているためと、マルチパスと直接反射波の干渉でグリント雑音が発生しているためと、2つの原因があるが、この2つは地続きであり、原理的にも明確に区別することは出来ない。グリント雑音が発生する際の角度誤差は、おおよそ、目標の広がりに比例するが、マルチパスがある場合には、目標の広がりが、マルチパスを含めた広がりに見えている。マルチパスは、地面に対して対称な位置にある目標の虚像からの波として扱えるため、グリント雑音発生の元となる目標の広がりは非常に広く、その結果、角度誤差が非常に大きくなっている。なお、図18の右の縦軸スケールは図13のスケールの5倍である。
【0113】
ローパスフィルタ部2232は、まず、角度記録部225からの測角結果から、測角結果誤差の小さい範囲を抽出する。角度広がりを評価するための全評価期間の中、図18では、約130個の連続するCPIについて検出を行っているが、この中で、例えば、40CPIずつ程度の小期間を複数定義する。小期間は、全期間を分割するようにしても良いが、互いに重なり合っていてもよい。例えば、40CPIずつずれた3個の小期間を定義しても良いが、5CPIずつずれた18個を定義してもよい。ここでは、測角結果誤差の小さい範囲をより良く抽出出来る後者の方法を例に説明していく。
【0114】
ローパスフィルタ部2232は、それぞれの小期間内での測角結果の誤差平均値、例えば、RMSE(二乗誤差平均の平方根)を計算する。角度記録部225、又は、図示しない他の平均角度算出部は、各主要反射位置の測角結果にトラッキングを掛け、誤差算出の基準値を算出し、その基準値も同時にローパスフィルタ部2232へ出力する。基準値が全評価期間内で時々刻々と変化している場合には、ローパスフィルタ部2232には、変化している値が全て入力される。ローパスフィルタ部2232は、基準値と加工されていない測角結果の差からRMSEを計算する。
【0115】
ローパスフィルタ部2232は続いて、RMSEの最も小さい小期間を選択する。図18(b)の例であれば、例えば、レンジ700m〜1100mに相当する40CPI分の小期間、図18(c)の例であれば、1100m〜1500mに相当する40CPI分の期間を選択する。
【0116】
その際、単純に、小期間内での測角RMSEを評価しても良いが、次のように、通常のグリント雑音が発生している部分を除外するように評価しても良い。図13の例のように、マルチパスとは関係無くグリント雑音が発生している場合があり、このような場合は、グリント雑音が発生し、測角RMSEが大きくなっていても、干渉波が加わってはいない。そこで、例えば、まず、全期間でのパワーの最大値を検出し、パワーがそれより一定の値、例えば10dB低い値以下である点の角度はRMSE計算の対象外として、小期間の測角RMSEを計算する。次に、小期間内で対象外になった点の比率が一定値以下であり、かつ、計算した測角RMSEが最小である小期間を選択する。
【0117】
このようにすると、通常のグリント雑音の影響を排除し、干渉による測角誤差の評価が可能となるため、単純にRMSEを計算する場合より小期間の長さを長く出来る。その結果、フィルタ係数を決定するための変動の速さを高精度に検出できる。
【0118】
次に、これらの小期間内でのパワー変動の速さを検出する。パワー変動の速さの評価は、例えば、その期間のパワー波形をフーリエ変化してスペクトルとし、おおよその帯域幅を評価すればよい。あるいは、非常に高速な変化を緩いローパスフィルタ(例えば、タップ数の小さい移動平均フィルタ等)で予め除去しておいてから、微係数の二乗平均を評価する等しても良い。例えば、図18(b)であれば、40CPI内で3回程度の振動、図18(c)であれば、1回程度の振動に相当する変動の速さを抽出する。
【0119】
続いて、抽出した変動の速さに対応するローパスフィルタの特性を決定する。ローパスフィルタは、IIR(無限インパルスレスポンス)、FIR(有限インパルスレスポンス)のいずれでもよい。IIRであるならば、抽出した変動の速さに対応した時定数を決定し、FIRであるならば、抽出した変動の速さに対応したタップ係数とする。いずれも、抽出した変動の速さ程度の変動を通過させ、それより高速な変動を除去する伝達関数を有するようにフィルタの特性を決定する。具体的なフィルタの種類、例えば、IIRであるならば、チェビシェフ及びバターワース等の種類や、次数によって決定される正規化された形状は、予め決めておけば良く、ここの段階では、帯域幅のみ変えればよい。
【0120】
図19は、このようにしてフィルタを掛けた後のパワー変動波形である。図19(a)は図18(b)のフィルタ後であり、図19(b)は、図18(c)のフィルタ後である。図19(b)を得るためのフィルタを図18(b)に適用すると、本来検出されるべき凹凸を除去してしまい、図19(a)を得るためのフィルタを図18(c)に適用すると、除去されるべき凹凸を除去しきれない。しかし、上述のように測角結果を利用して、比較的干渉が少ない部分、すなわち、その主要反射位置の本来の特徴が良く出ている部分を選んで、そこからフィルタの係数を決定することによって、適切な特性のフィルタを適用することが出来る。
【0121】
図17に示す変動幅判定部2233では、このようにして得られたパワー波形の変動幅を判定する。変動幅判定に関する詳細は図6に示される変動判定部1233と同様である。加えて、変動幅判定部2233は、変動幅が閾値以下であった主要反射位置について、その位置、又は、処理上の識別番号等、その主要反射位置を特定する情報を、低変動ポイント選択部226へ出力する。閾値以下である主要反射位置が複数のあった場合、変動幅判定部2233は、それぞれの変動幅を付して出力するか、あるいは、変動幅の大小によって順位付けして出力する。
【0122】
頻度カウント部2234は、変動幅が閾値以上であった主要反射位置について、相対広がりを検出する。詳細は前述と同じである。ただし、図18のように元々の波形の乱れが大きい場合は、対称性の検出が困難であることが多い。このような場合、対称性が高い点が検出出来ないので、無理に検出せず、全範囲を一範囲として、ピーク又はボトムを検出すればよい。図19の波形に基づいてピークを検出すると、図19(a)により示される中央でのピークは10個、図19(b)により示される後ろでのピークは4個である。後ろを基準とすると、中央は2.5倍の広がりを有することが計算出来る。頻度カウント部2234は、検出結果を相対広がり検出部224へ出力する。
【0123】
相対広がり検出部224は、図1の相対広がり算出部124と同様の処理を行う。相対広がり検出部224からは、各主要反射位置に対応させて、相対広がり及び広がりがないと言った情報が出力される。
【0124】
低変動ポイント選択部226は、変動幅判定部2233から、変動幅が閾値以下である主要反射位置を受け取る。低変動ポイント選択部226は、角度記録部225に記録される結果が供給され、通知された変動幅の小さい主要反射位置の角度記録結果を、角度記録部225から供給される結果から選択して出力する。このようにして出力された変動幅の小さい主要反射位置は、目標の角度を比較的正確に示している場合が多いので、これを目標を追随するための誘導信号の生成に利用する。変動幅の小さい主要反射位置が複数ある場合には、その後段で、角度情報を目標の追随に利用するに当たって、その利用方法に最も適した角度変動の傾向を持つ主要反射位置を選択してその測角結果を出力する。例えば、パワー変動の最も小さい主要反射位置の角度を出力すると良い。あるいは、角度変動が最も小さい主要反射位置を選択しても良いし、欠測が最も少ない主要反射位置を選択しても良い。
【0125】
次に、以上のように構成された目標検出装置による動作を説明する。図20は、第2の実施形態に係る目標検出装置20の処理動作についてのフローチャートの概要を示す図である。
【0126】
まず、目標検出装置20は、高解像度レーダ部21によりレーダ波を受信する(ステップS201)。高解像度レーダ部21は、主要な反射点に対応するレンジの振幅がピークを示す振幅波形を生成し、相対広がり検出部22へ出力する。
【0127】
目標検出装置20は、主要反射位置抽出部221により主要反射位置を抽出し(ステップS202)、抽出した主要反射位置についてのパワーを、パワー記録部222により予め設定された処理期間の間、記録する(ステップS203)。また、目標検出装置20は、抽出した主要反射位置の到来角度を、角度記録部225により、パワーが記録される期間と同じ期間だけ記録する(ステップS204)。
【0128】
続いて、目標検出装置20は、頻度計算部223により、各主要反射位置について、処理期間内で有意なパワー変動がある場合、パワー変動の頻度を計算する。このとき、目標検出装置20は、変動幅判定部2233により、処理期間内のパワー変動幅が予め設定した閾値を超えるか否かを判断する(ステップS205)。パワー変動幅が閾値を超える場合(ステップS205のYes)、目標検出装置20は、頻度カウント部2234により、処理期間内でのピーク又はボトムの回数を計算する(ステップS206)。パワー変動幅が閾値を超えない場合(ステップS205のNo)、目標検出装置20は、低変動ポイント選択部226により、パワー変動幅が閾値を超えない主要反射位置の角度記録結果を出力し、処理をステップS209へ移行する。
【0129】
ステップS206でピーク又はボトムの回数を計算した後、目標検出装置20は、相対広がり算出部224により、計算された頻度を、各主要反射位置の目標内のレンジ方向の位置に関連づけて出力する(ステップS208)。
【0130】
続いて、目標検出装置20は、抽出した主要反射位置の全てについて処理をしたか否かを判断し(ステップS209)、全ての主要反射位置について処理がされていない場合(ステップS209のNo)、処理をステップS203へ移行し、全ての主要反射位置についての処理が終了するまでステップS203〜ステップS208の処理を繰り返す。全ての主要反射位置について処理が終了した場合(ステップS209のYes)、目標検出装置20は処理を終了する。
【0131】
なお、上記を非常に簡略化した変形として、測角結果の誤差が小さい小期間を選択し、そこでの変動の速さを検出したら、その速さをそのまま相対広がりである頻度としても良い。また、測角結果の誤差が小さい部分をより広い範囲で選択し、誤差の小さい部分のみから頻度を算出しても良い。例えば、測角結果の誤差が一定値以上である範囲を除去し、残った範囲からピークの周期、ボトムの周期、あるいはピークとボトムの間の長さの2倍を算出し、それを平均化して、頻度に換算しても良い。
【0132】
以上のように、第2の実施形態では、反射されたレーダ波の振幅が高い部位を主要反射位置として抽出する。そして、目標検出装置20は、主要反射位置におけるパワー変動の頻度を計算し、そのパワー変動の頻度に基づいて目標内の相対的な広がりを求めるようにしている。これにより、目標が不明な動揺をしていても、パワーの変動の速さの違いから、異なる位置について、相対的な広がりの違いを算出することが可能となる。また、干渉状態の変化によるパワー変動は、10dBを越えるような非常に大きい変動幅で変動するため、低SNRで検出が可能であり、遠距離の目標であっても検出が可能となる。
【0133】
また、第2の実施形態では、ローパスフィルタ部2232で、測角結果の誤差が小さい部分については、マルチパス等、干渉波の影響が小さい部分であると判断し、その部分を基準にローパスフィルタの特性を決定するようにしている。これにより、ローパスフィルタ部2232で、マルチパス及び直接反射波の干渉によって発生するパワー変動の検出への影響を排除することが可能となる。
【0134】
また、第2の実施形態では、低変動ポイント選択部226により、パワー変動幅が閾値以下である主要反射位置についての角度記録結果を出力するようにしている。この出力は、目標を追随するための誘導信号の生成に利用される。このように、目標検出装置20は、目標の相対的な広がりを検出するのに加え、誘導信号の生成に有効な信号を効果的に生成することが可能となる。
【0135】
したがって、本実施形態に係る目標検出装置20によれば、少ないアンテナ数、低SNRで、目標の動揺がある場合でも、目標のクロスレンジ方向を含む形状を推定することができる。
【0136】
なお、第2の実施形態では、図15の機能構成を有する相対広がり検出部22を例に説明したが、相対広がり検出部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図21に示すように、低変動ポイント選択部226を備えていない場合であっても構わない。また、図22に示すように、頻度計算部223のローパスフィルタ部2232が、角度記録部225からの角度記録結果を受け取らずにフィルタ係数を決定するようにしても構わない。
【0137】
(第3の実施形態)
図23は、第3の実施形態に係る誘導装置に関する実施の形態である。図23は、第3の実施形態に係る誘導装置の機能構成を示すブロック図である。図23に示す誘導装置は、第1又は第2の実施形態に記載された目標検出装置10又は20と、誘導信号生成部31とを具備する。
【0138】
目標検出装置10,20は、第1及び第2の実施形態で示すように取得した目標の相対形状、目標レンジ、目標の角度、及び、必要に応じて目標の移動速度を誘導信号生成部31へ出力する。目標レンジ、目標の角度及び目標の移動速度は、通常の誘導装置で利用されるパラメータであるので説明を省略する。
【0139】
誘導信号生成部31は、搭載される飛しょう体の駆動部(図示せず)に対し、進行方向及び移動速度等を制御するための制御信号を出力する。
【0140】
目標検出装置10,20で生成された目標の相対形状は、追随している目標が正しい対象であるかどうかを検出するために利用する。このようなことは、例えば、目標が複数の別々の物体から成り、遠方では区別ができないが、近づくことによって解像できるようになると発生する。あるいは、目標が、この誘導装置を搭載する飛しょう体の接近を探知して、デコイ又はチャフ等を放出した場合に発生する。
【0141】
誘導信号生成部31には予め、目標のおおまかな形状、例えば、縦と横の長さ、特徴的な広がりを有する部位、が記憶されており、検出された目標の相対形状をそれと照合して、適合するかどうか判断する。適合していれば、そのまま追随中の目標の追随を継続し、適合していない場合は、近傍の他の反射波を探索するよう目標検出装置10,20に指示し、追随すべき目標を探し、決定する。
【0142】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0143】
10,20…目標検出装置
11,21…高解像度レーダ部
111,211…アンテナ
112,212…レーダ処理部
1121,2121−1,2121−2…受信RF部
1122,2122…ドップラ周波数検出部
1123,2123…移動速度計算部
1124,2124…周波数ステップ代表値抽出部
1125,2125…補正部
1126,2126…レンジ計算部
1127…振幅抽出部
2127…振幅・位相抽出部
2128…角度計算部
12,22…相対広がり検出部
121,221…主要反射位置抽出部
122,222…パワー記録部
123,223…頻度計算部
1231,2231…パワー補正部
1232,2232…ローパスフィルタ部
1233,2233…変動幅判定部
1234,2234…頻度カウント部
124,224…相対広がり算出部
225…角度記録部
226…低変動ポイント選択部
30…誘導装置
31…誘導信号生成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、前記有意な振幅の振幅値を取得するレーダ部と、
前記レンジ及び前記振幅値の受信状況に基づき、目標内のレンジ方向における主要反射位置を選定する主要反射位置抽出部と、
前記主要反射位置毎の振幅値を、予め設定された処理期間の間記録するパワー記録部と、
前記処理期間で記録された振幅データの変動幅が予め設定された閾値を超えるか否かを前記主要反射位置毎に判定し、前記変動幅が前記閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力する変動幅判定部と、
前記変動幅判定部からの主要反射位置の振幅データの変動頻度をカウントする頻度カウント部と、
前記主要反射位置及び前記カウント結果を、前記目標内のレンジ方向の位置及び角度方向の相対的な広がりに関連付ける相対広がり算出部と
を具備することを特徴とする目標検出装置。
【請求項2】
前記処理期間で記録される振幅データを、前記処理期間内でのレンジの変化の影響を除去するように補正するパワー補正部をさらに具備し、
前記変動幅判定部は、前記補正した振幅データに対して前記判定処理を行うことを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項3】
前記補正した振幅データに対して低域濾波を適用するローパスフィルタ部をさらに具備し、
前記変動幅判定部は、前記低域濾波した振幅データに対して前記判定処理を行うことを特徴とする請求項2記載の目標検出装置。
【請求項4】
前記レーダ部は、前記優位な振幅を示す複数のレンジについて測角を行い、到来角をさらに取得し、
前記主要反射位置毎の到来角を、前記処理期間の間記録する角度記録部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項5】
(図22)
変動幅判定部は、前記変動幅が前記閾値を超えない主要反射位置を出力し、
前記角度記録部に記録される前記主要反射位置毎の到来角データのうち、前記変動幅判定部からの主要反射位置についての到来角データを出力する低変動ポイント選択部をさらに具備することを特徴とする請求項4記載の目標検出装置。
【請求項6】
(図21)
前記処理期間で記録された振幅データを、前記処理期間内でのレンジの変化の影響を除去するように補正するパワー補正部と、
前記角度記録部に記録される前記主要反射位置毎の到来角データのばらつきを、前記処理期間内のより短い複数の小期間でそれぞれ計算し、前記ばらつきが最小となる小期間での前記主要反射位置の振幅データの変化に基づいて低域濾波の特性を決定し、前記補正した振幅データに対して前記特性の低域濾波を適用するローパスフィルタ部と
をさらに具備し、
前記変動幅判定部は、前記低域濾波した振幅データに対して前記判定処理を行うことを特徴とする請求項4記載の目標検出装置。
【請求項7】
(図15)
変動幅判定部は、前記変動幅が前記閾値を超えない主要反射位置を出力し、
前記角度記録部に記録される前記主要反射位置毎の到来角データのうち、前記変動幅判定部からの主要反射位置についての到来角データを出力する低変動ポイント選択部をさらに具備することを特徴とする請求項6記載の目標検出装置。
【請求項8】
ローパスフィルタ部は、前記補正した振幅データのうち、前記補正した振幅データの最大値から予め設定した値以上低いレンジに対応する到来角を、前記ばらつきの計算の対象から除外することを特徴とする請求項6及び7のいずれかに記載の目標検出装置。
【請求項9】
前記頻度カウント部は、前記変動幅判定部からの主要反射位置の振幅データの対称性を検出して前記目標の姿勢角の頂点を避けるように、前記振幅データの変動頻度をカウントすることを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項10】
前記レーダ部は、合成帯域レーダであることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の目標検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の少なくともいずれかに示す目標検出装置と、
前記目標検出装置からの、前記目標内のレンジ方向の位置と角度方向の相対的な広がりとの関係に基づいて、飛しょう体を誘導するための信号を生成する誘導信号生成部と
を具備することを特徴とする誘導装置。
【請求項12】
レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、前記有意な振幅の振幅値を取得し、
前記レンジ及び前記振幅値の受信状況に基づき、目標内のレンジ方向における主要反射位置を選定し、
前記主要反射位置毎の振幅値を、予め設定された処理期間の間記録し、
前記処理期間で記録された振幅データの変動幅が予め設定された閾値を超えるか否かを前記主要反射位置毎に判定し、前記変動幅が前記閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力し、
前記出力された主要反射位置の振幅データの変動頻度をカウントし、
前記主要反射位置及び前記カウント結果を、前記目標内のレンジ方向の位置及び角度方向の相対的な広がりに関連付けることを特徴とする目標検出方法。
【請求項1】
レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、前記有意な振幅の振幅値を取得するレーダ部と、
前記レンジ及び前記振幅値の受信状況に基づき、目標内のレンジ方向における主要反射位置を選定する主要反射位置抽出部と、
前記主要反射位置毎の振幅値を、予め設定された処理期間の間記録するパワー記録部と、
前記処理期間で記録された振幅データの変動幅が予め設定された閾値を超えるか否かを前記主要反射位置毎に判定し、前記変動幅が前記閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力する変動幅判定部と、
前記変動幅判定部からの主要反射位置の振幅データの変動頻度をカウントする頻度カウント部と、
前記主要反射位置及び前記カウント結果を、前記目標内のレンジ方向の位置及び角度方向の相対的な広がりに関連付ける相対広がり算出部と
を具備することを特徴とする目標検出装置。
【請求項2】
前記処理期間で記録される振幅データを、前記処理期間内でのレンジの変化の影響を除去するように補正するパワー補正部をさらに具備し、
前記変動幅判定部は、前記補正した振幅データに対して前記判定処理を行うことを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項3】
前記補正した振幅データに対して低域濾波を適用するローパスフィルタ部をさらに具備し、
前記変動幅判定部は、前記低域濾波した振幅データに対して前記判定処理を行うことを特徴とする請求項2記載の目標検出装置。
【請求項4】
前記レーダ部は、前記優位な振幅を示す複数のレンジについて測角を行い、到来角をさらに取得し、
前記主要反射位置毎の到来角を、前記処理期間の間記録する角度記録部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項5】
(図22)
変動幅判定部は、前記変動幅が前記閾値を超えない主要反射位置を出力し、
前記角度記録部に記録される前記主要反射位置毎の到来角データのうち、前記変動幅判定部からの主要反射位置についての到来角データを出力する低変動ポイント選択部をさらに具備することを特徴とする請求項4記載の目標検出装置。
【請求項6】
(図21)
前記処理期間で記録された振幅データを、前記処理期間内でのレンジの変化の影響を除去するように補正するパワー補正部と、
前記角度記録部に記録される前記主要反射位置毎の到来角データのばらつきを、前記処理期間内のより短い複数の小期間でそれぞれ計算し、前記ばらつきが最小となる小期間での前記主要反射位置の振幅データの変化に基づいて低域濾波の特性を決定し、前記補正した振幅データに対して前記特性の低域濾波を適用するローパスフィルタ部と
をさらに具備し、
前記変動幅判定部は、前記低域濾波した振幅データに対して前記判定処理を行うことを特徴とする請求項4記載の目標検出装置。
【請求項7】
(図15)
変動幅判定部は、前記変動幅が前記閾値を超えない主要反射位置を出力し、
前記角度記録部に記録される前記主要反射位置毎の到来角データのうち、前記変動幅判定部からの主要反射位置についての到来角データを出力する低変動ポイント選択部をさらに具備することを特徴とする請求項6記載の目標検出装置。
【請求項8】
ローパスフィルタ部は、前記補正した振幅データのうち、前記補正した振幅データの最大値から予め設定した値以上低いレンジに対応する到来角を、前記ばらつきの計算の対象から除外することを特徴とする請求項6及び7のいずれかに記載の目標検出装置。
【請求項9】
前記頻度カウント部は、前記変動幅判定部からの主要反射位置の振幅データの対称性を検出して前記目標の姿勢角の頂点を避けるように、前記振幅データの変動頻度をカウントすることを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項10】
前記レーダ部は、合成帯域レーダであることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の目標検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の少なくともいずれかに示す目標検出装置と、
前記目標検出装置からの、前記目標内のレンジ方向の位置と角度方向の相対的な広がりとの関係に基づいて、飛しょう体を誘導するための信号を生成する誘導信号生成部と
を具備することを特徴とする誘導装置。
【請求項12】
レンジ測定範囲内で有意な振幅を示す複数のレンジ、及び、前記有意な振幅の振幅値を取得し、
前記レンジ及び前記振幅値の受信状況に基づき、目標内のレンジ方向における主要反射位置を選定し、
前記主要反射位置毎の振幅値を、予め設定された処理期間の間記録し、
前記処理期間で記録された振幅データの変動幅が予め設定された閾値を超えるか否かを前記主要反射位置毎に判定し、前記変動幅が前記閾値を超える主要反射位置の振幅データを出力し、
前記出力された主要反射位置の振幅データの変動頻度をカウントし、
前記主要反射位置及び前記カウント結果を、前記目標内のレンジ方向の位置及び角度方向の相対的な広がりに関連付けることを特徴とする目標検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−181042(P2012−181042A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42691(P2011−42691)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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