着失火検出装置および着失火検出方法
【課題】 炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる着失火検出装置および着失火検出方法を提供する。
【解決手段】 着失火検出装置は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、酸素センサへの第1の印加電圧での酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定手段と、を備える。
【解決手段】 着失火検出装置は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、酸素センサへの第1の印加電圧での酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着失火検出装置および着失火検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素および酸素を燃料として電気エネルギを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れており、また高いエネルギ効率を実現できることから、今後のエネルギ供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
改質器と燃料電池とを備える燃料電池システムにおいて、空燃比センサの検出結果に基づいて空気導入バルブの開度を制御することによって、酸化剤供給量を排気管内に未反応燃料が存在しなくなるよう制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−331990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、起動時の着火状態の判断を酸素センサを用いて行うと、未燃炭化水素がセンサ上で分解反応を起こす。この場合、酸素濃度を正確に検出できないことがある。その結果、着火判断を誤るおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる着失火検出装置および着失火検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る着火検出装置は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、酸素センサへの第1の印加電圧での酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定手段と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る着失火検出装置においては、複数の印加電圧の出力値の差分または相対比を用いることから、炭化水素の解離を利用して炭化水素燃料の着失火を検出することができるとともに、経時変化の影響を回避することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【0008】
判定手段は、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定してもよい。判定手段は、第1出力値および第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定してもよい。
【0009】
第1印加電圧および第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であってもよい。第1印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であってもよい。
【0010】
第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であってもよい。第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であってもよい。
【0011】
判定手段は、酸素センサ出力が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が未着火であると判定してもよい。
【0012】
本発明に係る他の着失火検出装置は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、酸素センサの出力が所定値以下である場合に炭化水素燃料が未着火であると判定する判定手段と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る他の着失火検出装置においては、酸素センサにおける炭化水素の解離を利用することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る着失火検出方法は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサへの第1の印加電圧での酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定ステップ、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る着失火検出方法においては、複数の印加電圧の出力値の差分または相対比を用いることから、炭化水素の解離を利用して炭化水素燃料の着失火を検出することができるとともに、経時変化の影響を回避することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【0014】
判定ステップは、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定するステップであってもよい。判定ステップは、第1出力値および第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定するステップであってもよい。
【0015】
第1印加電圧および第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であってもよい。第1印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であってもよい。
【0016】
第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であってもよい。第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であってもよい。
【0017】
判定ステップにおいて、酸素センサ出力が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が未着火であると判定してもよい。
【0018】
本発明に係る他の着失火検出方法は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサの出力が所定値以下である場合に炭化水素燃料が未着火であると判定する判定ステップ、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る他の着失火検出方法においては、酸素センサにおける炭化水素の解離を利用することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる着失火検出装置および着失火検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係る着失火検出装置100の全体構成を示す模式図である。
【図2】炭化水素燃料が着火した場合および未着火である場合の酸素センサ10の検出酸素濃度を説明するための図である。
【図3】炭化水素燃料の着火および未着火の場合に酸素センサの近傍に存在する物質、および酸素センサにおいて生じる反応式を説明するための図である。
【図4】H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位について説明するための図である。
【図5】着火時におけるH2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位について説明するための図である。
【図6】未着火時におけるH2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位について説明するための図である。
【図7】着失火判定を説明するための図である。
【図8】着失火判定のフローチャートの一例を示す図である。
【図9】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図10】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図11】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図12】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図13】実施例2に係る燃料電池システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1に係る着失火検出装置100の全体構成を示す模式図である。後述する酸素センサ10について、模式的な断面が図示されている。図1に示すように、着失火検出装置100は、酸素センサ10、電流計20、センサ電源30、ヒータ電源40、および制御部50を備える。着失火検出装置100は、炭化水素燃料の着失火を検出する装置である。したがって、酸素センサ10は、炭化水素燃料の燃焼室内またはその排気管等に配置される。
【0023】
酸素センサ10は、限界電流式酸素センサであって、電解質11の一面にアノード12が設けられ、電解質11の他面にカソード13が設けられ、細孔が形成された図示しない多孔質基板がカソード13を覆うように配置された構造を有する。電解質11には、ヒータ15が配置されている。
【0024】
電解質11は、酸素イオン伝導性の電解質からなり、例えばイットリア添加の安定化ジルコニアからなる。アノード12およびカソード13は、触媒活性を有する材料からなり、例えば白金からなる。アノード12およびカソード13は、配線を介して外部回路を形成する。この外部回路には、電流計20およびセンサ電源30が設けられている。図示しない多孔質基板は、例えば多孔質状のアルミナからなる。ヒータ15は、例えば白金薄膜等からなる。ヒータ15には、ヒータ電源40が接続されている。
【0025】
制御部50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成される。制御部50は、電流計20の検出結果等に基づいて、センサ電源30およびヒータ電源40を制御する。また、制御部50は、電流計20の検出結果等に基づいて、炭化水素燃料の着失火判定を行う。
【0026】
続いて、酸素センサ10による酸素濃度検出の概要について説明する。制御部50は、ヒータ電源40を制御して、ヒータ15に電力を供給する。それにより、電解質11が加熱される。電解質11の温度が所定値に到達した後、制御部50は、アノード12に印加される電圧がカソード13に印加される電圧に対して相対的にプラスになるようにセンサ電源30を制御する。アノード12およびカソード13に電圧が印加されると、下記式(1)に従って、カソード13において酸素が酸素イオンとなって電解質11を伝導する。アノード12においては、下記式(2)に従って、酸素イオンが酸素分子となる。
O2 + 4e− → 2O2− (1)
2O2− → O2 + 4e− (2)
【0027】
カソード13への酸素輸送量は、図示しない多孔質基板の細孔によって支配されるため、式(1)および式(2)の反応によって生じる電流(限界電流)は、図示しない多孔質基板の細孔における酸素ガス拡散量によって決定される。この酸素ガス拡散量は、図示しない多孔質基板の外部の酸素濃度によって決まる。
【0028】
制御部50は、電流計20の検出値に応じて酸素センサ10の出力電流を取得する。酸素センサ10の出力電流は雰囲気中酸素濃度に比例する。制御部50は、この比例関係に基づいて、酸素センサ10がさらされる雰囲気の酸素濃度を検出する。
【0029】
ただし、炭化水素が未着火である場合には、酸素センサ10は、酸素濃度を正確に検出できなくなることがある。また、水蒸気(H2O)および二酸化炭素(CO2)の酸化還元電位と酸素センサ10への印加電圧との関係に応じて、酸素センサ10が検出する酸素濃度が変化する。以下、図2および図3を参照しつつ、炭化水素が着火した場合および未着火である場合の酸素センサ10の検出酸素濃度について説明する。なお、以下の説明において、酸素センサ10への印加電圧とは、カソード13とアノード12との間の電位差を所定値に保つよう外部電源30により電圧を印加する場合の、この所定値のことである。
【0030】
図2は、炭化水素燃料が着火した場合および未着火である場合の酸素センサ10の検出酸素濃度を説明するための図である。図3は、炭化水素燃料の着火および未着火の場合に酸素センサ10の近傍に存在する物質、および酸素センサ10において生じる反応式を説明するための図である。
【0031】
図2において、横軸は酸素センサ10への印加電圧を示し、縦軸は酸素センサ10の検出酸素濃度を示す。なお、上述したように、酸素センサ10の検出酸素濃度は、酸素センサ10の出力電流に比例する。図3(a)に示すように、燃焼室に、炭化水素燃料として2.5NL/minのメタン(CH4)を供給し、酸化剤として40NL/minのエア(主としてO2+N2)を供給する場合について考える。
【0032】
炭化水素燃料が着火して完全燃焼すれば、図3(a)の比率の場合、雰囲気中の酸素濃度は10.8%程度となる。なお、実際には真の完全燃焼は期し難いため、酸素センサ10が検出する酸素濃度は10.8%からずれることもある。しかしながら、この酸素濃度のずれは無視できる程度であることから、本明細書においては考慮しない。
【0033】
酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させるに伴って、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなり、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第1範囲と称する。この電圧範囲は、酸素センサ10の限界電流域において現れる。この第1範囲においては、酸素センサ10は、雰囲気中の酸素濃度を正確に検出することができる。なお、一例として、第1範囲は、700℃において0.4V付近である。
【0034】
酸素センサ10への印加電圧をH2O/H2の酸化還元電位以上に増加させると、カソード13において、炭化水素燃料の燃焼によって生じたH2OのH2への還元反応が生じる。この還元反応によって生じた酸素イオンが電解質11を伝導するようになるため、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなる。
【0035】
さらに酸素センサ10への印加電圧を増加させると、カソード13へのH2Oの輸送量が図示しない多孔質基板の細孔によって支配される。それにより、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第2範囲と称する。この第2範囲は、酸素センサ10への印加電圧がH2O/H2の酸化還元電位以上かつCO2/COの酸化還元電位未満である場合に現れる。なお、第2範囲は、一例として、700℃において0.8V付近である。また、カソード13近傍のH2Oが全て還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約12.2%になる。
【0036】
酸素センサ10への印加電圧をCO2/COの酸化還元電位に増加させると、カソード13において、炭化水素燃料の燃焼によって生じたCO2のCOへの還元反応が生じる。この還元反応によって生じた酸素イオンが電解質11を伝導するようになるため、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなる。
【0037】
さらに酸素センサ10への印加電圧を増加させると、カソード13へのCO2の輸送量が図示しない多孔質基板の細孔によって支配される。それにより、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第3範囲と称する。この第3範囲は、酸素センサ10への印加電圧がCO2/COの酸化還元電位以上かつCO2/Cの酸化還元電位未満である場合に現れる。なお、一例として、第3範囲は、700℃において1.1V付近である。また、カソード13近傍のCO2が全てCOに還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約15.4%になる。
【0038】
酸素センサ10への印加電圧をCO2/Cの酸化還元電位に増加させると、カソード13において、炭化水素燃料の燃焼によって生じたCO2のCへの還元反応が生じる。この還元反応によって生じた酸素イオンが電解質11を伝導するようになるため、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなる。
【0039】
さらに酸素センサ10への印加電圧を増加させると、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第4範囲と称する。この第4範囲は、酸素センサ10への印加電圧がCO2/Cの酸化還元電位以上である場合に現れる。なお、この第4範囲においては、C(カーボン)が徐々に析出してカソード13を構成する白金と同様に電極の働きをする。この場合、みかけの電極面積が徐々に増えるため、第4範囲における酸素センサ10の検出酸素濃度はフラットにならずに徐々に増加する。一例として、第4範囲は、700℃において1.1V付近である。また、カソード13近傍のCO2が全てCに還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約18.6%になる。
【0040】
図3(b)〜図3(e)で説明されるように、酸素センサ10への印加電圧が変化すると、炭化水素燃料の燃焼によって生じた成分が酸素センサ10の検出酸素濃度に影響する。したがって、酸素センサ10への印加電圧に応じて、酸素センサ10が検出する酸素濃度が変動する。
【0041】
次に、炭化水素燃料が未着火である場合について説明する。炭化水素燃料が未着火であればエア中の酸素が消費されないため、雰囲気中の酸素濃度は約18.8%になるはずである。したがって、酸素センサ10による検出酸素濃度は着火時に比較して高くなるはずである。しかしながら、カソード13が触媒として機能して、炭化水素燃料がCとH2とに解離する。カソード13で生じた酸素イオンとCおよびH2とが結合するため、電解質11を伝導する酸素イオン量が低下する。その結果、酸素センサ10の検出酸素濃度と実際の雰囲気中酸素濃度との間に差異が生じる。
【0042】
酸素センサ10への印加電圧がH2O/H2の酸化還元電位未満であれば、このCおよびH2は、図3(f)に示すように、カソード13において酸素イオンと結合して酸化される。したがって、電解質11を伝導すべき酸素イオンが消費されてしまうことから、酸素センサ10の検出酸素濃度が着火時に比較して低下する。以上のことから、炭化水素燃料が未着火である場合には、炭化水素燃料が着火した場合に比較して、酸素センサ10が検出する酸素濃度が低くなる。例えば、カソード13近傍のCおよびH2が全て酸素イオンと反応すると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約5.2%になる。なお、未着火の場合においても、第1範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第1範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0043】
酸素センサ10への印加電圧がH2O/H2の酸化還元電位以上かつCO2/COの酸化還元電位未満になると、図3(g)に示すようにカソード13においてH2Oの還元反応が生じる。この場合、電解質11をより多くの酸素イオンが伝導するようになる。それにより、酸素センサ10が検出する酸素濃度が高くなる。例えば、カソード13近傍のH2Oが全て還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約11.7%になる。なお、未着火の場合においても、第2範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第2範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0044】
酸素センサ10への印加電圧がCO2/COの酸化還元電位以上になると、図3(h)に示すようにカソード13においてCO2の還元反応が生じる。この場合、電解質11をより多くの酸素イオンが伝導するようになる。それにより、酸素センサ10が検出する酸素濃度が高くなる。例えば、カソード13近傍のCO2が全て還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約18.8%になる。なお、未着火の場合においても、第3範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第3範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0045】
酸素センサ10への印加電圧がCO2/Cの酸化還元電位以上になると、図3(i)に示すようにカソード13においてCO2のCへの還元反応が生じる。それにより、酸素センサ10が検出する酸素濃度が高くなる。なお、未着火の場合においても、第4範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第4範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0046】
以上のことから、炭化水素燃料未着火の第1範囲においては、炭化水素の解離によって生じたCおよびH2の酸化に伴って電解質11を伝導する酸素イオン量が減少してしまうため、酸素センサ10の検出酸素濃度は、着火時に比較して低くなる。一方で、炭化水素燃料未着火の第3範囲および第4範囲においては炭化水素の解離によって生じたCおよびH2が酸化しないため、酸素センサ10の検出酸素濃度は、着火時に比較して高くなる。この現象を利用すれば、酸素センサ10を用いて炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0047】
以下、図4〜図6を参照しつつ、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位について説明する。図4〜図6において、横軸は温度(℃)を示し、左側の縦軸は酸化還元電位を示し、右側の縦軸は、左側から右側にかけて−logPO2、log(PCO2/PCO)、およびlog(PH2O/PH2)を示す。なお、PO2は酸素分圧、PCOは一酸化炭素分圧、PCO2は二酸化炭素分圧、PH2Oは水蒸気分圧、PH2は水素分圧を示す。また、図4〜図6は、電気化学便覧(丸善)電気化学会編P83から抜粋したものである。
【0048】
図4においては、PH2O:PH2が1:1である場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、PCO2:PCOが1:1である場合のCO2/COの酸化還元電位直線、および、PCO2が1atmである場合のCO2/Cの酸化還元電位直線が示されている。H2O/H2の酸化還元電位直線は、H2O/H2の分圧比が1より大きいか小さいかを表す境界を示している。また、CO2/COの酸化還元電位直線は、CO2/COの分圧比が1より大きいか小さいかを表す境界を示している。
【0049】
H2O/H2の酸化還元電位直線はPH2O:PH2に応じて変化し、CO2/COの酸化還元電位直線はPCO2:PCOに応じて変化し、CO2/Cの酸化還元電位直線はPCO2/a(C)に応じて変化する。ここで、a(C)は、固体炭素の活量(=1)である。炭化水素燃料が着火した場合と未着火である場合とで、H2O/H2の酸化還元電位直線、CO2/COの酸化還元電位直線、およびCO2/Cの酸化還元電位直線はそれぞれ変化する。
【0050】
図5は、炭化水素燃料が着火した場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、CO2/COの酸化還元電位直線、およびCO2/Cの酸化還元電位を示す図である。炭化水素燃料が燃焼する場合には、雰囲気中にH2およびCOがほとんど存在しない。したがって、PH2O/PH2およびPCO2/PCOが大きくなる。図5においては、PH2O:PH2が4%:4ppm〜10%:0.1ppmである場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、および、PCO2:PCOが4%:4000ppm〜4%:4ppmである場合のCO2/COの酸化還元電位直線が図示されている。また、PCO2:a(C)=1atm(100%):1〜PCO2:a(C)=0.04atm(4%):1である場合のCO2/Cの酸化還元電位が図示されている。
【0051】
図5の場合においては、700℃において、H2O/H2の酸化還元電位は0.45V〜0.7V程度であり、CO2/COの酸化還元電位は0.6V〜1V程度である。なお、図示は省略してあるが、700℃における酸素の酸化還元電位は、log(PO2)=0〜−1であると想定した場合に、0V〜0.1V程度である。また、PO2が0.1%程度であれば、酸素の酸化還元電位は700℃において0.3V程度である。さらに、700℃において、CO2分圧が1atm(100%)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.0V程度であり、CO2分圧が0.04atm(4%)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.1V程度である。
【0052】
図6は、炭化水素燃料が未着火である場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、CO2/COの酸化還元電位直線、およびCO2/Cの酸化還元電位を示す図である。炭化水素燃料が未着火である場合には、炭化水素の解離によって、雰囲気中にH2およびCOが多く存在するようになる。したがって、PH2O/PH2およびPCO2/PCOが図5の場合に比較して小さくなる。図6においては、PH2O:PH2が3%:30%〜3%:300ppmである場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、および、PCO2:PCOが0.1%:10%〜0.1%:100ppmである場合のCO2/COの酸化還元電位直線が図示されている。また、PCO2:a(C)=1atm(100%):1〜PCO2:a(C)=0.0004atm(400ppm):1である場合のCO2/Cの酸化還元電位が図示されている。
【0053】
図6の場合においては、700℃において、H2O/H2の酸化還元電位は0.8V〜1.2V程度であり、CO2/COの酸化還元電位は0.9V〜1.3V程度である。なお、図示は省略してあるが、700℃における酸素の酸化還元電位は、log(PO2)=0〜−1であると想定した場合に、0V〜0.1V程度である。さらに、700℃において、CO2分圧が1atm(100%)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.0V程度であり、CO2分圧が0.0004atm(400ppm)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.2V程度である。
【0054】
図4〜図6で説明したように、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位は、異なる値を持っている。図2に示した第2範囲、第3範囲、および第4範囲は、この酸化還元電位の差に起因して形成されるのである。
【0055】
ここで、燃焼室への炭化水素燃料供給量、エア供給量等をパラメータとして炭化水素燃料の着火時および未着火時の燃焼オフガス中の成分量を予測することができる。この予測に基づいて、図4〜図6で説明した手順で酸化還元電位を推定することができる。
【0056】
図2の曲線は、上述したように酸素の酸化還元電位、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位をパラメータとして描かれる曲線である。したがって、図2で説明した第1範囲〜第4範囲を、図4〜図6で推定される酸化還元電位に基づいて決定してもよい。また、酸素センサ10への印加電圧を増加させるにあたって、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きがほぼゼロ(所定値以下)になる1回目の電圧範囲を第1範囲、2回目の電圧範囲を第2範囲、3回目の電圧範囲を第3範囲、4回目の電圧範囲を第4範囲と決定してもよい。
【0057】
続いて、着失火検出装置100による着失火判定について説明する。図2の着火時の酸素センサ10による検出酸素濃度の曲線は、あらかじめ炭化水素燃料を燃焼させることによって取得することができる。この曲線を基準曲線として用いることによって、炭化水素燃料が着火しているか未着火であるかを判定することができる。
【0058】
まず、炭化水素燃料未着火の第1範囲においては、炭化水素の解離によって生じたCおよびH2の酸化に伴って電解質11を伝導する酸素イオン量が減少してしまうため、酸素センサ10による検出酸素濃度が着火時に比較して低くなる。したがって、酸素センサ10による検出酸素濃度が判定値(着火時の第1範囲における検出酸素濃度未満の値)以下である場合に炭化水素燃料が未着火であると判定することができる。例えば、図7に示す判定値をあらかじめ設定しておくことによって、酸素センサ10による検出酸素濃度が判定値以下である場合に、炭化水素燃料が未着火であると判定することができる。この判定値は、例えば、酸素センサ10への印加電圧が第1範囲内である場合に設定することができる。
【0059】
この場合のフローチャートの一例を図8に示す。まず、制御部50は、センサ電源30を制御して、酸素センサ10への印加電圧を第1範囲まで増加させる(ステップS1)。次に、制御部50は、酸素センサ10による検出酸素濃度が判定値以下であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において検出酸素濃度が判定値以下であると判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS3)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS2において検出酸素濃度が判定値以下であると判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS4)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0060】
図8のフローチャートによれば、酸素センサ10の検出酸素濃度の高低に応じて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。なお、ステップS1において、酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させて、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる1回目の電圧範囲を第1範囲としてもよく、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満の電圧範囲において印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる電圧範囲を第1範囲としてもよい。
【0061】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第3範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3と第1範囲の検出酸素濃度C1との差を差分D1とする。炭化水素燃料未着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3’と第1範囲の検出酸素濃度C1’との差を差分D2とする。この場合、差分D1<差分D2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第3範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0062】
この場合のフローチャートの一例を図9に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第3範囲まで増加させる(ステップS11)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第3範囲における検出酸素濃度と第1範囲における検出酸素濃度との差分Xが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた差分D1以上の値を用いることができる。
【0063】
ステップS12において差分Xが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS13)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS12において差分Xが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS14)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0064】
図9のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。
【0065】
なお、図9と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。また、ステップS11において、酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させて、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる3回目の電圧範囲を第3範囲としてもよく、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位以上の電圧範囲において印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる電圧範囲を第3範囲としてもよい。
【0066】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第3範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3の第1範囲の検出酸素濃度C1に対する相対比を相対比R1(=C3/C1)とする。炭化水素燃料未着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3’の第1範囲の検出酸素濃度C1’に対する相対比を相対比R2(=C3’/C1’)とする。この場合、相対比R1<相対比R2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第3範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0067】
この場合のフローチャートの一例を図10に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第3範囲まで増加させる(ステップS21)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第3範囲における検出酸素濃度の第1範囲における検出酸素濃度に対する相対比Yが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた相対比R1以上の値を用いることができる。
【0068】
ステップS22において相対比Yが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS23)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS22において相対比Yが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS24)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0069】
図10のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。なお、図10と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。
【0070】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第4範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4と第1範囲の検出酸素濃度C1との差を差分d1とする。炭化水素燃料未着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4’と第1範囲の検出酸素濃度C1’との差を差分d2とする。この場合、差分d1<差分d2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第4範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0071】
この場合のフローチャートの一例を図11に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第4範囲まで増加させる(ステップS31)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第4範囲における検出酸素濃度と第1範囲における検出酸素濃度との差分Xが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS42)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた差分d1以上の値を用いることができる。
【0072】
ステップS32において差分Xが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS33)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS32において差分Xが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS34)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0073】
図11のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。
【0074】
なお、図11と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。また、ステップS31において、酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させて、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる4回目の電圧範囲を第4範囲としてもよく、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位以上の電圧範囲において印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる電圧範囲を第4範囲としてもよい。
【0075】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第4範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4の第1範囲の検出酸素濃度C1に対する相対比を相対比r1(=C4/C1)とする。炭化水素燃料未着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4’の第1範囲の検出酸素濃度C1’に対する相対比を相対比r2(=C4’/C1’)とする。この場合、相対比r1<相対比r2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第4範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0076】
この場合のフローチャートの一例を図12に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第4範囲まで増加させる(ステップS41)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第4範囲における検出酸素濃度の第1範囲における検出酸素濃度に対する相対比Yが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS42)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた相対比r1以上の値を用いることができる。
【0077】
ステップS42において相対比Yが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS43)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS42において相対比Yが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS44)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0078】
図12のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。なお、図12と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。
【0079】
以上のように、本実施例においては、酸素センサ10の検出酸素濃度に応じて炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この判定は、酸素センサ10の触媒機能によって炭化水素燃料が解離する現象に着目することによって初めて可能になったものである。さらに、酸素センサ10への印加電圧とH2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位との関係に起因して酸素センサ10の検出酸素濃度が複数段階に増加する現象に着目することによって、より正確に炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができるのである。
【0080】
なお、図4〜図6で説明したように、H2O/H2の酸化還元電位はPH2O:PH2に支配され、CO2/COの酸化還元電位はPCO2:PCOに支配される。そのため、PH2O:PH2およびPCO2:PCOの比率によっては、H2O/H2の酸化還元電位がCO2/COの酸化還元電位よりも高くなることもある。この場合には、第2範囲がCO2/COの酸化還元電位以上かつH2O/H2の酸化還元電位未満の電圧範囲において現れ、第3範囲がH2O/H2の酸化還元電位以上の電圧範囲において現れることになる。
【0081】
また、本実施例においては炭化水素燃料としてメタンを用いたが、それに限られない。メタン以外の炭化水素燃料、例えば都市ガス、プロパンガス、灯油、ガソリン、軽油等を用いても、上記手順に従って、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【実施例2】
【0082】
続いて、着失火検出装置を燃料電池システムに適用した例について説明する。図13は、実施例2係る燃料電池システム200の全体構成を示す模式図である。図13に示すように、燃料電池システム200は、制御部110、燃料ポンプ121、改質水供給部130、エアポンプ140a,140b、改質器150、燃料電池160および酸素センサ170を備える。本実施例においては、燃料電池160として、例えば、固体酸化物型燃料電池(SOFC)を用いることができる。また、酸素センサ170は、実施例1に係る酸素センサ10と同様の構造を有する。
【0083】
改質燃料供給部120は、燃料ポンプ121および燃料流量計122を備える。改質水供給部130は、熱交換器131、凝縮水タンク132および改質水ポンプ133を備える。改質器150は、改質部151、燃焼室152および着火手段153を備える。燃料電池160は、カソード161およびアノード162を備え、カソード161とアノード162との間に酸素イオン伝導性電解質を備える。
【0084】
制御部110は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成される。制御部110は、燃料流量計122および酸素センサ170から与えられる検出結果に基づいて、燃料電池システム200の各部を制御する。
【0085】
燃料ポンプ121は、制御部110の指示に従って、改質燃料タンクに貯蔵されている改質燃料または、ガス配管から供給される都市ガス、灯油等を改質部151に供給するポンプである。熱交換器131は、水道水と燃焼室152からの排気ガスとの熱交換を行う。凝縮水タンク132は、燃焼室152からの排気ガスの凝縮水を貯蔵するタンクである。改質水ポンプ133は、制御部110の指示に従って、凝縮水タンク132に貯蔵されている凝縮水を改質水として改質部151に供給するポンプである。
【0086】
改質部151においては、燃料ポンプ121からの改質燃料とエアポンプ140aからのエアとから、部分酸化反応により、水素を含有する改質ガスが生成される。改質器150の暖機後は、燃料ポンプ121からの改質燃料と改質水ポンプ133からの水蒸気とから、水蒸気改質反応により、改質ガスが生成される。
【0087】
エアポンプ140bは、制御部110の指示に従って、必要量のエアをカソード161に供給する。カソード161においては、エア中の酸素が酸素イオンに変換される。カソード161において酸素イオンに変換されなかった酸素は、カソードオフガスとして燃焼室152に供給される。
【0088】
改質部151において生成された改質ガスは、アノード162に供給される。アノード162においては、カソード161において変換された酸素イオンとアノード162に供給された水素とから水が発生するとともに電力が発生する。発生した電力は、図示しないモータ等の負荷に用いられる。発生した水は、燃料電池160において発生する熱によって水蒸気となる。アノード162において発生した水蒸気、酸素イオンと反応しなかった水素、ならびに、改質部151において反応しなかった水素を含む改質ガス、ならびに、改質部151において反応しなかった炭化水素、CO、CO2および水蒸気は、アノードオフガスとして燃焼室152に供給される。
【0089】
燃焼室152においては、アノードオフガスおよびカソードオフガスが供給される。着火手段153は、制御部110の指示に従って、アノードオフガスに含まれる可燃成分に着火させる。この場合、カソードオフガスが酸素源として用いられる。燃焼室152における燃焼反応による燃焼熱は、改質部151における水蒸気改質反応に利用される。燃焼反応によって発生する排気ガスは、外部に排出される。酸素センサ170は、燃焼室152内または燃焼室152より下流側の酸素濃度を検出する。
【0090】
本実施例においても、制御部110は、酸素センサ170の検出酸素濃度に基づいて、燃焼室152における炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0091】
ここで、燃料電池160においては、アノードで水が生成される。したがって、アノードオフガスに水分が含まれることになる。燃焼室152には燃料としてアノードオフガスが供給されることから、燃焼室152からの排気ガスにも水蒸気が含まれる。この場合、温度センサを用いて着火および未着火を判定しようとすると、温度センサの検出値に誤差が生じるおそれがある。例えば、温度センサ付近の水蒸気量が多くなるほど、燃焼比温度上昇が遅くなる。したがって、着火検出の応答性が低下することになる。
【0092】
しかしながら、本実施例のように酸素センサ170の検出酸素濃度に基づいて燃料の着火および失火を判定することによって、水蒸気濃度の影響を回避することができる。したがって、水蒸気が流入する燃焼装置に対して、本発明の効果が特に大きくなる。なお、本実施例においては一例として酸素イオン伝導性電解質を備える燃料電池を用いたが、プロトン伝導性電解質を備える燃料電池を用いてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 酸素センサ
11 電解質
12 アノード
13カソード
14 カバー
20 電流計
30 センサ電源
50 制御部
100 着失火検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、着失火検出装置および着失火検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素および酸素を燃料として電気エネルギを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れており、また高いエネルギ効率を実現できることから、今後のエネルギ供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
改質器と燃料電池とを備える燃料電池システムにおいて、空燃比センサの検出結果に基づいて空気導入バルブの開度を制御することによって、酸化剤供給量を排気管内に未反応燃料が存在しなくなるよう制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−331990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、起動時の着火状態の判断を酸素センサを用いて行うと、未燃炭化水素がセンサ上で分解反応を起こす。この場合、酸素濃度を正確に検出できないことがある。その結果、着火判断を誤るおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる着失火検出装置および着失火検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る着火検出装置は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、酸素センサへの第1の印加電圧での酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定手段と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る着失火検出装置においては、複数の印加電圧の出力値の差分または相対比を用いることから、炭化水素の解離を利用して炭化水素燃料の着失火を検出することができるとともに、経時変化の影響を回避することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【0008】
判定手段は、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定してもよい。判定手段は、第1出力値および第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定してもよい。
【0009】
第1印加電圧および第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であってもよい。第1印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であってもよい。
【0010】
第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であってもよい。第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であってもよい。
【0011】
判定手段は、酸素センサ出力が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が未着火であると判定してもよい。
【0012】
本発明に係る他の着失火検出装置は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、酸素センサの出力が所定値以下である場合に炭化水素燃料が未着火であると判定する判定手段と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る他の着失火検出装置においては、酸素センサにおける炭化水素の解離を利用することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る着失火検出方法は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサへの第1の印加電圧での酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定ステップ、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る着失火検出方法においては、複数の印加電圧の出力値の差分または相対比を用いることから、炭化水素の解離を利用して炭化水素燃料の着失火を検出することができるとともに、経時変化の影響を回避することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【0014】
判定ステップは、第1出力値と第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定するステップであってもよい。判定ステップは、第1出力値および第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が着火したと判定するステップであってもよい。
【0015】
第1印加電圧および第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であってもよい。第1印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、第2印加電圧は、印加電圧に対する酸素センサの出力の傾きが、印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であってもよい。
【0016】
第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であってもよい。第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であってもよい。
【0017】
判定ステップにおいて、酸素センサ出力が所定値以下である場合に、炭化水素燃料が未着火であると判定してもよい。
【0018】
本発明に係る他の着失火検出方法は、炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサの出力が所定値以下である場合に炭化水素燃料が未着火であると判定する判定ステップ、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る他の着失火検出方法においては、酸素センサにおける炭化水素の解離を利用することができる。それにより、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、炭化水素燃料の着失火検出精度を向上させることができる着失火検出装置および着失火検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係る着失火検出装置100の全体構成を示す模式図である。
【図2】炭化水素燃料が着火した場合および未着火である場合の酸素センサ10の検出酸素濃度を説明するための図である。
【図3】炭化水素燃料の着火および未着火の場合に酸素センサの近傍に存在する物質、および酸素センサにおいて生じる反応式を説明するための図である。
【図4】H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位について説明するための図である。
【図5】着火時におけるH2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位について説明するための図である。
【図6】未着火時におけるH2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位について説明するための図である。
【図7】着失火判定を説明するための図である。
【図8】着失火判定のフローチャートの一例を示す図である。
【図9】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図10】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図11】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図12】着失火判定のフローチャートの他の例を示す図である。
【図13】実施例2に係る燃料電池システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1に係る着失火検出装置100の全体構成を示す模式図である。後述する酸素センサ10について、模式的な断面が図示されている。図1に示すように、着失火検出装置100は、酸素センサ10、電流計20、センサ電源30、ヒータ電源40、および制御部50を備える。着失火検出装置100は、炭化水素燃料の着失火を検出する装置である。したがって、酸素センサ10は、炭化水素燃料の燃焼室内またはその排気管等に配置される。
【0023】
酸素センサ10は、限界電流式酸素センサであって、電解質11の一面にアノード12が設けられ、電解質11の他面にカソード13が設けられ、細孔が形成された図示しない多孔質基板がカソード13を覆うように配置された構造を有する。電解質11には、ヒータ15が配置されている。
【0024】
電解質11は、酸素イオン伝導性の電解質からなり、例えばイットリア添加の安定化ジルコニアからなる。アノード12およびカソード13は、触媒活性を有する材料からなり、例えば白金からなる。アノード12およびカソード13は、配線を介して外部回路を形成する。この外部回路には、電流計20およびセンサ電源30が設けられている。図示しない多孔質基板は、例えば多孔質状のアルミナからなる。ヒータ15は、例えば白金薄膜等からなる。ヒータ15には、ヒータ電源40が接続されている。
【0025】
制御部50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成される。制御部50は、電流計20の検出結果等に基づいて、センサ電源30およびヒータ電源40を制御する。また、制御部50は、電流計20の検出結果等に基づいて、炭化水素燃料の着失火判定を行う。
【0026】
続いて、酸素センサ10による酸素濃度検出の概要について説明する。制御部50は、ヒータ電源40を制御して、ヒータ15に電力を供給する。それにより、電解質11が加熱される。電解質11の温度が所定値に到達した後、制御部50は、アノード12に印加される電圧がカソード13に印加される電圧に対して相対的にプラスになるようにセンサ電源30を制御する。アノード12およびカソード13に電圧が印加されると、下記式(1)に従って、カソード13において酸素が酸素イオンとなって電解質11を伝導する。アノード12においては、下記式(2)に従って、酸素イオンが酸素分子となる。
O2 + 4e− → 2O2− (1)
2O2− → O2 + 4e− (2)
【0027】
カソード13への酸素輸送量は、図示しない多孔質基板の細孔によって支配されるため、式(1)および式(2)の反応によって生じる電流(限界電流)は、図示しない多孔質基板の細孔における酸素ガス拡散量によって決定される。この酸素ガス拡散量は、図示しない多孔質基板の外部の酸素濃度によって決まる。
【0028】
制御部50は、電流計20の検出値に応じて酸素センサ10の出力電流を取得する。酸素センサ10の出力電流は雰囲気中酸素濃度に比例する。制御部50は、この比例関係に基づいて、酸素センサ10がさらされる雰囲気の酸素濃度を検出する。
【0029】
ただし、炭化水素が未着火である場合には、酸素センサ10は、酸素濃度を正確に検出できなくなることがある。また、水蒸気(H2O)および二酸化炭素(CO2)の酸化還元電位と酸素センサ10への印加電圧との関係に応じて、酸素センサ10が検出する酸素濃度が変化する。以下、図2および図3を参照しつつ、炭化水素が着火した場合および未着火である場合の酸素センサ10の検出酸素濃度について説明する。なお、以下の説明において、酸素センサ10への印加電圧とは、カソード13とアノード12との間の電位差を所定値に保つよう外部電源30により電圧を印加する場合の、この所定値のことである。
【0030】
図2は、炭化水素燃料が着火した場合および未着火である場合の酸素センサ10の検出酸素濃度を説明するための図である。図3は、炭化水素燃料の着火および未着火の場合に酸素センサ10の近傍に存在する物質、および酸素センサ10において生じる反応式を説明するための図である。
【0031】
図2において、横軸は酸素センサ10への印加電圧を示し、縦軸は酸素センサ10の検出酸素濃度を示す。なお、上述したように、酸素センサ10の検出酸素濃度は、酸素センサ10の出力電流に比例する。図3(a)に示すように、燃焼室に、炭化水素燃料として2.5NL/minのメタン(CH4)を供給し、酸化剤として40NL/minのエア(主としてO2+N2)を供給する場合について考える。
【0032】
炭化水素燃料が着火して完全燃焼すれば、図3(a)の比率の場合、雰囲気中の酸素濃度は10.8%程度となる。なお、実際には真の完全燃焼は期し難いため、酸素センサ10が検出する酸素濃度は10.8%からずれることもある。しかしながら、この酸素濃度のずれは無視できる程度であることから、本明細書においては考慮しない。
【0033】
酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させるに伴って、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなり、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第1範囲と称する。この電圧範囲は、酸素センサ10の限界電流域において現れる。この第1範囲においては、酸素センサ10は、雰囲気中の酸素濃度を正確に検出することができる。なお、一例として、第1範囲は、700℃において0.4V付近である。
【0034】
酸素センサ10への印加電圧をH2O/H2の酸化還元電位以上に増加させると、カソード13において、炭化水素燃料の燃焼によって生じたH2OのH2への還元反応が生じる。この還元反応によって生じた酸素イオンが電解質11を伝導するようになるため、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなる。
【0035】
さらに酸素センサ10への印加電圧を増加させると、カソード13へのH2Oの輸送量が図示しない多孔質基板の細孔によって支配される。それにより、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第2範囲と称する。この第2範囲は、酸素センサ10への印加電圧がH2O/H2の酸化還元電位以上かつCO2/COの酸化還元電位未満である場合に現れる。なお、第2範囲は、一例として、700℃において0.8V付近である。また、カソード13近傍のH2Oが全て還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約12.2%になる。
【0036】
酸素センサ10への印加電圧をCO2/COの酸化還元電位に増加させると、カソード13において、炭化水素燃料の燃焼によって生じたCO2のCOへの還元反応が生じる。この還元反応によって生じた酸素イオンが電解質11を伝導するようになるため、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなる。
【0037】
さらに酸素センサ10への印加電圧を増加させると、カソード13へのCO2の輸送量が図示しない多孔質基板の細孔によって支配される。それにより、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第3範囲と称する。この第3範囲は、酸素センサ10への印加電圧がCO2/COの酸化還元電位以上かつCO2/Cの酸化還元電位未満である場合に現れる。なお、一例として、第3範囲は、700℃において1.1V付近である。また、カソード13近傍のCO2が全てCOに還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約15.4%になる。
【0038】
酸素センサ10への印加電圧をCO2/Cの酸化還元電位に増加させると、カソード13において、炭化水素燃料の燃焼によって生じたCO2のCへの還元反応が生じる。この還元反応によって生じた酸素イオンが電解質11を伝導するようになるため、酸素センサ10の検出酸素濃度が大きくなる。
【0039】
さらに酸素センサ10への印加電圧を増加させると、酸素センサ10の検出酸素濃度がほぼ一定(印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下)になる電圧範囲が現れる。この電圧範囲を、以下、第4範囲と称する。この第4範囲は、酸素センサ10への印加電圧がCO2/Cの酸化還元電位以上である場合に現れる。なお、この第4範囲においては、C(カーボン)が徐々に析出してカソード13を構成する白金と同様に電極の働きをする。この場合、みかけの電極面積が徐々に増えるため、第4範囲における酸素センサ10の検出酸素濃度はフラットにならずに徐々に増加する。一例として、第4範囲は、700℃において1.1V付近である。また、カソード13近傍のCO2が全てCに還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約18.6%になる。
【0040】
図3(b)〜図3(e)で説明されるように、酸素センサ10への印加電圧が変化すると、炭化水素燃料の燃焼によって生じた成分が酸素センサ10の検出酸素濃度に影響する。したがって、酸素センサ10への印加電圧に応じて、酸素センサ10が検出する酸素濃度が変動する。
【0041】
次に、炭化水素燃料が未着火である場合について説明する。炭化水素燃料が未着火であればエア中の酸素が消費されないため、雰囲気中の酸素濃度は約18.8%になるはずである。したがって、酸素センサ10による検出酸素濃度は着火時に比較して高くなるはずである。しかしながら、カソード13が触媒として機能して、炭化水素燃料がCとH2とに解離する。カソード13で生じた酸素イオンとCおよびH2とが結合するため、電解質11を伝導する酸素イオン量が低下する。その結果、酸素センサ10の検出酸素濃度と実際の雰囲気中酸素濃度との間に差異が生じる。
【0042】
酸素センサ10への印加電圧がH2O/H2の酸化還元電位未満であれば、このCおよびH2は、図3(f)に示すように、カソード13において酸素イオンと結合して酸化される。したがって、電解質11を伝導すべき酸素イオンが消費されてしまうことから、酸素センサ10の検出酸素濃度が着火時に比較して低下する。以上のことから、炭化水素燃料が未着火である場合には、炭化水素燃料が着火した場合に比較して、酸素センサ10が検出する酸素濃度が低くなる。例えば、カソード13近傍のCおよびH2が全て酸素イオンと反応すると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約5.2%になる。なお、未着火の場合においても、第1範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第1範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0043】
酸素センサ10への印加電圧がH2O/H2の酸化還元電位以上かつCO2/COの酸化還元電位未満になると、図3(g)に示すようにカソード13においてH2Oの還元反応が生じる。この場合、電解質11をより多くの酸素イオンが伝導するようになる。それにより、酸素センサ10が検出する酸素濃度が高くなる。例えば、カソード13近傍のH2Oが全て還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約11.7%になる。なお、未着火の場合においても、第2範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第2範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0044】
酸素センサ10への印加電圧がCO2/COの酸化還元電位以上になると、図3(h)に示すようにカソード13においてCO2の還元反応が生じる。この場合、電解質11をより多くの酸素イオンが伝導するようになる。それにより、酸素センサ10が検出する酸素濃度が高くなる。例えば、カソード13近傍のCO2が全て還元されるとすると、酸素センサ10によって検出される酸素濃度は約18.8%になる。なお、未着火の場合においても、第3範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第3範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0045】
酸素センサ10への印加電圧がCO2/Cの酸化還元電位以上になると、図3(i)に示すようにカソード13においてCO2のCへの還元反応が生じる。それにより、酸素センサ10が検出する酸素濃度が高くなる。なお、未着火の場合においても、第4範囲は現れる。ただし、着火の場合と未着火の場合とで、第4範囲の電圧幅および電圧値に差異が生じることがある。
【0046】
以上のことから、炭化水素燃料未着火の第1範囲においては、炭化水素の解離によって生じたCおよびH2の酸化に伴って電解質11を伝導する酸素イオン量が減少してしまうため、酸素センサ10の検出酸素濃度は、着火時に比較して低くなる。一方で、炭化水素燃料未着火の第3範囲および第4範囲においては炭化水素の解離によって生じたCおよびH2が酸化しないため、酸素センサ10の検出酸素濃度は、着火時に比較して高くなる。この現象を利用すれば、酸素センサ10を用いて炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0047】
以下、図4〜図6を参照しつつ、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位について説明する。図4〜図6において、横軸は温度(℃)を示し、左側の縦軸は酸化還元電位を示し、右側の縦軸は、左側から右側にかけて−logPO2、log(PCO2/PCO)、およびlog(PH2O/PH2)を示す。なお、PO2は酸素分圧、PCOは一酸化炭素分圧、PCO2は二酸化炭素分圧、PH2Oは水蒸気分圧、PH2は水素分圧を示す。また、図4〜図6は、電気化学便覧(丸善)電気化学会編P83から抜粋したものである。
【0048】
図4においては、PH2O:PH2が1:1である場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、PCO2:PCOが1:1である場合のCO2/COの酸化還元電位直線、および、PCO2が1atmである場合のCO2/Cの酸化還元電位直線が示されている。H2O/H2の酸化還元電位直線は、H2O/H2の分圧比が1より大きいか小さいかを表す境界を示している。また、CO2/COの酸化還元電位直線は、CO2/COの分圧比が1より大きいか小さいかを表す境界を示している。
【0049】
H2O/H2の酸化還元電位直線はPH2O:PH2に応じて変化し、CO2/COの酸化還元電位直線はPCO2:PCOに応じて変化し、CO2/Cの酸化還元電位直線はPCO2/a(C)に応じて変化する。ここで、a(C)は、固体炭素の活量(=1)である。炭化水素燃料が着火した場合と未着火である場合とで、H2O/H2の酸化還元電位直線、CO2/COの酸化還元電位直線、およびCO2/Cの酸化還元電位直線はそれぞれ変化する。
【0050】
図5は、炭化水素燃料が着火した場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、CO2/COの酸化還元電位直線、およびCO2/Cの酸化還元電位を示す図である。炭化水素燃料が燃焼する場合には、雰囲気中にH2およびCOがほとんど存在しない。したがって、PH2O/PH2およびPCO2/PCOが大きくなる。図5においては、PH2O:PH2が4%:4ppm〜10%:0.1ppmである場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、および、PCO2:PCOが4%:4000ppm〜4%:4ppmである場合のCO2/COの酸化還元電位直線が図示されている。また、PCO2:a(C)=1atm(100%):1〜PCO2:a(C)=0.04atm(4%):1である場合のCO2/Cの酸化還元電位が図示されている。
【0051】
図5の場合においては、700℃において、H2O/H2の酸化還元電位は0.45V〜0.7V程度であり、CO2/COの酸化還元電位は0.6V〜1V程度である。なお、図示は省略してあるが、700℃における酸素の酸化還元電位は、log(PO2)=0〜−1であると想定した場合に、0V〜0.1V程度である。また、PO2が0.1%程度であれば、酸素の酸化還元電位は700℃において0.3V程度である。さらに、700℃において、CO2分圧が1atm(100%)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.0V程度であり、CO2分圧が0.04atm(4%)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.1V程度である。
【0052】
図6は、炭化水素燃料が未着火である場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、CO2/COの酸化還元電位直線、およびCO2/Cの酸化還元電位を示す図である。炭化水素燃料が未着火である場合には、炭化水素の解離によって、雰囲気中にH2およびCOが多く存在するようになる。したがって、PH2O/PH2およびPCO2/PCOが図5の場合に比較して小さくなる。図6においては、PH2O:PH2が3%:30%〜3%:300ppmである場合のH2O/H2の酸化還元電位直線、および、PCO2:PCOが0.1%:10%〜0.1%:100ppmである場合のCO2/COの酸化還元電位直線が図示されている。また、PCO2:a(C)=1atm(100%):1〜PCO2:a(C)=0.0004atm(400ppm):1である場合のCO2/Cの酸化還元電位が図示されている。
【0053】
図6の場合においては、700℃において、H2O/H2の酸化還元電位は0.8V〜1.2V程度であり、CO2/COの酸化還元電位は0.9V〜1.3V程度である。なお、図示は省略してあるが、700℃における酸素の酸化還元電位は、log(PO2)=0〜−1であると想定した場合に、0V〜0.1V程度である。さらに、700℃において、CO2分圧が1atm(100%)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.0V程度であり、CO2分圧が0.0004atm(400ppm)である場合のCO2/Cの酸化還元電位は1.2V程度である。
【0054】
図4〜図6で説明したように、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位は、異なる値を持っている。図2に示した第2範囲、第3範囲、および第4範囲は、この酸化還元電位の差に起因して形成されるのである。
【0055】
ここで、燃焼室への炭化水素燃料供給量、エア供給量等をパラメータとして炭化水素燃料の着火時および未着火時の燃焼オフガス中の成分量を予測することができる。この予測に基づいて、図4〜図6で説明した手順で酸化還元電位を推定することができる。
【0056】
図2の曲線は、上述したように酸素の酸化還元電位、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位をパラメータとして描かれる曲線である。したがって、図2で説明した第1範囲〜第4範囲を、図4〜図6で推定される酸化還元電位に基づいて決定してもよい。また、酸素センサ10への印加電圧を増加させるにあたって、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きがほぼゼロ(所定値以下)になる1回目の電圧範囲を第1範囲、2回目の電圧範囲を第2範囲、3回目の電圧範囲を第3範囲、4回目の電圧範囲を第4範囲と決定してもよい。
【0057】
続いて、着失火検出装置100による着失火判定について説明する。図2の着火時の酸素センサ10による検出酸素濃度の曲線は、あらかじめ炭化水素燃料を燃焼させることによって取得することができる。この曲線を基準曲線として用いることによって、炭化水素燃料が着火しているか未着火であるかを判定することができる。
【0058】
まず、炭化水素燃料未着火の第1範囲においては、炭化水素の解離によって生じたCおよびH2の酸化に伴って電解質11を伝導する酸素イオン量が減少してしまうため、酸素センサ10による検出酸素濃度が着火時に比較して低くなる。したがって、酸素センサ10による検出酸素濃度が判定値(着火時の第1範囲における検出酸素濃度未満の値)以下である場合に炭化水素燃料が未着火であると判定することができる。例えば、図7に示す判定値をあらかじめ設定しておくことによって、酸素センサ10による検出酸素濃度が判定値以下である場合に、炭化水素燃料が未着火であると判定することができる。この判定値は、例えば、酸素センサ10への印加電圧が第1範囲内である場合に設定することができる。
【0059】
この場合のフローチャートの一例を図8に示す。まず、制御部50は、センサ電源30を制御して、酸素センサ10への印加電圧を第1範囲まで増加させる(ステップS1)。次に、制御部50は、酸素センサ10による検出酸素濃度が判定値以下であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において検出酸素濃度が判定値以下であると判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS3)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS2において検出酸素濃度が判定値以下であると判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS4)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0060】
図8のフローチャートによれば、酸素センサ10の検出酸素濃度の高低に応じて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。なお、ステップS1において、酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させて、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる1回目の電圧範囲を第1範囲としてもよく、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満の電圧範囲において印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる電圧範囲を第1範囲としてもよい。
【0061】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第3範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3と第1範囲の検出酸素濃度C1との差を差分D1とする。炭化水素燃料未着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3’と第1範囲の検出酸素濃度C1’との差を差分D2とする。この場合、差分D1<差分D2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第3範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0062】
この場合のフローチャートの一例を図9に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第3範囲まで増加させる(ステップS11)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第3範囲における検出酸素濃度と第1範囲における検出酸素濃度との差分Xが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた差分D1以上の値を用いることができる。
【0063】
ステップS12において差分Xが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS13)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS12において差分Xが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS14)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0064】
図9のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。
【0065】
なお、図9と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。また、ステップS11において、酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させて、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる3回目の電圧範囲を第3範囲としてもよく、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位以上の電圧範囲において印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる電圧範囲を第3範囲としてもよい。
【0066】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第3範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3の第1範囲の検出酸素濃度C1に対する相対比を相対比R1(=C3/C1)とする。炭化水素燃料未着火時における第3範囲の検出酸素濃度C3’の第1範囲の検出酸素濃度C1’に対する相対比を相対比R2(=C3’/C1’)とする。この場合、相対比R1<相対比R2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第3範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0067】
この場合のフローチャートの一例を図10に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第3範囲まで増加させる(ステップS21)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第3範囲における検出酸素濃度の第1範囲における検出酸素濃度に対する相対比Yが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた相対比R1以上の値を用いることができる。
【0068】
ステップS22において相対比Yが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS23)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS22において相対比Yが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS24)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0069】
図10のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。なお、図10と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。
【0070】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第4範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4と第1範囲の検出酸素濃度C1との差を差分d1とする。炭化水素燃料未着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4’と第1範囲の検出酸素濃度C1’との差を差分d2とする。この場合、差分d1<差分d2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第4範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0071】
この場合のフローチャートの一例を図11に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第4範囲まで増加させる(ステップS31)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第4範囲における検出酸素濃度と第1範囲における検出酸素濃度との差分Xが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS42)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた差分d1以上の値を用いることができる。
【0072】
ステップS32において差分Xが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS33)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS32において差分Xが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS34)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0073】
図11のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。
【0074】
なお、図11と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との差分に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。また、ステップS31において、酸素センサ10への印加電圧をゼロから増加させて、印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる4回目の電圧範囲を第4範囲としてもよく、H2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位以上の電圧範囲において印加電圧に対する酸素センサ10の検出酸素濃度の傾きが所定値以下になる電圧範囲を第4範囲としてもよい。
【0075】
また、第1範囲における検出酸素濃度と第4範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。図7において、炭化水素燃料着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4の第1範囲の検出酸素濃度C1に対する相対比を相対比r1(=C4/C1)とする。炭化水素燃料未着火時における第4範囲の検出酸素濃度C4’の第1範囲の検出酸素濃度C1’に対する相対比を相対比r2(=C4’/C1’)とする。この場合、相対比r1<相対比r2の関係が得られる。したがって、第1範囲および第4範囲の酸素センサ10の検出酸素濃度の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0076】
この場合のフローチャートの一例を図12に示す。まず、制御部50は、酸素センサ10への印加電圧を第4範囲まで増加させる(ステップS41)。次に、制御部50は、酸素センサ10によって検出される第4範囲における検出酸素濃度の第1範囲における検出酸素濃度に対する相対比Yが判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS42)。なお、この場合の判定値として、あらかじめ測定しておいた相対比r1以上の値を用いることができる。
【0077】
ステップS42において相対比Yが判定値よりも大きいと判定された場合、制御部50は、炭化水素燃料が未着火であると判定する(ステップS43)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。ステップS42において相対比Yが判定値よりも大きいと判定されなかった場合、制御部50は、炭化水素燃料が着火したと判定する(ステップS44)。その後、制御部50は、フローチャートの実行を終了する。
【0078】
図12のフローチャートによれば、複数種類の印加電圧に対する酸素センサ10の出力値の相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この場合、酸素センサ10の出力値の絶対値を用いる方法に比較して、経時変化の影響を回避することができるという利点がある。なお、図12と同様のフローチャートを用いて、第1範囲における検出酸素濃度と第2範囲における検出酸素濃度との相対比に基づいて、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することもできる。
【0079】
以上のように、本実施例においては、酸素センサ10の検出酸素濃度に応じて炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。この判定は、酸素センサ10の触媒機能によって炭化水素燃料が解離する現象に着目することによって初めて可能になったものである。さらに、酸素センサ10への印加電圧とH2O/H2の酸化還元電位、CO2/COの酸化還元電位、およびCO2/Cの酸化還元電位との関係に起因して酸素センサ10の検出酸素濃度が複数段階に増加する現象に着目することによって、より正確に炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができるのである。
【0080】
なお、図4〜図6で説明したように、H2O/H2の酸化還元電位はPH2O:PH2に支配され、CO2/COの酸化還元電位はPCO2:PCOに支配される。そのため、PH2O:PH2およびPCO2:PCOの比率によっては、H2O/H2の酸化還元電位がCO2/COの酸化還元電位よりも高くなることもある。この場合には、第2範囲がCO2/COの酸化還元電位以上かつH2O/H2の酸化還元電位未満の電圧範囲において現れ、第3範囲がH2O/H2の酸化還元電位以上の電圧範囲において現れることになる。
【0081】
また、本実施例においては炭化水素燃料としてメタンを用いたが、それに限られない。メタン以外の炭化水素燃料、例えば都市ガス、プロパンガス、灯油、ガソリン、軽油等を用いても、上記手順に従って、炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【実施例2】
【0082】
続いて、着失火検出装置を燃料電池システムに適用した例について説明する。図13は、実施例2係る燃料電池システム200の全体構成を示す模式図である。図13に示すように、燃料電池システム200は、制御部110、燃料ポンプ121、改質水供給部130、エアポンプ140a,140b、改質器150、燃料電池160および酸素センサ170を備える。本実施例においては、燃料電池160として、例えば、固体酸化物型燃料電池(SOFC)を用いることができる。また、酸素センサ170は、実施例1に係る酸素センサ10と同様の構造を有する。
【0083】
改質燃料供給部120は、燃料ポンプ121および燃料流量計122を備える。改質水供給部130は、熱交換器131、凝縮水タンク132および改質水ポンプ133を備える。改質器150は、改質部151、燃焼室152および着火手段153を備える。燃料電池160は、カソード161およびアノード162を備え、カソード161とアノード162との間に酸素イオン伝導性電解質を備える。
【0084】
制御部110は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成される。制御部110は、燃料流量計122および酸素センサ170から与えられる検出結果に基づいて、燃料電池システム200の各部を制御する。
【0085】
燃料ポンプ121は、制御部110の指示に従って、改質燃料タンクに貯蔵されている改質燃料または、ガス配管から供給される都市ガス、灯油等を改質部151に供給するポンプである。熱交換器131は、水道水と燃焼室152からの排気ガスとの熱交換を行う。凝縮水タンク132は、燃焼室152からの排気ガスの凝縮水を貯蔵するタンクである。改質水ポンプ133は、制御部110の指示に従って、凝縮水タンク132に貯蔵されている凝縮水を改質水として改質部151に供給するポンプである。
【0086】
改質部151においては、燃料ポンプ121からの改質燃料とエアポンプ140aからのエアとから、部分酸化反応により、水素を含有する改質ガスが生成される。改質器150の暖機後は、燃料ポンプ121からの改質燃料と改質水ポンプ133からの水蒸気とから、水蒸気改質反応により、改質ガスが生成される。
【0087】
エアポンプ140bは、制御部110の指示に従って、必要量のエアをカソード161に供給する。カソード161においては、エア中の酸素が酸素イオンに変換される。カソード161において酸素イオンに変換されなかった酸素は、カソードオフガスとして燃焼室152に供給される。
【0088】
改質部151において生成された改質ガスは、アノード162に供給される。アノード162においては、カソード161において変換された酸素イオンとアノード162に供給された水素とから水が発生するとともに電力が発生する。発生した電力は、図示しないモータ等の負荷に用いられる。発生した水は、燃料電池160において発生する熱によって水蒸気となる。アノード162において発生した水蒸気、酸素イオンと反応しなかった水素、ならびに、改質部151において反応しなかった水素を含む改質ガス、ならびに、改質部151において反応しなかった炭化水素、CO、CO2および水蒸気は、アノードオフガスとして燃焼室152に供給される。
【0089】
燃焼室152においては、アノードオフガスおよびカソードオフガスが供給される。着火手段153は、制御部110の指示に従って、アノードオフガスに含まれる可燃成分に着火させる。この場合、カソードオフガスが酸素源として用いられる。燃焼室152における燃焼反応による燃焼熱は、改質部151における水蒸気改質反応に利用される。燃焼反応によって発生する排気ガスは、外部に排出される。酸素センサ170は、燃焼室152内または燃焼室152より下流側の酸素濃度を検出する。
【0090】
本実施例においても、制御部110は、酸素センサ170の検出酸素濃度に基づいて、燃焼室152における炭化水素燃料の着火および未着火を判定することができる。
【0091】
ここで、燃料電池160においては、アノードで水が生成される。したがって、アノードオフガスに水分が含まれることになる。燃焼室152には燃料としてアノードオフガスが供給されることから、燃焼室152からの排気ガスにも水蒸気が含まれる。この場合、温度センサを用いて着火および未着火を判定しようとすると、温度センサの検出値に誤差が生じるおそれがある。例えば、温度センサ付近の水蒸気量が多くなるほど、燃焼比温度上昇が遅くなる。したがって、着火検出の応答性が低下することになる。
【0092】
しかしながら、本実施例のように酸素センサ170の検出酸素濃度に基づいて燃料の着火および失火を判定することによって、水蒸気濃度の影響を回避することができる。したがって、水蒸気が流入する燃焼装置に対して、本発明の効果が特に大きくなる。なお、本実施例においては一例として酸素イオン伝導性電解質を備える燃料電池を用いたが、プロトン伝導性電解質を備える燃料電池を用いてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 酸素センサ
11 電解質
12 アノード
13カソード
14 カバー
20 電流計
30 センサ電源
50 制御部
100 着失火検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、
前記酸素センサへの第1の印加電圧での前記酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での前記酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて前記炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする着失火検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記第1出力値と前記第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定することを特徴とする請求項1記載の着失火検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第1出力値および前記第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定することを特徴とする請求項1記載の着失火検出装置。
【請求項4】
前記第1印加電圧および前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項5】
前記第1印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、
前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項6】
前記第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、前記酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項7】
前記第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記酸素センサ出力が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が未着火であると判定することを特徴とする請求項2または3記載の着失火検出装置。
【請求項9】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、
前記酸素センサの出力が所定値以下である場合に前記炭化水素燃料が未着火であると判定する判定手段と、を備えることを特徴とする着失火検出装置。
【請求項10】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサへの第1の印加電圧での前記酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での前記酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて前記炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定ステップ、を含むことを特徴とする着失火検出方法。
【請求項11】
前記判定ステップは、前記第1出力値と前記第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定するステップであることを特徴とする請求項10記載の着失火検出方法。
【請求項12】
前記判定ステップは、前記第1出力値および前記第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定するステップであることを特徴とする請求項10記載の着失火検出方法。
【請求項13】
前記第1印加電圧および前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項14】
前記第1印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、
前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項15】
前記第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、前記酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項16】
前記第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項17】
前記判定ステップにおいて、前記酸素センサ出力が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が未着火であると判定することを特徴とする請求項11または12記載の着失火検出方法。
【請求項18】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサの出力が所定値以下である場合に前記炭化水素燃料が未着火であると判定する判定ステップ、を含むことを特徴とする着失火検出方法。
【請求項1】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、
前記酸素センサへの第1の印加電圧での前記酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での前記酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて前記炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする着失火検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記第1出力値と前記第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定することを特徴とする請求項1記載の着失火検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第1出力値および前記第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定することを特徴とする請求項1記載の着失火検出装置。
【請求項4】
前記第1印加電圧および前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項5】
前記第1印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、
前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項6】
前記第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、前記酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項7】
前記第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の着失火検出装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記酸素センサ出力が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が未着火であると判定することを特徴とする請求項2または3記載の着失火検出装置。
【請求項9】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサと、
前記酸素センサの出力が所定値以下である場合に前記炭化水素燃料が未着火であると判定する判定手段と、を備えることを特徴とする着失火検出装置。
【請求項10】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサへの第1の印加電圧での前記酸素センサの第1出力値と第2の印加電圧での前記酸素センサの第2出力値との差分または相対比に基づいて前記炭化水素燃料の着火および失火の少なくともいずれか一方を判定する判定ステップ、を含むことを特徴とする着失火検出方法。
【請求項11】
前記判定ステップは、前記第1出力値と前記第2出力値との差分の絶対値が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定するステップであることを特徴とする請求項10記載の着失火検出方法。
【請求項12】
前記判定ステップは、前記第1出力値および前記第2出力値のうち高出力値の低出力値に対する相対比が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が着火したと判定するステップであることを特徴とする請求項10記載の着失火検出方法。
【請求項13】
前記第1印加電圧および前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが所定値以下となる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項14】
前記第1印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる1回目の電圧範囲の値であり、
前記第2印加電圧は、印加電圧に対する前記酸素センサの出力の傾きが、前記印加電圧をゼロから増加させた場合に所定値以下になる2回目または3回目の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項15】
前記第1印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位未満において、前記酸素センサの出力の印加電圧に対する傾きが所定値以下になる電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項16】
前記第2印加電圧は、H2O/H2の酸化還元電位およびCO2/COの酸化還元電位の少なくとも一方以上の電圧範囲の値であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の着失火検出方法。
【請求項17】
前記判定ステップにおいて、前記酸素センサ出力が所定値以下である場合に、前記炭化水素燃料が未着火であると判定することを特徴とする請求項11または12記載の着失火検出方法。
【請求項18】
炭化水素燃料を燃焼させるための燃焼室内または前記燃焼室の下流における酸素濃度を検出する酸素センサの出力が所定値以下である場合に前記炭化水素燃料が未着火であると判定する判定ステップ、を含むことを特徴とする着失火検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−2308(P2011−2308A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144833(P2009−144833)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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