直流漏電検出装置
【課題】定格範囲内の漏洩電流を高感度に検出でき、定格範囲を超える地絡事故時が生じた場合でも地絡事故を確実に判定できる直流漏電検出装置を提供する。
【解決手段】直流漏電検出装置101は、閉磁路を形成する環状の磁性体コア3、磁性体コア3に巻回された励磁巻線1、および磁性体コア3に巻回された検出巻線2を有し、少なくとも2本の被測定電流線4が磁性体コア3を貫通しているフラックスゲート電流センサ52と、励磁巻線1のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線1に通電するための電流制御回路6と、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、検出巻線2の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路8と、電圧検出回路7の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【解決手段】直流漏電検出装置101は、閉磁路を形成する環状の磁性体コア3、磁性体コア3に巻回された励磁巻線1、および磁性体コア3に巻回された検出巻線2を有し、少なくとも2本の被測定電流線4が磁性体コア3を貫通しているフラックスゲート電流センサ52と、励磁巻線1のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線1に通電するための電流制御回路6と、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、検出巻線2の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路8と、電圧検出回路7の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電路の漏洩電流及び過度な漏電を非接触で検出できる直流漏電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器や配線ケーブルは十分絶縁対策が施されているものの、経年劣化、ケーブルへの応力、機器の異なる取扱いなどにより絶縁劣化が生じ、絶縁劣化箇所を介して漏洩電流が流れ、人体への感電や発熱による火災事故が発生する要因となる。こうした漏電事故は、漏電検出センサである零相変流器(ZCT: Zero-phase Current Transformer)が内蔵された漏電遮断器や漏電リレーを電路に備えることで抑止することができる。ただし、零相変流器の動作原理上、交流の漏洩電流しか検出することができず、例えば太陽光発電システムや電気自動車システムといった直流電路系統においては、零相変流器が使用できない。
【0003】
従来、直流電流センサとして、一部空隙部を設けた環状の磁性体コアに計測対象電流線を貫通させ、空隙部における磁界を、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子)等の磁気センサで検出し、センサ出力値から電流値を演算する手法が知られている。ただし、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子)は微小な磁界量を検出できないため、往路復路の差分電流や三相電流の和分電流といった零相電流、すなわち漏電を検出することは難しいのが現状である。
【0004】
一方、ホール素子や磁気抵抗素子に比べて、磁界検出感度や温度依存性に優れる磁気センサとしてフラックスゲート磁気センサが知られている。例えば、特許文献1の第1図に示されているように、電流センサとして応用した形態であれば、漏電といった微小電流を検出するのにも適しており、動作原理上、直流および交流の電流が検出できる。
【0005】
従来のフラックスゲート電流センサは、閉磁路を形成した高透磁率を有する環状の磁性体コアに励磁巻線及び検出巻線を巻回し、被測定電流が流れる電流線を閉磁路内に貫通させた構造を有する。
【0006】
その動作原理について説明する。励磁巻線に交流励磁電流を通電し、磁性体コアを周期的に磁気飽和させる。被測定電流値が零である場合、励磁電流により発生する磁界変化は、磁性体コア材のB−H曲線の原点に関して対称となる。検出巻線にはファラデーの電磁誘導則に従い、検出巻線を巻回した磁性体コア内の磁束量の変化に伴い出力電圧が発生するため、磁性体コアが磁気飽和した磁界領域において出力電圧は零となる。すなわち、出力電圧は周期的に零電圧を有した波形となり、零電圧となる時間間隔は常に一定で、周期はB−H曲線の原点対称性から励磁周波数の2倍となる。
【0007】
一方、被測定電流値が零でない場合、励磁電流により発生する励磁磁界に、被測定電流線から発生する磁界が重畳し、その磁界変化は、磁性体コア材のB−H曲線の原点に関して対称ではない。そのため、ある一定周期の励磁磁界で磁性体コアを励磁したとしても、出力電圧が零である時間間隔は一定とならず、磁界変化の挙動が正側および負側に変化した場合で異なるようになる。従って、出力電圧が零である時間間隔の差分から被測定電流値を演算することができ、被測定電流線での電流値を非接触で計測することができる。
【0008】
さらに、フラックスゲート電流センサの検出精度を向上させるために、例えば特許文献2の図1に示されているような励磁磁界方向と検出磁界方向を直交させた構造や特許文献3の図2に示されているような2つの磁性体コアにそれぞれ逆向きの励磁磁界を印加し、検出巻線を一体巻回し差動化させた構造など、励磁磁界が検出磁界に与える影響を除去もしくは相殺させた構造が提案されている。
【0009】
なお、特許文献4〜11は、直流電流の非接触検出に関するものであるが、動作原理や演算手法の点で本発明と相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実昭59−92532号公報(1頁、図1)
【特許文献2】特開平6−281674号公報(4頁16行、図1)
【特許文献3】特開2001−228181号公報(3頁17行、図2)
【特許文献4】特開平11−64391号公報
【特許文献5】特開平5−10980号公報
【特許文献6】特開平2−287266号公報
【特許文献7】特開昭58−148966号公報
【特許文献8】特開2000−266786号公報
【特許文献9】特開平7−312823号公報
【特許文献10】特開平3−251772号公報
【特許文献11】特開平6−18568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フラックスゲート電流センサを漏電検出用の電流センサとして使用する場合、単相交流では往路復路の電流線をそれぞれ環状の磁性体コアに貫通させ、往路復路の電流線からそれぞれ生じる磁界の差分、もしくは3相交流では各電流線からそれぞれ生じる磁界の差分、すなわち比較的微弱な磁界をセンサで検出することになる。
【0012】
一方、復路電流がアースを介して流れた場合や、3相中1相ないしは2相の電流がアースを介して流れた場合など、地絡事故が生じて過漏電が発生している状況下では、往路電流線から生じる磁界や3相バランスがくずれた磁界は比較的強くなる。この場合でも、強磁界を検出して、事故発生から瞬時に対象電路の給電を遮断する必要がある。
【0013】
しかしながら、フラックスゲート電流センサの動作原理上、強磁界の印加によって磁性体コアが完全に磁気飽和してしまう環境下では、センサ出力電圧は零となってしまい、漏電有無の識別ができないという課題がある。
【0014】
本発明の目的は、定格範囲内の漏洩電流を高感度に検出でき、定格範囲を超える地絡事故時が生じた場合でも地絡事故を確実に判定できる直流漏電検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る直流漏電検出装置は、
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電圧検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る直流漏電検出装置は、
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電圧検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また本発明に係る直流漏電検出装置は、
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電流検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また本発明に係る直流漏電検出装置は、
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電流検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁性体コアが磁気飽和した場合、磁性体コアの比透磁率は空気の比透磁率とほぼ同等となるため、励磁巻線のインダクタンスが急激に低下し、結果的に励磁巻線のインピーダンスは急激に低下する。そこで、励磁巻線に印加される電圧または電流を検出することによって、磁性体コアの磁気飽和の有無を判定でき、その結果、差分電流または零相電流が大きい地絡事故、すなわち過漏電の発生有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】フラックスゲート電流センサの動作原理を示す説明図である。
【図3】励磁磁界と磁束密度との関係を示す説明図であり、図3(a)は被測定電流値が零である場合、図3(b)は被測定電流値が零でない場合を示す。
【図4】検出巻線の出力電圧波形を示すグラフである。
【図5】フラックスゲート電流センサの入出力特性の一例を示すグラフである。
【図6】磁性体コアの磁界に対する比透磁率特性の一例を示すグラフである。
【図7】励磁巻線に通電される電流波形の一例を示すグラフである。
【図8】磁性体コアの磁気特性の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2を示す構成図である。
【図10】磁気センサを用いた電流センサの一例を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3を示す構成図である。
【図12】本発明の実施の形態4を示す構成図である。
【図13】本発明の実施の形態5を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示す構成図である。直流漏電検出装置101は、センサ駆動回路51と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路53などを備える。
【0022】
フラックスゲート電流センサ52は、閉磁路を形成する環状の磁性体コア3と、磁性体コア3に巻回された励磁巻線1と、磁性体コア3に巻回された検出巻線2などを備える。磁性体コア3のほぼ中心を貫通するように、少なくとも2本の被測定電流線4が配置される。直流電路または単相交流電路の場合、往路と復路で計2本の被測定電流線4が配置され、3相交流電路の場合、U相、V相、W相の計3本の被測定電流線4が配置される。
【0023】
センサ駆動回路51は、所定の周波数fの基準交流波形を発生する交流電源5と、基準交流波形に比例した電流を励磁巻線1に通電するための電流制御回路6などを備える。
【0024】
検出回路53は、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、検出巻線2の出力電圧から、特定の周波数成分、即ち、基準交流波形の周波数fの2倍に相当する周波数成分2fのみを抽出するフィルタ回路8と、電圧検出回路7の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0025】
図2は、フラックスゲート電流センサ52の動作原理を示す説明図である。直流電源21と負荷機器22とが往路復路の電流線4を経由して電気接続されている。漏電を検出する場合、図2(a)に示すように、往路復路の電流線4が磁性体コア3の穴を貫通するように配置される。往路電流値と復路電流値が同一である場合、両方の電流線4に流れる電流の向きが逆であるため、電流線近傍に生じる磁界は相殺され、結果的に電流線近傍の磁界は零となる。一方、負荷機器22で漏洩電流(漏電)23が生じた場合、復路の電流線4に流れる電流値が往路の電流値に比べて小さくなるため、結果的に、往路電流値と復路電流値の差分に相当する磁界が電流線近傍に発生することになる。
【0026】
本実施形態では、電流線近傍に生じる磁界を非接触で検出するセンサとして、フラックスゲート磁気センサの技術を応用している。フラックスゲート磁気センサは、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子やGMR素子)といった磁気センサに比べてより微小な磁界を検出することができ、温度依存性も良いことが知られている。
【0027】
図2(b)は、動作説明のために、1本の電流線4が磁性体コア3を貫通する場合を示している。フラックスゲート電流センサ52は、例えば、珪素鋼板やPCパーマロイといった高透磁率材料からなる環状の磁性体コア3に、励磁巻線1及び検出巻線2を巻回した構造である。励磁巻線1には交流電流を通電し、磁性体コア3が周期的に磁気飽和するように励磁する。
【0028】
図3は、励磁磁界と磁性体コア3の磁束密度との関係を示す説明図であり、図3(a)は被測定電流値が零である場合、図3(b)は被測定電流値が零でない場合を示す。図4は、検出巻線2の出力電圧波形を示すグラフである。
【0029】
電流制御回路6が基準交流波形に対応した電流を励磁巻線1に通電した状態で、被測定電流値が零の場合、図3(a)に示すように、正負対称の励磁磁界31が磁性体コア3に印加される。磁性体コア3は、ある一定以上の磁界に対して磁束密度が増加しない磁気特性(B−H特性)32を有するため、励磁磁界31が一定レベルを超えた時点で磁束密度が飽和した波形を示す磁束変化33が得られる。検出巻線2は、ファラデーの電磁誘導則に従って、磁性体コア内の磁束変化33に応じた電圧を出力する。
【0030】
図4(a)に示すように、磁性体コア3の磁束密度が飽和した期間では検出巻線2の出力電圧は零になり、磁束変化33の正および負の傾斜に対応するように正および負の電圧値が交互に現れる。磁性体コア3の磁気特性が原点に関して対称であるため、検出巻線2の出力電圧は、励磁磁界周波数fの2倍に相当する周波数成分2fが発生することが判る。そこで、フィルタ回路8において、例えば、バンドパスフィルタなどを用いて、出力電圧波形から周波数成分2fを抽出することによって、被測定電流値を演算することができる。
【0031】
一方、被測定電流値が零でない場合、電流線近傍では相殺されず残った磁界が生じることになる。そのため、電流線4から生じる磁界が励磁磁界に重畳され、図3(b)に示すように、バイアス磁界を有した交流磁界34が磁性体コア3に印加される。このとき磁束密度の飽和期間が正側および負側で相違するようになり、検出巻線2の出力電圧は、図4(b)に示すように、零電圧の時間間隔が一定ではなく、バイアス磁界の極性に応じて異なる波形になる。こうした変化は、フィルタ回路8において出力電圧波形から周波数成分2fを抽出することによって、被測定電流値を演算することができる。
【0032】
図5は、フラックスゲート電流センサ52の入出力特性の一例を示すグラフである。縦軸はフィルタ回路8の出力電圧波形の実効値、横軸は被測定電流線4の漏洩電流の値であり、両者は比例関係にあることが判る。
【0033】
以上の説明では、磁性体コア3には歪みのない正弦波磁界を印加した場合を例示したが、磁性体コア3に印加する励磁磁界は、励磁巻線1に通電する電流値、励磁巻線数、磁性体コアの平均磁路長が既知であれば計算することが可能である。ただし、励磁巻線1は環状の磁性体コア3に巻いており、磁性体の比透磁率は、例えば、図6に示すように、印加する磁界強度に対して一定の値にはならない。すなわち、励磁巻線1に通電する電流値に応じて磁性体コアの比透磁率は変化するため、励磁電流は、図7(a)に示すように、歪んだ波形となる。
【0034】
そこで、電流制御回路6として、励磁巻線3のインダクタンス、すなわちインピーダンス変化に依存しない励磁電流波形を供給できる回路、例えば、バイラテラル型電圧−電流変換回路で構成することが好ましい。この場合、例えば、基準交流波形として正弦波の電圧波形を電流制御回路6に入力した場合、励磁巻線1には歪みのない正弦波電流波形を通電することができる。
【0035】
上述のように、フラックスゲート電流センサ52の動作原理上、計測できる電流範囲は、バイアス磁界が重畳した場合でも正負必ず磁気飽和が得られる磁界領域であるため、図8に示した範囲±αとなる。従って、範囲±αを超えるような大きなバイアス磁界が磁性体コア3に印加されると、漏洩電流を高精度に計測することができない。
【0036】
さて、電流センサとして運用する場合は、定格範囲外の計測精度を補償する必要は無く、仮に定格範囲外の電流を通電した場合にセンサが壊れないということが製品仕様に盛り込まれることが想定される。しかしながら、漏電センサとして運用する場合、電流センサとして運用する場合とは少し事情が異なり、往路復路の電流線4から生じる磁界の差分を検出する必要がある。
【0037】
例えば、図2(a)で示すように、負荷機器22からアースを介して漏電23が生じ、復路電流値に比べて漏洩電流が大きい地絡事故、いわゆる過漏電が発生することも考えられる。この場合、復路電流による相殺が小さくなり、往路電流線から生じる磁界の大部分が磁性体コア3に印加されるため、磁性体コア3は完全に磁気飽和し、検出巻線2の出力電圧は常に零になる現象が生じることが予測できる。磁性体コア3が磁気飽和した場合、磁性体コア3の比透磁率は空気の比透磁率とほぼ同等となるため、励磁巻線1のインダクタンスが急激に低下し、結果的に励磁巻線1のインピーダンスは急激に低下する。このとき、電流制御回路6により励磁巻線1のインピーダンス変化に関わらず一定振幅の電流を励磁巻線1に通電しているため、オーム則に従い、励磁巻線1に印加する電圧が急激に低下する。
【0038】
そこで、電圧検出回路7が励磁巻線1に印加される電圧、例えば、励磁電圧波形のピーク値を検出し、漏電判定回路9は、検出されたピーク値の変化を判定することによって過漏電の発生有無を判定することができる。こうしたピーク検出回路は、例えば全波整流回路や平滑回路などから構成できる。
【0039】
漏電判定回路9は、例えば、A/Dコンバータ、マイクロプロセッサ、メモリなどで構成され、フィルタ回路8の出力信号および電圧検出回路7の出力信号をいずれもA/Dコンバータを介してデジタル信号としてメモリに取り込むことができる。電圧検出回路7の出力信号レベルが所定の定格範囲内(例えば、図8の±αに相当する範囲内)であれば、フィルタ回路8の出力信号から漏電量を演算できる。一方、電圧検出回路7の出力信号が所定の定格範囲外(例えば、図8の±αを超える範囲)であれば、地絡事故等による過漏電が発生したと考えられ、電圧検出回路7の出力信号から過漏電の発生有無を判定することができる。
【0040】
過漏電の発生有りと判定した場合、図示はしていないが、演算した漏電量や過漏電の発生有無に応じて漏電遮断器や漏電リレーなどを用いて電路を遮断したり、リレー信号を接続機器に発令したりすることが可能である。代替として、漏電量を演算する必要がない場合は、コンパレータ等を用いて漏電量の2値判定を行って、地絡事故の有り無し判定を実施することも可能である。
【0041】
さらに、本実施形態では、電圧検出回路7が励磁巻線1に印加される電圧波形のピーク値を検出し、漏電判定回路9がこのピーク値の変化を判定する場合を例として説明したが、代替として、電圧検出回路7が励磁巻線1に印加される電圧波形の実効値を検出し、漏電判定回路9がこの実効値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することも可能である。
【0042】
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2を示す構成図である。直流漏電検出装置102は、センサ駆動回路51と、電流センサ62と、検出回路63などを備える。
【0043】
電流センサ62は、図10に示すように、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13などを備える。磁気センサ13は、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子)などで構成される。磁性体コア12のほぼ中心を貫通するように、少なくとも2本の被測定電流線4が配置される。直流電路または単相交流電路の場合、往路と復路で計2本の被測定電流線4が配置され、3相交流電路の場合、U相、V相、W相の計3本の被測定電流線4が配置される。
【0044】
センサ駆動回路51は、図1と同様に、所定の周波数fの基準交流波形を発生する交流電源5と、基準交流波形に比例した電流を励磁巻線1に通電するための電流制御回路6などを備える。
【0045】
検出回路63は、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、磁気センサ13の出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路14と、電圧検出回路7の出力および励磁成分除去回路14の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0046】
本実施形態では、磁気センサ13を利用した電流センサ62を使用しており、地絡事故等により過漏電が発生した場合、磁性体コア12は磁気飽和する。ただし、ホール素子やMR素子は出力信号が飽和するだけであり、零にはならない。
【0047】
磁気センサ13は、検出対象磁界だけでなく励磁磁界成分も検出してしまうため、検出回路63に励磁成分除去回路14を設けている。励磁成分除去回路14として、例えば、励磁磁界の周波数成分fを除去するローパスフィルタが使用できる。
【0048】
また、磁性体コア12の比透磁率が磁界強度に対して変化する場合、電流制御回路6として、励磁巻線3のインダクタンス、すなわちインピーダンス変化に依存しない励磁電流波形を供給できる回路、例えば、バイラテラル型電圧−電流変換回路で構成することが好ましい。この場合、例えば、基準交流波形として正弦波の電圧波形を電流制御回路6に入力した場合、励磁巻線1には歪みのない正弦波電流波形を通電することができる。
【0049】
電圧検出回路7は、励磁巻線1に印加される電圧波形のピーク値を検出し、漏電判定回路9がこのピーク値の変化を判定するように構成してもよく、あるいは、励磁巻線1に印加される電圧波形の実効値を検出し、漏電判定回路9がこの実効値の変化を判定するように構成してもよい。
【0050】
漏電判定回路9は、図1と同様に、例えば、A/Dコンバータ、マイクロプロセッサ、メモリなどで構成され、フィルタ回路8の出力信号および電圧検出回路7の出力信号をいずれもA/Dコンバータを介してデジタル信号としてメモリに取り込むことができる。電圧検出回路7の出力信号レベルが所定の定格範囲内(例えば、図8の±αに相当する範囲内)であれば、フィルタ回路8の出力信号から漏電量を演算できる。一方、電圧検出回路7の出力信号が所定の定格範囲外(例えば、図8の±αを超える範囲)であれば、地絡事故等による過漏電が発生したと考えられ、電圧検出回路7の出力信号から過漏電の発生有無を判定することができる。
【0051】
過漏電の発生有りと判定した場合、図示はしていないが、演算した漏電量や過漏電の発生有無に応じて漏電遮断器や漏電リレーなどを用いて電路を遮断したり、リレー信号を接続機器に発令したりすることが可能である。代替として、漏電量を演算する必要がない場合は、コンパレータ等を用いて漏電量の2値判定を行って、地絡事故の有り無し判定を実施することも可能である。
【0052】
なお、上述の実施の形態1,2において、磁性体コアに対して励磁巻線や検出巻線を局所的に巻回した場合を例示したが、磁性体コアの全周に渡って均等に分布するように巻回してもよく、さらに、磁性体コアへの巻線応力を緩和させるために、樹脂製のケースを介在させてケースの上から巻線を巻回する形態でも構わない。
【0053】
また、実施の形態1,2において、直流漏電の場合を例示したが、交流漏電の場合でもA/Dコンバータのサンプリング条件を満足すれば問題なく適用可能であり、サンプリング条件は基準交流波形の周波数に基づいて決定できる。
【0054】
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3を示す構成図である。直流漏電検出装置103は、センサ駆動回路51と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路64などを備える。本実施形態は、実施の形態1と同様な構成を有するが、検出回路64において位相シフト検出回路10を追加している点で相違する。
【0055】
検出回路64は、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、電圧検出回路7で検出された電圧波形と交流電源5からの基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路10と、検出巻線2の出力電圧から、特定の周波数成分、即ち、基準交流波形の周波数fの2倍に相当する周波数成分2fのみを抽出するフィルタ回路8と、位相シフト検出回路10の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0056】
地絡事故等により過漏電が発生して磁性体コア3が磁気飽和した場合、実施の形態1で説明したように、励磁巻線1のインピーダンス低下によって励磁巻線1への印加電圧も低下する。このとき励磁巻線1への印加電圧波形の位相も変化する。本実施形態では、基準交流波形に対する印加電圧波形の位相変化を検出するための位相シフト検出回路10を設けることによって、漏電判定回路9は過漏電の発生有無を判定することができる。
【0057】
なお本実施形態では、フラックスゲート電流センサ52を用いた場合を例示したが、代替として、実施の形態2と同様に、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13を備えた電流センサ62を用いても構わない。
【0058】
実施の形態4.
図12は、本発明の実施の形態4を示す構成図である。直流漏電検出装置104は、センサ駆動回路61と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路65などを備える。本実施形態は、実施の形態1と同様な構成を有するが、電流制御回路6の代わりに、励磁巻線1のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線1に印加するための電圧制御回路15を備え、さらに、電圧検出回路7の代わりに、励磁巻線1に通電される電流値を検出する電流検出回路16を備えている点で相違する。
【0059】
センサ駆動回路61において、交流電源5は、所定の周波数fの基準交流波形を発生する。電流制御回路6は、基準交流波形に比例した電圧を励磁巻線1に印加する機能を有し、例えば、低い出力インピーダンスの増幅器などで構成でき、印加電圧は負荷のインピーダンス変化に依存しなくなる。
【0060】
地絡事故等により過漏電が発生して磁性体コア3が磁気飽和した場合、実施の形態1で説明したように、励磁巻線1のインピーダンスが急激に低下する。このとき励磁巻線1への印加電圧が固定されているため、オーム則に従い、励磁巻線1に通電される電流値が急激に増加する。ただし、電流値の上限は、電圧制御回路15の供給電源能力で決定される。
【0061】
そこで、電流検出回路16が励磁巻線1に通電される電流値、例えば、励磁電流波形のピーク値または実効値を検出し、漏電判定回路9は、検出されたピーク値または実効値の変化を判定することによって過漏電の発生有無を判定することができる。
【0062】
なお本実施形態では、フラックスゲート電流センサ52を用いた場合を例示したが、代替として、実施の形態2と同様に、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13を備えた電流センサ62を用いても構わない。
【0063】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5を示す構成図である。直流漏電検出装置105は、センサ駆動回路61と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路66などを備える。本実施形態は、実施の形態4と同様な構成を有するが、検出回路66において位相シフト検出回路17を追加している点で相違する。
【0064】
検出回路66は、励磁巻線1に通電される電流値を検出する電流検出回路16と、電流検出回路16で検出された電流波形と交流電源5からの基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路17と、検出巻線2の出力電圧から、特定の周波数成分、即ち、基準交流波形の周波数fの2倍に相当する周波数成分2fのみを抽出するフィルタ回路8と、位相シフト検出回路17の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0065】
地絡事故等により過漏電が発生して磁性体コア3が磁気飽和した場合、実施の形態4で説明したように、励磁巻線1のインピーダンス低下によって、励磁巻線1に通電される電流値が増加する。このとき励磁巻線1の励磁電流波形の位相も変化する。本実施形態では、基準交流波形に対する励磁電流波形の位相変化を検出するための位相シフト検出回路117を設けることによって、漏電判定回路9は過漏電の発生有無を判定することができる。
【0066】
なお本実施形態では、フラックスゲート電流センサ52を用いた場合を例示したが、代替として、実施の形態2と同様に、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13を備えた電流センサ62を用いても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1,11 励磁巻線、 2 検出巻線、 3,12 磁性体コア、
4 被測定電流線、 5 交流電源、 6 電流制御回路、 7 電圧検出回路、
8 フィルタ回路、 9 漏電判定回路、 10,17 位相シフト回路、
13 磁気センサ、 14 励磁成分除去回路、 15 電圧制御回路、
16 電流検出回路、 21 直流電源、 22 負荷機器、
23 漏洩電流(漏電)、 31 励磁磁界、 32 磁気特性(B−H特性)、
33 磁束変化、 34 バイアス磁界が重畳した励磁磁界、 35 磁束変化、
51,61 センサ駆動回路、 52 フラックスゲート電流センサ、
53,63,64,65,66 検出回路、 101〜105 直流漏電検出装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電路の漏洩電流及び過度な漏電を非接触で検出できる直流漏電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器や配線ケーブルは十分絶縁対策が施されているものの、経年劣化、ケーブルへの応力、機器の異なる取扱いなどにより絶縁劣化が生じ、絶縁劣化箇所を介して漏洩電流が流れ、人体への感電や発熱による火災事故が発生する要因となる。こうした漏電事故は、漏電検出センサである零相変流器(ZCT: Zero-phase Current Transformer)が内蔵された漏電遮断器や漏電リレーを電路に備えることで抑止することができる。ただし、零相変流器の動作原理上、交流の漏洩電流しか検出することができず、例えば太陽光発電システムや電気自動車システムといった直流電路系統においては、零相変流器が使用できない。
【0003】
従来、直流電流センサとして、一部空隙部を設けた環状の磁性体コアに計測対象電流線を貫通させ、空隙部における磁界を、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子)等の磁気センサで検出し、センサ出力値から電流値を演算する手法が知られている。ただし、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子)は微小な磁界量を検出できないため、往路復路の差分電流や三相電流の和分電流といった零相電流、すなわち漏電を検出することは難しいのが現状である。
【0004】
一方、ホール素子や磁気抵抗素子に比べて、磁界検出感度や温度依存性に優れる磁気センサとしてフラックスゲート磁気センサが知られている。例えば、特許文献1の第1図に示されているように、電流センサとして応用した形態であれば、漏電といった微小電流を検出するのにも適しており、動作原理上、直流および交流の電流が検出できる。
【0005】
従来のフラックスゲート電流センサは、閉磁路を形成した高透磁率を有する環状の磁性体コアに励磁巻線及び検出巻線を巻回し、被測定電流が流れる電流線を閉磁路内に貫通させた構造を有する。
【0006】
その動作原理について説明する。励磁巻線に交流励磁電流を通電し、磁性体コアを周期的に磁気飽和させる。被測定電流値が零である場合、励磁電流により発生する磁界変化は、磁性体コア材のB−H曲線の原点に関して対称となる。検出巻線にはファラデーの電磁誘導則に従い、検出巻線を巻回した磁性体コア内の磁束量の変化に伴い出力電圧が発生するため、磁性体コアが磁気飽和した磁界領域において出力電圧は零となる。すなわち、出力電圧は周期的に零電圧を有した波形となり、零電圧となる時間間隔は常に一定で、周期はB−H曲線の原点対称性から励磁周波数の2倍となる。
【0007】
一方、被測定電流値が零でない場合、励磁電流により発生する励磁磁界に、被測定電流線から発生する磁界が重畳し、その磁界変化は、磁性体コア材のB−H曲線の原点に関して対称ではない。そのため、ある一定周期の励磁磁界で磁性体コアを励磁したとしても、出力電圧が零である時間間隔は一定とならず、磁界変化の挙動が正側および負側に変化した場合で異なるようになる。従って、出力電圧が零である時間間隔の差分から被測定電流値を演算することができ、被測定電流線での電流値を非接触で計測することができる。
【0008】
さらに、フラックスゲート電流センサの検出精度を向上させるために、例えば特許文献2の図1に示されているような励磁磁界方向と検出磁界方向を直交させた構造や特許文献3の図2に示されているような2つの磁性体コアにそれぞれ逆向きの励磁磁界を印加し、検出巻線を一体巻回し差動化させた構造など、励磁磁界が検出磁界に与える影響を除去もしくは相殺させた構造が提案されている。
【0009】
なお、特許文献4〜11は、直流電流の非接触検出に関するものであるが、動作原理や演算手法の点で本発明と相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実昭59−92532号公報(1頁、図1)
【特許文献2】特開平6−281674号公報(4頁16行、図1)
【特許文献3】特開2001−228181号公報(3頁17行、図2)
【特許文献4】特開平11−64391号公報
【特許文献5】特開平5−10980号公報
【特許文献6】特開平2−287266号公報
【特許文献7】特開昭58−148966号公報
【特許文献8】特開2000−266786号公報
【特許文献9】特開平7−312823号公報
【特許文献10】特開平3−251772号公報
【特許文献11】特開平6−18568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フラックスゲート電流センサを漏電検出用の電流センサとして使用する場合、単相交流では往路復路の電流線をそれぞれ環状の磁性体コアに貫通させ、往路復路の電流線からそれぞれ生じる磁界の差分、もしくは3相交流では各電流線からそれぞれ生じる磁界の差分、すなわち比較的微弱な磁界をセンサで検出することになる。
【0012】
一方、復路電流がアースを介して流れた場合や、3相中1相ないしは2相の電流がアースを介して流れた場合など、地絡事故が生じて過漏電が発生している状況下では、往路電流線から生じる磁界や3相バランスがくずれた磁界は比較的強くなる。この場合でも、強磁界を検出して、事故発生から瞬時に対象電路の給電を遮断する必要がある。
【0013】
しかしながら、フラックスゲート電流センサの動作原理上、強磁界の印加によって磁性体コアが完全に磁気飽和してしまう環境下では、センサ出力電圧は零となってしまい、漏電有無の識別ができないという課題がある。
【0014】
本発明の目的は、定格範囲内の漏洩電流を高感度に検出でき、定格範囲を超える地絡事故時が生じた場合でも地絡事故を確実に判定できる直流漏電検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る直流漏電検出装置は、
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電圧検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る直流漏電検出装置は、
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電圧検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また本発明に係る直流漏電検出装置は、
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電流検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また本発明に係る直流漏電検出装置は、
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電流検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁性体コアが磁気飽和した場合、磁性体コアの比透磁率は空気の比透磁率とほぼ同等となるため、励磁巻線のインダクタンスが急激に低下し、結果的に励磁巻線のインピーダンスは急激に低下する。そこで、励磁巻線に印加される電圧または電流を検出することによって、磁性体コアの磁気飽和の有無を判定でき、その結果、差分電流または零相電流が大きい地絡事故、すなわち過漏電の発生有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】フラックスゲート電流センサの動作原理を示す説明図である。
【図3】励磁磁界と磁束密度との関係を示す説明図であり、図3(a)は被測定電流値が零である場合、図3(b)は被測定電流値が零でない場合を示す。
【図4】検出巻線の出力電圧波形を示すグラフである。
【図5】フラックスゲート電流センサの入出力特性の一例を示すグラフである。
【図6】磁性体コアの磁界に対する比透磁率特性の一例を示すグラフである。
【図7】励磁巻線に通電される電流波形の一例を示すグラフである。
【図8】磁性体コアの磁気特性の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2を示す構成図である。
【図10】磁気センサを用いた電流センサの一例を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3を示す構成図である。
【図12】本発明の実施の形態4を示す構成図である。
【図13】本発明の実施の形態5を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示す構成図である。直流漏電検出装置101は、センサ駆動回路51と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路53などを備える。
【0022】
フラックスゲート電流センサ52は、閉磁路を形成する環状の磁性体コア3と、磁性体コア3に巻回された励磁巻線1と、磁性体コア3に巻回された検出巻線2などを備える。磁性体コア3のほぼ中心を貫通するように、少なくとも2本の被測定電流線4が配置される。直流電路または単相交流電路の場合、往路と復路で計2本の被測定電流線4が配置され、3相交流電路の場合、U相、V相、W相の計3本の被測定電流線4が配置される。
【0023】
センサ駆動回路51は、所定の周波数fの基準交流波形を発生する交流電源5と、基準交流波形に比例した電流を励磁巻線1に通電するための電流制御回路6などを備える。
【0024】
検出回路53は、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、検出巻線2の出力電圧から、特定の周波数成分、即ち、基準交流波形の周波数fの2倍に相当する周波数成分2fのみを抽出するフィルタ回路8と、電圧検出回路7の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0025】
図2は、フラックスゲート電流センサ52の動作原理を示す説明図である。直流電源21と負荷機器22とが往路復路の電流線4を経由して電気接続されている。漏電を検出する場合、図2(a)に示すように、往路復路の電流線4が磁性体コア3の穴を貫通するように配置される。往路電流値と復路電流値が同一である場合、両方の電流線4に流れる電流の向きが逆であるため、電流線近傍に生じる磁界は相殺され、結果的に電流線近傍の磁界は零となる。一方、負荷機器22で漏洩電流(漏電)23が生じた場合、復路の電流線4に流れる電流値が往路の電流値に比べて小さくなるため、結果的に、往路電流値と復路電流値の差分に相当する磁界が電流線近傍に発生することになる。
【0026】
本実施形態では、電流線近傍に生じる磁界を非接触で検出するセンサとして、フラックスゲート磁気センサの技術を応用している。フラックスゲート磁気センサは、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子やGMR素子)といった磁気センサに比べてより微小な磁界を検出することができ、温度依存性も良いことが知られている。
【0027】
図2(b)は、動作説明のために、1本の電流線4が磁性体コア3を貫通する場合を示している。フラックスゲート電流センサ52は、例えば、珪素鋼板やPCパーマロイといった高透磁率材料からなる環状の磁性体コア3に、励磁巻線1及び検出巻線2を巻回した構造である。励磁巻線1には交流電流を通電し、磁性体コア3が周期的に磁気飽和するように励磁する。
【0028】
図3は、励磁磁界と磁性体コア3の磁束密度との関係を示す説明図であり、図3(a)は被測定電流値が零である場合、図3(b)は被測定電流値が零でない場合を示す。図4は、検出巻線2の出力電圧波形を示すグラフである。
【0029】
電流制御回路6が基準交流波形に対応した電流を励磁巻線1に通電した状態で、被測定電流値が零の場合、図3(a)に示すように、正負対称の励磁磁界31が磁性体コア3に印加される。磁性体コア3は、ある一定以上の磁界に対して磁束密度が増加しない磁気特性(B−H特性)32を有するため、励磁磁界31が一定レベルを超えた時点で磁束密度が飽和した波形を示す磁束変化33が得られる。検出巻線2は、ファラデーの電磁誘導則に従って、磁性体コア内の磁束変化33に応じた電圧を出力する。
【0030】
図4(a)に示すように、磁性体コア3の磁束密度が飽和した期間では検出巻線2の出力電圧は零になり、磁束変化33の正および負の傾斜に対応するように正および負の電圧値が交互に現れる。磁性体コア3の磁気特性が原点に関して対称であるため、検出巻線2の出力電圧は、励磁磁界周波数fの2倍に相当する周波数成分2fが発生することが判る。そこで、フィルタ回路8において、例えば、バンドパスフィルタなどを用いて、出力電圧波形から周波数成分2fを抽出することによって、被測定電流値を演算することができる。
【0031】
一方、被測定電流値が零でない場合、電流線近傍では相殺されず残った磁界が生じることになる。そのため、電流線4から生じる磁界が励磁磁界に重畳され、図3(b)に示すように、バイアス磁界を有した交流磁界34が磁性体コア3に印加される。このとき磁束密度の飽和期間が正側および負側で相違するようになり、検出巻線2の出力電圧は、図4(b)に示すように、零電圧の時間間隔が一定ではなく、バイアス磁界の極性に応じて異なる波形になる。こうした変化は、フィルタ回路8において出力電圧波形から周波数成分2fを抽出することによって、被測定電流値を演算することができる。
【0032】
図5は、フラックスゲート電流センサ52の入出力特性の一例を示すグラフである。縦軸はフィルタ回路8の出力電圧波形の実効値、横軸は被測定電流線4の漏洩電流の値であり、両者は比例関係にあることが判る。
【0033】
以上の説明では、磁性体コア3には歪みのない正弦波磁界を印加した場合を例示したが、磁性体コア3に印加する励磁磁界は、励磁巻線1に通電する電流値、励磁巻線数、磁性体コアの平均磁路長が既知であれば計算することが可能である。ただし、励磁巻線1は環状の磁性体コア3に巻いており、磁性体の比透磁率は、例えば、図6に示すように、印加する磁界強度に対して一定の値にはならない。すなわち、励磁巻線1に通電する電流値に応じて磁性体コアの比透磁率は変化するため、励磁電流は、図7(a)に示すように、歪んだ波形となる。
【0034】
そこで、電流制御回路6として、励磁巻線3のインダクタンス、すなわちインピーダンス変化に依存しない励磁電流波形を供給できる回路、例えば、バイラテラル型電圧−電流変換回路で構成することが好ましい。この場合、例えば、基準交流波形として正弦波の電圧波形を電流制御回路6に入力した場合、励磁巻線1には歪みのない正弦波電流波形を通電することができる。
【0035】
上述のように、フラックスゲート電流センサ52の動作原理上、計測できる電流範囲は、バイアス磁界が重畳した場合でも正負必ず磁気飽和が得られる磁界領域であるため、図8に示した範囲±αとなる。従って、範囲±αを超えるような大きなバイアス磁界が磁性体コア3に印加されると、漏洩電流を高精度に計測することができない。
【0036】
さて、電流センサとして運用する場合は、定格範囲外の計測精度を補償する必要は無く、仮に定格範囲外の電流を通電した場合にセンサが壊れないということが製品仕様に盛り込まれることが想定される。しかしながら、漏電センサとして運用する場合、電流センサとして運用する場合とは少し事情が異なり、往路復路の電流線4から生じる磁界の差分を検出する必要がある。
【0037】
例えば、図2(a)で示すように、負荷機器22からアースを介して漏電23が生じ、復路電流値に比べて漏洩電流が大きい地絡事故、いわゆる過漏電が発生することも考えられる。この場合、復路電流による相殺が小さくなり、往路電流線から生じる磁界の大部分が磁性体コア3に印加されるため、磁性体コア3は完全に磁気飽和し、検出巻線2の出力電圧は常に零になる現象が生じることが予測できる。磁性体コア3が磁気飽和した場合、磁性体コア3の比透磁率は空気の比透磁率とほぼ同等となるため、励磁巻線1のインダクタンスが急激に低下し、結果的に励磁巻線1のインピーダンスは急激に低下する。このとき、電流制御回路6により励磁巻線1のインピーダンス変化に関わらず一定振幅の電流を励磁巻線1に通電しているため、オーム則に従い、励磁巻線1に印加する電圧が急激に低下する。
【0038】
そこで、電圧検出回路7が励磁巻線1に印加される電圧、例えば、励磁電圧波形のピーク値を検出し、漏電判定回路9は、検出されたピーク値の変化を判定することによって過漏電の発生有無を判定することができる。こうしたピーク検出回路は、例えば全波整流回路や平滑回路などから構成できる。
【0039】
漏電判定回路9は、例えば、A/Dコンバータ、マイクロプロセッサ、メモリなどで構成され、フィルタ回路8の出力信号および電圧検出回路7の出力信号をいずれもA/Dコンバータを介してデジタル信号としてメモリに取り込むことができる。電圧検出回路7の出力信号レベルが所定の定格範囲内(例えば、図8の±αに相当する範囲内)であれば、フィルタ回路8の出力信号から漏電量を演算できる。一方、電圧検出回路7の出力信号が所定の定格範囲外(例えば、図8の±αを超える範囲)であれば、地絡事故等による過漏電が発生したと考えられ、電圧検出回路7の出力信号から過漏電の発生有無を判定することができる。
【0040】
過漏電の発生有りと判定した場合、図示はしていないが、演算した漏電量や過漏電の発生有無に応じて漏電遮断器や漏電リレーなどを用いて電路を遮断したり、リレー信号を接続機器に発令したりすることが可能である。代替として、漏電量を演算する必要がない場合は、コンパレータ等を用いて漏電量の2値判定を行って、地絡事故の有り無し判定を実施することも可能である。
【0041】
さらに、本実施形態では、電圧検出回路7が励磁巻線1に印加される電圧波形のピーク値を検出し、漏電判定回路9がこのピーク値の変化を判定する場合を例として説明したが、代替として、電圧検出回路7が励磁巻線1に印加される電圧波形の実効値を検出し、漏電判定回路9がこの実効値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することも可能である。
【0042】
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2を示す構成図である。直流漏電検出装置102は、センサ駆動回路51と、電流センサ62と、検出回路63などを備える。
【0043】
電流センサ62は、図10に示すように、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13などを備える。磁気センサ13は、ホール素子や磁気抵抗素子(MR素子)などで構成される。磁性体コア12のほぼ中心を貫通するように、少なくとも2本の被測定電流線4が配置される。直流電路または単相交流電路の場合、往路と復路で計2本の被測定電流線4が配置され、3相交流電路の場合、U相、V相、W相の計3本の被測定電流線4が配置される。
【0044】
センサ駆動回路51は、図1と同様に、所定の周波数fの基準交流波形を発生する交流電源5と、基準交流波形に比例した電流を励磁巻線1に通電するための電流制御回路6などを備える。
【0045】
検出回路63は、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、磁気センサ13の出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路14と、電圧検出回路7の出力および励磁成分除去回路14の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0046】
本実施形態では、磁気センサ13を利用した電流センサ62を使用しており、地絡事故等により過漏電が発生した場合、磁性体コア12は磁気飽和する。ただし、ホール素子やMR素子は出力信号が飽和するだけであり、零にはならない。
【0047】
磁気センサ13は、検出対象磁界だけでなく励磁磁界成分も検出してしまうため、検出回路63に励磁成分除去回路14を設けている。励磁成分除去回路14として、例えば、励磁磁界の周波数成分fを除去するローパスフィルタが使用できる。
【0048】
また、磁性体コア12の比透磁率が磁界強度に対して変化する場合、電流制御回路6として、励磁巻線3のインダクタンス、すなわちインピーダンス変化に依存しない励磁電流波形を供給できる回路、例えば、バイラテラル型電圧−電流変換回路で構成することが好ましい。この場合、例えば、基準交流波形として正弦波の電圧波形を電流制御回路6に入力した場合、励磁巻線1には歪みのない正弦波電流波形を通電することができる。
【0049】
電圧検出回路7は、励磁巻線1に印加される電圧波形のピーク値を検出し、漏電判定回路9がこのピーク値の変化を判定するように構成してもよく、あるいは、励磁巻線1に印加される電圧波形の実効値を検出し、漏電判定回路9がこの実効値の変化を判定するように構成してもよい。
【0050】
漏電判定回路9は、図1と同様に、例えば、A/Dコンバータ、マイクロプロセッサ、メモリなどで構成され、フィルタ回路8の出力信号および電圧検出回路7の出力信号をいずれもA/Dコンバータを介してデジタル信号としてメモリに取り込むことができる。電圧検出回路7の出力信号レベルが所定の定格範囲内(例えば、図8の±αに相当する範囲内)であれば、フィルタ回路8の出力信号から漏電量を演算できる。一方、電圧検出回路7の出力信号が所定の定格範囲外(例えば、図8の±αを超える範囲)であれば、地絡事故等による過漏電が発生したと考えられ、電圧検出回路7の出力信号から過漏電の発生有無を判定することができる。
【0051】
過漏電の発生有りと判定した場合、図示はしていないが、演算した漏電量や過漏電の発生有無に応じて漏電遮断器や漏電リレーなどを用いて電路を遮断したり、リレー信号を接続機器に発令したりすることが可能である。代替として、漏電量を演算する必要がない場合は、コンパレータ等を用いて漏電量の2値判定を行って、地絡事故の有り無し判定を実施することも可能である。
【0052】
なお、上述の実施の形態1,2において、磁性体コアに対して励磁巻線や検出巻線を局所的に巻回した場合を例示したが、磁性体コアの全周に渡って均等に分布するように巻回してもよく、さらに、磁性体コアへの巻線応力を緩和させるために、樹脂製のケースを介在させてケースの上から巻線を巻回する形態でも構わない。
【0053】
また、実施の形態1,2において、直流漏電の場合を例示したが、交流漏電の場合でもA/Dコンバータのサンプリング条件を満足すれば問題なく適用可能であり、サンプリング条件は基準交流波形の周波数に基づいて決定できる。
【0054】
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3を示す構成図である。直流漏電検出装置103は、センサ駆動回路51と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路64などを備える。本実施形態は、実施の形態1と同様な構成を有するが、検出回路64において位相シフト検出回路10を追加している点で相違する。
【0055】
検出回路64は、励磁巻線1に印加される電圧を検出する電圧検出回路7と、電圧検出回路7で検出された電圧波形と交流電源5からの基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路10と、検出巻線2の出力電圧から、特定の周波数成分、即ち、基準交流波形の周波数fの2倍に相当する周波数成分2fのみを抽出するフィルタ回路8と、位相シフト検出回路10の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0056】
地絡事故等により過漏電が発生して磁性体コア3が磁気飽和した場合、実施の形態1で説明したように、励磁巻線1のインピーダンス低下によって励磁巻線1への印加電圧も低下する。このとき励磁巻線1への印加電圧波形の位相も変化する。本実施形態では、基準交流波形に対する印加電圧波形の位相変化を検出するための位相シフト検出回路10を設けることによって、漏電判定回路9は過漏電の発生有無を判定することができる。
【0057】
なお本実施形態では、フラックスゲート電流センサ52を用いた場合を例示したが、代替として、実施の形態2と同様に、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13を備えた電流センサ62を用いても構わない。
【0058】
実施の形態4.
図12は、本発明の実施の形態4を示す構成図である。直流漏電検出装置104は、センサ駆動回路61と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路65などを備える。本実施形態は、実施の形態1と同様な構成を有するが、電流制御回路6の代わりに、励磁巻線1のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線1に印加するための電圧制御回路15を備え、さらに、電圧検出回路7の代わりに、励磁巻線1に通電される電流値を検出する電流検出回路16を備えている点で相違する。
【0059】
センサ駆動回路61において、交流電源5は、所定の周波数fの基準交流波形を発生する。電流制御回路6は、基準交流波形に比例した電圧を励磁巻線1に印加する機能を有し、例えば、低い出力インピーダンスの増幅器などで構成でき、印加電圧は負荷のインピーダンス変化に依存しなくなる。
【0060】
地絡事故等により過漏電が発生して磁性体コア3が磁気飽和した場合、実施の形態1で説明したように、励磁巻線1のインピーダンスが急激に低下する。このとき励磁巻線1への印加電圧が固定されているため、オーム則に従い、励磁巻線1に通電される電流値が急激に増加する。ただし、電流値の上限は、電圧制御回路15の供給電源能力で決定される。
【0061】
そこで、電流検出回路16が励磁巻線1に通電される電流値、例えば、励磁電流波形のピーク値または実効値を検出し、漏電判定回路9は、検出されたピーク値または実効値の変化を判定することによって過漏電の発生有無を判定することができる。
【0062】
なお本実施形態では、フラックスゲート電流センサ52を用いた場合を例示したが、代替として、実施の形態2と同様に、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13を備えた電流センサ62を用いても構わない。
【0063】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5を示す構成図である。直流漏電検出装置105は、センサ駆動回路61と、フラックスゲート電流センサ52と、検出回路66などを備える。本実施形態は、実施の形態4と同様な構成を有するが、検出回路66において位相シフト検出回路17を追加している点で相違する。
【0064】
検出回路66は、励磁巻線1に通電される電流値を検出する電流検出回路16と、電流検出回路16で検出された電流波形と交流電源5からの基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路17と、検出巻線2の出力電圧から、特定の周波数成分、即ち、基準交流波形の周波数fの2倍に相当する周波数成分2fのみを抽出するフィルタ回路8と、位相シフト検出回路17の出力およびフィルタ回路8の出力に基づいて、被測定電流線4において過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路9などを備える。
【0065】
地絡事故等により過漏電が発生して磁性体コア3が磁気飽和した場合、実施の形態4で説明したように、励磁巻線1のインピーダンス低下によって、励磁巻線1に通電される電流値が増加する。このとき励磁巻線1の励磁電流波形の位相も変化する。本実施形態では、基準交流波形に対する励磁電流波形の位相変化を検出するための位相シフト検出回路117を設けることによって、漏電判定回路9は過漏電の発生有無を判定することができる。
【0066】
なお本実施形態では、フラックスゲート電流センサ52を用いた場合を例示したが、代替として、実施の形態2と同様に、空隙部を有する環状の磁性体コア12と、磁性体コア12に巻回された励磁巻線11と、空隙部近傍に設置された磁気センサ13を備えた電流センサ62を用いても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1,11 励磁巻線、 2 検出巻線、 3,12 磁性体コア、
4 被測定電流線、 5 交流電源、 6 電流制御回路、 7 電圧検出回路、
8 フィルタ回路、 9 漏電判定回路、 10,17 位相シフト回路、
13 磁気センサ、 14 励磁成分除去回路、 15 電圧制御回路、
16 電流検出回路、 21 直流電源、 22 負荷機器、
23 漏洩電流(漏電)、 31 励磁磁界、 32 磁気特性(B−H特性)、
33 磁束変化、 34 バイアス磁界が重畳した励磁磁界、 35 磁束変化、
51,61 センサ駆動回路、 52 フラックスゲート電流センサ、
53,63,64,65,66 検出回路、 101〜105 直流漏電検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電圧検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項2】
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電圧検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項3】
電圧検出回路は、励磁巻線に印加される電圧波形のピーク値を検出し、
漏電判定回路は、検出されたピーク値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項1または2記載の直流漏電検出装置。
【請求項4】
電圧検出回路は、励磁巻線に印加される電圧波形の実効値を検出し、
漏電判定回路は、検出された実効値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項1または2記載の直流漏電検出装置。
【請求項5】
電流制御回路に基準交流波形を供給するための交流電源と、
電圧検出回路で検出された電圧波形と基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路とをさらに備え、
漏電判定回路は、検出された位相シフト量の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項1または2記載の直流漏電検出装置。
【請求項6】
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電流検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項7】
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電流検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項8】
電流検出回路は、励磁巻線に通電される電流波形のピーク値を検出し、
漏電判定回路は、検出されたピーク値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項6または7記載の直流漏電検出装置。
【請求項9】
電流検出回路は、励磁巻線に通電される電流波形の実効値を検出し、
漏電判定回路は、検出された実効値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項6または7記載の直流漏電検出装置。
【請求項10】
電圧制御回路に基準交流波形を供給するための交流電源と、
電流検出回路で検出された電流波形と基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路とをさらに備え、
漏電判定回路は、検出された位相シフト量の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項6または7記載の直流漏電検出装置。
【請求項1】
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電圧検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項2】
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電流波形を励磁巻線に通電するための電流制御回路と、
励磁巻線に印加される電圧を検出する電圧検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電圧検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項3】
電圧検出回路は、励磁巻線に印加される電圧波形のピーク値を検出し、
漏電判定回路は、検出されたピーク値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項1または2記載の直流漏電検出装置。
【請求項4】
電圧検出回路は、励磁巻線に印加される電圧波形の実効値を検出し、
漏電判定回路は、検出された実効値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項1または2記載の直流漏電検出装置。
【請求項5】
電流制御回路に基準交流波形を供給するための交流電源と、
電圧検出回路で検出された電圧波形と基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路とをさらに備え、
漏電判定回路は、検出された位相シフト量の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項1または2記載の直流漏電検出装置。
【請求項6】
閉磁路を形成する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および該磁性体コアに巻回された検出巻線を有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通しているフラックスゲート電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
検出巻線の出力電圧から特定の周波数成分のみを抽出するフィルタ回路と、
電流検出回路の出力およびフィルタ回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項7】
空隙部を有する環状の磁性体コア、該磁性体コアに巻回された励磁巻線、および空隙部近傍に設置された磁気センサを有し、少なくとも2本の被測定電流線が磁性体コアを貫通している電流センサと、
励磁巻線のインピーダンス変化に依存せずに所望の電圧波形を励磁巻線に印加するための電圧制御回路と、
励磁巻線に通電される電流値を検出する電流検出回路と、
磁気センサの出力電圧から励磁成分を除去する励磁成分除去回路と、
電流検出回路の出力および励磁成分除去回路の出力に基づいて、過漏電の発生有無を判定する漏電判定回路とを備えたことを特徴とする直流漏電検出装置。
【請求項8】
電流検出回路は、励磁巻線に通電される電流波形のピーク値を検出し、
漏電判定回路は、検出されたピーク値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項6または7記載の直流漏電検出装置。
【請求項9】
電流検出回路は、励磁巻線に通電される電流波形の実効値を検出し、
漏電判定回路は、検出された実効値の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項6または7記載の直流漏電検出装置。
【請求項10】
電圧制御回路に基準交流波形を供給するための交流電源と、
電流検出回路で検出された電流波形と基準交流波形との間の位相シフト量を検出する位相シフト検出回路とをさらに備え、
漏電判定回路は、検出された位相シフト量の変化を判定することによって、過漏電の発生有無を判定することを特徴とする請求項6または7記載の直流漏電検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【公開番号】特開2012−159445(P2012−159445A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20339(P2011−20339)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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