直動転がり案内ユニット
【課題】 下面カバーの取り付け、取り外しが簡単で、しかも、使用中にスライダから簡単には脱落しない直動転がり案内ユニットを提供する。
【解決手段】 エンドキャップ1には、下面カバー6が接する斜面8を形成し、斜面の両端部分において斜面と隣接する軌道面付きレール側に、上記斜面に対して段差を有する圧接面12を形成し、斜面であって圧接面に隣接する位置に、下面カバーの長手方向に一定の長さを保持するとともに圧接面側に開放された鉤部材Fを設け、鉤部材の開放側とは反対側面に鉤部材より低くした掛止用突部11を形成し、下面カバーにはその両端部分に掛止孔15を形成するとともに、掛止孔はそれを鉤部材に掛け止めたとき、掛止用突部が圧入される大きさを保つ一方、下面カバーであって圧接面に対向する側面に弾性突部17を形成し、弾性突部の弾性力で掛止孔周囲が鉤部材に圧接する構成にした。
【解決手段】 エンドキャップ1には、下面カバー6が接する斜面8を形成し、斜面の両端部分において斜面と隣接する軌道面付きレール側に、上記斜面に対して段差を有する圧接面12を形成し、斜面であって圧接面に隣接する位置に、下面カバーの長手方向に一定の長さを保持するとともに圧接面側に開放された鉤部材Fを設け、鉤部材の開放側とは反対側面に鉤部材より低くした掛止用突部11を形成し、下面カバーにはその両端部分に掛止孔15を形成するとともに、掛止孔はそれを鉤部材に掛け止めたとき、掛止用突部が圧入される大きさを保つ一方、下面カバーであって圧接面に対向する側面に弾性突部17を形成し、弾性突部の弾性力で掛止孔周囲が鉤部材に圧接する構成にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライダを、軌道面付きレール上を移動させる直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の案内ユニットとして特許文献1および特許文献2に記載されたものが従来から知られている。上記特許文献1に記載された従来の案内ユニットは、スライダの両端に設けたエンドキャップの下面に、先端を矢尻状にした掛止突起を設け、下面カバー側には、上記掛止突起がはまる掛止孔を形成している。そして、この掛止孔を上記掛止突起に押しつけて、先端を矢尻状にした掛止突起を下面カバーの掛止孔に強制的に挿入するようにしている。このようにすることによって、下面カバーをスライダに取り付けるようにしている。
【0003】
また、特許文献2に記載された従来の案内ユニットは、下面カバーに長孔を形成するとともに、エンドキャップ側には掛止突起を設け、掛止突起を長孔に挿入した後に、その下面カバーを長手方向に少しずらして、下面カバーを掛止突起に掛け止める。その後に、エンドキャップの外側にエンドシールを固定し、このエンドシール間で下面シールがスライドしないようにして、下面カバーがスライダから脱落するのを防止している。
【特許文献1】実用新案登録第2575890号公報
【特許文献2】特許第3237981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された従来の案内ユニットは、先端を矢尻状にした掛止突起を、下面カバーの掛止孔に強制的に押し込むようにしていたので、掛止突起を上記のように押し込むとき、あるいは下面カバーをエンドキャップから外すときに、掛止突起を破損してしまうという問題があった。
【0005】
また、上記特許文献2に記載された従来の案内ユニットは、下面カバーを一度取り付けると、エンドシールを取り外さない限り、下面カバーをスライダから簡単に外せないといった問題があった。
【0006】
この発明の目的は、下面カバーの取り付け、取り外しが簡単で、しかも、使用中にスライダから簡単には脱落しない直動転がり案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ケーシングの両端にエンドキャップを設けたスライダと、これらエンドキャップ間に掛け渡した下面カバーとを備えた直動転がり案内ユニットにおいて、上記エンドキャップには、上記下面カバーが接する斜面を形成し、しかも、この斜面の両端部分において斜面と隣接する軌道面付きレール側に、上記斜面に対して段差を有する圧接面を形成し、かつ、上記斜面であって圧接面に隣接する位置に、下面カバーの長手方向に一定の長さを保持するとともに圧接面側に開放された鉤部材を設け、しかも、この鉤部材の開放側とは反対側面に鉤部材より低くした掛止用突部を形成し、かつ、一方、上記下面カバーには、その両端部分に掛止孔を形成するとともに、この掛止孔はそれを鉤部材に掛け止めたとき、上記掛止用突部が圧入される大きさを保つ一方、この下面カバーであって、上記圧接面に対向する側面に弾性突部を形成し、この弾性突部の弾性力で、掛止孔周囲が鉤部材に圧接する構成にした点に特徴を有する。
【0008】
第1の発明は、下面カバーの弾性突部を、エンドキャップの圧接面に圧接させて上記弾性突部をたわませるとともに、掛止孔に鉤部材を貫通させる。このとき鉤部材の開放側とは反対側に設けた掛止用突部を上記掛止孔に圧入する。したがって、下面カバーがエンドキャップに取り付けられた状態では、弾性突起の作用で、掛止孔の周囲が鉤部材に圧接するとともに、掛止用突部の圧入によって掛止孔が鉤部材の開放側と反対側に押しつけられることになる。また、上記下面カバーを取り外すときには、弾性突起を圧縮する方向に下面カバーを回せば、それを簡単に取り外すことができる。
【0009】
第2の発明は、上記弾性突部とは反対側で、かつ、下面カバーの長手方向全長にわたって第1リップ部を形成し、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第1リップ部がケーシングおよびエンドキャップに圧接する構成にした点に特徴を有する。したがって、第1リップ部がスライダの下面をシールすることになる。
【0010】
第3の発明は、上記掛止孔と第1リップ部との間で、かつ、長手方向の長さを、エンドキャップにおける斜面の長手方向の長さとほぼ等しくした第2リップ部を設け、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第2リップ部がエンドキャップの斜面に圧接する構成にした点に特徴を有する。したがって、第1,2リップ部が相まって、スライダの下面をシールすることになる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、下面カバーを簡単に取り付け取り外しができるので、その取り付けあるいは取り外しの作業効率を向上させることができる。しかも、この下面カバーは、使用中に簡単に脱落したりしない。つまり、第1の発明の下面カバーは、取り付け取り外しが簡単でありながら、使用中には簡単に脱落しないというように、二律背反的な要請に応えることができる。
【0012】
第2,3の発明によれば、第1リップ部あるいは第2リップ部がスライダに圧接するので、その圧接部分からのダストの侵入を確実に防止でき、ダストによるスライダの走行障害など発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面はこの発明の実施形態を示したもので、軌道面付きレールR上を走行するスライダSは、ケーシングcと、このケーシングcの両側に設けた一対のエンドキャップ1,1と、このエンドキャップ1,1の外側に設けた一対のエンドシール2,2とを備えている。
【0014】
上記スライダSには、ボールや円筒ころ等の転動体3を組み込み、これら転動体3が、軌道面付きレールRの上側軌道面4,4と下側軌道面5,5上を転動しながら、スライダSを軌道面付きレールRに沿ってスムーズに走行させるものである。そして、上記軌道面3,3および4,4のうち、特に下側軌道面5,5およびこの下側軌道面5,5を走行する転動体の部分にダストが侵入すると、転動体のスムーズな転がりが阻害されるので、ダストの侵入を防止しなければならないが、そのダストの侵入を防止するのが下面カバー6である。なお、この下面カバー6は、上記下側軌道面5,5に対向するスライダSの両側に設けるものであるが、以下には、それら両側における下面カバーおよびその取り付け構造全体を、同一符号を付して説明する。
【0015】
上記のようにしたスライダSのエンドキャップ1には、ケーシングcに形成した砥石逃げ用の斜面7と一致する斜面8を形成している。そして、この斜面8には、下面カバー6を掛け止めるための鉤部材Fを突出させているが、その具体的な形状は次の通りである。
【0016】
すなわち、上記鉤部材Fは、その先端側に掛止部9を形成するとともに、この掛止部9は、軌道面付きレールRに対向する側に開放している。さらに、鉤部材Fは、上記掛止部9よりもさらに外側を、山形にした先端部10としている。このようにした鉤部材Fは、図4からも明らかなように、軌道面付きレールRの軸線方向に平行な方向において長さL1を確保している。このようにした鉤部材Fは、上記長さL1に直交する方向の幅を、図4に示すようにL2としている。
【0017】
また、上記鉤部材Fに隣接して掛止用突部11を形成しているが、この掛止用突部11は、上記掛止部9の開放側と反対側において、鉤部材Fの基端に隣接して設けるとともに、図4からも明らかなように、軌道面付きレールRの軸線方向に平行な方向における長さを上記鉤部材Fによりも短くしている。このようにした掛止用突部11は、上記斜面8に対して突出しているが、その高さは鉤部材Fよりも十分に低くしている。
【0018】
さらに、エンドキャップ1には、上記鉤部材Fを挟んで上記掛止用突部11とは反対側に、上記斜面8に対して一段低くした圧接面12を形成している。
【0019】
一方、鉤部材Fに掛け止める上記下面カバー6は、芯金13を弾性体14で覆うとともに、長手方向両端部分に掛止孔15を形成している。この掛止孔15は、図5,7からも明らかなように、軌道面付きレールRの軸線方向に平行な方向における長さをL3とし、この長さL3に直交する方向の幅をL4としている。そして、上記長さL3は鉤部材Fの長さL1とほぼ等しくし、幅L4は鉤部材Fの幅L2とほぼ等しくして、上記鉤部材Fがこの掛止孔15にはまるようにしている。
【0020】
上記のようにした掛止孔15は、図6からも明らかなように、その内周に、芯金13が露出することなく、弾性体14のわずかな厚さが残るようにした弾性体残存部14aが形成されるようにしている。さらに、この掛止孔15の内周には、軌道面付きレールRとの対向側に弾性体14を張り出させてなる弾性突条16を形成している。
【0021】
上記のようにした下面カバー6には、軌道面付きレールRとの対向側において掛止孔15と隣接する位置に弾性突部17を形成するとともに、上記掛止孔15を挟んで上記弾性突部17とは反対側の縁の部分に第1リップ部18を設けている。この第1リップ部18は、その部分には芯金13がなく、弾性体14の弾性が保たれるようにしている。また、この第1リップ部18と上記掛止孔15との間に第2リップ部19を設けているが、この第2リップ部19も、第1リップ部18と同様に、弾性体14の弾性が保たれるようにしている。
【0022】
なお、上記第1リップ部18は下面カバー6の全長にわたって設けられているが、弾性突部17および第2リップ部19は、図7からも明らかなように、掛止孔15と対応する位置から外側だけに設けたもので、エンドキャップ1,1の傾斜面12のみに圧接し、ケーシングcには圧接しないものである。ただし、これら弾性突部17および第2リップ部19を、下面カバー6の全長にわたって設けてもよいこと当然である。
【0023】
次に、図8〜図11に基づいて、下面カバー6をスライダSに取り付ける手順を説明する。まず、図8に示すように、鉤部材Fを掛止孔15に挿入するが、このときには鉤部材Fの山形の先端部10が、弾性突条16を強制的に退避させる。この状態で、下面カバー6を図面時計方向に回しながら、図9に示すように、弾性突部17を圧接面12に圧接させて、それをたわませる。このように弾性突部17がたわめば、掛止部9が掛止孔15を通り抜ける(図9参照)。
【0024】
上記のように鉤部材Fの掛止部9が掛止孔15を通り抜けたら、今度は、図10に示すように、弾性突条16をたわませながら、下面カバー6は、軌道面付きレールRから離れる方向に移動させる。このようにして下面カバー6が移動すれば、上記掛止部9が掛止孔15の周囲に引っかかるが、下面カバー6を上記移動方向にさらに移動させつつ、掛止用突部11を上記掛止孔15に強制的に押し込む。
【0025】
このようにして下面カバー6が取り付けられた状態が図11であるが、この状態では、第1,2リップ部18,19がケーシングcの斜面7およびエンドキャップの斜面8のそれぞれに圧接することになる。したがって、下面カバー6によって、ダストの侵入が確実に防止される。
【0026】
また、上記のように下面カバー6がエンドキャップ1に取り付けられた状態では、弾性突部17が圧接面12に圧接した状態になるので、弾性突部17の弾性力で、下面カバー6は、図11において、反時計方向に回る力が作用する。このように、図11において、下面カバー6に反時計方向に回る力が作用すれば、その力は、第1,2リップ部18,19が斜面7,8に圧接する方向の力として伝達される。また、この弾性突部17に隣接することになる鉤部材Fに対しては、上記弾性力が、掛止部9と下面カバー6の掛止孔15の周囲との圧接力になる。したがって、鉤部材Fの掛止部9が下面カバー6の掛止孔15の周囲にしっかりと圧接して、鉤部材Fが掛止孔15から抜けるのを防止する機能を果たす。
【0027】
さらに、下面カバー6がエンドキャップ1に取り付けられた状態では、弾性突条16の弾性力および掛止用突部11を掛止孔15に強制的にはめ込んだことによる力の作用で、下面カバー6は軌道面付きレールRから離れる方向の力を受ける。したがって、下面カバー6は、鉤部材Fの掛止部9から外れることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の案内システムの斜視図である。
【図2】エンドキャップの側面図である。
【図3】鉤部材の部分を示す部分側面図である。
【図4】鉤部材の部分を示す部分底面図である。
【図5】下面カバーの平面図である。
【図6】下面カバーの掛止孔を形成した部分の拡大断面図である。
【図7】下面カバーの掛止孔を形成した部分の拡大平面図である。
【図8】下面カバーの取り付け手順を示す部分図である。
【図9】下面カバーの取り付け手順を示す部分図である。
【図10】下面カバーの取り付け手順を示す部分図である。
【図11】下面カバーを取り付けた状況を示す部分図である。
【符号の説明】
【0029】
S スライダ
c ケーシング
1 エンドキャップ
6 下面カバー
8 エンドキャップの斜面
F 鉤部材
11 掛止用突部
12 圧接面
15 掛止孔
17 弾性突部
18 第1リップ部
19 第2リップ部
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライダを、軌道面付きレール上を移動させる直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の案内ユニットとして特許文献1および特許文献2に記載されたものが従来から知られている。上記特許文献1に記載された従来の案内ユニットは、スライダの両端に設けたエンドキャップの下面に、先端を矢尻状にした掛止突起を設け、下面カバー側には、上記掛止突起がはまる掛止孔を形成している。そして、この掛止孔を上記掛止突起に押しつけて、先端を矢尻状にした掛止突起を下面カバーの掛止孔に強制的に挿入するようにしている。このようにすることによって、下面カバーをスライダに取り付けるようにしている。
【0003】
また、特許文献2に記載された従来の案内ユニットは、下面カバーに長孔を形成するとともに、エンドキャップ側には掛止突起を設け、掛止突起を長孔に挿入した後に、その下面カバーを長手方向に少しずらして、下面カバーを掛止突起に掛け止める。その後に、エンドキャップの外側にエンドシールを固定し、このエンドシール間で下面シールがスライドしないようにして、下面カバーがスライダから脱落するのを防止している。
【特許文献1】実用新案登録第2575890号公報
【特許文献2】特許第3237981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された従来の案内ユニットは、先端を矢尻状にした掛止突起を、下面カバーの掛止孔に強制的に押し込むようにしていたので、掛止突起を上記のように押し込むとき、あるいは下面カバーをエンドキャップから外すときに、掛止突起を破損してしまうという問題があった。
【0005】
また、上記特許文献2に記載された従来の案内ユニットは、下面カバーを一度取り付けると、エンドシールを取り外さない限り、下面カバーをスライダから簡単に外せないといった問題があった。
【0006】
この発明の目的は、下面カバーの取り付け、取り外しが簡単で、しかも、使用中にスライダから簡単には脱落しない直動転がり案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ケーシングの両端にエンドキャップを設けたスライダと、これらエンドキャップ間に掛け渡した下面カバーとを備えた直動転がり案内ユニットにおいて、上記エンドキャップには、上記下面カバーが接する斜面を形成し、しかも、この斜面の両端部分において斜面と隣接する軌道面付きレール側に、上記斜面に対して段差を有する圧接面を形成し、かつ、上記斜面であって圧接面に隣接する位置に、下面カバーの長手方向に一定の長さを保持するとともに圧接面側に開放された鉤部材を設け、しかも、この鉤部材の開放側とは反対側面に鉤部材より低くした掛止用突部を形成し、かつ、一方、上記下面カバーには、その両端部分に掛止孔を形成するとともに、この掛止孔はそれを鉤部材に掛け止めたとき、上記掛止用突部が圧入される大きさを保つ一方、この下面カバーであって、上記圧接面に対向する側面に弾性突部を形成し、この弾性突部の弾性力で、掛止孔周囲が鉤部材に圧接する構成にした点に特徴を有する。
【0008】
第1の発明は、下面カバーの弾性突部を、エンドキャップの圧接面に圧接させて上記弾性突部をたわませるとともに、掛止孔に鉤部材を貫通させる。このとき鉤部材の開放側とは反対側に設けた掛止用突部を上記掛止孔に圧入する。したがって、下面カバーがエンドキャップに取り付けられた状態では、弾性突起の作用で、掛止孔の周囲が鉤部材に圧接するとともに、掛止用突部の圧入によって掛止孔が鉤部材の開放側と反対側に押しつけられることになる。また、上記下面カバーを取り外すときには、弾性突起を圧縮する方向に下面カバーを回せば、それを簡単に取り外すことができる。
【0009】
第2の発明は、上記弾性突部とは反対側で、かつ、下面カバーの長手方向全長にわたって第1リップ部を形成し、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第1リップ部がケーシングおよびエンドキャップに圧接する構成にした点に特徴を有する。したがって、第1リップ部がスライダの下面をシールすることになる。
【0010】
第3の発明は、上記掛止孔と第1リップ部との間で、かつ、長手方向の長さを、エンドキャップにおける斜面の長手方向の長さとほぼ等しくした第2リップ部を設け、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第2リップ部がエンドキャップの斜面に圧接する構成にした点に特徴を有する。したがって、第1,2リップ部が相まって、スライダの下面をシールすることになる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、下面カバーを簡単に取り付け取り外しができるので、その取り付けあるいは取り外しの作業効率を向上させることができる。しかも、この下面カバーは、使用中に簡単に脱落したりしない。つまり、第1の発明の下面カバーは、取り付け取り外しが簡単でありながら、使用中には簡単に脱落しないというように、二律背反的な要請に応えることができる。
【0012】
第2,3の発明によれば、第1リップ部あるいは第2リップ部がスライダに圧接するので、その圧接部分からのダストの侵入を確実に防止でき、ダストによるスライダの走行障害など発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面はこの発明の実施形態を示したもので、軌道面付きレールR上を走行するスライダSは、ケーシングcと、このケーシングcの両側に設けた一対のエンドキャップ1,1と、このエンドキャップ1,1の外側に設けた一対のエンドシール2,2とを備えている。
【0014】
上記スライダSには、ボールや円筒ころ等の転動体3を組み込み、これら転動体3が、軌道面付きレールRの上側軌道面4,4と下側軌道面5,5上を転動しながら、スライダSを軌道面付きレールRに沿ってスムーズに走行させるものである。そして、上記軌道面3,3および4,4のうち、特に下側軌道面5,5およびこの下側軌道面5,5を走行する転動体の部分にダストが侵入すると、転動体のスムーズな転がりが阻害されるので、ダストの侵入を防止しなければならないが、そのダストの侵入を防止するのが下面カバー6である。なお、この下面カバー6は、上記下側軌道面5,5に対向するスライダSの両側に設けるものであるが、以下には、それら両側における下面カバーおよびその取り付け構造全体を、同一符号を付して説明する。
【0015】
上記のようにしたスライダSのエンドキャップ1には、ケーシングcに形成した砥石逃げ用の斜面7と一致する斜面8を形成している。そして、この斜面8には、下面カバー6を掛け止めるための鉤部材Fを突出させているが、その具体的な形状は次の通りである。
【0016】
すなわち、上記鉤部材Fは、その先端側に掛止部9を形成するとともに、この掛止部9は、軌道面付きレールRに対向する側に開放している。さらに、鉤部材Fは、上記掛止部9よりもさらに外側を、山形にした先端部10としている。このようにした鉤部材Fは、図4からも明らかなように、軌道面付きレールRの軸線方向に平行な方向において長さL1を確保している。このようにした鉤部材Fは、上記長さL1に直交する方向の幅を、図4に示すようにL2としている。
【0017】
また、上記鉤部材Fに隣接して掛止用突部11を形成しているが、この掛止用突部11は、上記掛止部9の開放側と反対側において、鉤部材Fの基端に隣接して設けるとともに、図4からも明らかなように、軌道面付きレールRの軸線方向に平行な方向における長さを上記鉤部材Fによりも短くしている。このようにした掛止用突部11は、上記斜面8に対して突出しているが、その高さは鉤部材Fよりも十分に低くしている。
【0018】
さらに、エンドキャップ1には、上記鉤部材Fを挟んで上記掛止用突部11とは反対側に、上記斜面8に対して一段低くした圧接面12を形成している。
【0019】
一方、鉤部材Fに掛け止める上記下面カバー6は、芯金13を弾性体14で覆うとともに、長手方向両端部分に掛止孔15を形成している。この掛止孔15は、図5,7からも明らかなように、軌道面付きレールRの軸線方向に平行な方向における長さをL3とし、この長さL3に直交する方向の幅をL4としている。そして、上記長さL3は鉤部材Fの長さL1とほぼ等しくし、幅L4は鉤部材Fの幅L2とほぼ等しくして、上記鉤部材Fがこの掛止孔15にはまるようにしている。
【0020】
上記のようにした掛止孔15は、図6からも明らかなように、その内周に、芯金13が露出することなく、弾性体14のわずかな厚さが残るようにした弾性体残存部14aが形成されるようにしている。さらに、この掛止孔15の内周には、軌道面付きレールRとの対向側に弾性体14を張り出させてなる弾性突条16を形成している。
【0021】
上記のようにした下面カバー6には、軌道面付きレールRとの対向側において掛止孔15と隣接する位置に弾性突部17を形成するとともに、上記掛止孔15を挟んで上記弾性突部17とは反対側の縁の部分に第1リップ部18を設けている。この第1リップ部18は、その部分には芯金13がなく、弾性体14の弾性が保たれるようにしている。また、この第1リップ部18と上記掛止孔15との間に第2リップ部19を設けているが、この第2リップ部19も、第1リップ部18と同様に、弾性体14の弾性が保たれるようにしている。
【0022】
なお、上記第1リップ部18は下面カバー6の全長にわたって設けられているが、弾性突部17および第2リップ部19は、図7からも明らかなように、掛止孔15と対応する位置から外側だけに設けたもので、エンドキャップ1,1の傾斜面12のみに圧接し、ケーシングcには圧接しないものである。ただし、これら弾性突部17および第2リップ部19を、下面カバー6の全長にわたって設けてもよいこと当然である。
【0023】
次に、図8〜図11に基づいて、下面カバー6をスライダSに取り付ける手順を説明する。まず、図8に示すように、鉤部材Fを掛止孔15に挿入するが、このときには鉤部材Fの山形の先端部10が、弾性突条16を強制的に退避させる。この状態で、下面カバー6を図面時計方向に回しながら、図9に示すように、弾性突部17を圧接面12に圧接させて、それをたわませる。このように弾性突部17がたわめば、掛止部9が掛止孔15を通り抜ける(図9参照)。
【0024】
上記のように鉤部材Fの掛止部9が掛止孔15を通り抜けたら、今度は、図10に示すように、弾性突条16をたわませながら、下面カバー6は、軌道面付きレールRから離れる方向に移動させる。このようにして下面カバー6が移動すれば、上記掛止部9が掛止孔15の周囲に引っかかるが、下面カバー6を上記移動方向にさらに移動させつつ、掛止用突部11を上記掛止孔15に強制的に押し込む。
【0025】
このようにして下面カバー6が取り付けられた状態が図11であるが、この状態では、第1,2リップ部18,19がケーシングcの斜面7およびエンドキャップの斜面8のそれぞれに圧接することになる。したがって、下面カバー6によって、ダストの侵入が確実に防止される。
【0026】
また、上記のように下面カバー6がエンドキャップ1に取り付けられた状態では、弾性突部17が圧接面12に圧接した状態になるので、弾性突部17の弾性力で、下面カバー6は、図11において、反時計方向に回る力が作用する。このように、図11において、下面カバー6に反時計方向に回る力が作用すれば、その力は、第1,2リップ部18,19が斜面7,8に圧接する方向の力として伝達される。また、この弾性突部17に隣接することになる鉤部材Fに対しては、上記弾性力が、掛止部9と下面カバー6の掛止孔15の周囲との圧接力になる。したがって、鉤部材Fの掛止部9が下面カバー6の掛止孔15の周囲にしっかりと圧接して、鉤部材Fが掛止孔15から抜けるのを防止する機能を果たす。
【0027】
さらに、下面カバー6がエンドキャップ1に取り付けられた状態では、弾性突条16の弾性力および掛止用突部11を掛止孔15に強制的にはめ込んだことによる力の作用で、下面カバー6は軌道面付きレールRから離れる方向の力を受ける。したがって、下面カバー6は、鉤部材Fの掛止部9から外れることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の案内システムの斜視図である。
【図2】エンドキャップの側面図である。
【図3】鉤部材の部分を示す部分側面図である。
【図4】鉤部材の部分を示す部分底面図である。
【図5】下面カバーの平面図である。
【図6】下面カバーの掛止孔を形成した部分の拡大断面図である。
【図7】下面カバーの掛止孔を形成した部分の拡大平面図である。
【図8】下面カバーの取り付け手順を示す部分図である。
【図9】下面カバーの取り付け手順を示す部分図である。
【図10】下面カバーの取り付け手順を示す部分図である。
【図11】下面カバーを取り付けた状況を示す部分図である。
【符号の説明】
【0029】
S スライダ
c ケーシング
1 エンドキャップ
6 下面カバー
8 エンドキャップの斜面
F 鉤部材
11 掛止用突部
12 圧接面
15 掛止孔
17 弾性突部
18 第1リップ部
19 第2リップ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの両端に設けたエンドキャップを設けたスライダと、これらエンドキャップ間に掛け渡した下面カバーとを備えた直動転がり案内ユニットにおいて、上記エンドキャップには、上記下面カバーが接する斜面を形成し、しかも、この斜面の両端部分において斜面と隣接する軌道面付きレール側に、上記斜面に対して段差を有する圧接面を形成し、かつ、上記斜面であって圧接面に隣接する位置に、下面カバーの長手方向に一定の長さを保持するとともに圧接面側に開放された鉤部材を設け、しかも、この鉤部材の開放側とは反対側面に鉤部材より低くした掛止用突部を形成し、かつ、一方、上記下面カバーには、その両端部分に掛止孔を形成するとともに、この掛止孔はそれを鉤部材に掛け止めたとき、上記掛止用突部が圧入される大きさを保つ一方、この下面カバーであって、上記圧接面に対向する側面に弾性突部を形成し、この弾性突部の弾性力で、掛止孔周囲が鉤部材に圧接する構成にした直動転がり案内ユニット。
【請求項2】
上記下面カバーは、上記弾性突部とは反対側で、かつ、下面カバーの長手方向全長にわたって第1リップ部を形成し、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第1リップ部がケーシングおよびエンドキャップに圧接する構成にした請求項1記載の直動転がり案内ユニット。
【請求項3】
上記下面カバーは、上記掛止孔と第1リップ部との間で、かつ、長手方向の長さを、エンドキャップにおける斜面の長手方向の長さとほぼ等しくした第2リップ部を設け、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第2リップ部がエンドキャップの斜面に圧接する構成にした請求項2記載の直動転がり案内ユニット。
【請求項1】
ケーシングの両端に設けたエンドキャップを設けたスライダと、これらエンドキャップ間に掛け渡した下面カバーとを備えた直動転がり案内ユニットにおいて、上記エンドキャップには、上記下面カバーが接する斜面を形成し、しかも、この斜面の両端部分において斜面と隣接する軌道面付きレール側に、上記斜面に対して段差を有する圧接面を形成し、かつ、上記斜面であって圧接面に隣接する位置に、下面カバーの長手方向に一定の長さを保持するとともに圧接面側に開放された鉤部材を設け、しかも、この鉤部材の開放側とは反対側面に鉤部材より低くした掛止用突部を形成し、かつ、一方、上記下面カバーには、その両端部分に掛止孔を形成するとともに、この掛止孔はそれを鉤部材に掛け止めたとき、上記掛止用突部が圧入される大きさを保つ一方、この下面カバーであって、上記圧接面に対向する側面に弾性突部を形成し、この弾性突部の弾性力で、掛止孔周囲が鉤部材に圧接する構成にした直動転がり案内ユニット。
【請求項2】
上記下面カバーは、上記弾性突部とは反対側で、かつ、下面カバーの長手方向全長にわたって第1リップ部を形成し、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第1リップ部がケーシングおよびエンドキャップに圧接する構成にした請求項1記載の直動転がり案内ユニット。
【請求項3】
上記下面カバーは、上記掛止孔と第1リップ部との間で、かつ、長手方向の長さを、エンドキャップにおける斜面の長手方向の長さとほぼ等しくした第2リップ部を設け、下面カバーの掛止孔を鉤部材に掛け止めたとき、上記第2リップ部がエンドキャップの斜面に圧接する構成にした請求項2記載の直動転がり案内ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−307919(P2006−307919A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129127(P2005−129127)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]