説明

相対測位をサポートする方法

本発明は、少なくとも1つの第1GNSS受信機から衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信し、各受信データセットは特定時刻に関連していることを含む方法に関する。この方法は、少なくとも1つの受信データセットに基づいて、各追加時刻に関連する少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定することをさらに含む。この方法は、少なくとも1つの第1GNSS受信機22の位置と相対的な少なくとも1つの第2GNSS受信機12の位置を決定するために、少なくとも1つの受信データセットからのデータに加えて、少なくとも1つの追加データセットからのデータを提供することをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセンブリの相対測位をサポートする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星を利用した装置の測位は、様々な全地球的航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)によってサポートされている。このシステムは、例えば、米国全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)、ロシア全地球的航法衛星システム(GLONASS:Global Navigation Satellite System)、将来的な欧州のシステムであるガリレオ(Galileo)、静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Space Based Augmentation System)、日本GPS補強準天頂衛星システム(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)、狭域補強システム(LAAS:Local Area Augmentation System)、および複合システムを含む。
【0003】
GPSの衛星コンステレーションは、例えば、地球を周回する20基を超える衛星から成る。各衛星は、2つの搬送波信号L1およびL2を送信する。この搬送波信号のうちの1つのL1は、標準測位サービス(SPS:standard positioning service)のナビゲーションメッセージおよびコード信号を搬送するために用いられる。L1搬送波位相は、異なるC/A(Coarse Acquisition:粗捕捉)コードを用いて衛星毎に変調される。したがって、衛星が異なれば、送信用に得られるチャンネルも異なる。C/Aコードは、1MHz帯域幅を超えてスペクトルを拡散している疑似ランダム雑音(PRN:pseudo random noise)コードである。C/Aコードは、1023ビット毎に繰り返され、コードのエポックは1msである。L1信号の搬送波周波数は、ナビゲーション情報を用いて毎秒50ビットのビットレートでさらに変調される。ナビゲーション情報は、特に、エフェメリスパラメータとアルマナックパラメータとを含む。エフェメリスパラメータは、各衛星の軌道の短い区域を表現する。衛星が表現される各区域にある間に、アルゴリズムは、このエフェメリスパラメータに基づいて任意時刻の衛星の位置を推定することが可能である。アルマナックパラメータも同様であるが、さらに概略の軌道パラメータであり、エフェメリスパラメータよりも長い時間に対して有効である。ナビゲーション情報は、例えば、衛星時間をGPSのシステム時間に、さらにシステム時間を協定世界時(UTC:Coordinated Universal Time)に関係付けるクロックモデルをさらに含む。
【0004】
位置を決定しようとするGPS受信機は、現在使用可能な衛星によって送信された信号を受信し、信号に含まれる異なるC/Aコードに基づいて、異なる衛星によって使用されるチャネルを検出して追跡する。次いで、受信機は、解読後のナビゲーションメッセージ内のデータ、およびC/Aコードのエポックおよびチップの数に通常基づいて、各衛星によって送信されたコードの送信時刻を決定する。送信時刻および受信機に信号が到達した測定時刻から、衛星と受信機との間の疑似距離を決定することが可能である。疑似距離という用語は衛星と受信機との間の幾何学的距離を意味し、この距離は、GPSシステム時間に対する衛星および受信機の未知のオフセットによってバイアスが含まれる。
【0005】
1つの可能な解決策では、衛星とシステムクロックとの間のオフセットが既知であるとすると、問題は、4つの未知数(3つの受信機位置座標および受信機とGPSシステムクロックとの間のオフセット)を含む一連の非線形方程式を解くことになる。したがって、この一連の方程式を解くことができるように、少なくとも4つの測定値が必要となる。このプロセスの結果が、受信機の位置となる。
【0006】
同様に、GNSS測位の一般的な構想は、測位しようとする受信機で衛星信号を受信し、衛星から受信機まで信号が伝播する時間を測定し、そこからさらに衛星の推定位置を利用して、受信機と各衛星との間の疑似距離、さらに受信機の現在位置を推定するものである。GPSについて前述したように、通常、搬送波信号を変調するために使用されたPRN信号は、測位のために評価される。
【0007】
動的干渉測位方式(RTK:Real Time Kinematics)として知られる別の方法では、2つのGNSS受信機で測定された搬送波位相は、2つの受信機間の距離および姿勢を非常に正確に、典型的にはセンチメータレベルまたは実にミリメータレベルの精度で決定するために評価される。2つの受信機間の距離および姿勢の組み合わせは、ベースラインとも称される。RTK測位のためにGNSS受信機で測定される搬送波位相測定値は、リアルタイムに交換したり、またはポストプロセッシングとして知られる後交換のために保存したりすることができる。通常、GNSS受信機のうちの一方は、既知の場所に設置されて基準受信機と呼ばれ、他方の受信機は、基準受信機に対して測位されることになり、ユーザ受信機またはローバと呼ばれる。決定後の相対位置は、基準位置が正確に分かっている場合には、さらに絶対位置に変換することが可能である。ただし、RTK計算には、両方の受信機の位置が少なくとも概略で分かっていることが実際には必要である。これらの位置は決定後の疑似距離から求めることが可能である。
【0008】
衛星信号は、衛星から受信機までの道のりにおいて、例えば、多重伝播や電離層および対流層による影響などが原因で歪む。また、衛星信号は、衛星のクロックバイアスによるバイアスを有しており、その搬送波位相は未知の初期位相を有する。衛星信号を受信機において測定する場合、信号はさらに歪む。信号測定値は、前述した誤差に加えて、例えば、受信機の雑音および受信機の時間バイアスなどによる誤差を含む。従来のRTKでは、これらの誤差の全てまたは大部分は、受信機と衛星との間に相関があるとみなされ、その場合、ダブルディファレンシングの中でこの誤差は消失する。
【0009】
したがって、相対測位は、さらに具体的には、ダブルディファレンス観測量を形成するために使用する2つのGNSS受信機における信号測定値に基づいてもよい。この信号測定値は、例えば、搬送波位相測定値およびPRNコード測定値などを含んでもよい。搬送波位相に関連するダブルディファレンス観測量は、両受信機における別の衛星信号の搬送波位相の差分と比較した、両受信機における特定の衛星信号の搬送波位相の差分である。PRNコードに関連するダブルディファレンス観測量も同様にして得られる。その結果、ダブルディファレンス観測量を用いて、互いに対して相対的な受信機の位置を高い精度で決定することが可能である。
【0010】
ダブルディファレンス観測量を利用するGNSS受信機の相対測位は、例えば、米国特許第6,229,479号に記載されている。
【0011】
標準GNSS測位を用いて、2つのGNSS受信機は、双方の位置、したがって相互間のベースラインを5メータから20メータの精度で決定することが可能である。この標準GNSS測位と比較してRTK方式の利点は、0.1センチメートルから10センチメートルというさらに高い精度でベースラインを決定することが可能なことである。注目すべきは、この精度は、標準的な市販のGNSS受信機を使用して達成することが可能なことである。
【0012】
元々、RTKは高精度が要求される測地測量や他の用途に使用可能であったに過ぎない。このような用途に必要となる装置は高価であり、したがってもっぱら業務用となっている。しかしながら、例えば、一体型GNSS受信機付き端末、または外部ブルートゥースGNSS受信機搭載端末などの低価格GNSS可能ハンドセット2台を使用して高精度のベースラインを得ることも可能である。汎用パケット無線システム(GPRS:general packet radio service)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN:wireless local area networks)、またはブルートゥース(商標)のような何らかの種類のデータ転送技術を使用して、端末間でデータを交換することが可能である。これによって、ベースラインをリアルタイムに決定して更新することが可能になる。これに対して、多くの従来の解決策では、ベースラインはオフラインで決定されている。この方法は、移動動的干渉測位方式(mRTK:mobile Real-Time Kinematics)とも呼ばれ、移動通信技術を利用してRTKを使用する状況を広め、この技術の恩恵をより多くの人にもたらしていることを示すものである。
【0013】
ユーザ受信機と基準受信機との間のベースラインをmRTKを用いて更新しようとする場合は必ず、信号測定に関するある情報を受信機間で交換する必要がある。例えば、ユーザ受信機において測位計算を実施する場合には、ユーザ受信機は、基準受信機から信号測定の結果を取得する必要がある。必要となる信号測定値は、これに限定されないが、特に、各受信GNSS信号について、疑似距離値、搬送波位相値、ドップラ周波数、搬送波位相極性、およびサイクルチップ情報を含んでもよい。さらに、時刻情報および位置情報が必要とされ、この情報は全ての測定信号に共通である。したがって、必要となる測定情報量は膨大となり、その結果、データ中継に必要な帯域幅もかなり広くなる。
【0014】
測位の際に高い更新周波数を使用しようとする場合、必要となる帯域幅が特に問題となる。
【0015】
典型的な更新周波数は1Hzであるが、移動粒子軌道決定または描画などの高精度用途では、さらに高い更新周波数が要求される。
【0016】
RTK測位時の更新周波数の効果を図1に示す。ユーザ受信機を含む端末が、図1の実線1で示す円軌道上を移動する。端末は、原点の周りを5秒周期で旋回している。典型的な更新周波数である1Hzで決定した5つの地点3を点線2が結んでいる。この軌道は正しい円軌道1から大幅に外れているのが分かる。更新周波数を10倍に増やして10Hzにした場合、図1の点4で示す決定地点を結ぶと、正しい軌道がうまく捕らえられる。しかしながら、従来、これは、基準受信機が信号測定の結果を10倍の周波数で端末に送る必要があることを意味する。これによってもまた、送信データ量、ひいては必要帯域幅が10倍に増加する。
【0017】
高いベースライン更新周波数が求められる多くの用途では、必要な帯域幅が利用不可であったりコスト上の問題となったりするため、このことは許容できないことが多い。
【発明の開示】
【0018】
本発明は、測定データの交換に必要な帯域幅を増加させることなく、相対測位の高い更新周波数を可能にすることを目的とする。
【0019】
少なくとも1つの第1GNSS受信機から衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信するステップ、ただし各受信データセットが特定時刻に関連している、受信するステップを含む方法を提案する。この方法は、少なくとも1つの受信データセットに基づいて、各追加時刻に関連する少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するステップをさらに含む。この方法は、少なくとも1つの第1GNSS受信機の位置と相対的な少なくとも1つの第2GNSS受信機の位置を決定するために、少なくとも1つの受信データセットからのデータに加えて、少なくとも1つの追加データセットからのデータを提供するステップをさらに含む。
【0020】
また、処理コンポーネントを備える装置を提案する。この処理コンポーネントは、少なくとも1つの第1GNSS受信機から、衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信し、各受信データセットが特定時刻に関連しているようになっている。この処理コンポーネントは、少なくとも1つの受信データセットに基づいて、各追加時刻に関連する少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するようにさらに構成される。この処理コンポーネントは、少なくとも1つの第1GNSS受信機の位置と相対的な少なくとも1つの第2GNSS受信機の位置を決定するために、少なくとも1つの受信データセットからのデータに加えて、少なくとも1つの追加データセットからのデータを提供するようにさらに構成される。
【0021】
処理コンポーネントは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施することが可能である。処理コンポーネントは、例えば、必要な機能を実現するためのソフトウェアプログラムコードを実行するプロセッサであってもよい。あるいは、処理コンポーネントは、例えば、必要な機能を実現するように設計され、例えば、集積回路のようなチップセットまたはチップにより実施される回路であってもよい。
【0022】
装置は、例えば、処理コンポーネントと同一であってもよいが、追加コンポーネントを備えてもよい。
【0023】
例えば、装置は、少なくとも1基の衛星から信号を受信するようなっているGNSS受信機をさらに備えるモジュールであってもまたはそのモジュールに属してもよい。このモジュールは、GNSS装置または無線通信装置のような特定の装置内に組み込むように設けてもよい。また、装置は、少なくとも1基の衛星から信号を受信するようになっているGNSS受信機をさらに備えるGNSS装置であってもまたはそのGNSS装置に属してもよい。
【0024】
また、装置は、少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機から、衛星信号の測定結果を受信するように構成された無線通信コンポーネントをさらに備える無線通信装置であってもまたはその無線通信装置に属してもよい。
【0025】
また、提案する装置を備えるアセンブリを提案する。さらに、このアセンブリは、少なくとも1基の衛星から信号を受信するようになっているGNSS受信機を備える。このGNSS受信機は、前述した第2GNSS受信機に相当してもよい。また、このアセンブリは、少なくとも1つの第1GNSS受信機から衛星信号上の測定結果を受信するように構成された無線通信コンポーネントを備える。
【0026】
アセンブリは、装置、GNSS受信機、および無線通信コンポーネントが組み込まれた単一の装置であってもよく、あるいは、装置、GNSS受信機、および無線通信コンポーネントが分散された個別の装置として実現してもよい。例えば、GNSS受信機は、付属装置として無線通信コンポーネントに取り付けてもよく、提案する装置は、GNSS受信機または無線通信コンポーネント内に組み込んでもよい。接続は、任意の適切なデータリンク、例えば、固定ケーブル、ブルートゥース(商標)リンク、UWBリンク、または赤外線リンクで実現してもよい。
【0027】
無線通信コンポーネントは、例えば、セルラエンジンまたはセルラ端末、もしくはWLANエンジンまたはWLAN端末などであってもよい。セルラ端末は、携帯電話、またはセルラネットワークを介してリンクを構築する手段を備えるノート型パソコンのような他の何らかの種類のセルラ端末であってもよい。
【0028】
また、提案する装置を備えるサーバを提案する。さらに、このサーバは、少なくとも1つの第1GNSS受信機および少なくとも1つの第2GNSS受信機から、衛星信号上の測定結果を受信するように構成された無線通信コンポーネントを備える。
【0029】
また、提案する装置を備えるシステムを提案する。さらに、このシステムは、少なくとも1つの第1GNSS受信機を備える。
【0030】
また、ソフトウェアプログラムコードを提案する。ソフトウェアプログラムコードは、プロセッサにより実行される場合に、提案する方法のステップを実現する。
【0031】
最後に、提案するソフトウェアプログラムコードがコンピュータ可読媒体に保存されているソフトウェアプログラム製品を提案する。このプログラム製品は、例えば、個別の記憶装置、またはさらに大型の装置に組み込まれることになるコンポーネントであってもよい。
【0032】
本発明は、狭い帯域幅を維持するために他の装置から衛星信号上のデータを低速で受信する装置が、さらに細かい時間間隔にするために追加データを生成することが可能であるという考えに基づく。したがって、この追加データは、追加時刻に受信したデータに基づいて推定することを提案する。この追加時刻は、少なくとも1つの第1GNSS受信機から衛星信号上のデータセットが受信された最終時刻の前または後であってもよい。
【0033】
本発明の利点は、帯域幅の要求を増加させることなく高精度の軌道を測定できることである。本発明の利点はまた、転送するデータ量が少ないほど、コストが下がることでもある。
【0034】
追加データセットは、受信データセットよりも少ない値を含んでもよいことが理解されるべきである。さらに、追加データセット内のデータ項目のうちの少なくとも1つだけが、推定値でなければばらないことが理解されるべきである。追加データセット内のデータの一部は、受信データセット内のデータと同一であってもよい。
【0035】
幾つかの方法で追加データセットのためのデータを推定することが可能である。
【0036】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するステップは、少なくとも1つの受信データセットから選択されるデータを外挿するステップを含む。受信データセットからのデータから、今後の時刻のデータ、同様にそれ以前の時刻のデータも外挿することが可能である。今後の時刻のデータを予測するために外挿を利用する場合、やはり相対位置をリアルタイムに更新することが可能である。
【0037】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するステップは、少なくとも2つの受信データセットから選択したデータを補間するステップを含む。したがって、この実施形態では、受信データセットを使用して、実際の測定時刻の間に人工的な測定時刻を生成する。
【0038】
追加データを推定するために補間を利用する場合には、相対位置をほぼリアルタイムに更新することしかできない。これは、最終データセットに関連する時刻よりも以前の時刻に追加データが生成されるためである。それでも、遅延時間は、ほんのデータセットを受信する間隔程度、例えば、1Hzの周波数でデータセットを受信する場合は1秒だけである。
【0039】
外挿および補間のいずれの場合も、選択データは、衛星信号の搬送波位相に関係する値、および/または疑似距離に関係する値、すなわち衛星信号が送信される時刻の衛星と受信機との間の距離の概略推定値を含んでもよい。しかしながら、衛星信号のPRNコードの測定値などのような他の何らかの種類のデータもまた、補間または外挿のために選択できることが理解されるべきである。今後の一部のシステムまたは信号は、受信衛星信号上の二次的拡散コード測定値のような、現状システムでは使用できない適切な種類のデータを提供することさえ可能である。受信データセットおよび/または追加データセット内の追加データは、ドップラ周波数、搬送波位相極性、およびサイクルスリップに関する情報を含んでもよい。また、ある不確かさを表す指標が、データセットの各測定値、典型的には分散または標準偏差に関連してもよい。さらに、データセットは、位置情報、位置不確定情報、および時刻情報を含んでもよい。
【0040】
例えば、第1のGNSS受信機が静止しているか否かを示す情報などの他の様々な種類の情報も含むことができる。第1GNSS受信機が移動装置である場合には、この情報は、例えば第1GNSS受信機の内部センサから発信してもよい。
【0041】
データの推定は、受信データセット内の選択データだけに基づいてもよい。しかしながら、また、受信データセットから選択される他の種類のデータを考慮してもよい。例えば、選択データからの外挿および補間はともに、例えば、選択データの変化率などを考慮してもよい。変化率は、1つまたは複数の受信データセットからのドップラ周波数に関係する値から決定してもよいが、1つまたは複数の受信データセットからの他の何らかの値から決定してもよい。
【0042】
第1GNSS受信機および/または第2GNSS受信機は、前述したように内蔵コンポーネントまたは付属部品として、例えば、ハンドセット、基地局、または仮想基準局(VRS:virtual reference station)に関連してもよい。
【0043】
少なくとも1つの第1GNSS受信機は、例えば静止第1GNSS受信機であってもよい。第1GNSS受信機が、例えば、明らかに静止していることを特徴とする基地局に属する場合、データ送信間隔を、例えば、本発明以外で必要となる値の10分の1にできれば、基地局の負荷が大幅に軽減される。少なくとも1つの第1GNSS受信機はまた、移動GNSS受信機であってもよいが、測位の間に固定位置に維持することができたりできなかったりする。第1GNSS受信機の位置を固定できれば、位置が変化する場合よりも推定データの信頼性は高くなる。
【0044】
少なくとも1つの第2GNSS受信機は、移動GNSS受信機であってもよく、移動GNSS受信機は本発明によるアセンブリに属してもよい。このアセンブリは、少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定することもできる。第2GNSS受信機とアセンブリの他の部分が無線または相対的に長いケーブルで互いに接続されている場合、アセンブリの残りの部分を固定位置に保持しながら、第2GNSS受信機を移動させることもできることが理解されるべきである。
【0045】
推定を実施するアセンブリは、そのGNSS受信機が受信した衛星信号に基づいて、自己データセットを決定してもよい。自己データセットは、疑似距離の場合のようにおそらくある計算後、受信した衛星信号の測定から得られるデータを含む。
【0046】
自己データセットは、例えば、全ての追加データセットと組み合わされた受信データセットのレートに相当するレートで決定してもよい。アセンブリ自体がデータの推定を実施する場合は、自己の測定値は送信されず、したがって帯域幅を全く占有しないので、これは可能である。しかしながら、また、自己データセットは、例えば、第1GNSS受信機から受信されるデータセットのレートに相当するレートで決定することもできる。この場合、アセンブリは、少なくとも1つの自己データセットに基づいて少なくとも1つの追加データセットをさらに生成してもよい。これによって、例えば、GNSS受信機がユーザ受信機として使用されるか基準受信機として使用されるかにかかわらず、GNSS受信機は常に同じレートでデータセットを決定することが可能になる。
【0047】
第1GNSS受信機および第2GNSS受信機の前述したコンステレーションは、もっぱら実施例として役立つことが理解されるべきである。あるいは、例えば、第1GNSS受信機はまた、移動アセンブリであってもよく、第2GNSS受信機は、静止したまたは固定したGNSS受信機であってもよい。この場合、推定は、静止したまたは固定したGNSS受信機を備える、本発明によるアセンブリで実施してもよい。さらに、推定は、第3の実体、例えば、第1GNSS受信機と第2GNSS受信機との両方からデータセットを受信する何らかのサーバなどで実施してもよい。
【0048】
本発明は、これに限定されないが、特に高精度測位および測量用途に利用することが可能である。本発明は、業務用として提供することが可能であるが、GNSS受信機を使った描画などの娯楽用としても提供することが可能である。
【0049】
本発明は、GPS、GLONASS、GALILEO、SBAS、QZSS、LAAS、またはこれらの組み合わせのような、あらゆる種類のGNSSでさらに利用することが可能である。LAASは、室内環境下でもmRTKを使用することが可能になるという利点がある。
【0050】
本発明の他の目的および特徴は、以下の詳細な記載を添付図面と照らし合わせて検討すると、明白になるであろう。ただし、図面はもっぱら説明の目的を意図するものであって、添付の特許請求の範囲を参照する発明の技術的範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。図面は、縮尺どおりに描かれているわけではなく、本明細書に記載する構造および手順を概念的に示すことをもっぱら意図するものであることがさらに理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
図2は、本発明による典型的なシステムを示し、このシステムは、狭い帯域幅を使用して高精度で動きを追跡することが可能である。
【0052】
システムは、移動アセンブリ10と基地局20とを備える。
【0053】
移動アセンブリ10は、携帯電話コンポーネント11とGNSS受信機12とを備える。GNSS受信機12は、ここでは、RTK測位におけるユーザ受信機として使用され、本発明による第2GNSS受信機の実施例である。移動アセンブリ10は、実装ソフトウェアプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサ13をさらに備える。実装ソフトウェアプログラムコードは、移動RTK測位ソフトウェアプログラムコード14と、外挿または補間ソフトウェアプログラムコード15とを含む。
【0054】
ソフトウェアプログラムコード15を実行するプロセッサ13は、本発明の典型的な処理コンポーネントである。プロセッサ13は、個別コンポーネントである必要はなく、GNSS受信機12に属しても、携帯電話コンポーネント11に属してもよいことに留意すべきである。また、プロセッサ13の代用として、プロセッサ13の機能を実現する集積回路を使用してもよい。あるいは、例えば、それはプロセッサ13を備える携帯電話コンポーネントおよびソフトウェアプログラムコード14,15を保存する何らかの記憶コンポーネント(図示せず)によって与えられてもよい。
【0055】
移動アセンブリ10はさらに、例えば、示した全てのコンポーネント11,12,13を1つの筐体に組み込んだ単一装置であってもよい。また、移動アセンブリ10は、例えば、無線接続またはブルートゥース(商標)接続を使用して、遠く離れたGNSS受信機12と接続する携帯電話11,13を備えてもよい。
【0056】
基地局20は、移動体通信コンポーネント21とGNSS受信機22とを備える。GNSS受信機22は、ここでは、移動RTK測位における基準受信機として使用され、本発明による第1GNSS受信機の実施例である。基地局20は、実装ソフトウェアプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサ23をさらに備える。実装ソフトウェアプログラムコードは、RTK測位をサポートするソフトウェアプログラムコードを含んでもよい。このサポートとは、単にGNSS受信機22の測定結果が移動アセンブリ10に転送されるように対処することにある。ほとんどないことであるが、mRTK測位ソフトウェアが基地局20に実装されることもある。
【0057】
移動アセンブリ10の携帯電話コンポーネント11および基地局20の移動体通信コンポーネント21は、無線LAN接続、ブルートゥース(商標)接続、UWB接続、または赤外線接続のような、セルラリンクまたは非セルラリンクを利用して相互に通信することが可能である。使用する通信チャネルは、制御プレーンチャネルまたはセキュアユーザプレーンロケーション(SUPL:secure user plane location)であってもよい。また、使用するメッセージフォーマットは、例えば、汎ヨーロッパデジタル移動通信システム(GSM:global system for mobile communication)、ユニバーサル移動体通信システム(UMTS:universal mobile telecommunication system)、および/または符号分割多重接続(CDMA:code division multiple access)などで使用するために標準化されてもよい。
【0058】
次に、図2のシステムの動作を、図3の流れ図を参照しながらさらに詳細に説明する。移動アセンブリ10の動作を、図3の左側に示す。基地局20の動作を、図3の右側に示す。
【0059】
基地局20の位置と相対的にまたは絶対的に、移動アセンブリ10の位置を追跡しようとしているとする。この相対位置を示すGNSS受信機12とGNSS受信機22との間の距離を点線のベースライン5で図2に示す。
【0060】
移動アセンブリ10のGNSS受信機12および基地局20のGNSS受信機22はともに、通常のGNSS受信機として作動する。すなわち、両GNSS受信機は、GPSやガリレオのような1つまたは複数のGNSSに属する衛星S1,S2によって送信される信号を受信、取得、追跡、および解読するように構成される。また、GNSS受信機12,22は、受信した衛星信号に基づいて、周知の方法で単独の位置を計算することが可能である。
【0061】
しかしながら、特定の用途では、移動アセンブリの位置を高精度で追跡しなければならないこともある。そのために、強化移動RTK測位を使用する。
【0062】
ソフトウェアプログラムコード14を使用して、移動アセンブリ10のプロセッサ13は、まず初期化リクエストを生成し、初期化リクエストは携帯電話コンポーネント11によって基地局20に送信される(ステップ111)。リクエストは、基地局20の移動体通信コンポーネント21によって受信され、プロセッサ23に供給される(ステップ121)。
【0063】
初期化リクエストが送信されると、移動アセンブリ10のGNSS受信機12は、通常の周波数1Hzまたは例えば10Hzに増加した周波数で、受信衛星信号の測定を実施する(ステップ112)。GNSS受信機12は、各測定時刻に、測定値となるデータセットをプロセッサ13に供給する。
【0064】
初期化リクエストを受信すると、基地局20のGNSS受信機22は、通常の周波数1Hzで受信衛星信号の測定を実施する(ステップ122)。GNSS受信機22は、各測定時刻に、測定値となるデータセットをプロセッサ23に供給する。
【0065】
両方の場合、データセットは、各時刻tkについて、少なくとも、受信衛星信号の搬送波位相値φ(tk)と、送信衛星への疑似距離値ρ(tk)と、ドップラ周波数fDOPPLER(tk)と、搬送波位相極性P∈{0,1}と、サイクルスリップ表示情報とを含む。代替データセットには、直接コード位相測定値または他の何らかの未定義データ型を疑似距離の変わりに使用してもよいことに留意すべきである。各データセットは、各GNSS受信機12,22の位置、不確定位置、搬送波位相の分散または標準偏差、および疑似距離の分散または標準偏差などの情報をさらに含んでもよい。
【0066】
少なくとも2基の異なる衛星S1,S2からの信号に対し、各データセットがGNSS受信機12およびGNSS受信機22によって決定される。
【0067】
基地局20のプロセッサ23は、移動体通信コンポーネント21を介して、移動アセンブリ10にデータセットを送る(ステップ123)。移動アセンブリ10の携帯電話コンポーネント11は、そのデータセットを受信し、それをプロセッサ13に転送する(ステップ113)。
【0068】
GNSS受信機12およびGNSS受信機22によって決定されたデータは、調整する必要がある。すなわち、測定は同一時刻に実施する必要がある。これが不可能な場合には、受信機のうちの一方の特定時刻の測定から得られるデータから、他方の受信機の測定から得られるデータと同期させるために、外挿または補間する必要がある。本実施形態では、同時測定が可能であるとする。
【0069】
次に、プロセッサ13は、ソフトウェアプログラムコード15を使用して、基地局20から受信した搬送波位相値および疑似距離値の数を増加させて、使用した1Hzの代わりに10Hzの測定レートに対応させる(ステップ114)。
【0070】
追加の搬送波位相位置および疑似距離値は、例えば、受信値を外挿または補間することによって求めることができる。
【0071】
外挿の場合、プロセッサ13が、単一の受信データセットからデータを検討する。このデータセットから、プロセッサ13は、搬送波位相値φ(tk)およびその変化率、すなわち測定時刻tkのドップラ周波数fDOPPLER(tk)を知る必要がある。また、疑似距離値ρ(tk)およびその変化率、すなわち測定時刻tkの速度νDOPPLER(tk)も知る必要がある。速度は、ドップラ周波数fDOPPLER(tk)および信号波長λからνDOPPLER(tk)=λ・fDOPPLER(tk)で決定することができる。また、プロセッサ13は、搬送波位相極性Pも必要とする。この全ての情報が入手可能な場合、今後の時刻の搬送波位相値および疑似距離値を、以下の線形外挿によって予測することができる。
φ(tk+Δt)=φ(tk)+fDOPPLER(tk)・Δt+(1/2)・P
ρ(tk+Δt)=ρ(tk)+νDOPPLER(tk)・Δt
【0072】
搬送波位相値および疑似距離値の数を10倍に増加させるため、各受信データセットに対し9回の外挿を実施する必要がある。したがって、各受信データセットについて、外挿を実施する度に、上記の方程式においてΔtを0.1秒から0.9秒まで0.1秒ずつ増加させることができる。
【0073】
提示した線形外挿だけでなく他の様々な種類の外挿を使用することも可能であることが理解されるべきである。ある代替方法は、例えば、最後の数個の測定値に基づいて多項式フィットを実施することを含む。
【0074】
補間の場合、プロセッサ13は、受信した2つの連続データセットからのデータを必要とし、このデータセットは2つの異なる測定時刻tkおよびtk+1に関連している。必要となるデータは、各時刻について、搬送波位相値φ(tk),φ(tk+1)と、その変化率fDOPPLER(tk),fDOPPLER(tk+1)と、疑似距離値ρ(tk),ρ(tk+1)と、その変化率νDOPPLER(tk),νDOPPLER(tk+1)とを含んでもよい。
【0075】
次いで、間隔t∈[tk,tk+1]における追加搬送波値および追加疑似距離値は、以下の方程式に基づいて決定することができる。
φ(t)=Aφ+Bφ・t+Cφ・t2
ρ(t)=Aρ+Bρ・t+Cρ・t2
【0076】
必要となる係数Aφ,Bφ,Cφ,Aρ,Bρ,Cρを、以下の方程式によって決定することができる。
【0077】
【数1】

【0078】
この線形システムは、よく知られる最小二乗法(LSM:least-squares method)によって解くことができる。
【0079】
また、受信データセットにおいて1階微分ドップラ情報が入手できない場合には、搬送波位相値φ(tk),φ(tk+1)および疑似距離値ρ(tk),ρ(tk+1)のみを用いて、以下の方程式によって補間を実施することができる。
φ(t)=Aφ+Bφ・t
ρ(t)=Aρ+Bρ・t
【0080】
次に、必要となる係数Aφ,Bφ,Aρ,Bρを決定するシステムは、以下のようになる。
【0081】
【数2】

ここで、
【数3】

【0082】
この線形システムは、最小二乗法(LSM)によって同様に解くことができる。
【0083】
一次多項式および二次多項式を使用する提示した補間だけでなく、他の様々な種類の補間を使用することもできることが理解されるべきである。
【0084】
搬送波位相値および疑似距離値の受信数を10倍に増加させるため、2つの連続データセットのそれぞれに基づいて、9回の補間を実施する必要がある。したがって、各受信データセット対について、補間を実施する度に、上記の方程式においてtをtk+0.1秒からtk+0.9秒まで0.1秒ずつ増加させることができる。データセット対のうちの2番目のデータセットは、次のデータセット対の最初のデータセットとして使用することに留意すべきである。
【0085】
次に、各時刻の推定搬送波位相値および推定疑似距離値に加えて、時刻tkに関連する受信データセットから得られたドップラ周波数および極性を使用して、時刻tk+0.1秒からtk+0.9秒に関連する追加データセットを組み立てる。
【0086】
GNSS受信機12が10Hzの増加測定レートを使用する場合には、充分なデータセットが移動装置10のサイトに使用可能である。対応するデータセットを送信する必要がないので、高い測定レートをGNSS受信機12は使用することが可能である。そのデータセットは移動アセンブリ10自体で処理されるだけである。GNSS受信機12が1Hzの典型的な測定レートも使用する場合には、対照的に、GNSS受信機12によって供給される自己データセットの数を、基地局20から受信されるデータセットの数と同様に増加する必要がある(ステップ115)。
【0087】
ステップ114及びステップ115を参照して説明したように、信号測定がGNSS受信機12,22によって実施される衛星S1,S2のそれぞれについて、使用可能なデータ量を増加する。
【0088】
受信データセット、自己データセット、および追加データセットは全て、移動RTK計算で使用するために提供される。
【0089】
次に、プロセッサ13は、ソフトウェアプログラムコード14を使用して、移動アセンブリ10のGNSS受信機12の位置を追跡するために、増加したデータ量に基づいて、従来型RTK測位または移動RTK測位を続けることが可能である(ステップ116)。基地局20の正確な位置が周知であり、それが移動アセンブリ10に提供される場合には、基地局20のGNSS受信機22と比較した決定後の相対位置は、絶対位置に変換することが可能である。
【0090】
次いで、移動アセンブリ10のGNSS受信機12の決定後の相対位置および絶対位置は、移動アセンブリ10のアプリケーションに使用しても、あるいは基地局20に送信してもよい(ステップ117)。基地局20は、その情報を受信し(ステップ124)、それを何らかのアプリケーション、例えば、何らかのロケーションサーバのロケーションサービスアプリケーションに供給する。
【0091】
ステップ115、ステップ117、およびステップ124のオプション文字を、図3に点線で示す。
【0092】
1Hzおよび10Hzの周波数は、例として示すに過ぎないことが理解されるべきである。本発明は、他の任意の周波数値でも使用することが可能である。
【0093】
測位は、3つ以上のGNSS受信機まで拡大することもできることがさらに理解されるべきである。また、同一衛星から発信される異なった周波数を使用する信号が、予想される整数未知数決定の労力を低減するために評価されてもよい。また、2基以外の数の衛星から発信される信号が評価されてもよい。
【0094】
GNSS受信機12またはソフトウェアプログラムコード14は、外部供給源から発信された、何らかの衛星信号取得および処理を行うための補助データを使用するように設計してもよい。
【0095】
図4は、本発明による別の典型的なシステムを示し、このシステムは、狭い帯域幅を使用しながら高い精度で相対位置を決定することが可能である。
【0096】
このシステムは、第1移動アセンブリ40と、第2移動アセンブリ30と、測位サーバ50とを備える。
【0097】
移動アセンブリ30,40はともに、無線通信コンポーネント31,41と、GNSS受信機32,42とを含む。無線通信コンポーネント31,41は、他の何らかの無線通信コンポーネントへの少なくとも1種類の無線接続を可能にする。GNSS受信機32,42は、1つまたは複数のGNSSに属する衛星S1,S2によって送信される信号を受信することが可能である。GNSS受信機32,42は、ベースライン6によって互いに隔てられている。
【0098】
測位サーバ50は、無線通信コンポーネント51も含む。無線通信コンポーネント51は、他の何らかの無線通信コンポーネントへの少なくとも1種類の無線接続を可能にする。測位サーバ50は、処理コンポーネント53をさらに備え、処理コンポーネント53は、移動RTK測位および外挿または補間を実施するように構成される。
【0099】
移動RTK測位のために、両移動アセンブリ30,40のGNSS受信機32,42は、1Hzの周波数で少なくとも2つの受信衛星信号の測定を実施する。この測定中、第1アセンブリ40のGNSS受信機42は、固定位置に保持してもよく、第2アセンブリ30のGNSS受信機32は、自由に移動する。測定値となるデータは、各無線通信コンポーネント31,41によって測位サーバ50に送信される。送信されるデータは、図3のステップ112およびステップ122で決定されるデータと同一であってもよい。
【0100】
測位サーバ50は、その無線通信コンポーネント51を介して、移動アセンブリ30,40の両方から1Hzの周波数でGNSS測定によって得られるデータを受信する。処理コンポーネント53は、図3のステップ114を参照しながら前述したように、そのデータを外挿または補間して追加データを求める。次に、図3のステップ116を参照しながら前述したように、処理コンポーネント53は、拡大されたデータ量を使用して第2移動アセンブリ30のGNSS受信機32の位置を決定することができる。
【0101】
決定後の位置は、例えば、無線通信コンポーネント51を介して移動アセンブリ30,40のうちの1つまたは両方に送信することが可能である。
【0102】
図5は、本発明によるさらに別の典型的なシステムを示し、このシステムは、狭い帯域幅を使用しながら高い精度で相対位置を決定することが可能である。
【0103】
このシステムは、本発明の実施形態に従う第1アセンブリとしての第1移動ハンドセット60と、本発明の実施形態に従う第2アセンブリとしての第2移動ハンドセット70とを備える。
【0104】
両ハンドセット60,70は、無線通信コンポーネント61,71と、GNSS受信機62,72とを含む。無線通信コンポーネント61,71は、相互間で少なくとも1種類の無線接続が可能である。GNSS受信機62,72は、1つまたは複数のGNSSに属する衛星S1,S2によって送信される信号を受信することが可能である。GNSS受信機62,72は、ベースライン7によって互いに隔てられている。
【0105】
両ハンドセット60,70の無線通信コンポーネント61,71は、図2のプロセッサ13に対応するプロセッサ(図示せず)を含み、このプロセッサは、図2の移動RTK測位ソフトウェアプログラムコード14および外挿または補間ソフトウェアプログラムコード15に対応するソフトウェアプログラムコードを実行するように構成される。
【0106】
図5のシステムの動作は、図3の流れ図を参照しながら前述した動作に相当してもよい。そこでは、ハンドセット60,70のうちの任意の一方が移動アセンブリ10の役割を担い、他方のハンドセット60,70がぞれぞれ基地局20の役割を担う。また、両ハンドセット60,70はまた、この構成において「移動アセンブリ10」として作動してもよい。これは、例えば、両ハンドセットが、自己の測位計算を実施するために、他方のハンドセット60,70からそれぞれデータセットを受信してもよいことを意味する。
【0107】
提示した全ての実施形態において、狭い帯域幅が必要となるように送信されるデータ量は少なく抑えている。それでも、相対測位の基盤となり得るデータ量を増加させることによって、位置を追跡する場合に達成される精度は向上する。
【0108】
図1のプロセッサ13および図4の処理コンポーネント53は、本発明による典型的な装置に属してもよい。この装置は、例えば、ユーザアセンブリ10,60,70またはサーバ50内のシステムの異なる場所に配置してもよい。またユーザアセンブリ内の装置の配置については様々な可能性がある。
【0109】
図6aから図6eは、本発明の実施形態に従う装置をアセンブリ内に配置する場合の幾つかの典型的な選択肢を示す。装置は、処理コンポーネントを備える。処理コンポーネントは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施してもよく、例えば、図3のステップ113およびステップ114を参照しながら前述したように、使用可能なデータ量を増加するように構成される。
【0110】
図6aでは、アセンブリは、ハンドセットのような単一の装置210であり、本発明の実施形態に従う第2GNSS受信機212と、無線通信コンポーネント214と、装置213とを備える。この実施形態では、装置213は、GNSS受信機212および無線通信コンポーネント214以外の異なるモジュールか、あるいは異なるモジュールに属する。
【0111】
図6bでは、アセンブリは、やはり単一の装置220である。この場合、装置220は、第2GNSS受信機および装置を含むGNSSモジュール221を備える。装置220は、個別の無線通信コンポーネント224をさらに含む。
【0112】
図6cでは、アセンブリは、やはり単一の装置230である。この場合、装置230は、第2GNSS受信機232と無線通信モジュール234とを備える。無線通信モジュール234は、装置と無線通信コンポーネントとを含む。
【0113】
図6dでは、アセンブリは、幾つかの装置に分散されており、第2GNSS受信機242および装置243を含むGNSS装置241を備える。アセンブリは、個別の無線通信装置245をさらに含む。GNSS受信機241は、何らかの適切な有線または無線技術によって無線通信装置245に接続することが可能である。
【0114】
図6eでは、アセンブリは、やはり幾つかの装置に分散されており、GNSS装置251と個別の無線通信装置255とを備える。GNSS装置251は、第2GNSS受信機252を含む。無線通信装置255は、装置253と無線通信コンポーネント254とを含む。GNSS装置251は、何らかの適切な有線または無線技術によって無線通信装置255に接続することが可能である。
【0115】
図7は、小規模の移動を検知するための移動RTK測位の一般的適合性を示す図である。この図は、x軸が東方向を示しy軸が北方向を示す座標系である。細い実線で示される経路を、基準受信機に対してユーザ受信機を移動させることによって追跡した。基準受信機は、固定位置に保持された。太い点線は、搬送波位相に基づく測位を利用して決定された軌道を示す。図の目盛りがセンチメートルであることを考慮すると、測定軌道が正しい経路を良く示していることが明らかになる。この図は、従来の移動RTK受信機を非常にゆっくりと移動させることによって作成されたものであるが、本発明に従って人工的に増加させたデータ量を使用して移動RTK受信機を急速に移動させても、同様な軌道が得られることは予想することができる。
【0116】
プロセッサ13および処理コンポーネント53によって例証される機能は、少なくとも1つの第1アセンブリから衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信し、各受信データセットが特定時刻に関連しているような手段とみなしてもよい。また、携帯電話コンポーネント11および無線通信コンポーネント51によって例証される機能は、少なくとも1つの第1アセンブリから衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信する手段とみなしてもよい。プロセッサ13および処理コンポーネント53によって例証される機能はさらに、少なくとも1つの受信データセットに基づいて、各追加時刻に関連する少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定する手段とみなしてもよい。プロセッサ13および処理コンポーネント53によって例証される機能はさらに、少なくとも1つの第1アセンブリの位置と相対的な少なくとも1つの第2アセンブリの位置を決定するために、少なくとも1つの受信データセットに加えて、少なくとも1つの追加データセットからのデータを提供する手段とみなしてもよい。
【0117】
しかしながら、この手段は、列挙機能を果たすときは本明細書に記載した構造ならびに構造的等価物のみならず等価構造をも包含するものとする。
【0118】
このようにして、本発明の好ましい実施形態に適用されるような本発明の新規な基本的特徴について図示し、説明し、指示してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、説明してきた装置および方法の形態および詳細における種々の省略、置換および変更を当業者によってなし得ることが理解されるであろう。例えば、同一の結果を得るために実質的に同一の方法で実質的に同一の機能を実行するそれらの要素および/または方法ステップのすべての組み合わせが、本発明の範囲内にあることが明らかに意図される。さらに、本発明の開示される任意の形態または実施形態に関連して図示および/または説明されている構造および/または要素および/または方法ステップを、設計選択の一般事項として、開示されるかあるいは説明または提案されている他の任意の形態または実施形態に組み込み得ることを理解されたい。したがって、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】RTK測位の更新周波数の効果を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に従うシステムを示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に従う、図1のシステムの動作を示す流れ図である。
【図4】本発明の別の実施形態に従うシステムの概略図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態に従うシステムの概略図である。
【図6】本発明の実施形態に従う装置をアセンブリ内に分散させる場合の典型的な選択肢を示す概略図である。
【図7】mRTKの精度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機から、衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信するステップであって、各受信データセットは特定時刻に関連している、ステップと、
前記少なくとも1つの受信データセットに基づいて、各追加時刻に関連する少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するステップと、
前記少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機の位置と相対的な少なくとも1つの第2全地球的航法衛星システム受信機の位置を決定するために、前記少なくとも1つの受信データセットからのデータに加えて、前記少なくとも1つの追加データセットからのデータを提供するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定する前記ステップが、前記少なくとも1つの受信データセットから選択されるデータを外挿するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択データを、前記少なくとも1つの受信データセットからの値から決定される前記選択データの変化率に従って外挿する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変化率が、ドップラ周波数に関係する前記少なくとも1つの受信データセットからの値から決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記選択データが、衛星信号の搬送波位相に関係する値、衛星信号のコード位相に関係する値、疑似距離に関係する値、および衛星信号の二次拡散コード位相に関係する値のうちの少なくとも1つを含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定する前記ステップが、少なくとも2つの受信データセットから選択されるデータを補間するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択データが、衛星信号の搬送波位相に関係する値、衛星信号のコード位相に関係する値、疑似距離に関係する値、および衛星信号の二次拡散コード位相に関係する値のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
選択データを、前記少なくとも2つの受信データセットのそれぞれからの値から決定される前記選択データの変化率に従って補間する、請求項6および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記変化率が、ドップラ周波数に関係する前記少なくとも2つの受信データセットのそれぞれからの値から決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
静止アセンブリが、前記少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機を備える、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アセンブリが、前記少なくとも1つの第2全地球的航法衛星システム受信機を備える、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アセンブリが、少なくとも1つの追加データセットのための前記データを推定する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アセンブリが、追加データセットと組み合わされた受信データセットのレートに相当するレートで、前記少なくとも1つの全地球的航法衛星システム受信機によって受信される衛星信号に基づいて、自己データセットを決定する、請求項11および12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アセンブリが、データセットが前記第1全地球的航法衛星システム受信機から受信されるレートに相当するレートで、前記少なくとも1つの全地球的航法衛星システム受信機によって受信される衛星信号に基づいて、自己データセットを決定し、前記アセンブリが、前記自己データセットに基づいて少なくとも1つの追加データセットのためのデータをさらに推定する、請求項11および12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
処理コンポーネントを備える装置であって、
前記処理コンポーネントは、少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機から、衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信し、各受信データセットが特定時刻に関連しているようになっており、
前記処理コンポーネントは、前記少なくとも1つの受信データセットに基づいて、各追加時刻に関連する少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するように構成され、
前記処理コンポーネントは、少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機の位置と相対的な少なくとも1つの第2全地球的航法衛星システム受信機の位置を決定するために、前記少なくとも1つの受信データセットからのデータに加えて、前記少なくとも1つの追加データセットからのデータを提供するように構成される、
装置。
【請求項16】
前記処理コンポーネントが、前記少なくとも1つの受信データセットから選択されるデータを外挿することによって、少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するようにさらに構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記処理コンポーネントが、少なくとも2つの受信データセットから選択されるデータを補間することによって、少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するようにさらに構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
請求項15ないし17のいずれか1項に記載の装置と、
少なくとも1基の衛星から信号を受信するようになっている全地球的航法衛星システム受信機と、
を備えるモジュール。
【請求項19】
請求項15ないし17のいずれか1項に記載の装置と、
少なくとも1基の衛星から信号を受信するようになっている全地球的航法衛星システム受信機と、
を備える全地球的航法衛星システム装置。
【請求項20】
請求項15ないし17のいずれか1項に記載の装置と、
前記少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機から、衛星信号上の測定結果を受信するように構成された無線通信コンポーネントと、
を備える無線通信装置。
【請求項21】
請求項15ないし17のいずれか1項に記載の装置と、
少なくとも1基の衛星から信号を受信するようになっている全地球的航法衛星システム受信機と
前記少なくとも1つの第1アセンブリから、衛星信号上の測定結果を受信するように構成された無線通信コンポーネントと、
を備えるアセンブリ。
【請求項22】
請求項15ないし17のいずれか1項に記載の装置と、前記少なくとも1つの第1アセンブリおよび前記少なくとも1つの第2アセンブリから、衛星信号上の測定結果を受信するように構成された無線通信コンポーネントと、を備えるサーバ。
【請求項23】
請求項15ないし17のいずれか1項に記載の装置と、前記少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機と、を備えるサーバ。
【請求項24】
プロセッサにより実行される場合に以下のステップを実現させるソフトウェアプログラムコードであって、
少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機から、衛星信号上の少なくとも1つのデータセットを受信するステップ、ただし各受信データセットが特定の時刻に関連している、受信するステップと、
前記少なくとも1つの受信データセットに基づいて、各追加時刻に関連する少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定するステップと、
前記少なくとも1つの第1全地球的航法衛星システム受信機の位置と相対的な少なくとも1つの第2全地球的航法衛星システム受信機の位置を決定するために、前記少なくとも1つの受信データセットからのデータに加えて、前記少なくとも1つの追加データセットからのデータを提供するステップと、
を含むソフトウェアプログラムコード。
【請求項25】
少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定する前記ステップが、前記少なくとも1つの受信データから選択されるデータを外挿するステップを含む請求項24に記載のソフトウェアプログラムコード。
【請求項26】
少なくとも1つの追加データセットのためのデータを推定する前記ステップが、少なくとも2つの受信データから選択されるデータを補間するステップを含む請求項24に記載のソフトウェアプログラムコード。
【請求項27】
請求項24ないし26のいずれか1項に記載のソフトウェアプログラムコードが、コンピュータ可読媒体に保存されているソフトウェアプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−539095(P2009−539095A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512691(P2009−512691)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051714
【国際公開番号】WO2007/138388
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】