石灰化調節剤及びそのスクリーニング法
【課題】FGF23の血管および骨石灰化調節機構を解明するとともに、血管、骨あるいは歯の石灰化を調節する予防・治療剤を提供することを課題とする。また、FGF23受容体、FGF23特異的シグナル分子と相互作用する物質のスクリーニング方法を提供することをも課題とする。
【解決手段】繊維芽細胞増殖因子23(FGF23)、FGF23特異的受容体、特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を標的とする石灰化調節剤とした。
【解決手段】繊維芽細胞増殖因子23(FGF23)、FGF23特異的受容体、特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を標的とする石灰化調節剤とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性関節症、異所性骨化症、動脈硬化症あるいは骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤に関する。さらには、それら予防・治療剤のスクリーニング法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の石灰化は骨の石灰化と多くの共通点を持ち、血管の石灰化が糖尿病、慢性腎不全、動脈硬化発症などの病態に強く関与している。また、異所石灰化には炎症、腫瘍と関連した軟組織の骨化症等も挙げられる。さらに、骨化が問題となる疾患として、軟骨の一部が骨化することで痛みを引き起こす変形性関節症が知られている。これら疾患の治療薬として、スタチン系薬剤とビスフォスフォネートなどが候補として挙げられる。前者は多様な活性の中、例えば無機リン酸の産生に預かるアルカリホスファターゼ活性を阻害し、骨化を抑制することで効果を示すと考えられる。後者はカルシウム・リンの高い親和性により石灰化沈着を阻害する。しかし、これまで、臨床的にとりわけ重要と思われる血管循環系の石灰化を直接標的とした有効な予防・治療剤はない。
【0003】
石灰化病巣の平滑筋細胞では、骨芽細胞分化に必須の転写因子Runx2の発現が誘導され、骨芽細胞のマーカー、ナトリウム依存性リン酸輸送担体(NPT)など骨芽細胞と共通の様々なタンパク質が作られるようになる。しかし、骨・血管の石灰化の分子機構は現在も多くが不明である。加齢・閉経に伴うカルシウム/リン代謝ホルモンの変動の中で、骨粗鬆症と血管石灰化の間には負の相関が生まれる。ここ数年、血管と骨の間の関連性が注目され、これまで骨の石灰化に直接あるいは間接的正/負因子として、タイプIIINPTのPit-1およびその調節因子等(スタニオカルシン) (特許文献1)が公知である。
【0004】
線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は25−36%ホモロジーを有する22の構造類似体のFGFファミリーに属する(非特許文献1、非特許文献2)。FGF23は遺伝性・腫瘍性低リン血症性くる病・骨軟化症の責任因子として発見された(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。FGF23は、タイプIINPTに属するNpt2a及びNpt2bの発現抑制を介して、腎尿細管及び腸管におけるPiの吸収を阻害する重要な因子である(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。これらの低リン血症性くる病・骨軟化症では、血中FGF23が上昇し、腎臓でのPiの再吸収、ビタミンDの活性化が抑制され、低リン血症を誘導して骨組織の石灰化障害をもたらす。しかし、ビタミンD抵抗性のX連鎖性低リン血症性くる病でもFGF23の血中レベルは高値となるため(非特許文献9)、実際にFGF23の機能が十分に理解されているとは言い難い。一方、これら疾患のみならずFGF23は生理的なリン酸代謝に重要な働きを持つと推測されているが、血中PiレベルとFGF23レベルが相関しないケースもあり(非特許文献10)。その生理的意義、あるいは骨への影響などの実態はほとんど明らかにされていない。
【0005】
FGFに対する生物学的応答は特異的な細胞表面受容体のチロシンキナーゼ型受容体(FGFR)への結合を介して行われる。FGFRは6つのファミリーからなり、組織での発現量、リガンドへの結合性、シグナル伝達経路の多様性から、多様な生物学的作用を発揮する。FGF23は、現在のところこの6つのFGFRのうち、FGFR1から3のcスプライスフォームおよびFGFR4に結合することが確認されている(非特許文献11)。
【0006】
また、FGF23とFGFRsとの結合には老化抑制遺伝子産物Klothoが関与し、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)のp42/44MAPK(ERK1/2)を活性化する(非特許文献12)。これらのFGF23のシグナル伝達機構が実際にFGF23のリン酸代謝調節作用とどのように関連するかはまだ明らかにされていない。
【0007】
健常時においてもFGF23の発現は血管内皮細胞を含む多様な組織で確認されているが、中でも骨組織での発現量は他の組織のおおよそ10倍以上である(非特許文献13)。例えば、骨芽細胞は,FGF23の主要な産生細胞である(非特許文献14)。したがって、血中FGF23レベルは骨組織のとりわけ骨芽細胞などでの発現調節に強く影響されると予想される。血中FGF23レベル、培養骨芽細胞のFGF23の産生は活性型ビタミンDにより正に制御されることが報告されている(非特許文献15)。
【0008】
しかし、血管および骨石灰化に及ぼすFGF23及びその生物学的応答の詳細な機構に関しては、これまで不明である。
【特許文献1】特開2005−281189
【非特許文献1】Martin,G.R. Genes & Dev. 12:1571−1586(1998)
【非特許文献2】Ornitz, D. M. and P. J. Marie. Genes & Dev. 16: 1446−1465(2002)
【非特許文献3】ADHR Consortium. Nat. Genet. 26:345−348.(2000)
【非特許文献4】Jonsson, K.B., et al. N.Engl.J.Med.348:1656−1663(2003)
【非特許文献5】White, K.et al. Kidney Int. 60:2079−2086(2001)
【非特許文献6】Yamashita,T.et al. J Biol.Chem. 277:28265−28270(2002)
【非特許文献7】Yan,X.et al.Genes Cells10:489−502(2005)
【非特許文献8】Miyamoto,K.et al.Ther. Apher.Dial.9:331−335(2005)
【非特許文献9】Yamazaki,Y.et al. J.Clin.Endocrinol.Metab.87:4957−4960(2002)
【非特許文献10】Weber,T.J.et al. J.Bone Miner.Res.18:1227−1234(2003)
【非特許文献11】Yu,K.et al.Development130:3063−3074(2003)
【非特許文献12】Kurosu,H.et al. J.Biol.Chem.281:6120−6123(2006)
【非特許文献13】Mirams,M.et al.Bone35:1192−1199(2004)
【非特許文献14】Mirams,M.et al.Bone35:1192−1199(2004)
【非特許文献15】Kolek,O.I.et al.Am. J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.289:G1036−1042(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、FGF23の血管および骨石灰化調節機構を解明するとともに、血管、骨あるいは歯の石灰化を調節する予防・治療剤を提供することを課題とする。
【0010】
また、FGF23受容体、FGF23特異的シグナル分子と相互作用する物質のスクリーニング方法を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の成果を見出すに到った。
(1)胎仔ラット頭蓋冠由来(RC)細胞を用いた培養骨形成モデルに置いて、アデノウイルス発現ベクターを用いたヒトFGF23の過剰発現は、骨結節の数を著しく減少させた。
(2)RC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現は、同細胞のFGFRとMAPKのリン酸化を促進した。
(3)RC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現は、同細胞のNPT活性を抑制した。
(4)RC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現は、骨芽細胞分化マーカーおよびリン酸代謝調節因子のmRNAの発現に影響した。
(5)FGFRのチロシン残基リン酸化の特異的阻害剤SU5402はRC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現の影響を阻害した。
(6)ラット大動脈由来平滑筋細胞のPi負荷による石灰化モデルにおいて、FGF23
の過剰発現は石灰化を抑制した。
(7)FGF23の高発現部位は骨芽細胞の他、セメント芽細胞、象牙芽細胞など歯牙硬組織においても確認された。
【0012】
本発明者は、これらの成果により、FGF23は硬組織の生理的石灰化,あるいは血管の石灰化等の病態と関連した石灰化を調節している局所因子であり、FGF23を正にあるいは負に制御することで石灰化を抑制あるいは促進できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【発明の効果】
【0013】
上記発明により、FGF23が石灰化を調節することが明らかとなった。このFGF23発現量の上昇あるいはその情報伝達系の活性化は、石灰化を抑制するため、変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の予防・治療剤を開発する上で重要な手段を与える。一方、FGF23発現量の低下あるいはその情報伝達系の阻害は、石灰化を促進することから骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤を開発する上で重要な手段を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明はFGF23の石灰化の調節剤を提供する。ここで「調節」の例として、正に制御する「促進」または「活性化」の他、負に制御する「阻害」あるいは「抑制」などを含めることができる。「正」に制御する例として、FGF23発現量の増大あるいはFGF23特異的情報伝達機構の活性化による石灰化の抑制を示す事ができる。また「負」に制御する例として、FGF23の発現低下、FGF23の特異的受容体への結合阻害あるいはその情報伝達系の阻害による石灰化の促進の例を示す事ができる。
【0015】
すなわち、FGF23の発現上昇あるいはFGF23特異的情報伝達機構の活性化剤は、石灰化の抑制に利用でき、石灰化が促進されている疾患・状態として変形性関節症、異所性石灰化、動脈硬化症の予防・治療に利用できる。
【0016】
また、FGF23あるいはFGF23特異的情報伝達機構の阻害剤は石灰化の促進に利用でき、石灰化が阻害又は抑制されている疾患・状態として、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤として利用できる。さらに、FGF23は歯牙組織(セメント芽細胞、象牙芽細胞)においても高いレベルで発現を認めたことにより、歯周病等の歯科領域疾患や再生医療等の分野でも利用できる。
【0017】
本発明による石灰化調節剤の具体例として、FGF23を挙げることができる。FGF23は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるが、本発明はこれに限定されず、FGF23の特異的情報伝達体を調節し得る機能を有するもので、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列と類似の配列からなるFGF23変異体であればいずれでも良い。
【0018】
本発明のタンパク質の中で自然界に存在するものは、抽出、精製等の操作を経ることにより、天然のタンパク質として調製することができる。例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質は、ヒトの細胞、体液(血液、尿等)等から調製することができる。ここでの細胞としては、本発明のタンパク質を産生ないし発現しているものであれば特に限定されず、例えば、脾臓細胞、免疫系細胞等を用いることができる。
【0019】
また本発明は、FGF23またはその変異体をコードしたDNAを提供する。ヒトFGF23をコードしたDNAは、例えば、配列番号1に記載のDNAを挙げることができる。また、FGF23変異体をコードした配列は、例えば、配列番号1に記載のヒトFGF23をコードしたDNAを改変して作製することができる。
【0020】
FGF23cDNAは、当業者により公知の方法により調製することができる。本発明のDNAは、適当なゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリーから調製することができる。この場合には、本発明のタンパク質の一部をコードするDNA断片からなるプローブを用意し、これを用いて周知のハイブリダイゼーション法により本発明のDNAをスクリーニングする。また、本発明のDNAは、適当なゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリーを鋳型として適当なプライマーを用いたPCR法等により調製することが可能である。プライマーは、本発明のタンパク質をコードするDNA配列を基に、所望のDNA断片を特異的に増幅するように設計された任意のものを用いることができる。本発明のDNAを調製するために用いるゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリーは、本発明のDNAを含むものであればどのようなものでもよく、例えば、市販のDNAライブラリーを利用することができる。また、適当な細胞からmRNAを抽出し、これを鋳型として周知の方法により作製したcDNAライブラリーを用いることもできる。
【0021】
FGF23cDNAはそのまま使用できるが、ベクターに担持させて用いることもできる。
【0022】
本発明の更に他の局面は、本発明のDNAを保持するベクターに関する。換言すれば、本発明のDNAを適当なベクターに挿入して使用することができる。本発明のDNAを挿入し得るものであれば、いかなるベクターを使用することも可能であるが、使用目的(クローニング、タンパク質の発現)に応じて、また、宿主細胞の種類を考慮して適当なベクターを選択して用いることが好ましい。ベクターの例としては、大腸菌を宿主とする場合、M13ベクター、pUC系ベクター、pT7ベクターなどが挙げられる。本発明のDNAのベクターへの挿入は、制限酵素及びDNAリガーゼを用いた周知の方法(Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)により行うことができる。
【0023】
本発明の更に他の局面は、本発明のDNAを保持する形質転換体に関する。即ち、本発明のDNAで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体に関する。例えば、本発明のDNAを、リン酸カルシウム法、エレクトロポーレーション(Potter, H. et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 81,7161−7165 (1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 84,7413−7417 (1984))、マイクロインジェクション(Graessmann,M.& Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 73,366−370 (1976))等の公知の遺伝子導入方法により宿主細胞に導入して形質転換させることができる。また、上記本発明のベクターで宿主細胞を形質転換して本発明の形質転換体を得ることもできる。目的に応じて種々の宿主細胞を用いることが可能であり、例えば、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、昆虫細胞、酵母等を用いることができる。また、真核細胞に限らず、大腸菌等の原核細胞を用いることも可能である。本発明の形質転換体を適当な条件で培養することにより、本発明のDNAの発現産物(タンパク質)を大量に生産することが可能である。
【0024】
本発明のタンパク質を適用する方法としては、例えば、直接患者に投与することが挙げられる。また、本発明のタンパク質を有効成分とする組成物を構成し、これを患者に投与することもできる。投与方法としては、経口又は静脈内、動脈内、若しくは皮下注射等の公知の方法を用いることができる。また、注射等により特定の部位(例えば、骨が減少または過剰形成している部位)に直接投与することもできる。また、本発明のDNAを細胞に導入し、生体内で本発明のタンパク質を発現させることもできる。DNAの導入方法は特に限定されず、例えば、DNA導入用プラスミド又はウイルスベクターを用いた方法、エレクトロポーレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション等の公知の方法により行うことができる。
【0025】
本発明はまた、FGF23遺伝子の転写領域、プロモーター領域を含む、任意の部位を標的とするアンチセンスヌクレオチド、二本鎖RNA、リボザイムなどの機能性核酸、及びかかる機能性核酸を有効成分として含む石灰化調節剤を提供する。このような機能性核酸は、siRNA、二本鎖RNA、または、修飾されたRNA鎖を少なくとも片方の鎖に含むsiRNAまたは二本鎖RNAのいずれであってもよい。上記の機能性核酸は、静脈注射、皮下注射、経口送達、リポソーム送達または鼻腔内送達により患者へ投与され、患者の標的全身、器官、組織または細胞型に蓄積しうる。
【0026】
他に定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと同様の又は等しい方法及び材料を本発明の実施又は試験に用いることができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書中に言及するすべての公開物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照として全体が組み入れられる。相反の場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び具体例は単に例示的なものであり、限定することを意図していない。
【0027】
実施例
「実施例1」FGF23はラット胎仔頭蓋冠由来(RC)細胞培養における骨芽細胞分化と基質石灰化を抑制する
実験は、以下の方法により実施した。
1)ヒトFGF遺伝子を持つアデノウイルスベクターの構築
全長ヒトFGF23cDNAは、RT−PCRを用いてヒト心臓のトータルRNAから合成し、pTRE−shuttler2ベクター(BD Bioscience,PaloAlto, CA)のクローニング部位のEcoR1及びBamH1部位間に挿入した。I-Ceu1及びPI-Sce1により、Tet-responsive expression cassetteを単離し、Adeno−X viral DNA(BD Bioscience)に導入した。組換えAdeno−X FGF23 DNA(Ad−FGF23)は、PacI消化し、直鎖状の組換えAd−FGF23 DNAを常法に従ってHEK 293細胞にトランスフェクションすることによって作製した。発現調節用のアデノウイルスベクター(Ad−Tet−off)及び対照のアデノウイルスベクター(Ad−βgalactosidase;AD−βgal)は、添付資料に従って作製した。培養上清に産生されたアデノウイルス粒子はBD−Adeno−X virus purification kit (BD Bioscience)を用いて精製し、濃縮したアデノウイルス粒子はHEK細胞を用いてプラークフォーミングユニット(pfu)を算出した。
2)胎仔ラット頭蓋冠由来(RC)細胞培養およびアデノウイルス感染
胎仔ラットからRC細胞を分離し(Yoshiko Y, et al. Endocrinology. 144: 4134−4143. (2003))、0.3X104/cm2の細胞密度で5%胎仔血清(FCS)、50μg/mlアスコルビン酸、抗生物質を含むα―modified essential medium(α―MEM)(Gibco BRL-LifeTechnologies, Gaithersburg, MD)を用い,70%コンフルエンスになるまで培養した。この時点で(d4)、Ad−FGF23またはAd-βgalをAd−Tet−offとともに20pfu/cellの力価で感染させた。FGF23の過剰発現は,分化が開始される2日後が見込まれた。感染の4時間後、新鮮培地を追加し、さらに翌日新鮮培地に交換した。一方、成熟期(d14)のRC細胞にも同様に20pfu/cellの条件で感染させた。ノジュールの石灰化を誘導するために、50mM β―グリセロリン酸(βGP)を培養終了前2日前(d15)に添加した。培養は、5%CO2存在下37℃で一般的に2日ないし3日おきに培地を交換した。
3)ウェスタンブロット
Ad−FGF23あるいはAd−βgalの感染細胞は48時間後に細胞溶解液(100mM KCl,1mM EDTA,0.5% Nonident P―40,1mM phenylmethylsulfonylfluoride、complete protease inhibitor(Rosche Diagnostics,Penzberg,Germany)で可溶化した。
同様に感染させたRC細胞の培養上清を回収し、一部は酵素結合免疫測定法(ELISA,後述)に供した。残りは−20℃にてアセトン沈殿を行い、沈殿物は細胞溶解液に溶解した。
【0028】
試料はSDS−PAGEによる電気泳動の後、ニトロセルロース膜に転写し、抗FGF23抗体(×500,Santa Cruz Biotechnology, SantaCruz, CA)と4℃で一晩反応させた後、ペルオキシダーゼ標識二次抗体(×2,000,Santa Cruz)で室温,1時間インキュベートした。引き続き、ECLウェスタンブロッティング検出試薬(Lumi−LightPLUS Western Blotting Substrate,Roche Diagnostics)を用い、化学発光を検出した。
4)ELISA
培養液中に分泌されたFGF23はカイノス社ELISAキット(東京)によりに定量した。
5)石灰化ノジュールの同定
RC細胞は培養終了後、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、結節(ノジュール)をアルカリフォスファターゼ(ALP)染色および石灰化をフォン・コッサ染色によって同定した。
6)細胞増殖
細胞増殖速度は、3(4,5−dim4thyl−thiazoyal−2yl)2.5−diphenyltetrazoliumgromide thiazolyl blue 比色法により測定した(MTTアッセイ)。
【0029】
RC細胞を用いた培養骨形成モデル及び実験プロトコールを図1Aに示した。未分化RC細胞は増殖、6日でコンフルエンスに達する。コンフルエンスと同時に類骨に相当する有機基質からなるノジュールの形成を伴って細胞は前骨芽細胞へと分化する。培養14日目には骨芽細胞として成熟し、この時β―グリセロリン酸(βGP)を添加すると、類骨様のノジュールは2日以内に石灰化する。アデノウイルスーヒトFGF23ベクター(Ad−hFGF23)のコンストラクトは図1Bに示した。感染2日後に、Ad−hFGF23とAd−βgal感染細胞で、FGF23の発現、培養上清のFGF23のレベルをウェスタンブロットとELISAで比較したところ、Ad−hFGF23感染細胞に著しい発現と分泌増加が確認された(図2A、B)。また、Ad−hFGF23感染細胞の培養上清にはインタクトな分子サイズ(約32kDa)と、弱いながら分解産物と思われる2つのバンド(約26kDaと約16kDa)を認めた(図2C)。
【0030】
Ad−hFGF23あるいはAd−βgalをd4及びd14の成熟期のRC細胞に感染させ,培養終了後(d17)の染色像の一例を図3Aに示した。得られた染色像の計測値から、RC細胞におけるFGF23の過剰発現はノジュールの形成と石灰化のいずれも抑制することが明らかとなった(図3A,B)。
【0031】
Ad−hFGF23あるいはAd−βgalで感染させたRC細胞を2日後に低密度で継代培養し、経時的にMTTアッセイを用いて細胞増殖曲線を比較したところ、両者に有意な差は認められなかった(図3C)。
【0032】
「実施例2」FGF23は頭頂骨器官培養において骨形成を抑制する。
【0033】
実験は、以下の方法により実施した。
1)ラット頭頂骨器官培養
21日目の胎仔ラットの頭頂骨を器官培養に用いた。頭頂骨は矢状縫合に沿って半分にカットし、さらにそれを2等分した。一片の頭頂骨片をコラゲナーゼで消化し、全細胞数を計測した。Ad−FGF23またはAd−βgalを20 pfu/cellになるように頭頂骨片に4時間感染させた後、セルカルチャーインサート(pore size 0.4−μm;Millipore,Bedford,NJ)に静置した。培地は20%FCS加BGjb培地を用いた。骨形成量を確認するために、カルセイン(1 μg/ml)を翌日に添加した。培地交換は毎日行い、さらに3日間培養した後、4%PFAで4℃,2時間固定し、7μmの凍結切片とし、組織学的に解析した。
2)免疫染色
抗FGF23抗体(×100,Santa Cruz)を4℃で一晩反応させ、洗浄後ペルオキシダーゼ標識二次抗体及びABC試薬(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を説明書に準じて反応させた。切片はヘマトキシリンでカウンター染色した。陰性対象は特異的ブロッキングペプチド(Santa Cruz)を処方に従って使用した(図省略)。
【0034】
Ad−hFGF23感染させた場合,Ad−βgalと比較して骨表面の細胞群に強いFGF23のシグナルが確認された(図4A,B)。Ad−hFGF23の感染により,トルイジンブルー染色で同定される類骨層の拡大が確認された(図4C,D)。また,蓄積したカルセインの蛍光面積は減少した(図4E,F)。それらの定量値を図4Gに示した。
【0035】
「実施例3」RC細胞におけるFGF23とFGFRの共発現
実験は、以下の方法により実施した。
1)半定量的RT−PCR及びリアルタイム定量的RT−PCR解析
RC細胞のトータルRNAを経時的にTRIzol(Invitrogen,Carlabad,CA)を用いて回収した。cDNAはReverTra Ace(東洋紡,東京)を用いて、2μgのトータルRNAから50℃で合成した。PCR(Qiagen, Hilden, Germany)は標的遺伝子に最適な条件で実施した。リボゾームタンパクL32を内部コントロールとして用いた。リアルタイム定量PCRは1xSYBR Green Realtime PCR Master Mix (東洋紡)を用い、LightCycler(Rosche Diagnostics)により実施した。オステオポンチン(OPN)、ALP,骨シアロプロテイン(BSP)、オステオカルシン(OCN)、FGF23、FGFR1(R1)、FGFR2(R2)、FGFR3(R3)の2つのスプライスフォーム(bとc)、FGFR4(R4)(Yan,X.,et al.Genes Cells.10:489−502.(2005))及びL32プライマー配列を表1に示す。
【0036】
RT−PCRに用いたプライマーセット
【0037】
【表1】
【0038】
RC細胞において、R1c、R2IIIc、R3c mRNAの発現を確認したが、その他のサブタイプの mRNAは確認されなかった(図5A)。定量リアルタイムRT−PCR解析において、OPN、ALP、BSP、OCNの連続的な発現レベルの増加は,RC細胞が期待通り未分化な骨原性細胞から前骨芽細胞を経て成熟骨芽細胞に分化したことを示している(図5B)。R1c、RIIIcレベルは前骨芽細胞期にピーク値を示したのに対し、R3cは骨芽細胞の成熟期に強い特異性を示した。
【0039】
「実施例4」FGF23はFGFRのリン酸化を促進する。
【0040】
実験は、以下の方法により実施した。
【0041】
Ad−hFGF23及びAd−βgalを〔実施例1〕に従って感染させたRC細胞を5日間培養した上清を回収(ELISAでFGF23の過剰発現を確認済み)し,α−MEMにて10倍希釈した。成熟期(d14)RC細胞をガラススライド上に継代培養して1日放置後、血清濃度を0.1%に下げてさらに1日培養した。これに上述の希釈した培養上清を添加し,15分後直ちに冷アセトンで5分間固定した。細胞をブロッキング後、一次抗体(抗Runx2抗体,抗リン酸化FGFR抗体,×100,Santa Cruz)を4℃で一晩反応させた。二次抗体は,フルオレッセインイソチアシアネート(FITC)標識(Santa Cruz Biotechnology, Inc),Cy3(Jackson ImmunoResearch)標識したものを用いた。
【0042】
Ad−hFGF23及びAd−βgal感染RC細胞において、抗リン酸化FGFR抗体(anti−pFGFRs)に対する反応性は、Ad−FGF23感染細胞が明らかに強陽性であったのに対し、Ad−βgal感染細胞はほとんど染色されなかった(図6A)。また、これらの細胞はFGF23及びFGFR1〜FGFR3陽性であった(図6B)。
【0043】
「実施例5」FGF23はRC細胞のFGFRを介して石灰化を抑制する
実験は、以下の方法により実施した。リン酸化FGFR阻害剤はSU5402(CALBIOCHEM, La Jolla, CA)を使用した。
【0044】
Ad−hFGF23及びAd−βgalを〔実施例1〕のように成熟期(d14)に感染させた。感染翌日から培地交換と共に上記のインヒビター(10μM)。培養終了(d17)後、〔実施例1〕記載のようにALP/フォン・コッサ染色を施し、ノジュールと石灰化を計測した。
【0045】
FGFRのリン酸化阻害剤はFGF23によるノジュールの石灰化抑制を部分的に回復させた(図7)。
【0046】
「実施例6」FGF23は、骨芽細胞分化マーカーおよびリン酸代謝調節因子のmRNAの発現を調節する。
【0047】
実験は、以下の方法により実施した。
【0048】
Ad−hFGF23またはAd−βgalを〔実施例1〕に従って、70%コンフルエンス(d4)及び成熟期(d14)のRC細胞に感染させ、培養終了後〔実施例3〕にしたがってトータルRNAを回収し、定量リアルタイムRT−PCRに供した。〔実施例3〕の表1の骨芽細胞マーカーに加え、リン酸代謝調節因子として、matrix extracellular phosphoglycoprotein(MEPE)(Gowen, L. C. et al. J Biol Chem. 278:1998−2007. (2003)),secreted frezzled−relarted protein (sFRP)―4(Berndt T. et al., J Clin Invest 112: 785-794, (2003)),スタニオカルシン(STC)1(Yoshiko, Y. et al. Endocrinology. 144: 4134−4143. (2003))の分泌タンパク及びPit−1,Pit−2, phosphate−regulating gene with homologies to endopeptidases on X chromosome(Phex)(Drezner,M.K. Kidney Int.57:9−18(2000))の膜タンパクを解析した。それぞれのプライマー配列を表2に示す。
【0049】
RT−PCRに用いたプライマーセット
【0050】
【表2】
【0051】
Ad−hFGF23をd4に感染した場合、Ad−βgalに比較して、OCN、Phex、MEPEのmRNAレベルは著しく低下し、ALP、STC1、Pit−1 mRNAのレベルも低下した。一方、BSP、sFRP−4 mRNAレベルは増加し、OPNは不変であった(図8A)。一方、Ad−hFGF23をd14に感染した場合、ALP、Pit−1、Pit−2、MEPE、STC1 mRNAレベルの増加、Phex及びOCN mRNAレベルの減少を認めた。しかし、OPN、BSP、sFRP−4 mRNAレベルは不変であった(図8B)。
【0052】
「実施例7」FGF23は培養血管平滑筋のPi誘導石灰化を抑制する。
【0053】
実験は、以下の方法により実施した。
【0054】
ラット大動脈由来平滑筋細胞(継代15代以内)を10%FCS加D―MEMを用い、0.5〜0.8×104/cm2でプレーティングした。細胞がコンフルエンスに達した時、1.5mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)を負荷(石灰化培地)すると同時にAd−hFGF23またはAd−βgalを20pfu/cellとなるように感染させた。感染の基本的手順は〔実施例1〕に従った。2日〜3日ごとに新鮮な石灰化培地に交換した。
感染後10日目に細胞を洗浄後、トリス緩衝液にて洗浄後、0.6N塩酸処理し、石灰化をカルシウムCテスト−ワコー(和光純薬工業,東京)にて測定した。
【0055】
Ad−hFGF23感染平滑筋ではAd−βgal感染平滑筋に比較して、リン酸負荷による石灰化を有意に抑制した(図9)。
【0056】
「実施例8」 FGF23は象牙質,セメント質でも産生される。
【0057】
成獣雄(8週齢)及び胎仔(胎生21日)ラットの組織から〔実施例3〕に従ってトータルRNAを回収し、FGF23の発現をリアルタイムRT−PCRで確認した。また、同ラットの歯牙組織におけるFGF23の免疫染色をABC法(Vector Laboratories,Burlingame,CA)により実施した。成獣雄ラットの下顎を4%パラフォルムアルデヒドにより4℃で一晩固定後、クエン酸・蟻酸溶液またはEDTAで脱灰し、パラフィン標本とした。5〜6μmの切片を作製し、抗FGF23抗体(Santa Cruz)は4℃で一晩反応させた。リアルタイムPCRの結果、骨組織以外では歯牙組織で高い発現が確認された(図10)。免疫染色では象牙芽細胞、セメント芽細胞がFGF23陽性となった(図11)。このことから、FGF23は硬組織の基質形成に預かる細胞(エナメル芽細胞は除く)で産生されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記発明により明らかにされたFGF23が石灰化を調節する機構、具体的にはFGF23の発現上昇あるいはその情報伝達系の活性化は、石灰化を抑制することから変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の予防・治療剤として利用することができる。一方、FGF23の発現低下あるいはその情報伝達系の阻害は、石灰化を促進することから骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤のほか、歯周病等の歯科領域疾患あるいは歯科における再生医療等にも利用できる。さらに、それら疾患の予防・治療剤をスクリーニングする方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(A):RC細胞を用いた培養骨形成モデル及び実験プロトコール。(B):hFGF23組換えアデノイウルスベクターの構造。ITR,逆向き反復配列末端(inverted terminal repeats)。hCMV−1,テトラサイクリン応答配列付加サイトメガロウイルスプロモーター(minimum immediate early promoter of cytomegalovirus)。
【図2】RC細胞におけるhFGF23過剰発現の確認。(A):細胞におけるhFGF23の遺伝子とタンパクの発現。(B):ELISAによる培養上清中のhFGF23の定量。(C):培養上清中のhFGF23タンパクの性状。
【図3】RC細胞培養の培養骨形成モデルにおけるhFGF23過剰発現の影響。 d4(A)及びd14(B)RC細胞にウイルスベクターを感染させ,d17でサンプリングした。(A):ALP及びフォン・コッサ染色。(B):(A)の染色によるALP陽性ノジュール及び石灰化ノジュールの数。数値は平均±SD。(A)のグラフ及び(B)下段のグラフは、いずれもAd−βgalと比較して有意差あり((1)P<0.05、(2)P<0.01)。n=4。(C):d4RC細胞にウイルスベクターを感染後,継代培養した細胞のMTTアッセイによる増殖曲線。数値は平均±SD。同日の2者間で有意差なし。n=4。
【図4】頭頂骨器官培養におけるFGF23過剰発現の影響。(A):免疫染色によるFGF23の過剰発現。(B):カルセインの蛍光像。(C):(B)のカルセイン蛍光量の定量。数値は平均±SD。いずれもAd―βgalとの比較で有意差あり(P<0.05)。n=8。
【図5】RC細胞におけるFGF23及びFGFRsの共発現。(A): RT−PCRによるRC細胞におけるFGFRサブタイプmRNAの発現。(B):リアルタイム定量RT−PCRによる骨芽細胞分化に伴う骨芽細胞分化マーカー,FGF23及びFGFRのmRNAレベル。数値は平均±SD。n=3。
【図6】RC細胞におけるhFGF23の過剰発現によるFGFRの活性化。(A):抗FGFRリン酸化抗体(anti−pFGFRs)による蛍光免疫染色。(B):抗FGF23抗体と抗FGFR1〜3抗体による染色。
【図7】RC細胞におけるhFGF23過剰発現による石灰化抑制に対するFGFRリン酸化阻害剤。数値は平均±SD。Ad―βgalとの比較で有意差あり(P<0.05)。n=4。
【図8】RC細胞の骨芽細胞マーカー及びPi代謝関連因子mRNAレベルにおけるFGF23過剰発現の影響。d4(A)及びd14(B)RC細胞にウイルスベクターを感染させ,d17でサンプリングした。数値は平均±SD。n=3。
【図9】ラット大動脈平滑筋細胞のPi誘導石灰化におけるFGF23過剰発現の影響。数値は平均±SD。Ad―βgalとの比較で有意差あり(P<0.05)。n=4。
【図10】FGF23 mRNA発現レベル。数値は平均±SD。いずれも胎仔との比較で有意差あり(*P<0.05,**P<0.01)。n=3。Femur(大腿骨)、Calvaria(頭頂骨)、Incisor(切歯)、Brain(脳)、Thymus(胸腺)、Spleen(脾臓)、Kidney(腎臓)、Liver(肝臓)、Heart(心臓)、S.intestine(小腸)。
【図11】成獣雄ラット歯牙・歯周組織におけるFGF23の局在。メチルグリーンは対比染色。 パネルaは切歯(ir)と臼歯(mo)、歯槽骨(ab)を含む下顎矢状断。Pdl、de、 ce puはそれぞれ歯根膜、象牙質、セメント質、歯髄を示す。パネルb〜dはパネルaのB〜Dの強拡大。円柱状の象牙芽細胞(§)、セメント芽細胞 (Θ)、歯槽骨の骨芽細胞(*) はpdlやpuの細胞に比較して強い染色性を示す。歯槽骨骨細胞(矢頭)と同様基質に埋没したセメント細胞(∞) の一部も陽性。パネルeはネガティブコントロール。パネルaのCの領域に相当。バーは50μm。
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性関節症、異所性骨化症、動脈硬化症あるいは骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤に関する。さらには、それら予防・治療剤のスクリーニング法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の石灰化は骨の石灰化と多くの共通点を持ち、血管の石灰化が糖尿病、慢性腎不全、動脈硬化発症などの病態に強く関与している。また、異所石灰化には炎症、腫瘍と関連した軟組織の骨化症等も挙げられる。さらに、骨化が問題となる疾患として、軟骨の一部が骨化することで痛みを引き起こす変形性関節症が知られている。これら疾患の治療薬として、スタチン系薬剤とビスフォスフォネートなどが候補として挙げられる。前者は多様な活性の中、例えば無機リン酸の産生に預かるアルカリホスファターゼ活性を阻害し、骨化を抑制することで効果を示すと考えられる。後者はカルシウム・リンの高い親和性により石灰化沈着を阻害する。しかし、これまで、臨床的にとりわけ重要と思われる血管循環系の石灰化を直接標的とした有効な予防・治療剤はない。
【0003】
石灰化病巣の平滑筋細胞では、骨芽細胞分化に必須の転写因子Runx2の発現が誘導され、骨芽細胞のマーカー、ナトリウム依存性リン酸輸送担体(NPT)など骨芽細胞と共通の様々なタンパク質が作られるようになる。しかし、骨・血管の石灰化の分子機構は現在も多くが不明である。加齢・閉経に伴うカルシウム/リン代謝ホルモンの変動の中で、骨粗鬆症と血管石灰化の間には負の相関が生まれる。ここ数年、血管と骨の間の関連性が注目され、これまで骨の石灰化に直接あるいは間接的正/負因子として、タイプIIINPTのPit-1およびその調節因子等(スタニオカルシン) (特許文献1)が公知である。
【0004】
線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は25−36%ホモロジーを有する22の構造類似体のFGFファミリーに属する(非特許文献1、非特許文献2)。FGF23は遺伝性・腫瘍性低リン血症性くる病・骨軟化症の責任因子として発見された(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。FGF23は、タイプIINPTに属するNpt2a及びNpt2bの発現抑制を介して、腎尿細管及び腸管におけるPiの吸収を阻害する重要な因子である(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。これらの低リン血症性くる病・骨軟化症では、血中FGF23が上昇し、腎臓でのPiの再吸収、ビタミンDの活性化が抑制され、低リン血症を誘導して骨組織の石灰化障害をもたらす。しかし、ビタミンD抵抗性のX連鎖性低リン血症性くる病でもFGF23の血中レベルは高値となるため(非特許文献9)、実際にFGF23の機能が十分に理解されているとは言い難い。一方、これら疾患のみならずFGF23は生理的なリン酸代謝に重要な働きを持つと推測されているが、血中PiレベルとFGF23レベルが相関しないケースもあり(非特許文献10)。その生理的意義、あるいは骨への影響などの実態はほとんど明らかにされていない。
【0005】
FGFに対する生物学的応答は特異的な細胞表面受容体のチロシンキナーゼ型受容体(FGFR)への結合を介して行われる。FGFRは6つのファミリーからなり、組織での発現量、リガンドへの結合性、シグナル伝達経路の多様性から、多様な生物学的作用を発揮する。FGF23は、現在のところこの6つのFGFRのうち、FGFR1から3のcスプライスフォームおよびFGFR4に結合することが確認されている(非特許文献11)。
【0006】
また、FGF23とFGFRsとの結合には老化抑制遺伝子産物Klothoが関与し、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)のp42/44MAPK(ERK1/2)を活性化する(非特許文献12)。これらのFGF23のシグナル伝達機構が実際にFGF23のリン酸代謝調節作用とどのように関連するかはまだ明らかにされていない。
【0007】
健常時においてもFGF23の発現は血管内皮細胞を含む多様な組織で確認されているが、中でも骨組織での発現量は他の組織のおおよそ10倍以上である(非特許文献13)。例えば、骨芽細胞は,FGF23の主要な産生細胞である(非特許文献14)。したがって、血中FGF23レベルは骨組織のとりわけ骨芽細胞などでの発現調節に強く影響されると予想される。血中FGF23レベル、培養骨芽細胞のFGF23の産生は活性型ビタミンDにより正に制御されることが報告されている(非特許文献15)。
【0008】
しかし、血管および骨石灰化に及ぼすFGF23及びその生物学的応答の詳細な機構に関しては、これまで不明である。
【特許文献1】特開2005−281189
【非特許文献1】Martin,G.R. Genes & Dev. 12:1571−1586(1998)
【非特許文献2】Ornitz, D. M. and P. J. Marie. Genes & Dev. 16: 1446−1465(2002)
【非特許文献3】ADHR Consortium. Nat. Genet. 26:345−348.(2000)
【非特許文献4】Jonsson, K.B., et al. N.Engl.J.Med.348:1656−1663(2003)
【非特許文献5】White, K.et al. Kidney Int. 60:2079−2086(2001)
【非特許文献6】Yamashita,T.et al. J Biol.Chem. 277:28265−28270(2002)
【非特許文献7】Yan,X.et al.Genes Cells10:489−502(2005)
【非特許文献8】Miyamoto,K.et al.Ther. Apher.Dial.9:331−335(2005)
【非特許文献9】Yamazaki,Y.et al. J.Clin.Endocrinol.Metab.87:4957−4960(2002)
【非特許文献10】Weber,T.J.et al. J.Bone Miner.Res.18:1227−1234(2003)
【非特許文献11】Yu,K.et al.Development130:3063−3074(2003)
【非特許文献12】Kurosu,H.et al. J.Biol.Chem.281:6120−6123(2006)
【非特許文献13】Mirams,M.et al.Bone35:1192−1199(2004)
【非特許文献14】Mirams,M.et al.Bone35:1192−1199(2004)
【非特許文献15】Kolek,O.I.et al.Am. J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.289:G1036−1042(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、FGF23の血管および骨石灰化調節機構を解明するとともに、血管、骨あるいは歯の石灰化を調節する予防・治療剤を提供することを課題とする。
【0010】
また、FGF23受容体、FGF23特異的シグナル分子と相互作用する物質のスクリーニング方法を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の成果を見出すに到った。
(1)胎仔ラット頭蓋冠由来(RC)細胞を用いた培養骨形成モデルに置いて、アデノウイルス発現ベクターを用いたヒトFGF23の過剰発現は、骨結節の数を著しく減少させた。
(2)RC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現は、同細胞のFGFRとMAPKのリン酸化を促進した。
(3)RC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現は、同細胞のNPT活性を抑制した。
(4)RC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現は、骨芽細胞分化マーカーおよびリン酸代謝調節因子のmRNAの発現に影響した。
(5)FGFRのチロシン残基リン酸化の特異的阻害剤SU5402はRC細胞におけるヒトFGF23の過剰発現の影響を阻害した。
(6)ラット大動脈由来平滑筋細胞のPi負荷による石灰化モデルにおいて、FGF23
の過剰発現は石灰化を抑制した。
(7)FGF23の高発現部位は骨芽細胞の他、セメント芽細胞、象牙芽細胞など歯牙硬組織においても確認された。
【0012】
本発明者は、これらの成果により、FGF23は硬組織の生理的石灰化,あるいは血管の石灰化等の病態と関連した石灰化を調節している局所因子であり、FGF23を正にあるいは負に制御することで石灰化を抑制あるいは促進できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【発明の効果】
【0013】
上記発明により、FGF23が石灰化を調節することが明らかとなった。このFGF23発現量の上昇あるいはその情報伝達系の活性化は、石灰化を抑制するため、変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の予防・治療剤を開発する上で重要な手段を与える。一方、FGF23発現量の低下あるいはその情報伝達系の阻害は、石灰化を促進することから骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤を開発する上で重要な手段を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明はFGF23の石灰化の調節剤を提供する。ここで「調節」の例として、正に制御する「促進」または「活性化」の他、負に制御する「阻害」あるいは「抑制」などを含めることができる。「正」に制御する例として、FGF23発現量の増大あるいはFGF23特異的情報伝達機構の活性化による石灰化の抑制を示す事ができる。また「負」に制御する例として、FGF23の発現低下、FGF23の特異的受容体への結合阻害あるいはその情報伝達系の阻害による石灰化の促進の例を示す事ができる。
【0015】
すなわち、FGF23の発現上昇あるいはFGF23特異的情報伝達機構の活性化剤は、石灰化の抑制に利用でき、石灰化が促進されている疾患・状態として変形性関節症、異所性石灰化、動脈硬化症の予防・治療に利用できる。
【0016】
また、FGF23あるいはFGF23特異的情報伝達機構の阻害剤は石灰化の促進に利用でき、石灰化が阻害又は抑制されている疾患・状態として、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤として利用できる。さらに、FGF23は歯牙組織(セメント芽細胞、象牙芽細胞)においても高いレベルで発現を認めたことにより、歯周病等の歯科領域疾患や再生医療等の分野でも利用できる。
【0017】
本発明による石灰化調節剤の具体例として、FGF23を挙げることができる。FGF23は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるが、本発明はこれに限定されず、FGF23の特異的情報伝達体を調節し得る機能を有するもので、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列と類似の配列からなるFGF23変異体であればいずれでも良い。
【0018】
本発明のタンパク質の中で自然界に存在するものは、抽出、精製等の操作を経ることにより、天然のタンパク質として調製することができる。例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質は、ヒトの細胞、体液(血液、尿等)等から調製することができる。ここでの細胞としては、本発明のタンパク質を産生ないし発現しているものであれば特に限定されず、例えば、脾臓細胞、免疫系細胞等を用いることができる。
【0019】
また本発明は、FGF23またはその変異体をコードしたDNAを提供する。ヒトFGF23をコードしたDNAは、例えば、配列番号1に記載のDNAを挙げることができる。また、FGF23変異体をコードした配列は、例えば、配列番号1に記載のヒトFGF23をコードしたDNAを改変して作製することができる。
【0020】
FGF23cDNAは、当業者により公知の方法により調製することができる。本発明のDNAは、適当なゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリーから調製することができる。この場合には、本発明のタンパク質の一部をコードするDNA断片からなるプローブを用意し、これを用いて周知のハイブリダイゼーション法により本発明のDNAをスクリーニングする。また、本発明のDNAは、適当なゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリーを鋳型として適当なプライマーを用いたPCR法等により調製することが可能である。プライマーは、本発明のタンパク質をコードするDNA配列を基に、所望のDNA断片を特異的に増幅するように設計された任意のものを用いることができる。本発明のDNAを調製するために用いるゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリーは、本発明のDNAを含むものであればどのようなものでもよく、例えば、市販のDNAライブラリーを利用することができる。また、適当な細胞からmRNAを抽出し、これを鋳型として周知の方法により作製したcDNAライブラリーを用いることもできる。
【0021】
FGF23cDNAはそのまま使用できるが、ベクターに担持させて用いることもできる。
【0022】
本発明の更に他の局面は、本発明のDNAを保持するベクターに関する。換言すれば、本発明のDNAを適当なベクターに挿入して使用することができる。本発明のDNAを挿入し得るものであれば、いかなるベクターを使用することも可能であるが、使用目的(クローニング、タンパク質の発現)に応じて、また、宿主細胞の種類を考慮して適当なベクターを選択して用いることが好ましい。ベクターの例としては、大腸菌を宿主とする場合、M13ベクター、pUC系ベクター、pT7ベクターなどが挙げられる。本発明のDNAのベクターへの挿入は、制限酵素及びDNAリガーゼを用いた周知の方法(Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)により行うことができる。
【0023】
本発明の更に他の局面は、本発明のDNAを保持する形質転換体に関する。即ち、本発明のDNAで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体に関する。例えば、本発明のDNAを、リン酸カルシウム法、エレクトロポーレーション(Potter, H. et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 81,7161−7165 (1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 84,7413−7417 (1984))、マイクロインジェクション(Graessmann,M.& Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 73,366−370 (1976))等の公知の遺伝子導入方法により宿主細胞に導入して形質転換させることができる。また、上記本発明のベクターで宿主細胞を形質転換して本発明の形質転換体を得ることもできる。目的に応じて種々の宿主細胞を用いることが可能であり、例えば、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、昆虫細胞、酵母等を用いることができる。また、真核細胞に限らず、大腸菌等の原核細胞を用いることも可能である。本発明の形質転換体を適当な条件で培養することにより、本発明のDNAの発現産物(タンパク質)を大量に生産することが可能である。
【0024】
本発明のタンパク質を適用する方法としては、例えば、直接患者に投与することが挙げられる。また、本発明のタンパク質を有効成分とする組成物を構成し、これを患者に投与することもできる。投与方法としては、経口又は静脈内、動脈内、若しくは皮下注射等の公知の方法を用いることができる。また、注射等により特定の部位(例えば、骨が減少または過剰形成している部位)に直接投与することもできる。また、本発明のDNAを細胞に導入し、生体内で本発明のタンパク質を発現させることもできる。DNAの導入方法は特に限定されず、例えば、DNA導入用プラスミド又はウイルスベクターを用いた方法、エレクトロポーレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション等の公知の方法により行うことができる。
【0025】
本発明はまた、FGF23遺伝子の転写領域、プロモーター領域を含む、任意の部位を標的とするアンチセンスヌクレオチド、二本鎖RNA、リボザイムなどの機能性核酸、及びかかる機能性核酸を有効成分として含む石灰化調節剤を提供する。このような機能性核酸は、siRNA、二本鎖RNA、または、修飾されたRNA鎖を少なくとも片方の鎖に含むsiRNAまたは二本鎖RNAのいずれであってもよい。上記の機能性核酸は、静脈注射、皮下注射、経口送達、リポソーム送達または鼻腔内送達により患者へ投与され、患者の標的全身、器官、組織または細胞型に蓄積しうる。
【0026】
他に定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと同様の又は等しい方法及び材料を本発明の実施又は試験に用いることができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書中に言及するすべての公開物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照として全体が組み入れられる。相反の場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び具体例は単に例示的なものであり、限定することを意図していない。
【0027】
実施例
「実施例1」FGF23はラット胎仔頭蓋冠由来(RC)細胞培養における骨芽細胞分化と基質石灰化を抑制する
実験は、以下の方法により実施した。
1)ヒトFGF遺伝子を持つアデノウイルスベクターの構築
全長ヒトFGF23cDNAは、RT−PCRを用いてヒト心臓のトータルRNAから合成し、pTRE−shuttler2ベクター(BD Bioscience,PaloAlto, CA)のクローニング部位のEcoR1及びBamH1部位間に挿入した。I-Ceu1及びPI-Sce1により、Tet-responsive expression cassetteを単離し、Adeno−X viral DNA(BD Bioscience)に導入した。組換えAdeno−X FGF23 DNA(Ad−FGF23)は、PacI消化し、直鎖状の組換えAd−FGF23 DNAを常法に従ってHEK 293細胞にトランスフェクションすることによって作製した。発現調節用のアデノウイルスベクター(Ad−Tet−off)及び対照のアデノウイルスベクター(Ad−βgalactosidase;AD−βgal)は、添付資料に従って作製した。培養上清に産生されたアデノウイルス粒子はBD−Adeno−X virus purification kit (BD Bioscience)を用いて精製し、濃縮したアデノウイルス粒子はHEK細胞を用いてプラークフォーミングユニット(pfu)を算出した。
2)胎仔ラット頭蓋冠由来(RC)細胞培養およびアデノウイルス感染
胎仔ラットからRC細胞を分離し(Yoshiko Y, et al. Endocrinology. 144: 4134−4143. (2003))、0.3X104/cm2の細胞密度で5%胎仔血清(FCS)、50μg/mlアスコルビン酸、抗生物質を含むα―modified essential medium(α―MEM)(Gibco BRL-LifeTechnologies, Gaithersburg, MD)を用い,70%コンフルエンスになるまで培養した。この時点で(d4)、Ad−FGF23またはAd-βgalをAd−Tet−offとともに20pfu/cellの力価で感染させた。FGF23の過剰発現は,分化が開始される2日後が見込まれた。感染の4時間後、新鮮培地を追加し、さらに翌日新鮮培地に交換した。一方、成熟期(d14)のRC細胞にも同様に20pfu/cellの条件で感染させた。ノジュールの石灰化を誘導するために、50mM β―グリセロリン酸(βGP)を培養終了前2日前(d15)に添加した。培養は、5%CO2存在下37℃で一般的に2日ないし3日おきに培地を交換した。
3)ウェスタンブロット
Ad−FGF23あるいはAd−βgalの感染細胞は48時間後に細胞溶解液(100mM KCl,1mM EDTA,0.5% Nonident P―40,1mM phenylmethylsulfonylfluoride、complete protease inhibitor(Rosche Diagnostics,Penzberg,Germany)で可溶化した。
同様に感染させたRC細胞の培養上清を回収し、一部は酵素結合免疫測定法(ELISA,後述)に供した。残りは−20℃にてアセトン沈殿を行い、沈殿物は細胞溶解液に溶解した。
【0028】
試料はSDS−PAGEによる電気泳動の後、ニトロセルロース膜に転写し、抗FGF23抗体(×500,Santa Cruz Biotechnology, SantaCruz, CA)と4℃で一晩反応させた後、ペルオキシダーゼ標識二次抗体(×2,000,Santa Cruz)で室温,1時間インキュベートした。引き続き、ECLウェスタンブロッティング検出試薬(Lumi−LightPLUS Western Blotting Substrate,Roche Diagnostics)を用い、化学発光を検出した。
4)ELISA
培養液中に分泌されたFGF23はカイノス社ELISAキット(東京)によりに定量した。
5)石灰化ノジュールの同定
RC細胞は培養終了後、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、結節(ノジュール)をアルカリフォスファターゼ(ALP)染色および石灰化をフォン・コッサ染色によって同定した。
6)細胞増殖
細胞増殖速度は、3(4,5−dim4thyl−thiazoyal−2yl)2.5−diphenyltetrazoliumgromide thiazolyl blue 比色法により測定した(MTTアッセイ)。
【0029】
RC細胞を用いた培養骨形成モデル及び実験プロトコールを図1Aに示した。未分化RC細胞は増殖、6日でコンフルエンスに達する。コンフルエンスと同時に類骨に相当する有機基質からなるノジュールの形成を伴って細胞は前骨芽細胞へと分化する。培養14日目には骨芽細胞として成熟し、この時β―グリセロリン酸(βGP)を添加すると、類骨様のノジュールは2日以内に石灰化する。アデノウイルスーヒトFGF23ベクター(Ad−hFGF23)のコンストラクトは図1Bに示した。感染2日後に、Ad−hFGF23とAd−βgal感染細胞で、FGF23の発現、培養上清のFGF23のレベルをウェスタンブロットとELISAで比較したところ、Ad−hFGF23感染細胞に著しい発現と分泌増加が確認された(図2A、B)。また、Ad−hFGF23感染細胞の培養上清にはインタクトな分子サイズ(約32kDa)と、弱いながら分解産物と思われる2つのバンド(約26kDaと約16kDa)を認めた(図2C)。
【0030】
Ad−hFGF23あるいはAd−βgalをd4及びd14の成熟期のRC細胞に感染させ,培養終了後(d17)の染色像の一例を図3Aに示した。得られた染色像の計測値から、RC細胞におけるFGF23の過剰発現はノジュールの形成と石灰化のいずれも抑制することが明らかとなった(図3A,B)。
【0031】
Ad−hFGF23あるいはAd−βgalで感染させたRC細胞を2日後に低密度で継代培養し、経時的にMTTアッセイを用いて細胞増殖曲線を比較したところ、両者に有意な差は認められなかった(図3C)。
【0032】
「実施例2」FGF23は頭頂骨器官培養において骨形成を抑制する。
【0033】
実験は、以下の方法により実施した。
1)ラット頭頂骨器官培養
21日目の胎仔ラットの頭頂骨を器官培養に用いた。頭頂骨は矢状縫合に沿って半分にカットし、さらにそれを2等分した。一片の頭頂骨片をコラゲナーゼで消化し、全細胞数を計測した。Ad−FGF23またはAd−βgalを20 pfu/cellになるように頭頂骨片に4時間感染させた後、セルカルチャーインサート(pore size 0.4−μm;Millipore,Bedford,NJ)に静置した。培地は20%FCS加BGjb培地を用いた。骨形成量を確認するために、カルセイン(1 μg/ml)を翌日に添加した。培地交換は毎日行い、さらに3日間培養した後、4%PFAで4℃,2時間固定し、7μmの凍結切片とし、組織学的に解析した。
2)免疫染色
抗FGF23抗体(×100,Santa Cruz)を4℃で一晩反応させ、洗浄後ペルオキシダーゼ標識二次抗体及びABC試薬(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を説明書に準じて反応させた。切片はヘマトキシリンでカウンター染色した。陰性対象は特異的ブロッキングペプチド(Santa Cruz)を処方に従って使用した(図省略)。
【0034】
Ad−hFGF23感染させた場合,Ad−βgalと比較して骨表面の細胞群に強いFGF23のシグナルが確認された(図4A,B)。Ad−hFGF23の感染により,トルイジンブルー染色で同定される類骨層の拡大が確認された(図4C,D)。また,蓄積したカルセインの蛍光面積は減少した(図4E,F)。それらの定量値を図4Gに示した。
【0035】
「実施例3」RC細胞におけるFGF23とFGFRの共発現
実験は、以下の方法により実施した。
1)半定量的RT−PCR及びリアルタイム定量的RT−PCR解析
RC細胞のトータルRNAを経時的にTRIzol(Invitrogen,Carlabad,CA)を用いて回収した。cDNAはReverTra Ace(東洋紡,東京)を用いて、2μgのトータルRNAから50℃で合成した。PCR(Qiagen, Hilden, Germany)は標的遺伝子に最適な条件で実施した。リボゾームタンパクL32を内部コントロールとして用いた。リアルタイム定量PCRは1xSYBR Green Realtime PCR Master Mix (東洋紡)を用い、LightCycler(Rosche Diagnostics)により実施した。オステオポンチン(OPN)、ALP,骨シアロプロテイン(BSP)、オステオカルシン(OCN)、FGF23、FGFR1(R1)、FGFR2(R2)、FGFR3(R3)の2つのスプライスフォーム(bとc)、FGFR4(R4)(Yan,X.,et al.Genes Cells.10:489−502.(2005))及びL32プライマー配列を表1に示す。
【0036】
RT−PCRに用いたプライマーセット
【0037】
【表1】
【0038】
RC細胞において、R1c、R2IIIc、R3c mRNAの発現を確認したが、その他のサブタイプの mRNAは確認されなかった(図5A)。定量リアルタイムRT−PCR解析において、OPN、ALP、BSP、OCNの連続的な発現レベルの増加は,RC細胞が期待通り未分化な骨原性細胞から前骨芽細胞を経て成熟骨芽細胞に分化したことを示している(図5B)。R1c、RIIIcレベルは前骨芽細胞期にピーク値を示したのに対し、R3cは骨芽細胞の成熟期に強い特異性を示した。
【0039】
「実施例4」FGF23はFGFRのリン酸化を促進する。
【0040】
実験は、以下の方法により実施した。
【0041】
Ad−hFGF23及びAd−βgalを〔実施例1〕に従って感染させたRC細胞を5日間培養した上清を回収(ELISAでFGF23の過剰発現を確認済み)し,α−MEMにて10倍希釈した。成熟期(d14)RC細胞をガラススライド上に継代培養して1日放置後、血清濃度を0.1%に下げてさらに1日培養した。これに上述の希釈した培養上清を添加し,15分後直ちに冷アセトンで5分間固定した。細胞をブロッキング後、一次抗体(抗Runx2抗体,抗リン酸化FGFR抗体,×100,Santa Cruz)を4℃で一晩反応させた。二次抗体は,フルオレッセインイソチアシアネート(FITC)標識(Santa Cruz Biotechnology, Inc),Cy3(Jackson ImmunoResearch)標識したものを用いた。
【0042】
Ad−hFGF23及びAd−βgal感染RC細胞において、抗リン酸化FGFR抗体(anti−pFGFRs)に対する反応性は、Ad−FGF23感染細胞が明らかに強陽性であったのに対し、Ad−βgal感染細胞はほとんど染色されなかった(図6A)。また、これらの細胞はFGF23及びFGFR1〜FGFR3陽性であった(図6B)。
【0043】
「実施例5」FGF23はRC細胞のFGFRを介して石灰化を抑制する
実験は、以下の方法により実施した。リン酸化FGFR阻害剤はSU5402(CALBIOCHEM, La Jolla, CA)を使用した。
【0044】
Ad−hFGF23及びAd−βgalを〔実施例1〕のように成熟期(d14)に感染させた。感染翌日から培地交換と共に上記のインヒビター(10μM)。培養終了(d17)後、〔実施例1〕記載のようにALP/フォン・コッサ染色を施し、ノジュールと石灰化を計測した。
【0045】
FGFRのリン酸化阻害剤はFGF23によるノジュールの石灰化抑制を部分的に回復させた(図7)。
【0046】
「実施例6」FGF23は、骨芽細胞分化マーカーおよびリン酸代謝調節因子のmRNAの発現を調節する。
【0047】
実験は、以下の方法により実施した。
【0048】
Ad−hFGF23またはAd−βgalを〔実施例1〕に従って、70%コンフルエンス(d4)及び成熟期(d14)のRC細胞に感染させ、培養終了後〔実施例3〕にしたがってトータルRNAを回収し、定量リアルタイムRT−PCRに供した。〔実施例3〕の表1の骨芽細胞マーカーに加え、リン酸代謝調節因子として、matrix extracellular phosphoglycoprotein(MEPE)(Gowen, L. C. et al. J Biol Chem. 278:1998−2007. (2003)),secreted frezzled−relarted protein (sFRP)―4(Berndt T. et al., J Clin Invest 112: 785-794, (2003)),スタニオカルシン(STC)1(Yoshiko, Y. et al. Endocrinology. 144: 4134−4143. (2003))の分泌タンパク及びPit−1,Pit−2, phosphate−regulating gene with homologies to endopeptidases on X chromosome(Phex)(Drezner,M.K. Kidney Int.57:9−18(2000))の膜タンパクを解析した。それぞれのプライマー配列を表2に示す。
【0049】
RT−PCRに用いたプライマーセット
【0050】
【表2】
【0051】
Ad−hFGF23をd4に感染した場合、Ad−βgalに比較して、OCN、Phex、MEPEのmRNAレベルは著しく低下し、ALP、STC1、Pit−1 mRNAのレベルも低下した。一方、BSP、sFRP−4 mRNAレベルは増加し、OPNは不変であった(図8A)。一方、Ad−hFGF23をd14に感染した場合、ALP、Pit−1、Pit−2、MEPE、STC1 mRNAレベルの増加、Phex及びOCN mRNAレベルの減少を認めた。しかし、OPN、BSP、sFRP−4 mRNAレベルは不変であった(図8B)。
【0052】
「実施例7」FGF23は培養血管平滑筋のPi誘導石灰化を抑制する。
【0053】
実験は、以下の方法により実施した。
【0054】
ラット大動脈由来平滑筋細胞(継代15代以内)を10%FCS加D―MEMを用い、0.5〜0.8×104/cm2でプレーティングした。細胞がコンフルエンスに達した時、1.5mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)を負荷(石灰化培地)すると同時にAd−hFGF23またはAd−βgalを20pfu/cellとなるように感染させた。感染の基本的手順は〔実施例1〕に従った。2日〜3日ごとに新鮮な石灰化培地に交換した。
感染後10日目に細胞を洗浄後、トリス緩衝液にて洗浄後、0.6N塩酸処理し、石灰化をカルシウムCテスト−ワコー(和光純薬工業,東京)にて測定した。
【0055】
Ad−hFGF23感染平滑筋ではAd−βgal感染平滑筋に比較して、リン酸負荷による石灰化を有意に抑制した(図9)。
【0056】
「実施例8」 FGF23は象牙質,セメント質でも産生される。
【0057】
成獣雄(8週齢)及び胎仔(胎生21日)ラットの組織から〔実施例3〕に従ってトータルRNAを回収し、FGF23の発現をリアルタイムRT−PCRで確認した。また、同ラットの歯牙組織におけるFGF23の免疫染色をABC法(Vector Laboratories,Burlingame,CA)により実施した。成獣雄ラットの下顎を4%パラフォルムアルデヒドにより4℃で一晩固定後、クエン酸・蟻酸溶液またはEDTAで脱灰し、パラフィン標本とした。5〜6μmの切片を作製し、抗FGF23抗体(Santa Cruz)は4℃で一晩反応させた。リアルタイムPCRの結果、骨組織以外では歯牙組織で高い発現が確認された(図10)。免疫染色では象牙芽細胞、セメント芽細胞がFGF23陽性となった(図11)。このことから、FGF23は硬組織の基質形成に預かる細胞(エナメル芽細胞は除く)で産生されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記発明により明らかにされたFGF23が石灰化を調節する機構、具体的にはFGF23の発現上昇あるいはその情報伝達系の活性化は、石灰化を抑制することから変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の予防・治療剤として利用することができる。一方、FGF23の発現低下あるいはその情報伝達系の阻害は、石灰化を促進することから骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防・治療剤のほか、歯周病等の歯科領域疾患あるいは歯科における再生医療等にも利用できる。さらに、それら疾患の予防・治療剤をスクリーニングする方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(A):RC細胞を用いた培養骨形成モデル及び実験プロトコール。(B):hFGF23組換えアデノイウルスベクターの構造。ITR,逆向き反復配列末端(inverted terminal repeats)。hCMV−1,テトラサイクリン応答配列付加サイトメガロウイルスプロモーター(minimum immediate early promoter of cytomegalovirus)。
【図2】RC細胞におけるhFGF23過剰発現の確認。(A):細胞におけるhFGF23の遺伝子とタンパクの発現。(B):ELISAによる培養上清中のhFGF23の定量。(C):培養上清中のhFGF23タンパクの性状。
【図3】RC細胞培養の培養骨形成モデルにおけるhFGF23過剰発現の影響。 d4(A)及びd14(B)RC細胞にウイルスベクターを感染させ,d17でサンプリングした。(A):ALP及びフォン・コッサ染色。(B):(A)の染色によるALP陽性ノジュール及び石灰化ノジュールの数。数値は平均±SD。(A)のグラフ及び(B)下段のグラフは、いずれもAd−βgalと比較して有意差あり((1)P<0.05、(2)P<0.01)。n=4。(C):d4RC細胞にウイルスベクターを感染後,継代培養した細胞のMTTアッセイによる増殖曲線。数値は平均±SD。同日の2者間で有意差なし。n=4。
【図4】頭頂骨器官培養におけるFGF23過剰発現の影響。(A):免疫染色によるFGF23の過剰発現。(B):カルセインの蛍光像。(C):(B)のカルセイン蛍光量の定量。数値は平均±SD。いずれもAd―βgalとの比較で有意差あり(P<0.05)。n=8。
【図5】RC細胞におけるFGF23及びFGFRsの共発現。(A): RT−PCRによるRC細胞におけるFGFRサブタイプmRNAの発現。(B):リアルタイム定量RT−PCRによる骨芽細胞分化に伴う骨芽細胞分化マーカー,FGF23及びFGFRのmRNAレベル。数値は平均±SD。n=3。
【図6】RC細胞におけるhFGF23の過剰発現によるFGFRの活性化。(A):抗FGFRリン酸化抗体(anti−pFGFRs)による蛍光免疫染色。(B):抗FGF23抗体と抗FGFR1〜3抗体による染色。
【図7】RC細胞におけるhFGF23過剰発現による石灰化抑制に対するFGFRリン酸化阻害剤。数値は平均±SD。Ad―βgalとの比較で有意差あり(P<0.05)。n=4。
【図8】RC細胞の骨芽細胞マーカー及びPi代謝関連因子mRNAレベルにおけるFGF23過剰発現の影響。d4(A)及びd14(B)RC細胞にウイルスベクターを感染させ,d17でサンプリングした。数値は平均±SD。n=3。
【図9】ラット大動脈平滑筋細胞のPi誘導石灰化におけるFGF23過剰発現の影響。数値は平均±SD。Ad―βgalとの比較で有意差あり(P<0.05)。n=4。
【図10】FGF23 mRNA発現レベル。数値は平均±SD。いずれも胎仔との比較で有意差あり(*P<0.05,**P<0.01)。n=3。Femur(大腿骨)、Calvaria(頭頂骨)、Incisor(切歯)、Brain(脳)、Thymus(胸腺)、Spleen(脾臓)、Kidney(腎臓)、Liver(肝臓)、Heart(心臓)、S.intestine(小腸)。
【図11】成獣雄ラット歯牙・歯周組織におけるFGF23の局在。メチルグリーンは対比染色。 パネルaは切歯(ir)と臼歯(mo)、歯槽骨(ab)を含む下顎矢状断。Pdl、de、 ce puはそれぞれ歯根膜、象牙質、セメント質、歯髄を示す。パネルb〜dはパネルaのB〜Dの強拡大。円柱状の象牙芽細胞(§)、セメント芽細胞 (Θ)、歯槽骨の骨芽細胞(*) はpdlやpuの細胞に比較して強い染色性を示す。歯槽骨骨細胞(矢頭)と同様基質に埋没したセメント細胞(∞) の一部も陽性。パネルeはネガティブコントロール。パネルaのCの領域に相当。バーは50μm。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞増殖因子23(FGF23)、FGF23特異的受容体、特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を標的とする石灰化調節剤。
【請求項2】
FGF23を有効成分とする変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項3】
請求項2記載の有効成分が配列番号1記載の塩基配列を備えたDNA(Fgf23)あるいは配列番号2記載のアミノ酸配列を備えたタンパク質(FGF23)。
【請求項4】
DNAがベクターに担持された、請求項2及び3記載の変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項5】
タンパク質が組換体である請求項2及び3記載の変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項6】
FGF23特異的受容体の下流にある少なくともJNKを含むマイトジェン活性化プロテインキナーゼ等のFGF23特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を活性化する化合物を有効成分とする請求項2至5記載の変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項7】
FGF23の阻害剤を有効成分とする骨粗鬆症、くる病、骨軟化症における石灰化促進剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤。
【請求項8】
阻害剤がFGF23特異的なアンチセンス、RNAiなどの核酸、中和抗体、受容体拮抗剤、特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を阻害する化合物を特徴とする請求項7記載の骨粗鬆症、くる病、骨軟化症における石灰化促進剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤。
【請求項9】
骨、軟骨、血管、筋肉、歯などの疾患部位を標的組織とするFGF23に関する請求項1記載の石灰化調節剤。
【請求項10】
請求項1至9記載の治療剤のためのドラッグデリバリーシステム。
【請求項11】
FGF23、FGF23受容体あるいはFGF23特異的シグナル分子と相互作用する石灰化調節剤のスクリーニング方法。
【請求項1】
線維芽細胞増殖因子23(FGF23)、FGF23特異的受容体、特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を標的とする石灰化調節剤。
【請求項2】
FGF23を有効成分とする変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項3】
請求項2記載の有効成分が配列番号1記載の塩基配列を備えたDNA(Fgf23)あるいは配列番号2記載のアミノ酸配列を備えたタンパク質(FGF23)。
【請求項4】
DNAがベクターに担持された、請求項2及び3記載の変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項5】
タンパク質が組換体である請求項2及び3記載の変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項6】
FGF23特異的受容体の下流にある少なくともJNKを含むマイトジェン活性化プロテインキナーゼ等のFGF23特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を活性化する化合物を有効成分とする請求項2至5記載の変形性関節症、異所性石灰化症、動脈硬化症の石灰化阻害剤。
【請求項7】
FGF23の阻害剤を有効成分とする骨粗鬆症、くる病、骨軟化症における石灰化促進剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤。
【請求項8】
阻害剤がFGF23特異的なアンチセンス、RNAiなどの核酸、中和抗体、受容体拮抗剤、特異的シグナル分子あるいはその特異的情報伝達機構を阻害する化合物を特徴とする請求項7記載の骨粗鬆症、くる病、骨軟化症における石灰化促進剤及び歯周病に伴う歯槽骨の吸収抑制剤、歯(象牙質、セメント質)の再生治療剤。
【請求項9】
骨、軟骨、血管、筋肉、歯などの疾患部位を標的組織とするFGF23に関する請求項1記載の石灰化調節剤。
【請求項10】
請求項1至9記載の治療剤のためのドラッグデリバリーシステム。
【請求項11】
FGF23、FGF23受容体あるいはFGF23特異的シグナル分子と相互作用する石灰化調節剤のスクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−17790(P2008−17790A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194078(P2006−194078)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(502310416)株式会社ラフィーネインターナショナル (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(502310416)株式会社ラフィーネインターナショナル (8)
【Fターム(参考)】
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