説明

砂採取装置

【課題】狭隘な場所であっても深層部の砂を容易に採取することができる砂採取装置を提供する。
【解決手段】上下に延びて形成され砂中に打ち込まれる筒体2と、この筒体2内に上下スライド自在に設けられた芯棒3と、この芯棒3の下端に取り付けられると共に上端に開口4を有する有底筒体状に形成され、筒体2が砂中に挿入されるとき筒体2に当接して開口4を塞がれ、芯棒3を介して下方に押し込まれたのち引き上げられたとき砂を取り込む砂カップ5とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された砂中から深層の砂を採取する砂採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、原子炉格納容器30の外周には間隔を隔てて外壁31が設けられており、この外壁31と格納容器30との間には、格納容器30の温度変化による変形を緩やかにするためのサンドクッション32が設けられている。サンドクッション32は、格納容器30と外壁31との間に形成される環状のサンドピット33内に乾燥した砂を数メートル積層してなるものである。
【0003】
ところで、格納容器30内には水34が収容されており、格納容器30から水34が洩れる等するとサンドクッション32の砂が濡れることがある。このため、サンドクッション32の深層部の砂を周方向の複数箇所でサンプリングして砂の状態を確認する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、室内に人が入って砂を深くまで掘り下げ、砂を採取していたが、格納容器30と外壁31の間の狭隘な場所で作業をするため容易でないと共に、乾燥した砂を深く掘るため、掘った位置ですぐ砂が崩れ、広範囲に掘らなければならないという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、狭隘な場所であっても深層部の砂を容易に採取することができる砂採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、積層された砂中から深層の砂を採取する砂採取装置であって、上下に延びて形成され砂中に打ち込まれる筒体と、この筒体内に上下スライド自在に設けられた芯棒と、この芯棒の下端に取り付けられると共に上端に開口を有する有底筒体状に形成され、上記筒体が砂中に挿入されるとき筒体に当接して上記開口を塞がれ、芯棒を介して下方に押し込まれたのち引き上げられたとき砂を取り込む砂カップとを備えたものである。
【0007】
上記筒体と上記芯棒との間には、筒体から離間した砂カップを引き上げて筒体に当接させるとき、砂カップと筒体の間の砂を取り込んで逃がすための間隙が形成されるとよい。
【0008】
上記筒体は、上下分割可能に形成に形成され、筒体上部と筒体下部が一体のとき上記芯棒の上端部外周を覆うと共に、筒体下部から筒体上部を取り外したとき上記芯棒の上端部を露出させるように形成されるとよい。
【0009】
上記筒体の上端部には、上記芯棒を下方に押し込むためのボルトが取り付けられるとよい。
【0010】
上記芯棒には、上記筒体と上記砂カップが当接するとき筒体内に収容されると共に、筒体から上記砂カップが離間するとき露出され、砂カップを引き上げて筒体に当接させるとき、筒体下端の内周縁に当接して砂カップと筒体を同軸にするように案内するテーパ状のガイド部材が設けられるとよい。
【0011】
また、上記筒体に着脱自在に設けられ、筒体を砂中に打ち込むためのチェーンブロックを備えるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、狭隘な場所であっても深層部の砂を容易に採取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
図1、図2及び図6に示すように、砂採取装置1は、サンドピット33内の深層の砂を採取するためのものであり、上下に延びて形成され砂中に打ち込まれる筒体2と、この筒体2内に上下スライド自在に設けられた芯棒3と、この芯棒3の下端に取り付けられると共に上端に開口4を有する有底筒体状に形成され、筒体2が砂中に挿入されるとき筒体2に当接して開口4を塞がれ、芯棒3を介して下方に押し込まれたのち引き上げられたとき砂を取り込む砂カップ5と、筒体2を砂中に打ち込むためのチェーンブロック6とを備えて構成されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、筒体2は、上下分割可能に形成されており、下側に形成され砂の深さと同等又は同等以上の長さに形成される筒体下部7と、上側に形成され筒体下部7に脱着可能に取り付けられる筒体上部8とからなる。
【0016】
筒体下部7の上端部には、筒体上部8を取り付けるための第1フランジ9が設けられると共に、チェーンブロック6を取り付けるための引き込み用リブ10が周方向に180度の間隔を隔てて2つ設けられている。引き込み用リブ10は、筒体下部7の外周面に一体に固定されると共に第1フランジ9の下面に一体に固定されており、チェーンブロック6を係合させるための第1係合孔11を有する。図2及び図3に示すように、筒体下部7の内周面12には、芯棒3を上下スライド自在にガイドするためのスライドガイド13が設けられている。スライドガイド13は、筒体下部7の内周面12に周方向に間隔を隔てて複数設けられたガイドリブ14からなる。ガイドリブ14は、それぞれ筒体下部7の内周面から径方向内方に延びており、内周側の端面が芯棒3に摺接することで芯棒3をガイドすると共に、筒体2と芯棒3との間に間隙15を形成するようになっている。この間隙15は、筒体2から離間された砂カップ5を引き上げて筒体2に当接させるとき、砂カップ5と筒体2の間の砂を取り込んで逃がすためのものである。また、スライドガイド13は、筒体下部7に軸方向に離間して複数設けられており、軸方向の複数の位置で芯棒3をガイドするようになっている。
【0017】
筒体上部8は、筒体下部7に取り付けたとき芯棒3の上端部を覆うように形成されており、筒体2を砂中に打ち込むとき、筒体2の上端を図示しないハンマー等で打てるようになっている。すなわち、筒体上部8は、筒体下部7に取り付けられたとき芯棒3の上端部外周を覆うと共に、筒体下部7から取り外されたとき芯棒3の上端部を露出させるように形成されている。また、筒体上部8には、芯棒3を下方に押し込むためのボルト16が着脱可能に取り付けられている。具体的には、ボルト16は、筒体上部8の上端部に形成された雌ネジ(図示せず)に螺合されており、正回転させることで下方に移動して芯棒3を押し込み、逆回転させることで雌ネジから離脱されるようになっている。筒体上部8の下端には、第1フランジ9にボルト・ナット(図示せず)を介して脱着可能に取り付けられる第2フランジ17が設けられている。
【0018】
芯棒3は、下端から上端近傍に渡って筒体2の内径より十分小さな外径に形成された小径部18と、上端部に形成され筒体2の内径と略等しい外径の大径部19とからなる。小径部18は、外周面をスライドガイド13に摺接されることで筒体2の軸上で上下にスライドするようになっている。大径部19は、筒体上部8に覆われるようになっており、筒体上部8が筒体下部7から取り外されることで露出されるようになっている。大径部19には、チェーンブロック6のフック(図示せず)等を掛けるための第2係合孔20が形成されている。図2、図4及び図6に示すように、小径部18には、筒体2と砂カップ5が当接するとき筒体下部7内に収容され、筒体2から砂カップ5が離間するとき筒体下部7内から出て露出され、砂カップ5を引き上げて筒体2に当接させるとき、筒体2下端の内周縁に当接して砂カップ5と筒体2を同軸にするように芯棒3を案内するテーパ状のガイド部材21が設けられている。具体的には、ガイド部材21は、テーパ状の板材からなり、小径部18の外周面に周方向に間隔を隔てて複数、それぞれテーパ形状の先端を上方に向けて設けられている。
【0019】
砂カップ5は、上端を筒体2と略同径に形成されると共に、下方に向けて先細となるコーン状に形成されており、砂中に打ち込まれるとき、砂の抵抗を逃がすようになっている。また、砂カップ5上端の開口縁22は、径方向外側より内側を低くするように傾斜されており、開口縁22上の砂を砂カップ5内に案内するようになっている。
【0020】
図1及び図2に示すように、チェーンブロック6は、具体的には、レバーブロックからなり、それぞれの引き込み用リブ10に取り付けられるように2つ具備されている。チェーンブロック6は、それぞれ一対のフック(図示せず)と、一方のフックに連結されたチェーン23と、他方のフックに設けられチェーン23を巻き上げる巻上げ部24とを備える一般的なものである。チェーンブロック6は、一方のフックを引き込み用リブ10の第1係合孔11に係合させると共に、他方のフックを引き込み用リブ10の下方の固定系に係合させ、巻上げ部24でチェーン23を巻き上げることで筒体2を下方に引くようになっている。
【0021】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0022】
サンドクッション32の深層の砂を採取する場合、まず、サンドピット33の上端を区画する仕切板35のハッチ36から図示しないスコップ等を入れてハッチ36直下の表層の砂に位置決め用の窪み37を形成し、この窪み37に砂採取装置1を適当な深さ差し込んで立てる。この後、図1に示すように、それぞれのチェーンブロック6の一方のフックを引き込み用リブ10の第1係合孔11に係合させると共に、他方のフックを仕切板35に、ハッチ36に臨んで係合させ、双方のチェーンブロック6のチェーン23を巻上げ部24で同時に巻き上げる。これにより、筒体2は鉛直下方に引かれ、筒体2の下端に当接される砂カップ5と共に砂中に打ち込まれることとなる。
【0023】
また、チェーンブロック6のみでは力不足の場合は、芯棒3を下方に押し込むためのボルト16を筒体上部8から取り外し、筒体2の上端をハンマー等で打ってもよい。筒体上部8が芯棒3を覆っているため、芯棒3がハンマーで打たれることはなく、筒体2を砂中に良好に打ち込むことができる。
【0024】
図5(a)に示すように、筒体2が砂中に所定深さ打ち込まれたら、チェーン23の巻き上げを止め、ボルト16を正回転させて芯棒3を下方に押し込む。図5(b)に示すように、砂カップ5がさらに下方に押し込まれて筒体2から離間され、砂カップ5上端の開口4が開放される。深層の砂の流動性が高い場合、砂カップ5内に砂が流入される。また、芯棒3に設けられたガイド部材21が筒体2外に移動して砂中に露出される。
【0025】
この後、図5(c)に示すように、筒体下部7から筒体上部8を取り外して芯棒3の大径部19を露出させると共に、全てのチェーンブロック6を仕切板35と引き込み用リブ10から取り外し、大径部19を上方に引いて芯棒3を引き上げる。これにより、ガイド部材21と砂カップ5が上昇する。このとき、砂カップ5が砂から抵抗を受け、砂カップ5及び芯棒3の中心軸が筒体2の軸上からずれることもあるが、芯棒3に設けられたガイド部材21が筒体2下端の内周縁に当接して芯棒3を筒体2と同軸上に戻すようにガイドするため、砂カップ5は上昇することで自動的に筒体2と同軸となる。また、砂カップ5が砂で満たされている場合、砂カップ5と筒体2の間にある砂は、砂カップ5の上昇に伴って筒体2内の間隙15に取り込まれて逃がされ、砂カップ5が筒体下部7の下端に当接されることで砂カップ5の上端開口4が再び塞がれる。また、筒体2から砂カップ5が離間した時点で砂カップ5内に砂が流入せず、砂カップ5が空である場合、砂カップ5の上端開口縁22が周囲の砂を削ると共に、削った砂を砂カップ5内に案内し、砂カップ5が深層の砂で満たされることとなる。芯棒3をさらに引き上げると、砂カップ5は筒体2を突き上げながら上昇し、砂上に引き上げられる。このとき、砂カップ5は上端開口4を筒体2に塞がれた状態で上昇することとなるため、砂カップ5内に上層の砂が混入することはなく、深層の砂のみを採取することができる。また、芯棒3の引き上げ作業は、仕切板35と引き込み用リブ10から取り外したチェーンブロック6を用いるとよい。具体的には、大径部19の第2係合孔20にチェーンブロック6の一方のフックを係合させると共に、他方のフックをハッチ36の上方の足場等の固定系に係合させ、巻上げ部24でチェーン23を巻き上げるとよい。
【0026】
このように、上下に延びて形成され砂中に打ち込まれる筒体2と、この筒体2内に上下スライド自在に設けられた芯棒3と、この芯棒3の下端に取り付けられると共に上端に開口4を有する有底筒体状に形成され、筒体2が砂中に挿入されるとき筒体2に当接して開口4を塞がれ、芯棒3を介して下方に押し込まれたのち引き上げられたとき砂を取り込む砂カップ5とを備えて砂採取装置1を構成したため、サンドピット33のような狭隘な場所であっても深層部の砂を容易に採取することができる。
【0027】
また、筒体2と芯棒3との間には、筒体2から離間した砂カップ5を引き上げて筒体2に当接させるとき、砂カップ5と筒体2の間の砂を取り込んで逃がすための間隙15が形成されるものとしたため、砂カップ5と筒体2との間に砂が噛み込まれるのを防ぐことができ、砂カップ5を引き上げるとき、砂カップ5の上端開口4を確実に筒体2で塞ぐことができる。
【0028】
筒体2は、上下分割可能に形成され、筒体上部8と筒体下部7が一体のとき芯棒3の上端部外周を覆うと共に、筒体下部7から筒体上部8を取り外したとき芯棒3の上端部を露出させるものとしたため、筒体上部8で芯棒3の上端部外周を覆ったとき、筒体2の上端をハンマー等で打って筒体2を砂中に打ち込むことができ、筒体上部8を取り外したとき芯棒3を容易に引き上げることができる。
【0029】
筒体2の上端部には、芯棒3を下方に押し込むためのボルト16が取り付けられるものとしたため、簡易な構造で容易に芯棒3を押し下げることができると共に、筒体2の上端をハンマー等で打つ場合には容易に筒体2から取り外すことができる。
【0030】
芯棒3には、筒体2と砂カップ5が当接するとき筒体2内に収容されると共に、筒体2から砂カップ5が離間するとき露出され、砂カップ5を引き上げて筒体2に当接させるとき、筒体2下端の内周縁に当接して砂カップ5と筒体2を同軸にするように案内するテーパ状のガイド部材21が設けられるものとしたため、深層の砂を収容した砂カップ5を上昇させて筒体2に当接させるとき、筒体2と砂カップ5を確実に同軸にすることができ、砂カップ5の上端開口4を確実に塞ぐことができる。
【0031】
筒体2に着脱自在に設けられ、筒体2を砂中に打ち込むためのチェーンブロック6を備えて砂採取装置1を構成したため、簡単な構造で容易に砂採取装置1を地中に打ち込むことができる。
【0032】
なお、筒体2を砂中に打ち込むためのチェーンブロック6を備えるものとしたが、積層される砂の高さが低い場合や、砂の流動性が極めて高い場合等、砂中に砂採取装置1を小さな力で打ち込める場合はチェーンブロック6を具備しなくともよい。
【0033】
また、引き込み用リブ10は周方向に180度の間隔を隔てて一対設けられるものとしたが、周方向に所定間隔を隔てて複数設けられるものとしてもよい。この場合、チェーンブロック6は引き込み用リブ10と同数の複数具備するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す砂採取装置の使用状態の正面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線矢視断面図である。
【図4】図2のB−B線矢視断面図である。
【図5】砂採取装置の使用手順を示す説明図であり、(a)は砂中に砂採取装置を打ち込んだ状態を示し、(b)は芯棒を押し下げて砂カップを筒体から離間させた状態を示し、(c)は芯棒を引き上げて砂カップを再び筒体に当接させた状態を示す。
【図6】砂カップを押し下げた砂採取装置の要部拡大断面図である。
【図7】原子炉格納容器の概略説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 砂採取装置
2 筒体
3 芯棒
4 開口
5 砂カップ
6 チェーンブロック
7 筒体下部
8 筒体上部
15 間隙
16 ボルト
21 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された砂中から深層の砂を採取する砂採取装置であって、上下に延びて形成され砂中に打ち込まれる筒体と、この筒体内に上下スライド自在に設けられた芯棒と、この芯棒の下端に取り付けられると共に上端に開口を有する有底筒体状に形成され、上記筒体が砂中に挿入されるとき筒体に当接して上記開口を塞がれ、芯棒を介して下方に押し込まれたのち引き上げられたとき砂を取り込む砂カップとを備えたことを特徴とする砂採取装置。
【請求項2】
上記筒体と上記芯棒との間には、筒体から離間した砂カップを引き上げて筒体に当接させるとき、砂カップと筒体の間の砂を取り込んで逃がすための間隙が形成された請求項1記載の砂採取装置。
【請求項3】
上記筒体は、上下分割可能に形成に形成され、筒体上部と筒体下部が一体のとき上記芯棒の上端部外周を覆うと共に、筒体下部から筒体上部を取り外したとき上記芯棒の上端部を露出させるように形成された請求項1又は2記載の砂採取装置。
【請求項4】
上記筒体の上端部には、上記芯棒を下方に押し込むためのボルトが取り付けられた請求項1〜3のいずれかに記載の砂採取装置。
【請求項5】
上記芯棒には、上記筒体と上記砂カップが当接するとき筒体内に収容されると共に、筒体から上記砂カップが離間するとき露出され、砂カップを引き上げて筒体に当接させるとき、筒体下端の内周縁に当接して砂カップと筒体を同軸にするように案内するテーパ状のガイド部材が設けられた請求項1〜4のいずれかに記載の砂採取装置。
【請求項6】
上記筒体に着脱自在に設けられ、筒体を砂中に打ち込むためのチェーンブロックを備えた請求項1〜5のいずれかに記載の砂採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−241604(P2008−241604A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85278(P2007−85278)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】