説明

直線ガイド搭載装置

【課題】本発明の目的は、広温度域における高精度化を確実に図ることのできる直線ガイド搭載装置を提供することにある。
【解決手段】スライダ18はその要求性能に基づき選択された材質で構成され、スピンドル20はその要求性能に基づき選択された材質で構成され、また該スライダ18に該スピンドル20を取り付けるためのスピンドル取付機構30を備え、該スピンドル取付機構30は、駆動方向に平行な方向に所定離隔距離をおいて配置され、該スライダ18に該スピンドル20を固定状態で保持する固定側スピンドル取付手段32及び該スライダ18ないし該スピンドル20を該駆動方向に平行な方向のみにスライド自在に保持する逃げ側スピンドル取付手段34を備えたことを特徴とする直線ガイド搭載装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直線ガイド搭載装置、特にそのスピンドル取付機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、形状の精密測定を行うため、直線ガイドを使った、例えば三次元測定機等の高精度測定機(直線ガイド搭載装置)が用いられている。
三次元測定機は、互いに直交するガイドと、該ガイドの移動量を求めるスケール及びプローブをもち、それぞれの移動量からプローブの三次元座標値を求めるものである。
測定によって得られるものは、ワークのXYZ座標値であり、その座標値から必要とする穴径や穴位置・段差などの寸法は、コンピュータによるデータ処理によって求められる。
【0003】
ところで、従来、高精度測定機は、設置環境として、例えば20±0.5℃クラスの高水準な恒温室が必要であった。
【0004】
しかしながら、最近は、環境設備費やランニングコストの低減のため、高精度測定機には、より広い温度範囲での精度保証を可能とすることが求められている。
【0005】
この要望に応えるため、直線ガイドを使った高精度測定機では、温度補正機能を備えており、温度補正機能により測定結果を例えば20℃の寸法に換算して出力している。
【0006】
ところで、温度補正機能は、広い温度範囲での精度保証を試みるものである。
しかしながら、本発明者らによれば、単に温度補正機能を用いただけでは、精度の面で不十分な点がある。
すなわち、温度補正機能は、測定機本体の幾何精度の変化が少ないことが前提であり、このような前提があってはじめて、満足のゆく温度補正機能が有効になるものである。
しかしながら、従来、幾何精度変化の低減は改善の余地が残されていた。
【0007】
ここで、従来は、幾何精度変化の低減のため、例えば以下に示されるような材質の工夫、構造の工夫による先行技術が存在する。
従来は、材質の工夫に関し、熱変形を防止するためにアルミニウム合金によって三次元測定機を構成する技術もある(例えば、特許文献1参照)。
また従来は、構造の工夫に関し、板ばねによって熱変形を吸収させる技術(例えば、特許文献2参照)、平行板ばね機構によってスケールの長手方向弾性変形を許容する技術(例えば、特許文献3参照)、変形を吸収することのできるガイドレールの支承手段に関する技術(例えば、特許文献4参照)もある。
従来は、高精度測定機において、例えば特許公報1〜4に記載の技術を適用し、幾何精度の変化の低減化を試みることが考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開2000−28303号公報
【特許文献2】特開平5−312556号公報
【特許文献3】特開2004−301541号公報
【特許文献4】特開2005−205572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来方式にあっても、幾何精度変化の低減は、いまだ改善の余地が残されており、広温度域における高精度化も改善の余地が残されていた。また幾何精度の向上を実現することのできる有効な鍵も、いまだ不明であった。
また前記従来方式では、広温度域における高精度化は困難であるので、直線ガイド搭載装置の高速化、メンテナンスフリー化も困難であった。
【0010】
すなわち、材質のみに注目し、直線ガイド搭載装置において、特許文献1に記載の技術を採用したのでは、送り方向ないし直交方向の剛性を落としてしまう。このような機械の剛性低下も高精度化を妨げる。
一方、構造のみに注目し、直線ガイド搭載装置において、特許文献2〜4に記載の技術を試行錯誤で採用しても、従来は幾何精度の向上を実現することのできる有効な鍵がいまだ不明である以上、高精度化を確実に図るのは困難である。
【0011】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、広温度域における高精度化を確実に図ることのできる直線ガイド搭載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが、直線ガイド搭載装置において、広温度域における高精度化を図るため、検討を重ねた結果、まず機械の剛性確保と、熱影響の低減化との両立が非常に重要である点に到達した。
そして、本発明者らが、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立について検討の結果、以下に示されるように、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立に最も有効な部材の特定、剛性確保のための材質の選択、及び熱影響の低減化機構の組み合わせが非常に重要である点に到達した。
【0013】
<部材の特定>
すなわち、従来は、熱の影響を低減化するため、部材としてはベース、スライダが注目されており、このベース、スライダに対し、材質の工夫等を行うことが常套手段であった。
これに対し、本発明は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立を図ることを目的として、数ある部材の中から、有効な部材を検討した結果、スピンドルとスライダ間が非常に有効である点に至った。
<材質の選択>
また本発明は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立を図ることを目的として、数ある部材の材質の中から、スライダには軽量化の点で優れた例えばアルミ合金を用い、スピンドルには軽量化と高剛性との点で優れた炭素繊維強化プラスチック等を選択している。
<熱影響低減化機構の付加>
また本発明は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立を図ることを目的として、数ある対策の中から、変形を逃がす手法を選択している。
【0014】
このようにして本発明者らは、直線ガイド搭載装置において、広温度域における高精度化を図るためには、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立が非常に重要である点、前記部材の特定、材質の選択、熱影響低減化機構の付加の組み合わせによりはじめて、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立が確実に行える点を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる直線ガイド搭載装置は、ベースと、直線ガイドと、スライダと、スピンドルと、を備えた直線ガイド搭載装置において、該スライダは該スライダの要求性能に基づき選択された材質で構成される。前記スピンドルは該スピンドルの要求性能に基づき選択された材質で構成される。前記ガイド搭載装置は、前記スライダに前記スピンドルを取り付けるためのスピンドル取付機構を備える。前記スピンドル取付機構は、固定側スピンドル取付手段、及び逃げ側スピンドル取付手段を備える。前記スピンドル取付機構は、前記スライダないし前記スピンドルの前記駆動方向に平行な方向への熱変形が生じようとしても、該逃げ側スピンドル取付手段が、該熱変形を該駆動方向に平行な方向に逃がすことを特徴とする。
【0016】
ここで、前記直線ガイドは、前記ベースに対し所定の駆動方向に沿って設けられる。
また前記スライダは、前記直線ガイド上に設けられ、前記駆動方向に直線移動する。
前記スピンドルは、前記スライダと共に前記駆動方向に直線移動するように該スライダに設けられ、ワークにアプローチするためのツールを先端に保持する。
【0017】
前記固定側スピンドル取付手段は、前記駆動方向に平行な方向に所定の離隔距離をおいて配置され、前記スライダに前記スピンドルを固定状態で保持する。
前記逃げ側スピンドル取付手段は、前記スライダないし前記スピンドルを前記所定駆動方向のみにスライド自在に保持する。
【0018】
なお、本発明においては、前記逃げ側スピンドル取付手段が、逃げ側保持部材と、板バネないし直線ガイドと、を含むことが好適である。
ここで、前記逃げ側保持部材は、前記スライダに設けられ、前記スピンドルないし該スライダを前記駆動方向に平行な方向のみに相対的にスライド自在に保持する。
また前記板バネないし直線ガイドは、前記スピンドルないし前記スライダを前記駆動方向に平行な方向のみに相対的に変位させる。
【0019】
また、本発明においては、前記固定側スピンドル取付手段が、前記駆動方向と直交する方向から前記スピンドルを面で固定挟持する、少なくとも一対の固定側保持部材を備える。
前記逃げ側保持部材は、前記駆動方向と直交する方向から前記スピンドルを面で挟持する、少なくとも一対のものである。
本発明においては、前記逃げ側保持部材端部にそれぞれ前記板ばねの端部が固定され、該板ばねの中央部が前記スピンドルの端部に固定されていることが好適である。
【0020】
本発明においては、前記ツールは、前記スピンドルの先端に設けられ、前記ワーク上の三次元座標を検出するためのプローブを含む。前記直線ガイド搭載装置は、前記ワーク上の三次元座標値を求める三次元測定を行うことが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる直線ガイド搭載装置によれば、前記スピンドルと前記スライダとにそれぞれ最適な材質を選択し、かつ該スピンドルと該スライダ間に前記スピンドル取付機構を備えることとしたので、広温度域における機械の高精度化を図ることができる。
また本発明にかかる直線ガイド搭載装置によれば、高速化、メンテナンスフリー化を図ることもできる。
【0022】
また本発明においては、前記逃げ側スピンドル取付手段が、板ばねないし直線ガイドを含むことにより、前記広温度域における高精度化を、より確実に図ることができる。
【0023】
また本発明においては、前記固定側保持部材、前記逃げ側保持部材を備えることにより、前記広温度域における高精度化を、より確実に図ることができる。
【0024】
本発明においては、三次元測定機のスピンドルとスライダ間に前記スピンドル取付機構を設けることにより、三次元測定機において、広温度域における高精度化を、より確実に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる直線ガイド搭載装置の概略構成が示されている。
同図に示す三次元測定機(直線ガイド搭載装置)10は、ベース12と、直線ガイド14及びスライドブロック16と、スライダ18と、スピンドル20と、を備える。
【0026】
ここで、ベース12は、例えば三次元測定機10のZ軸ガイド22を含む。
【0027】
また、直線ガイド14は、ベース12に対しZ軸(上下方向)に沿って設けられる。
スライドブロック16は、直線ガイド14上に設けられ、Z方向に直線移動する。
【0028】
またスライダ18は、スライドブロック16上に設けられ、Z軸方向に直線移動する。
スピンドル20は、例えばZ軸スピンドル等よりなり、スライダ18と共にZ軸方向に直線移動するようにスライダ18に設けられ、ワーク24の座標位置情報を得るための検出器であるプローブ(ツール)26を、先端に保持する。
【0029】
本実施形態において特徴的なことは、機械の強度確保と熱影響低減との両立を図るため、
スライダ18を、該スライダ18の要求性能に基づき選択された材質で構成し、スピンドル20を、該スピンドル20の要求性能に基づき選択された材質で構成し、かつスライダ18とスピンドル20間にスピンドル取付機構30を備えたことである。
例えばスライダ18には、軽量化に優れた例えばアルミ合金を用い、スピンドル20には軽量化と高剛性とに優れた炭素繊維強化プラスチック等を用いている。
スピンドル取付機構30は、固定側スピンドル取付手段32と、逃げ側スピンドル取付手段34と、を備える。
ここで、固定側スピンドル取付手段32は、Z軸方向に所定離隔距離をおいて配置され、スライダ18にスピンドル20を固定状態で保持するためのものとする。
また逃げ側スピンドル取付手段34は、スライダ18ないしスピンドル20をZ軸方向のみにスライド自在に保持する。
【0030】
そして、スピンドル取付機構30は、スライダ18ないしスピンドル20の上下方向への熱変形が生じようとしても、逃げ側スピンドル取付手段34が、熱変形を上下方向に逃がす。
【0031】
<三次元測定機>
なお、本実施形態においては、三次元測定機10が、互いに直交するX軸ガイド40,Y軸ガイド42、Z軸ガイド22と、各ガイド40,42,22の移動量を求めるためのプローブ26と、を備える。三次元測定機10は、プローブ26等で得られたそれぞれの移動量からプローブ26の三次元座標値を求める。
また、本実施形態においては、スピンドル20が、四角柱体よりなる。
【0032】
<温度補正手段>
また本実施形態においては、広範囲な温度環境下での高精度測定を実現するため、温度補正手段50を備えることが好適である。
ここで、温度補正手段50は、例えばコンピュータ52等よりなり、温度センサ54で検出した温度データと、あらかじめ設定しておいたワーク24の線膨張係数等をもとに、評価手段56で求められた測定結果を20℃時に換算して、これを温度補正済み測定結果として出力する。
【0033】
スピンドル取付機構
以下に本実施形態において特徴的なスピンドル取付機構30について、より具体的に説明する。
図2には、本実施形態において特徴的なスピンドル取付機構30の要部の拡大図が示されている。
同図において、スピンドル取付機構30は、固定側スピンドル取付手段32と、逃げ側スピンドル取付手段34と、を備える。
【0034】
<固定側スピンドル取付手段>
固定側スピンドル取付手段30は、Z軸方向と直交する方向からスピンドル20を面で固定挟持する、少なくとも一対の固定側保持部材60(62)を備える。
【0035】
<逃げ側スピンドル取付手段>
逃げ側スピンドル取付手段34は、逃げ側保持部材64,66と、板ばね68と、を含むことが好適である。
ここで、逃げ側保持部材64,66は、少なくとも一対のものであり、スピンドル20ないしスライダ18を、Z軸方向のみに相対的にスライド自在に、スライダ18にスピンドル20を保持する。
本実施形態においては、逃げ側保持部材64,66が、Z軸方向と直交する方向から、四角柱状のスピンドル20の側壁を面で挟持する。
また、板ばね68は、スピンドル20ないしスライダ18をZ軸方向のみに相対的に変位させる。
本実施形態においては、逃げ側保持部材64,66にそれぞれ板ばね68端部が固定され、板ばね68中央部がスピンドル20の端部に固定されていることが好適である。
【0036】
本実施形態にかかる三次元測定機10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
すなわち、本実施形態は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立のため、対策の対象となる部材としてスライダ18とスピンドル20間を特定し、その材質としてスライダ18には軽量化を図るため例えばアルミ合金を用い、スピンドル20には軽量化と高剛性のため炭素繊維強化プラスチック(CFRP:carbon fiber reinforced plastic)等を選択した。そして、スライダ18とスピンドル20間の取付箇所の一端に、長手方向伸びの変位(駆動方向と平行した方向のバイメタルの影響)を逃がす板ばね68等の逃げ側スピンドル取付手段34を設けている。
【0037】
これにより、本実施形態は、機械の剛性確保のため(送り方向(上下方向)と、直交方向(水平方向)の剛性を落とすことなく)、スライダ18とスピンドル20とに異種部材を採用しても、バイメタルの影響を板ばね68で逃がすことができる。
【0038】
例えば図3(A)に示されるような熱変形のない状態から、図3(B)に示されるようにスライダ18ないしスピンドル20のZ軸方向への熱変形が生じようとしても、逃げ側スピンドル取付手段34が、該熱変形をZ軸方向に逃がす。
このようにして本実施形態は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立の問題を解決しているので、ベース、直線ガイド、スライダないしスピンドル等の各部材にストレスを与えなくなる。ひいては、広い温度域において三次元測定機の精度を維持することができる。
【0039】
そして、本実施形態は、バイメタルの影響による測定機本体の幾何精度の影響を極めて少なくすることができるので、このような前提に基づき温度補正手段による温度補正を行うことで、良好な測定結果を得ることができる。
したがって、本実施形態の三次元測定機10においては、広範囲な温度環境下での、高精度測定を実現することができる。
【0040】
ところで、前記広温度範囲での精度保証を確実なものとする本実施形態の効果は、前記本発明者らによる広温度範囲での精度保証を実現する鍵の発見があってはじめて、得られるものである。このような広温度範囲での精度保証を実現する鍵が不明であった従来においては、本実施形態の各構成の組み合わせを確実に選択するのは困難である以上、本実施形態の効果を確実に得るのも容易でない。
【0041】
すなわち、温度補正機能は、測定機本体の幾何精度の変化が少ないことが前提であり、幾何精度の変化が少ないという前提があってはじめて、満足のゆく温度補正機能が有効になるが、幾何精度変化の低減は改善の余地が残されていた。
【0042】
三次元測定機の直線ガイド(2面拘束ガイド)を使ったスライダ機構(移動部)において、高速駆動を考えた場合、スライダには軽量であること、スピンドルには軽量かつ高剛性であること等の異なった特性が必要となる。
軽量化を図るためスライダには例えばアルミ合金を用い、軽量化と高剛性とのためスピンドルには炭素繊維強化プラスチック(CFRP:carbon fiber reinforced plastic)等を用いる。
これらの組み合わせは、異種材料の組み合わせのため、バイメタル構造ないし類似構造となり、広い温度対応域において、幾何精度を劣化させる。また直線ガイドにストレスを与えるなど、高精度化やメンテナンスのフリー化が図れない。
このため直線ガイド搭載装置では従来、直前ガイドの前後の部品、つまりベース及びスライダには、熱の影響等を考慮し、同一部材を採用することが考えられる。
しかしながら、熱の影響等を考慮し、同一部材を採用していたのでは、機械の剛性が確保することができなことがあるので、機械の精度を低下させることがある。
一方、機械の剛性を確保するため、異種材料を組み合わせただけでは、熱の影響のため幾何精度を劣化させてしまう。
このため、従来は、広温度範囲測定では、三次元測定機各軸の真直度や直角度に影響を及ぼすことがあり、満足のゆく広温度範囲測定は困難であった。
【0043】
これに対し、本発明者らが、広温度域における直線ガイド搭載装置の高精度化を図るため、検討を重ねた結果、以下の点に着目した。
すなわち、本発明者らによれば、熱影響低減化に関し、スピンドルについては、長手伸び方向が直線ガイドにて、逃げると考えられていたため、従来は詳細な検討がなされていなかった。
しかしながら、本発明者らによれば、直線ガイド搭載装置の高精度化等を広温度域において推し進めた際には、スピンドルとスライダ間のバイメタルの影響が無視できず、現在の構造のまま、それぞれに異種材料を採用すると、スピンドル、スライダがそれぞれ曲げられ、更には、直線ガイド(ベース)を曲げ幾何精度を悪化させることがあることがわかった。
また、スピンドル、スライダ、直線ガイド、ベースにそれぞれ大きなストレスを与えるため、直線ガイドが持つ耐久性を充分に発揮することができなくなるおそれがある。
また直線ガイドにストレスを与えるなどの理由で、高精度化やメンテナンスのフリー化が図れない。
【0044】
このような着目点に基づき検討の結果、機械の剛性確保と、熱影響の低減化との両立のためには、部材の特定、機械の剛性確保のための部材材質の選択、及び熱影響低減化機構の組み合わせが非常に重要であり、以下の組み合わせによりはじめて、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立に成功した。
【0045】
<対策の対象となる部材の特定>
従来は、熱の影響を低減化するため、対象となる部材としてはベース、スライダが注目されており、このベース、スライダに対し、材質の工夫等を行うことが常套手段であった。
これに対し、本発明は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立を図ることを目的として、数ある部材の中から、有効な対象部材を検討した結果、スピンドルとスライダ間が非常に有効である点に至った。
【0046】
<部材の材質>
また本発明は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立を図ることを目的として、数ある部材の材質の中から、スライダには軽量化に優れた例えばアルミ合金を用い、スピンドルには軽量化と高剛性とに優れた炭素繊維強化プラスチック等を選択している。
【0047】
<部材への対策>
また本発明は、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立を図ることを目的として、数ある対策の中から、熱変形を逃がす手法を選択している。
【0048】
以上のように本実施形態にかかる三次元測定機によれば、機械の剛性確保と熱影響低減化との両立を実現するための鍵の発見に基づき、軽量化を図るためスライダには例えばアルミ合金を用い、軽量化と高剛性のためスピンドルには炭素繊維強化プラスチック等を用い、かつスライダとスピンドル間に前記スピンドル取付機構を設けている。
この結果、本実施形態においては、三次元測定機において、広範囲な温度環境下での、高精度測定を実現することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、逃げ側スピンドル取付手段が、スピンドルないしスライダをZ軸方向に平行な方向のみに相対的に変位させる板バネを含むことにより、熱変形がスピンドルないしスライダに生じようとしても、これを良好に逃がすと共に、測定時のZ軸方向の剛性はしっかり確保することができる。特に本実施形態においては、逃げ側保持部材端部にそれぞれ板ばね端部が固定され、板ばね中央部がスピンドル端部に固定されていることにより、前記良好な熱変形の逃がしと剛性の確保とを、より確実なものとしている。
【0050】
また本実施形態においては、固定側スピンドル取付手段が、Z軸と直交する方向からスピンドルを面で固定挟持する一対の固定側保持部材を含み、また逃げ側スピンドル取付手段が、Z軸方向と直交する方向からスピンドルを面で挟持する一対の逃げ側保持部材を含むことにより、Z軸方向と直交する剛性はしっかり確保しながら、熱変形がスピンドルないしスライダに生じようとしても、これを良好に逃がすことができる。
【0051】
<変形例>
なお、測定機は三次元測定機に限定されるものでなく、ベース、直線ガイド、スライダ、スピンドルを含むものであれば、他の測定機にも適用可能である。
また直線ガイド搭載装置は測定機に限定されるものでなく、ベース、直線ガイド、スライダ、スピンドルを含むものであれば、加工装置にも適用可能である。
【0052】
また前記構成では、逃げ側スピンドル取付手段として、板ばねを用いた例について説明したが、板ばねに代えて直線ガイドを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態にかかる直線ガイド搭載装置の概略構成の説明図である。
【図2】本実施形態にかかる直線ガイド搭載装置において特徴的なスピンドル取付機構の要部の説明図である。
【図3】本実施形態にかかる直線ガイド搭載装置において特徴的なスピンドル取付機構の作用の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 三次元測定機(直線ガイド搭載装置)
12 ベース
14 直線ガイド
18 スライダ
20 スピンドル
30 スピンドル取付機構
32 固定側スピンドル取付手段
34 逃げ側スピンドル取付手段
68 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対し所定の駆動方向に沿って設けられた直線ガイドと、
前記直線ガイド上に設けられ、前記駆動方向に直線移動するスライダと、
前記スライダと共に前記駆動方向に直線移動するように該スライダに設けられ、ワークにアプローチするためのツールを先端に保持するスピンドルと、
を備えた直線ガイド搭載装置において、
前記スライダは該スライダの要求性能に基づき選択された材質で構成され、
前記スピンドルは該スピンドルの要求性能に基づき選択された材質で構成され、
また前記スライダに前記スピンドルを取り付けるためのスピンドル取付機構を備え、
前記スピンドル取付機構は、前記駆動方向に平行な方向に所定の離隔距離をおいて配置され、前記スライダに前記スピンドルを固定状態で保持するための固定側スピンドル取付手段、及び該スライダないし該スピンドルを該駆動方向に平行な方向のみにスライド自在に保持する逃げ側スピンドル取付手段を備え、
前記スピンドル取付機構は、前記スライダないし前記スピンドルの前記駆動方向に平行な方向への熱変形が生じようとしても、該逃げ側スピンドル取付手段が、該熱変形を該駆動方向に平行な方向に逃がすことを特徴とする直線ガイド搭載装置。
【請求項2】
請求項1記載の直線ガイド搭載装置において、
前記逃げ側スピンドル取付手段は、前記スライダに設けられ、前記スピンドルないし該スライダを前記駆動方向に平行な方向のみに相対的にスライド自在に保持する逃げ側保持部材と、
前記スピンドルないし前記スライダを前記駆動方向に平行な方向のみに相対的に変位させる、板バネないし直線ガイドと、
を含むことを特徴とする直線ガイド搭載装置。
【請求項3】
請求項2記載の直線ガイド搭載装置において、
前記固定側スピンドル取付手段は、前記駆動方向と直交する方向から前記スピンドルを面で固定挟持する、少なくとも一対の固定側保持部材を備え、
前記逃げ側保持部材は、前記駆動方向と直交する方向から前記スピンドルを面で挟持する、少なくとも一対のものであり、
前記逃げ側保持部材端部にそれぞれ前記板ばねの端部が固定され、該板ばねの中央部が前記スピンドル端部に固定されていることを特徴とする直線ガイド搭載装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の直線ガイド搭載装置において、
前記ツールは、前記スピンドルの先端に設けられ、前記ワーク上の三次元座標を検出するためのプローブを含み、
前記ワーク上の三次元座標値を求める三次元測定を行うことを特徴とする直線ガイド搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−147359(P2007−147359A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340068(P2005−340068)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】