説明

砥石車のツルーイング装置

【課題】 砥石車の円弧研削面のツルーイング開始基準位置を接触検出手段を用いて正確に検出できるようにする。
【解決手段】 ツルーイング工具32と砥石車21との接触を検出する接触検出手段と、X軸方向移動手段による砥石車とツルーイング工具との相対移動によって砥石車の円筒研削面21aをツルーイングしている際に接触検出手段の信号変化に基づいて砥石車の円弧研削面21bのツルーイング開始基準位置を検出する円弧研削面開始基準位置検出手段と、円弧研削面開始基準位置検出手段によって検出された円弧研削面開始基準位置を基点にしてX軸方向移動手段およびZ軸方向移動手段を同期制御して円弧研削面をツルーイングする同期制御手段とによって構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石車のツルーイング装置、特に円筒研削面の少なくとも一端に円弧研削面を有する砥石車の円弧研削面のツルーイング開始基準位置を接触検出手段を用いて正確に検出できるようにしたツルーイング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に研削盤においては、ワークを予め定められた加工本数研削する毎に、ツルーイング工具によって砥石車の研削面をツルーイングするようになっている。ところで、例えばCBN等の硬質砥粒からなる砥石車を備えた研削盤においては、熱変位等によるツルーイング工具と砥石車との相対位置変化に係わらず、数ミクロンの精度で砥石車に対するツルーイング工具の切込み量を安定的に制御するために、砥石車を支持した砥石台あるいはツルーイング工具を支持したツルーイング装置内にAEセンサ等からなる接触検出手段を設け、砥石車の研削面にツルーイング工具が接触したことをAE信号に基づいて検知し、この接触位置を基点にして砥石車に対するツルーイング工具の切込み量を制御するようになっている。このようなツルーイング装置が、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平5−131364(段落0002、0013、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、円筒研削面の少なくとも一端に円弧研削面を有する砥石車をツルーイングするツルーイング装置においては、ツルーイング前の円筒研削面の面性状については、特許文献1に記載されているような接触検出作用によってある程度認識することができ、微小な切込み量を比較的精度よく付与することができるが、円弧研削面の面性状については、全く認識することができず、切込みをどこから開始したらよいのか分からないのが現状である。
【0004】
従って、従来のツルーイング装置においては、ある程度余裕を見越して円弧研削面の切込み開始位置を決定しなければならず、このため、最初の数回は零切込みで円弧研削面をツルーイングする恐れがあり、反面、設定回数のツルーイングを行っても円弧研削面が有効に目立てされたかどうか疑わしいため、必要以上にツルーイングを行う結果となる。従って、従来においては、ツルーイングのサイクルタイムが増加したり、砥石車のツールコストが増加する等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来の不具合を解消するためになされたもので、砥石車の円弧研削面のツルーイング開始基準位置を接触検出手段を用いて正確に検出できるようにしたツルーイング装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、円筒研削面の少なくとも一端に円弧研削面を有する砥石車をツルーイング工具によってツルーイングするツルーイング装置において、前記砥石車に対して前記ツルーイング工具を砥石車の回転軸線方向に相対移動させるX軸方向移動手段と、前記砥石車に対して前記ツルーイング工具を砥石車の回転軸線方向と交差する方向に相対移動させるZ軸方向移動手段と、前記ツルーイング工具と前記砥石車との接触を検出する接触検出手段と、前記X軸方向移動手段による前記砥石車と前記ツルーイング工具との相対移動によって前記砥石車の円筒研削面をツルーイングしている際に前記接触検出手段の信号変化に基づいて前記砥石車の円弧研削面のツルーイング開始基準位置を検出するツルーイング開始基準位置検出手段と、該ツルーイング開始基準位置検出手段によって検出されたツルーイング開始基準位置を基点にして前記X軸方向移動手段およびZ軸方向移動手段を同期制御して前記円弧研削面をツルーイングする同期制御手段とによって構成したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記接触検出手段は、前記ツルーイング工具と前記砥石車との接触によって生ずるAE信号を出力するAEセンサによって構成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、砥石車の円筒研削面のツルーイング時に、接触検出手段の信号変化に基づいて砥石車の円弧研削面のツルーイング開始基準位置を検出し、この検出されたツルーイング開始基準位置を基点にしてX軸方向移動手段およびZ軸方向移動手段を同期制御して円弧研削面をツルーイングするようになっているので、円弧研削面の面性状に係わらず、円弧研削面の切込み開始位置を的確に定めることができ、必要最小限のツルーイングサイクルで円弧研削面を高精度にツルーイングできるようになる。従って、砥石車のツールコストを低減できるとともに、ツルーイングのサイクルタイムを短縮することができる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、接触検出手段は、ツルーイング工具と前記砥石車との接触によって生ずるAE信号を出力するAEセンサによって構成されているので、比較的構成が簡単で安価なセンサによって、砥石車とツルーイング工具との接触検出を行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、砥石車のツルーイング装置を備えた研削盤10の全体を示すもので、研削盤10のベッド11上には、テーブル12が水平なX軸方向に移動可能に案内支持されている。テーブル12上には主軸台13と心押台14とが対向して配置され、主軸台13にはワークWの一端を把持するチャック15が設けられ、心押台14にはワークWの他端を支持するセンタ16が設けられている。ワークWは、チャック15とセンタ16とによってテーブル12の移動方向(X軸方向)と平行な軸線の回りに回転できるように両端を支持され、チャック15によって回転駆動されるようになっている。
【0011】
また、ベッド11上には、砥石台20がテーブル12の移動方向と直交する水平なZ軸方向に移動可能に案内支持されている。砥石台20には砥石車21がテーブル12の移動方向(X軸方向)と平行な軸線の回りに回転可能に支持されている。砥石車21は、例えば円盤状の金属コアの外周に超硬質のCBN砥粒をビトリファイドボンドで結合したもので構成されている。砥石車21は、図2に示すように、外周面にテーブル12の移動方向(X軸方向)と平行な円筒研削面21aと、円筒研削面21aの一端に連なる円弧研削面21bを有している。砥石車21は砥石駆動モータ22によってベルト伝動機構を介して回転駆動され、円筒研削面21aによってワークWの円筒部W1をトラバース研削するとともに、そのトラバース端で円弧研削面21bによってワークWの円弧隅部W2を研削するようになっている。
【0012】
テーブル12には、砥石車21をツルーイングするためのツルーイング装置30が設けられている。ツルーイング装置30は、図3に示すように、回転可能なツルア軸31に砥石車21の円筒研削面21aをツルーイングするための薄肉円筒状のツルーイング工具32を備え、ツルーイング工具32をツルア軸31とともに図略のビルトインモータによって回転駆動する構成となっている。
【0013】
接触検知手段を構成するAEセンサ35が砥石台20に配設されている。AEセンサ35は、砥石車21とツルーイング工具32との接触によって発生する弾性波(Accostic Emission)を検出するものである。AEセンサ35の配設位置は、上記した砥石台20の他、ツルーイング工具32を支持したツルーイング装置30、あるいは砥石車21を取付けた砥石軸の軸端に設けることもできる。
【0014】
研削盤10を制御する数値制御装置40は、図1に示すように、中央処理装置41と、種々の制御値およびプログラムを記憶するメモリ42と、インターフェィス43、44から主に構成されている。メモリ42には、研削加工プログラム、ツルーイングプログラム、接触検出位置データ、ツルーイング切込み量データ、ならびに砥石径データや砥石幅データ等、研削加工サイクルおよびツルーイングサイクルを実行するに必要な種々のデータが記憶されている。数値制御装置40には、入力装置45を介して種々のデータが入力されるようになっており、入力装置45は、データの入力等を行うためのキーボード、データの表示を行うCRT等の表示装置を備えている。また、数値制御装置40には、接触検知手段(AEセンサ)35からの接触信号(AE信号)が増幅器46を介して入力されるようになっている。
【0015】
数値制御装置40は、Z軸モータ駆動ユニット50を介してZ軸サーボモータ51に駆動信号を与えるようになっており、Z軸サーボモータ51により図略のボールねじを介して砥石台20をZ軸方向へ移動させるようになっている。Z軸サーボモータ51に取付けられたエンコーダ52がZ軸サーボモータ51の回転位置、すなわち、砥石台20の位置をZ軸モータ駆動ユニット50および数値制御装置40へフィードバックする。また、数値制御装置40は、X軸モータ駆動ユニット54を介してテーブル12をX軸方向へ移動させるX軸サーボモータ55に駆動信号を与えるようになっており、X軸サーボモータ55により図略のボールねじを介してテーブル12をX軸方向へ移動させるようになっている。X軸サーボモータ55に取付けられたエンコーダ56がX軸サーボモータ55の回転位置、すなわち、テーブル12の位置をX軸モータ駆動ユニット54および数値制御装置40へフィードバックする。
【0016】
前記数値制御装置40は、メモリ42に記憶されたNCプログラムの目標位置指令とエンコーダ52、56からの現在位置信号との偏差により、サーボモータ51、55をそれぞれ駆動し、テーブル12および砥石台20をそれぞれ目標位置に位置決め制御する。
【0017】
上記したX軸サーボモータ55および図略のボールねじ等により、請求項におけるX軸方向移動手段57を構成しており、同様に、Z軸サーボモータ51および図略のボールねじ等により、請求項におけるZ軸方向移動手段58を構成している。
【0018】
数値制御装置40は、砥石車21によるワークWの加工本数をカウントし、加工本数が予め定められた値に達するとツルーイング動作を指令する。以下、数値制御装置40によるツルーイング動作の処理について、図4〜図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
数値制御装置40の中央処理装置41は、ツルーイング開始指令に基づいて、図4に示すステップ100およびステップ200を順次実行し、砥石車21の円筒研削面21aおよび円弧研削面21bをツルーイングする。ステップ100における円筒研削面21aのツルーイングサイクルの詳細が図5に示されており、ステップ200における円弧研削面21bのツルーイングサイクルの詳細が図6に示されている。以下図3を参照しながら、図4および図5のフローチャートを順に説明する。
【0020】
図5において、まず、ステップ102において、ツルーイングのトラバース回数をカウントするカウンタNの内容を0にクリヤし、次いで、ステップ104において、X軸およびZ軸サーボモータ55、51を駆動してテーブル12および砥石台20をX軸方向およびZ軸方向に移動制御し、砥石車21の円筒研削面21aをツルーイング装置30のツルーイング工具32の外周に対応する接触検出開始位置(図3(A)の実線で示す位置)に位置決めする。次いで、ステップ106において、ツルア軸31および砥石車21を回転駆動するとともに、Z軸サーボモータ51を駆動して砥石台20をテーブル12側に向かってZ軸方向に前進させる。
【0021】
ステップ108においては、接触検出手段(AEセンサ)35より接触信号が出力されたか否かが判断され、未だ接触信号が出力されていない場合(判断結果がN0の場合)には、ステップ106に戻ってZ軸サーボモータ51による砥石台20の前進動作が続行される。砥石車21の円筒研削面21aが図3(A)の二点鎖線で示すように、ツルーイング工具32の外周面に接触して接触検出手段35より接触信号が出力されると、ステップ108における判断結果がYESとなり、次のステップ110に移行される。
【0022】
ステップ110においては、接触が検出されたZ軸方向の位置Z1がメモリ42の所定の記憶エリアに記憶されるとともに、砥石台20の前進が停止される。次いで、ステップ112において、砥石台20がZ軸サーボモータ51によってZ軸方向に所定量(ZA)後退されるとともに、テーブル12がX軸サーボモータ55によってX軸方向に所定量(XA)移動(右進)され、これによって図3(B)の実線で示すように、砥石車21の円筒研削面21aの一端(円弧研削面21bと反対側の端部)がツルーイング工具32の側方に対応するツルーイング開始位置に位置決めされる。
【0023】
続いて、ステップ114において、砥石台20がZ軸サーボモータ51によって上記した所定量(ZA)だけZ軸方向に前進され、砥石車21が前述したステップ108において記憶された接触検出位置(Z軸方向位置Z1)に位置決めされる。次いで、ステップ116において、砥石台20がメモリ42に記憶されたツルーイング切込み量ΔZだけ前進され、これによって、図3(B)の二点鎖線で示すように、砥石車21がツルーイング工具32に対して切込み量ΔZだけ切込まれる。続くステップ118においては、テーブル12がX軸サーボモータ55によって所定量トラバースされ、ツルーイング工具32によって砥石車21の円筒研削面21aが切込み量ΔZでツルーイングされる。このようにして、テーブル12の1往復によって1回目のツルーイングが終了する。
【0024】
1回目のツルーイングが終了すると、ステップ120において、トラバース回数カウント用のカウンタNに1を加算し、次いで、ステップ122において、カウンタNの内容が設定回数NAに達したか否かが判断され、未だ設定回数に達していない場合(判断結果がN0の場合)には、ステップ116に戻って、砥石車21が図3(B)の二点鎖線で示すように、ツルーイング工具32に対してさらに切込み量ΔZだけ切込まれ、テーブル12のトラバースによって砥石車21の研削面21aがツルーイングされる(ステップ118)
このようにして、ツルーイング工具32により砥石車21の円筒研削面21aが設定回数だけツルーイングされると、ステップ122における判断結果がYESとなり、ステップ124に移行される。ステップ124においては、テーブル12がX軸方向に移動(左進)され、前述したと同様にテーブル12のトラバースによって砥石車21の研削面21aがツルーイングされるが、かかるテーブル12のX軸方向移動中に、ステップ126において、接触検出手段(AEセンサ)35より出力される接触信号の状態が監視され、接触信号がオンからオフに変化したか否かが判断される。
【0025】
すなわち、ツルーイング工具32に対して砥石車21の円筒研削面21aが切込まれてツルーイングされている状態においては、接触検出手段(AEセンサ)35より接触信号(オン信号)が継続して出力されるが、図3(C)に示すように、ツルーイング工具32が砥石車21の円筒研削面21aを通過し、円弧研削面21bに対応する位置に達すると、接触検出手段(AEセンサ)35より接触信号がなくなって出力がオフに変化する。
【0026】
接触検出手段(AEセンサ)35の出力がオンからオフに変化すると、ステップ126における判断結果がYESとなり、次のステップ128において、接触検出手段(AEセンサ)35の出力が変化したX軸方向の位置X1がメモリ42の所定の記憶エリアに記憶される。このようにして、接触検出手段(AEセンサ)35の出力が変化したX軸方向位置X1が、砥石車21の円弧研削面21bのツルーイングを開始する基準位置としてメモリ42に記憶される。その後、ステップ130において、テーブル12をX軸方向に移動(右進)させてトラバース開始位置(図4(D)の二点鎖線で示す位置)に位置決めした後、プログラムはリターンされ、砥石車21の円筒研削面21aをツルーイングするツルーイングサイクルが終了する。上記したステップ124〜ステップ128によって、請求項におけるツルーイング開始基準位置検出手段を構成している。
【0027】
続いて、図6に示す砥石車21の円弧研削面21bをツルーイングするツルーイングサイクルが開始される。同図において、まず、ステップ202において、テーブル12が図3(D)の二点鎖線で示す位置よりX軸サーボモータ55によってX軸方向に移動(左進)され、砥石車21の円筒研削面21aが零切込みでツルーイング工具32の外周面に沿って移動される。ステップ204においては、テーブル12が上記したステップ128で記憶されたX軸方向位置(円弧研削面21bのツルーイング開始基準位置)X1より切込み量ΔXだけ手前のツルーイング開始位置に達したか否かが判断され、未だ達していない場合(判断結果がN0の場合)には、ステップ202に戻ってX軸サーボモータ55によるテーブル12のX軸方向移動が続行される。
【0028】
テーブル12がツルーイング開始位置(X1−ΔX)に到達すると、ステップ204における判断結果がYESとなり、続くステップ206において、X軸およびZ軸サーボモータ55、51の2軸同時制御によってテーブル12および砥石台20が移動制御され、図3(D)の実線で示すように、定められた半径の円弧軌跡に沿って砥石車21がツルーイング工具32に対して移動され、砥石車21の円弧研削面21bがツルーイングされる。上記したステップ206により、請求項における同期制御手段を構成している。
【0029】
これにより、ツルーイング工具32に対して砥石車21は、図7に詳細図示するように、円弧軌跡P1−P2に沿って相対移動され、砥石車21の円弧研削面21bは所定の切込み量(図7の斜線部分)でツルーイングされる。しかる後、ステップ208において、テーブル12および砥石台20が原位置に復帰され、砥石車21のツルーイングサイクルが終了する。
【0030】
このように、砥石車21の円筒研削面21aのツルーイング時に、接触検出手段35の信号変化に基づいて砥石車21の円弧研削面21bのツルーイング開始基準位置X1を検出し、この検出されたツルーイング開始基準位置X1に基づいて所定の切込み量が付与されるようにテーブル12および砥石台20をX軸方向およびZ軸方向に同期制御して円弧研削面21bをツルーイングするようになっているので、円弧研削面21bの面性状に係わらず、円弧研削面21bの切込み開始位置を的確に求めることができる。これにより、必要最小限のツルーイングサイクルで円弧研削面を高精度にツルーイングできるようになる。
【0031】
なお、上記した第1の実施の形態においては、砥石車21の円筒研削面21aを順次切込みを付与しながら所定回数ツルーイングするようにしたが、これは、特にCBN等の超砥粒からなる砥石車21においては、砥石車21に対するツルーイング工具32の切込み量を大きくできない制約がある中で、砥石車21の円筒研削面21aの目立ておよび整形を的確に行えるようにするためであるが、かかるツルーイング回数は特に限定されるものではなく、例えば、砥石車21の円筒研削面21aのダメージが小さな状態でツルーイングを行う場合には、1回の切込みでツルーイングを完了することも可能である。一方、砥石車21の円弧研削面21bのツルーイングにおいても、実施の形態で述べたように1度の切込みで完了するのではなく、数回に分けて行ってもよいものである。
【0032】
図8、図9は本発明の第2の実施の形態を示すもので、砥石車21の円筒研削面21aおよび円弧研削面21bに加えて、端面研削面21cもツルーイングできるようにしたものである。すなわち、第2の実施の形態における砥石車21は、外周面にテーブル12の移動方向(X軸方向)と平行な円筒研削面21aを有し、端面に砥石台20の移動方向(Z軸方向)と平行な端面研削面21cを有し、これら円筒研削面21aの一端と端面研削面21cとの間に両者を滑らかに接続する所定半径の円弧研削面21bを有している。
【0033】
砥石車21は、図8に示すように、円筒研削面21aによりワークWの円筒部W1をトラバース研削するとともに、円弧研削面21bにより円弧隅部W2をテーブル12および砥石台20の2軸同時制御によって研削し、引き続き端面研削面21cによりワークWの端面部W3を研削するようになっている。
【0034】
一方、テーブル12に設けられたツルーイング装置30は、図9(A)に示すように、ツルア軸31の一端に取付けられた円盤状の金属コアの外周面に、砥石車21の円筒研削面21aおよび円弧研削面21bをツルーイングするための薄肉円筒状の第1のツルーイング工具32を備え、金属コアの端面に、砥石車21の端面研削面21cをツルーイングするためのカップ形の第2のツルーイング工具33を同軸的に備えている。
【0035】
かかる第2の実施の形態においては、第1の実施の形態で述べたと同様にして、砥石車21の円筒研削面21aおよび円弧研削面21bをツルーイングした後に、円弧研削面21bのツルーイングが完了したX軸方向位置Z2(図9(A)参照)を基準にして、図9(B)に示すように、砥石車21の端面研削面21cを第2のツルーイング工具33の端面位置に対応させ、その状態で砥石台20をZ軸方向に所定量だけ進退させることにより、砥石車21の端面研削面21cを第2のツルーイング工具33によってツルーイングする。
【0036】
上記した実施の形態においては、砥石車21とツルーイング工具32との接触をAEセンサ35にて検出する例について述べたが、接触検出手段として特にAEセンサに限定されることなく、各種構成の接触検出手段を用いることができるものである。
【0037】
上記した実施の形態においては、ツルーイング装置30をテーブル12上に設置した例について述べたが、ツルーイング装置30は、砥石台20に対してX軸方向およびZ軸方向に相対移動可能な、例えば主軸台13や心押台14に設置してもよい。
【0038】
さらに、上記した実施の形態においては、円筒研削面21aの一端に円弧研削面21bを有する砥石車21をツルーイングする例について述べたが、例えば、クランクピン研削盤に使用する砥石車のように、円筒研削面の両端部に円弧研削面およびこれら円弧研削面に連なる端面研削面をそれぞれ有する砥石車をツルーイングする場合には、端面研削面をツルーイングするカップ形のツルーイング工具を、図8に示したカップ形のツルーイング工具と逆向きに配設することにより、対応可能である。
【0039】
なお、図4〜図6に示すフローチャートは、本発明を実施するうえで好適な一例を示すものにすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものであることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すツルーイング装置を備えた研削盤の平面図である。
【図2】砥石車によるワークの加工状態を示す図である。
【図3】図2における砥石車のツルーイング動作を説明する説明図である。
【図4】研削盤を制御する数値制御装置によるツルーイング動作を示すフローチャートである。
【図5】図4における円筒研削面のツルーイングサイクルを示すフローチャートである。
【図6】図4における円弧研削面のツルーイングサイクルを示すフローチャートである。
【図7】円弧研削面のツルーイング動作を説明する説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す砥石車によるワークの加工状態図である。
【図9】図8における砥石車のツルーイング動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0041】
12・・・テーブル、13・・・主軸台、14・・・心押台、20・・・砥石台、21・・・砥石車、21a・・・円筒研削面、21b・・・円弧研削面、30・・・ツルーイング装置、31・・・ツルア軸、32・・・ツルーイング工具、35・・・接触検知手段(AEセンサ)、40・・・数値制御装置、51・・・Z軸サーボモータ、55・・・X軸サーボモータ、57・・・X軸方向移動手段、58・・・Z軸方向移動手段、W・・・ワーク、W1・・・円筒部、W2・・・円弧隅部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒研削面の少なくとも一端に円弧研削面を有する砥石車をツルーイング工具によってツルーイングするツルーイング装置において、前記砥石車に対して前記ツルーイング工具を砥石車の回転軸線方向に相対移動させるX軸方向移動手段と、前記砥石車に対して前記ツルーイング工具を砥石車の回転軸線方向と交差する方向に相対移動させるZ軸方向移動手段と、前記ツルーイング工具と前記砥石車との接触を検出する接触検出手段と、前記X軸方向移動手段による前記砥石車と前記ツルーイング工具との相対移動によって前記砥石車の円筒研削面をツルーイングしている際に前記接触検出手段の信号変化に基づいて前記砥石車の円弧研削面のツルーイング開始基準位置を検出するツルーイング開始基準位置検出手段と、該ツルーイング開始基準位置検出手段によって検出されたツルーイング開始基準位置を基点にして前記X軸方向移動手段およびZ軸方向移動手段を同期制御して前記円弧研削面をツルーイングする同期制御手段とによって構成したことを特徴とする砥石車のツルーイング装置。
【請求項2】
請求項1において、前記接触検出手段は、前記ツルーイング工具と前記砥石車との接触によって生ずるAE信号を出力するAEセンサによって構成されている砥石車のツルーイング装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−125644(P2007−125644A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320376(P2005−320376)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】