説明

直接的なデジタルマーキングシステムのための光データ伝送システム

【課題】簡単な構成の直接的デジタルマーキングシステムを提供する。
【解決手段】潜像を印刷するための装置は、光源と、光検出器と、回転式接合部と、電源と、駆動する電子部品と、複数の薄膜トランジスタとを備えている。光源は、デジタルデータ信号を受信し、エンコードされた光データ信号を伝送する。光検出器は、エンコードされた光データ信号を受信し、選択信号とデジタルピクセル電圧とを含む信号を伝送する。回転式接合部は、コントローラから操作時の電圧を受け取り、電源は、回転式接合部から操作時の電位を受け取る。電源は、低電位、接地電位、高電位を作り出す。駆動する電子部品は、低電位、接地電位、選択信号、デジタルピクセル電圧を受け取り、バイアス信号およびピクセル電圧を作り出す。複数のTFTは、高電位、バイアス信号およびピクセル電圧を受信し、静電潜像を作成するために正孔注入ピクセルを駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、直接的なデジタルマーキング(印刷)システムに利用されるデータ通信システム、つまり、LED(またはレーザ)およびフォトダイオード(または光検出器)によって作られる光リンクを利用し、コントローラと新規画像形成体との間で数百万ビットのデータを伝送するデータ通信システムに関する。この光通信によって、高速かつ低コストのデータ伝送が行われる。これらの実施形態では、機械的な接続の数は最小限である。回転ドラムの内側にある回路に電量を供給するために、通常のブラシを用いてもよい。
【背景技術】
【0002】
2種類の従来のカラー印刷技術プラットフォーム(すなわち、インクジェットおよび電子写真)が存在し、他の新しいカラー印刷技術プラットフォーム(すなわち、デジタルフレキソ印刷またはデジタルオフセット印刷)が存在する。これらのカラー印刷技術プラットフォームは、それぞれ、非常に複雑な印刷システムを有しており、これにより、印刷プロセスが複雑になり、本体(機器)の費用が高く、印刷のランニングコストが高い。
【0003】
ナノテクノロジーおよびディスプレイ技術における新しい進歩によって、デジタル電場は、パターン形成可能な正孔注入ナノ材料とXerox電荷(正孔)輸送層との間で、電場によって誘発される正孔注入反応を利用して作り出すことができるという開発/発見がもたらされた。
【0004】
それに加え、電子写真式現像システムでは、潜像の作成、トナーの現像は、ROS/レーザおよびチャージャーという従来の組み合わせを用いなくても行うことができ、これによって、ゼログラフィーと比較して、静電潜像の作成が単純になる。
【0005】
このナノ画像マーカーおよび直接的なデジタル式印刷プロセスを、フレキソインク、オフセットインク、液体トナーを用いる印刷まで拡張することもできる。したがって、新しい直接的な印刷概念は、潜在的な新規デジタル式印刷プラットフォームと呼ばれることもある。さらに、正孔注入型の層ではなく、デジタル電極に隣接する絶縁層または導電層を用い、印刷システムが作られてもよい。
【0006】
米国特許第6,100,909号(発明者HassおよびKubbyらに対する)は、画像形成体を作成するための装置を記載している。この装置は、高電圧薄膜トランジスタ(TFT)およびコンデンサの配列を備えている。潜像は、高電圧電源と、帯電領域検出(CAD)型の現像を利用し、それぞれのTFTに対して直流のバイアスをかけることによって作られる。図1は、画像形成体を作成するための装置内にある薄膜トランジスタの整列を示す。配列10は、5行5列の長方形のマトリックス内に整列している。5個の行および列が図示されているが、本発明の実施形態では、600dpiの解像度を有する8.5インチ×11インチの配列で印刷するか、または画像形成する機器に配置されており、この配列10は、約3×10のトランジスタを有しており、これは、約3×10百万ピクセルのセルに対応するだろう。それに加え、解像度が1200dpiの場合、この配列は、7×10百万のトランジスタを有しており、7×10ピクセルのセルを有しているだろう。
【0007】
配列10は、正孔輸送層でオーバーコーティングされた正孔注入ピクセルからなる二層画像形成体と接続している場合、コンピュータ44(例えば、プリントエンジン)からコントローラ42に供給されるデジタル情報から潜像を作成する。コンピュータは、コントローラ42(またはデジタルフロントエンド(DFE))にデジタル信号を供給し、このデジタル信号を、異なる強度を有する、利用する色空間(例えば、CMYK色空間またはRGB色空間)内のデジタルビットに分解し、デジタルビットは、印刷される画像に対応して作られる。コントローラ42は、デコーダ12、リフレッシュ回路18、デジタル−アナログ(D/A)変換器16を備える複数のインターフェース機器を介して配列10の操作を命令する。
【0008】
静止している他のアクティブマトリクス方式の製品(例えば、テレビ受像機またはモニタ)とは対照的に、新しいナノ画像形成体(ベルト一部分に接続しているか、ドラムの一部分に接続しているかにかかわらず)は、印刷プロセス中に移動していると予想される。移動する画像形成体に転写してデジタル電場を作るには、数百万のビットが必要であろう。移動する画像形成体は、回転画像形成ドラムに接続している。それに加えて、駆動する電子部品および移動する画像形成体に電力を供給する必要がある。したがって、ベルト(またはドラム)が動いている間に、駆動する電子部品とバックプレーンとを連結するのは、きわめて困難な問題である。ベルトまたはドラムが動きつつ、数百万のビットと、さらに電流がバックプレーンに供給される。顧客の需要を満たすために、高メガヘルツ範囲でデータを送受信することが必要である。
【0009】
以前出願された、発明の名称「Generation of Digital Electrostatic Latent Images Utilizing Wireless Communications」(代理人整理番号20101021−390426)では、コントローラから画像形成ドラムへと、データを無線によって伝送することが提案された。これを実施するには、さらなるハードウエアとして無線の送信器および受信器が必要になる(すなわち、無線リンク)。これにより、印刷機器の費用が上がってしまう。それに加えて、利用する無線伝送プロトコルによっては、その無線伝送の安全が保証されておらず、または暗号化されていない場合があるため、セキュリティが問題となることがある。
【0010】
それに加えて、数百万のトランジスタを配列して接触させ、これを回転ドラムに結合することは困難である。通常使用されるブラシおよび他の種類の接合部は、大量のブラシ(または接合部)が必要になるため、問題である。ブラシまたは他の接合部によって生じるノイズによって、正確なデータ伝送において誤差を生じる場合がある。
【0011】
以前出願された、「Generation Of Digital Electrostatic Latent Images And Data Communications System Using Rotary Contacts」(代理人整理番号20101021−391184)では、データをシリアル伝送し、回転式接合部によって電力を与えることが提案された。しかし、現時点で高速デジタルデータ伝送に使用されている回転式接合部は、水銀の接合部を使用することが必要な場合がある。水銀は、環境への問題があるため、市場では懸念材料のある物質である。
【0012】
したがって、印刷機器内で移動しているナノ画像形成体に、大量のデータを正確に、費用対効果が優れた状態で提供する費用対効果の高いシステムおよび/または方法が、満たされていない要求として存在する。
【発明の概要】
【0013】
本明細書に示される実施形態によれば、プリントエンジン/コントローラおよび駆動する電子部品/ナノ画像形成体の間でデータ通信するための光リンクを利用するシステムおよび方法が記載される。回転ドラムに電力を送るために、通常のブラシを用いてもよい。通常のブラシは、大きな接触ノイズを生じることがあるが、電力を安定に供給し、内部のアナログデジタル変換器およびバックプレーントランジスタを駆動させるために、大容量のコンデンサを用いた安定化電源がドラムの内側に配置されてもよい。
【0014】
さらに詳細には、印刷される画像が、デジタルシリアル情報に変換され、回転ドラムの内側に伝送される。ドラムの内側で、デジタル−アナログ回路が、デジタルシリアル情報を、画像形成バックプレーンの数百のトランジスタへの電力に変換するだろう。
【0015】
本発明の実施形態では、印刷ファイルがコントローラ(またはデジタルフロントエンド「DFE」)に送られ、印刷ファイルをCMYKデジタルビットに分解する。コントローラは、光リンク(例えば、LEDまたはレーザと、フォトダイオードまたは光検出器の対)を介し、CMYKデジタルビットを回転ドラムに送る。デジタルCMYKビットはシリアル伝送される。LEDまたはレーザは、回転画像形成ドラムの外側に固定されているか、または取り付けられている。LEDまたはレーザは、ドラムとともに回転する半透明材料の方を向いていてもよい。半透明材料は、フォトダイオード/光検出器とともに整列しており、フォトダイオード/光検出器は、回転画像形成ドラムの内側にある駆動する電子部品に接続している。TFTの駆動する電子部品は、回転画像形成ドラムの内部または内側に配置されている。駆動する電子部品は、フォトダイオードからデジタル信号を受信し、このデジタル信号をアナログ信号に変換し、次いで、このアナログ信号を、移動しているナノ画像形成体のTFTバックプレーン内のTFTに送る。TFTバックプレーン内のTFTが受信した信号および電圧は、二層画像形成体の正孔注入ピクセルにおける正孔注入を誘発し、デジタル電場を作り出す。デジタル電場は、潜像を作り出し、プリンタの静止部分と、移動するナノ画像形成体との少ない数の接合部を利用して印刷を行う。次いで、潜像を、その後のマーキング技術によって、印刷する(または現像する)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術による画像形成体を作成するための装置における薄膜トランジスタの配列を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による光リンクの一部である半透明媒体を示す図である。
【図3a】ナノ画像形成体の回転画像形成ドラムに対する光データ伝送要素の断面を示す図である。
【図3b】一実施形態による直接的なナノデジタル印刷システムの一実施形態を示す図である。
【図4a】本発明の実施形態によるデータ伝送のための光リンクと、電力を供給するために回転画像形成ドラムに連結する回転式接合部のブロック図である。
【図4b】一実施形態による光データ伝送を用い、潜像を作成するか、または直接印刷するための装置内の薄膜トランジスタの配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態では、LEDとフォトダイオードまたは光検出器、またはレーザとフォトダイオードまたは光検出器を利用し、印刷機器の静止部分と移動部分との間をデータ通信するシステムおよび方法が記載されている。さらに詳細には、コンピュータまたはプリントエンジンは、印刷ファイルをDFE(またはコントローラ)に伝送する。DFE(またはコントローラ)は、印刷ファイルをデジタルカラービットに変換する。DFE(またはコントローラ)は、フォトダイオードまたは光検出器に対してLED(またはレーザ)を用い、駆動している電子部品にデジタルビットを伝送する。半透明媒体は、LED(またはレーザ)とフォトダイオードとの間に配置され、LED(またはレーザ)からの光が、確実にフォトダイオードまたは光検出器に集まるようになっている。フォトダイオードまたは光検出器は、駆動する電子部品に接続しており、駆動する電子部品にデジタルビットを伝送する。コントローラは、通常のブラシ接合部を介し、駆動する電子部品に操作時の電圧を伝える。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態による環状の半透明散乱材料の内側を光が散乱する、環状の半透明媒体の模式図を示す。本発明では、光データ伝送リンクは、LED(またはレーザ)と、半透明媒体と、フォトダイオードまたは光検出器とを備えている。半透明媒体は、環状、円板状、または任意の点対称な形状であってもよい。図2は、本発明の一実施形態による光データ伝送リンクの一部であってもよい半透明媒体を示す。本発明の実施形態では、半透明材料は、環の内側に散乱粒子を含んでいてもよい。散乱粒子は、LED(またはレーザ)によって環の1点にのみ照射された場合であっても、環の外縁にわたって全体に照射することができる。光線212は、レーザまたはLEDからの光線であり、環215の1点にあたっており、半透明媒体210の環の全体(またはかなりの部分)が照射されている。半透明材料は、ポリアクリル材料、ポリエチレンテレフタレートまたはスチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN)または他の半透明材料であってもよい。本発明の実施形態では、任意のポリマー塊に散乱材料を加えてもよい。線220は、光線をあらわしており、半透明媒体210内をどのように反射し、半透明媒体の大部分に照射するかをあらわしている。
【0019】
光源としてLEDを利用する本発明の実施形態では(例えば、光リンクは、LED−半透明材料−フォトダイオードの組み合わせである)、光データ伝送リンクは、100Mbpsを超えるデータを伝送可能であり、データ伝送速度は、LEDの切り替え時間によってのみ制限される。光源としてレーザを利用する本発明の実施形態では(例えば、光リンクは、レーザ−半透明材料−フォトダイオードの組み合わせである)、データ伝送速度は、例えば、100Gigabit Ethernetの場合には、100Gbpsに達する場合もある。
【0020】
図3は、光データ伝送リンクと画像形成ドラムの断面を示す。光データ伝送リンクおよび画像形成ドラム300は、発光ダイオード(LED)またはレーザ305と、半透明材料(または半透明媒体)309と、フォトダイオード315(または光検出器)と、駆動する電子部品320と、画像形成ドラムの軸325と、ブラシ接合部330とを備える。本発明の実施形態では、コントローラ302は、デジタルビットをLED(またはレーザ)305にシリアル伝送する。本発明の実施形態では、LED(またはレーザ)の駆動回路は、コントローラ302とLED(またはレーザ)305との間を連結していてもよい。LED(またはレーザ)305は、画像形成ドラム335の外部(または外側)にある表面または構造に固定されている。LED(またはレーザ)305は、半透明媒体309に向けられており、LED(またはレーザ)によって発生する光は、半透明媒体/材料(309)の方に進む。半透明媒体309は、画像形成ドラムの片側または表面(例えば、画像形成ドラムの末端)に配置されており、画像形成ドラム335と一緒に回転する。フォトダイオード(または光検出器)315は、半透明媒体309の背後に配置されており、LED(またはレーザ)305によって発生した光が半透明媒体309を通った後、この光を受信する。本発明の実施形態を記述する仕様でフォトダイオードを利用する場合、光検出器をフォトダイオードの代わりに用いることも可能である。
【0021】
フォトダイオード315は、画像形成ドラム335の内側に取り付けられており、画像形成ドラム335と一緒に回転する。フォトダイオード315は、駆動する電子部品320に接続している。本発明の実施形態では、フォトダイオードが、画像形成ドラム335の内側に取り付けられており、LEDまたはレーザ305からは見えないため、光源(LEDまたはレーザ)305は、フォトダイオード315と見通し通信距離にある必要はないだろう。または、半透明媒体は、画像形成ドラムに取り付けられていなくてもよく、光源とともに静止していてもよい。
【0022】
本発明の実施形態では、半透明媒体は、半透明媒体の所定の点または特定の部分で光源からの光を受け、散乱によって、半透明媒体の大部分または全体で光を発する。回転画像形成ドラム335の内側にあるフォトダイオードに対し、光源(LEDまたはレーザ)がどの位置にあろうと、半透明媒体309から発せされた光をフォトダイオードによって検出する。
【0023】
デジタルデータは、多くの伝送プロトコルのいずれか1つによって伝送され、光学的にエンコードされてもよい。このプロトコルは、異なるデジタルビット値をあらわすために調整スキームを含んでいてもよい。例えば、(1)光源のオンオフを切り替えること、(2)調整されたデジタルデータ信号の波長または周波数を検出または捕捉するための、フォトダイオード315でさらなる回路部品を必要とする、波長または周波数の調整、(3)増幅による調整、(4)見通し通信距離でのデータ伝送で利用される他のプロトコル、または(5)光ファイバーデータ伝送で利用される他のプロトコル。また、デジタルデータ伝送プロトコルは、情報を光リンクで伝送するために利用される任意のデジタル伝送プロトコルでもある。
【0024】
図3に示されるように、画像形成ドラムの軸325は、画像形成ドラム335が周囲を回転する軸である。軸325は、シャフトであってもよく、画像形成ドラム335の機械的な支えでもあり、外側の要素(例えば、コントローラ302)を介し、画像形成ドラム335の内側にある回路と連結することが可能な電気的接合部としても働くことができる。回転ブラシ接合部330は、静止状態であり(例えば、回転せず)、画像形成ドラムの軸325の片方の末端に固定されていてもよい。回転ブラシ接合部330によって、画像形成ドラムの軸325が支えられていてもよく、また、画像形成ドラムの軸325との電気的接触が与えられてもよい。本発明の実施形態では、コントローラ302は、回転ブラシ接合部330および画像形成ドラムの軸325を介し、画像形成ドラム335の内側にある回路に電力(例えば、電位)を伝えてもよい。本発明の実施形態では、2個の回転ブラシ接合部330を利用してもよい。画像形成ドラムの軸325の片側にVcc+がかけられていてもよく、画像形成ドラムの軸325のもう一方の側または反対側にVcc−がかけられる。回転画像形成ドラム335の内側の回路は、電力が安定化し、回転ドラム335の内側の回路に適切な操作時の電圧は、シリアルデータのデジタル−アナログ変換およびバックプレーントランジスタの割り当てに関与する。
【0025】
図3(b)は、ナノ画像形成体を用いる、潜像形成装置380の操作を示す。潜像形成装置は、正孔注入ピクセル385の配列を基板382の上に備えている。正孔注入ピクセルは、個々のピクセルを割り当てるために、複数のTFT384を有するTFTバックプレーンとつながっている。ナノ画像形成体は、さらに、正孔注入ピクセルの配列の上に配置されている電荷輸送層386を備えている。電荷輸送層386は、1つ以上のピクセル385によって与えられる正孔を輸送し、印刷に必要な静電電荷のコントラストを作り出すような構成であってもよい。
【0026】
種々の実施形態では、配列の各ピクセル385は、ナノカーボン材料の層を含んでいてもよい。他の実施形態では、配列の各ピクセル385は、有機共役ポリマーの層を含んでいてもよい。さらにいくつかの他の実施形態では、配列の各ピクセル385は、ナノカーボン材料と、有機共役ポリマーとを含む混合物の層(例えば、1種類以上の有機共役ポリマーに分散したナノカーボン材料)を含んでいてもよい。特定の実施形態では、1つ以上のナノカーボン材料および/または有機共役ポリマーを含む層の表面抵抗率は、約50Ω/sq〜約10,000Ω/sq、または約100Ω/sq〜約5,000Ω/sq、または約120Ω/sq〜約2,500Ω/sqであってもよい。ナノカーボン材料および有機共役ポリマーは、潜像を静電的に作成するための正孔注入材料として作用してもよい。ナノカーボン材料および有機共役ポリマーを正孔注入材料として用いることの利点のひとつは、この正孔注入材料を、例えば、フォトリソグラフィー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、転写印刷などの種々の加工技術によってパターン形成することが可能なことである。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ナノカーボン材料」という表現は、少なくとも1つの寸法がナノメートルの大きさであり、例えば、約1000nm未満である、炭素を含有する材料を指す。いくつかの実施形態では、ナノカーボン材料としては、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、官能基化されたカーボンナノチューブ、および/またはグラフェンおよび官能基化されたグラフェンを含むナノチューブが挙げられ、ここで、グラフェンは、ハニカム型の結晶格子に緻密に封入された、sp混成軌道で結合した炭素原子の1枚の平らなシートであり、実際には、厚みは1原子分であり、それぞれの原子は、表面原子である。
【0028】
カーボンナノチューブ、例えば、精製後の合成されたままのカーボンナノチューブは、層の数、直径、長さ、キラリティ、および/または欠陥率という観点で構造的にカーボンナノチューブの混合物であってもよい。例えば、カーボンナノチューブが金属であるか、または半導体であるかにかかわらず、キラリティが記述されていてもよい。金属性のカーボンナノチューブは、金属が約33%であってもよい。カーボンナノチューブは、直径が、約0.1nm〜約100nm、または約0.5nm〜約50nm、または約1.0nm〜約10nmの範囲であってもよく、長さが、約10nm〜約5mm、または約200nm〜約10μm、または約500nm〜約1000nmの範囲であってもよい。特定の実施形態では、1つ以上のナノカーボン材料を含む層の中のカーボンナノチューブの濃度は、約0.5重量%〜約99重量%、または約50重量%〜約99重量%、または約90重量%〜約99重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブをバインダー材料と混合し、1つ以上のナノカーボン材料の層を作成してもよい。バインダー材料は、当業者に既知であるような任意のバインダーポリマーを含んでいてもよい。
【0029】
種々の実施形態では、ピクセル配列の各ピクセル385の中のナノカーボン材料の層は、溶媒を含有するコーティング可能なカーボンナノチューブ層を含んでいてもよい。溶媒を含有するコーティング可能なカーボンナノチューブ層は、カーボンナノチューブの水分散物またはアルコール分散物からコーティングされてもよく、カーボンナノチューブは、界面活性剤、DNAまたはポリマー材料で安定化することができる。他の実施形態では、カーボンナノチューブの層は、限定されないが、カーボンナノチューブポリマーコンポジットおよび/またはカーボンナノチューブが充填された樹脂を含む、カーボンナノチューブコンポジットを含んでいてもよい。
【0030】
実施形態では、ナノカーボン材料の層は、薄くてもよく、厚みが、約1nm〜約1μm、または約50nm〜約500nm、または約5nm〜約100nmの範囲であってもよい。
【0031】
種々の実施形態では、ピクセル配列の各ピクセルの中の有機共役ポリマーの層は、任意の適切な材料を含んでいてもよく、例えば、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)またはその誘導体に由来する共役したポリマーを含んでいてもよい。共役したポリマーとしては、限定されないが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、アルキル置換されたEDOT、フェニル置換されたEDOT、ジメチル置換されたポリプロピレンジオキシチオフェン、シアノビフェニル置換された3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、テトラデシル置換されたPEDOT、ジベンジル置換されたPEDOT、イオン性基で置換されたPEDOT、例えば、スルホネート置換されたPEDOT、デンドロン置換されたPEDOT、例えば、デンドロン化ポリ(パラ−フェニレン)など、およびこれらの混合物を挙げることができる。さらなる実施形態では、有機共役ポリマーは、PEDOTと、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)とを含む錯体であってもよい。PEDOT−PSS錯体の分子構造は、以下のように示すことができる。
【化1】

【0032】
例示的なPEDOT−PSS錯体は、テンプレートポリマーPSSが存在する条件下で、EDOTの重合によって得ることができる。PEDOT−PSS錯体を含む層の導電性は、2個以上の極性基を有する化合物(例えば、エチレングリコール)をPEDOT−PSS水溶液に加えることによって、制御することができる(例えば、高めることができる)。Alexander M.Nardesの表題「On the Conductivity of PEDOT−PSS Thin Films,」、2007、Chapter 2、Eindhoven University of Technology(その全体が引用することで本明細書に組み込まれる)の論文に記載されているように、このような添加剤は、PEDOT−PSS錯体のPEDOT鎖の構造変化を誘発することがある。PEDOTの導電性は、酸化工程中に調節することもできる。PEDOT−PSSの水分散物は、BAYTRON P(登録商標)としてH.C.Starck,Inc.(Boston、MA)から市販されている。MylarにコーティングされたPEDOT−PSS膜は、Orgacon(商標)膜(Agfa−Gevaert Group、Mortsel、Belgium)として市販されている。また、PEDOTは、例えば、電子を豊富に含むEDOTに由来するモノマーを水系媒体または非水系媒体から電気化学的に酸化することによって、化学重合によって得てもよい。PEDOTの例示的な化学重合としては、Li Niu et al.、表題「Electrochemically Controlled Surface Morphology and Crystallinity in Poly(3,4−ethylenedioxythiophene) Films」、Synthetic Metals、2001、Vol.122、425−429、およびMark Lefebvre et al.による、表題「Chemical Synthesis, Characterization,and Electrochemical Studies of Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/Poly(styrene−4−sulfonate)Composites」、Chemistry of Materials、1999、Vol.11、262−268(これらは、その全体が引用することで本明細書に組み込まれる)に開示されているものを挙げることができる。また、上の参考文献に記載されているように、PEDOTの電気化学的合成は、少量のモノマーを用い、短い重合時間で行ってもよく、電極に担持された膜および/または自立する膜を得ることができる。
【0033】
種々の実施形態では、ピクセル385の配列は、まず、ナノカーボン材料および/または有機共役ポリマーを含む層を基板382の上に作成することによって作られてもよい。例えば、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ウェブコーティング、ドローダウンコーティング、フローコーティング、および/または押出ダイコーティングのような任意の適切な方法を用いて、この層を作成してもよい。次いで、基板382の上にあるナノカーボン材料および/または有機共役ポリマーを含む層を、パターン形成するか、または他の方法で処理し、ピクセル385の配列を作成してもよい。限定されないが、フォトリソグラフィーによるエッチング、または直接的なパターン形成のような適切なナノ加工技術を用い、ピクセル385の配列を作成してもよい。例えば、ナノインプリンティング、インクジェット印刷および/またはスクリーン印刷によって、材料に直接パターン形成してもよい。結果として、配列の各ピクセル385は、少なくとも1つの寸法(例えば、長さまたは幅)が、約100nm〜約500μm、または約1μm〜約250μm、または約5μm〜約150μmの範囲であってもよい。
【0034】
基板382のために、限定されないが、アルミニウム、ステンレス鋼、マイラー、ポリイミド(PI)、可とう性ステンレス鋼、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、可とう性ガラスのような任意の適切な材料を用いてもよい。
【0035】
図3aを再び参照すると、ナノサイズで使用可能な画像形成体380は、ピクセル配列385から1つ以上のピクセルによって、ピクセル配列の反対側にある表面388に与えられる正孔を輸送するような構成の電荷輸送層386も備えていてもよい。電荷輸送層386は、表面電荷を選択的に散逸させるために、電荷輸送層386を介して正孔または電子を輸送することが可能な材料を含んでいてもよい。特定の実施形態では、電荷輸送層386は、電気的に不活性なポリマーに溶解しているか、または分子状態で分散している、電荷を輸送する低分子を含んでいてもよい。一実施形態では、電荷を輸送する低分子を、電気的に不活性なポリマーに溶解し、ポリマーを含む均一相を作成してもよい。別の実施形態では、電荷を輸送する低分子は、分子スケールでポリマーに分散していてもよい。任意の適切な電荷を輸送する低分子または電気的に活性な低分子が、電荷輸送層386で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、電荷を輸送する低分子は、電荷輸送層とピクセルとの界面で生成する自由正孔を、電荷輸送層386を通って表面388に輸送することが可能なモノマーを含んでいてもよい。例示的な電荷を輸送する低分子としては、限定されないが、ピラゾリン、例えば、1−フェニル−3−(4’−ジエチルアミノスチリル)−5−(4”−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、ジアミン、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TM−TPD)のような他のアリールアミン、ヒドラゾン、例えば、N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン、オキサジアゾール、例えば、2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール、スチルベン、アリールアミンなどが挙げられる。例示的なアリールアミンは、以下の式/構造
【化2】

を有していてもよく、式中、Xは、アルキル、アルコキシ、アリール、およびこれらの誘導体のような適切な炭化水素、ハロゲン、またはこれらの混合物、特に、ClおよびCHからなる群から選択されるこれらの置換基、以下の式を有する分子
【化3】

であり、式中、X、Y、Zは、独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはこれらの混合物であり、Y、Zのうち、少なくとも1つは存在する。
【0036】
上に示されるように、適切な電気的に活性な低分子である、電荷を輸送する分子または化合物を、電気的に不活性なポリマー膜を形成する材料に溶解するか、または分子状態で分散させてもよい。所望な場合、電荷輸送層386の電荷輸送材料は、ポリマー電荷輸送材料、または低分子電荷輸送材料とポリマー電荷輸送材料との組み合わせを含んでいてもよい。
【0037】
任意の適切な電気的に不活性なポリマーを電荷輸送層386で用いてもよい。
【0038】
種々の実施形態では、電荷輸送層386は、側方電荷移動(LCM)に対する耐性を高めるために、限定されないが、ヒンダードフェノール酸化防止剤、ヒンダードアミン酸化防止剤、チオエーテル酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤のような、1つ以上の任意要素の材料を含んでいてもよい。電荷輸送層240は、酸化防止剤を、電荷輸送層全体を基準として約0〜約20重量%、約1〜約10重量%、または約3〜約8重量%の範囲の量で含んでいてもよい。
【0039】
電荷を輸送する分子または化合物が、電気的に不活性なポリマーに分散した電荷輸送層386は、ある程度絶縁体であってもよく、電荷輸送層386の上にある静電電荷は、その上に静電潜像を形成したり、保持したりしないように、導電性ではない。一方、電荷輸送層386は、電気的に「活性」であってもよく、正孔を注入するピクセル385の配列の各ピクセル中のナノカーボン材料および有機共役ポリマーのうち1つ以上を含む層から、正孔を注入することができ、これらの正孔を、電荷輸送層386自体を通して輸送することができ、表面388の上にある表面負電荷を選択的に放電することができる。
【0040】
任意の適切な技術および従来の技術を利用し、ピクセル385の配列を作成し、その後に、ピクセル385の配列の上に電荷輸送層386を塗布してもよい。例えば、電荷輸送層386を、1回のコーティング工程または複数回のコーティング工程で作成してもよい。これらの塗布技術としては、噴霧、浸漬コーティング、ロールコーティング、ワイヤ巻き付けロッドによるコーティング、インクジェットコーテイング、リングコーティング、グラビア印刷、ドラムコーティングなどが挙げられる。
【0041】
堆積したコーティングの乾燥は、例えば、乾燥器による乾燥、赤外線照射による乾燥、風乾などのような任意の適切な従来の技術によって行われてもよい。電荷輸送層386は、乾燥後に、厚みが約1μm〜約50μm、約5μm〜約45μm、または約15μm〜約40μmであってもよいが、この範囲からはずれた厚みを有していてもよい。
【0042】
アモルファスケイ素は、トランジスタを製造するための半導体材料として選択されてもよい。アモルファスSi TFTは、低コスト処理および成熟した製造技術のためのディスプレイ産業において、ピクセルを割り当てる要素として広範囲に用いられる。また、アモルファスSi TFTは、トランジスタの形状を変えることによって高電圧操作にも適している(参考文献:K.S.Karim et al.、Microelectronics Journal 35(2004)、311.、H.C.Tuan、Mat.Res.Symp.Proc.70(1986))。
【0043】
TFTバックプレーンを用いる潜像形成システム380は、基板382に接続するソース電極を有する複数のTFTを備えており、電荷輸送層386(すなわち、正孔輸送層)に連結した正孔注入ピクセルを駆動する。このシステム380は、表面の電位を減らすため、さらに、潜像を作成するための放電に、TFTコントロールを使用する。現像(印刷)電極を用い、電荷輸送層386を帯電させるか、またはこの層を通過するような電場を作り出してもよい。現像電極は、バイアスがかけられ、調整された磁気ブラシ、バイアスがかけられたインクロール、コロトロン、スコロトロン、ディスコロトロン、バイアスがかけられた帯電ロール、バイアス転写ローラーなどであってもよい。例えば、ニップを形成する構造の中にあるナノ画像形成体に、バイアスを調整した磁気ロールを加えることによって、直接的な印刷を行ってもよい。磁気ロールは、−Vの電圧で負のバイアスがかけられていてもよい。TFTが接地されている(V=0)か、またはわずかに正であるときに、印刷を行うことができる。この構造では、印刷電極と正孔注入ピクセル385との間に電場が作りだされる。この電場によって、正孔注入が誘発され、表面388に正の表面電荷が生じる。次いで、この正の電荷が現像され、印刷される。一方、TFTが、磁気ロールのようにバイアスがかけられている場合(−V)、磁場は作り出されない。その結果、表面388に表面電荷は生じず、印刷も行われない。
【0044】
図4(a)は、本発明の一実施形態による光データ伝送を利用するデータ輸送システムのブロック図を示す。データ輸送システム400は、回転ブラシ接合部430と、電源450と、TFTトランジスタバックプレーン440と、デジタル−アナログ変換器およびゲートを割り当てるデマルチプレクサを含む駆動する電子部品470と、フォトダイオード415と、散乱レンズ409と、光源405とを備える。
【0045】
回転ブラシ接合部430は、画像形成ドラムの内側にある電子要素に対し電力(または電位)を送る。図4(a)では、たった1個のブラシ接合部が示されているが、画像形成ドラムの軸の片方の端に1個のブラシ接合部が存在し(+Vccの電位を送る)、画像形成ドラムの軸の第2の反対側の端に第2のブラシ接合部が存在していてもよい(−Vccの電位を送る)。電源450は、ブラシ接合部から電力(または電位)を受け、駆動する電子部品470のための操作時の電圧を作り出す。本発明の実施形態では、図4(a)に示されるように、電源450は、0ボルト(接地電位)および5ボルト(低電位)を作り出し、駆動する電子部品470に供給してもよい。また、電源は、TFTトランジスタバックプレーン440を動かすために、高電位を作り出してもよい(例えば、+HVおよび−HV)。図4(a)に示されるように、0ボルトまたはGNDを、バックプレーントランジスタ440に接続してもよい。電源450は、回転画像形成ドラム410の内側領域に配置されていてもよい。
【0046】
また、駆動する電子部品470は、回転ドラム410の内側に配置されていてもよい。駆動する電子部品470は、薄膜トランジスタ(TFT)のバックプレーン440に連結している。本発明の実施形態では、TFTのバックプレーン440は、二次元配列で作られている。TFTのバックプレーン440は、回転画像形成ドラム410に接続するナノ画像形成体の一部分であってもよく、または、回転画像形成ドラム410の一部分であってもよい。
【0047】
デジタルデータが光源405に伝送される。光源は、LEDまたはレーザであってもよい。光源405は、デジタルデータをエンコードし、これを、散乱レンズ409を備える半透明材料に伝送する。光学的にエンコードされたデジタルデータを、半透明材料/散乱レンズを介してフォトダイオード415に伝送する。フォトダイオード415は、デジタルビットをあらわす光エネルギーを電気エネルギーに変換し、画像のデジタルビット/データをあらわすデジタルデータ信号を作成する。図4(a)に示される本発明の実施形態では、フォトダイオード415は、駆動する電子部品/デマルチプレクサ470にデジタルデータを供給する。デジタルデータはシリアル伝送される。当業者に既知の任意のシリアルデータ伝送を利用してもよい。
【0048】
駆動する電子部品470が受信したデジタルデータ信号を、駆動する電子部品/デマルチプレクサ470内のデジタル−アナログ変換器によってアナログフォーマットに変換する。駆動する電子部品/デマルチプレクサ470中のデマルチプレクサは、変換されたデータ信号を、TFTのバックプレーンの一部分であるリードまたは接続部に割り当てる。リードまたは接続部は、代表的な画像を作成する個々の割り当て可能なピクセルに連結している。
【0049】
図4(b)は、本発明の一実施形態による、潜像を作成する装置または直接印刷するための装置の中の薄膜トランジスタの配列を示す。示されるように、図4(b)は、TFTバックプレーンの一部分であるTFT配列440を示す。図4(b)には、5行5列の長方形のマトリックスのみが示されている。TFT配列440は、コンピュータ444によってコントローラ442に供給されるデジタル情報から潜像を作り出す。本発明の一実施形態では、コンピュータ444は、デジタル印刷ファイルをコントローラまたはデジタルフロントエンド(DFE)442に送る。
【0050】
コントローラ442は、デジタル信号をCMYKデジタルビットに分解するだろう。コントローラは、このCMYKデジタルビットを光源405に送る。コントローラ442は、シリアル伝送機器に連結していてもよい。データは、任意のデジタルチャネル(限定されないが、シリアルUSBケーブルまたは他のシリアルプリンタケーブルを含む)によって伝送されてもよい。
【0051】
光源405は、レーザまたはLEDであってもよい。光源は、デジタルデータを受信し、このデジタルデータを光学的にエンコードし、光学的にエンコードされたデジタルデータ信号を作成する。このデジタルデータは、任意の数の調整スキームにしたがってエンコードされてもよい。光源405は、光学的にエンコードされたデジタルデータ信号を伝送する。
【0052】
半透明媒体409は、伝送された光学的にエンコードされたデジタルデータ信号を受信し、光学的にエンコードされたデジタルデータ信号をフォトダイオード415に送る。フォトダイオード415は、光学的にエンコードされたデジタルデータ信号を検出し、この信号をデジタルデータ信号、例えば、制御信号およびピクセル電圧に変換する。
【0053】
また、コントローラは、回転式接合部443を介し、回転画像形成ドラムの中の電源450に操作時の電圧レベルを送る。本発明の実施形態では、回転式接合部443を通って加えられるVccは、高電圧である。具体的には、Vccは、100ボルト〜400ボルトであってもよい。本発明の他の実施形態では、Vccは、5ボルト〜200ボルトであってもよい。電源は、例えば、回転式接合部443を介して、ライン446および447でVccおよび接地電位を送る。本発明の実施形態では、電源450は、+5ボルトの電位(低電位)と、接地電位を送る。低電位と接地電位を、駆動する電子部品(例えば、デコーダ472、デジタル−アナログ変換器476、リフレッシュ回路479)に送ってもよい。また、電源450は、高電位を作り出す。高電位は、TFTトランジスタのバックプレーンに送られるが、図4(b)には示されていない。電源は、デコーダ472、デジタル−アナログ変換器473、リフレッシュ回路479に操作時の電圧を加える。
【0054】
デジタルデータ信号には、ピクセルの位置(すなわち、制御信号)と、ピクセル電圧が含まれている。本発明の実施形態では、コントローラ442は、デジタル情報を、光リンク(例えば、光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415)を介して複数のインターフェース機器(デコーダ472、リフレッシュ回路479、デジタル−アナログ(D/A)変換器476を含む)に伝送することによって、光リンクを介してTFT配列440の操作を制御/命令する。デコーダ472、リフレッシュ回路479、D/A変換器476は、駆動している電子部品と呼ばれることがある。
【0055】
光リンクを介してデジタルデータ信号を受信した後、デコーダ472は、行および列の位置によってTFT配列440内の個々のピクセルセルを選択して潜像を作り出す信号を作成する。具体的には、コントローラ442は、光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415を介してデジタルシリアルデータを送り、バス437によってデコーダ472に情報を送る。この実施形態では、コントローラ442は、ピクセル電圧と位置情報をデジタル化したものを作成し、このデジタル化されたピクセル電圧を、光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415を経由して、バス438を介してアナログ(D/A)変換器476に送る。D/A変換器476は、デジタル化されたピクセル電圧を、1つ以上の選択された列Y1〜Y5に配置されているアナログ電圧に変換する。ナノ画像形成体をリフレッシュするために、コントローラ442は、アドレスデータを光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415を経由してシリアル伝送し、次いで、バス439を介してリフレッシュ回路479に送り、行Z1〜Z5を選択する。リフレッシュ回路479は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)のコンデンサを再帯電させるのに用いられるメモリのリフレッシュ回路と同様の様式で動く。
【0056】
本発明の実施形態では、TFTバックプレーン440の操作時のバイアス電圧は、+20ボルト〜−200ボルトの範囲であってもよい。本発明の代替的な実施形態では、TFTバックプレーン440の操作時のバイアス電圧は、+100ボルト〜−400ボルトの範囲であってもよい。本発明の実施形態では、ピクセルの大きさは、10ミクロン×10ミクロン〜30ミクロン×30ミクロンの範囲であってもよい。本発明の他の実施形態では、ピクセルの大きさは、1ミクロン×1ミクロン〜200ミクロン×200ミクロンの範囲であってもよい。
【0057】
図4(b)に示される実施形態では、各ピクセルパッド478は、薄膜トランジスタ477に接続しており、正孔注入ピクセルを有する接合部の中にコンデンサを備えている。半導体材料(例えば、アモルファスケイ素(a−Si:H))は、トランジスタの望ましい操作特性および加工特性に十分に適している。広い領域のフォーマットに及ぶアクティブ型およびパッシブ型の薄膜機器の製造コストが比較的安価であるという観点から(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ガラス、ポリイミド、または他の適切な基板)、費用対効果の高いTFT配列440を得ることが可能である。さらに、TFTバックプレーン440は、高電圧コンデンサおよびデコーダ472と同じ集積回路の上にある高電圧薄膜トランジスタに組み込まれていてもよい。
【0058】
配列410の示されている部分の操作は、以下のとおりである。プリントエンジン444は、デジタル画像情報をTFT配列410に供給する。さらに図4(b)を参照すると、プリントエンジン444は、まず、デジタルフロントエンドまたはコントローラ442によって、デジタルプリントをCMYKカラービットに変換する。コントローラ442は、光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415を介し、駆動している電子部品の一部であるデコーダ472に情報をシリアル伝送する。このデジタル信号は、画像の一部分を作成するために帯電されるべきピクセル位置およびバイアス電圧に関する情報(例えば、(1)X行とY列の交差点、(2)X行とY列の交差点、(3)X行とY列の交差点)を有しているだろう。具体的には、プリントエンジン444は、ピクセルを帯電させるための行を選択するために、2桁のコードX、X、Xを送る。この2桁のコードは、コントローラ442を通り、次いで、光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415を通過し、バスライン437を介してデコーダ472を通る。図4(b)の実施形態では、デコーダ472は、伝送された2桁のコードを受信し、X行、X行、X行のトランジスタ420にゲートバイアス電圧を加える。プリントエンジンコンピュータ444は、デジタル化されたピクセル電圧をコントローラ442に送る。コントローラ442は、このデジタル化されたピクセル電圧を、光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415を介し、バスライン438によってD/A変換器476に送る。D/A変換器476は、このデジタル入力値に対応するアナログ出力を行ない、Y列、Y列、Y列に接続した高電圧トランジスタのソース電極に対し、アナログ出力を行う。図4に示されているように、Xゲートバイアス電極と、Y列にかかる電圧との組み合わせによって、Xゲートバイアス電極と、Y列にかかる電圧との組み合わせによって、さらに、Xゲートバイアス電極と、Y列にかかる電圧との組み合わせによって、3個のトランジスタのみ(一般的には、参照番号460、462、464で示されている)がONに切り替わる。したがって、トランジスタ460、462、464のドレインにのみアナログ電圧が生じ、参照番号461、463、465で示されるピクセルパッドに含まれる高電圧コンデンサが帯電する。このプロセスを、望ましい潜像が作られるまで、割り当てられているそれぞれのピクセルについて繰り返す。時間経過に伴い、コンデンサは放電し始めるだろう。電荷を保存するために、各ピクセルセルは、リフレッシュ回路479によってリフレッシュされなければならず、バスライン439を介し、光源405、半透明媒体409、フォトダイオード415から信号を受け取る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明媒体で、コントローラによって駆動する光源から伝送されてきた、光学的にエンコードされたシリアル伝送されたデジタル印刷信号を受信することと、
前記半透明媒体から受信した、光学的にエンコードされたシリアル伝送されたデジタル印刷信号を光検出器によって検出することと、
前記光学的にエンコードされたデジタル印刷信号を、駆動信号およびピクセル電圧を含むデータ信号に変換することと、
回転式電気接合部を介し、TFT駆動電位を含む操作時の電圧を受信することと、
受信したデータ信号に応答して、TFTバックプレーン内の多数の薄膜トランジスタ(TFT)を個々に割り当てるための駆動信号を伝送することと、
受信したデータ信号に応答して、ピクセル電圧を送り、TFTバックプレーン内の個々のTFTにバイアスをかけ、静電潜像を作成することと、を含み、前記TFT駆動電位が、前記TFTバックプレーンに伝送される、静電潜像を作成する方法。
【請求項2】
デジタルデータ信号を受信し、エンコードされた光データ信号を伝送するための光源と、
選択信号およびデジタルピクセル電圧に対応する前記エンコードされた光データ信号を受信し、前記受信したデジタルデータ信号を伝送する光検出器と、
前記コントローラから操作時の電位を受信するような構成の回転式接合部と、
前記回転式接合部から前記操作時の電位を受信し、低電位、接地電位、高電位を作り出す電源と、
低電位、接地電位、選択信号、前記デジタルピクセル電圧を受信し、バイアス信号およびピクセル電圧を作り出すような構成の、駆動する電子部品と、
薄膜トランジスタ(TFT)バックプレーン内に整列し、前記高電位を受信し、前記バイアス信号および前記ピクセル電圧を受信し、前記バイアス信号およびピクセル電圧に応答して、前記正孔注入ピクセルを駆動させ、潜像を作成するような構成の複数のTFTと、を備える、潜像を印刷するための装置。
【請求項3】
半透明媒体をさらに備え、前記半透明媒体が、前記光源から前記光学的にエンコードされたデジタルデータ信号を受信し、前記光学的にエンコードされたデジタルデータ信号をフォトダイオードに伝送する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記半透明媒体の一部分が、前記エンコードされた光データ信号を受信するときに、前記半透明媒体が、半透明媒体を照射するための散乱材料を含んでいる、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記光源が発光ダイオードである、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記光源がレーザである、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記光データの前記エンコードおよび伝送が、波長または周波数の調整プロトコルを利用する、請求項2に記載の装置。おそらく、このプロトコルを用い、光源を介することによってこれを請求する。
【請求項8】
前記光データのエンコードおよび伝送が、増幅調整プロトコルを利用する、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記TFTバックプレーンが、回転ドラムまたはベルトに接続する構成になっており、さらに、静電潜像を着色した画像に変換するような構成の印刷ステーションをさらに備える、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
コンピュータからデジタル画像を受信し、前記受信したデジタル画像ファイルに対応するデジタル信号を作成し、電位を作り出すような構成のコントローラと、
前記デジタル信号を受信し、このデジタル信号を、調整プロトコルを用いて光学的にエンコードし、前記光学的にエンコードされたデジタルデータ信号を伝送するような構成の光源と、
前記光学的にエンコードされたデジタルデータ信号を受信し、前記エンコードされたデジタルデータ信号をデコードし、前記受信したデジタル画像ファイルに対応するデジタルデータ信号を作成するような構成のフォトダイオードと、
前記電位を受け取り、この電位を送るような構成の回転式接合部と、
前記フォトダイオードから伝送された前記デジタルデータ信号を受信し、前記伝送されたデジタルデータ信号には、静電潜像を作成するために、バックプレーン中の個々の薄膜トランジスタ(TFT)にバイアスをかける制御信号とピクセル電圧とが含まれている、駆動する電子部品と、
前記回転式接合部から前記電位を受け取り、前記駆動する電子部品に供給される第1の電位と接地電位とを作り出し、前記TFTのバックプレーンを駆動するための高電位を作り出す電源とを備える、印刷機器。


【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2012−228875(P2012−228875A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87682(P2012−87682)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】