説明

真空蒸着装置

【課題】本発明の目的は、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せずに、例えば、1辺の長さが1mを超える大形基板に対して、蒸発源の安定したスキャン動作が行える駆動機構を備えた信頼性の高いまたは稼働率の高いあるいは安定して蒸着が可能なまたは軽量で製作コスト、装置輸送コストの低減を図った真空蒸着装置を提供することである。
【解決手段】本発明は、前記真空チャンバの内部に設けた剛体の第1基準部材、真空チャンバの外部に設けた剛体の第2基準部材、及び一端を前記第1基準部材に固定し、前記真空チャンバの壁に設けた貫通孔を通して他端を前記第2基準部材に固定された剛体の支柱を複数具備するかご構造体と、前記真空チャンバの気密性を確保する気密部と、前記かご構造体を前記真空チャンバの所定位置に維持する維持手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELパネル,有機EL照明の製造を始め、真空チャンバ内部で移動機構を持つ蒸着、CVDやスパッタ成膜を対象とし、特に大形基板に対して薄膜形成を行う真空蒸着装置に係る。
【背景技術】
【0002】
薄板の基板に対する薄膜形成工程で用いられる真空蒸着は、蒸着マスクを真空チャンバ内に設け、搬送されて来た基板を蒸着マスクとアライメントした後に、高真空下において材料を高温で気化させて基板に吹き付けることによって成膜するプロセスである。この成膜では、基板を回転させて成膜する方法や棒状の蒸発源(リニアソース)を基板の長手方向に対して垂直方向に基板又はリニアソースを動かして蒸着する方法などが提案されてきた。大形基板を扱う際に、リニアソースを動かして走査しながら成膜する方式では、特許文献1や特許文献2に示すように、リニアソースの駆動機構を真空チャンバ壁に取り付ける方法が提案されてきた。
【0003】
特許文献1では図11に示す様に、真空チャンバ1内の底面にボールねじ103やリニアガイド105を取り付け、真空チャンバ外部に設けた駆動源100からの動力によりボールねじを回転させて蒸発源2に取り付けたナット104を動かすことにより、蒸発源の往復運動を実現する例が示された。
【0004】
特許文献2では図13に示すように、真空チャンバ1外側面にプッシュロッド109を水平移動させるためのリニアガイド105と駆動源を設け、真空シール102を介して真空チャンバの内側にプッシュロッドを出し入れできるようにしている。真空チャンバ内のプッシュロッドには、ガイドローラが取り付けられ、真空チャンバ底面に設けたガイドレール105aに沿って、プッシュロッドが往復する。蒸発源2はこのプッシュロッドの先端に取り付ける。これによって、真空チャンバの外部の駆動源100を走査し、真空チャンバ内部の蒸発源の往復運動を実現させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-349101
【特許文献2】特開2005-256113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空蒸着のように10-3〜10-6Paオーダの真空度を保ち成膜するプロセス装置では、1辺が1mを越えるガラス基板を扱う場合、真空チャンバ壁のたわみの影響も考慮する必要が生じる。
基板サイズに合わせて単純に真空チャンバを大形化して行くと、真空チャンバ壁の変形も無視できない大きさ(数mm〜10mm程度以上)になることが解った。特許文献1の方式を図11と図12、特許文献2の方式を図13と図14に示す。図11と図12は真空チャンバ内が大気圧の状態、図13と図14は真空チャンバ内を真空排気時の真空チャンバ壁の変形による蒸発源の往復運動の駆動機構の影響を示したものである。
【0007】
両者は共にリニアガイドやボールねじなどの蒸発源移動機構を真空チャンバ壁基準に設けている。このようにすると、真空排気時に真空チャンバ壁が変形することにより、蒸発源移動機構の動きに拘束がかかり、いわゆる動きが渋くなる状態が生じる。この状態を放置すると、駆動時の振動の発生やリニアガイドやボールねじに磨耗が生じやすくなる。さらにモータ等の駆動源にも負荷が掛かり、故障しやすくなり、稼働率の低下が懸念されるといった課題があった。
【0008】
一般的に、この状態を避けるために、真空チャンバをたわませないように、真空チャンバ壁の肉厚を増やす、若しくは真空チャンバ壁にリブを設けるなどの断面2次モーメントを向上させる対策が取られてきた。
【0009】
大形の基板を処理する装置の場合、真空チャンバ壁を厚くして行けば真空チャンバのたわみを0.5mm以内に抑えることも可能であるが、製作は可能であっても装置重量が数100トンにもなる可能性があり、パネル生産ラインに装置を搬送することが重量面で困難になる。また、リブを設けてチャンバ壁の剛性を向上させても、リブ間隔を狭く、リブ高さを大きくしなければ、対応できず、大きさの面で搬送に支障が生じる。
なお、図15、図16において上記で説明されていない符号は、本発明の実施形態で説明したものと同一機能ものは同一のものを用いている。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記に鑑みて、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せずに、蒸発源の安定したスキャン動作が行える駆動機構を備えた信頼性の高いまたは稼働率の高い真空蒸着装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せずに、安定した蒸着が可能な真空蒸着装置を提供することである。
【0011】
さらに、本発明の他の目的は、従来の真空チャンバと比べて、軽量でまたは製作コストあるいは装置輸送コストの低減を図った真空蒸着装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、特に、1辺の長さが1mを超える大形基板に対して、上記3つのうち少なくとも一つを達成できる真空蒸着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着する真空チャンバを有する真空蒸着装置において、前記真空チャンバの内部に設けた剛体の第1基準部材、真空チャンバの外部に設けた剛体の第2基準部材、及び一端を前記第1基準部材に固定し、前記真空チャンバの壁に設けた貫通孔を通して他端を前記第2基準部材に固定された剛体の支柱を複数具備するかご構造体と、前記貫通孔と前記第1基準部材あるいは前記第2基準部材の前記固定部との間の支柱を覆い、前記真空チャンバの気密性を確保する第1気密部と、前記かご構造体を前記真空チャンバの所定位置に維持する維持手段と、前記真空チャンバ内部において前記蒸発源を移動させる前記かご構造体に設けられた移動手段と、前記移動手段を駆動する駆動源とを有することを第1の特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記維持手段は、前記第1又は第2基準部材と前記真空チャンバの壁との間に設けられ、前記第1又は第2基準部材と前記第1又は第2基準部材に対向する前記真空チャンバの壁との相対的な位置関係を保持する拘束手段または滑り対偶あるいは回転対偶のいずれか又はそれらの組合せによって構成させるフローティング機構を有することを第2の特徴とする。
【0014】
さらに、上記目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記拘束手段は、前記第1又は第2基準部材と前記真空チャンバの壁との間に設けられ、前記第1又は第2基準部材と前記第1又は第2基準部材に対向する前記真空チャンバの壁との面方向のずれを拘束する面方向拘束手段であることを第3の特徴とする。
また、上記目的を達成するために、第3の特徴に加え、前記面方向拘束は前記第1又は第2基準部材と前記対向する前記真空チャンバの壁の少なくともどちらか一方に凸部を設け、前記対応する凹部にはめ込む又は端部に突き当ててる手段であることを第4の特徴とする。
【0015】
さらに、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記駆動源を前記第2基準部材に固定したことを第5の特徴とする。
また、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記蒸発源は、ノズルを有し、内部に前記蒸着材料を収める容器であるるつぼと、前記るつぼを加熱する加熱手段を持ち、るつぼの加熱により前記蒸着材料を気化させて、前記るつぼに設けた前記ノズルから気化した前記蒸着材料を噴出させることを第6の特徴とする。
【0016】
さらに、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記駆動源は真空蒸着チャンバ外部に設けられ、前記移動手段と前記駆動源の間に前記真空蒸着チャンバの気密性を確保する第2気密部を持ち、前記第2気密部を介して前記駆動源の回転動力又は直動動力を前記移動手段に伝達することを第7の特徴とする。
また、上記目的を達成するために、第1または第7の特徴に加え、前記移動手段は、前記蒸発源を前記第1基準部材に平行に移動させる移動機構と、前記移動機構と前記蒸発源とを結合する結合手段と、前記結合手段を駆動する結合駆動手段とを有することを第8の特徴とする。
【0017】
さらに、上記目的を達成するために、第8の特徴に加え、前記移動機構は前記第1基準部材に設けられたガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合手段は前記蒸発源、前記摺動子の少なくとも一方に固定されたナットであり、前記結合駆動手段は前記ナットを移動させる螺子であることを第9の特徴とする。
【0018】
また、上記目的を達成するために、第8の特徴に加え、前記移動機構は前記第1基準部材に設けられたガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合手段は前記蒸発源または前記摺動子あるいは前記蒸発源と前記摺動子固定する固定部であり、前記結合駆動手段は一端を前記結合手段に固定され、他端を移動可能な移動部に固定されたプッシュロッドであり、前記第2気密部は少なくとも前記移動部と前記真空蒸着チャンバの壁との間に設け、前記真空チャンバ外に設けられた前記プッシュロッドを駆動するプッシュロッド駆動手段を有すことを第10の特徴とする。
【0019】
さらに、上記目的を達成するために、第8の特徴に加え、前記移動機構は前記第1基準部材に設けられたガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合駆動手段は内部に前記真空蒸着チャンバ外の雰囲気を有する空洞を有した前記蒸発源の移動方向に細長い非磁性体の真空隔壁と、前記真空隔壁内に設けられ、前記結合手段と磁気的に結合し前記結合手段を前記真空隔壁に沿って移動させる磁気結合駆動手段を有することを第11の特徴とする。
【0020】
また、上記目的を達成するために、蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着する真空チャンバを有する真空蒸着装置において、前記蒸発源を前記基板に沿って移動させる移動機構、前記移動機構と前記蒸発源とを結合する結合手段、前記結合手段を駆動する結合駆動手段を具備する移動手段と、前記移動手段を駆動する前記真空チャンバの外部に設けられた駆動源と、前記移動手段と前記駆動源の間に設けられ、前記真空チャンバの気密性を確保する気密部とを有し、前記移動機構はガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合駆動手段は内部に前記真空チャンバ外の雰囲気を有する空洞を有し前記蒸発源の移動方向に細長い非磁性体の真空隔壁と、前記真空隔壁内に設けられ、前記結合手段と磁気的に結合し前記結合手段を前記真空隔壁に沿って移動させる磁気結合駆動手段を有することを第12の特徴とする。
【0021】
さらに、上記目的を達成するために、第11または12の特徴に加え、前記磁気結合駆動手段は前記真空隔壁方向に細長く、磁気を螺旋状に施した磁気螺子であり、前記結合手段は前記真空隔壁の外側に真空隔壁に非接触で配置した磁気螺子用ナットであり、前記駆動源は前記磁気螺子を駆動することを第13の特徴とする。
また、上記目的を達成するために、第13の特徴に加え、前記真空隔壁は、前記第1基準部材に直接または間接的に固定され、一端が密閉され、他端が前記真空チャンバ外の雰囲気に開放されていることを第14の特徴とする。
【0022】
さらに、上記目的を達成するために、第14の特徴に加え、前記真空隔壁の両端が開放されていることを第15の特徴とする。
最後に、上記目的を達成するために、第11または第12の特徴に加え、前記磁気結合駆動手段は前記真空隔壁内に設けたピストンであり、前記結合手段は前記真空隔壁の外側に真空隔壁に非接触で配置したリングであり、前記ピストン、前記リングのうち一方が磁石を持ち、他方が磁石に吸着する材料で形成されており、前記真空隔壁の両端に空圧配管を接続し、前記空圧を制御して前記ピストンを移動させることを特徴とすることを第16の特徴とする。
【0023】
なお、本発明における、剛体とは外力を受けても所望以上に形状が変化しないことを示し、必ずしも、真空チャンバ壁よりも剛性が高いというわけではない。
【発明の効果】
【0024】
本発明のよれば、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せずに、蒸発源の安定したスキャン動作が行える駆動機構を備えた信頼性の高いあるいは稼働率の高い真空蒸着装置を提供することができる。
また、本発明のよれば、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せずに、安定した蒸着が可能な真空蒸着装置を提供することができる。
【0025】
さらに、本発明のよれば、従来の真空チャンバと比べて、軽量でまたは製作コストあるいは装置輸送コストの低減を図った真空蒸着装置を提供することができる。
また、本発明のよれば、特に、1辺の長さが1mを超える大形基板に対して、上記3つのうち少なくとも一つを達成できる真空蒸着装置を提供することができる。
また、本発明によれば、蒸発源移動機構のミスアライメントが生じにくくなるため、蒸発源の移動時に振動よって蒸発源内部の液化した蒸着材料の液面がゆすられることに起因した蒸着材料の気化速度の変動を抑制し、安定した蒸着プロセスを実現できる真空蒸着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の真空蒸着装置における第1実施形態の第1の実施例を示す図である。
【図2】図1に示した第1実施形態の第1の実施例において、真空チャンバ内部を排気した状態を示す図である。
【図3】本発明の真空蒸着装置における第1実施形態の第2の実施例を示す図である。
【図4】図3に示した第1実施形態の第2の実施例において、真空チャンバ内部を排気した状態を示す図である。
【図5】蒸着マスクを用いた成膜における蒸着マスクと基板のアライメントの1例を示す図である。
【図6】有機ELパネル製造における蒸着マスクを用いた有機膜の蒸着で、マスクと基板上の画素のアライメント状態を示す図である。
【図7】本発明の真空蒸着装置における第2実施形態の実施例を示す図である。
【図8】本発明の真空蒸着装置における第3実施形態の第1の実施例を示す図である。
【図9】本発明の真空蒸着装置における第3実施形態の第2の実施例を示す図である。
【図10】本発明の真空蒸着装置における第3実施形態の第3の実施例を示す図である。
【図11】従来方法による真空蒸着装置の例を示す図である。
【図12】図11に示した従来方法による真空蒸着装置の例において、真空チャンバ内部を真空排気した状態を示す図である。
【図13】従来方法による他の真空蒸着装置の例を示す図である。
【図14】図13に示した従来方法による他の真空蒸着装置の例において、真空チャンバ内部を真空排気した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、有機ELディスプレイパネル又は有機EL照明の真空蒸着プロセスを例に挙げ、大形基板を対象とする真空蒸着装置に本発明を適用した実施形態について図面を用いて説明する。
本発明における第1実施形態を図1〜4を用いて説明する。第1実施形態は、図11及び図13に示した従来方式に対応したもので、従来方式にとの差を含めて第1実施形態を説明をする。
図1と図3に本実施形態の実施例とその基本構成を示す。図1及び図3に示した真空蒸着装置について真空チャンバ1内部を真空ポンプ(図示せず)によって排気した状態を図2及び図4にそれぞれ示す。
【0028】
(第1実施形態の実施例1)
まず、図1、図を用いて第1の実施例を説明する。なお、図11は従来方式の基本構成を示し、図12は図11に示した従来方式で真空排気をした状態を示す。
真空チャンバ1の内部を真空ポンプにより真空排気すると真空チャンバ壁1hは1kPaの負圧を受ける。真空チャンバ1が大型化すると、図2または図12に示すように真空チャンバ壁のたわみの問題が顕著になる。従来は一般的に真空チャンバ壁の厚みを増したり、リブを取り付けるなどのチャンバ壁の剛性を向上させることによりチャンバ壁のたわみを押さえ、そこに取り付けられてきた機構部品への悪影響を排除しようとしてきた。しかし、これらの対策は、どれも真空チャンバの重量がかさむ方向での対処となるため、真空蒸着装置をユーザのもとへ搬送する際に、搬送可能な重量を超えるケースも生じ始めた。
【0029】
例えば、大形基板に対して成膜する場合、棒状の蒸発源2(リニアソース)をその長手方向に対して直角方向に動かして、成膜する場合がある。この時、図12に示すような従来の方式では、真空チャンバ壁1hが変形すると蒸発源2を紙面左右方向に移動させるリニアガイド105やボール螺子103などで構成される各直動する移動機構の部材も真空チャンバ壁と共に変形する。真空チャンバ外部に設けた駆動源であるモータ100の回転動力を、磁性流体シール102を介して真空チャンバ1内のボール螺子103に伝達し蒸発源2を動かすが、図9のように変形した場合、結合駆動手段であるボール螺子103に対する結合手段であるナット104の動きや移動機構であるリニアガイド105におけるガイドレール105aと摺動子105bの動きが共に拘束され、いわゆる「動きが渋くなる」という現象が生じてしまう。
【0030】
本実施例では、図1及び図2に示すように、真空チャンバ1内部と外部に跨り「かご構造体」20を設ける。かご構造体は真空チャンバ内外に、剛体の板で第1基準部材である内部ベースプレート8と、剛体の板で第2基準部材である外部ベースプレート16と支柱23とからなる。支柱23は真空チャンバ壁1hに設けた穴を通り、内部ベースプレート8と外部ベースプレート16とを剛体接続する。真空チャンバ1内の気密を保つため、支柱23の外側を囲むようにベローズ21を設け、ベローズ21の端面を真空チャンバ1外壁と外部ベースプレート16と密着させる。同様な機能を持たせるのに、ベローズ21の端面を真空チャンバ1と内部ベースプレート8に密着させても良い。
【0031】
真空排気すると、かご構造体20は真空チャンバ内部に引きこまれるように力が働く。この力をフローティング機構(維持手段)9a,9bを介して真空チャンバ壁1hの紙面での下壁1hdに受け持たせる。図1において、このフローティング機構9a,9bは真空チャンバ壁1hdに対して直角方向の力を真空チャンバ壁に伝達するが、それと直交方向の成分の力や回転方向の逃がすように球面の受け9aa、9baと真空チャンバ壁1hdのに直交方向に滑るリニアガイド9bbで構成した。単にフローティングさせるとかご構造体20の位置が定まらないのでフローティング機構9aに示すように、一部にリニアガイドを設けず回転方向の力のみ逃がす構造9aaとした。
【0032】
図1では紙面左側に、位置決め用のフローティング機構9aを設けたが、外部ベースプレート16の中央部に設けても良い。支柱23が真空チャンバ1の穴と擦れ合い、動きの妨げになら無ければ良い。
また、図1では維持手段として滑り対偶と回転対偶を有するフローティング機構9を設けたが、発塵の問題が無ければ、例えば、位置決めピン等でかご構造体20と真空チャンバ壁1hdの相対的な位置関係を保持する拘束手段でフローティング機構を構成してもよいし、拘束手段と滑り対偶や回転対偶を組合せたフローティング機構を構成してもよい。
【0033】
他の拘束手段の例としては、真空チャンバ壁1hdと外部ベースプレート16また内部ベースプレート8の間に設け、外部ベースプレート16また内部ベースプレート8とその外部ベースプレート16また内部ベースプレート8に対向する真空チャンバ壁1hdとの面方向のすれを拘束する面方拘束手段がある。具体的な例としては、外部ベースプレート16また内部ベースプレート8と真空チャンバの壁の少なくともどちらか一方に凸部を設け、前記対応する凹部にはめ込む又は端部に突き当ててる構成としても良い。
【0034】
フローティング機構9は内外のベースプレート8,16に十分剛性があるのであれば、3個以上、できるだけ間隔を広げて配置すれば特に問題ない。ベースプレート8,16の剛性があまり大きく取れない場合は、支柱23の近傍若しくは延長線上にフローティング機構9を設けることが望ましい。
蒸発源2を駆動するためのリニアガイド105やボール螺子103は、内部ベースプレート8上に設置することによって、真空チャンバの変形に無関係に、その位置関係及び形状を保持できる。また、真空装置では駆動源のモータ100を冷却の都合から真空チャンバ1の外部に設置する。このモータ100を本実施例では外部ベースプレート16に固定することにより、駆動される側とモータの位置関係は保持される。モータ100の動力を真空チャンバ1内に伝達するのに磁性流体シール102を介して真空チャンバ1内部に伝達する。磁性流体シール102が図2に示すように真空チャンバ壁1hの変形で傾く場合モータ100と磁性流体シール102の間及び、磁性流体シール102とボール螺子103の間に、軸間の変位や角度誤差を吸収するカップリング101を設けることで、スムーズな動力の伝達が可能になる。
【0035】
以上に示した構造を採用することにより、図1及び図2において、蒸発源2移動手段により蒸発源2を紙面左右に揺動させ、紙面上部にある蒸着マスク5と基板4に蒸気を吹き付け、基板4の所定の画素に対して、蒸着膜を形成する。
【0036】
(第1実施形態の実施例2)
次に、第1実施形態の第2の実施例を図3、図4を用いて説明する。第2の実施例は、基本的には第1の実施例と同じであるが、フローティング機構9の設置位置が異なる。第1の実施例では、フローティング機構9が真空チャンバ1の外側にある例を示したが、本実施例では、図3のように真空チャンバ1の内側にフローティング機構9を設ける。この場合、真空排気すると、図4に示すような状態になり、図2同様に真空チャンバ1壁は変形するが、かご構造体及びそのベースプレート8,16に取り付けた機構の変形は生じない。
【0037】
上述したように、本実施形態によれば、ボール螺子やリニアガイドを取り付け、真空チャンバ外部に設けた駆動源からの動力によりボールねじを回転させて蒸発源2を動かし蒸着する際において、真空チャンバの内外に跨り、大気圧との差圧を受けない剛体で構成したかご構造体と真空排気時にかご構造体に生じる真空チャンバ内部に引込む力を真空チャンバ壁に持たせる機構を設けることで、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せず、蒸着に必要な構成部材のたわみ、位置や姿勢の大幅な変化を抑制することができた。
【0038】
その結果、本実施形態によれば、駆動源とボール螺子等の駆動機構とのミスアライメントが生じなくなるため、蒸発源の移動手段の構成要素であるリニアガイドやボール螺子等の直動運動を安定して確実に行える、信頼性の高い真空蒸着装置を提供できる。
また、本実施形態によれば、駆動源とボール螺子等の駆動機構とのミスアライメントが生じなくなるため、駆動源及び移動手段の直動機構のメンテナンス頻度や交換頻度を長く稼働率の高い真空蒸着装置を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、機構の変形やミスアライメントが発生しないため、蒸発源の移動で振動の発生が従来方式に比べ大幅に低減され、蒸発源内部の液化した蒸着材料の液面がゆすられることもなく、蒸着材料の気化速度が安定し、成膜レートを一定に保つことができ、安定した蒸着が可能となった。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、真空チャンバは圧力容器と剛体としての機能を持たせなければならなかったが、真空チャンバは圧力容器としての機能のみを持たせればよい。従って、真空排気時に真空チャンバ壁が弾性変形内でたわむことを前提できるため、従来の真空チャンバと比べて、真空チャンバの肉厚を減らし、リブなどの補強材を小形にでき、真空蒸着装置の軽量化、製作コストや装置輸送コストの低減を図ることができる。
特に、これらの効果は、1辺の長さが1mを超える大形基板に対して蒸着する真空蒸着装置においてその効果は顕著である。
【0041】
次に、第2実施形態を説明する前に、図5及び図6を用いて、有機ELパネル製造における有機層の蒸着を例に挙げてマスク成膜を説明する。
図5に本発明の各実施形態で用いるアライメント方法を説明する。基板4はエッチング又は、パターンによるアライメントマーク25が設けられている。また、基板4のアライメントマーク25に対応する蒸着マスク5位置にアライメントマーク26が設けられている。
蒸着マスク5上のアライメントマーク26は、電鋳またはエッチングによりマスク開口パターン31形成時に同時に形成した穴パターンやレーザ又はサンドブラストなどによる掘りこみによるパターンである。基板4と蒸着マスク5を近接又は密着させた状態で、それぞれのアライメントマーク25,26をカメラ11で同時に捉え、それぞれ得られた像29、28で構成するアライメント画像27に対して画像処理を施して相対的なずれ量を割り出し、基板4又はマスク5のいずれかを動かして修正を行うものである。なお、24は撮像時の光軸である。
【0042】
図6に蒸着中のマスクと基板の関係を示す。基板4と蒸着マスク5のアライメントが完了し、所定の画素37に対して蒸着マスク5の開口部38合わせられ、蒸発源2(紙面上方,図示せず)が揺動して成膜されて行く。ディスプレイの製作では、蒸着マスク5の開口部38を通して、蒸発源2で気化した蒸着材料を所定の画素37に対して堆積して行き、有機膜42を形成する。パターン精度の高い蒸着マスク5を用いることで、画素毎に赤,緑,青の発光材料を塗り分けることも可能である。
有機膜を積層した後、アルミニウム,銀,ITO,IZOなどの導電性膜39の画素電極40を設けることで発光可能な素子が基板4上に形成される。なお、41は画素電極40の周りには他の画素電極と隔絶するバンクである。
なお、本各実施形態では、チャンバ変形により基板4とかご構造体及び蒸発源2の位置又は姿勢に微小な変化を生じる可能性はあるが、基板と蒸発源の位置関係が数mm変化しても、蒸発源2のスキャンする方向が若干ずれても、これらは成膜自体に及ぼす影響は無い。
【0043】
上述したアライメント方法を用いた第1実施形態によれば、蒸発源2の移動機構を構成するボール螺子103やリニアガイド105などの部材の変形に起因する振動を排除できるため、蒸発源に振動を与えず円滑に動かすことが可能となる。特に、液化した後に気化する溶融系の蒸着材料では、材料を収納するるつぼ内の材料液面の大きな変動が無いため、安定した気化、ひいては安定した成膜レ−トで成膜処理可能となる。
【0044】
次に、図13、図14に示した従来技術に対応した本発明の第2実施形態の実施例を図7を用いて説明する。
図1に示す実施例1では真空チャンバ1内にボール螺子103を用いて蒸発源2を移動させる方法を示した。ボール螺子103を動力伝達機構として使用する場合、潤滑剤として揮発性が低く粘度が高い真空対応の固体潤滑剤・潤滑液又はグリースが用いられる。一般的に長尺のボール螺子には、ボールの転動面に固体潤滑剤を施すものが入手し難い。そのため、真空対応の潤滑液又はグリースを用いる方法が主流である。しかし、蒸発源2のスキャン速度が高速の場合、ボール螺子103の回転も高速になる。ボール螺子に付着する潤滑液やグリースに働く遠心力は、ボール螺子103の径に比例し、ボール螺子103の回転速度の2乗に比例するため、蒸発源2は高速駆動させる場合、真空潤滑剤の飛散防止対策が必要となる。これに対して図7に示す実施例3のように真空チャンバ1を貫通するプッシュロッド109で蒸発源を押し引きすれば、このような問題が回避できる。
【0045】
(第2実施形態の実施例)
第2実施形態の本実施例は、図7に示すように、真空チャンバ内外に1枚ずつ剛体の板である内部ベースプレート(第1基準部材)8及び外部ベースプレート(第2基準部材)16と支柱23により構成されるかご構造体及びかご構造体20に作用する真空チャンバ内部に引込む力を受けるフローティング機構9などの機構は第1実施形態と同様に有している。以下、第2実施形態の特徴部を中心に説明する。
【0046】
本実施例では、結合駆動手段であるプッシュロッド109をの周りをベローズ21で囲み、真空チャンバ1とプッシュロッドの終端の間に移動プレート107を設け、ベローズ21の両端を真空チャンバ壁1h及び移動プレートに固定する。プッシュロッド109は、一端を蒸発源2に固定し結合手段の役目をする固定部106に、他端を移動プレート107に接続されている。移動プレートが受ける差圧を軽減させるため、外部ベースプレート16に固定する固定プレート108を設け、移動プレートと固定プレートの間をベローズ21bで気密を保持した状態でつなぐ。この時、ベローズ21,21aで囲われている移動プレート107の部分の内側に貫通穴115を設けることにより、移動プレート107の受ける差圧を軽減させることができる。図7では外部ベースプレート16上に、プッシュロッド109の駆動機構10を設けている。図7では結合駆動手段であるボール螺子103を用いて移動プレート107を押し引きしてプッシュロッド109を動かしている。この駆動機構の駆動方式はボール螺子を用いるのに限定する必要は無く、リニアモータを直接プッシュロッド109に取り付けても良く、またラック・ピニオンを用いてプッシュロッド109を駆動しても良く、大気中で、プッシュロッドの往復直進運動が実現できれば、いずれの方法を取っても構わない。
【0047】
上述したように、第2実施形態によれば、真空チャンバ1を貫通するプッシュロッド109で蒸発源を押し引きし蒸着する際において、真空チャンバの内外に跨り、大気圧との差圧を受けない剛体で構成したかご構造体と真空排気時にかご構造体に生じる真空チャンバ内部に引込む力を真空チャンバ壁に持たせる機構を設けることで、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せず、蒸着に必要な構成部材のたわみ、位置や姿勢の大幅な変化を抑制することができた。
【0048】
その結果、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、駆動源とプッシュロッド等の駆動機構とのミスアライメントが生じなくなるため、装置信頼性が向上する。このため、蒸発源駆動機構のメンテナンス頻度を低減できるので、蒸着装置の稼働率を向上させることができる。また、蒸着源駆動機構を動作させている時の振動も小さくなるため、蒸着材料の気化の変動が小さくなるので、長期に亘り安定した蒸着プロセスが可能な真空蒸着装置を提供できる。
【0049】
また、従来の真空チャンバでは圧力容器と剛体としての機能を持たせなければならなかったが、第2実施形態によれば真空チャンバは圧力容器としての機能のみを持たせればよい。従って、真空排気時に真空チャンバ壁が弾性変形内でたわむことを前提できるため、従来の真空チャンバと比べて、真空チャンバの肉厚を減らし、リブなどの補強材を小形にでき、真空蒸着装置の軽量化、製作コストや装置輸送コストの低減を図ることができる。
【0050】
さらに、第2実施形態によれば、蒸発源をプッシュロッドの押し引きで駆動し、螺子またはボール螺子を動力伝達機構に必要な真空グリース等の使用していないので、真空グリース等の周囲に飛散による成膜上の汚染を回避でき、信頼性の高い真空蒸着装置を提供できる。
【0051】
最後に、結合駆動手段として真空チャンバ1内でボール螺子103やプッシュロッド109による直接駆動を用いず、真空チャンバ1内に基板4に並行に設けた真空隔壁110内に設けた磁気結合駆動手段により磁気的に結合手段と結合し、非接触で蒸発源2を間接駆動する第3実施形態を図8乃至図10を用いて説明する。
第3実施形態でも、図8乃至図10に示すように、真空チャンバ内外に1枚ずつ剛体の板である内部ベースプレート8及び図10に外部ベースプレート16と支柱23により構成されるかご構造体及びかご構造体20に作用する真空チャンバ内部に引込む力を受けるフローティング機構9などの機構は第1実施形態と同様に有している。以下、第3実施形態の特徴部を中心に説明する。
【0052】
(第3実施形態の実施例1、2)
まず、本実施形態は共に円筒状の薄い非磁性材の真空隔壁110の中に磁気結合駆動手段である磁気螺子111を挿入し、真空隔壁110の外側には真空隔壁110に非接触で配置した結合手段である磁気螺子用ナット112を設け、磁気螺子用ナットにより蒸発源2を移動させる実施例1及び2を図8及び図9を用いて説明する。
【0053】
ステンレス鋼などの非磁性材料の真空隔壁110を真空チャンバ1に穴をあけ挿入する。図8では穴を1個所、図9では対向するチャンバ壁に1個所ずつあけている。真空隔壁110は内部ベースプレート8上に移動機構であるリニアガイド105と並行に固定する。真空隔壁110内部には、真空隔壁110と並行に磁気螺子111を設け、回転可能な状態にする。真空隔壁110の大気側は開放され、その端部には真空隔壁110内部へ通じる穴を持ったフランジ114を設ける。真空チャンバ1内の気密性を確保するため、フランジ114と真空チャンバ1との間にベローズ21を設置する。磁気螺子111を回転させるモータ100は図8のように外部ベースプレート16に設置するか、若しくは図9のようにフランジ114に固定してもどちらでも構わない。
【0054】
図8のように、真空隔壁110が真空チャンバ1を貫通しない場合、真空隔壁110とかご構造体20は紙面左方向に差圧が掛かるが、図9のように真空隔壁110が真空チャンバ1を貫通するように設けることで、真空隔壁110に働いていた紙面横方向への力がキャンセルできる。真空隔壁の径が大きい場合は図9のような構成が好ましい。
図8及び図9の両者は真空隔壁110の端部では、フランジ114を真空チャンバ1の外側としているが、真空隔壁の長さを短縮して真空チャンバ1の内側にフランジ114を設けてもよい。この場合もベローズ21が真空チャンバの内側に入り込む形で、フランジ114と真空チャンバ1の間に設ければ同じ効果が得られる。
【0055】
真空隔壁110の外側には真空隔壁110に非接触で配置した磁気螺子用ナット112を設ける。磁気螺子用ナット112とリニアガイドの摺動子105b及び蒸発源2を連結する部材を設けることにより、真空チャンバ1の外部に設けたモータ100を回転させ、真空隔壁を挟んで動力を伝達し、蒸発源2を往復直進運動させることが可能となる。
【0056】
以上説明したように、本実施例1または2によれば、筒状の真空隔壁で磁気螺子を覆い、真空隔壁の外側に非接触で磁気螺子のナットを設けることにより、磁気螺子の回転により蒸発源を動かす際にグリースを真空チャンバ内に飛散させることを防止することができる。
また、以上説明した本実施例1または2によれば、第1及び第2実施形態に比べて、真空チャンバ外部に配設する蒸発源2の移動駆動機構を小形化できる。
【0057】
(第3実施形態の実施例3)
次に、第3実施形態の実施例3を説明する。実施例1及び2は、磁気螺子111を蒸発源2の移動の動力伝達機構としたが、磁気螺子111を使用せずに空圧を用い簡単な機構・制御系で蒸発源2を往復移動させる例を図10に示す。
本実施例3では真空隔壁110をシリンダとし、その中に磁気結合駆動手段であるピストン117を仕込み、前記ピストン117で非接触で蒸発源2を移動させる。真空隔壁110の外部には真空隔壁110と非接触状態になるように設けられる結合手段であるリング118を設ける。このリング118とピストン117はどちらかに磁石を持ち、もう一方の部材を磁石に吸着する鉄,ニッケル,コバルトなどの材料で形成し、真空隔壁110を挟んで両者が磁力で結合するようにする。リング117はブロック119に固定され、またブロック119はリニアガイド105と蒸発源2とも接続する。
【0058】
真空隔壁110の両端には空圧配管120を設ける。ピストン117の移動は空圧配管120への圧空の導入・排気を制御して行う。圧空はポンプとタンクよりなる空圧源121より供給する。空圧源121の圧空は電磁弁122によって、真空隔壁110よりなるシリンダに、対して供給・排気の制御を行う。図14では複動形の空圧回路を形成した例を示しており、真空隔壁110に接続する片側の空圧配管に圧空を接続する時、もう片側では排気を行う。電磁弁122と真空隔壁110よりなるシリンダへ接続するそれぞれの空圧配管120においては、ピストンの移動速度を調整するスピードコントローラ123を設ける。このスピードコントローラ123は排気側の空気の流れのみで効果を発揮し、空気の流れを絞って抵抗を持たせる、いわゆる排気絞りによってピストン117の移動速度を調整することで、滑らかに動かすことができる。ピストン117がストローク端に来たところで、ブロック119は、ダンパ機能を持つストッパ124と突き当たり、停止する。
【0059】
図10では真空隔壁110の外部にストッパ124設けた例を示すが、真空隔壁110の内部に設けてピストン117を停止させても良い。ストローク単に来たことをセンサ125で検知し、電磁弁を切換えて、移動方向を逆方向に動かす。センサ125は真空環境化で使用できるものか、真空チャンバ外部に設置して内部をモニタできるもの、真空隔壁110に設けるものなど、いずれであっても良く、部が光学的なセンサ、静電容量型センサ、磁力センサ、リミットスイッチなど検出方式は問わない。
【0060】
蒸発源2の速度を頻繁に変更する場合や、加減速を細かく指定する場合や、複数の停止個所を設定するような場合では、圧空で駆動するのではなく、モータ駆動にした方が単純化できる場合がある。その場合は、例えば、リニアモータを真空隔壁110内部に設け、ピストン117をリニアモータで動かせば良い。
【0061】
以上説明した実施例3によれば、実施例1及び2と同様に、筒状の真空隔壁でピストンを覆い、真空隔壁の外側に非接触でリングを設けることにより、グリースを使用することがないので、安定した蒸着が可能である。
また、以上説明した実施例3によれば、蒸発源の速度がほぼ一定の場合で特に有効で、機構・制御系を単純に構成することができる。
また、本第3実施形態によれば、蒸発源の移動方法に起因する以外の効果については、第1、第2実施形態同様な効果を奏することができる。
【0062】
上記説明した本発明の第1及び第3実施形態において、基板、マスクの姿勢、即ち蒸発源姿勢については限定して説明をしていない。基板、マスクの姿勢としては、水平或いは垂直があり、蒸発源を重力方向に動かす場合、水平方向(重力方向と直角方向)に動かす場合又はそれ以外の姿勢で蒸発源を動かす場合があるが、本発明は、蒸発源を移動方向やかご構造体の姿勢に影響なく再現できる。
【0063】
以上説明した上記第1乃至第3実施形態によれば、真空チャンバの内外に跨り、大気圧との差圧を受けない剛体で構成したかご構造体を設けたことで、かご構造体は面として大気圧との差圧を受けることが回避でき、また、フローティング機構等によりかご構造体が真空チャンバの内側に引き込まれようとする力受け持たせることが可能となった。この結果、かご構造体は、真空チャンバの変形に影響を受けることなく、構成する部材のたわみを抑え、大幅な位置や姿勢の変化も同時におさえることができた。従って、蒸発源の移動駆動機構成が真空排気前後で円滑な動きを保ち続けることが可能となり、信頼性あるいは稼働率の高い真空蒸着装置を提供できる。
【0064】
また、以上説明した上記第1乃至第3実施形態によれば、真空チャンバは圧力容器と剛体としての機能を持たせなければならなかったが、真空チャンバは圧力容器としての機能のみを持たせればよい。従って、真空排気時に真空チャンバ壁が弾性変形内でたわむことを前提できるため、従来の真空チャンバと比べて、真空チャンバの肉厚を減らし、リブなどの補強材を小形にでき、軽量化、製作コストや装置輸送コストの低減を図れた真空蒸着装置を提供できる。
【0065】
さらに、以上説明した上記第1乃至第3実施形態によれば、機構の変形やミスアライメントが発生しないため、蒸発源の移動で振動が発生が従来方式に比べ大幅に低減され、蒸発源内部の液化した蒸着材料の液面がゆすられることもない。従って、蒸着材料の気化速度が安定し、成膜レートを一定に保つことができるので、安定した蒸着プロセスが可能な信頼性の高い真空蒸着装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、大形基板を取り扱う薄膜形成工程において、真空蒸着に限らず、真空チャンバ内部で移動機構を持つCVD装置やスパッタ装置など広く適用することが可能である。実施例に示した有機ELディスプレイや有機EL照明に限らず、半導体、太陽電池、包装容器などへの成膜やコーティングに応用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…真空チャンバ 2…蒸発源 4…基板
5…マスク 8…内部ベースプレート
9…フローティング機構 10…駆動機構 11…カメラ
16…外部ベースプレート 20…かご構造体 21…ベローズ
23…支柱 24…光軸
25…基板側アライメントマーク 26…マスク側アライメントマーク
27…アライメント画像 28…基板側アライメントマーク像
29…マスク側アライメントマーク像 31…マスク開口パターン
37…画素 38…マスク開口部 40…画素電極
41…バンク 42…蒸着膜 100…モータ
101…カップリング 102…磁性流体シール 103…螺子
104…ナット 105…リニアガイド 106…固定部
107…移動プレート 108…固定プレート 109…プッシュロッド
110…真空隔壁 111…磁気螺子 112…ナット
113…軸受け 114…フランジ 115…貫通穴
117…ピストン 118…リング 119…ブロック
120…空圧配管 121…空圧源 122…電磁弁
123…スピードコントローラ 124…ストッパ 125…センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着する真空チャンバを有する真空蒸着装置において、
前記真空チャンバの内部に設けた剛体の第1基準部材、真空チャンバの外部に設けた剛体の第2基準部材、及び一端を前記第1基準部材に固定し、前記真空チャンバの壁に設けた貫通孔を通して他端を前記第2基準部材に固定された剛体の支柱を複数具備するかご構造体と、前記貫通孔と前記第1基準部材あるいは前記第2基準部材の前記固定部との間の支柱を覆い、前記真空チャンバの気密性を確保する第1気密部と、前記かご構造体を前記真空チャンバの所定位置に維持する維持手段と、前記真空チャンバ内部において前記蒸発源を移動させる前記かご構造体に設けられた移動手段と、前記移動手段を駆動する駆動源とを有することを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項2】
前記維持手段は、前記第1又は第2基準部材と前記真空チャンバの壁との間に設けられ、前記第1又は第2基準部材と前記第1又は第2基準部材に対向する前記真空チャンバの壁との相対的な位置関係を保持する拘束手段または滑り対偶あるいは回転対偶のいずれか又はそれらの組合せによって構成させるフローティング機構を有することを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
前記拘束手段は、前記第1又は第2基準部材と前記真空チャンバの壁との間に設けられ、前記第1又は第2基準部材と前記第1又は第2基準部材に対向する前記真空チャンバの壁との面方向のずれを拘束する面方向拘束手段であることを特徴とする請求項2に記載の真空蒸着装置。
【請求項4】
前記面方向拘束手段は前記第1又は第2基準部材と前記対向する前記真空チャンバの壁の少なくともどちらか一方に凸部を設け、前記対応する凹部にはめ込む又は端部に突き当ててる手段であることを特徴とする請求項3に記載の真空蒸着装置。
【請求項5】
前記駆動源を前記第2基準部材に固定したことを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着装置。
【請求項6】
前記蒸発源は、ノズルを有し、内部に前記蒸着材料を収める容器であるるつぼと、前記るつぼを加熱する加熱手段を持ち、るつぼの加熱により前記蒸着材料を気化させて、前記るつぼに設けた前記ノズルから気化した前記蒸着材料を噴出させることを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着装置。
【請求項7】
前記駆動源は真空蒸着チャンバ外部に設けられ、前記移動手段と前記駆動源の間に前記真空蒸着チャンバの気密性を確保する第2気密部を持ち、前記第2気密部を介して前記駆動源の回転動力又は直動動力を前記移動手段に伝達することを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着装置。
【請求項8】
前記移動手段は、前記蒸発源を前記第1基準部材に平行に移動させる移動機構と、前記移動機構と前記蒸発源とを結合する結合手段と、前記結合手段を駆動する結合駆動手段とを有することを特徴とする請求項1または7に記載の真空蒸着装置。
【請求項9】
前記移動機構は前記第1基準部材に設けられたガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合手段は前記蒸発源、前記摺動子の少なくとも一方に固定されたナットであり、前記結合駆動手段は前記ナットを移動させる螺子であることを特徴とする請求項8に記載の真空蒸着装置。
【請求項10】
前記移動機構は前記第1基準部材に設けられたガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合手段は前記蒸発源または前記摺動子あるいは前記蒸発源と前記摺動子固定する固定部であり、前記結合駆動手段は一端を前記結合手段に固定され、他端を移動可能な移動部に固定されたプッシュロッドであり、前記第2気密部は少なくとも前記移動部と前記真空蒸着チャンバの壁との間に設け、前記真空チャンバ外に設けられた前記プッシュロッドを駆動するプッシュロッド駆動手段を有すことを特徴とする請求項8に記載の真空蒸着装置。
【請求項11】
前記移動機構は前記第1基準部材に設けられたガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合駆動手段は内部に前記真空蒸着チャンバ外の雰囲気を有する空洞を有した前記蒸発源の移動方向に細長い非磁性体の真空隔壁と、前記真空隔壁内に設けられ、前記結合手段と磁気的に結合し前記結合手段を前記真空隔壁に沿って移動させる磁気結合駆動手段を有することを特徴とする請求項8に記載の真空蒸着装置。
【請求項12】
蒸発源内の蒸着材料を基板に蒸着する真空チャンバを有する真空蒸着装置において、
前記蒸発源を前記基板に沿って移動させる移動機構、前記移動機構と前記蒸発源とを結合する結合手段、前記結合手段を駆動する結合駆動手段を具備する移動手段と、前記移動手段を駆動する前記真空チャンバの外部に設けられた駆動源と、前記移動手段と前記駆動源の間に設けられ、前記真空チャンバの気密性を確保する気密部とを有し、前記移動機構はガイドレール及び前記ガイドレールを摺動する摺動子を有し、前記結合駆動手段は内部に前記真空チャンバ外の雰囲気を有する空洞を有し前記蒸発源の移動方向に細長い非磁性体の真空隔壁と、前記真空隔壁内に設けられ、前記結合手段と磁気的に結合し前記結合手段を前記真空隔壁に沿って移動させる磁気結合駆動手段を有することを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項13】
前記磁気結合駆動手段は前記真空隔壁方向に細長く、磁気を螺旋状に施した磁気螺子であり、前記結合手段は前記真空隔壁の外側に真空隔壁に非接触で配置した磁気螺子用ナットであり、前記駆動源は前記磁気螺子を駆動することを特徴とする請求項11または12に記載の真空蒸着装置。
【請求項14】
前記真空隔壁は、前記第1基準部材に直接または間接的に固定され、一端が密閉され、他端が前記真空チャンバ外の雰囲気に開放されていることを特徴とする請求項13に記載の真空蒸着装置。
【請求項15】
前記真空隔壁の両端が開放されていることを特徴とする請求項14に記載の真空蒸着装置。
【請求項16】
前記磁気結合駆動手段は前記真空隔壁内に設けたピストンであり、前記結合手段は前記真空隔壁の外側に真空隔壁に非接触で配置したリングであり、前記ピストン、前記リングのうち一方が磁石を持ち、他方が磁石に吸着する材料で形成されており、前記真空隔壁の両端に空圧配管を接続し、前記空圧を制御して前記ピストンを移動させることを特徴とすることを特徴とする請求11または12に記載の真空蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−248584(P2010−248584A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100323(P2009−100323)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】