説明

眼用レンズ関連材料の成形体

【課題】機械的特性に優れ、寸法精度を高めることができると共に、成形体中の成分の抽出が抑えられ、眼用レンズ関連材料の機能低下を抑制することができる眼用レンズ関連材料の成形体を提供する。
【解決手段】眼用レンズ関連材料の成形体は、プロピレンが主体の重合原料をメタロセン触媒を用いて1段階重合法により重合して得られ、酸化防止剤よりなる添加剤を含有し、下記に示す(a)〜(c)の要件を備えているアイソタクチックポリプロピレンにより形成されている。
(a)プロピレンから形成される構造単位を主体とし、エチレンから形成される構造単位が10モル%以下であること。
(b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0であること。
(c)平均溶出温度(T50)が75〜120℃であり、溶出分散度(σ)が9以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ、眼内レンズ等の成形体や眼用レンズ包装体などの眼用レンズ関連材料の成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使い捨て(ディスポーザブル)の含水性ソフトコンタクトレンズが登場し、その使い勝手が良く、汚れたり、傷付いたりした場合には気軽に新品のレンズと交換して装用することができる等の理由により、コンタクトレンズの装用者の人口が増加しつつある。このような使い捨てレンズにあっては、短期間での取替えが前提となっていることから、当然レンズの使用者に安価に供給され得るものであることが強く要求されている。
【0003】
ところで、従来より知られているコンタクトレンズの製造方法は概ね3種類に分けられ、切削研磨法、モールド重合法及びスピンキャスト法がある。切削研磨法は、板状や棒状等のレンズ材料を旋盤によって切り出し、切削、研磨工程を経て、所望とするコンタクトレンズを製造する方法である。この切削研磨法は、異なる多種類の規格の製品が必要とされるコンタクトレンズを製造するのに適した方法として、特にそのような多種類の規格品が必要とされるハードコンタクトレンズの製造に有利に採用されている。しかしながら、切削研磨法は工程数が多く、製造に時間を要したり、切削屑として多くのレンズ材料を廃棄したりすることから、その製造コストの高騰が免れないといった問題がある。
【0004】
これに対してモールド重合法とスピンキャスト法は、主にソフトコンタクトレンズの製造に採用されている。前者のモールド重合法は、所望とするレンズ形状に対応するキャビティを有する成形型内に、モノマー組成物を充填し、同モノマー組成物を重合して目的とするコンタクトレンズを製造する方法である。一方、後者のスピンキャスト法は、モノマー組成物を回転する成形型の中に流し込み、その遠心力によりモノマー組成物を拡げてレンズ形状となし、それを重合することによってコンタクトレンズを製造する方法である。
【0005】
これらモールド重合法やスピンキャスト法は、規格の異なる多種類のコンタクトレンズを製造するに際しては、各規格毎に高い面精度を有する成形型が必要となり、以って上記成形型の種類の増加により製造コストが上昇することから、多種類の規格品が必要とされるハードコンタクトレンズの製造には不向きである。しかし、ソフトコンタクトレンズを製造するに際しては、該ソフトコンタクトレンズが柔軟で、装用者の角膜の形状に応じてフィッティングされ、1〜2種類のベースカーブ規格で殆どの装用者に対して適用されることから、必要とされる成形型の種類は少なく、従ってこれらの方法が好適に適用され得る。
【0006】
しかも、これらモールド重合法とスピンキャスト法は、切削研磨法に比べて製造工程が簡略化され得ると共に、モノマー組成物の使用量を必要最小限に抑えることができることから、低コスト及び大量生産を実現することが可能となるといった利点を有している。従って、これらの方法は、使い捨てソフトコンタクトレンズの如き消費量の多いコンタクトレンズの製造に特に有利に採用されている。
【0007】
前記モールド重合法においては、一般的にモノマー組成物の重合物たるレンズ材料の離型性やその成形性を考慮して、射出成形法にて製造される樹脂製の成形型が用いられている。該成形型に用いられる樹脂には、通常添加剤として安定剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、中和剤、造核剤、老化防止剤等が添加されている。
【0008】
この種のモールド重合法として具体的には、精密射出成形されたコンタクトレンズ注型用カップのような物品が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、100g/10分未満のメルトフローレート(MFR)を有し、かつ核剤を含むアイソタクチックポリプロピレンを含有する物品である。このアイソタクチックポリプロピレンは、例えばメタロセン触媒の存在下でプロピレンを重合することにより製造される。
【0009】
また、シリコーン含有不飽和モノマーを少なくとも含むモノマー組成物を成形キャビティ内に収容して重合せしめることにより、目的とする眼用レンズ材料をモールド成形するための成形型が開示されている(特許文献2を参照)。すなわち、少なくとも前記成形キャビティを与える部位が、添加剤の含有率総計を500〜2000ppmの範囲とするポリプロピレンにて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−104403号公報(第2頁、第3頁及び第5頁)
【特許文献2】特開2001−353808号公報(第2頁及び第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、モールド重合法において製造されてきたソフトコンタクトレンズの酸素透過性は、含水率に依存していたため低いものであり、酸素透過性ハードコンタクトレンズに比べて劣っていた。しかし、近年、ソフトコンタクトレンズでも長時間の連続装用に耐えられるように酸素透過性の向上したシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズのように、シリコーン含有不飽和モノマーを含むモノマー組成物からなる眼用レンズ材料が提案されている。
【0012】
前記特許文献1に記載の精密射出成形された物品では、アイソタクチックポリプロピレンに安息香酸ナトリウム等の核剤が含まれていることから、この物品をコンタクトレンズ注型用カップとして用いる場合、該注型用カップ内にコンタクトレンズの原料液が注入され、重合が行われ成形される。そのとき、注型用カップに含まれる核剤がコンタクトレンズの原料液に抽出され、重合が不均一になって重合性が低下すると共に、成形されるコンタクトレンズの酸素透過性等の機能低下が生じるという問題があった。
【0013】
一方、特許文献2に記載のモールド重合用成形型では、添加剤の含有率総計が500〜2000ppmに制限されているが、ポリプロピレンの種類としては、一般に市販されているものが用いられている。そのようなポリプロピレンは例えばチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されており、チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたポリプロピレン製の成形型にてシリコーン含有不飽和モノマーを含むモノマー組成物をモールド重合し、コンタクトレンズが成形される。この場合、成形型の透明性、寸法精度や機械的特性が悪く、モノマー組成物と成形型との親和性が悪いためコンタクトレンズに気泡が生じたり、成形型の重合歪みに起因してコンタクトレンズにカールが惹起されたり、成形型に含まれる添加剤がモノマー組成物に抽出されたり、重合の不均一性及びコンタクトレンズの特性が損なわれる等の問題が生ずる。
【0014】
さらには、コンタクトレンズにおける表面と内部との組成が異なり易くなり、離型後においてコンタクトレンズに変形が生じたり、機械的強度の低下が生じたりするおそれがある。ここで、シリコーンは本来疎水性及び親油性の性質があることから、シリコーン含有不飽和モノマーが、樹脂製の成形型に含まれる添加剤の溶出を惹起したと考えられ、特に光重合を行う際に重要となる重合用成形型の透明性を高めるべく造核剤が添加剤として付与される。しかしながら、当該添加剤がモノマー組成物にて抽出され、重合体にその機能低下等の悪影響を及ぼすことが上述の如く明らかとなった。
【0015】
加えて、当該コンタクトレンズを収納する包装体も既存のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたポリプロピレンでは、要求される透明性のほか寸法精度、機械的特性が所望レベルに到達せず、高圧蒸気滅菌後の結晶化に伴う製品強度低下及び添加剤の溶出に伴う包装体内に収容された保存液中の浮遊物発生が惹起される。
【0016】
そこで本発明の目的とするところは、機械的特性に優れ、寸法精度を高めることができると共に、成形体中の成分の抽出が抑えられ、眼用レンズ関連材料の機能低下を抑制することができる眼用レンズ関連材料の成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、プロピレンが主体の重合原料をメタロセン触媒を用いて1段階重合法により重合して得られ、酸化防止剤よりなる添加剤を含有し、下記に示す(a)〜(c)の要件を備えているアイソタクチックポリプロピレンにより形成されていることを特徴とする。
(a)プロピレンから形成される構造単位を主体とし、エチレンから形成される構造単位が10モル%以下であること。
(b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0であること。
(c)平均溶出温度(T50)が75〜120℃であり、溶出分散度(σ)が9以下であること。
【0018】
請求項2に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体又はエチレン含量が10モル%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜40g/10分であることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項3のいずれかに1項に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率が800〜1500MPaであり、かつJIS K7171に準拠して測定される曲げ強さが30〜50MPaであることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7162に準拠して測定される引張弾性率が800〜1500MPaであり、かつJIS K7162に準拠して測定される引張降伏応力が20〜40MPaであることを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項5のいずれか1項に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7111に準拠して23℃で測定されるシャルピー衝撃強度が1.0〜20KJ/mであり、かつJIS K7111に準拠して0℃で測定されるシャルピー衝撃強度が0.5〜10KJ/mであることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項6のいずれか1項に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7202に準拠して測定されるロックウェル硬さ(R−スケール)が80〜120であることを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項7のいずれか1項に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7191に準拠して測定される荷重たわみ温度(0.45MPa)が80〜120℃であることを特徴とする。
【0025】
請求項9に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項8のいずれか1項に係る発明において、前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7136に準拠して測定されるヘイズ値(2mm)が40〜100%であり、かつJIS K7136に準拠して測定されるヘイズ値(1mm)が15〜60%であることを特徴とする。
【0026】
請求項10に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項9のいずれか1項に係る発明において、前記眼用レンズ関連材料は、コンタクトレンズ、眼内レンズ又は眼用レンズ包装体であることを特徴とする。
【0027】
請求項11に記載の眼用レンズ関連材料の成形体は、請求項1から請求項10のいずれか1項に係る発明において、前記成形体は、コンタクトレンズ若しくは眼内レンズを成形するための成形型又は眼用レンズ包装体の成形品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の眼用レンズ関連材料の成形体では、プロピレンが主体の重合原料をメタロセン触媒を用いて1段階重合法により重合して得られ、酸化防止剤よりなる添加剤を含有し、下記に示す(a)〜(c)の要件を備えているアイソタクチックポリプロピレンにより形成されている。
(a)プロピレンから形成される構造単位を主体とし、エチレンから形成される構造単位が10モル%以下であること。
(b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0であること。
(c)平均溶出温度(T50)が75〜120℃であり、溶出分散度(σ)が9以下であること。
【0029】
上記のように、メタロセン触媒を用いてアイソタクチックポリプロピレンを成形することにより、得られるアイソタクチックポリプロピレンは前記要件(a)、(b)及び(c)に基づく特性を発現する。すなわち、アイソタクチックポリプロピレンは、特にプロピレンに基づく良好な機械的特性を発揮することができる。また、アイソタクチックポリプロピレンは分子量分布が狭く(シャープであり)、低分子成分や高分子成分が少なく一定の分子量のものであることから、機械的特性などの特性を良好に発揮することができる。さらに、アイソタクチックポリプロピレンの平均溶出温度(T50)が上記範囲に設定されていることから、分子量及び融点を眼用レンズ関連材料の成形のために適切なものとすることができ、寸法精度を高めることができる。その上、アイソタクチックポリプロピレンの溶出分散度(σ)が前記範囲に設定されているため、温度上昇に伴う成分の溶出を抑制することができると共に、寸法精度を高めることができる。
【0030】
従って、本発明の眼用レンズ関連材料の成形体によれば、機械的特性に優れ、寸法精度を高めることができると共に、成形体中の成分の抽出が抑えられ、眼用レンズ関連材料の機能低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の眼用レンズ関連材料の成形体は、プロピレンが主体の重合原料をメタロセン触媒を用いて1段階重合法により重合して得られ、酸化防止剤よりなる添加剤を含有し、下記に示す(a)〜(c)の要件を備えているアイソタクチックポリプロピレンにより形成されている。
(a)プロピレンから形成される構造単位を主体とし、エチレンから形成される構造単位が10モル%以下であること。
(b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0であること。
(c)平均溶出温度(T50)が75〜120℃であり、溶出分散度(σ)が9以下であること。
【0032】
上記眼用レンズ関連材料は、コンタクトレンズ、眼内レンズ等の眼用レンズ自体又は眼用レンズ包装体(コンタクトレンズのレンズケースなど)等の眼用レンズに関連する材料を意味する。眼用レンズ関連材料の成形体は、具体的にはコンタクトレンズ若しくは眼内レンズを成形するための成形型又は眼用レンズ包装体の成形品である。コンタクトレンズ若しくは眼内レンズの成形型の場合には、少なくとも眼用レンズ関連材料を成形するためのキャビティ部分がアイソタクチックポリプロピレンで形成されておればよく、成形型全体がアイソタクチックポリプロピレンで形成されていなくても差し支えない。
【0033】
前記重合原料としては、プロピレン単独又はプロピレンと好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは0.5〜5モル%のエチレンとの混合物が用いられ、プロピレンのもつ特性を有効に発現することができる。エチレンの含有量が10モル%を上回る場合には、プロピレンのもつ特性を十分に発現することができなくなる。
【0034】
メタロセン触媒は、分子量分布と組成分布がシャープなアイソタクチックポリプロピレン(メタロセン触媒のPPは、チーグラー・ナッタ触媒のPPよりアタクチックポリプロピレン成分が少ないが、0%ではない。)を製造することができる重合触媒であり、芳香環と芳香環との間に金属が入ったサンドイッチ構造を有するメタロセン錯体により構成されている。このメタロセン触媒は、プロピレンの配位に必要な空間配座をもち、プロピレン挿入反応に高い活性を示し、チーグラー・ナッタ触媒に比べて重合活性点がより均一であるため触媒性能が高められている。メタロセン触媒としては、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム等が挙げられるが具体的には、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0035】
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号及び特開平8−85708号の各公報に開示されている。
【0036】
さらに具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も、同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは、他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることができる。
【0037】
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物を用いると立体規則性が高く高剛性で、低分子量成分の少ないプロピレン系重合体が収率良く得られるので好ましい。
【0038】
また、メタロセン化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機又は有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的にはイオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(例えば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
【0040】
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0041】
また、1段階重合法にて重合を行うことにより、アイソタクチックポリプロピレンの分子量分布と組成分布をシャープにでき、簡易な操作により効率良く重合を行うことができる。1段階重合法における重合は1段階重合法の常法に従って行われるが、重合温度は60〜80℃、重合時間は1〜3時間であることが好ましい。
【0042】
アイソタクチックポリプロピレンには添加剤として酸化防止剤が含まれるが、必要によりその他の添加剤として中和剤等が含まれる。酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤、N,N−ジラウリルヒドロキシアミン、N,N−ジミリスチルヒドロキシアミン等のヒドロキシルアミン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の添加量は、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレンランダム共重合体100質量部に対して100〜500ppmという少量であることが好ましい。
【0043】
中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート等が挙げられる。添加剤としてポリ−3−メチル−1−ブテン等の造核剤は、成形型に眼用レンズ関連材料の成形原料(モノマー組成物)を注入して重合を行う場合に成形型内の造核剤が成形原料中に抽出され、眼用レンズ関連材料の機能が低下するおそれがある。また、透明造核剤として使用される1,3,2,4−ジ−(p−メチルベンジリデン)ソルビトールは、高温環境等で成形品の表面に析出する懸念があり、リン酸2,2‘−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムは成形収縮率の異方性があるため、成形品が反りやすい。従って、成形原料中における造核剤の含有量は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下に設定される。
【0044】
プロピレンの単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体を製造する場合には、重合反応器内にメタロセン触媒を含む前記重合原料を注入し、1段階重合法で常法に従って60〜80℃、1〜3時間程度の重合条件で重合が行われ、前記重合体(アイソタクチックポリプロピレン)が製造される。通常、この重合体に前記添加剤が添加され、押出機で溶融、混練され、乾燥されてペレットが製造される。そして、このペレットを用い、射出成形法等の成形法にてコンタクトレンズ若しくは眼内レンズの成形型又はコンタクトレンズ包装体が製造される。成形型を製造する場合には、例えばオス型とメス型とが両者間にキャビティを有するように成形される。
【0045】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、ビニル鎖に一つおきに存在するメチル基の枝が立体的に一方向のみに位置する重合体である。このアイソタクチックポリプロピレンは、前記(a)〜(c)の3つの要件を備えている。(a)アイソタクチックポリプロピレンはその特性を十分に発揮するために、プロピレンから形成される構造単位が主体となり、エチレンから形成される構造単位が10モル%以下、好ましくは0.5〜5モル%に設定される。従って、アイソタクチックポリプロピレンは、例えば曲げ弾性率、曲げ強さ、引張弾性率、引張降伏応力、衝撃強度等の特にプロピレンに基づく機械的特性を十分に発揮することができる。
【0046】
(b)アイソタクチックポリプロピレンは、分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕が1.5〜4.0に設定される。分子量分布がこの範囲に設定されることにより、アイソタクチックポリプロピレンの分子量分布がシャープになり、低分子成分や高分子成分が少なく一定の分子量のものとなる。従って、アイソタクチックポリプロピレンは、優れた機械的特性に加えて、ヘイズ値などの良好な光学的特性を発揮することができる。この分子量分布が1.5未満又は4.0を超える場合には、低分子成分又は高分子成分が増加し、アイソタクチックポリプロピレンは所望の特性を発揮することができなくなる。
【0047】
(c)アイソタクチックポリプロピレンは、平均溶出温度(T50)が75〜120℃であり、溶出分散度(σ)が9以下である。ここで、平均溶出温度は、o−ジクロロベンゼンを溶媒とする温度上昇溶離分別法による重合体の溶出曲線に基づく値であり、溶出重合体の積算質量が50質量%となるときの温度を表す。溶出分散度は、温度上昇溶離分別法による溶出量が溶出温度に対して正規確率分布に従うと仮定し、質量積算溶出量I(t)が下記の数式(1)で表されると定義した際のσの値である。
【0048】
【数1】

溶出分散度は具体的には、σ=T84.1−T50である。なお、T84.1は積算質量が84.1質量%となるときの温度を示す。
【0049】
平均溶出温度が75〜120℃であることにより、アイソタクチックポリプロピレンの分子量及び融点を眼用レンズ関連材料の成形のために適切なものとすることができ、寸法精度を向上させることができる。平均溶出温度が75℃を下回るときにはアイソタクチックポリプロピレンの分子量及び融点が低くなり過ぎ、眼用レンズ関連材料の寸法精度が悪化し、120℃を上回るときにはアイソタクチックポリプロピレンの分子量及び融点が高くなり過ぎて好ましくない。
【0050】
また、溶出分散度(σ)が9以下であることにより、温度上昇に伴う成分の溶出を抑えることができると共に、寸法精度を高めることができる。溶出分散度が9より大きくなると、温度上昇に伴って成形体に含まれる成分の溶出を抑制することができなくなると共に、眼用レンズ関連材料の寸法精度の低下を招く。
【0051】
上記のような(a)〜(c)の要件を満たすアイソタクチックポリプロピレンは、流動性に優れると共に、曲げ弾性率、曲げ強さ、引張弾性率、引張降伏応力、衝撃強度、硬さ、たわみ特性(荷重たわみ温度)等の機械的特性に優れ、かつヘイズ値等の光学特性にも優れている。
【0052】
前記流動性に関して具体的には、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜40g/10分であることが好ましい。MFRが20g/10分未満の場合にはアイソタクチックポリプロピレンの流動性が低下し、成形が難しくなり、40g/10分を超える場合にはアイソタクチックポリプロピレンの流動性が高くなり過ぎる傾向を示し、取扱性が悪くなって好ましくない。
【0053】
曲げ弾性率及び曲げ強さについて具体的には、JIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率が800〜1500MPaであり、JIS K7171に準拠して測定される曲げ強さが30〜50MPaであることが好ましい。曲げ弾性率が800MPa未満又は曲げ強さが30MPa未満の場合にはアイソタクチックポリプロピレンの曲げ特性が不足し、曲げ弾性率が1500MPaを超え、又は曲げ強さが50MPaを超える場合にはアイソタクチックポリプロピレンの曲げ特性が強くなり過ぎてかえって好ましくない。
【0054】
引張弾性率及び引張降伏応力に関して具体的には、JIS K7162に準拠して測定される引張弾性率が800〜1500MPaであり、JIS K7162に準拠して測定される引張降伏応力が20〜40MPaであることが好ましい。引張弾性率が800MPa未満又は引張降伏応力が20MPa未満の場合にはアイソタクチックポリプロピレンの引張特性が不足する傾向を示し、引張弾性率が1500MPaを超え、又は引張降伏応力が40MPaを超える場合にはアイソタクチックポリプロピレンの引張特性が過大になり過ぎて好ましくない。
【0055】
衝撃強度について具体的には、JIS K7111に準拠して23℃で測定されるシャルピー衝撃強度が1.0〜20KJ/mであり、JIS K7111に準拠して0℃で測定されるシャルピー衝撃強度が0.5〜10KJ/mである。23℃でのシャルピー衝撃強度が1.0KJ/m未満又は0℃でのシャルピー衝撃強度が0.5KJ/m未満の場合には、アイソタクチックポリプロピレンの常温下及び低温下における衝撃強度が不足して好ましくない。その一方、23℃でのシャルピー衝撃強度が20KJ/mを超え、又は0℃でのシャルピー衝撃強度が10KJ/mを超える場合には、アイソタクチックポリプロピレンの剛性が低くなり好ましくない。
【0056】
硬さに関して具体的には、JIS K7202に準拠して測定されるロックウェル硬さ(R−スケール)が80〜120であることが好ましい。ロックウェル硬さが80未満のときにはアイソタクチックポリプロピレンの表面硬さが不足し、120を超えるときにはアイソタクチックポリプロピレンが硬くなり過ぎて好ましくない。
【0057】
荷重たわみ温度に関して具体的には、JIS K7191に準拠して測定される荷重たわみ温度(0.45MPa)が80〜120℃であることが好ましい。荷重たわみ温度が80℃未満の場合にはアイソタクチックポリプロピレンの撓み特性が低下し、120℃を超える場合には撓み特性が必要以上に高くなって耐衝撃性が悪くなるため好ましくない。
【0058】
ヘイズ値について具体的には、JIS K7136に準拠して測定されるヘイズ値(2mm)が40〜100%であり、JIS K7136に準拠して測定されるヘイズ値(1mm)が15〜60%であることが好ましい。このヘイズ値(2mm)が40%未満又はヘイズ値(1mm)が15%未満の場合には実性能に不具合が生じるおそれのある造核剤を添加しないと実現が難しく、ヘイズ値(2mm)が100%を超え、又はヘイズ値(1mm)が60%超える場合には透明性が十分ではない。
【0059】
次に、コンタクトレンズ、眼内レンズ等の眼用レンズを製造する場合には、前述した成形型を用いて行われる。例えば眼用レンズ製造用の成形原料をメス型のキャビティに注入し、オス型で蓋をした後、紫外線照射して重合することにより眼用レンズを成形することができる。眼用レンズ製造用の成形原料としてのモノマーは、例えばポリシロキサンマクロモノマー、シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート、シリコーン含有スチレン、その他親水性モノマー、多官能モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、その他一般に眼用レンズの成形に用いられるモノマーが用いられる。これらのモノマーは、少なくとも1種が適宜選択して用いられる。
【0060】
ポリシロキサンマクロモノマーとしては、ウレタン結合含有ポリジメチルシロキサンマクロモノマー等が挙げられる。シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、トリス(トリメチルシロキシ)シリルイソプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0061】
親水性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N−ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、(メタ)は、アクリルとメタクリルの双方を含む総称を意味する。
【0062】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
(1) 本実施形態の眼用レンズ関連材料の成形体では、プロピレンが主体の重合原料をメタロセン触媒を用いて1段階重合法により重合して得られ、酸化防止剤よりなる添加剤を含有し、前述した(a)〜(c)の要件を備えているアイソタクチックポリプロピレンにより形成されている。
【0063】
このため、アイソタクチックポリプロピレンはプロピレンに基づいて優れた機械的特性を発現でき、寸法精度が高められる。また、アイソタクチックポリプロピレンは分子量分布がシャープで、低分子成分や高分子成分が少なく一定の分子量であるため、優れた機械的特性や光学的特性を発揮することができる。さらに、アイソタクチックポリプロピレンの平均溶出温度(T50)が前記範囲に設定され、眼用レンズ関連材料の成形体の寸法精度を向上させることができる。加えて、アイソタクチックポリプロピレンの溶出分散度(σ)が前記範囲に設定され、成分の溶出を抑制することができると共に、眼用レンズ関連材料の成形体の寸法精度を高めることができる。
【0064】
従って、眼用レンズ関連材料の成形体は機械的特性に優れ、寸法精度を高めることができると共に、成形型や眼用レンズ包装体中の成分の抽出が抑えられ、眼用レンズ関連材料の機能低下を抑制することができる。
【0065】
(2) アイソタクチックポリプロピレンがプロピレンの単独重合体又はエチレン含量が10モル%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体であることにより、眼用レンズ関連材料の成形体の機械的特性を向上させることができる。
【0066】
(3) アイソタクチックポリプロピレンはMFRが20〜40g/10分であることから、アイソタクチックポリプロピレンの溶融時における流動性を向上させることができる。
【0067】
(4) アイソタクチックポリプロピレンは曲げ弾性率が800〜1500MPaであり、かつ曲げ強さが30〜50MPaであることにより、アイソタクチックポリプロピレンの機械的特性としての曲げ特性を向上させることができる。
【0068】
(5) アイソタクチックポリプロピレンは引張弾性率が800〜1500MPaであり、かつ引張降伏応力が20〜40MPaであることにより、アイソタクチックポリプロピレンの機械的特性としての引張特性を向上させることができる。
【0069】
(6) アイソタクチックポリプロピレンは23℃で測定されるシャルピー衝撃強度が1.0〜20KJ/mであり、かつ0℃で測定されるシャルピー衝撃強度が0.5〜10KJ/mである。このため、アイソタクチックポリプロピレンの機械的特性としての常温下及び低温下における良好な衝撃特性を発揮することができる。
【0070】
(7) アイソタクチックポリプロピレンはロックウェル硬さ(R−スケール)が80〜120であることにより、アイソタクチックポリプロピレンの機械的特性としての硬度特性を良好に発揮することができる。
【0071】
(8) アイソタクチックポリプロピレンは荷重たわみ温度(0.45MPa)が80〜120℃であることにより、アイソタクチックポリプロピレンの機械的特性としてのたわみ特性を高めることができる。
【0072】
(9) アイソタクチックポリプロピレンはヘイズ値(2mm)が40〜100%であり、かつヘイズ値(1mm)が15〜60%である。このため、アイソタクチックポリプロピレンの厚みが変わってもヘイズ値を抑えることができ、透明性を高めることができる。
【0073】
(10) 眼用レンズ関連材料はコンタクトレンズ、眼内レンズ又は眼用レンズ包装体であり、その成形体はコンタクトレンズ若しくは眼内レンズを成形するための成形型又は眼用レンズ包装体の成形品であることにより、これらの材料を前記成形型によって好適に成形することができる。
【実施例】
【0074】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
〔製造例1、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の製造〕
(1)固体触媒成分(a)の製造
十分に窒素置換した内容積50リットル(L)の攪拌機付槽に、脱水及び脱酸素したn−ヘプタン20Lを導入し、次いで塩化マグネシウム(MgCl)を10モル、テトラブトキシチタン〔Ti(O−n−C〕を20モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、メチルヒドロポリシロキサン〔20センチストークス(cSt)のもの〕を12L導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
【0075】
続いて、前記攪拌機付槽を用いて該槽に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを5L導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で3モル導入した。次いでn−ヘプタン2.5Lにテトラクロロシラン(SiCl)5モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。
【0076】
次に、前記攪拌機付槽へn−ヘプタン2.5L導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して、70℃、30分間で導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。続いて、テトラクロロチタン(TiCl)を2L導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄して固体触媒成分(a)を製造するための固体成分(a1)を得た。この固体成分のチタン含量は2.0質量%であった。
【0077】
その後、窒素置換した前記攪拌機付槽にn−ヘプタンを8L、上記で合成した固体成分(a1)を400g導入し、成分(a2)としてSiClを0.6L導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、さらに成分(a3)としてビニルトリメチルシラン〔(CH=CH)Si(CH〕を0.54モル、成分(a4)としてt−ブチルメチルジメトキシシラン〔(t−C)(CH)Si(OCH〕0.27モル及び成分(a5)としてトリエチルアルミニウム〔Al(C〕1.5モルを順次導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで十分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする固体触媒成分(a)390gを得た。この固体触媒成分(a)のチタン含量は、1.8質量%であった。
(2)Aの製造
内容積230Lの流動床式反応器を連続反応装置として用いて重合を行った。反応器が、重合温度85℃、プロピレン分圧1.8MPa(絶対圧)、エチレンを、エチレン/プロピレンのモル比で0.004となるように、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.010となるように連続的に供給した。さらに、トリエチルアルミニウムを5.25g/hr、固体触媒成分(a)として上記記載の触媒をポリマー重合速度が20kg/hrになるように供給し、結晶性プロピレン重合体成分を製造した。反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように連続的にベッセルに抜き出した。水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)を得た。このプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)のエチレン含量は0.9モル%、MFRは10.5g/10minであった。
〔製造例2、プロピレン重合体(B)の製造〕
内容積230Lの流動床式反応器を連続反応装置として用いて重合を行った。反応器が、重合温度85℃、プロピレン分圧1.8MPa(絶対圧)、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.024となるように連続的に供給した。さらに、トリエチルアルミニウムを5.25g/hr、固体触媒成分(a)をポリマー重合速度が20kg/hrになるように供給し、結晶性プロピレン重合体成分を製造した。反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量が60kgとなるように連続的にベッセルに抜き出した。水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン重合体(B)を得た。このプロピレン重合体(B)のMFRは40g/10minであった。
〔製造例3、プロピレン重合体(C)の製造〕
(1)Ti系固体触媒(b)の製造
n−ヘキサン6L、ジエチルアルミニウムモノクロリド(DEAC)5.0モル、ジイソアミルエーテル12.0モルを25℃で5分間混合し、5分間同温度で反応させて反応液(I)(ジイソアミルエーテル/DEACのモル比2.4)を得た。窒素置換された反応器に四塩化チタン40モルを入れ35℃に加熱し、これに上記反応液(I)の全量を180分間で滴下した後、同温度に30分間保ち、75℃に昇温してさらに1時間反応させ、室温まで冷却し上澄液を除き、n−ヘキサン30Lを加えてデカンテーションで除く操作を4回繰り返して、固体生成物(II)1.9kgを得た。
【0078】
得られた固体生成物(II)の全量をn−ヘキサン30L中に懸濁させた状態で20℃にてジイソアミルエーテル1.6kgと四塩化チタン3.5kgを室温にて約5分間で加え、60℃で1時間反応させた。反応終了後、室温(20℃)まで冷却し、上澄液をデカンテーションによって除いた後、30Lのn−ヘキサンを加え15分間撹拌し、静置して上澄液を除く操作を5回繰り返した後、減圧下で乾燥させ、Ti系固体触媒(b)を得た。
(2)Cの製造
内容積400Lの攪拌機付きステンレス鋼製オートクレーブを室温下、プロピレンガスで十分に置換し、重合溶媒として脱水及び脱酸素したn−ヘプタン120Lを入れた。次に、温度65℃の条件下、ジエチルアルミニウムクロライド86g、水素18L(標準状態換算)及び前記Ti系固体触媒(b)を20g加えた。
【0079】
オートクレーブを内温70℃に昇温した後、プロピレンを16.1kg/時、水素を28.0L/時の速度で供給し、重合を開始した。280分後プロピレン、水素の導入を停止した。圧力は重合開始時0.034MPa、プロピレン供給中に経時的に増加し、供給停止時点で0.36MPaまで上昇した。その後、オートクレーブ内の圧力が0.2MPaに低下するまで残重合を行った後、未反応ガスをオートクレーブ内の圧力が0.05MPaになるまで放出した。この間、重合温度は70±1℃の範囲に維持した。
【0080】
得られたスラリーを次の攪拌機付き槽に移送し、ブタノールを5L加え、70℃で3時間処理し、さらに次の攪拌機付き槽に移送し、水酸化ナトリウム100gを溶解した純水100Lを加え、1時間処理した。そして、水層を静置後分離し、触媒残渣を除去した。スラリーは遠心分離機で処理し、ヘプタンを除去、80℃の乾燥機で3時間処理し、ヘプタンを完全に除去して59.4kgのプロピレン重合体(C)を得た。
〔製造例4、プロピレン重合体(D)の製造〕
製造例3のプロピレン重合体(C)の製造において、水素を17.0L/時の速度で供給した以外は製造例3と同じ条件で重合を行い、59.2kgのプロピレン重合体(D)を得た。
〔製造例5、プロピレン−エチレンランダム共重合体(E)の製造〕
(1)触媒の調製
1)メタロセン化合物
メタロセン化合物として、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムを用いた。
【0081】
2)化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けたガラス製3Lセパラブルフラスコに、純水1,750gを投入し、続いて98%硫酸1160gをゆっくり添加した。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト〔水澤化学工業(株)製、ベンクレイSL、平均粒子径:18.5μm〕を400g添加後、撹拌した。その後90℃に昇温し、9時間その温度を維持して反応させた。反応後40℃まで冷却し、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに純水を2L加えて再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、4.0超えるまで実施した。
【0082】
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、280gの化学処理体を得た。その後、1Lフラスコに全量投入し、200℃にて2hr減圧乾燥を行った。
3)固体触媒の調製
内容積13Lの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.223kgとn−ヘプタン1.45Lの混合物を導入し、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.04M)13.94Lを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0Lに調製した。
(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2.18g(3.00mmol)にヘプタンを0.86L加え、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を10.6mL加えて、室温にて1時間反応させて混合物を調製した。この混合物を前記珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後ヘプタンを追加して5.6Lに調整した。
【0083】
続いて、温度40℃にて、プロピレンを111.8g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合を行った。予備重合終了後、残モノマーをパージし、触媒をヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液を84.6mL添加した後に、40℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥した予備重合触媒0.68kgを得た。
(2)重合
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これに、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液を470mL(0.12mol)、水素を5.0NLを、さらにエチレンを0.50kg加え、30℃に維持した。その後、上記固体触媒1.59gをアルゴンで圧入し、35分かけて68℃まで昇温し、2時間重合を行った。
【0084】
次いで、エタノール100mLを圧入して反応を停止し、残ガスをパージし、生成物を乾燥して、プロピレン−エチレンランダム共重合体(E)のパウダー23.5kgを得た。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体(E)は、MFR=33.3g/10分、融点(Tm)=142℃、Mw/Mn(Q値)=3.0であった。
【0085】
以上の製造例1〜5で得られたプロピレン重合体及びプロピレン−エチレンランダム共重合体について、メルトフローレート(MFR)、曲げ弾性率、曲げ強さ、引張弾性率、引張降伏応力、シャルピー衝撃強度、ロックウェル硬さ、荷重たわみ温度及びヘイズ値を前述した方法で測定し、それらの結果を表1に示した。
【0086】
【表1】

(実施例1及び比較例1〜4)
前記プロピレン重合体又はプロピレン−エチレンランダム共重合体100質量部に対して表2に記載の添加剤を所定量配合し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度250℃でダイから押し出し、ペレット化した。得られたペレットを用い、射出成形法によりコンタクトレンズの成形型を調製した。すなわち、該成形型はオス型及びメス型よりなり、オス型とメス型との間にコンタクトレンズの形状をなすキャビティが形成されている。
【0087】
この成形型を使用し、コンタクトレンズ製造用の下記成形原料1をメス型のキャビティ内に注入し、オス型で蓋をした後、紫外線ランプを用い紫外線を30〜60分照射して重合することによりコンタクトレンズを成形した。そして、成形性、コンタクトレンズの透明性、重合性、脱離性及び規格性を下記に示す方法にて測定した。さらに、プロピレン−エチレン共重合体のエチレン含量、分子量分布、平均溶出温度及び溶出分散度を下記に示す方法にて測定した。それらの結果を表2にまとめて示した。
(成形原料1)
シリコーン含有マクロモノマー(ウレタン結合含有ポリジメチルシロキサンマクロモノマー)30質量部、シリコーン含有モノマー〔トリス(トリメチルシロキシ)シリルイソプロピルメタクリレート〕25質量部、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)15質量部、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリジノン(N−MMP)30質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)0.4質量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(HMPPO)0.4質量部及び染料として銅フタロシアニン含有ポリメタクリル酸エステル(BKH−1416)0.015質量部。
【0088】
酸化防止剤(1):テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
酸化防止剤(2):トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
中和剤(1):ステアリン酸カルシウム
中和剤(2):マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート
造核剤(1):リン酸2,2´−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム
(成形性)
成形型のレンズ形成光学面の干渉縞測定を行い、下記の基準にて良否を判断した。
【0089】
〇:干渉縞の真円度が0.02mm未満、△:干渉縞の真円度が0.03mm未満、×:干渉縞の真円度が0.03mm以上。
(透明性)
成形型内に成形原料(液体)を充填し、目視にて外観の良否を下記の基準にて判断した。
【0090】
〇:外部から成形原料の確認が容易にできる、×:外部から成形原料の確認が困難である。
(重合性)
成形型を用いて成形原料の重合を行い、表面特性、残留モノマー等の重合性を下記の基準にて評価した。
【0091】
〇:レンズ表面及び残留モノマーのいずれにも異常なし、×:表面特性又は残留モノマーに異常あり。
(脱離性)
重合後におけるレンズポリマーの成形型からの離型性を下記の基準にて評価した。
【0092】
〇:レンズ表面に異常なし、×:レンズ表面に剥離又は損傷あり。
(規格性)
成形されたレンズについて、レンズの規格(B.C.、Power、コロナ)評価を下記の基準にて実施した。
【0093】
〇:コロナ状態が良好、×:コロナ状態が不良。
【0094】
【表2】

表2に示した結果より、実施例1ではアイソタクチックポリプロピレンが本発明の要件を全て満たしていたため、成形原料の成形性、透明性、重合性、脱離性及び規格性のいずれについても良好であった。その一方、比較例1〜4ではポリプロピレンの分子量分布及び溶出分散度が高いため、成形されたコンタクトレンズの透明性が悪く、成形性や規格性も低下した。
(実施例2及び比較例5〜8)
前記実施例1と同様にして射出成形法によりコンタクトレンズの成形型を調製した。得られたコンタクトレンズの成形型を使用し、コンタクトレンズ製造用の下記成形原料2を用い、実施例1と同様にしてコンタクトレンズを成形した。そして、成形性、コンタクトレンズの透明性、重合性、脱離性及び規格性を前記の方法にて測定した。さらに、プロピレン−エチレンランダム共重合体のエチレン含量、分子量分布、平均溶出温度及び溶出分散度を前記方法で測定した。それらの結果を表2に併せて示した。
(成形原料2)
シリコーン含有マクロモノマー(ウレタン結合含有ポリジメチルシロキサンマクロモノマー)30質量部、シリコーン含有モノマー〔トリス(トリメチルシロキシ)シリルイソプロピルメタクリレート〕25質量部、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)15質量部、N−ビニル−2−ピロリドン(N−VP)30質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)0.4質量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(HMPPO)0.4質量部及び染料として銅フタロシアニン含有ポリメタクリル酸エステル0.015質量部。
【0095】
前記表2に示した結果より、実施例2ではアイソタクチックポリプロピレンが本発明の要件を全て満たしていたため、成形原料の成形性、透明性、重合性、脱離性及び規格性のいずれも良好であった。その一方、比較例5〜8ではポリプロピレンの分子量分布及び溶出分散度が高いため、成形されたコンタクトレンズの透明性が悪く、成形性や規格性も低下した。
(実施例3及び比較例9〜12)
前記プロピレン重合体又はプロピレン−エチレン共重合体100質量部に対して表3に記載の添加剤を所定量配合し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度250℃でダイから押し出し、ペレット化した。得られたペレットを用い、射出成形法によりコンタクトレンズの包装体(レンズケース)を調製した。そして、成形性、コンタクトレンズの包装体の透明性、高圧蒸気滅菌後の性状及び高圧蒸気滅菌後の浮遊物を下記に示す方法にて測定した。さらに、プロピレン−エチレン共重合体のエチレン含量、分子量分布、平均溶出温度及び溶出分散度を前記方法で測定した。それらの結果を表3にまとめて示した。
(成形性)
コンタクトレンズの包装体の寸法測定を行い、下記の基準にて良否を判断した。
【0096】
〇:寸法公差が0.05mm未満、△:寸法公差が0.10mm未満、×:寸法公差が0.1mm以上。
(透明性)
コンタクトレンズの包装体内にコンタクトレンズを収納し、目視にて外観の良否を下記の基準で判断した。
【0097】
〇:外部からコンタクトレンズの確認が容易にできる、×:外部からコンタクトレンズの確認が困難である。
(高圧蒸気滅菌後の性状)
コンタクトレンズの包装体内にコンタクトレンズを収納し、高圧蒸気滅菌せしめた後、目視にて外観の良否を下記の基準で評価した。
【0098】
〇:外観等の変化なし、×:外観等の変化あり。
(高圧蒸気滅菌後の浮遊物)
コンタクトレンズの包装体内にコンタクトレンズを収納し、高圧蒸気滅菌せしめた後、目視にて外観の良否を下記の基準で評価した。
【0099】
〇:浮遊物なし、×:浮遊物あり。
【0100】
【表3】

表3に示した結果より、実施例3ではアイソタクチックポリプロピレンが本発明の要件を全て満足していたため、成形性、コンタクトレンズの包装体の透明性、高圧蒸気滅菌後の性状及び高圧蒸気滅菌後の浮遊物のいずれも良好であった。その一方、比較例9〜12ではポリプロピレンの分子量分布及び溶出分散度が高いため、成形されたコンタクトレンズの包装体の透明性が悪く、高圧蒸気滅菌後の外観が不良であり、成形性も低下した。
【0101】
なお、本実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ アイソタクチックポリプロピレンの機械的特性として、引張強さ、伸び、圧縮強さ等の範囲を、目的とする眼用レンズ関連材料の成形体の種類に応じて特定することもできる。
【0102】
・ 眼用レンズ関連材料の成形体を形成するアイソタクチックポリプロピレンについて、分子量(重量平均分子量又は数平均分子量)、融点等の範囲を眼用レンズ関連材料の成形体の種類に応じて設定することもできる。
【0103】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ) 前記酸化防止剤はフェノール系酸化防止剤であり、その添加量はプロピレンが主体の重合体に対して100〜500ppmであることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形型。このように構成した場合、請求項1から請求項11のいずれかに係る発明の効果に加えて、アイソタクチックポリプロピレンの酸化防止機能を効果的に発揮することができる。
【0104】
(ロ) 前記成形体はコンタクトレンズ又は眼内レンズを成形するための成形型であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の。このように構成した場合、請求項1から請求項11のいずれかに係る発明の効果に加えて、コンタクトレンズ又は眼内レンズをその機能を損なうことなく、成形することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンが主体の重合原料をメタロセン触媒を用いて1段階重合法により重合して得られ、酸化防止剤よりなる添加剤を含有し、下記に示す(a)〜(c)の要件を備えているアイソタクチックポリプロピレンにより形成されていることを特徴とする眼用レンズ関連材料の成形体。
(a)プロピレンから形成される構造単位を主体とし、エチレンから形成される構造単位が10モル%以下であること。
(b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0であること。
(c)平均溶出温度(T50)が75〜120℃であり、溶出分散度(σ)が9以下であること。
【請求項2】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体又はエチレン含量が10モル%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項3】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜40g/10分であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項4】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率が800〜1500MPaであり、かつJIS K7171に準拠して測定される曲げ強さが30〜50MPaであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項5】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7162に準拠して測定される引張弾性率が800〜1500MPaであり、かつJIS K7162に準拠して測定される引張降伏応力が20〜40MPaであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項6】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7111に準拠して23℃で測定されるシャルピー衝撃強度が1.0〜20KJ/mであり、かつJIS K7111に準拠して0℃で測定されるシャルピー衝撃強度が0.5〜10KJ/mであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項7】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7202に準拠して測定されるロックウェル硬さ(R−スケール)が80〜120であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項8】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7191に準拠して測定される荷重たわみ温度(0.45MPa)が80〜120℃であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項9】
前記アイソタクチックポリプロピレンは、JIS K7136に準拠して測定されるヘイズ値(2mm)が40〜100%であり、かつJIS K7136に準拠して測定されるヘイズ値(1mm)が15〜60%であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項10】
前記眼用レンズ関連材料は、コンタクトレンズ、眼内レンズ又は眼用レンズ包装体であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。
【請求項11】
前記成形体は、コンタクトレンズ若しくは眼内レンズを成形するための成形型又は眼用レンズ包装体の成形品であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の眼用レンズ関連材料の成形体。

【公開番号】特開2011−53521(P2011−53521A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203504(P2009−203504)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】