説明

瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システム

【課題】簡易な構造により建物の免震・避震の効果を達成すること。
【解決手段】検出器、処理ユニット、吸震システム、油圧積載システムと多層摺動システムを含み、地震時において、検出器が建物の移動と傾斜を検知し、検出器が側傾角パラメーターを生成して処理ユニットへ提供し、処理ユニットが側傾角パラメーターを油圧積載システムの減衰係数に換算し、油圧積載システムが、対応する減衰力にて建物のバランスを調整・制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システムに関し、殊に、地震発生容易な箇所に震波検出システムを設置し、前記建物の内に検出器と処理ユニットを設置し、且つ前記震波検出システムは、地震が起こる時に、同期に地震波信号を処理ユニットへ発射または送信し、受信し且つ予め建物に設けられた油圧積載システムを起動して圧力を釈放し、そして予め設計して設置された免震・避震システムにより、建物重量を積載することにより、地震にて生成された応力を分散的に吸収し且つ建物のバランスを保持でき、検出器が建物の発生する走向・傾斜または水平変化を検出でき、検出器もこの情報を処理ユニットへ送信して判定・演算し、前記処理ユニットが運転象限の側傾角または水平変化のパラメーターを油圧積載システムの減衰係数に換算し、油圧積載システムが、対応する減衰力にて建物のバランスを調整・分配し、このような地震により生成された応力が適時適切に調整・制御・分布してもよく、全面的降伏を達成でき、ひいては避震システムが全方位的に地震の振動エネルギーを吸収することにより、建物がほとんど山のように動かない免震状態を達成できる、建物免震・避震システムに関する。
【背景技術】
【0002】
長期の時空角度から見ると、我々が居住する地球は、不安定な各種の環境に属し、その期間に台風、地震が頻繁に起きている。
【0003】
故に、地球上の主要な三大地震帯の国家または地区において、毎年規模の大小を問わず頻繁に地震が起ている。そして毎度地震の後には(特に破壊力の極めて強い強烈地震を指す)、ビルが倒れ家が潰れ、その被害は甚大である。罹災者は至る所で満ち、悲惨な光景が繰り返し我々の目の前に現れる。
【0004】
このような地震という大自然現象は避けられない。未来を予見できる知恵は乏しいなか、科学技術を総合的に利用して、先進的な土木工程技術および現代建築技術を結合した対処が試みられている。より優れた手段により、地震による襲撃・破壊を避けられる建物を、研究・開発しなければならない。前記した災難は、その上面に居住する生き物を永遠に脅かす恐れがあり、人々の避けられない悪夢となる。沢山の有識者が、地震・天災により建物と生命・財産とに及ぼす損害を克服するための各種の解決法を、次々と提案している。今までのところ、結局は目標を全面的に達成できていない。本願の発明者は、本願の発明を研究・開発し始める前および過程中において、嘗て各種のルートを経由して地震の起源、震災の防治およびその後の生成する防震、耐震、減震、抗震、制震、抑震、隔震、免震、避震、吸震などに関する各種の技術およびその関連情報を広範に収集した。特に各国の特許庁が既に公表している前記技術に類似する発明について、より詳細に研究・勉強し且つ総合的に分析・比較して研究・整理した。確かに全ての人の才能が異なり、学習の分野が異なり、累積した経験の伝承が異なる。従って同様な問題に直面して解決方法を探しようとすると、異なる各種の考えの段階および空間を有する。言葉では言い表せず、現在では既に実施中または実施の準備または各種の刊行物とマスコミ・メディアのみに現れて未だ実施がされていないのは(一部分が理論と実際に著しい落差を有する)、全ての発明が何れもその所定の価値を有し、更に一部分の問題を解決するが、全体の問題の全面性および細部の層面から見ると、現在では既に公開された全ての防震、減震、抗震、制震、耐震、隔震、免震などに関する様々な発明の中に、我々がその双方の間に独自な長所を見い出しても、独自の短所を見い出せる。従って優劣を互いに判定し、長所・短所を直ちに見い出す。応急処置として根本的に治しない或いは根本的に治して応急処置をしないことがある。応急処置をし且つ根本的に治そうとしても、方法を間違えることがある。方法は正しいが、材料科学技術が突破できず、或いは外部環境などの影響に規制されて、あちらを立てればこちらが立たず、手抜かりなく周到ではない。
【0005】
本願の発明者は、20年前に「地震の運動エネルギーを断絶する免震建築法およびその構造」(台湾特許第198739号、日本特許第1275821号、カナダ特許第1323883号と米国発明特許第4、881、350号)を発明した。この発明を詳細に説明すると、この発明は、建物と基礎を仕切り、更にその間には、上下の表面に数多くの曲面球台を設置する支持断絶層と前記球台に対応する数多くの転がり球とを設ける。前記転がり球とその接触する対応の曲面球台との間における、極めて低い転がり摩擦推力を利用して、地震が起こる時に、最も破壊力を有する水平震動が、転がり球と曲面球台との間の往復の転がり作用により、地震の水平震動の運動エネルギーを、建物の垂直位置エネルギーに巧みに変換することができる。その間の転がり球および支持断絶層が多層の設計であってもよい。従って地震の水平震動力が下から上まで幾何級数の段々な層毎の減衰を呈し、最後にその建物へ伝送できる運動エネルギーが極めて僅かである。この他にも、支持断絶層と建物との間に数多くのリンクロッド・ダンパーを更に築いて設け、リンクロッドの作用により、地震から伝送された上下震動の運動エネルギーを、スライディング・ブロックの水平運動エネルギーに変換できる。更にてこ装置のてこ原理を利用することにより、所定の倍数比例にて、緩衝弓形スプリングから、巨大なスライディング・ブロックの運動エネルギーを吸収できる。このようにしたら、建物が地震の垂直震動力による衝撃・破壊を回避して建物の安全を保障することができる。勿論、この発明は、転がり球とその対応する球台との間の水平運動にて、最低の転がり摩擦推力を有することにより、建物が殆ど地震の水平震動の影響を受けない。但し転がり球とその接触する球台が点接触に属するので、その単位受力が非常に大きくなり、大型建物にとって、巨大な圧力に耐えてなれない。そのため、軽い建物のみに適用できて、適用範囲が制限されることが欠点のひとつである。また、この発明がリンクロッド・ダンパーを運用し、てこ作用およびてこ原理により、所定の倍数比例にて、弓形スプリングから、地震により建物へ伝送された垂直震動を緩衝的に吸収する。これも地震の上下震動衝撃を克服する巧みな設計である。普段に地震の無い状態が、何年も何か月も経つと、前記ダンパーは、建物の巨大な重量を積載し続けることになる。このように長期間が経過したら、巨大な圧力も、必ず前記リンクロッド・ダンパー・システムの構成素子である、例えばリンクロッド・アーム又は弓形スプリング等の材料に弾性疲労を生成する。そのため、使用寿命を短縮することが二つ目の欠点である。また、この発明は、多数の転がり球とリンクロッド・ダンパーにより全体の建物を積載するように設計していて、地震が起こる都度、免震防震機能を発揮できるが、例えば強風が常に吹いいる地区(特に台風またはハリケーンが常に発生する地帯)にあっては、このような免震装置が風圧の問題に対処するために1セットの保護機構を別途に設計しなければならない。この対策を講じないと、大風が吹く都度、その上に居住する人々が必ず常にぐらぐらして揺れ動く苦しみを、酷く受けてそれに耐えられないほどの迷惑を蒙る。以上の論点から見ると、今まで全ての地震問題の防治に関する発明または実用新案は、著しく潜在的な価値をそれぞれ有する。但し相対的にその大きい又は小さい欠点および数多くの未完璧な箇所をも夫々有する。本願の発明者は、即ち多段階および多方面の考量に基づき、更にこの頃の既に発展・成熟する各種の技術および関連する情報を参照し、長期間の如理作意の考えを経て、総合的に研究・勉強し、全面的に理解し、巨視的な角度により問題の核心を直接に目指し、現代の電子科学技術、通信科学技術、油圧式起重科学技術、機械科学技術など及び本願の独創する隔震・免震・避震技術を巧みに結合することにより、その双方が互いに呼応でき、そして更に夫々その有すべき機能を十分に発揮できる。この巧み且つきめ細かな設計・手配および緻密な計画を経て、上記した状況(台風または地震)において、必ずその有すべき効果を完璧に達成でき、そして人類の生存に必須な原因の一つである「居住の安全」を実行・解決できることを発明の課題とする。
【0006】
前記した課題を解決する手段としては、圧倒的多数の建物に対する免震防治・保護が勿論既に信頼できる安全・保障を十分に達成できるべきである。然しながら、いかに例示する特殊な業界および場所においては、求められる防震環境に対する要求が非常に高いものとなる。特殊な業界および場所とは、例えばウェハー・半導体製造工場、外科または顕微鏡手術を常に行う病院、重要な情報格納制御センター、人類の文明を貯蔵する重要な遺産、価値の極めて高い国宝文物陳列館および精度の要求の極めて高い他のハイテクノロジー産業などである。前記した産業・業界の生産製造または進行過程において軽微の震動でも、極めて大きい損失を招く可能性がある。
【0007】
本願の発明者は、前記の産業・業界に危害をくわえる微震問題を解決して、前記産業および特殊な場所が、地震の発生時に何の心配もなく安心できる発明を想到した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、即ち建物免震・避震システムを提供するもので、建物と基礎を分離することにより、前記建物が油圧積載システムにて積載され、地震が起こる時に、建物の内部にあり且つ建物の側傾角パラメーターを検出・測定するために用いられる検出器と処理ユニットとを、介して建物の側傾斜程度の演算を行い、ひいては油圧積載システムを駆動して減衰力を生成することにより、建物のバランスを調整制御・分配する。
【0009】
本発明の副次的な目的は、即ち建物免震・避震システムを提供するもので、建物の周囲にも油圧積載システムを設けることにより、建物が地震波により引き起こされた損害を避けてもよい。
【0010】
本発明の更なる目的は、建物免震・避震システムを提供するもので、処理ユニットが運転象限の走向と傾斜の状況に基づいて油圧積載システムの減衰力に対する優先順位を自動的に判断し、且つ複回数にて次第に少しずつ増加し或いは少しずつ減少する方式により、建物がバランスを達成する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記発明の目的を達成できる建物免震・避震システムは、吸震システム、多層摺動システム、油圧積載システムと処理ユニットを含んでなり、吸震システムが建物の下方に設置され、第1の積載部材の底部に吸震システムを設置し、前記吸震システムが建物の上下振動および水平振動を低減するように用いられ、多層摺動システムが吸震システムの下方に設置され、第2の積載部材の底部に一つのスライディング・ブロックを設置し、前記スライディング・ブロックの底部に多層積重構造を更に接触し、前記多層積重構造が複数組の寸法の次第に変化し且つ内凹曲面を有するディスク状スライディング・シートから構成され、地震水平振動を降伏・除去するように用いられ、油圧積載システムが間隔をもって多層摺動システムを配列し、建物を負荷し或いは建物負荷を除去するように用いられ、処理ユニットが油圧積載システムを電気的に接続し、地震波信号を受信することにより油圧積載システムを起動させて建物負荷を除去するように用いられる。更にその中でも、前記処理ユニットは、建物の内部に設置され且つ建物の側傾角(oblique angle)パラメーターを検出・測定するために用いられる検出器(sensor)と、検出器に接続する処理ユニットと、前記建物の底部に設置され且つ建物を支持するために用いられる吸震システム(absorber systems)と、油圧積載システム(hydraulic oil pressure system)とを、含んでなり、前記建物が象限単位(quadrant unit)の内に検出器を設置することにより、側傾角パラメーターを処理ユニットへ提供して側傾斜の検出・判断および制御を行い、建物の運転象限(quadrant of operation)に走向と傾斜(strike and dip)を有すると、処理ユニットが運転象限の側傾角パラメーターを油圧積載システムの減衰係数(coefficient of damping)に換算し、且つ油圧積載システムが、対応する減衰力(damping force)にて建物のバランス(equilibrium)を分配(distribute)・調整制御(control)する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の提供する建物免震・避震システムは、つぎの利点を有する。
1.建物が普段に油圧積載システム3により支持・固定されるため、メンテナンスの時に、他の起重ツール・設備の必要がない。
2.吸振素子12が、垂直振動の運動エネルギーを吸収し、建物の垂直および水平振動をより有効に低減できる。同時に油圧積載システム3の寿命も延長できる。
3.検出器7は、処理ユニット4の運用に対応して垂直・水平方向の地震波にも係わらず、何れも確実に掌握できる。そのため、油圧積載システム3の減衰係数を調整して避震の効果を達成する。
4.本発明の建物免震・避震システムは、建物のバランスを維持して転倒しなくて人々の生命・財産を保障できること以外に、油圧積載システム3が複回数にて次第に少しずつ増加し或いは少しずつ減少することにより、減衰力を調整できる。最後にその建物へ伝送される運動エネルギーは僅かである。
5.多層摺動システム2の設計について、その運動エネルギーが前記の幾重にも重なり合う低摩擦力の摺動素子の間を介して伝送され、そして幾何級数の段々な層毎の減衰を行ってもよい。更に上面の第1の積載部材11に設置された吸振素子12により吸収し、最後にその建物へ伝送できる震動エネルギーが極めて僅かである。建物の免震状態を達成できる。
6.第1の積載部材11の間に第2の油圧ユニット32を設けてなり、段階的な処理(stage treatment)の方式により減衰力の優先順位を制御し、地震により生成された揺れ動きが第2の油圧ユニット32を介して段階的な処理の方式により複回数にて次第に適当な減衰力を調整すれば、地震波により生成された微小な側傾角を除去でき、且つ第2の油圧ユニット32が損壊する時に、更にメンテナンス・交換が容易になる。
7.震波検出システム5を結合して通信装置により一つの信号を処理ユニット4へ送信すれば、前記処理ユニット4が油圧積載システム3を起動して建物の負荷を除去し、避震機構を起動してその有すべき避震機能を十分に発揮させることにより、建物の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の建物免震・避震システムの第1の実施例の構造断面模式図で、本発明の未動作前の状況を説明することである。
【図2】本発明の第1の実施例の動作模式図で、本発明の避震機構を起動する状況を、説明することである。
【図3】本発明の第2の実施例の構造断面模式図で、本発明の未動作前の状況を説明することである。
【図4】本発明の第2の実施例の動作模式図で、本発明の避震機構を起動する状況を、説明することである。
【図5】本発明の吸震システムの外観模式図で、吸震システムがリンクロッド・ダンパーから構成されることを、説明するように供することである。
【図6】本発明の吸震システムの外観模式図で、吸震システムが弾性体から構成されることを、説明するように供することである。
【図7】本発明の多層積重構造の断面模式図である。
【図8】本発明の多層積重構造の他の実施例の断面模式図である。
【図9】本発明の多層積重構造および油圧積載システムの配置図である。
【図10】本発明の多層積重構造のディスク状スライディング・シートの斜視模式図である。
【図11】本発明の多層積重構造のディスク状スライディング・シートの他の実施例の斜視模式図である。
【図12】地震が起こると運転象限のA側に傾斜の状況を生成することである。
【図13】地震が起こると運転象限のA側に傾斜の状況を生成することである。
【図14】本発明の油圧積載システムが処理ユニットにより演算された減衰係数に基づいて減衰力を調整する動作模式図である。
【図15】本発明の避震機構の動作の流れのブロック図である。
【図16】処理ユニットが運転象限の傾斜を判断する動作の流れのブロック図である。
【図17】本発明の油圧積載システムの他の実施例で、第1の積載部材と第2の積載部材との間に幾つかの第2の油圧ユニットを設けて段階的に処理して減衰力を調整することにより建物を保護することを、説明することである。
【図18】本発明の他の実施例である。
【図19】図18の実施例に吸震素子を付することにより垂直震動を降伏して除去する他の実施例である。
【図20】本発明の震波検出システムの位置・配置図で、震波検出システムを各地に配置でき且つ震波検出システムを介して地震波信号を処理ユニットへ伝送できることを、説明するように供することである。
【図21】本発明の震波検出システムの動作フローチャートである。
【図22】本発明の他の実施例の動作フローチャートである。
【図23】本発明の具体的な実施例の斜視断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら本発明の実施例について詳しく説明する。
【実施例】
【0015】
図1、図3と図20を参照する。本発明の提供する建物免震・避震システムは、主として吸震システム1と、多層摺動システム2と、油圧積載システム3と処理ユニット4を含んで構成される。
【0016】
前記吸震システム1は、建物の下方に設置され、第1の積載部材11の底部に吸震装置12を設置し、前記吸震装置12が建物の上下振動および微量の水平振動を低減するために用いられる。例えば図1、図2と図5に示すように、前記吸震システム1は、リンクロッド・ダンパーを使用し、基礎が建物に加える垂直方向運動エネルギーを、リンクロッド・ダンパーの弾性位置エネルギーに変換することにより、垂直方向の免震効果を達成できる。或いは例えば図3、図4と図6に示すように、前記吸震システム1も、弾性体を使用し、地震が建物に加える垂直振動の運動エネルギーを、緩衝して吸収することにより、建物が地震により引き起こされた損害を避けてもよい。或いは前記の前記リンクロッド・ダンパーと前記弾性体を結合することにより、前記建物が建物の上下振動および水平振動をより有効に低減してもよい。
【0017】
前記多層摺動システム2が吸震システム1の下方に設置され、第2の積載部材21の底部に一つのスライディング・ブロック22を設置し、前記スライディング・ブロック22の底部が多層積重構造23を更に接触している。前記多層積重構造23は複数組の寸法の同じディスク状スライディング・シート231から構成される。前記多層積重構造23が複数組の寸法の次第に変化するディスク状スライディング・シート231から構成される。例えば図7に示すように、前記スライディング・ブロック22が大体円柱状を呈し、その底部には、中心から僅かに外向きに突出する曲面を有し、この曲面が所定の曲率により、前記多層積重構造23を幾重にも積み重ねてなる最上層のディスク状スライディング・シート231と接触する。前記ディスク状スライディング・シート231が中心から僅かに内向きに凹入してディスク状に類似する内凹曲面のディスク状スライディング・シート231である。そして前記スライディング・ブロックと緊密に対応して貼り付ける。前記ディスク状スライディング・シート231も、同様な状態により、その接触する下面のディスク状スライディング・シート231と緊密に対応して貼り付けてもよい。これによって類推でき、その各層のディスク状スライディング・シート231が何れも同様な方式により互いに緊密に対応して貼り付けてもよい。その最下層のディスク状スライディング・シート231も、同様な方式により、上向きに有する内凹曲面が半球形に類似する積載基台24と緊密に対応して貼り付ける。前記の多層摺動システム2は、その全ての互いに隣接する接触面に何れも耐摩擦かつ摺動容易な材質が塗布、めっき又は貼り付けられる。前記積載基台24の底部が弾性エネルギー消耗を有する防震ライナー25を、下敷きにし、ボルトにより基礎の上に鎖固される。このように組み合わせてなる多層積重構造23は、その構造のディスク状スライディング・シート231の寸法が下から上まで層毎に次第に減少する(図7、図8、図10と図11を参照)。前記組合せのディスク状スライディング・シート231の厚さ、数量、曲面半径または面積と曲面の曲率の大きさは、実際の需要に基づいて異なる組合せ・設計を行ってもよい。
【0018】
更に前記ディスク状スライディング・シート231は、多層積重構造23を、大きくて段々と小さくなる順番に畳み上げて形成する。地震時に、摺動ブロック22が受力の方向に基づき、往復に揺れ動くことにより、1枚毎のディスク状スライディング・シート231の間に、互いに相対的な摺動を生成する。これにより、地震により生成された水平応力を除去できる。1枚毎のディスク状スライディング・シート231のエッジ箇所にフランジ233を一つ有することにより、ディスク状スライディング・シート231が揺動力によりディスク状スライディング・シート231の脱落を回避する。前記摺動ブロック22が最上面の1枚のディスク状スライディング・シート231の曲面空間内に設置される。地震時に、摺動ブロック22が受力の方向に基づき、往復の揺れ動きを行うことにより、ディスク状スライディング・シート231の間に、互いに相対的な変位摺動を生成する。これにより、応力を除去する。
【0019】
また図8は前記多層摺動システム2の他の実施例である。前記多層摺動システム2は下向きな内凹曲面の積載台26を一つ有する。そこに同一の直径・円弧のT字形または逆凸字形のスライディング・ブロック27を設置する。前記T字形のスライディング・ブロック27の上面に、中央から上向きに微突出する曲面が、前記下向きな内凹曲面の積載台26を緊密に対応して貼り付ける。そのT字形の下面に、中央から下向きに微突出する曲面も、前記積み重ねてなるディスク状スライディング・シートの組合せの最上層の上向きな内凹曲面のスライディング・シートを緊密に対応して貼り付ける。前記T字形のスライディング・ブロック27の周辺にも、大きさの異なり且つ適当な数量の孔が分布している。更に螺旋状または放射状のトレンチを有する。前記設計の意図は、その間に貯蔵または塗布された潤滑油脂が、前記T字形のスライディング・ブロック27の地震水平振動の発生時に、前記緊密に対応して貼り付ける積載基台との往復摺動を行うと、前記の油脂または潤滑油剤が、その対応して貼り付ける摺動装置を浸透、塗布と潤滑しやすくする。そしてその互いの間の摺動摩擦係数を大幅に低減させ、ひいては地震が起こる時に生成された水平振動を降伏するように寄与するためである。前記T字形のスライディング・ブロック27の下面に、相等直径・円弧の中空環状板部28を別途に設けてなる。前記中空環状板部28の周辺がボルトにより、前記下向きな内凹曲面の積載台26の下に鎖固される。その両者の間の空間は、丁度十分に前記T字形のスライディング・ブロック27が適当な水平摺動を行っても脱落しないようにする。
【0020】
前記装置の裏面には一部分の収納空間29がある。本発明は、前記収納空間29を利用できる。収納空間29を油脂、潤滑油剤を貯蔵して潤滑するために用いる。前記双凹曲面が多層摺動装置の水平変位幅を積載し、単凹曲面の多層積重構造23より遥かに大きくなる。同様に両者が地震の水平振動の運動エネルギーを、建物の垂直位置エネルギーに転化できる機能を有する。そして地震が終了した時に、建物が本来の最低・最安定の位置に回復できる。
【0021】
更に図9を参照する。油圧積載システム3では間隔をもって多層摺動システム2を配列して、建物を負荷し或いは建物負荷を除去するように用いられる。更に前記油圧積載システム3も普段、前記免震建物構造の数多くの素子(例えば弾性体または吸震装置12等の消耗材の差換え・更新)と看做してもよい。或いは定期および不定期(不定期が大地震の過ぎ後を指す)のメンテナンス(例えば摺動装置の潤滑油脂または油剤の補充・交換)の時に、既存の油圧積載システム3は、他の起重ツール・設備の必要がない。前記のメンテナンス・更新作業を順調に行ってもよいが、これがその他の付加機能である。
【0022】
例えば図1または図3に示すように、建物の底部および周辺が普段、2セット以上の油圧積載システム3により支持・固定されると、2セット以上の油圧積載システム3を使用して建物を循環・交替・支持する効果を有する。更に建物の周辺または側辺に複数の油圧積載システム3を設けて補助的に支持すると、建物が強風の吹襲の影響による揺れ動きを防止できる。そして建物内の住民の不快を回避する。
【0023】
処理ユニット4は油圧積載システム3を電気的に接続している。前記処理ユニット4は地震波を受信することにより油圧積載システム3を起動させて建物負荷を除去するために用いられる。前記震波検出システム5が予定距離の間隔をもって設置される。震波検出システム5は震波を検出するために用いられる。前記地震波および時間情報に基づいて信号を生成する。図20を参照する。前記の建物免震・避震システムに基づき、一つの震波検出システム5を更に含む。処理ユニット4は、それぞれ通信連絡または無線連絡により前記震波検出システム5へ接続していて、前記地震波信号を受信するように用いられる。且つ準則に基づいて警告信号を生成するが、実際的な応用中に、前記震波検出システム5が通信装置を含んでなる。地震時に、前記震波検出システム5が通信装置により一つの信号を処理ユニット4へ送信し、前記処理ユニット4がつまり油圧積載システム3を起動して建物負荷を除去する。このようにしたら、前記吸震システム1及び多層摺動システム2は、その有すべき免震・隔震機能を十分に発揮でき、建物の安全を確保する。
【0024】
通信装置は、ラジオ電波検出システムを更に含む。ラジオ電波伝搬ネットワークは、例えば極超高周波(ultra high frequency、 uhf)電波伝搬ネットワーク、超短波(very high frequency、 vhf)電波伝搬ネットワーク、携帯電話通信ネットワーク及び固定ネットワーク電話のネットワーク等である。このラジオ電波伝搬ネットワークは前記警告信号を前記処理ユニット4へ送信するために用いられる。実際的な応用中に、前記通信装置は、一つの衛星信号検出システムを含んでもよく、衛星、例えば海事衛星(maritime satellite)を介して前記警告信号を前記処理ユニット4へ送信するために用いられる。前記処理ユニット4が受信装置を内蔵する。この受信装置は遠方地震監視測定ステーションの内における震波検出システム5から発射(伝送)された地震波信号を受信する。前記地震波信号が、地震監視測定ステーションに設けられた震波検出システム5にて地震波の到着を検出する瞬間に、震波検出システム5により前記発射(又は伝送)装置を同期に起動し、前記震波検出システム5が地震波を地震波信号に自動的に変換して発射(又は伝送)してもよい。そして処理ユニット4が信号を受信した後に、続いて直ちに予め免震建物に設けられた油圧積載システム3を起動し、地震波が未だ到着する前に、建物のために、予め免震防治保護機構を起動することにより、建物の安全を確保する。
【0025】
前記処理ユニット4の震波検出器41が予備システムに属する。例えば図2と図4に示すように、前記震波検出器41は、前記の震波検出システム5が事故により損壊・故障して起動できなければ、地震波が到着する第一時間に、処理ユニット4の内部に予め設けられた震波検出器41により、一つの地震波信号を油圧積載システム3へ同期に送信できる。同時に油圧積載システム3を起動させるように命令することにより、建物負荷を除去し、建物が、後で来る震波による襲撃を避けて、建物の安全を保障する。前記の建物免震・避震システムに基づき、本発明は、処理ユニット4により油圧積載システム3を起動する。即ち建物を積載する油圧積載システム3(全部の積載または一部分の積載にも関わらず)及び建物の周辺に普段に安定固定支持用の油圧積載システム3の全ても、圧力を釈放する。そして予め設計・設置された免震建築構造にて、建物の全部重量を積載することにより、回復して水平運動の相対的な変位を行ってもよい。
【0026】
処理ユニット4は、選択設定装置を一つ含む。前記選択設定装置は震波検出器41又は処理ユニット4に付属する。前記選択設定装置がコンピューターのソフトウェアに対応して実際的な需要に基づいてそれぞれ建物を、或る程度の地震の発生に設定できたら、処理ユニット4が前記建物の免震機構を自動的に起動できる。
【0027】
更に前記建物が象限単位の内に検出器7を設置することにより、側傾角パラメーター(又は水平変化)を処理ユニット4へ提供して側傾斜の検出・判断および制御を行う。建物に走向と傾斜を有すると、前記検出器7が、収集された側傾角パラメーターを処理ユニット4へ提供して判定・演算し、処理ユニット4が運転象限の側傾角パラメーターを油圧積載システム3の減衰係数に換算し、且つ油圧積載システム3が、対応する減衰力にて建物のバランスを分配するように調整・制御し、更に前記処理ユニット4が運転象限の走向と傾斜の状況に基づいて油圧積載システム3の対応する減衰力の優先順位を自動的に判断する。
【0028】
前記油圧積載システム3は第3の積載部材31の上に垂直に設置される。前記油圧積載システム3が普段に建物の支持固定される。地震時に、前記の処理ユニット4が運転象限の側傾角パラメーターに基づいて油圧積載システム3の減衰係数を制御し、油圧積載システム3を駆動し、対応する減衰力により、建物のバランスを分配して傾斜しないように調整・制御する。更に建物の周辺または側辺には、複数の水平方向設置の油圧積載システム3を設けて補助的に支持する。このようにしたら、建物が強風の吹襲の影響により揺れ動きを防止できる。地震時においては、周辺または側辺の油圧積載システム3が建物のバランスを分配する既述した作用を発揮する。
【0029】
本発明の好ましい実施例はつぎの特徴を有する。
【0030】
図1と図3を更に参照して説明する。普段は建物の底部および周辺が吸震システム1と油圧積載システム3により所定の位置下に支持・固定される。吸振素子12は、長期間に建物の重圧を受けることにより吸震システム1の吸振素子12の弾性疲労および材料疲労老化を招くことがない。そのため、素子の使用寿命を延長できる。また、例えば図9に示すように、前記油圧積載システム3が間隔をもって多層摺動システム2を配列し、建物を負荷し或いは建物負荷を除去するように用いられる。建物が垂直方向と水平方向の油圧積載システム3の積載支持下にあるので、風圧をも抵抗でき、建物が強風の吹襲により揺れ動きを生成できない。メンテナンス及び素子の取替え(例えば吸振素子12の弾性体)の必要があると、油圧積載システム3が建物を支持でき、他の起重ツール・設備の必要がなく、メンテナンス及び素子の取替えを行ってもよい。建物と油圧積載システム3との間に幾つかの第1の積載部材11を設けてなり、前記第1の積載部材11が建物を支持できる以外に、第1の積載部材11も、油圧積載システム3が減衰力の分配により建物の底部を損害して建物の損害状況の発生を招くことを避け、且つ第1の積載部材11の上に吸振素子12を設けてなり、吸振素子12は、地震が建物に加える垂直振動の運動エネルギーを、吸収することにより、建物が地震により引き起こされた損害を避け、前記建物が建物の上下振動および水平振動をより有効に低減してもよい。更に油圧積載システム3が減衰力を分配する時に、生成された微小な振動も、吸振素子12を介して振動を吸収して油圧積載システム3の寿命を延長できる。
【0031】
図2、図4と図12を参照して説明する。地震が起こる時に、検出器7を接続する処理ユニット4が、油圧積載システム3を電気的に接続し、地震波信号を受信することにより油圧積載システム3を起動させて負荷を除去するように用いられる。即ち建物の垂直方向と水平方向を積載する油圧積載システム3が、圧力を釈放し、ゆっくりと或る位置まで降下する。予め設計・設置された免震・避震システムにて、建物の全部重量を積載することにより、回復して水平運動の相対的な変位状態を行ってもよい。同時に建物の内部に設置され且つ建物の側傾角パラメーターを検出・測定するために用いられる検出器7が、即ち建物の運転象限の走向と傾斜に対して側傾角パラメーターを生成し、処理ユニット4へ提供して側傾斜の検出・測定・判断および制御を行う。
【0032】
図13ないし図15を参照して運転象限のA象限に傾斜を生成する状況を説明する。検出器7が、即ちA象限の垂直および水平方向の傾斜程度に対して側傾角パラメーターを生成して処理ユニット4へ伝送すれば、前記処理ユニット4が検出器7の提供する側傾角パラメーターに基づいてA象限上の油圧積載システム3の減衰係数を調整する。油圧積載システム3が、対応する減衰力にて建物のバランスを分配するように調整・制御し、建物は傾斜・損壊を発生しない。前記油圧積載システム3の減衰力が、複回数にて次第に少しずつ増加し或いは少しずつ減少する。最後に建物へ伝導する運動エネルギーは極僅かである。
【0033】
図16を参照する。本発明の処理ユニット4は、運転象限に発生された側傾斜および走向の側傾角パラメーターを受信する時に、前記処理ユニット4が、垂直方向の油圧積載システム3、水平方向の油圧積載システム3を起動し或いは垂直および水平方向の油圧積載システム3を同時に起動するかを、自動的に判断する。このようにしたら、運転象限の垂直方向、水平方向、又は垂直および水平方向に側傾斜と走向とを発生する時に、何れも油圧積載システム3を起動して建物を平衡にできる。簡単に言えば、A象限が垂直方向に走向と傾斜を生成すれば、処理ユニット4が、検出器7の伝送した側傾角パラメーターに基づき、A象限の垂直方向の油圧積載システム3を駆動して減衰力を調整することを、自動的に判断するが、A象限上の水平方向に走向と傾斜を生成すれば、前記と同様にA象限の水平方向の油圧積載システム3の減衰力を駆動し、或いはA象限上に垂直および水平方向の側傾斜と走向を同時に発生する時に、A象限の垂直および水平方向の油圧積載システム3が減衰力の調整を同時に起動し、このようにしたら、建物が随時に何れも垂直状態を保持でき、傾斜を生成する状況を発生できない。
【0034】
その他に、地震が起こって水平振動を生成する時に、前記多層積重構造23上の摺動ブロック22が受力の方向に基づき、往復に揺れ動くことにより、1枚毎のディスク状スライディング・シート231の間に、ディスク状スライディング・シート231とその積載する積載基台24との間に、相対的な摺動を生成する。そして、地震により生成された水平応力を除去する。ディスク状スライディング・シート231のエッジ箇所にフランジ233を一つ有することにより、ディスク状スライディング・シート231が揺動力によりディスク状スライディング・シート231の脱落を防止する。吸震システム1は上下振動および微量の水平振動を緩衝して吸収できることにより、建物が信頼できる安全な保護を受ける。
【0035】
更に前記多層積重構造23の1枚ごとのディスク状スライディング・シート231には、適当な数量の長条状または長楕円形で且つ幾つかの大きさの異なる孔232が分布し、その隣接するディスク状スライディング・シート231毎の長条状または長楕円形の全てが、縦横に交差する状態を、互いに呈するが、このような設計にて、前記多層摺動システム2に塗布または貯蔵された油脂(例えばグリース)又は潤滑油脂により、地震水平振動の発生時に、その1枚毎のディスク状スライディング・シート231が相対的な変位を生成して何度も互いに往復摺動する。前記の油脂または潤滑油剤が、全体の多層摺動システム2を互いに浸透、塗布と潤滑しやすくなることにより、全体の構造の摺動素子、例えば摺動ブロック22、ディスク状スライディング・シート231及び積載基台24の全てが十分な潤滑を取得でき、そして全体の多層摺動システム2の間(即ち摺動ブロック22とディスク状スライディング・シート231との間、1枚毎のディスク状スライディング・シート231、ディスク状スライディング・シート231と積載基台24との間)の摺動摩擦係数を大幅に低減できる。したがって、地震の水平震動の発生時に、その運動エネルギーが前記の幾重にも重なり合う低摩擦力の摺動素子の間の摺動によって減衰される。最後に更に上面の第1の積載部材11に設置された吸振素子12により吸収される。建物へ伝送される震動エネルギーは極めて僅かであり、建物の免震状態を達成できる。この他にも、前記ディスク状スライディング・シート231が地震の水平運動の運動エネルギーを、建物の垂直位置エネルギーに転化できる。そして地震が終了した後に、建物が依然として本来の最低・最安定の位置に回復できる。
【0036】
図17を参照する。本発明の建物免震・避震システムの油圧積載構造の他の実施例である。油圧積載システム3が第2の油圧ユニット32を一つ含む。前記第2の油圧ユニット32が第2の積載部材21の上に設置される。そして油圧積載システム3が第3の積載部材31の上に設置される。地震が起こる時に、処理ユニット4は、油圧積載システム3と第2の油圧ユニット32を起動する。同時に前記多層積重構造23上の摺動ブロック22が水平振動に基づいて往復に揺れ動き、側傾斜の検出・測定・判断を行う。油圧積載システム3と第2の油圧ユニット32の対応する減衰力の優先順位を制御し、更に段階的な処理(STAGE TREATMENT)の方式により減衰力の優先順位を制御する。地震により生成された揺れ動きが第2の油圧ユニット32を介して段階的な処理の方式により複回数にて次第に適当な減衰力に調整される。したがって、地震波により生成された微小な側傾角を除去できる。
【0037】
或いは建物を積載するために用いられる油圧積載システム3及び第1の積載部材11の間の第2の油圧ユニット32を結合する。そして前記油圧積載システム3及び第2の油圧ユニット32の機能が前記と同じである。地震が起こる時に、油圧積載システム3が建物を支持して転倒しない以外に、前記第2の油圧ユニット32が段階的な処理の方式により減衰値を調整する。このようにしたら、前記の第1の積載部材11の間の第2の油圧ユニット32と油圧積載システム3の間を介して減衰値を分配することにより、建物が建物の上下振動および水平振動をより有効に低減できて、避震の効果を達成できる。更に多層摺動システム2の間の全ての摺動接触面には、何れも耐摩擦かつ摺動容易な材質(即ち摺動ブロック22とディスク状スライディング・シート231との間、1枚毎のディスク状スライディング・シート231、ディスク状スライディング・シート231と積載基台24との間)を塗布、めっき又は貼り付ける。これにより、前記多層摺動システム2の摺動摩擦係数を大幅に低減できる。そして地震が水平震動を発生する時に、その運動エネルギーが前記の幾重にも重なり合う低摩擦力の摺動素子の間を介して伝送され、そして幾何級数の段々な層毎の減衰を行う。最後に更に上面の第1の積載部材11に設置された吸震装置により吸収し、最後にその建物へ伝送できる震動エネルギーが極めて僅かで、建物の免震状態を達成できる。この他にも、前記ディスク状スライディング・シート231が地震の水平運動の運動エネルギーを、建物の垂直位置エネルギーに転化できる。そして地震が終了した後に、建物が依然として本来の最低・最安定の位置に回復できる。
【0038】
図18に本発明の更なる実施例を示す。油圧積載システム3が処理ユニット4のソフトウェアの切替により、垂直震動応力を除去する避震機構に変換する。図19は、図18の実施例に吸震素子12を付することにより地震の垂直震動を吸収・除去するために用いられる他の実施例である。
【0039】
本実施例に係る建物免震・避震システムは、公知の技術と比較してつぎの利点を有する。
1.建物が普段に油圧積載システム3により支持・固定され、メンテナンスの時に、他の起重ツール・設備の必要がなく、メンテナンスを行ってもよい。
2.吸振素子12が、垂直振動の運動エネルギーを吸収し、建物の垂直および水平振動をより有効に低減でき、同時に油圧積載システム3の寿命をも延長する。
3.検出器7は、処理ユニット4の運用に対応して垂直・水平方向の地震波にも係わらず、何れも確実に掌握でき、且つ油圧積載システム3の減衰係数を調整して避震の効果を達成する。
4.本発明の建物免震・避震システムを介して建物のバランスを維持して転倒しなくて人々の生命・財産を保障できる以外に、油圧積載システム3が複回数にて次第に少しずつ増加し或いは少しずつ減少することにより、減衰力を調整し、最後にその建物へ伝送できる運動エネルギーが極めて僅かである。
5.多層摺動システム2の設計について、その運動エネルギーが前記の幾重にも重なり合う低摩擦力の摺動素子の間を介して伝送され、そして幾何級数の段々な層毎の減衰を行ってもよく、最後に更に上面の第1の積載部材11に設置された吸振素子12により吸収し、最後にその建物へ伝送できる震動エネルギーが極めて僅かで、建物が殆ど免震状態を達成できる。
6.第1の積載部材11の間に第2の油圧ユニット32を設けてなり、段階的な処理(STAGE TREATMENT)の方式により減衰力の優先順位を制御し、地震により生成された揺れ動きが第2の油圧ユニット32を介して段階的な処理の方式により複回数にて次第に適当な減衰力を調整すれば、地震波により生成された微小な側傾角を除去でき、且つ第2の油圧ユニット32が損壊する時に、更にメンテナンス・交換が容易になる。
7.震波検出システム5を結合して通信装置により一つの信号を処理ユニット4へ送信すれば、前記処理ユニット4が油圧積載システム3を起動して建物の負荷を除去し、避震機構を起動してその有すべき避震機能を十分に発揮させることにより、建物の安全を確保する。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・・吸震システム
2・・・・・・多層摺動システム
3・・・・・・油圧積載システム
4・・・・・・処理ユニット
5・・・・・・震波検出システム
7・・・・・・検出器
11・・・・・第1の積載部材
12・・・・・吸震素子
21・・・・・第2の積載部材
22・・・・・摺動ブロック
23・・・・・多層積重構造
24・・・・・積載基台
25・・・・・防震ライナー
26・・・・・積載台
27・・・・・スライディング・ブロック
28・・・・・中空環状板部
29・・・・・収納空間
31・・・・・第3の積載部材
32・・・・・第2の油圧ユニット
41・・・・・震波検出器
231・・・・ディスク状スライディング・シート
232・・・・孔
233・・・・フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸震システムと、多層摺動システムと、油圧積載システムと、処理ユニットを含む建物免震・避震システムであって、
前記吸震システムは建物の下方に設置され、第1の積載部材の底部に吸震システムを設置し、前記吸震システムが建物の上下振動および水平振動を低減するように用いられ、
前記多層摺動システムが吸震システムの下方に設置され、
第2の積載部材の底部に一つのスライディング・ブロックを設置し、前記スライディング・ブロックの底部に多層積重構造を更に接触し、
前記多層積重構造は寸法が次第に変化する複数組のディスク状スライディング・シートで構成され、地震水平振動を降伏・除去するように用いられ、
油圧積載システムが間隔をもって多層摺動システムを配列し、建物を負荷し或いは建物負荷を除去するように用いられ、
処理ユニットが油圧積載システムと電気的に接続し、地震波信号を受信することにより油圧積載システムを起動させて建物負荷を除去するように用いられることを特徴とする、
建物免震・避震システム。
【請求項2】
一つの震波検出システムを更に含み、前記処理ユニットが、それぞれ通信連絡または無線連絡により前記震波検出システムへ接続し、地震波信号を受信するように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の建物免震・避震システム。
【請求項3】
一つの震波検出器を更に含み、前記震波検出器が処理ユニットの内部に設置され、予め設けられた震波検出器が地震を検出でき、且つ地震波信号を油圧積載システムへ送信し、同時に油圧積載システムを起動させるように命令することにより、建物負荷を除去することを特徴とする、請求項1に記載の建物免震・避震システム。
【請求項4】
前記多層積重構造の1枚ごとのディスク状スライディング・シートには、適当な数量の長条状または長楕円形で且つ幾つかの大きさの異なる孔が分布することを特徴とする、請求項1に記載の建物免震・避震システム。
【請求項5】
前記多層積重構造の1枚ごとのディスク状スライディング・シートには、適当な数量の長条状または長楕円形で且つ幾つかの大きさの異なる孔が分布し、その隣接するディスク状スライディング・シート毎の長条状または長楕円形の全てが、縦横に交差する状態を、互いに呈することを特徴とする、請求項4に記載の建物免震・避震システム。
【請求項6】
前記多層のディスク状スライディング・シートの組合せが、内凹曲面を上向きに有し且つ半球形に類似する積載基台に積載され、前記スライディング・ブロック及びその接触するディスク状スライディング・シートと1層毎に隣接するディスク状スライディング・シート、最後の1枚のディスク状スライディング・シートとその積載基台との間には、全てが何れも次第に変化する曲面の曲率により互いに緊密に対応して貼り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の建物免震・避震システム。
【請求項7】
選択設定装置を一つ含み、前記選択設定装置が処理ユニットに付属し、前記選択設定装置がコンピューターのソフトウェアに対応して実際的な需要に基づいてそれぞれ建物を、或る程度の地震の発生に設定できたら、処理ユニットが前記建物の免震機構を自動的に起動できることを特徴とする、請求項1に記載の建物免震・避震システム。
【請求項8】
前記処理ユニットは、建物の内部に設置され且つ建物の側傾角パラメーターを検出・測定するために用いられる検出器と、検出器に接続する処理ユニットと、前記建物の底部に設置され且つ建物を支持するために用いられる吸震システムと、油圧積載システムと、多層摺動システムとを、含み、前記建物が象限単位の内に検出器を設置することにより、側傾角パラメーターを処理ユニットへ提供して側傾斜の検出・判断および制御を行い、建物の運転象限に走向と傾斜を有すると、処理ユニットが運転象限の側傾角パラメーターを油圧積載システムの減衰係数に換算し、且つ油圧積載システムが、対応する減衰力にて建物のバランスを分配し、更に多層摺動システムを介して地震波の水平応力を除去して建物安全の保護を達成することを特徴とする、請求項1に記載の建物免震・避震システム。
【請求項9】
前記吸震システムは、建物を積載するために用いられる第1の積載部材と、スライディング・ブロックを放置する第2の積載部材と、油圧積載システムを設置・インストールする底部積載部材と、建物の上下振動および水平振動を低減する吸振素子とを、含んでなることを特徴とする、請求項8に記載の瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システム。
【請求項10】
前記処理ユニットが、油圧積載システムの減衰力の制御優先順位を自動的に判断できることを特徴とする、請求項8に記載の瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システム。
【請求項11】
前記油圧積載システムの減衰力が、複回数にて次第に少しずつ増加し或いは少しずつ減少する方式により、調整を行うことを特徴とする、請求項8に記載の瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システム。
【請求項12】
前記油圧積載システムも、段階的な処理の方式により減衰力を制御する第2の油圧ユニットを、使用できることを特徴とする、請求項8に記載の瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システム。
【請求項13】
前記油圧積載システムも、第2の油圧ユニットを加えて総合的に構成でき、建物の上下振動および水平振動を低減するために用いられ、避震の機能を達成することを特徴とする、請求項12に記載の瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システム。
【請求項14】
前記処理ユニットが、走向と傾斜とを起こした運転象限に基づき、油圧積載システムを作動させるように駆動することを特徴とする、請求項8に記載の瞬間起動可能な免震機構の建物免震・避震システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−7468(P2012−7468A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135406(P2011−135406)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(511148710)
【Fターム(参考)】