説明

睡眠誘導剤

【解決手段】 リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物が、継続噴霧容器に充填されてなることを特徴とする睡眠誘導剤。
【効果】 本発明によれば、リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物を、一回の押圧動作で、一定量、一定時間、継続的に噴射することができ、簡便で睡眠時に使用するのに好適で、優れた睡眠導入効果を有する睡眠誘導剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠誘導剤に関し、より詳細には、リラックス効果に優れ、使用に際し火気や電気を使用せず、一回の押圧動作で、一定量、一定時間、継続的に噴射することができ、かつ自動的に噴霧が止まる睡眠誘導剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ストレスを緩和する目的で、リラックス効果を発現する成分を含有する組成物が提案されている(特許文献1:特開平09−302377号公報、特許文献2:特開2001−49286号公報参照)。しかしながら、睡眠誘導には一切言及されておらず、化粧料又は香料といった一般的な使用方法で用いられている。さらに、従来のストレスを緩和する目的でリラックス効果を発現する成分を含有する芳香製品は、精油及びお香といった火気及び/又は電気を使用するため、火気による危険性及び灰等の始末が必要であり、簡便性に欠け、睡眠に関わる場面での使用には不向きである。
【0003】
これに対し、簡便性を改善したエアゾール式の芳香製品が提案されているが、内容物を噴射している間、手指等でエアゾール容器のステムを押圧しているため、噴射したエアゾール内容物が操作者に接触するという欠点を有している。さらに、一定時間芳香させるには操作し続ける必要があり、睡眠に関わる場面での使用には不向きである。操作の必要が無い据え置き式の芳香製品も提案されているが、自動で止めることはできない。また、一度押圧動作を行うと、エアゾール内容物の噴射を継続する従来の芳香製品では、一度の押圧動作でエアゾール容器内の全てのエアゾール内容物を外部に噴射して使いきってしまうものである。
【0004】
上記問題を解決するために、エアゾール内容物を、複数回に分けて噴射可能とし、一回の押圧動作にて、一定時間、一定量のエアゾール内容物を噴霧する技術が提案されている(特許文献3:実開昭61−87556号公報参照)。これは、チルトバルブのステムをゴム製の吸盤を備えた押圧体で押圧することにより、バルブ機構を一定時間開放して、エアゾール内容物の継続噴射を行ない、一定時間が経過すると、チルトバルブステムの復元力で吸盤による吸着が解除され、噴射が停止する技術である。しかしながら、ゴム製の吸盤では繰り返しの使用によりゴム質の劣化、破損、磨耗を生じやすく、チルトバルブステムの吸着固定を良好に行えなくなるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平09−302377号公報
【特許文献2】特開2001−49286号公報
【特許文献3】実開昭61−87556号公報
【特許文献4】国際公開01−058435号パンフレット
【特許文献5】特開2002−68344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物を、一回の押圧動作で、一定量、一定時間、継続的に噴射することができ、睡眠時に使用するのに好適な睡眠誘導剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、後述する実施例に示すように、リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物を、継続噴霧容器に充填し使用することで、一定時間、簡便に安心して睡眠誘導効果が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は
[1].リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物が、継続噴霧容器に充填されてなることを特徴とする睡眠誘導剤、
[2].内容組成物中の芳香成分の含有量が0.00001〜60.00質量%、噴射剤の含有量が40.00〜99.99999質量%であることを特徴とする[1]記載の睡眠誘導剤、
[3].継続噴霧容器が、内容組成物を収容する容器本体と、内部に内容組成物の収容室を設け、かつこの収容室内の内容組成物を外部に噴出させる噴出ノズル部を設けた押圧体と、この押圧体を押圧することにより、容器本体内の内容組成物を上記収容室に流入させると共に、押圧体に対する押圧が解除されている状態では、上記容器本体内の内容組成物の上記収容室への流入を遮断するバルブ機構とを有する噴霧容器であって、上記ノズル部からの単位時間当たりの噴出量が容器本体内からの収容室内への単位時間当たり流入量よりも少なく形成したことを特徴とする継続噴射容器である[1]又は[2]記載の睡眠誘導剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物を、一回の押圧動作で、一定量、一定時間、継続的に噴射することができ、簡便で睡眠時に使用するのに好適で、優れた睡眠導入効果を有する睡眠誘導剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明につき、さらに詳しく説明する。
本発明の睡眠誘導剤は、リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物が、継続噴霧容器に充填された睡眠誘導剤である。
【0011】
リラックス効果を発現する芳香成分としては、このような効果を発現するものであれば特に限定されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的に、精油及び/又は抽出物としては、ベルガモット、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、キャラウェイ、ジンジャー、ラベンダー、ローズオットー、ローズアブソリュート、レモン、マジョラム、オリバナムレジン、オレンジ、西洋オトギリソウ、バレリアン、セージ、サンダルウッド、ネロリ、マンダリン、プチグレイン、ラベンサラ、チュベローズ、イランイラン、クラリセージ、フランキンセンス、ナルシサス、ブルーム、バイオレット、ミモザ、ユーカリ、アビエス、ゼラニウム、パチュリ、ライム、カルダモン、バニラ、フェンネル、スターアニス、セダー(ヒノキ)、シナモン、オリス、ベチバー、オークモス、オリバナム、ミル、オポパナックス、ガルバナム、アガルウッド、ホップ、ジャスミン、セントジョーンズワート、ジュニパーベリー、パインニードル、スパイクラベンダー、パルマローザ、カカオ、ムスク、アンバーグリス、シベット、カストリウム等の精油及び/又は抽出物が挙げられる。
【0012】
単品成分としては、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リモネン、ジペンテン、テンピノーレン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、p−サイメン、β−カリオフィレン等の炭化水素類、シス−3−ヘキセノール、1−オクテン−3−オール、9−デセノール、メチルサンデフロール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ヒドロキシシトロネロール、テトラヒドロリナロール、ラバンジュロール、ミルセノール、α−テルピネオール、ノポール、イソカンフィルシクロヘキサノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、ベチベロール等のアルコール類、ヒノキチオール、p−クレジルメチルエーテル、オイゲノール、イソオイゲノール、サフロール等のフェノール及びその誘導体、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、バニリン等のアルデヒド類、カンファー、シス−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、ダマセノン、α−ヨノン、β−ヨノン、アセトフェノン、ソトロン等のケトン類、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノン、シクロペンタデカノリド、エチレンブラシレート、ムスクケトン、ムスクチベテン、ファントリド、セレストリド、トナリド、ガラクソリド等の合成ムスク類、ローズオキサイド、ネロールオキサイド、アンブロキサン、テアスピラン、ユーカリプトール、リナロールオキサイド、ローズフラン、フェニルエチルイソアミルエーテル、メチルベンジルエーテル等のオキサイド又はエーテル類、ギ酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、フェニール酢酸、酢酸リナリル、酢酸ネリル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、酢酸ボルニル、酢酸テルペニル、酢酸ベンジル、酢酸シンナミル、酢酸セドリル等の酸類、アンゲリカ酸メチル、チグリン酸エステル、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、芳香族酸のエステル等のエステル類、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、2−ヘキセン酸等の酸類、γ−バレロラクトン、γ−ノナラクトン、ウイスキーラクトン等のラクトン類、その他の成分としてフラバンジェノール、テアニン等が挙げられる。
【0013】
リラックス効果を発現する芳香成分に含まれないものとしては、レモングラス、和種ハッカ、スペアミント、ペニロイヤルミント、ペパーミント、コリアンダー、ペパー等の精油及び抽出物、l−メントール等のアルコール類、メチルペプテノン、l−カルボン、メントン、d−プレゴン、ピペリトン等のケトン類、アセチルピロール、トリメチルアミン、ピペリン、アリルメルカプタン、ジメチルスルフィド、チアルジン等が挙げられる。なお、このような香料成分であっても、本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0014】
内容組成物中のリラックス効果を発現する芳香成分の含有量は、0.00001〜60質量%が好ましく、より好ましくは0.00001〜20質量%、さらに好ましくは0.00001〜10質量%である。0.00001質量%未満ではリラックス効果が得られない場合があり、60質量%を超えると製剤化が困難になる場合や、香気が強すぎて不快に感じる場合がある。
【0015】
内容組成物には、前述の必須成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、従来の芳香製品に慣用されている各種添加成分を所望に応じ、配合することができる。これらの添加成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの添加成分としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、クエン酸やコハク酸等の有機酸及びその塩、着色剤、pH緩衝剤、上記以外の香料、エタノール等の溶剤、精製水、及び天然水等が挙げられる。
【0016】
本発明の睡眠誘導剤は、連続噴霧容器を使用したエアゾール剤系であり、内容組成物には、噴射剤が含まれる。噴射剤としては、例えば液化石油ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0017】
内容組成物中の噴射剤の含有量は、40.00〜99.99999質量%が好ましく、より好ましくは50.00〜99.9999質量%である。含有量が少なすぎると、噴霧不良を起こす場合がある。
【0018】
本発明の睡眠誘導剤は、上記内容組成物が継続噴霧容器に充填されたものである。継続噴霧容器とは、内容組成物が一回の押圧動作で、一定量、一定時間、継続的に噴射することができる容器である。このような容器としては、特開2002−68344号公報に記載のもの等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
すなわち、この場合、かかる継続噴霧容器としては、継続噴霧容器が、内容組成物を収容する容器本体と、内部に内容組成物の収容室を設け、かつこの収容室内の内容組成物を外部に噴出させる噴出ノズル部を設けた押圧体と、この押圧体を押圧することにより、容器本体内の内容組成物を上記収容室に流入させると共に、押圧体に対する押圧が解除されている状態では、上記容器本体内の内容組成物の上記収容室への流入を遮断するバルブ機構とを有する噴霧容器であって、上記ノズル部からの単位時間当たりの噴出量が容器本体内からの収容室内への単位時間当たり流入量よりも少なく形成した継続噴射容器が挙げられる。上記継続噴霧容器について添付の図を用いてさらに具体的に説明するが、本発明の継続噴霧容器は、これに制限されるものではない。
【0020】
図1に継続噴霧容器の一態様の縦断面図を示す。ここで示した継続噴霧容器の構成は、大きく3つの部分(エアゾール容器本体1、バルブ体11、押圧体30)に分けられる。以下に各部分について説明する。
【0021】
〈エアゾール容器本体1〉
エアゾール容器本体1は、有底円筒状の胴部2と、その上端周縁部に下端周縁部が巻きしめられることにより、胴部2に取り付けられたドーム状の口部3と、この口部3の中央部に設けられた開放部を閉塞して口部3上端周縁部に巻きしめられることにより、口部3に取り付けられた蓋部4とを備え、上記エアゾール本体1内に内容組成物5が収容される。なお、上記胴部2の底壁は、内方に膨出した断面三日月状に形成されており、これにより内容組成物5が少なくなった場合に、胴部2内において下端周縁部方向に流れ、最後まで内容組成物5を使い切るようになっている。また、上記蓋部4は、外周縁部が口部3上端周縁部と巻きしめられたリング状凹状壁部6とその内側壁部の上端周縁部に一体に連設されたリング状板部7からなり、リング状凹状壁部6の内側壁部の中間部が、内方に膨出することにより、環状係止突起8が形成されている。
【0022】
〈バルブ体〉
バルブ体11は、ハウジング12と、このハウジング12内に挿入されたステム13とから構成される。ハウジング12は、上部円筒状体12aの下端にこれより小径の下部円筒状体12bが一体に連設されてなる。上記上部円筒状体12aの上部側部は厚肉に形成されることにより、外側が外方に突出され、この外方突出部12cが上記リング状凹状壁部6の環状係止突起8とリング状板部7との間にステムガスケット14を介して挟持されることにより、ハウジング12が蓋部4に固定されている。
【0023】
ステム13は、ハウジング12内に軸方向移動可能に配設され、上部軸部13aと、その下端部に一体に連設され外径が上記リング状板部7の開口部直径と同一径に形成された下部軸部13bと、その下端に一体に連設された大径円柱部13cと、その下端に一体に連設された小径円柱部13dとからなり、この小径円柱部13dの末端部は、逆円錐台状に形成されている。そして、上記大径円柱部13c及び小径円柱部13dは、上記上部円筒状体12a内に挿入されていると共に、大径円柱部13cと小径円柱部13dとの段部と、上記上部円筒状体12aと下部円筒状体12bとの段差との間には、常時は上記ステム13を上方向に押圧するように付勢された押圧スプリング15が介装されている。これにより、上記大径円柱部13cの上面外周部が、上記ステムガスケット14下面に当接することにより、上方に飛び出ないように係止されている。
【0024】
また、上記上部軸部13a及び下部軸部13bには、内容組成物5の導通路16が形成されると共に、下部軸部13bの側部下部には、径方向に沿って上記導通路16と連通して流入口17が形成されている。さらに、上記大径円柱部13c外周面と、ハウジング12の上部円筒状体12a内周面との間には隙間が形成され、環状流路18が形成されている。この場合、上記流入口17と環状流路18とは、上記したように、上記大径円柱部13cが、ステムガスケット14下面に当接することにより、常時は流入口17と環状流路18との連通が遮断されると共に、上記押圧スプリング15の付勢力に抗してステム13を下方に押圧することにより、図2に示したように大径円柱部13cと、ステムガスケット14が離間することにより、流入口17と環状流路18が連通するようになっている。
【0025】
ハウジング12の下部円筒状体12bには、ディップチューブ19が接続されている。内容組成物5を無駄なく使い切れるように、ディップチューブ19を湾曲形成し、ディップチューブ19の下端部は、エアゾール容器本体1内の下端周縁部に配置している。また、ディップチューブ19の下端内部は、半球状弁座20が形成され、この弁座20に球状の弁21が接離可能に配置されている。
【0026】
〈押圧体30〉
押圧体30は、上記ステム13の上部軸部13aの上方突出部が嵌挿されることにより、ステム13に取り付けられた短軸円柱状の取付部材31と、その外周部に取り付けられた有頭円筒状のキャップ部材33とを具備し、その内部に収容室34が形成されている。なお、上記取付部材31の下端面と、上記蓋部4のリング状板部7との間には、隙間が形成され、押圧体30を下方に押圧した時に、ステム13と一体に取付部材31の下端面が蓋部4に当接されるまで下方に移動し得るようになっている。32はリング状案内部材で、キャップ部材33の外周部外側に、キャップ部材33の外周部が摺動し得るように配設されており、これは口部2に固定されている。
【0027】
上記取付部材31の上面中央部には、逆円錐台状の凹部35が形成され、この凹部35の中央部に分配円板部36が配設されている。この円板部36の下面中央部から中間部にかけて流入孔37が形成されているとともに、この流入孔37から斜め上方に向け、周方向に沿って等間隔ずつ離間して複数の噴出孔38が形成される。噴出孔38は収容室34に連通する。流入孔37と導入路16とを連通させる通路孔39が、上記取付部材31に形成されており、導入路16、通路孔39、流入孔37、噴出孔38により、内容組成物案内路が形成されている。
【0028】
上記キャップ部材33の天井壁40上面中央部には、上側軸41が一体に突設されていると共に、天井壁下面にも下側軸42が一体に突設され、下側軸42の下端面が円板部36上面と当接している。これら上側軸41、天井壁40、下側軸42には、これらを貫通して噴出路43が形成されている。下側軸42下側部には連結孔44が形成され、この連結孔44を介して上記噴出路43と収容室34が連通している。また、噴出路43の上端には噴出ノズル45が形成されている。
【0029】
本発明においては、収容室34に流入する内容組成物5の流入量よりも、単位時間当りの外部への噴出量を少なくなるように形成する。これにより、一回の押圧により、一定期間の内容組成物5の継続噴霧が可能となる。これらは、収容室34に流入する内容組成物5の流入量と、噴出ノズル45の噴出量は、継続噴霧の量、時間及び内容組成物によって適且選択することができ、使用者の好みにより、1〜数回押圧動作により、継続噴霧時間を調整することもできる。
【0030】
また、第一回目の使用の際に収納室34内に存在する気体が、エアゾール内容物の流入の妨げになることがあるため、気体抜きの目的で、収納室34と外部とを結ぶ連通部を設けてもよい。
【0031】
次に使用状態を説明する。エアゾール内容組成物の継続噴射を行おうとする場合には、図2に示すように、キャップ部材33を押圧スプリング15の押圧力に抗して押圧する。これにより、キャップ部材33及びこれと一体に取付部材31、ステム13が下方に移動する。これにより導通路16と環状流路18とが、流入口17を介して連通し、これにより、ディップチューブ19内の内容組成物が導通路16に流入し、これによりディップチューブ19が負圧になることにより、ディップチューブ19に配設される弁21が弁座20から離間してディップチューブ19の下端部が開口し、容器本体1内の内容組成物5がディップチューブ19内を通り、環状流路18、流入口17、導通路16、さらに噴出孔38を含む組成物案内路を通って、収容室34内に流入する。収容室34内の内容組成物5は、収容室34から、連結孔44、噴出路43、噴出ノズル部45を通って外部に噴出される。
【0032】
そして、上記キャップ部材33の押圧力を解除すると、押圧スプリング15の反発力により、ステム13及び押圧体が図3に示したように、元の状態(図1に示す状態)に戻り、環状流路18と、導通路16との連通が遮断され、容器本体1の内容組成物5はこれ以上、収容室34には流入しなくなる。なお、これにより、上記弁21は、ディップチューブ19への内容組成物の流入が停止されるので、その重力により元の下端開口部に保持される状態に戻り、ディップチューブ19の下端開口部が閉塞され、ディップチューブ19内に入ったエアゾール内容物のエアゾール容器本体1内への流出を防止している。
【0033】
図3の状態において、上述したように、収容室34での内容組成物5の流入量より、噴出ノズル部45からの噴出量が少ないので、収容室34内に、なお噴出すべき内容組成物5が残り、これが徐々に噴出ノズル部45から外部噴出されるものである。
【0034】
このように、押圧体30に対する一回の押圧動作によって、噴出ノズル42からの単位時間当りの噴出量よりも多い内容組成物5が収容室34に貯留されるため、操作者は押圧体30を一度だけ短時間、押圧するのみで室内等に継続噴射することが可能である。従って操作者は押圧動作を続ける必要が無いため、動作に束縛されることがない。また、一度の押圧動作でエアゾール容器内の全てのエアゾール内容物を使い切らず、一定量のみを継続的に噴射するため、操作者は、必要に応じて任意に、継続噴射を繰り返し行うことができる。このような構造の継続噴霧容器に、リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物を充填されてなる睡眠誘導剤は、睡眠前の一回、必要に応じて二回以上の押圧動作によって、リラックス効果を発現する成分を継続噴射する状態で、睡眠状態に誘導することができる。さらに、その後、適度な継続時間で噴射が止まるため安心して眠ることができ、睡眠誘導剤として好適である。
【0035】
本発明に用いられる継続噴霧容器の継続噴霧時間は、内容組成物を1〜10g噴霧する場合、通常10秒〜12時間、好ましくは15秒〜10時間、さらに好ましくは20秒〜8時間であり、10秒未満ではリラックス効果が得られず、12時間を超えると芳香成分が常に拡散している状態になる場合があり、効果を得たいときのみの使用が困難になる場合がある。
【0036】
本発明における睡眠誘導剤の調製方法は、通常の方法を採用しうる。具体的には、例えば上記成分中の水溶性成分と油溶性成分とを別々に溶解混合し、場合によっては、これらをさらに混合した後、得られた溶液と噴射剤とを、共に密閉容器に充填する方法が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示し、配合成分の合計は100質量%である。
【0038】
[実施例1、比較例1,2]
表1に示す組成の内容物を各種容器に充填し睡眠誘導剤を調製し、実施例1及び比較例1〜2の睡眠誘導剤を得た。使用量は3gとし、使用中のリラックス及び睡眠に関する官能評価、リラックス度合い及び入眠潜時を下記方法により評価した。
【0039】
評価方法
(1)香りの印象、リラックス効果及び睡眠に関する官能評価
「寝つきが悪く、疲労感(交感神経活動が副交感神経活動より過度に高まっている状態)を感じている」と自己申告のあった20代男性10名、20代女性10名の計20名に、入眠前に寝室で睡眠誘導剤を7日間使用してもらい、「落ち着く香りがする」、「爽快な香りがする」、「リラックスした」、「イライラが解消された」及び「寝つきが良くなった」の各項目について、評価し結果を下記評価基準により評価した。結果を表1に併記する。
〈評価基準〉
◎:良好と解答したものが20名中16名以上
○:良好と解答したものが20名中11〜15名
△:良好と解答したものが20名中6〜10名
×:良好と解答したものが20名中5名以下
【0040】
(2)リラックス度合い
「疲労感(交感神経活動が副交感神経活動より過度に高まっている状態)を感じている」と自己申告のあった20代男性10名、20代女性10名の計20名を被験者とした。底面積約10m2の窓なしの部屋で椅子に座った状態で、被験者からの距離約100cmで睡眠誘導剤3.0gを噴霧した。使用による副交感神経活動度を、ポリグラフテレメーター(大日本製薬株式会社製、ポリグラフテレメーターECG(心電図))及び循環動態波形・ゆらぎ解析ソフトウエア(大日本製薬株式会社製、フラクレットWT)を用いて測定した。芳香成分を配合しない内容組成物(エタノール2.0%、液化天然ガス98.0%を後述する容器Aに充填)3.0gを噴霧したときの副交感神経活動度を100として、実施例及び比較例の睡眠誘導剤を使用した時の変化率を算出した。20名の平均結果を図4に示す。
【0041】
(3)入眠潜時
「寝つきが悪い」と自己申告のあった20代男性10名、20代女性10名の計20名を被験者とした。被験者に入眠前、寝室で睡眠誘導剤3.0gを使用してもらい、入床から睡眠開始までの睡眠潜時をアクチグラフ(米国 A.M.I社製、マイクロミニ型アクチグラフ)を用い評価した。アクチグラフは慣れてもらうため、実験期間中は外さず常に非利き腕に装着し1分ごとの活動量を連続記録し、記録された連続活動量より、睡眠と覚醒をColeらの方式に従い判別した。芳香成分を配合しない内容組成物(エタノール2.0%、液化天然ガス98.0%を後述する容器Aに充填)3.0gを噴霧したときと比較し、20名の平均結果を図5に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
なお、表中の使用容器Aは、図1記載の継続噴霧容器に準ずる構造であり、一回の押釦で内容組成物3.0gを5分間で噴霧するものである。使用容器Bは、内容組成物3.0gを2秒間で噴霧する非継続噴霧容器である。
【0044】
(1)リラックス効果を発現する芳香成分を継続噴霧容器に充填し使用することで、気分が落ち着き、睡眠誘導に効果が得られた(表1)。
(2)リラックス度合いは、内容組成物に芳香成分を配合しない場合及び非継続噴霧容器を使用した場合と比較し、連続噴霧容器を使用することにより、心電図のR−R間隔の有意な延長が認められた(図4)。
(3)入眠潜時は、内容組成物に芳香成分を配合しない場合は26±7分、比較例1(爽快な香り)で35±5分、比較例2(非継続噴霧容器使用)で24±4分、実施例1(連続噴霧容器使用)で13±3分となり連続噴霧容器使用で有意に短縮した(図5)。
以上の結果から、リラックス効果を発現する芳香成分を継続噴霧容器に充填し使用することで、過度に高められていた交感神経の活動が抑制され、副交感神経有意な状態となった。さらに、入眠潜時を有意に短縮し、睡眠誘導に効果が得られることが充分に期待できる。
【0045】
[実施例2]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物5.0gを20分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
ベルガモット 0.005
ジャーマンカモミール 0.01
ジンジャー 0.003
ラベンダー 0.006
α−アミルシンナミックアルデヒド 0.0005
その他の香料組成物 残 部
トリエタノールアミン 0.5
エタノール 2.0
液化石油ガス 97.0
(0.15kg/cm2、20℃)
合計 100.0
【0046】
[実施例3]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物8.0gを45分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
ラベンサラ 0.005
チュベローズ 0.01
イランイラン 0.003
α−ピネン 0.006
β−ピネン 0.003
リモネン 0.05
セドロール 0.09
その他の香料組成物 残 部
エタノール 5.5
液化石油ガス 94.0%
(0.2kg/cm2、20℃)
合計 100.0
【0047】
[実施例4]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物6.0gを40分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
ジャスミン 0.003
サンダルウッド 0.002
ローズアブソリュート 0.01
ファンネソール 0.0005
リナロール 0.0008
シス−ジャスモン 0.0006
その他の香料組成物 残 部
トリエタノールアミン 0.06
エタノール 9.0
液化石油ガス 90.0
(0.3kg/cm2、20℃)
合計 100.0
【0048】
[実施例5]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物2.0gを5分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
ゼラニウム 0.01
セダー 0.004
クラリセージ 0.002
ベチベロール 0.001
その他の香料組成物 残 部
エタノール 14.8
液化石油ガス 85.0
(0.25kg/cm2、20℃)
合計 100.0
【0049】
[実施例6]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物4.0gを20分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
西洋オトギリソウ 0.005
フラバンジェノール 0.02
カンファー 0.0005
α−ヨノン 0.0009
酢酸リナリル 0.0008 酢酸ボルニル 0.0003
その他の香料組成物 残 部
エタノール 1.6
液化石油ガス 98.0
(0.29kg/cm2、20℃)
合計 100.0
【0050】
[実施例7]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物5.0gを15分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
バレリアン 0.01
セントジョーンズワート 0.005
パインニードル 0.003
エチレンブラシレート 0.0004
ムスクケトン 0.0003
その他の香料組成物 残 部
エタノール 4.0
液化石油ガス 95.0
(0.35kg/cm2、20℃)
合計 100.0
【0051】
[実施例8]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物1.0gを10分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
シナモン 0.01
カカオ 0.009
ユーカリ 0.003
アガルウッド 0.006
ローズオキサイド 0.0003
アンブロキサン 0.0008
その他の香料組成物 残 部
エタノール 6.6
液化石油ガス 93.0
(0.27kg/cm2、20℃)
合計 100.0
【0052】
[実施例9]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物10.0gを40分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
ネロリ 0.007
ローマンカモミール 0.006
プチグレイン 0.003
マンダリン 0.0008
オークモス 0.0004 その他の香料組成物 残 部
トリエタノールアミン 0.5
エタノール 19.0
液化石油ガス 80.0
(0.35kg/cm2、20℃) 合計 100.0
【0053】
[実施例10]
下記に示す処方の内容組成物を調製し、継続噴霧容器(内容物3.0gを7分間で噴霧)に充填し、睡眠誘導剤を得た。
組成(%)
ラベンサラ 0.003
オポパナックス 0.006
ベチバー 0.002
カルダモン 0.0006
β−カリオフィレン 0.0005
イソカンフィルシクロヘキサノール 0.0002
サフロール 0.0003
その他の香料組成物 残 部
エタノール 1.8
液化石油ガス 98.0%
(0.24kg/cm2、20℃)計
合計 100.0
【0054】
上記実施例2〜10についても使用感を評価したところ、いずれも過度に高められていた交感神経の活動が抑制され、副交感神経が有意な状態となった。さらに、入眠潜時を有意に短縮し、睡眠誘導に効果が得られることが充分に期待できるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の1実施例に係る継続噴霧容器の縦断面図である。
【図2】押圧体を押圧したときの状態を示す継続噴霧容器の縦断面図である。
【図3】押圧解除後の噴霧状態を示す継続噴霧容器の縦断面図である。
【図4】実施例及び比較例の睡眠誘導剤を使用した時の副交感神経活動度を示すグラフである。
【図5】実施例及び比較例の睡眠誘導剤を使用した時の睡眠潜時を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
1 エアゾール容器本体
4 蓋部
11 バルブ体
12 ハウジング
13 ステム
30 押圧体
34 収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リラックス効果を発現する芳香成分を含有する内容組成物が、継続噴霧容器に充填されてなることを特徴とする睡眠誘導剤。
【請求項2】
内容組成物中の芳香成分の含有量が0.00001〜60.00質量%、噴射剤の含有量が40.00〜99.99999質量%であることを特徴とする請求項1記載の睡眠誘導剤。
【請求項3】
継続噴霧容器が、内容組成物を収容する容器本体と、内部に内容組成物の収容室を設け、かつこの収容室内の内容組成物を外部に噴出させる噴出ノズル部を設けた押圧体と、この押圧体を押圧することにより、容器本体内の内容組成物を上記収容室に流入させると共に、押圧体に対する押圧が解除されている状態では、上記容器本体内の内容組成物の上記収容室への流入を遮断するバルブ機構とを有する噴霧容器であって、上記ノズル部からの単位時間当たりの噴出量が容器本体内からの収容室内への単位時間当たり流入量よりも少なく形成したことを特徴とする継続噴射容器である請求項1又は2記載の睡眠誘導剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−36722(P2006−36722A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222070(P2004−222070)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】