説明

研磨機

【課題】 ガラス基板の表面に研磨シートを接触させた状態で、正常厚さの膜を傷付けることなく異常突起だけを除去することのできる研磨シートを備えた研磨機を提供する。
【解決手段】膜が形成されたガラス基板Wの表面に、研磨定盤面20aに研磨シート23を貼り付けた研磨プレート20を押圧させつつ、研磨プレート20をガラス基板Wに対して面内移動させることで、ガラス基板Wの表面の膜を研磨シート23で研磨する研磨機において、研磨シート23の研磨層に含まれる砥粒の一次粒子径は10〜50nmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶表示装置用カラーフィルタ等のガラス基板に形成された着色膜を研磨するための研磨機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したカラーフィルタの着色層の研磨機として、例えば、特許文献1が提案されている。
この研磨機は、静止した角形のガラス基板(カラーフィルタ)の着色層が形成された面上に、その長辺の長さがガラス基板の短辺よりも長い角形の研磨プレートをガラス基板の短辺と平行に配置し、研磨プレートでガラス基板面を押圧しながら、研磨プレートにガラス基板の垂直方向を軸とした偏心回転をさせて研磨プレートをガラス基板の短辺方向に揺動させ、研磨プレートをガラス基板の長辺方向に移動させてカラーフィルタ表面を研磨するというものである。
この研磨機によれば、従来のオスカータイプの研磨機に比べて、ガラス基板の全面を均一に研磨できる利点が得られる。
【0003】
ところで、液晶パネル用カラーフィルタCFは、図8に示したように、フラットなガラス基板Wの表面にブラックマトリックスBMを形成し、その上に着色膜(RGB膜)を形成した構造を有するが、製造工程においてこの着色膜に異物が混入すると、RGB膜に異常突起300が発生することがある。この異常突起300の高さS2は、図8に示すように、一般的に通常の突起を含むRGB膜厚S1の高さが1.5〜2.0μmであるのに対し、10〜40μm位と極めて大きいものであり、このような異常突起300が発生すると、製造工程においてパネルの貼り合わせに支障を来し、表示不良の要因となる。
【0004】
ところが、従来の研磨機は、このような異常突起を除去するには不向きであった。これは、従来の研磨機は全面研磨用であるため、異常突起のみを研磨しようとしても正常な膜厚部分までが削られてしまう虞があるからである。
【0005】
そこで、本出願人は、先に出願した特願2007−84946号において、研磨プレートの研磨定盤面に、研磨プレートをガラス基板に表面に押圧させた時に、ガラス基板の表面に研磨シートより先に当接して押圧力に応じて潰れ変形する弾性体で成るクリアランス調整用パッドを設けることにより、ガラス基板の表面と研磨シートとのクリアランを最適に保持するようにした研磨機を提案している。
このクリアランス調整用パッドを設けることにより、研磨の際、ガラス基板の表面の膜上に存在する異常突起だけに研磨シートが接触し、正常厚さの膜に対して非接触となるようにできるため、正常な膜厚を減らさずに異常突起だけを研磨・除去することが可能となる。
尚、このような異常突起の研磨には、ダイヤモンド砥粒やアルミナ砥粒が埋め込まれた研削力に優れる固定砥粒研磨シートが使用されている。
【0006】
しかしながら、クリアランス調整用パッドによる研磨には、以下のような問題点が残されていた。
すなわち、クリアランス調整用パッドは弾性体で構成されているため、その変形量が研磨毎に一定でなく、よって、研磨シートの表面と異常突起間のクリアランスを常に一定に保持することが難しく、且つ、クリアランス調整用パッドの厚みもロット毎にばらつくため、パッド交換毎に研磨条件の設定(例えば、研磨圧力の調整による最適クリアランスの確保)が必要であり、研磨再現性が低いという問題である。
また、特にダイヤモンド砥粒は、砥粒硬度が高く、且つ、粒子径も大きいことから、ガラス基板の表面と研磨シートとのクリアランスが小さくなり過ぎると、ガラス基板面の正常厚さの膜面に研磨シートの表面より突出した砥粒が接触して研磨傷が発生する。
【特許文献1】特開2004−195602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み成されたもので、ガラス基板の表面に研磨シートを接触させた状態で、正常厚さの膜を傷付けることなく異常突起だけを研磨・除去することのできる研磨機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の研磨機は、膜が形成されたガラス基板の表面に、研磨定盤面に研磨シートを貼り付けた研磨プレートを押圧させつつ、該研磨プレートを前記ガラス基板に対して面内移動させることで、前記ガラス基板の表面の膜を前記研磨シートで研磨する研磨機において、前記研磨シートの研磨層に含まれる砥粒の一次粒子径が10〜50nmであることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の研磨機において、前記砥粒の一次粒子径が10〜20nmであることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の研磨機において、前記砥粒はシリカ粒子であることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までの何れかに記載の研磨機において、前記研磨シートは、弾性シートを介して前記研磨プレートの研磨定盤面に貼り付けられていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までの何れかに記載の研磨機において、前記ガラス基板をその面方向に沿って搬送する搬送経路の下側に、前記ガラス基板が載る下定盤を配置し、この下定盤の上方に、搬送されてきた前記ガラス基板の上側の表面を研磨するための研磨ヘッドを設け、この研磨ヘッドの本体に、前記研磨シートを下に向けて、上定盤としての前記研磨プレートを上下方向移動自在に設けると共に、前記研磨ヘッドの本体と前記研磨プレートとの間に、前記研磨プレートをガラス基板に押圧させ、且つその押圧力を調整する押圧調整機構を設け、さらに、前記研磨ヘッドを、前記ガラス基板の搬送方向と直交する面内方向の運動成分を少なくとも含むようにオービタル運動させる駆動機構を設けたことを特徴としている。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5までの何れかに記載の研磨機において、前記ガラス基板は、ディスプレイパネルのカラーフィルタであり、前記膜は、RGBの着色膜であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、2に記載の発明によれば、研磨シートの研磨層に含まれる砥粒(研磨材粒子)の一次粒子径が10〜50nm、好ましくは、10〜20nmの微粒子から成り、ダイヤモンド砥粒のように粒径数μmオーダーの粗大粒子を含まないため、研磨の際にガラス基板の表面の膜を傷付けることなく、異常突起だけを効率良く研磨・除去することができる。例え、研磨中に研磨シートがガラス基板の膜面に接触しても、研磨シートの砥粒径が10〜50nmと極めて微細であるため、膜面は鏡面研磨されるだけであって、不良となるような研磨傷は発生しない。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、砥粒としてシリカ粒子を用いたので、上述したように、超微粒子であることに加え、シリカ粒子は、ダイアモンド砥粒やアルミナ砥粒に比べて砥粒硬度がかなり低いため、研磨傷の発生をより確実に防止できる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、研磨定盤と研磨シートの間に弾性シートを介在するようにしたので、この弾性シートのクッションによって、ガラス基板に加わる押圧力が分散され、均一の研磨圧力により研磨されるため、研磨斑を防止できる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明によれば、研磨ヘッドに研磨プレートを上下方向移動自在に設け、押圧調整機構により研磨プレートをガラス基板に押圧させるようにしているので、ガラス基板に対する研磨シートの押圧力を、研磨傷を付けずに効率良く研磨できる好適な押圧力に調整することができる。
【0018】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、カラーフィルタの表面に傷をつけることなく、カラーフィルタの着色膜に生じた異常突起を効率良く除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の研磨機の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
本実施形態の研磨機は、液晶表示装置用カラーフィルタの着色膜(RGB膜)を研磨するためのものであり、図1は本実施形態の研磨機を装備したガラス基板Wの製造ラインの要部構成を示す平面図、図2は同、要部構成を示す側面図、図3は研磨プレートの下部構成を示すガラス基板の搬送方向の側方から見た断面図、図4はガラス基板に研磨プレートを押圧させた時の状態を示す要部拡大図、図5は研磨シートの構造を示す断面図、図6は研磨プレートを下から見た図、図7は研磨ヘッドの構成を示すガラス基板の搬送方向の側方から見た断面図で、(a)は研磨プレートをガラス基板に押圧させる前の状態を示す図、(b)は研磨プレートをガラス基板に押圧させた状態を示す図である。
【0020】
図1、図2において、符号1はガラス基板W(本実施形態ではカラーフィルタ)をその面方向に沿って矢印A方向に搬送する搬送コンベア(搬送経路)、符号3はこの搬送コンベア1の下側に配置され、研磨時にガラス基板Wが載る下定盤、符号10はこの下定盤3の上方に配置されて、搬送されてきたガラス基板Wの上側の表面を研磨する研磨ヘッド、符号20はこの研磨ヘッド10の本体11に設けられた上定盤となる研磨プレートである。
【0021】
この研磨機(研磨ヘッド10で代表される部分)は、RGB膜が形成されたガラス基板Wの表面に、研磨プレート20を押圧させながら、研磨プレート20をガラス基板Wに対して面内移動させることで、ガラス基板Wの表面の着色膜(RGB膜)を研磨するものである。
ガラス基板Wは、長方形の平板状のもので、長辺を搬送方向Aと平行にした姿勢で一方の短辺を前端にして上流側から研磨ヘッド10の下側に搬送され、下定盤3上において研磨ヘッド10により研磨されながら、そのままの姿勢と速度で下流側へ搬送されて行く。
【0022】
図3、図4に示すように、研磨プレート20の下面20a(研磨定盤面20a)には、厚み0.9mm程の弾性シート(ウレタンゴムやウレタンシート等)21を介して両面テープ等により固定砥粒研磨シート23が貼り付けられている。因みに、ウレタンシートは、硬度10〜20°、圧縮率20〜50%、圧縮弾性率94〜96%である。
【0023】
本実施形態では、固定砥粒研磨シート23を貼り付ける際、弾性シート21の端縁部を固定砥粒研磨シート23で覆うようにして弾性シート21の角部に丸味を持たせており、このことにより、ガラス基板Wが搬送されて来た時に、ガラス基板Wの先端縁部が固定砥粒研磨シート23の端縁部に当たって、カラス基板Wの端縁部に損傷が生じたり、局部的に研磨されたする不都合を回避することができる。
【0024】
ところで、上記固定砥粒研磨シート23は、図5に示すように、厚さ75μm程のポリエステル等のプラスチックフィルムから成る基材24の一方の面に厚さ5μm程の研磨層26を形成したものであり、この研磨層26は、バインダーと砥粒等を有機溶剤に溶解し分散して塗工液を作製し、これを塗工手段により基材24に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
本実施形態では、研磨層26を形成する砥粒(研磨材粒子)27としてシリカ粒子が用いられ、またバインダーとしてエポキシ系樹脂が用いられている。
【0025】
そして、本実施形態の固定砥粒研磨シート23では、研磨層26に含まれる砥粒27として、粒子径(一次粒子径)が10〜50nmの微粒子が使用されている。
これは、砥粒27の粒子径が10nmより小さいと研磨力が低下してしまい、所望の研磨効果が得られず、異常突起の研磨・除去が困難になり、粒子径が50nmより大きいと、研磨の際にガラス基板Wの表面の膜面に研磨傷が発生する虞があるためである。そこで、本実施形態では、研磨層26に含まれる砥粒27の粒子径を10〜50nmとし、好ましくは、10〜20nmとしている。
【0026】
尚、ダイヤモンド砥粒、アルミナ砥粒、シリカ砥粒による各固定砥粒研磨シートの仕様を示せば、表1の通りである
【0027】
【表1】

【0028】
研磨ヘッド10は、ガラス基板Wの搬送方向Aと直交する方向に自身の長さ方向を向けて配されており、その長さが、搬送経路上を搬送されてくる1枚、または、搬送方向と直交する方向に並んだ状態で搬送されてくる複数枚(本図示例では2枚)のガラス基板Wの全てを1度に研磨できる長さに設定されている。
また、図1、図6に示すように、研磨プレート20の下面20aには、ガラス基板Wの搬送方向に並べて2枚の固定砥粒研磨シート23が平行に互いに間隔をあけて貼り付けられており、これら、2枚の固定砥粒研磨シート23の間に位置させて、研磨プレート20には、固定砥粒研磨シート23による研磨部位に純水を供給する液体供給口13が設けられている。
【0029】
研磨プレート20は、図3、図7に示すように、固定砥粒研磨シート23を下に向けて、研磨ヘッド10の本体11に上下方向移動自在に設けられている。
図7に示すように、研磨ヘッド10の本体11には、下面に開口14aを有した押圧室14が設けられており、研磨プレート20の上部がこの押圧室14の内部に収容されると共に、研磨プレート20の下部が開口14aより下方へ突出している。そして、研磨プレート20の下面の研磨定盤面20aが、搬送されてくるガラス基板Wの上側の表面に対向するようになっている。
【0030】
また、研磨ヘッド10の本体11と研磨プレート20との間には、研磨プレート20をガラス基板Wに押圧させると共に、その押圧力を調整する加圧チューブ18と反力チューブ19とが設けられている。
【0031】
加圧チューブ18は、加圧エア(エア以外の気体でも可)の導入により膨張して研磨プレート20を下方に押圧するもので、押圧室14の天井壁と研磨プレート20の上端壁との間に配置されている。
また、反力チューブ19は、加圧エア(エア以外の気体でも可)の導入により膨張して研磨プレート20を加圧チューブ18の圧力に抗して上方に押圧するもので、研磨プレート20の左右に張り出したフランジ25と研磨ヘッド10の本体11側の開口14aの左右の各フランジ15との間に配置されている。
図7(b)に、加圧チューブ18による下向き力P1と、反力チューブ19による上向き力P2の関係を示す。これら加圧チューブ18と反力チューブ19は、研磨プレート20の長さ方向のほぼ全長に渡って配設されている。
【0032】
また、これら加圧チューブ18と反力チューブ19に接続された加圧エア給排管(図示せず)上には、圧力調整手段(図示せず)が接続されている。この圧力調整手段は、加圧チューブ18と反力チューブ19に導入する加圧エアの圧力バランスを調整するもので、この圧力調整手段と加圧チューブ18および反力チューブ19とにより、ガラス基板Wに対する研磨プレート20の押圧力(すなわち、研磨圧力)を調整するための押圧調整機構が構成されている。
【0033】
また、本実施形態の研磨機は、研磨ヘッド10の上端に突出した揺動軸12を介して、研磨ヘッド10を、ガラス基板Wの搬送方向と直交する面内方向の運動成分を少なくとも含むようオービタル運動させる駆動機構(図示せず)を備えている。
【0034】
次に上記構成の研磨機を用いてガラス基板Wの表面の膜(RGB膜)を研磨する方法について説明する。
【0035】
ガラス基板Wが搬送コンベア1により研磨ヘッド10の下に搬送されて来ると、図7(b)に示すように、加圧チューブ18に加圧エアを導入すると共に、反力チューブ19にも加圧エアを導入して、研磨プレート20を下降させ、ガラス基板Wの表面(RGB膜面)に研磨プレート20の下面を押圧させる。この際、加圧チューブ18と反力チューブ19の圧力バランスを調整することにより、研磨プレート20のガラス基板Wに対する押圧力を好適値に設定することができる。
【0036】
この時、図4に示すように、固定砥粒研磨シート23の表面とガラス基板Wの表面は従来と相違し、完全に接触しており、この状態で、研磨ヘッド10をガラス基板Wに対して偏心回転させることにより、ガラス基板Wの表面の膜が固定砥粒研磨シート23にて研磨される。
【0037】
この場合、表1に示すように、固定砥粒研磨シート23の研磨層26に含まれる砥粒27の粒子径が10〜50nm(好ましくは、10〜20nm)の超微粒子から成り、ダイヤモンド砥粒のように粒径数μmオーダー(3〜8μm)の粗大粒子を含まないため、研磨の際にガラス基板Wの表面の膜を傷付けることなく、異常突起300(図8参照)だけを効率良く研磨・除去することができる。
【0038】
例え、異常突起300が先端部より徐々に研磨されて来て固定砥粒研磨シート23の研磨層26がガラス基板Wの正常厚さの膜面に達しても、上述のように、砥粒27の粒子径が10〜50nmと極めて微細であるため、膜面は鏡面研磨(仕上げ研磨)されるだけであって、使用不可となるような研磨傷が発生する虞はなく、よって、正常厚さの膜の厚みを減らさずに、異常突起300のみを効率良く研磨・除去することが可能となる。
【0039】
さらには、砥粒27としてシリカ粒子を用いているので、シリカ粒子が超微粒子であることに加え、ダイアモンド砥粒やアルミナ砥粒に比べて砥粒硬度がかなり低いため(表1参照)、研磨傷の発生をより確実に防止できるものである。
【0040】
このように、本実施形態の研磨機では、従来のようなクリアランス調整パッドを無くし、固定砥粒研磨シート23とガラス基板Wを接触させた全面研磨を行うため、研磨再現性が高く、且つ、使用部材が少なくて済み、コスト低減が図れる。
【0041】
また、研磨定盤20と固定砥粒研磨シート23の間に弾性シート21を介在するようにしたので、この弾性シート21のクッション作用によって、ガラス基板Wに加わる押圧力が分散され、ガラス基板Wの全面が均一な研磨圧力により研磨されるため、研磨斑の発生を防止できる。
【0042】
また、研磨中、研磨面に液体供給口13より純水を供給することにより、研磨かすを排除することができるので、研磨かすに起因する研磨傷の発生を防止することができる。
【0043】
研磨終了後は、図7(a)に示すように、加圧チューブ18の加圧エアを抜き、反力チューブ19に加圧エアを導入して、研磨プレート20を上昇させ、次のガラス基板Wの搬入に備える。
このように、本研磨機によれば、ガラス基板表面の異常突起の除去と仕上げ研磨が同時に行え、よって、製品の歩留まり向上と品質向上に大いに貢献できるものである。
【0044】
ここで、本実施形態の研磨機の効果を確認するために、以下のような研磨試験を行った。尚、研磨定盤と固定砥粒研磨シートの間に介在した弾性シート(ウレタンシート)の物性は、密度:0.25gr/m3 、圧縮率:18〜20%、弾性率:96%、硬度:20〜21°である。
【0045】
(1)比較例
固定砥粒研磨シートとしてアルミナシートを使用し、上述した研磨方法によりカラーフィルタ表面の異常突起を研磨した。その際の研磨条件と研磨試験の結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2に示すように、アルミナシートを使用した研磨では、異常突起を研削することはできるが、カラーフィルタの膜の表面にアルミナ砥粒による接触傷が多数発生しており、使用不可の状態であった。尚、この接触傷は、その後に仕上げ研磨を行っても緩和・解消することはできなかった。
(2)実施例
【0048】
固定砥粒研磨シートとしてシリカシートを使用し、カラーフィルタ表面の異常突起を研磨した。その際の研磨条件と研磨試験の結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
表3に示すように、シリカシートを使用した研磨では、砥粒による接触傷を発生させることなく、異常突起を3〜5μmまで研削することができた。
【0051】
以上の結果から、固定砥粒研磨シートの砥粒として、粒子径が10〜50nmのシリカ粒子を用いることにより、正常厚さの膜の厚みを減らさずに、異常突起300のみを効率良く研磨・除去することが可能であることが、確認された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態による研磨機を装備したガラス基板(カラーフィルタ)の製造ラインの要部構成を示す平面図。
【図2】同、製造ラインの要部構成を示す側面図。
【図3】研磨プレートの下部構成を示すガラス基板の搬送方向の側方から見た断面図。
【図4】ガラス基板に研磨プレートを押圧させた時の状態を示す要部拡大図。
【図5】研磨シートの構造を示す断面図。
【図6】研磨プレートを下から見た図。
【図7】研磨ヘッドの構成を示すガラス基板の搬送方向の側方より見た断面図で、(a)は研磨プレートをガラス基板に押圧させる前の状態を示し、(b)は研磨プレートをガラス基板に押圧させた状態を示す。
【図8】液晶表示装置用カラーフィルタの断面図。
【符号の説明】
【0053】
1 搬送経路(搬送コンベア)
3 下定盤
10 研磨ヘッド
20 研磨プレート
20a 研磨定盤面
21 弾性シート
23 研磨シート(固定砥粒研磨シート)
24 基材
26 研磨層
27 砥粒
CF カラーフィルタ
W ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜が形成されたガラス基板の表面に、研磨定盤面に研磨シートを貼り付けた研磨プレートを押圧させつつ、該研磨プレートを前記ガラス基板に対して面内移動させることで、前記ガラス基板の表面の膜を前記研磨シートで研磨する研磨機において、
前記研磨シートの研磨層に含まれる砥粒の一次粒子径が10〜50nmであることを特徴とする研磨機。
【請求項2】
前記砥粒の一次粒子径が10〜20nmであることを特徴とする請求項1に記載の研磨機。
【請求項3】
前記砥粒はシリカ粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨機。
【請求項4】
前記研磨シートは、弾性シートを介して前記研磨プレートの研磨定盤面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の研磨機
【請求項5】
前記ガラス基板をその面方向に沿って搬送する搬送経路の下側に、前記ガラス基板が載る下定盤を配置し、
この下定盤の上方に、搬送されてきた前記ガラス基板の上側の表面を研磨するための研磨ヘッドを設け、
この研磨ヘッドの本体に、前記研磨シートを下に向けて、上定盤としての前記研磨プレートを上下方向移動自在に設けると共に、
前記研磨ヘッドの本体と前記研磨プレートとの間に、前記研磨プレートをガラス基板に押圧させ、且つその押圧力を調整する押圧調整機構を設け、
さらに、前記研磨ヘッドを、前記ガラス基板の搬送方向と直交する面内方向の運動成分を少なくとも含むようにオービタル運動させる駆動機構を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の研磨機。
【請求項6】
前記ガラス基板は、ディスプレイパネルのカラーフィルタであり、前記膜は、RGBの着色膜であることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れかに記載の研磨機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−290190(P2008−290190A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138170(P2007−138170)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】