説明

研磨材料

【課題】環境的に容認できる形で分解できて均一な規格で大量生産できウェブを望ましくない程度まで圧縮せずに研削鉱物をウェブ内に取り込むことを可能にした天然繊維を含む研磨材料を提供する。
【解決手段】研磨材料は、予備結合樹脂によって相互接触点で互いに結合された交絡繊維の不織ウェブを含み研削粒子がメイクコート樹脂により結合ウェブの繊維に接着され、繊維の過半が天然繊維を含み結合ウェブが50kg/mの最大密度を有する。研磨材料の製造方法は、可融性バインダー粒子を含む乾燥粒子材料と接触される天然繊維の不織ウェブを形成する工程、バインダー粒子が液体バインダーを形成させる条件にウェブをさらし液体バインダーを凝固させてウェブの繊維間に結合を形成して予備結合ウェブを提供する工程、及び予備結合ウェブに研削粒子を施しメイクコート樹脂によって研削粒子を予備結合ウェブの繊維に結合させて研磨材料を提供する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より特別には家庭での使用に適しているが、それに限られない不織繊維研磨(scouring)材料に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭で使用するための研磨材料は、不織ウェブ(例えば、米国特許第2,958,593号明細書に記載される低密度の不織研削(abrasive)ウェブ)を含む多くの形態で製造される。製造後、研磨材料のウェブは、手で使用するのに適切なサイズの個々の断片に切断されてもよい(例えば、米国特許第2,958,593号明細書に記載される個々の矩形パッド)。あるいは、必要とされる場合にウェブを便利なサイズの断片に分割することは、エンドユーザーに任されてもよい(例えば、国際公開第00/006341号パンフレットおよび米国特許第5,712,210号明細書に記載される)。
【0003】
例えば、米国特許第2,327,199号明細書、同第2,375,585号明細書および同第3,175,331号明細書に記載されるパッドなど、不織ウェブ材料を用いて形成された他の家庭用研磨パッドが知られている。より一般的な研削用途のための不織ハンドパッドも知られており、例えば、米国ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company of St.Paul,Minnesota,USA)から商標「スコッチブライト(Scotch−Brite)」で入手可能なハンドパッドが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
好ましい不織繊維研磨材料は、比較的高い空隙容量を有する低密度の開放性材料である。そのタイプの研磨材料は、有効なクリーニング作用を示す(クリーニングされている表面から除去された材料を空隙が保有するので)が、単に水または何か他のクリーニング液中ですすぐことによってそれ自体が容易にクリーニングされるので、再使用することができる。それにもかかわらず、家庭環境で使用される多くの研磨材料は、限られた再使用だけを目的としており、その後これらは廃棄される。このような製品は、台所の作業表面ならびに調理器具および食器をきれいにするために使用されることが多いので、衛生上の見地から、汚染される前にこれらを廃棄することは推奨されるはずである。しかしながら、消費者は環境問題についての関心がますます高くなっているので、リサイクルできるか、あるいは有害な副産物を生成することなく迅速に分解し得ることがわからない限り、使い捨ての製品の使用をますます嫌がるようになっている。このため、家庭でのクリーニング用の天然材料に基づく製品の使用に対する関心が高まっている。
【0005】
天然植物繊維だけから形成される研磨材料が知られており、例えば、ウリまたはヤシの葉の繊維部分から形成された伝統的な研磨材が含まれる。このような研磨材料は、環境的に容認できる形で分解できるが、伝統的な方法で製造される場合には、均一な規格で大量生産できないという欠点がある。さらに、天然植物繊維は弾力性をほとんどまたは全く有さない(不織研削/研磨材料を製造するために使用される捲縮合成繊維とは違って)ので、より均一な不織ウェブに加工されたとしても、繊維を破砕せずに、そしてその結果ウェブを望ましくない程度まで圧縮せずに、研削鉱物をウェブ内に取り込むことは困難である。その結果として、天然繊維から形成される家庭用研磨材料は、合成繊維から形成されるものよりも消費者にとってあまり魅力的でない傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予備結合樹脂によってその相互接触点において互いに結合された交絡繊維の三次元不織ウェブを含む研磨材料を提供し、重量による該繊維の過半は天然繊維を含み、結合ウェブは、50kg/m(好ましくは、30kg/m)の最大密度を有する。結合ウェブの繊維には、メイクコート樹脂によって複数の研削粒子が接着される。
【0007】
また本発明は、1)可融性バインダー粒子を含む乾燥粒子材料と接触される天然繊維の三次元不織ウェブを形成するステップと、2)バインダー粒子が流動可能な液体バインダーを形成するようにさせる条件にウェブをさらし、次に液体バインダーを凝固させてウェブの繊維間に結合を形成し、それによって予備結合ウェブを提供するステップと、3)予備結合ウェブに研削粒子を施し、少なくともメイクコート樹脂によって研削粒子を予備結合ウェブの繊維に結合させて、研磨材料を提供するステップと、を含む研磨材料の製造方法も提供する。
【0008】
ほんの一例として、本発明に従う研磨材料およびその製造方法は、添付図面を参照して、これから説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に従う研磨パッドの図である。
【図2】本発明に従う研磨パッドの構造を図式的に拡大して説明する。
【図3】図1の研磨材料の製造方法の略図である。
【図4】図3の方法の一部の変更を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、家庭環境において有効なクリーニング作用を提供することができ、そしてその有効寿命の最後に環境にやさしい方法で分解し得ることを分かって廃棄することができる研磨材料を提供するという問題に関する。
【0011】
本発明は、予備結合樹脂によってその相互接触点において互いに結合された交絡繊維の開放性で嵩高の三次元不織ウェブを含む研磨材料を提供し、重量による該繊維の過半は天然繊維を含む。結合ウェブの繊維には、メイクコート樹脂によって複数の研削粒子が接着される。
【0012】
「開放性(open)」および「嵩高(lofty)」という用語は、結合ウェブが比較的低密度であり、多くの比較的大きい相互に連通する空隙の網目を有し、これらの空隙はウェブにより占有される容積のうちのより多くの量(50%よりも多い、好ましくは実質的に50%よりも多い)を含むことを示す。本発明との関連では、これらの用語は、結合ウェブが50kg/m以下、好ましくは30kg/m以下の密度を有することを示す。好ましくは、結合ウェブは、5mmの最小厚さを有する。
【0013】
本発明に従う研磨材料は、それを主として構成する天然繊維が、伝統的に,低空隙容積および/または低研削作用を有する不織材料に関連しているという事実にもかかわらず、有効な研磨作用を提供可能であることが分かった。使用後、研磨材料は、繊維(材料の主要成分である)が環境的に容認できる方法で分解し得ることを分かって廃棄することができる。
【0014】
図面を参照すると、図1に示される略矩形の研磨パッド1は、手で使用するためのものであり、その相互接触点において互いに結合された交絡繊維3の三次元不織ウェブを含む(図2を参照)。結合ウェブは、好ましくは、5mmの最小厚さおよび50kg/m(より好ましくは、30kg/m)の最大密度を有する。
【0015】
パッド1の繊維3は、以下に説明されるように、予備結合樹脂によってその相互接触点5において互いに結合され、パッドはさらに、これも以下に説明されるように、メイクコート樹脂によって繊維に接着された研削粒子7を含有する。
【0016】
繊維3は、少なくとも80重量%の天然繊維、好ましくは、ココヤシ、サイザル麻および麻の繊維などの植物繊維を含む。使用することができるその他の天然繊維としては、綿、ジュート、アマ、および羊毛の繊維がある。合成繊維が存在する場合、これらは、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド(例えば、ヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロラクタムおよびアラミド)、ポリプロピレン、アクリル(アクリロニトリルのポリマーから形成される)、レーヨン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、および塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、ならびに炭素繊維およびガラス繊維を含む適切な材料から製造することができる。使用される繊維は、未使用繊維でも、衣類の裁断、カーペットの製造、繊維の製造、または布地の加工などから再生された廃棄繊維でもよい。
【0017】
繊維3がその相互接触点5において互いに結合される予備結合樹脂は、良好な強度および耐水性/耐熱性を有する研磨材料を提供するように選択される。バインダー材料は、フェノールホルムアルデヒド、ノボラックフェノール、特に、架橋剤(例えば、ヘキサメチレンテトラミン)が添加されたもの、フェノプラスト、およびアミノプラストなどのホルムアルデヒド含有樹脂と、不飽和ポリエステル樹脂と、ビニルエステル樹脂と、アルキド樹脂と、アリル樹脂と、フラン樹脂と、エポキシと、ポリウレタンと、ポリイミドとを含む、特定の熱硬化性樹脂の中から選択することができる。またバインダー樹脂は、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂と、ポリエステルおよびコポリエステル樹脂と、ポリ(塩化ビニル)および塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーなどのビニル樹脂と、ポリビニルブチラールと、酢酸セルロースと、アクリロニトリル−スチレンコポリマーなどのポリアクリル酸およびアクリル酸コポリマーを含むアクリル樹脂と、ポリアミド(例えば、ヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロラクタム)およびコ−ポリアミドとを含む、特定の熱可塑性樹脂の中から選択することもできる。好ましくは、予備結合樹脂5は、エポキシ、またはポリウレタン、もしくはコポリアミド樹脂である。
【0018】
上記の熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の混合物が使用されてもよい。
【0019】
研削粒子7は、クリーニングする表面の性質および所望される研削作用を考慮して、研磨パッドでの使用に適することが知られているどのタイプのものでもよい。適切な研削材料の中には、無機材料の粒子、例えば、セラミック酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウムおよび白色溶融酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム、ならびに炭化ケイ素、炭化タングステン、アルミナジルコニア、ダイアモンド、セリア、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガーネット、および上記の組み合わせが含まれる。米国特許第4,652,275号明細書および同第4,799,939号明細書に記載されるものなど、研削剤凝集体も本発明において使用され得ることが予想される。また、適切な研削粒子は、熱硬化性または熱可塑性ポリマー粒子などのより軟らかくて攻撃性の低い材料、ならびに例えば、砕いた木の実の殻などの砕いた天然品も含む。研削粒子に適切な高分子材料は、ポリアミド、ポリエステル、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル)酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレンおよびメラミン−ホルムアルデヒド縮合物を含む。研削粒子は、好ましくは、粒子が不織繊維ウェブ1の隙間に侵入するのを可能にするように十分小さい粒度を有するであろう。
【0020】
メイクコート樹脂は、研磨材料においてメイクコートとして使用するのに適することが知られている水性樹脂を含むどの樹脂でもよい。好ましいバインダーは、フェノール樹脂(より特別には、例えば、より耐摩耗性の研磨材料のため)およびラテックス樹脂(より特別には、例えば、スクラッチ性でない浴室のクリーニング用研磨材料のため)を含む。
【0021】
図1の研磨パッドを製造するための第1のプロセスは図3に示されており、これから説明される。このタイプのプロセスは、本出願と同一の日付の同時係属中の特許出願(GB出願第0309393.7号)でも説明されている。
【0022】
選択された繊維3がベール(bale)で提供される場合には、後者はまず開繊される。次に繊維はウェブ形成装置12に供給され、乾式、開放性の嵩高三次元不織ウェブ13に形成される。好ましいタイプの不織ウェブは、米国特許第2,958,593号明細書に記載されるようなエアレイドウェブであり、この場合、ウェブ形成装置12は、ニューヨーク州マセドンのランド・マシーン社(Rando Machine Co.,Macedon,N.Y.)から得られるような市販の「ランド−ウェバー(Rando−Webber)」装置でよい。繊維3の長さは、好ましくは、3〜30cmの範囲内である。ウェブ13は、好ましくは、5mmの最小厚さと、50kg/m(より好ましくは、30kg/m)の最大密度とを有するように形成される。
【0023】
不織ウェブ13は次に、粉体塗装ブース14内に送り込まれ、流動化ホッパー16から供給される粒子状の予備結合樹脂15と接触される。この段階で不織ウェブ13に施すべき任意選択の乾燥粒子添加剤(顔料粉体および流動助剤など)は、ホッパー16内で樹脂粒子15と混合することができる。不織ウェブ13は、接地された導電性の粗いメッシュのコンベヤ17上で、粉体塗装ブース14を通って搬送され、粒子状樹脂15は、粉体塗装用途での使用が知られているタイプのウェブ上方に配置された静電粉体スプレーガン18から、ウェブに向けられる。樹脂粒子5は、静電引力と、重力と、スプレーガン18からの噴霧空気の流動との結合した効果の下で、ウェブ13の厚さ全体に侵入することができる。ウェブ13およびコンベヤベルト17を通過する樹脂粉体はブース14の底部で捕集され、再使用することができる。
【0024】
所望されるなら、ウェブ13はここで反転され、粉体塗装ブース14を通って2回目の搬送を行なうことができ、この段階でウェブに装填される樹脂粉体15の量が増大される。
【0025】
続いて、ウェブ内の予備結合樹脂15は以下に説明されるように活性化され、ウェブの繊維間に結合を形成し、従って予備結合ウェブを提供し、次にこれに研削粒子が施される。従って、樹脂粒子15は、ウェブ繊維の性質と、予備結合ウェブがさらされ得るその後の工程とを考慮して、また製造すべき研磨材料の所望の特性も考慮して選択されなければならない。
【0026】
不織ウェブの結合における使用に適する粒子状樹脂は既知であり、熱により活性化される熱硬化性および熱可塑性粉体、ならびに他の方法(例えば、水分によって)で活性化される粉体を含む。様々な目的で不織ウェブを結合するのに適切な粒子材料は、例えば、米国特許第4,053,674号明細書、同第4,457,793号明細書、同第5,668,216号明細書、同第5,886,121号明細書、同第5,804,005号明細書、同第5,9767,244号明細書、同第6,039,821号明細書、同第6,296,795号明細書、同第6,458,299号明細書および同第6,472,462号明細書に記載されている。研磨材料の製造における使用に適する粒子状バインダー材料は、良好な強度および耐水性/耐熱性を有する研磨材料を提供でき、ウェブ繊維に損傷を与えることなく活性化が可能なものである。好ましいバインダー材料は、上記のように、エポキシ、ポリウレタンおよびコポリアミドの粒子状樹脂である。
【0027】
樹脂粒子15は、スプレーガン18で使用するのに適切なサイズを有するべきであり、ウェブ13の繊維間の隙間の空間内に侵入できることを保証するために十分小さくなければならない。好ましくは、これらは、200マイクロメートル以下の粒度を有する。浪費を最小限にするために、粉体塗装ブース14内でウェブ13に施される樹脂粒子15の量は、ウェブの適切な結合を提供することと一致して最小量に調整されなければならない。
【0028】
ブース14からの粉体含有不織ウェブ19は、次に、樹脂粒子を流動可能な状態に液化し得る条件にさらされ、その後樹脂は硬化されて、ウェブ繊維間に結合を形成する。例えば、樹脂が、熱で活性化される熱硬化性材料(例えば、粉体エポキシ樹脂)の場合には、ウェブ19はオーブン20を通過され、そこで加熱されて、まずウェブ繊維を塗装するように樹脂を液化し、次に繊維をその相互接触点において一緒に結合させるように樹脂を硬化させる。もう1つの例として、樹脂が熱可塑性材料の場合には、ウェブ19はオーブン20を通過され、ウェブ繊維を塗装するように樹脂を単に液化する。その後、樹脂が凝固してウェブ繊維をその接触点において一緒に結合させるように、ウェブは冷却される。いずれの場合も、樹脂は、この段階でウェブがさらされる温度によってウェブが損傷されないことを保証するように選択されなければならない。
【0029】
予備結合ウェブ21が冷却したら、第1のスプレーブース22を通過され、そこでウェブの一方の表面は、液体メイクコート樹脂と混合された研削粒子7のスラリー23が噴霧される。これは次に、ウェブをオーブン24に通過させることによって硬化される。次に、ウェブは第2のスプレーブース25を通過し、そこでウェブの他方の表面は、同じ研削剤−樹脂スラリーが噴霧され、次に第2のオーブン26において硬化される。好ましい研削粒子は、コランダム粒子およびポリ(塩化ビニル)粒子であり、好ましい樹脂は、フェノール樹脂およびラテックス樹脂であるが、上述のその他の研削材料およびメイクコート樹脂も使用され得る。所望されるなら、充填剤および顔料などの添加剤が研削剤−樹脂スラリーに含有されて使用されてもよい。
【0030】
今説明した構成の代替案では、第2のスプレーブース25および第2のオーブン26は省略され、その代わりに、ウェブ21は、オーブン24を出たら反転され、もう1度スプレーブース22を通って搬送されるので、ウェブの他方の面にスラリー23が噴霧され得る。次にウェブを、オーブン24に2回目の通過をさせる。
【0031】
いずれの場合も、得られる不織研磨ウェブは、次に、図1に示されるような研磨パッド1に加工することができる(必要であれば、保存の後)。
【0032】
上記で説明され、図3に示されるプロセスには、その他の様々な変更が成され得る。例えば、ウェブ形成装置12は、エアレイではなく、カーディングおよびクロスラッピングによって乾式ウェブを生成するものでもあり得る。そして粉体塗装ブース14は、ウェブ全体に粉体樹脂の均等な分配を達成するのに適切であることが知られている他の装置で置き換えられてもよい(例えば、計量ロールを用いる装置(例えば、刻み付きロール(knurled roll)粉体アプリケータ)、粉体噴霧またはシフティング、もしくは流動床などをうまく使用することができる)。
【0033】
また、予備結合ウェブ21に研削粒子7が施される方法を変更することも可能である。例えば、研削粒子を液体バインダー組成物と混合してスラリーを形成する代わりに、液体バインダー組成物が予備結合ウェブに単独で施され(例えば、噴霧によって、またはロールコーティングによって)、その後、例えば研削粒子ディスペンサーの下方でウェブを搬送することによって、研削粒子のドロップコーティング、散布、噴霧などが乾燥状態でウェブ表面に行なわれてもよい。次に、バインダー組成物は硬化され、研削粒子をウェブの繊維に結合させる。更なる代替案として、研削粒子は粉体樹脂バインダーとブレンドされ、次に、ブレンドが乾燥形態で予備結合不織ウェブに施されてもよい。
【0034】
更なる変更として、研削粒子7が付けられた後に、追加の樹脂層がウェブに施されてもよい。この任意選択の樹脂層(サイズコートとしても知られる)は不織研磨材料を強固にする働きをして、その耐摩耗性を増大させることができる。
【0035】
図3に示される方法のもう1つの変更版では、粒子状予備結合樹脂15は、ウェブ形成装置12における不織ウェブの形成の前に、ウェブ繊維1と混合される。その場合は、粉体塗装ブース14は省略される。さらにもう1つの変更版では、粉体塗装ブース14は、粉体散乱ユニット30および粉体含浸ユニット31を含む図4に示される装置で置き換えられる。その場合、ウェブ形成装置12からのウェブ13はユニット30に移動し、粒子状予備結合樹脂15(任意選択の乾燥粒子添加剤と一緒に)がディスペンサー32からウェブの上側表面全体に均等に分配される。ウェブを通過することになった樹脂はユニット30の底部で捕集され、再使用することができる。次に、ウェブは含浸ユニット31内に移動し、交流電圧が印加される2つの電極板33の間を通過する。この効果は、ウェブの厚さ全体にわたって樹脂粉体15を分配させることであり、その後ウェブは、図1のようなオーブン20へ移動する。ウェブの上側表面および下側表面と接触するブラシ34は、含浸ユニット31の下流側に配置されて過剰な樹脂粉体を除去する。過剰な樹脂粉体は、捕集して再使用することができる。
【0036】
図4に示されるタイプの方法は、EP−A−0 914 916号明細書に記載されており、繊維ウェブと粉体とを接触させる更なる代替方法は、EP−A−0 025 543号明細書に記載されている。
【0037】
上記のような粒子状予備結合樹脂15の使用は、研磨材料および一般には研削材料のための不織繊維ウェブを形成するために通常使用される捲縮合成繊維よりも弾力性がはるかに低い繊維からウェブが構成されるという事実にもかかわらず、開放性で低密度の結合不織ウェブ21が製造されることを可能にする。粒子状樹脂15は、ウェブに圧縮力をかけることなく未結合ウェブ13内に分配され得る。ロールコーティングによって、または噴霧によっても、液体の形態で樹脂がウェブに施される場合に発生し得るような未結合ウェブ13に対する圧縮力の結果、ウェブは圧縮されて、不織研磨材料のための基材として使用するのにあまり有効でなくなり、あるいは無効にもなる。しかしながら、繊維が粒子状樹脂15により結合されてしまえば、ウェブ21は、研削粒子7およびメイクコート樹脂を施す間に生じ得る圧縮力に耐えることができる。
【0038】
本発明に従う研磨材料の製造方法は、以下の非限定的な実施例においてより詳細に説明される。全ての部および割合は、別途指示されない限りは重量による。
【実施例】
【0039】
実施例では、以下の材料、装置および試験方法が使用される。
【0040】
材料
エポキシ樹脂粉体:仏国モンブリゾンのデュポン(Dupont of Montbrison,France)からの「ベックリーポックス(Beckrypox)AF4」低温硬化の黒色熱硬化性粉体(平均粒度35ミクロン)。
コポリアミド樹脂粉体:独国マールのデグサ(Degussa of Marl,Germany)からの「ベスタメルト(Vestamelt)350P1」熱可塑性粉体、0〜80ミクロン。
粉体流動助剤:独国マールのデグサからの「アエロジル(Aerosil)200」親水性ヒュームドシリカ粉体。
サイザル麻繊維:独国エベルスドルフのカルーソ(Caruso of Ebersdorf,Germany)からのカット繊維。
ココヤシ繊維:独国エベルスドルフのカルーソからのカット繊維。
ポリ(塩化ビニル)粒子:スペインのアイスコンデル(Aiscondel,Spain)からの「エティノックス(Etinox)631」。
コランダム粒子:仏国のペシネー(Pechiney,France)からの微細等級(約50ミクロンの平均粒度)のブロー溶融された酸化アルミニウム。
ラテックス樹脂:スペインのBASFからの「スチロファン(Styrofan)ED609」。
架橋剤:ノルウェーのダイノ・サイテック(Dyno Cytec,Norway)からの(i)サイメル(Cymel)303および(ii)サイメル307。
フェノール樹脂:独国イーゼルローン−レットマテのベークライト社(Bakelite AG of Iserlohn−Letmathe,Germany)からの「7983SW」。
【0041】
装置
開繊機(fiber opener):仏国コース・ラ・ビルのラロッシュ(Laroche of Cours La Ville,France)から入手可能。
「ランド−ウェバー(Rando−Webber)」:米国ニューヨーク州マセドンのランド・マシーン社(Rando Machine Co.,Macedon,N.Y.USA)から入手可能なエアレイ不織ウェブ形成機。
ウェブ加湿器:仏国シャンテロープ・レ・ヴィーニュのハイドロフォグ(Hydrofog of Chanteloup les Vignes,France)から入手可能な部屋の加湿に使用されるタイプの散水ヘッド。
粉体塗装装置:粉体塗装ブース(これも、ノードソン(Nordson)から入手可能)に搭載され、電気的に接地された30cm幅の水平の金属製の粗いメッシュのコンベヤベルトに向かって下方に向けられた米国オハイオ州ウェストレークのノードソン(Nordson of Westlake,Ohio,USA)からの「バーサスプレー(Versaspray)II」静電スプレーガン。そのガン/それぞれのガンには、2.5mmのフラットなスプレーノズルが取り付けられる。粉体塗装ブースには、粉体を含有するための流動化ホッパー(ホッパーには、ガンに粉体を供給するためのベンチュリポンプが取り付けられる)と、ブース底部で廃棄粉体を捕集するための回収ドラムと、ホッパーへの流動化空気の供給、ならびにポンプおよびガンへの流動および噴霧空気の供給を調節するためのエアコントロールユニットとが備えられる。ホッパー、ポンプおよび回収ドラムは全て、ノードソンから入手可能である。粉体ブースは、細かい粉体の安全な取扱いを可能にする特徴を組み込んだ(カートリッジおよびHEPAフィルタによる空気抽出、ならびに火災検知器を含む)。
赤外線オーブン:英国タインアンドウィア州サンダーランドのトリスク(Trisk of Sunderland,Tyne and Wear,UK)から入手可能な3つの1kW短波赤外線ヒーターを有する「キュアマスター・スーパー(Curemaster Super)」オーブン。
スルーエアオーブン:いずれもスイス、ミュンヒウィレンのキャビテック(Cavitec of Munchwilen,Switzerland)から入手可能なガスオーブン(4メートル長さ)および電気オーブン(2メートル長さ)。
研削剤スプレー装置:仏国グルノーブルのシャボー(Charvot of Grenoble,France)から入手可能な1つの往復スプレーガンを備えたスプレーブース、ならびに米国イリノイ州のビンクス(Binks of Illinois,USA)からモデル21として入手可能な4つのガンを備えたスプレーブース。
【0042】
実施例1
「ランド・ウェバー」機において、2m/分の速度で、サイザル麻繊維から190g/mの重量の30cm幅のエアレイド不織ウェブを形成した。繊維ベールは、ラロッシュ開繊機を用いて前もって開繊した。粗いメッシュのコンベヤベルト上で粉体塗装ブースを通ってウェブをインラインで搬送した。ここで、ウェブの30cm上方に固定され、20°〜30°の範囲の角度で鉛直方向の反対側に傾斜された、並んで配置される2つの「バーサスプレーII」スプレーガンによって、コポリアミド樹脂粉体(0.5重量%の流動助剤とブレンドされる)をウェブに向けた。樹脂粉体をホッパーからガンに供給し、1.5バールの圧力の空気を用いて静かに泡立つまで流動化した。ガンの空気圧の設定は、流動空気では2バールであり、噴霧空気では1バールであり、最大電圧(100kV)を印加した。樹脂粉体を約60g/mの重量でウェブ内に付着させ、ウェブを通過する樹脂粉体を、粗いメッシュのコンベヤベルトの下方に配置した回収ドラム内に捕集した。次に、まず樹脂粉体を予備硬化させるためにウェブの3cm上に配置されたヒーターを有する150〜160℃の範囲の温度の赤外線オーブンにおいて、次に再循環空気のための低速設定を用いる160℃の温度の電気オーブンにおいて、粉体化ウェブをインラインで加熱した。オーブン中の全滞留時間は1分であった。
【0043】
次に、ウェブを反転させて、ウェブの他方の表面を一番上にして、粉体塗装ブースおよびオーブンを通って再度搬送した。
【0044】
次に、以下のようにしてポリ(塩化ビニル)粒子を結合ウェブに施した。粒子(25%)およびラテックス樹脂(68.5%)を架橋剤(1.2%の(i)および5.3%の(ii))と一緒に十分に混合することによって研削剤−樹脂スラリーを調製した。次に、スラリーを、単一のスプレーガンを有するスプレーブースの供給タンクに移した。2m/分の速度で結合ウェブにスプレーブースを通過させ、ウェブを横切って往復運動をするガンから一方の面にスラリーを噴霧して、約300g/mのコーティング重量のスラリーによるウェブの均一な被覆を保証した。次に、ウェブにガスオーブンを通過させ、180℃で2分間加熱してラテックス樹脂を硬化させた。次に、ウェブを反転させ、同じようにして、他方の面にスラリーが噴霧されるように再度スプレーブース内を搬送した。次に、再度ガスオーブンを通過させた。
【0045】
得られた不織研磨ウェブは、150g/mのポリ(塩化ビニル)粒子を含有し、約75×90mmの寸法を有するパッドに切断した。
【0046】
実施例2
以下の点を変更して、実施例1を繰り返した。
不織ウェブは150〜170g/mの重量であり、「ランド・ウェバー」機において、樹脂粉体の硬化時間が増大されるのを可能にするために(後で見る)より低速(1m/分)で、ココヤシ繊維から形成した。粉体塗装器に入る前にウェブを加湿して、その導電率、およびそれによる樹脂粉体の取り込みを増大させた。1バールの圧力の水および2.5バールの圧力の噴霧空気が供給される散水ヘッドを用いてウェブを加湿した。粉体塗装器は、単一の「バーサスプレーII」スプレーガンを使用して、エポキシ樹脂粉体を30cmの距離からウェブに向けた。1.8バールの圧力の空気を用いて、樹脂粉体を粉体塗装器のホッパー内で流動化した。ガンの空気圧の設定は、流動空気では1バール、噴霧空気では0.8バールであった。樹脂粉体を250g/mの重量でウェブ内に付着させた。赤外線ヒーターは省略し、再循環空気のための低速設定を用いて、170℃の温度で2分間、電気オーブンのみで粉体ウェブを加熱した。
【0047】
次に、以下のようにして、コランダム粒子を結合ウェブに施した。粒子(25%)およびフェノール樹脂(75%)を一緒に十分に混合することによって、研削剤−樹脂スラリーを調製した。次に、スラリーを、4つのスプレーガンを有するスプレーブースの供給タンクに移した。2m/分の速度で結合ウェブにスプレーブースを通過させ、ガンから一方の面にスラリーを噴霧して、約230〜260g/mのコーティング重量のスラリーによるウェブの均一な被覆を提供した。次に、ウェブにガスオーブンを通過させ、180℃で2分間加熱してフェノール樹脂を硬化させた。次に、ウェブを反転させ、同じようにして、スラリーが他方の面に噴霧されるように再度スプレーブースを通って搬送した。次に、再度ガスオーブンを通過させ、不織研磨ウェブを得て、家庭用研磨パッドに切断した。
【0048】
結果
擬似家庭環境で汚れた食器をきれいにするために、実施例1および2から得られた家庭用研磨パッドのサンプルを使用し、視覚的な評価に基づいて、従来の合成研磨パッドに匹敵し、一般に、天然繊維から製造した伝統的な研磨パッドよりも良好な性能を提供することがわかった。
【0049】
実施例1および2に記載されるプロセスの利点は、予備結合ウェブ21の形成において揮発性有機化合物(VOC)が生成されないことである。さらに、予備結合ウェブを製造するためにこれらのプロセスで必要とされるエネルギーは、液体予備結合樹脂が使用される場合に必要とされるよりも少なくてよい。従って、プロセスの環境効果は、合成研磨材料を製造するために従来使用されるプロセスよりも実質的に低いことになる。
【0050】
実施例1および2のプロセスにより製造される研磨パッドは、天然植物繊維を用いて形成されるので、使用後に、より容易にリサイクルすることができるという利点を提供する。それにもかかわらず、研磨パッドの均一性は、伝統的な天然繊維研磨材と比較して高く、環境に優しいが比較的規格化された製品を消費者に提供することを可能にする。さらに、研磨パッドは、伝統的な天然繊維研磨材および従来の合成研磨材の両方の有利な開放性を、後者の研削性能と共に示す。これらの利点は、ウェブ繊維を不可逆的に圧縮または損傷し得る圧力(例えば、ローラーによる接触の結果)にウェブがさらされることを必要としない方法で予備結合される天然繊維の機械形成(乾式)ウェブを、研磨パッドが含むという事実の結果であると考えられる。
【0051】
上記の実施例は家庭用研磨パッドの製造を説明するが、使用される材料およびプロセス工程を必要に応じて適切に変化させて、同様の方法で他の研磨材料および物品を製造できることは認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備結合樹脂によってその相互接触点で互いに結合された交絡繊維の三次元不織ウェブであって、前記繊維の重量による過半が天然繊維を含み、前記結合ウェブが50kg/mの最大密度を有する、三次元不織ウェブと、
メイクコート樹脂によって前記結合ウェブの繊維に接着された複数の研削粒子と、
を含む、研磨材料。
【請求項2】
前記結合ウェブが、30kg/mの最大密度を有する、請求項1に記載の研磨材料。
【請求項3】
前記結合ウェブが、5mmの最小厚さを有する、請求項1または2に記載の研磨材料。
【請求項4】
前記繊維の少なくとも80重量%が天然繊維を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項5】
前記繊維の全てが天然繊維を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項6】
前記天然繊維が天然植物繊維である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項7】
前記天然繊維が、ココヤシ、サイザル麻および/または麻の繊維を含む、請求項6に記載の研磨材料。
【請求項8】
前記予備結合樹脂が熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項9】
前記予備結合樹脂が、エポキシ樹脂またはコ−ポリアミド樹脂である、請求項8に記載の研磨材料。
【請求項10】
前記メイクコート樹脂がラテックスまたはフェノール樹脂である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項11】
前記研削粒子が無機材料を含み、約50ミクロンの平均粒度を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項12】
前記研削粒子が、高分子材料または天然材料を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項13】
前記不織ウェブが乾式ウェブである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の研磨材料。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の材料から形成された、手持ちサイズの研磨パッド。
【請求項15】
(i)可融性バインダー粒子を含む乾燥粒子材料と接触される天然繊維の三次元不織ウェブを形成するステップと、
(ii)前記バインダー粒子が流動可能な液体バインダーを形成するようにさせる条件に前記ウェブをさらし、次に前記液体バインダーを凝固させて前記ウェブの繊維間に結合を形成し、それによって予備結合ウェブを提供するステップと、
(iii)前記予備結合ウェブに研削粒子を施し、少なくともメイクコート樹脂によって前記研削粒子を前記予備結合ウェブの繊維に結合させて研磨材料を提供するステップと、
を含む、請求項1に記載の研磨材料の製造方法。
【請求項16】
前記バインダー粒子が、前記ウェブに圧縮力をかけることなく前記ウェブに施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バインダー粒子が、静電気力の作用下で前記ウェブの厚さ全体を横切って付着される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記バインダー粒子には静電荷がかけられ、次に前記バインダー粒子が前記ウェブの方向に向けられ、前記ウェブが電気的に接地された支持表面に配置される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記研削粒子および前記メイクコート樹脂が、スラリーとして一緒に前記予備結合ウェブに施される、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記スラリーが、前記予備結合ウェブ上に噴霧される、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−62813(P2011−62813A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−256917(P2010−256917)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【分割の表示】特願2006−509632(P2006−509632)の分割
【原出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】