説明

研削装置

【課題】コンパクト且つ経済的な構成で、突起部位を高精度に研削することを可能にする。
【解決手段】研削装置10は、ワークWの溶接ビードWbに研削用無端ベルト12を押し付けて周回走行させることにより、前記溶接ビードWbを研削する。この研削装置10は、研削用無端ベルト12の内周面に溶接ビードWbへの押し付け位置に対向して配置される押圧ブロック28を備える。押圧ブロック28は、研削用無端ベルト12の内周面を押圧する端面形状が四角形状に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削用無端ベルトを、突起部位に押し付けながら周回走行させることにより、前記突起部位を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、金属製品の製造工程では、例えば、溶接により形成された溶接ビードや鋳造により形成された鋳ばり等の突起部位を除去する作業が行われている。この種の作業では、例えば、周回走行する研削用無端ベルトの内周面にローラを押し付けることにより、前記研削用無端ベルトを突起部位に押圧させて前記突起部位を研削する研削装置が用いられている。
【0003】
ところが、研削用無端ベルトでは、突起部位の研削加工を行う部位が、ローラ形状に対応して円弧状になっている。従って、研削用無端ベルトは、突起部位を点接触により研削するため、前記突起部位の位置がずれると、研削方向、研削面積、研削角度等の研削条件が変化し易く、研削品質が安定しないという問題がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているビード取り装置が知られている。このビード取り装置は、図5に示すように、3個のプーリ1aが三角形状の頂点に配置されており、その周囲に研削ベルト2aが掛けわたされている。1つのプーリ1aは、モータ3aに連結されることにより、研削ベルト2aが周回走行される。
【0005】
研削ベルト2a内には、アーム4a、ゴム巻きローラ5a及び揺動シリンダ6aからなる揺動装置が設けられている。ゴム巻きローラ5aの下端は、研削ベルト2aの下辺よりも下方へ突出することにより、前記研削ベルト2aの下辺の一部が下方に僅かにに突出されている。
【0006】
アーム4aは、揺動シリンダ6aにより揺動されている。このため、ゴム巻きローラ5aは、研削ベルト2aの突出部位の位置を可変させ、被処理面には、可変する前記研削ベルト2aの突出部位により研削処理が行われている。
【0007】
また、特許文献2に開示されている自動切削装置および自動切削・研磨装置では、図6に示すように、回転用駆動装置1bの回転軸2bには、研磨工具(切削工具)3bが取り付けられている。そして、回転用駆動装置1bを介して研磨工具3bが回転されることにより、ワーク4bの溶接ビード5bに研磨作業(切削作業)が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−132396号公報
【特許文献2】特許第3821909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1では、アーム4a、ゴム巻きローラ5a及び揺動シリンダ6aからなる揺動装置を備えているとともに、この揺動装置が研削ベルト2aの内側に配置されている。従って、ビード取り装置全体は、相当に大型化するとともに、装置構成が複雑化し、経済的ではないという問題がある。
【0010】
また、上記の特許文献2では、溶接ビード5bを除去するために、円盤状の研磨工具3bが用いられている。この研磨工具3bでは、溶接ビード5bとの接触形状が円形状のため、前記溶接ビード5bとの接触面積が変化し易く、研削条件が変動するという問題がある。しかも、研削面積が相当に小さいため、有効に研削することが可能な時間が短くなり、研磨工具3bの交換を短時間で頻繁に行わなければならないという問題がある。
【0011】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、コンパクト且つ経済的な構成で、突起部位を高精度に研削することが可能な研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、研削用無端ベルトを、突起部位に押し付けながら周回走行させることにより、前記突起部位を研削する研削装置に関するものである。この研削装置は、研削用無端ベルトの内周面に、突起部位への押し付け位置に対向して配置されるとともに、前記研削用無端ベルトの前記内周面を押圧する端面形状が四角形状に設定された押圧ブロックを備えている。
【0013】
また、この研削装置では、押圧ブロックは、研削用無端ベルトとの接触側端面にクッション材を設け、前記クッション材と前記研削用無端ベルトの内周面との間には、保護シート部材が介装されるとともに、前記保護シート部材は、前記研削用無端ベルトとの接触位置における該研削用無端ベルトの走行方向上流側の端部が、前記押圧ブロック又は前記クッション材の少なくとも一方に固定され、且つ前記研削用無端ベルトとの接触位置における該研削用無端ベルトの走行方向下流側の端部が、自由端に構成されることが好ましい。
【0014】
さらに、この研削装置では、突起部位は、溶接ビードであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、研削用無端ベルトの内周面に、突起部位への押し付け位置に対向して押圧ブロックが配置されるとともに、前記押圧ブロックは、前記研削用無端ベルトの前記内周面を押圧する端面形状が四角形状に設定されている。
【0016】
このため、研削用無端ベルトは、突起部位との当接部分が四角形状(平面形状)になり、研削後のワークに凹みが発生することを可及的に阻止することができる。しかも、端面形状が四角形状であるため、押圧ブロックと突起部位との相対位置がずれても、研削面積等の研削条件が変動することがなく、均一な研削が確実に遂行可能になる。
【0017】
これにより、コンパクト且つ経済的な構成で、突起部位を高精度に、しかも容易に研削することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る研削装置の概略構成図である。
【図2】前記研削装置の要部斜視説明図である。
【図3】前記研削装置の動作説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る研削装置の要部斜視説明図である。
【図5】特許文献1に開示されているビード取り装置の説明図である。
【図6】特許文献2に開示されている自動切削・研磨装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る研削装置10は、研削用無端ベルト12と備え、前記研削用無端ベルト12は、三角形状の各頂点に対応して配置される3つのプーリ14a、14b及び14cに掛けわたされる。
【0020】
プーリ14a〜14cは、フレーム部材16に対して回転自在に支持されるとともに、1つのプーリ14aは、ドライブプーリとして機能する。具体的には、プーリ14aと同軸上に従動プーリ18が一体化され、前記従動プーリ18と駆動プーリ20とにベルト22が掛けわたされる。駆動プーリ20は、モータ24に軸着されて回転駆動される。
【0021】
プーリ14bは、フレーム部材16に設けられたシリンダ26から延在するロッド26aに支持される。このプーリ14bは、後述するように、用途に応じて矢印A方向に進退可能である。
【0022】
研削用無端ベルト12は、ワークWの突起部位、例えば、溶接ビードWbの研削を行う。この研削用無端ベルト12の内周面には、溶接ビードWbへの押し付け位置に対向して押圧ブロック28が配置される。
【0023】
押圧ブロック28は、例えば、フレーム部材16に対して固定ねじ30を介して固定される。押圧ブロック28は、図1及び図2に示すように、直方体形状を有し、鋼材(例えば、JISのSS400)により構成される。押圧ブロック28は、研削用無端ベルト12の内周面を押圧する端面形状が四角形状に設定される。
【0024】
押圧ブロック28は、研削用無端ベルトとの接触側端面にクッション材32を設ける。クッション材32は、押圧ブロック28の端面形状と同一形状を有し、この端面に固着される。クッション材32は、研削時の振動を吸収する機能を有しており、例えば、ウレタンスポンジシートにより構成される。
【0025】
クッション材32と研削用無端ベルト12の内周面との間には、保護シート部材34が介装される。保護シート部材34は、クッション材32及び研削用無端ベルト12を保護するために、耐熱性及び耐磨耗性を有する材料で、例えば、ガラス繊維にフッ素樹脂(PTFE)を含浸させたガラスクロスにより構成される。
【0026】
保護シート部材34は、研削用無端ベルト12との接触位置における前記研削用無端ベルト12の走行方向(矢印B方向)上流側の端部34aが、約90°だけ屈曲形成される。端部34aは、固定板36により押圧ブロック28(又はクッション材32)に保持されるとともに、この固定板36は、ボルト38が前記押圧ブロック28のねじ穴40に螺合することにより固定される。
【0027】
保護シート部材34は、研削用無端ベルト12との接触位置における前記研削用無端ベルト12の走行方向下流側の端部34bが、押圧ブロック28及びクッション材32から矢印B方向外方に突出する。この端部34bは、上方に傾斜して自由端に構成される。
【0028】
このように構成される研削装置10の動作について、以下に説明する。
【0029】
先ず、図1に示すように、押圧ブロック28は、研削用無端ベルト12の内周面を、プーリ14a、14c間でワークW側に撓ませるように押圧する。このため、研削用無端ベルト12は、押圧ブロック28により押圧される領域(平面領域)にわたってワークW側に押し付けられ、溶接ビードWbに当接する。
【0030】
そして、モータ24が駆動され、駆動プーリ20及びベルト22を介して従動プーリ18が矢印方向に回転される。従って、従動プーリ18に同軸的に一体化されているプーリ14aは、矢印方向に回転する。プーリ14a、14b及び14cには、研削用無端ベルト12が掛けわたされており、前記プーリ14aが矢印方向に回転することにより、前記研削用無端ベルト12が周回走行する。
【0031】
これにより、研削用無端ベルト12は、押圧ブロック28により押圧されている外周面で、ワークWの溶接ビードWbに研削処理を施す。その際、研削装置10とワークWとは、相対的に溶接ビードWbの形状に沿って移動する。従って、研削用無端ベルト12は、溶接ビードWbの全周にわたって研削処理を施す。
【0032】
この場合、第1の実施形態では、研削用無端ベルト12の内周面に、溶接ビードWbへの押し付け位置に対向して押圧ブロック28が配置されるとともに、前記押圧ブロック28は、前記研削用無端ベルト12の前記内周面を押圧する端面形状が四角形状に設定されている。
【0033】
このため、研削用無端ベルト12は、溶接ビードWbとの当接部分が四角形状(平面形状)になり、研削後のワークWに凹みが発生することを可及的に阻止することができる。しかも、押圧ブロック28は、端面形状が四角形状であるため、図3に示すように、前記押圧ブロック28と溶接ビードWbとの相対位置が距離Sの範囲でずれても、研削方向、研削面積及び研削角度等の研削条件が変動することがなく、均一な研削が遂行可能になる。
【0034】
これにより、研削装置10は、コンパクト且つ経済的な構成で、ワークWの溶接ビードWbを高精度に、しかも、容易に研削することが可能になるという効果が得られる。
【0035】
その上、研削用無端ベルト12は、研削点から長時間をかけて回転するため、摩擦熱が良好に除去される。従って、研削用無端ベルト12は、冷却され易く、研磨材の磨耗度が軽減されるため、研削品質を安定的に維持することができる。
【0036】
さらに、第1の実施形態では、鋼材製の押圧ブロック28に、研削用無端ベルト12との接触側端面に対応してクッション材32を設けている。このため、研削用無端ベルト12による研削時に発生する振動を、クッション材32を介して良好に吸収することが可能になる。
【0037】
さらにまた、クッション材32と研削用無端ベルト12の内周面との間には、保護シート部材34が介装されている。この保護シート部材34は、耐熱性及び耐摩耗性に優れており、クッション材32及び研削用無端ベルト12を良好に保護することができる。
【0038】
しかも、保護シート部材34は、走行方向上流側の端部34aが、固定板36を介して押圧ブロック28(または、クッション材32)に固定される一方、走行方向下流側の端部34bが自由端に構成されている。これにより、クッション材32が弾性変形する際に、保護シート部材34が自由端である端部34bを介して変形し、前記保護シート部材34の損傷を良好に回避することが可能になる。この自由端である端部34bは、走行方向下流側に設定することにより、クッション材32の弾性変形を許容し、且つ前記保護シート部材34の耐久性を一層向上させることができる。
【0039】
なお、保護シート部材34は、樹脂の他、シリコンや薄板状鉄製テープ部材等を用いることができる。
【0040】
さらに、プーリ14bは、シリンダ26を介して矢印A方向に進退可能である。このため、研削用無端ベルト12自体に伸びが発生した際には、プーリ14bを上方に移動させて前記研削用無端ベルト12の張力を調整することができる。また、プーリ14bを上方に移動させて研削用無端ベルト12と溶接ビードWbとの接触幅を減少させたり、前記プーリ14bを下方に移動させて前記研削用無端ベルト12と前記溶接ビードWbとの接触幅を増加させたりすることも可能である。すなわち、研削用無端ベルト12の研削幅が調整可能である。
【0041】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る研削装置50の要部斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る研削装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0042】
研削装置50は、押圧ブロック52を備え、この押圧ブロック52は、正面視略台形状を有する。押圧ブロック52は、研削用無端ベルト12の内周面を押圧する端面形状が四角形状に設定されている。
【0043】
従って、このように構成される第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施形態では、押圧ブロック52が正面視略台形状に構成されているが、これに限定されるものではなく、少なくとも端面形状が四角形状に設定されていればよく、種々の形状に設定可能である。
【0044】
なお、第1及び第2の実施形態では、突起部位として、ワークWの溶接ビードWbを研削する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、鋳造工程により製造されたワークの鋳ばりを除去する場合についても、同様に採用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10、50…研削装置 12…研削用無端ベルト
14a、14b、14c…プーリ 16…フレーム部材
22…ベルト 24…モータ
26…シリンダ 28、52…押圧ブロック
32…クッション材 34…保護シート部材
34a、34b…端部 36…固定板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削用無端ベルトを、突起部位に押し付けながら周回走行させることにより、前記突起部位を研削する研削装置であって、
前記研削用無端ベルトの内周面に、前記突起部位への押し付け位置に対向して配置されるとともに、該研削用無端ベルトの前記内周面を押圧する端面形状が四角形状に設定された押圧ブロックを備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
請求項1記載の研削装置において、前記押圧ブロックは、前記研削用無端ベルトとの接触側端面にクッション材を設け、
前記クッション材と前記研削用無端ベルトの前記内周面との間には、保護シート部材が介装されるとともに、
前記保護シート部材は、前記研削用無端ベルトとの接触位置における該研削用無端ベルトの走行方向上流側の端部が、前記押圧ブロック又は前記クッション材の少なくとも一方に固定され、且つ前記研削用無端ベルトとの接触位置における該研削用無端ベルトの走行方向下流側の端部が、自由端に構成されることを特徴とする研削装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の研削装置において、前記突起部位は、溶接ビードであることを特徴とする研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30301(P2012−30301A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170139(P2010−170139)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】