説明

研磨パッド厚測定方法、および研磨パッド厚測定装置

【課題】研磨パッド厚測定方法及び研磨パッド厚測定装置を提供する。
【解決手段】定盤12上面に貼付された研磨パッド14の厚みを測定する研磨パッド厚測定方法であって、前記研磨パッド14面の鉛直線上の基準位置から前記研磨パッド14上面までの第1距離と前記定盤12上面までの第2距離を測定し、前記第1距離と前記第2距離との差分から前記研磨パッド14の厚みを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ研磨装置に関し、特にウェハ研磨装置の研磨パッド厚の測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICの微細加工が進んでおり、多層にわたってICパターンを形成することが行われている。しかし、パターンを形成した層の表面にはある程度の凹凸が生じるのが避けられない。従来は、そのまま次の層のパターンを形成していたが、層数が増加すると表面の凹凸が著しくなり、良好なパターンを形成するのが困難になっていた。また、パターンの微細化により露光装置の焦点深度が浅くなり、表面の少しの凹凸により良好なパターンを転写することが困難となっていた。そこで、近年はパターンを形成した後、層の表面を研磨して平坦化し、その後、次の層のパターンを形成するようにしている。このようにICパターンを形成する工程の途中でウェハを研磨して平坦化するのに化学的機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によるウェハ研磨装置(CMP装置)が使用される。
【0003】
CMP装置は、一般にウェハを研磨する研磨定盤とウェハを保持する研磨ヘッドとで構成されており、研磨ヘッドで保持したウェハを研磨定盤に押し付けて、そのウェハと研磨定盤との間に研磨剤(スラリー)を供給しながら、両者を回転させることによりウェハを研磨する。
【0004】
ここで、このウェハを研磨する研磨定盤の表面には研磨パッドが貼付されており、ウェハはこの研磨パッドに押し付けられて研磨される。しかし、この研磨パッドは表面の目詰まりにより研磨量が減少するため、CMP装置ではウェハを1枚研磨するごとに、あるいはウェハ研磨中に研磨パッドをドレッシングしている。
【0005】
ところで、研磨パッドはドレッシングすることにより少しずつ表面が研磨されるため、表面形状が変形し、次第に平坦度が悪くなる。このような研磨パッドを用いてウェハを研磨すると、ウェハを高精度に平坦化することができないという欠点がある。
【0006】
そこで、従来はドレッシング実行時にオペレータが真直度測定器によって研磨パッドの表面の真直度を測定し、その測定結果から研磨量を調べてドレッシングの調整を行っていた。あるいは、溝付きの研磨パッドの場合は、オペレータが溝の深さを測定し、その測定結果から研磨量を調べてドレッシングの調整を行っていた。
【0007】
しかしながら、従来のようにオペレータが手作業で研磨パッドの真直度を測定する方法では、測定作業に多大な時間を要し、効率が悪いという欠点がある。また、溝の深さを測定する方法の場合は正確な測定はできず、研磨パッドを平坦にドレッシングするのが困難という欠点がある。
【0008】
このような問題を解決するため、従来技術として接触式・非接触式のパッド形状測定装置を用い、測定された研磨パッド表面のプロファイルに基づいて研磨条件、ドレッシング条件を求める技術が開示されている(特許文献1乃至3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−249009号公報
【特許文献2】特開2002−270556号公報
【特許文献3】特開2002−337046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、研磨パッドのドレッシングが進行すると、研磨パッドが薄くなり研磨パッド表面が定盤に接近した場合、その部分がウェハ研磨に悪影響を与える虞があり、定盤がパッド表面に露出した場合には研磨するウェハにダメージを与えることになる。一方、研磨パッドの下地となる定盤も長時間使用することにより研磨時に発生する熱等により変形する。したがって、従来技術のように研磨パッドの表面形状を測定するのみでは、測定結果が研磨パッドに起因するものか定盤に起因するものかを判別することはできず、さらに定盤が研磨パッド面から露出することを予見することも困難である。これを判別・予見するためには研磨パッドを定盤から引き剥がして研磨パッドの厚みや定盤の表面形状を測定する必要があるが、一度引き剥がした研磨パッドを再貼付して使用することはできないといった問題がある。
【0011】
よって本発明は上記問題点に着目し、非破壊で研磨パッドの厚みや定盤の表面形状を測定可能な研磨パッド厚測定方法、および研磨パッド厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る研磨パッド厚測定方法は、第1には、盤上面に貼付された研磨パッドの厚みを測定する研磨パッド厚測定方法であって、前記研磨パッド面の鉛直線上の基準位置から前記研磨パッド上面までの第1距離と前記定盤上面までの第2距離を測定し、前記第1距離と前記第2距離との差分から前記研磨パッドの厚みを算出することを特徴としている。
【0013】
第2には、前記第2距離の測定は、渦電流式の変位センサにより行うことを特徴としている。
第3には、前記第1距離及び前記第2距離の測定は、測距点を前記研磨パッド上で一方向に沿って複数設けて行うことを特徴としている。
【0014】
第4には、前記第1距離及び前記第2距離の測定は、測距点を前記研磨パッド上の一方向に沿って水平に移動させながら行うことを特徴としている。
第5には、前記第2距離の測定は、前記第2距離を測定する変位センサを前記研磨パッド上面に接触させつつ、前記研磨パッド上で一方向に沿って移動させながら行うことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨パッド厚測定方法。
【0015】
一方、本発明に係る研磨パッド厚測定装置は、第1には、定盤上面に貼付された研磨パッドの厚みを測定する研磨パッド厚測定装置であって、前記研磨パッド面の鉛直線上の基準位置から前記研磨パッド上面までの第1距離を測定する測長センサと、前記基準位置から前記定盤上面までの第2距離を測定する変位センサと、前記測長センサ及び前記変位センサに接続され、前記測長センサ及び前記変位センサを作動させる信号を出力する制御部と、前記測長センサ及び前記変位センサに接続され、前記第1距離と前記第2距離との差分から前記研磨パッドの厚みを算出する演算部と、を有することを特徴としている。
【0016】
第2には、前記変位センサは、渦電流式の変位センサであることを特徴としている。
第3には、前記測長センサ及び前記変位センサは、前記研磨パッド上で一方向に沿って複数設けたことを特徴としている。
【0017】
第4には、前記測長センサ及び前記変位センサは、長手方向に一定の高さを有し、前記研磨パッド上で水平に向けられたレールにスライド可能な状態で取り付けるとともに、前記制御部は、前記測長センサ及び前記変位センサをスライドさせる信号を出力するとともに、前記測長センサ及び前記変位センサを作動させる信号を出力することを特徴としている。
第5には、前記変位センサは、前記研磨パッド上面に接触させつつ、前記第2距離を測定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る、研磨パッド厚測定方法、及び測定装置によれば、第1には、基準位置から定盤上に貼付された研磨パッド上面までの第1距離と、基準位置から定盤上面までの第2距離との差分により研磨パッドの厚みを算出するため、研磨パッドの厚みを非破壊で測定可能で、測定結果を用いてドレッシングを有効に行うことができる。
【0019】
第2には、第2距離の測定は渦電流式の変位センサを用いることで、絶縁体である研磨パッドの影響を受けることなく、金属である定盤上面との距離を確実に測定することができる。
【0020】
第3には、測長センサ及び変位センサは、前記研磨パッド上で一方向に沿って複数設けて測距点を複数設けることにより、複数点の測定が容易に行え、短時間での測定が可能となる。そして測距点の間隔を短くすることにより、前記一方向における研磨パッドの厚みの分布のみならず、研磨パッド、及び定盤の表面形状を詳細に把握することができる。
【0021】
第4には、測長センサ及び変位センサを前記研磨パッド上で一方向に沿ってスキャンしながら第1距離及び第2距離を測定することにより、一組の測長センサ及び前記変位センサで研磨パッドの厚みの分布、研磨パッド及び定盤の表面形状を詳細に把握することができるため、コストを抑えることができる。
第5には、変位センサを研磨パッド面に接触させながら研磨パッド面をスキャンするので、測長センサを用いずとも研磨パッドの厚みを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る研磨パッド厚測定装置の模式図である。
【図2】第1実施形態に係る制御ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る研磨加工、研磨パッド形状測定、及びドレッシングのフロー図である。
【図4】第2実施形態に係る研磨パッド厚測定装置の模式図である。
【図5】第2実施形態に係る制御ブロック図である。
【図6】第3実施形態に係る研磨パッド厚測定装置の模式図である。
【図7】第3実施形態に係る制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0024】
図1に、第1実施形態に係る研磨パッド厚測定方法、及び研磨パッド厚測定装置を示す。また図2においては研磨パッド厚測定装置の制御ブロック図を示す。第1実施形態に係る研磨パッド厚測定方法は、定盤12上面に貼付された研磨パッド14の厚みを測定する方法であって、前記研磨パッド14面の鉛直線上の基準位置から前記研磨パッド14上面までの第1距離と前記定盤12上面までの第2距離を測定し、前記第1距離及び前記第2距離との差分から前記研磨パッド14の厚みを算出しており、第2距離の測定は、渦電流式の変位センサ32により行い、第1距離及び前記第2距離の測定は、測距点を前記研磨パッド14上で一方向に沿って複数設けて行うことを特徴としている。
【0025】
よって上記方法を具現化する第1実施形態に係る研磨パッド厚測定装置10は、支持台18、センサユニット28(測長センサ30、変位センサ32)、制御部34、演算部36等を有する。また研磨パッド厚測定装置10のゼロ補正を行う冶具として石定盤40、校正SUS板42を用いる。
【0026】
図1(a)に示すように、研磨パッド厚測定装置10は、半導体研磨装置を構成する金属製の定盤12上に接着剤等で貼付された樹脂等で形成された絶縁体の研磨パッド14の厚みを測定するものであり、半導体研磨装置(不図示)から定盤12を取り外して研磨パッド厚測定装置10を搭載する移動測定台16に載置することにより行う。
【0027】
支持台18は、長手方向に少なくとも定盤12及び研磨パッド14の直径程度の寸法を有する剛体であり、所定の高さを有する一対の脚部20と前記脚部20を連結するレール部22を有する支持台18は研磨パッド14上に載置されるものであり、脚部20の下端が研磨パッド14上に当接する。レール部22はレール部22の長手方向が水平となるように、脚部20に取り付けられている。そしてレール部22の長手方向の所定の間隔ごとに測長センサ30及び変位センサ32がn個のセンサユニット28として一体となり、ともにセンサヘッド(不図示)を真下に向けた状態で取り付けられている。
【0028】
PC24は、研磨パッド厚測定装置10全体を動作させるハードウェアであり、制御装置26、測長センサ30及び変位センサ32に接続されている。PC24は、測長センサ30及び変位センサ32を作動させる信号を制御装置26に出力するとともに、各センサユニット28からシリアル、もしくはパラレルで第1距離を示す信号、及び第2距離を示す信号が入力される。
【0029】
制御部34は、PC24にインストールされたアプリケーションであって、PCのキー操作に連動して、測長センサ30及び変位センサ32を作動させる信号を制御装置26に出力する。
【0030】
制御装置26は、PC24、センサユニット28(測長センサ30、変位センサ32)に接続されている。制御装置26は、PC24側から測長センサ30及び変位センサ32を作動させる信号が入力されると、測長センサ30及び変位センサ32を作動させる電力を、測長センサ30及び変位センサ32に供給する。
【0031】
測長センサ30は、制御装置26及びPC24に接続され、制御装置26から電力が供給されると、測長センサ30の測距点から測定した第1距離を示す信号をPC24側に出力する。測長センサ30は、例えば、レーザ光を研磨パッド14面に照射し、その反射光を受光するまでの時間を用いて測長センサ30の測距点と研磨パッド14上面までの第1距離を測定する。
【0032】
変位センサ32は、制御装置26及びPC24に接続され、制御装置26から電力が供給されると、変位センサ32の測距点から測定した第2距離に係る信号をPC24側に出力する。変位センサ32は、例えば、渦電流式の変位センサを用いる。変位センサ32はセンサヘッド(不図示)内部のコイル(不図示)に高周波電流を流して、高周波磁界を金属である定盤12に向けて照射させて定盤12内に渦電流を発生させる。そして、この渦電流によりコイル(不図示)のインピーダンスが変化する。この変化の度合いは、コイル(不図示)と定盤12との距離により変化するため、変位センサ32内で、この変化の度合いからコイル(測距点)と定盤12上面までの第2距離を演算する。もちろん後述の演算部36で第2距離を演算する構成を有してもよい。
【0033】
演算部36は、PC24にインストールされたアプリケーションであって、各センサユニット28を構成する測長センサ30を用いて得られた基準位置を原点とする第1距離と、変位センサ32を用いて得られた基準位置を原点とする第2距離との差分から研磨パッド14の厚みを算出し、その結果をPC24のディスプレイ38上に表示するものである。また演算部36は、各センサユニット28に番号付けを行って各センサユニット28を識別するとともに、PCのキー操作等により複数配列されたセンサユニット28(測長センサ30、変位センサ32)それぞれのレール部22の長手方向での(研磨パッド14上の)測定位置が入力される。さらに、各センサユニット28から出力される第1距離及び第2距離を示す信号に同一の番号を付けて、各センサユニット28と、各センサユニット28から出力される第1距離及び第2距離の対応づけを行っている。
【0034】
よって演算部36はPC24のディスプレイ38上に、例えばセンサユニット28の位置(研磨パッド14の測定位置)を横軸、縦軸に研磨パッド14の厚みとしたグラフを表示することが可能で、これにより作業者は研磨パッド14の厚みの分布を視覚的に認識することができる。さらに演算部36は第1距離及び第2距離も同一座標上に表示させるように構成することにより、作業者は研磨パッド14、及び定盤12の表面プロファイルを視覚的に認識することができる。なお、センサユニット28の番号、番号に対応した研磨パッド14の測定位置、補正後の第1距離、補正後の第2距離、研磨パッド14の厚みは、それぞれ演算部36によりPC24の記憶領域に測定データとして格納され、必要に応じて演算部36は測定データを読み出すことができる。
【0035】
石定盤40は、鏡面研磨が施され所定の平坦度を有する剛体である。図1(b)に示すように、この石定盤40上に研磨パッド厚測定装置10を載置して全ての測長センサ30についてそれぞれ第1距離の補正量を測定することができる。
【0036】
校正SUS板42は、その表面が電解研磨され所定の平坦度を有するものであり、使用時は石定盤40上に載置される。図1(c)に示すように、この校正SUS板42上に研磨パッド厚測定装置10を載置して全ての変位センサ42についてそれぞれ第2距離の補正量を測定することができる。
【0037】
石定盤40表面及び校正SUS板42表面はそれぞれ第1距離、第2距離を測定する基準位置(基準線、基準面)となるものである。そして測長センサ30の測距点から石定盤40までの距離が石定盤40を測定対象とする第1距離の補正量となり、変位センサ32の測距点から校正SUS板42までの距離が校正SUS板42を測定対象とする第2距離の補正量となる。なお基準位置を石定盤40及び校正SUS板42上面より高い位置または低い位置となるように構成してもよいが、石定盤40及び校正SUS板42の法線上(鉛直線上)にあるものとし、研磨パッド厚測定装置10を研磨パッド14上に載置した場合は研磨パッド14面の法線上(鉛直線上)にあるものとする。
【0038】
制御部34は、測長センサ30のみを作動させる第1モード、変位センサ32のみを作動させる第2モード、両者を作動させる第3モードを有し、キー操作等によりこれらを選択可能となっているものとする。第1モードは研磨パッド厚測定装置10を石定盤40上に載置して第1距離の補正量を算出する場合に用い、第2モードは、石定盤40上に校正SUS板42を載置し、その上に研磨パッド厚測定装置10を載置して第2距離の補正量を算出する場合に用い、第3モードは研磨パッド14の厚み、研磨パッド12及び定盤12の表面形状を測定する場合に用いる。
【0039】
これに連動して演算部36は、第1モードが選択された場合は、石定盤40を測定対象とする第1距離の補正量をPC24の記憶領域に格納する。第2モードが選択されたときは、校正SUS板42を測定対象とする第2距離の補正量をPC24の記憶領域に格納する。第3モードが選択された場合は、研磨パッド14を測定対象とする第1距離及び定盤12を測定対象とする第2距離に対して、格納されたそれぞれの補正量をセンサユニット28ごとに対応して読み出して補正(ゼロ補正)したのち、研磨パッド14の厚みを算出することができるものとする。
【0040】
図3に示すフロー図のように、半導体研磨においては、研磨加工後のウェハの形状を評価する。評価する指標としては、ウェハの被研磨面の裏面を基準面として被研磨面の平坦度を評価するGBIR(Grobal Back−side Ideal Range)、被研磨面において最も平坦度を小さく見積もることができる仮想上の被研磨面(ベストフィット面)を基準面として被研磨面の平坦度を評価するGFIR(Global Front Least square Range)等が挙げられる。測定結果が許容範囲に含まれる場合は、研磨後通常のドレッシングを研磨パッドに行うが、許容範囲に含まれない場合は、本実施形態を用いて研磨パッド、及び定盤を測定し、その結果を用いてドレッシングにおいて研磨パッドの同心方向でドレッシング量の重み付けを行い、研磨パッドが狙いの形状になったことを確認し、ウェハの研磨を実施する。
【0041】
上記構成による研磨パッド厚測定装置10の動作について説明する(図2参照)。研磨パッド厚測定装置10を構成する複数の測長センサ30、及び変位センサ32の高さ、すなわち測距点の高さにはばらつきがあるため、研磨パッド厚を測定する前に、これらから出力される第1距離及び第2距離を数値的に補正するための補正量を算出する。
【0042】
まず、上述のように研磨パッド厚測定装置10を石定盤40上に載置し、キー操作により制御部34は制御装置26を介してk番目(k=1〜n)のセンサユニット28に係る測長センサ30を作動させ(第1モードA)、測長センサ30は石定盤40を測定対象とする第1距離の補正量を測定して第1距離の補正量に係る信号を演算部36に出力する(第1モードB)。そして演算部36は第1距離の補正量をPC24の記憶領域に格納する(第1モードC)。
【0043】
次に、一端研磨パッド厚測定装置10を石定盤42から取り外し、石定盤40上に校正SUS板42を載置し、校正SUS板42上に研磨パッド厚測定装置10を載置する。そしてキー操作により制御部34は制御装置26を介してk番目(k=1〜n)のセンサユニット28に係る変位センサ32を作動させ(第2モードA)、変位センサ32は校正SUS板42を測定対象とする第2距離の補正量を測定して第2距離の補正量に係る信号を演算部36に出力する(第2モードB)。演算部36は第2距離の補正量をPC24の記憶領域に格納する(第2モードC)。
【0044】
次に研磨パッド厚測定装置10を用いて研磨パッド14及び定盤12の測定を行う。まず、研磨パッド14が貼付された定盤12を半導体研磨装置(不図示)から取り外して移動測定台16に載置し、研磨パッド14上に研磨パッド厚測定装置10を載置する。そして制御部34はキー操作等により制御装置26を介してk番目(k=1〜n)のセンサユニット28に係る測長センサ30及び変位センサ32を作動させ(第3モードA)、測長センサ30は第1距離に係る信号を演算部36に出力し、変位センサ32は第2距離を係る信号を演算部36に出力する(第3モードB)。
【0045】
演算部36は、PC24の記憶領域から、第1距離の補正量、及び第2距離の補正量を読み出し(第3モードC)、n個のセンサユニット28に係る第1距離(第2距離)から第1距離(第2距離)の補正量で差し引くことにより補正後の(ゼロ補正された)第1距離(第2距離)を算出し(第3モードD)、基準位置を原点とする補正後の第1距離と補正後の第2距離との差分から研磨パッド14の厚みをn個算出して研磨パッド14の厚みの分布とし(第3モードD)、補正後の第1距離(研磨パッド14の表面形状)及び補正後の第2距離(定盤12の表面形状)とともにPC24のディスプレイ38上に表示する(第3モードE)。
【0046】
これにより作業者は研磨パッド14、及び定盤12の表面プロファイル、そして研磨パッド14の厚みの分布を視覚的に認識することができ、この結果を用いて研磨パッド14の同心方向についてドレッシングの重み付けを行い、研磨パッド14及びこれに研磨されるウェハの平坦性を復活させることができる。さらに研磨パッド14の厚みの減少度合いにより研磨パッド14の寿命も予測することができる。
【0047】
第2実施形態に係る研磨パッド厚測定方法、及び研磨パッド厚測定装置50を図4に、その制御ブロック図を図5に示す。第2実施形態に係る研磨パッド厚測定方法は、測距点を前記研磨パッド上の一方向に沿って水平に移動させながら行うことを特徴としている。
【0048】
よってこれを具現化する第2実施形態に係る研磨パッド厚測定装置50は、一組のセンサユニット52(測長センサ54、変位センサ56)がレール部58の長手方向にスライドし、所定位置ごとに第1距離及び第2距離を測定する構成を有している。よって、センサユニット52にはレール部58上をスライド可能なステッピングモータ等のアクチュエータ(不図示)が取り付けられ、アクチュエータは制御装置60により所定量駆動させることができる。
【0049】
制御部62は、キー操作等によりセンサユニット52の初期位置及び移動幅が入力されると、センサユニット52を所定の移動幅で移動させる信号を制御装置60に時間的に一定間隔に出力するとともに、所定の移動幅で移動したのちに測長センサ54、及び変位センサ56を作動させる信号を出力できるものとする。制御装置60は、センサユニット52を所定の移動幅で移動させる信号が入力されると、アクチュエータ(不図示)を所定量駆動させる電力を出力するとともに、アクチュエータ(不図示)の駆動後、測長センサ54、及び変位センサ56を作動させる電力を出力するものとする。よってセンサユニット52はレール部58上の可動範囲において等間隔に第1距離及び第2距離を測定することができる。
【0050】
また制御部62は、センサユニット52を所定の移動幅で遂次移動させつつも測長センサ54のみを作動させる第1モード、変位センサ56のみを作動させる第2モード、両者を作動させる第3モードを有し、キー操作等により選択可能となっているものとする。第1モードは研磨パッド厚測定装置50を石定盤40上に載置して第1距離の補正量を算出する場合に用い、第2モードは、石定盤40上に校正SUS板42を載置し、その上に研磨パッド厚測定装置50を載置して第2距離の補正量を算出する場合に用い、第3モードは研磨パッド14、及び定盤12を測定する場合に用い、これらのモードに後述の演算部64が対応して動作する。
【0051】
演算部64は、センサユニット52の初期位置及び移動幅がキー操作により入力されると、制御部62がセンサユニット52を移動させる信号を出力するたびにセンサユニット52の移動回数をカウントするとともに、カウント値に対応するセンサユニット52の測定位置を演算することができる。
【0052】
第1モードが選択されると、制御部62は、センサユニット52を所定量移動させる信号を出力するとともに移動後に測長センサ54を作動させる信号を出力し(第1モードA)、測長センサ54は石定盤40を測定対象とする第1距離の補正量に係る信号を演算部64に出力する(第1モードB)。演算部64は、センサユニットの移動回数をカウントし(第1モードA)、カウント値に対応させた第1距離の補正量をPC24の記憶領域に格納する(第1モードC)。
【0053】
第2モードが選択されると、制御部62はセンサユニット52を所定量移動させる信号を出力するとともに移動後に変位センサ56を作動させる信号を出力し(第2モードA)、変位センサ56は校正SUS板42を測定対象とする第2距離の補正量に係る信号を演算部64に出力する(第2モードB)。演算部64は、センサユニット52の移動回数をカウントし(第2モードA)、カウント値に対応させた第2距離の補正量をPC24の記憶領域に格納する(第2モードC)。
【0054】
第3モードが選択されると、制御部62はセンサユニット52を所定量移動させる信号を出力するとともに移動後に測長センサ54及び変位センサ56を作動させる信号を出力し(第3モードA)、測長センサ54は研磨パッド14を測定対象とする第1距離に係る信号を演算部64に出力し(第3モードB)、変位センサ56は定盤12を測定対象とする第2距離に係る信号を演算部64に出力する(第3モードB)。演算部64は、センサユニット52の移動回数をカウントし(第3モードA)、PC24の記憶領域に格納されたカウント値に対応した第1距離及び第2距離の補正量を読み出し(第3モードC)、第1距離(第2距離)から第1距離(第2距離)の補正量を差し引くことにより補正後の(ゼロ補正された)第1距離(第2距離)を演算し(第3モードD)、補正後の第1距離及び補正後の第2距離との差分から研磨パッド14の厚みを演算し(第3モードD)、補正後の第1距離(研磨パッド14の表面形状)及び補正後の第2距離(定盤12の表面形状)とともにPC24のディスプレイ38上に表示する(第3モードE)。
【0055】
よって制御部62及び演算部64において上述の処理を全てのカウント値について行うことによって、作業者は研磨パッド14、及び定盤14の表面プロファイル、そして研磨パッド14の厚みの分布を視覚的に認識することができる。なお移動量を短くすることにより各プロファイル及び厚みの分布の分解能は向上する。なお、カウント値、カウント値に対応する研磨パッド14の測定位置、補正後の第1距離、補正後の第2距離、研磨パッド14の厚みは、それぞれ演算部64によりPC24の記憶領域に測定データとして格納され、必要に応じて演算部64は測定データを読み出すことができる。
【0056】
第3実施形態に係る研磨パッド厚測定方法、研磨パッド厚測定装置70を図6に、その制御ブロック図を図7に示す。第3実施形態に係る研磨パッド厚測定方法は、変位センサを、前記研磨パッド上面に接触させつつ、前記第2距離を測定することを特徴としている。よってこれを具現化する研磨パッド厚測定装置70は、基本的には第2実施形態と類似するが、変位センサ72を研磨パッド14面に接触させた状態で第2距離を測定するものである。実際には変位センサ72を構成する部材の下端に車輪74を設け、所定の高さ位置に変位センサ72のセンサヘッド(不図示)が位置するように構成する。これにより、センサヘッド(不図示)と研磨パッド14との距離は常に一定となる。
【0057】
制御部76は、キー操作等により変位センサ72の初期位置及び移動幅が入力されると、変位センサ72を所定の移動幅で移動させる信号を制御装置78に所定の時間間隔で出力するとともに、所定の移動幅で移動したのちに変位センサ72を作動させる信号を出力できるものとする。制御装置78は、変位センサ72を所定の移動幅で移動させる信号が入力されると、アクチュエータ(不図示)を所定量駆動させる電力を出力するとともに、アクチュエータ(不図示)の駆動後、変位センサ72を作動させる電力を出力するものとする。
【0058】
演算部80は、制御部76が変位センサ72を移動させる信号を出力するたびに変位センサ72の移動回数をカウントするとともに、カウント値に対応する測定位置を演算することができる。そして演算部80は第1モードと第2モードとを有し、キー操作により選択することができる。
【0059】
第1モードが選択されると、制御部78は、変位センサ72を所定量移動させる信号を出力するとともに移動後に変位センサ72を作動させる信号を出力し(第1モードA)、変位センサ72は石定盤40を測定対象とする第2距離の補正量に係る信号を演算部80に出力する(第1モードB)。演算部80は、変位センサ72の移動回数をカウントし(第1モードA)、カウント値に対応させた第2距離の補正量をPC24の記憶領域に格納する(第1モードC)。
【0060】
第2モードが選択されると、制御部78は変位センサ72を所定量移動させる信号を出力するとともに移動後に変位センサ72を作動させる信号を出力し(第2モードA)、変位センサ72は定盤12を測定対象とする第2距離に係る信号を演算部80に出力する(第2モードB)。演算部80は、変位センサ72の移動回数をカウントし(第2モードA)、カウント値に対応した第2距離の補正量を読み出し(第2モードC)、第2距離から第2距離の補正量を差し引くことにより補正後の(ゼロ補正された)第2距離を研磨パッド12の厚みとして演算し(第2モードD)、PC24のディスプレイ38上に表示する(第2モードE)。なお、カウント値、カウント値に対応する研磨パッド14の測定位置、補正後の第2距離、研磨パッド14の厚みは、それぞれPC24の記憶領域に測定データとして格納され、必要に応じて演算部80は測定データを読み出すことができる。
【0061】
なお、本実施形態における第2距離の補正量は第1実施形態及び第2実施形態に係る第1距離と同じであり、本実施形態においても第1距離と第2距離との差分により研磨パッド14の厚みを測定する点においては第1実施形態及び第2実施形態と共通の技術的思想を有する。本実施形態においては研磨パッド14及び定盤12の表面プロファイルを測定することはできないが、第2実施形態の場合よりも簡単に研磨パッド14の厚みを測定することができる。また測長センサを必要としないのも本実施形態の特徴である。
【0062】
第1実施形態及び第2実施形態において、測長センサ30、54を研磨パッドに接触させない非接触式としているため、研磨パッド14に溝が形成されている場合であっても研磨パッド14の表面プロファイルを測定可能である。一方、測長センサ30、54は研磨パッド14に接触させる接触式とすることができる。接触式の場合は例えば測長センサの下端が研磨パッドに接触し、測長センサが研磨パッドの高さ方向の変化に対応して上下方向に移動し、その移動量を検出するような構成が挙げられる。このような構成とすることにより研磨パッド14表面に水分がある場合は、非接触式に比べて高精度な測定が可能である。ただし研磨パッドに溝が形成されている場合は測定が困難となる。なお、第3実施形態において研磨パッド14に溝が形成されている場合は研磨パッド14の厚みを測定することが困難となる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る、研磨パッド厚測定方法、及び測定装置10、50、70によれば、研磨パッド14の厚みを基準位置から定盤12上に貼付された研磨パッド14上面までの第1距離と、基準位置から定盤12上面までの第2距離との差分により算出するため、研磨パッド14の厚みを非破壊で測定可能で、測定結果を用いてドレッシングを有効に行うことができる。そして、第2距離の測定は渦電流式の変位センサ32、56、72を用いることで、絶縁体である研磨パッド14の影響を受けることなく、金属である定盤14上面との距離を確実に測定することができる。
【0064】
第1実施形態に示すように、測長センサ30及び変位センサ32は、研磨パッド14上で一方向に沿って複数設けて測距点を複数設けることにより、複数点の測定が容易に行え、短時間での測定が可能となる。そして測距点の間隔を短くすることにより、一方向における研磨パッド14の厚みの分布のみならず、研磨パッド14、及び定盤12の表面プロファイルを詳細に把握することができる。
【0065】
第2実施形態に示すように、測長センサ54及び変位センサ56を研磨パッド14上で一方向に沿ってスキャンしながら第1距離及び第2距離を測定することにより、一組の測長センサ54及び変位センサで研磨パッド14の厚みの分布、研磨パッド14及び定盤14の表面プロファイルを詳細に把握することができるため、コストを抑えることができる。
【0066】
第3実施形態に示すように、変位センサ72を研磨パッド14面に接触させながら研磨パッド14面をスキャンするので、測長センサを用いずとも研磨パッドの厚みを測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
非破壊で研磨パッドの厚みを測定可能であるとともに、研磨パッド及び定盤の表面プロファイルを測定可能な研磨パッド厚測定方法及び研磨パッド厚測定装置として利用できる。
【符号の説明】
【0068】
10………研磨パッド厚測定装置、12………定盤、14………研磨パッド、16………移動測定台、18………支持台、20………脚部、22………レール部、24………PC、26………制御装置、28………センサユニット、30………測長センサ、32………変位センサ、34………制御部、36………演算部、38………ディスプレイ、40………石定盤、42………校正SUS板、50………研磨パッド厚測定装置、52………センサユニット、54………測長センサ、56………変位センサ、58………レール部、60………制御装置、62………制御部、64………演算部、70………研磨パッド厚測定装置、72………変位センサ、74………車輪、76………制御部、78………制御装置、80………演算部、82………レール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤上面に貼付された研磨パッドの厚みを測定する研磨パッド厚測定方法であって、
前記研磨パッド面の鉛直線上の基準位置から前記研磨パッド上面までの第1距離と前記定盤上面までの第2距離を測定し、前記第1距離と前記第2距離との差分から前記研磨パッドの厚みを算出することを特徴とする研磨パッド厚測定方法。
【請求項2】
前記第2距離の測定は、渦電流式の変位センサにより行うことを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド厚測定方法。
【請求項3】
前記第1距離及び前記第2距離の測定は、測距点を前記研磨パッド上で一方向に沿って複数設けて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨パッド厚測定方法。
【請求項4】
前記第1距離及び前記第2距離の測定は、測距点を前記研磨パッド上の一方向に沿って水平に移動させながら行うことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨パッド厚測定方法。
【請求項5】
前記第2距離の測定は、前記第2距離を測定する変位センサを前記研磨パッド上面に接触させつつ、前記研磨パッド上で一方向に沿って移動させながら行うことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨パッド厚測定方法。
【請求項6】
定盤上面に貼付された研磨パッドの厚みを測定する研磨パッド厚測定装置であって、
前記研磨パッド面の鉛直線上の基準位置から前記研磨パッド上面までの第1距離を測定する測長センサと、
前記基準位置から前記定盤上面までの第2距離を測定する変位センサと、
前記測長センサ及び前記変位センサに接続され、前記測長センサ及び前記変位センサを作動させる信号を出力する制御部と、
前記測長センサ及び前記変位センサに接続され、前記第1距離と前記第2距離との差分から前記研磨パッドの厚みを算出する演算部と、を有することを特徴とする研磨パッド厚測定装置。
【請求項7】
前記変位センサは、渦電流式の変位センサであることを特徴とする請求項6に記載の研磨パッド厚測定装置。
【請求項8】
前記測長センサ及び前記変位センサは、前記研磨パッド上で一方向に沿って複数設けたことを特徴とする請求項6または7に記載の研磨パッド厚測定方法。
【請求項9】
前記測長センサ及び前記変位センサは、長手方向に一定の高さを有し、前記研磨パッド上で水平に向けられたレールにスライド可能な状態で取り付けるとともに、
前記制御部は、前記測長センサ及び前記変位センサをスライドさせる信号を出力するとともに、前記測長センサ及び前記変位センサを作動させる信号を出力することを特徴とする請求項6または7に記載の研磨パッド厚測定装置。
【請求項10】
前記変位センサは、前記研磨パッド上面に接触させつつ、前記第2距離を測定することを特徴とする請求項6乃至9に記載の研磨パッド厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173052(P2010−173052A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21594(P2009−21594)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】