研削加工装置および研削加工システム
【課題】研削加工時に無端金属ベルト表面に付着した研削ゴミを確実に除去することのできる研削加工装置および研削加工システムを提供する。
【解決手段】研削加工装置100は、金属ベルトbを掛け渡して回転させる駆動ローラ1および従動ローラ2と、2つのローラ1,2の間で、かつ金属ベルトb下方の内周面の一部と当接して該金属ベルトbの内周面を研削する研削ローラ3と、研削ローラ3と金属ベルトbを挟み込む位置に配設されたバックアップローラ4と、駆動ローラ1と金属ベルトbを挟み込む位置に配設され、該金属ベルトbの外周面を研削する研削ローラ5と、金属ベルトbが回転して研削ローラ3とバックアップローラ4との間に入り込む上流側に配設され、金属ベルトb下面の外周面にクーラントを供給するクーラント供給用ノズル61aと、研削ローラ3および研削ローラ5のそれぞれにクーラントを供給するクーラント供用ノズル63a,62aとを具備している。
【解決手段】研削加工装置100は、金属ベルトbを掛け渡して回転させる駆動ローラ1および従動ローラ2と、2つのローラ1,2の間で、かつ金属ベルトb下方の内周面の一部と当接して該金属ベルトbの内周面を研削する研削ローラ3と、研削ローラ3と金属ベルトbを挟み込む位置に配設されたバックアップローラ4と、駆動ローラ1と金属ベルトbを挟み込む位置に配設され、該金属ベルトbの外周面を研削する研削ローラ5と、金属ベルトbが回転して研削ローラ3とバックアップローラ4との間に入り込む上流側に配設され、金属ベルトb下面の外周面にクーラントを供給するクーラント供給用ノズル61aと、研削ローラ3および研削ローラ5のそれぞれにクーラントを供給するクーラント供用ノズル63a,62aとを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置と、該研削加工装置に加えて無端金属ベルトの端面を研削する端面研削加工装置を具備する研削加工システムに係り、特に、研削工程において金属ベルトの内外周面に付着した研削ゴミを効果的に除去することのできる研削加工装置および研削加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置(以下、CVTという)に使用される高負荷伝動用の金属製のCVTベルトは、環状のベルトを積層させてベルト積層体を形成し、このベルト積層体をベルトの幅方向に並ぶように配置させ、各ベルト積層体を複数のブロック(エレメント)にて係止固定させることによって形成されている。例えば、図31aに示すように、環状のベルトa,a,…が積層されて積層体bが構成され、この積層体b、bを複数のブロックc、c、…に嵌め込んでCVTベルトdが形成される。この環状のベルトaは、板状の金属の端部同士を溶接することによって薄板筒状の金属ドラムを形成し、該金属ドラム全体を熱処理することによって(容体化)溶接部と母材とを馴染ませた後、例えば外側のロールカッターと筒体内に配設された内側のロールカッターとを突き合わせてせん断することによって成形される。切断された環状のベルトには、最終工程にてバレル研磨が施される。バレル研磨とは、バレル(容器)に被研磨体(ワーク)と研磨材(メディア)を入れ、バレルの運動によって生じるワークとメディアとの相対摩擦によって、バリの除去や隅角部のR付け加工等の表面加工をおこなう研磨方法のことである。
【0003】
ところで、ロールカッターによる切断時には、ベルトの端部に図31bに示すようなバリa1(外側に引っ張られた突起)やダレ(ベルトの幅方向内側へ引きずられてできるくぼみ)が往々にして生じ、かかるバリやダレを除去するために上記するバレル研磨がおこなわれる。また、容体化の際にベルト表面に形成される1μm程度の厚みをもった酸化膜a2は、ベルト表面の窒化の妨げとなることから、かかる酸化膜もバレル研磨によって除去することができる。さらに、バレル研磨によってベルト端面の隅角部を滑らかな曲線状に成形する(R付け加工)ことができる。
【0004】
上記するように、従来のCVTベルト成形時には、酸化膜の除去とバリやダレの除去を目的としてバレル研磨がおこなわれているものの、このバレル研磨によってもバリやダレを完全に除去しきれず、さらには、ベルト表面に形成された酸化膜の除去に1時間程度を要することからベルトの製作効率の低下が招来されていた。さらに、バレル研磨においては多量のメディアが廃材となることから、かかる廃材の処理も大きな問題となっていた。そこで、かかるバレル研磨行程をおこなうことなく、ベルトの端面を研削する加工方法に関する技術が特許文献1に開示されている。また、本出願人による鋭意研究の結果発案された技術であって、CVTベルトの端面のみならず、その内外周面の研磨をもおこなう無端金属リングの製造装置にかかる技術が特許文献2に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−261882号公報
【特許文献2】特開2005−155755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示の無端金属リングの製造装置によれば、ベルトの端面のみならず、その内外周面をも研磨することにより、従来のバレル研磨装置に比して加工時間の短縮と、研磨加工の精度の向上を図ることが可能となる。しかし、かかる製造装置では、研磨工程において発生し、リングの内外周面に付着した研削ゴミ(切粉、砥粒など)の除去に関する技術の発案にまでは至っていない。本発明者等によれば、研磨工程において発生/付着する研削ゴミをベルトの内外周面から除去しないと、装置を構成する回転ローラやバックアップローラ等をベルトが通過した際に、該研削ゴミがベルト内へめり込んでしまうという問題が特定されている。かかる研削ゴミのめり込みによってできる傷が起点となり、場合によってはリングが切断されるという製品性能/製品耐久性に関する大きな問題へと発展し得る。
【0007】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、CVTベルトをはじめとする無端金属ベルトの内外周面を研削加工する際に、該内外周面に付着した研削ゴミを確実に除去しながら研削加工をおこなうことのできる研削加工装置および研削加工システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による研削加工装置は、無端金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置であって、前記研削加工装置は、前記金属ベルトを掛け渡して回転させる駆動ローラおよび従動ローラと、2つの前記ローラの間で、かつ金属ベルト下方の内周面の一部と当接して該金属ベルトの内周面を研削する第1の研削ローラと、該第1の研削ローラと金属ベルトを挟み込む位置に配設されたバックアップローラと、前記駆動ローラまたは前記従動ローラのいずれか一方と金属ベルトを挟み込む位置に配設され、該金属ベルトの外周面を研削する第2の研削ローラと、前記金属ベルトが回転して前記第1の研削ローラと前記バックアップローラとの間に入り込む上流側に配設され、前記金属ベルト下面の外周面にクーラントを供給する第1のクーラント供給部と、前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラのそれぞれにクーラントを供給する第2のクーラント供給部および第3のクーラント供給部と、を少なくとも具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の研削加工装置は、上記するCVTベルトをはじめとする任意の無端金属ベルトの内外周面を研削(研磨)加工する装置である。この研削加工装置は、一つの装置で金属ベルトの内外周面を一気に研削加工するものであり、金属ベルトの研削部位は、その研削量を高い精度で管理する必要がある場合には、内周面の研削部位と外周面の研削部位が異なる部位であることが好ましい。
【0010】
研削加工装置を構成する駆動ローラと従動ローラの2つの回転ローラに無端金属ベルトを掛け渡し、駆動ローラを回転駆動することによって無端金属ベルトを該2つの回転ローラまわりに回転させる。なお、従動ローラと駆動ローラのいずれか一方が他方に対して離反自在に構成されることで、金属ベルトを掛け渡した後に一方のローラを他方に対して離反させて該金属ベルトに一定の張力を付与できるようになっている。
【0011】
駆動ローラおよび従動ローラに掛け渡された無端金属ベルト下面の内周面の一部には、該金属ベルトの内周面研削用の第1の研削ローラが当接するようになっている。この研削ローラは、適宜のアクチュエータにて無端金属ベルトの内部に出入り自在となっている。また、第1の研削ローラと対向する位置にはバックアップローラが配設されており、該研削ローラとバックアップローラとの間に無端金属ベルトが通過できるようになっている。この第1の研削ローラは、無端金属ベルトの内部に進入後、バックアップローラ側に送られて該バックアップローラとの間に介在する無端金属ベルトを挟み込み、このバックアップローラを反力架台として金属ベルトの内周面を研削加工することができる。なお、研削加工に際しては、圧力フィードバック制御に基づく定圧制御システム等により、研削量を高精度に管理しながら研削加工することができる。
【0012】
一方、駆動ローラまたは従動ローラのいずれか一方と対向する位置には無端金属ベルトの外周面を研削加工するための第2の研削ローラが配設されており、この研削ローラは、駆動ローラと従動ローラの間に金属ベルトが掛け渡された後に、一方のローラ側に移動して金属ベルトを挟み込むように構成されている。金属ベルトの外周面の研削に際しては、第2の研削ローラが駆動ローラまたは従動ローラを反力架台として該金属ベルトの外周面を研削加工することができる。かかる金属ベルトの外周面の研削加工に際しても、圧力フィードバック制御による定圧制御システム等により、金属ベルトに圧力をかけながら所定量の研削加工をおこなうことができる。
【0013】
本発明の研削加工装置は、金属ベルトが回転して第1の研削ローラとバックアップローラとの間に入り込む上流側にクーラント供給部(第1のクーラント供給部)が配設されており、金属ベルト下面の外周面にクーラントを供給できるようになっている。このクーラント供給部は、金属ベルトの外周面の研削加工の際に発生する切粉や砥粒などの研削ゴミを除去するための機構であり、金属ベルトの外周面に付着した研削ゴミがバックアップローラと第1の研削ローラにて挟み込まれ、金属ベルト内部に押し込まれる前に除去することにより、埋め込まれた研削ゴミに起因する金属ベルトの損傷を防止することが可能となる。また、無端金属ベルトの下面の外周面にクーラントを提供する構成とすることにより、該金属ベルトの外周面に付着した研削ゴミを効率的に除去できるという効果を有している。これは、金属ベルトの下面にクーラントを吹き付けることで、金属ベルト表面に付着した研削ゴミは自重にて落下し易い状態となっているためである。また、金属ベルトの上面等の外周面にある研削ゴミを吹き飛ばす場合に比べて、クーラントの供給圧力(ゴミの吹き飛ばしに必要な圧力)を可及的に低減することが可能となる。
【0014】
また、第1、第2の各研削ローラ表面から該ローラ表面に付着した研削ゴミを除去するとともに、研削ローラを冷却するためのクーラント供給部(第2、第3のクーラント供給部)がさらに設けられている。また、金属ベルトの内周面に付着した研削ゴミ等を除去するための別途のクーラント供給部を備えた構成であってもよい。
【0015】
本発明の研削加工装置によれば、研削加工の際に発生し、金属ベルト表面に付着した研削ゴミが適宜のローラ間で挟みこまれ、金属ベルト内部に埋め込まれることを確実に防止することができ、さらには、研削ローラからもかかる研削ゴミを除去することで、高品質な無端金属ベルトを製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明による研削加工装置の好ましい実施の形態は、前記研削加工装置において、前記金属ベルト下面の外周面に対して、該金属ベルトの回転方向に逆らう方向で鉛直方向から所定角度傾斜した方向にクーラントが提供されるように前記第1のクーラント供給部が調整されていることを特徴とする。
【0017】
第1のクーラント供給部は、例えば、クーラントタンクと該タンクからクーラントを各所に提供するポンプ、およびクーラント吐出用ノズルとから構成でき、それぞれがホースや配管にて連通接続されている。
【0018】
クーラントは無端金属ベルト下面の外周面に提供されるが、ここで、該金属ベルトの下面に対してクーラントが鉛直下方から供給された場合には、研削ゴミを金属ベルト表面に押し付けることとなってしまい、該研削ゴミの効率的な除去が阻害される。そこで、本実施の形態においては、金属ベルトの回転方向に逆らう方向で、かつ鉛直方向から所定角度傾斜した方向にクーラントを提供するように第1のクーラント供給部(のノズル)を調整しておくものである。
【0019】
上記するノズルの傾斜角度は、砥粒の径や、砥粒の粒子間に働くVan der Waals力(ファンデルワールス力)と液架橋力からなる付着力(付着力よりも大きなクーラントの吹き付け力が要求される)などによって異なってくるが、発明者等の試算によれば、例えばおよそ49度以上の傾斜角にてクーラントを供給する必要があるという結果が得られている。
【0020】
また、本発明による研削加工装置の好ましい実施の形態は、前記研削加工装置において、前記金属ベルトの回転方向に対して、前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラがともに逆方向に回転制御されており、前記第3のクーラント供給部は前記第2の研削ローラの上方または下方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも前記駆動ローラ側または前記従動ローラ側に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第2の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されており、前記第2のクーラント供給部は前記第1の研削ローラの上方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも該研削ローラの回転方向に逆らう方向に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第1の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されていることを特徴とする。
【0021】
本実施の形態は、研削ローラから研削ゴミを除去するとともにローラを冷却するクーラント供給部(第2、第3のクーラント供給部)を構成するクーラント吐出用ノズルの位置とその角度を調整した実施の形態である。ここで、金属ベルトの内外周面からの研削ゴミの効率的な除去を実行するために、金属ベルトの回転方向に対して、第1の研削ローラと第2の研削ローラはともに逆方向に回転制御されている。
【0022】
まず、金属ベルトの外周面を研削する第2の研削ローラにクーラントを供給するクーラント供給部(第3のクーラント供給部)は、該研削ローラの上方または下方に配設されており、かつ、該研削ローラの鉛直中心よりも駆動ローラ側または従動ローラ側に所定量偏った位置に配設される。さらに、第2の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されている。例えば駆動ローラとの間で金属ベルトを挟み込むように装置が構成されている場合には、駆動ローラと第2の研削ローラとは相互に逆方向に回転することとなる。ここで、研削ローラの上面にクーラントを提供する場合、該クーラントが研削ローラの上面の全域(ほぼ全域)に提供されること、および研削ローラ表面からクーラントによって吹き飛ばされた研削ゴミが2つのローラ間に落ち込まないようにするために、ノズルを上記するように所定量セットバックする。
【0023】
また、クーラントの吐出角度(ノズルの角度)も、研削ローラの上面に対して水平方向に設定するのではなく、上方の所定の傾斜角方向から研削ローラの上面に吐出するようにノズルの角度を調整するものである。
【0024】
発明者等の検証によれば、上記セットバック量として、研削ローラの上端(鉛直中心点)から5〜30度程度の範囲内でノズルをセットバックさせることが望ましいという結果が得られている。また、ノズルの傾斜角(スラント角)は、5〜15度程度の範囲内で調整し、かつ、ノズルから吐出されたクーラントが研削ローラの幅方向において、該クーラント側の1/4程度の幅領域に吐出されるようにノズルを調整することにより、クーラントが研削ローラの幅全域に提供できるという結果が得られている。
【0025】
なお、研削ローラの全域にクーラントを効果的に提供するための要素としては、ノズルの角度やセットバック量以外にも研削ローラの回転速度等の他の要素が考えられるが、かかる回転速度等は規定の研削条件に基づいて所定の回転速度に固定されており、したがって、任意に変更調整することが難しい。そこで、本実施の形態では、クーラント吐出用のノズルの位置や姿勢のみを調整することで、クーラントを効果的に研削ローラに提供するようにしたものである。
【0026】
さらに、本発明による研削加工システムは、前記金属ベルトを掛け渡して回転させる第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラと、第1の研削ブラシが周方向に複数設けられた第3の研削ローラと、第2の研削ブラシが周方向に複数設けられた第4の研削ローラとを備え、第1の研削ブラシと第2の研削ブラシが干渉しない離隔を備え、かつ、前記第2の駆動ローラおよび前記第2の従動ローラと対向する位置に前記第3の研削ローラと前記第4の研削ローラが配設され、第3の研削ローラと第4の研削ローラにて前記金属ベルトの端面を研削する端面研削加工装置と、金属ベルトの内外周面を研削する前記研削加工装置と、を具備しており、複数の前記端面研削加工装置がライン状に配設されており、金属ベルトをそれぞれの端面研削加工装置に順次搬送するとともにそれぞれの端面研削加工装置および研削加工装置の駆動ローラおよび従動ローラ間に金属ベルトを着脱させる搬送装置がさらに備えられており、金属ベルトの一方の端面が適宜の端面研削加工装置にて研削加工された後に、次の端面研削加工装置にて金属ベルトの他方の端面が研削加工され、前記研削加工装置にてベルトの内外周面が研削されることを特徴とする。
【0027】
本発明の研削加工システムは、無端金属ベルトの内外周面を研削加工する既述の研削加工装置と、無端金属ベルトの端面を研削加工する複数の端面研削加工装置とから構成されるものである。より具体的には、複数の端面研削加工装置がライン状に配設されており、この端面研削加工装置に無端金属ベルトが順次搬送されることによって該金属ベルトの両端面の研削がおこなわれる。次いで無端金属ベルトはその内外周面を研削加工する研削加工装置に搬送されて研削加工され、最終製品として搬出される。
【0028】
端面研削加工装置は、無端金属ベルトを掛け渡して回転させる第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラと、第1の研削ブラシが周方向に複数設けられた第3の研削ローラと、第2の研削ブラシが周方向に複数設けられた第4の研削ローラとから構成されている。ここで、使用される第1、第2の研削ブラシは特に限定するものではないが、例えば、アルミナ(Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)などの研磨砥粒を溶融させた多数のナイロン線材を束にして構成された、いわゆるセグメントブラシなどが使用できる。この場合、ナイロン線材の束の一端を金属製の筒内に収容するとともに、ナイロン線材の束の他端を別途の金属製の筒に嵌め込み、他端を該金属製の筒から若干突出させた状態にして研削ブラシを形成することができる。この他端をベルト端面に押し当てて該端面の研削がおこなわれるが、他端近傍が金属製の筒にて拘束されることでブラシの剛性が確保され、研削ブラシによる研削力を維持することが可能となる。また、研削ブラシ端部が研削によって磨耗した場合には、金属製の筒内に収容され束の一端を該筒から押出すことにより、金属製の筒から突出するナイロン線材の突出長を調整することができる。
【0029】
例えば、既述するセグメントブラシが第3の研削ローラと第4の研削ローラにそれぞれ複数取り付けられ(研削ローラの周方向に間隔を置いて取り付けられている)、モータを内蔵したケーシング端部に双方の研削ローラが相互に干渉しない離隔をおいて取り付けられている。ここで、2つの研削ローラは双方ともに別途のモータ駆動軸に装着されており、好ましくは同期回転するように構成されている。
【0030】
2つの研削ローラに対向する位置には、モータを内蔵したケーシング端部に2つのローラ(第2の駆動ローラと第2の従動ローラ)が設けられている。かかる駆動ローラおよび従動ローラに金属ベルトが掛け渡された後、2つの研削ローラに装着されたセグメントブラシがベルト端面に当接する位置にくるように、研削ローラと駆動ローラおよび従動ローラの双方が相対的に近接移動できるようになっている。なお、研削に伴ってブラシが磨耗した際には、例えばセグメントブラシに装着された圧力センサでブラシの磨耗の程度を検知させ、既述する実施の形態におけるナイロン線材の他端をベルト側へ磨耗分だけ自動的に押出す構成とすることもできる。
【0031】
金属ベルトの両端面は、例えば2つの端面研削加工装置にて順次研削されるとともに、それぞれの端面は、例えば別途の端面研削加工装置にて粗研削と仕上げ研削が交互に実施される。かかる実施の形態では、少なくとも4基の端面研削加工装置がライン状に配設されることとなる。研削順序の実施の形態としては、金属ベルトの一端面の粗研削がおこなされ、次の端面研削加工装置に金属ベルトが搬送されてその他端面の粗研削がおこなわれ、次の端面研削加工装置に搬送されてその一端面の仕上げ研削がおこなわれ、最後に次の端面研削加工装置に搬送されてその他端面の仕上げ研削がおこなわれる。このように金属ベルトの研削端面を交互に変化させるためには、間隔を置いて隣接する端面研削加工装置において、金属ベルトが掛け渡される第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラの配設位置と、研削ローラの配設位置をラインに対して交互に逆転させればよい。
【0032】
また、搬送装置は特に限定するものではないが、例えば、2本の棒体が間隔を置いて併設され、この1組の棒体のそれぞれの対向面には、ベルトをトラック状に変形させた姿勢で保持する2つのチャック部材が取り付けられており、この1組のチャック部材が、既述する4基の端面研削加工装置と同じ間隔を置いて該棒体に4組組取り付けられた実施の形態などを適用できる。この1組の棒体が間隔を置いて隣接する端面研削加工装置間および端面研削加工装置と研削加工装置間を往復移動することにより、それぞれの端面研削加工装置にて一端面が研削されたベルトを、他端面を研削する次の端面研削加工装置に搬送でき、さらには内外周面を研削する研削加工装置に搬送することが可能となる。なお、最後に金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置の搬送方向前方には、製品搬送用のベルトコンベアが設置されており、例えば5段階の研削工程を経て仕上げられた無端金属ベルトはこのベルトコンベア上に移載され、搬出される。
【0033】
上記する無端金属ベルトのローラへの掛け渡しや搬送のより具体的な実施例は、例えば、シュータを介し、端部のチャック部材間に金属ベルトがトラック状に変形されながらローダによってセットされる。金属ベルトを把持したチャック部材が最初の端面研削加工装置の位置にくるように1組の棒体が移動する。端面研削加工装置を構成する駆動ローラおよび従動ローラが棒体側へ移動し、2つのローラがトラック状の金属ベルトの内周部分に挿入される。この姿勢で、例えば従動ローラが駆動ローラから離反するように移動してトラック状の金属ベルトを長手方向に緊張する。金属ベルトが長手方向に緊張されることで、チャック部材で保持されていた状態よりもより細長く変形され、金属ベルトがチャック部材から解放される。金属ベルトをチャック部材から解放した姿勢で駆動ローラを回転させる。ここで、研削ローラの研削ブラシが金属ベルトの端面に当接するように該研削ローラが移動し、金属ベルトの端面に所定の押圧力で当接した状態で、2つの研削ローラを同一方向に回転させる。所定の粗研削が終了したら、従動ローラが駆動ローラ側に移動し、トラック状の金属ベルトをチャック部材にチャックさせ、駆動ローラおよび従動ローラは棒部材から退避する。チャック部材でチャックされた金属ベルトは、棒体の移動によって次の端面研削加工装置へ搬送される。かかる端面研削加工装置においても同様の作動により、今度は反対側の金属ベルト端面の粗研削がおこなわれる。以後、同様の作動によって両端面の仕上げ研削が交互におこなわれ、さらに研削加工装置によって金属ベルトの内外周面が研削され、最終的にベルトコンベアへ移載される。なお、粗研削と仕上げ研削の相違は、研削時に使用されるブラシの線径や研磨砥粒の粒径を変化させることによって調整される。
【0034】
搬送装置は、例えば上記するように1つのベルトを次の端面研削加工装置または研削加工装置に順次搬送するとともに、別途の金属ベルトも同様に順次搬送することができる。かかる構成とすることで、ベルト端面の粗研削〜仕上げ研削、内外周面の研削をすべて無人化することが可能となり、無端金属ベルトの全周を効率的かつ高い精度で研削加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明から理解できるように、本発明の研削加工装置および研削加工システムによれば、研削加工時に無端金属ベルト表面に付着した研削ゴミが適宜のローラによって金属ベルト内部へ埋め込まれる前に確実に除去することができるため、かかる研削ゴミによって金属ベルトが破断するといった製品不良を確実に防止することができる。また、本発明の研削加工装置および研削加工システムによれば、無端金属ベルトの端面と内外周面のすべてを高精度に研削加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の研削加工装置の概要を示した斜視図を、図2は、研削加工装置の正面図を模式的に示した図を、図3は、研削加工装置の平面図を模式的に示した図をそれぞれ示している。図4aは、金属ベルトの外周面を研削する研削ローラにクーラントを供給するノズルがセットバックされて位置決めされていることを示した平面図であり、図4bは、図4aに示すノズルの傾斜姿勢を示した側面図である。図5は、図4に示すノズルの位置によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、図5aは適切なセットバック量の場合の模式図を、図5b、図5cは好ましくないセットバック量の場合の模式図である。図6は、図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、図6aは好ましくない傾斜角(水平)の場合の平面図を、図6bはその側面図である。図7は、図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、図7aは適切な傾斜角の場合の平面図を、図7bはその側面図である。なお、図示する実施形態では、CVTベルトを構成する無端金属ベルトの内外周面および端面を研削対象としているが、被研削体がかかる金属ベルトに限定されるものでないことは勿論のことである。
【0037】
図1は、無端金属ベルトの内外周面を研削加工する研削加工装置の一実施の形態の斜視図である。この研削加工装置100は、無端の金属ベルトbを掛け渡して回転させる駆動ローラ1と従動ローラ2、該駆動ローラ1と従動ローラ2の間に出入り自在であって、かつ鉛直方向に移動自在な金属ベルトbの内周面を研削加工するための研削ローラ3(第1の研削ローラ)、研削ローラ3との間で金属ベルトbを挟み込み、研削ローラ3による内周面研削時の反力架台となるバックアップローラ4、駆動ローラ1との間で金属ベルトbを挟み込み、金属ベルトbの外周面を研削加工する研削ローラ5(第2の研削ローラ)、各所に配設されたクーラント供給用のノズル61a,62a,63a,64a,65aと、から大略構成されている。
【0038】
駆動ローラ1は、スピンドルモータ11によって所定の回転速度にて回転制御されており(図2のX1方向)、従動ローラ2は、金属ベルトbの回転に伴って駆動ローラ1と同期回転する(図2のX1方向)。なお、従動ローラ2は、サーボモータを具備する送りねじ機構21にて駆動ローラ1に対して離反/近接できるように構成されており、金属ベルトbを駆動ローラ1および従動ローラ2に掛け渡す際には、この従動ローラ2が駆動ローラ1から離反することによって金属ベルトbに所定の張力を付与した姿勢でトラック状の姿勢を形成させる(図3のX7方向)。
【0039】
金属ベルトbの内周面を研削する研削ローラ3は、その回転制御がスピンドルモータ31によって実行制御される。この研削ローラ3は、駆動ローラ1と従動ローラ2の間に金属ベルトbが掛け渡されると、不図示の送りねじ機構にて駆動ローラ1と従動ローラ2の間に進入移動され(図3のY1方向)、さらに、サーボモータを具備する送りねじ機構32によって圧力フィードバック制御に基づく金属ベルトbの内周面側への定圧送りが実行される(図2のZ方向)。なお、研削ローラ3の回転方向は、金属ベルトbの回転方向(図2のX5方向)と逆方向(図2のX2方向)に設定されており、効率的な研削加工を実現することができる。
【0040】
この金属ベルトbの内周面の研削に際しては、研削ローラ3と対向する位置に配設されたバックアップローラ4が不図示の送りねじ機構によって金属ベルトbの下面に当接するように上昇され、研削ローラ3の降下に伴い、双方のローラ3,4にて金属ベルトbを挟み込むようになっている。このバックアップローラ4は、金属ベルトbの回転に伴って従動的に回転する(図2のX4方向)。
【0041】
一方、金属ベルトbの外周面を研削する研削ローラ5は、スピンドルモータ51によってその回転制御がおこなわれるとともに(図2のX3方向)、定圧送りを実行する送りねじ機構52によって研削時の反力架台となる駆動ローラ1側に水平移動される(図2のX6方向)。なお、この研削ローラ5の回転方向も、図示するように金属ベルトbの回転方向と逆方向に設定されている。
【0042】
図示するように、無端の金属ベルトbは、その内周面と外周面とが別途の研削位置にて研削加工されるようになっており、精密研削加工時における高精度な研削量の管理がおこなわれ易くなっている。
【0043】
また、金属ベルトbが回転して研削ローラ3とバックアップローラ4の間に入り込む上流側には、該金属ベルトbの下方の外周面にクーラントを供給するためのノズル61aが所定の角度方向に向けられた姿勢で配設されており、このノズル61aは、ホースまたは配管からなる流路61bを介して不図示のクーラントタンクおよび送液ポンプに連通している。なお、ノズル61aの傾斜角度に関しては、その詳細を後述する。
【0044】
また、金属ベルトbの外周面を研削加工する研削ローラ5の研削面から研削ゴミを除去するとともに、該研削面を冷却するためのクーラントを供給するノズル62aは、該研削面の上方に位置するとともに、研削ローラ5の鉛直中心から所定量だけ駆動ローラ1側にセットバックされ、さらに所定角度傾斜した姿勢で位置決めされている。このノズル62aも適宜の流路62bを介して不図示のクーラントタンクおよび送液ポンプに連通している。
【0045】
さらに、金属ベルトbの内周面を研削加工する研削ローラ3の研削面にクーラントを供給するノズル63aが上記ノズル62aと同様の位置決め方法にて設けられている。このノズル63aも、流路63bを介して不図示のクーラントタンクおよび送液ポンプに連通している。
【0046】
また、金属ベルトbの内周面から研削ゴミを除去するためのクーラント供給用ノズル64aと流路64b、ノズル65aと流路65bも設けられている。
【0047】
図2に示すように、金属ベルトbが研削ローラ3とバックアップローラ4の間に進入する前に、金属ベルトbの外周面に付着した研削ゴミSをノズル61aから供給されるクーラントKによって吹き飛ばすことにより、ローラ3,4間に金属ベルトbが挟み込まれた際に付着した研削ゴミSが金属ベルトbの内部に噛み込むことを防止できる。特に、このノズル61aが金属ベルトbの下方の外周面において付着ゴミを除去することにより、該ゴミはその自重によって付着力が低減されていることから、クーラントKの吐出力を低減することが可能となる。また、金属ベルトbの内周面においては、ノズル65aから供給されるクーラントKによって内周面に付着した研削ゴミが吹き飛ばされる。
【0048】
また、研削ローラ3,5の外周面に付着した研削ゴミS,Sは、ノズル62a,63aから供給されるクーラントKによって吹き飛ばされ、さらにこのクーラントKによって各研削ローラが冷却されることで、研削時の発熱による加工不具合を効果的に解消することができる。
【0049】
次に、図4〜6に基づいて、研削ローラ5の上方にノズル62aが位置決めされる際の、ノズル位置(セットバック量)とノズルの傾斜角について説明する。
【0050】
図4aは、ノズル62aと研削ローラ5との位置関係を平面視で示した図である。ここで、ノズル62aの中心線は、研削ローラ5の回転中心線Pから駆動ローラ1側へ所定長:L1だけセットバックさせた位置に配設される。一方、図4bは、ノズル62aと研削ローラ5との位置関係を側面視で示した図である。ノズル62aは、図4aで示す所定長のセットバックに加えて、研削ローラ5の上面全域にクーラントが行き渡るように所定角:θ傾斜させる。なお、ノズル62aの先端は、研削ローラ5の上端よりも若干高い位置(例えば1〜2mm程度)の位置で、研削ローラ5の端部から同様に1〜2mm程度離れた位置に配設される。この条件でノズル62aからクーラントを吐出すると、クーラントKは、研削ローラ5の全幅:L2の1/3〜1/4の範囲に吐出されることが発明者等によって特定されており、かかるノズルの姿勢調整により、クーラントKは研削ローラ5の全幅に効果的に吐出することが可能となる。
【0051】
[ノズルのセットバック量に関する検証結果]
図5は、上記するノズル62aの最適なセットバック量に関する発明者等による検証結果を模式的に示した図である。ここで、図5aは、ノズル62aを一定の傾斜角とし、かつ、研削ローラ5を一定の回転速度にて反時計回り(X3方向)に回転させた条件において、セットバック量を研削ローラ5の天頂部から5〜30度の角度:δ1(セットバック量:L1)の範囲とした場合のクーラントKの広がりの状況を示している。この条件によれば、クーラントKは研削ローラ5の天端全域に提供でき、研削ゴミS,…も駆動ローラ1側へ落ち込むことなく、効果的に吹き飛ばすことができた。
【0052】
一方、図5bは、セットバック量がない場合の結果を、図5cは、セットバック量:δ2が45度の場合の結果をそれぞれ示している。図5bに示すセットバック量がない場合には、研削ローラ5の回転により、その駆動ローラ1側のおよそ半分の範囲にクーラントが行き渡っていない。したがって、かかる範囲に付着した研削クズが駆動ローラ1側に落ち込んでしまう。
【0053】
また、図5cに示すように、セットバック量が45度程度となると、図5bとは反対に、研削ローラ5の駆動ローラ1側と反対側半分の領域にクーラントKが行き渡らなくなってしまう。
【0054】
以上の検証結果より、発明者等は、図示する研削ローラの回転方向の場合において、ノズル62aのセットバック量を駆動ローラ側へ5〜30度程度に設定することが最適な設定範囲であるという結論に至った。
【0055】
[ノズルの傾斜角に関する検証結果]
次に、ノズル62aの傾斜角についての発明者等による検証結果を図6,7に基づいて説明する。図6は、傾斜角がない(水平)な場合のクーラントKの広がりを示した模式図であり、図6aは平面図を、図6bは側面図をそれぞれ示している。一方、図7は、傾斜角を5〜15度の範囲で設定した場合のクーラントKの広がりを示した模式図であり、図7aは平面図を、図7bは側面図をそれぞれ示している。なお、ノズル62aは、上記する5〜30度の範囲で所定量セットバックされた位置に位置決めされている。
【0056】
図6aからも明らかなように、ノズル62aを傾斜させない場合には、クーラントKの広がりはそのクーラント幅程度にしか及ばない。一方、図7aに示すようにクーラントKの傾斜角を5〜15度の範囲で傾斜させ、研削ローラ5に対するクーラントKの吐出領域を全幅L2の1/4〜1/3の範囲とした場合には、研削ローラ5の全領域に効果的にクーラントKが行き渡ることが分かる。なお、傾斜角の上限を15度程度とした理由は、高圧のクーラントKによって砥粒や研削屑を効果的に吹き飛ばす効果をも合わせた最適な条件によるものである。
【0057】
[クーラントによる除去対象となる付着砥粒に関する考察]
図8は、砥粒が金属ベルト内に噛み込んで、金属ベルトに亀裂が生じている断面図(断面写真)を示したものである。この砥粒の径は30μm以上であり、かかる径以上の大きさの砥粒が金属ベルトに噛み込んで傷(Fの領域)がつくと、かかる傷が起点となって無端金属ベルトの切断に至る。なお、図8に示す金属ベルトは圧延工程を経た製品であり、15μm以上の深度の傷が形成されている。したがって、無端金属ベルトの研削工程が終了する段階では、径30μm程度以上の砥粒を確実に金属ベルト表面から除去しておくことを要する。
【0058】
本発明の研削加工システムの概要は後述するが、かかるシステムにおいては、金属ベルトの両端面の粗研削が実行され、次いで仕上げ研削が実行され、最後に金属ベルトの内外周面の研削加工がおこなわれる。この粗研削工程にて使用される研削ブラシを♯80の砥粒、仕上げ研削工程にて使用される研削ブラシを♯320の砥粒、最後の内外周面研削工程にて使用される研削ブラシを♯120の砥粒をそれぞれ使用した場合に、各研削ブラシに含まれる砥粒分布の割合と、1リングの無端金属ベルトを研削加工する際に発生する砥粒の重量をそれぞれ図9a、図9bに示している。
【0059】
図9a中、P1は♯80の砥粒にかかるグラフを、Q1は♯320の砥粒にかかるグラフ、R1は♯120の砥粒にかかるグラフをそれぞれ示している。これらのグラフからも明らかなように、すべての仕様の砥粒において、図8にて説明した金属ベルトに致命的な損傷を与え得る径30μm以上の砥粒がその大部分を占めていることが分かる。すなわち、研削工程にて発生して金属ベルトに付着した砥粒をほぼ完全に除去しないと、金属ベルトの耐久性を大きく低下させる損傷原因を払拭することはできないこととなる。
【0060】
図9b中、P2は♯80の砥粒にかかるグラフを、Q2は♯320の砥粒にかかるグラフ、R2は♯120の砥粒にかかるグラフをそれぞれ示している。図9bに示す発生砥粒重量に関しても同様の結果となっており、本実験では、30μm以上の径を有する砥粒の総重量が0.049gとなり、砥粒全体の99.8%にも及ぶことが判明した。
【0061】
[金属ベルト表面に付着する砥粒の付着力と自重に関する考察]
次に、金属ベルト表面に付着する砥粒の付着力を算定する。図10は、駆動ローラ1と従動ローラ2との間に掛け渡された金属ベルトbに作用する砥粒の付着力を説明した模式図である。ここで、金属ベルトbの上面には、付着力:Fと砥粒自重:Fgとの和の値がクーラントにて吹き飛ばす必要のある付着力となる。一方、金属ベルトbの下面においては、付着力:Fから砥粒自重:Fgを差し引いた値がクーラントにて吹き飛ばす必要のある付着力となる。すなわち、金属ベルトbの下面において付着砥粒を除去する方がより効果的でかつ低圧力のクーラントで砥粒の除去が可能となる。
【0062】
上記する砥粒の付着力は、粒子に作用するVan der Waals力(ファンデルワールス力)と液架橋力とをそれぞれ求め、その和をもって付着力が算定される。
【0063】
図11aは、上記するファンデルワールス力と液架橋力の和(グラフT2)、砥粒の自重(グラフT3)、付着力:Fと砥粒自重:Fgとの和(グラフT1)、付着力:Fと砥粒自重:Fgとの差(グラフT4)をそれぞれ示しており、図11bは、図9bと同じ発生砥粒の重さ分布を示している。図11aのグラフT4より、径105μm以上の砥粒は自重にてそのまま落下することが分かる。よって、それよりも径の小さな砥粒は自重よりも付着力が勝る結果、クーラントにて除去する必要があることが理解できる。また、同グラフT4において最大値を与える砥粒径はおよそ64μm付近であるが、これは、金属ベルトの破断が多発する径30μm程度の傷が圧延前には60μm程度の傷であると想定されることに符合する。そこで、径60μm程度の砥粒を確実に除去できるクーラント圧と、ノズルの角度の設定が必要となる。
【0064】
[金属ベルト外周面へクーラントを供給するノズル角度の考察]
図12a〜dに基づいて、砥粒径やそのほかの条件を一般に想定され得る任意の条件に設定し、ノズルの傾斜角度を算定した。以下にその算定の内容を説明/記載する。
【0065】
まず、図12aにおける各値を算定する。ここで、径63.5μmの砥粒を仮定し、該砥粒に作用する力を求める。
【0066】
1)砥粒に作用するファンデルワールス力:Fv=H・D/(12Z2)より、4.96μNとなる。ここで、HはHamaker定数でH=15・10−20J、Zは粒子と平面の分離距離でZ=0.4nm、Dは粒子径で63.5μmである。
【0067】
2)液架橋力:FL=2・π・σ・D/2・cosθより、7.26μNとなる。ここで、σは水の表面張力で0.0728N/m、θは接触角で60度(ステンレスの場合は45度、アルミニウムの場合は70度)、Dは粒子径で63.5μmである。
【0068】
3)重力:Fg=4/3・π・(D/2)3・ρ・g=4.27μNとなる。ここで、ρは比重でSiCの場合は3.25g/cm3、Al2O3の場合は3.99g/cm3、gは重力加速度で9.8m/s2である。
【0069】
砥粒に作用する垂直抗力:Nは、N=Fv+FL−Fg=7.95μNとなり、転がり摩擦係数:μ=0.01としてクーラントを吹き付けた際の摩擦抵抗力:Freg=μN=0.0795μNとなる。
【0070】
金属ベルトは砥粒を付着させた状態で回転移動しているので、その際に砥粒が持つ力積:Fmv・dt=m・V=45.17ng・m/sとなる。ここで、m=435.7ng、V=0.104m/sとする。
【0071】
図12bに示すように、金属ベルトの幅を9.9mm、金属ベルトに吐出されたクーラントの径をφ15mmとすると、砥粒がクーラントの吐出範囲を通過する時間は0.109sと算定でき、したがって、金属ベルトによって伝達された砥粒の運動エネルギーを打ち消すのに要する力:FmV=m・V/dt=0.00042μNとなる。
【0072】
以上より、付着した砥粒を吹き飛ばすために要する金属ベルトに平行な力は、Freg+FmV=0.0799μNとなる。クーラントの吹き付け力がかかる抗力を超えた段階で砥粒の除去が可能となる。
【0073】
クーラントの配管内部における圧力をPO、配管径をDOとし、砥粒に当たるクーラント圧をP、クーラントが金属ベルトに作用する領域の径をD1とし、ノズル効率をηとすると、P=η・DO2/D12・PO/5=0.061MPaとなる。ここで、η=0.5、DO=9.53mm,D1=15mmである。
【0074】
この水圧が砥粒(径はD)に伝達される力:Fc=1/2・π・(D/2)2・P=479.4μNとなる。
【0075】
クーラントの角度が図12aに示すγの場合、該クーラントが砥粒を飛ばす条件は、Fcsinγ>Freg+FmVである。
【0076】
図12cに示すように、ノズルの傾斜角度をα、クーラントの噴射角度をβ、ノズルと金属ベルト間の離間をL3(=10mm)とすると、α>β/2+γ、L3=10mm、γ=0.1度、β/2=sin−1((D1/2)/L3)=48.6度となり、α>48.7度が設定条件におけるノズルの傾斜角度範囲となる。
【0077】
[研削ローラの冷却の必要性に関する考察]
研削ローラにおいては、砥石のバインダーに高分子ポリマーの一種であるゴムが用いられており、その応力−ひずみ曲線を図13に示している。また、同図においては、ゴムからなる長さ:l、断面積:AOの棒部材に力:Fが作用する場合のモデル図を併せて図示している。図13から明らかなように、研削中に温度が上昇すると、バインダーであるゴムが軟化し、研削ローラを構成する回転軸からバインダーがはずれ易くなってしまう。
【0078】
例えばウレタンゴムの場合、図14aに示すように、ガラス転移温度は241K(−32℃)であるため、実用温度0〜60℃で考慮すると、規格化温度1.13〜1.38でゴムプラトー状態が保たれる。しかし、砥石が発熱して100℃を超えると、規格化温度が1.55まで跳ね上がり、ゴムプラトー領域から粘性流動領域へ移行し、その状態で荷重が作用すると砥石はその形状を保持できなくなってしまう。このような理由から、研削加工においては、研削ローラの表面を積極的に冷却することが重要となる。なお、図14aのグラフ中のb点、c点、d点における各分子構造を図14b、c、dにそれぞれ模式的に示した。
【0079】
図15は、連続加工時間と、研削ローラが冷却される場合(グラフU2)と、冷却されない場合(グラフU1)をグラフ化した図である。例えば、加工時間が3時間程度で100℃を越え、その後は該砥石がその形状を保持できないことで回転軸から外れてしまう結果となる。
【0080】
次に、端面研削加工装置について説明する。端面研削加工装置200は、図16に示すように、複数のセグメントブラシ71a,71a,…、72a,72a,…を周方向にそれぞれ配設した2つの研削ローラ71,72からなる研削部と、セグメントブラシ71aの先端に対向する位置にあって、金属ベルトbを2つのローラ(駆動ローラ1aと従動ローラ2a)に掛け渡した姿勢で金属ベルトbを保持する保持部とから構成される。保持部は、2つのローラを軸支しながら、駆動ローラ1aの駆動軸を回転させる不図示のモータが内蔵された不図示のケーシングの一側面に2つのローラが装着されている。ここで、従動ローラ2aは、ケーシングの一側面上を移動できるように構成さてれている。例えば、従動ローラ2aを軸支する回転軸がシリンダユニットのピストンロッドの先端に取り付けられていて、ピストンロッドの伸縮により、従動ローラ2aは駆動ローラ1aから離反/近接することができる。一方、研削部は、2つの研削ローラ71,72をそれぞれ回転させるモータを内蔵した不図示のケーシングの一側面に該研削ローラ71,72が装着されている。
【0081】
セグメントブラシ71a,72aは、アルミナ(Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)などの研磨砥粒を溶融させた多数のナイロン線材が金属製の筒体で束ねられた姿勢で研削ローラ71,72の端面から所定長さ突出している。
【0082】
この研削ローラ71,72は同一方向に回転制御されており、駆動ローラ1a,従動ローラ2aに掛け渡されながら平面視がトラック状に引き伸ばされた金属ベルトbの直線区間の適宜箇所において、一方の研削ローラ71の入射方向と他方の研削ローラ72の退出方向が異なる結果、ベルト端面研削時に一方の研削ローラの回転方向へのベルトの倒れを他方の研削ローラの回転によって防止することができる。さらには、ベルト端面の2つの隅角部を2つの研削ローラによって一気に研削することが可能となり、研削効率を高めることができる。なお、駆動ローラ1a,従動ローラ2aに掛け渡された金属ベルトbをトラック状に引き伸ばす際には、2つのローラ1a,2aにベルトを掛け渡した後で、従動ローラ2aを駆動ローラ1aから離反するように可動させればよい。
【0083】
また、研削ローラ71,72にそれぞれ取り付けられたセグメントブラシ71a,72aは、ナイロン線材の一端が金属製の筒体に収容されており、他端側は金属製の筒体がナイロン線材を束ねるように嵌装されている(不図示)。この筒体の端部は閉塞されており、かかる端面にシリンダユニットのピストンロッドが当接している。研削時のナイロン線材の剛性を確保するために、筒体からのナイロン線材の突出長は適宜の長さに設定されている。ここで、研削によってナイロン線材の先端が徐々に磨耗し、研削力が低下した際には、かかる研削力の低下を図示しない圧力センサにて検知し、検知結果に基づいてピストンロッドが所定長伸張するように構成することができる。なお、端面研削加工装置200においても、適宜のベルト箇所にクーラントを供給するノズル73aと流路73bが配設されている。
【0084】
次に、図17〜30に基づいて、研削加工システムの概要と、その作動の流れについて説明する。
図17,18に基づいて研削加工システム300の概要を説明すると、図16で説明した4基の端面研削加工装置200A,200B,200C,200Dが等間隔でライン状に配設されている。ここで、端面研削加工装置200A(または、200B,200C,200D)は、無端の金属ベルトbを保持/回転させる駆動ローラ1aと従動ローラ2aと、それらを具備するケーシングC3とからなる保持部200aと、セグメントブラシ71,72と、それらを具備するケーシングC4とからなる研削部200bと、から構成されている。また、端面研削加工装置200Dの送り方向前方には金属ベルトbの内外周面を研削加工する研削加工装置100が設置されている。この研削加工装置100は、金属ベルトbを保持/回転させる駆動ローラ1と従動ローラ2と、それらを具備するケーシングC1とからなる保持部100aと、第1の研削ローラ3と第2の研削ローラ4と、それらを具備するケーシングC2とからなる研削部100bと、から構成されている。
【0085】
それぞれの端面研削加工装置200A,200B,200C,200Dを構成する保持部200a,…と研削部200b、…の間、および、研削加工装置100を構成する保持部100a,…と研削部100b、…の間には、隣接する加工装置間を往復移動できるトランスファ8が備えられている。ここで、各端面研削加工装置200A,200B,200C,200Dは、それぞれの保持部200aと研削部200bとの配設位置が交互に逆転しながら配設されている。これは、金属ベルトbの両端面を交互に研削するためであり、シュータ94に送り込まれてきた金属ベルトbは、ローダ93にてトランスファ8に送られ、トランスファ8の往復移動に伴って順に次の端面研削加工装置へ送られる。端面研削加工装置は、シュータ94に近い端面研削加工装置200Aから順に、金属ベルトbの一端面の粗研削をおこなう装置、金属ベルトbの他端面を粗研削する装置(端面研削加工装置200B)、金属ベルトbの一端面を仕上げ研削する装置(端面研削加工装置200C)、金属ベルトbの他端面を仕上げ研削する装置(端面研削加工装置200D)となっている。ここで、トランスファ8は、上下に併設する棒体81,82と、各端面研削加工装置間の間隔で該棒体81,82の対向面に取り付けられたチャック部材83,83とから構成されており、このチャック部材83,83で金属ベルトbが把持された姿勢で金属ベルトbの送りがおこなわれる。チャック部材83は、チャック時に金属ベルトbの表面を損傷させないような適宜の材料(例えば樹脂材)にて成形されている。最後に研削加工装置100により、金属ベルトbの外周面と内周面に付着した研削ゴミなどが除去される。各研削加工装置にてその全周が研削加工された金属ベルトbは、ローダ95によってトランスファ8から回収され、ベルトコンベア96に移載される。なお、各端面研削加工装置200A,…、を構成する保持部200aのケーシングC3や研削部200bのケーシングC4のぞれぞれの下端にはキャスタ91,91,…が取り付けられており、このキャスタ91,91,…がレール92,92上を移動できるように構成されている。各端面研削加工装置200A,…の保持部200aや研削部200bは、トランスファ8の往復移動に伴う適宜のタイミングで、トランスファ8側に自動的に移動したり、トランスファ8から自動的に離反するように制御されている。
【0086】
次に、研削加工システム300の作動の流れを説明する。まず、図17,18に示すように、シュータ94に送り込まれてきた金属ベルトbを、ローダ93が図17の矢印X方向に移動して金属ベルトbの内周面で引っ掛け、その姿勢でローダ93が矢印Y方向に移動することで、チャック部材83,83の間に嵌め合わせる。
【0087】
次に、図19,20に移り、金属ベルトbをチャック部材83,83の間に嵌め合わせた後のローダ93は、トランスファ8から離反するように矢印Y方向に移動し、トランスファ8は、チャックされた金属ベルトbを最初に粗研削を実施する端面研削加工装置200Aまで移動させる(矢印Y)。
【0088】
図21,22に移り、前方に配設された金属ベルトbの近傍まで保持部200aが移動し(矢印X)、金属ベルトbの内周面内に駆動ローラ1aと従動ローラ2aの一部を接触させる。ここで、従動ローラ2aを駆動ローラ1aから離反するように移動させることで(矢印Y)、2つのローラ間で金属ベルトbがトラック状に引っ張られた状態となり、チャック部材83,83から金属ベルトbが離れた状態となる。なお、ローダ93は、次の金属ベルトbを搬送するためにシュータ94側へ移動している(矢印Z)。
【0089】
図23,24に移り、2つのローラ間で金属ベルトbをトラック状に引っ張った状態で、保持部200aを研削部200b側へ移動させ(矢印X)、回転体71,72を同一方向に回転させながら金属ベルトbの一端面の粗研削をおこなう。この粗研削の過程では、金属ベルトbは既にチャック部材83,83から解放されているため、トランスファ8が往復移動してもかかる粗研削の障害とはならない。そこで、粗研削の過程でトランスファ8はシュータ94側へ移動し(矢印Y)、既にシュータ94に送り込まれている次の金属ベルトbを回収する。ローダ93は既述するように金属ベルトb側へ移動し(矢印Z)て金属ベルトbを引っ掛ける。
【0090】
図25,26に移り、ローダ93にて金属ベルトbをチャック部材83,83内に嵌め込んでいく(矢印Z)。一方、金属ベルトbの一端面の粗研削が終了すると、保持部200aを研削部200bからわずかに離反させ(矢印Y)、金属ベルトbを対向するチャック部材83,83の間に配設させる。この状態で従動ローラ2aを駆動ローラ1a側へ移動させることにより(矢印X)、2つのローラにて引っ張られていた金属ベルトbが解放されてチャック部材83,83間に把持された状態となる。
【0091】
図27,28に移り、保持部200aをトランスファ8の障害とならない程度までバックさせ(矢印X),2つの金属ベルトb、bを把持したトランスファ8を移動させる(矢印Y)。この移動は、一端面の粗研削が終了した金属ベルトbを次の端面研削加工装置200Bまで搬送するものであり、かかる搬送によって、次の金属ベルトbは最初に粗研削をおこなう端面研削加工装置200Aまで搬送される。この際、ローダ93は、次の金属ベルトbを収容すべくシュータ93側へ移動する(矢印Z)。
【0092】
図29,30に移り、上記する一連の流れを順次実行することにより、一端面を研削された金属ベルトbは次の端面研削加工装置へ搬送され、それと同時に新たな金属ベルトbがシュータ94から回収されていく。ここで、最後に研削加工装置100にておこなわれる外周面と内周面の研削加工に際しては、研削加工装置100がトランスファ8側へ移動し(矢印X)、第2の研削ローラ5にて金属ベルトbの外周面が、第1の研削ローラ3にて金属ベルトbの内周面がそれぞれ研削加工される。
【0093】
すべての研削が終了した金属ベルトbは、ローダ95を介してベルトコンベア96に移載されて搬送される。
【0094】
本発明の研削加工システムによれば、ベルト端面の粗研削や仕上げ研削、ベルトの外周面および内周面の研削をすべて自動研削することが可能となる。各研削体を構成する回転体に装着されたナイロン線材は、既述するようにその磨耗の程度を自動検出されながら常に一定の押圧力を確保することができるため、ナイロン線材の取り替えに要する時間ロスを可及的に低減することができる。また、特に研削加工装置においては、金属ベルトの内外周面の研削加工に際し、研削ゴミが確実に除去された段階で研削加工が実施されること、および、研削ローラはその表面に付着した研削ゴミを除去され、かつ効果的に冷却されることにより、高品質な無端金属ベルトを製造することが可能となる。
【0095】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。例えば、研削体に装着された回転体の回転に加えて、その周方向に配設された各セグメントブラシもその軸心まわりに回転する実施形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の研削加工装置の概要を示した斜視図である。
【図2】研削加工装置の正面図を模式的に示した図である。
【図3】研削加工装置の平面図を模式的に示した図である。
【図4】(a)は、金属ベルトの外周面を研削する研削ローラにクーラントを供給するノズルがセットバックされて位置決めされていることを示した平面図であり、(b)は、(a)に示すノズルの傾斜姿勢を示した側面図である。
【図5】図4に示すノズルの位置によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、(a)は適切なセットバック量の場合の模式図を、(b)、(c)は好ましくないセットバック量の場合の模式図である。
【図6】図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、(a)は好ましくない傾斜角(水平)の場合の平面図を、(b)はその側面図である。
【図7】図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、(a)は適切な傾斜角の場合の平面図を、(b)はその側面図である。
【図8】金属ベルトに砥粒が噛み合うことによって亀裂が生じていることを示した断面図である。
【図9】(a)は、研削ローラや研削ブラシに含まれる砥粒の大きさごとの分布割合を示したグラフであり、(b)は1つの無端金属ベルトを研削加工する場合に発生する砥粒の大きさごとの重量を示したグラフである。
【図10】研削加工装置にて回転する無端金属ベルトに付着した砥粒の付着力と重力を説明した模式図である。
【図11】(a)は、砥粒の付着力と重力、および双方を加味した力を砥粒の大きさごとに示したグラフであり、(b)は、1つの無端金属ベルトを研削加工する場合に発生する砥粒の大きさごとの重量を示したグラフである。
【図12】(a)は、砥粒に作用する力を示した模式図であり、(b)は、無端金属ベルトの幅とクーラントの径の関係を示した模式図であり、(c)は、ノズル(クーラント)の角度を示した模式図である。
【図13】高分子材料の応力―ひずみ曲線である。
【図14】(a)は高分子材料の温度とヤング率の関係を示したグラフであり、(b)は図aのb点における高分離材料の分子構造を、(c)は図aのc点における高分離材料の分子構造を、(d)は図aのd点における高分離材料の分子構造を示した図である。
【図15】連続研削加工時間と砥石表面温度の関係を示したグラフである。
【図16】端面研削加工装置の概要を示した斜視図である。
【図17】本発明の研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII矢視図である。
【図19】図17に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図20】図19のXX−XX矢視図である。
【図21】図19に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図22】図21のXXII−XXII矢視図である。
【図23】図21に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図24】図23のXXIV−XXIV矢視図である。
【図25】図23に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図26】図25のXXVI−XXVI矢視図である。
【図27】図25に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図28】図27のXXVIII−XXVIII矢視図である。
【図29】図27に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図30】図29のXXX−XXX矢視図である。
【図31】(a)は、CVTベルトの一部を示した斜視図であり、(b)は、バレル研磨する前のベルトの断面図とバレル研磨後のベルトの断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1…駆動ローラ、2…従動ローラ、3…研削ローラ(第1の研削ローラ)、4…研削ローラ(第2の研削ローラ)、32,41,52…送りねじ機構、31、51…スピンドルモータ、61a,62a,63a,64a,65a…ノズル、61b、62b、63b、64b、65b、73…流路、71…研削ローラ(第3の研削ローラ)、72…研削ローラ(第4の研削ローラ)、71a,72a…セグメントブラシ、8…トランスファ(搬送装置)、81,82…棒体、83…チャック部材、84…脚、91…キャスタ、92…レール、93…ローダ、94…シュータ、95…ローダ、96…ベルトコンベア、100…研削加工装置、200A,200B,200C,200D…端面研削加工装置、100a,200a…保持部、100b、200b…研削部、300…研削加工システム、b…ベルト、C1,C2,C3,C4…ケーシング,K…クーラント
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置と、該研削加工装置に加えて無端金属ベルトの端面を研削する端面研削加工装置を具備する研削加工システムに係り、特に、研削工程において金属ベルトの内外周面に付着した研削ゴミを効果的に除去することのできる研削加工装置および研削加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置(以下、CVTという)に使用される高負荷伝動用の金属製のCVTベルトは、環状のベルトを積層させてベルト積層体を形成し、このベルト積層体をベルトの幅方向に並ぶように配置させ、各ベルト積層体を複数のブロック(エレメント)にて係止固定させることによって形成されている。例えば、図31aに示すように、環状のベルトa,a,…が積層されて積層体bが構成され、この積層体b、bを複数のブロックc、c、…に嵌め込んでCVTベルトdが形成される。この環状のベルトaは、板状の金属の端部同士を溶接することによって薄板筒状の金属ドラムを形成し、該金属ドラム全体を熱処理することによって(容体化)溶接部と母材とを馴染ませた後、例えば外側のロールカッターと筒体内に配設された内側のロールカッターとを突き合わせてせん断することによって成形される。切断された環状のベルトには、最終工程にてバレル研磨が施される。バレル研磨とは、バレル(容器)に被研磨体(ワーク)と研磨材(メディア)を入れ、バレルの運動によって生じるワークとメディアとの相対摩擦によって、バリの除去や隅角部のR付け加工等の表面加工をおこなう研磨方法のことである。
【0003】
ところで、ロールカッターによる切断時には、ベルトの端部に図31bに示すようなバリa1(外側に引っ張られた突起)やダレ(ベルトの幅方向内側へ引きずられてできるくぼみ)が往々にして生じ、かかるバリやダレを除去するために上記するバレル研磨がおこなわれる。また、容体化の際にベルト表面に形成される1μm程度の厚みをもった酸化膜a2は、ベルト表面の窒化の妨げとなることから、かかる酸化膜もバレル研磨によって除去することができる。さらに、バレル研磨によってベルト端面の隅角部を滑らかな曲線状に成形する(R付け加工)ことができる。
【0004】
上記するように、従来のCVTベルト成形時には、酸化膜の除去とバリやダレの除去を目的としてバレル研磨がおこなわれているものの、このバレル研磨によってもバリやダレを完全に除去しきれず、さらには、ベルト表面に形成された酸化膜の除去に1時間程度を要することからベルトの製作効率の低下が招来されていた。さらに、バレル研磨においては多量のメディアが廃材となることから、かかる廃材の処理も大きな問題となっていた。そこで、かかるバレル研磨行程をおこなうことなく、ベルトの端面を研削する加工方法に関する技術が特許文献1に開示されている。また、本出願人による鋭意研究の結果発案された技術であって、CVTベルトの端面のみならず、その内外周面の研磨をもおこなう無端金属リングの製造装置にかかる技術が特許文献2に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−261882号公報
【特許文献2】特開2005−155755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示の無端金属リングの製造装置によれば、ベルトの端面のみならず、その内外周面をも研磨することにより、従来のバレル研磨装置に比して加工時間の短縮と、研磨加工の精度の向上を図ることが可能となる。しかし、かかる製造装置では、研磨工程において発生し、リングの内外周面に付着した研削ゴミ(切粉、砥粒など)の除去に関する技術の発案にまでは至っていない。本発明者等によれば、研磨工程において発生/付着する研削ゴミをベルトの内外周面から除去しないと、装置を構成する回転ローラやバックアップローラ等をベルトが通過した際に、該研削ゴミがベルト内へめり込んでしまうという問題が特定されている。かかる研削ゴミのめり込みによってできる傷が起点となり、場合によってはリングが切断されるという製品性能/製品耐久性に関する大きな問題へと発展し得る。
【0007】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、CVTベルトをはじめとする無端金属ベルトの内外周面を研削加工する際に、該内外周面に付着した研削ゴミを確実に除去しながら研削加工をおこなうことのできる研削加工装置および研削加工システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による研削加工装置は、無端金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置であって、前記研削加工装置は、前記金属ベルトを掛け渡して回転させる駆動ローラおよび従動ローラと、2つの前記ローラの間で、かつ金属ベルト下方の内周面の一部と当接して該金属ベルトの内周面を研削する第1の研削ローラと、該第1の研削ローラと金属ベルトを挟み込む位置に配設されたバックアップローラと、前記駆動ローラまたは前記従動ローラのいずれか一方と金属ベルトを挟み込む位置に配設され、該金属ベルトの外周面を研削する第2の研削ローラと、前記金属ベルトが回転して前記第1の研削ローラと前記バックアップローラとの間に入り込む上流側に配設され、前記金属ベルト下面の外周面にクーラントを供給する第1のクーラント供給部と、前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラのそれぞれにクーラントを供給する第2のクーラント供給部および第3のクーラント供給部と、を少なくとも具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の研削加工装置は、上記するCVTベルトをはじめとする任意の無端金属ベルトの内外周面を研削(研磨)加工する装置である。この研削加工装置は、一つの装置で金属ベルトの内外周面を一気に研削加工するものであり、金属ベルトの研削部位は、その研削量を高い精度で管理する必要がある場合には、内周面の研削部位と外周面の研削部位が異なる部位であることが好ましい。
【0010】
研削加工装置を構成する駆動ローラと従動ローラの2つの回転ローラに無端金属ベルトを掛け渡し、駆動ローラを回転駆動することによって無端金属ベルトを該2つの回転ローラまわりに回転させる。なお、従動ローラと駆動ローラのいずれか一方が他方に対して離反自在に構成されることで、金属ベルトを掛け渡した後に一方のローラを他方に対して離反させて該金属ベルトに一定の張力を付与できるようになっている。
【0011】
駆動ローラおよび従動ローラに掛け渡された無端金属ベルト下面の内周面の一部には、該金属ベルトの内周面研削用の第1の研削ローラが当接するようになっている。この研削ローラは、適宜のアクチュエータにて無端金属ベルトの内部に出入り自在となっている。また、第1の研削ローラと対向する位置にはバックアップローラが配設されており、該研削ローラとバックアップローラとの間に無端金属ベルトが通過できるようになっている。この第1の研削ローラは、無端金属ベルトの内部に進入後、バックアップローラ側に送られて該バックアップローラとの間に介在する無端金属ベルトを挟み込み、このバックアップローラを反力架台として金属ベルトの内周面を研削加工することができる。なお、研削加工に際しては、圧力フィードバック制御に基づく定圧制御システム等により、研削量を高精度に管理しながら研削加工することができる。
【0012】
一方、駆動ローラまたは従動ローラのいずれか一方と対向する位置には無端金属ベルトの外周面を研削加工するための第2の研削ローラが配設されており、この研削ローラは、駆動ローラと従動ローラの間に金属ベルトが掛け渡された後に、一方のローラ側に移動して金属ベルトを挟み込むように構成されている。金属ベルトの外周面の研削に際しては、第2の研削ローラが駆動ローラまたは従動ローラを反力架台として該金属ベルトの外周面を研削加工することができる。かかる金属ベルトの外周面の研削加工に際しても、圧力フィードバック制御による定圧制御システム等により、金属ベルトに圧力をかけながら所定量の研削加工をおこなうことができる。
【0013】
本発明の研削加工装置は、金属ベルトが回転して第1の研削ローラとバックアップローラとの間に入り込む上流側にクーラント供給部(第1のクーラント供給部)が配設されており、金属ベルト下面の外周面にクーラントを供給できるようになっている。このクーラント供給部は、金属ベルトの外周面の研削加工の際に発生する切粉や砥粒などの研削ゴミを除去するための機構であり、金属ベルトの外周面に付着した研削ゴミがバックアップローラと第1の研削ローラにて挟み込まれ、金属ベルト内部に押し込まれる前に除去することにより、埋め込まれた研削ゴミに起因する金属ベルトの損傷を防止することが可能となる。また、無端金属ベルトの下面の外周面にクーラントを提供する構成とすることにより、該金属ベルトの外周面に付着した研削ゴミを効率的に除去できるという効果を有している。これは、金属ベルトの下面にクーラントを吹き付けることで、金属ベルト表面に付着した研削ゴミは自重にて落下し易い状態となっているためである。また、金属ベルトの上面等の外周面にある研削ゴミを吹き飛ばす場合に比べて、クーラントの供給圧力(ゴミの吹き飛ばしに必要な圧力)を可及的に低減することが可能となる。
【0014】
また、第1、第2の各研削ローラ表面から該ローラ表面に付着した研削ゴミを除去するとともに、研削ローラを冷却するためのクーラント供給部(第2、第3のクーラント供給部)がさらに設けられている。また、金属ベルトの内周面に付着した研削ゴミ等を除去するための別途のクーラント供給部を備えた構成であってもよい。
【0015】
本発明の研削加工装置によれば、研削加工の際に発生し、金属ベルト表面に付着した研削ゴミが適宜のローラ間で挟みこまれ、金属ベルト内部に埋め込まれることを確実に防止することができ、さらには、研削ローラからもかかる研削ゴミを除去することで、高品質な無端金属ベルトを製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明による研削加工装置の好ましい実施の形態は、前記研削加工装置において、前記金属ベルト下面の外周面に対して、該金属ベルトの回転方向に逆らう方向で鉛直方向から所定角度傾斜した方向にクーラントが提供されるように前記第1のクーラント供給部が調整されていることを特徴とする。
【0017】
第1のクーラント供給部は、例えば、クーラントタンクと該タンクからクーラントを各所に提供するポンプ、およびクーラント吐出用ノズルとから構成でき、それぞれがホースや配管にて連通接続されている。
【0018】
クーラントは無端金属ベルト下面の外周面に提供されるが、ここで、該金属ベルトの下面に対してクーラントが鉛直下方から供給された場合には、研削ゴミを金属ベルト表面に押し付けることとなってしまい、該研削ゴミの効率的な除去が阻害される。そこで、本実施の形態においては、金属ベルトの回転方向に逆らう方向で、かつ鉛直方向から所定角度傾斜した方向にクーラントを提供するように第1のクーラント供給部(のノズル)を調整しておくものである。
【0019】
上記するノズルの傾斜角度は、砥粒の径や、砥粒の粒子間に働くVan der Waals力(ファンデルワールス力)と液架橋力からなる付着力(付着力よりも大きなクーラントの吹き付け力が要求される)などによって異なってくるが、発明者等の試算によれば、例えばおよそ49度以上の傾斜角にてクーラントを供給する必要があるという結果が得られている。
【0020】
また、本発明による研削加工装置の好ましい実施の形態は、前記研削加工装置において、前記金属ベルトの回転方向に対して、前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラがともに逆方向に回転制御されており、前記第3のクーラント供給部は前記第2の研削ローラの上方または下方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも前記駆動ローラ側または前記従動ローラ側に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第2の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されており、前記第2のクーラント供給部は前記第1の研削ローラの上方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも該研削ローラの回転方向に逆らう方向に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第1の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されていることを特徴とする。
【0021】
本実施の形態は、研削ローラから研削ゴミを除去するとともにローラを冷却するクーラント供給部(第2、第3のクーラント供給部)を構成するクーラント吐出用ノズルの位置とその角度を調整した実施の形態である。ここで、金属ベルトの内外周面からの研削ゴミの効率的な除去を実行するために、金属ベルトの回転方向に対して、第1の研削ローラと第2の研削ローラはともに逆方向に回転制御されている。
【0022】
まず、金属ベルトの外周面を研削する第2の研削ローラにクーラントを供給するクーラント供給部(第3のクーラント供給部)は、該研削ローラの上方または下方に配設されており、かつ、該研削ローラの鉛直中心よりも駆動ローラ側または従動ローラ側に所定量偏った位置に配設される。さらに、第2の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されている。例えば駆動ローラとの間で金属ベルトを挟み込むように装置が構成されている場合には、駆動ローラと第2の研削ローラとは相互に逆方向に回転することとなる。ここで、研削ローラの上面にクーラントを提供する場合、該クーラントが研削ローラの上面の全域(ほぼ全域)に提供されること、および研削ローラ表面からクーラントによって吹き飛ばされた研削ゴミが2つのローラ間に落ち込まないようにするために、ノズルを上記するように所定量セットバックする。
【0023】
また、クーラントの吐出角度(ノズルの角度)も、研削ローラの上面に対して水平方向に設定するのではなく、上方の所定の傾斜角方向から研削ローラの上面に吐出するようにノズルの角度を調整するものである。
【0024】
発明者等の検証によれば、上記セットバック量として、研削ローラの上端(鉛直中心点)から5〜30度程度の範囲内でノズルをセットバックさせることが望ましいという結果が得られている。また、ノズルの傾斜角(スラント角)は、5〜15度程度の範囲内で調整し、かつ、ノズルから吐出されたクーラントが研削ローラの幅方向において、該クーラント側の1/4程度の幅領域に吐出されるようにノズルを調整することにより、クーラントが研削ローラの幅全域に提供できるという結果が得られている。
【0025】
なお、研削ローラの全域にクーラントを効果的に提供するための要素としては、ノズルの角度やセットバック量以外にも研削ローラの回転速度等の他の要素が考えられるが、かかる回転速度等は規定の研削条件に基づいて所定の回転速度に固定されており、したがって、任意に変更調整することが難しい。そこで、本実施の形態では、クーラント吐出用のノズルの位置や姿勢のみを調整することで、クーラントを効果的に研削ローラに提供するようにしたものである。
【0026】
さらに、本発明による研削加工システムは、前記金属ベルトを掛け渡して回転させる第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラと、第1の研削ブラシが周方向に複数設けられた第3の研削ローラと、第2の研削ブラシが周方向に複数設けられた第4の研削ローラとを備え、第1の研削ブラシと第2の研削ブラシが干渉しない離隔を備え、かつ、前記第2の駆動ローラおよび前記第2の従動ローラと対向する位置に前記第3の研削ローラと前記第4の研削ローラが配設され、第3の研削ローラと第4の研削ローラにて前記金属ベルトの端面を研削する端面研削加工装置と、金属ベルトの内外周面を研削する前記研削加工装置と、を具備しており、複数の前記端面研削加工装置がライン状に配設されており、金属ベルトをそれぞれの端面研削加工装置に順次搬送するとともにそれぞれの端面研削加工装置および研削加工装置の駆動ローラおよび従動ローラ間に金属ベルトを着脱させる搬送装置がさらに備えられており、金属ベルトの一方の端面が適宜の端面研削加工装置にて研削加工された後に、次の端面研削加工装置にて金属ベルトの他方の端面が研削加工され、前記研削加工装置にてベルトの内外周面が研削されることを特徴とする。
【0027】
本発明の研削加工システムは、無端金属ベルトの内外周面を研削加工する既述の研削加工装置と、無端金属ベルトの端面を研削加工する複数の端面研削加工装置とから構成されるものである。より具体的には、複数の端面研削加工装置がライン状に配設されており、この端面研削加工装置に無端金属ベルトが順次搬送されることによって該金属ベルトの両端面の研削がおこなわれる。次いで無端金属ベルトはその内外周面を研削加工する研削加工装置に搬送されて研削加工され、最終製品として搬出される。
【0028】
端面研削加工装置は、無端金属ベルトを掛け渡して回転させる第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラと、第1の研削ブラシが周方向に複数設けられた第3の研削ローラと、第2の研削ブラシが周方向に複数設けられた第4の研削ローラとから構成されている。ここで、使用される第1、第2の研削ブラシは特に限定するものではないが、例えば、アルミナ(Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)などの研磨砥粒を溶融させた多数のナイロン線材を束にして構成された、いわゆるセグメントブラシなどが使用できる。この場合、ナイロン線材の束の一端を金属製の筒内に収容するとともに、ナイロン線材の束の他端を別途の金属製の筒に嵌め込み、他端を該金属製の筒から若干突出させた状態にして研削ブラシを形成することができる。この他端をベルト端面に押し当てて該端面の研削がおこなわれるが、他端近傍が金属製の筒にて拘束されることでブラシの剛性が確保され、研削ブラシによる研削力を維持することが可能となる。また、研削ブラシ端部が研削によって磨耗した場合には、金属製の筒内に収容され束の一端を該筒から押出すことにより、金属製の筒から突出するナイロン線材の突出長を調整することができる。
【0029】
例えば、既述するセグメントブラシが第3の研削ローラと第4の研削ローラにそれぞれ複数取り付けられ(研削ローラの周方向に間隔を置いて取り付けられている)、モータを内蔵したケーシング端部に双方の研削ローラが相互に干渉しない離隔をおいて取り付けられている。ここで、2つの研削ローラは双方ともに別途のモータ駆動軸に装着されており、好ましくは同期回転するように構成されている。
【0030】
2つの研削ローラに対向する位置には、モータを内蔵したケーシング端部に2つのローラ(第2の駆動ローラと第2の従動ローラ)が設けられている。かかる駆動ローラおよび従動ローラに金属ベルトが掛け渡された後、2つの研削ローラに装着されたセグメントブラシがベルト端面に当接する位置にくるように、研削ローラと駆動ローラおよび従動ローラの双方が相対的に近接移動できるようになっている。なお、研削に伴ってブラシが磨耗した際には、例えばセグメントブラシに装着された圧力センサでブラシの磨耗の程度を検知させ、既述する実施の形態におけるナイロン線材の他端をベルト側へ磨耗分だけ自動的に押出す構成とすることもできる。
【0031】
金属ベルトの両端面は、例えば2つの端面研削加工装置にて順次研削されるとともに、それぞれの端面は、例えば別途の端面研削加工装置にて粗研削と仕上げ研削が交互に実施される。かかる実施の形態では、少なくとも4基の端面研削加工装置がライン状に配設されることとなる。研削順序の実施の形態としては、金属ベルトの一端面の粗研削がおこなされ、次の端面研削加工装置に金属ベルトが搬送されてその他端面の粗研削がおこなわれ、次の端面研削加工装置に搬送されてその一端面の仕上げ研削がおこなわれ、最後に次の端面研削加工装置に搬送されてその他端面の仕上げ研削がおこなわれる。このように金属ベルトの研削端面を交互に変化させるためには、間隔を置いて隣接する端面研削加工装置において、金属ベルトが掛け渡される第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラの配設位置と、研削ローラの配設位置をラインに対して交互に逆転させればよい。
【0032】
また、搬送装置は特に限定するものではないが、例えば、2本の棒体が間隔を置いて併設され、この1組の棒体のそれぞれの対向面には、ベルトをトラック状に変形させた姿勢で保持する2つのチャック部材が取り付けられており、この1組のチャック部材が、既述する4基の端面研削加工装置と同じ間隔を置いて該棒体に4組組取り付けられた実施の形態などを適用できる。この1組の棒体が間隔を置いて隣接する端面研削加工装置間および端面研削加工装置と研削加工装置間を往復移動することにより、それぞれの端面研削加工装置にて一端面が研削されたベルトを、他端面を研削する次の端面研削加工装置に搬送でき、さらには内外周面を研削する研削加工装置に搬送することが可能となる。なお、最後に金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置の搬送方向前方には、製品搬送用のベルトコンベアが設置されており、例えば5段階の研削工程を経て仕上げられた無端金属ベルトはこのベルトコンベア上に移載され、搬出される。
【0033】
上記する無端金属ベルトのローラへの掛け渡しや搬送のより具体的な実施例は、例えば、シュータを介し、端部のチャック部材間に金属ベルトがトラック状に変形されながらローダによってセットされる。金属ベルトを把持したチャック部材が最初の端面研削加工装置の位置にくるように1組の棒体が移動する。端面研削加工装置を構成する駆動ローラおよび従動ローラが棒体側へ移動し、2つのローラがトラック状の金属ベルトの内周部分に挿入される。この姿勢で、例えば従動ローラが駆動ローラから離反するように移動してトラック状の金属ベルトを長手方向に緊張する。金属ベルトが長手方向に緊張されることで、チャック部材で保持されていた状態よりもより細長く変形され、金属ベルトがチャック部材から解放される。金属ベルトをチャック部材から解放した姿勢で駆動ローラを回転させる。ここで、研削ローラの研削ブラシが金属ベルトの端面に当接するように該研削ローラが移動し、金属ベルトの端面に所定の押圧力で当接した状態で、2つの研削ローラを同一方向に回転させる。所定の粗研削が終了したら、従動ローラが駆動ローラ側に移動し、トラック状の金属ベルトをチャック部材にチャックさせ、駆動ローラおよび従動ローラは棒部材から退避する。チャック部材でチャックされた金属ベルトは、棒体の移動によって次の端面研削加工装置へ搬送される。かかる端面研削加工装置においても同様の作動により、今度は反対側の金属ベルト端面の粗研削がおこなわれる。以後、同様の作動によって両端面の仕上げ研削が交互におこなわれ、さらに研削加工装置によって金属ベルトの内外周面が研削され、最終的にベルトコンベアへ移載される。なお、粗研削と仕上げ研削の相違は、研削時に使用されるブラシの線径や研磨砥粒の粒径を変化させることによって調整される。
【0034】
搬送装置は、例えば上記するように1つのベルトを次の端面研削加工装置または研削加工装置に順次搬送するとともに、別途の金属ベルトも同様に順次搬送することができる。かかる構成とすることで、ベルト端面の粗研削〜仕上げ研削、内外周面の研削をすべて無人化することが可能となり、無端金属ベルトの全周を効率的かつ高い精度で研削加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明から理解できるように、本発明の研削加工装置および研削加工システムによれば、研削加工時に無端金属ベルト表面に付着した研削ゴミが適宜のローラによって金属ベルト内部へ埋め込まれる前に確実に除去することができるため、かかる研削ゴミによって金属ベルトが破断するといった製品不良を確実に防止することができる。また、本発明の研削加工装置および研削加工システムによれば、無端金属ベルトの端面と内外周面のすべてを高精度に研削加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の研削加工装置の概要を示した斜視図を、図2は、研削加工装置の正面図を模式的に示した図を、図3は、研削加工装置の平面図を模式的に示した図をそれぞれ示している。図4aは、金属ベルトの外周面を研削する研削ローラにクーラントを供給するノズルがセットバックされて位置決めされていることを示した平面図であり、図4bは、図4aに示すノズルの傾斜姿勢を示した側面図である。図5は、図4に示すノズルの位置によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、図5aは適切なセットバック量の場合の模式図を、図5b、図5cは好ましくないセットバック量の場合の模式図である。図6は、図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、図6aは好ましくない傾斜角(水平)の場合の平面図を、図6bはその側面図である。図7は、図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、図7aは適切な傾斜角の場合の平面図を、図7bはその側面図である。なお、図示する実施形態では、CVTベルトを構成する無端金属ベルトの内外周面および端面を研削対象としているが、被研削体がかかる金属ベルトに限定されるものでないことは勿論のことである。
【0037】
図1は、無端金属ベルトの内外周面を研削加工する研削加工装置の一実施の形態の斜視図である。この研削加工装置100は、無端の金属ベルトbを掛け渡して回転させる駆動ローラ1と従動ローラ2、該駆動ローラ1と従動ローラ2の間に出入り自在であって、かつ鉛直方向に移動自在な金属ベルトbの内周面を研削加工するための研削ローラ3(第1の研削ローラ)、研削ローラ3との間で金属ベルトbを挟み込み、研削ローラ3による内周面研削時の反力架台となるバックアップローラ4、駆動ローラ1との間で金属ベルトbを挟み込み、金属ベルトbの外周面を研削加工する研削ローラ5(第2の研削ローラ)、各所に配設されたクーラント供給用のノズル61a,62a,63a,64a,65aと、から大略構成されている。
【0038】
駆動ローラ1は、スピンドルモータ11によって所定の回転速度にて回転制御されており(図2のX1方向)、従動ローラ2は、金属ベルトbの回転に伴って駆動ローラ1と同期回転する(図2のX1方向)。なお、従動ローラ2は、サーボモータを具備する送りねじ機構21にて駆動ローラ1に対して離反/近接できるように構成されており、金属ベルトbを駆動ローラ1および従動ローラ2に掛け渡す際には、この従動ローラ2が駆動ローラ1から離反することによって金属ベルトbに所定の張力を付与した姿勢でトラック状の姿勢を形成させる(図3のX7方向)。
【0039】
金属ベルトbの内周面を研削する研削ローラ3は、その回転制御がスピンドルモータ31によって実行制御される。この研削ローラ3は、駆動ローラ1と従動ローラ2の間に金属ベルトbが掛け渡されると、不図示の送りねじ機構にて駆動ローラ1と従動ローラ2の間に進入移動され(図3のY1方向)、さらに、サーボモータを具備する送りねじ機構32によって圧力フィードバック制御に基づく金属ベルトbの内周面側への定圧送りが実行される(図2のZ方向)。なお、研削ローラ3の回転方向は、金属ベルトbの回転方向(図2のX5方向)と逆方向(図2のX2方向)に設定されており、効率的な研削加工を実現することができる。
【0040】
この金属ベルトbの内周面の研削に際しては、研削ローラ3と対向する位置に配設されたバックアップローラ4が不図示の送りねじ機構によって金属ベルトbの下面に当接するように上昇され、研削ローラ3の降下に伴い、双方のローラ3,4にて金属ベルトbを挟み込むようになっている。このバックアップローラ4は、金属ベルトbの回転に伴って従動的に回転する(図2のX4方向)。
【0041】
一方、金属ベルトbの外周面を研削する研削ローラ5は、スピンドルモータ51によってその回転制御がおこなわれるとともに(図2のX3方向)、定圧送りを実行する送りねじ機構52によって研削時の反力架台となる駆動ローラ1側に水平移動される(図2のX6方向)。なお、この研削ローラ5の回転方向も、図示するように金属ベルトbの回転方向と逆方向に設定されている。
【0042】
図示するように、無端の金属ベルトbは、その内周面と外周面とが別途の研削位置にて研削加工されるようになっており、精密研削加工時における高精度な研削量の管理がおこなわれ易くなっている。
【0043】
また、金属ベルトbが回転して研削ローラ3とバックアップローラ4の間に入り込む上流側には、該金属ベルトbの下方の外周面にクーラントを供給するためのノズル61aが所定の角度方向に向けられた姿勢で配設されており、このノズル61aは、ホースまたは配管からなる流路61bを介して不図示のクーラントタンクおよび送液ポンプに連通している。なお、ノズル61aの傾斜角度に関しては、その詳細を後述する。
【0044】
また、金属ベルトbの外周面を研削加工する研削ローラ5の研削面から研削ゴミを除去するとともに、該研削面を冷却するためのクーラントを供給するノズル62aは、該研削面の上方に位置するとともに、研削ローラ5の鉛直中心から所定量だけ駆動ローラ1側にセットバックされ、さらに所定角度傾斜した姿勢で位置決めされている。このノズル62aも適宜の流路62bを介して不図示のクーラントタンクおよび送液ポンプに連通している。
【0045】
さらに、金属ベルトbの内周面を研削加工する研削ローラ3の研削面にクーラントを供給するノズル63aが上記ノズル62aと同様の位置決め方法にて設けられている。このノズル63aも、流路63bを介して不図示のクーラントタンクおよび送液ポンプに連通している。
【0046】
また、金属ベルトbの内周面から研削ゴミを除去するためのクーラント供給用ノズル64aと流路64b、ノズル65aと流路65bも設けられている。
【0047】
図2に示すように、金属ベルトbが研削ローラ3とバックアップローラ4の間に進入する前に、金属ベルトbの外周面に付着した研削ゴミSをノズル61aから供給されるクーラントKによって吹き飛ばすことにより、ローラ3,4間に金属ベルトbが挟み込まれた際に付着した研削ゴミSが金属ベルトbの内部に噛み込むことを防止できる。特に、このノズル61aが金属ベルトbの下方の外周面において付着ゴミを除去することにより、該ゴミはその自重によって付着力が低減されていることから、クーラントKの吐出力を低減することが可能となる。また、金属ベルトbの内周面においては、ノズル65aから供給されるクーラントKによって内周面に付着した研削ゴミが吹き飛ばされる。
【0048】
また、研削ローラ3,5の外周面に付着した研削ゴミS,Sは、ノズル62a,63aから供給されるクーラントKによって吹き飛ばされ、さらにこのクーラントKによって各研削ローラが冷却されることで、研削時の発熱による加工不具合を効果的に解消することができる。
【0049】
次に、図4〜6に基づいて、研削ローラ5の上方にノズル62aが位置決めされる際の、ノズル位置(セットバック量)とノズルの傾斜角について説明する。
【0050】
図4aは、ノズル62aと研削ローラ5との位置関係を平面視で示した図である。ここで、ノズル62aの中心線は、研削ローラ5の回転中心線Pから駆動ローラ1側へ所定長:L1だけセットバックさせた位置に配設される。一方、図4bは、ノズル62aと研削ローラ5との位置関係を側面視で示した図である。ノズル62aは、図4aで示す所定長のセットバックに加えて、研削ローラ5の上面全域にクーラントが行き渡るように所定角:θ傾斜させる。なお、ノズル62aの先端は、研削ローラ5の上端よりも若干高い位置(例えば1〜2mm程度)の位置で、研削ローラ5の端部から同様に1〜2mm程度離れた位置に配設される。この条件でノズル62aからクーラントを吐出すると、クーラントKは、研削ローラ5の全幅:L2の1/3〜1/4の範囲に吐出されることが発明者等によって特定されており、かかるノズルの姿勢調整により、クーラントKは研削ローラ5の全幅に効果的に吐出することが可能となる。
【0051】
[ノズルのセットバック量に関する検証結果]
図5は、上記するノズル62aの最適なセットバック量に関する発明者等による検証結果を模式的に示した図である。ここで、図5aは、ノズル62aを一定の傾斜角とし、かつ、研削ローラ5を一定の回転速度にて反時計回り(X3方向)に回転させた条件において、セットバック量を研削ローラ5の天頂部から5〜30度の角度:δ1(セットバック量:L1)の範囲とした場合のクーラントKの広がりの状況を示している。この条件によれば、クーラントKは研削ローラ5の天端全域に提供でき、研削ゴミS,…も駆動ローラ1側へ落ち込むことなく、効果的に吹き飛ばすことができた。
【0052】
一方、図5bは、セットバック量がない場合の結果を、図5cは、セットバック量:δ2が45度の場合の結果をそれぞれ示している。図5bに示すセットバック量がない場合には、研削ローラ5の回転により、その駆動ローラ1側のおよそ半分の範囲にクーラントが行き渡っていない。したがって、かかる範囲に付着した研削クズが駆動ローラ1側に落ち込んでしまう。
【0053】
また、図5cに示すように、セットバック量が45度程度となると、図5bとは反対に、研削ローラ5の駆動ローラ1側と反対側半分の領域にクーラントKが行き渡らなくなってしまう。
【0054】
以上の検証結果より、発明者等は、図示する研削ローラの回転方向の場合において、ノズル62aのセットバック量を駆動ローラ側へ5〜30度程度に設定することが最適な設定範囲であるという結論に至った。
【0055】
[ノズルの傾斜角に関する検証結果]
次に、ノズル62aの傾斜角についての発明者等による検証結果を図6,7に基づいて説明する。図6は、傾斜角がない(水平)な場合のクーラントKの広がりを示した模式図であり、図6aは平面図を、図6bは側面図をそれぞれ示している。一方、図7は、傾斜角を5〜15度の範囲で設定した場合のクーラントKの広がりを示した模式図であり、図7aは平面図を、図7bは側面図をそれぞれ示している。なお、ノズル62aは、上記する5〜30度の範囲で所定量セットバックされた位置に位置決めされている。
【0056】
図6aからも明らかなように、ノズル62aを傾斜させない場合には、クーラントKの広がりはそのクーラント幅程度にしか及ばない。一方、図7aに示すようにクーラントKの傾斜角を5〜15度の範囲で傾斜させ、研削ローラ5に対するクーラントKの吐出領域を全幅L2の1/4〜1/3の範囲とした場合には、研削ローラ5の全領域に効果的にクーラントKが行き渡ることが分かる。なお、傾斜角の上限を15度程度とした理由は、高圧のクーラントKによって砥粒や研削屑を効果的に吹き飛ばす効果をも合わせた最適な条件によるものである。
【0057】
[クーラントによる除去対象となる付着砥粒に関する考察]
図8は、砥粒が金属ベルト内に噛み込んで、金属ベルトに亀裂が生じている断面図(断面写真)を示したものである。この砥粒の径は30μm以上であり、かかる径以上の大きさの砥粒が金属ベルトに噛み込んで傷(Fの領域)がつくと、かかる傷が起点となって無端金属ベルトの切断に至る。なお、図8に示す金属ベルトは圧延工程を経た製品であり、15μm以上の深度の傷が形成されている。したがって、無端金属ベルトの研削工程が終了する段階では、径30μm程度以上の砥粒を確実に金属ベルト表面から除去しておくことを要する。
【0058】
本発明の研削加工システムの概要は後述するが、かかるシステムにおいては、金属ベルトの両端面の粗研削が実行され、次いで仕上げ研削が実行され、最後に金属ベルトの内外周面の研削加工がおこなわれる。この粗研削工程にて使用される研削ブラシを♯80の砥粒、仕上げ研削工程にて使用される研削ブラシを♯320の砥粒、最後の内外周面研削工程にて使用される研削ブラシを♯120の砥粒をそれぞれ使用した場合に、各研削ブラシに含まれる砥粒分布の割合と、1リングの無端金属ベルトを研削加工する際に発生する砥粒の重量をそれぞれ図9a、図9bに示している。
【0059】
図9a中、P1は♯80の砥粒にかかるグラフを、Q1は♯320の砥粒にかかるグラフ、R1は♯120の砥粒にかかるグラフをそれぞれ示している。これらのグラフからも明らかなように、すべての仕様の砥粒において、図8にて説明した金属ベルトに致命的な損傷を与え得る径30μm以上の砥粒がその大部分を占めていることが分かる。すなわち、研削工程にて発生して金属ベルトに付着した砥粒をほぼ完全に除去しないと、金属ベルトの耐久性を大きく低下させる損傷原因を払拭することはできないこととなる。
【0060】
図9b中、P2は♯80の砥粒にかかるグラフを、Q2は♯320の砥粒にかかるグラフ、R2は♯120の砥粒にかかるグラフをそれぞれ示している。図9bに示す発生砥粒重量に関しても同様の結果となっており、本実験では、30μm以上の径を有する砥粒の総重量が0.049gとなり、砥粒全体の99.8%にも及ぶことが判明した。
【0061】
[金属ベルト表面に付着する砥粒の付着力と自重に関する考察]
次に、金属ベルト表面に付着する砥粒の付着力を算定する。図10は、駆動ローラ1と従動ローラ2との間に掛け渡された金属ベルトbに作用する砥粒の付着力を説明した模式図である。ここで、金属ベルトbの上面には、付着力:Fと砥粒自重:Fgとの和の値がクーラントにて吹き飛ばす必要のある付着力となる。一方、金属ベルトbの下面においては、付着力:Fから砥粒自重:Fgを差し引いた値がクーラントにて吹き飛ばす必要のある付着力となる。すなわち、金属ベルトbの下面において付着砥粒を除去する方がより効果的でかつ低圧力のクーラントで砥粒の除去が可能となる。
【0062】
上記する砥粒の付着力は、粒子に作用するVan der Waals力(ファンデルワールス力)と液架橋力とをそれぞれ求め、その和をもって付着力が算定される。
【0063】
図11aは、上記するファンデルワールス力と液架橋力の和(グラフT2)、砥粒の自重(グラフT3)、付着力:Fと砥粒自重:Fgとの和(グラフT1)、付着力:Fと砥粒自重:Fgとの差(グラフT4)をそれぞれ示しており、図11bは、図9bと同じ発生砥粒の重さ分布を示している。図11aのグラフT4より、径105μm以上の砥粒は自重にてそのまま落下することが分かる。よって、それよりも径の小さな砥粒は自重よりも付着力が勝る結果、クーラントにて除去する必要があることが理解できる。また、同グラフT4において最大値を与える砥粒径はおよそ64μm付近であるが、これは、金属ベルトの破断が多発する径30μm程度の傷が圧延前には60μm程度の傷であると想定されることに符合する。そこで、径60μm程度の砥粒を確実に除去できるクーラント圧と、ノズルの角度の設定が必要となる。
【0064】
[金属ベルト外周面へクーラントを供給するノズル角度の考察]
図12a〜dに基づいて、砥粒径やそのほかの条件を一般に想定され得る任意の条件に設定し、ノズルの傾斜角度を算定した。以下にその算定の内容を説明/記載する。
【0065】
まず、図12aにおける各値を算定する。ここで、径63.5μmの砥粒を仮定し、該砥粒に作用する力を求める。
【0066】
1)砥粒に作用するファンデルワールス力:Fv=H・D/(12Z2)より、4.96μNとなる。ここで、HはHamaker定数でH=15・10−20J、Zは粒子と平面の分離距離でZ=0.4nm、Dは粒子径で63.5μmである。
【0067】
2)液架橋力:FL=2・π・σ・D/2・cosθより、7.26μNとなる。ここで、σは水の表面張力で0.0728N/m、θは接触角で60度(ステンレスの場合は45度、アルミニウムの場合は70度)、Dは粒子径で63.5μmである。
【0068】
3)重力:Fg=4/3・π・(D/2)3・ρ・g=4.27μNとなる。ここで、ρは比重でSiCの場合は3.25g/cm3、Al2O3の場合は3.99g/cm3、gは重力加速度で9.8m/s2である。
【0069】
砥粒に作用する垂直抗力:Nは、N=Fv+FL−Fg=7.95μNとなり、転がり摩擦係数:μ=0.01としてクーラントを吹き付けた際の摩擦抵抗力:Freg=μN=0.0795μNとなる。
【0070】
金属ベルトは砥粒を付着させた状態で回転移動しているので、その際に砥粒が持つ力積:Fmv・dt=m・V=45.17ng・m/sとなる。ここで、m=435.7ng、V=0.104m/sとする。
【0071】
図12bに示すように、金属ベルトの幅を9.9mm、金属ベルトに吐出されたクーラントの径をφ15mmとすると、砥粒がクーラントの吐出範囲を通過する時間は0.109sと算定でき、したがって、金属ベルトによって伝達された砥粒の運動エネルギーを打ち消すのに要する力:FmV=m・V/dt=0.00042μNとなる。
【0072】
以上より、付着した砥粒を吹き飛ばすために要する金属ベルトに平行な力は、Freg+FmV=0.0799μNとなる。クーラントの吹き付け力がかかる抗力を超えた段階で砥粒の除去が可能となる。
【0073】
クーラントの配管内部における圧力をPO、配管径をDOとし、砥粒に当たるクーラント圧をP、クーラントが金属ベルトに作用する領域の径をD1とし、ノズル効率をηとすると、P=η・DO2/D12・PO/5=0.061MPaとなる。ここで、η=0.5、DO=9.53mm,D1=15mmである。
【0074】
この水圧が砥粒(径はD)に伝達される力:Fc=1/2・π・(D/2)2・P=479.4μNとなる。
【0075】
クーラントの角度が図12aに示すγの場合、該クーラントが砥粒を飛ばす条件は、Fcsinγ>Freg+FmVである。
【0076】
図12cに示すように、ノズルの傾斜角度をα、クーラントの噴射角度をβ、ノズルと金属ベルト間の離間をL3(=10mm)とすると、α>β/2+γ、L3=10mm、γ=0.1度、β/2=sin−1((D1/2)/L3)=48.6度となり、α>48.7度が設定条件におけるノズルの傾斜角度範囲となる。
【0077】
[研削ローラの冷却の必要性に関する考察]
研削ローラにおいては、砥石のバインダーに高分子ポリマーの一種であるゴムが用いられており、その応力−ひずみ曲線を図13に示している。また、同図においては、ゴムからなる長さ:l、断面積:AOの棒部材に力:Fが作用する場合のモデル図を併せて図示している。図13から明らかなように、研削中に温度が上昇すると、バインダーであるゴムが軟化し、研削ローラを構成する回転軸からバインダーがはずれ易くなってしまう。
【0078】
例えばウレタンゴムの場合、図14aに示すように、ガラス転移温度は241K(−32℃)であるため、実用温度0〜60℃で考慮すると、規格化温度1.13〜1.38でゴムプラトー状態が保たれる。しかし、砥石が発熱して100℃を超えると、規格化温度が1.55まで跳ね上がり、ゴムプラトー領域から粘性流動領域へ移行し、その状態で荷重が作用すると砥石はその形状を保持できなくなってしまう。このような理由から、研削加工においては、研削ローラの表面を積極的に冷却することが重要となる。なお、図14aのグラフ中のb点、c点、d点における各分子構造を図14b、c、dにそれぞれ模式的に示した。
【0079】
図15は、連続加工時間と、研削ローラが冷却される場合(グラフU2)と、冷却されない場合(グラフU1)をグラフ化した図である。例えば、加工時間が3時間程度で100℃を越え、その後は該砥石がその形状を保持できないことで回転軸から外れてしまう結果となる。
【0080】
次に、端面研削加工装置について説明する。端面研削加工装置200は、図16に示すように、複数のセグメントブラシ71a,71a,…、72a,72a,…を周方向にそれぞれ配設した2つの研削ローラ71,72からなる研削部と、セグメントブラシ71aの先端に対向する位置にあって、金属ベルトbを2つのローラ(駆動ローラ1aと従動ローラ2a)に掛け渡した姿勢で金属ベルトbを保持する保持部とから構成される。保持部は、2つのローラを軸支しながら、駆動ローラ1aの駆動軸を回転させる不図示のモータが内蔵された不図示のケーシングの一側面に2つのローラが装着されている。ここで、従動ローラ2aは、ケーシングの一側面上を移動できるように構成さてれている。例えば、従動ローラ2aを軸支する回転軸がシリンダユニットのピストンロッドの先端に取り付けられていて、ピストンロッドの伸縮により、従動ローラ2aは駆動ローラ1aから離反/近接することができる。一方、研削部は、2つの研削ローラ71,72をそれぞれ回転させるモータを内蔵した不図示のケーシングの一側面に該研削ローラ71,72が装着されている。
【0081】
セグメントブラシ71a,72aは、アルミナ(Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)などの研磨砥粒を溶融させた多数のナイロン線材が金属製の筒体で束ねられた姿勢で研削ローラ71,72の端面から所定長さ突出している。
【0082】
この研削ローラ71,72は同一方向に回転制御されており、駆動ローラ1a,従動ローラ2aに掛け渡されながら平面視がトラック状に引き伸ばされた金属ベルトbの直線区間の適宜箇所において、一方の研削ローラ71の入射方向と他方の研削ローラ72の退出方向が異なる結果、ベルト端面研削時に一方の研削ローラの回転方向へのベルトの倒れを他方の研削ローラの回転によって防止することができる。さらには、ベルト端面の2つの隅角部を2つの研削ローラによって一気に研削することが可能となり、研削効率を高めることができる。なお、駆動ローラ1a,従動ローラ2aに掛け渡された金属ベルトbをトラック状に引き伸ばす際には、2つのローラ1a,2aにベルトを掛け渡した後で、従動ローラ2aを駆動ローラ1aから離反するように可動させればよい。
【0083】
また、研削ローラ71,72にそれぞれ取り付けられたセグメントブラシ71a,72aは、ナイロン線材の一端が金属製の筒体に収容されており、他端側は金属製の筒体がナイロン線材を束ねるように嵌装されている(不図示)。この筒体の端部は閉塞されており、かかる端面にシリンダユニットのピストンロッドが当接している。研削時のナイロン線材の剛性を確保するために、筒体からのナイロン線材の突出長は適宜の長さに設定されている。ここで、研削によってナイロン線材の先端が徐々に磨耗し、研削力が低下した際には、かかる研削力の低下を図示しない圧力センサにて検知し、検知結果に基づいてピストンロッドが所定長伸張するように構成することができる。なお、端面研削加工装置200においても、適宜のベルト箇所にクーラントを供給するノズル73aと流路73bが配設されている。
【0084】
次に、図17〜30に基づいて、研削加工システムの概要と、その作動の流れについて説明する。
図17,18に基づいて研削加工システム300の概要を説明すると、図16で説明した4基の端面研削加工装置200A,200B,200C,200Dが等間隔でライン状に配設されている。ここで、端面研削加工装置200A(または、200B,200C,200D)は、無端の金属ベルトbを保持/回転させる駆動ローラ1aと従動ローラ2aと、それらを具備するケーシングC3とからなる保持部200aと、セグメントブラシ71,72と、それらを具備するケーシングC4とからなる研削部200bと、から構成されている。また、端面研削加工装置200Dの送り方向前方には金属ベルトbの内外周面を研削加工する研削加工装置100が設置されている。この研削加工装置100は、金属ベルトbを保持/回転させる駆動ローラ1と従動ローラ2と、それらを具備するケーシングC1とからなる保持部100aと、第1の研削ローラ3と第2の研削ローラ4と、それらを具備するケーシングC2とからなる研削部100bと、から構成されている。
【0085】
それぞれの端面研削加工装置200A,200B,200C,200Dを構成する保持部200a,…と研削部200b、…の間、および、研削加工装置100を構成する保持部100a,…と研削部100b、…の間には、隣接する加工装置間を往復移動できるトランスファ8が備えられている。ここで、各端面研削加工装置200A,200B,200C,200Dは、それぞれの保持部200aと研削部200bとの配設位置が交互に逆転しながら配設されている。これは、金属ベルトbの両端面を交互に研削するためであり、シュータ94に送り込まれてきた金属ベルトbは、ローダ93にてトランスファ8に送られ、トランスファ8の往復移動に伴って順に次の端面研削加工装置へ送られる。端面研削加工装置は、シュータ94に近い端面研削加工装置200Aから順に、金属ベルトbの一端面の粗研削をおこなう装置、金属ベルトbの他端面を粗研削する装置(端面研削加工装置200B)、金属ベルトbの一端面を仕上げ研削する装置(端面研削加工装置200C)、金属ベルトbの他端面を仕上げ研削する装置(端面研削加工装置200D)となっている。ここで、トランスファ8は、上下に併設する棒体81,82と、各端面研削加工装置間の間隔で該棒体81,82の対向面に取り付けられたチャック部材83,83とから構成されており、このチャック部材83,83で金属ベルトbが把持された姿勢で金属ベルトbの送りがおこなわれる。チャック部材83は、チャック時に金属ベルトbの表面を損傷させないような適宜の材料(例えば樹脂材)にて成形されている。最後に研削加工装置100により、金属ベルトbの外周面と内周面に付着した研削ゴミなどが除去される。各研削加工装置にてその全周が研削加工された金属ベルトbは、ローダ95によってトランスファ8から回収され、ベルトコンベア96に移載される。なお、各端面研削加工装置200A,…、を構成する保持部200aのケーシングC3や研削部200bのケーシングC4のぞれぞれの下端にはキャスタ91,91,…が取り付けられており、このキャスタ91,91,…がレール92,92上を移動できるように構成されている。各端面研削加工装置200A,…の保持部200aや研削部200bは、トランスファ8の往復移動に伴う適宜のタイミングで、トランスファ8側に自動的に移動したり、トランスファ8から自動的に離反するように制御されている。
【0086】
次に、研削加工システム300の作動の流れを説明する。まず、図17,18に示すように、シュータ94に送り込まれてきた金属ベルトbを、ローダ93が図17の矢印X方向に移動して金属ベルトbの内周面で引っ掛け、その姿勢でローダ93が矢印Y方向に移動することで、チャック部材83,83の間に嵌め合わせる。
【0087】
次に、図19,20に移り、金属ベルトbをチャック部材83,83の間に嵌め合わせた後のローダ93は、トランスファ8から離反するように矢印Y方向に移動し、トランスファ8は、チャックされた金属ベルトbを最初に粗研削を実施する端面研削加工装置200Aまで移動させる(矢印Y)。
【0088】
図21,22に移り、前方に配設された金属ベルトbの近傍まで保持部200aが移動し(矢印X)、金属ベルトbの内周面内に駆動ローラ1aと従動ローラ2aの一部を接触させる。ここで、従動ローラ2aを駆動ローラ1aから離反するように移動させることで(矢印Y)、2つのローラ間で金属ベルトbがトラック状に引っ張られた状態となり、チャック部材83,83から金属ベルトbが離れた状態となる。なお、ローダ93は、次の金属ベルトbを搬送するためにシュータ94側へ移動している(矢印Z)。
【0089】
図23,24に移り、2つのローラ間で金属ベルトbをトラック状に引っ張った状態で、保持部200aを研削部200b側へ移動させ(矢印X)、回転体71,72を同一方向に回転させながら金属ベルトbの一端面の粗研削をおこなう。この粗研削の過程では、金属ベルトbは既にチャック部材83,83から解放されているため、トランスファ8が往復移動してもかかる粗研削の障害とはならない。そこで、粗研削の過程でトランスファ8はシュータ94側へ移動し(矢印Y)、既にシュータ94に送り込まれている次の金属ベルトbを回収する。ローダ93は既述するように金属ベルトb側へ移動し(矢印Z)て金属ベルトbを引っ掛ける。
【0090】
図25,26に移り、ローダ93にて金属ベルトbをチャック部材83,83内に嵌め込んでいく(矢印Z)。一方、金属ベルトbの一端面の粗研削が終了すると、保持部200aを研削部200bからわずかに離反させ(矢印Y)、金属ベルトbを対向するチャック部材83,83の間に配設させる。この状態で従動ローラ2aを駆動ローラ1a側へ移動させることにより(矢印X)、2つのローラにて引っ張られていた金属ベルトbが解放されてチャック部材83,83間に把持された状態となる。
【0091】
図27,28に移り、保持部200aをトランスファ8の障害とならない程度までバックさせ(矢印X),2つの金属ベルトb、bを把持したトランスファ8を移動させる(矢印Y)。この移動は、一端面の粗研削が終了した金属ベルトbを次の端面研削加工装置200Bまで搬送するものであり、かかる搬送によって、次の金属ベルトbは最初に粗研削をおこなう端面研削加工装置200Aまで搬送される。この際、ローダ93は、次の金属ベルトbを収容すべくシュータ93側へ移動する(矢印Z)。
【0092】
図29,30に移り、上記する一連の流れを順次実行することにより、一端面を研削された金属ベルトbは次の端面研削加工装置へ搬送され、それと同時に新たな金属ベルトbがシュータ94から回収されていく。ここで、最後に研削加工装置100にておこなわれる外周面と内周面の研削加工に際しては、研削加工装置100がトランスファ8側へ移動し(矢印X)、第2の研削ローラ5にて金属ベルトbの外周面が、第1の研削ローラ3にて金属ベルトbの内周面がそれぞれ研削加工される。
【0093】
すべての研削が終了した金属ベルトbは、ローダ95を介してベルトコンベア96に移載されて搬送される。
【0094】
本発明の研削加工システムによれば、ベルト端面の粗研削や仕上げ研削、ベルトの外周面および内周面の研削をすべて自動研削することが可能となる。各研削体を構成する回転体に装着されたナイロン線材は、既述するようにその磨耗の程度を自動検出されながら常に一定の押圧力を確保することができるため、ナイロン線材の取り替えに要する時間ロスを可及的に低減することができる。また、特に研削加工装置においては、金属ベルトの内外周面の研削加工に際し、研削ゴミが確実に除去された段階で研削加工が実施されること、および、研削ローラはその表面に付着した研削ゴミを除去され、かつ効果的に冷却されることにより、高品質な無端金属ベルトを製造することが可能となる。
【0095】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。例えば、研削体に装着された回転体の回転に加えて、その周方向に配設された各セグメントブラシもその軸心まわりに回転する実施形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の研削加工装置の概要を示した斜視図である。
【図2】研削加工装置の正面図を模式的に示した図である。
【図3】研削加工装置の平面図を模式的に示した図である。
【図4】(a)は、金属ベルトの外周面を研削する研削ローラにクーラントを供給するノズルがセットバックされて位置決めされていることを示した平面図であり、(b)は、(a)に示すノズルの傾斜姿勢を示した側面図である。
【図5】図4に示すノズルの位置によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、(a)は適切なセットバック量の場合の模式図を、(b)、(c)は好ましくないセットバック量の場合の模式図である。
【図6】図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、(a)は好ましくない傾斜角(水平)の場合の平面図を、(b)はその側面図である。
【図7】図4に示すノズルの傾斜角によって研削ローラに供給されるクーラントの広がりを検証した結果の模式図であり、(a)は適切な傾斜角の場合の平面図を、(b)はその側面図である。
【図8】金属ベルトに砥粒が噛み合うことによって亀裂が生じていることを示した断面図である。
【図9】(a)は、研削ローラや研削ブラシに含まれる砥粒の大きさごとの分布割合を示したグラフであり、(b)は1つの無端金属ベルトを研削加工する場合に発生する砥粒の大きさごとの重量を示したグラフである。
【図10】研削加工装置にて回転する無端金属ベルトに付着した砥粒の付着力と重力を説明した模式図である。
【図11】(a)は、砥粒の付着力と重力、および双方を加味した力を砥粒の大きさごとに示したグラフであり、(b)は、1つの無端金属ベルトを研削加工する場合に発生する砥粒の大きさごとの重量を示したグラフである。
【図12】(a)は、砥粒に作用する力を示した模式図であり、(b)は、無端金属ベルトの幅とクーラントの径の関係を示した模式図であり、(c)は、ノズル(クーラント)の角度を示した模式図である。
【図13】高分子材料の応力―ひずみ曲線である。
【図14】(a)は高分子材料の温度とヤング率の関係を示したグラフであり、(b)は図aのb点における高分離材料の分子構造を、(c)は図aのc点における高分離材料の分子構造を、(d)は図aのd点における高分離材料の分子構造を示した図である。
【図15】連続研削加工時間と砥石表面温度の関係を示したグラフである。
【図16】端面研削加工装置の概要を示した斜視図である。
【図17】本発明の研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII矢視図である。
【図19】図17に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図20】図19のXX−XX矢視図である。
【図21】図19に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図22】図21のXXII−XXII矢視図である。
【図23】図21に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図24】図23のXXIV−XXIV矢視図である。
【図25】図23に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図26】図25のXXVI−XXVI矢視図である。
【図27】図25に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図28】図27のXXVIII−XXVIII矢視図である。
【図29】図27に続く研削加工システムの作動状況を示した平面図である。
【図30】図29のXXX−XXX矢視図である。
【図31】(a)は、CVTベルトの一部を示した斜視図であり、(b)は、バレル研磨する前のベルトの断面図とバレル研磨後のベルトの断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1…駆動ローラ、2…従動ローラ、3…研削ローラ(第1の研削ローラ)、4…研削ローラ(第2の研削ローラ)、32,41,52…送りねじ機構、31、51…スピンドルモータ、61a,62a,63a,64a,65a…ノズル、61b、62b、63b、64b、65b、73…流路、71…研削ローラ(第3の研削ローラ)、72…研削ローラ(第4の研削ローラ)、71a,72a…セグメントブラシ、8…トランスファ(搬送装置)、81,82…棒体、83…チャック部材、84…脚、91…キャスタ、92…レール、93…ローダ、94…シュータ、95…ローダ、96…ベルトコンベア、100…研削加工装置、200A,200B,200C,200D…端面研削加工装置、100a,200a…保持部、100b、200b…研削部、300…研削加工システム、b…ベルト、C1,C2,C3,C4…ケーシング,K…クーラント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置であって、
前記研削加工装置は、前記金属ベルトを掛け渡して回転させる駆動ローラおよび従動ローラと、
2つの前記ローラの間で、かつ金属ベルト下方の内周面の一部と当接して該金属ベルトの内周面を研削する第1の研削ローラと、
該第1の研削ローラと金属ベルトを挟み込む位置に配設されたバックアップローラと、
前記駆動ローラまたは前記従動ローラのいずれか一方と金属ベルトを挟み込む位置に配設され、該金属ベルトの外周面を研削する第2の研削ローラと、
前記金属ベルトが回転して前記第1の研削ローラと前記バックアップローラとの間に入り込む上流側に配設され、前記金属ベルト下面の外周面にクーラントを供給する第1のクーラント供給部と、
前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラのそれぞれにクーラントを供給する第2のクーラント供給部および第3のクーラント供給部と、を少なくとも具備することを特徴とする研削加工装置。
【請求項2】
前記金属ベルト下面の外周面に対して、該金属ベルトの回転方向に逆らう方向で鉛直方向から所定角度傾斜した方向にクーラントが提供されるように前記第1のクーラント供給部が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の研削加工装置。
【請求項3】
前記金属ベルトの回転方向に対して、前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラがともに逆方向に回転制御されており、
前記第3のクーラント供給部は前記第2の研削ローラの上方または下方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも前記駆動ローラ側または前記従動ローラ側に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第2の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されており、
前記第2のクーラント供給部は前記第1の研削ローラの上方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも該研削ローラの回転方向に逆らう方向に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第1の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されていることを特徴とする請求項1または2に記載の研削加工装置。
【請求項4】
前記金属ベルトを掛け渡して回転させる第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラと、第1の研削ブラシが周方向に複数設けられた第3の研削ローラと、第2の研削ブラシが周方向に複数設けられた第4の研削ローラとを備え、第1の研削ブラシと第2の研削ブラシが干渉しない離隔を備え、かつ、前記第2の駆動ローラおよび前記第2の従動ローラと対向する位置に前記第3の研削ローラと前記第4の研削ローラが配設され、第3の研削ローラと第4の研削ローラにて前記金属ベルトの端面を研削する端面研削加工装置と、
請求項1〜3のいずれかに記載の金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置と、を具備しており、
複数の前記端面研削加工装置がライン状に配設されており、金属ベルトをそれぞれの端面研削加工装置に順次搬送するとともにそれぞれの端面研削加工装置および研削加工装置の駆動ローラおよび従動ローラ間に金属ベルトを着脱させる搬送装置がさらに備えられており、金属ベルトの一方の端面が適宜の端面研削加工装置にて研削加工された後に、次の端面研削加工装置にて金属ベルトの他方の端面が研削加工され、前記研削加工装置にてベルトの内外周面が研削されることを特徴とする研削加工システム。
【請求項5】
前記無端金属ベルトは、複数の金属製のリングが積層されてなるCVTベルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研削加工装置。
【請求項6】
前記無端金属ベルトは、複数の金属製のリングが積層されてなるCVTベルトであることを特徴とする請求項4に記載の研削加工システム。
【請求項1】
無端金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置であって、
前記研削加工装置は、前記金属ベルトを掛け渡して回転させる駆動ローラおよび従動ローラと、
2つの前記ローラの間で、かつ金属ベルト下方の内周面の一部と当接して該金属ベルトの内周面を研削する第1の研削ローラと、
該第1の研削ローラと金属ベルトを挟み込む位置に配設されたバックアップローラと、
前記駆動ローラまたは前記従動ローラのいずれか一方と金属ベルトを挟み込む位置に配設され、該金属ベルトの外周面を研削する第2の研削ローラと、
前記金属ベルトが回転して前記第1の研削ローラと前記バックアップローラとの間に入り込む上流側に配設され、前記金属ベルト下面の外周面にクーラントを供給する第1のクーラント供給部と、
前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラのそれぞれにクーラントを供給する第2のクーラント供給部および第3のクーラント供給部と、を少なくとも具備することを特徴とする研削加工装置。
【請求項2】
前記金属ベルト下面の外周面に対して、該金属ベルトの回転方向に逆らう方向で鉛直方向から所定角度傾斜した方向にクーラントが提供されるように前記第1のクーラント供給部が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の研削加工装置。
【請求項3】
前記金属ベルトの回転方向に対して、前記第1の研削ローラおよび前記第2の研削ローラがともに逆方向に回転制御されており、
前記第3のクーラント供給部は前記第2の研削ローラの上方または下方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも前記駆動ローラ側または前記従動ローラ側に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第2の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されており、
前記第2のクーラント供給部は前記第1の研削ローラの上方であって、該研削ローラの鉛直中心よりも該研削ローラの回転方向に逆らう方向に所定量偏った位置に配設され、かつ、該第1の研削ローラの回転軸芯に対して所定の傾斜角度方向にクーラントを供給するように調整されていることを特徴とする請求項1または2に記載の研削加工装置。
【請求項4】
前記金属ベルトを掛け渡して回転させる第2の駆動ローラおよび第2の従動ローラと、第1の研削ブラシが周方向に複数設けられた第3の研削ローラと、第2の研削ブラシが周方向に複数設けられた第4の研削ローラとを備え、第1の研削ブラシと第2の研削ブラシが干渉しない離隔を備え、かつ、前記第2の駆動ローラおよび前記第2の従動ローラと対向する位置に前記第3の研削ローラと前記第4の研削ローラが配設され、第3の研削ローラと第4の研削ローラにて前記金属ベルトの端面を研削する端面研削加工装置と、
請求項1〜3のいずれかに記載の金属ベルトの内外周面を研削する研削加工装置と、を具備しており、
複数の前記端面研削加工装置がライン状に配設されており、金属ベルトをそれぞれの端面研削加工装置に順次搬送するとともにそれぞれの端面研削加工装置および研削加工装置の駆動ローラおよび従動ローラ間に金属ベルトを着脱させる搬送装置がさらに備えられており、金属ベルトの一方の端面が適宜の端面研削加工装置にて研削加工された後に、次の端面研削加工装置にて金属ベルトの他方の端面が研削加工され、前記研削加工装置にてベルトの内外周面が研削されることを特徴とする研削加工システム。
【請求項5】
前記無端金属ベルトは、複数の金属製のリングが積層されてなるCVTベルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研削加工装置。
【請求項6】
前記無端金属ベルトは、複数の金属製のリングが積層されてなるCVTベルトであることを特徴とする請求項4に記載の研削加工システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2007−331062(P2007−331062A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165950(P2006−165950)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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