説明

研磨装置

【課題】研磨処理に掛かる時間を長くすること無く、砥石の偏摩耗を抑制することができる研磨装置の提供。
【解決手段】角柱状シリコンインゴットWK1のR面角部を、リング状の各砥石31a,32aに対してワーク移動機構の移動方向と直交する方向に揺動移動させつつ、各砥石31a,32aを回転させて研磨するので、各砥石31a,32aの広範囲に角柱状シリコンインゴットWK1のR面角部を接触させることができる。したがって、各砥石31a,32aをリング状として偏摩耗を抑制することができ、かつR面角部と各砥石31a,32aとの接触部分を増やして、研磨処理に掛かる時間を長くせずに済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角柱状シリコンインゴットの長手方向に沿って延在する角部を研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールは、略正方形に形成された複数枚の太陽電池用シリコンウェハ(以下、単にウェハと言う)を備えている。太陽電池モジュールは、複数枚のウェハを互いに接近させて複数段/複数列で並べて形成されている。そして、太陽電池モジュールの発電効率をより高めるにはウェハの高品質化が必須の条件であり、例えばウェハの成形精度を向上させることでより多くのウェハをより接近させて並べることが可能となる。これにより、太陽電池モジュールの単位面積当たりの発電効率を向上させることができる。
【0003】
ウェハの成形精度を向上させる技術としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1には、円柱状の単結晶シリコンインゴットを角柱状に切削したものや、鋳造成形により形成した多結晶シリコンインゴットを角柱状に切り出したものを加工対象とし、各シリコンインゴットの長手方向に沿って延在する角部等を研磨して平滑化する技術が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されたシリコンブロックの研削研磨機(研磨装置)は、床面に固定された基台を備え、基台上には、ワークとしてのシリコンブロック(シリコンインゴット)を保持するワーク保持装置と、ワーク保持装置にシリコンブロックを供給するワーク供給装置とが設けられている。また、基台上には、シリコンブロックの角部等を回転しながら研磨する円盤状の砥石を備えた研削/研磨装置が移動自在に設けられている。
【0005】
研削/研磨装置は、ワーク保持装置に保持されたシリコンブロックに向けて移動し、砥石の回転中心軸にシリコンブロックの角部等を接触させ、当該状態のもとで砥石を回転駆動するとともに、研削/研磨装置をシリコンブロックの長手方向に沿うよう移動させ、これによりシリコンブロックの角部等を研削/研磨するようにしている。なお、シリコンブロックの研磨部位の切り替えは、ワーク保持装置の旋回用モータを回転駆動することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−233794号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された研磨装置によれば、円盤状の砥石を用い、その回転中心軸でシリコンブロックの角部等を研磨するようにしている。したがって、砥石の外周部分と中心部分とでは回転速度に大きな差が生じ、つまり砥石の外周部分の回転速度が中心部分の回転速度よりも速くなり、砥石の外周部分が中心部分に比して早期に摩耗(偏摩耗)するという問題があった。砥石の偏摩耗が進んだ状態で研磨加工すると、製品毎に平滑化状態が異なるようなバラツキが発生し易いという問題を生じる。
【0008】
そこで、例えば、径方向に沿う肉厚寸法を小さく抑えたリング状の砥石を用い、外周部分と内周部分とで回転速度の差を略無くして、砥石の偏摩耗を抑制することが考えられる。しかしながら、この場合には、シリコンブロックと砥石との接触部分が減少するため、シリコンブロックの研磨処理に掛かる時間が長くなるという別の問題を生じ得る。
【0009】
本発明の目的は、研磨処理に掛かる時間を長くすること無く、砥石の偏摩耗を抑制することができる研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の研磨装置は、角柱状シリコンインゴットの長手方向に沿って延在する角部を研磨する研磨装置であって、床面に設置され、前記床面の水平方向に延在する基台と、前記基台に設けられ、前記基台の長手方向に沿うよう移動するワーク移動機構と、前記ワーク移動機構の移動方向前後側に設けられ、前記角柱状シリコンインゴットを長手方向両側から挟持するチャックと、前記基台に設けられ、前記基台の短手方向に沿うよう移動するワーク研磨機構と、前記ワーク研磨機構の前記角柱状シリコンインゴット側に設けられ、前記角部に接触する研磨具とを備え、前記角柱状シリコンインゴットの前記角部を、前記研磨具に対して前記ワーク移動機構の移動方向と直交する方向に往復移動させつつ、前記研磨具を回転させて研磨することを特徴とする。
【0011】
本発明の研磨装置は、前記チャックを駆動源を介して正逆方向に回転自在に設け、前記駆動源の回転駆動により前記角柱状シリコンインゴットを揺動運動させ、前記角部を往復移動させることを特徴とする。
【0012】
本発明の研磨装置は、前記角部の前記研磨具に対する往復移動の基準位置を、前記研磨具の回転中心軸から前記ワーク移動機構の移動方向と直交する方向に所定量オフセットした位置に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の研磨装置によれば、角柱状シリコンインゴットの角部を、研磨具に対してワーク移動機構の移動方向と直交する方向に往復移動させつつ、研磨具を回転させて研磨するので、研磨具の広範囲に角柱状シリコンインゴットの角部を接触させることができる。したがって、円盤状の砥石を用いたとしても砥石の偏摩耗を抑制することができ、ひいては早期に製品毎にバラツキが発生するのを抑えることができる。また、リング状の砥石を用いたとしても角部と研磨具との接触部分を増やすことができるので、研磨処理に掛かる時間を長くさせずに済む。
【0014】
本発明の研磨装置によれば、チャックを駆動源を介して正逆方向に回転自在に設け、駆動源の回転駆動により角柱状シリコンインゴットを揺動運動させ、角部を往復移動させる。したがって、角柱状シリコンインゴットを回転させて角部を研磨する場合に比して角部と研磨具との非接触時間を短くでき、角部の研磨処理に掛かる時間を短縮することができる。また、角部を円弧形状に研磨することができるので、予め円柱状に形成された単結晶シリコンインゴットを加工対象とした場合に、その角部の研磨処理に掛かる時間を短縮することができる。
【0015】
本発明の研磨装置によれば、角部の研磨具に対する往復移動の基準位置を、研磨具の回転中心軸からワーク移動機構の移動方向と直交する方向に所定量オフセットした位置に設けるので、リング状の砥石を用いた場合に、角部と研磨具との接触部分をより増やすことができ、研磨処理に掛かる時間をより長くさせずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は単結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図、(b)は多結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図である。
【図2】第1実施の形態に係る研磨装置を横方向から見た側面図である。
【図3】図2の研磨装置を上方から見た平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う部分断面図である。
【図5】図3のB−B線に沿う部分断面図である。
【図6】角柱状シリコンインゴットとワーク研磨機構との位置関係を説明する説明図である。
【図7】ワーク移動機構の詳細構造を説明する説明図である。
【図8】図7のC−C線に沿う部分断面図である。
【図9】(a),(b)は、角柱状シリコンインゴットの揺動状態を説明する説明図である。
【図10】(a),(b)は、第1実施の形態に係る研磨装置の研磨範囲と従来例の研磨装置の研磨範囲とを比較する比較図である。
【図11】第2実施の形態に係る研磨装置を説明する図6に対応した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る研磨装置の説明に先立ち、加工対象となる太陽電池用シリコンインゴット(ワーク)の加工手順について、図面を用いて詳細に説明する。図1(a)は単結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図、(b)は多結晶シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図を表している。
【0018】
図1(a)に示すように、単結晶シリコンインゴットは、シリコン原料を坩堝の中で溶かし、回転させながら徐々に引き上げることで、1つの大きな結晶からなる略円柱形状に形成されている。一方、図1(b)に示すように、多結晶シリコンインゴットは、例えばシリコン原料を鋳造成形することにより、多数の小さな結晶からなる略直方体形状に形成されている。
【0019】
単結晶シリコンインゴットおよび多結晶シリコンインゴットは、それぞれ角柱加工(切断)を経て断面が略正方形の角柱状に形成され、さらに対向する側面および角部を研磨することで形状が整えられる。その後、研磨加工を経た角柱状シリコンインゴットは、ワイヤソーを用いてスライス加工され、厚さ1mm程度の複数枚のウェハとなる。ここで、単結晶シリコンインゴットの角部は円弧形状のR面角部となっており、多結晶シリコンインゴットの角部は平坦形状のC面角部となっている。
【0020】
本発明に係る研磨装置は、角柱状シリコンインゴットの対向する側面および角部を研磨して形状を整えるための研磨加工に用いられ、以下、その詳細について図面を用いて説明する。
【0021】
図2は第1実施の形態に係る研磨装置を横方向から見た側面図を、図3は図2の研磨装置を上方から見た平面図を、図4は図3のA−A線に沿う部分断面図を、図5は図3のB−B線に沿う部分断面図を、図6は角柱状シリコンインゴットとワーク研磨機構との位置関係を説明する説明図を、図7はワーク移動機構の詳細構造を説明する説明図を、図8は図7のC−C線に沿う部分断面図をそれぞれ表している。
【0022】
図2および図3に示すように、研磨装置10は、工場等の敷地内における床面FLに設置される基台11を備え、基台11は、上方から見ると床面FLの水平方向に延在するよう略長方形形状に形成されている。基台11には、複数の調節脚12が設けられ、床面FLに凹凸がある場合に各調節脚12の長さをそれぞれ調節することで、基台11を床面FLにがたつくことなく設置できるようにしている。
【0023】
基台11には、複数の支柱13の一端側(図2中下側)が固定され、各支柱13の他端側(図2中上側)は、床面FL側とは反対側、つまり基台11の上方に延びている。各支柱13の他端側には、床面FLの水平方向に延在する一対のワーク懸垂梁14が設けられ、各ワーク懸垂梁14は、基台11の長手方向に沿って水平に設けられ、かつ基台11の上方に基台11から所定の間隔をもって設けられている。各ワーク懸垂梁14は、各支柱13を介して基台11に固定され、各ワーク懸垂梁14のさらに上方には、複数のサブ支柱15を介して制御基板やハーネス等(図示せず)を収納する制御ボックス16が設けられている。
【0024】
基台11は、その長手方向に沿って、ワーク搬入領域とワーク加工領域とに分けられ、ワーク搬入領域側(図2中左側)からワーク加工領域側(図2中右側)に向けて、基台11の床面FLからの高さ寸法が徐々に低くなるよう傾斜している。基台11の床面FLと近接する部位(図2中右側)には、ワーク研磨機構30の研磨動作により生じた研磨粉や研磨液等の研磨ゴミ(図示せず)を、研磨装置10の外部に排出するための研磨ゴミ排出孔11aが設けられている。
【0025】
基台11の長手方向他側、つまり基台11のワーク加工領域側には、基台11の長手方向に沿って基台11を覆うよう皿状の研磨ゴミ受け17が設けられている。研磨ゴミ受け17は、基台11と各ワーク懸垂梁14との間に設けられ、各支柱13に固定されている。研磨ゴミ受け17は、基台11の傾斜に倣って傾斜しており、研磨ゴミ受け17の床面FLと近接する部位(図中右側)には、図3に示すように排出口17aと傾斜部17bとが設けられている。
【0026】
排出口17aは中空パイプ状となっており、その先端側は基台11の研磨ゴミ排出孔11aに臨んでいる。排出口17aは、研磨ゴミ受け17に溜まった研磨ゴミを研磨装置10の外部に排出するもので、傾斜部17bは、研磨ゴミ受け17に溜まった研磨ゴミを排出口17aに向けて誘導するものである。これにより、ワーク研磨機構30の研磨動作により生じた研磨ゴミは、その殆どが研磨ゴミ受け17に受け止められて傾斜部17bおよび排出口17aを介して、研磨装置10の外部に排出される。なお、ワーク研磨機構30の動作状態によっては、研磨ゴミが研磨ゴミ受け17以外の部分に飛散する場合があるが、この場合には、研磨ゴミは基台11上に落ち、その後、研磨ゴミ排出孔11aから研磨装置10の外部に排出されるようになっている。
【0027】
研磨装置10は、その全体が筐体18(図2中二点鎖線)によって覆われており、これによりワーク研磨機構30の研磨動作によって生じた研磨ゴミが、研磨装置10の外部に飛散しないようにしている。また、筐体18のワーク加工領域に対応する部位等には、ワーク研磨機構30を外部から目視可能とするために確認窓(図示せず)が設けられ、これにより作業者は研磨装置10の動作状態や汚れ具合等を確認することができる。
【0028】
基台11の長手方向一側(図中左側)には、ワーク供給テーブル20が設けられている。ワーク供給テーブル20は、基台11のワーク搬入領域に設けられ、ワークとしての角柱状シリコンインゴットWK1を、基台11に供給するようになっている。ワーク供給テーブル20は、図3および図4に示すように、基台11の短手方向に移動可能なテーブル21と、角柱状シリコンインゴットWK1を掴むワーククランプ22とを備えている。ここで、第1実施の形態における角柱状シリコンインゴットWK1は、角柱加工(切断)を終えた単結晶シリコンインゴットとなっている(図1参照)。つまり、角柱状シリコンインゴットWK1の長手方向に沿って延在する角部は、円弧形状のR面角部となっている。
【0029】
テーブル21は、図4に示すように、基台11の短手方向に延び、かつ基台11に固定されたスライドレール23に摺動自在に設けられている。スライドレール23の一端側(図中右側)は筐体18外に設けられ、スライドレール23の他端側(図中左側)は筐体18内に設けられている。これにより、図示しない駆動機構、例えばボールネジ機構等によりテーブル21を移動させることで、筐体18外でテーブル21にセットした角柱状シリコンインゴットWK1を、筐体18内のワーク移動機構40に供給することができる。
【0030】
ワーククランプ22は、テーブル21上に設けられ、図示しないアクチュエータを駆動することにより、角柱状シリコンインゴットWK1をその短手方向から挟持するようになっている。ワーククランプ22には、角柱状シリコンインゴットWK1を挟持する機能に加え、角柱状シリコンインゴットWK1の回転中心軸P1および幅寸法Wを割り出す第1割り出し機構22aを備え、角柱状シリコンインゴットWK1の回転中心軸P1および幅寸法Wを割り出すことにより、後に行われるワーク移動機構40による角柱状シリコンインゴットWK1の揺動制御や研磨部位の切り替え制御等を、精度良く行えるようにしている。
【0031】
ここで、図4に示す符号24は、基台11の短手方向に沿うワーク供給テーブル20とワーク移動機構40との間に設けられ、角柱状シリコンインゴットWK1の長さ寸法L(図3参照)を割り出す第2割り出し機構を示している。第2割り出し機構24は、角柱状シリコンインゴットWK1の長さ寸法Lを割り出して、ワーク移動機構40の制御量、つまり角柱状シリコンインゴットWK1の移動量等を決定するために用いられる。これにより、長さ寸法の異なる角柱状シリコンインゴットWK1に対応して、効率良く研磨できるようになっている。
【0032】
図3に示すように、基台11のワーク供給テーブル20よりも長手方向他側(図中右側)には、基台11の短手方向外側に対向して突出するよう一対の研磨機構基台11bが一体に設けられ、各研磨機構基台11b上にはワーク研磨機構30が設置されている。つまり、基台11の長手方向一側にワーク供給テーブル20が設けられ、基台11の長手方向他側かつ基台11の短手方向外側にワーク研磨機構30が設けられている。
【0033】
ワーク研磨機構30は、図2に示すように、基台11のワーク加工領域に設けられ、角柱状シリコンインゴットWK1の対向する側面およびR面角部を、筐体18内で研磨するようになっている。ワーク研磨機構30は、図3に示すように、基台11の長手方向一側に設置される一対の粗研磨ユニット31と、基台11の長手方向他側に設置される一対の仕上げ研磨ユニット32とを備えており、各研磨ユニット31,32は、基台11を短手方向から挟むようにして対向配置されている。
【0034】
ここで、各研磨ユニット31,32は何れも同じ形状に形成され、図5および図6においては粗研磨ユニット31のみを代表して示している。また、図5においては、ワーク移動機構40とワーク研磨機構30との位置関係を明確にするために、図4と同様にワーク移動機構40を示している。さらに、仕上げ研磨ユニット32に対応する符号を括弧内に示し、粗研磨ユニット31と同じ部分の重複する説明は省略する。
【0035】
粗研磨ユニット31は、角柱状シリコンインゴットWK1側(基台11側)で回転するリング状の粗砥石(研磨具)31aと、粗砥石31aを所定の回転数で回転駆動する駆動モータ(駆動源)31bとを備えている。
【0036】
粗砥石31aの径方向に沿う厚み寸法、つまりリングの厚み寸法は、粗砥石31aの半径寸法の略1/10の厚み寸法に設定され、粗砥石31aは比較的薄肉のリング状に形成されている。これにより、粗砥石31aを回転させた際に、その内周部分と外周部分とで回転速度の差を略無くすようにしている。また、円盤状の砥石に比して慣性モーメントが小さいため、駆動モータ31bの小型化,省電力化を実現している。
【0037】
駆動モータ31bは、図6に示すように回転軸31cを備え、回転軸31cの先端側には椀状の回転体31dが固定されている。回転体31dの開口側には粗砥石31aが一体に設けられ、これにより粗砥石31aは、駆動モータ31bの回転駆動に伴って回転中心軸P2を中心に回転するようになっている。
【0038】
粗研磨ユニット31は、図5に示すように、研磨機構基台11b上に水平移動テーブル33を介して設けられている。水平移動テーブル33は、粗研磨ユニット31を基台11の短手方向に沿わせて移動させるもので、粗研磨ユニット31は水平移動テーブル33の動作により、角柱状シリコンインゴットWK1に対して近接または離間するようになっている。これにより、粗砥石31aの角柱状シリコンインゴットWK1に対する水平方向位置が調整される。
【0039】
水平移動テーブル33には、ボールネジ33aを備えた昇降モータ33bが一体に設けられている。粗研磨ユニット31は、昇降モータ33bの動作により、角柱状シリコンインゴットWK1に対して上下方向に移動するようになっている。これにより、粗砥石31aの角柱状シリコンインゴットWK1に対する上下方向位置が調整される。
【0040】
図6に示すように回転体31dの近傍には、略円盤状に形成された固定フランジ31eが設けられ、当該固定フランジ31eは、粗研磨ユニット31の固定部位(例えばケース等)に固定されている。固定フランジ31eの図中上側部分、つまり床面FL(図5参照)から最も離れた部分には、研磨液ノズル31fが一体に設けられている。研磨液ノズル31fの先端側は、粗砥石31a(角柱状シリコンインゴットWK1)に向けられており、研磨液ノズル31fからは、研磨液としての水Waが吐出されるようになっている。これにより、角柱状シリコンインゴットWK1から研磨粉が飛散するのを防止しつつ、滑らかに研磨できるようにしている。なお、研磨液としては水Waに限らず、研磨剤を含有する研磨液を用いることもできる。
【0041】
仕上げ研磨ユニット32は、粗砥石31aよりもきめ細かい研磨が可能な仕上げ砥石(研磨具)32aを備えている。その他の仕上げ研磨ユニット32の構成部品(駆動モータ32b〜研磨液ノズル32f)は、粗研磨ユニット31の構成部品(駆動モータ31b〜研磨液ノズル31f)と同様に形成されている。また、仕上げ研磨ユニット32は、粗研磨ユニット31と同様に、水平移動テーブル33の動作により角柱状シリコンインゴットWK1に対して近接または離間し、さらに昇降モータ33bの動作により角柱状シリコンインゴットWK1に対して上下方向に移動するようになっている。
【0042】
対向する各粗砥石31aおよび各仕上げ砥石32aの間には、角柱状シリコンインゴットWK1が通過するワーク通過間隙SPが形成され、各研磨ユニット31,32は、ワーク通過間隙SPを通過する角柱状シリコンインゴットWK1を研磨するようになっている。そして、ワーク通過間隙SPの下方には研磨ゴミ受け17の床面FLから離間した側が対向しており、これにより各研磨ユニット31,32の研磨動作により生じた研磨ゴミの殆どが研磨ゴミ受け17に落ちるようになっている。
【0043】
図2に示すように、各ワーク懸垂梁14には、基台11の長手方向に延在するレール41がそれぞれ取り付けられており、各レール41には、ワーク移動機構40が移動自在に設けられている。ワーク移動機構40は、角柱状シリコンインゴットWK1を懸垂支持し、ワーク供給テーブル20とワーク研磨機構30との間、つまりワーク搬入領域とワーク加工領域との間で角柱状シリコンインゴットWK1を移動させるようになっている。
【0044】
ワーク移動機構40は、図7および図8に示すように、各レール41に懸垂状態で支持される本体部42と、角柱状シリコンインゴットWK1を挟持するチャック部43とを備えている。本体部42には、基台11の短手方向両側に突出する一対のフランジ部42aが一体に設けられ、各フランジ部42aには、各レール41に摺動自在に設けられる複数のガイド44が固定されている。各ガイド44は、本体部42の長手方向に沿うよう各レール41に対応して略等間隔で3つずつ設けられている。これにより、本体部42を各レール41に沿わせてがたつくこと無くスムーズに移動させることができる。
【0045】
本体部42の基台11側とは反対側(図中上側)には、ワーク移動機構40を各レール41に沿わせて移動させるための移動用モータ45が設けられている。移動用モータ45は、図8に示すようにモータケース45aを備え、モータケース45a内には、供給される駆動電流の大きさにより所定の回転数/回転方向で回転するモータ軸45bと、モータ軸45bにより回転駆動されるナット45cとが回転自在に設けられている。モータ軸45bとナット45cとの間には、タイミングベルトや金属チェーン等よりなる動力伝達部材45d(詳細図示せず)が掛け渡されており、動力伝達部材45dを介してモータ軸45bの回転力がナット45cに伝達される。
【0046】
ここで、各ワーク懸垂梁14のうちの一方のワーク懸垂梁14には、基台11の長手方向に沿って延在し、一方のレール41に近接するネジ軸45e(図2参照)が固定され、ナット45cはこのネジ軸45eにネジ結合されている。これにより、移動用モータ45に駆動電流を供給することで、モータ軸45bおよび動力伝達部材45dを介してナット45cが回転駆動され、ワーク移動機構40は各レール41に沿って基台11の長手方向に移動する。
【0047】
図7に示すように、本体部42の基台11側(図中下側)には、角柱状シリコンインゴットWK1を、その長手方向両側から挟持するチャック部43が設けられている。チャック部43は、固定側チャック機構46と移動側チャック機構47とを備え、各チャック機構(チャック)46,47は、ワーク移動機構40の移動方向前後側(図中左右側)にそれぞれ設けられている。
【0048】
固定側チャック機構46は、本体部42の基台11側に一体に設けられた固定側チャック本体46aと、固定側チャック本体46a内に設けられ、正逆方向に回転可能な固定側チャック用モータ46bと、角柱状シリコンインゴットWK1の長手方向一側を支持する固定側チャック46cとを有している。
【0049】
移動側チャック機構47は、本体部42の基台11側で本体部42の長手方向に沿って移動自在に設けられた移動側チャック本体47aと、移動側チャック本体47a内に設けられ、固定側チャック用モータ46bと同期回転する移動側チャック用モータ47bと、角柱状シリコンインゴットWK1の長手方向他側を支持する移動側チャック47cと、本体部42と移動側チャック本体47aとの間に設けられたスライダ機構48とを有している。
【0050】
各チャック用モータ46b,47bは、角柱状シリコンインゴットWK1をその回転中心軸P1を中心に所定角度(例えば90°)単位で回転駆動し、角柱状シリコンインゴットWK1の対向する側面またはR面角部を、各粗砥石31aおよび各仕上げ砥石32aに対向させるようになっている。また、各チャック用モータ46b,47bは、ワーク研磨機構30により研磨加工を行う際に、所定角度(例えば20°)範囲で正逆方向に回転駆動され、これにより角柱状シリコンインゴットWK1をその回転中心軸P1を中心に揺動させるようになっている。
【0051】
スライダ機構48は、図7および図8に示すように、本体部42の基台11側に固定され、本体部42の長手方向に沿って平行に設けられた一対のチャック用レール48aと、各チャック用レール48aにそれぞれ移動自在に一対ずつ設けられ、移動側チャック本体47aに固定されたチャック用ガイド48bと、各チャック用レール48a間に設けられ、移動側チャック本体47aを各チャック用レール48aに沿って移動させるためのボールネジ機構49とを有している。ここで、各チャック用ガイド48bは、移動側チャック本体47aの長手方向に沿う両端側に設けられ、これにより移動側チャック本体47aを各チャック用レール48aに沿わせてがたつくこと無くスムーズに移動させることができる。
【0052】
ボールネジ機構49は、本体部42に一体に設けられて移動側チャック本体47a(移動側チャック47c)を、角柱状シリコンインゴットWK1に向けて移動させる挟持用モータ49aと、挟持用モータ49aの回転駆動により回転するチャック用ネジ軸49bと、移動側チャック本体47aに固定され、チャック用ネジ軸49bにネジ結合するチャック用ナット49cとを備えている。これにより、挟持用モータ49aに駆動電流を供給することでチャック用ネジ軸49bが回転駆動され、移動側チャック本体47aが本体部42の長手方向に沿って移動し、角柱状シリコンインゴットWK1を固定側チャック46cおよび移動側チャック47cにより挟持できる。
【0053】
次に、以上のように形成した研磨装置10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0054】
図9(a),(b)は角柱状シリコンインゴットの揺動状態を説明する説明図を、図10(a),(b)は第1実施の形態に係る研磨装置の研磨範囲と従来例の研磨装置の研磨範囲とを比較する比較図をそれぞれ表している。
【0055】
[ワークセット工程]
まず、図3および図4に示すように、ワーク供給テーブル20が初期状態にあり、テーブル21が筐体18外にある状態のもとで、作業者またはワーク供給装置(図示せず)により、角柱状シリコンインゴットWK1をテーブル21上にセットする。次いで、研磨装置10のコントロールパネル(図示せず)を操作して研磨装置10を作動させる。すると、ワーク供給テーブル20のワーククランプ22が角柱状シリコンインゴットWK1を挟持するとともに、第1割り出し機構22aにより角柱状シリコンインゴットWK1の回転中心軸P1および幅寸法Wが割り出される。
【0056】
その後、矢印M1方向にテーブル21が移動し、第2割り出し機構24により角柱状シリコンインゴットWK1の長さ寸法Lが割り出される。その後さらに、矢印M1方向にテーブル21が移動して、角柱状シリコンインゴットWK1が筐体18内に搬入され、ワーク移動機構40に角柱状シリコンインゴットWK1が供給される。
【0057】
角柱状シリコンインゴットWK1がワーク移動機構40に供給されると、図7に示すようにワーク移動機構40の挟持用モータ49aが回転駆動される。すると、移動側チャック本体47a(移動側チャック47c)が、角柱状シリコンインゴットWK1に向けて移動(矢印M2参照)し、固定側チャック46cおよび移動側チャック47cにより角柱状シリコンインゴットWK1が長手方向両側から挟持される。ここで、各チャック46c,47cによる挟持力(押圧力)は、例えば、挟持用モータ49aの駆動抵抗の増加を、当該挟持用モータ49aの電流値を監視すること等によって設定される。このようにして、角柱状シリコンインゴットWK1のワーク移動機構40へのセットが完了する。
【0058】
その後、各チャック機構46,47の各チャック用モータ46b,47bが矢印R1方向に同期回転し、これによりワーク研磨機構30の各砥石31a,32aに対して、角柱状シリコンインゴットWK1の各R面角部が対向可能となる。次いで、ワーク移動機構40の移動用モータ45が回転駆動されて、ワーク移動機構40(角柱状シリコンインゴットWK1)が、ワーク研磨機構30に向けて移動する(矢印M3参照)。
【0059】
[研磨加工工程]
角柱状シリコンインゴットWK1がセットされたワーク移動機構40は、各レール41上を滑るように移動して、ワーク搬入領域からワーク加工領域(図2参照)に移動する。その後、角柱状シリコンインゴットWK1がワーク通過間隙SP内に入り、角柱状シリコンインゴットWK1の移動方向先端側が各粗研磨ユニット31に対向したところでワーク移動機構40は一旦停止する。ここで、ワーク移動機構40の移動制御(位置制御)は、移動用モータ45に設けられた磁気式回転センサ等(図示せず)の検出信号に基づいて行われる。
【0060】
次いで、各粗研磨ユニット31の各駆動モータ31bが、所定の回転数で回転駆動され、これに伴い各粗砥石31aが矢印R2方向に回転駆動される。その後、水平移動テーブル33が矢印M4方向に移動し、各粗研磨ユニット31の角柱状シリコンインゴットWK1に対する水平方向位置が調整される。また、昇降モータ33bの回転駆動により粗研磨ユニット31が矢印M5方向に移動して、各粗研磨ユニット31の角柱状シリコンインゴットWK1に対する上下方向位置が調整される。
【0061】
ここで、各粗研磨ユニット31の水平方向への位置調整は、各粗砥石31aが角柱状シリコンインゴットWK1の各R面角部に接触するように調整される。また、各粗研磨ユニット31の上下方向への位置調整は、図6および図9に示すように、各粗砥石31aの上方円弧部分RPが各R面角部に接触するように調整される。
【0062】
なお、各粗砥石31aの回転中心軸P2および角柱状シリコンインゴットWK1の回転中心軸P1は、粗砥石31aの半径寸法と略等しい寸法の離間距離OSの分オフセットされている。つまり、R面角部の往復移動(揺動移動)の基準位置BPは、各粗砥石31aの回転中心軸P2からワーク移動機構40(図7参照)の移動方向と直交する方向に、離間距離OSの分オフセットした位置に配置されている。
【0063】
各R面角部に対する各粗研磨ユニット31の位置調整が終了すると、研磨液ノズル31fから水Waが吐出される。また、各チャック用モータ46b,47bが、図中矢印SW1に示すように20°の角度範囲で正逆方向に同期回転される。つまり、R面角部の揺動移動の基準位置BPから±10°の角度範囲で角柱状シリコンインゴットWK1が揺動駆動される。
【0064】
これにより、角柱状シリコンインゴットWK1の各R面角部が、粗砥石31aに対してワーク移動機構40の移動方向と直交する方向に往復移動して、円弧形状に研磨される。ここで、各粗研磨ユニット31による研磨加工とともに、ワーク移動機構40が矢印M3(図3参照)方向にゆっくりと移動し、これにより角柱状シリコンインゴットWK1の長手方向に沿う各R面角部の全域が研磨されていく。また、ワーク移動機構40は、複数回往復(例えば、2回往復)して研磨するようになっている。
【0065】
ここで、図10(a)に示す本発明に係る研磨装置10の研磨範囲PA1と、図10(b)に示す従来例の研磨装置PDの研磨範囲PA2とを比較すると、研磨範囲PA1の方が研磨範囲PA2よりも広くなっていることが分かる(PA1>PA2)。これは、研磨装置10の方が研磨装置PDよりも、粗砥石31aの各R面角部との接触部分が多く、研磨加工の速度を速くできることを意味している。ここで、研磨装置PDにおいては、研磨装置10と同じ粗砥石31aを使用する一方で、角柱状シリコンインゴットWK1(R面角部)を揺動駆動させずに、粗砥石31aの上下方向中央部分(砥石の中心部分)でR面角部を研磨する構成としている。
【0066】
このように、本発明に係る研磨装置10においては、角柱状シリコンインゴットWK1(R面角部)を矢印SW1の方向に揺動させつつ、ワーク移動機構40(図7参照)を矢印M3方向にゆっくりと移動させることで、リング状の粗砥石31aであっても研磨範囲PA1を広くすること、つまり研磨加工の速度を速くすることができる。
【0067】
その後、角柱状シリコンインゴットWK1の長手方向に沿う各R面角部の研磨加工が完了すると、水平移動テーブル33が移動して各粗研磨ユニット31の角柱状シリコンインゴットWK1に対する水平位置が調整され、角柱状シリコンインゴットWK1から各粗砥石31aが離間する。次いで、各チャック用モータ46b,47bが矢印R1方向に同期回転(90°回転)し、これにより各砥石31a,32aに対して、角柱状シリコンインゴットWK1の他の各R面角部が対向可能となる。その後、水平移動テーブル33が移動して、角柱状シリコンインゴットWK1の他の各R面角部が上記と同様に粗研磨(研磨加工)されていく。
【0068】
ここで、ワーク研磨機構30の研磨動作により生じた研磨ゴミ(研磨粉や研磨液等)は研磨ゴミ受け17に落ち、図3中破線矢印WFに示すように、研磨ゴミ受け17の排出口17aから研磨装置10の外部に排出される。このようにして角柱状シリコンインゴットWK1の各R面角部の粗研磨が完了する。
【0069】
各R面角部の粗研磨が終わった後は、ワーク移動機構40が矢印M3方向に移動する。そして、各仕上げ研磨ユニット32の各駆動モータ32bが、所定の回転数で回転駆動され、これに伴い各仕上げ砥石32aが矢印R3方向に回転駆動される。その後、水平移動テーブル33が矢印M6方向に移動し、各仕上げ研磨ユニット32の角柱状シリコンインゴットWK1に対する水平方向位置が調整される。また、昇降モータ33bの回転駆動により仕上げ研磨ユニット32が矢印M7方向に移動して、各仕上げ研磨ユニット32の角柱状シリコンインゴットWK1に対する上下方向位置が調整される。その後、上記した粗研磨と同様に動作して、角柱状シリコンインゴットWK1の各R面角部の仕上げ研磨(研磨加工)が完了する。
【0070】
なお、角柱状シリコンインゴットWK1の各側面の研磨加工(粗研磨/仕上げ研磨)においては、各砥石31a,32aの上下方向中央部分(砥石の中心部分)を各側面に接触させ、角柱状シリコンインゴットWK1を揺動させずにワーク移動機構40を移動させて研磨するようにする。ただし、昇降モータ33bを正逆回転させることで、各研磨ユニット31,32を所定範囲で上下動させても良く、この場合、上記した理屈と同様に研磨加工の速度を速くすることができる。
【0071】
その後、研磨加工(粗研磨/仕上げ研磨)を終えた角柱状シリコンインゴットWK1は、上述とは逆の手順を辿って研磨装置10外に搬出される。つまり、仕上げられた角柱状シリコンインゴットWK1は、ワーク移動機構40の移動によりワーク加工領域からワーク搬入領域に移動し、その後、ワーク供給テーブル20を介して研磨装置10外に搬出される。
【0072】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る研磨装置10によれば、角柱状シリコンインゴットWK1のR面角部を、リング状の各砥石31a,32aに対してワーク移動機構40の移動方向と直交する方向に揺動移動させつつ、各砥石31a,32aを回転させて研磨するので、各砥石31a,32aの広範囲に角柱状シリコンインゴットWK1のR面角部を接触させることができる。したがって、各砥石31a,32aをリング状として偏摩耗を抑制することができ、かつR面角部と各砥石31a,32aとの接触部分を増やして、研磨処理に掛かる時間を長くせずに済む。
【0073】
また、第1実施の形態に係る研磨装置10によれば、各チャック46c,47cを各チャック用モータ46b,47bを介して正逆方向に回転自在に設け、各チャック用モータ46b,47bの回転駆動により角柱状シリコンインゴットWK1を揺動運動させ、R面角部を揺動移動させるので、角柱状シリコンインゴットW1を回転させてR面角部を研磨する場合に比して、R面角部と各砥石31a,32aとの非接触時間を短くでき、R面角部の研磨処理に掛かる時間を短縮することができる。また、R面角部をその形状に倣って円弧形状に研磨することができるので、単結晶シリコンインゴットの研磨処理に掛かる時間を短縮することができる。
【0074】
さらに、第1実施の形態に係る研磨装置10によれば、R面角部の各砥石31a,32aに対する揺動移動の基準位置BPを、各砥石31a,32aの回転中心軸P2からワーク移動機構40の移動方向と直交する方向に離間距離OSの分オフセットした位置に設けたので、リング状の各砥石31a,32aとR面角部との接触部分を増やすことができ(図10参照)、研磨処理に掛かる時間をより長くさせずに済む。
【0075】
また、第1実施の形態に係る研磨装置10によれば、各砥石31a,32aをリング状に形成したので、従前のような円盤状の砥石に比して軽量化することができる。したがって、各砥石31a,32aの慣性モーメントを小さくして各砥石31a,32aを回転させるための駆動モータ31b,32bを小さくでき、ひいては研磨装置10の小型化および省電力化を図ることができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施の形態に係る研磨装置50について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
図11は第2実施の形態に係る研磨装置を説明する図6に対応した説明図を表している。
【0078】
図11に示すように、研磨装置50は、多結晶シリコンインゴットを切り出して得られた角柱状シリコンインゴットWK2を加工対象とするもので、これに伴い、第1実施の形態に比して研磨装置50の制御内容を異ならせている。
【0079】
角柱状シリコンインゴットWK2は一対のC面角部および側面を備え、これらは何れも平坦形状となっている。そのため、研磨加工中は角柱状シリコンインゴットWK2を揺動移動させずに固定した状態とし、昇降モータ33bを正逆回転させて、各研磨ユニット31,32を、各砥石31a,32aの回転中心軸P2から上下方向にそれぞれ距離LG(例えば10mm)で、平坦形状の延在方向に沿わせて往復移動させている。
【0080】
このように、第2実施の形態に係る研磨装置50は、第1実施の形態に係る研磨装置10に比して、角柱状シリコンインゴットWK1の揺動移動に変えて、各研磨ユニット31,32を、図中矢印SW2に示すように上下方向に所定範囲で往復移動させている。したがって、平坦形状の各C面角部および側面を有する角柱状シリコンインゴットWK2を、迅速かつ高精度で研磨加工できる。
【0081】
ここで、本発明で言う「角部の研磨具に対する往復移動の基準位置」は、角柱状シリコンインゴットWK2の回転中心軸P3となっている。つまり、回転中心軸P3を基準位置として、各砥石31a,32aの上方円弧部分RPが、各C面角部に対して上下方向にそれぞれ距離LGで往復移動するようになっている。
【0082】
以上詳述したように、第2実施の形態に係る研磨装置50においても、第1実施の形態と略同様の作用効果を得ることができる。第1実施の形態に係る研磨装置10は、単結晶シリコンインゴットよりなる角柱状シリコンインゴットWK1(図6参照)を最適な加工対象とし、第2実施の形態に係る研磨装置50は、多結晶シリコンインゴットよりなる角柱状シリコンインゴットWK2(図11参照)を最適な加工材料としている。これらは、研磨装置の制御内容を、各チャック用モータ46b,47bを正逆方向に回転制御するか、または昇降モータ33bを正逆方向に回転制御するかで容易に切り替えることができる。
【0083】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、研磨具としてリング状の各砥石31a,32aを用いたものを示したが、本発明はこれに限らない。つまり、本発明においては、角部を研磨具に対して往復移動させるため、円盤状の砥石を用いたとしてもその偏摩耗が抑えられるので、従前のような円盤状の砥石を採用することもできる。
【0084】
また、上記各実施の形態においては、揺動角度(第1実施の形態)と上下方向への往復移動距離(第2実施の形態)をそれぞれ±10°,±10mmとしたものを示したが、本発明はこれに限らず、±10°,±10mm以上または未満に設定することもできる。なお、これらの揺動角度および上下方向への往復移動距離の設定は、各角部(R面/C面)と各砥石31a,32aとの離間時間をなるべく短くするようにする。これにより、各角部と各砥石31a,32aとの接触時間を長くして、研磨加工の時間が長引くのを抑制する。
【0085】
さらに、上記各実施の形態においては、固定側チャック本体46a(固定側チャック46c)を本体部42に固定し、移動側チャック本体47a(移動側チャック47c)を本体部42に対して移動させるようにしたが、本発明はこれに限らず、逆の関係、つまり固定側チャック本体46aを本体部42に対して移動させるようにし、移動側チャック本体47aを本体部42に固定するようにしても良い。また、各チャック本体46a,47aの双方を本体部42に対して移動させるようにしても良い。
【0086】
また、上記各実施の形態においては、固定側チャック46cおよび移動側チャック47cの双方を、それぞれ固定側チャック用モータ46bおよび移動側チャック用モータ47bにより同期回転するようにしたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、固定側チャック用モータ46bに代えてベアリングを設置し、移動側チャック用モータ47bのみにより角柱状シリコンインゴットWK1,WK2を回転させるようにしても良い。この場合、2つのチャック用モータを同期回転させなくて済むので、制御ロジックや配線の簡素化等を図ることができる。
【0087】
さらに、上各記実施の形態においては、チャック用駆動源,挟持用駆動源および移動用駆動源として、駆動電流を供給することで回転するモータ(電動モータ)であるものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、圧縮エアを供給することで回転する回転部材を備えたモータ(エアモータ)を用いることもできる。
【0088】
また、上記各実施の形態においては、移動側チャック本体47aを、挟持用モータ49aを備えたボールネジ機構49により移動させるものを示したが、本発明はこれに限らず、挟持用駆動源としてエアシリンダや油圧シリンダを用い、これらの直動型駆動源によって、移動側チャック本体47aを移動させることもできる。
【符号の説明】
【0089】
10 研磨装置
11 基台
11a 研磨ゴミ排出孔
11b 研磨機構基台
12 調節脚
13 支柱
14 ワーク懸垂梁
15 サブ支柱
16 制御ボックス
17 研磨ゴミ受け
17a 排出口
17b 傾斜部
18 筐体
20 ワーク供給テーブル
21 テーブル
22 ワーククランプ
22a 第1割り出し機構
23 スライドレール
24 第2割り出し機構
30 ワーク研磨機構
31 粗研磨ユニット
31a 粗砥石(研磨具)
31b 駆動モータ
31c 回転軸
31d 回転体
31e 固定フランジ
31f 研磨液ノズル
32 仕上げ研磨ユニット
32a 仕上げ砥石(研磨具)
32b 駆動モータ
32c 回転軸
32d 回転体
32e 固定フランジ
32f 研磨液ノズル
33 水平移動テーブル
33a ボールネジ
33b 昇降モータ
40 ワーク移動機構
41 レール
42 本体部
42a フランジ部
43 チャック部
44 ガイド
45 移動用モータ
45a モータケース
45b モータ軸
45c ナット
45d 動力伝達部材
45e ネジ軸
46 固定側チャック機構(チャック)
46a 固定側チャック本体
46b 固定側チャック用モータ(駆動源)
46c 固定側チャック
47 移動側チャック機構(チャック)
47a 移動側チャック本体
47b 移動側チャック用モータ(駆動源)
47c 移動側チャック
48 スライダ機構
48a チャック用レール
48b チャック用ガイド
49 ボールネジ機構
49a 挟持用モータ
49b チャック用ネジ軸
49c チャック用ナット
50 研磨装置
BP 基準位置
FL 床面
LG 距離
OS 離間距離
P1〜P3 回転中心軸
PA1,PA2 研磨範囲
PD 研磨装置
RP 上方円弧部分
SP ワーク通過間隙
Wa 水
WK1 角柱状シリコンインゴット(単結晶)
WK2 角柱状シリコンインゴット(多結晶)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角柱状シリコンインゴットの長手方向に沿って延在する角部を研磨する研磨装置であって、
床面に設置され、前記床面の水平方向に延在する基台と、
前記基台に設けられ、前記基台の長手方向に沿うよう移動するワーク移動機構と、
前記ワーク移動機構の移動方向前後側に設けられ、前記角柱状シリコンインゴットを長手方向両側から挟持するチャックと、
前記基台に設けられ、前記基台の短手方向に沿うよう移動するワーク研磨機構と、
前記ワーク研磨機構の前記角柱状シリコンインゴット側に設けられ、前記角部に接触する研磨具とを備え、
前記角柱状シリコンインゴットの前記角部を、前記研磨具に対して前記ワーク移動機構の移動方向と直交する方向に往復移動させつつ、前記研磨具を回転させて研磨することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
請求項1記載の研磨装置において、前記チャックを駆動源を介して正逆方向に回転自在に設け、前記駆動源の回転駆動により前記角柱状シリコンインゴットを揺動運動させ、前記角部を往復移動させることを特徴とする研磨装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の研磨装置において、前記角部の前記研磨具に対する往復移動の基準位置を、前記研磨具の回転中心軸から前記ワーク移動機構の移動方向と直交する方向に所定量オフセットした位置に設けることを特徴とする研磨装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−183592(P2012−183592A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46435(P2011−46435)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(594002288)株式会社BBS金明 (8)
【Fターム(参考)】