説明

破断分割型コンロッド、内燃機関、輸送機器および破断分割型コンロッドの製造方法

【課題】破断工法によって容易に分割可能で、且つ、再組み性に優れたチタン合金製の破断分割型コンロッドおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によるコンロッドは、α+β型チタン合金から形成され、ロッド本体10と、ロッド本体10の一端に設けられた大端部30とを備え、大端部30が破断分割された破断分割型コンロッドである。ロッド本体10の組織は、等軸α組織であり、大端部30の破断面Fの組織は、針状α組織である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破断分割型コンロッドおよびその製造方法に関し、特に、チタン合金製の破断分割型コンロッドおよびその製造方法に関する。また、本発明は、そのような破断分割型コンロッドを備えた内燃機関や輸送機器にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両の内燃機関には、クランクシャフトとピストンとを連結するために、コンロッド(あるいはコネクティングロッド)と呼ばれる部材が用いられている。図14に、従来のコンロッド401を示す。コンロッド401は、棒状のロッド本体410と、ロッド本体410の一端に設けられた小端部420と、ロッド本体410の他端に設けられた大端部430とを備えている。
【0003】
小端部420は、ピストンピンを通すための貫通孔425を有し、ピストンに接続される。一方、大端部430は、クランクピンを通すための貫通孔435を有し、クランクシャフトに接続される。
【0004】
大端部430は、ロッド本体410に連続するロッド部433と、ロッド部433にボルト440によって結合されるキャップ部434とに分割されている。そのため、図14に示したコンロッド401は、分割型のコンロッドと呼ばれる。
【0005】
従来、コンロッドの材料としては鋼が広く用いられてきたが、近年、コンロッドの軽量化のためにチタン合金を用いることが提案されている。チタン合金を用いてコンロッドを製造する方法としては、特許文献1に開示されているような閉塞鍛造や密閉鍛造、あるいは、非特許文献1に開示されているような熱間鍛造が挙げられる。
【0006】
これらの方法を用いて分割型コンロッドを製造する場合、大端部を一体で、つまり、ロッド部とキャップ部とを一体で鍛造することにより、材料の歩留まりを高くすることができる。しかしながら、このようにして鍛造を行うと、当然ながら、その後にロッド部とキャップ部とを機械加工によって切り離す必要がある。また、切り離し後にも、ロッド部およびキャップ部の互いに当接する面を加工したり、ロッド部とキャップ部とを精度良く組み付けるための位置決め加工を行ったりする必要がある。チタン合金は、一般に、機械加工性が鋼よりも悪いため、これらの一連の加工工程が、チタン合金製のコンロッドの生産性の悪化や製造コストの増加の一因となっている。
【0007】
この問題を解決する手法として、破断工法が提案されている。破断工法は、大端部を一体に形成した後に、脆性破断によってロッド部とキャップ部とに分割する手法である。ロッド部およびキャップ部の破断面には、脆性破断によって微細な凹凸が相補的に形成される。これらの破断面に対しては、別途に加工を行う必要がない。また、破断面に相補的に形成された微細な凹凸によって、ロッド部とキャップ部とを組み付けたときに精度良く位置決めを行うことができるので、位置決め構造を形成するための加工を行う必要もない。
【0008】
この破断工法は、焼結鋼、炭素鋼、非調質鋼および浸炭鋼などの鋼材を用いたコンロッドについては多く実施されているが、チタン合金製のコンロッドについては、これまで実施された例がなく、チタン合金製のコンロッドに実施することは事実上不可能と考えられてきた。なぜならば、チタン合金は靭性が高いので、脆性破断が必要である破断工法をチタン合金製のコンロッドに対して行うことは極端に難しいからである。
【0009】
また、チタン合金製コンロッドの破断分割は、以下の理由からも難しかった。従来、チタン合金製のコンロッドは、まず、チタン合金塊を塑性加工によって板状や棒状にし、これらの板状や棒状の部材からコンロッドを打ち抜くかまたは切り出すことによって製造されてきた。あるいは、チタン合金製のコンロッドは、丸棒や板材その他の素形材から鍛造を行い、その鍛造品を仕上げ機械加工することによって製造されてきた。
【0010】
その際、型設計の容易さや、強度向上、歩留まりの向上のために、図15に示すように、コンロッドを構成するチタン合金のメタルフロー(ファイバーフローとも呼ばれる)がコンロッドの長手方向に平行になるように設計が行われてきた。メタルフローは、鍛造製品にみられる金属組織の流れであり、鍛流線とも呼ばれる。鍛造製品の切断面を腐食させると、メタルフローが繊維状の金属組織として視認される。図15には、メタルフローを模式的に実線MFで示している。上述のように設計されたコンロッドの大端部を破断分割するためには、メタルフローを横切るように、つまり、繊維状の金属組織を切断するように脆性破断を行わなければならない。このような脆性破断を、靭性の高いチタン合金製のコンロッドにおいて行うことは困難である。
【0011】
特許文献2には、圧延鍛造により形成されたコンロッドの破断分割を容易にする手法として、図16に示すように、メタルフローをコンロッドの長手方向に直交させる手法が開示されている。特許文献2には、この手法によれば、メタルフローを横切らないように破断を行うことができるので、破断分割を容易に行うことができると記載されている。また、特許文献2には、全般にわたって鋼製のコンロッドについての説明が記載されているが、この手法をアルミニウム合金製やチタン合金製のコンロッドに用いることができることも付加的に記載されている。
【特許文献1】特開昭60−247432号公報
【特許文献2】特開平9−182932号公報
【非特許文献1】松原敏彦、「快削チタン合金コネクティングロッドの開発」、チタニウム・ジルコニウム、平成3年10月、第39巻、第4号、p. 175-184
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、チタン合金製のコンロッドでは、メタルフローの方向の影響よりもチタン合金の伸び(金属材料の引張り特性の1つ)の影響の方が大きいので、メタルフローを所定の方向に設定するだけでは、破断分割を容易に行うことはできない。従来のチタン合金製コンロッドでは、チタン合金の伸びが大きいので、破断分割する際に大きなエネルギーが必要であった。また、伸びが大きいために破断分割の際に破断面が塑性変形してしまうので、クランクシャフトへの組み付け時の大端部内径の真円度の再現性(「再組み性」と呼ぶ。)が著しく低下する。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、破断工法によって容易に分割可能で、且つ、再組み性に優れたチタン合金製のコンロッドおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるコンロッドは、α+β型チタン合金から形成され、ロッド本体と、前記ロッド本体の一端に設けられた大端部と、を備え、前記大端部が破断分割された破断分割型コンロッドであって、前記ロッド本体の組織は、等軸α組織であり、前記大端部の破断面の組織は、針状α組織である。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記大端部は、貫通孔を有し、前記大端部の破断面近傍におけるメタルフローは、前記貫通孔の中心軸に略平行である。
【0016】
ある好適な実施形態において、前記大端部は、クランクアームに摺接するスラスト面を有し、前記スラスト面の幅は、前記破断面近傍でもっとも広い。
【0017】
本発明による内燃機関は、上記構成を有する破断分割型コンロッドを備える。
【0018】
本発明による輸送機器は、上記構成を有する内燃機関を備える。
【0019】
本発明によるコンロッドの製造方法は、ロッド本体および前記ロッド本体の一端に設けられた大端部を備え、前記大端部が破断分割された破断分割型コンロッドの製造方法であって、α+β型チタン合金から形成されたワークピースを用意する工程(a)と、前記ワークピースをβ変態点以上の温度に保持する工程(b)と、前記工程(b)の後に、β変態点未満の温度で前記ワークピースを鍛造する工程(c)と、を包含し、前記工程(c)は、前記ロッド本体に対応する部分の鍛造成形比が2以上で、且つ、前記大端部の破断面近傍に対応する部分の鍛造成形比が2未満となるように実行される。
【0020】
ある好適な実施形態では、前記工程(b)において、前記ワークピースをβ変態点以上の温度に保持しつつ塑性加工する。
【0021】
ある好適な実施形態において、前記工程(b)は、前記ワークピースをβ変態点以上の温度で押し出し成形する工程(b−1)を含み、前記工程(b−1)において、前記ワークピースは、押し出し方向から見た外周形状が、前記工程(c)において鍛造された後の前記ワークピースの外周形状と略同じであるように成形される。
【0022】
ある好適な実施形態において、本発明による破断分割型コンロッドの製造方法は、前記工程(b−1)と前記工程(c)との間に、押し出し成形された前記ワークピースを所定の厚さに切断する工程(d)をさらに包含する。
【0023】
本発明による破断分割型コンロッドは、母相であるβ相中にα相が析出したα+β型チタン合金から形成されている。α+β型チタン合金のミクロ組織は、疲労強度が高く、伸びが大きい等軸α組織と、疲労強度が低く、伸びが小さい針状α組織とに大別される。本発明による破断分割型コンロッドでは、ロッド本体の組織が等軸α組織であり、大端部の破断面の組織が針状α組織であるので、ロッド本体については高い疲労強度を保ちつつ、大端部の破断分割を容易にし、高い再組み性を実現することができる。
【0024】
本発明による破断分割型コンロッドの製造方法は、α+β型チタン合金から形成されたワークピースをβ変態点以上の温度に保持する工程と、この工程の後に、β変態点未満の温度でワークピースを鍛造する工程とを包含している。ワークピースをβ変態点以上の温度に保持することによって、ワークピース全体の組織がいったん針状α組織になる。その後に行われるβ変態点未満の温度での鍛造は、ロッド本体に対応する部分の鍛造成形比が2以上で、且つ、大端部の破断面近傍に対応する部分の鍛造成形比が2未満となるように実行されるので、破断面近傍に対応する部分の組織は針状α組織のまま、ロッド本体に対応する部分の組織が等軸α組織になる。そのため、本発明による製造方法によれば、ロッド本体の組織が等軸α組織であり、大端部の破断面の組織が針状α組織であるコンロッドを製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、破断工法によって容易に分割可能で、且つ、再組み性に優れたチタン合金製の破断分割型コンロッドおよびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本願発明者は、チタン合金製のコンロッドの破断分割を容易にし、且つ、再組み性を向上させるための様々な検討を行い、その過程でチタン合金の種々のミクロ組織の特性に着目した。
【0027】
チタン合金は、室温におけるミクロ組織によって、α型、α+β型およびβ型の3種類に大別される。本発明では、コンロッドの材料としてα+β型のチタン合金を用いる。α+β型チタン合金は、室温(20℃)でα単相またはβ単相とならず(つまりα相とβ相とが混在する)、室温より高いある温度でβ単相となるチタン合金である。チタン合金にこのような性質を持たせる(つまりチタン合金をα+β型たらしめる)ために、β安定化元素(具体的にはV、Mo、Cr、Mn、Feなど)とα安定化元素(具体的にはAl、O、Nなど)の添加量が調整される。α+β型チタン合金がβ単相となる温度は「β変態点」と呼ばれる。
【0028】
α+β型チタン合金の組織は、組織中に存在する(つまり母相であるβ相中に析出した)α相の形状によって、等軸α組織と針状α組織とに区別される。等軸α組織がα相の形状に異方性を有しない(つまりα相が等方的な形状を有する)のに対し、針状α組織はα相の形状に異方性を有している。言い換えると、等軸α組織は、異方性を有しない、つまり、方向によって周期構造が変わらない結晶が集まった組織である。一方、針状α組織では、組織を構成する結晶は、異方性を有し、方向によって周期構造が変わる。つまり、針状α組織を方向を変えながら観察すると、その組織は変化して見えることになる。
【0029】
α+β型チタン合金を用いて鍛造によりコンロッドを形成する場合、一般的には、β変態点未満の温度で塑性加工を行うことにより、チタン合金の組織を等軸α組織にする。等軸α組織は疲労強度が高いので、α+β型チタン合金の組織を等軸α組織とすることにより、コンロッドの疲労破壊に対する耐性が向上する。ところが、α+β型チタン合金の組織を等軸α組織にすると、伸びが大きくなるため、破断分割する際に大きなエネルギーが必要となり、また、破断面が塑性変形してしまうので再組み性が著しく低下する。
【0030】
一方、β変態点以上の温度で塑性加工を行うことにより、チタン合金の組織を針状α組織にすると、針状α組織は等軸α組織に比べて伸びが小さいので、破断分割する際に必要なエネルギーを小さくすることができる。また、破断面の塑性変形を小さくできるので、優れた再組み性が得られる。しかしながら、針状α組織は等軸α組織に比べて疲労強度が低いので、コンロッドの疲労破壊に対する耐性が低下してしまう。
【0031】
上述したように、α+β型チタン合金の等軸α組織および針状α組織は、破断分割型コンロッドの材料としていずれも一長一短の特性を有しており、破断分割の容易さと優れた再組み性とを両立することは困難であった。
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0033】
図1および図2に、本実施形態におけるチタン合金製のコンロッド1を示す。図1および図2は、それぞれ破断分割前のコンロッド1を模式的に示す斜視図および平面図である。
【0034】
コンロッド1は、図1および図2に示すように、ロッド本体10と、ロッド本体10の一端に設けられた大端部30と、ロッド本体10の他端に設けられた小端部20とを備えている。
【0035】
小端部20には、ピストンピンを通すための貫通孔(「ピストンピン孔」と呼ぶ)25が形成されている。一方、大端部30には、クランクピンを通すための貫通孔(「クランクピン孔」と呼ぶ)35が形成されている。クランクピン孔35は、典型的にはピストンピン孔25よりも大径である。
【0036】
大端部30は、ロッド本体10から両側方に広がる肩部31aおよび31bを有している。大端部30の肩部31aおよび31bには、ボルトを通すためのボルト孔32が形成されている。本実施形態では、ボルト孔32は、キャップ部34側からロッド部33側に向かって延び、ロッド部33内部に底面を有する有底孔である。
【0037】
以下の説明においては、ロッド本体10の延びる方向を「長手方向」と呼び、クランクピン孔35の中心軸(図1中に鎖線で示されている)の方向を「軸方向」と呼ぶ。また、長手方向および軸方向に直交する方向を「幅方向」と呼ぶ。また、図1および以降の図面において、長手方向を矢印Zで示し、軸方向を矢印Xで示し、幅方向を矢印Yで示す。
【0038】
破断分割前の大端部30では、図1および図2に示すように、ロッド部33およびキャップ部34が一体に形成されている。大端部30は、軸方向Xおよび幅方向Yに平行な(すなわち長手方向Zに直交する)破断予定面Aに沿って破断分割される。破断予定面Aは、クランクピン孔35の中心軸を通るように設定される。
【0039】
図3に、破断分割後のコンロッド1を示す。コンロッド1の大端部30は、ロッド本体10の一端に連続するロッド部33と、ロッド部33に結合部材(ここではボルト40)によって結合されるキャップ部34とに分割されている。
【0040】
破断分割によって、ロッド部33およびキャップ部34には、それぞれ微細な凹凸を有する破断面Fが形成される。ロッド部33の破断面Fとキャップ部34の破断面Fとを互いに当接させ、ボルト孔32にボルト40をねじ込むことによって、ロッド部33とキャップ部34とが互いに結合される。ロッド部33およびキャップ部34の破断面Fは、互いに相補的な凹凸を有するので、ロッド部33およびキャップ部34の位置決めが正確になされる。また、破断面Fの凹凸同士が嵌合することによって、ロッド部33とキャップ部34との結合がより強固となり、大端部30全体の剛性が向上する。
【0041】
本実施形態における破断分割型コンロッド1は、α+β型チタン合金から形成されている。そして、ロッド本体10の組織は、等軸α組織であり、大端部30の組織は、針状α組織である。つまり、本実施形態におけるコンロッド1では、ロッド本体10と大端部30とが互いに異なる金属組織(ミクロ組織)を有している。
【0042】
一般的に、コンロッドに要求される機械的特性は部位ごとに異なる。例えば、ロッド本体は、使用中に疲労破壊しないように、高い疲労強度を有することを要求される。一方、大端部は、高い疲労強度を有することよりも、高速運転をしても変形しにくいように高い剛性を有することを要求される。
【0043】
本実施形態におけるコンロッド1では、大端部30の組織は、等軸α組織に比べて伸びの小さい針状α組織である。そのため、破断分割する際に必要なエネルギーを小さくすることができ、破断分割を容易に行うことができる。また、破断面Fの塑性変形を小さくすることができるので、クランクシャフトへの組み付け時の大端部30内径の真円度の再現性(再組み性)を高くすることができる。
【0044】
また、本実施形態におけるコンロッド1では、ロッド本体10の組織は、針状α組織に比べて疲労強度の高い等軸α組織である。そのため、ロッド本体10の疲労強度を十分に高くすることができ、コンロッド1全体としての疲労破壊に対する耐性を十分に高く維持することができる。
【0045】
上述したように、本実施形態におけるコンロッド1では、ロッド本体10の組織が等軸α組織であることによって高い疲労強度が保たれており、さらに、大端部30の組織が針状α組織であることによって容易な破断分割および高い再組み性が実現されている。
【0046】
大端部30の再組み性が高いと、内燃機関の運転中の大端部30の真円度が向上するので、耐焼付き性が向上する。そのため、大端部30に要求される剛性が低くなるので、大端部30を肉薄にして軽量化を図ることが可能になる。コンロッド1が軽量化されると、クランクシャフトやバランサー、ケースなども軽量化することができるので、内燃機関全体ひいては輸送機器全体を軽量化することができる。
【0047】
なお、必ずしも大端部30全体が針状α組織である必要はない。破断分割の容易性や再組み性の高さに影響するのは破断面Fの組織であるので、少なくとも破断面Fの組織が針状α組織であれば、破断分割を容易にし、再組み性を高くすることができる。
【0048】
下記表1に示す組成およびβ変態点を有するα+β型チタン合金について、ミクロ組織の種類と、疲労強度(MPa)および伸び(%)との関係を図4に示す。また、図5(a)〜(c)に、このα+β型チタン合金のミクロ組織の写真を示す。図5(a)〜(c)においては、白い部分がα相であり、黒い部分がβ相である。
【0049】
【表1】

【0050】
図4から、図5(a)に示す針状α組織よりも、図5(b)および(c)に示す等軸α組織(図中では便宜上「等軸α組織1」、「等軸α組織2」と呼び分けている。)の方が疲労強度が高く、伸びが大きいことがわかる。
【0051】
また、下記表2に示す組成およびβ変態点を有するα+β型チタン合金について、ミクロ組織の種類と、疲労強度(MPa)および伸び(%)との関係を図6に示す。また、図7(a)〜(c)に、このα+β型チタン合金のミクロ組織の写真を示す。図7(a)〜(c)においても、白い部分がα相であり、黒い部分がβ相である。
【0052】
【表2】

【0053】
図6から、図7(a)および(b)に示す針状α組織(図中では便宜上「針状α組織1」、「針状α組織2」と呼び分けている。)よりも、図7(c)に示す等軸α組織の方が疲労強度が高く、伸びが大きいことがわかる。
【0054】
なお、大端部30の破断分割をいっそう容易にする観点からは、図8に示すように、コンロッド1のメタルフローが少なくとも大端部30の破断面F近傍においてクランクピン孔35の中心軸に(すなわち軸方向Xに)略平行であることが好ましい。メタルフローの方向をこのように設定することにより、メタルフローを横切らないように破断分割を行うことができるので、大端部30の破断分割が容易となる。
【0055】
また、本実施形態では、図2に示したように、ボルト孔32が有底孔である。このような構造を採用すると、図14に示したようにボルト孔としてロッド部を貫通する貫通孔を形成した場合に比べ、ロッド部33の剛性を向上することができる。ボルト孔として貫通孔を形成した場合であっても、ロッド部を肉厚にすることによって剛性を確保することはできるが、その場合、コンロッドの重量化を招いてしまう。これに対し、ボルト孔32を有底孔にすると、ロッド部33の剛性を確保しつつ、コンロッド1の軽量化を図ることができる。
【0056】
続いて、本実施形態における破断分割型コンロッド1の製造方法を説明する。説明のわかりやすさのために、下記表3には、主な工程においてワークピースが保持される温度と、その工程後のチタン合金の組織とを示している。
【0057】
【表3】

【0058】
まず、α+β型チタン合金から形成されたワークピースを用意する。例えば、α+β型チタン合金の溶湯を精錬することによって形成されたインゴットを用意する。α+β型チタン合金としては、種々の組成のものを用いることができ、例えば表1や表2に示した組成のα+β型チタン合金を用いることができる。
【0059】
次に、ワークピースをβ変態点以上の温度に保持しつつ塑性加工する。具体的には、まず、図9(a)に示すように、ワークピースWPを鍛造(例えば自由鍛造)することによって丸棒状に成形する。この工程は、β変態点以上の温度で行われるので、丸棒状のワークピースWPの組織は針状α組織となる。次に、図9(b)に示すように、丸棒状のワークピースWPを押し出し成形する。この工程も、β変態点以上の温度で行われるので、押し出し成形後のワークピース(押し出し棒)WPの組織も針状α組織のままである。また、この工程において、ワークピースWPは、押し出し方向から見た外周形状が、後述する型打ち鍛造工程において鍛造された後のワークピースWPの外周形状と略同じであるように成形される。
【0060】
続いて、図9(c)に示すように、押し出し成形されたワークピースWPを所定の厚さLに切断する。ワークピースWPの切断は、切断面が押し出し成形工程における押し出し方向と略直交するように行われる。
【0061】
次に、図9(d)に示すように、β変態点未満の温度でワークピースWPを鍛造する。具体的には、ロッド本体10に対応する部分の鍛造成形比が2以上で、且つ、大端部30に対応する部分の鍛造成形比が2未満となるように型打ち鍛造を行う。ここで、「鍛造成形比」は、ワークピースWPの鍛造前の厚さ(本実施形態では切断工程における切断厚さLである。)の、鍛造後の厚さに対する比である。従って、大端部30に対応する部分の鍛造成形比は、鍛造前の厚さLを鍛造後の大端部30に対応する部分の厚さL1で除することにより求められる。また、同様に、ロッド本体10に対応する部分の鍛造成形比は、鍛造前の厚さLを鍛造後のロッド本体10に対応する部分の厚さL2で除することにより求められる。この工程は、β変態点未満の温度で行われるので、鍛造成形比が高い部分、具体的には2以上の部分の組織は等軸α組織となり、鍛造成形比が低い部分、具体的には2未満の部分の組織は針状α組織のままである。つまり、ロッド本体10に対応する部分の組織が等軸α組織となり、大端部30に対応する部分の組織は針状α組織のままである。
【0062】
続いて、ワークピースWPに機械加工および熱処理を行う。機械加工により、小端部20に対応する部分にピストンピン孔25が形成されたり、大端部30に対応する部分にクランクピン孔35が形成されたりする。また、クランクピン孔35の内周面に、軸方向Xに延びる破断起点溝(不図示)が形成される。熱処理としては、例えば、焼なまし処理、固溶化処理および時効処理を順次行う。このようにして、図1および図2に示したようなコンロッド1が得られる。
【0063】
次に、コンロッド1の大端部30をロッド部33とキャップ部34とに破断分割する。図10に、破断分割の手法の一例を示す。図10に示すように、水平方向に移動可能なスライダ200、201の凸部をコンロッド1の大端部30のクランクピン孔35内に挿入し、スライダ200、201の凸部間にくさび202を錘203により打ち込む。これにより、コンロッド1の大端部30が破断起点溝を起点として破断予定面Aに沿ってロッド部33とキャップ部34とに破断分割される。
【0064】
なお、大端部30を破断分割する工程の前に、予め大端部30を所定の温度以下(例えば−40℃以下)に冷却しておくことが好ましい。大端部30の冷却は、例えば、コンロッド1を液体窒素に浸すことによって行うことができる。破断分割工程の前にこのような冷却工程を行うことにより、チタン合金製のコンロッド1の破断分割を容易に行うことができる。従来、このような冷却工程は、鋼製の破断分割型コンロッドに対して行われることはあった。鋼製のコンロッドの場合、荷重を加えられた際の破壊様式が延性破壊から脆性破壊に変化する温度(「延性―脆性遷移温度」と呼ばれる)が室温以下であるため、冷却工程を行うことによって破断分割を容易に行うことができるようになるからである。しかしながら、チタン合金では、この延性―脆性遷移温度がもともと室温以上である。そのため、冷却工程を行う意味は一見ないようにも思える。ところが、本願発明者が、このような技術常識にとらわれることなく敢えて冷却工程を行ったところ、チタン合金製のコンロッドについても破断分割が容易になることが実験的に確認された。この理由は、靭性が若干でも低下することによって破断分割が容易になったのではないかと推測される。
【0065】
上述したようにして、破断分割型のコンロッド1が完成する。既に説明したように、本実施形態における製造方法では、まず、ワークピースWPをβ変態点以上の温度に保持しつつ塑性加工(丸棒への鍛造や押し出し成形)することによってワークピースWP全体の組織をいったん針状α組織にする。そして、β変態点未満の温度で、ロッド本体10に対応する部分の鍛造成形比が2以上で、且つ、大端部30に対応する部分の鍛造成形比が2未満となるようにワークピースWPを鍛造することによって、大端部30に対応する部分の組織は針状α組織のまま、ロッド本体10に対応する部分の組織を選択的に等軸α組織にする。そのため、ロッド本体10と大端部30とで互いに異なる金属組織を有するコンロッド1を製造することができる。
【0066】
表2に示した組成を有するα+β型チタン合金を用いて、型打ち鍛造前の厚さLが18mm、型打ち鍛造後の大端部30に対応する部分の厚さL1、ロッド本体10に対応する部分の厚さL2がそれぞれ23mm、8mmとなるような条件でコンロッド1を実際に製造したところ、ロッド本体10の組織は図7(c)に示した等軸α組織であり、大端部30の組織は図7(a)に示した針状α組織であることが確認された。上記の条件では、ロッド本体10に対応する部分の鍛造成形比は2.25(=18/8)であり、大端部30に対応する部分の鍛造成形比は約0.8(=18/23)である。
【0067】
勿論、ロッド本体10に対応する部分の鍛造成形比および大端部30に対応する部分の鍛造成形比は、ここで例示したものに限定されない。ロッド本体10に対応する部分の鍛造成形比は2以上であればよく、大端部30に対応する部分の鍛造成形比は2未満であればよい。ただし、大端部30に対応する部分の組織をより確実に針状α組織のまま保つ観点からは、大端部30に対応する部分の鍛造成形比は1.0以下であることが好ましい。
【0068】
なお、既に述べたように、破断分割を容易にし、再組み性を高くするためには、必ずしも大端部30全体が針状α組織である必要はなく、少なくとも破断面Fの組織が針状α組織であればよい。そのため、β変態点未満の温度での鍛造工程において、必ずしも大端部30全体に対応する部分について鍛造成形比を2未満にする必要はなく、少なくとも破断面F近傍に対応する部分の鍛造成形比を2未満にすればよい。
【0069】
また、本実施形態では、β変態点未満の温度での鍛造(型打ち鍛造)前に、丸棒への鍛造や押し出し成形を行うが、β変態点以上の温度で行う塑性加工はこれらに限定されるものではない。また、必ずしもβ変態点以上の温度で塑性加工を行う必要もない。ワークピースWPをいったんβ変態点以上の温度に保持することにより、ワークピースWPの組織を針状α組織にすることができる。
【0070】
ただし、大端部30に対応する部分の鍛造成形比を2未満にするためには、β変態点未満の温度での鍛造(型打ち鍛造)前に、大端部30に対応する部分がなるべく最終形状に近い形に成形されていることが好ましい。ワークピースWPをβ変態点以上の温度に保持しつつ塑性加工を行うことにより、大端部30に対応する部分を最終形状に近い形に成形しておくことができる。例えば本実施形態のように、ワークピースWPを、押し出し方向から見た外周形状が、型打ち鍛造後のワークピースWPの外周形状と略同じであるように押し出し成形すると、型打ち鍛造の際に大端部30に対応する部分の変形が小さくなり、大端部30に対応する部分の鍛造成形比を十分に小さくすることができる。
【0071】
また、鍛造成形比は、押し出し成形されたワークピースWPを切断する工程における切断厚さLを調整することにより簡便に設定し得る。切断厚さLを、型打ち鍛造後のロッド本体10に対応する部分の厚さL1の2倍以上で大端部30に対応する部分の厚さL2の2倍未満にすれば、鍛造成形比をロッド本体10に対応する部分で2以上にし、大端部30に対応する部分で2未満にすることができる。
【0072】
また、メタルフローは、塑性加工の際の変形方向に沿うように形成されるので、β変態点以上の温度での塑性加工およびβ変態点未満の温度での鍛造は、メタルフローの方向を考慮して行われることが好ましい。本実施形態で例示した製造方法では、押し出し成形の際にメタルフローは押し出し方向に略平行になる。押し出し成形されたワークピース(押し出し棒)WPは、その後、押し出し方向に対して切断面が略直交するように切断され、切断後のワークピースWPは、切断面が鍛造方向(つまり加圧方向)に対して略直交するように鍛造される。そのため、本実施形態で例示した製造方法によれば、メタルフローを、図8に示したように軸方向Xに対して略平行にすることができる。
【0073】
また、コンロッド1の大端部30は、図11に示すように、クランクアームに摺接するスラスト面36を有する。図11では、わかりやすさのためにスラスト面36にハッチングを付して示している。このスラスト面36は、軸方向Xに略直交し、軸方向Xにおいてもっともコンロッド1の外側に位置する面である。従って、コンロッド1は、スラスト面36においてもっとも厚さ(軸方向Xに沿った厚さ)が大きい。そのため、図11に示しているように、スラスト面36の幅(クランクピン孔35の径方向における幅)が、破断面F近傍でもっとも広い(つまり他の部分よりも広い)と、型打ち鍛造の際に破断面F近傍に対応する部分の変形を小さくすることができ、破断面F近傍に対応する部分の鍛造成形比を小さくし易い。
【0074】
なお、本実施形態におけるコンロッド1は、上述した製造方法以外の方法でも製造することができる。例えば、型打ち鍛造を含む塑性加工を全てβ変態点未満の温度で行ってワークピースWP全体の組織が等軸α組織である状態で塑性加工を終了し、その後、大端部30に対応する部分を選択的に加熱してβ変態点以上の温度に保持することによって、大端部30に対応する部分の組織を選択的に針状α組織に変化させてもよい。勿論、既に述べたように少なくとも破断面F近傍の組織が針状α組織であればよいので、選択的な加熱は、破断面F近傍に対応する部分のみに対して行ってもよい。選択的な加熱を行う手法としては、例えば、高周波加熱法を用いることができる。
【0075】
本実施形態におけるコンロッド1は、輸送機器用や機械用の各種の内燃機関(エンジン)に広く用いられる。図12に、本実施形態の製造方法により製造されたコンロッド1を備えたエンジン100の一例を示す。
【0076】
エンジン100は、クランクケース110、シリンダブロック120およびシリンダヘッド130を有している。
【0077】
クランクケース110内にはクランクシャフト111が収容されている。クランクシャフト111は、クランクピン112およびクランクアーム113を有している。
【0078】
クランクケース110の上に、シリンダブロック120が設けられている。シリンダブロック120には、円筒状のシリンダスリーブ121がはめ込まれており、ピストン122は、シリンダスリーブ121内を往復し得るように設けられている。
【0079】
シリンダブロック120の上に、シリンダヘッド130が設けられている。シリンダヘッド130は、シリンダブロック120のピストン122やシリンダスリーブ121とともに燃焼室131を形成する。シリンダヘッド130は、吸気ポート132および排気ポート133を有している。吸気ポート132内には燃焼室131内に混合気を供給するための吸気弁134が設けられており、排気ポート133内には燃焼室131内の排気を行うための排気弁135が設けられている。
【0080】
ピストン122とクランクシャフト111とは、コンロッド1によって連結されている。具体的には、コンロッド1の小端部20の貫通孔(ピストンピン孔)にピストン122のピストンピン123が挿入されているとともに、大端部30の貫通孔(クランクピン孔)にクランクシャフト111のクランクピン112が挿入されており、そのことによってピストン122とクランクシャフト111とが連結されている。大端部30の貫通孔の内周面とクランクピン112との間には、軸受けメタル114が設けられている。
【0081】
図13に、図12に示したエンジン100を備えた自動二輪車を示す。図13に示す自動二輪車では、本体フレーム301の前端にヘッドパイプ302が設けられている。ヘッドパイプ302には、フロントフォーク303が車両の左右方向に揺動し得るように取り付けられている。フロントフォーク303の下端には、前輪304が回転可能なように支持されている。
【0082】
本体フレーム301の後端上部から後方に延びるようにシートレール306が取り付けられている。本体フレーム301上に燃料タンク307が設けられており、シートレール306上にメインシート308aおよびタンデムシート308bが設けられている。
【0083】
また、本体フレーム301の後端に、後方へ延びるリアアーム309が取り付けられている。リアアーム309の後端に後輪310が回転可能なように支持されている。
【0084】
本体フレーム301の中央部には、図12に示したエンジン100が保持されている。エンジン100には、本実施形態におけるコンロッド1が用いられている。エンジン100の前方には、ラジエータ311が設けられている。エンジン100の排気ポートには排気管312が接続されており、排気管312の後端にマフラー313が取り付けられている。
【0085】
エンジン100には変速機315が連結されている。変速機315の出力軸316に駆動スプロケット317が取り付けられている。駆動スプロケット317は、チェーン318を介して後輪310の後輪スプロケット319に連結されている。変速機315およびチェーン318は、エンジン100により発生した動力を駆動輪に伝える伝達機構として機能する。
【0086】
本実施形態におけるコンロッド1は、クランクシャフト111への組み付け時における大端部30内径の真円度の再現性(再組み性)が高いので、エンジン100の運転中の大端部30の真円度が向上し、耐焼付き性が向上する。そのため、大端部30に要求される剛性が低くなるので、大端部30を肉薄にして軽量化を図ることが可能になる。コンロッド1が軽量化されると、クランクシャフト111やバランサー、クランクケース110なども軽量化することができるので、エンジン100全体および自動二輪車全体を軽量化することができる。また、コンロッド1が軽量化されると、エンジン100の高燃費化や高出力化も実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によると、破断工法によって容易に分割可能で、且つ、再組み性に優れたチタン合金製の破断分割型コンロッドおよびその製造方法が提供される。
【0088】
本発明による破断分割型コンロッドは、各種の内燃機関(例えば輸送機器用のエンジン)に広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドの破断分割前の状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドの破断分割前の状態を模式的に示す正面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドの破断分割後の状態を模式的に示す斜視図である。
【図4】α+β型チタン合金のミクロ組織の種類と、疲労強度(MPa)および伸び(%)との関係を示すグラフである。
【図5】(a)〜(c)は、α+β型チタン合金のミクロ組織を示す写真である。
【図6】α+β型チタン合金のミクロ組織の種類と、疲労強度(MPa)および伸び(%)との関係を示すグラフである。
【図7】(a)〜(c)は、α+β型チタン合金のミクロ組織を示す写真である。
【図8】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドのメタルフローを模式的に示す図である。
【図9】(a)〜(d)は、本発明の好適な実施形態におけるコンロッドを製造する過程におけるワークピースを模式的に示す図である。
【図10】破断分割の手法の一例を示す断面図である。
【図11】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドの大端部近傍を拡大して示す斜視図である。
【図12】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドを備えたエンジンの一例を模式的に示す断面図である。
【図13】図12に示すエンジンを備えた自動二輪車を模式的に示す断面図である。
【図14】従来の分割型コンロッドを模式的に示す正面図である。
【図15】従来のコンロッドのメタルフローを模式的に示す図である。
【図16】特許文献2に開示されているコンロッドのメタルフローを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 コンロッド
10 ロッド本体
20 小端部
25 ピストンピン孔
30 大端部
31a、31b 肩部
32 ボルト孔
33 ロッド部
34 キャップ部
35 クランクピン孔
36 スラスト面
40 ボルト
100 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α+β型チタン合金から形成され、
ロッド本体と、
前記ロッド本体の一端に設けられた大端部と、を備え、
前記大端部が破断分割された破断分割型コンロッドであって、
前記ロッド本体の組織は、等軸α組織であり、
前記大端部の破断面の組織は、針状α組織である破断分割型コンロッド。
【請求項2】
前記大端部は、貫通孔を有し、
前記大端部の破断面近傍におけるメタルフローは、前記貫通孔の中心軸に略平行である、請求項1に記載の破断分割型コンロッド。
【請求項3】
前記大端部は、クランクアームに摺接するスラスト面を有し、
前記スラスト面の幅は、前記破断面近傍でもっとも広い請求項1または2に記載の破断分割型コンロッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の破断分割型コンロッドを備えた内燃機関。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関を備えた輸送機器。
【請求項6】
ロッド本体および前記ロッド本体の一端に設けられた大端部を備え、前記大端部が破断分割された破断分割型コンロッドの製造方法であって、
α+β型チタン合金から形成されたワークピースを用意する工程(a)と、
前記ワークピースをβ変態点以上の温度に保持する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、β変態点未満の温度で前記ワークピースを鍛造する工程(c)と、を包含し、
前記工程(c)は、前記ロッド本体に対応する部分の鍛造成形比が2以上で、且つ、前記大端部の破断面近傍に対応する部分の鍛造成形比が2未満となるように実行される、破断分割型コンロッドの製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)において、前記ワークピースをβ変態点以上の温度に保持しつつ塑性加工する、請求項6に記載の破断分割型コンロッドの製造方法。
【請求項8】
前記工程(b)は、前記ワークピースをβ変態点以上の温度で押し出し成形する工程(b−1)を含み、
前記工程(b−1)において、前記ワークピースは、押し出し方向から見た外周形状が、前記工程(c)において鍛造された後の前記ワークピースの外周形状と略同じであるように成形される請求項7に記載の破断分割型コンロッドの製造方法。
【請求項9】
前記工程(b−1)と前記工程(c)との間に、押し出し成形された前記ワークピースを所定の厚さに切断する工程(d)をさらに包含する請求項8に記載の破断分割型コンロッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−174709(P2009−174709A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310465(P2008−310465)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】