説明

研削装置

【課題】研削砥石による研削加工部に供給された研削水の流動性を良好にすることにより、脱落した砥粒や研削砥石に詰まった砥粒を流すことができる研削装置を提供する。
【解決手段】被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研削するための研削手段と、研削手段による研削加工部に研削水を供給する研削水供給手段とを具備し、研削手段がスピンドルハウジングと、スピンドルハウジングに回転自在に支持された回転スピンドルと、回転スピンドルの一端に設けられたホイールマウントと、ホイールマウントに取り付けられたホイール基台とホイール基台の下面外周部に装着された環状の研削砥石とからなる研削ホイールを具備している研削装置であって、研削手段による研削加工部に供給された研削水に超音波振動を付与する超音波振動付与機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を研削するための研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。このようにして分割されるウエーハは、ストリートに沿って切断する前に研削装置によって裏面が研削され、所定の厚さに加工される。
【0003】
研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブル上に保持された被加工物を研削する研削手段とを具備している。この研削手段は、回転スピンドルと、該回転スピンドルの下端に設けられたホイールマウントと、該ホイールマウントの下面に着脱可能に装着される研削ホイールとを具備しており、該研削ホイールがホイール基台と該ホイール基台の下面における外周部の砥石装着部に装着された複数の研削砥石とからなっており、研削ホイールを回転しつつ研削砥石をチャックテーブルに保持された被加工物に押圧することにより被加工物を研削する。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−322247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、研削作業中に研削砥石を形成するダイヤモンド砥粒が脱落し、この脱落したダイヤモンド砥粒を研削砥石が引きずることから、ウエーハの被研削面にスクラッチが生じてデバイスの品質を低下させるという問題がある。
また、研削砥石によってウエーハの裏面を研削すると、研削砥石に目詰まりが発生し研削能力が低下する。特に、シリコン基板や表面に光デバイスが形成されたサファイヤ基板や磁気ヘッドが形成されるアルチック基板等のモース高度が高い硬質材料を研削すると、研削砥石の目詰まりによる研削能力の低下によって生産性が著しく低下するという問題がある。このため、研削砥石を頻繁にドレッシングしなければならず、生産性が悪い。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、研削砥石による研削加工部に供給された研削水の流動性を良好にすることにより、脱落した砥粒や研削砥石に詰まった砥粒を流すことができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削するための研削手段と、該研削手段による研削加工部に研削水を供給する研削水供給手段とを具備し、該研削手段がスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングに回転自在に支持された回転スピンドルと、回転スピンドルの一端に設けられたホイールマウントと、該ホイールマウントに取り付けられたホイール基台と該ホイール基台の下面外周部に装着された環状の研削砥石とからなる研削ホイールを具備している研削装置において、
該研削手段による研削加工部に供給された研削水に超音波振動を付与する超音波振動付与機構を備えている、
ことを特徴とする研削装置が提供される。
【0008】
上記超音波振動付与機構は、環状の研削砥石の内周面に沿って配設されホイール基台とともに回転する円筒状の振動部を備えた振動体と、該振動体に配設された超音波振動手段と、該超音波振動手段に高周波電力を印加する電力供給手段とを具備している。
また、上記超音波振動付与機構は、研削手段による研削加工部において環状の研削砥石の外周面に沿って配設されスピンドルハウジングに装着された円弧状の振動部を備えた振動体と、該振動体に配設された超音波振動手段と、該超音波振動手段に高周波電力を印加する電力供給手段とを具備している。
【発明の効果】
【0009】
本発明による研削装置においては、研削手段による研削加工部に供給された研削水に超音波振動を付与する超音波振動付与機構を備えているので、該超音波振動付与機構を作動することにより研削加工部に供給された研削水に超音波振動が付与される。この結果、研削加工部に供給された研削水の流動性が良好となるため、研削手段の研削砥石を構成するダイヤモンド砥粒が脱落しても、脱落したダイヤモンド砥粒を超音波振動する研削水によって円滑に排出することができる。従って、研削作業中に研削砥石を形成するダイヤモンド砥粒が脱落し、この脱落したダイヤモンド砥粒を研削砥石が引きずることによって被研削面にスクラッチを生じさせるという問題を解消することができる。また、研削加工部に供給された研削水に超音波振動が付与されることにより研削水の流動性が向上するので、研削手段の研削砥石に目詰まりが発生し難くなり、研削砥石をドレッシングする頻度を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成された研削装置の斜視図。
【図2】図1に示す研削装置に装備されるスピンドルユニットの断面図。
【図3】図2に示すスピンドルユニットを構成するホイールマウントおよび研削ホイールの分解斜視図。
【図4】図1に示す研削装置によって実施する研削工程の説明図。
【図5】本発明に従って構成された研削装置の他の実施形態を示す斜視図。
【図6】図5に示す研削装置に装備されるスピンドルユニットの要部断面図。
【図7】図6に示すスピンドルユニットを構成するスピンドルハウジングに装着された振動体に配設された第1の超音波振動手段および第2の超音波振動手段に高周波電力を印加した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された研削装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成された研削装置の斜視図が示されている。図1に示す研削装置は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ実質上鉛直に上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0012】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット4を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313にスピンドルユニット4が取り付けられる。
【0013】
スピンドルユニット4は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41に回転自在に配設された回転スピンドル42とを具備している。このスピンドルユニット4について、図2を参照して説明する。図2に示すスピンドルユニット4を構成するスピンドルハウジング41は略円筒状に形成され、軸方向に貫通する軸穴411を備えている。スピンドルハウジング41に形成された軸穴411に挿通して配設される回転スピンドル42は、その中央部には径方向に突出して形成されたスラスト軸受フランジ421が設けられている。このようにしてスピンドルハウジング41に形成された軸穴411に挿通して配設される回転スピンドル42は、軸穴411の内壁との間に供給される高圧エアーによって回転自在に支持される。スピンドルハウジング41に回転可能に支持された回転スピンドル42は、一端部(図1において下端部)がスピンドルハウジング41の下端から突出して配設されており、その一端(図1において下端)にホイールマウント43が設けられている。そして、このホイールマウント43の下面に研削ホイール5が取り付けられる。研削ホイール5は、図示の実施形態においては超音波振動付与機構6を構成する振動体60を介してホイールマウント43の下面に取り付けられる。
【0014】
上記ホイールマウント43と研削ホイール5および超音波振動付与機構6について、図2および図3を参照して説明する。
ホイールマウント43は、図3に示すように回転スピンドル42の下端に一体に円盤状に形成されている。このホイールマウント43には、4個のボルト挿通穴431が設けられている。また、ホイールマウント43の中心部には、コネクター挿入穴423が形成されている。
【0015】
研削ホイール5は、円環状のホイール基台51と、該円環状のホイール基台51の下面に環状に装着される複数の砥石セグメントからなる研削砥石52とからなっている。ホイール基台51には、上記ホイールマウント43に設けられた4個のボルト挿通穴431と対応する4個のネジ穴511が形成されている。研削砥石52はダイヤモンド砥粒をメタルボンド等のボンド剤によって固めて成型した後に焼成して形成されており、適宜の接着剤によってホイール基台51の下面に装着される。
【0016】
図示の実施形態における超音波振動付与機構6は、振動体60と、該振動体60に超音波振動を付与する超音波振動手段7とを具備している。振動体60は、環状の取り付け部61と、該環状の取り付け部61の内側下部を覆う底板62と、該底板62の下面から下方に突出して形成された円筒状の振動部63とからなっている。環状の取り付け部61には、上記ホイールマウント43に設けられた4個のボルト挿通穴431と対応する4個のネジ穴611が形成されている。上記底板62には、環状の取り付け部61の内周縁と円筒状の振動部63の外周縁との間の領域に周方向に複数の円弧状スリット621が上面から下面に貫通して形成されている。この振動体60を構成する底板62の上面に超音波振動手段7が配設されている。この環状の超音波振動手段7は、環状の超音波振動子71と、該環状の超音波振動子71の両側分極面にそれぞれ装着された一対の環状の電極板72a、72bとからなっている。環状の超音波振動子71は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、リチウムタンタレート等の圧電セラミックスによって環状に形成されている。このように構成された超音波振動手段7は、一対の環状の電極板の一方の電極板72aがエポキシ樹脂等の絶縁性を有するボンド剤によって振動体60を構成する底板62の上面に装着される。このようにして振動体60の底板62に装着された超音波振動手段7を構成する一対の環状の電極板72a、72bには、それぞれ導電線73a、73bの一端が接続されている。なお、各導電線73a、73bの他端は、凸型コネクター74に接続されている。この凸型コネクター74は後述する電力供給手段に着脱可能に接続される。
【0017】
以上のように構成された超音波振動付与機構6の振動体60および研削ホイール5は、図2に示すようにホイールマウント43に設けられた4個のボルト挿通孔431にそれぞれ挿通されるとともに振動体60の環状の取り付け部61に設けられた4個のネジ穴611を挿通して配設された締結ボルト53を、ホイール基台51に設けられた4個のネジ穴511にそれぞれ螺着することによって、ホイールマウント43に着脱可能に装着される。このようにしてホイールマウント43に装着された振動体60の円筒状の振動部63は、研削ホイール5を構成する環状の研削砥石52の内周面に沿って配設されホイール基台51とともに回転するようになっている。
【0018】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるスピンドルユニット4は、回転スピンドル42を回転駆動するための電動モータ8を備えている。図示の電動モータ8は、永久磁石式モータによって構成されている。永久磁石式の電動モータ8は、回転スピンドル42の中間部に形成されたモータ装着部422に装着された永久磁石からなるロータ81と、該ロータ81の外周側においてスピンドルハウジング41に配設されたステータコイル82とからなっている。このように構成された電動モータ8は、ステータコイル82に後述する電力供給手段によって交流電力を印加することによりロータ81が回転し、該ロータ81を装着した回転スピンドル42を回転せしめる。
【0019】
図示の実施形態におけるスピンドルユニット4は、上記超音波振動付与機構6を構成する超音波振動手段7に高周波電力を印加するとともに上記電動モータ8に交流電力を印加する電力供給手段9を具備している。電力供給手段9は、スピンドルユニット4の後端部に配設されたロータリートランス90を具備している。ロータリートランス90は、回転スピンドル42の他端に配設された受電手段91と、該受電手段91と対向して配設されスピンドルハウジング41の後端部に配設された給電手段92とを具備している。受電手段91は、回転スピンドル42に装着されたロータ側コア911と、該ロータ側コア911に巻回された受電コイル912とからなっている。このように構成された受電手段91の受電コイル912には、導電線913が接続されている。この導電線913は、回転スピンドル42の中心部に軸方向に形成された穴423内に配設され、その先端が上記凸型コネクター64と嵌合する凹型コネクター914(図3参照)に接続されている。上記給電手段92は、受電手段91の外周側に配設されたステータ側コア921と、該ステータ側コア921に配設された給電コイル922とからなっている。このように構成された給電手段92の給電コイル922は、電気配線93を介して高周波電力が供給される。
【0020】
図示の実施形態における電力供給手段9は、上記ロータリートランス90の給電コイル922に供給する高周波電力の交流電源94と、電力調整手段としての電圧調整手段95と、上記給電手段92に供給する高周波電力の周波数を調整する周波数調整手段96と、電圧調整手段95および周波数調整手段96を制御する制御手段97を具備している。なお、図2に示す電力供給手段9は、制御回路99および電気配線821を介して上記電動モータ8のステータコイル82に交流電力を供給する。
【0021】
図示の実施形態におけるスピンドルユニット4は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上記電力供給手段9から電動モータ8のステータコイル82に交流電力が供給される。この結果、電動モータ8が回転して回転スピンドル42が回転し、該回転スピンドル42の先端に取付けられた研削ホイール5が回転せしめられる。
【0022】
一方、電力供給手段9は、制御手段97によって電圧調整手段95および周波数調整手段96を制御し、高周波電力の電圧を所定の電圧(例えば、150V)に制御するとともに、高周波電力の周波数(例えば、50kHz)を後述するように所定周波数に設定して、ロータリートランス90を構成する給電手段92の給電コイル922に供給する。このように所定周波数の高周波電力が給電コイル922に印加されると、回転する受電手段91の受電コイル912、導電線913、凹型コネクター914、凸型コネクター74、導電線73a、73bを介して超音波振動手段7を構成する一対の環状の電極板72a、72bに高周波電力が印加される。この結果、超音波振動手段7を構成する環状の超音波振動子71は印加される高周波電力の周波数によって軸方向または径方向に繰り返し変位して超音波振動するため、該超音波振動手段7が装着された底板62に設けられた円筒状の振動部63が超音波振動する。なお、図示の実施形態においては、振動体60を構成する底板62には、環状の取り付け部61の内周縁と円筒状の振動部63の外周縁との間の領域に周方向に複数の円弧状スリット621が形成されているので、超音波振動手段7から発生された超音波振動は底板62を介して円筒状の振動部63に効果的に伝達される。
【0023】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態における研削装置は、上記研削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削ユニット送り機構10を備えている。この研削ユニット送り機構10は、直立壁22の前側に配設され実質上鉛直に延びる雄ネジロッド101を具備している。この雄ネジロッド101は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材102および103によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材102には雄ネジロッド101を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ104が配設されており、このパルスモータ104の出力軸が雄ネジロッド101に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には鉛直方向に延びる貫通雌ネジ穴(図示していない)が形成されており、この雌ネジ穴に上記雄ネジロッド101が螺合せしめられている。従って、パルスモータ104が正転すると移動基台31即ち研削ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ104が逆転すると移動基台31即ち研削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0024】
図1を参照して説明を続けると、ハウジング2の主部21にはチャックテーブル機構11が配設されている。チャックテーブル機構11は、チャックテーブル12と、該チャックテーブル12の周囲を覆うカバー部材13と、該カバー部材13の前後に配設された蛇腹手段14および15を具備している。チャックテーブル12は、図示しない回転駆動手段によって回転せしめられるようになっており、その上面に被加工物であるウエーハを図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するように構成されている。また、チャックテーブル12は、図示しないチャックテーブル移動手段によって図1に示す被加工物載置域24と上記スピンドルユニット4を構成する研削ホイール5と対向する研削域25との間で移動せしめられる。蛇腹手段14および15はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段14の前端は主部21の前面壁に固定され、後端はカバー部材13の前端面に固定されている。蛇腹手段15の前端はカバー部材13の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル12が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段14が伸張されて蛇腹手段15が収縮され、チャックテーブル12が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段14が収縮されて蛇腹手段15が伸張せしめられる。
【0025】
図示の実施形態における研削装置は、上記研削域25に位置付けられたチャックテーブル12に保持された被加工物を研削する研削ホイール5による研削加工部に研削水を供給する研削水供給手段16を具備している。この研削水供給手段16は、研削水噴射ノズル161から純水でよい研削水を研削ホイール5による研削加工部に供給する。
【0026】
図示の実施形態における研削装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上記ウエーハWを研削するには、図1に示すように研削装置の被加工物載置域24に位置付けられているチャックテーブル12上にウエーハWを載置する。なお、ウエーハWのデバイスが形成されている表面には保護テープTが貼着されており、この保護テープT側をチャックテーブル12に載置する。このようにしてチャックテーブル12上に載置されたウエーハWは、図示しない吸引手段によってチャックテーブル12上に吸引保持される。
【0027】
上述したように、チャックテーブル12上にウエーハWを吸引保持したならば、図示しないチャックテーブル移動手段を作動してチャックテーブル12を矢印23aで示す方向に移動し研削域25に位置付ける。そして、図4に示すように研削ホイール5の複数の研削砥石52の外周縁がチャックテーブル12の回転中心P、即ちウエーハWの中心を通過するように位置付ける。
【0028】
このように研削ホイール5とチャックテーブル12に保持されたウエーハWが図4に示す位置関係にセットされたならば、チャックテーブル12を図4において矢印12aで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、研削ホイール5を矢印5aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。即ち、上記電力供給手段9から電動モータ8のステータコイル82に交流電力を供給することにより、電動モータ8が回転して回転スピンドル42が回転し、該回転スピンドル42の先端に取付けられた研削ホイール5が回転せしめられる。そして、研削ホイール5を下降して複数の研削砥石52をウエーハWの上面である裏面(被研削面)に所定の圧力で押圧する。この結果、ウエーハWの被研削面は全面に渡って研削される。
【0029】
上述した研削加工時には、研削水供給手段16を作動して研削水噴射ノズル161から研削水を研削ホイール5による研削加工部に供給するとともに、該研削加工部に供給された研削水に超音波振動を付与する超音波振動付与機構6を作動する。即ち、超音波振動付与機構6を構成する上記電力供給手段9の制御手段97は、周波数調整手段96を制御するとともに電圧調整手段95を制御する。この結果、回転する受電手段91の受電コイル912、導電線913、凹型コネクター914、凸型コネクター74、導電線73a、73bを介して超音波振動手段7を構成する一対の環状の電極板72a、72bに高周波電力が印加される。従って、超音波振動手段7を構成する環状の超音波振動子71は印加される高周波電力の周波数によって軸方向または径方向に繰り返し変位して超音波振動するため、該超音波振動手段7が装着された底板62に設けられた円筒状の振動部63が超音波振動する。このように研削ホイール5を構成する環状の研削砥石52の内周面に沿って配設された振動体60の円筒状の振動部63が超音波振動することにより、環状の研削砥石52による研削加工部に供給された研削水に超音波振動が付与される。この結果、環状の研削砥石52による研削加工部に供給された研削水の流動性が良好となるため、研削砥石52を構成するダイヤモンド砥粒が脱落しても、脱落したダイヤモンド砥粒を超音波振動する研削水によって円滑に排出することができる。従って、研削作業中に研削砥石を形成するダイヤモンド砥粒が脱落し、この脱落したダイヤモンド砥粒を研削砥石が引きずることによって被研削面にスクラッチを生じさせるという問題を解消することができる。また、環状の研削砥石52による研削加工部に供給された研削水に超音波振動が付与されることにより研削水の流動性が向上するので、研削砥石52に目詰まりが発生し難くなり、研削砥石をドレッシングする頻度を減少することができる。
【0030】
次に、本発明による研削装置に装備する超音波振動付与機構の他の実施形態について、図5乃至図7を参照して説明する。
図示の実施形態における超音波振動付与機構の振動体600は、図5および図6に示すようにスピンドルハウジング41における研削ホイール5を構成する環状の研削砥石52による研削加工部と対応する位置に装着されている。図示の実施形態における振動体600は、上端部に設けられた取り付け部601と、該取り付け部601の下端から下方に突出して形成された円弧状の振動部602とからなり、取り付け部601が締結ボルト603によってスピンドルハウジング41に取り付けられる。このようにしてスピンドルハウジング41に取り付けられた振動体600は、円弧状の振動部602が研削ホイール5を構成する環状の研削砥石52の外周面に沿って配設される。
【0031】
上述した振動体600を構成する円弧状の振動部602の一方の面602a(外側の面)には第1の超音波振動手段70aが配設され、他方の面602b(内側の面)には第2の超音波振動手段70bが配設されている。第1の超音波振動手段70aおよび第2の超音波振動手段70bは、それぞれ超音波振動子701と、該超音波振動子701の両側分極面にそれぞれ装着された一対の電極板702a、702bとからなっている。超音波振動子701は、上記図2乃至図4に示す実施形態における振動体60に装着された超音波振動手段7の超音波振動子701と同様にチタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、リチウムタンタレート等の圧電セラミックスによって環状に形成されている。このように構成された第1の超音波振動手段70aおよび第2の超音波振動手段70bは、それぞれ一方の電極板702aがエポキシ樹脂等の絶縁性を有するボンド剤によって円弧状の振動部602の一方の面602aおよび他方の面602bに装着されている。
【0032】
上述した第1の超音波振動手段70aおよび第2の超音波振動手段70bの一対の電極板702a、702bに上述した電力供給手段9によって所定周波数の高周波電力が印加される。なお、第1の超音波振動手段70aの電極板702a、702bに印加する高周波電力と第2の超音波振動手段70bの電極板702a、702bに印加する高周波電力の位相差が180度となるように調整する。このように調整された高周波電力が第1の超音波振動手段70aおよび第2の超音波振動手段70bの電極板702a、702bに印加されると、図7の(a)に示すように第1の超音波振動手段70aの超音波振動子701が収縮する場合には、第2の超音波振動手段70bの超音波振動子701は伸張し、円弧状の振動部602は矢印602aで示す方向に変位する。また、図7の(b)に示すように第1の超音波振動手段70aの超音波振動子701が伸張する場合には、第2の超音波振動手段70bの超音波振動子701は収縮し、円弧状の振動部602は矢印602bで示す方向に変位する。従って円弧状の振動部602は、第1の超音波振動手段70aの超音波振動子701の収縮および伸張による振幅と、第2の超音波振動手段70bの超音波振動子701の伸張および収縮による振幅が増幅され繰り返し変位して超音波振動する。このように研削ホイール5を構成する環状の研削砥石52の外周面に沿って配設された振動体600を構成する円弧状の振動部602が超音波振動することにより、環状の研削砥石52による研削加工部に供給された研削水に超音波振動が付与される。従って、環状の研削砥石52による研削加工部に供給された研削水の流動性が良好となるため、上述した図2乃至図4に示す実施形態と同様に、研削砥石52を構成するダイヤモンド砥粒が脱落しても、脱落したダイヤモンド砥粒を超音波振動する研削水によって円滑に排出することができる。このため、研削作業中に研削砥石を形成するダイヤモンド砥粒が脱落し、この脱落したダイヤモンド砥粒を研削砥石が引きずることによって被研削面にスクラッチを生じさせるという問題を解消することができる。また、環状の研削砥石による研削加工部に供給された研削水に超音波振動が付与されることにより研削水の流動性が向上するので、研削砥石52に目詰まりが発生し難くなり、研削砥石をドレッシングする頻度を減少することができる。
【0033】
なお、上記図2乃至図4に示す実施形態における振動体60および図5および図6に示す実施形態における振動体600を具備することにより、研削加工部に供給された研削水により強力な超音波振動を付与することができ、研削加工部に供給された研削水の流動性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
2:装置ハウジング
3:研削ユニット
4:スピンドルユニット
41:スピンドルハウジング
42:回転スピンドル
43:ホイールマウント
5:研削ホイール
51:ホイール基台
52:研削砥石
6:超音波振動付与機構
60、600:振動体
7:超音波振動手段
71:環状の超音波振動子
72a、72b:一対の環状の電極板
70a:第1の超音波振動手段
70b:第2の超音波振動手段
701:超音波振動子
702a、702b:一対の電極板
8:電動モータ
9:電力供給手段
10:研削ユニット送り機構
12:チャックテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削するための研削手段と、該研削手段による研削加工部に研削水を供給する研削水供給手段とを具備し、該研削手段がスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングに回転自在に支持された回転スピンドルと、回転スピンドルの一端に設けられたホイールマウントと、該ホイールマウントに取り付けられたホイール基台と該ホイール基台の下面外周部に装着された環状の研削砥石とからなる研削ホイールを具備している研削装置において、
該研削手段による研削加工部に供給された研削水に超音波振動を付与する超音波振動付与機構を備えている、
ことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該超音波振動付与機構は、該環状の研削砥石の内周面に沿って配設され該ホイール基台とともに回転する円筒状の振動部を備えた振動体と、該振動体に配設された超音波振動手段と、該超音波振動手段に高周波電力を印加する電力供給手段とを具備している、請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該超音波振動付与機構は、該研削手段による研削加工部において該環状の研削砥石の外周面に沿って配設され該スピンドルハウジングに装着された円弧状の振動部を備えた振動体と、該振動体に配設された超音波振動手段と、該超音波振動手段に高周波電力を印加する電力供給手段とを具備している、請求項1記載の研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−121118(P2012−121118A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275987(P2010−275987)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】