説明

石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システム

【課題】石炭ガス化ガスから二酸化炭素を除去するために必要なエネルギーを削減でき、二酸化炭素を効率良く回収できる石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システムを提供すること。
【解決手段】二酸化炭素回収システム10は、石炭ガス化ガスを生成するガス化炉11と、脱硫装置12と、ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変換するCOシフト器13と、ガス中の水分を除去する除湿装置14と、ガスを冷却するガス冷却装置16と、ガス中の二酸化炭素を冷却して回収する二酸化炭素回収装置18と、を備え、空気から気体酸素及び気体窒素を生成すると共に液体酸素及び液体窒素を生成する深冷分離装置20と、気体酸素をガス化炉11に供給する酸素供給ラインL1,L2,L3と、液体酸素の冷熱をガス冷却装置16に供給する液体酸素供給ラインL11と、液体窒素の冷熱を二酸化炭素回収装置18に供給する液体窒素供給ラインL12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化炉から排出される石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素を回収する石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石炭、石油等のハイドロカーボン系の燃料をガス化し、これをタービンに供給して発電を行うガス化複合発電システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような複合発電システムでは、例えば石炭を空気等と共に高温高圧下のガス化炉内に吹き込み、ガス化炉内で石炭を部分燃焼(酸化)させて石炭ガス化ガスを生成させている。石炭ガス化ガスは、一酸化炭素(CO)、水素(H)、水(HO)及び二酸化炭素(CO)を含んでおり、この石炭ガス化ガスを冷却、脱硫等した後にガスタービンに供給して発電を行っている。
【0004】
したがって、石炭ガス化ガスを燃焼させて発電すると、その排気ガスには多量の二酸化炭素が含まれることとなるため、石炭ガス化ガスを複合発電システムに供給する前に、石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素を除去することが必要である。このため、化学吸収法を用いた二酸化炭素の回収手段が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2870929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この化学吸収法を使用する場合、石炭ガス化炉に加え、吸収塔や再生塔等の設置が必要となり、設備費が増大してしまう。
【0007】
また、化学吸収のための動力も必要となるため、発電システム全体の効率が低下することが懸念される。
【0008】
したがって、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を除去するために必要なエネルギーを削減でき、二酸化炭素を効率良く回収することができる手段の提供が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を除去するために必要なエネルギーを削減でき、二酸化炭素を効率良く回収することができる石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、以下のような石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システムを提供する。
【0011】
(1) 石炭をガス化して燃焼用の石炭ガス化ガスを生成するガス化炉と、前記石炭ガス化ガスに含まれる硫黄分を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置を経た前記石炭ガス化ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変換するCOシフト装置と、前記COシフト装置を経た前記石炭ガス化ガスに含まれる水分を除去する除湿装置と、前記除湿装置を経た前記石炭ガス化ガスを冷却するガス冷却装置と、前記ガス冷却装置を経た前記石炭ガス化ガスに含まれる前記二酸化炭素を冷却して回収する二酸化炭素回収装置と、を備える石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システムであって、空気から前記ガス化炉の燃焼に用いられる気体酸素及び気体窒素を生成すると共に液体酸素及び液体窒素を生成する深冷分離装置と、前記気体酸素を前記ガス化炉に供給する酸素供給経路と、前記液体酸素の冷熱を前記ガス冷却装置に供給する液体酸素供給経路と、前記液体窒素の冷熱を前記二酸化炭素回収装置に供給する液体窒素供給経路と、を備えることを特徴とする。
【0012】
(1)の発明によれば、ガス化炉の燃料(気体酸素)を生成する深冷分離装置の冷熱を、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を液化して除去する際に利用することができる。したがって、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を除去するために必要なエネルギーを削減でき、二酸化炭素を効率良く回収することができる。
【0013】
(2) (1)の発明においては、前記液体酸素供給経路から前記ガス冷却装置に供給され、当該ガス冷却装置で気化した酸素を前記ガス化炉に供給する酸素供給経路を備えることが好ましい。
【0014】
(2)の発明によれば、ガス冷却装置に冷熱を供給した酸素をガス化炉の燃焼に有効に利用することができる。
【0015】
(3) (1)又は(2)に記載の発明においては、前記液体窒素供給経路から前記二酸化炭素回収装置に供給され、当該二酸化炭素回収装置で気化した窒素を前記ガス化炉に供給する窒素供給経路を備えることが好ましい。
【0016】
(3)の発明によれば、二酸化炭素回収装置に冷熱を供給した窒素を、ガス化炉の燃焼用酸素のキャリーガスとして有効に利用することができる。
【0017】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の発明においては、前記石炭ガス化ガスの流路における前記ガス冷却装置の上流側には、前記除湿装置を経た当該石炭ガス化ガスを圧縮する圧縮装置を備えることが好ましい。
【0018】
(4)の発明によれば、除湿装置を経た石炭ガス化ガスを圧縮装置によって圧縮することにより、石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素の飽和圧力を上げることができるので、二酸化炭素の液化を促進することができ、液体二酸化炭素の回収率を向上させることができる。
【0019】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の発明においては、前記石炭ガス化ガスの流路における前記二酸化炭素回収装置の上流側には、前記ガス冷却装置を経た当該石炭ガス化ガスを圧縮する圧縮装置を備えることが好ましい。
【0020】
(5)の発明によれば、ガス冷却装置を経た石炭ガス化ガスを圧縮装置によって圧縮することにより、石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素の飽和圧力を上げることができるので、二酸化炭素の液化を促進することができ、液体二酸化炭素の回収率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を除去するために必要なエネルギーを削減でき、二酸化炭素を効率良く回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素回収システムを示す説明図である。
【図2】図1の各ポイントにおける熱物質収支計算結果を示す図である。
【図3】二酸化炭素の飽和圧力と温度との関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る二酸化炭素回収システムを示す説明図である。
【図5】図4の各ポイントにおける熱物質収支計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム10を示す説明図である。なお、図1においては、一酸化炭素をCOと表示し、二酸化炭素をCOと表示している。
【0025】
<二酸化炭素回収システムの全体構成の説明>
二酸化炭素回収システム10は、石炭ガス化ガスを生成するガス化炉11と、脱硫装置12と、COシフト器13と、除湿装置14と、ガス冷却装置16と、二酸化炭素回収装置18と、を備える。
【0026】
また、二酸化炭素回収システム10は、深冷分離装置20と、気体酸素をガス化炉11に供給する酸素供給ラインL1,L2,L3と、液体酸素の冷熱をガス冷却装置16に供給する液体酸素供給ラインL11と、液体窒素の冷熱を二酸化炭素回収装置18に供給する液体窒素供給ラインL12と、を備える。
【0027】
<ガス化炉の説明>
ガス化炉11は、石炭を高温高圧下で部分燃焼(酸化)させて主に水素及び一酸化炭素等を含む石炭ガス化ガスを生成する。ガス化炉11には、気体酸素を吹き込むための酸素供給ライン(酸素供給経路)L1,L2,L3が接続されている。
【0028】
酸素供給ラインL1,L2からは、後述する深冷分離装置20で生成される気体酸素が供給される。酸素供給ラインL3からは、深冷分離装置20で生成される液体酸素が、ガス冷却装置16を流れるガスと熱交換することによって気化した酸素が供給される。
【0029】
また、ガス化炉11には、後述する二酸化炭素回収装置18から気体窒素を供給するための窒素供給ライン(窒素供給経路)L4が接続されている。この気体窒素は、気体酸素をガス化炉11に供給する際のキャリーガスとして有効に利用される。
【0030】
このように、ガス化炉11には、空気から分離された気体酸素のみが供給されるため、ガス化炉11から排出されラインL5を通るガスは、一酸化炭素(CO)、水素(H)、水(HO)及び二酸化炭素(CO)を含むものとなる。ガス化炉11は、ラインL5によって脱硫装置12と接続されている。
【0031】
<脱硫装置の説明>
脱硫装置12は、ガス化炉11からラインL5を流れてきた石炭ガス化ガス中の硫黄分を除去する。石炭ガス化ガス中の硫黄分を除去することにより、システムを構成する各装置の腐食防止にも資する。脱硫装置12は、ラインL6によってCOシフト器13と接続されている。
【0032】
<COシフト器の説明>
COシフト器(COシフト装置)13は、脱硫装置12からラインL6を流れてきた石炭ガス化ガス中の一酸化炭素(CO)を、蒸気の存在により二酸化炭素(CO)及び水素(H)にシフトする(CO+HO→CO+H)ように構成されている。
【0033】
なお、このシフト反応に必要な蒸気は、例えば、図示しない複合発電システムの中・低圧タービン等からの抽気蒸気を供給しても良く、供給源は任意である。COシフト器13は、ラインL7によって除湿装置14と接続されている。
【0034】
<除湿装置の説明>
除湿装置14は、COシフト器13を経た石炭ガス化ガスから水分を除去可能に構成されている。石炭ガス化ガスが、後述するガス冷却装置16に導入されて冷却(熱交換)されたときに、ガス冷却装置16の伝熱管に氷が付着しないようにするためである。
【0035】
除湿装置14は、例えば、除湿用冷媒(例えば、シリコンオイル等)中に石炭ガス化ガスを供給することにより、石炭ガス化ガスの水分を冷却・固化し、この固化した水分(氷)を当該除湿用冷媒内で捕集するように構成することができる。
【0036】
また、除湿装置14は、石炭ガス化ガスの水分を吸着すると共に、加熱されることにより吸着した水分を放出して再生する活性アルミナ等の水分吸着剤を備えるように構成されても良い。除湿装置14は、ラインL8によってガス冷却装置16と接続されている。
【0037】
<ガス冷却装置の説明>
ガス冷却装置16は、除湿装置14を経た石炭ガス化ガスと、深冷分離装置20によって生成された液体酸素とを熱交換する熱交換器である。ガス冷却装置16は、液体酸素供給ライン(液体酸素供給経路)L11によって深冷分離装置20と接続されると共に、酸素供給ラインL3によってガス化炉11と接続され、更に、ラインL9によって二酸化炭素回収装置18と接続されている。
【0038】
すなわち、ガス冷却装置16は、ガス化炉11に供給する気体酸素を深冷分離装置20で製造する際に生成された液体酸素の冷熱を利用することにより、石炭ガス化ガスを冷却するようにしたものである。
【0039】
ガス冷却装置16において、石炭ガス化ガスを冷却することによって気化した酸素は、酸素供給ラインL3を通ってガス化炉11に供給されるようになっている。
【0040】
<深冷分離装置の説明>
深冷分離装置20は、原料となる空気を加圧冷却して液体酸素及び液体窒素を生成すると共に、気体酸素及び気体窒素を生成可能に構成されている。すなわち、深冷分離装置20は、酸素供給ラインL1,L2によってガス化炉11と接続され、気体酸素及び気体窒素を、酸素供給ラインL1,L2を介してガス化炉11に供給可能に構成されている。
【0041】
また、深冷分離装置20は、液体酸素供給ラインL11によってガス冷却装置16と接続され、生成した液体酸素をガス冷却装置16に供給可能に構成されている。更に、深冷分離装置20は、液体窒素供給ライン(液体窒素供給経路)L12によって二酸化炭素回収装置18と接続され、生成した液体窒素を二酸化炭素回収装置18に供給可能に構成されている。
【0042】
なお、ガス冷却装置16に供給する液体酸素及び二酸化炭素回収装置18に供給する液体窒素を生成するには、冷却エネルギーを必要とするので、深冷分離装置20の負荷を低減するためにも、生成する液体酸素及び液体窒素は、必要最小限であることが好ましい。
【0043】
<二酸化炭素回収装置の説明>
二酸化炭素回収装置18は、ガス冷却装置16を経た石炭ガス化ガスを、深冷分離装置20によって生成された液体窒素の冷熱により冷却し、当該石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素を液化分離して回収する熱交換器である。
【0044】
二酸化炭素回収装置18は、液体窒素供給ラインL12によって深冷分離装置20と接続されると共に、窒素供給ラインL4によってガス化炉11と接続され、更に、ラインL10によって複合発電システム(図示せず)と接続されている。
【0045】
すなわち、二酸化炭素回収装置18によって二酸化炭素を除去された石炭ガス化ガスは、水素が主成分の水素リッチガスとなり、ラインL10によって、上記複合発電システムのタービンの燃焼器(図示せず)に供給されるようになっている。
【0046】
二酸化炭素回収装置18において、石炭ガス化ガスを冷却することによって気化した窒素は、窒素供給ラインL4を通ってガス化炉11に供給されるようになっている。この気体窒素は、気体酸素をガス化炉11に供給する際のキャリーガスとして、有効に利用される。
【0047】
また、石炭ガス化ガスから分離除去された液体二酸化炭素(液化CO)は、ラインL13から系の外部に送出されるように構成されている。
【0048】
<二酸化炭素回収システムの作用及び効果の説明>
次に、二酸化炭素回収システム10の動作(作用及び効果)について図1、図2及び図3を参照して説明する。ここで、図2は、図1の各ポイント(ポイントP1〜ポイントP10)における熱物質収支計算結果を示す図である。すなわち、図2は、図1の各ポイント(ポイントP1〜ポイントP10)における石炭ガス化ガスの相の種類、温度、圧力、平均分子量、モル流量及び組成を示す。図3は、二酸化炭素の飽和圧力と温度との関係を示すグラフ図である。
【0049】
ガス化炉11は、窒素供給ラインL4からキャリーガスとして供給される気体窒素(ポイントP8において温度が約5℃)によって、酸素供給ラインL1,L2からは、後述する深冷分離装置20で生成される気体酸素(ポイントP9,ポイントP10において温度が約25℃)が供給される。
【0050】
また、ガス化炉11は、酸素供給ラインL3からも気体酸素(ポイントP6において温度が約5℃)が供給される。これにより、ガス化炉11は、石炭を高温高圧下で部分燃焼(酸化)させて、主に水素(H)及び一酸化炭素(CO)等を含む石炭ガス化ガスを生成する。
【0051】
ガス化炉11には、空気から分離された気体酸素のみが供給されるため、ガス化炉11で生成される石炭ガス化ガスは、一酸化炭素(CO)、水素(H)、水(HO)及び二酸化炭素(CO)を含むものとなる。この石炭ガス化ガスは、ラインL5を通って脱硫装置12に送られる。
【0052】
脱硫装置12に送られた石炭ガス化ガスは、硫黄分を除去される。そして、石炭ガス化ガスは、ラインL6と通ってCOシフト器13に送られる。
【0053】
COシフト器13に送られた石炭ガス化ガスは、石炭ガス化ガス中の一酸化炭素(CO)を、図示しない蒸気の供給によってシフト(CO+HO→CO+H)する。すなわち、COシフト器13では、このシフト反応により、二酸化炭素(CO)及び水素(H)が生成される。そして、石炭ガス化ガスは、ラインL7と通って除湿装置14に送られる。
【0054】
除湿装置14に送られた石炭ガス化ガスは、水分を除去され、ラインL8と通ってガス冷却装置16に送られる。ガス冷却装置16に導入された石炭ガス化ガスは、既に水分を除去されているので、ガス冷却装置16内で冷却(熱交換)されたときに、ガス冷却装置16の伝熱管に氷を付着させない。
【0055】
このときラインL8のポイントP1では、図2に示すように、例えば石炭ガス化ガスの温度が5℃、圧力が7.6MPaとなっている。また、石炭ガス化ガスの組成は、例えば水素が53%、二酸化炭素が37.4%であり、両者で約90%を占めている。
【0056】
そして、ガス冷却装置16に送られた石炭ガス化ガスは、深冷分離装置20の液体酸素供給ラインL11から供給される液体酸素の冷熱によって冷却される。
【0057】
例えば、液体酸素供給ラインL11のポイントP5では、図2に示すように、液体酸素の温度は、約−196℃となっている。石炭ガス化ガスは、この液体酸素によって−23℃(図2に示すラインL9のポイントP2の値を参照)まで冷却され、ラインL9を通って二酸化炭素回収装置18に送られる。
【0058】
このようにガス冷却装置16は、深冷分離装置20から供給される液体酸素の冷熱を有効に利用して、石炭ガス化ガスを十分に冷却することができる。また、石炭ガス化ガスを冷却した液体酸素は気化し、酸素供給ラインL3を通ってガス化炉11に供給される。
【0059】
二酸化炭素回収装置18に送られた石炭ガス化ガスは、深冷分離装置20の液体窒素供給ラインL12から供給される液体窒素の冷熱によって冷却される。
【0060】
すると、石炭ガス化ガスに含まれていた二酸化炭素(気体二酸化炭素を含む)は、完全に液化され、主流の石炭ガス化ガスから分離される。分離された液体二酸化炭素は、ラインL13から回収される。
【0061】
例えば、液体窒素供給ラインL12のポイントP7では、図2に示すように、液体窒素の温度は、−196℃となっている。石炭ガス化ガスは、この液体窒素によって、約7.58MPaの圧力下において約−56.5℃まで冷却される(図2のポイントP3の値を参照)。これらの条件により、石炭ガス化ガス中の気体二酸化炭素は、液化する(図3参照)。なお、このときにラインL13から回収される液体二酸化炭素の温度は、約−56.5℃である(図2のポイントP4の値を参照)。
【0062】
このようにして液体二酸化炭素が分離されると、石炭ガス化ガスは、水素が約74.8%の水素リッチガスとなり(図2のポイントP3の値を参照)、ラインL10を通って複合発電システムのタービンの燃焼器(図示せず)に送られる。
【0063】
以上のように、この第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム10によれば、ガス化炉11の燃料(気体酸素)を生成する深冷分離装置20の冷熱を、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を液化して除去する際に利用することができる。
【0064】
したがって、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を除去するために必要なエネルギーを削減でき、二酸化炭素を効率良く回収することができる。
【0065】
また、この二酸化炭素回収システム10を石炭ガス化発電プラントに適用すれば、石炭ガス化ガスから二酸化炭素を効率良く回収できるので、二酸化炭素の排出量を更に低減させた石炭ガス化発電プラントを提供することができる。
【0066】
また、通常の発電所プラント等での排ガスは常圧であるが、この二酸化炭素回収システム10における石炭ガス化ガスは、高圧(約7.6MPa程度)であるため、冷却された二酸化炭素は固化されず、液体二酸化炭素として除去できるので、その後のハンドリングが容易である。
【0067】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム30を示す説明図である。図5は、図4の各ポイント(ポイントP1〜ポイントP10)における熱物質収支計算結果を示す図である。
【0068】
すなわち、図5は、図4の各ポイント(ポイントP1〜ポイントP10)における石炭ガス化ガスの相の種類、温度、圧力、平均分子量、モル流量及び組成を示す。なお、以下の説明において、既に説明した部材と同一若しくは相当する部材には、同一の符号を付して重複説明を省略又は簡略化する。
【0069】
<二酸化炭素回収システムの全体構成の説明>
図4に示すように、第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム30は、第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム10の構成(図1参照)において、除湿装置14とガス冷却装置16の間のラインL8に圧縮機(圧縮装置)15を設けると共に、ガス冷却装置16と二酸化炭素回収装置18の間のラインL9に圧縮機(圧縮装置)17を設けている点が主に相違する。
【0070】
<圧縮機の構成の説明>
すなわち、図4に示すように、圧縮機15は、ラインL8aによって除湿装置14と接続され、ラインL8bによってガス冷却装置16と接続されている。また、圧縮機17は、ラインL9aによってガス冷却装置16と接続され、ラインL9bによって二酸化炭素回収装置18と接続されている。
【0071】
<圧縮機による作用の説明>
除湿装置14を経た石炭ガス化ガス(図5のポイントP1において圧力が3.2MPa)は、圧縮機15によって圧縮される(図5のポイントP2において圧力が5.4MPa)。この圧縮によって石炭ガス化ガスは昇温するが(温度が5℃(図5のポイントP1)から約49℃(図5のポイントP2))、ガス冷却装置16において深冷分離装置20から供給される液体酸素によって冷却される。
【0072】
また、ガス冷却装置16を経た石炭ガス化ガス(図5のポイントP3において圧力が約5.4MPa)は、圧縮機17によって圧縮される(図5のポイントP4において圧力が約7.4MPa)。この圧縮によって石炭ガス化ガスは昇温する(温度が−15℃(図5のポイントP3)から約9.9℃(図5のポイントP2))が、ガス冷却装置16において深冷分離装置20から供給される液体酸素によって冷却される。
【0073】
このように、圧縮機15,17による圧縮によって、石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素の飽和圧力を上げることができるので、二酸化炭素の液化を促進することができ(図3参照)、液体二酸化炭素の回収率を向上させることができる。その他の構成及び効果は、上記第1実施形態の場合とほぼ同様であるので、重複説明を省略する。
【0074】
以上のように、この第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム30によれば、上記第1実施形態の場合と同様の効果を奏する他、二酸化炭素の回収率を向上させることができる。
【0075】
なお、上記第2実施形態では、2つの圧縮機15,17を設けるものとして説明したが、これに限定されず、いずれか一方の圧縮機を設けても良い。
【符号の説明】
【0076】
10 二酸化炭素回収システム
11 ガス化炉
12 脱硫装置
13 COシフト器(COシフト装置)
14 除湿装置
15,17 圧縮機(圧縮装置)
16 ガス冷却装置
18 二酸化炭素回収装置
20 深冷分離装置
30 二酸化炭素回収システム
L1,L2,L3 酸素供給ライン(酸素供給経路)
L4 窒素供給ライン(窒素供給経路)
L5,L6,L7,L8,L8a,L8b,L9,L9a,L9b,L10 ライン
L11 液体酸素供給ライン(液体酸素供給経路)
L12 液体窒素供給ライン(液体窒素供給経路)
L13 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化して燃焼用の石炭ガス化ガスを生成するガス化炉と、
前記石炭ガス化ガスに含まれる硫黄分を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置を経た前記石炭ガス化ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変換するCOシフト装置と、
前記COシフト装置を経た前記石炭ガス化ガスに含まれる水分を除去する除湿装置と、
前記除湿装置を経た前記石炭ガス化ガスを冷却するガス冷却装置と、
前記ガス冷却装置を経た前記石炭ガス化ガスに含まれる前記二酸化炭素を冷却して回収する二酸化炭素回収装置と、
を備える石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システムであって、
空気から前記ガス化炉の燃焼に用いられる気体酸素及び気体窒素を生成すると共に液体酸素及び液体窒素を生成する深冷分離装置と、
前記気体酸素を前記ガス化炉に供給する酸素供給経路と、
前記液体酸素の冷熱を前記ガス冷却装置に供給する液体酸素供給経路と、
前記液体窒素の冷熱を前記二酸化炭素回収装置に供給する液体窒素供給経路と、
を備えることを特徴とする石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記液体酸素供給経路から前記ガス冷却装置に供給され、当該ガス冷却装置で気化した酸素を前記ガス化炉に供給する酸素供給経路を備えることを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記液体窒素供給経路から前記二酸化炭素回収装置に供給され、当該二酸化炭素回収装置で気化した窒素を前記ガス化炉に供給する窒素供給経路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記石炭ガス化ガスの流路における前記ガス冷却装置の上流側には、前記除湿装置を経た当該石炭ガス化ガスを圧縮する圧縮装置を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記石炭ガス化ガスの流路における前記二酸化炭素回収装置の上流側には、前記ガス冷却装置を経た当該石炭ガス化ガスを圧縮する圧縮装置を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の石炭ガス化ガスからの二酸化炭素回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−184994(P2010−184994A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29522(P2009−29522)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】