説明

硫酸リサイクル型洗浄システム

【課題】 硫酸を用いた洗浄システムにおいて、高度に清浄な表面が要求されるシリコンウエハ、液晶用ガラス基板、フォトマスク基板などの電子材料基板を効率的かつ確実に洗浄する。
【解決手段】 硫酸溶液3を洗浄液として被洗浄材(半導体基板30)を洗浄する洗浄部(洗浄槽1)と、該洗浄部で洗浄に供した洗浄液を貯留する貯留部(貯留槽10)と、電解反応により溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を製造する電解反応装置(電解反応槽20、直流電源22)と、貯留部と電解反応装置との間で溶液を循環させる循環ライン(送り管14a、戻り管14b)を備える。好適には洗浄部において硫酸濃度8M〜18M、温度130〜200℃の濃硫酸溶液とし、貯留部において温度80〜130℃未満の溶液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハなどの基板などの上に付着した汚染物を高濃度硫酸溶液で洗浄剥離する洗浄システムおよび洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程におけるウエハ洗浄技術は、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄するプロセスであり、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM)が用いられている。SPMによる洗浄効果は、過酸化水素が硫酸を酸化して生成する過硫酸イオンの高い酸化分解能にあることが知られている。また、過硫酸イオンを生成する方法として、上記方法の他に、硫酸イオンを含む水溶液を電解槽で電解して過硫酸イオン溶解水を得て洗浄に供する方法も知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−192874号公報
【特許文献2】特表2003−511555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SPMでの洗浄は、過硫酸イオンが分解して減少する分を補うために過酸化水素水の補給が必要である。しかし過酸化水素水の添加によって硫酸濃度が徐々に希釈されるため、液組成を一定に維持できず、所定時間もしくは所定の処理量毎に洗浄液が廃棄され、更新される。このため多量の薬品を保管・廃棄しなければならないという問題がある。加えて、この方法では生成する過硫酸イオンの濃度に限界があり、これが洗浄効果の限界につながっている。
【0005】
これに対し、本願発明者等は、硫酸を電解処理することで過硫酸イオンを連続的に生成して硫酸をリサイクルする洗浄システムを開発し、提案している。該洗浄システムにより、電子基板材料等からレジストなどの汚染物を効率的かつ継続的に剥離除去することができる。しかし、レジストの種類によっては洗浄液の温度を高くしなければ剥離することが難しいものがある。しかし、洗浄液の温度を高くすれば過硫酸イオンが早期に分解するため、洗浄液中に溶解した汚染物が蓄積しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、半導体ウエハなどのレジスト付着物を効果的に剥離除去できるとともに、洗浄液中に移行、溶解したレジストなどを効果的に分解することができる硫酸リサイクル型洗浄システムおよび洗浄方法を提供することを基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムのうち、請求項1記載の発明は、硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄部と、該洗浄部で洗浄に供された洗浄液を貯留する貯留部と、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸イオン含有溶液を製造する電解反応装置と、前記貯留部と電解反応装置との間で、溶液を循環させる循環ラインとを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1記載の発明において、前記洗浄部で用いる洗浄液を加熱する洗浄部洗浄液加熱手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項2記載の発明において、前記洗浄部洗浄液加熱手段は、前記洗浄液を130℃〜200℃に加熱するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記貯留部に貯留させる洗浄液を加熱する貯留部洗浄液加熱手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項4記載の発明において、前記貯留部洗浄液加熱手段は、前記洗浄液を80℃〜130℃未満に加熱するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記電解反応装置における溶液の電解温度を10〜90℃とすることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記洗浄部で用いる洗浄液の硫酸濃度が8M〜18Mの範囲内であることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記洗浄部と前記貯留部とがそれぞれ独立した槽からなり、各槽が送液管で接続されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記洗浄部と前記貯留部とが共通する槽内にそれぞれ割り当てられていることを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項10記載の発明において、前記洗浄部と前記貯留部とは、共通する槽内で上方側が洗浄部、下方側が貯留部に割り当てられていることを特徴とする。
【0018】
請求項12記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項10または11記載の発明において、前記洗浄部と貯留部との間に区分け部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項13記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項12記載の発明において、前記区分け部は、前記洗浄部と貯留部との間に設けられた絞り部によって構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項14記載の洗浄方法の発明は、被洗浄材を硫酸濃度8M〜18M、温度130〜200℃の濃硫酸溶液で洗浄し、該洗浄に供した濃硫酸溶液に過硫酸イオンを生成し、温度80〜130℃未満に調整して溶液中の溶解物の分解を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項15記載の洗浄法の発明は、請求項14記載の発明において、前記過硫酸イオンの生成は、前記濃硫酸溶液を電解することにより行うことを特徴とする。
【0022】
すなわち、本発明によれば、洗浄部において硫酸溶液で被洗浄材の洗浄を行うことで被洗浄材の効果的な洗浄がなされ、被洗浄材からレジストなどの汚染物が効果的に剥離・除去される。剥離除去された汚染物は硫酸溶液中に移行し、一部は溶解する。汚染物を含む硫酸溶液は、貯留部で貯留されて汚染物の分解がなされる。すなわち貯留部では、電解反応装置から供給される過硫酸イオンが含まれており、過硫酸イオンが自己分解して酸化力を発する。この酸化力によって洗浄液中に移行した汚染物が過硫酸イオンの作用によって分解される。そして洗浄液では、溶液中の過硫酸イオンが自己分解することにより過硫酸イオン濃度が次第に低下する。この過硫酸イオン含有溶液は、循環ラインを通して電解反応装置に送液される。電解反応装置では、硫酸イオンを含む溶液に陽極及び陰極を浸漬し、電極間に電流を流し電解することによって硫酸イオンが酸化されて過硫酸イオンが生成され、過硫酸イオン濃度が十分に高い過硫酸イオン含有溶液に再生される。再生された過硫酸イオン含有溶液は、循環ラインを通して貯留部に戻され、上記と同様に過硫酸イオンによって汚染物を効果的に分解する。過硫酸イオン含有溶液は、貯留部と電解反応装置との間で繰り返し循環することで、過硫酸イオン濃度を維持した状態で効果的な分解を継続することができる。なお、洗浄部では、高濃度の硫酸溶液が洗浄液として用意されていればよいが、過硫酸イオンを含むものであっても良い。ただし、本発明としては洗浄部において過硫酸イオンを含むことが必須とされるものではない。
【0023】
なお、洗浄部において洗浄液となる硫酸溶液の濃度は、電解による過硫酸イオン生成効率、および電子材料基板からのレジスト等有機物の除去効果に大きく影響する。硫酸濃度を7〜10M程度にすると電解による過硫酸イオン生成効率は大きくなるが、レジスト等有機物の剥離・溶解効果は硫酸濃度の低下に伴い低下する。そこで、発明者らは種々実験を繰り返し、硫酸濃度が8M〜18Mの範囲が適切な洗浄液として適用できることを見出している。
【0024】
また、硫酸溶液は、電子材料基板からのレジスト等の有機汚染物の除去は、液温度が高いほど短時間で処理できることが知られており、高温の状態にすることで洗浄部において優れた洗浄効果を発揮する。この温度が130℃未満であると洗浄作用は十分ではない。洗浄効率としては130℃以上が好ましくは、150℃以上がより好ましい。この硫酸溶液は、加熱手段などによって加熱することができる。加熱手段の構成は特に限定されるものではなく、ヒータや加熱蒸気を用いた熱交換器などを用いることができる。しかし、液温度を過剰に高くすると濃硫酸の蒸発が激しくなって腐食性ガスが飛散するとともに、洗浄液量の減少を招く。このため洗浄部での液温度は200℃以下で保持するのが望ましい。より好ましくは180℃以下である。
【0025】
洗浄部は枚葉式、バッチ式のいずれであってもよく、本発明としては特定のものに限定されない。この洗浄部では電子基板材料から剥離・溶解された有機汚染物によって洗浄液のTOC濃度が上昇する。TOC濃度の上昇した洗浄液は連続的または断続的に貯留部へと移動する。貯留部と電解反応装置では洗浄液を循環するとともに、電解反応装置で過硫酸イオンを生成することによって洗浄液中のTOCを酸化分解して除去する。このとき、貯留部での液温度が低すぎると生成した過硫酸イオンが分解しないで安定的に存在するため、TOCを分解除去することができない。逆に、洗浄液温度が高すぎると過硫酸イオンが極めて短時間で自己分解してしまうため、TOCの除去量が著しく低下する。従って、貯留部での洗浄液温度は過硫酸イオンの自己分解が適切な速度で発生する80℃〜130℃未満に保持することが好ましい。所定の処理時間後、過硫酸イオンを含有した貯留部内の洗浄液の一部または全てを洗浄部に戻すことによって、洗浄部内の洗浄液のTOC濃度を低く保つとともに、電子基板材料の清浄度を高く維持することが可能となる。
貯留部における洗浄液の温度は、加熱手段により加熱することで適温に維持することができる。加熱手段の構成は特に限定されるものではなく、ヒータや加熱蒸気を用いた熱交換器などを用いることができる。
【0026】
洗浄部と貯留部とは、それぞれ別の槽によって構成するほか、一の槽に洗浄部と貯留部とを割り当てるようにしても良い。例えば、硫酸溶液の温度差による比重差を利用して共通する槽内で上方側が洗浄部、下方側が貯留部に割り当てることができる。一つの槽で洗浄部と貯留部とを割り当てる場合、両者間に区分け部を設けることができる。該区分け部は、洗浄部と貯留部の硫酸溶液の対流を抑制して独立性を保てるものが望ましく、絞り部や介在物により構成できる。例えば洗浄部と貯留部との間に三次元網目構造の介在物(板状物など)を区分け部として配置できる。このような区分け部は、洗浄部と貯留部の対流を抑制できる形状で、かつ耐酸性、耐酸化性の素材(セラミック製など)であれば形状、素材が特に限定されるものではない。
【0027】
電解反応装置における溶液の適温は10〜90℃である。上記温度範囲を超えると、電解効率が低下し、電極の損耗も大きくなる。一方、上記温度を下回ると、分解槽温度にまで加熱するための熱エネルギーが莫大になるとともに、熱交換のための配管経路が大幅に長くなり実用的でない。なお、同様の理由により、下限を40℃、上限を80℃とするのが一層望ましい。
なお、貯留部と電解反応装置を循環する洗浄液は、貯留部で比較的高温になっているので、電解反応装置に移送するする際に冷却手段を設けて冷却することができる。また、貯留部と電解反応装置との間の戻り管と送り管との間で熱交換器を配置して熱交換を行うようにしてもよい。
すなわち、貯留部から電解反応装置に送液する過硫酸イオン含有溶液と、電解反応装置から貯留部に送液する過硫酸イオン含有溶液とを互いに熱交換すると、貯留部からの温度の高い液は、熱交換によって熱が奪われることで温度が低下し、電解反応装置の電解用の溶液として望ましい温度調整がなされる。また、電解反応装置からの温度の低い液は熱交換によって熱が与えられることで温度が上昇し、望ましい温度調整がなされる。
【0028】
電解反応装置では、陽極と陰極とを対にして電解がなされる。これら電極の材質は、本発明としては特定のものに限定はしない。しかし、電極として一般に広く利用されている白金を本発明の電解反応装置の陽極として使用した場合、過硫酸イオンを効率的に製造することができず、白金が溶出するという問題がある。これに対し、ダイヤモンド電極は、過硫酸イオンの生成を効率よく行えるとともに、電極の損耗が小さい。したがって、電解反応装置の電極のうち、少なくとも一つの電極、特には少なくとも過硫酸イオンの生成がなされる陽極をダイヤモンド電極で構成するのが望ましく、陽極、陰極ともにダイヤモンド電極で構成するのが一層望ましい。
【0029】
導電性ダイヤモンド電極は、シリコンウエハ等の半導体材料を基板とし、このウエハ表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させた後に、ウエハを溶解させたものや、基板を用いない条件で板状に析出合成した自立型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。また、Nb,W,Tiなどの金属基板上に積層したものも利用できるが、電流密度を大きくした場合には、ダイヤモンド膜が基板から剥離するという問題が生じやすく、作用効果が短期間で消失するという問題がある。よって、基板上に析出させた後に基板を取り去った自立型導電性ダイヤモンド電極が望ましい。
【0030】
なお、導電性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド薄膜の合成の際にボロン、窒素などの所定量をドープして導電性を付与したものであり、通常はボロンドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20,000ppmの範囲のものが適している。導電性ダイヤモンド電極は、通常は板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたものも使用できる。すなわち、本発明としては、電極の形状や数は特に限定されるものではない。
【0031】
この導電性ダイヤモンド電極を用いて行う電解処理は、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を10〜100,000A/mとし、硫酸イオンを含む溶液をダイヤモンド電極面と平行方向に、通液線速度を1〜10,000m/hrで接触処理させることが望ましい。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムによれば、硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄部と、該洗浄部で洗浄に供された洗浄液を貯留する貯留部と、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸イオン含有溶液を製造する電解反応装置と、前記貯留部と電解反応装置との間で、溶液を循環させる循環ラインとを備えるので、硫酸溶液によって被洗浄材に付着した汚染物を剥離・除去し、さらに過硫酸イオンの作用によって硫酸溶液中の汚染物を分解することができる。洗浄液の清浄度を高く維持することが可能となり、被洗浄材への汚染物の再付着も効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
濃硫酸を洗浄液として収容する洗浄槽1が洗浄部として備えられ、該洗浄槽1には洗浄槽1内の洗浄液を加熱するヒータ2が洗浄部洗浄液加熱手段として備えられている。
該洗浄槽1の底部側には送液管4が接続されており、送液管4には開閉弁5とフィルタ6とが介設されている。また、送液管4には必要に応じて送液ポンプを介設することができる。送液管4の他端側は、貯留部に相当する貯留槽10に接続されている。該貯留槽10には貯留槽10内の洗浄液を加熱するヒータ11が貯留部洗浄液加熱手段として備えられている。
【0034】
また、貯留槽10には、循環ラインの戻り管14bが接続されており、該戻り管14bには過硫酸イオン含有溶液を送液するための送液ポンプ15が介設されている。送液ポンプ15の下流側には、送り管14aと戻り管14bとの間で、熱交換を行う熱交換器16が配置され、その下流側で、戻り管14bが三方弁17を介して電解反応槽20の入口側に接続されている。なお、戻り管14bと電解反応槽20の入口側とは、三方弁17のポート17aとポート17bとを介して連通可能となっている。三方弁17の他のポート17cには戻り管23が接続されており、戻り管23の他端側は前記洗浄槽1に接続されている。
【0035】
上記電解反応槽20には、陽極21aおよび陰極21bが配置され、さらに陽極21aと、陰極21bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極21c…21cが配置されている。なお、本発明としてはバイポーラ式ではなく、陽極と陰極のみを電極として備えるものであってもよい。上記陽極21aおよび陰極21bには、直流電源22が接続されており、これにより電解反応槽20での直流電解が可能になっている。
【0036】
電解反応槽20では、上記電極間を溶液が通液するように構成されており、該電解反応槽20の出口側には送り管14aが接続されている。この実施形態では、上記電極21a、21b、21cはダイヤモンド電極によって構成されている。該ダイヤモンド電極は、基板状にダイヤモンド薄膜を形成するとともに、該ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、好適には50〜20,000ppmの範囲でボロンをドープすることにより製造したものである。また、薄膜形成後に基板を取り去って自立型としたものであってもよい。
上記電解反応槽20、直流電源22によって、電解反応装置が構成されている。
【0037】
電解反応槽20の出口側に接続された送り管14aは、前記した熱交換器16を介して前記貯留槽10に接続されており、戻り管14bと送り管14aとによって貯留槽10と電解反応槽20との間で溶液が循環するように構成されている。
【0038】
以下に、上記実施形態の作用について説明する。
洗浄槽1内に、好適には8〜18Mの濃度とした硫酸溶液3を収容し、さらに該硫酸溶液3に被洗浄材である半導体基板50を基板保持具51で保持しつつ浸漬する。この際には開閉弁5を閉じておく。次いで、ヒータ2を動作させて、前記硫酸溶液3を好適には130〜200℃に加熱する。
【0039】
洗浄槽1内では、高濃度、高温の硫酸溶液3の作用によって半導体基板50表面のレジスト残渣などが剥離除去され、汚染物として硫酸溶液3中に移行し、溶解する。
洗浄槽1での洗浄を所定時間行った後、開閉弁5を開いて、洗浄槽1内の硫酸溶液3を貯留槽10に移送する。この移送で硫酸溶液3は、送液管4に設けたフィルタ6を通過することで溶液に含まれる浮遊物やスラッジなどを除去することができる。
上記移送により硫酸溶液3の温度が低下して適温よりも低温となった場合には、貯留槽10内においてヒータ11によって溶液12を好適には80〜130℃未満に加熱する。
【0040】
さらに貯留槽10の溶液は送液ポンプ15によって戻り管14bを通して順次、電解反応槽20に送液される。この際には、貯留槽10から電解反応槽20に向けて溶液が上記戻り管14bを移動する際に、電解反応槽20において電解処理がなされて送り管14aを移動する過硫酸イオン含有溶液との間で、熱交換器16において熱交換がなされる。貯留槽10から送液される過硫酸イオン含有溶液は、溶解物の分解に好適で過硫酸イオンが適度に自己分解するように、80〜130℃未満に加熱されている。一方、電解反応槽20から送液される過硫酸溶液は、10〜90℃程度の温度を有している。これら溶液2が熱交換されることによって戻り管14bを移動する溶液は温度が低下し、一方、送り管14aを移動する溶液は、加熱される。熱交換器16で熱交換され、戻り管14bを移動する溶液は、その後、自然冷却によって次第に降温し、電解反応に好適な10〜90℃の温度となる。なお、確実に温度を低下させたい場合には、電解反応槽20を水冷、空冷するなどして強制的に冷却する冷却手段を付設することもできる。
【0041】
熱交換器16で熱交換がされて戻り管14bを移動する溶液は、三方弁17を介して電解反応槽20に入液される。この際に、三方弁17ではポート17a、17bを連通させ、ポート17cを閉じておく。電解反応槽20では、陽極21aおよび陰極21bに直流電源22によって通電すると、バイポーラ電極21c…21cが分極し、所定の間隔で陽極、陰極が出現する。電解反応槽20に送液される溶液は、これら電極間に通液される。この際に通液線速度が1〜10,000m/hrとなるように送液ポンプ15の出力を設定するのが望ましい。なお、上記通電では、ダイヤモンド電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電制御するのが望ましい。
【0042】
電解反応槽20で溶液に対し通電されると、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成されて過硫酸イオン含有溶液が得られる。この過硫酸イオン含有溶液は、送り管14aを通して貯留槽10へと送られる。この際には、前記したように熱交換器16で熱交換がなされて昇温しており、さらに貯留槽10内でヒータ11によって適温に加熱される。貯留槽10では、過硫酸イオンの自己分解による酸化力によって溶液12中に分解している汚染分解物を酸化分解して清浄化する。自己分解によって過硫酸イオン濃度が低下した溶液12は、前記戻り管14bを通して再度電解反応槽20に送液され、上記と同様に電解反応がなされて過硫酸イオンが再生されて送り管14aを通して貯留槽10に戻される。このように過硫酸イオンを再生しつつ溶液12を繰り返し使用して効果的に溶解物の分解を行うことができる。
【0043】
所定時間の処理によって溶解物の分解がなされた硫酸溶液3は、三方弁17においてポート17a、17cを連通させ、ポート17bを閉じた状態で送液ポンプ15を動作させて、戻り管14b、23を通して洗浄槽1に一部または全部を戻すことができる。この硫酸溶液3には過硫酸イオンが含まれており、洗浄槽1内に残存する溶解物や半導体基板50に再付着した溶解物を確実に分解をして洗浄槽1内を清浄に保つことができる。
なお、上記実施形態では、洗浄槽において被洗浄材を硫酸溶液に浸漬するものについて説明したが、硫酸溶液3を被洗浄材に吹き付けて洗浄をおこなうものについても当然に適用が可能である。以下に、その実施形態を説明する。
【0044】
(実施形態2)
次に、実施形態2を図2に基づいて説明する。なお、前記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
この実施形態2では、洗浄部としての枚葉式の洗浄槽30と、洗浄液を貯留する貯留部としての溶液貯槽36と、電解反応槽20、25を含む電解反応装置と、送り管14a、戻り管14bを含む循環ラインを主要な構成としている。
【0045】
洗浄槽30では、液滴噴流形成装置として液体スプレーノズル31を備えており、該液体スプレーノズル31の先端側噴出部が洗浄槽30内に位置している。該液体スプレーノズル31には、後述する溶液貯槽36との間で硫酸溶液を循環させる送り管33aと、Nガスの供給管3とが接続されている。液体スプレーノズル31は、送り管33aから供給される硫酸溶液と、Nガスの供給管32から供給される高圧のNガスとを混合して、硫酸溶液の液滴を下方に向けて噴出するように構成されている。なお、送り管33aには、液体スプレーノズル31の接続部の直前に、加熱装置38が設けられており、液体スプレーノズル31に供給される硫酸溶液を好適には130〜200℃に加熱する。
また、洗浄槽30内には、液体スプレーノズル31の噴出方向に、基板保治具52が配置されている。基板保治具52には、被洗浄材である半導体基板50が載置される。該基板保治具52または液体スプレーノズル31は、基板50の表面上に液滴はむらなく当たるように相対的に移動可能とするのが望ましい。
【0046】
洗浄槽30の排水部には、戻り管33bが接続されており、該戻り管33bには硫酸溶液を送液するための送液ポンプ34bが介設されている。送液ポンプ34bの下流側には、送り管33aと戻り管33bとの間で、熱交換を行う熱交換器35が配置され、その下流側で溶液貯槽36に接続されている。溶液貯槽36には、収容されている溶液のTOCを測定するTOC測定器36aが備えられ、さらに超純水を供給するための超純水供給ライン36bが接続されている。また、溶液貯槽36内の溶液を加熱するためのヒータ37が備えられている。溶液貯槽36からはさらに戻り管14bが伸び、送液ポンプ15を介して、電解反応槽20の入口側に接続されている。
【0047】
上記電解反応槽20には、陽極21aおよび陰極21bが配置され、さらに陽極21aと、陰極21bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極21c…21cが配置されている。上記陽極21aおよび陰極21bには、直流電源22が接続されており、これにより電解反応槽20での直流電解が可能になっている。
【0048】
電解反応槽20では、上記電極間を溶液が通液するように構成されており、該電解反応槽20の出口側には連結管24が接続されて、その他端が電解反応槽25の入口側に接続されている。
電解反応槽25は、電解反応槽20と同様の構成を有しており、陽極26aおよび陰極26bが配置され、さらに陽極26aと、陰極26bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極26c…26cが配置されている。上記陽極26aおよび陰極26bには、直流電源27が接続されている。
【0049】
この実施形態では、上記電極21a、21b、21c、26a、26b、26cはダイヤモンド電極によって構成されている。該ダイヤモンド電極は、基板状にダイヤモンド薄膜を形成するとともに、該ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、好適には50〜20,000ppmの範囲でボロンをドープすることにより製造したものである。
上記電解反応槽25の出口側に送り管14aが接続されている。すなわち、直列に接続された電解反応槽20、25、直流電源22、27および連結管24によって、電解反応装置が構成されている。
【0050】
電解反応槽25に接続された送り管14aは、前記溶液貯槽36に接続されており、さらに溶液貯槽36に接続された送り管33aは、送液ポンプ34aを介して前記した熱交換器35に接続され、さらに上記したように加熱装置38を介して前記した液体スプレーノズル31に接続されている。
【0051】
次に、上記構成よりなる硫酸リサイクル型枚葉式洗浄システムの作用について説明する。
上記溶液貯槽36内に、硫酸を収容し、これに超純水供給ライン36bより所定の体積比で超純水を混合して硫酸濃度が10〜18Mの硫酸溶液とする。これを送液ポンプ34aによって送り管33aを通して順次、液体スプレーノズル31へと送液する。この際に硫酸溶液は加熱装置38によって130〜200℃に加熱される。
【0052】
洗浄槽30では、液体スプレーノズル31において加熱硫酸溶液とNガスとが混合されて、高温の硫酸液滴が一定時間噴出される。基板保治具52上には基板50が設置されており、基板保治具52によって基板50が回転し、前記硫酸液滴によって基板50の表面の清浄がなされ、レジストなどが剥離、除去がなされる。噴出された硫酸溶液は、基板50を洗浄した後、飛散・落下して、レジスト溶解物などともに戻り管33bに排出される。戻り管33bでは、送液ポンプ34bによって上記硫酸溶液が溶液貯槽36側へと送液される。この際には、熱交換器35によって送り管33aとの間で熱交換されて硫酸溶液の温度が低下し、さらに、自然冷却によっても次第に降温し、剥離・溶解物の分解に好適な80〜130℃未満の範囲内の温度となる。この際に、ヒータ37を適宜動作させて硫酸溶液の加熱を行って上記範囲内の温度に調整することもできる。
【0053】
なお、溶液貯槽36では、枚葉式洗浄装置におけるレジスト等汚染物の剥離・溶解に伴ってTOCが生成する。このTOCは、TOC測定装置36aによって測定し、その測定結果の時間的変化に基づいてTOC増加速度を算出することができる。
このTOC増加速度に基づいて、電解反応槽20、25では、(過硫酸生成速度[g/l/hr])/(洗浄液槽内TOC増加速度[g/l/hr])が10〜500を満たすように、電解条件を設定しておく。該電解条件の設定は、電流密度、通液線速度、溶液温度の調整によって行うことができる。
【0054】
溶液貯槽36に収容された溶液は、常時または適宜時に、送液ポンプ15によって戻り管14bを通して電解反応槽20に送液される。戻り管14bを移動する溶液は、その後、自然冷却によって次第に降温し、電解反応に好適な10〜90℃の温度となる。なお、確実に温度を低下させたい場合には、電解反応槽20を水冷、空冷するなどして強制的に冷却する冷却手段を付設することもできる。
電解反応槽20では、陽極21aおよび陰極21bに直流電源22によって通電すると、バイポーラ電極21c…21cが分極し、所定の間隔で陽極、陰極が出現する。電解反応槽20に送液される溶液は、これら電極間に通液される。この際に通液線速度が1〜10,000m/hrとなるように送液ポンプ15の出力を設定するのが望ましい。なお、上記通電では、ダイヤモンド電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電制御するのが望ましい。
【0055】
電解反応槽20で溶液に対し通電されると、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成され高濃度の過硫酸イオン含有溶液が得られる。この過硫酸イオン含有溶液は、連結管24からさらに電解反応槽25に送られ、電解反応槽20と同様に直流電源27によって通電されて過硫酸イオンの生成がなされる。このようにして高い濃度とされた過硫酸イオン含有溶液12は、送り管14aを通して溶液貯槽36に貯留される。
【0056】
溶液貯槽36では、過硫酸イオン含有溶液12が80〜130℃未満に保持され、過硫酸イオンの自己分解による酸化力によって過硫酸イオン含有溶液12中に分解している汚染分解物を酸化分解して清浄化する。自己分解によって過硫酸イオン濃度が低下した過硫酸イオン含有溶液12は、前記戻り管14bを通して再度電解反応槽20に送液され、上記と同様に電解反応がなされて過硫酸イオンが再生されて送り管14aを通して溶液貯槽36に戻される。このように過硫酸イオンを再生しつつ過硫酸イオン含有溶液12を繰り返し使用して効果的に溶解物の分解を行うことができる。
【0057】
なお、溶液貯槽36内の過硫酸イオン含有溶液12は、送り管33aを通して液体スプレーノズル31に供給されることから、洗浄槽30内で半導体基板50から剥離して再付着した溶解物を確実に分解をすることができる。
上記説明では、基板50の洗浄を行いつつ、電解反応槽20、25で過硫酸イオンを生成して溶液貯槽36内で剥離物などの分解を行うものとしたが、洗浄中は、過硫酸イオンの生成を行わず、洗浄終了後に、溶液貯槽36と電解反応槽20、25との間で溶液を循環させて過硫酸イオンを生成して剥離物等の分解を行うようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、洗浄部と貯留部とがそれぞれ独立した槽で構成されるものについて説明したが、本発明はこれらが共通する槽に割り当てられているものでもよく、その形態を以下で説明する。
【0058】
(実施形態3)
次に、実施形態3を図3に基づいて説明する。なお、前記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
この実施形態では、縦長の洗浄分解槽40が用意されており、その上部側にヒータ2が配置されている。また、洗浄分解槽40の下方側に戻り管14bと送り管14aとが接続されており、戻り管14bと送り管14aは前記実施形態1と同様に電解反応槽20に接続されている。これにより洗浄分解槽40の下方側領域の溶液が電解反応槽20との間で循環に供されるように構成されている。
洗浄分解槽40では、収容した溶液の上部で加熱を行うことにより、温度の高い溶液が上方側に偏る。一方、過硫酸イオンを含む溶液は相対的に温度が低いことから洗浄分解槽40の下方側に偏る。これによりより高温の濃硫酸溶液が洗浄分解槽40の上方側に位置して洗浄部40aを構成し、比較的温度の低い中温の過硫酸イオン含有溶液が洗浄分解槽40の下方側に位置して貯留部40bを構成することとなる。なお、洗浄部40aと貯留部40bとは、仕切壁等による明確な仕切がなされていないので、その境界では遷移領域が存在していても良い。
【0059】
戻り管14bは、前記実施形態1と同様に送液ポンプ15、熱交換器16、三方弁17のポート17a、17bを介して電解反応槽20に接続され、送り管14aも、熱交換器16を介して貯留部40bに接続されている。三方弁17のポート17cには、戻り管23が接続され、戻り管23の他端は、洗浄分解槽40の上方側で洗浄部40aに接続されている。
【0060】
以下に、この実施形態3における作用について以下に説明する。
分解洗浄槽40内に、好適には8〜18Mの濃度とした硫酸溶液を収容し、さらに該硫酸溶液43に被洗浄材である半導体基板50を基板保持具51で保持しつつ浸漬する。次いで、ヒータ2を動作させて、前記硫酸溶液43を好適には130〜200℃に加熱する。
この際にヒータ2の熱量を調整して、貯留部40aの溶液の温度は昇温が抑えられるようにして80〜130℃未満に調整する。
【0061】
洗浄部40a内では、高濃度、高温の硫酸溶液43aの作用によって半導体基板50表面のレジスト残渣などが剥離除去され、汚染物として硫酸溶液中に移行し、溶解する。
洗浄槽部40aでの洗浄を行うと、溶解物の蓄積によって硫酸溶液の比重が増加して次第に分解洗浄槽40中を下降する。この下降に伴ってヒータ2から離れることで硫酸溶液の温度も低下する。上記下降により硫酸溶液は、比較的温度が低い貯留部40bへと移動する。
【0062】
貯留部40bの溶液は送液ポンプ15によって戻り管14bを通して順次、電解反応槽20に送液される。この際には、貯留部40bから電解反応槽20に向けて溶液が上記戻り管14bを移動する際に、送り管14aを移動する過硫酸イオン含有溶液43bとの間で、熱交換器16において熱交換がなされる。これら過硫酸イオン含有溶液が熱交換されることによって戻り管14bを移動する溶液は温度が低下し、一方、送り管14aを移動する溶液は、加熱される。
【0063】
戻り管14bを移動する溶液は、三方弁17を介して電解反応槽20に入液される。電解反応槽20では、上記実施形態と同様に通液、電解がなされる。
電解反応槽20では溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成されて過硫酸イオン含有溶液が得られる。この過硫酸イオン含有溶液43bは、送り管14aを通して貯留部40bへと送られる。この溶液43bは、比較的温度が低く、また過硫酸イオンを含むことから比重が大きく、洗浄分解槽25中で貯留部40bに留まることができる。また、送り管14aから戻される溶液の温度が比較的低いことにより貯留部40bにおける中温程度の温度も維持される。
貯留部40bでは、過硫酸イオンの自己分解による酸化力によって過硫酸イオン含有溶液43b中に分解している汚染物を酸化分解して清浄化する。自己分解によって過硫酸イオン濃度が低下した過硫酸イオン含有溶液43bは、前記戻り管14bを通して再度電解反応槽20に送液され、上記と同様に電解反応がなされて過硫酸イオンが再生されて送り管14aを通して貯留部40bに戻される。このように過硫酸イオンを再生しつつ過硫酸イオン含有溶液43bを繰り返し使用して効果的に溶解物の分解を行うことができる。
【0064】
溶解物の分解がなされた硫酸溶液は、戻り管14b、23を通して洗浄部40a側に一部または全部を戻すことができる。この硫酸溶液には過硫酸イオンが含まれており、洗浄槽部40a内に残存する溶解物や半導体基板50に再付着した溶解物を確実に分解をして洗浄部40a内を清浄に保つことができる。
以上のようにこの実施形態では、温度差を利用して一つの槽内で縦方向に洗浄部と貯留部とを割り当てるようにしたので、一つの槽で汚染物の剥離除去と溶解物の分解とを効果的に行うことができ、スペース効率にも優れている。また装置構成が簡単であるため、接合部が少なく、より安全性が高いという利点も有している。
【0065】
(実施形態4)
次に、上記実施形態3における変更例を図4に基づいて説明する。
この形態も一つの洗浄分解槽41に硫酸溶液43を収容して、洗浄部41aと貯留部41bとを縦方向に区分けして割り当てたものである。この実施形態では、両者の区分けを明確にするために両者間に区分け部として断面積を小さくした絞り部41cを設けている。この絞り部41cによって洗浄部41aの溶液43aと貯留部41bの溶液43bとの間の対流を阻害して両者ができるだけ区分けされるようにしている。なお、その他の構成は上記実施形態2と同様で、その作用も同様であるので、同一構成については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0066】
以上本発明について、上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態の説明に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜変更が可能である。
【実施例1】
【0067】
上記図1に示す実施形態を使用して以下の試験を行った。
すなわち、洗浄槽に、97%濃硫酸40L、超純水8Lの割合で調製した高濃度硫酸溶液を投入し、石英ヒータで160℃〜170℃に加熱保持した。一方、貯留槽にも同濃度の高濃度硫酸溶液を約10L投入し、石英ヒータで100℃〜110℃に加温保持しながら電解反応装置との間を循環させた。電解反応装置内には、直径15cmのボロンドープした導電性ダイヤモンド電極板を20枚組み込んだ装置を用いた。電解のための有効陽極面積は30dmであり、電流密度を30A/dmに設定し、熱交換器によって循環する洗浄液を40℃まで下げて電解した。送液ポンプは貯留槽の出口に配置し、開閉弁で電解反応装置側、洗浄槽側のいずれも0.8〜1L/min.程度の流量になるように調整して送液した。洗浄槽での滞留時間は約60min.、貯留槽での滞留時間は約12min.であった。電解開始後、電解反応装置出口液をサンプリングして、過硫酸イオン生成速度が3g/l/hr.であることを確認した。貯留槽の過硫酸イオン濃度は徐々に増加し、約10g/Lで安定した。このとき、洗浄槽にアッシング工程を経た6インチのシリコンウエハ50枚を1セットとして10分間浸漬して洗浄した。なお、浸漬時間を含めた処理時間は1セット12分程度であり、洗浄槽でのTOC生成速度は3〜5mg・C/L/hr.であることを事前に確認した。このような操作を2時間連続して行い、500枚のウエハを洗浄処理した。処理後のウエハは超純水でリンス後、スピン乾燥した。このような処理を行ったシリコンウエハをウエハアナライザに持ち込み、400℃に加熱して有機物残渣を質量分析計により測定したところ、いずれも200〜300pg/cmであり、連続して清浄なウエハを得ることができた。また洗浄槽中のTOC濃度は装置の稼動中0.01mg・C/L以下の低濃度に保つことができた。
【0068】
(比較例1)
実施例1の装置を用いて、洗浄槽温度のみ120℃に換え、その他の条件を実施例1と同様にして洗浄試験を行った。2時間連続して行い、500枚のウエハを洗浄処理した。処理後のウエハは超純水でリンス後、スピン乾燥した。このような処理を行ったシリコンウエハを実施例1と同様にウエハアナライザに持ち込み、400℃に加熱して有機物残渣を質量分析計により測定したところ、10%程度の割合で2000pg/cm以上の有機物が検出された。これらのシリコンウエハについて低加速電圧の走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン周辺にレジストの付着が認められた。
【0069】
(比較例2)
実施例1の装置を用いて、貯留槽のみ150℃に換えて、その他の条件を実施例1と同様にして洗浄試験を行った。2時間連続して行い、500枚のウエハを洗浄処理した。処理後のウエハは超純水でリンス後、スピン乾燥した。このような処理を行ったシリコンウエハを実施例1と同様にウエハアナライザに持ち込み、400℃に加熱して有機物残渣を質量分析計により測定したところ、5%程度の割合で500〜2000pg/cmの有機物が検出された。これらのシリコンウエハについて低加速電圧の走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン周辺にレジストの付着は認められなかった。貯留槽の過硫酸イオン濃度は実施例1に比べて非常に低濃度であったため、洗浄槽のTOC濃度は装置の稼動中徐々に上昇した。そのため洗浄槽でレジスト剥離溶解後に基板を引き上げた際に、洗浄液中のレジスト未分解分のTOC成分が基板に再付着した。
シリコンウエハに強固に付着したレジストは150℃に保持された洗浄槽においてシリコンウエハから除去されたが、貯留槽において過硫酸による酸化分解作用をほとんど受けなかったため、溶解した有機物がシリコンウエハに再付着する現象が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態の硫酸リサイクル型洗浄システムを示す図である。
【図2】同じく他の実施形態を示す図である。
【図3】さらに他の実施形態を示す図である。
【図4】さらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 洗浄槽
2 ヒータ
3 硫酸溶液
4 送液管
10 貯留槽
11 ヒータ
12 過硫酸イオン含有溶液
14a 送り管
14b 戻り管
15 送液ポンプ
16 熱交換器
17 三方弁
20 電解反応槽
21a 陽極
21b 陰極
22 直流電源
23 戻り管
25 洗浄分解槽
25a 洗浄部
25b 貯留部
26 洗浄分解槽
26a 洗浄部
26b 貯留部
28 硫酸溶液
28a 硫酸溶液
28b 硫酸溶液
50 半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄部と、該洗浄部で洗浄に供された洗浄液を貯留する貯留部と、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸イオン含有溶液を製造する電解反応装置と、前記貯留部と電解反応装置との間で、溶液を循環させる循環ラインとを備えることを特徴とする硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項2】
前記洗浄部で用いる洗浄液を加熱する洗浄部洗浄液加熱手段を備えることを特徴とする請求項1記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項3】
前記洗浄部洗浄液加熱手段は、前記洗浄液を130℃〜200℃に加熱するものであることを特徴とする請求項2記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項4】
前記貯留部に貯留させる洗浄液を加熱する貯留部洗浄液加熱手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項5】
前記貯留部洗浄液加熱手段は、前記洗浄液を80℃〜130℃未満に加熱するものであることを特徴とする請求項4記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項6】
前記電解反応装置における溶液の電解温度を10〜90℃とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項7】
前記洗浄部で用いる洗浄液の硫酸濃度が8M〜18Mの範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項8】
電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項9】
前記洗浄部と前記貯留部とがそれぞれ独立した槽からなり、各槽が送液管で接続されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項10】
前記洗浄部と前記貯留部とが共通する槽内にそれぞれ割り当てられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項11】
前記洗浄部と前記貯留部とは、共通する槽内で上方側が洗浄部、下方側が貯留部に割り当てられていることを特徴とする請求項10記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項12】
前記洗浄部と貯留部との間に区分け部を有することを特徴とする請求項10または11記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項13】
前記区分け部は、前記洗浄部と貯留部との間に設けられた絞り部によって構成されていることを特徴とする請求項12記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項14】
被洗浄材を硫酸濃度8M〜18M、温度130〜200℃の濃硫酸溶液で洗浄し、該洗浄に供した濃硫酸溶液に過硫酸イオンを生成し、温度80〜130℃未満に調整して溶液中の溶解物の分解を行うことを特徴とする洗浄方法。
【請求項15】
前記過硫酸イオンの生成は、前記濃硫酸溶液を電解することにより行うことを特徴とする請求項14記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−103516(P2007−103516A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289225(P2005−289225)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】