説明

目止めテープおよびこれを用いた繊維製品

【課題】 繊維積層体を縫製加工もしくは融着加工して得られる繊維製品に使用する際に、目止めテープの表面にニットを使用しなければならないという事実上の制約を克服すると同時に、外観や触感を損なうことなく、耐久性に優れ、軽量で薄く、快適性の高い目止めテープを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の目止めテープは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に積層された織物と、前記基材フィルムの他方の面に積層された接着剤層とを有する目止めテープであって、前記織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれについて算出されるカバーファクターの合計値(CFtotal)が、500〜1400であることを特徴とする。
CFtotal=CF+CF
CF:経糸のカバーファクター
CF:緯糸のカバーファクター

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目止めテープ、並びに、これを用いた着衣製品、シーツ、テント、および、寝袋などの繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防水性、防塵性、または、防風性などが要求される用途で用いられる、着衣製品、シーツ、テント、バッグ、および、寝袋などの繊維製品には、防護性ライニング(防水コーティングや、防水フィルム)に表地として織物やニットなどの生地が積層された2層構造や、前記防護性ライニングのもう一方の片面(裏地)にトリコットニットが積層された3層構造の積層布帛が一般的に用いられる。
【0003】
2層構造からなる防水性の積層布帛は、その肌に触れる側、すなわち、裏地がポリウレタン樹脂などからなる防水性フィルムであり、水に濡れたり汗をかいたりしたときの肌触りが悪い。そのため、2層構造の防水性積層布帛を用いる場合には、メッシュニットやタフタ織物などの裏地を重ね合わせて用いられるのが一般的である。しかし、この方法では、裏地が肌に纏わり付くため肌触りが悪く、また、肌と外気との間の空気層(防水性積層布帛と裏地で形成される空間)が大きくなるため、着用時の透湿性が低下するとともに、嵩張ってコンパクトに収納できないという問題がある。そのため、近年では、製品の軽量性、携帯性を追及し、かつ、肌触りやムレ感を低減するために、防水性フィルムの裏地として、トリコットニットを積層した3層構造の積層布帛が一般的に用いられるようになっている。
【0004】
3層構造の防水性積層布帛を繊維製品に加工する場合、その縫目や継目などの接合部分を目止め処理するのに目止めテープが使用されている。目止め処理とは、繊維製品の接合部分に生じた隙間を樹脂で塞ぐ(シールする)ことで、例えば防水性が要求されるレインウェアの場合、防水性積層布帛の接合部に生じた隙間から、雨水が浸入するのを防ぐ目的で行われる。目止めテープは、通常、基材フィルムの一方の面に布帛を、他方の面に接着剤層を積層させた3層構造からなる。目止めテープに積層する布帛としては、3層構造の防水性積層布帛の裏地と目止めテープの外観とを一致させて、さらに、目止めテープの肌触りを向上させるために、3層構造の防水性積層布帛と同じ外観を有するトリコットニットが使用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、優れた接着性および洗濯耐久性を有した、レインウェア、スキーウェア、マウンテンウェアなどの衣料の目止め加工に使用可能な目止めテープに関するもので、耐熱層部と融点が120℃以下のホットメルト層部からなるポリウレタンを主体とする樹脂層の耐熱層部に布帛が接着剤を介して積層され、該ホットメルト層部にはポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂が1〜30%含有された目止めテープが開示されている。
【0006】
特許文献2には、繊度が15〜30デニールのナイロン66繊維を用いてなるインチ当たりのコース数が40〜60コースの範囲にあるトリコットニットに、接着剤層を介してポリウレタン樹脂が積層された目止めテープが開示されている。
【0007】
特許文献3には、膨張延伸された多孔性ポリテトラフルオロエチレンの層と該層に接合された熱可塑性ホットメルト接着剤層から成り、前記多孔性ポリテトラフルオロエチレンの層の片側には熱硬化性接着剤がコーティングされており、且つ該接着剤で部分的に充填された複数の孔を有し、多孔性ポリテトラフルオロエチレンの前記熱硬化性接着剤でコーティングされていない側は高密度化されており、前記熱可塑性ホットメルト接着剤層が熱硬化性接着剤がコーティングされた側に接合されている液体侵入に対して継目をシールするテープが開示されている。
【特許文献1】特開2002−249730号公報
【特許文献2】特開平11−279903号公報
【特許文献3】特表平5−508668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように目止めテープは、通常、基材フィルムの一方の面に布帛を、他方の面に接着剤層を積層させた3層構造からなり、繊維積層体などの縫目もしくは継目部分に置いた目止めテープを加熱プレスすることによって、接着剤層が繊維積層体に溶融含浸し、その後冷却固化することによって、繊維積層体と目止めテープとが固着される。しかしながら、目止めテープの基材フィルムに積層される布帛には、以下に示す理由により、ニットを積層させなければならないという事実上の制約があった。
【0009】
まず第一に、基材フィルムにニットを積層しなければ、目止めテープが交差する部位(以下、「クロス部」と称する場合がある)において、第一層の目止めテープに積層されている布帛に対する、第二層の目止めテープに積層されている接着剤層の含浸性が低下して、クロス部における十分な目止め効果を発現できないからである。
【0010】
第二に、繊維積層体を着衣製品に加工する場合には、通常、着衣製品の裏地に目止め処理が施されることが多いが、目止めテープの布帛としてニットを設けない場合には、目止めテープに使用される基材フィルムが露出して直接素肌に触れることになるので、外観や触感が低下するからである。
【0011】
一方、ニットが積層されている目止めテープは、ニットの質量が比較的大きくなるという問題がある。繊度を下げたり、密度を下げたりすることで軽量化をはかろうとすると、強度が不足し、編地が薄くなりすぎて、目止めテープとするための加工ができないことから、軽量化に限界がある。また、ニットは、シャツ、ボタン、ベルクロファスナーなどとの摩耗によってニットを構成する糸が引っかかり、構造が乱れることで、外観が不良となったり、摩耗劣化するという問題がある。これらの問題を解決すべくニットの密度を上げると、得られる目止めテープが重くなったり、クロス部における第一層の目止めテープの布帛に対する第二層の目止めテープの接着剤層の浸透性が低下し、十分な目止め効果を得ることができなくなる。
【0012】
ニットにはその構造上、必然的に表面に凹凸ができるが、目止めテープの基材フィルムに積層する場合、基材フィルムとの接点が少なくなり、基材フィルムに対する接着性を十分に得ることが難しい。そのため、目止めテープを使用した繊維製品を繰返し洗濯すると、目止めテープのエッジ部からニットが剥がれて、外観や、耐久性が不良となる問題がある。基材フィルムとニットとを接着する接着剤の厚さや量を増やして接着すると、風合いが硬くなり、製品の外観や快適性が損なわれる。さらに、ニットは、その構造上、必然的にモジュラスや引張り強度が低く、ニットを積層した目止めテープを縫い糸無しの融着加工などを施した繊維積層体の接合部に用いても、十分な接合強度を得ることができない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、繊維積層体を縫製加工もしくは融着加工して得られる繊維製品に使用する際に、目止めテープの表面にニットを使用しなければならないという事実上の制約を克服すると同時に、外観や触感を損なうことなく、耐久性に優れ、軽量で薄く、快適性の高い目止めテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決することのできた本発明の目止めテープは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に積層された織物と、前記基材フィルムの他方の面に積層された接着剤層とを有する目止めテープであって、下記式によって算出される前記織物を構成する経糸および緯糸のカバーファクターの合計値(CFtotal)が、500〜1400であることを特徴とする。
【0015】
【数1】

【0016】
CF:経糸のカバーファクター
CF:緯糸のカバーファクター
:経糸の繊度(dtex)
:緯糸の繊度(dtex)
:経糸の密度(本/2.54cm)
:緯糸の密度(本/2.54cm)
【0017】
すなわち、本発明は、目止めテープに積層される布帛として、前記カバーファクターを満足する織物を使用することによって、目止めテープが交差するクロス部における第一層の目止めテープに積層されている織物への第二層の目止めテープの接着剤層の含浸性(以下、単に「クロス部含浸性」という場合がある)を高めることによって、目止め部(特にクロス部)の耐水度を向上させるとともに、繊維製品としたときの外観、軽量化および触感を向上するところに要旨がある。前記経糸のカバーファクター(CF)または緯糸のカバーファクター(CF)の少なくとも一方が、200〜800の範囲内であることが好ましい。
【0018】
前記織物を構成する経糸または緯糸の少なくとも一方が、2本以上のフィラメントで構成されているものであることが好ましい。2本以上のフィラメントで構成されている経糸または緯糸を使用することによって、得られる目止めテープの風合いが柔らかくなる。また、前記フィラメントの繊度として好ましいのは、例えば、12dtex以下である。フィラメント1本当たりの繊度を12dtex以下とすることによって、得られる目止めテープの風合いがさらに柔らかくなる。
【0019】
前記織物を構成する経糸または緯糸の少なくとも一方が、長繊維であることが好ましい。長繊維を使用することによって、織物表面にケバが発生するのを抑制でき、クロス部含浸性が向上するからである。また、前記織物を構成する経糸または緯糸の少なくとも一方が、加工糸であることが好ましい。加工糸を使用することによって、クロス部含浸性が向上し、織物の繊維密度を低密度化しても、外観や触感が損なわれにくいからである。
【0020】
前記織物の組織としては、例えば、平織組織が好適である。平織組織とすることによって、繊維密度を低密度化しやすく、クロス部含浸性が向上するからである。
【0021】
前記基材フィルムとして、例えば、防水性を有するフィルムを使用すれば、目止め処理部の防水性を高めることができる。前記防水性を有するフィルムとしては、疎水性樹脂からなる多孔質フィルムが好適であり、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムがより好適である。
【0022】
前記疎水性樹脂からなる多孔質フィルムは、前記接着剤層が積層される側に、親水性樹脂層を有することが好ましい。親水性樹脂層を有することによって、疎水性樹脂からなる多孔質フィルムと接着剤層との接合強度が向上するからである。
【0023】
目止めテープの接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が好適である。ホットメルト接着剤を使用することによって目止め処理が容易に行うことができる。前記ホットメルト接着剤としては、ポリウレタン樹脂が好適である。また、目止めテープの接着剤層の厚さとしては、例えば、120μm以下が好ましい。いずれの場合も、得られる目止めテープの風合いが柔らかくなるからである。
【0024】
本発明の繊維製品は、繊維積層体を縫製加工もしくは融着加工して得られる繊維製品であって、縫製部分もしくは融着部分の少なくとも一部が、前記目止めテープを用いて目止め処理されていることを特徴とする。本発明の目止めテープを使用することによって、目止め効果に優れた繊維製品が得られる。
【0025】
前記繊維製品として好ましいのは、前記繊維積層体として、可撓性フィルムと、前記可撓性フィルムの一方の面に積層された織物と、前記可撓性フィルムの他方の面に積層された布帛とを有し、下記式によって算出される前記織物を構成する経糸および緯糸のカバーファクターの合計値(CFtotal)が700〜1400であるものを使用し、前記繊維積層体の前記織物側が目止め処理されているものである。
【0026】
【数2】

【0027】
CF:経糸のカバーファクター
CF:緯糸のカバーファクター
:経糸の繊度(dtex)
:緯糸の繊度(dtex)
:経糸の密度(本/2.54cm)
:緯糸の密度(本/2.54cm)
【0028】
すなわち、前記カバーファクターの値を満足する織物は、目止めテープに積層される織物と同様に、目止めテープの接着剤層の含浸性に優れ、繊維積層体を繊維製品に加工する際の接合部(縫製部分および融着部分)において優れた目止め効果が得られるからである。また、前記織物が積層されている繊維積層体を使用することによって、従来のトリコットニットが積層された繊維積層体よりも軽量な繊維製品が得られる。前記経糸のカバーファクター(CF)または緯糸のカバーファクター(CF)の少なくとも一方が、300〜800の範囲内であることが好ましい。
【0029】
前記繊維積層体の可撓性フィルムとしては、防水透湿性フィルムが好適であり、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムがより好適である。可撓性フィルムとして、防水透湿性フィルムを使用することによって、防水透湿性に優れる繊維製品が得られる。前記繊維製品としては、例えば、着衣製品が好適である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、目止めテープの表面にニットを使用しなければならないという事実上の制約を克服すると同時に、外観や触感を損なうことなく、耐久性(防水性)に優れ、軽量で薄く、快適性の高い目止めテープを提供することができる。本発明の目止めテープを用いた繊維製品は、耐久性(防水性)、外観、および、触感に優れ、軽量化およびコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(1)目止めテープ
本発明の目止めテープは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に積層された織物と、前記基材フィルムの他方の面に積層された接着剤層とを有する目止めテープであって、下記式によって算出される前記織物を構成する経糸および緯糸のカバーファクターの合計値(CFtotal)が、500〜1400であることを特徴とする。
【0032】
【数3】

【0033】
CF:経糸のカバーファクター
CF:緯糸のカバーファクター
:経糸の繊度(dtex)
:緯糸の繊度(dtex)
:経糸の密度(本/2.54cm)
:緯糸の密度(本/2.54cm)
【0034】
(1−1)織物について
まず、本発明で使用する基材フィルムに積層される織物について説明する。本発明で使用する織物は、織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれについて、上記式によって算出されるカバーファクターの合計値(CFtotal)が、500以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは900以上であって、1400以下、より好ましくは1300以下、さらに好ましくは1200以下である。ここで、カバーファクターとは、織物の目の粗さを表すものであり、数字が大きい程繊維間の隙間が小さくなり、数字が小さい程繊維間の隙間が大きくなる。
【0035】
本発明において、前記織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれについて、上記式によって算出されるカバーファクターの合計値(CFtotal)を500以上とするのは、使用する織物の強度を確保してハンドリング性や加工性を向上するとともに、必要最低限の外観や触感を維持するためである。一方、クロス部含浸性を確保するため、本発明で使用する織物は、目がある程度粗いことが必要である。そのため、上記式によって算出されるカバーファクターの合計値は、1400以下とするのが好ましい。
【0036】
前記経糸のカバーファクター(CF)または緯糸のカバーファクター(CF)の少なくとも一方が、200以上、より好ましくは300以上であって、800以下、より好ましくは700以下であることが望ましい。前記経糸または緯糸の少なくとも一方のカバーファクターを上記範囲内とすることによって、使用する織物の強度、織物を積層する際のハンドリング性を確保しつつ、クロス部含浸性が向上するからである。なお、前記経糸および緯糸のカバーファクターは、上記式からも明らかなように、繊度と密度とを適宜選択することによって制御することができる。
【0037】
前記織物を構成する経糸および緯糸の繊度は、5dtex以上、より好ましくは7dtex以上であって、55dtex以下、より好ましくは33dtex以下であることが望ましい。5dtex以上とすることによって、前記織物、および、得られる目止めテープの物理的強度を確保でき、実用レベルの耐摩耗性が発現する。また、繊度を55dtex以下とすることによって、前記織物の厚さが薄くなり、糸間に存在する空隙部の容積を小さくできるため、クロス部含浸性が向上する。また、前記織物、および、得られる目止めテープが、軽量化するとともに風合いが柔らかくなる。
【0038】
前記織物を構成する経糸または緯糸の少なくとも一方は、2本以上のフィラメントで構成されることが好ましい。2本以上のフィラメントから構成される経糸または緯糸を使用することによって、前記織物、および、得られる目止めテープの風合いが柔らかくなるからである。さらに、前記経糸または緯糸を構成するフィラメント一本あたりの繊度は、12dtex以下であることが好ましい。経糸または緯糸を構成するフィラメント一本あたりの繊度を12dtex以下とすることによって、前記織物の厚さが薄くなり、糸間に存在する空隙部の容積を小さくできるため、クロス部含浸性が向上する。また、前記織物、および、得られる目止めテープの風合いがさらに柔らかくなる。
【0039】
前記織物を構成する経糸および緯糸の密度は、前記カバーファクターの合計値の範囲を満足できるように、適宜決定すればよい。
【0040】
本発明で使用する織物を構成する繊維(経糸または緯糸を構成する繊維)の素材は特に制限されないが、目止めテープの接着剤層に、後述するホットメルト接着剤を使用する場合は、ホットメルト接着剤の軟化点よりも高い耐熱性を有していることが好ましい。通常、ホットメルト接着剤の軟化点は、約140℃未満であることから、軟化点が140℃以上であって、140℃未満の温度で著しい変形をしない耐熱性を有する繊維を使用することが好ましく、軟化点が170℃以上であって、170℃未満の温度で著しい変形をしない耐熱性を有する繊維を使用することがさらに好ましい。
【0041】
前記繊維としては、天然繊維、合成繊維のいずれであってもよい。前記天然繊維としては、例えば、綿、麻などの植物性繊維、絹、羊毛その他の獣毛などの動物性繊維などを挙げることができ、前記合成繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などを挙げることができる。特に、着衣製品などに使用する場合には、しなやかさ、強度、耐熱性、耐久性、コスト、軽量性などの観点から、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などが好ましい。
【0042】
本発明において使用する織物を構成する繊維は、長繊維、短繊維のいずれであってもよいが、長繊維、もしくは、実質的に長繊維に近い繊維を使用することが好ましい。短繊維を使用すると、得られる目止めテープの織物の表面には短繊維のケバが発生しやすくなり、クロス部含浸性が低下して、目止め効果が低下する虞があるからである。従って、短繊維を使用する場合には、得られる目止めテープの織物の表面のケバを毛焼きや溶融処理などにより処理(除去)することが好ましい。
【0043】
また、前記繊維の糸種は特に制限されないが、生機製造後の精錬、染色工程、その後の積層工程、ハンドリングにおいて、低密度の織物を構成する経糸および緯糸が生糸であると、目よれによる外観不良を発生しやすくなったり、製造が難しくなる。そのため、糸種は、加工糸であることが好ましく、仮撚り加工糸であることがより好ましい。また、加工糸とすることによって、生糸に比べて、クロス部含浸性も一層向上する。これは、加工糸を用いると、糸を構成するフィラメント間の間隔が広がり、目止めテープの接着剤がフィラメント間に含浸しやすくなるためである。
【0044】
前記織物の組織としては、特に限定されず、斜文織、朱子織、平織などの組織を挙げることができる。これらの中でも平織組織が好ましい。織物の組織を平織組織とすれば、経糸方向と緯糸方向の物性バランスに優れるとともに、構造的に強度や耐摩耗性に優れるため、繊維密度を低密度にしやすく、クロス部含浸性が向上するからである。
【0045】
(1−2)基材フィルムについて
次に、本発明で使用する基材フィルムについて説明する。前記基材フィルムの素材は特に制限されないが、目止めテープの接着剤層に、後述するホットメルト接着剤を使用する場合は、ホットメルト接着剤の軟化点よりも高い耐熱性を有していることが好ましい。通常、ホットメルト接着剤の軟化点は、約140℃未満であることから、軟化点が140℃以上であって、140℃未満の温度で著しい変形をしない耐熱性を有する基材フィルムを使用することが好ましく、軟化点が170℃以上であって、170℃未満の温度で著しい変形をしない耐熱性を有する基材フィルムを使用することがさらに好ましい。
【0046】
前記基材フィルムとしては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、シリコーン樹脂、含フッ素系樹脂などのフィルムを挙げることができる。また、前記基材フィルムは、さらに顔料や紫外線吸収剤、充填剤などの改質剤を含有してもよい。
【0047】
前記基材フィルムの厚さは、5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、300μm以下、より好ましくは100μm以下が適当である。基材フィルムの厚さを5μm以上とすることによって、製造時の取扱い性が良好になり、300μm以下とすることによって、基材フィルムの柔軟性を確保することができる。基材フィルムの厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージで測定した平均厚さ(テクロック社製1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)による。
【0048】
前記基材フィルムとしては、例えば、防水性を有するものを使用することが好ましい。前記基材フィルムとして防水性を有するものを使用すれば、目止めテープによって処理された目止め部に防水性を付与することができる。レインウェアなどのように、特に目止め部にも防水性が要求される用途では、JIS L 1092 A法により測定される耐水度(防水性)で、100cm以上、より好ましくは200cm以上の防水性を有するものを使用することが好ましい。
【0049】
前記防水性を有するフィルムとしては、無孔質の高分子フィルム、または、含フッ素系樹脂、撥水処理を施したポリウレタン樹脂などの疎水性樹脂からなる多孔質フィルム(以下、単に「疎水性多孔質フィルム」という場合がある)を挙げることができる。ここで、「疎水性樹脂」とは、樹脂を用いて滑らかで平坦な板を成形し、斯かる板の表面に置かれた水滴の接触角が60度以上(測定温度25℃)、より好ましくは、80度以上の樹脂を意味する。
【0050】
前記疎水性多孔質フィルムは、フィルム基材を構成する疎水性樹脂が、該細孔内への水の浸入を抑制し、フィルム全体として防水性を発現する。一方、多孔質体であることから、接着剤がフィルム細孔内に浸透してアンカー効果が発現するため、耐久性に優れた積層加工が可能である。これらの中でも、前記防水性を有するフィルムとして、含フッ素系樹脂からなる多孔質フィルムが耐熱性、寸法安定性の点で好適であり、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム(以下、「多孔質PTFEフィルム」と称する場合がある)がより好適である。特に、多孔質PTFEフィルムは、フィルム基材を構成する樹脂成分であるポリテトラフルオロエチレンの疎水性(撥水性)が高いために、優れた防水性が得られると共に、高い空孔率のフィルムが製造できるため、接着剤のアンカー効果による優れた接着耐久性が実現できる。
【0051】
前記多孔質PTFEフィルムとは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のファインパウダーを成形助剤と混合することにより得られるペーストの成形体から、成形助剤を除去した後、高温高速度で平面状に延伸することにより得られるもので、多孔質構造を有している。すなわち、多孔質PTFEフィルムは、微小な結晶リボンで相互に連結されたポリテトラフルオロエチレンの1次粒子の凝集体であるノードと、これら一次粒子から引き出されて伸びきった結晶リボンの束であるフィブリルとからなり、そして、フィブリルと該フィブリルを繋ぐノードで区画される空間が空孔となっている。後述する多孔質PTFEフィルムの空孔率、最大細孔径などは、延伸倍率などによって制御できる。
【0052】
前記疎水性多孔質フィルムの最大細孔径は、0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、10μm以下、より好ましくは1μm以下であることが望ましい。最大細孔径が0.01μmよりも小さいと製造が困難になり、逆に10μmを超えると、疎水性多孔質フィルムの防水性が低下することと、フィルム強度が弱くなるため、積層などの後工程での取扱いが困難になりやすい。
【0053】
前記疎水性多孔質フィルムの空孔率は、50%以上、好ましくは60%以上であって、98%以下、より好ましくは95%以下であることが望ましい。疎水性多孔質フィルムの空孔率を50%以上とすることによって、接着剤のアンカー効果が高まる。一方、98%以下とすることによって、フィルムの強度を確保することができる。
【0054】
なお、最大細孔径は、ASTM F−316の規定に準拠して測定した値である。空孔率は、JIS K 6885の見掛け密度測定に準拠して測定した見掛け密度(ρ)より次式で計算して求める。
空孔率(%)=(2.2−ρ)/2.2×100
【0055】
前記疎水性多孔質フィルムの厚さは、5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、300μm以下、より好ましくは100μm以下が適当である。疎水性多孔質フィルムの厚さを5μm以上とすることによって、製造時の取扱い性が良好になり、300μm以下とすることによって、疎水性多孔質フィルムの柔軟性を確保することができる。疎水性多孔質フィルムの厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージで測定した平均厚さ(テクロック社製1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)による。
【0056】
本発明において、前記疎水性多孔質フィルムは、接着剤層を積層する側に親水性樹脂層を有することが好ましい。親水性樹脂層を形成しておくことによって、疎水性多孔質フィルムの機械的強度が向上すると同時に、接着剤層との接着性が向上し、耐久性に優れる目止めテープが得られる。この親水性樹脂層は、疎水性多孔質フィルムの表面に形成されていればよいが、親水性樹脂層の一部が疎水性多孔質フィルムの表層部分に含浸していても良い。親水性樹脂層の一部が、疎水性多孔質フィルム表層の細孔内に含浸することによってアンカー効果が働くため、親水性樹脂層と疎水性多孔質フィルムとの接合強度が強固なものとなる。
【0057】
前記親水性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ酸基などの親水性基を持つ高分子材料であって、水膨潤性で且つ水不溶性のものが好ましく用いられる。具体的には、少なくとも一部が架橋された、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、硝酸セルロースなどの親水性ポリマーや、親水性ポリウレタン樹脂を例示することができるが、耐熱性、耐薬品性、加工性などを考慮すると親水性ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0058】
前記親水性ポリウレタン樹脂としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、オキシエチレン基などの親水性基を含むポリエステル系あるいはポリエーテル系のポリウレタンやプレポリマーが用いられ、樹脂としての融点(軟化点)を調整するために、イソシアネート基を2個以上有するジイソシアネート類、トリイソシアネート類、それらのアダクト体を単独あるいは混合して架橋剤として使用することができる。また、末端がイソシアネートであるプレポリマーに対してはジオール類、トリオール類などの2官能以上のポリオールやジアミン類、トリアミン類などの2官能以上のポリアミンを硬化剤として用いることができる。
【0059】
疎水性多孔質フィルムの表面に親水性ポリウレタン樹脂などの親水性樹脂層を形成させる方法としては、(ポリ)ウレタン樹脂などを溶剤によって溶液化したり、加熱によって融液化するなどの方法により塗布液を作り、それをロールコーターなどで疎水性多孔質フィルムに塗布する。親水性樹脂を疎水性多孔質フィルムの表層まで含浸させるのに適した塗布液の粘度は、塗布温度において20,000mPa・s以下、より好ましくは10,000mPa・s以下である。溶剤による溶液化を行った場合は、その溶剤組成にもよるが、粘度が低下しすぎると塗布後、溶液が疎水性多孔質フィルム全体に拡散するため、疎水性多孔質フィルム全体が親水化されるとともに、疎水性多孔質フィルムの表面に均一な樹脂層が形成されない虞があり、防水性に不具合を生じる可能性が高くなるので、500mPa・s以上の粘度を保つことが望ましい。粘度は、東機産業社製のB型粘度計を用いて測定することができる。
【0060】
(1−3)接着剤層について
次に、本発明の目止めテープに積層される接着剤層について説明する。前記接着剤層に使用される接着剤としては、目止め処理時に繊維製品の縫目や継目などの接合部に生じた空隙を充填して目止め効果を発現するものであれば、特に制限されないが、熱風や超音波、高周波などの手段により加熱溶融して接着力を発現するホットメルト接着剤が、目止め加工時の取扱い性が良好なため好ましい。前記ホットメルト接着剤としては、ポリエチレン樹脂またはそのコポリマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂またはその共重合体樹脂、セルロース誘導体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの各種樹脂を、単独あるいは2種以上の混合物として適宜用いることができる。
【0061】
本発明の目止めテープを着衣製品に使用する場合、ドライクリーニング耐久性や、洗濯耐久性とともに、柔軟な風合いが必要とされる。このような場合には、前記ホットメルト接着剤としては、ポリウレタン系樹脂が好適である。
【0062】
前記ホットメルト接着剤の流動値(島津製作所社製フローテスター「CFT−500」を用い、180℃で測定した)は、40×10−3cm/s以上、より好ましくは60×10−3cm/s以上であって、200×10−3cm/s以下、より好ましくは100×10−3cm/s以下が望ましい。ホットメルト接着剤の流動値が低すぎると接着力が不足し、高すぎると目止め加工する際に、溶融したホットメルト接着剤が縫製部分の針穴から溶出したり、テープの両端からはみ出すことで、外観を低下させたり、十分な防水性を得ることができなくなるからである。
【0063】
前記ホットメルト接着剤層の厚さとしては、20μm以上、より好ましくは50μm以上であって、400μm以下であり、より好ましくは200μm以下、特に120μm以下であることが望ましい。ホットメルト接着剤層が20μm未満では樹脂量が少なすぎて、針穴部分の糸の凹凸部を完全に塞ぐことが困難で、縫着部分の防水性が不十分となる虞がある。また、20μm未満のホットメルト接着剤層を安定してコーティングすることは難しく、ホットメルト接着剤層にフィッシュアイと呼ばれるコーティング不良を発生する可能性が高まる。一方、ホットメルト接着剤層が400μmを超える厚さとなると、目止めテープを熱圧着する際、十分に溶解するまでに時間がかかり、生産性が低下したり、接着される基材フィルム側に熱的なダメージが発生する可能性が生ずる。また、熱圧着時間を短縮すると、ホットメルト接着剤層が十分に溶解せず、十分な目止め効果が得られなくなってしまう。また、接着加工後の目止め部の風合いが硬くなり、例えば、本発明の目止めテープを着衣製品に適用した場合、目止め部でごわつき感が出てしまう。
【0064】
また、前記ホットメルト接着剤層の厚さを、目止め処理を行う繊維積層体の生地の種類に応じて、適宜変更することも好ましい態様である。例えば、繊維積層体の目止め処理が行われる側の生地が、後述するカバーファクターを満足する織物である場合、目止めテープのホットメルト接着剤層の厚さを薄くすることができ、例えば、120μm以下にすることが好適である。ホットメルト接着剤層を120μm以下の厚さとすれば、縫着部の風合い、外観に優れた繊維製品が得られる。また、ホットメルト接着剤の樹脂量が少なくてすむため、樹脂量低減による材料コストの削減効果と、目止めテープを圧着する際に接着剤が短時間で溶解するため、圧着加工速度を速くできることによる生産性向上効果が相俟って、繊維製品の生産コストを低減できる。一方、繊維積層体の目止め処理が行われる側の生地がトリコットニットである場合、トリコットニット内部の空間を充填するのに十分な量のホットメルト接着剤が必要になるため、ホットメルト接着剤層の厚さを150μm以上とすることが好適である。
【0065】
本発明の目止めテープは、長さ方向の10%モジュラスが10N/cm以上であることが好ましく、12N/cm以上であることがより好ましく、50N/cm以下であることが好ましく、30N/cm以下であることがより好ましい。長さ方向の10%モジュラスを上記範囲とすることによって、目止め加工前後でのテープ幅の変化が抑制されるため、より安定した目止め加工を施すことができる。前記10%モジュラスが10N/cm未満では、目止め加工を施す際、テープがネッキングした状態(テープが長さ方向に伸びて幅が狭くなる状態)となるため、曲線部などの目止め加工がやりにくい場所で、十分な目止め代が確保できなくなる虞がある。また、前記10%モジュラスが50N/cmを超えてしまうと、目止めテープの風合いが硬くなるため、繊維製品としたときに目止め加工した部位でごわつきやすくなる。
【0066】
(2)目止めテープの製造方法
次に、本発明の目止めテープの製造方法について説明する。
【0067】
本発明の目止めテープの製造方法には、基材フィルムと上述した織物とを積層し、第一の積層体を得る第一工程と、第一工程で得られた第一積層体の基材フィルム側に接着剤をコーティングして第二の積層体を得る第二工程と、第二工程で得られた第二積層体をテープ状にスリット加工する工程が含まれる。以下、各工程の詳細について説明する。
【0068】
(2−1)第一工程
第一工程では、基材フィルムと上述した織物とを積層し、第一の積層体を得る。基材フィルムと上述した織物との積層は、接着や融着などの方法が適宜用いられるが、織物の素材に、ポリアミド繊維やポリエステル繊維などの融着加工が難しい素材を用いる場合は、基材フィルムと上述した織物とを接着剤を用いて接着することが好ましい。
【0069】
前記接着剤としては、化学反応、熱や光、水分との反応などにより硬化し得る硬化性樹脂接着剤が好ましい。例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエンゴム、その他のゴムなどの各種樹脂接着剤が挙げられる。これらの中でも、好適なものとしてポリウレタン樹脂接着剤が挙げられる。ポリウレタン樹脂接着剤としては、硬化反応型のホットメルト接着剤が特に好適である。
【0070】
硬化反応型ホットメルト接着剤とは、常温で固体状であり、加熱により溶融して低粘度の液体となるが、加熱状態を保持すること、あるいはさらに昇温すること、あるいは水分やその他の活性水素を有する多官能化合物と接触することなどにより硬化反応が起こって高粘度の液体または固化物となる接着剤である。硬化反応は、硬化触媒や硬化剤などが存在することで促進することができる。
【0071】
基材フィルムと織物との接着に用いる硬化反応型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤としては、例えば、加熱により溶融して低粘度の液体となった際(すなわち、接着のために塗布する際)の粘度が、500mPa・s〜30,000mPa・s(より好ましくは3,000mPa・s以下)のものが好ましい。ここでいう粘度は、RESEARCH EQUIPMENT社製「ICIコーン&プレートビスコメータ」にて、回転子をコーンタイプ、設定温度を125℃にして測定した値である。前記硬化反応型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤としては、湿気(水分)によって硬化反応し得るものが好適である。
【0072】
前記硬化反応型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤は、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどのポリオールと、TDI(トルエンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)などの脂肪族または芳香族ポリイソシアネートとを、末端にイソシアネート基が残存するように付加反応させることで得ることができる。得られる硬化反応型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤は、末端にイソシアネート基が存在することにより、空気中の湿気によって硬化反応を起こす。斯かる硬化反応型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤の溶融温度は、室温よりも若干高い50℃以上、より好ましくは80℃以上であって、150℃以下であることが望ましい。
【0073】
前記硬化反応型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤としては、例えば、日本エヌエスシー社が市販している「ボンドマスター」が挙げられる。この硬化反応型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤は、70〜150℃に加熱することで、塗布可能な粘度の融液となる。この融液を基材フィルムに塗布して、織物と貼り合わせた後、室温程度に冷却することで半固体状になり、織物への過剰な浸透拡散が抑制される。そして、空気中の湿気で硬化反応が進行し、ソフト且つ強固な接着を得ることができる。
【0074】
基材フィルムと織物とを接着する接着剤の塗布方法は特に限定されず、ロール法、スプレー法、刷毛塗り法などを採用することができる。前記積層体の柔軟性を高めるには、前記接着剤の塗布を薄膜状、点状、あるいは、線状に部分塗布とすることが推奨される。
【0075】
前記接着剤を薄膜状に塗布する場合は、接着剤層の厚さは5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、100μm以下、より好ましくは70μm以下とすることが推奨される。接着剤層の厚さが5μm未満では、十分な接着性が得られない虞があり、100μmを超えると得られる目止めテープの風合いが硬くなってしまう。前記接着剤を部分塗布する場合の接着面積(接着剤の塗布面積)は、基材フィルム面の全面積中、5%以上、より好ましくは40%以上であって、95%以下とすることが好ましく、90%以下とすることがより好ましい。接着面積が5%未満では、十分な接着性が得られない虞がある。また、接着面積が95%を超えると柔軟性を高める効果が十分に得られない。
【0076】
また、接着剤の塗布量については、織物の凹凸、繊維密度、要求される接着性、耐久性などを考慮して設定すればよい。前記塗布量は、1g/m以上、より好ましくは4g/m以上であって、50g/m以下、より好ましくは30g/m以下とすることが望ましい。接着剤の塗布量が少なすぎると、接着性が不十分となり、例えば、洗濯に耐え得るだけの耐久性が得られないことがある。他方、接着剤の塗布量が多すぎると、得られる積層体の風合いが硬くなりすぎることがあり、好ましくない。
【0077】
好ましい積層方法としては、例えば、基材フィルムに、グラビアパターンを有するロールで、前記硬化反応型ポリウレタン樹脂接着剤の融液を塗布し、その上に上述した織物を重ねてロールで圧着する方法が挙げられる。この方法によれば、良好な接着力を確保できると共に、得られる積層体の風合いもよく、また、歩留まりも良好となる。
【0078】
(2−2)第二工程
第二工程では、第一工程で得られた第一積層体の基材フィルム側に接着剤をコーティングして第二の積層体を得る。ここでは、接着剤としてホットメルト接着剤を用いる場合について説明する。前記ホットメルト接着剤の形態としては、塊状、ペレット状、粉体状、ビード状、フレーク状などがあるが、適宜用いることができる。第一工程で得られた第一積層体へのホットメルト接着剤のコーティング方法としては、例えば、溶剤法、熱溶融法、押出法などを用いることができるが、品質、コストなどの点で、押出法が好ましく用いられる。前記押出法は、ホットメルト接着剤をエクストルーダーにて加熱溶融してダイスへ圧送し、ダイスから溶融したホットメルト接着剤を第一積層体の基材フィルム上に流出させてコーティングし、それを冷却ロール上で冷却し、第二の積層体を得る。
【0079】
(2−3)第三工程
第二工程で得られた第二積層体は、目止めテープとして使用するため、適切な幅にスリット加工する。スリット加工は、公知の方法にて行うことができ、雄刃雌刃(スリット刃)によるスリット加工などを適宜用いることができる。スリット幅は、テープに必要な幅に合わせて適宜選定できるが、5mm以上、より好ましくは8mm以上であって、50mm以下、より好ましくは25mm以下であることが望ましい。5mmより狭い幅では、目止め部をテープでカバーする際の目止め代が狭すぎ、目止め効果が損なわれる虞がある。一方50mm以上の幅ではシワやパッカリングが起こりやすくなり、製品の外観が悪くなる。
【0080】
また、前記第二積層体は、第一工程において織物を積層していることから、ニットを積層する場合に比べて高い張力をかけてスリット加工を行うことができる。ここでいう張力とは、スリット加工された目止めテープを巻き取る際に、目止めテープの長さ方向にかかる張力である。
【0081】
本発明において、スリット加工時に目止めテープを巻き取る張力としては、特に限定されないが、好ましくは70N/m以上であって、100N/m以下である。前記張力を70N/m以上とすることによって、スリット刃によるスリット加工では第二積層体の切れ味が良くなり、生産性を高めることができる。また、前記張力を100N/m以下とすることによって、第二積層体の長さ方向の伸びを抑制してネッキングを防止することができる。
【0082】
なお、ニットを裏材とする目止めテープの製造工程においては、スリット加工時の張力を70N/m以上とすると、ネッキングして幅が狭くなり、スリット加工後に張力を取り除くとスリット刃の幅よりも目止めテープの幅が広がってしまい、スリット幅に狂いが生じる。さらに高い張力の100N/m以上では、目止めテープが長さ方向に伸ばされながら巻き取られる為、スリット加工後に巻き取ったロールがお椀状に変形する虞がある。逆に40N/m以下の張力では、スリット刃の切れ味が悪くなる他、スリット刃にスリットされたテープが巻きつく加工トラブルが発生しやすくなる。この様にトリコットニットを裏材とする目止めテープは、長さ方向に伸びやすいという性質から、スリット加工における張力の設定条件が狭く、スリット加工速度も15m/min程度が上限となり、それ以上に速くすることは難しい。
【0083】
(3)本発明の繊維製品
本発明には、繊維積層体を縫製加工して得られる繊維製品であって、縫製部分の少なくとも一部が、本発明の目止めテープを用いて目止め処理されていることを特徴とする繊維製品、および、繊維積層体を融着加工して得られる繊維製品であって、融着部分の少なくとも一部が、本発明の目止めテープを用いて目止め処理されていることを特徴とする繊維製品が含まれる。繊維積層体を本発明の目止めテープを用いて繊維製品に加工することによって、目止め効果に優れる繊維製品が得られる。前記縫製部分もしくは融着部分は、その少なくとも一部が、本発明の目止めテープを用いて目止め処理されていればよく、縫製部分もしくは融着部分の全部が、本発明の目止めテープを用いて目止め処理されていてもよい。
【0084】
本発明の繊維製品の繊維積層体としては、特に限定されるものではないが、例えば、可撓性フィルムに布帛を積層した繊維積層体を挙げることができる。
【0085】
本発明の繊維製品としては、可撓性フィルムと、前記可撓性フィルムの一方の面に積層された織物と、前記可撓性フィルムの他方の面に積層された布帛とを有し、下記式によって算出される前記織物を構成する経糸および緯糸のカバーファクターの合計値(CFtotal)が700〜1400である繊維積層体を用い、前記織物側に本発明の目止めテープを用いた目止め処理がされているものが好適である。すなわち、使用する繊維積層体の目止め処理がされる側に積層されている織物として、上記カバーファクターの範囲を満足するものを使用すれば、目止めテープに積層される織物と同様に、目止めテープの接着剤の含浸性に優れ、繊維積層体を繊維製品に加工する際の接合部(縫製部分および融着部分)において優れた目止め効果が得られるからである。
【0086】
【数4】

【0087】
CF:経糸のカバーファクター
CF:緯糸のカバーファクター
:経糸の繊度(dtex)
:緯糸の繊度(dtex)
:経糸の密度(本/2.54cm)
:緯糸の密度(本/2.54cm)
【0088】
(3−1)織物について
本発明の繊維製品に好適に使用される繊維積層体に積層されている織物について説明する。前記織物は、織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれについて、上記式によって算出されるカバーファクターの合計値(CFtotal)が、700以上、より好ましくは800以上、さらに好ましくは900以上であって、1400以下、より好ましくは1300以下、さらに好ましくは1200以下である。前記織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれについて、上記式によって算出されるカバーファクターの合計値(CFtotal)を700以上とするのは、使用する織物の強度を確保してハンドリング性や加工性を向上するとともに、必要最低限の外観や触感を維持するためである。前記カバーファクターの合計値が700を下回ると、得られる繊維積層体の物理的強度(摩耗耐久性など)が実用上不十分となるとともに、外観や触感が劣ったものとなる。得られる繊維積層体の外観は、外部に露出した面の見た目によって決まるが、前記カバーファクターの合計値が700を下回ると、前記織物の繊維間の隙間から可撓性フィルムが透けて見える程度が大きくなり、繊維製品に一般的に求められる品格を満足できなくなる。得られる繊維積層体の触感とは、繊維積層体に人体が接触した際に感じる感覚(肌触り)であるが、前記カバーファクターの合計値が700を下回ると、ざらざらとした肌触りとなってしまう。一方、目止めテープの接着剤の前記織物への含浸性を確保するため、繊維積層体で使用する織物は、目がある程度粗いことが必要である。そのため、前記織物を構成する経糸および緯糸のカバーファクターの合計値は、1400以下とするのが好ましい。前記カバーファクターの合計値が1400を超えると、目止めテープの接着剤の、前記織物を形成する繊維間の隙間への含浸が不十分となり、目止め部のシール性を確保できなくなるとともに、得られる繊維積層体の風合いが硬くなり、また軽量化が困難となる。
【0089】
前記織物の経糸のカバーファクター(CF)または緯糸のカバーファクター(CF)の少なくとも一方が、300以上、より好ましくは400以上であって、800以下、より好ましくは700以下であることが望ましい。前記織物の経糸または緯糸の少なくとも一方のカバーファクターを上記範囲内とすることによって、織物の強度やハンドリング性、目止めテープの接着剤の前記織物への含浸性などが向上するからである。なお、前記経糸および緯糸のカバーファクターは、前記式からも明らかなように、繊度と密度とを適宜選択することによって制御することができる。
【0090】
前記繊維積層体に使用する織物、および、織物を構成する繊維の好ましい態様としては、前記カバーファクターの範囲を除いて、目止めテープに使用する織物、および、該織物を構成する繊維の好ましい態様と同一である。
【0091】
(3−2)可撓性フィルムについて
次に、前記繊維積層体に使用する可撓性フィルムについて説明する。
【0092】
前記可撓性フィルムとしては、可撓性を有するフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、含フッ素系樹脂などのフィルムを挙げることができる。
【0093】
前記可撓性フィルムの厚さは、5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、300μm以下、より好ましくは100μm以下が適当である。可撓性フィルムの厚さが5μmより薄いと製造時の取扱い性に問題が生じ、300μmを超えると可撓性フィルムの柔軟性が損なわれてしまうからである。可撓性フィルムの厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージで測定した平均厚さ(テクロック社製1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)による。
【0094】
前記可撓性フィルムとしては、例えば、防水性、防風性、または防塵性を有するフィルムを使用することが好ましい。前記可撓性フィルムとして、防水性フィルムを使用すれば、得られる繊維積層体に防水性を付与することができ、防水透湿性フィルムを使用すれば、得られる繊維積層体に防水透湿性を付与することができる。なお、防水性または防水透湿性を有するフィルムは、一般に防風性および防塵性を兼ね備えている。レインウェアなどのように、特に防水性が要求される用途では、JIS L 1092 A法により測定される耐水度(防水性)で、100cm以上、より好ましくは200cm以上の防水性を有する可撓性フィルムを使用することが好ましい。
【0095】
本発明では、前記可撓性フィルムとして、防水透湿性フィルムを使用することが好ましい態様である。防水透湿性フィルムとは、「防水性」と「透湿性」とを有する可撓性フィルムである。すなわち得られる繊維積層体に、上記「防水性」に加えて「透湿性」を付与することがでる。例えば、繊維積層体を着衣製品に加工して用いた場合に、着用者の人体から発生する汗の水蒸気が繊維積層体を透過して外部に発散されるため、着用時の蒸れ感を防ぐことが可能になる。ここで、「透湿性」とは、水蒸気を透過する性質であり、例えば、JIS L 1099 B−2法により測定される透湿度で、50g/m・h以上、より好ましくは100g/m・h以上の透湿性を有することが望ましい。
【0096】
前記防水透湿性フィルムとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などの親水性樹脂フィルムや、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、含フッ素系樹脂、撥水処理を施したポリウレタン樹脂などの疎水性樹脂からなる多孔質フィルム(以下、単に「疎水性多孔質フィルム」という場合がある)を挙げることができる。ここで、「疎水性樹脂」とは、樹脂を用いて滑らかで平坦な板を成形し、斯かる板の表面に置かれた水滴の接触角が60度以上(測定温度25℃)、より好ましくは、80度以上の樹脂を意味する。
【0097】
前記疎水性多孔質フィルムは、内部に細孔(連続気孔)を有する多孔質構造によって透湿性を維持しつつ、フィルム基材を構成する疎水性樹脂が、該細孔内への水の浸入を抑制し、フィルム全体として防水性を発現する。これらの中でも、前記防水透湿性フィルムとして、含フッ素系樹脂からなる多孔質フィルムが好適であり、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム(以下、「多孔質PTFEフィルム」と称する場合がある)がより好適である。特に、多孔質PTFEフィルムは、フィルム基材を構成する樹脂成分であるポリテトラフルオロエチレンの疎水性(撥水性)が高いために、優れた防水性と透湿性とを両立できる。
【0098】
前記多孔質PTFEフィルムとしては、目止めテープにおいて使用するものと同一のものを使用することができる。
【0099】
前記疎水性多孔質フィルムは、その細孔内表面に撥水性および撥油性ポリマーを被覆させて用いるのが好ましい。疎水性多孔質フィルムの細孔内表面を撥水性および撥油性ポリマーで被覆しておくことによって、体脂や機械油、飲料、洗濯洗剤などの様々な汚染物が、疎水性多孔質フィルムの細孔内に浸透もしくは保持されるのを抑制できる。これらの汚染物質は、疎水性多孔質フィルムに好適に使用されるPTFEの疎水性を低下させて、防水性を損なわせる原因となるからである。
【0100】
この場合、そのポリマーとしては、含フッ素側鎖を有するポリマーを用いることができる。このようなポリマーおよびそれを多孔質フィルムに複合化する方法の詳細についてはWO94/22928号公報などに開示されており、その一例を下記に示す。
【0101】
前記被覆用ポリマーとしては、下記一般式(1)
【0102】
【化1】

【0103】
(式中、nは3〜13の整数、Rは水素またはメチル基である)
で表されるフルオロアルキルアクリレートおよび/またはフルオロアルキルメタクリレートを重合して得られる含フッ素側鎖を有するポリマー(フッ素化アルキル部分は4〜16の炭素原子を有することが好ましい)を好ましく用いることができる。このポリマーを用いて多孔質フィルムの細孔内を被覆するには、このポリマーの水性マイクロエマルジョン(平均粒径0.01〜0.5μm)を含フッ素界面活性剤(例、アンモニウムパーフルオロオクタネート)を用いて作製し、これを多孔質フィルムの細孔内に含浸させた後、加熱する。この加熱によって、水と含フッ素界面活性剤が除去されるとともに、含フッ素側鎖を有するポリマーが溶融して多孔質フィルムの細孔内表面を連続気孔が維持された状態で被覆し、撥水性・撥油性の優れた疎水性多孔質フィルムが得られる。
【0104】
また、他の被覆用ポリマーとして、「AFポリマー」(デュポン社の商品名)や、「サイトップ」(旭硝子社の商品名)なども使用できる。これらのポリマーを疎水性多孔質フィルムの細孔内表面に被覆するには、例えば「フロリナート」(3M社の商品名)などの不活性溶剤に前記ポリマーを溶解させ、多孔質PTFEフィルムに含浸させた後、溶剤を蒸発除去すればよい。
【0105】
本発明で使用する繊維積層体において、前記疎水性多孔質フィルムは、上述した織物を積層する側に親水性樹脂層を有することが好ましい。斯かる親水性樹脂層を有する態様は、本発明で使用する繊維積層体の上述した織物側を裏地とする着衣製品などに加工する場合に特に有用である。すなわち、前記親水性樹脂は、人体から発生する汗などの水分を吸収し、外部へと発散させるとともに、疎水性多孔質フィルムの細孔内に体脂や整髪油などの様々な汚染物が人体側から侵入するのを抑制する。これらの汚染物質は、疎水性多孔質フィルムに好適に使用されるPTFEの疎水性を低下させ、防水性を損なわせる原因となる場合があるからである。また、親水性樹脂層を形成しておくことによって、疎水性多孔質フィルムの機械的強度も向上するため、耐久性に優れる疎水性多孔質フィルムが得られる。この親水性樹脂層は、疎水性多孔質フィルムの表面に形成されていればよいが、親水性樹脂が疎水性多孔質フィルムの表層部分に含浸されていることが好ましい。親水性樹脂が、疎水性多孔質フィルム表層の細孔内に含浸されることによってアンカー効果が働くため、親水性樹脂層と疎水性多孔質フィルムとの接合強度が強固なものとなる。なお、疎水性多孔質フィルムの厚さ方向を全体に亘って親水性樹脂で含浸してしまうと透湿性が低下してしまう。
【0106】
前記親水性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ酸基などの親水性基を持つ高分子材料であって、水膨潤性で且つ水不溶性のものが好ましく用いられる。具体的には、少なくとも一部が架橋された、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、硝酸セルロースなどの親水性ポリマーや、親水性ポリウレタン樹脂を例示することができるが、耐熱性、耐薬品性、加工性、透湿性などを考慮すると親水性ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0107】
前記親水性ポリウレタン樹脂としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、オキシエチレン基などの親水性基を含むポリエステル系あるいはポリエーテル系のポリウレタンやプレポリマーが用いられ、樹脂としての融点(軟化点)を調整するために、イソシアネート基を2個以上有するジイソシアネート類、トリイソシアネート類、それらのアダクト体を単独あるいは混合して架橋剤として使用することができる。また、末端がイソシアネートであるプレポリマーに対してはジオール類、トリオール類などの2官能以上のポリオールやジアミン類、トリアミン類などの2官能以上のポリアミンを硬化剤として用いることができる。透湿性を高く保つためには2官能の方が3官能より好ましい。
【0108】
疎水性多孔質フィルムの表面に親水性ポリウレタン樹脂などの親水性樹脂層を形成させる方法としては、親水性ポリウレタン樹脂などの親水性樹脂を溶剤によって溶液化したり、加熱によって融液化するなどの方法により塗布液を作り、それをロールコーターなどで疎水性多孔質フィルムに塗布する。親水性樹脂を疎水性多孔質フィルムの表層まで含浸させるのに適した塗布液の粘度は、塗布温度において20,000mPa・s以下、より好ましくは10,000mPa・s以下である。溶剤による溶液化を行った場合は、その溶剤組成にもよるが、粘度が低下しすぎると塗布後、溶液が疎水性多孔質フィルム全体に拡散するため、疎水性多孔質フィルム全体が親水化されるとともに、疎水性多孔質フィルムの表面に均一な樹脂層が形成されない虞があり、防水性に不具合を生じる可能性が高くなるので、500mPa・s以上の粘度を保つことが望ましい。粘度は、東機産業社製のB型粘度計を用いて測定することができる。
【0109】
(3−3)布帛について
本発明で好適に使用する繊維積層体は、前記可撓性フィルムの一方の面に上述した織物が積層され、他方の面には、布帛が積層されている。他方の面に布帛を積層することによって、得られる繊維積層体の物理的強度や意匠性が高まるからである。前記布帛としては、特に限定されず、例えば、織布、編布、ネット、不織布、フェルト、合成皮革、天然皮革などを挙げることができる。また、布帛を構成する材料としては、綿、麻、獣毛などの天然繊維、合成繊維、金属繊維、セラミックス繊維などを挙げることができ、繊維積層体が使用される用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の繊維積層体をアウトドア用の製品に利用する場合には、しなやかさ、強度、耐久性、コスト、軽量性などの観点から、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などから構成された織布を使用することが好ましい。また、前記布帛には、必要に応じて、従来公知の撥水処理、柔軟処理、制電処理などを施すことができる。
【0110】
本発明で好適に使用する繊維積層体は、可撓性フィルムの一面に上述した織物が積層され、他方の側に、さらに布帛が積層されているが、いずれを繊維製品の表地にするか裏地にするかは特に限定されない。典型的な態様としては、目止め処理が施される側に積層される織物を裏地とし、他方の側に積層される布帛を表地とする態様を挙げることができる。特に、本発明の繊維積層体を着衣製品などに使用する場合には、目止め処理が施される側を裏地とすることによって、得られる着衣製品などの外観が向上するからである。
【0111】
(3−4)繊維積層体、および、繊維製品の製造方法
本発明で好適に使用される繊維積層体、および、繊維製品の製造方法について説明する。
【0112】
本発明で好適に使用される繊維積層体の製造は、接着剤を用いて可撓性フィルムと織物もしくは布帛とを接着することにより行われることが好ましい。前記接着剤としては、目止めテープの製造において、基材フィルムと織物とを接着するのに使用できる接着剤と同一のものを使用することができる。前記接着剤の塗布方法は特に限定されず、ロール法、スプレー法、刷毛塗り法などを採用することができる。得られる繊維積層体の柔軟性と透湿性を高めるには、前記接着剤の塗布を点状、あるいは、線状とすることが推奨される。好ましい積層方法としては、例えば、可撓性フィルムに、グラビアパターンを有するロールで、前記硬化反応型ポリウレタン樹脂接着剤の溶液を点状に塗布し、その上に上述した織物もしくは布帛を重ねてロールで圧着する方法が挙げられる。特に、グラビアパターンを有するロールによる塗布方法を採用した場合には、良好な接着力を確保できるとともに、得られる繊維積層体の風合い、透湿性が優れ、また、歩留まりも良好となる。前記接着剤を点状あるいは線状に塗布する場合は、接着面積(接着剤の塗布面積)は、可撓性フィルム面の全面積中、5%以上、より好ましくは40%以上であって、95%以下とすることが好ましく、90%以下とすることがより好ましい。接着面積が5%未満では、十分な接着性が得られない虞がある。また、接着面積が95%を超えると得られる繊維積層体の風合いが硬くなるとともに、透湿性が不十分となる。
【0113】
本発明の繊維製品は、前記繊維積層体を、一部もしくは全部に使用することにより得られる。例えば、前記繊維積層体を全部に使用して繊維製品に加工する際には、前記繊維積層体を所望の形状や大きさに裁断し、これら裁断したものを縫製もしくは融着させて繊維製品に加工する。また、本発明の繊維積層体を一部に使用して繊維製品に加工する場合には、本発明の繊維積層体と従来の布帛などを一緒に用いて、同様にして繊維製品に加工すればよい。
【0114】
前記繊維積層体の縫製は、ミシンなどを用いて行うことができる。縫製に使用する縫製糸としては糸状のものであれば特に制限されないが、例えば綿、絹、麻、ポリノジック、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビニロン樹脂、ポリウレタン樹脂などの糸を単独または混合して用いることができる。強度、耐熱性などの観点から、ポリアミド樹脂もしくはポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。前記縫製糸の太さは、縫製する繊維積層体の厚さと要求される製品強度に応じて適宜調整すれば良く、一例としては、布帛(78dtexのナイロンタフタ)の片面に接着剤で延伸多孔質PTFEフィルムを積層し、さらに、織物(22dtexナイロンタフタ:経糸および緯糸のカバーファクターの合計値700〜1400)を接着剤で積層した3層構造の繊維積層体をポリエステル樹脂の縫製糸で縫製する場合、40〜70番手の縫製糸を用いることが好ましい。
【0115】
縫製方法は、1本または複数の糸を使用して縫製する方法であれば特に制限されないが、ステッチ形式としては、本縫い、単環縫い、二重環縫いなどを適宜用いて、直線状、曲線状、ジグザグ状などに縫製したものを挙げることができる。
【0116】
また、繊維積層体の融着は、所望の形状や大きさに裁断した繊維積層体同士を熱圧着して直接融着させる方法、ホットメルト樹脂からなるシート(以下、単に「ホットメルトシート」と称する場合がある)を用いて前記繊維積層体同士を間接的に融着する方法などを挙げることができる。前記ホットメルトシートとしては、例えば、ジャパンゴアテックス社製の「ゴアシーム Sheet Adhesive」を挙げることができる。また、ホットメルトシートのホットメルト樹脂としては、前述した目止めテープのホットメルト接着剤層に使用するものと同一のものを用いることができ、繊維積層体をホットメルトシートを用いて融着加工する条件としては、後述する目止めテープを圧着するのと同一の条件を採用できる。
【0117】
前記繊維積層体を縫製もしくは融着した部分の少なくとも一部に(好ましくは全部に)、本発明の目止めテープを用いて目止め処理が施される。目止め処理を施すことによって、防水性、防塵性、防風性などのシール性や、得られる繊維製品の強度が高まるからである。特に、繊維積層体を融着させて繊維製品に加工する場合、得られる繊維製品の融着部分の強度が低くなるので、斯かる融着部分を目止めテープなどを用いて目止め処理することにより、得られる繊維製品の融着部分の強度が向上する。
【0118】
前記ホットメルト接着剤を用いた目止めテープは、目止めテープのホットメルト接着剤層側に熱風をあて、ホットメルト接着剤を溶融させた状態で被接着体に加圧ロールで圧着する既存のホットエアシーラで融着加工することができる。例えば、クインライト電子精工社製の「QHP−805」や、W.L.GORE & ASSOCIATES社製の「5000E」などを使用することができる。また、短い縫製部分をより簡便に融着加工するためには、市販の熱プレス機やアイロンで目止めテープを熱圧着してもよい。この際は、目止めテープを縫製部分に重ねた状態でその上から熱と圧力を加える。
【0119】
前記ホットメルト接着剤を用いた目止めテープの熱圧着条件は、ホットメルト接着剤の軟化点、可撓性フィルムの厚さ、材質、融着スピードなどによって適宜設定されればよい。前記ホットメルト接着剤を用いた目止めテープの熱圧着の一例を挙げると、布帛(78デシテックスのナイロンタフタ)の片面に多孔質PTFEフィルムを積層し、さらに、織物(22デシテックスのナイロンタフタ:経糸および緯糸のカバーファクターの合計値:700〜1400)を積層してなる3層構造の繊維積層体において、その22デシテックスのナイロンタフタ面同士を前記ホットメルト接着剤を用いた目止めテープで熱圧着する場合、目止めテープをホットエアシーラに装着し、ホットメルト接着剤の表面温度が150℃から180℃、より好ましくは、160℃になるよう設定して熱圧着する。ついで、そのまま加熱部分が室温に戻るまで放冷して熱圧着を完了させる。
【0120】
以下、本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明は図面に示された態様に限定されるものではない。図1は、本発明の目止めテープを模式的に例示する断面図である。図1に示した目止めテープ1は、基材フィルム3として疎水性樹脂からなる多孔質フィルムを使用した態様であり、基材フィルムの一方の面には、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が500〜1400である織物5が積層され、基材フィルムの他方の面には、接着剤層7が積層され、織物5と基材フィルム3とは、ホットメルト接着剤9で貼り合わされている。また、疎水性樹脂からなる多孔質フィルムの接着剤層を形成する側には、親水性樹脂層11が形成されている。
【0121】
図2は、本発明で好適に使用する繊維積層体を縫製し、本発明の目止めテープを用いて目止め処理した縫製部分を模式的に例示する断面図である。繊維積層体2は、可撓性フィルム4の一方の面に、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が700〜1400の織物6が積層され、他の面には布帛8が積層されている。繊維積層体2は、端部を折り返し、折り返された部分が他の繊維積層体2’の端部に重ねられて縫製糸10によって縫製されている。目止めテープ1は、斯かる縫製部分を覆うように貼り付けられており、ホットメルト接着剤層7の一部が繊維積層体2に積層された織物6の表面に含浸している(図示せず)。
【0122】
図3は、本発明で好適に使用する繊維積層体を融着し、本発明の目止めテープを用いて目止め処理した融着部分を模式的に例示する断面図である。繊維積層体2と繊維積層体2’とがそれぞれ端部で融着されて、融着部分12を形成し、目止めテープ1は、融着部分12を覆うように貼り付けられている。
【実施例】
【0123】
[評価方法]
1.目止めテープの目付測定
実験例にて作製した目止めテープ(22mm幅)を長さ1mに切り、その質量を0.01gまで測定可能な電子秤で計測し、下一桁を四捨五入して単位長さあたりの質量とした。
【0124】
2.目止めテープの厚さ測定
テクロック社製1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定し、下一桁を四捨五入して厚さとした。
【0125】
3.目止めテープの引張強度試験
実験例にて作製した3層構造の積層体を幅10mm、長さ100mmの大きさに切り出し、引張試験を行った。引張試験は、島津製作所社製オートグラフAGS−100Aにて、チャック間距離50mm、引張速度50mm/分の条件にて行い、試料が破壊され始めたときの破断強度を測定した。また、10%伸長した段階での引張強度を10%モジュラスとした。なお、引張強度試験は、目止めテープの長さ方向および幅方向の両方について行った。
【0126】
4.目止めテープのベルクロ摩耗耐久性試験
実験例にて作製した目止めテープについて、生地(織物またはニット)を積層した側の摩耗耐久性の評価を行った。JIS L 0849に記載される摩擦試験機II形の摩擦子に面ファスナーのフック側(YKK社製「クイックロン 1QN−N20」)を、試験片台には、試験片をそれぞれ装着した。面ファスナーは、フック側を試験片側に向けて摩擦子に取り付けた。試験片は、目止めテープの生地(織物またはニット)を積層した側を上面(摩擦子側)に向けて試験片台に取り付けた。この状態で摩擦子には2Nの荷重をかけ、100回摩擦し、試験片の摩擦された部位の状態を観察した。試験片に何らかの損傷があるものについては異常あり、損傷が確認されないものについては異常なしとした。
【0127】
5.目止め部の耐水度試験
目止め部の耐水度試験は、JIS L 1096(低水圧法)に記載の耐水度試験装置(大栄科学精機製作所社製「ショッパー型耐水度試験機 WR−DMタイプ」)を用いて、初期と洗濯20回処理後の試験片について行った。試験片の目止め処理した部位(クロス部)に、目止め処理を施した側から20kPaの水圧を加えて1分間保持した後に、該試験片の水圧を加えた側と反対側の表面に水が現れている場合には、耐水性が不良として不合格と判定し、水が全く観察されない場合には合格と判定した。
【0128】
洗濯処理は、家庭用全自動洗濯機(松下電器産業社製「NA−F70PX1」を用いて行い、室温で24時間吊り干し乾燥する工程を1サイクルとした。このサイクルを20回繰り返したものを、洗濯20回処理後の目止め部耐水度試験に供した。洗濯の際には、35cm×35cmの負荷布(JIS L 1096に規定の綿金巾製で、周囲を縫製してほつれ止めしたもの)を、試験片となる生地との合計量が300±30gとなるよう調整して用いた。洗濯は、水道水40リットルと洗濯用合成洗剤(花王社製「アタック」)30gを使用して6分間行い、次いで、すすぎを2回、脱水を3分間行った。
【0129】
6.目止め部の引張強度試験
目止め部の引張強度試験は、インストロン社製材料試験装置「3365」を用いて行った。引張試験の試験条件は、チャック間距離100mm、チャックサイズ25mm×25mm、引張り速度50mm/minとした。試料が破壊され始めたときの強度を破断強度として測定した。
【0130】
7.糸の繊度測定
JIS L 1096に基づき、織物の経糸、緯糸の繊度(dtex)を測定した。経糸および緯糸を構成するフィラメントの繊度は、経糸または緯糸の繊度を、経糸または緯糸を構成するフィラメントの本数で除することによって算出する。
【0131】
8.織物の密度測定
JIS L 1096に基づき、織物の経糸の密度、緯糸の密度(本/2.54cm)をそれぞれ測定した。
【0132】
[目止めテープの作製、および、目止めテープについての評価]
実験例1(実施例)
基材フィルムとして、単位面積当りの質量が33g/mの多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス社製、空孔率80%、最大細孔径0.2μm、平均厚さ30μm)を用いた。次に親水性ポリウレタン樹脂(ダウケミカル社製「ハイポール2000」)にNCO/OHの当量比が1/0.9になる割合でエチレングリコールを加え、混合攪拌しポリウレタンプレポリマーの塗布液を作製した。このポリウレタンプレポリマーの塗布液を前記多孔質PTFEフィルムの片面にロールコーターで塗布(フィルム表面の一部に含浸)した。この時の塗布量は10g/mであった。次いで温度80℃、湿度80%RHに調整したオーブンに1時間入れて水分との反応により硬化させ、多孔質PTFEフィルムの片面に親水性ポリウレタン樹脂層を形成した基材フィルムを作製した。
【0133】
次に、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が1117である市販のナイロン66製平織組織の織物A(経糸、緯糸ともに繊度が17dtexの仮撚り加工糸、フィラメント数が経糸、緯糸ともに5本、経糸、緯糸ともにフィラメントの繊度が3.4dtex、密度が経糸:138本/2.54cm、緯糸:133本/2.54cm、単位面積あたりの質量19g/m)を、前記多孔質PTFEの親水性ポリウレタン樹脂層が形成されていない側に、湿気硬化反応型ポリウレタンホットメルト接着剤(日立化成ポリマー社製「ハイボン4811」)を使用して接着加工した。接着加工条件として、硬化反応型ポリウレタンホットメルトの接着剤温度を120℃とし、接着剤転写量が5g/mとなるようにその溶融液をカバー率60%のグラビアロールにて多孔質PTFEフィルム上に点状に塗布した後、ロールで前記織物と圧着した。ロール圧着後、60℃、80%RHの恒温恒湿チャンバーに24時間放置し、硬化反応型ポリウレタンホットメルト接着剤を硬化させ、2層構造の積層体を得た。
【0134】
次に、前記2層構造の積層体の基材フィルムの親水性ポリウレタン樹脂層が形成されている側の表面に、ポリウレタンホットメルト樹脂(W.L.GORE & ASSOCIATES社製LB−25M)のペレットをダイス温度180℃の押出し成型機を用いて100μmの厚さで押出しコーティングし、織物と基材フィルムとポリウレタンホットメルト接着剤層からなる3層構造の積層体を得た。次に、上記3層構造の積層体を、100N/mの張力をかけながら、幅22mmでスリットし、目止めテープを得た。
【0135】
実験例2(実施例)
実験例1における織物Aの代りに、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が1275である市販のナイロン6製平織組織の織物B(経糸、緯糸ともに繊度が33dtexの仮撚り加工糸、フィラメント数が経糸6本、緯糸10本、フィラメントの繊度が経糸5.5dtex、緯糸3.3dtex、密度が経糸:121本/2.54cm、緯糸:101本/2.54cm、単位面積あたりの質量25g/m)を用いた以外は実験例1と同じ加工条件で加工を行い、目止めテープを得た。
【0136】
実験例3(実施例)
実験例1における織物Aの代りに、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が660である市販のナイロン66製平織組織の織物C(経糸、緯糸ともに繊度が17dtexの仮撚り加工糸、フィラメント数が経糸、緯糸ともに5本、経糸、緯糸ともにフィラメントの繊度が3.4dtex、密度が経糸:95本/2.54cm、緯糸:65本/2.54cm、単位面積あたりの質量7g/m)を、また、基材フィルムとして、無孔質ポリエステルフィルム(オー・ジー社製フレクロンフィルムタイプM、厚さ15μm)を用い、親水性ポリウレタン樹脂層を形成しなかったこと以外は実験例1と同じ加工条件で加工を行い、目止めテープを得た。
【0137】
実験例4(実施例)
実験例1におけるポリウレタンホットメルト接着剤層の厚さを150μmとした以外は実験例1と同じ加工条件で加工を行い、目止めテープを得た。
【0138】
実験例5(比較例)
実験例1における織物Aの代りに、ナイロン66繊維からなる市販のトリコットニットD(ウェール、コースともに繊度22dtexで、ウェール密度36本/2.54cm、コース密度50本/2.54cm、単位面積あたりの質量33g/m)を、また、ポリウレタンホットメルト接着剤層の厚さを150μmとし、スリット加工時の張力を65N/mとした以外は実験例1と同じ加工条件で加工を行い、目止めテープを得た。
【0139】
実験例6(比較例)
実験例5におけるポリウレタンホットメルト接着剤層の厚さを100μmとし、スリット加工時の張力を65N/mとした以外は実験例1と同じ加工条件で加工を行い、目止めテープを得た。
【0140】
実験例7(比較例)
実験例1にける織物Aの代りに、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が1526である市販のナイロン66製平織組織の織物E(経糸、緯糸ともに繊度が17dtexの仮撚り加工糸、フィラメント数が経糸、緯糸ともに5本、経糸、緯糸ともにフィラメントの繊度が3.4dtex、密度が経糸:178本/2.54cm、緯糸:192本/2.54cm、単位面積あたりの質量27g/m)を、また、基材フィルムとして、無孔質ポリエステルフィルム(オー・ジー社製フレクロンフィルムタイプM、厚さ15μm)を用い、親水性ポリウレタン樹脂層を形成しなかったこと以外は実験例1と同じ加工条件で加工を行い、目止めテープを得た。
【0141】
実験例8(比較例)
実験例1にける織物Aの代りに、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が1436である市販のナイロン6製平織組織の織物F(経糸、緯糸ともに繊度が33dtexの仮撚り加工糸、フィラメント数が経糸6本、緯糸10本、フィラメントの繊度が経糸5.5dtex、緯糸3.3dtex、密度が経糸:126本/2.54cm、緯糸:124本/2.54cm、単位面積あたりの質量28g/m)を用いた以外は実験例1と同じ加工条件で加工を行い、目止めテープを得た。
【0142】
実験例9(比較例)
実験例1にける織物Aの代りに、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が491である市販のナイロン66製平織組織の織物G(経糸、緯糸の繊度がともに17dtexの仮撚り加工糸、フィラメント数が経糸、緯糸ともに5本、密度が経糸:65本/2.54cm、緯糸:54本/2.54cm、単位面積あたりの質量5g/m)を用いて多孔質PTFEフィルムとの積層を試みたところ、織物Gのコシがなく、積層加工するための取扱いが不可能であったため、積層体を得ることができなかった。
【0143】
実験例1〜8によって作製した目止めテープの構成を表1に、実験例1〜8の目止めテープについて、単位長さあたりの質量、厚さ、引張強度、ベルクロ摩耗耐久性について評価した結果を表2にまとめた。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
<質量について>
表2から明らかなように、トリコットニットを用いた実験例5および6のテープは、ホットメルト接着剤層の厚さが同じ本発明の目止めテープ(実験例1〜4)と比較して質量が大きい。従って、本発明の目止めテープは、軽量性に優れていることが分かる。
【0147】
<厚さについて>
トリコットニットを用いた実験例5および6のテープは、他のものと比較して厚さが厚い。この結果より、本発明の目止めテープは、携帯性が要求される着衣製品に好適に適用できることが分かる。
【0148】
<引張強度について>
本発明の目止めテープの10%モジュラスおよび引張強度は、トリコットニットを積層した実験例5および6の目止めテープの10%モジュラスおよび引張強度に比べて優れている。この結果より、本発明の目止めテープは、トリコットニットを積層して得られる従来の目止めテープに比べて、スリット加工時や目止め加工時にネッキングを起こしにくく、生産性、テープ幅の安定性に優れ、且つ繊維製品の接合部分の強度を高めることができると考えられる。
【0149】
<ベルクロ摩耗耐久性について>
表2から明らかなように、本発明の目止めテープ(実験例1〜4)はいずれも異常が見られず、優れた摩耗耐久性を示している。一方、トリコットニットを積層した実験例5および6は、傷が発生しており、防水性の低下につながるため、着衣製品にベルクロファスナーを用いた場合、着衣製品の防水性が損なわれる虞がある。
【0150】
なお、図4には、実験例1で使用した織物の電子顕微鏡写真を、図5には、実験例5で使用したトリコットニットの電子顕微鏡写真を示した。
【0151】
[繊維製品の作製、繊維製品についての評価]
繊維積層体を実験例1〜8で作製した目止めテープを用いて繊維製品に加工し、目止めテープの性能を試験した。
【0152】
1.繊維積層体の製造
1−1.繊維積層体AHの製造
可撓性の防水透湿性フィルムとして、単位面積当りの質量が33g/mの多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス社製、空孔率80%、最大細孔径0.2μm、平均厚さ30μm)を用い、繊維製品に加工する際に目止め処理が施される側に積層される織物として、経糸および緯糸のカバーファクターの合計値が1117であるナイロン66製平織組織の市販の織物A(経糸、緯糸ともに繊度が17dtexの仮撚り加工糸、フィラメント数が経糸、緯糸ともに5本、経糸、緯糸ともにフィラメントの繊度が3.4dtex、密度が経糸:138本/2.54cm、緯糸:133本/2.54cm、単位面積あたりの質量19g/m)を用い、他方の側に積層される布帛として、ナイロン66製平織組織の市販の織物H(経糸、緯糸ともに17dtexの仮撚り加工糸、密度が経糸165本/2.54cm、緯糸194本/2.54cm、単位面積あたりの質量27g/m)を用いた。また、多孔質PTFEフィルムに含浸処理する親水性樹脂として、親水性ポリウレタン樹脂(ダウケミカル社製「ハイポール2000」)にNCO/OHの当量比が1/0.9になる割合でエチレングリコールを加え、混合攪拌しポリウレタンプレポリマーの塗布液を作製した。
【0153】
このポリウレタンプレポリマーの塗布液を前記多孔質PTFEフィルムの片面にロールコーターで塗布(フィルム表面の一部に含浸)した。この時の塗布量は10g/mであった。次いで温度80℃、湿度80%RHに調整したオーブンに1時間入れて水分との反応により硬化させ、多孔質PTFEフィルムの片面に親水性ポリウレタン樹脂層を形成した。この多孔質PTFEフィルムの片面に形成した親水性ポリウレタン樹脂層の側には、上記織物Aを積層し、他方の側には織物Hを積層した。
【0154】
前記織物A、Hと多孔質PTFEフィルムとの接着には、湿気硬化反応型ポリウレタンホットメルト接着剤(日立化成ポリマー社製「ハイボン4811」)を使用した。硬化反応型ポリウレタンホットメルト接着剤の温度を120℃とし、接着剤転写量が5g/mとなるように多孔質PTFEフィルム上にその溶融液をカバー率40%のグラビアロールにて点状に塗布した後、ロールで圧着した。ロール圧着後、60℃、80%RHの恒温恒湿チャンバーに24時間放置し、硬化反応型ポリウレタンホットメルト接着剤を硬化させ、3層構造の繊維積層体を得た。次に、3層構造の繊維積層体の織物Hに撥水処理を行った。撥水剤(明成化学工業社製「アサヒガード AG7000」)を3質量%、水97質量%を混合した分散液を調製し、これを織物Hの表面にキスコーターで飽和量以上に塗布し、次いでマングルロールで余分な分散液を搾り取った。このとき織物に吸収された分散液の塗布量は約20g/mであった。さらにこの生地を熱風循環式オーブンにより、130℃、30秒の条件で乾燥させ、撥水処理を施した3層構造の繊維積層体AHを得た。
【0155】
1−2.繊維積層体DHの製造
前記積層体AHにおける目止め処理が施される側に積層される織物Aの代わりに、ナイロン66繊維からなる市販のトリコットニットD(ウェール、コースともに繊度22dtexで、ウェール密度36本/2.54cm、コース密度50本/2.54cm、単位面積あたりの質量33g/m)を使用し、積層の際の接着剤転写量を8g/mとした以外は繊維積層体AHと同じ条件で加工を行い、3層構造の繊維積層体DHを得た。
【0156】
上記により作製した繊維積層体AHおよびDHの構成を表3に示した。また、繊維積層体AHおよびDHをそれぞれ用いて以下の方法にて接合部を作成した。
【0157】
【表3】

【0158】
2.接合構造の作製
2−1.縫製(ミシン)による接合構造
<目止め部耐水度試験用>
繊維積層体AHおよびDHをそれぞれ、300mm×300mmに裁断し、さらにその生地を中心で十字に切断して同一寸法の正方形の試験片を4枚作製した。これらを互いに元の形となるよう、ポリエステルミシン糸(50番手)を用いて縫代の幅を7mmとし、縫い代を倒した上に、縫目の端部に並行してダブルステッチ処理を行い、十字形の縫目(縫製部分)が中心にある試験片を作製した(図6(a))。
【0159】
<目止め部引張強度試験用>
繊維積層体AHおよびDHをそれぞれ用いて、幅100mm、長さ200mmの大きさの試験片であって、長さ方向の中央部に直線状の縫製部分を設けた試験片を作製した。
【0160】
いずれの試験片も、縫製は、図6(b)に示すように、縫代の幅を7mmとし、縫い代を倒した上に、縫目の端部に並行してダブルステッチ処理を行った。縫製糸には、ポリエステルミシン糸(50番手)を用いた。
【0161】
2−2.超音波融着による接合構造
<目止め部耐水度試験用>
繊維積層体AHおよびDHをそれぞれ、300mm×300mmに裁断し、さらにその生地を中心で十字に切断して同一寸法の正方形の試験片を4枚作製した。これらを互いに元の形となるように融着して、接合部として融着部分を有する試験片を作製した(図7(a))。
【0162】
<目止め部引張強度試験用>
目止め部引張強度試験に供する試験片としては、幅100mm、長さ200mmの大きさの試験片であって、長さ方向の中央部に直線状の融着部分を設けた試験片を作製した。
【0163】
いずれの試験片の場合も、超音波シーラー(ブラザー工業社製US1170)にて、先端半径が0.1mmの溶断刃を用いて、加工速度3.0m/minで繊維積層体の端部同士を溶断しながら融着した。図7(b)には、融着部分の断面構造を模式的に示した。
【0164】
2−3.目止め処理
これらの試験片の接合部(縫製部分および融着部分)を覆うように、目止めテープを載置して、ホットエアシーラ(W.L.GORE & ASSOCIATES社製「5000E」)を用いて、設定温度700℃、加工速度4m/分の条件で目止め処理を行った。
【0165】
目止め部耐水度試験に供する試験片の中央には、目止めテープが交差したクロス部が作製された。
【0166】
実験例10
前記繊維積層体AHで作製した試験片の生地A側の縫製部分および融着部分をそれぞれ実験例1の目止めテープを用いて目止め処理を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験用の試験片を作製した。目止め処理は、ホットエアシーラ(W.L.GORE ASSOCIATES社製「5000E」)を用いて、設定温度700℃、加工速度4m/分の条件で行った。
【0167】
実験例11
実験例10における目止めテープを実験例2にて作製した目止めテープとした以外は実験例10と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0168】
実験例12
実験例10における目止めテープを実験例3にて作製した目止めテープとした以外は実験例10と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0169】
実験例13
実験例10における目止めテープを実験例4にて作製した目止めテープとした以外は実験例10と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0170】
実験例14
実験例10における目止めテープを実験例5にて作製した目止めテープとした以外は実験例10と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0171】
実験例15
実験例10における目止めテープを実験例6にて作製した目止めテープとした以外は実験例10と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0172】
実験例16
実験例10における目止めテープを実験例7にて作製した目止めテープとした以外は実験例10と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0173】
実験例17
実験例10における目止めテープを実験例8にて作製した目止めテープとした以外は実験例10と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0174】
実験例18
前記繊維積層体DHで作製した試験片の生地D側の縫製部分および融着部分をそれぞれ実験例1の目止めテープを用いて目止め処理を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験用の試験片を作製した。目止め処理は、ホットエアシーラ(W.L.GORE ASSOCIATES社製「5000E」)を用いて、設定温度700℃、加工速度4m/分の条件で行った。
【0175】
実験例19
実験例18における目止めテープを実験例2にて作製した目止めテープとした以外は実験例18と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0176】
実験例20
実験例18における目止めテープを実験例3にて作製した目止めテープとした以外は実験例18と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0177】
実験例21
実験例18における目止めテープを実験例4にて作製した目止めテープとした以外は実験例18と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0178】
実験例22
実験例18における目止めテープを実験例5にて作製した目止めテープとした以外は実験例18と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0179】
実験例23
実験例18における目止めテープを実験例6にて作製した目止めテープとした以外は実験例18と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0180】
実験例24
実験例18における目止めテープを実験例7にて作製した目止めテープとした以外は実験例18と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0181】
実験例25
実験例18における目止めテープを実験例8にて作製した目止めテープとした以外は実験例18と同じ加工条件で加工を行い、目止め部耐水度試験および目止め部引張強度試験に供する試験片を作製した。
【0182】
実験例10〜25で得られた目止め処理を施した試験片について、目止め部耐水度試験および、目止め部引張強度試験を実施した。その結果を表4に示した。
【0183】
【表4】

【0184】
<目止め部耐水度>
表4から明らかなように、基材フィルムに積層されている織物のカバーファクターが500〜1400である目止めテープを用いた実験例10〜13では、初期および20回洗濯後において、繊維積層体AHに対しては、いずれもクロス部の耐水度が良好であり、防水性に優れていることが分かる。
【0185】
一方、基材フィルムに積層されている織物のカバーファクターが1400以上である目止めテープを用いた実験例16および17では、クロス部の耐水度が初期から低く、防水効果が得られていない。これは、積層されている織物のカバーファクターが1400以上である目止めテープは、その織物の密度が高すぎるため、目止めテープのクロス部において、第一層の目止めテープに積層されている織物への第二層の目止めテープのホットメルト接着剤の含浸性が低下して、目止め効果が低下したためだと考えられる。また、基材フィルムにトリコットニットが積層されている目止めテープを用いた実験例14および15は、初期の耐水度は良好であるが、20回洗濯後は、ホットメルト接着剤層の厚さが100μmの目止めテープを用いた実験例15の耐水度が低下した。これは、トリコットニットの厚さが、本発明における織物の厚さよりも厚いため、100μmの厚さのホットメルト接着剤層では十分にトリコットニット内部に含浸することができず、目止め効果が低下したためだと考えられる。
【0186】
繊維積層体DHに対する耐水度評価結果を見ると、本発明の目止めテープを用いて目止め処理した実験例18〜21において、初期耐水度はいずれも良好であるが、20回洗濯後の耐水度は、実験例18〜20が不良となっており、ホットメルト接着剤層の厚さが150μmの目止めテープを用いた実験例21のみ良好な耐水度が得られている。これは繊維積層体DHの目止めテープを処理する側の生地がトリコットニットであるため、100μmのホットメルト接着剤層の厚さではトリコットニット内部の空間を充填することができず、十分な目止め効果が得られなかったためだと考えられる。
【0187】
<目止め部引張強度>
目止め部引張強度の結果を見ると、ミシンによる縫製をおこなった場合は、いずれの実験例でも良好な強度を保持していることが分かる。一方、超音波融着による接合を行ったものでは、目止めテープの違いによりその強度が大きく異なる。トリコットニットを積層した目止めテープを用いた実験例14〜15、および、22〜23では、その引張強度は60N程度となり、着衣製品には適用しにくい強度と言える。一方、本発明による目止めテープを用いた実験例10〜13、および、実験例18から21では、いずれの引張強度も100Nを越えており、トリコットニットを積層した目止めテープと比較して十分に高い強度を保持することが可能である。100Nという値は、従来のミシンによる縫製方法と比較して高い値ではないが、軽量性を追求した着衣製品での用途や、一般的な衣料品には十分適用できる強度である。
【0188】
<目止めテープの外観>
目止め処理を施した接合サンプルについて、実験例10〜25の目止め処理側の外観を観察したところ、実験例10〜13は繊維積層体の裏地面(生地A側)と目止めテープの境目が目立ちにくい状態で美しい外観であった。
【0189】
一方、実験例14〜15、18〜21、24〜25は目止めテープの組織と繊維積層体の裏地(目止め処理を施した側)の外観が異なる為、目止めテープが目立ちやすい外観となった。
【0190】
実験例22〜23は、長さ方向へ目止め加工した目止めテープと繊維積層体の裏地は、編目の方向が同じであるため、繊維積層体の裏地面(生地D側)と目止めテープの境目が目立ちにくい状態であったが、長さ方向と直交する方向に目止め処理した目止めテープと繊維積層体の裏地は、編目の方向が異なるため、目止めテープが目立ちやすい外観となった。目止めテープが目立ちやすいと、着衣製品を作製したとき、目止め処理した側の見栄えが良好とは言えない。
【0191】
2−4.衣類での評価
繊維積層体AHと、実験例1および実験例5の目止めテープをそれぞれ組み合わせてアウトドア用ジャケットを作製した。目止めテープは1着あたり、15mが必要であった。本発明の目止めテープ(実験例1)を用いたアウトドア用ジャケットは、実験例5の目止めテープを用いて作製したアウトドア用ジャケットより、26g軽くなった。また目止めテープも目立ちにくく良好な外観であった。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明は、繊維製品の目止め処理に好適に適用でき、着衣製品、シーツ、テント、および、寝袋などの様々な繊維製品に好適に適用できる。特に、防水透湿性が要求される着衣製品に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明の目止めテープの断面構造を例示する説明図である。
【図2】縫製部分を目止め処理した目止め部の断面構造を例示する説明図である。
【図3】融着部分を目止め処理した目止め部の断面構造を例示する説明図である。
【図4】実験例1の目止めテープに使用した織物の電子顕微鏡写真である。
【図5】実験例5の目止めテープに使用したトリコットニットの電子顕微鏡写真である。
【図6】目止め部耐水度試験用の縫製部分を有する試験片を例示する説明図である。
【図7】目止め耐水度試験用の融着部分を有する試験片を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0194】
1:目止めテープ、2:繊維積層体、3:基材フィルム、4:可撓性フィルム、5:織物、6:織物、7:接着剤層、8:布帛、9:接着剤、10:縫製糸、11:親水性樹脂層、12:融着部分、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に積層された織物と、前記基材フィルムの他方の面に積層された接着剤層とを有する目止めテープであって、下記式によって算出される前記織物を構成する経糸および緯糸のカバーファクターの合計値(CFtotal)が、500〜1400であることを特徴とする目止めテープ。
【数1】

CF:経糸のカバーファクター
CF:緯糸のカバーファクター
:経糸の繊度(dtex)
:緯糸の繊度(dtex)
:経糸の密度(本/2.54cm)
:緯糸の密度(本/2.54cm)
【請求項2】
前記経糸のカバーファクター(CF)または緯糸のカバーファクター(CF)の少なくとも一方が、200〜800の範囲内である請求項1に記載の目止めテープ。
【請求項3】
前記織物を構成する経糸または緯糸の少なくとも一方が、2本以上のフィラメントで構成されているものである請求項1または2に記載の目止めテープ。
【請求項4】
前記フィラメントの繊度が、12dtex以下である請求項3に記載の目止めテープ。
【請求項5】
前記織物を構成する経糸または緯糸の少なくとも一方が、長繊維である請求項1〜4のいずれか一項に記載の目止めテープ。
【請求項6】
前記織物を構成する経糸または緯糸の少なくとも一方が、加工糸である請求項1〜5のいずれか一項に記載の目止めテープ。
【請求項7】
前記織物が、平織組織からなるものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の目止めテープ。
【請求項8】
前記基材フィルムが、防水性を有するフィルムである請求項1〜7のいずれか一項に記載の目止めテープ。
【請求項9】
前記防水性を有するフィルムが、疎水性樹脂からなる多孔質フィルムである請求項8に記載の目止めテープ。
【請求項10】
前記疎水性樹脂からなる多孔質フィルムが、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムである請求項9に記載の目止めテープ。
【請求項11】
前記疎水性樹脂からなる多孔質フィルムは、前記接着剤層が積層される側に、親水性樹脂層を有するものである請求項9または10に記載の目止めテープ。
【請求項12】
前記接着剤層の接着剤が、ホットメルト接着剤である請求項1〜11のいずれか一項に記載の目止めテープ。
【請求項13】
前記ホットメルト接着剤がポリウレタン樹脂である請求項12に記載の目止めテープ。
【請求項14】
前記接着剤層の厚さが120μm以下である請求項12に記載の目止めテープ。
【請求項15】
前記目止めテープの長さ方向の10%モジュラスが10〜50N/cmである請求項1〜14のいずれか一項に記載の目止めテープ。
【請求項16】
繊維積層体を縫製加工して得られる繊維製品であって、縫製部分の少なくとも一部が、請求項1〜15のいずれか一項に記載の目止めテープを用いて目止め処理されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項17】
繊維積層体を融着加工して得られる繊維製品であって、融着部分の少なくとも一部が、請求項1〜15のいずれか一項に記載の目止めテープを用いて目止め処理されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項18】
前記繊維積層体は、可撓性フィルムと、前記可撓性フィルムの一方の面に積層された織物と、前記可撓性フィルムの他方の面に積層された布帛とを有し、下記式によって算出される前記織物を構成する経糸および緯糸のカバーファクターの合計値(CFtotal)が700〜1400であって、前記繊維積層体の前記織物側が目止め処理されているものである請求項16または17に記載の繊維製品。
【数2】

CF:経糸のカバーファクター
CF:緯糸のカバーファクター
:経糸の繊度(dtex)
:緯糸の繊度(dtex)
:経糸の密度(本/2.54cm)
:緯糸の密度(本/2.54cm)
【請求項19】
前記経糸のカバーファクター(CF)または緯糸のカバーファクター(CF)の少なくとも一方が、300〜800の範囲内である請求項18に記載の繊維製品。
【請求項20】
前記可撓性フィルムが、防水透湿性フィルムである請求項18または19に記載の繊維製品。
【請求項21】
前記防水透湿性フィルムが、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムである請求項20に記載の繊維製品。
【請求項22】
前記繊維製品が、着衣製品である請求項16〜21のいずれか一項に記載の繊維製品。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−84627(P2007−84627A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272803(P2005−272803)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】