真空蒸着装置
【課題】ライン状の蒸発容器において、温度むらや蒸発材料の偏りがあっても、蒸発材料の利用効率を下げることなく、大型基板においても、蒸着による薄膜の膜厚分布の均一性を向上することができる真空蒸着装置を提供する。
【解決手段】真空蒸着装置において、同一径の複数の放出孔13を線状に配置すると共に、放出孔13を両端部側で密に配置した蒸発容器8の内部に、蒸発材料7の蒸気が通過する同一径の複数の通過孔18を有する整流板14を設け、放出孔13の配置方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、通過孔18によるコンダクタンスを、放出孔13によるコンダクタンスと比例するように、両端部側で密に配置した。
【解決手段】真空蒸着装置において、同一径の複数の放出孔13を線状に配置すると共に、放出孔13を両端部側で密に配置した蒸発容器8の内部に、蒸発材料7の蒸気が通過する同一径の複数の通過孔18を有する整流板14を設け、放出孔13の配置方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、通過孔18によるコンダクタンスを、放出孔13によるコンダクタンスと比例するように、両端部側で密に配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の被蒸着体に蒸発材料を蒸着させて、薄膜を形成する真空蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着装置は、真空容器内に蒸発材料を収容した蒸発容器と被蒸着体を配置し、真空装置内を減圧した状態で、蒸発容器を加熱し、蒸発材料を溶融し、蒸発又は昇華により気化させ、気化された蒸発材料を被蒸着体の表面に堆積させて薄膜を形成するものである。上記真空蒸着装置では、蒸発容器の加熱方法としては、蒸発材料を入れた蒸発容器を外部ヒータにより加熱する外熱法等が用いられている。近年では、真空蒸着装置を用いることで、金属材料による金属薄膜や酸化物薄膜の形成に限らず、有機材料の蒸着による有機薄膜や複数の有機材料を用いた共蒸着による低分子有機薄膜の形成が行われており、例えば、フラットパネルディスプレイの有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子と略す。)の形成等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−095275号公報
【特許文献2】特開2004−137583号公報
【特許文献3】特開2004−232090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶ディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイは、大画面化と共に基板の大型化が進んでいる。有機EL素子も、ディスプレイ及び照明に適用可能であり、同様に大基板化が望まれている。有機ELディスプレイは、基板上に均一な薄膜を蒸着する必要があるが、基板が大型化すると膜厚むらが発生し易くなり、均一な薄膜を形成することが難しくなってきている。特に近年、益々パネルの高品質化が要求されており、更に高い膜厚均一性が求められている。
【0005】
均一な薄膜の形成のため、例えば、特許文献1に示される従来の真空蒸着装置では、ライン状に並ぶ複数の開口を介して材料を蒸発させる蒸発源を備え、開口のピッチを端縁側で細かいピッチとしている。更に、温度制御手段をラインの長手方向において複数に分割し、膜厚(蒸着速度)を分割領域毎に個別に検出して、加熱温度制御を行うようにしている。又、特許文献2では、加熱部と蒸着流制御部とを積層した枠体からなる蒸発源を備え、蒸着流制御部の最上流位置には、複数の案内突起と案内突起間に形成された開口とを有する分配板を備えた均一化層を設けるようにしている。又、特許文献3では、蒸発材料を充填する細長い容器において、その長手方向に1つ又はそれ以上の開口部を形成し、容器の長手方向のコンダクタンスに対し、開口部のコンダクタンスを小さくするようにしている。更に、蒸発源の長さを蒸着対象の基板より長くすることにより膜厚分布を改善する方法もある。
【0006】
このような従来の真空蒸着装置によると、大型基板に対して、蒸発源と基板を相対的に移動させながら蒸着することにより、比較的均一な膜が形成される。しかしながら、蒸発材料によっては、蒸発容器の僅かな温度むらや内部の蒸発材料の状態の僅かな変化により、蒸発の状態が大きく変化することもあり、そのような場合には、長手方向における蒸発材料の蒸発量が変化し、その結果、基板への膜厚分布が変化し、素子の特性が変化してしまう問題がある。又、消費により蒸発容器内部の蒸発材料が減少し、蒸発材料の偏りが生じた場合も同様に、長手方向における蒸発材料の蒸発量が変化し、その結果、基板への膜厚分布が変化し、素子の特性が変化してしまう問題がある。
【0007】
又、蒸発源の長さを基板より長くした場合には、上述した問題が生じる上、蒸発材料の利用効率(蒸発源から蒸発した蒸発材料が基板に付着する比率)が低下し、蒸発材料を多量に使用することとなるため、蒸発材料が高価である場合には(例えば、有機EL素子用の有機材料等)、製造コストが上昇する問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、ライン状の蒸発容器において、温度むらや蒸発材料の偏りがあっても、蒸発材料の利用効率を下げることなく、大型基板においても、蒸着による薄膜の膜厚分布の均一性を向上することができる真空蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係る真空蒸着装置は、
複数の放出孔を線状に配置すると共に、前記放出孔によるコンダクタンスを両端部側で大きくした蒸発容器を有し、
前記蒸発容器を加熱することにより、内部に収容した蒸発材料を蒸発又は昇華させて、前記複数の放出孔から前記蒸発材料の蒸気を放出させると共に、前記複数の放出孔の配置方向に垂直な方向に、基板及び前記蒸発容器を相対的に移動させて、前記基板全面に前記蒸発材料を蒸着させる真空蒸着装置において、
前記蒸発容器内部に前記蒸気が通過する複数の通過孔を有する整流板を設け、前記複数の放出孔の配置方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1の発明に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔を全て同一面積とすると共に当該放出孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の放出孔を同一間隔で配置すると共に当該放出孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記放出孔によるコンダクタンスを前記蒸発容器の両端部側で大きくしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1、第2の発明に記載の真空蒸着装置において、
前記通過孔を全て同一面積とすると共に当該通過孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の通過孔を同一間隔で配置すると共に当該通過孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第3のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔によるコンダクタンスC1に対する前記通過孔によるコンダクタンスC2の比[C2/C1]を、5.0以下、好ましくは、2.0以下としたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第5の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器の内側の高さH1に対する前記放出孔から前記整流板までの距離H2の比[H2/H1]を、0.6以下、好ましくは、0.5以下としたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第6の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第5のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発材料の全ての表面から見て、前記放出孔と前記通過孔が直線上に並ばないように、前記通過孔を配置したことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第7の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第6のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器を加熱する加熱手段を、前記蒸発容器の外側面を巻回する1つの系統のヒータと、前記ヒータに電力を供給する1つの加熱電源から構成すると共に、
前記加熱電源を制御する制御手段を、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度を検出する1つの蒸発速度検出器と、前記蒸発速度検出器で検出された蒸発速度に基づいて、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度が一定となるように、前記加熱電源への出力を制御する1つの蒸発速度制御器から構成したことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第8の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第7のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔側の前記ヒータの間隔を、前記蒸発材料側のヒータの間隔より密に巻回したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1〜第5の発明によれば、温度むらや蒸発材料の偏りにより、ライン状の蒸発容器における蒸発材料の蒸発状態がその長手方向(複数の放出孔の配置方向)において変化しても、蒸発容器内部に複数の通過孔を有する整流板を設け、長手方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、通過孔によるコンダクタンスを、放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたので、長手方向における蒸発材料の蒸気分布を制御して、大型基板においても、前記長手方向における薄膜の膜厚分布をより均一にして、その結果、均一な特性の素子を形成することができる。
【0018】
第6の発明によれば、蒸発材料の全ての表面から見て、放出孔と通過孔が直線上に並ばないようにしたので、突沸により発生した蒸気が、基板側に直接付着することがなくなり、製品品質を大きく向上させることができる。
【0019】
第7の発明によれば、蒸発容器の加熱手段及び制御手段を1系統としたので、簡便で、長時間にわたって安定した蒸発速度の制御が可能となり、安定した膜厚の薄膜を形成することができ、安定した特性の素子を形成することができる。
【0020】
第8の発明によれば、蒸発容器の放出孔側のヒータの間隔を密に巻回したので、放出孔の温度低下を防止して、放出孔における蒸発材料の詰りを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る真空蒸着装置の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】(a)は、本発明に係る真空蒸着装置のライン状蒸発源の一例を示す断面図であり、(b)は、その変形例である。
【図3】(a)は、本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の加熱手段、制御手段の構成を説明する図であり、(b)は、その変形例である。
【図4】本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の構成の一例を示す図であり、(a)は、その長手方向の断面図、(b)は、その上面図、(c)は、内部の整流板の上面図である。
【図5】放出孔によるコンダクタンスC1に対する通過孔によるコンダクタンスC2の比[C2/C1]と膜厚分布の関係を示すグラフである。
【図6】Alq3のるつぼ温度と蒸発量(相対値)の関係を測定したグラフである。
【図7】蒸発容器の内側の高さH1に対する放出孔と整流板との距離H2の比[H2/H1]と膜厚分布の関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る真空蒸着装置の膜厚分布の改効果を示す図である。
【図9】本発明に係る真空蒸着装置の材料偏りに対する効果を示す図である。
【図10】本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の他の一例(実施例2)を示す上面図である。
【図11】本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の整流板の他の一例(実施例3)を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る真空蒸着装置の実施形態について、図1〜図11を参照して、その詳細を説明する。
【0023】
(実施例1)
図1は、本実施例の真空蒸着装置の構成を示す概略構成図であり、当該真空蒸着装置の基板の進行方向に垂直な面における断面を示している。本実施例の真空蒸着装置は、有機EL素子を形成するインライン装置の一部(真空蒸着装置部分)として組み込まれている。従って、以下、一例として、有機EL素子の有機薄膜の形成を例にとって説明するが、本実施例の真空蒸着装置は、これに限定されるものではなく、例えば、金属材料による金属薄膜、絶縁材料による絶縁薄膜等の形成にも適用可能である。更には、1つの蒸発材料を用いた蒸着だけでなく、複数の蒸発材料を用いた蒸着(共蒸着)等にも適用可能である。
【0024】
インライン装置は、複数の処理装置(例えば、真空蒸着装置等)を有するものであり、装置全体を通して、真空容器により構成されており、真空容器内で複数の基板が連続的に搬送されて、基板各々に対して、有機EL素子形成のための処理(例えば、有機薄膜である発光層の形成、金属薄膜である電極の形成等)が連続して実施できるように構成されている。その際、基板を大気側から真空容器内に搬入したり、真空容器から基板を搬出したりする構成、例えば、仕込室及び取出し室が必要であるが、このような構成は公知の技術であるので、ここでは図示を省略する。
【0025】
有機EL素子の有機薄膜を形成する真空蒸着装置では、例えば、図1に示すように、真空容器1が、バルブ2を介して、真空ポンプ3に接続されており、真空容器1の内部が高真空に排気されるようになっている。有機薄膜の蒸着対象となる基板4は、図示しないトレイの中心に配置されており、駆動源5により駆動される搬送ローラ6が回転することにより、トレイと共に、図1の手前から奥の方向へ搬送される。なお、本実施例では、後述の蒸発源20側の位置を固定し、基板4側を移動させているが、逆に、基板4側の位置を固定し、蒸発源20側を移動させるようにしてもよい。
【0026】
基板4が通過する直下には、蒸発材料7が収容された蒸発容器8と、蒸発容器8の周囲に配置された加熱用ヒータ9等を有する蒸発源20が配置されている。この蒸発源20は、ライン状の蒸発源として構成されており、基板4の進行方向に垂直な水平方向(以降、基板4の板幅方向と呼ぶ。)に長く、その長さは、基板4の板幅方向の長さと同等若しくは若干長くしている。
【0027】
蒸発容器8の上方には、蒸発容器8から蒸発される蒸発材料7の蒸発速度を検出する蒸発速度検出器10(例えば、水晶モニタヘッド等)が設けられており、この蒸発速度検出器10は蒸発速度制御器11に接続されている。蒸発速度制御器11は、蒸発速度検出器10で検出された蒸発速度に基づいて、蒸発速度が予め設定した値となるように、加熱電源12への制御出力を制御しており、加熱電源12は、制御出力に基づいて制御された電力をヒータ9に供給して、蒸発速度が一定になるように制御している。なお、上記制御は、蒸着時における蒸発速度制御であるが、蒸発容器8の温度が蒸発温度に至るまでの温度制御、即ち、昇温制御は、蒸発容器8の底部に設けた熱電対と温調器(共に、図示省略)に切り替え、上記加熱電源12を用いて、昇温制御を行っている。
【0028】
このように、蒸発速度検出器10、蒸発速度制御器11、加熱電源12及びヒータ9を用いて、蒸発容器8を加熱することにより、内部に収容した蒸発材料7を蒸発又は昇華させて、後述する複数の放出孔13から蒸発材料7の蒸気を一定の蒸発速度で放出させている。そして、基板4の板幅方向は、複数の放出孔13の配置方向と同じであり、基板4及び蒸発源20は、それらに垂直な方向に相対移動されているので、これにより、基板4全面に蒸着源20からの蒸発材料7を蒸着させることになる。
【0029】
次に、蒸発源20の構成を、図2〜図4を用いて詳細に説明する。
【0030】
図2(a)は、本実施例の蒸発源の断面図であり、ライン状の蒸発源の長手方向に垂直な面における断面図である。
【0031】
蒸発源20内部に配置された蒸発容器8は、基板4の板幅方向に長く、その長さは、基板4の板幅方向の長さと同等若しくは若干長く形成されている。蒸発容器8には、その上面(基板4側の面)に複数の放出孔13が設けられており、又、放出孔13と蒸発容器8内部の蒸発材料7との間には、複数の通過孔18を有する整流板14が配置されている。詳細は後述の図4において説明するが、放出孔13と通過孔18の長手方向の配置位置は、蒸発材料7の蒸着による薄膜の膜厚分布が基板4の板幅方向において均一になるように配置されている。
【0032】
ヒータ9は、蒸発容器8の出し入れのためと放出孔13の配置のため、蒸発容器8の上部には配置していない。そのため、放出孔13の温度低下を補償するために放出孔13側のヒータ9を密に配置し、下部(蒸発材料7側)のヒータ9を疎に配置している。このような配置により、放出孔13の温度低下を防止して、放出孔13における蒸発材料7の詰りを回避することができる。なお、ヒータ9及びその加熱電源12については、後述の図3において更に説明を行う。
【0033】
又、放出孔13の直上の位置を除く、ヒータ9の外周全面に輻射防止板15を配置しており、この輻射防止板15は、蒸発容器8の保温と均熱化のために機能している。更に、輻射防止板15の外周は、内部に冷却水用の流路(図示省略)を有し、冷却水により冷却された水冷ジャケット16と、放出孔13の配置位置に対応する位置に開口部17aを有し、水冷ジャケット16の上部開口部に接する防熱板17とで覆われている。水冷ジャケット16、防熱板17は、真空容器1と基板4への熱輻射を防止するために機能しており、防熱板17は熱伝導率の高いアルミニウム等が適している。なお、防熱板17の開口部17aは、蒸発材料7の蒸気の付着を避けるため、基板4側に広くなるテーパ形状に形成されている。
【0034】
なお、本実施例においては、図2(b)に示すような蒸発源も適用可能である。この図2(b)は、本実施例の変形例となる蒸発源の断面図であり、ライン状の蒸発源の長手方向に垂直な面における断面図である。図2(b)に示す蒸発源20’は、図2(a)に示した蒸発源20と略同等の構成であるが、蒸発容器8の上面(基板4側の面)に、防熱板17の上面まで延設されたノズル21を設け、ノズル21を貫通して放出孔13を設けた構成である。ノズル21により、放出孔13上面の高さ位置が、防熱板17の上面の高さ位置と同等となり、そのため、蒸発材料7の蒸気が防熱板17に付着する可能性はなくなる。従って、その開口部17bは、テーパ形状にする必要はなく、防熱板17を垂直に貫通するように形成している。その他の構成については、図2(a)に示した蒸発源20と同じであるため、図2(b)では、同じ符号を付し、又、説明は省略する。
【0035】
次に、蒸発容器8における加熱手段、制御手段の構成について、図3(a)を参照して説明する。図3(a)は、本実施例の加熱手段、制御手段の構成を説明する図である。
【0036】
蒸発容器8の放出孔13は、蒸着される基板4に対し、放出孔13が露出する構造になるため、何の対策も施さない場合は、放出孔13近傍の温度が蒸発容器8の内部に比べて低くなってしまう。又、蒸発容器8が長尺になると、長手方向の温度むらが生じ易くなる。これらの対策として、特許文献1では、温度制御手段を長手方向において複数に分割し、分割された領域毎に蒸発速度を制御する方法が示されている。しかしながら、実際には、分割された領域毎に蒸発速度を検出して、ヒータの温度制御することは、非常に困難で、複雑な構造となってしまう。
【0037】
そこで、本実施例においては、図3(a)に示すように、蒸発容器8を加熱する加熱手段を、一つの加熱電源12、一本(1つの系統)のヒータ9から構成し、その制御手段を、一つの蒸発速度検出器10、一つの蒸発速度制御器11から構成しており、一系統の加熱手段及び制御手段としている。ヒータ9は、蒸発容器8の外側面を巻回する一本の加熱抵抗から構成されており、蒸発容器8の上部(放出孔13側)を密に巻回し、下部(蒸発材料7側)を粗に巻回することにより、ヒータ9の間隔を蒸発材料7側より放出孔13側で密に配置することになる。上記構成では、一系統による加熱制御となるため、簡便で、長時間にわたって安定した蒸発速度の制御が可能となり、安定した膜厚の薄膜を形成することができ、安定した特性の素子を形成することができる。
【0038】
なお、ヒータ9は、蒸発容器8の外側面を複数回巻回して配置しており、必要とする全長が使用可能なヒータ長を超えた場合、1本のヒータでは出力が不足することになる。そのような場合には、複数本のヒータを使用するようにしてもよい。但し、複数本のヒータを使用する場合でも、蒸発容器8の外側面を巻回して配置しており、一例として、図3(b)に示すように、密に巻回した上部側のヒータ9aと、粗に巻回した下部側のヒータ9bの2本を使用するようにしている。この場合、ヒータ9a、9bを並列又は直列に接続して、1つの系統とすることにより、一つの加熱電源12で電力を供給するようにする。この場合でも、一系統による加熱制御となるため、簡便で、長時間にわたって安定した蒸発速度の制御が可能となり、安定した膜厚の薄膜を形成することができ、安定した特性の素子を形成することができる。
【0039】
通常、ヒータは同じ長さであっても、1本毎に抵抗が異なるため、複数本のヒータを使用する場合、各々電力が異なってしまう。しかしながら、複数本のヒータを使用する場合でも、例えば、図3(b)に示すように、蒸発容器8の外側面を巻回してヒータ9a、9bを配置することにより、ヒータ9a、9b共に蒸発容器8の長手方向に沿って配置することになり、ヒータ9a、9bの違いによる加熱の影響は、蒸発容器8の長手方向には現れず、蒸発容器8の長手方向の温度分布を均一にすることができる。
【0040】
次に、本実施例における放出孔13と整流板14の通過孔18との配置について、図4を参照して説明を行う。なお、図4(a)は、蒸発容器8の長手方向の断面図であり、図4(b)は、蒸発容器8の上面図であり、図4(c)は、整流板14の上面図である。又、以降の説明においては、蒸発材料7自体から蒸発する蒸気の量を「蒸発量」と呼び、それ以外の蒸気の量、例えば、放出孔13、通過孔18等における蒸気の量を「蒸気量」と呼び、明確に区別をする。
【0041】
放出孔13は、蒸発容器8の上面(基板4側の面)に、蒸発容器8の長手方向に沿って、一直線状に複数形成されている。放出孔13は、全て円形の同一径(同一面積)としており、放出孔13同士の間隔を、蒸発容器8の長手方向の中心に対して、両端部側で密に配置して、放出孔13によるコンダクタンスを蒸発容器8の両端部側で大きくしている。一例として、放出孔13同士の間隔を、両端側から中心側に向かって、各々、W11、W12、W13、W14とすると、図4(b)では、中心近傍における間隔W13、W14を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、W14≒W13>W12>W11としている。
【0042】
蒸発源20はライン状の蒸発源であるため、基板4側の膜厚分布としては、その板幅方向の膜厚分布を考慮すればよい。ライン状の蒸着源20は、多数の点蒸着源を連続して配置したものと仮定できるので、ライン状の蒸発源20により形成される基板4の板幅方向の膜厚分布は、多数の点蒸着源からの蒸気の幾何学的な重ね合わせから計算することができる。このことを利用し、逆に、基板4の板幅方向の膜厚分布が均一になるように、蒸着源20上に仮定した各点蒸着源に必要な蒸気量を求め、求めた蒸気量に基づいて、蒸発容器8の上面における単位長さ当たりのコンダクタンスを求めることができる。単位長さ当たりのコンダクタンスが求まれば、放出孔13自体のコンダクタンスは、その直径、長さ、蒸発した分子の平均速度から求めることができるので(例えば、富永五郎、熊谷寛夫、「真空の物理と応用」、裳華房、1970年等参照)、これにより、蒸発容器8の長手方向における放出孔13同士の配置間隔を計算することができる。
【0043】
そして、蒸発容器8の長手方向における放出孔13同士の配置間隔を計算すると、基板4の板幅方向の膜厚分布を均一にするためには、中心側にある放出孔13同士の配置間隔より、両端側ある放出孔13同士の配置間隔を密に(換言すると、単位長さ当たりのコンダクタンスを中心側より両端側を大きく)する必要がある。従って、本実施例では、上述したように、W14≒W13>W12>W11としている。但し、このような放出孔13の配置間隔は、放出孔13直下の蒸発材料7の蒸気量が均一であることを前提としている。実際には、蒸発材料7自体からの単位長さ当たりの蒸発量が均一でも、蒸気の拡散により、放出孔13直下における蒸発材料7の蒸気量は、蒸発容器8の両端側で減少しており、放出孔13の配置間隔を両端側で密にしても(又は両端側でコンダクタンスを大きくしても)、蒸発容器8の両端側での蒸気量は想定している量より少なくなり、これが、基板4の板幅方向の膜厚分布の改善を阻んでいる。
【0044】
更に、蒸発容器8が長尺である場合には、前述したように、蒸発容器8の温度むらや蒸発材料7自体の状態変化により、蒸発の状態が大きく変化し、その長手方向における蒸発量が不均一となってしまうおそれがある。特に、蒸発材料7が有機材料である場合には、温度むらによる材料の状態変化が小さくない場合もあり、そのような場合には、長手方向における蒸発量が不均一となるだけでなく、蒸発材料7の消費が進むに伴って、残存する蒸発材料7の偏りが生じてしまい、その結果、長手方向における蒸発量を更に不均一にしてしまう。
【0045】
そこで、本実施例においては、蒸発容器8の内部に、蒸発材料7の蒸気が通過する複数の通過孔18を有する整流板14を設けることにより、放出孔13直下における蒸発材料7の蒸気量が均一になるようにしており、このような構成により、蒸発材料7からの蒸発量が長手方向において不均一となるような場合にも対応するようにしている。この整流板14の構成について、図4(c)を参照して、説明を行う。
【0046】
整流板14は、蒸発容器8の内部において、放出孔13側と蒸発材料7側とを分離するように、放出孔13と蒸発材料7との間に配置されている。そして、通過孔18は、整流板14を貫通して設けられており、整流板14の長手方向に沿って、2列の直線状に複数形成されている。通過孔18は、全て円形の同一径(同一面積)としており、通過孔18同士の間隔を、整流板14の長手方向の中心に対して、両端部側で密に配置して、通過孔18によるコンダクタンスを、放出孔13によるコンダクタンスと比例するようにしている。一例として、通過孔18同士の間隔を、両端側から中心側に向かって、各々、W21、W22、W23、W24、W25とすると、図4(c)では、中心近傍における間隔W23、W24、W25を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、W25≒W24≒W23>W22>W21としている。
【0047】
通過孔18は、蒸発材料7の全ての表面から見て、放出孔13と通過孔18が直線上に並ばないように配置してある。これは、蒸発材料7には、例えば、有機材料等の突沸(スプラッシュ)し易い材料もあるが、突沸した場合において、突沸により発生した蒸気が、通過孔18及び放出孔13をそのまま通過して、基板4側に直接付着しないようにするためである。このような配置にすることにより、突沸により発生した蒸気が、基板4側に直接付着することがなくなり、製品品質を大きく向上させることができる。
【0048】
通過孔18同士の配置間隔は、均等に配置すれば、放出孔13直下における蒸発材料7の蒸気量が均一になるように思えるが、これも、整流板14直下における蒸発材料7の蒸気量が均一であることを前提とするものであり、実際には、整流板14直下においても、蒸発材料7の蒸気量は蒸発容器8の両端側で減少しており、整流板14の通過孔18を通過する蒸気量は、その両端側では想定している量より少なくなる。その結果、放出孔13の配置間隔を両端側で密にしても(又は両端側でコンダクタンスを大きくしても)、蒸発容器8の放出孔13を通過する蒸気量は、その両端側でも想定している量より少なくなり、これが、基板4の板幅方向の膜厚分布の改善を阻んでいる。更に、蒸発容器8の温度むらや蒸発材料7の状態変化があったり、蒸発材料7の偏りが生じてしまったりした場合には、蒸発材料7自体の蒸発量が長手方向において不均一となり、その結果、基板4の板幅方向の膜厚分布を悪化させることになる。
【0049】
このことから、通過孔18同士の配置間隔についても、基本的には、放出孔13の配置間隔を求めた方法と同等の方法により求めればよい。例えば、放出孔13直下における蒸気量が均一になるように、整流板14上に仮定した各点蒸着源に必要な蒸気量を求め、求めた蒸気量に基づいて、整流板14の上面における単位長さ当たりのコンダクタンスを求め、求めた単位長さ当たりのコンダクタンス、そして、通過孔18自体のコンダクタンスに基づいて、整流板14の長手方向における通過孔18同士の配置間隔を計算すればよい。そして、整流板14の長手方向における通過孔18同士の配置間隔を計算すると、放出孔13直下における蒸気量を均一にするためには、中心側にある通過孔18同士の配置間隔より、両端側ある通過孔18同士の配置間隔を密に(換言すると、単位長さ当たりのコンダクタンスを中心側より両端側を大きく)する必要がある。従って、本実施例では、上述したように、W25≒W24≒W23>W22>W21としている。このように、放出孔13同士の配置間隔と通過孔18同士の配置間隔は、同じ傾向を持つことになり、長手方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、通過孔18によるコンダクタンスが、放出孔13によるコンダクタンスと比例するようになる。
【0050】
そして、本実施例では、蒸発材料7自体の蒸発量が長手方向において不均一となった場合にも対処するため、整流板14の長手方向における通過孔18同士の配置間隔を、放出孔13による蒸発容器8の単位長さ当たりのコンダクタンスに基づいて、決定している。
【0051】
具体的には、放出孔13による蒸発容器8の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、コンダクタンスC2を求め、求めたコンダクタンスC2に基づいて、通過孔18同士の配置間隔を決定している。従って、コンダクタンスC1は、蒸発容器8の両端側で大きくなっているので、コンダクタンスC2も、コンダクタンスC1に相関して、整流板14の両端側で大きくなることになる。
【0052】
ここで、比[C2/C1]を5.0以下、好ましくは、2.0以下とする理由を説明する。
【0053】
具体的には、蒸発材料7が蒸発容器8の内部で一方側に偏った場合において、比[C2/C1]を変化させたときに、膜厚分布がどのように変化するかをシミュレーションすることにより、比[C2/C1]の最適範囲を求めている。各コンダクタンスC1、C2は、図4(b)、(c)に示す蒸発容器8、整流板14において、放出孔13の孔径、通過孔18の孔径等をパラメータとして求めたものである。そして、求めたコンダクタンスC1、C2に相当する蒸気量(放出孔13、通過孔18を通過する蒸気量)から基板4に蒸着した薄膜の膜厚分布を求めている。
【0054】
上記シミュレーションの結果が図5に示すグラフである。図5からは、コンダクタンスの比[C2/C1]が2.0倍以下で薄膜の膜厚分布が良好であり、蒸気流の整流効果が大きいことがわかる。一方、コンダクタンスの比[C2/C1]が5.0倍を超えると膜厚分布の変化は飽和し、整流効果が飽和することを示している。従って、比[C2/C1]が小さければ良好な膜厚分布を得ることができる。従って、比[C2/C1]の上限は、5.0以下、好ましくは、2.0以下となる。
【0055】
なお、比[C2/C1]が小さくなると、蒸気流が制限されて、基板4に付着する蒸着速度が低下する。高速蒸着を要求される装置では不利となるため、その場合には、ヒータ9の温度を上げ、蒸発材料7の蒸気圧を上げ、蒸発量を増やして、蒸発速度を維持すればよい。
【0056】
例えば、有機ELのホスト材としてよく知られている、アルミニウムトリスキノラート(Alq3)に対するるつぼ温度Tと蒸気量Qとの関係を測定した結果を、図6に示す。なお、この蒸発量Qは、286℃のときの蒸発量を1とした相対値であり、蒸着速度と相関性があるものである。
【0057】
図6に示するつぼ温度Tと蒸発量Qとの関係から、蒸着速度を2倍にするためには、るつぼ温度Tを12℃上昇させればよく、同様に、蒸着速度を5倍にするためには、るつぼ温度Tを30℃上昇させればよい。なお、有機ELに使用される有機材料は、必要以上に温度を上昇させると、材料の熱劣化及び有機EL発光素子特性が低下することが知られており、適正な温度範囲がある。
【0058】
更に、基板4の板幅方向の膜厚分布をより均一にするためには、蒸発容器8における整流板14の高さ位置についても、以下のように設定することが好ましい。
【0059】
具体的には、蒸発容器8の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14の上面までの距離をH2とし(前述の図4(a)参照)、これらの比[H2/H1]を変化させたときに、膜厚分布がどのように変化するかをシミュレーションすることにより、比[H2/H1]の最適範囲を求めている。より詳細には、図4(b)、(c)に示す蒸発容器8、整流板14において、比[C2/C1]=1.0として、比[H2/H1]を変化させた。ここでも、各コンダクタンスC1、C2は、放出孔13の孔径、通過孔18の孔径等をパラメータとして求めたものであり、求めたコンダクタンスC1、C2に相当する蒸気量(放出孔13、通過孔18を通過する蒸気量)から基板4に蒸着した薄膜の膜厚分布を求めている。なお、ここでも、蒸発材料7が蒸発容器8の内部で一方側に偏った場合としている。
【0060】
上記シミュレーションの結果が図7に示すグラフである。図7からは、比[H2/H1]が0.6を超えると、急速に膜厚分布が悪化することがわかる。一方、比[H2/H1]が0.6以下、望ましくは、0.5以下であれば、膜厚分布がより良好となることがわかる。なお、下限については、0.08まで検討したが、0.01であっても、放出孔13のコンダクタンスより大きく、小さい比の実質的な制限は無い。従って、比[H2/H1]は、0.6以下、好ましくは、0.5以下となる。
【0061】
次に、本発明の効果を示すため、本実施例の真空蒸着装置を用いて行った試験結果を、図8、図9に示す。
【0062】
図8は、従来技術(内部に整流板が無い蒸着源を使用)と本発明(内部に整流板が有る蒸着源を使用)により基板上に蒸着された薄膜の膜厚分布を測定した結果である。なお、図8では、従来技術及び本発明とも、最大の膜厚を1として、それに対する膜厚比としてグラフ化している。
【0063】
図8に示すグラフにおいて、180mm幅(±90mm)における膜厚分布を比較すると、従来技術では、均一性が±3.0%であるのに対して、本発明では均一性が±1.2%と大幅に改善されており、所望の結果が得られている。又、蒸着有効幅を160mm幅(±80mm)とする場合には、本発明では均一性が±1.0%以内となっており、極めて均一な膜厚分布を得ることができている。近年、素子特性の向上から、膜厚分布の均一性の向上が要望されているが、本発明では、±1%程度の均一性の膜厚分布が要求される場合でも、当該要求を満たすことが可能であり、このような要求に対して、非常に有効なものである。
【0064】
又、図9は、従来技術(内部に整流板が無い蒸着源を使用)と本発明(内部に整流板が有る蒸着源を使用)において、蒸発材料の収容状態を変えて、基板上に蒸着を行い、蒸着された薄膜の膜厚分布を測定した結果である。なお、図9でも、従来技術及び本発明とも、最大の膜厚を1として、それに対する膜厚比としてグラフ化している。
【0065】
蒸発材料の収容状態としては、長尺の蒸発容器に蒸発材料を均一に充填した場合(図9中の材料均一)と、長尺の蒸発容器の片隅にのみ蒸発材料を偏らせて充填した場合(図9中の材料偏り)とを用いた。ここでは、長尺の蒸発容器の[100mm]側の端部にのみ蒸発材料を充填している。
【0066】
図9に示すように、従来技術では、蒸発材料の充填側、つまり、[100mm]側から[−100mm]側に向かって、徐々に膜厚が減少し、膜厚が薄くなっていることがわかり、蒸発材料の偏りが膜厚分布の偏りを発生させている。蒸着有効幅を160mm幅(±80mm)とすると、その均一性は±2.5%の膜厚分布であり、従来の用途では使用可能であっても、高品質・高精度のために近年要求されている膜厚分布の均一性からは外れてしまう。
【0067】
一方、本発明では、蒸発材料の偏りが有る場合でも、蒸発材料の偏りが無い場合と略同等の膜厚分布が得られている。これは、蒸発材料が偏って充填された場合でも、又は、蒸発材料の消費により蒸発材料が偏ってしまった場合でも、再現性及び安定性のある膜厚分布を得ることを意味し、その結果、再現性及び安定性のある製品を製造可能であることが実証できた。
【0068】
以上のことから、蒸発容器8の内部に整流板14を設け、蒸発容器8の放出孔13、整流板14の通過孔18を上述した関係となるように配置することにより、放出孔13直下の蒸気量を均一にすることができ、そのため、蒸発容器8において、中心側より両端側の蒸気流を多くして、基板4の両端部での膜厚の落ち込みを抑制し、基板4の板幅方向における膜厚分布をより均一にして、所望の均一性の膜厚分布を有する薄膜を得ることができる。又、蒸発容器8内部の蒸発材料7に偏りが生じても、整流板14に設けた通過孔18により、放出孔13直下の蒸気量を均一にすることができるので、蒸発材料7の偏りに左右されず、基板4の板幅方向の膜厚分布の均一性を維持することができる。
【0069】
(実施例2)
実施例1においては、蒸発容器8における単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するために、同一径の放出孔13の配置間隔を変えているが、図10に示すように、放出孔13同士の配置間隔を一定とし、代わりに、放出孔13の大きさを変えることで、単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するようにしてもよい。
【0070】
具体的には、図10に示すように、蒸発容器8’の上面(基板4側の面)において、複数の放出孔13(放出孔131、132、133、134)を、蒸発容器8’の長手方向に沿って、一直線状に形成している。放出孔13同士の配置間隔は全て同一の間隔W31としているが、円形の開口径が異なっており、基板4上の膜厚分布が均一になるように、蒸発容器8’の長手方向の中心の放出孔134に対して、両端部側の放出孔131の開口径(面積)を大きくして、放出孔13によるコンダクタンスを両端部側で大きくしている。一例として、放出孔131、132、133、134の開口径を、各々、D31、D32、D33、D34とすると、図10では、中心近傍における放出孔133、134の開口径D33、D34を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、D34≒D33<D32<D31としている。
【0071】
そして、図4(b)に示した蒸気容器8に代えて、上記蒸気容器8’を用い、図4(c)に示した整流板14と組み合わせて、ライン状の蒸気源とする場合、実施例1と同様に、放出孔13による蒸発容器8’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14の通過孔18の配置間隔を設定している。又、蒸発容器8’の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14の上面までの距離をH2とすると、比[H2/H1]についても、実施例1と同様に、0.6以下、好ましくは、0.5以下となるように、整流板14を配置している。
【0072】
(実施例3)
実施例1においては、整流板14における単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するために、同一径の通過孔18の配置間隔を変えているが、図11に示すように、通過孔18同士の配置間隔を一定とし、代わりに、通過孔18の大きさを変えることで、単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するようにしてもよい。
【0073】
具体的には、図11に示すように、整流板14’において、複数の通過孔18(通過孔181、182、183、184)を、整流板14’の長手方向に沿って、2列の直線状に形成している。通過孔18同士の配置間隔は全て同一の間隔W41としているが、円形の開口径が異なっており、放出孔13直下の蒸気量が均一になるように、整流板14’の長手方向の中心の通過孔184に対して、両端部側の通過孔181の開口径(面積)を大きくして、通過孔18によるコンダクタンスを、放出孔13によるコンダクタンスに比例するようにしている。一例として、通過孔181、182、183、184の開口径を、各々、D41、D42、D43、D44とすると、図11では、中心近傍における通過孔183、184の開口径D43、D44を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、D44≒D43<D42<D41としている。
【0074】
そして、図4(c)に示した整流板14に代えて、上記整流板14’を用い、図4(b)に示した蒸気容器8と組み合わせて、ライン状の蒸気源とする場合、実施例1と同様に、放出孔13による蒸発容器8の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14’の通過孔18の開口径を設定している。又、蒸発容器8の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14’の上面までの距離をH2とすると、比[H2/H1]についても、実施例1と同様に、0.6以下、好ましくは、0.5以下となるように、整流板14’を配置している。
【0075】
更に、図4(b)に示した蒸気容器8に代えて、実施例2の図10で示した蒸気容器8’を用い、図4(c)に示した整流板14に代えて、上記整流板14’を用い、これらを組み合わせて、ライン状の蒸気源とする場合も、実施例1と同様に、放出孔13による蒸発容器8’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14’の通過孔18の開口径を設定している。又、蒸発容器8’の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14’の上面までの距離をH2とすると、比[H2/H1]についても、実施例1と同様に、0.6以下、好ましくは、0.5以下となるように、整流板14’を配置している。
【0076】
図10で示した蒸気容器8’と図11で示した整流板14’とを組み合わせる場合、特に、W31=W41である場合には、単位長さ当たりのコンダクタンスの比ではなく、対応する放出孔13のコンダクタンスCaと通過孔18のコンダクタンスCbとの比[Cb/Ca]を、5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14’の通過孔18の開口径を設定してもよい。
【0077】
なお、上記実施例1〜3において、放出孔13、通過孔18は円形としているが、四角形や楕円や長方形などでも良い。又、1個の放出孔13に対して、2個の通過孔18を対応させているが、1個でも、逆に、多数(3個以上)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る真空蒸着装置は、特に、蒸着対象が大型基板である場合に好適なものであり、又、蒸発材料が有機材料である場合に好適なものである。
【符号の説明】
【0079】
1 真空容器
2 バルブ
3 真空ポンプ
4 基板
5 駆動源
6 搬送ローラ
7 蒸発材料
8 蒸発容器
9 ヒータ
10 蒸発速度検出器
11 蒸発速度制御器
12 加熱電源
13 放出孔
14 整流板
15 輻射防止板
16 水冷ジャケット
17 防熱板
18 通過孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の被蒸着体に蒸発材料を蒸着させて、薄膜を形成する真空蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着装置は、真空容器内に蒸発材料を収容した蒸発容器と被蒸着体を配置し、真空装置内を減圧した状態で、蒸発容器を加熱し、蒸発材料を溶融し、蒸発又は昇華により気化させ、気化された蒸発材料を被蒸着体の表面に堆積させて薄膜を形成するものである。上記真空蒸着装置では、蒸発容器の加熱方法としては、蒸発材料を入れた蒸発容器を外部ヒータにより加熱する外熱法等が用いられている。近年では、真空蒸着装置を用いることで、金属材料による金属薄膜や酸化物薄膜の形成に限らず、有機材料の蒸着による有機薄膜や複数の有機材料を用いた共蒸着による低分子有機薄膜の形成が行われており、例えば、フラットパネルディスプレイの有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子と略す。)の形成等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−095275号公報
【特許文献2】特開2004−137583号公報
【特許文献3】特開2004−232090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶ディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイは、大画面化と共に基板の大型化が進んでいる。有機EL素子も、ディスプレイ及び照明に適用可能であり、同様に大基板化が望まれている。有機ELディスプレイは、基板上に均一な薄膜を蒸着する必要があるが、基板が大型化すると膜厚むらが発生し易くなり、均一な薄膜を形成することが難しくなってきている。特に近年、益々パネルの高品質化が要求されており、更に高い膜厚均一性が求められている。
【0005】
均一な薄膜の形成のため、例えば、特許文献1に示される従来の真空蒸着装置では、ライン状に並ぶ複数の開口を介して材料を蒸発させる蒸発源を備え、開口のピッチを端縁側で細かいピッチとしている。更に、温度制御手段をラインの長手方向において複数に分割し、膜厚(蒸着速度)を分割領域毎に個別に検出して、加熱温度制御を行うようにしている。又、特許文献2では、加熱部と蒸着流制御部とを積層した枠体からなる蒸発源を備え、蒸着流制御部の最上流位置には、複数の案内突起と案内突起間に形成された開口とを有する分配板を備えた均一化層を設けるようにしている。又、特許文献3では、蒸発材料を充填する細長い容器において、その長手方向に1つ又はそれ以上の開口部を形成し、容器の長手方向のコンダクタンスに対し、開口部のコンダクタンスを小さくするようにしている。更に、蒸発源の長さを蒸着対象の基板より長くすることにより膜厚分布を改善する方法もある。
【0006】
このような従来の真空蒸着装置によると、大型基板に対して、蒸発源と基板を相対的に移動させながら蒸着することにより、比較的均一な膜が形成される。しかしながら、蒸発材料によっては、蒸発容器の僅かな温度むらや内部の蒸発材料の状態の僅かな変化により、蒸発の状態が大きく変化することもあり、そのような場合には、長手方向における蒸発材料の蒸発量が変化し、その結果、基板への膜厚分布が変化し、素子の特性が変化してしまう問題がある。又、消費により蒸発容器内部の蒸発材料が減少し、蒸発材料の偏りが生じた場合も同様に、長手方向における蒸発材料の蒸発量が変化し、その結果、基板への膜厚分布が変化し、素子の特性が変化してしまう問題がある。
【0007】
又、蒸発源の長さを基板より長くした場合には、上述した問題が生じる上、蒸発材料の利用効率(蒸発源から蒸発した蒸発材料が基板に付着する比率)が低下し、蒸発材料を多量に使用することとなるため、蒸発材料が高価である場合には(例えば、有機EL素子用の有機材料等)、製造コストが上昇する問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、ライン状の蒸発容器において、温度むらや蒸発材料の偏りがあっても、蒸発材料の利用効率を下げることなく、大型基板においても、蒸着による薄膜の膜厚分布の均一性を向上することができる真空蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係る真空蒸着装置は、
複数の放出孔を線状に配置すると共に、前記放出孔によるコンダクタンスを両端部側で大きくした蒸発容器を有し、
前記蒸発容器を加熱することにより、内部に収容した蒸発材料を蒸発又は昇華させて、前記複数の放出孔から前記蒸発材料の蒸気を放出させると共に、前記複数の放出孔の配置方向に垂直な方向に、基板及び前記蒸発容器を相対的に移動させて、前記基板全面に前記蒸発材料を蒸着させる真空蒸着装置において、
前記蒸発容器内部に前記蒸気が通過する複数の通過孔を有する整流板を設け、前記複数の放出孔の配置方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1の発明に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔を全て同一面積とすると共に当該放出孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の放出孔を同一間隔で配置すると共に当該放出孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記放出孔によるコンダクタンスを前記蒸発容器の両端部側で大きくしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1、第2の発明に記載の真空蒸着装置において、
前記通過孔を全て同一面積とすると共に当該通過孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の通過孔を同一間隔で配置すると共に当該通過孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第3のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔によるコンダクタンスC1に対する前記通過孔によるコンダクタンスC2の比[C2/C1]を、5.0以下、好ましくは、2.0以下としたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第5の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器の内側の高さH1に対する前記放出孔から前記整流板までの距離H2の比[H2/H1]を、0.6以下、好ましくは、0.5以下としたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第6の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第5のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発材料の全ての表面から見て、前記放出孔と前記通過孔が直線上に並ばないように、前記通過孔を配置したことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第7の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第6のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器を加熱する加熱手段を、前記蒸発容器の外側面を巻回する1つの系統のヒータと、前記ヒータに電力を供給する1つの加熱電源から構成すると共に、
前記加熱電源を制御する制御手段を、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度を検出する1つの蒸発速度検出器と、前記蒸発速度検出器で検出された蒸発速度に基づいて、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度が一定となるように、前記加熱電源への出力を制御する1つの蒸発速度制御器から構成したことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第8の発明に係る真空蒸着装置は、
上記第1〜第7のいずれか1つの発明に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔側の前記ヒータの間隔を、前記蒸発材料側のヒータの間隔より密に巻回したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1〜第5の発明によれば、温度むらや蒸発材料の偏りにより、ライン状の蒸発容器における蒸発材料の蒸発状態がその長手方向(複数の放出孔の配置方向)において変化しても、蒸発容器内部に複数の通過孔を有する整流板を設け、長手方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、通過孔によるコンダクタンスを、放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたので、長手方向における蒸発材料の蒸気分布を制御して、大型基板においても、前記長手方向における薄膜の膜厚分布をより均一にして、その結果、均一な特性の素子を形成することができる。
【0018】
第6の発明によれば、蒸発材料の全ての表面から見て、放出孔と通過孔が直線上に並ばないようにしたので、突沸により発生した蒸気が、基板側に直接付着することがなくなり、製品品質を大きく向上させることができる。
【0019】
第7の発明によれば、蒸発容器の加熱手段及び制御手段を1系統としたので、簡便で、長時間にわたって安定した蒸発速度の制御が可能となり、安定した膜厚の薄膜を形成することができ、安定した特性の素子を形成することができる。
【0020】
第8の発明によれば、蒸発容器の放出孔側のヒータの間隔を密に巻回したので、放出孔の温度低下を防止して、放出孔における蒸発材料の詰りを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る真空蒸着装置の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】(a)は、本発明に係る真空蒸着装置のライン状蒸発源の一例を示す断面図であり、(b)は、その変形例である。
【図3】(a)は、本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の加熱手段、制御手段の構成を説明する図であり、(b)は、その変形例である。
【図4】本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の構成の一例を示す図であり、(a)は、その長手方向の断面図、(b)は、その上面図、(c)は、内部の整流板の上面図である。
【図5】放出孔によるコンダクタンスC1に対する通過孔によるコンダクタンスC2の比[C2/C1]と膜厚分布の関係を示すグラフである。
【図6】Alq3のるつぼ温度と蒸発量(相対値)の関係を測定したグラフである。
【図7】蒸発容器の内側の高さH1に対する放出孔と整流板との距離H2の比[H2/H1]と膜厚分布の関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る真空蒸着装置の膜厚分布の改効果を示す図である。
【図9】本発明に係る真空蒸着装置の材料偏りに対する効果を示す図である。
【図10】本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の他の一例(実施例2)を示す上面図である。
【図11】本発明に係る真空蒸着装置の蒸発容器の整流板の他の一例(実施例3)を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る真空蒸着装置の実施形態について、図1〜図11を参照して、その詳細を説明する。
【0023】
(実施例1)
図1は、本実施例の真空蒸着装置の構成を示す概略構成図であり、当該真空蒸着装置の基板の進行方向に垂直な面における断面を示している。本実施例の真空蒸着装置は、有機EL素子を形成するインライン装置の一部(真空蒸着装置部分)として組み込まれている。従って、以下、一例として、有機EL素子の有機薄膜の形成を例にとって説明するが、本実施例の真空蒸着装置は、これに限定されるものではなく、例えば、金属材料による金属薄膜、絶縁材料による絶縁薄膜等の形成にも適用可能である。更には、1つの蒸発材料を用いた蒸着だけでなく、複数の蒸発材料を用いた蒸着(共蒸着)等にも適用可能である。
【0024】
インライン装置は、複数の処理装置(例えば、真空蒸着装置等)を有するものであり、装置全体を通して、真空容器により構成されており、真空容器内で複数の基板が連続的に搬送されて、基板各々に対して、有機EL素子形成のための処理(例えば、有機薄膜である発光層の形成、金属薄膜である電極の形成等)が連続して実施できるように構成されている。その際、基板を大気側から真空容器内に搬入したり、真空容器から基板を搬出したりする構成、例えば、仕込室及び取出し室が必要であるが、このような構成は公知の技術であるので、ここでは図示を省略する。
【0025】
有機EL素子の有機薄膜を形成する真空蒸着装置では、例えば、図1に示すように、真空容器1が、バルブ2を介して、真空ポンプ3に接続されており、真空容器1の内部が高真空に排気されるようになっている。有機薄膜の蒸着対象となる基板4は、図示しないトレイの中心に配置されており、駆動源5により駆動される搬送ローラ6が回転することにより、トレイと共に、図1の手前から奥の方向へ搬送される。なお、本実施例では、後述の蒸発源20側の位置を固定し、基板4側を移動させているが、逆に、基板4側の位置を固定し、蒸発源20側を移動させるようにしてもよい。
【0026】
基板4が通過する直下には、蒸発材料7が収容された蒸発容器8と、蒸発容器8の周囲に配置された加熱用ヒータ9等を有する蒸発源20が配置されている。この蒸発源20は、ライン状の蒸発源として構成されており、基板4の進行方向に垂直な水平方向(以降、基板4の板幅方向と呼ぶ。)に長く、その長さは、基板4の板幅方向の長さと同等若しくは若干長くしている。
【0027】
蒸発容器8の上方には、蒸発容器8から蒸発される蒸発材料7の蒸発速度を検出する蒸発速度検出器10(例えば、水晶モニタヘッド等)が設けられており、この蒸発速度検出器10は蒸発速度制御器11に接続されている。蒸発速度制御器11は、蒸発速度検出器10で検出された蒸発速度に基づいて、蒸発速度が予め設定した値となるように、加熱電源12への制御出力を制御しており、加熱電源12は、制御出力に基づいて制御された電力をヒータ9に供給して、蒸発速度が一定になるように制御している。なお、上記制御は、蒸着時における蒸発速度制御であるが、蒸発容器8の温度が蒸発温度に至るまでの温度制御、即ち、昇温制御は、蒸発容器8の底部に設けた熱電対と温調器(共に、図示省略)に切り替え、上記加熱電源12を用いて、昇温制御を行っている。
【0028】
このように、蒸発速度検出器10、蒸発速度制御器11、加熱電源12及びヒータ9を用いて、蒸発容器8を加熱することにより、内部に収容した蒸発材料7を蒸発又は昇華させて、後述する複数の放出孔13から蒸発材料7の蒸気を一定の蒸発速度で放出させている。そして、基板4の板幅方向は、複数の放出孔13の配置方向と同じであり、基板4及び蒸発源20は、それらに垂直な方向に相対移動されているので、これにより、基板4全面に蒸着源20からの蒸発材料7を蒸着させることになる。
【0029】
次に、蒸発源20の構成を、図2〜図4を用いて詳細に説明する。
【0030】
図2(a)は、本実施例の蒸発源の断面図であり、ライン状の蒸発源の長手方向に垂直な面における断面図である。
【0031】
蒸発源20内部に配置された蒸発容器8は、基板4の板幅方向に長く、その長さは、基板4の板幅方向の長さと同等若しくは若干長く形成されている。蒸発容器8には、その上面(基板4側の面)に複数の放出孔13が設けられており、又、放出孔13と蒸発容器8内部の蒸発材料7との間には、複数の通過孔18を有する整流板14が配置されている。詳細は後述の図4において説明するが、放出孔13と通過孔18の長手方向の配置位置は、蒸発材料7の蒸着による薄膜の膜厚分布が基板4の板幅方向において均一になるように配置されている。
【0032】
ヒータ9は、蒸発容器8の出し入れのためと放出孔13の配置のため、蒸発容器8の上部には配置していない。そのため、放出孔13の温度低下を補償するために放出孔13側のヒータ9を密に配置し、下部(蒸発材料7側)のヒータ9を疎に配置している。このような配置により、放出孔13の温度低下を防止して、放出孔13における蒸発材料7の詰りを回避することができる。なお、ヒータ9及びその加熱電源12については、後述の図3において更に説明を行う。
【0033】
又、放出孔13の直上の位置を除く、ヒータ9の外周全面に輻射防止板15を配置しており、この輻射防止板15は、蒸発容器8の保温と均熱化のために機能している。更に、輻射防止板15の外周は、内部に冷却水用の流路(図示省略)を有し、冷却水により冷却された水冷ジャケット16と、放出孔13の配置位置に対応する位置に開口部17aを有し、水冷ジャケット16の上部開口部に接する防熱板17とで覆われている。水冷ジャケット16、防熱板17は、真空容器1と基板4への熱輻射を防止するために機能しており、防熱板17は熱伝導率の高いアルミニウム等が適している。なお、防熱板17の開口部17aは、蒸発材料7の蒸気の付着を避けるため、基板4側に広くなるテーパ形状に形成されている。
【0034】
なお、本実施例においては、図2(b)に示すような蒸発源も適用可能である。この図2(b)は、本実施例の変形例となる蒸発源の断面図であり、ライン状の蒸発源の長手方向に垂直な面における断面図である。図2(b)に示す蒸発源20’は、図2(a)に示した蒸発源20と略同等の構成であるが、蒸発容器8の上面(基板4側の面)に、防熱板17の上面まで延設されたノズル21を設け、ノズル21を貫通して放出孔13を設けた構成である。ノズル21により、放出孔13上面の高さ位置が、防熱板17の上面の高さ位置と同等となり、そのため、蒸発材料7の蒸気が防熱板17に付着する可能性はなくなる。従って、その開口部17bは、テーパ形状にする必要はなく、防熱板17を垂直に貫通するように形成している。その他の構成については、図2(a)に示した蒸発源20と同じであるため、図2(b)では、同じ符号を付し、又、説明は省略する。
【0035】
次に、蒸発容器8における加熱手段、制御手段の構成について、図3(a)を参照して説明する。図3(a)は、本実施例の加熱手段、制御手段の構成を説明する図である。
【0036】
蒸発容器8の放出孔13は、蒸着される基板4に対し、放出孔13が露出する構造になるため、何の対策も施さない場合は、放出孔13近傍の温度が蒸発容器8の内部に比べて低くなってしまう。又、蒸発容器8が長尺になると、長手方向の温度むらが生じ易くなる。これらの対策として、特許文献1では、温度制御手段を長手方向において複数に分割し、分割された領域毎に蒸発速度を制御する方法が示されている。しかしながら、実際には、分割された領域毎に蒸発速度を検出して、ヒータの温度制御することは、非常に困難で、複雑な構造となってしまう。
【0037】
そこで、本実施例においては、図3(a)に示すように、蒸発容器8を加熱する加熱手段を、一つの加熱電源12、一本(1つの系統)のヒータ9から構成し、その制御手段を、一つの蒸発速度検出器10、一つの蒸発速度制御器11から構成しており、一系統の加熱手段及び制御手段としている。ヒータ9は、蒸発容器8の外側面を巻回する一本の加熱抵抗から構成されており、蒸発容器8の上部(放出孔13側)を密に巻回し、下部(蒸発材料7側)を粗に巻回することにより、ヒータ9の間隔を蒸発材料7側より放出孔13側で密に配置することになる。上記構成では、一系統による加熱制御となるため、簡便で、長時間にわたって安定した蒸発速度の制御が可能となり、安定した膜厚の薄膜を形成することができ、安定した特性の素子を形成することができる。
【0038】
なお、ヒータ9は、蒸発容器8の外側面を複数回巻回して配置しており、必要とする全長が使用可能なヒータ長を超えた場合、1本のヒータでは出力が不足することになる。そのような場合には、複数本のヒータを使用するようにしてもよい。但し、複数本のヒータを使用する場合でも、蒸発容器8の外側面を巻回して配置しており、一例として、図3(b)に示すように、密に巻回した上部側のヒータ9aと、粗に巻回した下部側のヒータ9bの2本を使用するようにしている。この場合、ヒータ9a、9bを並列又は直列に接続して、1つの系統とすることにより、一つの加熱電源12で電力を供給するようにする。この場合でも、一系統による加熱制御となるため、簡便で、長時間にわたって安定した蒸発速度の制御が可能となり、安定した膜厚の薄膜を形成することができ、安定した特性の素子を形成することができる。
【0039】
通常、ヒータは同じ長さであっても、1本毎に抵抗が異なるため、複数本のヒータを使用する場合、各々電力が異なってしまう。しかしながら、複数本のヒータを使用する場合でも、例えば、図3(b)に示すように、蒸発容器8の外側面を巻回してヒータ9a、9bを配置することにより、ヒータ9a、9b共に蒸発容器8の長手方向に沿って配置することになり、ヒータ9a、9bの違いによる加熱の影響は、蒸発容器8の長手方向には現れず、蒸発容器8の長手方向の温度分布を均一にすることができる。
【0040】
次に、本実施例における放出孔13と整流板14の通過孔18との配置について、図4を参照して説明を行う。なお、図4(a)は、蒸発容器8の長手方向の断面図であり、図4(b)は、蒸発容器8の上面図であり、図4(c)は、整流板14の上面図である。又、以降の説明においては、蒸発材料7自体から蒸発する蒸気の量を「蒸発量」と呼び、それ以外の蒸気の量、例えば、放出孔13、通過孔18等における蒸気の量を「蒸気量」と呼び、明確に区別をする。
【0041】
放出孔13は、蒸発容器8の上面(基板4側の面)に、蒸発容器8の長手方向に沿って、一直線状に複数形成されている。放出孔13は、全て円形の同一径(同一面積)としており、放出孔13同士の間隔を、蒸発容器8の長手方向の中心に対して、両端部側で密に配置して、放出孔13によるコンダクタンスを蒸発容器8の両端部側で大きくしている。一例として、放出孔13同士の間隔を、両端側から中心側に向かって、各々、W11、W12、W13、W14とすると、図4(b)では、中心近傍における間隔W13、W14を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、W14≒W13>W12>W11としている。
【0042】
蒸発源20はライン状の蒸発源であるため、基板4側の膜厚分布としては、その板幅方向の膜厚分布を考慮すればよい。ライン状の蒸着源20は、多数の点蒸着源を連続して配置したものと仮定できるので、ライン状の蒸発源20により形成される基板4の板幅方向の膜厚分布は、多数の点蒸着源からの蒸気の幾何学的な重ね合わせから計算することができる。このことを利用し、逆に、基板4の板幅方向の膜厚分布が均一になるように、蒸着源20上に仮定した各点蒸着源に必要な蒸気量を求め、求めた蒸気量に基づいて、蒸発容器8の上面における単位長さ当たりのコンダクタンスを求めることができる。単位長さ当たりのコンダクタンスが求まれば、放出孔13自体のコンダクタンスは、その直径、長さ、蒸発した分子の平均速度から求めることができるので(例えば、富永五郎、熊谷寛夫、「真空の物理と応用」、裳華房、1970年等参照)、これにより、蒸発容器8の長手方向における放出孔13同士の配置間隔を計算することができる。
【0043】
そして、蒸発容器8の長手方向における放出孔13同士の配置間隔を計算すると、基板4の板幅方向の膜厚分布を均一にするためには、中心側にある放出孔13同士の配置間隔より、両端側ある放出孔13同士の配置間隔を密に(換言すると、単位長さ当たりのコンダクタンスを中心側より両端側を大きく)する必要がある。従って、本実施例では、上述したように、W14≒W13>W12>W11としている。但し、このような放出孔13の配置間隔は、放出孔13直下の蒸発材料7の蒸気量が均一であることを前提としている。実際には、蒸発材料7自体からの単位長さ当たりの蒸発量が均一でも、蒸気の拡散により、放出孔13直下における蒸発材料7の蒸気量は、蒸発容器8の両端側で減少しており、放出孔13の配置間隔を両端側で密にしても(又は両端側でコンダクタンスを大きくしても)、蒸発容器8の両端側での蒸気量は想定している量より少なくなり、これが、基板4の板幅方向の膜厚分布の改善を阻んでいる。
【0044】
更に、蒸発容器8が長尺である場合には、前述したように、蒸発容器8の温度むらや蒸発材料7自体の状態変化により、蒸発の状態が大きく変化し、その長手方向における蒸発量が不均一となってしまうおそれがある。特に、蒸発材料7が有機材料である場合には、温度むらによる材料の状態変化が小さくない場合もあり、そのような場合には、長手方向における蒸発量が不均一となるだけでなく、蒸発材料7の消費が進むに伴って、残存する蒸発材料7の偏りが生じてしまい、その結果、長手方向における蒸発量を更に不均一にしてしまう。
【0045】
そこで、本実施例においては、蒸発容器8の内部に、蒸発材料7の蒸気が通過する複数の通過孔18を有する整流板14を設けることにより、放出孔13直下における蒸発材料7の蒸気量が均一になるようにしており、このような構成により、蒸発材料7からの蒸発量が長手方向において不均一となるような場合にも対応するようにしている。この整流板14の構成について、図4(c)を参照して、説明を行う。
【0046】
整流板14は、蒸発容器8の内部において、放出孔13側と蒸発材料7側とを分離するように、放出孔13と蒸発材料7との間に配置されている。そして、通過孔18は、整流板14を貫通して設けられており、整流板14の長手方向に沿って、2列の直線状に複数形成されている。通過孔18は、全て円形の同一径(同一面積)としており、通過孔18同士の間隔を、整流板14の長手方向の中心に対して、両端部側で密に配置して、通過孔18によるコンダクタンスを、放出孔13によるコンダクタンスと比例するようにしている。一例として、通過孔18同士の間隔を、両端側から中心側に向かって、各々、W21、W22、W23、W24、W25とすると、図4(c)では、中心近傍における間隔W23、W24、W25を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、W25≒W24≒W23>W22>W21としている。
【0047】
通過孔18は、蒸発材料7の全ての表面から見て、放出孔13と通過孔18が直線上に並ばないように配置してある。これは、蒸発材料7には、例えば、有機材料等の突沸(スプラッシュ)し易い材料もあるが、突沸した場合において、突沸により発生した蒸気が、通過孔18及び放出孔13をそのまま通過して、基板4側に直接付着しないようにするためである。このような配置にすることにより、突沸により発生した蒸気が、基板4側に直接付着することがなくなり、製品品質を大きく向上させることができる。
【0048】
通過孔18同士の配置間隔は、均等に配置すれば、放出孔13直下における蒸発材料7の蒸気量が均一になるように思えるが、これも、整流板14直下における蒸発材料7の蒸気量が均一であることを前提とするものであり、実際には、整流板14直下においても、蒸発材料7の蒸気量は蒸発容器8の両端側で減少しており、整流板14の通過孔18を通過する蒸気量は、その両端側では想定している量より少なくなる。その結果、放出孔13の配置間隔を両端側で密にしても(又は両端側でコンダクタンスを大きくしても)、蒸発容器8の放出孔13を通過する蒸気量は、その両端側でも想定している量より少なくなり、これが、基板4の板幅方向の膜厚分布の改善を阻んでいる。更に、蒸発容器8の温度むらや蒸発材料7の状態変化があったり、蒸発材料7の偏りが生じてしまったりした場合には、蒸発材料7自体の蒸発量が長手方向において不均一となり、その結果、基板4の板幅方向の膜厚分布を悪化させることになる。
【0049】
このことから、通過孔18同士の配置間隔についても、基本的には、放出孔13の配置間隔を求めた方法と同等の方法により求めればよい。例えば、放出孔13直下における蒸気量が均一になるように、整流板14上に仮定した各点蒸着源に必要な蒸気量を求め、求めた蒸気量に基づいて、整流板14の上面における単位長さ当たりのコンダクタンスを求め、求めた単位長さ当たりのコンダクタンス、そして、通過孔18自体のコンダクタンスに基づいて、整流板14の長手方向における通過孔18同士の配置間隔を計算すればよい。そして、整流板14の長手方向における通過孔18同士の配置間隔を計算すると、放出孔13直下における蒸気量を均一にするためには、中心側にある通過孔18同士の配置間隔より、両端側ある通過孔18同士の配置間隔を密に(換言すると、単位長さ当たりのコンダクタンスを中心側より両端側を大きく)する必要がある。従って、本実施例では、上述したように、W25≒W24≒W23>W22>W21としている。このように、放出孔13同士の配置間隔と通過孔18同士の配置間隔は、同じ傾向を持つことになり、長手方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、通過孔18によるコンダクタンスが、放出孔13によるコンダクタンスと比例するようになる。
【0050】
そして、本実施例では、蒸発材料7自体の蒸発量が長手方向において不均一となった場合にも対処するため、整流板14の長手方向における通過孔18同士の配置間隔を、放出孔13による蒸発容器8の単位長さ当たりのコンダクタンスに基づいて、決定している。
【0051】
具体的には、放出孔13による蒸発容器8の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、コンダクタンスC2を求め、求めたコンダクタンスC2に基づいて、通過孔18同士の配置間隔を決定している。従って、コンダクタンスC1は、蒸発容器8の両端側で大きくなっているので、コンダクタンスC2も、コンダクタンスC1に相関して、整流板14の両端側で大きくなることになる。
【0052】
ここで、比[C2/C1]を5.0以下、好ましくは、2.0以下とする理由を説明する。
【0053】
具体的には、蒸発材料7が蒸発容器8の内部で一方側に偏った場合において、比[C2/C1]を変化させたときに、膜厚分布がどのように変化するかをシミュレーションすることにより、比[C2/C1]の最適範囲を求めている。各コンダクタンスC1、C2は、図4(b)、(c)に示す蒸発容器8、整流板14において、放出孔13の孔径、通過孔18の孔径等をパラメータとして求めたものである。そして、求めたコンダクタンスC1、C2に相当する蒸気量(放出孔13、通過孔18を通過する蒸気量)から基板4に蒸着した薄膜の膜厚分布を求めている。
【0054】
上記シミュレーションの結果が図5に示すグラフである。図5からは、コンダクタンスの比[C2/C1]が2.0倍以下で薄膜の膜厚分布が良好であり、蒸気流の整流効果が大きいことがわかる。一方、コンダクタンスの比[C2/C1]が5.0倍を超えると膜厚分布の変化は飽和し、整流効果が飽和することを示している。従って、比[C2/C1]が小さければ良好な膜厚分布を得ることができる。従って、比[C2/C1]の上限は、5.0以下、好ましくは、2.0以下となる。
【0055】
なお、比[C2/C1]が小さくなると、蒸気流が制限されて、基板4に付着する蒸着速度が低下する。高速蒸着を要求される装置では不利となるため、その場合には、ヒータ9の温度を上げ、蒸発材料7の蒸気圧を上げ、蒸発量を増やして、蒸発速度を維持すればよい。
【0056】
例えば、有機ELのホスト材としてよく知られている、アルミニウムトリスキノラート(Alq3)に対するるつぼ温度Tと蒸気量Qとの関係を測定した結果を、図6に示す。なお、この蒸発量Qは、286℃のときの蒸発量を1とした相対値であり、蒸着速度と相関性があるものである。
【0057】
図6に示するつぼ温度Tと蒸発量Qとの関係から、蒸着速度を2倍にするためには、るつぼ温度Tを12℃上昇させればよく、同様に、蒸着速度を5倍にするためには、るつぼ温度Tを30℃上昇させればよい。なお、有機ELに使用される有機材料は、必要以上に温度を上昇させると、材料の熱劣化及び有機EL発光素子特性が低下することが知られており、適正な温度範囲がある。
【0058】
更に、基板4の板幅方向の膜厚分布をより均一にするためには、蒸発容器8における整流板14の高さ位置についても、以下のように設定することが好ましい。
【0059】
具体的には、蒸発容器8の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14の上面までの距離をH2とし(前述の図4(a)参照)、これらの比[H2/H1]を変化させたときに、膜厚分布がどのように変化するかをシミュレーションすることにより、比[H2/H1]の最適範囲を求めている。より詳細には、図4(b)、(c)に示す蒸発容器8、整流板14において、比[C2/C1]=1.0として、比[H2/H1]を変化させた。ここでも、各コンダクタンスC1、C2は、放出孔13の孔径、通過孔18の孔径等をパラメータとして求めたものであり、求めたコンダクタンスC1、C2に相当する蒸気量(放出孔13、通過孔18を通過する蒸気量)から基板4に蒸着した薄膜の膜厚分布を求めている。なお、ここでも、蒸発材料7が蒸発容器8の内部で一方側に偏った場合としている。
【0060】
上記シミュレーションの結果が図7に示すグラフである。図7からは、比[H2/H1]が0.6を超えると、急速に膜厚分布が悪化することがわかる。一方、比[H2/H1]が0.6以下、望ましくは、0.5以下であれば、膜厚分布がより良好となることがわかる。なお、下限については、0.08まで検討したが、0.01であっても、放出孔13のコンダクタンスより大きく、小さい比の実質的な制限は無い。従って、比[H2/H1]は、0.6以下、好ましくは、0.5以下となる。
【0061】
次に、本発明の効果を示すため、本実施例の真空蒸着装置を用いて行った試験結果を、図8、図9に示す。
【0062】
図8は、従来技術(内部に整流板が無い蒸着源を使用)と本発明(内部に整流板が有る蒸着源を使用)により基板上に蒸着された薄膜の膜厚分布を測定した結果である。なお、図8では、従来技術及び本発明とも、最大の膜厚を1として、それに対する膜厚比としてグラフ化している。
【0063】
図8に示すグラフにおいて、180mm幅(±90mm)における膜厚分布を比較すると、従来技術では、均一性が±3.0%であるのに対して、本発明では均一性が±1.2%と大幅に改善されており、所望の結果が得られている。又、蒸着有効幅を160mm幅(±80mm)とする場合には、本発明では均一性が±1.0%以内となっており、極めて均一な膜厚分布を得ることができている。近年、素子特性の向上から、膜厚分布の均一性の向上が要望されているが、本発明では、±1%程度の均一性の膜厚分布が要求される場合でも、当該要求を満たすことが可能であり、このような要求に対して、非常に有効なものである。
【0064】
又、図9は、従来技術(内部に整流板が無い蒸着源を使用)と本発明(内部に整流板が有る蒸着源を使用)において、蒸発材料の収容状態を変えて、基板上に蒸着を行い、蒸着された薄膜の膜厚分布を測定した結果である。なお、図9でも、従来技術及び本発明とも、最大の膜厚を1として、それに対する膜厚比としてグラフ化している。
【0065】
蒸発材料の収容状態としては、長尺の蒸発容器に蒸発材料を均一に充填した場合(図9中の材料均一)と、長尺の蒸発容器の片隅にのみ蒸発材料を偏らせて充填した場合(図9中の材料偏り)とを用いた。ここでは、長尺の蒸発容器の[100mm]側の端部にのみ蒸発材料を充填している。
【0066】
図9に示すように、従来技術では、蒸発材料の充填側、つまり、[100mm]側から[−100mm]側に向かって、徐々に膜厚が減少し、膜厚が薄くなっていることがわかり、蒸発材料の偏りが膜厚分布の偏りを発生させている。蒸着有効幅を160mm幅(±80mm)とすると、その均一性は±2.5%の膜厚分布であり、従来の用途では使用可能であっても、高品質・高精度のために近年要求されている膜厚分布の均一性からは外れてしまう。
【0067】
一方、本発明では、蒸発材料の偏りが有る場合でも、蒸発材料の偏りが無い場合と略同等の膜厚分布が得られている。これは、蒸発材料が偏って充填された場合でも、又は、蒸発材料の消費により蒸発材料が偏ってしまった場合でも、再現性及び安定性のある膜厚分布を得ることを意味し、その結果、再現性及び安定性のある製品を製造可能であることが実証できた。
【0068】
以上のことから、蒸発容器8の内部に整流板14を設け、蒸発容器8の放出孔13、整流板14の通過孔18を上述した関係となるように配置することにより、放出孔13直下の蒸気量を均一にすることができ、そのため、蒸発容器8において、中心側より両端側の蒸気流を多くして、基板4の両端部での膜厚の落ち込みを抑制し、基板4の板幅方向における膜厚分布をより均一にして、所望の均一性の膜厚分布を有する薄膜を得ることができる。又、蒸発容器8内部の蒸発材料7に偏りが生じても、整流板14に設けた通過孔18により、放出孔13直下の蒸気量を均一にすることができるので、蒸発材料7の偏りに左右されず、基板4の板幅方向の膜厚分布の均一性を維持することができる。
【0069】
(実施例2)
実施例1においては、蒸発容器8における単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するために、同一径の放出孔13の配置間隔を変えているが、図10に示すように、放出孔13同士の配置間隔を一定とし、代わりに、放出孔13の大きさを変えることで、単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するようにしてもよい。
【0070】
具体的には、図10に示すように、蒸発容器8’の上面(基板4側の面)において、複数の放出孔13(放出孔131、132、133、134)を、蒸発容器8’の長手方向に沿って、一直線状に形成している。放出孔13同士の配置間隔は全て同一の間隔W31としているが、円形の開口径が異なっており、基板4上の膜厚分布が均一になるように、蒸発容器8’の長手方向の中心の放出孔134に対して、両端部側の放出孔131の開口径(面積)を大きくして、放出孔13によるコンダクタンスを両端部側で大きくしている。一例として、放出孔131、132、133、134の開口径を、各々、D31、D32、D33、D34とすると、図10では、中心近傍における放出孔133、134の開口径D33、D34を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、D34≒D33<D32<D31としている。
【0071】
そして、図4(b)に示した蒸気容器8に代えて、上記蒸気容器8’を用い、図4(c)に示した整流板14と組み合わせて、ライン状の蒸気源とする場合、実施例1と同様に、放出孔13による蒸発容器8’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14の通過孔18の配置間隔を設定している。又、蒸発容器8’の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14の上面までの距離をH2とすると、比[H2/H1]についても、実施例1と同様に、0.6以下、好ましくは、0.5以下となるように、整流板14を配置している。
【0072】
(実施例3)
実施例1においては、整流板14における単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するために、同一径の通過孔18の配置間隔を変えているが、図11に示すように、通過孔18同士の配置間隔を一定とし、代わりに、通過孔18の大きさを変えることで、単位長さ当たりのコンダクタンスを変更するようにしてもよい。
【0073】
具体的には、図11に示すように、整流板14’において、複数の通過孔18(通過孔181、182、183、184)を、整流板14’の長手方向に沿って、2列の直線状に形成している。通過孔18同士の配置間隔は全て同一の間隔W41としているが、円形の開口径が異なっており、放出孔13直下の蒸気量が均一になるように、整流板14’の長手方向の中心の通過孔184に対して、両端部側の通過孔181の開口径(面積)を大きくして、通過孔18によるコンダクタンスを、放出孔13によるコンダクタンスに比例するようにしている。一例として、通過孔181、182、183、184の開口径を、各々、D41、D42、D43、D44とすると、図11では、中心近傍における通過孔183、184の開口径D43、D44を同等とし、中心側から両端側に行くに従って、D44≒D43<D42<D41としている。
【0074】
そして、図4(c)に示した整流板14に代えて、上記整流板14’を用い、図4(b)に示した蒸気容器8と組み合わせて、ライン状の蒸気源とする場合、実施例1と同様に、放出孔13による蒸発容器8の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14’の通過孔18の開口径を設定している。又、蒸発容器8の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14’の上面までの距離をH2とすると、比[H2/H1]についても、実施例1と同様に、0.6以下、好ましくは、0.5以下となるように、整流板14’を配置している。
【0075】
更に、図4(b)に示した蒸気容器8に代えて、実施例2の図10で示した蒸気容器8’を用い、図4(c)に示した整流板14に代えて、上記整流板14’を用い、これらを組み合わせて、ライン状の蒸気源とする場合も、実施例1と同様に、放出孔13による蒸発容器8’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC1とし、通過孔18による整流板14’の単位長さ当たりのコンダクタンスをC2とすると、比[C2/C1]が5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14’の通過孔18の開口径を設定している。又、蒸発容器8’の内側の高さをH1とし、放出孔13の下面から整流板14’の上面までの距離をH2とすると、比[H2/H1]についても、実施例1と同様に、0.6以下、好ましくは、0.5以下となるように、整流板14’を配置している。
【0076】
図10で示した蒸気容器8’と図11で示した整流板14’とを組み合わせる場合、特に、W31=W41である場合には、単位長さ当たりのコンダクタンスの比ではなく、対応する放出孔13のコンダクタンスCaと通過孔18のコンダクタンスCbとの比[Cb/Ca]を、5.0以下、好ましくは、2.0以下となるように、整流板14’の通過孔18の開口径を設定してもよい。
【0077】
なお、上記実施例1〜3において、放出孔13、通過孔18は円形としているが、四角形や楕円や長方形などでも良い。又、1個の放出孔13に対して、2個の通過孔18を対応させているが、1個でも、逆に、多数(3個以上)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る真空蒸着装置は、特に、蒸着対象が大型基板である場合に好適なものであり、又、蒸発材料が有機材料である場合に好適なものである。
【符号の説明】
【0079】
1 真空容器
2 バルブ
3 真空ポンプ
4 基板
5 駆動源
6 搬送ローラ
7 蒸発材料
8 蒸発容器
9 ヒータ
10 蒸発速度検出器
11 蒸発速度制御器
12 加熱電源
13 放出孔
14 整流板
15 輻射防止板
16 水冷ジャケット
17 防熱板
18 通過孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放出孔を線状に配置すると共に、前記放出孔によるコンダクタンスを両端部側で大きくした蒸発容器を有し、
前記蒸発容器を加熱することにより、内部に収容した蒸発材料を蒸発又は昇華させて、前記複数の放出孔から前記蒸発材料の蒸気を放出させると共に、前記複数の放出孔の配置方向に垂直な方向に、基板及び前記蒸発容器を相対的に移動させて、前記基板全面に前記蒸発材料を蒸着させる真空蒸着装置において、
前記蒸発容器内部に前記蒸気が通過する複数の通過孔を有する整流板を設け、前記複数の放出孔の配置方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔を全て同一面積とすると共に当該放出孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の放出孔を同一間隔で配置すると共に当該放出孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記放出孔によるコンダクタンスを前記蒸発容器の両端部側で大きくしたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の真空蒸着装置において、
前記通過孔を全て同一面積とすると共に当該通過孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の通過孔を同一間隔で配置すると共に当該通過孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔によるコンダクタンスC1に対する前記通過孔によるコンダクタンスC2の比[C2/C1]を、5.0以下、好ましくは、2.0以下としたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器の内側の高さH1に対する前記放出孔から前記整流板までの距離H2の比[H2/H1]を、0.6以下、好ましくは、0.5以下としたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発材料の全ての表面から見て、前記放出孔と前記通過孔が直線上に並ばないように、前記通過孔を配置したことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器を加熱する加熱手段を、前記蒸発容器の外側面を巻回する1つの系統のヒータと、前記ヒータに電力を供給する1つの加熱電源から構成すると共に、
前記加熱電源を制御する制御手段を、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度を検出する1つの蒸発速度検出器と、前記蒸発速度検出器で検出された蒸発速度に基づいて、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度が一定となるように、前記加熱電源への出力を制御する1つの蒸発速度制御器から構成したことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔側の前記ヒータの間隔を、前記蒸発材料側のヒータの間隔より密に巻回したことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項1】
複数の放出孔を線状に配置すると共に、前記放出孔によるコンダクタンスを両端部側で大きくした蒸発容器を有し、
前記蒸発容器を加熱することにより、内部に収容した蒸発材料を蒸発又は昇華させて、前記複数の放出孔から前記蒸発材料の蒸気を放出させると共に、前記複数の放出孔の配置方向に垂直な方向に、基板及び前記蒸発容器を相対的に移動させて、前記基板全面に前記蒸発材料を蒸着させる真空蒸着装置において、
前記蒸発容器内部に前記蒸気が通過する複数の通過孔を有する整流板を設け、前記複数の放出孔の配置方向における単位長さあたりのコンダクタンスについて、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔を全て同一面積とすると共に当該放出孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の放出孔を同一間隔で配置すると共に当該放出孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記放出孔によるコンダクタンスを前記蒸発容器の両端部側で大きくしたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の真空蒸着装置において、
前記通過孔を全て同一面積とすると共に当該通過孔を前記蒸発容器の両端部側で密に配置すること、又は、前記複数の通過孔を同一間隔で配置すると共に当該通過孔の面積を前記蒸発容器の両端部側で大きくすることにより、前記通過孔によるコンダクタンスを、前記放出孔によるコンダクタンスと比例するようにしたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔によるコンダクタンスC1に対する前記通過孔によるコンダクタンスC2の比[C2/C1]を、5.0以下、好ましくは、2.0以下としたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器の内側の高さH1に対する前記放出孔から前記整流板までの距離H2の比[H2/H1]を、0.6以下、好ましくは、0.5以下としたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発材料の全ての表面から見て、前記放出孔と前記通過孔が直線上に並ばないように、前記通過孔を配置したことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の真空蒸着装置において、
前記蒸発容器を加熱する加熱手段を、前記蒸発容器の外側面を巻回する1つの系統のヒータと、前記ヒータに電力を供給する1つの加熱電源から構成すると共に、
前記加熱電源を制御する制御手段を、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度を検出する1つの蒸発速度検出器と、前記蒸発速度検出器で検出された蒸発速度に基づいて、前記蒸発材料の蒸気の蒸発速度が一定となるように、前記加熱電源への出力を制御する1つの蒸発速度制御器から構成したことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の真空蒸着装置において、
前記放出孔側の前記ヒータの間隔を、前記蒸発材料側のヒータの間隔より密に巻回したことを特徴とする真空蒸着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−12309(P2011−12309A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157505(P2009−157505)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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