説明

真空保存装置

【課題】吸引装置を容器に位置決めできると共に減圧可能な所定の位置で自立して、容易かつ迅速に容器内を減圧する真空保存装置を提供する。
【解決手段】開閉可能な弁12を蓋体11に有する真空保存用の容器1と、容器1内を減圧する吸引装置2とから成る真空保存装置に於て、蓋体11には弁12を包囲する環状凹溝11aが形成され、吸引装置2は、上記環状凹溝11aに嵌入自在な環状凸隆部23と、環状凸隆部23の内周面23aと底壁28によって形成された空室部24を有するケーシング20を備え、空室部24内に弁12を施蓋する吸盤部材3が設けられ、さらに、ケーシング20には、吸盤部材3の吸込孔3aを介して容器1内のエアーを吸引する電動ポンプを内有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空保存装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食料品等の良好な保存状態を保つ目的や漬物を即席で製造するために、開閉可能な弁を有する真空保存容器と、その真空保存容器の内部エアーを吸引可能な吸引装置と、から成る真空保存装置が知られている。
例えば、特許文献1記載のように、吸引装置を、容器の弁の近傍に接触させて、吸引装置のピストン杆を上下運動させることで、容器内のエアーを吸引して、減圧し、食料品等の酸化防止や、容器内の湿気によるカビ等の発生を防止する真空保存装置があった。
【特許文献1】特開平3−199681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、吸気作業中は、使用者が常に吸引装置を容器に押圧するように保持して、手動でピストン杆を上下運動させる必要があるため、使用者は、容器を動かないように保持させることが困難であった。また、容器内を減圧するめに手間と時間がかかるという問題があった。また、吸引に適した容器の所定位置に吸引装置を位置決めすることが困難であった。また、手動による吸引作業は多大な労力が必要であった。
【0004】
そこで、本発明は、吸引装置を容器に位置決めできると共に減圧作業可能な所定の位置で自立して、容易かつ迅速に容器内を減圧する真空保存装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の真空保存装置は、開閉可能な弁を蓋体に有する真空保存用の容器と、該容器内を減圧する吸引装置とから成る真空保存装置に於て、上記蓋体には上記弁を包囲する環状凹溝が形成され、上記吸引装置は、上記環状凹溝に嵌入自在な環状凸隆部と、該環状凸隆部の内周面と底壁によって形成された空室部を有するケーシングを備え、該空室部内に上記弁を施蓋する吸盤部材が設けられ、さらに、上記ケーシングには、上記吸盤部材の吸込孔を介して上記容器内のエアーを吸引する電動ポンプを内有したものである。
【0006】
上記吸盤部材の外周縁から係止膨出部を有する引張用細杆を突設し、さらに、上記空室部の天井面を形成する上記底壁には、上記細杆が挿通される係止孔が貫設されて、上記ケーシングを上記蓋体から分離する方向へ持ち上げると、上記係止膨出部が上記底壁の上面に係止して、上記吸盤部材の吸着が解除されるように構成したものである。
また、ケーシングに、上記容器内から吸い出した水分を貯液可能な貯液槽部を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の真空保存装置によれば、吸引装置を容易かつ迅速に容器に位置決めできる。吸引装置を所定の位置に容易に配設でき、確実に容器内を減圧できる。吸引作業中に使用者が吸引装置を支持しなくとも容器を減圧できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1は本発明の真空保存装置の実施の一形態を示す斜視図であり、図2はその使用状態の斜視図である。図3は吸引装置の要部断面図である。図4は使用状態の要部断面図である。図5は、作用を説明する要部断面図である。図6は、使用状態を図4とは別の断面で示す要部断面図である。図7は、要部分解斜視図である。
【0009】
図1〜図6に於て、1は、開閉可能な弁12を有する蓋体11と、蓋体11によって内部が密閉可能な容器本体10と、を有する真空保存用の容器である。
2は、容器1内を減圧する(可能な)吸引装置である。
本発明の真空保存装置は、容器1と吸引装置2とから成るものである。
【0010】
図4に於て、容器1は、箱状の容器本体10に蓋体11を施蓋したものである。蓋体11は、容器1内(内部)と外部を連通させる通気孔13を開閉可能な弁12を有している。自然状態では常に通気孔13を閉じている。また、蓋体11は、容器本体10を施蓋した際に、容器本体10の開口部端縁に密着するパッキン部材17を有している。即ち、容器1は、蓋体11のパッキン部材17が容器本体10に圧接し、弁12が通気孔13を閉じることで容器1内が密封状に保持されるものである。また、蓋体11には、容器本体10に施蓋した状態からパッキン部材17を容器本体10に密着させると共に容器本体10に係止して施蓋状態を保持する揺動自在なストッパー部材16を有している。
【0011】
蓋体11は、水平面状の蓋上面11bから容器1の内方向に窪んだ環状凹溝11aが形成されている。環状凹溝11aは、弁12を包囲するように形成されている。また、蓋上面11bから容器1の内方向に窪んだ円形凹状の弁室15を形成している。弁室15には、弁12が設けられている。環状凹溝11aは、弁室15(及び弁12)に同心状に形成されている。また、環状凹溝11aの底面11eは水平面状に形成されている。
【0012】
また、弁12は、傘状の弁体12aを有している。傘状の弁体12aが、通気孔13近傍の弁座12bに接触・離間することで、通気孔13を開閉するものである。弁体12aは、減圧解除用のボタン部材14が取着されている。ボタン部材14は、弁体12aを容器1の内方向に押すと、弁体12aの弁部を反り返らせて弁座12bから離間させ、通気孔13を開口状態にして、減圧状態の容器1内にエアーを流入可能にするものである。また、ボタン部材14は、弁室15内に設けられ、蓋上面11bよりも外方に突出しないように設けられている。つまり、吸引作業中にボタン部材14に吸盤部材3が接触したり、ボタン部材14によって吸盤部材3の吸込孔3aが塞がらないように設けられている。弁体12aは、ボタン部材14が押圧された場合や、吸引装置2によって吸引される場合以外では、常に通気孔13を施蓋(閉じて)いる。
【0013】
また、蓋体11は、略均一の肉厚で形成されている。蓋体11の外周縁部には蓋上面11bから容器1の内方向に窪んだ外周凹溝11cが形成されている。外周凹溝11cを形成することで、容器1の内方向に突出する蓋凸部を形成し減圧による変形を防止している。つまり、蓋体11は、容器1内からの負圧を受ける箇所を、変形に強い形状としている。また、蓋体11の蓋上面11bに別の容器等を積載可能である。また、容器本体10は、略均一の肉厚で形成されている。容器本体10の底部は、容器1の内方向に窪んだ底凹部10aを形成している。底凹部10aを形成することで、容器1の内方向に突出する底凸部を形成し減圧による変形を防止している。なお、容器1の主要部(弁体12aとパッキン部材17及びストッパー部材16用の枢着軸等を除く部分)の材質は合成樹脂等(ポリプロピレンやポリカーボネート等)とするのが望ましい。また、弁体12aやパッキン部材17の材質はシリコンゴム等とするのが望ましい。
【0014】
次に、図1と図2に於て、吸引装置2は、円柱形状に握り用のくびれ部2Aを形成したケーシング20を備えている。つまり、使用者が握り易い形状に形成されている。なお、ケーシング20の外形状の大きさは、収納の観点から家庭用のドレッシングや調味料等が入った容器の大きさ(外径)と同等に設定するのが望ましい。例えば外径を50mm以上100mm以下に設定するのが望ましい。また、高さ(吸引装置2の軸心L0 方向)を70mm以上250mm以下に設定するのが望ましい。なお、ケーシング20の材質は、合成樹脂等(ポリプロピレンやポリカーボネート等)とするのが望ましい。
【0015】
図3と図4に於て、吸引装置2のケーシング20は、そのケーシング20の底壁28よりも下方(容器1側)に突出して、容器1の環状凹溝11aに嵌入自在な環状凸隆部23を有している。また、底壁28と環状凸隆部23の内周面23aによって形成された空室部24を有している。空室部24には、容器1の環状凹溝11aにケーシング20の環状凸隆部23が嵌入した状態で、弁12を施蓋する吸盤部材3が設けられている。言い換えると、底壁28から下方に吸盤部材3を突設し、その吸盤部材3の外周を、底壁28から下方に突出させた環状凸隆部23で囲って(覆って)いるとも言える。
【0016】
ケーシング20の環状凸隆部23は、蓋体11の環状凹溝11aに嵌入し、環状凹溝11aの底面11eに面接触する水平面状の下面23bを有している。下面23bは、環状凹溝11aの底面11eやテーブル等の水平面状の平面部に面接触することで、吸引装置2を直立(起立)状に支持(保持)可能に形成されている。つまり、吸引装置2は、環状凸隆部23の下面23bを様々な水平面状に面接触させることで、自立可能なものである。
【0017】
また、ケーシング20は、吸盤部材3の吸込孔3aを介して容器1内のエアーを吸引すると共に、容器1から吸い出した水分を排出する電動ポンプPを内有している。また、乾電池や充電式電池等のバッテリーBを内有している。また、バッテリーBの電力を図示省略の電気配線にて供給・停止可能なスイッチSと、容器1内が適切に減圧(真空)されたことを表示する(使用者や周囲の人等に視認させる)真空度表示部40と、を設けている。
【0018】
ここで、説明を容易にするために、容器1の環状凹溝11aにケーシング20の環状凸隆部23が嵌入し、環状凸隆部23の下面23bが環状凹溝11aの底面11eに面接触して、容器1に吸引装置2が自立した状態をセット状態と呼ぶ。また、吸盤部材3が容器1(の蓋体11)に吸着した状態を吸着状態と呼ぶ。
なお、本発明に於て、上とは、蓋体11の環状凹溝11aにケーシング20の環状凸隆部23が嵌入した状態(セット状態)の際に、容器1の蓋体11から吸引装置2のケーシング20を分離する方向としている。また、水分とは、容器1内の湿気や水、食料品の汁や油等の食料品の保存及び漬物の製造で生じる液体や、ダシ汁や漬け汁等の液体である。
【0019】
ケーシング20の空室部24の天井面28aを形成する底壁28には、円環状凸隆部23と同心状に貫設された貫通孔26が形成されている。貫通孔26には、内部に通気路39aを有する中空軸状のスライド部材39が挿通されている。スライド部材39は、上端側が分岐し、電動ポンプPの吸込口に接続される吸込用チューブ部材T1 と、真空度表示部40に接続される表示用チューブ部材T3 と、が接続されている。スライド部材39の下端側は、吸盤部材3が着脱自在に取着されている。吸盤部材3の吸込孔3aにスライド部材39の通気路39aが連通している。吸盤部材3はスライド部材39を介して、ケーシング20に上下往復運動自在に取着されている。
【0020】
また、スライド部材39は、底壁28を上下に挟むように上側に外鍔状の第1当り部39bと下側に外鍔状の第2当り部39cを有している。第1当り部39bは、底壁28の上面28bに当接して、スライド部材39の抜け(脱落)及び、吸盤部材3の下方への移動を規制する下方規制ストッパー部である。また、第2当り部39cは、底壁28の天井面28aに当接して、吸盤部材3の上方への移動を規制する上方規制ストッパー部である。
【0021】
また、吸盤部材3は、外周縁3bに、球状の係止膨出部30aを有する引張用細杆30が上方に突設されている。細杆30は、底壁28に貫設された平面視瓢箪状の係止孔25の大径側から係止膨出部30aを挿通させた後に、細杆30の挿通部を係止孔25の瓢箪形状のくびれ部を通過して小径側に移動され、底壁28に挿通されている。即ち、吸盤部材3は、細杆30が係止孔25に挿通され、係止膨出部30aが底壁28の上面28bに係止可能に、ケーシング20に取着されている。また、細杆30を係止孔25の大径側に移動させ、下方に引くと、底壁28から離脱可能となっている。即ち、吸盤部材3は、係止孔25から細杆30を離脱させ、吸込孔3aからスライド部材39を取り外すことで、ケーシング20から着脱自在に設けられている。
【0022】
また、吸盤部材3は、吸引していない場合や使用者が引っ張ったりしていない自然状態で、吸盤部材3は、細杆30の係止膨出部30aを、底壁28の上面28bに係止させることで、ケーシング20の環状凸隆部23の下面23bよりも上方に配設されている。自然状態で、吸盤部材3は、ケーシング20よりも突出しないように設けられている。
【0023】
また、吸着状態(吸盤部材3が容器1の蓋体11に吸着した状態)で、スライド部材39の第1当り部39bと底壁28の上面28bの間が所定ストローク高さHとなるように設けられている。そして、細杆30の係止膨出部30aの下端部(上面28bに接触して係止される引掛部)と底壁28の上面28bの間が所定係止高さhとなるように設けられている。所定係止高さhは、所定ストローク高さHよりも小さく設定されている。
【0024】
つまり、図5に於て、吸着状態から、ケーシング20を、容器1から分離(離間)する方向(上方)へ持ち上げると、スライド部材39によって、吸盤部材3は容器1(の蓋体11)に吸着したままであるが、細杆30の係止膨出部30aが、スライド部材39の第1当り部39bよりも先に、底壁28の上面28bに当接して係止され(係止して)、ケーシング20は、細杆30を介して吸盤部材3の外周縁3bを上方に引っ張って、吸盤部材3の容器1への吸着が解除される(吸盤部材3を容器1から離間する)ように構成している。
【0025】
ケーシング20は、容器1内を吸気する際に、エアーと共に吸い出した水分(不要な液体)を貯液可能な貯液槽部29を設けている。
貯液槽部29は、ケーシング20の環状凸隆部23内部に空間を形成することで設けられている。貯液槽部29はケーシング20の内部に円環状に形成されている。
図6に於て、電動ポンプPの吐出口に接続されている排出用チューブ部材T2 が、貯液槽部29に連通する流入孔29aに接続されている。流入孔29aは、ケーシング20内に形成された流入路29bを介して貯液槽部29に連通している。
【0026】
図7に於て、ケーシング20は、電動ポンプPやバッテリーBが内蔵される本体ケーシング21と、環状凸隆部23を有するキャップケーシング22と、に長手方向(軸心L0 方向に)分離可能なものである。
【0027】
図4〜図7に於て、本体ケーシング21は、キャップケーシング22が外嵌する係合円周面21aを有している。本体ケーシング21の係合円周面21aには、係合小凸部21bが設けられている。また、係合円周面21aは、流入孔29aと貯液槽部29を連通させる流入路29bを、軸心L0 方向に溝状に形成している。
【0028】
キャップケーシング22は、係合円周面21aに外嵌する係合内周面22aを有している。係合内周面22aには、係合小凸部21bが入り込む(嵌入される)係合小凹溝孔22bが設けられている。また、本体ケーシング21と分離することで上方開口状となる貯液槽部29を有している。つまり、本体ケーシング21とキャップケーシング22を分離・合体させることで、吸引装置2(のケーシング20)から上方開口状の貯液槽部29を着脱自在に設けている。キャップケーシング22は、円環凹溝状の貯液槽部29を有する円筒カップ形状とも言える。
また、キャップケーシング22は、貯液槽部29に溜まった水分(液体)の量を目視可能に透明な材質で形成している。
【0029】
図3に於て、電動ポンプPは、エアー及び水分(不要な液体)を吸い込み可能な吸込口と、吸い込んだエアーや水分を吐出可能な排出口と、を有している。電動ポンプPは、気体及び液体を送ることが可能なダイヤフラムポンプとするのが望ましい。
電動ポンプPの吸込口は、吸込用チューブ部材T1 及びスライド部材39を介して吸盤部材3の吸込孔3aに連通している。
電動ポンプPの排出口は、排出用チューブ部材T2 及び流入孔29aと流入路29bを介して貯液槽部29に連通している。
【0030】
真空度表示部40は、ケーシング20の上壁27に対して突出・収納可能なキャップ部材41と、ゴム製の中空の蛇腹部材42と、蛇腹部材42を上方に常時弾発付勢するコイルバネ等の弾発部材43と、容器1内と連通可能な通気口44と、から成るものである。通気口44は、表示用チューブ部材T3 を介してスライド部材39に接続されている。つまり、真空度表示部40の通気口44は、表示用チューブ部材T3 及びスライド部材39の通気路39aを介して吸盤部材3の吸込孔3aに連通し、容器1内と連通可能である。
【0031】
真空度表示部40は、容器1内が食品等の保存に適した(適切な)減圧状態(真空度)でない場合には、蛇腹部材42に内装された弾発部材43の弾発力によって、蛇腹部材42の上部に装着されたキャップ部材41をケーシング20の上壁27から突出させているものである。
そして、容器1内の減圧によって、通気口44からエアーが吸気され、蛇腹部材42の内部が適切な減圧状態(真空度)となった場合に、負圧力によって、蛇腹部材42が収縮し、その収縮力が弾発部材43の弾発力に打ち勝って、キャップ部材41を上壁27と面一状にケーシング20内に収納させ、使用者に容器1の内部が減圧されたことを表示するものである。なお、容器1内が0. 01〜0. 07Mpa(特に0. 04Mpa)となった際に、キャップ部材41が上壁27と面一状にケーシング20内に収納される(容器1の内部が適切な減圧状態になったことを表示する)ように、弾発部材43及び蛇腹部材42を設定するのが好ましい。
【0032】
上述した本発明の真空保存装置の使用方法(作用)について説明する。
容器1の容器本体10に保存すべき食料品等を入れ、蓋体11で施蓋する。容器1内は、弁12とパッキン部材17によって密封される。そして、容器1内を減圧(真空保存)するには、先ず、吸引装置2の吸盤部材3を容器1の弁室15(弁12)近傍に接近させる。すると、吸引装置2のケーシング20の環状凸隆部23が蓋体11の環状凹溝11aに案内(ガイド)されるように嵌入する(入り込む)。言い換えると、蓋体11の環状凹溝11aが吸引装置2のケーシング20の環状凸隆部23を誘導し、容器1(蓋体11)の所定の位置に吸引装置2を配設させる。
吸引装置2は、環状凸隆部23の下面23bが環状凹溝11aの底面11eに面接触して、蓋体11の上で、直立状に支持される。つまり、図2に示すように、吸引装置2は使用者が手を離しても容器1(の蓋体11)の上で自立する。
【0033】
セット状態では、図4に示すように、吸盤部材3が、弁12及び弁室15の上方を確実に覆い、蓋体11の蓋上面11bに接触して、施蓋状に配設される。また、電動ポンプPの吸込口に連通する吸盤部材3の吸込孔3aが弁12や通気孔13の上方に確実に配設される(弁体12a及び弁室15と同心状に配設される)。つまり、吸引(減圧)作業に適した容器1(蓋体11)の所定の位置に吸引装置2が配設される。
【0034】
このセット状態で、スイッチSが入れられ電動ポンプPは起動する。電動ポンプPは、吸盤部材3の吸込孔3aからエアーを吸い込む(吸引する)。吸盤部材3は容器1の蓋体11の蓋上面11bに吸着し、蓋体11と吸盤部材3で囲まれた空間を密封し負圧にする。さらに、負圧及び吸引によって弁12が蓋体11の通気孔13を開口状態にし、電動ポンプPが容器1内のエアーの吸引を可能にする。電動ポンプPによって、容器1内は減圧される。容器1は、食料品等を真空保存可能な状態となる。
【0035】
また、使用者は、本発明の真空保存装置(容器1及び吸引装置2)を保持(支持)する必要なく、スイッチSを入れた後は、他の作業を行うことが可能になる。また、バッテリーBが内蔵されているので、電源の確保や電源コードの配設や取り外し等の作業が削減される。また、電源コードによる引っ掛かりの事故や、電源コードがテーブル上の食器等を引っ掛けて落下させる危険をなくす。
【0036】
また、吸引中(減圧中)の際に、容器1内の水分(不要な液体等)は、エアーと共に電動ポンプPに吸い込まれる。吸い込まれた(容器1内から吸い出した)水分は、電動ポンプPの排出口から吐出される。吐出された水分は、排出用チューブ部材T2 を介して、ケーシング20内に形成された流入孔29aと流入路29bを順次送流し、貯液槽部29に貯められる。
【0037】
言い換えると、電動ポンプPから吐出された水分は、本体ケーシング21の内部の排水用チューブ部材T2 を介し、本体ケーシング21の内部から外部に貫設している流入孔29aから、係合円周面21aに溝状に形成された流入路29bへと、順次送流され、本体ケーシング21で施蓋され密閉状の空間となったキャップケーシング22の貯液槽部29に貯められるとも言える。
【0038】
また、キャップケーシング22を透明な部材で形成することで、使用者に貯液槽部29内に水分が排出されたことを視認させる。
【0039】
容器1内を減圧する際に、真空度表示部40の蛇腹部材42内のエアーも吸引され、容器1内と同様に減圧される。保存に適した真空度(減圧状態)になると、蛇腹部材42が収縮し、その収縮力が弾発部材43の弾発力に打ち勝って、キャップ部材41の上端面を上壁27と面一状となるようにケーシング20内に収納させ、容器1の内部(容器1内)が減圧されたことを表示する(使用者等に視認させる)。
【0040】
使用者はスイッチSを操作して電動ポンプPを停止させ、容器1内の減圧作業を終了する。電動ポンプPが停止しても、吸盤部材3は、容器1に吸着したままの状態である。この吸着状態で、ケーシング20を、容器1から分離(離間)する方向(上方)へ持ち上げる。すると、図5に示すように、スライド部材39によって吸盤部材3は、容器1(の蓋体11)に吸着したままであるが、細杆30の係止膨出部30aが、スライド部材39の第一当り部39bよりも先に、底壁28の上面28bに係止して、ケーシング20が上方への移動する力を、細杆30を介して、吸盤部材3の外周縁3bを上方へ引張る力に変える。外周縁3bを上方に引っ張られた吸盤部材3は、容易に吸着が解除される(吸盤部材3を容器1から容易に剥離する)。本発明の真空保存装置は、減圧作業後に、容器1と吸引装置2に容易に分離される。
【0041】
容器1は、内部が減圧され、内部の食品等の酸化や湿気によるカビの発生を軽減する。食品等をより安全に長期保存可能にする。また、漬物等の製造を容易かつ迅速にする。容器1は(真空度表示部40や電動ポンプPを有する吸引装置2が一体状でないので)コンパクトかつ積載収納可能であり、容易に冷蔵庫等に保管される。
【0042】
また、吸引装置2は、キャップケーシング22を軸心L0 方向に引くと、キャップケーシング22の係合小凹溝孔22bから本体ケーシング21の係合小凸部21bが乗り越えるようにキャップケーシング22が拡径状に弾性変形して本体ケーシング21とキャップケーシング22が分離される。
つまり、ケーシング20から、上方開口状となった貯液槽部29が容易に取り外される。上方開口状の貯液槽部29は、内部の水分を容易に廃棄すると共に容易に洗浄される。また、吸盤部材3の着脱作業を容易にする。
【0043】
また、吸盤部材3の細杆30を、瓢箪状の係止孔25の小径部側から大径側に移動させると。係止膨出部30aが係止されることなくケーシング20から取り外される。吸盤部材3を軸心L0 方向に引くと、スライド部材39の第1当り部39bが上面28bに当接してストッパーとなってスライド移動を規制し、吸盤部材3を容易に取り外させる。吸盤部材3は容易に交換または、洗浄される。
【0044】
また、吸盤部材3の洗浄又は交換後に、スライド部材39に軸心L0 方向に押圧して取着させる際は、スライド部材39の第2当り部39cが底壁28の天井面28aに当接してスライド部材39が底壁28よりも上方(本体ケーシング21の内部)に入り込むのを規制して容易に取着させる。
【0045】
キャップケーシング22(の貯液槽部29)を洗浄後に、本体ケーシング21に、軸心L0 方向に押すように外嵌させようとすると、本体ケーシング21の係合小凸部21bを乗り越えるようにキャップケーシング22が拡径状に弾性変形し、その後、係合小凸部21bが係合小凹溝孔22bに入り込んで圧接し、本体ケーシング21とキャップケーシング22が合体する。つまり、キャップケーシング22の上方開口状の貯液槽部29は、本体ケーシング21に施蓋される。
【0046】
洗浄され清潔な吸引装置2は、特別な収納場所を用意する必要がなく、ドレッシングや調味料等が並べられる棚等の収納具等にドレッシング等と同様に収納される。または、テーブル等の平面部に安定した自立状態で配置(保管)される。自立(起立)状態で空室部24内にある吸盤部材3は露出せず、清潔に保存される。収納場所に困らず紛失する虞れを軽減する。
【0047】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、容器1は、図示した箱状の直方体形状に限らず、円柱状や立方体形状等自由である。パッキン部材17は、容器本体10側に設けても良い。
また、容器1を多数設け、ひとつの吸引装置2で多数容器1を順次減圧しても良い。また、吸引装置2を多数設け、多数の容器1と各々組み合わせても良い。
【0048】
以上のように本発明は、開閉可能な弁12を蓋体11に有する真空保存用の容器1と、容器1内を減圧する吸引装置2とから成る真空保存装置に於て、蓋体11には弁12を包囲する環状凹溝11aが形成され、吸引装置2は、環状凹溝11aに嵌入自在な環状凸隆部23と、環状凸隆部23の内周面23aと底壁28によって形成された空室部24を有するケーシング20を備え、空室部24内に弁12を施蓋する吸盤部材3が設けられ、さらに、ケーシング20には、吸盤部材3の吸込孔3aを介して容器1内のエアーを吸引する電動ポンプPを内有したので、吸盤部材3の小さな吸込孔3aを確認しながら弁12や通気孔13の上方に配設する手間がなく、容易かつ迅速に吸引作業に適した所定の位置に配設(セット)できる。確実に吸引(減圧)作業を行うことができる。容器1の上で直立状に自立させることができる。自立することで、本発明の真空保存装置(容器1及び吸引装置2)を使用者が常に保持(支持)する必要がなくなる。つまり、使用者は、吸引作業中に他の作業をすることができる。手動でポンプ作業をする必要がなく容易に減圧できる。テーブル等の平面部に吸引装置2を起立状態で保管・収納できる。容器1と吸引装置2を別体としているので、容器1を棚や冷蔵庫等に嵩張ることなく収納できる。容器1の製造コストを軽減できる。電動ポンプPが電動(自動)で吸込(吸引)作業をするので力の弱い使用者でも容易かつ確実に容器1内を減圧できる。
【0049】
また、吸盤部材3の外周縁3bから係止膨出部30aを有する引張用細杆30を突設し、さらに、空室部24の天井面28aを形成する底壁28には、細杆30が挿通される係止孔25が貫設されて、ケーシング20を蓋体11から分離する方向へ持ち上げると、係止膨出部30aが底壁28の上面28bに係止して、吸盤部材3の吸着が解除されるように構成したので、吸引作業終了後に、吸着状態の吸盤部材3をスムーズに容器1から離脱(剥離)できる。離脱が容易かつ迅速にできる。吸盤部材3を使用者の爪や指等で剥離する必要がなく、吸盤部材3を傷めずに離間(剥離)できる。吸盤部材3の耐久性を向上できる。吸盤部材3の外周縁3b側からめくるように剥離させるので、小さな力(引っ張り力)で容易に吸着が解除できる。吸引装置2を容器1から離間(分離)させようとする当たり前の動作(作業)を利用して、使用者が吸着を解除させようと意識させずに、(吸着を解除するための特別な動作や作業を行うことなく)吸着を解除できる。
【0050】
また、ケーシング20に、容器1内から吸い出した水分を貯液可能な貯液槽部29を設けたので、容器1内から吸い出した水分を本発明の真空保存装置の周囲に飛び散らせることなく作業(減圧)できる。容器1内の水分(湿気等)に気を使うことなく減圧作業できる。誤って大量の水やダシ汁等を吸入(吸引)しても水やだし汁等が外部に飛び散らず部屋(調理場等)を汚すのを防止できる。衛生的で清潔に作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の真空保存装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の真空保存装置の使用状態の斜視図である。
【図3】吸引装置の要部断面図である。
【図4】使用状態の要部断面図である。
【図5】作用を説明する要部断面図である。
【図6】使用状態の別の要部断面図である。
【図7】要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 容器
2 吸引装置
3 吸盤部材
3a 吸込孔
3b 外周縁
11 蓋体
11a 環状凹溝
12 弁
20 ケーシング
23 環状凸隆部
23a 内周面
24 空室部
25 係止孔
28 底壁
28a 天井面
28b 上面
29 貯液槽部
30 細杆
30a 係止膨出部
P 電動ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な弁(12)を蓋体(11)に有する真空保存用の容器(1)と、該容器(1)内を減圧する吸引装置(2)とから成る真空保存装置に於て、
上記蓋体(11)には上記弁(12)を包囲する環状凹溝(11a)が形成され、上記吸引装置(2)は、上記環状凹溝(11a)に嵌入自在な環状凸隆部(23)と、該環状凸隆部(23)の内周面(23a)と底壁(28)によって形成された空室部(24)を有するケーシング(20)を備え、該空室部(24)内に上記弁(12)を施蓋する吸盤部材(3)が設けられ、さらに、上記ケーシング(20)には、上記吸盤部材(3)の吸込孔(3a)を介して上記容器(1)内のエアーを吸引する電動ポンプ(P)を内有したことを特徴とする真空保存装置。
【請求項2】
上記吸盤部材(3)の外周縁(3b)から係止膨出部(30a)を有する引張用細杆(30)を突設し、さらに、上記空室部(24)の天井面(28a)を形成する上記底壁(28)には、上記細杆(30)が挿通される係止孔(25)が貫設されて、上記ケーシング(20)を上記蓋体(11)から分離する方向へ持ち上げると、上記係止膨出部(30a)が上記底壁(28)の上面(28b)に係止して、上記吸盤部材(3)の吸着が解除されるように構成した請求項1記載の真空保存装置。
【請求項3】
上記ケーシング(20)に、上記容器(1)内から吸い出した水分を貯液可能な貯液槽部(29)を設けた請求項1又は2記載の真空保存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255970(P2009−255970A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110310(P2008−110310)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(593057263)多田プラスチック工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】