説明

研磨用バックアップ材およびその製造方法

【課題】 作業環境を阻害せずに、平滑性に優れ、研磨の際に研磨対象を固着させ、かつ研磨後に研磨対象を脱離させる適度の粘着性を有するバックアップ材を提供する。
【解決手段】 ポリマー含有相と水相からなるエマルション、起泡剤および気泡安定剤を含むエマルション組成物を乾燥、発泡させて得られるポリマー発泡体層と、平均細孔径0.2〜15μm、厚さ1〜200μmの連続気泡の多孔性フィルムを含むポリマーラテックス研磨用バックアップ材;および多孔性フィルムの面にエマルション組成物を流延し、乾燥、発泡させる工程を含む研磨用バックアップ材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用バックアップ材およびその製造方法に関し、さらに詳細には、エマルションから得られたポリマー発泡体層と、連続気泡の多孔性フィルムを含む研磨用バックアップ材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、ガラス、金属などの小片の表面を研磨するためには、それらの小片(以下、研磨対象という)をバックアップ材に固着させて、研磨性物質を含み、回転または摺動する研磨材によって研磨する。バックアップ材としては、表面に研磨対象を固着させるに充分で、かつ研磨後に研磨対象を容易に脱離させる程度の軽い粘着性および/または吸着性を有するものが用いられる。
【0003】
このようなバックアップ材としては、特許文献1〜3に記載されているような、合成繊維製不織布にポリウレタン樹脂溶液を含浸させ、硬化させたものなどが用いられている。しかしながら、このようなポリウレタン樹脂によるバックアップ材は、製造工程で有機溶媒を含むポリウレタン樹脂溶液を用いるために作業環境が損なわれるばかりでなく、得られるバックアップ材に平滑性がなく、かつ研磨の際に研磨対象を固着させる粘着性が不充分である。
【特許文献1】特開平3−213573号公報
【特許文献2】特開平4−183578号公報
【特許文献3】特開平6−17374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来のバックアップ材における上記の欠点がないバックアップ材、すなわち作業環境を阻害せずに、平滑性に優れ、研磨の際に、水を使用するなどの方法により、研磨対象をバックアップ材に均一に固着させ、かつ研磨後に研磨対象を脱離させる適度の粘着性を有するバックアップ材、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、ポリマー含有相と水相を含むエマルション組成物を、多孔性フィルム上に流延し、発泡させてポリマー発泡体を得ることによって得られる複合体を、バックアップ材として用いることにより、その課題を達成しうることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(A)ポリマー含有相と水相からなるポリマーエマルション、該エマルション中のポリマーが100重量部になる量;
(B)起泡剤 1.0〜6.0重量部;および
(C)気泡安定剤 0.5〜6.0重量部
を含むエマルション組成物を乾燥、発泡させて得られたポリマー発泡体層と、平均細孔径0.2〜15μm、厚さ1〜200μmの連続気泡の多孔性フィルムを含む研磨用バックアップ材に関し;また、
上記のエマルション組成物を、上記の多孔性フィルムの一方の面に流延(キャスティング)し、乾燥、発泡させてポリマー発泡体とする工程を含む、研磨用バックアップ材の製造方法に関する。
【0007】
本発明に用いられる(A)ポリマーエマルションは、ゴム、樹脂またはそれらの前駆体であるポリマーを含むポリマー相と、水相からなる分散体である。エマルションの形態は、O/W型、W/O型、O/W/O型、W/O/W型のいずれでもよく、製造が容易で、
流延する際の作業性にも優れていることから、O/W型エマルションが好ましい。
【0008】
これらのうち、天然または合成ゴムの未架橋または部分架橋ポリマーのO/W型エマルションをラテックスという。ラテックスのポリマー相には、架橋剤および場合により起泡剤などが含まれる。ポリマーが天然ゴムの場合、エマルションとしては、ゴム樹液、それを濃縮したもの、さらに保存剤などを配合したものが用いられる。ポリマーが合成ゴムの場合、エマルションは、一般に乳化重合によって調製される。または溶液重合などの方法によって得たポリマーを、界面活性剤と水によって乳化し、必要な場合には溶媒を除去して調製することもできる。発泡体の原料としては、通常、ポリマー含有量が55〜70重量%、安定な発泡体を形成し得ることから、好ましくは60〜68重量%のエマルションが用いられる。
【0009】
ゴム系ポリマーとしては、天然ゴムのほか;IR、BR、SBR、カルボキシル変性SBR、NBR、カルボキシル変性NBR、EPM、EPDM、CR、ウレタンゴムのような合成ゴム、およびそれらの共重合体、ならびにそれらのポリマーブレンドが例示される。特に平滑性を求められる用途には、IRか、またはIRを15重量%以上含むポリマーブレンドが好ましく、耐油性を必要とする用途には、IRと組み合わせるポリマーとしてNBRが特に好ましい。
【0010】
樹脂系ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリブテン、オレフィン系共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン系共重合体、(メタ)アクリルエステル系(共)重合体;ならびにこれら相互の共重合体およびポリマーブレンドのような熱可塑性樹脂;さらに、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂が例示される。これらのうち、製造が容易なことから、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0011】
これらのゴム系および樹脂系エマルションには、乳化重合に用い、またはポリマーの乳化に用いた、脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のような界面活性剤などを含有することができる。
【0012】
本発明に用いられる(B)起泡剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸のような脂肪酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウムのようなサルコシン塩;やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムのような硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸塩;塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムのようなカチオン性界面活性剤などが例示される。
【0013】
(B)起泡剤の配合量は、上記ポリマー100重量部あたり1.0〜6.0重量部、好ましくは2.0〜5.0重量部である。1.0重量部未満では泡が発生しにくく、6.0重量部を越えると泡立ちが激しくて、均一な泡が得られない。起泡剤は、ラテックスを調製する際またはその前に原料に配合してもよく、調製されたラテックスに配合してもよい。
【0014】
本発明に用いられる(C)気泡安定剤としては、塩化エチルのような塩化アルキルを、ホルムアルデヒドおよびアンモニアと反応させて得られる反応生成物;アルキル第四級アンモニウムクロリド;ならびにアルキルアリールスルホン酸塩などが用いられ、気泡安定効果が優れることから、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニアの反応生成物が好ましい。
【0015】
(C)気泡安定剤の配合量は、(A)成分中のポリマー100重量部あたり0.5〜6.0重量部、好ましくは1.0〜5.0重量部である。0.5重量部未満では均一な気泡を形成することができず、6.0重量部を越えるとゲル化時間が長くなる。気泡安定剤は、ラテックスを調製する際またはその前に原料に配合してもよく、調製されたラテックスに配合してもよい。
【0016】
エマルション組成物は、上記(A)、(B)および(C)の各成分を必須成分として含み、さらに架橋剤のような任意成分を含んでもよい発泡体形成用組成物である。ただし、(B)および(C)成分の配合順序は任意であって、たとえばO/W型エマルションの場合、(A)成分の基本組成である、未架橋もしくは部分架橋されたゴム、または樹脂であるポリマーやその前駆体が、水中に分散した基本ラテックスを調製する際に、架橋剤および(B)成分を配合し、得られたラテックスに、さらに(C)成分を配合しても差支えない。
【0017】
本発明において、ポリマーが天然または合成ゴムの場合、(A)成分中の未架橋または部分架橋ポリマーを架橋して、ゴム状弾性体を形成させるために、一般に架橋剤を配合する。架橋剤は、ポリマーの種類、および架橋反応機構に応じて、硫黄または硫黄化合物、有機過酸化物、フェノール化合物などが用いられる。硫黄による架橋の場合、コロイド状硫黄、微粉末硫黄のほか;二塩化硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドのような硫黄化合物などを用いることができる。また、2−メルカプトベンゾチアゾールのような加硫促進剤を併用することがある。有機過酸化物による架橋の場合、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、m−トルイルペルオキシドのようなアシルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブトキシペルオキシ)ヘキサンのようなアルキルペルオキシド;t−ブトキシペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノアート、t−ブトキシペルオキシベンゾアートのようなペルオキシエステル;1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサのようなペルオキシケタール;t−ブトキシペルオキシイソプロピルカルボナート、t−ブトキシペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボナートのようなペルオキシカルボナートなどの有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、モレキュラーシーブのような無機粉末に吸着させたり、炭化水素や可塑剤に溶解したり、ポリジメチルシロキサンのような不活性の液体に混和したりして安定化したものを、配合に供してもよい。フェノール化合物による架橋の場合、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂を用いることができる。
【0018】
架橋剤の配合量は、ポリマーの種類、架橋機構および架橋剤によっても異なるが、良好なゴム状弾性体を得るために、上記ポリマー100重量部あたり通常0.02〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜6.0重量部である。架橋剤は、ラテックスを調製する際またはその前に原料に配合してもよく、調製されたラテックスに配合してもよい。
【0019】
ポリマーが熱硬化性樹脂の場合、(A)成分中の未硬化または半硬化ポリマーを硬化させるための硬化触媒を配合することができる。硬化触媒は、樹脂の種類によっても異なるが、亜鉛、スズ、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルトなどの金属の、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸のようなカルボン酸の塩;トリエタノールアミンのようなアミン類などを用いることができる。硬化触媒の配合量は、上記ポリマー100重量部あたり通常0.1〜5.0重量部であり、好ましくは0.5〜4.0重量部である。
【0020】
上記ラテックス組成物に、さらに、老化防止剤を配合することができる。老化防止剤としては、N−フェニル−N′−(p−トルエンスルホニル)−p−フェニレンジアミンのようなジフェニルアミン系化合物;芳香族アミンと脂肪族ケトンの縮合物;2−メルカプトベンゾイミダゾールやその亜鉛塩のようなイミダゾール系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールのようなフェノール系化合物などが例示される。老化防止剤の配合量は、(A)成分中のポリマー100重量部あたり0.2〜5.0重量部が好ましい。
【0021】
上記ラテックス組成物に、必要に応じて、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カゼイン、ポリリン酸ナトリウムのような分散剤;キレート化剤のような安定剤;グアールガム、キサンタンガムのような増粘剤;ポリオルガノシロキサンのような整泡剤、着色剤などを配合することができる。
【0022】
上記エマルション組成物に、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化カルシウムのようなヘキサフルオロケイ酸塩;またはシクロヘキシルアミンの酢酸塩、スルファミン酸塩のようなシクロヘキシルアミン塩などのゲル化剤を添加してゲル化させるか、または亜鉛アンモニウム錯塩、2−メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩、ポリプロピレングリコール、ポリメチルビニルエーテルのような感熱剤を添加して、40〜100℃に加熱することにより、エマルション組成物を凝固させることができる。
【0023】
本発明に用いられるエマルション組成物は、たとえば、撹拌混合槽などの混合手段を用いて、必要な各成分および添加剤を配合して調製した本発明の組成物に、上記のゲル化剤を添加して空気を混入することにより、発泡とゲル化を行って、発泡したゲル状物を形成させることができる。混合は、撹拌混合機のような混合手段を用いて30分以上行うことが好ましい。最大せん断速度は、好ましくは10〜10,000min-1、さらに好ましくは100〜10,000min-1、特に好ましくは3,000〜7,000min-1である。ここで、せん断速度は、撹拌混合槽による場合、式:
e=(PπS)/V
(式中、e:せん断速度(min-1)、P:撹拌羽根の翼径(mm)、π:円周率、S:回転数(min-1)、V:撹拌羽根と混合機壁面との最小クリアランス(mm)である)
によって定義される。ゲル化剤の量は、組成物中のポリマー100重量部に対して1.0〜10重量部が好ましい。
【0024】
本発明に用いられる多孔性フィルムは、本発明のバックアップ材においてスキン層として寄与するものである。フィルムの両面の間を貫通する連続気泡を有する高分子フィルムであれば、その材質は、ゴムでも樹脂でもよい。ゴムとしては、NR、IR、NBR、SBR、CR、EPDMなど;樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが例示され、柔軟性に優れ、かつ弾性率が高いことからウレタン樹脂が好ましい。
【0025】
多孔性フィルムの平均細孔径は、耐水性に優れ、かつ少量の水を吸収できることから、0.2〜15μmであり、0.3〜10μmが好ましく、0.5〜8.0μmがさらに好ましい。平均細孔径が0.2μm未満では、吸水性が少なく、研磨対象との間に水膜を生じて研磨効果が得られない。また15μmを越えると吸水性が多すぎて、充分な研磨ができない。
【0026】
多孔性フィルムの厚さは、磨耗に耐えて繰り返し使用できることから1〜200μmであり、50〜150μmが好ましい。厚さが1μm未満では、吸水性が多すぎて研磨に適さず、また機械的にも弱くて、使用中に磨耗や破損を生じる。また厚さが200μmを越えても、それなりの効果が得られない。
【0027】
研磨用バックアップ材の吸水量は、充分な研磨効果を生じるために、後述の実施例における測定法で、0.05〜3.5g/pcが好ましく、0.1〜1.0g/pcがさらに好ましい。
【0028】
本発明においては、上述の多孔性フィルムの一方の表面に、上述のエマルション組成物を流延し、水分を揮発させるとともに発泡させて、ポリマー発泡体層を形成させる。ポリマーがゴムの場合は、ゴムと架橋剤の種類に応じて、たとえば50〜200℃の硬化温度に加熱して、必要に応じてエマルション組成物に配合した架橋剤や触媒を機能させることにより、硬化した発泡ゴムからなるポリマー発泡体層を得る。ポリマーが熱硬化性樹脂の場合は、同様に硬化温度に加熱して、必要に応じてエマルション組成物に配合した硬化触媒を機能させるなどの方法により、硬化した発泡樹脂からなるポリマー発泡体層を得る。ポリマーが熱可塑性樹脂の場合には、水分の揮発と発泡に必要な条件に加熱して、ポリマー発泡体層を得る。このようにして得られたポリマー発泡体層は、本発明のバックアップ材においてスキン層として寄与するものである。
【0029】
ポリマー発泡体層の厚さは、磨耗に耐えて繰り返し使用できることから通常0.2〜2.0mmであり、0.5〜1.0mmが好ましい。ポリマー発泡体層は、独立気泡でも連続気泡でもよく、その平均セル径または細孔径は、水分を保持できることから、通常10〜100μmであり、20〜80μmが好ましい。そのセル径または細孔径は、たとえば平均セル径または細孔径の50〜150%の範囲に、形成されたセルの90%以上が含まれる分布を示すように、均質であることが好ましい。
【0030】
上述の流延、乾燥と発泡により、多孔性フィルムの一方の面にポリマー発泡体層が接着した複層構造のバックアップ材を製造することができる。
【0031】
本発明のバックアップ材の多孔性フィルム側の表面に、半導体ウェーハのような研磨対象を固着させて、研磨材によって研磨することができる。すなわち、バックアップ材の多孔性フィルムをスキン層、ポリマー発泡体をコア層として用いる。この際、表面を水で湿らせることにより、少量の水がスキン層を通ってコア層に保持され、表面に浸出しないことにより、研磨対象を保持することができる。研磨終了後、手ではがすことにより、研磨対象をバックアップ材より容易に脱離させることができる。
【0032】
各種寸法の物品、たとえば各種寸法のガラス板の研磨に、反覆してバックアップ材として用いる場合、研磨の際に加えられる圧縮力によってバックアップ材がひずむと、バックアップ材表面の平滑性が失われ、寸法のより大きい物品の研磨に用いることができない。したがって、バックアップ材の圧縮残留ひずみは、小さい方が好ましく、30%以下であることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明のバックアップ材は、表面が平滑で、かつ研磨対象を固着させて、応力を伴う研磨のような加工を行うことができ、しかも、研磨などの作業を終了した後、研磨対象を容易に脱離させることができる程度の軽い粘着性を有する。そのうえ、バックアップ材の製造に有機溶媒を用いる必要がないので、作業環境を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下の例で、特にことわらない限り、部は重量部、組成の%は重量%を表す。
【0035】
実施例および比較例に、次のような原料および多孔性ウレタン樹脂フィルムを用いた。
A−1:合成IRラテックス、固形分63%、ポリマー分60%
B−1:オレイン酸カリウム
C−1:塩化エチル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物
F−1:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径0.3μm、厚さ100μm
F−2:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径1.0μm、厚さ100μm
F−3:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径25μm、厚さ100μm
F−4:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径1.0μm、厚さ0.5μm
ただし、フィルムF−3およびF−4は、比較のためのフィルムである。
【0036】
実施例および比較例によって得られたポリマー発泡体層の表面状態、見掛け密度、機械的強さ、粘着性および圧縮残留ひずみを、次のようにして測定した。
見掛け密度:JIS K6400に準じて、室温で測定した。
引張り強さ・伸び:JIS K6400に準じ、1号形ダンベルにより、室温で測定した。
表面状態:電子顕微鏡により、シートから無作為に選択した3箇所の部分の、発泡体の1cm×1cmの視野について、フォーム表面のピンホールの数を観察し、その数の平均値から表2の脚注に示すような3段階のレイティングによる評価を行った。
粘着性:ステンレス台に幅30mmの両面粘着テープを貼り、それに同じ幅のフォーム試料を重ねて貼り付け、オートグラフ(島津製作所(株)商品名)により、引きはがし速度200mm/minで、引きはがしに必要な力を求めた。測定を、ドライ(成形したフォームそのもの)とウェット(フォームに水を50%含浸した状態)の2つの状態についてそれぞれ行った。
圧縮残留ひずみ:厚さ0.8mmのシートを重ね合わせて、50mm×50mm、厚さ24.8mmの試料を作製し、これをJIS K6400の方法に準じて、温度25±1℃、厚さ方向の圧縮率50%で、22時間の圧縮を行ったときの残留ひずみ率を測定した。
残留ひずみ率(%)=〔(t0−t1)/t0〕×100
0:初めの試験片の厚さ(mm)
1:試験後の試験片の厚さ(mm)
吸水量:ステンレス板に、100mm×100mmの試料の、フィルム側とは反対の面を両面テープで貼り付けた。ついでポリビニルアルコール製スポンジに水を含ませて、試料の上に荷重500gでこすり付けることを1,000回繰り返した。試料をはずして、その吸水量を測定し、試料1個あたりの重量で示した。
【0037】
実施例1、2、比較例1、2
表1に示す配合比により、撹拌混合槽に、ポリマーラテックスA−1を仕込み、ゆっくり撹拌しながら、これにB−1およびC−1を添加した。ただし、表1において、A−1の配合量は、ラテックスに含まれるポリマーの量で示す。ついで、せん断速度が4,000m-1になるように室温で30分撹拌して、均質なラテックス混合物を調製した。これをポリウレタン樹脂製多孔性シートF−1〜F−4の、剥離剤層側の表面に流延し、160℃で10分加熱することにより、架橋、接着と発泡を行わせて、1m×1m、厚さ0.8mmの連続気泡ポリマー発泡体層と多孔性フィルムからなるシートを作製した。これを所定の寸法に切断して、前述の測定方法による評価に供した。
【0038】
比較例3
ポリマーラテックスA−1より、実施例1などと同様に調製したラテックス混合物を、剥離処理したPETフィルム表面に流延して、厚さ0.8mmのシートを作製した。このシートから得た試料を、実施例1、2および比較例1、2と同様の評価に供した。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1、2および比較例1〜3のフォームシートの評価結果は、表2のとおりである。表2から明らかなように、本発明による合成ゴムフォームシートは、優れた機械性質を示し、表面の平滑性に優れていてピンホールがなく、バックアップ材に好適な吸水量を示し、圧縮残留ひずみが小さいなど、半導体ウェーハなどの研磨の際のバックアップ材として好適な、表面状態および粘着性を示した。
【0041】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の研磨用バックアップ材は、半導体ウェーハ、ガラス、金属などの小片の表面を研磨する際のバックアップ材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリマー含有相と水相からなるポリマーエマルション、該エマルション中のポリマーが100重量部になる量;
(B)起泡剤 1.0〜6.0重量部;および
(C)気泡安定剤 0.5〜6.0重量部
を含むエマルション組成物を乾燥、発泡させて得られたポリマー発泡体層と、平均細孔径0.2〜15μm、厚さ1〜200μmの連続気泡の多孔性フィルムを含む研磨用バックアップ材。
【請求項2】
(A)ポリマー含有相と水相からなるポリマーエマルション、該エマルション中のポリマーが100重量部になる量;
(B)起泡剤 1.0〜6.0重量部;および
(C)気泡安定剤 0.5〜6.0重量部
を含むエマルション組成物を、平均細孔径0.2〜15μm、厚さ1〜200μmの連続気泡の多孔性フィルムの一方の面に流延し、乾燥、発泡させてポリマー発泡体とする工程を含む、請求項1記載の研磨用バックアップ材の製造方法。

【公開番号】特開2006−272522(P2006−272522A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97635(P2005−97635)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】