説明

真直度測定方法及び真直度測定装置

【課題】 測定対象物の表面プロファイルを、容易に算出することができる真直度測定方法を提供する。
【解決手段】 第1の方向に並ぶ3個の変位計と、測定対象物との一方(稼動物)を他方(固定物)に対して第1の方向に移動させながら、3個の変位計から、それぞれ測定対象物の表面において第1の方向に延在する測定対象線に沿って並ぶ3つの被測定点までの距離を測定する。測定対象線に沿う表面プロファイル、可動物に固定された基準点の軌跡である倣い曲線のプロファイル、及び可動物の移動に伴うピッチング成分のプロファイルうち、2つのプロイファイルで規定される解の候補を複数個決定する。表面プロファイル、倣い曲線のプロファル、及びピッチング成分のプロファイルうち、解の候補に規定されていないプロファイルに基づいて定義される評価関数の値を適応度として、複数の解の候補に遺伝的アルゴリズムを適用し、最も適応度の高い解の候補を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3点法を用いて真直度を測定する方法、及び真直度を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面の真直度を、3点法により測定することができる(特許文献1)。例えば、3個の変位計の基準点が移動した軌跡である倣い曲線のプロファイル、測定対象物の表面プロファイル、及び3個の変位計のピッチング成分のプロファイルを用いて、3個の変位計の測定データを記述し、この記述式を連立方程式として解くことにより、表面プロファイルを決定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−254747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の連立方程式を解く演算は複雑であり、プログラムの作成に手間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、測定対象物の表面プロファイルを、容易に算出することができる真直度測定方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、上記方法を適用して真直度を測定する真直度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
第1の方向に並び、相対位置が固定された3個の変位計を測定対象物に対向させ、該変位計及び該測定対象物の一方である可動物を、他方の固定物に対して第1の方向に移動させながら、3個の変位計から、それぞれ測定対象物の表面において第1の方向に延在する測定対象線に沿って並ぶ3つの被測定点までの距離を測定する工程と、
前記測定対象線に沿う表面プロファイル、前記可動物に固定された基準点の軌跡である倣い曲線のプロファイル、及び前記可動物の移動に伴うピッチング成分のプロファイルのうち、2つのプロイファイルで規定される解の候補を複数個決定する工程と、
前記表面プロファイル、前記倣い曲線のプロファル、及び前記ピッチング成分のプロファイルうち、前記解の候補に規定されていないプロファイルに基づいて定義される評価関数の値を適応度として、前記複数の解の候補に遺伝的アルゴリズムを適用して、最も適応度の高い解の候補を抽出する工程と
を有する真直度測定方法が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、
測定対象物を支持するテーブルと、
第1の方向に並び、該測定対象物の表面において該第1の方向に並ぶ被測定点までの距離を、それぞれ測定する3個の変位計を含むセンサヘッドと、
前記センサヘッド及び前記テーブルの一方である可動物を、他方の固定物に対して前記第1の方向に沿って移動可能に支持する案内機構と、
前記3個の変位計で測定された測定データに基づいて、前記第1の方向に平行な測定対象線に沿う前記表面のプロファイルを求める制御装置と
を有し、
前記制御装置は、
前記可動物に固定された基準点の軌跡である倣い曲線に沿って、前記可動物を移動させながら、3個の変位計の各々によって、前記測定対象線に沿う表面上の被測定点までの距離を測定して測定データを取得する工程と、
前記測定対象線に沿う表面プロファイル、前記倣い曲線のプロファイル、及び前記可動物のピッチング成分のプロファイルのうち、2つのプロファイルで規定される解の候補を複数個定義する工程と、
残りの1つのプロファイルを用いて定義された評価関数の値を適応度として、前記複数の解の候補に遺伝的アルゴリズムを適用して、最も適応度の高い解の候補を抽出する工程と
を実行する真直度測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
遺伝的アルゴリズムを適用するため、連立方程式を解くような複雑な演算を行うことなく表面プロファイルを求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1Aに、実施例による真直度測定装置の概略斜視図を示す。可動テーブル10が、テーブル案内機構11により、一方向に移動可能に支持されている。可動テーブル10の移動方向をx軸とし、鉛直下方をz軸とするxyz直交座標系を定義する。
【0011】
案内レール18が、砥石ヘッド15を、可動テーブル10の上方に支持する。砥石ヘッド15は、案内レール18に沿ってy軸方向に移動可能である。また、砥石ヘッド15は、案内レール18に対してz方向にも移動可能である。すなわち、砥石ヘッド15は、可動テーブル10に対して昇降可能である。砥石ヘッド15の下端に砥石16が取り付けられている。砥石16は、円柱状の外形を有し、その中心軸がy軸に平行になる姿勢で砥石ヘッド15に取り付けられている。
【0012】
可動テーブル10の上に、測定対象物(被研削物)20が保持される。砥石16を測定対象物20の表面に接触させた状態で、砥石16を回転させながら、可動テーブル10をx方向に移動させることにより、測定対象物20の表面を研削することができる。
【0013】
制御装置19が、可動テーブル10及び砥石ヘッド15の移動を制御する。
【0014】
図1Bに示すように、砥石ヘッド15の下端にセンサヘッド30が取り付けられている。センサヘッド30に、3個の変位計31i、31j、及び31kが取り付けられている。変位計31i、31j、31kには、例えばレーザ変位計が用いられる。変位計31i、31j、31kは、それぞれ変位計から測定対象物20の表面上の被測定点までの距離を測定することができる。3個の変位計31i、31j、31kは、y方向に並んでいる。また、3個の変位計31i、31j、31kの被測定点も、y方向に並んでいる。このため、y方向に平行な測定対象線に沿う表面の高さを測定することができる。砥石ヘッド15をy方向に移動させながら測定を行うことにより、測定対象物20の表面の測定対象線に沿う表面のプロファイルを測定することができる。変位計31i、31j、31kから、測定データが制御装置19に入力される。
【0015】
図2を参照して、座標系及び各種関数について説明する。図2では、上方をz軸の正の向きとしている。このため、センサヘッド30と測定対象物20との上下関係が、図1Bに示した上下関係とは逆転している。y軸の負の向きに向かって、変位計31i、31j、31kが、この順番に配置されている。3個の変位計31i、31j、31kのゼロ点の調整が完了しており、3個の変位計のゼロ点が一直線上に並んでいる。変位計31iのゼロ点と変位計31jのゼロ点との間隔、及び変位計31jのゼロ点と変位計31kのゼロ点との間隔をPとする。
【0016】
測定対象物20の表面の、測定対象線に沿うプロファイルをW(y)とする。センサヘッド30をy方向に移動させたときの基準点の軌跡(倣い曲線)をh(y)とする。この基準点は、例えば、中央の変位計31jのゼロ点と一致する。理想的には、倣い曲線h(y)は直線であるが、実際には、理想的な直線からゆがむ。
【0017】
3個の変位計31i、31j、31kのゼロ点を結ぶ直線がy軸から傾く角度をθ(y)とする。理想的には、傾斜角θ(y)=0であるが、実際には、センサヘッド30の移動に伴ってピッチングが生ずることにより、傾斜角θ(y)は、倣い曲線h(y)の傾きとは独立して変動する。変位計31iのゼロ点と、基準点との高さの差、及び変位計31kのゼロ点と基準点との高さの差は、T(y)×Pと表すことができる。ここで、ピッチング成分T(y)=sin(θ(y))と近似される。変位計31i、31j、31kの測定値をそれぞれ、i(y)、j(y)、k(y)とすると、下記の式が成り立つ。
【0018】
【数1】

【0019】
傾斜角θ(y)は十分小さいため、cos(θ(y))を1と近似している。
【0020】
測定対象物20の形状は、例えば一辺の長さが2mの正方形であり、変位計の間隔Pは、例えば100mmである。
【0021】
図3に、実施例による真直度測定方法のフローチャートを示す。まず、砥石ヘッド15及びセンサヘッド30をy方向に移動させながら、変位計31i、31j、31kで測定対象物20の表面の被測定点までの距離i(y)、j(y)、k(y)を測定する。測定されたデータは、制御装置19に入力される。
【0022】
ステップSA2において、測定データi(y)、j(y)、k(y)にローパスフィルタを適用して、ノイズ成分を除去する。ローパスフィルタを効果的に効かせるために、測定データi(y)、j(y)、k(y)は、変位計の間隔Pに対して十分細かい刻みで取得されている。例えば、0.05mmの刻み幅で測定データi(y)、j(y)、k(y)が取得されている。
【0023】
ステップSA3において、ローパスフィルタを適用した後の測定データi(y)、j(y)、k(y)をサンプリングして、ステップデータを生成する。サンプリングの周期は、例えば変位計の間隔Pの半分、すなわち50mmとする。
【0024】
ステップSA4において、ステップデータi(y)、j(y)、k(y)に基づいて、倣い曲線h(y)とピッチング成分T(y)とを、遺伝的アルゴリズムを用いて導出する。
【0025】
図4に、遺伝的アルゴリズムを適用したステップSA4の詳細なフローチャートを示す。この遺伝的アルゴリズムでは、倣い曲線h(y)とピッチング成分T(y)との組を1つの個体とする。
【0026】
ステップSB1において、初期世代の個体群を生成する。例えば、個体数は200とする。一例として、1つの個体の倣い曲線h(y)とピッチング成分T(y)を0とする。他の199個の個体の倣い曲線h(y)とピッチング成分T(y)とは、乱数により決定する。なお、初期状態では、すべての個体の倣い曲線(y)及びピッチング成分T(y)を0に設定してもよい。
【0027】
ステップSB2において、各個体を評価関数により評価し、各個体の適応度を計算する。評価関数は、表面プロファイルW(y)に基づいて設定する。3個の変位計31i、31j、31kは、同一の測定対象物20の表面の同一の測定対象線に沿うプロファイルを測定しているのであるから、式(1)〜式(3)を用いてそれぞれ算出した3個の表面プロファイルW(y)、W(y)、W(y)は一致するはずである。
【0028】
そこで、まずW(y)とW(y)との差分W(y)−W(y)、及びW(y)とW(y)との差分W(y)−W(y)を求める。表面プロファイルW(y)を多項式で表した時の0次成分は、測定対象物20とセンサヘッド30との間隔に相当し、1次成分は、測定対象物20の姿勢に相当する。すなわち、表面プロファイルW(y)の0次成分と1次成分とは、測定対象物20の表面プロファイルに直接関係しない。このため、差分W(y)−W(y)及び差分W(y)−W(y)から、0次成分と1次成分とを除去する。
【0029】
0次成分と1次成分とが除去された差分W(y)−W(y)及び差分W(y)−W(y)の各々の分散を計算する。この2つの分散の和を評価関数とする。評価関数の値が小さいほど、適応度が高いといえる。すべての個体を、適応度によって並び替える。
【0030】
ステップSB3において、交叉対象となる個体を選択する。一例として、個体が選択される確率は、適応度が高い個体ほど高くなるように設定する。この選択確率に基づいて、2個の個体からなる10ペアを選択する。
【0031】
ステップSB4において、選択された個体のペアの倣い曲線h(y)またはピッチング成分T(y)の少なくとも一方を交叉させ、新たな固体を生成する。
【0032】
図5を参照して、交叉の方法を説明する。現世代の個体のうち、交叉の対象に選択された2つの個体Ua及びUbの倣い曲線h(y)及びピッチング成分のプロファイルT(y)が示されている。固体Uaの倣い曲線h(y)の一部と、個体Ubの倣い曲線h(y)の対応する部分とを入れ換えて(交叉させて)、新たな個体Uc及びUdを生成する。新たな固体Uc及びUdのピッチング成分のプロファイルT(y)は、それぞれ元の個体Ua及びUbのピッチング成分のプロファイルT(y)をそのまま引き継いでいる。このようにして、2つの個体から、新たに2つの個体が生成される。ステップSB3で10ペアの個体が選択されているため、ステップSB4では、新たに10ペア、即ち20個の個体が生成される。
【0033】
なお、ピッチング成分のプロファイルT(y)を交叉させてもよいし、倣い曲線h(y)とピッチング成分のプロファイルT(y)との両方を交叉させてもよい。
【0034】
ステップSB4が終了すると、ステップSB5において、突然変異の対象となる個体を選択する。一例として、適応度の高い10個の個体を除外し、残りの190個の個体から、80個を選択する。
【0035】
ステップSB6において、選択された個体に突然変異を生じさせ、新たな固体を生成する。
【0036】
図6を参照して、突然変異の方法について説明する。図6に、ステップSB5で選択された1つの個体Ueを示している。個体Ueの倣い曲線h(y)に、ランダムな幅及び高さのガウス曲線を重畳させ、新たな個体Ufを生成する。なお、個体Ueのピッチング成分のプロファイルT(y)にガウス曲線を重畳させてもよいし、倣い曲線h(y)とピッチング成分のプロファイルT(y)との両方にガウス曲線を重畳させてもよい。ステップSB5で80個の個体が選択されているため、ステップSB6では、新たに80個の個体が生成される。
【0037】
ステップSB7において、適応度の低い個体を淘汰する。具体的には、現世代の200個の個体のうち、適応度の低い100個の固体を、新たに生成された100個体で置き換える。これにより、新たな世代の200個の個体が決定される。
【0038】
ステップSB8において、新たな世代の200個の個体を評価し、適応度を求める。なお、ステップSB7で淘汰されなかった前世代の100個の個体については、既に適応度が算出されているため、適応度を算出し直す必要はない。新世代の200個の個体を、適応度に応じて並び替える。
【0039】
ステップSB9において、世代数が目標値に達したか否かを判定し、目標値に達していない場合には、ステップSB3に戻る。目標値に達している場合には、ステップSB10において、最新の世代の個体のうち適応度の最も高い個体の倣い曲線h(y)及びピッチング成分のプロファイルT(y)を、最適解とする。
【0040】
図7に、評価値の変位を示す。横軸は世代数を表し、縦軸は、現世代の個体のうち最も適応度の高い個体の評価関数の値(評価値)を示す。世代が進むに従って、評価値が低下(適応度が上昇)していることが分かる。2000世代で、評価関数の値は約0.4μmまで低下している。標準偏差は0.63μmになり、十分な精度が得られていることが分かる。また、500世代程度で評価値が90%程度まで収束し、その後、緩やかに最適解の探索が進むことから、遺伝的アルゴリズムの各パラメータの設定も適切であったと考えられる。
【0041】
図8Aに、適応度が最も高い個体の倣い曲線h(y)及びピッチング成分のプロファイルT(y)を示す。縦軸は、h(y)及びT(y)の値を表し、h(y)の単位は「μm」、T(y)の単位は「10μrad」である。横軸はy方向の位置を単位「mm」で表す。なお、倣い曲線h(y)及びピッチング成分のプロファイルT(y)の0次成分と1次成分とは、表面プロファイルに関係しないため、図8Aでは、0次成分と1次成分とを除去して示している。
【0042】
図8Bに、変位計31i、31j、31kによる測定データi(y)、j(y)、k(y)を示す。横軸はy方向の位置を単位「mm」で表し、縦軸は測定データの値を単位「μm」で表す。なお、0次成分及び1次成分は除去している。
【0043】
図8Cに、倣い曲線h(y)及びピッチング成分のプロファイルT(y)の最適解を、式(1)〜(3)に代入して求めた表面プロファイルW(y)、W(y)、W(y)を示す。最適解から算出した3つの表面プロファイルは、図8Bに示した3つの測定データに比べて、差が小さいことがわかる。
【0044】
このように、実施例による方法では、3個の未知の関数を含む連立方程式を直接的に解くことなく、倣い曲線h(y)、ピッチング成分のプロファイルT(y)、及び表面プロファイルW(y)の最適解を求めることができる。
【0045】
上記実施例では、3つの変位計31i、31j、31kのゼロ点が一直線上に乗るようにゼロ点調整されていることを前提とした。次に、ゼロ点調整が行われていない場合について説明する。両端の変位計31i、31kのゼロ点同士を結ぶ直線から、中央の変位計31jのゼロ点までの距離をδとすると、上記式(2)は、下記のように書き直される。
【0046】
【数2】

【0047】
式(1)、(3)、(4)からT(y)とh(y)とを消去すると、以下の式が得られる。
【0048】
【数3】

【0049】
ここで、表面プロファイルW(y)が次の3次式(6)で表されると仮定する。
【0050】
【数4】

【0051】
式(6)を式(5)に代入すると、次の式(7)が得られる。
【0052】
【数5】

【0053】
式(7)の右辺は、すべて測定データであり、変位計の間隔Pは既知である。従って、左辺の未知数aは、右辺の変数yの1次成分から算出することができる。ところが、右辺のyの0次成分が求まったとしても、左辺のδが未知であるため、未知数bを決定することができない。すなわち、表面プロファイルW(y)の3次成分aを決定することはできるが、2次成分bを決定することはできない。なお、表面プロファイルW(y)の4次以上の成分も、3次成分と同様に決定することができる。
【0054】
倣い曲線h(y)の2次成分は、倣い曲線のおおまかな形状を決める低次成分であり、再現性が高いと考えられる。すなわち、測定ごとに大きな変動はないと考えられる。従って、事前に倣い成分h(y)の2次成分を測定しておき、この2次成分を式(4)に代入することにより、表面プロファイルW(y)の2次成分を決定することができる。
【0055】
倣い曲線h(y)の3次以上の成分は、測定ごとに変動すると考えられる。実施例では、表面プロファイルW(y)の3次以上の成分は、実際の測定データi(y)、j(y)、k(y)に基づいて決定される。このため、倣い曲線h(y)の3次以上の成分が測定ごとに変動しても、この変動の影響を受けず、高精度に表面プロファイルW(y)を算出することができる。
【0056】
次に、倣い曲線h(y)の2次成分を測定する方法の一例について説明する。まず、表面プロファイルW(y)が既知の測定対象物20を可動テーブル10に載置する。または、可動テーブル10に載置した測定対象物20の表面プロファイルW(y)を、倣い曲線h(y)の影響を受けない方法で測定する。例えば、測定対象物20の表面上で、測定対象線に沿って傾斜計を移動させることにより、表面プロファイルW(y)を測定することができる。
【0057】
表面プロファイルW(y)が既知の測定対象物20の表面を、中央の変位計31jで測定する。式(5)のうち、表面プロファイルW(y)及び測定データj(y)が既知であるため、倣い曲線h(y)の2次成分を決定することができる。
【0058】
上記実施例では、3つの未知の関数を含む連立方程式を解くような複雑な演算を行うことなく、測定対象物20の表面プロファイルを算出することができる。
【0059】
上記実施例では、倣い曲線h(y)と、ピッチング成分のプロファイルT(y)とで遺伝的アルゴリズムの解の候補を定義し、表面プロファイルW(y)に基づいて評価関数を定義した。その他に、倣い曲線h(y)、ピッチング成分のプロファイルT(y)、表面プロファイルW(y)のうち2つのプロファイルで解の候補を定義し、残りの1つのプロファイルで評価関数を定義してもよい。
【0060】
上記実施例では、変位計31i、31j、31kを測定対象物20に対して移動させたが、その逆に変位計31i、31j、31kに対して測定対象物20を移動させてもよい。例えば、図1Aにおいて、変位計31i、31j、31kをx方向に配列させ、測定対象物20をx方向に移動させながら測定を行うことにより、測定対象物20の表面のx方向に平行な測定対象線に沿う表面プロファイルを測定することができる。図1Bに示したセンサヘッド30を、z軸に平行な回転軸を中心として90°回転させることにより、変位計31i、31j、31kをx方向に配列させることができる。センサヘッド30に、このような回転機構を設けてもよい。
【0061】
y方向に平行な複数の測定対象線に沿う表面プロファイルと、x方向に平行な複数の測定対象線に沿う表面プロファイルとを重ね合わせることにより、測定対象物20の表面の2次元的な表面プロファイル情報を得ることができる。
【0062】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(1A)は、実施例による真直度測定装置の斜視図であり、(1B)は、センサヘッド部分の概略図である。
【図2】測定対象物の表面プロファイルW(y)、変位計の測定データi(y)、j(y)、k(y)、倣い曲線h(y)、及びピッチング成分T(y)の定義を示す線図である。
【図3】実施例による真直度測定方法のフローチャートである。
【図4】実施例による真直度測定方法で採用される遺伝的アルゴリズムのフローチャートである。
【図5】遺伝的アルゴリズムで行われる交叉を説明するための図である。
【図6】遺伝的アルゴリズムで行われる突然変異を説明するための図である。
【図7】遺伝的アルゴリズムにより、世代が増えるに従って評価値が小さくなる(適応度が高くなる)ことを示すグラフである。
【図8】(8A)は、遺伝的アルゴリズムで求められた倣い曲線h(y)及びピッチング成分T(y)の最適解を示すグラフであり、(8B)は、3つの変位計の測定データを示すグラフであり、(8C)は、遺伝的アルゴリズムにより求められた最適解を適用した場合の表面プロファイルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0064】
10 可動テーブル
11 テーブル案内機構
15 砥石ヘッド
16 砥石
18 案内レール
19 制御装置
20 測定対象物
30 センサヘッド
31i、31j、31k 変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並び、相対位置が固定された3個の変位計を測定対象物に対向させ、該変位計及び該測定対象物の一方である可動物を、他方の固定物に対して第1の方向に移動させながら、3個の変位計から、それぞれ測定対象物の表面において第1の方向に延在する測定対象線に沿って並ぶ3つの被測定点までの距離を測定する工程と、
前記測定対象線に沿う表面プロファイル、前記可動物に固定された基準点の軌跡である倣い曲線のプロファイル、及び前記可動物の移動に伴うピッチング成分のプロファイルのうち、2つのプロイファイルで規定される解の候補を複数個決定する工程と、
前記表面プロファイル、前記倣い曲線のプロファル、及び前記ピッチング成分のプロファイルうち、前記解の候補に規定されていないプロファイルに基づいて定義される評価関数の値を適応度として、前記複数の解の候補に遺伝的アルゴリズムを適用して、最も適応度の高い解の候補を抽出する工程と
を有する真直度測定方法。
【請求項2】
前記倣い曲線のプロファイル及び前記ピッチング成分のプロファイルにより、前記解の候補を決定し、前記表面プロファイルを用いて前記評価関数を定義する請求項1に記載の真直度測定方法。
【請求項3】
前記3個の変位計による測定結果から、それぞれ第1、第2、及び第3の表面プロファイルを算出し、
前記第1の表面プロファイルと前記第2の表面プロファイルとの差分を求め、該差分から、0次成分及び1次成分を除去した後、第1の分散を求め、
前記第2の表面プロファイルと前記第3の表面プロファイルとの差分を求め、該差分から、0次成分及び1次成分を除去した後、第2の分散を求め、
前記第1の分散と前記第2の分散とに基づいて、前記評価関数を定義する請求項1または2に記載の真直度測定方法。
【請求項4】
測定対象物を支持するテーブルと、
第1の方向に並び、該測定対象物の表面において該第1の方向に並ぶ被測定点までの距離を、それぞれ測定する3個の変位計を含むセンサヘッドと、
前記センサヘッド及び前記テーブルの一方である可動物を、他方の固定物に対して前記第1の方向に沿って移動可能に支持する案内機構と、
前記3個の変位計で測定された測定データに基づいて、前記第1の方向に平行な測定対象線に沿う前記表面のプロファイルを求める制御装置と
を有し、
前記制御装置は、
前記可動物に固定された基準点の軌跡である倣い曲線に沿って、前記可動物を移動させながら、3個の変位計の各々によって、前記測定対象線に沿う表面上の被測定点までの距離を測定して測定データを取得する工程と、
前記測定対象線に沿う表面プロファイル、前記倣い曲線のプロファイル、及び前記可動物のピッチング成分のプロファイルのうち、2つのプロファイルで規定される解の候補を複数個定義する工程と、
残りの1つのプロファイルを用いて定義された評価関数の値を適応度として、前記複数の解の候補に遺伝的アルゴリズムを適用して、最も適応度の高い解の候補を抽出する工程と
を実行する真直度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−107262(P2010−107262A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277596(P2008−277596)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】