説明

目標検出装置

【課題】 船舶などの目標が生み出す引き波の影響を排除して真の目標を正確に検出し、真の目標がカメラの撮影範囲から逸脱しないようにカメラを制御することができる目標検出装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 クラスタリング処理部6により検出された目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去する広がり除去部10を設け、その広がり除去部10により広がり部分が除去された目標のビデオ領域の重心位置を計算し、その重心位置に応じてカメラ16を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、船舶などの目標を検出し、その目標がカメラの撮影範囲から逸脱しないようにカメラを制御する目標検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空港面探知レーダ装置(ASDE:Airport Surface Detection Equipment)を用いて船舶などの目標を検出し、その目標の検出位置に応じて可動式カメラを自動制御することにより、航行する船舶などの目標を映し出す場合、ASDEが高分解能レーダであるため、船舶自身が生み出す引き波などのシークラッタがエコーとして映し出され、船舶の目標検出位置の精度が低下する。
カメラは、通常、陸地の遠方に設置されるので、望遠レンズを使用しなければならない。そのため、目標の検出位置のズレが大きく影響して、カメラの画角から船舶が逸脱する場合が考えられる。
そこで、船舶自身が生み出す引き波による検出位置の精度低下を防止する必要がある。
【0003】
従来の目標検出装置は、スレッショルド処理を実施することにより、船舶自身が生み出す引き波などの反射波を識別するようにしている。
具体的には、下記の通りである。
まず、目標検出装置の送受信機がレーダアンテナを用いて、目標に向けてレーダ信号を空間に放射し、レーダアンテナが目標に反射されたレーダ信号を受信すると、その微弱なレーダ信号を増幅して周波数変換を実施することにより、レーダビデオ信号を生成する。
【0004】
A/D変換部は、送受信機がレーダビデオ信号を生成すると、そのレーダビデオ信号をA/D変換して、デジタルのレーダビデオ信号をメモリ部に格納する。
スレッショルド処理部は、メモリ部に格納されているレーダビデオ信号のレーダビデオ階調値をスレッショルドレベルと比較することにより、そのレーダビデオ信号をノイズ成分と目標成分に分別する。
ここで、このノイズ成分には、レベルが低いノイズ信号の他に、船舶自身が生み出す引き波などの反射波が含まれる。
スレッショルド処理部は、レーダビデオ信号をノイズ成分と目標成分に分別すると、そのレーダビデオ信号からノイズ成分を除去する。
【0005】
クラスタリング処理部は、スレッショルド処理部がレーダビデオ信号からノイズ成分を除去すると、そのレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、目標のビデオ領域(クラスタ)を検出する。
重心位置処理部は、クラスタリング処理部が目標のビデオ領域を検出すると、そのビデオ領域の重心位置を計算する。
カメラ制御部は、重心位置処理部がビデオ領域の重心位置を計算すると、その重心位置に応じてカメラ制御信号を生成し、そのカメラ制御信号をカメラに送信して、カメラを操作する。
なお、カメラにより撮影された映像は、表示装置により表示される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−288846号公報(段落番号[0010]から[0012]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の目標検出装置は以上のように構成されているので、船舶自身が生み出す引き波などの反射波の諧調値がスレッショルドレベルより高い場合、その引き波などの反射波を除去することができない。この場合、引き波などの反射波が目標であると誤検出されて、真の目標がカメラの撮影範囲から逸脱することがあるなどの課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、船舶などの目標が生み出す引き波の影響を排除して真の目標を正確に検出し、真の目標がカメラの撮影範囲から逸脱しないようにカメラを制御することができる目標検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る目標検出装置は、目標検出手段により検出された目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去する広がり除去手段を設け、その広がり除去手段により広がり部分が除去された目標のビデオ領域の重心位置を計算し、その重心位置に応じて目標を撮影するカメラを制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、目標検出手段により検出された目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去する広がり除去手段を設け、その広がり除去手段により広がり部分が除去された目標のビデオ領域の重心位置を計算し、その重心位置に応じて目標を撮影するカメラを制御するように構成したので、船舶などの目標が生み出す引き波の影響を排除して真の目標を正確に検出し、真の目標がカメラの撮影範囲から逸脱しないようにカメラを制御することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による目標検出装置を示す構成図であり、図において、送受信機2はレーダアンテナ1を用いて目標に向けてレーダ信号(電波)を空間に放射し、レーダアンテナ1が目標に反射されたレーダ信号を受信すると、その微弱なレーダ信号を増幅して周波数変換を実施することにより、レーダビデオ信号を生成する処理を実施する。
なお、レーダアンテナ1及び送受信機2から信号送受信手段が構成されている。
【0012】
A/D変換部3は送受信機2により生成されたレーダビデオ信号をA/D変換して、デジタルのレーダビデオ信号をメモリ部4に格納する処理を実施する。
メモリ部4はA/D変換部3から出力されたデジタルのレーダビデオ信号を一時的に蓄積する処理を実施する。
スレッショルド処理部5はメモリ部4に蓄積されているレーダビデオ信号のレーダビデオ階調値をスレッショルドレベルと比較することにより、そのレーダビデオ信号をノイズ成分と目標成分に分別し、そのレーダビデオ信号からノイズ成分を除去する処理を実施する。
クラスタリング処理部6はスレッショルド処理部5によるノイズ成分除去後のレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、そのレーダビデオ信号に含まれている目標のビデオ領域(クラスタ)を検出する処理を実施する。
なお、A/D変換部3、メモリ部4、スレッショルド処理部5及びクラスタリング処理部6から目標検出手段が構成されている。
【0013】
重心位置計算部7はクラスタリング処理部6により検出された目標のビデオ領域の重心位置(目標の位置)を計算する処理を実施する。
相関処理部8は重心位置計算部7により重心位置が計算された目標のビデオ領域と、前回最終的に検出された目標のビデオ領域との相関処理を実施して、両者が同一の目標であるか否かを判定し、同一目標であると判定する場合に限り、その相関結果等を速度/ヘディング処理部9に出力する。
速度/ヘディング処理部9は相関処理部8から出力された相関結果から目標の速度とヘディングを求め、その速度とヘディングから広がり閾値を求める処理を実施する。
広がり除去部10は重心位置計算部7により重心位置が計算された目標のビデオ領域と速度/ヘディング処理部9により求められた広がり閾値を比較し、その広がり閾値を超えているビデオ領域を進行方向の広がり部分であると認定し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去する処理を実施する。
なお、重心位置計算部7、相関処理部8、速度/ヘディング処理部9及び広がり除去部10から広がり除去手段が構成されている。
【0014】
クラスタリング再処理部11は広がり除去部10による処理後のレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、そのレーダビデオ信号に含まれている目標のビデオ領域(クラスタ)を検出する処理を実施する。
重心位置再計算部12はクラスタリング再処理部11により検出された目標のビデオ領域の重心位置(目標の位置)を計算する処理を実施する。
相関再処理部13は重心位置再計算部12により重心位置が計算された目標のビデオ領域と、前回最終的に検出された目標のビデオ領域との相関処理を実施して、両者が同一の目標であるか否かを判定し、同一目標であると判定する場合に限り、その相関結果等をデータフォーマット処理部14に出力する。
なお、クラスタリング再処理部11、重心位置再計算部12及び相関再処理部13から重心位置計算手段が構成されている。
【0015】
データフォーマット処理部14は相関再処理部13から出力された相関結果等のデータ形式を、カメラ制御部15や表示装置17が読み取り可能な形式に変換する処理を実施する。
カメラ制御部15は重心位置再計算部12により計算されたビデオ領域の重心位置に応じてカメラ制御信号を生成し、そのカメラ制御信号をカメラ16に送信して、カメラ16を操作する処理を実施する。
なお、データフォーマット処理部14及びカメラ制御部15からカメラ制御手段が構成されている。
【0016】
カメラ16はカメラ架台に設置されており、カメラ制御部15から送信されるカメラ制御信号にしたがってズーム倍率などが制御される。カメラ16の撮影方向はカメラ架台がカメラ制御部15から送信されるカメラ制御信号にしたがって制御されることにより制御される。
表示装置17はカメラ16により撮像された映像や重心位置再計算部12により計算された重心位置(目標の位置)などを表示する。
【0017】
次に動作について説明する。
送受信機2は、レーダアンテナ1を用いて、目標に向けてレーダ信号(電波)を空間に放射し、レーダアンテナ1が目標に反射されたレーダ信号を受信すると、その微弱なレーダ信号を増幅して周波数変換を実施することにより、レーダビデオ信号を生成する。
【0018】
A/D変換部3は、送受信機2がレーダビデオ信号を生成すると、そのレーダビデオ信号をA/D変換して、デジタルのレーダビデオ信号をメモリ部4に格納する。
スレッショルド処理部5は、メモリ部4に蓄積されているレーダビデオ信号のレーダビデオ階調値をスレッショルドレベルと比較することにより、そのレーダビデオ信号をノイズ成分と目標成分に分別し、そのレーダビデオ信号からノイズ成分を除去する。
【0019】
クラスタリング処理部6は、スレッショルド処理部5からノイズ成分が除去されたレーダビデオ信号を受けると、そのレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、そのレーダビデオ信号に含まれている目標のビデオ領域(クラスタ)を検出する。
ここで、図2は船舶(目標)が停止している状態のレーダビデオ信号が示す映像であり、船舶が停止している状態では、引き波が作り出されないので、この映像には引き波のエコーが表示されない。
一方、図3は船舶(目標)が移動している状態のレーダビデオ信号が示す映像であり、船舶が移動している状態では、引き波が作り出されるので、船舶の後方に広がりを有する引き波のエコーが表示される。
【0020】
重心位置計算部7は、クラスタリング処理部6が目標のビデオ領域を検出すると、そのビデオ領域の重心位置(目標の位置)を計算する。
船舶(目標)が停止している状態では、図2に示すように、重心位置計算部7により計算される重心位置Aは、船舶の内部に位置するが、船舶(目標)が移動している状態では、船舶の後方に広がりを有する引き波のエコーが存在するため、図3に示すように、重心位置計算部7により計算される重心位置Bは、船舶の外部(後方部分)に位置する。
したがって、重心位置計算部7により計算される重心位置Bは、船舶の位置を正確に表していないことになる。
【0021】
相関処理部8は、重心位置計算部7がビデオ領域の重心位置を計算すると、船舶(目標)が移動している状態でも、船舶の位置を正確に表示することができるようにするため、その目標のビデオ領域と、前回最終的に検出された目標のビデオ領域(前回、相関再処理部13により同一目標であると判定された目標のビデオ領域)との相関処理を実施して、両者が同一の目標であるか否かを判定する。
相関処理部8は、両者が同一の目標でないと判定する場合、重心位置計算部7により計算された重心位置やレーダビデオ信号を破棄して、以後の処理を終了する。
一方、両者が同一目標であると判定する場合、その相関結果等を速度/ヘディング処理部9に出力する。
【0022】
速度/ヘディング処理部9は、相関処理部8から相関結果を受けると、その相関結果から目標の速度(目標の進行方向を含む)とヘディングを求めて、その速度とヘディングから広がり閾値(広がり判定スレッショルド)を求める。
即ち、船舶が作り出す引き波の広がりは、船舶の速度に比例して大きくなり、船舶の進行方向と垂直な方向に引き波が広がるので、目標の速度(目標の進行方向を含む)とヘディングをパラメータにして広がり閾値を計算する。
広がり閾値は、図4に示すように、船舶の進行方向に一定の幅を有し、その幅は船舶の幅より若干広い値になる。
【0023】
広がり除去部10は、速度/ヘディング処理部9が広がり閾値を計算すると、相関処理部8から出力されたレーダビデオ信号が示す目標のビデオ領域と広がり閾値を比較し、その広がり閾値を超えているビデオ領域を進行方向の広がり部分であると認定する。
即ち、広がり除去部10は、図4に示すように、広がり閾値より外側の領域に存在するビデオ領域を進行方向の広がり部分であると認定する。
広がり除去部10は、進行方向の広がり部分を認定すると、目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去する処理を実施する。
【0024】
クラスタリング再処理部11は、広がり除去部10が進行方向の広がり部分を除去すると、広がり除去部10による処理後のレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、そのレーダビデオ信号に含まれている目標のビデオ領域(クラスタ)を検出する。
重心位置再計算部12は、クラスタリング再処理部11が目標のビデオ領域を検出すると、そのビデオ領域の重心位置(目標の位置)を計算する。
ただし、広がり除去部10により進行方向の広がり部分が既に除去されているので、船舶(目標)が移動している状態でも、重心位置再計算部12は船舶の重心位置を正確に計算することができる。
【0025】
相関再処理部13は、重心位置再計算部12がビデオ領域の重心位置を計算すると、その目標のビデオ領域と、前回最終的に検出された目標のビデオ領域(前回、相関再処理部13により同一目標であると判定された目標のビデオ領域)との相関処理を実施して、両者が同一の目標であるか否かを判定する。
相関再処理部13は、両者が同一の目標でないと判定する場合、重心位置再計算部12により計算された重心位置やレーダビデオ信号を破棄して、以後の処理を終了する。
一方、両者が同一目標であると判定する場合、その相関結果等をデータフォーマット処理部14に出力する。
【0026】
データフォーマット処理部14は、相関再処理部13から相関結果等を受けると、その相関結果等のデータ形式を、カメラ制御部15や表示装置17が読み取り可能な形式に変換する処理を実施する。
カメラ制御部15は、重心位置再計算部12により計算されたビデオ領域の重心位置に応じてカメラ制御信号を生成し、そのカメラ制御信号をカメラ16に送信して、カメラ16を操作する処理を実施する。
【0027】
カメラ16は、カメラ制御部15から送信されるカメラ制御信号にしたがってズーム倍率などが制御され、目標を撮影して、その映像を表示装置17に表示する。
なお、カメラ16の撮影方向は、カメラ架台がカメラ制御部15から送信されるカメラ制御信号にしたがって制御されることにより制御される。
【0028】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、クラスタリング処理部6により検出された目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去する広がり除去部10を設け、その広がり除去部10により広がり部分が除去された目標のビデオ領域の重心位置を計算し、その重心位置に応じてカメラ16を制御するように構成したので、船舶などの目標が生み出す引き波の影響を排除して真の目標を正確に検出し、真の目標がカメラの撮影範囲から逸脱しないようにカメラ16を制御することができる効果を奏する。
【0029】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2による目標検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
目標認識部18はカメラ16の撮影結果から目標の長さを特定する処理を実施する。
広がり除去部19は図1の広がり除去部10と同様に、重心位置計算部7により重心位置が計算された目標のビデオ領域と速度/ヘディング処理部9により求められた広がり閾値を比較して、その広がり閾値を超えているビデオ領域を進行方向の広がり部分であると認定するが、その際、その目標の長さを考慮して、その目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出する。
なお、重心位置計算部7、相関処理部8、速度/ヘディング処理部9、目標認識部18及び広がり除去部19から広がり除去手段が構成されている。
【0030】
次に動作について説明する。
目標認識部18は、カメラ16の撮影結果から目標の長さを特定する。即ち、目標が船舶であれば、船舶の船首から船尾に至る長さを測定する。
広がり除去部19は、速度/ヘディング処理部9が広がり閾値を計算すると、図1の広がり除去部10と同様に、相関処理部8から出力されたレーダビデオ信号が示す目標のビデオ領域と広がり閾値を比較し、その広がり閾値を超えているビデオ領域を進行方向の広がり部分であると認定する。
【0031】
ただし、広がり除去部19は、進行方向の広がり部分の認定精度を高めるため、目標認識部18により特定された目標の長さに応じた閾値を設定する。
例えば、目標の長さの1.2倍程度の閾値を設定する。
広がり除去部19は、相関処理部8から出力されたレーダビデオ信号が示す目標のビデオ領域の進行方向の長さが閾値より長い場合、目標の後方に引き波による広がり部分が付加されている可能性が高いので、目標のビデオ領域の後方部分を除去して、目標のビデオ領域の進行方向の長さを閾値まで短くする処理を実施する。
目標認識部18及び広がり除去部19以外の処理は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0032】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、カメラ16の撮影結果から目標の長さを特定し、その目標の長さを考慮して、その目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出するように構成したので、上記実施の形態1よりも、真の目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0033】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による目標検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
ブランクエリア形成部20は相関再処理部13から出力されたレーダビデオ信号が示す目標のビデオ領域の後方に一定のブランクエリアを形成する処理を実施する。
クラスタリング処理部21は図1のクラスタリング処理部6と同様に、スレッショルド処理部5によるノイズ成分除去後のレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、そのレーダビデオ信号に含まれている目標のビデオ領域(クラスタ)を検出するが、その際、目標のビデオ領域のうち、ブランクエリア形成部20により形成されたブランクエリアの部分を無効化する処理を実施する。
なお、A/D変換部3、メモリ部4、スレッショルド処理部5、ブランクエリア形成部20及びクラスタリング処理部21から目標検出手段が構成されている。
【0034】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1では、目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去するものについて示したが、この実施の形態3では、目標のビデオ領域の後方に一定のブランクエリアを形成し、そのブランクエリアの部分を無効化することにより、真の目標の検出精度を高めるようにしている。
具体的には、下記の通りである。
【0035】
クラスタリング処理部21は、図1のクラスタリング処理部6と同様に、スレッショルド処理部5によるノイズ成分除去後のレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、そのレーダビデオ信号に含まれている目標のビデオ領域(クラスタ)を検出するが、船舶などの目標が生み出す引き波のエコーが一様でない場合、図7に示すように、真の目標の他に、複数の誤目標が検出される場合がある。
【0036】
ブランクエリア形成部20は、引き波のエコーに伴う複数の誤目標を除去するため、図8に示すように、相関再処理部13から出力されたレーダビデオ信号が示す目標のビデオ領域の後方に一定のブランクエリアを形成する処理を実施する。
クラスタリング処理部21は、スレッショルド処理部5から出力されたレーダビデオ信号に対するクラスタリング処理を実施することにより、そのレーダビデオ信号に含まれている目標のビデオ領域を検出すると、図9に示すように、その目標のビデオ領域のうち、ブランクエリア形成部20により形成されたブランクエリアの部分を無効化する処理を実施する。
【0037】
ブランクエリア形成部20及びクラスタリング処理部21以外の処理は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0038】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、目標のビデオ領域における後方の一定エリアをブランク処理して、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去するように構成したので、上記実施の形態1よりも、真の目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0039】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4による目標検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
相関禁止処理部22は相関再処理部13から出力されたレーダビデオ信号が示す前回の目標のビデオ領域を考慮して、目標のビデオ領域の後方に相関禁止エリアを設定する処理を実施する。
相関処理部23は図1の相関処理部8と同様に、重心位置計算部7により重心位置が計算された目標のビデオ領域と、前回最終的に検出された目標のビデオ領域(相関再処理部13から出力されたレーダビデオ信号が示す前回の目標のビデオ領域)との相関処理を実施して、両者が同一の目標であるか否かを判定し、同一目標であると判定する場合に限り、その相関結果等を速度/ヘディング処理部9に出力するが、その際、相関禁止処理部22により設定された相関禁止エリアの相関を中止して、目標の後方の誤目標を検出しないようにしている。
なお、重心位置計算部7、速度/ヘディング処理部9、広がり除去部10、相関禁止処理部22及び相関処理部23から広がり除去手段が構成されている。
【0040】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1では、目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去するものについて示したが、この実施の形態4では、広がり部分が除去されている前回の目標のビデオ領域を考慮して、目標のビデオ領域における後方の一定エリアを相関禁止エリアに設定することにより、真の目標の検出精度を高めるようにしている。
具体的には、下記の通りである。
【0041】
相関禁止処理部22は、相関再処理部13からレーダビデオ信号を受けると、そのレーダビデオ信号が示す前回の目標のビデオ領域を考慮して、目標のビデオ領域の後方に相関禁止エリアを設定する。
相関処理部23は、図1の相関処理部8と同様に、重心位置計算部7により重心位置が計算された目標のビデオ領域と、前回最終的に検出された目標のビデオ領域(相関再処理部13から出力されたレーダビデオ信号が示す前回の目標のビデオ領域)との相関処理を実施するが、その際、相関禁止処理部22により設定された相関禁止エリアについては相関処理を実施しないようにする。
これにより、クラスタリング処理部6で、真の目標の他に、複数の誤目標が検出されても(図7を参照)、複数の誤目標が存在するエリアの相関処理が実施されないため、ビデオレーダ信号から複数の誤目標を除去される。
【0042】
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、広がり部分が除去されている前回の目標のビデオ領域を考慮して、目標のビデオ領域における後方の一定エリアを相関禁止エリアに設定することにより、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去するように構成したので、上記実施の形態1よりも、真の目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0043】
実施の形態5.
上記実施の形態3では、ブランクエリア形成部20を実装して、目標のビデオ領域における後方の一定エリアをブランク処理するようにし、上記実施の形態4では、相関禁止処理部22を実装して、目標のビデオ領域における後方の一定エリアの相関を禁止するものについて示したが、図11に示すように、ブランクエリア形成部20及び相関禁止処理部22を実装して、目標のビデオ領域における後方の一定エリアのブランク処理を実施するとともに、目標のビデオ領域における後方の一定エリアの相関を禁止するようにしてもよい。
この場合、更に、真の目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の形態1による目標検出装置を示す構成図である。
【図2】船舶(目標)が停止している状態のレーダビデオ信号の映像を示す説明図である。
【図3】船舶(目標)が移動している状態のレーダビデオ信号の映像を示す説明図である。
【図4】広がり部分が除去されたレーダビデオ信号の映像を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2による目標検出装置を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3による目標検出装置を示す構成図である。
【図7】複数の誤目標が検出されている様子を示す説明図である。
【図8】ブランクエリアが形成されている様子を示す説明図である。
【図9】ブランク処理後のレーダビデオ信号の映像を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態4による目標検出装置を示す構成図である。
【図11】この発明の実施の形態5による目標検出装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0045】
1 レーダアンテナ(信号送受信手段)、2 送受信機(信号送受信手段)、3 A/D変換部(目標検出手段)、4 メモリ部(目標検出手段)、5 スレッショルド処理部(目標検出手段)、6 クラスタリング処理部(目標検出手段)、7 重心位置計算部(広がり除去手段)、8 相関処理部(広がり除去手段)、9 速度/ヘディング処理部(広がり除去手段)、10 広がり除去部(広がり除去手段)、11 クラスタリング再処理部(重心位置計算手段)、12 重心位置再計算部(重心位置計算手段)、13 相関再処理部(重心位置計算手段)、14 データフォーマット処理部(カメラ制御手段)、15 カメラ制御部(カメラ制御手段)、16 カメラ、17 表示装置、18 目標認識部(広がり除去手段)、19 広がり除去部(広がり除去手段)、20 ブランクエリア形成部(目標検出手段)、21 クラスタリング処理部(目標検出手段)、22 相関禁止処理部(広がり除去手段)、23 相関処理部(広がり除去手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標に向けてレーダ信号を放射し、その目標に反射されたレーダ信号を受信する信号送受信手段と、上記信号送受信手段により受信されたレーダ信号に対するクラスタリング処理を実施して、そのレーダ信号に含まれている目標のビデオ領域を検出する目標検出手段と、上記目標検出手段により検出された目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出し、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去する広がり除去手段と、上記広がり除去手段により広がり部分が除去された目標のビデオ領域の重心位置を計算する重心位置計算手段と、上記重心位置計算手段により計算された重心位置に応じて目標を撮影するカメラを制御するカメラ制御手段とを備えた目標検出装置。
【請求項2】
広がり除去手段は、目標検出手段により検出された目標のビデオ領域と広がり閾値を比較し、その広がり閾値を超えているビデオ領域を進行方向の広がり部分であると認定することを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項3】
広がり除去手段は、目標検出手段により検出された目標のビデオ領域と、広がり部分が除去されている前回の目標のビデオ領域との相関処理を実施して目標の速度とヘディングを求め、その速度とヘディングから広がり閾値を求めることを特徴とする請求項2記載の目標検出装置。
【請求項4】
広がり除去手段は、カメラの撮影結果から目標の長さを特定し、その目標の長さを考慮して、その目標のビデオ領域における進行方向の広がり部分を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の目標検出装置。
【請求項5】
目標検出手段は、目標のビデオ領域における後方の一定エリアをブランク処理することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の目標検出装置。
【請求項6】
広がり除去手段は、広がり部分が除去されている前回の目標のビデオ領域を考慮して、目標検出手段により検出された目標のビデオ領域における後方の一定エリアを相関禁止エリアに設定することにより、その目標のビデオ領域から進行方向の広がり部分を除去することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の目標検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−292429(P2006−292429A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110056(P2005−110056)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】