説明

直列式軸流ファン

【課題】2つのモータ部のベース部が対向する直列式軸流ファンにおいて2つのモータ部による振動の干渉を低減する。
【解決手段】直列式軸流ファン1は第1モータ部22および第2モータ部32を備え、互いに対向する第1モータ部22の第1ベース部2211と第2モータ部32の第2ベース部3211との間にはモータ間隙41が設けられる。モータ間隙41は、好ましくは、中心軸J1方向の幅が0.3mm以上2.0mm以下とされる。これにより、第1モータ部22の振動および第2モータ部32の振動のそれぞれが他方へと伝わることが低減され、2つのモータ部22,32による振動の干渉を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の軸流ファンを直列に接続した直列式軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な電子機器の筐体内部に電子部品を冷却するための冷却ファンが設けられており、電子部品の高性能化に伴う発熱量の増加や、筐体の小型化等に起因する配置密度の上昇に伴って冷却ファンの静圧−風量特性の向上が要求されている。十分な静圧および風量を確保する冷却ファンとして、近年では複数のファンを直列に接続した直列式軸流ファンが利用されており、例えば、特許文献1では、2つのファンのインペラが互いに反対方向に回転する二重反転式軸流送風機が開示されている。この送風機では、第1の単体軸流送風機の第1のモータおよびリブと第2の単体軸流送風機の第2のモータおよびリブとが接触して配置される。
【0003】
また、特許文献2では、第1のファンユニットと第2のファンユニットの間においてケーシングに吸気口が設けられる冷却モジュールが開示されており、特許文献3の図7では、1つの部材である本体内に互いに反対方向を向く第1および第2のモータが設けられた二重反転式換気装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−278371号公報
【特許文献2】米国特許第6,827,549号明細書
【特許文献3】特開平3−156193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二重反転式に代表される直列式軸流ファンでは大きな静圧および風量を確保することができるが、一方の軸流ファンの回転による作動音が他方の軸流ファンの作動音と干渉し、大きな、あるいは、耳障りな騒音を引き起こす場合がある。特に、特許文献1のようにモータ同士が接触したり、特許文献3のようにハウジングである本体が1つの部材である場合は、振動の大きな干渉が発生する可能性が高くなる。また、特許文献2に示す冷却モジュールでは、ケーシング間を伝達する振動を低減することができるが、吸気口からのエアの漏れにより、静圧−風量特性が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、直列式軸流ファンの静圧−風量特性を低下させることなく、2つの軸流ファンの間における振動の干渉を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、直列式軸流ファンであって、第1軸流ファンと、前記第1軸流ファンの中心軸に沿って前記第1軸流ファンに接続された第2軸流ファンとを備え、前記第1軸流ファンが、前記第2軸流ファンに隣接して配置された第1ベース部を有する第1モータ部と、前記中心軸を中心として放射状に配置された複数の第1翼を有し、前記第1モータ部により前記中心軸を中心として回転して前記中心軸方向のエアの流れを発生する第1インペラと、前記第1インペラの外周を囲む第1ハウジングと、前記第1モータ部の前記第1ベース部と前記第1ハウジングとを放射状に接続する複数の第1支持リブとを備え、前記第2軸流ファンが、前記第1ベース部との間にモータ間隙を設けつつ前記第1ベース部に対向する第2ベース部を有する第2モータ部と、前記中心軸を中心として放射状に配置された複数の第2翼を有し、前記第2モータ部により前記中心軸を中心として回転して前記第1インペラによるエアの流れと同方向のエアの流れを発生する第2インペラと、前記第2インペラの外周を囲むとともに前記第1ハウジングの端面の全周に亘って当接する、または、部分的に0.5mm以下のハウジング間隙を設けつつ当接する第2ハウジングと、前記第2モータ部の前記第2ベース部と前記第2ハウジングとを放射状に接続する複数の第2支持リブとを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の直列式軸流ファンであって、前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブの本数が等しく、前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブとがそれぞれ前記中心軸方向に関して離間しつつ対向する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の直列式軸流ファンであって、前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブの本数が等しく、前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブとがそれぞれ当接する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の直列式軸流ファンであって、前記複数の第1支持リブのそれぞれが、前記中心軸を中心とする周方向に関して前記複数の第2支持リブの間に位置する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間の領域のうち、半分以上の領域において前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの内部と外部とを連通する0.1mm以上0.5mm以下の前記ハウジング間隙が設けられる。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の直列式軸流ファンであって、前記ハウジング間隙がラビリンス構造を有する。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、前記第1ベース部と前記第2ベース部との間の前記モータ間隙に緩衝材が設けられる。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、前記第1インペラの回転方向と前記第2インペラの回転方向とが逆である。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、前記第1ベース部、前記複数の第1支持リブおよび前記第1ハウジングが樹脂の射出成形により一体的に形成されており、前記第2ベース部、前記複数の第2支持リブおよび前記第2ハウジングが樹脂の射出成形により一体的に形成されている。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、前記モータ間隙が、0.3mm以上2.0mm以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1モータ部と第2モータ部との間にモータ間隙を設けることにより、第1モータ部と第2モータ部との間に発生する振動の干渉を低減することができ、請求項2の発明では第1支持リブと第2支持リブとを離間させることにより振動の干渉をさらに低減することができる。請求項3の発明では、第1支持リブと第2支持リブとを接触させることにより、エアの流れの乱れを抑制することができる。
【0017】
請求項5の発明では、ハウジング間隙を設けることにより、振動の干渉をさらに低減することができ、請求項6の発明では、ラビリンス構造により、エアが直列式軸流ファンの外側へと漏れ出ることを抑制することができる。請求項7の発明では、緩衝材により第1モータ部および第2モータ部の振動および干渉をより低減することができる。請求項8の発明では、第1インペラと第2インペラとを逆方向に回転させることにより風量および静圧を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る直列式軸流ファン1を示す斜視図である。直列式軸流ファン1は、例えば、サーバ等の電子機器を空冷するための冷却ファンとして用いられる。直列式軸流ファン1は、図1中の上側に配置される第1軸流ファン2、および、中心軸J1に沿って第1軸流ファン2に接続されて図1中の下側に配置される第2軸流ファン3を備える。直列式軸流ファン1の中心軸J1は第1軸流ファン2の中心軸でもあり、第2軸流ファン3の中心軸でもある。第1軸流ファン2および第2軸流ファン3はビス(図示省略)等により互いに固定される。
【0019】
図2は直列式軸流ファン1を中心軸J1を含む平面で切断した縦断面図である。直列式軸流ファン1は、いわゆる二重反転式軸流ファンであり、第1軸流ファン2の第1インペラ21と第2軸流ファン3の第2インペラ31とが逆方向に回転することにより、図1中の上側(すなわち、第1軸流ファン2の上側)からエアが取り込まれ、下側(すなわち、第2軸流ファン3の下側)へと送出されて中心軸J1方向のエアの流れが発生する。これにより、十分な風量が確保されるとともに静圧を向上することができる。以下の説明では、中心軸J1方向において、エアが取り込まれる側である図1中の上側を「吸気側」または単に「上側」と呼び、エアが排出される側である図1中の下側を「排気側」または単に「下側」と呼ぶ。「上側」および「下側」という表現は必ずしも重力方向に対する上側および下側と一致する必要はない。
【0020】
図3は、第1軸流ファン2を吸気側から見た平面図である。図2および図3に示すように、第1軸流ファン2は、第2軸流ファン3に隣接して配置されたベース部2211(図2参照)を有する第1モータ部22、第1モータ部22により中心軸J1を中心として回転して中心軸J1方向のエアの流れを発生する第1インペラ21、第1インペラ21の外周を囲む第1ハウジング23、および、第1ハウジング23と第1モータ部22とを接続する複数の第1支持リブ24(本実施の形態では3本)を備える。第1軸流ファン2では、第1ハウジング23の内側に第1インペラ21、第1モータ部22および複数の第1支持リブ24が配置される。
【0021】
なお、図2では、図示の都合上、第1インペラ21の第1翼211および第1支持リブ24の概略形状を中心軸J1の左右に示している。また、第1モータ部22は誇張して大きく示しており、各構成要素の断面に対する平行斜線の図示を省略している。第2軸流ファン3および他の実施の形態の同様の図に関しても同様の手法にて図示している。
【0022】
図2に示すように、第1インペラ21は、第1モータ部22の外側を覆う略有蓋円筒状のハブ212、および、中心軸J1を中心としてハブ212の外側面から放射状に等ピッチにて配置された複数の第1翼211(本実施の形態では7枚)を有し、モータ部22の回転により図3中における時計回りに回転する。ハブ212は樹脂製であり、同じく樹脂製の第1翼211と共に射出成形により形成される。
【0023】
第1モータ部22は、回転組立体である第1ロータ部222および固定組立体である第1ステータ部221を備え、中心軸J1に沿って第1ロータ部222が第1ステータ部221に対して上側に位置する。
【0024】
第1ロータ部222は、中心軸J1を中心とする略有蓋円筒状であって磁性を有する金属製のヨーク2221、ヨーク2221の側壁部の内側(すなわち、内側面)に固定される略円筒状の界磁用磁石2222、および、ヨーク2221の上部中央から下方に突出するシャフト2223を備える。第1ロータ部222は、ヨーク2221がハブ212に覆われることにより第1インペラ21と一体の部品とされる。
【0025】
第1ステータ部221は、第1ロータ部222を回転可能に支持する軸受機構である玉軸受2213、2214、略円筒状の軸受保持部2212、界磁用磁石2222との間でトルクを発生する電機子2215、電機子2215に電気的に接続されて電機子2215を制御する略円環状の回路基板2216、および、第1ステータ部221の各部を保持する第1ベース部2211を備える。玉軸受2213、2214は軸受保持部2212内において中心軸J1方向の上部および下部に設けられ、玉軸受2213、2214にシャフト2223が挿入されて回転可能に支持される。
【0026】
電機子2215は、軸受保持部2212の外側面に取り付けられ、界磁用磁石2222と対向する。回路基板2216は、電機子2215の下側に取り付けられ、複数のリード線を束ねたリード線群を介して直列式軸流ファン1の外部に設けられた外部電源に接続される。なお、リード線群および外部電源の図示は省略している。
【0027】
第1ベース部2211は、第1ステータ部221の下部に位置し、複数の第1支持リブ24(図3参照)により第1ハウジング23と放射状に接続される。これにより、第1ベース部2211が第1ステータ部221の他の各部を第1ハウジング23に対して相対的に固定する役割を果たす。また、第1ベース部2211、複数の第1支持リブ24および第1ハウジング23は、樹脂の射出成形により一体的に形成されている。
【0028】
図4は、第2軸流ファン3を排気側から見た図(すなわち、図2の上下関係における底面図)であり、図3の上側が図4の下側に対応する。図2および図4に示すように、第2軸流ファン3は、第2モータ部32、第2モータ部32により中心軸J1を中心として回転して第1インペラ21によるエアの流れと同方向のエアの流れを発生する第2インペラ31、第2インペラ31の外周を囲む第2ハウジング33、および、第2ハウジング33に第2モータ部32を接続する複数の第2支持リブ34(本実施の形態では3本)を備える。
【0029】
第2ハウジング33は第2インペラ31および第2モータ部32の外周を囲み、第2ハウジング33の図2中の上側の端面は第1ハウジング23の下側の端面と全周に亘って当接する。すなわち、第2ハウジング33と第1ハウジング23との間は密閉される。
【0030】
第2モータ部32は、第1モータ部22の上下を反転した点を除いて第1モータ部22とほぼ同様の構造を有し、図2に示すように、第2モータ部32では第2ロータ部322に対して第2ステータ部321が上側に位置する。第2ステータ部321は、第1ベース部2211との間に間隙41を設けつつ第1ベース部2211に対向する第2ベース部3211を有し、間隙41(以下、「モータ間隙41」という。)は、中心軸J1方向の高さ(すなわち、間隙の幅)は、設計上、好ましくは、0.3mm以上2.0mm以下とされる。
【0031】
モータ間隙41が設計上0.3mm以上とされることにより、ファン用の一般的な樹脂材料(PBT、ABS等)が使用される場合に、第1ベース部2211および第2ベース部3211の熱による変形および成型精度のばらつきの影響を受けることなく第1ベース部2211と第2ベース部3211とを確実に離間させることができる。また、大型の軸流ファン(例えば、120mm角のファン)の場合には、製造誤差も考慮してモータ間隙41の設計値は2.0mm程度とされることが好ましく、また、モータ間隙41が2.0mm以下されることにより、直列式軸流ファン1の高さが不必要に大きくなってしまうことが回避される。
【0032】
第2モータ部32の第2ステータ部321は、第1モータ部22と同様に、略円筒状の軸受保持部3212を有し、軸受保持部3212内の上下に玉軸受3213、3214が保持される。また、軸受保持部3212の外周には電機子3215が取り付けられ、電機子3215の上側に回路基板3216が取り付けられる。回路基板3216はリード線群を介して外部電源(図示省略)に接続される。
【0033】
第2ロータ部322も第1モータ部22の第1ロータ部222と同様の構造となっており、中心軸J1を中心とするカップ状のヨーク3221、ヨーク3221の側壁部の内側に固定される略円筒状の界磁用磁石3222、および、ヨーク3221の中央から上方に突出するシャフト3223を備え、界磁用磁石3222は電機子3215との間で所定の回転力(トルク)を発生する。
【0034】
第2インペラ31は、ヨーク3221の外側を覆う第2ハブ312、および、中心軸J1を中心として第2ハブ312の外側面から放射状に等ピッチにて配置された複数の第2翼311(図4参照)を有し、第2ハブ312および第2翼311は一体に樹脂にて成形される。ただし、第1インペラ21とは異なり、第2翼331の数は5とされる。第2インペラ31は、第2モータ部32により図4中の時計回りに回転することにより、すなわち、中心軸J1を中心として第1インペラ21とは逆方向に回転することにより、第1軸流ファン2により上方から送り込まれるエアを下方へと排出する。
【0035】
図2および図4に示すように、第2支持リブ34は、第2モータ部32の第2ベース部3211と第2ハウジング33とを放射状に接続し、これにより、第2ステータ部321が、第2ハウジング33に対して相対的に固定される。また、図3および図4に示すように、複数の第2支持リブ34と複数の第1支持リブ24の本数は等しく、複数の第2支持リブ24は複数の第1支持リブ34とそれぞれ中心軸J1方向に関して離間しつつ対向する。すなわち、複数の第1支持リブ24と複数の第2支持リブ34とは非接触とされるが、吸気側から中心軸J1に沿って直列式軸流ファン1を見た場合、第1支持リブ24と第2支持リブ34とは重なる。なお、第1軸流ファン2の場合と同様に、第2ベース部3211、複数の第2支持リブ34および第2ハウジング33は、樹脂の射出成形により一体的に形成されている。
【0036】
以上、第1の実施の形態に係る直列式軸流ファン1について説明したが、直列式軸流ファン1では、第1モータ部22と第2モータ部32との間にモータ間隙41を設けることにより、第1モータ部22と第2モータ部32との間に発生する振動の干渉を低減することができる。すなわち、モータ部22,32の振動が互いに干渉して発生する耳障りなうなり(「モジュレーション」とも呼ばれる。)の大きさを小さくすることができる。さらに、直列式軸流ファン1では第1支持リブ24と第2支持リブ34との間にも間隙が設けられるため、第1モータ部22および第2モータ部32の振動に起因する第1軸流ファン2と第2軸流ファン3との間の振動の干渉をさらに低減することが実現される。
【0037】
特に、風量特性を向上するために回転速度を高めた場合、インペラの回転軸に対するアンバランス(回転軸に対する中心位置の偏心)の影響によりファン自体の振動が大きくなり、2つの軸流ファンの振動の干渉は無視できないものとなる。図2に示す直列式軸流ファン1の構造は、このような問題が生じるファンに適用されることが好ましい。
【0038】
図5.Aは、直列式軸流ファン1における振動特性の例を示す図であり、図5.Bは2つのモータ部を当接させた場合の直列式軸流ファン(以下、「比較例」という。)の振動特性を示す図である。図5.Aおよび図5.Bでは2つの軸流ファンの振動特性を重ねて描いている。図5.Aおよび図5.B中の符号61,62を付す部位から明らかなように、2つのモータ部を離間させることにより、振動干渉に起因する低周波から200Hzまでのうなり音が低減されることが判る。
【0039】
また、直列式軸流ファン1では、第1支持リブ24と第2支持リブ34とが対向するため、リブによるエアの流れの妨げを最小限に抑えることができ、風量の低下を防止することができる。
【0040】
次に、第1の実施の形態に係る直列式軸流ファン1の他の例について説明する。他の例に係る直列式軸流ファン1では、第2軸流ファン3が図6に示すものとされ、他の構造は図2および図3と同様である。図6は第2軸流ファン3を排気側から見た底面図であり、図6における下側は図3の上側に対応する。また、図6ではに二点鎖線にて図3の3本の第1支持リブ24の位置を重ねて示している。
【0041】
図6に示す第2軸流ファン3は、図4に示すものと比べて、第2支持リブ34の配置が異なるという点を除いて同様であり、図6に示すように複数の第1支持リブ24のそれぞれは、中心軸J1を中心とする周方向に関して複数の第2支持リブ34の間に位置する。すなわち、吸気側から直列式軸流ファン1を見た場合、複数の第1支持リブ24は複数の第2支持リブ34とは重ならない。
【0042】
図6に示す第2軸流ファン3が採用される場合、平面視した際の支持リブの面積が大きいため、図4に示すものを採用する場合に比べて直列式軸流ファン1の風量は若干低下するが、第1支持リブ24と第2支持リブ34との間の間隔を適宜調整することにより、第1軸流ファン2から第2軸流ファン3へ流れるエアにより発生する騒音の周波数特性を変えることが可能となるため、直列式軸流ファン1から発生するの望ましくない周波数成分を低減することができる。
【0043】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る直列式軸流ファン1aの縦断面図である。直列式軸流ファン1aは、第1の実施の形態と同様に互いに反対方向を向く第1軸流ファン2と第2軸流ファン3とを中心軸J1に沿って直列に接続したものであり、第1モータ部22の第1ベース部2211と第2モータ部32の第2ベース部3211との間に間隙41が設けられる。ここで、第1軸流ファン2の複数の第1支持リブ24aと第2軸流ファン3の複数の第2支持リブ34aの本数は等しされ、かつ、図7に示すように複数の第1支持リブ24aと複数の第2支持リブ34aとはそれぞれ対向するとともに当接する。すなわち、図7の直列式軸流ファン1aは支持リブ同士が当接するという点で図2の構造と相違している。
【0044】
直列式軸流ファン1aでは、第1モータ部22と第2モータ部32との間にモータ間隙41が設けられることにより、第1の実施の形態と同様に、2つのモータ部22,32による振動の干渉を低減することができる。また、複数の第1支持リブ24aと複数の第2支持リブ34aとが当接することにより、個々の支持リブの剛性が低い場合であっても第1モータ部22および第2モータ部32の振動を抑制することができ、第1支持リブ24aおよび第2支持リブ34aによるエアの流れの乱れも抑制される。なお、モータ間隙41は、第1の実施の形態と同様に、0.3mm以上2.0mm以下とされることが好ましい。
【0045】
図8は、第3の実施の形態に係る直列式軸流ファン1bの斜視図である。直列式軸流ファン1bは、第1軸流ファン2の第1ハウジング23と第2軸流ファン3の第2ハウジング33との間にスリット状の間隙(以下、「ハウジング間隙」という。)42が設けられるという点で第1の実施の形態と相違する。他の構造は第1の実施の形態に係る直列式軸流ファン1と同様である。
【0046】
ハウジング間隙42は、直列式軸流ファン1bの略直方体状の外形の4つの側面のそれぞれの中央に設けられる。ハウジング間隙42は中心軸に垂直な方向にハウジング(すなわち、第1ハウジング23および第2ハウジング33により構成されるハウジング)の内部と外部とを連通し、これにより、第2ハウジング33の上端面は第1ハウジング23の下端面と部分的に当接することとなる。
【0047】
なお、直列式軸流ファン1bの内部構造は第2の実施の形態や後述の第4の実施の形態に係る直列式軸流ファンと同様とされてもよい。内部構造が第2の実施の形態に係る直列式軸流ファン1aと同様であり、かつ、1組の第1支持リブ24aおよび第2支持リブ34aがハウジング間隙42に向かって伸びる場合は、第1支持リブ24aおよび第2支持リブ34aはハウジング間隙42の近傍にて上下に離間してそれぞれ第1ハウジング23および第2ハウジング33に接続される。また、全ての支持リブを意図的にハウジング間隙42が存在する位置にてハウジングに接続することにより、ハウジング間隙42からのエアの漏れを最小限に留める対策が施されてもよい。さらに、支持リブをハウジング間隙42が存在する位置にてハウジングに接続することにより、ハウジング間隙42の周囲にて振動が吸収されて支持リブからハウジングへの振動伝達も抑制される。
【0048】
ハウジング間隙42を設けることにより、第1モータ部22および第2モータ部32の振動が第1ハウジング23および第2ハウジング33に伝わって干渉することを低減することができる。その結果、第1軸流ファン2と第2軸流ファン3との間の振動の干渉をさらに低減することが実現される。振動伝達の低減という観点からは、ハウジング間隙42は、第1ハウジング23と第2ハウジング33との間の領域のうち、半分以上の領域に設けられることが望ましい。また、ハウジング間隙42の中心軸J1方向の幅は0.1mm以上(設計上0.1mmであれば厳密に0.1mmとされる必要はない。)0.5mm以下とされることが好ましく、これにより、直列式軸流ファン1を流れるエアがハウジング間隙42から漏れ出すことを回避しつつ、振動の干渉を低減することができる。
【0049】
図9は、ハウジング間隙の他の例を示す図であり、第1ハウジング23および第2ハウジング33の境界近傍を拡大して示す縦断面図である。なお、図9では、第1支持リブ24および第2支持リブ34の一部も図示している。
【0050】
図9に示すハウジング間隙42aは、第1ハウジング23および第2ハウジング33の外部(すなわち、直列式軸流ファン1のハウジングの外部)から内部に至る間に上下に伸びる部分を有するいわゆるラビリンス構造43を有する。より具体的には、ハウジングの外部から水平に(すなわち、中心軸に垂直に)内部側に僅かに入り込んでから下方に伸び、そして、再度水平に内部側に広がってハウジングの内部空間へと至る。ラビリンス構造43においても、水平方向および上下方向に広がる間隙の幅は、好ましくは0.1mm以上0.5mmとされる。また、このようなラビリンス構造43は第1ハウジング23と第2ハウジング33との間の境界の可能な限り広い範囲に設けられる。
【0051】
ラビリンス構造43を有するハウジング間隙42aが設けられることにより、第1軸流ファン2と第2軸流ファン3との間の振動の干渉を低減するとともに、エアが直列式軸流ファンの外側へ漏れ出すことを抑制することができる。なお、ラビリンス構造43はさらに複雑な構造とされてもよい。
【0052】
図10は、第4の実施の形態に係る直列式軸流ファンの一部の縦断面図である。第4の実施の形態に係る直列式軸流ファンは第1の実施の形態とほぼ同様であり、図10では第1軸流ファン2と第2軸流ファン3との間の部分のみを示している。また、図10では、第1モータ部22および第2モータ部32の内部構造の図示を省略している。
【0053】
第4の実施の形態に係る直列式軸流ファンは、第1の実施の形態に係る直列式軸流ファン1のモータ間隙41に防振材、クッション材等と呼ばれる振動を吸収する、あるいは、弾性が高い緩衝材5を設けたものとなっている。これにより、第1モータ部22および第2モータ部32の振動を低減し、その干渉をより低減することができる。緩衝材5の配置は第2または第3の実施の形態に係る直列式軸流ファン1a,1bに対して行われてもよい。
【0054】
なお、軸流ファンの2つのベース部に機種名、定格仕様、ロット番号等が印字された銘板(ネームプレート)を貼り付け、2つの銘板を当接させて直列式軸流ファンを組み立てた場合、2つの軸流ファンから発生する振動の共振を低減することは可能であるが、このような直列式軸流ファンでは共振に伴ううなりを十分には低減することはできない。これは、銘板には一般的に、上質紙や合成樹脂にて形成される合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の材料が使用され、裏面には粘着層が形成されているにすぎず、銘板は緩衝材としての役割を十分には発揮できないからである。
【0055】
これに対し、複数の材料を積層して銘板を製造し、かつ、いずれかの材料層にゴム等の弾性体やクッション材等の振動吸収体を採用することにより、緩衝材としての役割を果たす銘板を製造することができる。第4の実施の形態に係る直列式軸流ファンでは、このような銘板が緩衝材5として利用されてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず様々な変更が可能である。
【0057】
上記実施の形態では、第1モータ部22および第2モータ部32はモータ間隙41を介して完全に離れているが、実質的に第1モータ部22と第2モータ部32との間にモータ間隙41が設けられるのであれば、第1モータ部22と第2モータ部32とは完全に非接触とはされなくてもよい。
【0058】
例えば、図11に示すように、第1の実施の形態に係る直列式軸流ファン1の第1モータ部22の第1ベース部2211の第2モータ部32側の面に複数の点状の突起25が設けられ、第2モータ部32の第2ベース部3211の第1モータ部22側の面にも複数の点状の突起35が設けられ、突起25と突起35とが点接触する状態でモータ間隙41が設けられてもよい。このような構造により第1モータ部22と第2モータ部32との接触面積を極めて小さくして振動伝達率を低減することにより、両モータ部22,32の振動が干渉することを抑制することができる。
【0059】
なお、この場合、突起25,35は図10の緩衝材5と同等の機能を有するものと捉えられてもよい。また、突起25,35はベース部表面に沿って線状に伸びる突起であってもよい。さらに、突起を利用する微小な接触あるいは緩衝材は、第1支持リブ24と第2支持リブ34との間の間隙に設けられてもよい。
【0060】
上記実施の形態では、ハウジング間隙42は0.1mm以上に設定されるが、誤差が小さい高度な成形技術が採用される場合は0.1mm以下に設定されてもよい。同様に、モータ間隙41も高度な成形技術の採用により0.3mm以下に設定されてもよい。
【0061】
第1支持リブ24,24aおよび第2支持リブ34,34aは直線状のものには限定されず、湾曲していてもよく、中心軸J1に平行または傾斜している板状であってもよい。さらに、第1支持リブの数と第2支持リブの数とは異なっていてもよい。
【0062】
また、第3の実施の形態におけるハウジング間隙42内に通気性を有さない緩衝材が設けられてもよい。これにより、振動の干渉を抑制しつつ静圧−風量特性の低下を防止することができる。第1ハウジング23および第2ハウジング33の外形は直方体には限定されず、例えば、円柱状であってもよい。ハウジング間隙42を形成する切り欠きも第1ハウジング23および第2ハウジング33の一方のみに設けられてもよい。
【0063】
直列式軸流ファンでは、第1軸流ファン2の第1インペラ21および第2軸流ファン3の第2インペラ31が同じ方向に回転してもよい。さらに、直列式軸流ファンでは第1軸流ファン2および第2軸流ファン3に加えて、1つ以上の他の軸流ファンが中心軸J1に沿って配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施の形態に係る直列式軸流ファンを示す斜視図である。
【図2】直列式軸流ファンの縦断面図である。
【図3】第1軸流ファンの平面図である。
【図4】第2軸流ファンの底面図である。
【図5.A】直列式軸流ファンの振動特性の例を示す図である。
【図5.B】比較例の振動特性を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の他の例に係る直列式軸流ファンの第2軸流ファンの底面図である。
【図7】第2の実施の形態に係る直列式軸流ファンの縦断面図である。
【図8】第3の実施の形態に係る直列式軸流ファンを示す斜視図である。
【図9】ハウジング間隙の他の例を示す断面図である。
【図10】第4の実施の形態に係る直列式軸流ファンの一部の縦断面図である。
【図11】他の例に係る直列式軸流ファンの一部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1,1a,1b 直列式軸流ファン
2 第1軸流ファン
3 第2軸流ファン
5 緩衝材
21 第1インペラ
22 第1モータ部
23 第1ハウジング
24,24a 第1支持リブ
31 第2インペラ
32 第2モータ部
33 第2ハウジング
34,34a 第2支持リブ
41 モータ間隙
42 ハウジング間隙
43 ラビリンス構造
211 第1翼
311 第2翼
2211 第1ベース部
3211 第2ベース部
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列式軸流ファンであって、
第1軸流ファンと、
前記第1軸流ファンの中心軸に沿って前記第1軸流ファンに接続された第2軸流ファンと、
を備え、
前記第1軸流ファンが、
前記第2軸流ファンに隣接して配置された第1ベース部を有する第1モータ部と、
前記中心軸を中心として放射状に配置された複数の第1翼を有し、前記第1モータ部により前記中心軸を中心として回転して前記中心軸方向のエアの流れを発生する第1インペラと、
前記第1インペラの外周を囲む第1ハウジングと、
前記第1モータ部の前記第1ベース部と前記第1ハウジングとを放射状に接続する複数の第1支持リブと、
を備え、
前記第2軸流ファンが、
前記第1ベース部との間にモータ間隙を設けつつ前記第1ベース部に対向する第2ベース部を有する第2モータ部と、
前記中心軸を中心として放射状に配置された複数の第2翼を有し、前記第2モータ部により前記中心軸を中心として回転して前記第1インペラによるエアの流れと同方向のエアの流れを発生する第2インペラと、
前記第2インペラの外周を囲むとともに前記第1ハウジングの端面の全周に亘って当接する、または、部分的に0.5mm以下のハウジング間隙を設けつつ当接する第2ハウジングと、
前記第2モータ部の前記第2ベース部と前記第2ハウジングとを放射状に接続する複数の第2支持リブと、
を備えることを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項2】
請求項1に記載の直列式軸流ファンであって、
前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブの本数が等しく、
前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブとがそれぞれ前記中心軸方向に関して離間しつつ対向することを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項3】
請求項1に記載の直列式軸流ファンであって、
前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブの本数が等しく、
前記複数の第1支持リブと前記複数の第2支持リブとがそれぞれ当接することを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項4】
請求項1に記載の直列式軸流ファンであって、
前記複数の第1支持リブのそれぞれが、前記中心軸を中心とする周方向に関して前記複数の第2支持リブの間に位置することを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間の領域のうち、半分以上の領域において前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの内部と外部とを連通する0.1mm以上0.5mm以下の前記ハウジング間隙が設けられることを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項6】
請求項5に記載の直列式軸流ファンであって、
前記ハウジング間隙がラビリンス構造を有することを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、
前記第1ベース部と前記第2ベース部との間の前記モータ間隙に緩衝材が設けられることを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、
前記第1インペラの回転方向と前記第2インペラの回転方向とが逆であることを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、
前記第1ベース部、前記複数の第1支持リブおよび前記第1ハウジングが樹脂の射出成形により一体的に形成されており、
前記第2ベース部、前記複数の第2支持リブおよび前記第2ハウジングが樹脂の射出成形により一体的に形成されていることを特徴とする直列式軸流ファン。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の直列式軸流ファンであって、
前記モータ間隙が、0.3mm以上2.0mm以下であることを特徴とする直列式軸流ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5.A】
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【図5.B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−106705(P2008−106705A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291970(P2006−291970)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】