説明

研磨パッドおよびその製造方法

【課題】低圧研磨加工でも研磨性能を確保し被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッド10はポリウレタン樹脂製のウレタンシート2を備えている。ウレタンシート2はプレポリマとポリアミン化合物との反応で形成されている。ウレタンシート2は、ハードセグメントで形成される結晶相と、ソフトセグメントで形成される非晶相と、結晶相および非晶相の間の界面相とを有している。ウレタンシート2では、パルスNMRによるFID信号から得られる界面相の成分割合をRI、スピン−スピン緩和時間をT2Iとしたときに、P=22500−160・RI−21・T2Iで得られるP値が6000〜7500の範囲にある。A硬度、圧縮弾性率が共に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドおよびその製造方法に係り、特に、イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物の反応で形成されたポリウレタン樹脂製の研磨層を備え、研磨層に略均等にセルが形成された研磨パッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造や液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)の表面(加工面)では、平坦性が求められるため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。半導体デバイスでは、半導体回路の集積度が急激に増大するにつれて高密度化を目的とした微細化や多層配線化が進み、加工面を一層高度に平坦化する技術が重要となっている。一方、液晶ディスプレイでは、大型化に伴いガラス基板が薄く脆くなる傾向にあり、加工面のより高度な平坦性が要求されている。
【0003】
加工面に要求される平坦性の高度化に伴い、研磨加工における研磨精度や研磨効率等の研磨特性、換言すれば、研磨パッドに要求される性能も高まっている。一般に、研磨加工に用いられる研磨パッドでは、イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物の反応で形成されるポリウレタン樹脂製の研磨層を備えている。研磨層は、一側の表面に被研磨物を研磨加工するための研磨面を有している。研磨加工時に供給される砥粒を含む研磨液(スラリ)を保持しつつ、研磨面と加工面との間に研磨液を略均等に放出するため、研磨層が発泡構造を有しており、研削処理等により研磨面に開孔が形成されている。
【0004】
被研磨物の平坦性向上を目的として、研磨層の硬度や弾性率を定めた研磨パッドが用いられている。硬度が大きすぎると被研磨物にスクラッチ(研磨傷)を生じることとなり、反対に小さすぎると柔らかくなり研磨性能を低下させることとなる。一方、弾性率が大きすぎるとスクラッチの原因となり、反対に小さすぎると短期間で弾性が損なわれ被研磨物の平坦性を損なうこととなる。このような観点から、研磨パッドを2層構造や3層構造とする技術が開示されている。例えば、表面層と、その裏面に第2層とを有し、表面層が第2層より軟質の研磨パッドの技術が開示されている(特許文献1参照)。また、弾性率が50〜4%の表面層と、表面層の裏面側に積層され弾性率が2〜0.1%の中間支持層と、中間支持層の裏面側に積層され弾性率が50〜4%の裏面層とを有する研磨パッドの技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
ところが、半導体デバイスの高密度化やガラス基板の薄化、脆化に伴い、これら被研磨物を一層均一かつ低荷重(低圧)で研磨加工することが望まれている。このため、例えば、支持定盤に弾性体を具備させることで荷重を均一化する技術が開示されている(特許文献3参照)。また、研磨パッドにおいても、硬度や弾性率等の物性値だけでは対応が難しくなってきている。このため、従来の物性値に代えて、エネルギー損失因子(KEL値)という新たな尺度を導入した研磨パッドの技術が開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−176825号公報
【特許文献2】特開2002−307293号公報
【特許文献3】特開平08−309657号公報
【特許文献4】特表2004−507076号公報
【特許文献5】特表2004−507077号公報
【特許文献6】特開2005−136400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、特許文献2の技術では、硬度や弾性率を定めているものの、低圧研磨加工の場合、研磨レートや被研磨物の平坦性を低下させてしまう、という問題がある。また、通常、ポリウレタン樹脂では、硬度を大きくすると弾性率が小さくなる、つまり、硬度と弾性率とが相反する関係にあることから、硬度および弾性率を同時に向上させることが難しい。特許文献3の技術では、支持定盤側にはクッション性が備わっているものの、研磨パッドのクッション性が乏しいため、被研磨物が過研磨されてしまうことがある。また、特許文献4〜特許文献6の技術でも、加工面に要求される平坦性の高度化に伴う低圧研磨加工への対応が十分とはいえないのが現状である。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、低圧研磨加工でも研磨性能を確保し被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物の反応で形成されたポリウレタン樹脂製の研磨層を備え、前記研磨層に略均等にセルが形成された研磨パッドにおいて、前記研磨層を構成するポリウレタン樹脂は、ハードセグメントで形成される結晶相と、ソフトセグメントで形成される非晶相と、前記結晶相および非晶相の間の界面相とを有しており、温度120℃の環境下におけるパルス核磁気共鳴法による自由誘導減衰信号から得られる前記界面相の成分割合をRI(%)、スピン−スピン緩和時間をT2I(μs)としたときに、P=22500−160・RI−21・T2Iで得られるP値が6000〜7500の範囲であることを特徴とする。
【0010】
第1の態様では、P値を6000〜7500の範囲内とすることでポリウレタン樹脂の界面相の成分割合を減少させたものとなり、相対的にハードセグメントで形成される結晶相およびソフトセグメントで形成される非晶相の成分割合が増大することから、研磨層の硬度および弾性率が共に向上するため、低圧研磨加工でも研磨性能を確保し被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0011】
第1の態様において、イソシアネート基含有化合物を、ポリイソシアネート化合物および高分子ポリオール化合物の反応で生成した反応中間体が低分子ポリオール化合物で鎖伸長反応されたものとすることが好ましい。このとき、イソシアネート基含有化合物を、ポリイソシアネート化合物の2分子と低分子ポリオール化合物の1分子とで形成される成分の割合に対するポリイソシアネート化合物の3分子と低分子ポリオール化合物の2分子とで形成される成分の割合の比が0.3〜0.5の範囲としてもよい。イソシアネート基含有化合物の温度50℃〜80℃の範囲における粘度を2000mPa・s〜20000mPa・sの範囲としてもよい。高分子ポリオール化合物の分子量を650〜3000の範囲とすることができる。また、研磨層の厚みを0.5mm〜2.0mmの範囲とすることができる。このとき、研磨層に形成されたセルの平均孔径を30μm〜200μmの範囲とし、かつ、研磨層の表面には開孔径1〜3mmの範囲の大開孔が50個/100cm〜200個/100cmの範囲とすることが好ましい。研磨層を、A硬度60度〜100度の範囲、かさ密度0.45g/cm〜0.55g/cmの範囲としてもよい。研磨層のセルを水、ならびに、イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体により形成することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様の研磨パッドの製造方法であって、イソシアネート基含有化合物と、ポリアミン化合物と、前記研磨層の内部にセルを形成するための発泡成分とを準備する準備ステップと、前記準備ステップで準備したイソシアネート基含有化合物、ポリアミン化合物および発泡成分を混合した混合液からポリウレタン体を形成する形成ステップと、を含み、前記準備ステップにおいて、ポリイソシアネート化合物および高分子ポリオール化合物を反応させて生成した反応中間体を低分子ポリオール化合物で鎖伸長反応させ、前記イソシアネート基含有化合物を準備することを特徴とする。この場合において、準備ステップで準備する発泡成分を水、ならびに、イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、P値を6000〜7500の範囲内とすることでポリウレタン樹脂の界面相の成分割合を減少させたものとなり、相対的にハードセグメントで形成される結晶相およびソフトセグメントで形成される非晶相の成分割合が増大することから、研磨層の硬度および弾性率が共に向上するため、低圧研磨加工でも研磨性能を確保し被研磨物の平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を適用した研磨パッドの実施の形態について説明する。
【0015】
(研磨パッド)
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、ポリウレタン樹脂製の研磨層としてのウレタンシート2を備えている。ウレタンシート2は、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有している。ウレタンシート2は、イソシアネート基含有化合物と、予めポリオール化合物に水を分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物と、イソシアネート基含有化合物、分散液およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体と、を混合した混合液を型枠に注型し硬化させたポリウレタン発泡体をスライスすることで形成されている。すなわち、研磨パッド10を構成するウレタンシート2は、乾式成型で形成されている。
【0016】
ウレタンシート2の内部には、乾式成型時に、分散液中の水と非反応性の気体とにより、断面が円形状ないし楕円形状の複数の発泡(セル)3が略均等に分散した状態で形成されている。すなわち、ウレタンシート2は発泡構造を有している。ウレタンシート2の厚み方向では、複数の発泡3が重畳するように形成されている。ウレタンシート2の厚み方向と交差する2方向では、発泡3が略均等に形成されている。発泡3は平均孔径が30〜200μmの範囲に形成されている。ウレタンシート2がポリウレタン発泡体をスライスすることで形成されているため、研磨面Pでは発泡3の一部が開口しており、開孔4が形成されている。開孔4が発泡3の開口で形成されるため、開孔4の平均孔径が30〜200μmの範囲となり、かつ、研磨面Pには開孔径1〜3mmの範囲の大開孔(不図示)が50〜200個/100cmの範囲で形成されている。ウレタンシート2の厚さは0.5〜2.0mmの範囲に設定されている。
【0017】
ウレタンシート2は、ポリウレタン樹脂のハードセグメントで形成される結晶相と、ソフトセグメントで形成される非晶相と、結晶相および非晶相の間の界面相とを有している。すなわち、ウレタンシート2は結晶相および非晶相で形成される相分離構造を有している。ウレタンシート2では、P=22500−160・RI−21・T2I(以下、式(1)と記す。)で得られるP値が6000〜7500の範囲にある。式(1)において、RIはウレタンシート2を温度120℃の環境下におけるパルス核磁気共鳴法(以下、パルスNMRと略記する。)で解析したときの自由誘導減衰(以下、FIDと略記する。)信号から得られる界面相の成分割合(%)を示している。また、T2IはFID信号から得られる界面相のスピン−スピン緩和時間(μs)を示している。
【0018】
ここで、式(1)中の各因子、すなわち、界面相の成分割合RI、スピン−スピン緩和時間T2Iについてそれぞれ説明し、式(1)の意味を説明する。通常、ポリウレタン樹脂では、イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物の反応で形成されるハードセグメントと、ポリオール化合物で形成されるソフトセグメントと、を有している。ハードセグメントでは、ウレタン結合間に形成される水素結合により分子間凝集力が強くなり、高結晶性となるため、上述したように結晶相を形成する。これに対して、ソフトセグメントでは、水素結合が形成されにくく分子間凝集力が弱くなり、低結晶性のため、非晶相を形成する。また、結晶相では分子間凝集力が強くなることで分子の運動性が小さくなり、非晶相では分子間凝集力が弱くなることで分子の運動性が大きくなる。結晶相と非晶相との中間に形成される界面相は、結晶相、非晶相のいずれとも異なり、結晶相および非晶相の相分離構造を乱すように形成される。このようなポリウレタン樹脂では、A硬度を大きくすると圧縮弾性率が小さくなり、反対にA硬度を小さくすると圧縮弾性率が大きくなる。つまり、A硬度と圧縮弾性率とが相反する関係にある。
【0019】
パルスNMRでは、パルスに対する応答信号を検出することで定量性に優れるFID信号を得ることができる。このため、ポリウレタン樹脂の相分離構造を解析することができる。FID信号の初期値は測定試料中のプロトンの数に比例しており、測定試料に複数の成分があれば、FID信号は各成分の応答信号の和となる。各成分の運動性に差があると、応答信号の減衰の速さが異なりスピン−スピン緩和時間T2が異なるため、これらを分離して各成分の緩和時間T2と成分割合Rとを求めることができる。成分の運動性が小さくなるほど緩和時間T2が短くなり、運動性が大きくなるほど緩和時間T2が長くなる。換言すれば、緩和時間T2が短くなるほど結晶性が大きくなり、緩和時間T2が長くなるほど非晶性が大きくなる。
【0020】
図4に示すように、ポリウレタン樹脂のパルスNMRで得られるFID信号は、曲線Dで示される。曲線Dから、最小二乗法により緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することで、曲線H、曲線S、曲線Iで示される3つの成分に分けることができる。曲線Sで示される緩和時間T2の長い成分が非晶相に相当し、曲線Hで示される緩和時間T2の短い成分が結晶相に相当する。曲線Sと曲線Hとの間の曲線Iで示される成分が界面相に相当する。ポリウレタン樹脂では、運動性の大きなソフトセグメントで形成される非晶相の成分割合が圧縮弾性率と相関し、運動性の小さなハードセグメントで形成される結晶相の成分割合がA硬度と相関する。このため、非晶相の成分割合を大きくすれば圧縮弾性率を大きくすることができ、結晶相の成分割合を大きくすればA硬度を大きくすることができる。また、界面相の成分割合RIが小さくなれば、相対的に結晶相の成分割合および非晶相の成分割合が大きくなるため、相分離構造が明確化(しっかり)し、A硬度および圧縮弾性率が共に向上する。また、界面相の緩和時間T2Iが短くなると結晶性が大きくなり、結晶相に近くなる。
【0021】
上述した式(1)は、界面相の成分割合RI、スピン−スピン緩和時間T2Iを関連付けした関係式である。得られるP値は、ポリウレタン樹脂のA硬度および圧縮弾性率と相関し、A硬度×圧縮弾性率で得られる数値に相当する。すなわち、非晶相の成分割合と結晶相の成分割合とが高くなると、界面相の成分割合RIが小さくなり相分離構造が明確化することを意味している。また、非晶相のスピン−スピン緩和時間が大きくなり、界面相のスピン−スピン緩和時間T2Iが小さくなると、非晶相を形成するソフトセグメントの分子量がある程度大きくなり、界面相の結晶性が高くなることを意味している。ウレタンシート2を用いた研磨パッド10で考えると、P値が大きすぎると研磨面Pでの自己ドレス性が低下し開孔4が目詰まりしやすくなる。反対に、P値が小さすぎると弾性を損ないやすくなり、被研磨物の平坦性を低下させスクラッチを起こしやすくなる。ウレタンシート2では、P値が6000〜7500の範囲となるように調整されている。
【0022】
また、発泡3の孔径が小さすぎる、または、発泡数が少なすぎる場合は、ウレタンシート2のかさ密度が大きくなる。すなわち、ウレタンシート2のかさ密度は発泡構造と相関する。発泡3の孔径が小さくなると開孔4も小さくなるため、目詰まりを起こしやすくなり、発泡数が少なくなると開孔4の数も少なくなるため、研磨レート等の研磨性能を十分に得ることが難しくなる。このようなことから、本例では、かさ密度が0.45〜0.55g/cmの範囲となるように調整されている。一方、A硬度は、かさ密度により変化するが、ウレタンシート2を構成するポリウレタン樹脂の平均重合度や分子量分布、開孔の形状や分布によっても変化することがあるので、これらも考慮することが重要である。A硬度が低すぎると、ウレタンシート2が柔らかすぎるため、被研磨物の平坦性を損なうばかりか、ねばりを生じやすくなり、開孔4が目詰まりを起こしやすくなる。反対に、A硬度が高すぎると、スクラッチを招きやすくなる。本例では、A硬度が60〜100度の範囲となるように調整されている。かさ密度、A硬度は、ポリウレタン樹脂の材質にもよるが、発泡3の大きさ、数量を変えること、換言すれば、分散液中の水の量や混合液に混合する気体の量を変えることで調整することができる。
【0023】
以上のように、ウレタンシート2では、ハードセグメントがイソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物の反応で形成され、ソフトセグメントがポリオール化合物で形成される。換言すれば、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、混合液に混合する水および気体の量を調整することで、上述した式(1)で得られるP値を適正化し6000〜7500の範囲とすることができる。ウレタンシート2では、A硬度を60〜100度の範囲のように高くしても圧縮弾性率を概ね80%以上に高くすることができることから、弾性を維持しやすくなることで研磨性能を確保することができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0024】
また、図1に示すように、研磨パッド10は、ウレタンシート2の研磨面Pと反対側の面に、研磨機に研磨パッド10を装着するための両面テープ7が貼り合わされている。両面テープ7は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の基材7aの両面にそれぞれ接着剤が塗着されており接着剤層(不図示)が形成されている。両面テープ7は、一面側の接着剤層でウレタンシート2と貼り合わされており、他面側(図1の最下面側)の接着剤層が剥離紙7bで覆われている。
【0025】
(研磨パッドの製造)
研磨パッド10は、図2に示す各工程を経て製造される。すなわち、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、予めポリオール化合物に水を分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する準備工程(準備ステップ)、予めポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を反応させてイソシアネート基含有化合物を生成し、得られたイソシアネート基含有化合物、分散液、ポリアミン化合物、および、各成分に対して非反応性の気体を混合して混合液を調製する混合工程(形成ステップの一部)、混合液を型枠に注型する注型工程(形成ステップの一部)、型枠内で発泡、硬化させてポリウレタン発泡体を形成する硬化成型工程(形成ステップの一部)、ポリウレタン発泡体をシート状にスライスして複数枚のウレタンシート2を形成するスライス工程、ウレタンシート2と両面テープとを貼り合わせ研磨パッド10を形成するラミネート工程を経て製造される。以下、工程順に説明する。
【0026】
(準備工程)
準備工程では、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する。準備するポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。これらのジイソシアネート化合物の2種以上を併用してもよく、分子内に3つ以上、例えば、3つのイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0027】
一方、ポリオール化合物としては、低分子量ポリオール化合物と高分子量ポリオール化合物とを準備する。低分子量ポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等を挙げることができる。高分子量ポリオール化合物としては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物、エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。上述した式(1)で得られるP値の範囲を満たすために、分子量が650〜3000の範囲の高分子量ポリオール化合物が用いられる。
【0028】
また、分散液の調製に用いられるポリオール化合物は、プレポリマのイソシアネート基と反応しソフトセグメントを形成するので、研磨加工時の溶出、ひいては、研磨特性に対する悪影響を抑制することができる。このポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等の化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等の低分子量のポリオール化合物、PTMG、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。イソシアネート基含有化合物やポリアミン化合物の溶液の粘度と同程度にすることで混合工程において水の分散を均一化しやすくなるため、数平均分子量500〜3000のポリオール化合物を用いることが好ましい。本例では、数平均分子量約1000のPTMGを使用し、これに水を0.01〜6重量%の割合で分散希釈させて分散液を調製する。分散液の調製時には、一般的な攪拌装置を使用して攪拌混合すればよく、水が略均等に分散希釈されていればよい。使用する水としては、特に制限はないが、不純物等の混入を回避するため、蒸留水を使用することが好ましい。また、分散液の量は、次工程の混合工程で混合するイソシアネート基含有化合物の重量1kgに対して水の量が0.01〜6gの割合となるように準備することが好ましい。水の量が少なすぎると得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡の大きさが小さすぎ、反対に多すぎると極端に大きな発泡が形成される。例えば、イソシアネート基含有化合物の重量を1kgとした場合、分散液を100gとすれば、この分散液に含まれる水の量は0.01〜6gとなる。
【0029】
ポリアミン化合物は、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基と反応することでハードセグメントを形成する。このポリアミン化合物としては、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物を使用することができるが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。これらの化合物の2種以上を併用してもよい。ポリアミン化合物として、本例では、MOCAが約120℃に加熱し溶融させた状態で用いられる。
【0030】
(混合工程、注型工程、硬化成型工程)
図2に示すように、混合工程では、準備工程で準備したポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させることでイソシアネート基含有化合物、すなわち、イソシアネート末端ウレタンプレポリマ(以下、単に、プレポリマと略記する。)を生成させる。得られたプレポリマと、準備工程で準備した分散液およびポリアミン化合物とを混合するときに、プレポリマ、分散液およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体(以下、非反応性気体と呼称する。)を吹き込み混合液を調製する。注型工程では混合工程で調製された混合液を型枠に注型し、硬化成型工程では型枠内で発泡、硬化させてポリウレタン発泡体を成型する。本例では、混合工程、注型工程、硬化成型工程を連続して行う。
【0031】
プレポリマの生成では、準備工程で準備したポリイソシアネート化合物、高分子量ポリオール化合物および低分子量ポリオール化合物を反応させる。イソシアネート基のモル量を水酸基のモル量より大きくすることで、プレポリマを得ることができる。このとき、得られるプレポリマの分子鎖において、ポリイソシアネート化合物の2分子と低分子量ポリオール化合物の1分子とで形成される成分Aの割合Aに対する、ポリイソシアネート化合物の3分子と低分子ポリオール化合物の2分子とで形成される成分Bの割合Bの比B/Aが0.3〜0.5の範囲となるようにする。このことは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)分析で得られる溶出パターンから、成分Aのピークと、成分Bのピークとの比で確認することができる。
【0032】
比B/Aをこの範囲に調整するため、まず、ポリイソシアネート化合物と高分子量ポリオール化合物とを反応させ、得られた反応中間体を低分子ポリオール化合物で鎖伸長反応させる。この場合、高分子量ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物が低分子ポリオール化合物で鎖伸長され、成分Bの割合Bが小さくなる。割合Bが大きくなると、得られるポリウレタン樹脂中でソフトセグメントを形成しにくくなる。この結果、結晶相、非晶相で形成される相分離構造を乱すこととなる。更に、高分子量ポリオール化合物と、低分子量ポリオール化合物とを段階的に反応させることで、低分子量ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とで形成される成分がプレポリマ末端に多く結合するようになる。結果として、非晶相のスピン−スピン緩和時間が大きくなり、界面相のスピン−スピン緩和時間T2Iが小さくなる。
【0033】
生成するプレポリマは、粘度が高すぎると、流動性が悪くなり混合時に略均一に混合することが難しくなる。温度を上昇させて粘度を低くするとポットライフが短くなり、却って混合斑が生じて得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡3の大きさにバラツキが生じる。反対に、粘度が低すぎると混合液中で気泡が移動してしまい、ポリウレタン発泡体に略均等に分散した発泡3を形成することが難しくなる。このため、プレポリマは、温度50〜80℃における粘度を2000〜20000mPa・sの範囲に調整することが好ましい。例えば、プレポリマの分子量(重合度)を変えることで粘度を調整することができる。プレポリマは、50〜80℃程度に加熱され流動可能な状態とされる。
【0034】
図3に示すように、混合工程では混合機20で混合液が調製され、注型工程では調製された混合液が混合機20から連続して型枠25に注型され、硬化成型工程で硬化させることによりポリウレタン発泡体が成型される。混合機20は、攪拌翼14が内蔵された混合槽12を備えている。混合槽12の上流側には、第1成分としてプレポリマ、第2成分としてポリアミン化合物、第3成分として分散液をそれぞれ収容した供給槽、および、混合槽12内に非反応性気体を供給する供給装置16が配置されている。各供給槽からの供給口は混合槽12の上流端部に接続されており、供給装置16からの非反応性気体の供給口は混合槽12の全体の長さに対して上流端部からおよそ1/3の位置に接続されている。攪拌翼14は混合槽12内の略中央部で上流側から下流側までにわたる回転軸に固定されている。回転軸の回転に伴い攪拌翼14が回転し、第1成分、第2成分、第3成分および非反応性気体を剪断するようにして混合する。得られた混合液は混合槽12の下流端部に配置された排出口から型枠25に注型される。型枠25の大きさは、本例では、1050mm(長さ)×1050mm(幅)×50mm(厚さ)に設定されている。
【0035】
第1成分のプレポリマ、第2成分のMOCAに代表されるポリアミン化合物の多くがいずれも常温で固体または流動しにくい状態のため、それぞれの供給槽は各成分が流動可能となるように加温されている。また、非反応性気体中に含まれる水分が混合槽12内の反応に関与することを防止するため、供給装置16からの非反応性気体は図示を省略した水分除去装置で水分が除去されている。供給された非反応性気体が混合槽12内で攪拌翼14の回転により微細な気泡となり、この気泡が水を分散希釈させた分散液を混合液中で略均等に分散させるバブリング効果を発揮する。また、供給された非反応性気体の一部により発泡3が形成される。非反応性気体の供給量が少なすぎるとバブリング効果が不十分となり水や発泡3の分散状態に偏りが生じやすくなり、反対に多すぎると極端に大きな気泡が生じてしまう。このため、非反応性気体の供給量は、プレポリマ、分散液、ポリアミン化合物の合計重量1kgに対して0.5〜3.4Lの割合となるように調整することが好ましい。非反応性気体としては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等を挙げることができる。
【0036】
第1成分、第2成分、第3成分が混合槽12に供給され、攪拌翼14によりある程度混合された段階で非反応性気体が供給される。各成分の粘度が同程度となるように調製されているため、非反応性気体を供給する際には、各成分を混合した溶液の温度50〜80℃における粘度が2000〜20000mPa・sの範囲となる。攪拌翼14の剪断速度、剪断回数を調整することで、各成分および非反応性気体が略均等に混合され混合液が調製される。攪拌翼14の剪断速度が小さすぎると、得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡3の大きさが大きくなりすぎる。反対に剪断速度が大きすぎると、攪拌翼14および混合液間の摩擦による発熱で温度が上昇し粘度が低下するため、混合液中の気泡が(成型中に)移動してしまい、得られるポリウレタン発泡体に形成される発泡3の分散状態にバラツキが生じやすくなる。一方、剪断回数が少なすぎると生じる気泡の大きさにムラ(バラツキ)が生じやすく、反対に多すぎると温度上昇で粘度が低下し、発泡3が略均等に形成されなくなる。このため、混合工程では、剪断速度を9,000〜41,000/秒の範囲、剪断回数を300〜10,000回の範囲に設定し、混合する。混合機20での混合時間(滞留時間)は、混合液の流量(最大1リットル/sec)にもよるが、およそ1秒程度である。すなわち、例えば、注液工程で型枠25に100kg程度の混合液を注液するのに要する時間はおよそ1〜2分程度となる。なお、剪断速度、剪断回数は次式により求めることができる。すなわち、剪断速度(/秒)=攪拌翼14の翼先端の直径(mm)×円周率×攪拌翼14の回転数(rpm)÷60÷攪拌翼14の翼先端と混合槽12の内壁とのクリアランス(mm)、剪断回数(回)=攪拌翼14の回転数(rpm)÷60×混合槽12中での混合液の滞留時間(秒)×攪拌翼14の翼の数、により求めることができる。
【0037】
注液工程で、型枠25に混合液を注液するときは、混合機20からの混合液を混合槽12の排出口から排出し、例えばフレキシブルパイプを通じて、型枠25の対向する2辺間(例えば、図3の左右間)を往復移動する断面三角状の図示しない注液口に導液する。注液口を往復移動させながら、排出口の端部(フレキシブルパイプの端部)を注液口の移動方向と交差する方向に往復移動させる。混合液は、型枠25に略均等に注液される。
【0038】
硬化成型工程では、注液された混合液を型枠25内で反応硬化させブロック状のポリウレタン発泡体を形成させる。このとき、プレポリマと、分散液中のポリオール化合物、ポリアミン化合物との反応によりプレポリマが架橋硬化する。この架橋硬化の進行と同時に、プレポリマのイソシアネート基と分散液に分散希釈された水とが反応することで、二酸化炭素が発生する。架橋硬化が進行しているため、発生した二酸化炭素が外部に抜け出すことなく、発泡3が形成される。
【0039】
(スライス工程)
図2に示すように、スライス工程では、硬化成型工程で得られたポリウレタン発泡体をシート状にスライスして複数枚のウレタンシート2を形成する。スライスには、一般的なスライス機を使用することができる。スライス時にはポリウレタン発泡体の下層部分を保持し、上層部から順に所定厚さにスライスする。スライスする厚さは、本例では、0.5〜2.0mmの範囲に設定されている。また、本例で用いた厚さが50mmの型枠25で成型したポリウレタン発泡体では、例えば、上層部および下層部の約10mm分をキズ等の関係から使用せず、中央部の約30mm分から15〜60枚のウレタンシート2が形成される。硬化成型工程で内部に発泡3が略均等に形成されたポリウレタン発泡体が得られるため、スライス工程で形成される複数枚のウレタンシート2では、表面に形成された開孔4の平均孔径がいずれも100μm以下となる。開孔4の平均孔径が100μmを上回ると、略均一な孔径の制御が難しくなり、スラリや研磨屑の凝集によるスクラッチを誘発しやすくなる。
【0040】
(ラミネート工程)
ラミネート工程では、スライス工程で形成されたウレタンシート2と両面テープ7とが貼り合わされる。円形等の所望の形状、サイズに裁断した後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い研磨パッド10を完成させる。
【0041】
被研磨物の研磨加工を行うときは、研磨機の研磨定盤に研磨パッド10を装着する。研磨定盤に研磨パッド10を装着するときは、剥離紙7bを取り除き、露出した接着剤層で研磨定盤に接着固定する。研磨定盤と対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面P側へ押圧すると共に、外部からスラリを供給しながら研磨定盤ないし保持定盤を回転させることで、被研磨物の加工面が研磨加工される。このとき、開孔4にスラリが保持されつつ、加工面全体に略均等に供給される。なお、通常、研磨液の媒体としては水が使用されるが、アルコール等の有機溶剤を混合することも可能である。
【0042】
(作用等)
次に、本実施形態の研磨パッド10の作用等について説明する。
【0043】
従来研磨加工では、発泡構造を有し研磨面に開孔が形成された研磨パッドが用いられている。研磨加工時には、研磨粒子を含む研磨液が被研磨物および研磨パッド間に供給されるが、この研磨液が研磨面に形成された開孔に保持されつつ被研磨物の加工面全体に供給されることで被研磨物が研磨される。このような研磨パッドでは、被研磨物にあわせてA硬度や圧縮弾性率を調整することで、研磨レート等の研磨性能や被研磨物の平坦性の向上が図られている。また、例えば、半導体デバイスの高密度化や液晶ディスプレイ用ガラス基板の薄化、脆化に伴い、これらの被研磨物を低加重(低圧)で研磨加工することが望まれており、被研磨物の一層の均一性が求められている。ところが、A硬度と圧縮弾性率とが相反する関係にあるため、両者を同時に向上させることが難しい。このため、低圧研磨加工における研磨性能や被研磨物の平坦性向上が十分とはいえない。A硬度等の物性値に代えてエネルギー損失因子(KEL)という尺度を導入した技術もあるが、低圧研磨加工に対しては十分に対応しきれないのが現状である。本実施形態は、これらの問題を解決することができる研磨パッドである。
【0044】
本発明者らは、ポリウレタン樹脂のA硬度と圧縮弾性率とを同時に向上させることについて、鋭意検討した結果、ハードセグメントとソフトセグメントとで形成される相分離構造に着目し、次のような関係を見出した。すなわち、結晶相および非晶相の間に形成される中間的な界面相の成分割合を小さくすることで、A硬度および圧縮弾性率の向上が期待できることである。
【0045】
本実施形態のウレタンシート2では、温度120℃の環境下におけるパルスNMRによるFID信号から得られる界面相の成分割合をRI(%)、スピン−スピン緩和時間をT2I(μs)としたときに、式(1)、つまり、P=22500−160・RI−21・T2Iで得られるP値が6000〜7500の範囲にある。P値を上述した範囲とすることで、界面相の成分割合RIが減少し、相対的に結晶相および非晶相の成分割合が増大するため、A硬度および圧縮弾性率を共に向上させることができる。すなわち、A硬度を上述した60〜100度の範囲とした場合、P値を考慮せずに作成した従来のウレタンシートでは圧縮弾性率×A硬度の数値がおよそ6000未満にとどまるのに対し、本実施形態のウレタンシート2では概ね6000以上の数値を得ることができる。これにより、低圧研磨加工でも被研磨物に対する略均一な押圧力が確保されるため、研磨性能を確保し被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0046】
また、式(1)で得られるP値は、ウレタンシート2のA硬度、圧縮弾性率と相関し、A硬度×圧縮弾性率の数値に相当する。P値が高すぎると研磨加工時に研磨面Pの自己ドレス性が低下し、開孔4が目詰まりしやすくなる。反対に、P値が低すぎると弾性が損なわれ(へたり)やすくなり、被研磨物の平坦性が低下しスクラッチの原因にもなる。P値を上述した範囲とすることで、A硬度が高くても圧縮弾性率も高めのウレタンシート2が得られるため、研磨レートが向上するうえ、へたりにくくなり、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0047】
更に、本実施形態では、ポリイソシアネート化合物、高分子量ポリオール化合物および低分子量ポリオール化合物を反応させて生成するプレポリマにおいて、ポリイソシアネート化合物の2分子と低分子量ポリオール化合物の1分子とで形成される成分Aの割合Aに対する、ポリイソシアネート化合物の3分子と低分子ポリオール化合物の2分子とで形成される成分Bの割合Bの比B/Aが0.3〜0.5の範囲に調整されている。このため、割合Bが小さくなり、相対的に割合Aが大きくなる。これにより、得られるポリウレタン樹脂中でソフトセグメントとハードセグメントとが相分離状態を形成しやすくなる。更に、高分子量ポリオール化合物と、低分子量ポリオール化合物とを段階的に反応させることで、低分子量ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とで形成される成分がプレポリマ末端に多く結合するようになる。従って、非晶相のスピン−スピン緩和時間が大きくなり、界面相のスピン−スピン緩和時間T2Iが小さくなるため、P値を適正化し上述した範囲に調整することができる。
【0048】
また更に、界面相の成分割合を小さくすることで、相対的に結晶相の成分割合および非晶相の成分割合を大きくすることができるが、成分割合が小さすぎるとウレタンシート2のA硬度が低下するため、研磨レート等の研磨性能を低下させることとなる。反対に、成分割合が小さすぎるとウレタンシート2の圧縮弾性率が低下するため、研磨加工時に研磨液中の研磨粒子や研磨屑の凝集物で被研磨物にスクラッチを生じさせる原因となる。本実施形態では、ウレタンシート2の形成に用いるプレポリマにおける比B/Aが上述した範囲に調整されるため、ハードセグメントとソフトセグメントとの相分離を乱す界面相の成分割合RIが低減することから、ウレタンシート2のA硬度および圧縮弾性率を適正化することができる。
【0049】
更にまた、ウレタンシート2のかさ密度は発泡構造と相関する。A硬度は、かさ密度により変化するが、ウレタンシート2を構成するポリウレタン樹脂の重合度や分子量等でも変化する。本実施形態では、ウレタンシート2のかさ密度が0.45〜0.55g/cmの範囲に調整されている。このため、発泡3の孔径や発泡数が適正化されることから、開孔4の目詰まりを抑制し、研磨性能を確保することができる。また、ウレタンシート2のA硬度が低すぎると開孔4が目詰まりを起こしやすくなり、反対に、高すぎるとスクラッチを招きやすくなる。本実施形態では、A硬度が60〜100度の範囲に調整されているため、開孔4の目詰まりを抑制し、被研磨物の平坦性向上を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、混合工程で、プレポリマ、分散液およびポリアミン化合物が混合されるときに、非反応性気体が吹き込まれて混合液が調製される。このため、非反応性気体により微細な気泡が生じ、この気泡によるバブリング効果で分散液中の水が混合液中で略均等に分散される。予めポリオール化合物に水を分散希釈しておくと共に、非反応性気体により生じた気泡で分散液が混合液中に分散されるため、混合液中の水の分散状態を均等化することができる。これにより、水とプレポリマのイソシアネート基とが反応して発生する二酸化炭素も略均等に分散される。また、非反応性気体の一部が大きめの気泡を生じるが、同様に、微細な気泡により混合液中で略均等に分散される。従って、得られるポリウレタン発泡体の内部に大きさが制御され略均等に分散した発泡3を形成することができる。スライス工程でスライスすることにより、表面に略均一な開孔4が略均等に形成された複数枚のウレタンシート2を得ることができ、ウレタンシート2を用いた複数枚の研磨パッド1では、研磨性能のバラツキを抑制することができる。
【0051】
更に、本実施形態では、分散液中の水の量をプレポリマの重量1kgに対して0.01〜6gの割合とすることで、混合液中に分散される水の量が制限されるので、極端に大きな発泡の形成や偏りを抑制することができる。これにより、スライスされた複数枚のウレタンシート2では、開孔4の平均孔径を30μm〜200μmの範囲とすることができる。従って、研磨加工時にスラリが開孔4に保持されつつ、研磨屑が開孔4に収容されるので、研磨効率の向上を図ることができる。また、非反応性気体の量をプレポリマ、分散液およびポリアミン化合物の合計重量1kgに対して0.5〜3.4Lの割合とすることで、混合液中の非反応性気体の量が制限されるので、極端に大きな発泡の形成を抑制しつつ、開孔径1〜3mmの範囲の大開孔を研磨面Pに50〜200個/100cmの範囲で分散して形成させることができる。更に、プレポリマの温度50〜80℃における粘度を2000〜20000mPa・sの範囲とすることで、非反応性気体によるバブリング効果がほぼ一様に生じ混合液中での水の分散状態を均等化することができる。これにより、発泡3の偏りを抑制し分散状態を均等化することができる。このように、水の量、非反応性気体の量が調整されることで発泡構造のウレタンシート2が形成されるため、ウレタンシート2のA硬度、かさ密度を上述した範囲に調整することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、ポリオール化合物に水を分散希釈した分散液を調製する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、分散液がポリオール化合物および水以外に、例えば、硬化成型に際し必要な添加剤やフィラー等の成分を含むようにしてもよい。この分散液では、発泡に関与しないポリオール化合物に水を分散させたため、混合工程における水の混合斑を低減する役割を果たす。ポリオール化合物以外の液体を用いることも可能であるが、そのような液体が研磨時に溶出して研磨特性に悪影響を及ぼす可能性のあることを考慮すれば、ポリオール化合物を用いることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態では、発泡3の形成に水と非反応性気体とを用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、水のみ、または、非反応性気体のみで発泡を形成するようにしてもよい。
【0054】
更に、本実施形態では、混合工程で混合機20、スライス工程でスライス機を使用する例を示したが、混合機やスライス機には特に制限はなく、通常使用される混合機、スライス機を使用することができる。また、本実施形態では、直方体状の型枠25を例示したが、本発明は型枠の形状や大きさに制限されるものではない。例えば、円柱状等の型枠を使用してもよく、混合液の粘性を考慮すれば、型枠を使用せずに発泡体を形成するようにしてもよい。
【0055】
また更に、本実施形態では、特に言及していないが、スラリの供給や研磨屑の排出を考慮して研磨面Pに溝加工やエンボス加工を施すようにしてもよい。溝の形状については、放射状、格子状、螺旋状等のいずれでもよく、断面形状についても矩形状、U字状、V字状、半円状のいずれでもよい。溝のピッチ、幅、深さについては、研磨屑の排出やスラリの移動が可能であればよく、特に制限されるものではない。エンボス加工についても、特に制限のないことはもちろんである。
【0056】
更にまた、本実施形態では、特に言及していないが、ウレタンシート2が、少なくとも一部に、被研磨物の研磨加工状態を光学的に検出するための光透過を許容する光透過部を有するようにしてもよい。この場合、光透過部がウレタンシート2の厚み方向の全体にわたり貫通するように形成することが好ましい。このようにすれば、例えば、研磨機側に備えられた発光ダイオード等の発光素子、フォトトランジスタ等の受光素子により、研磨加工中に光透過部を通して被研磨物の加工面の研磨加工状態を検出することができる。これにより、研磨加工の終点を適正に検出することができ、研磨効率の向上を図ることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本実施形態に従い作製した研磨パッド10の実施例について説明する。なお、比較のために作製した比較例についても併記する。
【0058】
(実施例1)
実施例1では、第1成分のプレポリマとして2,4−TDIの697部、水添MDIの40部、数平均分子量約1000のPTMGの1000部を反応させた後、ジエチレングリコールの102部を加えて更に反応させたイソシアネート含有量が10.0%の末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマを用いこれを55℃に加熱し減圧下で脱泡した。このイソシアネート基含有ウレタンプレポリマでは、GPC分析で得られる溶出パターンから、ポリイソシアネート化合物の2分子と低分子量ポリオール化合物の1分子とで形成される成分Aのピーク高さA(mm)に対する、ポリイソシアネート化合物の3分子と低分子ポリオール化合物の2分子とで形成される成分Bのピーク高さB(mm)の比B/Aが0.3を示した。第2成分のMOCAは120℃で溶解させ、減圧下で脱泡した。第3成分の分散液は、数平均分子量約1000のPTMGの50部に、水の2部、触媒(トヨキャットET、東ソー株式会社製)の1部、シリコン系界面活性剤(SH−193、ダウコーニング社製)の5部をそれぞれ添加し攪拌混合した後、減圧下で脱泡した。第1成分:第2成分:第3成分を重量比で100部:20部:5部の割合で混合槽12に供給した。混合工程では、攪拌条件を剪断回数1689回、剪断速度9425/秒に設定した。このとき、混合槽12内に空気を80L/minの流量で供給した。得られた混合液を型枠25に注型し硬化させた後、形成されたポリウレタン発泡体を型枠25から抜き出した。この発泡体を厚さ1.0mmにスライスしてウレタンシート2を作製し、研磨パッド10を得た。
【0059】
(実施例2)
実施例2では、第1成分のプレポリマとして2,4−TDIの1045部、水添MDIの50部、数平均分子量約1000のPTMGの1000部を反応させた後、ジエチレングリコールの229部を加えて更に反応させたイソシアネート含有量が11.0%、GPC分析で得られる比B/Aが0.5の末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマを用い、第1成分:第2成分:第3成分を重量比で100部:28部:5部の割合とした以外は実施例1と同様にして、ウレタンシート2を作製し、実施例2の研磨パッド10を得た。
【0060】
(比較例1)
比較例1では、第1成分のプレポリマとして2,4−TDIの697部、水添MDIの40部、数平均分子量約1000のPTMGの1000部、ジエチレングリコールの102部を反応させたイソシアネート含有量が10.0%、GPC分析で得られる比B/Aが0.6の末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマを用いた以外は実施例1と同様にして、ウレタンシートを作製し、研磨パッドを得た。比較例1では、含有率HSCが36%、当量比Rが0.9となる。
【0061】
(評価1)
各実施例および比較例について、ウレタンシートのかさ密度、開孔4の孔径、A硬度および圧縮弾性率を測定した。かさ密度は、所定サイズの大きさに切り出した試料の重量を測定し、サイズから求めた体積から算出した。孔径は、マイクロスコープ(KEYENCE製、VH−6300)で約1.3mm四方の範囲を175倍に拡大して観察し、得られた画像を画像処理ソフト(Image Analyzer V20LAB Ver.1.3)により処理し算出した。また、開孔径1〜3mmの大開孔については、研磨面Pでの20cm×20cmの範囲を2cm×2cmに区切り、n=100でマイクロスコープにて計数した。A硬度は、日本工業規格(JIS K 7311)に従いショアA硬度を測定した。圧縮弾性率は、日本工業規格(JIS L 1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めた。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さtを測定し、次に最終圧力のもとで5分間放置後の厚さtを測定した。全ての荷重を除き、5分間放置後、再び初荷重で30秒間加圧した後の厚さt’を測定した。圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=(t’−t)/(t−t)×100で算出した。このとき、初荷重は100g/cm、最終圧力は1120g/cmであった。かさ密度、開孔4の平均孔径、大開孔の個数、A硬度および圧縮弾性率の結果を下表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示すように、比較例1では、実施例1と同様の原料比率であっても比B/Aが0.6となり0.5を超えることから、圧縮弾性率が劣る結果となった。これに対して、実施例1、実施例2では、いずれも、比B/Aが0.3〜0.5の範囲であることから、A硬度と圧縮弾性率がともに良好な結果を示した。
【0064】
(評価2)
次に、各実施例および比較例の研磨パッドについて、パルスNMRによる測定を行い、FID信号から、界面相の成分割合RI、スピン−スピン緩和時間T2Iをもとめ、式(1)で得られるP値を算出した。パルスNMRの測定は、パルスNMR測定装置(日本電子株式会社製、JNM−MU25、25MHz)を用い、90°pulse 2.0μs、繰り返し時間:4s、積算回数:8回、温度:120℃にて測定した。各数値を下表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2に示すように、比較例1の研磨パッドでは、界面相の成分割合RIが高く、スピン−スピン緩和時間T2Iも長いため、P値が適正範囲より低くなった。これに対して、実施例1および実施例2の研磨パッドでは、成分割合RIが低くなり、P値が適正範囲にあることが判った。ここで、実施例2のスピン−スピン緩和時間T2Iは、比較例1より長めではあるが、成分割合RIが低いので、その分、結晶相および非晶相の割合が高くなっている。
【0067】
(評価3)
また、各実施例および比較例の研磨パッドを用いて、以下の研磨条件でハードディスク用のアルミニウム基板の研磨加工を行い、研磨レートを測定した。研磨レートは、1分間当たりの研磨量を表したものであり、研磨加工前後のアルミニウム基板の重量減少から算出した。また、目視にてスクラッチの有無を判定した。更に、研磨加工後のアルミニウム基板の厚さ分布を静電容量式平坦度測定器(ADE社製、ULTRA GAGE)を用いて測定し、最大バラツキを平坦度とした。研磨レート、スクラッチおよび平坦度の測定結果を下表3に示す。
(研磨条件)
使用研磨機:スピードファム社製、9B−5Pポリッシングマシン
研磨速度(回転数):30rpm
加工圧力:20g/cm
スラリ:アルミナスラリ(pH:2.0)
スラリ供給量:100cc/min
被研磨物:ハードディスク用アルミニウム基板
(外径95mmφ、内径25mm、厚さ1.27mm)
【0068】
【表3】

【0069】
表3に示すように、比較例1の研磨パッドでは、研磨レートが0.32mg/minを示し、研磨加工した加工面にスクラッチが発生し、平坦度も0.35μmと劣っていた。これに対して、実施例1および実施例2の研磨パッドでは、研磨レートがそれぞれ0.33mg/min、0.30mg/minを示し、いずれも研磨加工した加工面にスクラッチが発生せず、平坦度もそれぞれ0.15μm、0.13μmと優れた結果となった。
【0070】
以上の結果から、実施例1および実施例2では、式(1)で得られるP値が上述した範囲内にあり、ウレタンシート2のA硬度および圧縮弾性率をいずれも向上させることができることから、低圧研磨加工においても、研磨レートを確保することができ、スクラッチの発生もなく加工面の平坦性を向上させることができることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は低圧研磨加工でも研磨性能を確保し被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドおよびその製造方法を提供するため、研磨パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明を適用した実施形態の研磨パッドを模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態の研磨パッドの製造方法の要部を示す工程図である。
【図3】実施形態の研磨パッドの製造に用いた混合機および型枠の概略を示すブロック図である。
【図4】ポリウレタン樹脂をパルス核磁気共鳴法で測定したときの自由誘導減衰信号の曲線およびその曲線を結晶相、非晶相、界面相の各成分に分離した曲線を模式的に示すグラフであり、曲線Dは実測された自由誘導減衰信号を示し、曲線Hは結晶相の信号、曲線Sは非晶相の信号、曲線Iは界面相の信号をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0073】
P 研磨面
2 ウレタンシート(研磨層)
3 発泡(セル)
4 開孔
10 研磨パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物の反応で形成されたポリウレタン樹脂製の研磨層を備え、前記研磨層に略均等にセルが形成された研磨パッドにおいて、前記研磨層を構成するポリウレタン樹脂は、ハードセグメントで形成される結晶相と、ソフトセグメントで形成される非晶相と、前記結晶相および非晶相の間の界面相とを有しており、温度120℃の環境下におけるパルス核磁気共鳴法による自由誘導減衰信号から得られる前記界面相の成分割合をRI(%)、スピン−スピン緩和時間をT2I(μs)としたときに、P=22500−160・RI−21・T2Iで得られるP値が6000〜7500の範囲であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記イソシアネート基含有化合物は、ポリイソシアネート化合物および高分子ポリオール化合物の反応で生成した反応中間体が低分子ポリオール化合物で鎖伸長反応されたものであることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記イソシアネート基含有化合物は、前記ポリイソシアネート化合物の2分子と前記低分子ポリオール化合物の1分子とで形成される成分の割合に対する前記ポリイソシアネート化合物の3分子と前記低分子ポリオール化合物の2分子とで形成される成分の割合の比が0.3〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記イソシアネート基含有化合物は、温度が50℃〜80℃の範囲における粘度が2000mPa・s〜20000mPa・sの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記高分子ポリオール化合物は、分子量が650〜3000の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記研磨層は、厚みが0.5mm〜2.0mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層に形成されたセルは平均孔径が30μm〜200μmの範囲であり、かつ、前記研磨層の表面には開孔径1〜3mmの範囲の大開孔が50個/100cm〜200個/100cmの範囲で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記研磨層は、A硬度が60度〜100度の範囲、かさ密度が0.45g/cm〜0.55g/cmの範囲であることを特徴とする請求項7に記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記セルは、水、ならびに、前記イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体により形成されたことを特徴とする請求項7に記載の研磨パッド。
【請求項10】
請求項1に記載の研磨パッドの製造方法であって、
イソシアネート基含有化合物と、ポリアミン化合物と、前記研磨層の内部にセルを形成するための発泡成分とを準備する準備ステップと、
前記準備ステップで準備したイソシアネート基含有化合物、ポリアミン化合物および発泡成分を混合した混合液からポリウレタン体を形成する形成ステップと、
を含み、
前記準備ステップにおいて、ポリイソシアネート化合物および高分子ポリオール化合物を反応させて生成した反応中間体を低分子ポリオール化合物で鎖伸長反応させ、前記イソシアネート基含有化合物を準備することを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記準備ステップで準備する発泡成分は、水、ならびに、前記イソシアネート基含有化合物およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−82719(P2010−82719A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252204(P2008−252204)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【Fターム(参考)】