説明

相変化メモリ素子、相変化チャンネルトランジスタおよびメモリセルアレイ

【課題】相変化メモリ素子において、アモルファス相から結晶相への相転移に要する電圧を低減する。
【解決手段】相変化メモリ素子(1)は、第1の電極(6)と、第2の電極(8)と、第1(6)および第2の電極(8)間に設けたメモリ層(14)と、を備え、このメモリ層(14)は、少なくとも、室温でアモルファス相および結晶相で安定する相変化材料で構成される第1の層(10)と、抵抗材料で構成される第2の層(12)とを含み、第2の層(12)の抵抗値を、第1の層(10)がアモルファス相である場合の抵抗値より小さく、第1の層(10)が結晶相である場合の抵抗値よりも大きくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で結晶相およびアモルファス相で安定する相変化材料を用いた相変化メモリ素子および相変化チャンネルトランジスタ、さらにこれらの素子あるいはトランジスタで構成されるメモリセルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカルコゲナイド系の材料は、室温で結晶相およびアモルファス相で安定する特性を有し、それぞれの相で比抵抗が2桁乃至4桁相違する。したがって、このような材料の薄膜を結晶相あるいはアモルファス相のいずれかで安定させることによって情報を書き込み、抵抗値の測定からその薄膜が結晶相かアモルファス相かを判断することにより情報を読み出すようにした、不揮発性のメモリが実現されている。
【0003】
このようなメモリにおいて、情報、即ち1、0を書き込む場合、相変化材料の薄膜を結晶相からアモルファス相へ、あるいはアモルファス相から結晶層へ相転移させる必要がある。カルコゲナイド系材料では、通常、材料を630℃以上に昇温して急冷した場合アモルファス相として固化し、200℃以上に昇温して徐冷すると結晶相で安定する。相変化材料薄膜の加熱は、薄膜に電流を流すことによって発生するジュール熱を利用して行われる。相変化材料薄膜がアモルファス相に転移した場合、この薄膜の抵抗値は、結晶相に転移した場合の抵抗値に比べて2桁乃至4桁大きい。したがって、相変化材料薄膜に読み出し電圧を印加して流れる電流量を検出することにより、薄膜がアモルファス相か結晶相の何れで安定しているか、即ち書き込まれた情報を読み出すことができる。
【0004】
最近、このような相変化材料薄膜において、電流の流れる方向に垂直にバイアス電圧を印加することによって電流量の制御が可能であることが見出され、この特性を利用して、メモリ機能とスイッチング機能を有する相変化チャンネルトランジスタが提案されている(特許文献1参照)。この相変化チャンネルトランジスタでは、チャンネル部分を相変化材料で構成することによりメモリ機能を持たせ、かつチャンネル部分を流れる電流をゲート電圧によりオン・オフスイッチングすることにより、情報の書き込み、読み出しのタイミングを制御することができる。したがって、この相変化チャンネルトランジスタを用いてRAMを構成する場合、選択トランジスタとメモリ部とを一個のトランジスタで実現することが可能となり、超高密度のストレージ素子を提供することができる。ちなみに従来のDRAMでは、選択トランジスタとキャパシタで構成されるメモリ素子とで一個のメモリセルが構成されており、キャパシタを半導体基板上に組み込む必要性からメモリセルの面積が大きくなり、微細化が阻害されている。その結果、メモリセルの高密度化には限度がある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−93619
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記相変化メモリ素子および相変化チャンネルトランジスタのいずれであっても、情報を書き込むためには相変化材料層に相転移を起こす必要がある。相転移のためには、相変化材料薄膜に通電してジュール熱を発生させることが必要である。ところが、アモルファス相から結晶相に相転移させる場合、アモルファス相での抵抗値が高く電流が流れ難いので、相転移に要する温度まで材料を加熱するためには、相当高い電圧を印加する必要がある。そのため、メモリ素子の書き込み電圧が高くなる。さらに、材料がアモルファス相から結晶相に転移した場合、結晶相での抵抗値が低いため、上記の電圧では材料に過度の電流が流れ素子が破壊されてしまう恐れがある。
【0007】
このような不都合を防止するためには、相変化材料のアモルファス時の抵抗値を下げて、アモルファス相から結晶相への相転移のための印加電圧を低くする必要がある。現在は、2桁から4桁の差があるアモルファス相と結晶相の抵抗値の差を1桁程度に低下させることが望ましい。ところが、このような要求を満足する相変化材料は得られていない。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決する目的でなされたものであり、相変化材料自体を変更することなく、アモルファス相から結晶相への相転移に必要な印加電圧を低くすることが可能な、新規な構成の相変化メモリ素子および相変化チャンネルトランジスタ、さらにこれらの素子を用いたメモリセルアレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明に係るメモリ素子は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1および第2の電極間に設けたメモリ層と、を備え、前記メモリ層を、少なくとも、室温でアモルファス相および結晶相で安定する相変化材料で構成される第1の層と、抵抗材料で構成される第2の層とで構成し、第2の層の抵抗値を、第1の層がアモルファス相である場合の抵抗値よりも小さく、第1の層が結晶相である場合の抵抗値よりも大きくしている。
【0010】
第1の電極、第2の電極およびメモリ層を半導体基板上に形成した絶縁膜上に形成する場合、前記第1の層を絶縁膜上に形成し、その上に第2の層を積層するようにしても良い。あるいはその反対でもよい。その場合、相変化材料で構成される第1の層上にさらに抵抗材料で構成される第3の層を設けてもよい。また第1、第2の電極間で、相変化材料の第1の層と抵抗層である第2の層とを並列に隣接するようにして設けても良い。
【0011】
第2の発明に係る相変化チャンネルトランジスタは、第1の電極と、第2の電極と、前記第1および第2の電極間に設けたメモリ層と、前記メモリ層に絶縁膜を介して設けられた第3の電極と、を備え、前記メモリ層は、少なくとも、室温でアモルファス相および結晶相で安定する相変化材料で構成される第1の層と、抵抗材料で構成される第2の層と含み、第2の層の抵抗値を、第1の層がアモルファス相である場合の抵抗値よりも小さく、第1の層が結晶相である場合の抵抗値よりも大きくしている。
【0012】
第1、第2の層は、第1、第2の電極間で垂直方向に積層されていても良く、あるいは第1、第2の電極間で並列に隣接するようにして設けられていても良い。また、第3の電極を半導体基板上に形成し、第1、第2の電極およびメモリ層を第3の電極を被覆して前記半導体基板上に設けられた絶縁膜上に形成しても良い。あるいは、第1、第2の電極およびメモリ層を半導体基板上に形成した第1の絶縁膜上に形成し、第3の電極をメモリ層上に設けた第2の絶縁膜上に形成するようにしても良い。
【0013】
また、この相変化チャンネルトランジスタをスイッチング素子として機能させるために、第1、第2の電極間に電圧を印加した場合にメモリ層を流れる電流を遮断する第1の電圧と遮断しない第2の電圧とを、第3の電極に選択的に印加するようにしても良い。
【0014】
第3の発明に係るメモリセルアレイは、一個のMOSトランジスタと、室温でアモルファス相と結晶相とで安定する相変化材料層を含むメモリ部とで構成されるメモリセルを同一基板上に複数個配列し、前記メモリ部を、第1の発明に係る相変化メモリ素子で構成している。
【0015】
第4の発明に係るメモリセルアレイは、前記第2の発明に係る相変化チャンネルトランジスタを複数個、同一の半導体基板上に配置して構成される。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明に係る相変化メモリ素子および第2の発明に係る相変化チャンネルトランジスタでは、メモリ層が、相変化材料層と抵抗層を第1、第2の電極間方向とは垂直方向において積層した構成、あるいは並列に隣接するように配置した構成を有するため、第1、第2の電極間に電圧を印加する場合、メモリ層の合成抵抗は、相変化材料層がアモルファス相である場合はほぼ抵抗層の抵抗値となり、相変化材料層が結晶相である場合はほぼ相変化材料層の抵抗値となる。したがって、抵抗層の抵抗値を相変化材料層がアモルファス相である場合の抵抗値よりも小さくなるように設定すれば、合成抵抗が低下し大きな電流が抵抗層を経由して流れるようになる。その結果、抵抗層が容易に発熱し、その発熱によってアモルファス相である相変化材料層が加熱され、相転移を起こすようになる。
【0017】
このように、メモリ層を、相変化材料層と抵抗層の積層構造とすることによって、メモリ層全体の合成抵抗値を低減させ、これによって、相変化材料層のアモルファス相から結晶相への相転移を低い印加電圧で実現することが可能となり、実用的な相変化メモリ素子あるいは相変化チャンネルトランジスタを得ることができる。
【0018】
また、このような相変化メモリ素子あるいは相変化チャンネルトランジスタを同一基板上に複数個配列してメモリセルアレイを構成することによって、より低い電圧で駆動することが可能なメモリセルアレイを得ることができる。特に、相変化チャンネルトランジスタで構成したメモリセルアレイの場合、従来は別個に形成する必要が有ったスイッチング用のトランジスタとメモリ部とを一個のトランジスタで実現できるので、その分基板上で一個のメモリセルが必要とする面積が大幅に低下し、それによって超高密度のメモリセルアレイを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1(a)および(b)は、本発明の第1の実施形態に係る積層型相変化メモリ素子1の構造を示す一部切り欠き断面図である。図(a)は相変化材料層がアモルファス相である場合、図(b)は相変化材料層が結晶相である場合をそれぞれ示している。図(a)および(b)において、2はSiの半導体基板、4はSiO等を材料とする絶縁層、6および8はAl、Au等を材料とする第1、第2の電極層、10はカルコゲナイドのような一般の相変化メモリに使用される材料で構成された相変化材料薄膜の層(以下、相変化材料層)、12はC、W等を材料とする抵抗層を示す。相変化材料層10および抵抗層12は、相変化メモリ素子1のメモリ部14を構成する。また、13はメモリ部14を被覆する保護層であって、例えばSiO等で構成されている。
【0020】
カルコゲナイドは、少なくともSbとTeを含む、GeSbTe系あるいはAgInSbTe系の材料であり、室温でアモルファス相および結晶相で安定している。一例では、材料がアモルファス相をとる場合、その比抵抗ρは約1Ωm程度であり、一方、結晶相をとる場合、約10−4Ωm程度である。したがって、層10がアモルファス相である場合と結晶相である場合の抵抗値の差は、10倍、即ち4桁の相違となる。なお、層10はプラズマ蒸着法などによって形成されるため、プラズマプロセスの相違により、材料の比抵抗と形状で決まる抵抗値とは異なる抵抗値を示す場合が多い。
【0021】
抵抗層12は、相変化材料層10が結晶相を取る場合の抵抗値よりも高く、アモルファス相を取る場合の抵抗値よりも小さい抵抗値を有するように構成される。このような抵抗層12を実現する材料として、例えば、C、W、Mo、TiN、TiWがある。相変化材料層10が上記のような比抵抗ρを有するカルコゲナイドである場合、抵抗層12の比抵抗約を10−2〜10−1Ωm程度とすることができる。抵抗層12は、相変化材料層10上に上記のような抵抗材料を、例えばプラズマ蒸着することによって形成される。
【0022】
図2に、相変化材料層10と抵抗層12の電圧−電流特性の一例を示す。図2のAは、相変化材料層10が結晶相を有しその抵抗値がR1である場合の電圧−電流特性を、Bは相変化材料層10がアモルファス相を有しその抵抗値がR2である場合の電圧−電流特性を、さらにCは抵抗値R3を有する抵抗材料層12の電圧−電流特性を示す。抵抗層12の抵抗値R3は、R1<R3<R2となるように選択されている。
【0023】
図1(a)では、相変化材料層10はアモルファス状態であるため、その抵抗値R2は抵抗層12の抵抗値R3より大きく、例えば10倍である。そのため、メモリ部14の合成抵抗はほぼ抵抗層12の抵抗値R3となり、第1、第2の電極間に電圧を印加した場合、電流は図の点線aで示すように、主に抵抗層12を経由して流れる。その結果、抵抗層12がジュール熱を発生し、相変化材料層10を加熱する。この加熱によって、相変化材料層10が間接的に加熱され、アモルファス相から結晶相に相転移を起こす。
【0024】
図2に示すように、同じ電圧Vaをアモルファスの単層(直線Bの場合)とアモルファス層と抵抗層の複層(直線Cの場合)に印加した場合、流れる電流Iは大きく相違する。ジュール熱による発熱は消費される電力、即ちI×Vによって決まるため、同じ熱量を得る場合には電流Iが大きければその分電圧Vを低減することができる。したがって、抵抗層と相変化材料層を積層した構造のメモリ層では、より低い印加電圧で、相変化材料層を加熱し相転移を起こすことができる。
【0025】
一方、図1(b)に示すように相変化材料層10が結晶相に転移した状態では、その抵抗値はアモルファス相の場合より、例えば3桁程度低下してR1となる。その結果、メモリ部14の合成抵抗はほぼ抵抗R1となり、電流は図の点線bで示すように、相変化材料層10を経由して流れるようになる。したがって、結晶相からアモルファス相に相転移させる場合は、抵抗層12が存在する影響をほとんど考慮する必要はない。
【0026】
以下に、抵抗層12が存在することによって、アモルファス相から結晶相への相転移のために印加する電圧が低減する理由を詳細に説明する。
【0027】
ジュール熱の発生量は抵抗体に加えられる電力Pによって決まる。ここで、電力Pは、
P=IV=V/R
として示される。相変化材料層10が抵抗値の小さい結晶相である場合と、抵抗値が大きいアモルファス相である場合に、両者で一定の電力Pを得るためには、
P=V1/R1=V2/R2
を満足する電圧V1(結晶相への印加電圧)、電圧V2(アモルファス相への印加電圧)が必要である。したがって、アモルファス相へ印加する電圧V2は、
V2=(R2/R1)1/2・V1
となり、電圧V2は電圧V1の(R2/R1)1/2倍としなければならない。現状では、R2/R1=10〜10であるため、電圧V2は電圧V1の10〜100倍の値が必要である。
【0028】
これに対して、メモリ部14を相変化材料層10と抵抗層12の積層構造とした場合には、相変化材料層10がアモルファス状態のメモリ部14の合成抵抗はほぼ抵抗層12の抵抗値R3となるため、電力Pを得るための電圧V3は、
V3=(R3/R1)1/2・V1
となり、R3/R1が5以下であれば、電圧V3は電圧V1の約2.2倍の電圧でよい。この結果、従来ではアモルファス相から結晶相への転移のために5V以上の印加電圧が必要であったものが、5V以下の電圧で相転移可能とすることができる。
【0029】
図3の(a)および(b)に、本実施形態に係る積層型相変化メモリ素子の他の実施例を示す。なお、以下に示す図面において、図1と同じ符合は同一または類似の構成要素を示すものとする。図3(a)に示す相変化メモリ素子1aは、第1、第2の電極6、8間にまず抵抗層16を形成し、その後相変化材料層10aを形成した構造を有する。図3(b)に示す相変化メモリ素子1bは、図3の素子において、相変化材料層10a上にさらに第2の抵抗層18を設け、2個の抵抗層16、18で相変化材料層10aを挟んだ構造を特徴としている。これによって、メモリ部の抵抗値の制御をさらに容易にしている。また、図1に示す構造の相変化メモリ素子と同様に相変化材料層10a上に抵抗層18を設けているので、相変化材料層10aをアモルファス化するために液体化した相変化材料が飛散するのを防止することができる。なお、図(b)の構造において、抵抗層18の代わりに絶縁層を設けても良い。
【0030】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態にかかる並列型相変化メモリ素子の構造を示す斜視図である。本実施形態の素子1cは、絶縁層4上の第1、第2の電極層6、8間に相変化材料層10bと抵抗層12bを並列に隣接して設けた構造を有している。図示はしていないが、相変化材料層10bと抵抗層12b上に保護膜を設けても良い。相変化材料層10bと抵抗層12bの電気的特性は、上記第1の実施形態に係る積層型相変化メモリ素子の場合と同様である。したがって、この構造のメモリ素子においても、相変化材料層10bがアモルファス相である場合は第1および第2の電極層6、8間で主に抵抗層12bを介して電流が流れ、相変化材料層10bは抵抗層の温度上昇により間接的に加熱される。そのため、第1の実施形態に係るメモリ素子の場合と同様に、相変化材料層10bをアモルファス相から結晶相に書き換える場合の印加電圧を低く抑えることができる。相変化材料層10bを結晶相からアモルファス相に相転移させる場合は、主に相変化材料層10bを介して電流が流れるので、抵抗層12bの存在による影響はない。
【0031】
[第3の実施形態]
図5(a)および(b)は、本発明の第3の実施形態に係るメモリセルアレイ(PRAM)の構造を示す一部切り欠き断面図である。この図では、PRAMの一個のメモリセルのみを示しているが、実際は複数のメモリセルが同一基板上に形成され、高記憶容量の集積回路を構成している。なお、このようなメモリセルアレイにおける配線構造については周知であるので、ここでは説明しない。
【0032】
図5(a)において、20はSi半導体基板、22は素子分離用のSiO層、24、26は例えばn+拡散層、28はゲート絶縁膜、30はゲート電極を示す。n+拡散層24は、層間絶縁膜32に設けたスルーホール中に形成したコンタクト34を介してビットライン36に接続されている。他方の拡散層26上には、上記第1の実施形態に係る積層型メモリ部あるいは第2の実施形態にかかる並列型のメモリ部38が形成されている。図示の例では、メモリ部38は相変化材料層38aと抵抗層38bの積層構造を有し、拡散層26、40によって第1、第2の電極を構成している。これによって、第1の実施形態のメモリ素子が構成される。なお、メモリ部38の他端はn+拡散層40を介してソースライン42に接続されている。
【0033】
拡散層24、26、ゲート電極30はMOSトランジスタを構成し、Si半導体基板20のゲート直下のチャンネル領域44における通電状態をゲート電極30に印加する電圧によってオン、オフ制御する。即ち、-メモリ部38を選択的に駆動する場合は、ゲート電極30の電圧を制御してチャンネル領域44を導通状態に設定し、メモリ部に電力を供給する。反対にこのメモリ部を選択しない場合は、ゲート電極30にオフ電圧を印加する。
【0034】
したがって、MOSトランジスタのゲート電圧を制御してチャンネル領域44を導通させれば、メモリ部38に、ビットライン36を介して書き込み(相転移のための電圧)あるいは読み出し電圧が印加され、反対にチャンネル領域44を非導通とすれば書き込み、読み出し電圧が印加されない。なお、ゲート電極30は、図示しないワードラインに接続されている。
【0035】
図5の(b)は、第3の実施形態の他の実施例に係るメモリセルアレイの構造を示す図である。このメモリセルアレイは、図(a)のメモリ部に代わって、縦型の電極構造を有するメモリ部を構成したことを特徴とする。メモリ部39は、n+層26上に相変化材料層39aと抵抗層39bを並列に隣接して形成した構造を有し、n+層26を一方の電極とし、ソースライン42aを他方の電極としている。このメモリセルアレイも、図(a)に示すメモリセルアレイと同様にして、メモリ部39に情報を書き込み、読み出すことができる。
【0036】
図5(a)、(b)のメモリセルアレイにおいて、メモリ部38あるいは39では、第1、第2の実施形態の説明の項で示したように、相変化材料層がアモルファス相から結晶相へ相転移させる場合に必要な電圧が抵抗層を設けない場合に比べて大幅に低減される。その結果、駆動電力が小さいメモリセルアレイを実現することが可能となる。
【0037】
[第4の実施形態]
図6乃至図8は、本発明の第4の実施形態に係る相変化チャンネルトランジスタの第1乃至第4実施例の一部切り欠き断面図である。図6乃至図8において、50は半導体基板、52はゲート電極、54はSiO等の絶縁膜、56はソース電極さらに58はドレイン電極を示す。図6に示す第1の実施例では、ゲート電極52上に絶縁膜54を介して相変化材料層60を形成し、さらにその上に抵抗層62を形成した構成を有する。図7に示す第2の実施例では、ゲート電極52上に絶縁膜54を介して抵抗層62aを形成し、その上に層変化材料層60aを形成した構成を有する。図8(a)に示す第3の実施例では、半導体基板50上にゲート電極を形成せず、相変化材料層60a上に絶縁膜64を介してゲート電極52aを形成した構成を有する。また、図8(b)に示す第4の実施例では、相変化材料層60bと抵抗層62bを第1、第2の電極層56、58間で並列に隣接して配置した構造の相変化チャンネルトランジスタを示す。この相変化チャンネルトランジスタでは、相変化材料層60aおよび抵抗層62b上に絶縁膜64aを形成し、その上にゲート電極52aを設けている。
【0038】
図6乃至図8に示すそれぞれの相変化チャンネルトランジスタでは、相変化材料層60あるいは60aをアモルファス相あるいは結晶相とすることによって、このトランジスタをメモリとして機能させている。この場合の書き込み、読み出しの制御は、第1の実施形態における相変化メモリ素子と同じである。さらに、ソース、ドレイン電極56、58間でメモリ部を相変化材料層と少なくとも一個の抵抗層との積層構造あるいは並列構造とすることによって、相変化材料層をアモルファス相から結晶相へ相転移させる場合に要する電圧を低減するようにしている。したがって、相変化材料層、抵抗層の材料および抵抗値は、第1の実施形態における相変化メモリ素子の場合と同様に選択され、設定される。
【0039】
本実施形態の相変化チャンネルトランジスタは、メモリ機能に加えてさらにトランジスタとしてのスイッチング機能を備えている。図9に、図6乃至図8に示す相変化チャンネルトランジスタのゲート電圧とソース・ドレイン電流の関係を模式的に示す。ゲート電圧は、図6乃至8に示すゲート電極52または52aと、ソース電極56あるいはドレイン電極58間の電圧である。図9の曲線Fは、相変化材料層60または60aが結晶相の状態である場合のゲート電圧対ソース・ドレイン電流(チャンネル電流)の関係を示し、曲線Hは相変化材料層60または60aがアモルファス相を取る場合のゲート電圧対ソース・ドレイン電流の関係を示している。
【0040】
図示するように、相変化材料層60または60aで構成されるチャンネルにおいて、ゲート電圧が一定の値Vtよりも低い場合、チャンネル領域には、ゲート電圧にかかわりなく、層60または60aがアモルファス相であるか結晶相であるかによって決まるほぼ一定の電流I1(アモルファス相の場合)またはI2(結晶相の場合)が流れるが、ゲート電圧が電圧Vtを超えると、チャンネル電流はほとんど流れなくなる。したがって、ゲート電極52または52aに印加する電圧を制御することによって、図6乃至8に示す素子をスイッチング素子としても動作させることができるようになる。
【0041】
なお、このような相変化材料のスイッチング機能については、上述した特許文献1に詳細に説明されている。
【0042】
[第5の実施形態]
図10は、上記第4の実施形態に係る相変化チャンネルトランジスタを用いたメモリセルアレイの構造を示す一部切り欠き断面図であり、2個のメモリセルを示している。図において、80はSi半導体基板、82はSiO等の絶縁膜を示し、この絶縁膜82上に、図8に示す構造の相変化チャンネルトランジスタ83a、83bが形成されている。相変化チャンネルトランジスタ83a、83bは、それぞれ、抵抗材料で構成された抵抗層84、相変化材料で構成された相変化材料層86、ゲート絶縁膜88、ゲート電極90およびソース、ドレイン電極を構成する第1、第2の電極92および94を備えている。
【0043】
さらに、ゲート電極90は図示しないワードラインに接続され、第1の電極92はビットライン96に接続され、かつ第2の電極94は図示しないソースラインに接続されている。なお、98は層間絶縁膜を示している。抵抗層84と相変化材料層86は、相変化材料層86がアモルファス層か結晶相かで情報を記録するメモリ部を構成している。ゲート電極90には、トランジスタ83a、83bをオン、オフスイッチングするためのスイッチング電圧がワードラインを経由して印加される。メモリ部への書き込み、読み出し電圧は、ビットライン96とソースライン間で印加される。したがって、ビットラインとワードラインを選択して駆動することにより、メモリアレイ上の任意のトランジスタが選択されて情報の書き込み、読み出しあるいは消去が行われる。
【0044】
図10のメモリアレイでは、抵抗層84と相変化材料層86の積層構造あるいは並列構造によってメモリ部が構成されているので、第1、第2実施形態の相変化メモリ素子について説明したように、相変化材料層86をアモルファス状態から結晶状態に相転移させるために必要な電圧が低減されるという、大きな利点を有する。さらに、メモリ部を構成するトランジスタがスイッチング機能を有するため、任意のメモリセルをアドレスするための選択トランジスタを設ける必要がない。その結果、選択トランジスタとメモリ部との両者を必要とする従来のメモリセルアレイに比べて、1個のメモリセルの面積が大幅に低減する。その結果、同一基板上に超高密度にメモリセルを構成することができる。
【0045】
なお、上記の全ての実施形態において、相変化材料としては、GeSbTe以外に、GaSb、InSb、InSe、SbTe、GeTe、InSbTe、GaSeTe、SnSbTe、InSbGe、AgInSbTe、GeSnSbTe、GeSbSeTe、TeGeSbS等の材料が使用可能である。またこのような材料において、その組成比を種々に変化したものも使用可能である。抵抗層の材料としては、C、W、Mo、TiN、TiW等がある。絶縁層材料としては、SiO、Si、ZnS等が使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る相変化メモリ素子の断面図。
【図2】図1に示す相変化メモリ素子における電圧−電流特性を示す図。
【図3】図1に示す相変化メモリ素子の他の実施例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る相変化メモリ素子の斜視図。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかるメモリセルアレイの断面図。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る相変化チャンネルトランジスタの断面図。
【図7】図6に示す相変化チャンネルトランジスタの一実施例を示す図。
【図8】図6に示す相変化チャンネルトランジスタの他の実施例を示す図。
【図9】図6乃至8に示す相変化チャンネルトランジスタのスイッチング機能の説明に供する図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るメモリセルアレイを示す図。
【符号の説明】
【0047】
1 相変化メモリ素子
2、20 Si半導体基板
4 絶縁膜
6 第1の電極
8 第2の電極
10 相変化材料層
12 抵抗層
14 メモリ部
16 第2の抵抗層
50 Si半導体基板
52、52a ゲート電極
54 絶縁膜
56 ソース電極
58 ドレイン電極
60、60a 相変化材料層
62、62a 抵抗層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1および第2の電極間に設けたメモリ層と、を備え、
前記メモリ層は、少なくとも、室温でアモルファス相および結晶相で安定する相変化材料で構成される第1の層と、抵抗材料で構成される第2の層とを含み、前記第2の層の抵抗値は、前記第1の層がアモルファス相である場合の抵抗値よりも小さく、前記第1の層が結晶相である場合の抵抗値よりも大きいことを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項2】
請求項1に記載の相変化メモリ素子において、前記第1および第2の層は、前記第1、第2の電極間方向とは垂直方向において積層された構造を有することを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項3】
請求項1に記載の相変化メモリ素子において、前記第1および第2の層は、前記第1、第2の電極間で並列に隣接して設けられていることを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の相変化メモリ素子において、前記第1の層はカルコゲナイド系の材料で構成されることを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の相変化メモリ素子において、前記第2の層を構成する抵抗材料は、C、W、Mo、TiN、TiWの少なくとも1個を含んでいることを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の相変化メモリ素子において、前記メモリ層は保護膜で被覆されていることを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項7】
請求項2に記載の相変化メモリ素子において、前記第1、第2の電極および前記メモリ層は半導体基板上に形成した絶縁膜上に設けられていることを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項8】
請求項7に記載の相変化メモリ素子において、前記メモリ層の前記第1の層は、前記第1、第2の電極間で前記絶縁膜上に形成され、前記第2の層は前記第1の層上に積層されることを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項9】
請求項7に記載の相変化メモリ素子において、前記メモリ層の前記第2の層は、前記第1、第2の電極間で前記絶縁膜上に形成され、前記第1の層は前記第2の層上に積層されていることを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項10】
請求項7に記載の相変化メモリ素子において、前記メモリ層は、前記第1の層上にさらに抵抗材料または絶縁材料で構成される第3の層を有することを特徴とする、相変化メモリ素子。
【請求項11】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1および第2の電極間に設けたメモリ層と、
前記メモリ層に絶縁膜を介して設けられた第3の電極と、を備え、
前記メモリ層は、少なくとも、室温でアモルファス相および結晶相で安定する相変化材料で構成される第1の層と、抵抗材料で構成される第2の層とを含み、前記第2の層の抵抗値は、前記第1の層がアモルファス相である場合の抵抗値よりも小さく、前記第1の層が結晶相である場合の抵抗値よりも大きいことを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項12】
請求項11に記載の相変化チャンネルトランジスタにおいて、前記第1および第2の層は、前記第1、第2の電極間方向とは垂直方向において積層された構造を有することを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項13】
請求項11に記載の相変化チャンネルトランジスタにおいて、前記第1および第2の層は、前記第1、第2の電極間で並列に隣接して設けられていることを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項14】
請求項11乃至13の何れか1項に記載の相変化チャンネルトランジスタにおいて、前記第1の層はカルコゲナイド系の材料で構成されることを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項15】
請求項11乃至13の何れか1項に記載の相変化チャンネルトランジスタにおいて、前記第2の層を構成する抵抗材料は、C、W、Mo、TiN、TiWの少なくとも1個を含んでいることを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項16】
請求項11乃至13の何れか1項に記載の相変化チャンネルトランジスタにおいて、前記第3の電極は半導体基板上に形成され、前記第1、第2の電極および前記メモリ層は前記第3の電極を被覆して前記半導体基板上に設けられた絶縁膜上に形成されることを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項17】
請求項11乃至13の何れか1項に記載の相変化チャンネルトランジスタにおいて、前記第1、第2の電極および前記メモリ層は半導体基板上に形成された第1の絶縁膜上に形成され、前記第3の電極は前記メモリ層上に設けられた第2の絶縁膜上に形成されることを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項18】
請求項11乃至13の何れか1項に記載の相変化チャンネルトランジスタにおいて、当該相変化チャンネルトランジスタをスイッチング素子として機能させるために、前記第3の電極には、前記第1、第2の電極間に電圧を印加した場合に前記メモリ層を流れる電流を遮断する第1の電圧と遮断しない第2の電圧が選択的に印加されることを特徴とする、相変化チャンネルトランジスタ。
【請求項19】
一個のMOSトランジスタと、室温でアモルファス相と結晶相とで安定する相変化材料層を含むメモリ部とで構成されるメモリセルを同一基板上に複数個配列したメモリセルアレイにおいて、
前記メモリ部は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の相変化メモリ素子で構成されていることを特徴とする、メモリセルアレイ。
【請求項20】
同一基板上に、請求項11乃至13の何れか1項に記載の相変化チャンネルトランジスタを複数個配置したことを特徴とする、メモリセルアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−41778(P2008−41778A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211262(P2006−211262)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(396023993)株式会社半導体理工学研究センター (150)
【Fターム(参考)】