説明

直流電源装置、及びその出力電圧平滑方法

【課題】長寿命、高信頼性、高品質の直流電源装置では、平滑コンデンサとして電解コンデンサの代わりに高圧セラミックコンデンサなどの高価な部品が使用され、コストアップに繋がり、また、容量の追加無しでは、例えばLED照明装置の明るさの減少、ちらつきなど、照明品質の低下に繋がる問題があった。
【解決手段】本発明の直流電源装置は、交流を直流に整流して出力する整流器3と、整流器3の出力部に接続された平滑コンデンサC1を具備した直流電源装置100において、整流器3の整流電圧が最大値を経過する毎に前記整流電圧が所定電圧に低下した時点で前記平滑コンデンサC1を放電開始させるスイッチ素子(サイリスタTH1)を備えたことを特徴とする。これにより、平滑コンデンサの個数(容量)を増やすことなく、高品質でしかも安価な装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置、及びその出力電圧平滑方法に係り、特に平滑コンデンサ容量を小さくしても出力電圧の脈動を小さく抑えることのできる直流電源装置、及びその出力電圧平滑方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用交流電源を直流電源に変換して負荷に電力を供給する小容量の直流電源装置では、例えば、特開昭58−37717号公報(特許文献1)や特開平11−135274号公報(特許文献2)に示されるように、一般にコンデンサインプット方式がとられている。
【0003】
図21に、従来から使用されているコンデンサインプット方式の直流電源装置の例を示した。図21に示したコンデンサインプット方式の直流電源装置1では、商用交流電源2の交流電圧が全波整流器3で整流され、もし平滑コンデンサC1、C2などの平滑回路がなければ、その出力端子には図22(a)に示した整流電圧波形6のように全波整流した正弦波状の整流電圧が得られる。ここで、全波整流器3の出力電圧を平滑コンデンサで平滑していない電圧を「整流電圧」ということにする。また、全波整流器3の出力電圧を平滑コンデンサで平滑した電圧は「出力電圧」ということにする。コンデンサインプット方式の直流電源装置1は平滑回路として平滑コンデンサC1、C2が全波整流器3の出力側に接続される。ここで平滑コンデンサは、後述の説明の便宜上、同じ容量の平滑コンデンサC1とC2を並列接続して示している。この平滑コンデンサC1、C2の作用により、全波整流器3の出力には、整流電圧波形6の最大値部分(整流電圧が最大値を示す時刻t2)から次第に減少する図22(a)の符号7、8で示したような電圧が得られる。ここで使用される平滑コンデンサC1、C2には、一般に安価なアルミ電解コンデンサが多用され、使用される平滑コンデンサの容量は、負荷の大小に合わせて決められている。図22(a)の出力電圧波形8は平滑コンデンサC1と平滑コンデンサC2とを並列接続し、平滑コンデンサの個数を2個にした場合の出力電圧波形で、平滑コンデンサを平滑コンデンサC1のみとした出力電圧波形7の変化に比べてなだらかとなり、電圧の落ち込みは少なくなる。平滑コンデンサC1、C2の両端電圧は直流電源装置1の出力として取り出され、負荷に直流電力を供給するようになっている。図22(b)は出力電流波形を示したもので、出力電流波形10は平滑コンデンサC1のみの電圧波形7に対応し、電流波形11は平滑コンデンサC1と平滑コンデンサC2を並列接続した出力電圧波形8に対応している。
【0004】
図21に示すように、直流電源装置1の負荷として、DC/DCコンバータスイッチング電源13や、LED(発光ダイオード)照明装置14などの非線形の負荷が接続された場合、負荷を駆動するために必要な最低限の電圧が存在する。一例として図23にLEDの電圧、電流特性を示した。図23に示すように、LEDを点灯させるために必要な最低限の電圧Vminが存在し、これ以下の電圧を加えてもLEDは点灯しない。最低限の電圧Vminは電流波形が断続するぎりぎりの限界を示しており、電圧がこの電圧Vminを下回った場合には電流は流れない。図22では、平滑コンデンサC1のみとした出力電圧波形7が、時刻t4でこの電圧Vminぎりぎりになるように設定された場合を示しており、出力電流波形10で示されるように、出力電流は時刻t4において0となっている。したがって、このような、非線形の負荷に対しては特に最低限の電圧Vminを下回らないよう考慮して平滑コンデンサの容量が選定される。
【特許文献1】特開昭58−37717号公報
【特許文献2】特開平11−135274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、直流電源装置1の負荷として非線形の負荷が接続された場合には、この非線形の負荷に対するドライブに最低必要な電圧が存在する。平滑コンデンサ容量は負荷の大小に合わせて決められるが、図22の出力電圧波形7で電圧の落ち込みを点線で示した最低限の電圧Vminに維持した場合、負荷に供給される電力品質に影響が出る場合が多い。例えば、LEDを多数直列にしたLED照明装置14の場合、最低限の電圧Vminを下回ると負荷電流が0になる。この状態では負荷が間欠動作を起こす可能性が高いので、通常は、設計時に平滑コンデンサの容量を追加して負荷の動作に影響が出ないよう改善が行われる。
【0006】
一般に、設備電源やLED照明装置用電源においては、長寿命、高信頼性、高品質の電源であることが要求される。従来技術の長寿命、高信頼性、高品質の直流電源装置では、平滑コンデンサとして電解コンデンサの代わりに高圧セラミックコンデンサなどの高価な部品が使用され、次のような問題があった。
(1)高価なコンデンサの追加は直流電源装置1のコストアップに繋がる。
(2)容量の追加無しでは、例えば、LED照明装置に使用されるLEDの間欠動作(明るさの減少)となる。この明るさの不足をLEDの使用個数増加で補えばコストの増加となる。
(3)商用周波数の2倍のLEDの間欠動作はちらつきに気づく場合があり、照明品質の低下に繋がる。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、平滑コンデンサの個数(容量)を増やすことなく、高品質でしかも安価な直流電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の直流電源装置は、交流を直流に整流して出力する整流器と、前記整流器の出力部に接続された平滑コンデンサを具備した直流電源装置において、前記整流器の整流電圧が最大値を経過する毎に前記整流電圧が所定電圧に低下した時点で前記平滑コンデンサを放電開始させるスイッチ素子を備えたことを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記スイッチ素子がサイリスタであることを特徴とする
また、本発明の直流電源装置は、前記スイッチ素子がトランジスタであることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記スイッチ素子がダイアックであることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記所定電圧が、負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らない電圧であることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記平滑コンデンサが、前記整流器の整流電圧が前記平滑コンデンサの充電電圧を上回った時点において、負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らないだけの容量を有していることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記整流器の整流電圧が前記平滑コンデンサの充電電圧を上回ったとき、前記整流器から前記平滑コンデンサを充電する方向に導通する整流素子を備えたことを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記整流素子が、ダイオードであることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記整流素子が、ダイアックであることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記平滑コンデンサと前記スイッチ素子が、平滑コンデンサとスイッチ素子が直列接続された複数の直列体として構成され、
前記複数の直列体における各スイッチ素子が自身に直列接続された平滑コンデンサを出力電圧の異なる電圧で放電開始させることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記出力電圧の異なる電圧で自身に直列接続された平滑コンデンサを放電開始させる前記直列体における各スイッチ素子が、異なるブレークオーバ電圧を有するダイアックであることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記出力電圧の異なる電圧で自身に直列接続された平滑コンデンサを放電開始させる前記直列体における各スイッチ素子が、同じブレークオーバ電圧を有するダイアックを複数個直列に接続したものであることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記出力電圧の異なる電圧で自身に直列接続された平滑コンデンサを放電開始させる前記直列体における各スイッチ素子が、サイリスタであり、該サイリスタを異なるブレークオーバ電圧を有するダイアックを使ってトリガすることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、出力部に接続される負荷と当該直流電源装置との間に、負荷電流に対して順方向に接続されたダイオードと負荷に並列に接続されたコンデンサを備えたことを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置の出力電圧平滑方法は、交流を直流に整流して出力する整流器と、前記整流器の出力部に接続された平滑コンデンサを具備した直流電源装置の出力電圧平滑方法において、前記整流器の整流電圧が最大値を経過する毎に、前記整流電圧が所定電圧に達した時点で前記平滑コンデンサを放電開始させ、出力電圧が負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らないようにしたことを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置の出力電圧平滑方法は、前記整流器の整流電圧が最大値を経過した後、前記平滑コンデンサの電圧を上回った時点において、前記平滑コンデンサの電圧が負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らないように、前記平滑コンデンサの容量が定められていることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置の出力電圧平滑方法は、前記整流器の出力部にスイッチ素子と平滑コンデンサの直列体を複数並列接続し、複数の前記直列体における各平滑コンデンサを出力電圧の異なる電圧で放電開始させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、平滑コンデンサの個数(容量)を増やすことなく、高品質でしかも安価な直流電源装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態である直流電源装置100の回路構成を示したものである。図1に示した直流電源装置100おいて、C1は平滑コンデンサ、TH1はサイリスタ、ZD1はツェナーダイオード、D1、D2はダイオード(整流素子)、Cdはコンデンサである。その他、図21に示した従来の直流電源装置1の回路構成の各部に付した符号と同一符号で示されるものは同じ機能を有する構成要素を示している。なお、41は平滑コンデンサC1の充放電を制御するスイッチ回路を示している。
【0012】
本実施の形態における直流電源装置100は、平滑コンデンサC1の充電をダイオードD2を通して行い、放電はスイッチ回路41のスイッチ素子であるサイリスタTH1を通して行う。サイリスタTH1をオンさせるタイミングはツェナーダイオードZD1のツェナー電圧により調整する。
【0013】
図1を参照して、本実施の形態の直流電源装置100の構成を説明する。全波整流器3の入力端子には商用交流電源2が接続され、交流電圧が入力されている。全波整流器3の正極(+)端子には、サイリスタTH1のカソード端子とダイオードD2のアノード端子が接続され、そしてサイリスタTH1のアノード端子とダイオードD2のカソード端子は共通に平滑コンデンサC1の正極(+)端子に接続されている。また、平滑コンデンサC1の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。また、ダイオードD1のアノード端子が全波整流器3の正極(+)端子に接続され、ダイオードD1のカソード端子がコンデンサCdの一方の端子に接続され、コンデンサCdの他方の端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。更に、サイリスタTH1のゲート端子にツェナーダイオードZD1のアノード端子が接続され、ツェナーダイオードZD1のカソード端子はダイオードD1のカソード端子とコンデンサCdの一方の端子との接続点に接続されている。
【0014】
このように構成された直流電源装置100は、全波整流器3の正極(+)端子電圧が平滑コンデンサC1の電圧より高い状態のとき全波整流器3はダイオードD2を介して平滑コンデンサC1を充電し、サイリスタTH1がオフ状態であって全波整流器3の正極(+)端子電圧が平滑コンデンサC1の電圧より低い状態のときはダイオードD2とサイリスタTH1は平滑コンデンサC1の放電を阻止する。全波整流器3の正極(+)端子電圧が平滑コンデンサC1の電圧より低い状態のときサイリスタTH1により放電が阻止されている平滑コンデンサC1は、サイリスタTH1のゲート端子にオン電圧が加えられるとサイリスタTH1を通して放電する。このときのサイリスタTH1のゲート電圧は、ダイオードD1、コンデンサCd、ツェナーダイオードZD1で構成されたゲート駆動回路15により調整される。
【0015】
このゲート駆動回路15の動作を図2を参照して説明する。全波整流器3の正極(+)端子電圧は、コンデンサC1が放電を阻止された状態では整流電圧波形6のようになる。図2のt1で示した時刻は、平滑コンデンサC1が放電して行くことにより全波整流器3からの電圧と平滑コンデンサC1の電圧が等しくなった時点を示している。また、t2で示した時刻は全波整流器3の正極(+)端子電圧が最大値となる時点を示している。また、t3で示した時刻はサイリスタTH1がオンする時点を示している。また、t4で示した時刻は平滑コンデンサC1が放電して行くことにより全波整流器3からの電圧と平滑コンデンサC1の電圧が等しくなった時点を示しており、周期的に上記時刻t1と同じ時点となる。
【0016】
そして、t1〜t2で示した期間は、平滑コンデンサC1が全波整流器3によりダイオードD2を通して充電されている期間であり、このとき全波整流器3の正極(+)端子には商用交流電源2の交流電圧を全波整流した整流電圧波形6の一部の電圧が現れる。また、t2〜t3で示した期間は、ダイオードD2とサイリスタTH1により平滑コンデンサC1が放電を阻止された状態であり、このときにも全波整流器3の正極(+)端子には商用交流電源2の交流電圧を全波整流した整流電圧波形6の一部の電圧が現れる。t1〜t2の期間において平滑コンデンサC1はダイオードD2を介して充電され、時刻t2で最大電圧に充電された後、t2〜t3の期間は全波整流器3の正極(+)端子電圧が低下するが、平滑コンデンサC1の放電はダイオードD2とサイリスタTH1により放電を阻止されて時刻t2での最大電圧を保持する。コンデンサCdも平滑コンデンサC1と同様に、t1〜t2の期間はダイオードD1を介して充電され、時刻t2で最大電圧に充電された後、t2〜t3の期間は全波整流器3の正極(+)端子電圧が低下するが、ダイオードD1により放電を阻止されて時刻t2での最大電圧を保持する。
【0017】
一方、サイリスタTH1のカソード端子の電圧は、t1〜t3の期間、全波整流器3の正極(+)端子電圧(整流電圧波形6)と共に変化し時刻t2時点の電圧に保持されることは無い。したがってt2〜t3の期間において、ツェナーダイオードZD1の両端電圧は増加していき、時刻t3においてツェナー電圧に達するとサイリスタTH1はオンする。このとき直流電源装置100の出力電圧はステップ状に「(コンデンサCdの電圧)−(サイリスタTH1のオン電圧)」まで増加し、その後コンデンサCdからの放電電流が負荷電流として時刻t4(t1)まで負荷に供給され、出力電圧は低下していく。このとき、時刻t3の直流電源装置100の出力電圧が電圧Vminを下回らないようにツェナーダイオードZD1のツェナー電圧を選定する。また、時刻t4の直流電源装置100の出力電圧が電圧Vminを下回らないように平滑コンデンサC1の容量を選定する。
【0018】
直流電源装置100は上記のように動作するので、その出力状態は、t1〜t3の期間の整流電圧波形6の一部の電圧が現れる全波整流器3からの電力供給期間と、コンデンサCdの放電電圧が現れるt3〜t4のコンデンサCdからの電力供給期間とが交互に繰り返されるものとなる。このように、従来技術においてコンデンサCdを時刻t2から放電させていたところを、本実施の形態では、時刻t3まで遅らせてから放電させるようにしているので、この間全波整流器3からの電力供給が行われ、その分コンデンサCdの電圧変化が少なくなる。これは、出力電圧が電圧Vminを下回らないようにするためのコンデンサCdの容量を小さくできることを意味している。また、出力電圧の脈動周波数も、図2からわかるように、商用周波数の4倍の周波数となり、LEDを負荷とした照明装置などではちらつきの発生防止の点でも有利である。例えば、商用周波数が50Hz、または60Hzである場合には、脈動周波数が200Hz、または240Hzとなり、ちらつきが感じなくなる。
【0019】
図3は、図2のゲート駆動回路15に代えて、ダイオードD1、コンデンサCd1、Cd2、抵抗R1、R2で構成されたゲート駆動回路16とした他の例を示したものである。このときのサイリスタTH1のゲート電圧は、コンデンサCd1、Cd2、抵抗R1、R2で構成した分圧回路により調整される。
【0020】
図3を参照してゲート駆動回路16の構成を説明すると、ダイオードD1のアノード端子が全波整流器3の正極(+)端子に接続され、ダイオードD1のカソード端子がコンデンサCd1の一方の端子と抵抗R1の一方の端子に接続され、コンデンサCd1の他方の端子と抵抗R1の他方の端子は共通に、コンデンサCd2の一方の端子と抵抗R2の一方の端子に接続される。コンデンサCd2の他方の端子と抵抗R2の他方の端子は共通に全波整流器3の負極(−)端子に接続される。更に、図示はされていないが、サイリスタTH1のゲート端子がコンデンサCd1の他方の端子と抵抗R1の他方の端子との共通接続点(コンデンサCd2の一方の端子と抵抗R2の一方の端子との共通接続点でもある)に接続されている。
【0021】
コンデンサCd1、Cd2はダイオードD1を通して充電され、このとき、コンデンサCd1、Cd2、抵抗R1、R2で構成した分圧回路の電圧がサイリスタTH1のゲート電圧として加わるようになっている。このコンデンサCd1、Cd2、抵抗R1、R2で構成された分圧回路の電圧が時刻t3でサイリスタTH1のオン電圧となるように調整される。このとき、時刻t3の直流電源装置100の出力電圧が電圧Vminを下回らないように分圧回路の電圧を選定する。このゲート駆動回路17によっても図2に示すように動作させることができ、ゲート駆動回路15を使用したときと同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、本発明によれば、コンデンサインプット方式の直流電源装置の力率を改善することができる。
従来から使用されているコンデンサインプット方式の直流電源装置は力率(設備電源容量の利用効率)が非常に悪い。これを以下説明する。
【0023】
図4(a)は直流電源装置100の出力電圧波形、図4(b)はこれに対応した直流電源装置100(全波整流器3)の入力電流波形を示したものである。ここで図4(a)の出力電圧波形は図2(a)で示した出力電圧波形と同じものである。即ち、図4(a)の点線で示した出力電圧波形7は図2(a)の点線で示した出力電圧波形7と同じ(従来技術の図22(a)で示した出力電圧波形7と同じ)であり、平滑コンデンサはC1のみ接続した場合に相当する。図4(a)の細い実線で示した出力電圧波形8は図2(a)の点線で示した出力電圧波形8と同じ(従来技術の図22(a)の出力電圧波形8と同じ)であり、平滑コンデンサはC1とC2の2個を並列接続した場合に相当する。図4(a)の太い実線で示した出力電圧波形9は図2(a)の出力電圧波形9と同じで、本実施の形態による出力電圧波形であり、平滑コンデンサはC1のみ接続した場合に相当する。
【0024】
図4(b)の入力電流波形27は、出力電圧波形7に対応した入力電流波形を示している。この場合、図に示されるように、期間t1’〜t2において電流はパルス的に流れる。また、入力電流波形28は、出力電圧波形8に対応した入力電流波形を示している。従来技術の出力電圧波形7で示したものは、平滑コンデンサがC1のみ接続した場合に相当し、出力電圧の落ち込みは電圧Vminぎりぎりなので、通常の設計では更にコンデンサ容量を追加して容量増で改善せざるを得ない。出力電圧波形8で示したものは平滑コンデンサはC1とC2の2個を並列接続してコンデンサ容量を増加したもので、この場合、図に示されるように、期間t1〜t2において出力電圧波形8に対応する入力電流波形28は出力電圧波形7に対応する入力電流波形27よりも2倍以上大きな値でパルス的に流れ、力率が悪化していることを示している。
【0025】
これに対し入力電流波形29は、本実施の形態による出力電圧波形9に対応した電流波形を示している。本実施の形態による入力電流波形29は、期間t1〜t2において入力電流波形27とほぼ同じになっており、更に期間t2〜t3においても電流が流れている。これは期間t2〜t3における電力供給が、平滑コンデンサからではなくて交流電源から成されていることを示している。このように、本実施の形態によれば、入力電流のピークが低く抑えられ、電流の流れる期間も広くなり、力率が改善されている。
【0026】
以上、本実施の形態による直流電源装置では、平滑コンデンサがC1のみ接続するだけで、平滑コンデンサをC1とC2の2個を並列接続したものと同程度に、出力電圧の最低電圧をVmin以上に保つことができる。このときの商用交流電源2からのラインピーク電流(全波整流器3の入力最大電流)は、従来技術における平滑コンデンサをC1のみ接続した場合とほぼ同じで、高品位な電源供給が可能となっている。また、商用交流電源2の電圧が所定の電圧(サイリスタTH1がオンされる電圧)に下がるまでの期間、平滑コンデンサから電荷を放出しないで商用交流電源2のみから供給される。したがって、平滑コンデンサをC1とC2の2個並列接続してコンデンサ容量を増加したものと同等の電力を電源システムとして取り出しながら、商用交流電源2のラインピーク電流は平滑コンデンサをC1のみとした場合と同等のピーク電流で済み、且つ、導通角が広い入力電流となり、力率の改善を実現することができる。これは、設備電源の入力容量を半分(例えば1次側の電源ケーブルや、ヒューズ、ダイオードの容量規格を半分以下)に減らせるなどの大きなコスト低減効果を生む。
【0027】
(第2の実施の形態)
図5〜図8は、図1に示したスイッチ回路41のスイッチ素子であるサイリスタTH1をトランジスタに代えスイッチ回路42〜45とした直流電源装置110の回路構成例を示したものである。
【0028】
図5は、図1に示したスイッチ回路41のスイッチ素子であるサイリスタTH1を、スイッチ回路42の構成に示すように、NチャンネルMOSトランジスタ(N-Channel
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;以下NMOS-FETという)に代えた直流電源装置110の回路構成の実施例を示したものである。また、図1に示したダイオードD2として、図5の例ではNMOS-FETのボディダイオード(整流素子)D3を使用することができる。なお、R3はゲート・ソース間抵抗である。その他、図1に示した直流電源装置100の回路構成の各部に付した符号と同一符号で示されるものは同じ機能を有する構成要素を示している。
【0029】
本実施例でも図1の直流電源装置100におけるサイリスタTH1のゲート電圧と同様に、ダイオードD1、コンデンサCd、ツェナーダイオードZD1で構成されたゲート駆動回路15により調整される。図2の時刻t3においてツェナーダイオードZD1の電圧がツェナー電圧を超えるとNMOS-FETはオンする。この直流電源装置110によっても図2に示すように動作させることができ、スイッチ素子としてサイリスタTH1を使用した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
図6は、図5に示したスイッチ回路42のスイッチ素子であるNMOS-FETを、スイッチ回路43の構成に示すように、IGBT(Insulated Gate
Bipolar Transistor)に代えた実施例を示したものである。なお、R4はゲート・エミッタ間抵抗、D2はダイオードである。
【0031】
図7は、図5に示したスイッチ回路42のスイッチ素子であるNMOS-FETを、スイッチ回路44の構成に示すように、NPNバイポーラトランジスタ(以下NPN-Trという)に代えた実施例を示したものである。なお、R5はベース抵抗である(この場合、ゲート駆動回路15はベース駆動回路となる)。
【0032】
図8は、図7に示したトランジスタを使用した実施例において、スイッチ回路45の構成に示すように、トランジスタを定電流動作させるようにしたものである。即ち、ツェナーダイオードZD2を全波整流器3の正極(+)端子とベース端子間に接続し、トランジスタがオンしているときの抵抗R6の両端電圧を略一定とすることにより、トランジスタを通して放電する平滑コンデンサC1の電流を定電流で放電させる。また、トランジスタをMOS-FET又はIGBTに置き換えてもよい。
【0033】
上記図5〜図8の、スイッチ素子としてトランジスタを使用したスイッチ回路42〜45では、トランジスタのオン電流をゲート電圧(またはベース電圧)で調整できる点が、スイッチ素子としてサイリスタTH1を使用した図1の第1の実施の形態と異なっている。特に、MOS-FET及びIGBTの実施例では図5(b)に示すように、ゲート電圧を一定にすることで定電流特性を示すため、図8の実施例で示したような定電流回路を構成しなくても、ゲート抵抗を調整することにより、コンデンサCdと平滑コンデンサC1の放電時定数を合わせることで、定電流特性をほぼ得られる。
【0034】
図9は、スイッチ回路42〜45のスイッチ素子としてトランジスタを使用したときの出力電圧波形、出力電流波形を示したものである。
【0035】
図9(a)の太い実線23で示したものは、上記図5〜図8のスイッチ回路42のスイッチ素子として各種トランジスタを使用した変形例の出力電圧波形を示したもので、点線9で示したものは、図1における出力電圧波形9を比較のために示したものである。図に示すように、トランジスタを使用することにより出力電圧波形23を出力電圧波形9より平坦な波形に保つことができる。即ち、トランジスタのゲート電圧あるいはベース電流を調整することにより放電電流の大きさを調整でき、徐々に放電させることができる。
【0036】
また、図9(b)の太い実線24で示したものは、上記図5〜図8に示したスイッチ回路42のスイッチ素子として各種トランジスタを使用した変形例の出力電流波形を示したもので、点線12で示したものは、図2(b)の出力電流波形12を比較のために示したものである。図に示すように、トランジスタの作用を利用して図2(b)に示した出力電流波形12より平坦な特性に保つことができる。特に図8の実施例によれば一定の電流Iaで平滑コンデンサC1から放電させることができる。
【0037】
(第3の実施の形態)
上記第2の実施の形態では、平滑コンデンサC1をローサイド、放電を制御するスイッチ回路42〜45をハイサイドに配置した例を挙げたが、図10に示すように、平滑コンデンサC1をハイサイド、スイッチ回路をローサイドに配置しても同様に実施することが可能である。スイッチ回路42〜45をハイサイド、平滑コンデンサC1をローサイドに配置した上記第2の実施の形態では、スイッチ素子として使用するMOS-FETやバイポーラTrは、それぞれ、NMOS-FETやNPN-Trを使用するが、図10のように、平滑コンデンサC1をハイサイド、スイッチ回路46をローサイドに配置した本実施の形態では、スイッチ素子としてPチャンネルMOS-FET(P-Channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;以下PMOS-FETという)やPNPバイポーラトランジスタ(PNP-Tr)を使用することで、全く同じ効果を奏する回路を組むことができる。
【0038】
図10に平滑コンデンサC1をハイサイド、スイッチ回路46をローサイドに配置した第3の実施の形態による直流電源装置120の回路構成を示した。図10に示したPMOS-FETはPチャンネルMOS-FETである。その他、図5に示した直流電源装置110の回路構成の各部に付した符号と同一符号で示されるものは同じ機能を有する構成要素を示している。但し、これら構成要素の接続関係は異なっている。
【0039】
図10を参照して、本実施の形態の直流電源装置120の構成を説明する。全波整流器3の入力端子には商用交流電源2が接続され、交流電圧が入力されている。全波整流器3の正極(+)端子には平滑コンデンサC1の正極(+)端子が接続され、平滑コンデンサC1の負極(−)端子はPMOS-FETのドレイン端子に接続されている。また、PMOS-FETのソース端子は全波整流器3の正極(−)端子に接続されている。また、コンデンサCdの一方の端子が全波整流器3の正極(+)端子に接続され、コンデンサCdの他方の端子がダイオードD1のアノード端子に接続され、ダイオードD1のカソード端子が全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。更に、PMOS-FETのゲート端子にツェナーダイオードZD3のカソード端子が接続され、ツェナーダイオードZD3のアノード端子はダイオードD1のアノード端子とコンデンサCdの他方の端子との接続点に接続されている。なお、D4はPMOS-FETのボディダイオード(整流素子)、R3はゲート・ソース間抵抗である。
【0040】
本実施の形態における直流電源装置120は、平滑コンデンサC1の充電をPMOS-FETのボディダイオードD4を通して行い、放電はPMOS-FETを通して行う。PMOS-FETをオンさせる電圧はツェナーダイオードZD3のツェナー電圧により調整する。
【0041】
本第3の実施の形態でも、図7、図8に対応する変形例も同様に考えることができ、NPN-Trに対応するものとしてPNP-Trが使用できる。
【0042】
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4の実施の形態である直流電源装置130の構成図を示したものである。図11において、スイッチ回路47のスイッチ素子として示したDi1はダイアックである。その他、図4に示した直流電源装置100の回路構成の各部に付した符号と同一符号で示されるものは同じ機能を有する構成要素を示している。
【0043】
図11を参照して、本実施の形態の直流電源装置130の構成を説明する。全波整流器3の入力端子には商用交流電源2が接続され、交流電圧が入力されている。全波整流器3の正極(+)端子には、ダイアックDi1の一方の端子が接続され、他方の端子は平滑コンデンサC1の正極(+)端子に接続されている。また、平滑コンデンサC1の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。
【0044】
図から分かるように、本実施の形態はスイッチ回路47のスイッチ素子をダイアックDi1により構成したものである。ダイアックDi1は規定の閾値を超える電圧がかかった場合に導通(ブレークオーバ)状態になり端子間電圧が低下する双方向素子である。
【0045】
図12は本実施の形態の直流電源装置130の出力電圧波形を示したものである。図2に示した符号と同じものは同じ電圧波形や時刻を示している。図12において、時刻t1'、t3'はダイアックDi1のブレークオーバ時点を示しており、時刻t1'は平滑コンデンサC1を充電する方向へのブレークオーバ時点、時刻t3'は平滑コンデンサC1が放電する方向へのブレークオーバ時点である。したがって平滑コンデンサC1はt1’〜t2の期間において充電され、t3’〜t4の期間において放電される。t1〜t1’、t2〜t3’の期間はダイアックDi1はオフ状態となっている。
【0046】
図13は、図11の回路に対し、ダイアックDi1にダイオードD2を並列接続したものである。このダイオードD2はアノード端子が全波整流器3の正極(+)端子に接続され、カソード端子がダイアックDi1と平滑コンデンサC1の正極(+)端子との接続点に接続されているので、ダイオードD2は平滑コンデンサC1を充電する方向に接続されていることになり、平滑コンデンサC1の充電をダイアックDi1のブレークオーバ無しに行うことができる。したがって、図12に示した期間t1〜t1'は実質的になくなり、平滑コンデンサC1の充電期間を長くすることができる。これは平滑コンデンサC1に流れる充電電流のピーク値を低く抑える効果がある。
【0047】
(第5の実施の形態)
図14、図15に示した直流電源装置140、141は本発明の第6の実施の形態を示すものである。本実施の形態ではダイアックDi1のブレークオーバが時間的にずれて多段に行われるようにしたものである。
【0048】
図14を参照して、本実施の形態の直流電源装置140の構成を説明する。全波整流器3の入力端子には商用交流電源2が接続され、交流電圧が入力されている。全波整流器3の正極(+)端子には、当該直流電源装置140の出力端子との間に出力電流に対して順方向にダイオードD31とダイオードD32が直列接続されている。そして、全波整流器3の正極(+)端子とダイオードD31のアノード端子間にダイアックDi1の一方の端子とダイオードD21のアノード端子が接続され、ダイアックDi1の他方の端子とダイオードD21のカソード端子は平滑コンデンサC1の正極(+)端子に共通に接続され、平滑コンデンサC1の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。また、ダイオードD31のカソード端子とダイオードD32のアノード端子間にダイアックDi2の一方の端子とダイオードD22のアノード端子が接続され、ダイアックDi2の他方の端子とダイオードD22のカソード端子は平滑コンデンサC2の正極(+)端子に共通に接続され、平滑コンデンサC2の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。更に、ダイオードD32のカソード端子と当該直流電源装置140の出力端子との間にダイアックDi3の一方の端子とダイオードD23のアノード端子が接続され、ダイアックDi3の他方の端子とダイオードD23のカソード端子は平滑コンデンサC3の正極(+)端子に共通に接続され、平滑コンデンサC3の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。
【0049】
このように、全波整流器3の正極(+)端子と負極(−)端子間にはダイアックとダイオードの並列接続体を平滑コンデンサと直列接続した直列体が3回路並列接続されている。そして、Di1〜Di3のブレークオーバ電圧は、Di1<Di1<Di3の関係に選ばれている。したがって、平滑コンデンサC1〜C3はダイオードD21〜D23を通して充電され、平滑コンデンサC1はDi1の電圧がブレークオーバ電圧に達することにより放電が開始され、平滑コンデンサC2はDi2の電圧がブレークオーバ電圧に達することにより放電が開始され、平滑コンデンサC3はDi3の電圧がブレークオーバ電圧に達することにより放電が開始される。Di1〜Di3のブレークオーバ電圧は、Di1<Di1<Di3の関係に選ばれているので、図16に示すように、時刻t31'(C1の放電開始)、時刻t32'(C2の放電開始)、時刻t33'(C3の放電開始)のように、平滑コンデンサC1〜C3が時間的にずれて放電を開始する。
【0050】
図15を参照して、本実施の形態の直流電源装置141の構成を説明する。全波整流器3の入力端子には商用交流電源2が接続され、交流電圧が入力されている。全波整流器3の正極(+)端子には、当該直流電源装置141の出力端子との間に出力電流に対して順方向にダイオードD31とダイオードD32が直列接続されている。そして、全波整流器3の正極(+)端子とダイオードD31のアノード端子間にダイアックDi11の一方の端子とダイオードD21のアノード端子が接続され、ダイアックDi11の他方の端子とダイオードD21のカソード端子は平滑コンデンサC1の正極(+)端子に共通に接続され、平滑コンデンサC1の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。また、ダイオードD31のカソード端子とダイオードD32のアノード端子間にダイアックDi12とDi13の直列体の一方の端子とダイオードD22のアノード端子が接続され、ダイアックDi12とDi13の直列体の他方の端子とダイオードD22のカソード端子は平滑コンデンサC2の正極(+)端子に共通に接続され、平滑コンデンサC2の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。更に、ダイオードD32のカソード端子と当該直流電源装置141の出力端子との間にダイアックDi14、Di15、及びDi16の直列体の一方の端子とダイオードD23のアノード端子が接続され、ダイアックDi14、Di15、及びDi16の直列体の他方の端子とダイオードD23のアノード端子は平滑コンデンサC3の正極(+)端子に共通に接続され、平滑コンデンサC3の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。
【0051】
このように、全波整流器3の正極(+)端子と負極(−)端子間にはダイアックとダイオードの並列接続体を平滑コンデンサと直列接続したの直列体が3回路並列接続されている。そして、図15において、Di11〜Di16のブレークオーバ電圧は、Di11=Di12・・・=Di16の関係に選ばれている。Di12とDi13、Di14〜Di16はそれぞれ図のように直列に接続されているので、平滑コンデンサC1〜C3はダイオードD21〜D23を通して充電され、平滑コンデンサC1はDi11のブレークオーバ電圧の1倍に達することにより放電が開始され、平滑コンデンサC2はDi12〜Di13の直列体の電圧がDi11のブレークオーバ電圧の2倍に達することにより放電が開始され、平滑コンデンサC3はDi14〜Di16の直列体の電圧がDi11のブレークオーバ電圧の3倍に達することにより放電が開始される。したがって、図15の回路構成のものでも図14の回路構成のものと同様に、図16に示すように、時刻t31'(C1の放電開始)、時刻t32'(C2の放電開始)、時刻t33'(C3の放電開始)のように、平滑コンデンサC1〜C3が時間的にずれて放電を開始する。
【0052】
このようにt2〜t4の期間において時間的にずらして多段に放電を開始させることにより、使用する平滑コンデンサの総計容量が少なくても、例えばLED照明に使用した場合、出力電圧の脈動周波数frは、「fr=商用電源周波数(1+回路数)×2」となるので、例えば商用電源周波数が50Hzで回路数が3の場合400Hzになり、チラツキが全く無くなる。したがって本実施の形態によれば高品位の照明環境を提供できる効果を奏する。
【0053】
(第6の実施の形態)
図17は、第1の実施の形態のサイリスタTH1をトリガするゲート駆動回路15を、ダイアックDi17で構成するゲート駆動回路18とした直流電源装置150を示したものである。
【0054】
図17を参照して、本実施の形態の直流電源装置150の構成を説明する。全波整流器3の入力端子には商用交流電源2が接続され、交流電圧が入力されている。全波整流器3の正極(+)端子には、サイリスタTH1のカソード端子とダイオードD2のアノード端子が接続され、そしてサイリスタTH1のアノード端子とダイオードD2のカソード端子は共通に平滑コンデンサC1の正極(+)端子に接続されている。また、平滑コンデンサC1の負極(−)端子は全波整流器3の負極(−)端子に接続されている。そして、サイリスタTH1のアノード端子とゲート端子間にダイアックDi17が接続されている。
【0055】
本実施の形態による図17に示した直流電源装置150は、平滑コンデンサC1の充電をダイオードD2で行い、放電はサイリスタTH1により行う。動作電圧、電流波形は第1の実施の形態と同様、図2で示したようになる。即ち、t1〜t2の期間で平滑コンデンサC1は全波整流器3の正極(+)端子からダイオードD2を通して充電される。全波整流器3の正極(+)端子電圧が最大になる時刻t2を経過すると全波整流器3の正極(+)端子が低下してくるが、平滑コンデンサC1の放電はダイオードD2、サイリスタTH1、ダイアックDi17により阻止される。時刻t2を経過した時刻t3において、ダイアックDi17の両端の電圧が規定の電圧に達するとダイアックDi17は導通するので、サイリスタTH1のゲート電圧がオン閾値電圧を超えサイリスタTH1が導通する。これにより平滑コンデンサC1は放電してt3〜t4の期間、負荷に電力を供給するようになる。
【0056】
本実施の形態によれば、ゲート駆動回路18が第1の実施の形態で示したゲート駆動回路15より簡単に構成できる。なお、ダイアックDi17に各種ブレークオーバ電圧特性が選べるダイアックを使用したスイッチ回路41、ゲート駆動回路18、平滑コンデンサC1で構成される回路を全波整流器3の出力端子に複数並列接続すると、第6の実施の形態のように、各並列回路の平滑コンデンサの放電タイミングをずらすことも可能である。
【0057】
(第7の実施の形態)
図18、図19は、出力電圧の変化を緩やかにし、電磁ノイズの発生を抑制するようにした第7の実施の形態を示すものである。
第1の実施の形態、あるいは第6の実施の形態におけるスイッチ回路41のスイッチ素子としてサイリスタTH1を使用したものは電力効率が高い回路を実現できるが、電圧、電流波形に急峻な谷と山ができ、ノイズの発生の原因になる。このノイズの発生を抑制したり、負荷側にこの急峻な波形が出力されないようにスパイク部分の平滑を行うため、本実施の形態では負荷の直前に負荷電流に対して順方向に接続されたダイオードD6と負荷に並列接続されたコンデンサC10を挿入する。具体的には、上記実施の形態の直流電源装置100、150の負荷として、図18に示すDC/DCコンバータスイッチング電源13が接続され、あるいは図19に示すLED照明装置14が接続された場合、これら負荷の直前に負荷電流に対して順方向に接続されたダイオードD6と負荷に並列接続されたコンデンサC10を挿入する。コンデンサC10は平滑コンデンサC1の容量に比較して小さな容量のものを使用することができる。但し、ダイオードD6とコンデンサC10の挿入は、図18、図19に示した非線形の負荷に限らずノイズ発生の抑制に効果がある。
【0058】
図20は本実施の形態における出力電圧波形を示したもので、ダイオードD6とコンデンサC10で構成される回路を挿入しないときの出力電圧波形9(図2の出力電圧波形9と同じ)に対し、ダイオードD6とコンデンサC10で構成される回路を挿入すると、図20(b)の拡大図に示すように、サイリスタTH1がオンする時刻t3直後の立上り傾斜の急峻な電圧波形9が、出力電圧波形31のように傾斜の緩い鈍った電圧波形となる。また、コンデンサC10を追加することで、時刻t3直前における負荷13または14の電圧変動はコンデンサC10からの放電で落ち込みは改善される。時刻t3以降の平滑コンデンサC1からの放電によるコンデンサC10への充電電圧波形は、追加したダイオードD6の順方向電圧特性とコンデンサC10の容量及び内部抵抗により小さな時定数回路を構成して平滑コンデンサC1の急峻な放電電圧波形を緩やかに改善する。このように、本実施の形態によれば、負荷側にこの急峻な波形が出力されないようにスパイク部分の平滑が行われ、ノイズの発生が抑制される。また、コンデンサC10は電圧平滑コンデンサC1に比較し小さな容量でよく、ダイオードD6の損失もほとんど伴わない。
【0059】
なお、ダイオードD6とコンデンサC10で構成される回路は直流電源装置側の出力端子部分に接続してもよい。また、スイッチ回路41としてサイリスタTH1に限らず、ノイズを発生させるようなスイッチの速い素子で構成されたスイッチ回路を使用した直流電源装置に適用してよいことは言うまでも無い。
【0060】
以上、説明したように、本発明によれば、平滑コンデンサの個数を増やすことなく、高品質でしかも安価な直流電源装置として構成でき、DC/DCコンバータスイッチング電源13や、LED照明装置14などの非線形の負荷に電力を供給する直流電源装置として好適である。特にLED照明装置14の駆動電源として用いた場合、照明のチラツキをなくすことができる。しかしながら、本発明は負荷を駆動するために必要な最低限の電圧が存在しない負荷に適用しても、少ない平滑コンデンサの容量で脈動の少ない直流電力を供給できるという点で有効である。
【0061】
以上、実施の形態によって具体的に説明したが、これらは例示であって、これらの実施の形態には限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、DC/DCコンバータスイッチング電源13や、LED照明装置14などの非線形の負荷に電力を供給する直流電源装置として好適であるが、このような非線形の負荷に限らず適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による第1の実施の形態である直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図2】本発明による第1の実施の形態である直流電源装置の動作波形を示す図である。
【図3】本発明による第1の実施の形態である直流電源装置のゲート駆動回路の他の回路構成例を示す図である。
【図4】本発明による直流電源装置の力率改善効果を説明する図である。
【図5】本発明による第2の実施の形態である直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図6】本発明による第2の実施の形態である直流電源装置のスイッチ回路の他の回路構成例を示す図である。
【図7】本発明による第2の実施の形態である直流電源装置のスイッチ回路の更に他の回路構成例を示す図である。
【図8】本発明による第2の実施の形態である直流電源装置のスイッチ回路の更に他の回路構成例を示す図である。
【図9】本発明による第2の実施の形態である直流電源装置の動作波形を示す図である。
【図10】本発明による第3の実施の形態である直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図11】本発明による第4の実施の形態である直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図12】本発明による第4の実施の形態である直流電源装置の動作波形を示す図である。
【図13】本発明による第4の実施の形態である直流電源装置の、スイッチ回路の他の回路構成例を示す図である。
【図14】本発明による第5の実施の形態である直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図15】本発明による第5の実施の形態である直流電源装置の他の回路構成例を示す図である。
【図16】本発明による第5の実施の形態である直流電源装置の動作波形を示す図である。
【図17】本発明による第6の実施の形態である直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図18】本発明による第7の実施の形態である直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図19】本発明による第7の実施の形態である直流電源装置のスイッチ回路の他の回路構成例を示す図である。
【図20】本発明による第7の実施の形態である直流電源装置の動作波形を示す図である。
【図21】従来技術の直流電源装置の回路構成を示す図である。
【図22】従来技術の直流電源装置の動作波形を示す図である。
【図23】LEDの動作特性を説明する図である。
【符号の説明】
【0064】
1、100、110、120、130、140、141、150・・・直流電源装置
2・・・商用交流電源
3・・・全波整流器
6・・・整流電圧波形
7〜9、23・・・出力電圧波形
10〜12、24・・・出力電流波形
13・・・DC/DCコンバータスイッチング電源(非線形の負荷)
14・・・LED照明装置(非線形の負荷)
15〜18・・・ゲート駆動回路
27〜29・・・入力電流波形
41〜48・・・スイッチ回路
C1、C2、C3・・・平滑コンデンサ
Cd、Cd1、Cd2・・・コンデンサ
C10・・・コンデンサ
LED・・・発光ダイオード(非線形の負荷)
Vmin・・・LEDを点灯させるために必要な最低限の電圧
TH1・・・サイリスタ
ZD1〜ZD3・・・ツェナーダイオード
D1〜D4、D6、D21〜D23、D31、D32・・・ダイオード(整流素子)
R0〜R6・・・抵抗
Di1〜Di3、Di11〜Di17・・・ダイアック
NMOS-FET・・・NチャンネルMOSトランジスタ(N-Channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)
PMOS-FET・・・PチャンネルMOSトランジスタ(P-Channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)
IGBT・・・Insulated Gate Bipolar Transistor
NPN-Tr・・・NPNバイポーラトランジスタ
PNP-Tr・・・PNPバイポーラトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を直流に整流して出力する整流器と、前記整流器の出力部に接続された平滑コンデンサを具備した直流電源装置において、
前記整流器の整流電圧が最大値を経過する毎に前記整流電圧が所定電圧に低下した時点で前記平滑コンデンサを放電開始させるスイッチ素子を備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記スイッチ素子はサイリスタであることを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記スイッチ素子はトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記スイッチ素子はダイアックであることを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記所定電圧は、負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らない電圧であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記平滑コンデンサは、前記整流器の整流電圧が前記平滑コンデンサの充電電圧を上回った時点において、負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らないだけの容量を有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の直流電源装置。
【請求項7】
前記整流器の整流電圧が前記平滑コンデンサの充電電圧を上回ったとき、前記整流器から前記平滑コンデンサを充電する方向に導通する整流素子を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の直流電源装置。
【請求項8】
前記整流素子は、ダイオードであることを特徴とする請求項7に記載の直流電源装置。
【請求項9】
前記整流素子は、ダイアックであることを特徴とする請求項7に記載の直流電源装置。
【請求項10】
前記平滑コンデンサと前記スイッチ素子は、平滑コンデンサとスイッチ素子が直列接続された複数の直列体として構成され、
前記複数の直列体における各スイッチ素子は自身に直列接続された平滑コンデンサを出力電圧の異なる電圧で放電開始させることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の直流電源装置。
【請求項11】
前記出力電圧の異なる電圧で自身に直列接続された平滑コンデンサを放電開始させる前記直列体における各スイッチ素子は、異なるブレークオーバ電圧を有するダイアックであることを特徴とする請求項10に記載の直流電源装置。
【請求項12】
前記出力電圧の異なる電圧で自身に直列接続された平滑コンデンサを放電開始させる前記直列体における各スイッチ素子は、同じブレークオーバ電圧を有するダイアックを複数個直列に接続したものであることを特徴とする請求項10に記載の直流電源装置。
【請求項13】
前記出力電圧の異なる電圧で自身に直列接続された平滑コンデンサを放電開始させる前記直列体における各スイッチ素子は、サイリスタであり、該サイリスタを異なるブレークオーバ電圧を有するダイアックを使ってトリガすることを特徴とする請求項10に記載の直流電源装置。
【請求項14】
出力部に接続される負荷と当該直流電源装置との間に、負荷電流に対して順方向に接続されたダイオードと負荷に並列に接続されたコンデンサを備えたことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の直流電源装置。
【請求項15】
交流を直流に整流して出力する整流器と、前記整流器の出力部に接続された平滑コンデンサを具備した直流電源装置の出力電圧平滑方法において、
前記整流器の整流電圧が最大値を経過する毎に、前記整流電圧が所定電圧に達した時点で前記平滑コンデンサを放電開始させ、出力電圧が負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らないようにしたことを特徴とする直流電源装置の出力電圧平滑方法。
【請求項16】
前記整流器の整流電圧が最大値を経過した後、前記平滑コンデンサの電圧を上回った時点において、前記平滑コンデンサの電圧が負荷を駆動するために必要な最低限の電圧を下回らないように、前記平滑コンデンサの容量が定められていることを特徴とする請求項15に記載の直流電源装置の出力電圧平滑方法。
【請求項17】
前記整流器の出力部にスイッチ素子と平滑コンデンサの直列体を複数並列接続し、複数の前記直列体における各平滑コンデンサを出力電圧の異なる電圧で放電開始させることを特徴とする請求項15または請求項16のいずれか一項に記載の直流電源装置の出力電圧平滑方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−79377(P2010−79377A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244043(P2008−244043)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】