説明

真空熱遮断素材

【課題】住宅やビルなどの建造体や設備及び各種機器製品の断熱に使用してエネルギーの効率的運用が可能な真空断熱体を提供する。
【解決手段】口径の長いトンネル状微細孔のマトリックスを有するセラミックス、セピオライトで繊維口径0.2μs、繊維の長さは5〜50μs、真比重2.6に対して見掛比重0.06〜0.2及び表面積(m/g)が250〜330の範囲の多孔質セラミックスと、これを担持する下地材に動物繊維、植物繊維、化学繊維等になるポ−ラスな不織布状フェルトより選ばれた複合混成体をラミネ−ト素材で挟み混成体の空気層を極低圧の環境下で真空に置換密封にしてなる真空熱遮断素材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、−50℃から+120℃の温度範囲で有効に使用できる真空断熱用素材であり、パット状やシ−ト状に加工して、民生分野や産業分野に措いて、住宅やビルなどの建造体や設備及ひ各種の機器製品の吸放熱部の断熱に使用して、エネルギ−の効率的運用を目的としている。例えば、屋外に設置される冷暖房設備や保温/保冷の食品自動販売機やIT関連精密機器の熱仕切板及び蓄熱装置、恒温器、冷凍設備の保温用断熱材等である。薄く、熱伝導率ゼロの高効率な熱遮断性能を具備して、簡便に使用できる真空断熱材を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来から断熱材料として、各種の有機物や無機物になる発泡素材が知られている。代表例として、化学製品を主材とするものにポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレンがあり、無機物の主材に、けいそう土、ケイ酸カルシウム、ロックウ−ル、ガラスウ−ルや発泡ガラス製品がある。これらの物性は物質や硬質/軟質の発泡度で熱遮断性能も異なる。平均温度70℃±5℃での熱伝導率〔Kcal/m・h・℃{W/m・k}〕は0.08〜0.03の範囲であり、一般には熱伝導単位を7kcal/mh・degを基準値に設定している。これに基づいて、断熱材の物質の単位質量や使用される環境温度で結露を生じない事を条件に、断熱材の厚さを算出して断熱効果を求めている。しかし標記した素材等で算出すると実施例でも断熱使用量は厚くなり、効率化と軽薄化で課題を残していた。本発明が属する用途分野では、次のように定義されている。断熱材の厚さ(m)とは断熱材の熱伝導率(Kcal/md deg)を表面の熱伝達率(Kcal/mh deg)の基準で算出する。すなわち断熱材の内部温度と表面温度差を露点温度と外気温度の差において使用する材料厚さを選定する。選定の基準となる各々の物性材が種類別に分類公示されて算出に供している。従来の該選定物は主に空気層による断熱手段であり、軽薄と断熱性能の向上には限界であった。(空調・デ−タブックK断熱・塗装)
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0003】
一般的に使用されている熱遮断や保温を目的とした断熱材は、無機物にロックウ−ル、ガラスウ−ルの繊維物や合成有機ポリマ−では単独発泡のポリスチレンフォ−ムやポリウレタンフォ−ムの硬/軟の両質で使い分けされている。無機繊維物になるロックウ−ルやガラスウ−ルは価格が低廉であるが、吸湿性が大きいために、使用環境や経年性により吸湿すると機能効果を著しく低下させる等、防湿や施工に課題を抱えていた。また薄くして、簡便に使用できない難点があった。一方、樹脂等の硬質成型物の中間を真空に処理する手段が提案されているが、目的により柔軟性に欠けるために断熱中間材として、簡便に使用できない。本発明は、このような背景に鑑み、上記の課題を解決するものである。即ち断熱材として使用するには、例えば;
▲1▼断熱有効面の物性値が従来品比1/20以下の薄さと機能確保ができる事
▲2▼−50℃から120℃の耐熱、耐寒、耐久性と簡便な施工性に優れる事
▲3▼難燃性、無毒性で安全性が高い事
▲4▼経済的に低廉である事
▲5▼原材料の入手が容易く、製造及び加工上や工事施工上で使用が容易い事
本発明の該熱遮断素材は各種の発泡材による平均的熱伝導率〔Kcal/m・h・℃{W/m・k}〕性能に比べて熱遮断特性を削減できる。すなわち素材を薄くコンパクトに仕上げられる特徴と効果があり、高効率な熱遮断特性を生かして、装置の小型化や保温、保冷効果を従来の手段より熱損失で約100%軽減など、真空断熱材としての効果が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
真空状態での熱伝達率は放射(輻射)単独であり、伝導と対流は発生しない。通常空間で応用すると伝導及び対流の熱伝達が遮断されて、断熱効果を大幅に向上できる事が知られている。従来からこの原理を用いたガラス製やステンレス製になる二重容器の空間を圧力数Torr以下の極低圧状態の環境下で真空に置換して、輻射の影響を回避する水銀蒸着を施した保温器に適用してきた。本発明は真空の該原理を包装素材に応用して、該真空包装物自体を被遮断物と外装の中間に充填したり、張り付けたり又は、包む、覆うの所作により簡便に真空断熱層を形成する。軽くて薄い柔軟性を特徴とした真空断熱素材を提供する。
【0005】
真空に用いる素材にグラファイトと同じ構造式を持つ同素体で六角の網目層状構造を持った活性炭がある。特徴として、大きい比表面積を持ち、多孔質の炭素の炭を主材とする植物繊維で、竹炭、木炭、ヤシがら、石炭チャ−等の多孔機能(吸着空間)を炭化した後、処理したものである。その比表面積は800〜1200m・g−1、細孔容積0.2〜2cm・g−1、細孔径1〜4nmと真空利用素材である。弱い層状結合の構造が方向性でもろさがあり、この性状は強度を必要とする外殻構成に課題を呈した。
【0006】
好ましくは見掛密度と真密度(g/dm)の差が大きい程、表面積の占める空間率が大きく効果的であり、非常に極薄の安定した真空空間で熱遮断効果を発揮する目的物を得る事ができる。
【0007】
従来から断熱材として用いられている発泡性断熱材は発泡剤を用いて単独の空気層が気泡状で気密に独立するように成型されている。従って空気層による断熱となり、空気に拘わる熱伝導は避けられなかった。前述のように真空に措ける熱伝導は実際値も皆無であるので、これを構成するには真空層を形成する空間と堅固な外殻を保有する多孔質セラミックスが重要であった。この条件を満たすには、素材が連続多孔を有する事が真空置換に不可欠である。機能効果として多孔空間容積が大きく、強じんな外殻素性を持ち合わせる事が好ましい。一般的に多孔と呼ばれる物質には単純な官能基としての空洞組成物が多く、これらは総じて見掛け密度が大きく、粒径も大きくなり真空密度は低下する傾向があった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は真空断熱用素材としてセピオライトやパリゴルスカイトを見いだした。これらの結晶構造は極めて細かく積重ねた繊維結晶中に約5.6×11.0オングストロ−ムから6.7×13.4オングストロ−ム範囲にフィロシリケ−ト結晶端で千鳥格子状連鎖断面を持つ微細孔なチャネルの存在にある。このチャネルは口径の長いトンネル状微細孔マトリックスを成因して、その表面体はシリカゲル構造にも似ている事が解明されている。(粘土科学、第32巻、第3号pp.154−172(1992))繊維径0.2μs、繊維の長さは5〜50μs、真密度26に対して見掛密度0.06〜0.20及び表面積(m/g)が250〜330の範囲から選ばれるが、真空置換の実施には好ましい様態である。
【0009】
この微小孔径のトンネル状細孔のチャネルが繊維結晶の間に無数に空いている。この構造を構成するトンネル状微細孔状の無数空間の空気を置換して真空化する事で、非常に薄くて真空密度の高い熱遮断層を形成して、その効果を発揮するに着目した。
【0010】
採用したセピオライトやパリゴルスカイトは微小孔径のトンネル状微細孔を構成する結晶性繊維状構造で同系のマグネシウムである。一般的に粒子構造が真空減圧や物理的外圧の影響で変形破壊して、トンネル状微細孔の崩壊等が発生すると真空層の減少が危ぐされるが、該セラミックスの千鳥格子状外殻は他の比較に類を見ない極めて強じんであり、生成過程での特異性に起因すると考えられ他の鉱物にないいくつもの特徴を保有している。(粘土科学、第32巻、第3号pp.177−183(1992))。
【0011】
セピオライトやパリゴルスカイトはこれを担持する下地材に多孔性繊維の羊羽毛フエルト、化学繊維不織布、綿布及び植物繊維等から選ばれるの表面又は下地材の中間に該セラミックスを万遍に充着もしくは覆って予着した後、ラミネ−トフィルム包装体に固定して、内部を真空にして密封する処理により均等で薄く柔軟性に優れた真空層を構築する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
真空に用いられるセピオライト及びパリゴルスカイトの微粒子(1)の単体又は混合物を担持する多孔性繊維布等の担持体(2)になる二層の中間にセピオライト及びパリゴルスカイトの微粒子(1)粉末を塗布状で積重ねて、セピオライト及びパリゴルスカイトの固定処置を施す。該担持体をセパレ−トした後、ラミネ−トフイルム(3)の内面に重責して収納、(2)とラミネ−トフイルムのシ−ル面(4)を除く内側面に部分的に接合して、その上部を同じくアルミ箔ラミネ−トフイルムで覆ってフイルムの三方をシ−ル処理(4)の後、四面の一片より減圧真空装置を用いて、内部の空気を完全脱気の後、(4)の密封処理を行う。尚、該断熱材の片面に離形紙付き粘着材又は接着剤(5)層を用いれば、被対象物に簡便に張り付等ができる。また真空素材の表面保護に止めボルトを除いたアスファルトや接着材等によるル−フィング手法を用いば機能の保全を確保できる。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例を図面に基づいて、詳細に説明する。第1図において真空式簡易断熱材の形状を示している。該断熱材は、第2図及び第3図に断面図が示す様にセピオライト及びパリゴルスカイトの微粒子セラミックス重層3が空気遮断性シ−ト包装材からなる包装袋4内で真空密封されている。セピオライト及びパリゴルスカイトの微粒子セラミックス積重体1及び2は、上記断熱材の形状に形成されたセピオライト及びパリゴルスカイトの微粒子セラミックス積重体である。1及び2を支持する包装体3は、セピオライト及びパリゴルスカイトの微粒子セラミックス1と下地材2を真空断熱材シ−ト3が包装体内で固定され、図4で密封接合されている。また包装材3の表面には、被断熱面に接触密着する両面粘着接合材を採用して、断熱施工を簡便に実施できる。以上のように形成された断熱体は次ぎのように使用された。500回の繰り返し使用において、断熱効果を低下させる事はなく、繰り返し持続できた。本発明は上記実施例のものに限らずに種々の形態に対応する態様が可能である。第3図は2図の拡大部分断面図である。第4図には冷暖の仕分け実施に使用の状態図を示すものである。シ−ト状に構成した断熱材であり、筒状や平面的な加工用途に最適である。形状は被断熱体に適合するように四辺形状である。使用用途により、厚さが1.5mmから6mmと極めて薄く柔軟なシ−ト状の真空断熱材を得る事ができる。
【発明の効果】
【0014】
本特許の真空断熱材は、以上のように構成され、真空原理を利用しているので、薄く小体積で高断熱効果を示した。内外温度差(△/t10℃/hr)における上記の実施例に使用した0.1立方米の温水タンクの水温60℃を該発明試料材の厚さが2mm内外で被保温対象物の全面を覆って、放熱負荷から断熱効果を測定したところ、温水50℃の温度を約6時間にわたって変化する事なく維持した。従来の発泡ウレタン断熱材で保温を維持するためには、約30倍以上の体積が必要となるので、従来のものに比べて飛躍的に省スペ−スで小型化を可能にして効率的な保温を維持する。更に真空状態の物質が下地材に満遍なく塗布された状態が一方に片寄ることもなく、均一に被保温、保冷の遮断状態を維持し続け、しかも低廉に製作できるので、極めて経済的で省スペ−ス等の優れた効果を提供できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の真空断熱体の実施例を示す平面図,
【図2】第1図のA−A断面図.
【図3】第2図の部分拡大断面図.
【図4】実施例の略図である。
【符号の説明】
【0016】
1〜セピオライト及びパリゴルスカイトになるセラミックス微粉末
2〜1を担持する下地材
3〜軟質ラミネ−トフィルム支持体
4〜シ−ル箇所
5〜粘着テ−プ/接着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスの表面がフィロシリケ−ト結晶端で千鳥格子状連鎖になる多孔断面層を構成して、無数の連続細孔を有する繊維状セラミックスと該セラミックスの担持材にポ−ラスなフエルト状不織布を用いた複合構成体を、空気不透過性軟質フイルム等に挟んで、減圧数Torr以下の極低圧の環境下で多孔層及び複合構成体の空気を真空層に置換してなる真空熱遮断素材に関する。
【請求項2】
多孔性繊維状結晶を構成するセラミックスがセビオライト、2MgO・3SiO・nHOの構造式を有する水和マグネシウムシリケ−ト系、及びパリゴルスカイト(Mg,AL)Si10(OH)・4HOの構造式を有する含水ケイ酸マグネシウム系セラミックスである。該繊維結晶物の粒度が5mmから+500μs及び−45μsの範囲から選ばれる単独又は複合で構成される特許請求項1記載の真空熱遮断素材。
【請求項3】
該セラミックスの担持体がポ−ラスな牛毛、羊毛、羽毛等になる動物性繊維及びポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン等の化学繊維あるいは主成分がセルロ−スやリグニン等になる実の表皮や靭皮繊維、葉繊維、木材繊維等の植物性繊維のフエルト状不織布から選ばれるを用いた熱遮断性真空素材を目的とした特許請求項1記載の真空熱遮断素材。
【請求項4】
セピオライトやパリゴルスカイトを担持する不織布フエルト複合体のこれらを収納する包装支持体がアルミニウム箔、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等から選ばれる柔軟性とガスバリア性能及び輻射防止を施した軟包装複合フイルムで構成される特許請求項1及び2記載の真空熱遮断素材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−151331(P2008−151331A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357252(P2006−357252)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(599044847)
【Fターム(参考)】